JP2024043633A - プロピレン系樹脂組成物、成形体、フィルム、多層フィルムおよび積層体 - Google Patents

プロピレン系樹脂組成物、成形体、フィルム、多層フィルムおよび積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】成形性に優れ、かつ従来公知のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体と比較して、得られる成形体の機械的強度、低温でのヒートシール強度および、耐ブロッキング性のバランスに優れるプロピレン系樹脂組成物を提供すること。【解決手段】230℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1.0~100g/10分のプロピレン系重合体(A)と、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であって、要件(1)~(4)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(B)と、を含み、プロピレン系重合体(A)の質量分率(WA)が50~95質量%であり、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の質量分率(WB)が5~50質量%である(ただし、WAとWBとの合計を100質量%とする。)プロピレン系樹脂組成物(Z)、成形体、フィルム、多層フィルム、および、積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系樹脂組成物ならびに該組成物を含む成形体、フィルム、多層フィルムおよび積層体に関するものである。
プロピレン系重合体は、安価で物理的特性に優れることから、各種成形品として広く公用されている。一方で、プロピレン系重合体は溶融弾性(スウェル比、溶融張力等の物性値を指標として用いる)が低く、一軸伸張変形を加えたときに伸張粘度がひずみ硬化性を示さないため、プロピレン系重合体単独で使用した場合に成形加工性が不十分である場合がある。
例えば、Tダイを用いたフィルム成形や押出ラミネーションにおいては、プロピレン系重合体を単味で使用すると、ネックイン(ダイスの幅に対し成形したフィルムの幅が小さくなる現象)が大きく、サージング(引取方向に発生する厚みムラやフィルム幅の周期変動)を生じる等、成形加工性が不十分である。
プロピレン系重合体の成形加工性を改善する手法としてプロピレン系重合体に高圧法低密度ポリエチレンを添加する手法が一般的に用いられてきた。
例えば、特許文献1では、メタロセン触媒を用いて調製されたポリプロピレン樹脂と高圧法低密度ポリエチレンから成る樹脂組成物が開示されている。特許文献2~4には特定の樹脂構造を有するプロピレン系重合体、高圧法低密度ポリエチレン、低結晶性または非晶性のプロピレン-α-オレフィン共重合体の組み合わせが開示されている。
特開2002-363356号公報 特開昭52-130875号公報 特開2001-323119号公報 特開2006-56914号公報
プロピレン系重合体に高圧法低密度ポリエチレンを添加する手法においても高圧法低密度ポリエチレンの添加量が少ない場合には効果が小さく、また大量の高圧法低密度ポリエチレンを多量に添加すると剛性や機械的強度が低下する。したがって、良好な加工性を有し、物理的特性にも優れるプロピレン系重合体またはプロピレン系樹脂組成物へのニーズが依然として存在する。
また、上記の成形加工性の課題とは別に、プロピレン系重合体を各種包装用フィルムや封止材として使用する場合には、低温度におけるヒートシール性が求められる。プロピレン単独重合体は比較的融点が高いため、この種の用途においては、プロピレンにエチレンまたは炭素数4~10のα-オレフィンを1~10質量%程度共重合させたプロピレン系ランダム共重合体が一般に用いられるが、なお低温におけるヒートシール性は十分ではない。
プロピレン系ランダム共重合体のヒートシール性を改良するには、プロピレンに対するエチレンあるいは炭素数4~10のα-オレフィンの共重合量を増加させればよいことが知られているが、もしエチレンあるいは炭素数4~10のα-オレフィンの共重合量を増加させると、得られるプロピレン-α-オレフィン共重合体は耐ブロッキング性に劣るようになってしまう。
以上の技術的背景から、特に各種包装用フィルム、封止材等の用途において、充分な成形加工性を有し、かつ機械的強度、低温でのヒートシール性、耐ブロッキング性のバランスに優れるプロピレン系重合体またはプロピレン系樹脂組成物の出現が望まれている。
特許文献1では、高圧法低密度ポリエチレンの割合を大きくすると機械的強度が低下し、高圧法低密度ポリエチレンの割合が小さい場合には成形加工性が不足することが予想される。また、特許文献1においては、低温度でのヒートシール性について何ら記載がない。特許文献2~4にはいずれも低温度でのヒートシール性は向上しているものの、耐ブロッキング性についての記載がない。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、成形性に優れ、かつ従来公知のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体と比較して、得られる成形体の機械的強度、低温でのヒートシール強度および、耐ブロッキング性のバランスに優れるプロピレン系樹脂組成物を提供することである。
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 230℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR(230))が1.0g/10分以上100g/10分以下のプロピレン系重合体(A)と、
エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(1)~(4)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(B)と、
を含み、
前記プロピレン系重合体(A)の質量分率(WA)が50質量%以上95質量%以下であり、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の質量分率(WB)が5質量%以上50質量%以下である(ただし、WAとWBとの合計を100質量%とする。)プロピレン系樹脂組成物(Z)。
(1)密度が890kg/m3以上950kg/m3以下の範囲にある。
(2)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR(190))が0.1g/10分以上15.0g/10分以下の範囲にある。
(3)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MT/η*(g/P)〕が1.20×10-4以上2.90×10-4以下の範囲にある。
(4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)が、下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.01×10-13×Mw3.4≦η0≦2.5×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1)
<2> 前記プロピレン系重合体(A)が、示差走査熱量測定(DSC)で測定した融点が100~150℃であり、
プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンの少なくとも一方と、を共重合して得られる重合体であり、
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)がさらに下記要件(5)~(7)を満たす、<1>に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)。
(5)1H-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計(個/1000C)が0.1以上1.0以下の範囲にある。
(6)示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在する。
(7)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-2)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.20×10-4×Mw0.776 ・・・(Eq-2)
<3> 熱可塑性樹脂(ただし、前記プロピレン系重合体(A)およびエチレン-α-オレフィン共重合体(B)を除く。)をさらに含む、<1>または<2>に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)。
<4> <1>または<2>に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む成形体。
<5> <1>または<2>に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含むフィルム。
<6> <1>または<2>に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を有する多層フィルム。
<7> <1>または<2>に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を備える積層体。
<8> <1>または<2>記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を有し、さらに基材層を有する積層体。
<9> <1>または<2>に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を有し、さらにバリア層を有する積層体。
本発明の一実施形態によれば、成形性に優れ、かつ従来公知のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体と比較して、得られる成形体の機械的強度、低温でのヒートシール強度、および、耐ブロッキング性のバランスに優れるプロピレン系樹脂組成物(Z)が提供される。
また、本発明の一実施形態によれば、成形性に優れ、かつ、機械的強度、低温でのヒートシール強度、および、耐ブロッキング性のバランスに優れる積層体が提供される。
図1は、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)より形成されたフィルムの小試ネックイン比(LNR)を測定するためのスリットダイスを上方向から眺めた図面である。 図2は、上記スリットダイスを横方向から眺めた図面である。 図3は、上記スリットダイスのA-B断面図である。 図4は、冷却ロールおよびエアーノズルを正面から眺めた図面である。 図5は、冷却ロールおよびエアーノズルを横方向から眺めた図面である。 図6は、ダイダイスウェル比を測定するためのキャピラリーレオメーターを上方向から眺めた図面である。 図7は、上記キャピラリーレオメーターの側面から眺めた図面である。
〔プロピレン系樹脂組成物(Z)〕
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)は、230℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR(230))が1.0以上100g/10分以下のプロピレン系重合体(A)と、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(1)~(4)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(B)と、を含み、前記プロピレン系重合体(A)の質量分率(WA)が50質量%以上95質量%以下であり、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の質量分率(WB)が5質量%以上50質量%以下である(ただし、WAとWBとの合計を100質量%とする。)。
プロピレン系樹脂組成物(Z)は上記構成を有することで、成形性に優れ、かつ従来公知のプロピレン系樹脂組成物と比較して得られる成形体の機械的強度、低温でのヒートシール強度、および、耐ブロッキング性のバランスに優れる。この理由は明らかではないが、以下のメカニズムが推定される。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)は、要件(1)~(4)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(B)を含むので、特定の長鎖分岐構造を有するエチレン-α-オレフィン共重合体(B)が組成物中に適量存在することにより、強度を損なうことなく成形性を向上させ、かつ、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)を組成物中に適度に含むことによりヒートシール性が向上する。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)は長鎖分岐構造と高分子量成分の存在に起因する溶融弾性とを有することにより、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)およびプロピレン系重合体(A)を含む組成物から得らえる成形体の表面が適度に粗面化することで耐ブロッキング性が発現すると推定される。
以下、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)について、その構成成分であるプロピレン系重合体(A)とエチレン-α-オレフィン共重合体(B)とについて具体的に説明する。
<プロピレン系重合体(A)>
本発明に係るプロピレン系重合体(A)としては、特に制限はなく、例えばプロピレン単独重合体であってもよいし、プロピレンとα-オレフィンとのランダム共重合体であってもよいし、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)であってもよい。得られる成形体の成形性に優れ、かつ、機械的強度、低温でのヒートシール強度、および、耐ブロッキング性のバランスに優れる観点から、プロピレン系重合体(A)としては、プロピレンとα-オレフィンとのランダム共重合体(以下、「プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体」ともいう。)が好ましい。
なお、プロピレン系重合体は、プロピレン系重合体の全構成単位に対して、プロピレンに由来する構成単位を50質量%以上含む樹脂であることが好ましい。また、プロピレン系重合体(A)は、2種類以上のプロピレン系重合体を含む組成物であってもよい。
プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体におけるα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、および、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられる。
炭素数4~20のα-オレフィンとしては、具体的には1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラドデセン、1-ヘキサドデセン、1-オクタドデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、ジエチル-1-ブテン、トリメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジメチル-1-ペンテン、メチルエチル-1-ペンテン、ジエチル-1-ヘキセン、トリメチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ヘプテン、エチル-1-オクテン、メチル-1-ノネンなどが挙げられる。
炭素数4~20のα-オレフィンは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のα-オレフィンとしては、エチレンおよび/または炭素原子数4~12のα-オレフィンが好ましい。
プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体としては、具体的には、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ペンテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体等が挙げられる。プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
プロピレン単独重合体、および、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体としては、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
市販品としては、PMシリーズ、PLシリーズ、PCシリーズ(以上商品名、サンアロイ社製)、プライムポリプロ(商品名、株式会社プライムポリマー製)、ノバテック(商品名、日本ポリプロ株式会社製)、E-200GP(商品名、株式会社プライムポリマー製)、E-330GV(商品名、株式会社プライムポリマー製)、F107DJ(商品名、株式会社プライムポリマー製)、B241(商品名、株式会社プライムポリマー製)、F-300SP(商品名、株式会社プライムポリマー製)、F327(商品名、株式会社プライムポリマー製)等が挙げられる。
上記プロピレン単独重合体、および、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の市販品は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
プロピレン系重合体(A)は、230℃、2.16kg荷重の条件下で測定したMFR(230)は、フィルムの製造や延伸性の観点から、1.0以上100g/10分以下であり、1.0以上50g/10分以下が好ましい。
プロピレン系重合体(A)のMFR(230)が1.0以上100g/10分以下の範囲内であることにより、延伸性が向上し、フィルム成形が容易になる。
プロピレン系重合体(A)のMFR(230)は、JIS K6921-1およびJIS K6921-2に準じた測定方法により求められる。
また、プロピレン系重合体(A)は、好ましくは示差走査熱量測定(DSC)で測定した融点(Tm)が100~150℃であることが好ましい。
融点が100℃以上であると、得られる成形体の耐ブロッキング性に優れ、融点が150℃以下であると、得られる成形体の低温度でのヒートシール性に優れる。
示差走査熱量測定(DSC)は、示差走査熱量計(例えば、後述する実施例ではパーキンエルマー社製Diamond DSC)を用いて、下記のように行う。
プロピレン系重合体(A)の試料約5mgをアルミニウムパンに詰め、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で10分間保持した後、10℃/分で30℃まで降温し、次いで10℃/分で230℃まで昇温する際の吸熱曲線を得る。
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、バイオマス由来モノマー(例えば、プロピレン、エチレン、および、α-オレフィンなど)を含んでいてもよい。重合体を構成するモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。
本発明に係るプロピレン系重合体(A)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス重合温度、などの重合体製造条件が同等であれば、原料モノマーがバイオマス由来モノマーを含んでいても、14C同位体を10-12~10-14程度の割合で含む以外の分子構造は、化石燃料由来モノマーからなるプロピレン系重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、ケミカルリサイクル由来モノマー(例えば、プロピレン、エチレン、および、α-オレフィンなど)を含んでいてもよい。
重合体を構成するモノマーがケミカルリサイクル由来モノマーのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来モノマーと、化石燃料由来モノマーおよび/またはバイオマス由来モノマーと、を含んでもよい。
ケミカルリサイクル由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るプロピレン系重合体(A)がケミカルリサイクル由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。ケミカルリサイクル由来モノマーは、廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でエチレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、プロピレン系重合体(A)の原料モノマーとしてケミカルリサイクル由来モノマーが含まれていても、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン系重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
<エチレン-α-オレフィン共重合体(B)>
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であり、好ましくはエチレンと炭素数6~10のα-オレフィンとの共重合体である。
エチレンとの共重合に用いられる上記炭素数4~10のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)は、下記要件(1)~(4)に示すような特性を有している。
<<要件(1)>>
(1)密度が890kg/m3以上950kg/m3以下の範囲であり、好ましくは895kg/m3以上935kg/m3以下、より好ましくは900kg/m3以上925kg/m3以下の範囲にある。
密度が890kg/m3以上の場合、プロピレン系樹脂組成物(Z)から成形されたフィルム表面のべたつきが少なく、密度が950kg/m3以下の場合、プロピレン系樹脂組成物(Z)から成形されたフィルムおよび該フィルムからなる袋の、低温ヒートシール強度、および、機械的強度が良好である。
密度はエチレン-α-オレフィン共重合体(B)のα-オレフィン含量に依存しており、α-オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α-オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。エチレン-α-オレフィン共重合体(B)のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα-オレフィンとエチレンとの組成比(α-オレフィン/エチレン)により決定されることから(例えば、Walter Kaminsky, Macromol.Chem. 193, p.606(1992))、α-オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン-α-オレフィン共重合体(B)を製造することができる。
密度の測定は以下のように行われる。
MFR測定時に得られるストランドを100℃で30分間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定する。
<<要件(2)>>
(2)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR(190))が0.1g/10分以上15.0g/10分以下の範囲であり、好ましくは0.1g/10分以上10.0g/10分以下であり、より好ましくは0.1g/10分以上6.0g/10分以下であり、最も好ましくは0.1g/10分以上3.0g/10分以下である。
MFR(190)が0.1g/10分以上の場合、プロピレン系樹脂組成物(Z)のせん断粘度が高すぎず、押出負荷が良好である。メルトフローレート(MFR)が15.0g/10分以下の場合、プロピレン系樹脂組成物(Z)の機械的強度が良好である。
メルトフローレート(MFR)は分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)を増減させることが可能である。メルトフローレート(MFR(190))は、JIS K 7210に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
<<要件(3)>>
(3)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕(PはPoiseである。)との比〔MT/η*(g/P)〕が1.20×10-4以上2.90×10-4以下の範囲にあり、好ましくは1.30×10-4以上2.70×10-4以下、より好ましくは1.40×10-4以上2.50×10-4以下の範囲にある。
MT/η*が1.20×10-4以上の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)は分子量の割に溶融張力が高いため、プロピレン系樹脂組成物(Z)は成形性に優れる。MT/η*が2.90×10-4以下の場合、プロピレン系樹脂組成物(Z)は機械的強度に優れる。
MT/η*はエチレン-α-オレフィン共重合体(B)の長鎖分岐含量に依存しており、長鎖分岐含量が多いほどMT/η*は大きく、長鎖分岐含量が少ないほどMT/η*は小さくなる。長鎖分岐とはエチレン-α-オレフィン共重合体(B)中に含まれる絡み合い点間分子量(Me)以上の長さの分岐構造と定義され、長鎖分岐の導入によりエチレン系重合体の溶融物性、及び成形加工性は著しく変化することが知られている(例えば、松浦一雄他編、「ポリエチレン技術読本」、工業調査会、2001年、p.32, 36)。
MT/η*は、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(A)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能であり、例えばエチレン分圧を上げることによって、MT/η*を下げることができる。後述する実施例の製造例13の製造条件によって1.20×10-4付近のMT/η*を、実施例の製造例8の製造条件によって2.90×10-4付近のMT/η*を得ることができる。
溶融張力〔MT(g)〕は以下のように測定する。
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の190℃における溶融張力(MT)(単位;g)は、一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定する。測定にはキャピラリーレオメーターを用いる(たとえば、後述する実施例では東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Dを用いた)。
測定条件は樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmとする。
200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕は以下のように測定する。せん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定には、粘弾性測定装置を用い(たとえば、後述する実施例ではアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用いた。)、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)のサンプル厚さを約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3~10%の範囲で適宜選択する。
せん断粘度測定に用いるサンプルは、成形機を用い(たとえば、後述する実施例では神藤金属工業所製プレス成形機を用いた。)、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製する。
<<要件(4)>>
(4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とは下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.01×10-13×Mw3.4≦η0≦2.5×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1)
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕および重量平均分子量(Mw)は好ましくは、以下関係式(Eq-1’)を満たす。
0.05×10-13×Mw3.4≦η0≦2.2×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1’)
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕および重量平均分子量(Mw)はより好ましくは、以下関係式(Eq-1”)を満たす。
0.10×10-13×Mw3.4≦η0≦2.0×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1”)
重量平均分子量(Mw)に対してゼロせん断粘度〔η0(P)〕を両対数プロットしたとき、長鎖分岐のない直鎖状のエチレン系重合体のように伸長粘度がひずみ硬化性を示さない樹脂は、傾きが3.4のべき乗則に則るのに対し、高圧法低密度ポリエチレンのように伸長粘度がひずみ速度硬化性を示す樹脂はべき乗則よりも低いゼロせん断粘度〔η0(P)〕を示すことが知られている(C Gabriel, H.Munstedt, J.Rheol., 47(3), 619(2003))。200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕が上限2.5×10-13以下の場合、エチレン系重合体の伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すため、プロピレン系樹脂組成物(Z)を成形する際に引取サージングが発生しない。
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕と重量平均分子量(Mw)との関係は、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)中の長鎖分岐の含量および長さに依存していると考えられ、長鎖分岐含量が多いほど、また長鎖分岐の長さが短いほどη0/Mw3.4は小さい値を示し、長鎖分岐含量が少ないほど、また長鎖分岐の長さが長いほどη0/Mw3.4は大きい値を示すと考えられる。
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕は、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(A)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能である。り、例えばエチレン分圧を上げることによって、ゼロせん断粘度〔η0(P)〕を上げることができる。後述する実施例の製造例17の製造条件によって下限0.01×10-13付近のη0/Mw3.4を、後述する実施例製造例16の製造条件によって上限2.5×10-13付近のη0/Mw3.4を得ることができる。
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕は以下のように測定する。
測定温度200℃にて、せん断粘度(η*)の角速度ω(rad/秒)分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定には粘弾性測定装置(たとえば、後述する実施例ではアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301)を用いて、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)のサンプル厚さを約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3~10%の範囲で適宜選択する。
せん断粘度測定に用いるエチレン-α-オレフィン共重合体(B)のサンプルは、成形機を用い(たとえば、後述する実施例では神藤金属工業所製プレス成形機を用いた。)、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製する。
ゼロせん断粘度(η0)は、下記式のCarreauモデルを非線形最小自乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出する。
η*=η0〔1+(λω)a(n-1)/a
〔λは時間の次元を持つパラメーター、aはフィッティングパラメータ、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。〕
なお、非線形最小自乗法によるフィッティングは下記式におけるdが最小となるように行う。
〔ηexp(ω)は実測のせん断粘度を表し、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。〕
重量平均分子量(Mw)等は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のように測定する。
検出器には示差屈折計およびキャピラリー粘度計を用い、カラム温度は145℃とし、移動相としてはo-ジクロロベンゼンを用い、流量を1.0mL/分とし、試料濃度は0.1質量%とし、標準ポリマーとしてポリスチレンを用いる。
なお、後述する実施例では、測定装置としてAgilent社製GPC-粘度検出器(GPC-VISCO)PL-GPC220を用い、分析カラムにはAgilent PLgel Olexisを2本用い、標準ポリスチレンには、東ソー株式会社製のものを用いた。分子量計算は、粘度計および屈折計から実測粘度を計算し、実測ユニバーサルキャリブレーションより数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn、および、Mz/Mw)を求める。
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)は、好ましくは下記(5)~(7)に示すような特性を有している。
<<要件(5)>>
(5)1H-NMRにより測定されたビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数(以下、単に「ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数」ともいう。)が0.1以上1.0以下の範囲にある。
ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数は、好ましくは、下記関係式(Eq-3’)を満たす。
0.2≦ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数≦1.0・・・(Eq-3’)
ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数は、より好ましくは、下記関係式(Eq-3”)を満たす。
0.3≦ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィン≦1.0・・・(Eq-3”)
ポリマー中のビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの個数は1H-NMR法によって測定される、ポリマー中に含まれる1000個の炭素数あたりの個数である。ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの生成量比ならびに個数は用いる遷移金属化合物によって増減することが知られている(H.SAIKI, S.MAKOTO, T.MASAO, S.MORIHIKO, Y.AKIHIRO, J. Polym. Sci., A: Polym. Chem., 38, 4641 (2000))。これらは、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(A)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能であり、例えばエチレン分圧を増減させることによっても、増減させることが可能である。
ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数が0.1以上の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)において長鎖分岐が生成しやすく、プロピレン系樹脂組成物(Z)は成形性に優れる。また、ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数が1.0以下の場合は、プロピレン系樹脂組成物(Z)は、成形時の溶融膜が酸化されにくくなり、ヒートシール性に優れ、また成形体の透明性や機械的強度に優れる。
1H-NMR(500MHz)により測定されたビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数は、核磁気共鳴装置(たとえば、後述する実施例では、Bruker社製AVANCE III(クライオプローブ)型核磁気共鳴装置)を用いて、以下のように測定する。
測定モードはシングルパルス、パルス幅45°とする。ポイント数は32k、観測範囲は20ppm(-6~14ppm)、繰り返し時間は7秒で積算回数は64回とする。試料は20mgをオルトジクロロベンゼン-d40.6mLに溶解させた後、120℃にて測定する。
1H-NMRスペクトルにおいて、4.5ppm~5.8ppmにおける各種二重結合(ビニル、ビニリデン、内部オレフィン)由来のシグナル積分値より算出した二重結合数および全1Hシグナルの総積分値より算出した全炭素数の相対値を求め、ポリマー炭素1000個当たりの各種二重結合数を算出する。
<<要件(6)>>
(6)示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在する。
複数ピークを持つ場合、低融点成分が多く低温でのヒートシール性に優れる。
示差走査熱量測定(DSC)は、示差走査熱量計を用い(たとえば、後述する実施例ではパーキンエルマー社製Diamond DSCを用いた。)、下記のように行う。
試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、10℃/分で-30℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温する際の吸熱曲線を得る。この吸熱曲線が2つ以上のピークを持つことが、示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在することを意味する。
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)が上記(6)に示すような特性を有すると、本発明のプロピレン系樹脂組成物(Z)は、積層体のヒートシール層に使用した場合に、ヒートシール性に優れる。
<<要件(7)>>
(7)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-3)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.20×10-4×Mw0.776・・・(Eq-3)
上記極限粘度〔[η](dl/g)〕と重量平均分子量(Mw)とは、好ましくは、以下関係式(Eq-3’)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.10×10-4×Mw0.776・・・(Eq-3’)
上記極限粘度〔[η](dl/g)〕と重量平均分子量(Mw)とは、さらに好ましくは、以下関係式(Eq-3”)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.00×10-4×Mw0.776・・・(Eq-3”)
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に極限粘度〔[η](dl/g)〕が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard, ADVANCES IN POLYMER SCIENCE, 143, Branched PolymerII, p.137(1999))。そのため、極限粘度〔[η](dl/g)〕が1.20×10-4×Mw0.776以下の場合、得られるエチレン系重合体は多数の長鎖分岐を有しており、成形性、流動性に優れる。
極限粘度〔[η](dl/g)〕は、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(A)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能であり、例えばエチレン分圧を上げることによって、極限粘度〔[η](dl/g)〕を上げることができる。製造例19の製造条件にて下限付近の極限粘度〔[η](dl/g)〕を、製造例7の製造条件によって上限付近の極限粘度〔[η](dl/g)〕を得ることができる。
極限粘度〔[η](dl/g)〕はデカリン溶媒を用い、以下のように測定する。
測定サンプル約20mgをデカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求める。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
重量平均分子量(Mw)は、上述のように測定する。
本発明に係るエチレン-α-オレフィン共重合体(B)は、バイオマス由来モノマー(エチレン、α-オレフィン)を含んでいてもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体(B)を構成するモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。
上記バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るエチレン-α-オレフィン共重合体(B)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス重合温度、などの重合体製造条件が同等であれば、原料モノマーがバイオマス由来モノマーを含んでいても、14C同位体を10-12~10-14程度の割合で含む以外の分子構造は、化石燃料由来モノマーからなるエチレン-α-オレフィン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
本発明に係るエチレン-α-オレフィン共重合体(B)は、ケミカルリサイクル由来モノマー(例えば、エチレン、α-オレフィンなど)を含んでいてもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体(B)を構成するモノマーがケミカルリサイクル由来モノマーのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来モノマーと、化石燃料由来モノマーおよび/またはバイオマス由来モノマーと、を含んでもよい。ケミカルリサイクル由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るエチレン-α-オレフィン共重合体(B)がケミカルリサイクル由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。ケミカルリサイクル由来モノマーは、廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でエチレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の原料モノマーとしてケミカルリサイクル由来モノマーが含まれていても、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるエチレン-α-オレフィン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。ケミカルリサイクルス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(B)がケミカルリサイクル由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でエチレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるエチレン・α-オレフィン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)は、上記プロピレン系重合体(A)と、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)を含み、前記プロピレン系重合体(A)の質量分率(WA)と前記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の質量分率(WB)の合計を100質量%として、WAが50質量%以上95質量%以下であり、WBが5質量%以上50質量%以下である。
Aは好ましくは60質量%以上90質量%以下、より好ましくは65質量%以上85質量%以下である。WBは好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上35質量%以下である。WAが50質量%以上95質量%以下の範囲内にあると、プロピレン系樹脂組成物(Z)は成形性および機械的強度に優れる。
また、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)は、実質的に上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)のみからなるものであってもよいが、これに限られるものではなく、上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)に加えて、熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」ともいう。)を含んでいてもよい(ただし、前記プロピレン系重合体(A)およびエチレン-α-オレフィン共重合体(B)を除く。)。
上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)に対して「他の熱可塑性樹脂」をブレンドすることにより熱可塑性樹脂組成物として得られるプロピレン系樹脂組成物(Z)は、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れる。
プロピレン系樹脂組成物(Z)における上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の合計含有量に対する、「他の熱可塑性樹脂」の含有量の比(ブレンド比率)(上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の合計含有量/他の熱可塑性樹脂の含有量)は、通常99.9/0.1~0.1/99.9、好ましくは90/10~10/90、さらに好ましくは70/30~30/70である。
(他の熱可塑性樹脂)
他の熱可塑性樹脂としては、上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)以外のポリオレフィン(以下、「その他のポリオレフィン」ともいう。)、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタール等の結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレート等の非結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリ塩化ビニルも好ましく挙げられる。他の熱可塑性樹脂として、バイオマス由来モノマーまたはケミカルリサイクル由来モノマーを含む、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸またはポリカーボネートであってもよい。
上記その他のポリオレフィンとしては、上記プロピレン系重合体(A)以外のプロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、ブロックポリプロピレン、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)以外のエチレン-α-オレフィン共重合体、非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体等が挙げられ、中でも非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体が好ましい。
上記非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも特に、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、およびエチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体が好ましい。
上記非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体は合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体の市販品としては、三井化学株式会社製のタフマーPシリーズ、タフマーAシリーズ、タフマーDFシリーズ、タフマーPNシリーズ、タフマーBLシリーズ等が挙げられる。
上記その他のポリオレフィンは、それぞれ、バイオマス由来モノマーまたはケミカルリサイクル由来モノマーを含むポリオレフィンであってもよい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物(Z)は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
これらの添加剤の含有量は、プロピレン系樹脂組成物(Z)の添加剤以外の成分の合計100質量部に対して、一般的には10質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
<プロピレン系重合体(A)の製造方法>
プロピレン系重合体(A)は、公知のチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下、プロピレンの単独重合またはプロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4~12のα-オレフィンとを共重合して得られるプロピレン系重合体である。また、プロピレン系重合体(A)は、市販品としても入手可能であり、例えば、F327(商品名、株式会社プライムポリマー製)がある。
<エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の製造方法>
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の製造方法としては、効率的に重合が行えるという観点から、好ましくは、下記成分からなるオレフィン重合用触媒(X)の存在下、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとを重合する方法である。以下、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の製造方法に用いられるオレフィン重合用触媒(X)の詳細について以下に説明する。
[オレフィン重合用触媒(X)]
オレフィン重合用触媒(X)は、以下の成分(A)および固体状担体(S)を含んでなる。
<成分(A)>
成分(A)は、下記式(1)で表される遷移金属化合物(以下「遷移金属化合物(1)」ともいう。)である。オレフィン重合用触媒(X)は、遷移金属化合物(1)を少なくとも1種含む。すなわち、成分(A)として、遷移金属化合物(1)を1種用いてもよく、複数種用いてもよい。
Figure 2024043633000002
前記式(1)において、Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
前記式(1)において、nは遷移金属化合物(1)が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、好ましくは2である。
前記式(1)において、Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または共役ジエン系誘導体基であり、好ましくはハロゲン原子または炭素数1~20の炭化水素基である。
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素である。
前記炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)などの芳香族を含有する直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ter-フェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換基が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、メチル基、iso-ブチル基、ネオペンチル基、シアミル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基である。
前記炭素数1~20の炭化水素基は、前記炭素数1~20の炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換された、ハロゲン置換炭化水素基であってもよく、その例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、が挙げられ、好ましくはペンタフルオロフェニル基である。
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、トリメチルシリルメチル基などが挙げられ、好ましくはトリメチルシリルメチル基である。
前記酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-iso-プロピルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェノキシ基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、過塩素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオンが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基である。
前記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基などが挙げられる。
前記共役ジエン系誘導体基としては、例えば、1,3-ブタジエニル基、イソプレニル基(2-メチル-1,3-ブタジエニル基)、ピペリレニル基(1,3-ペンタジエニル基)、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基などが挙げられ、好ましくは1,3-ブタジエニル基、1,3-ペンタジエニル基である。
前記式(1)において、Qは炭素原子またはケイ素原子であり、好ましくはケイ素原子である。
前記式(1)において、R1~R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有基、炭素数1~20の酸素含有基または炭素数1~20の窒素含有基であり、好ましくは水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有基である。
1~R14としての炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)、ペンタフルオロフェニルメチル基などの芳香族を含有する直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ter-フェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換基;
フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基などの、前記炭素数1~20の炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換された、ハロゲン置換炭化水素基;
が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、アリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、tert-フェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基、ペンタフルオロフェニル基である。
1~R14としての炭素数1~20のケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基などが好ましく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基が挙げられる。
1~R14としての炭素数1~20の酸素含有基は、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、ジメチルジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基である。
1~R14としての炭素数1~20の窒素含有基は、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ジメチルアミノメチル基、ベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基などが挙げられ、好ましくはアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、カルバゾリル基、イミダゾリル基である。
前記式(1)において、R1~R6のうちの隣接した置換基同士(例:R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、およびR5とR6)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(前記インデニル環部分の炭化水素を除く)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環はより好ましくは5又は6員環であり、この場合、前記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環、シクロペンタテトラヒドロナフタレン環が挙げられ、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環が好ましい。これらの環は置換基を有していてもよい。
前記式(1)において、R7~R12のうちの隣接した置換基同士(例:R7とR8、R8とR9、R9とR10、R10とR11、およびR11とR12)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(前記インデニル環部分の炭化水素を除く。)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環はより好ましくは5又は6員環であり、この場合、前記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環、シクロペンタテトラヒドロナフタレン環、テトラヒドロフルオレン環、フルオレン環が挙げられ、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環が好ましい。これらの環は置換基を有していてもよい。
前記式(1)において、R13とR14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。この場合に形成される環は、置換基を有していてもよい3~8員環の飽和または不飽和環を形成することが好ましい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは4~6員環であり、この場合、Qと併せた構造として、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、フルオレン環、シラシクロブタン(シレタン)環、シラシクロペンタン(シロラン)環、シラシクロヘキサン(シリナン)環、シラフルオレン環が挙げられ、シクロペンタン環、シラシクロブタン環、シラシクロペンタン環であることが好ましい。これらの環は置換基を有していてもよい。
以下に遷移金属化合物(1)の具体例を示すが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
便宜上、前記遷移金属化合物(1)のMXn(金属部分)で表される部分を除いたリガンド構造を、2-インデニル環部分、1-インデニル環部分、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基、インデニル環部分R2、R5、R9およびR12置換基、インデニル環部分R3、R4、R10およびR11置換基、1-インデニル環部分R7置換基、架橋部分の構造の7つに分ける。2-インデニル環部分の略称をα、1-インデニル環部分の略称をβ、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基の略称をγ、インデニル環部分R2、R5、R9およびR12置換基の略称をδ、インデニル環部分R3、R4、R10およびR11置換基の略称をε、1-インデニル環部分R7置換基の略称をζ、架橋部分の構造の略称をηとし、各置換基の略称を[表1]~[表7]に示す。
Figure 2024043633000003
Figure 2024043633000004
なお、前記[表1]~[表2]中の波線は架橋部分との結合部位を示す。
Figure 2024043633000005
前記[表3]中のR1、R6およびR8置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
Figure 2024043633000006
前記[表4]中のR2、R5、R9およびR12置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
Figure 2024043633000007
前記[表5]中のR3、R4、R10およびR11置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
Figure 2024043633000008
Figure 2024043633000009
金属部分MXnの具体的な例示としては、ZrF2、ZrCl2、ZrBr2、ZrI2、Zr(Me)2、Zr(Bn)2、Zr(Allyl)2、Zr(CH2-tBu)2、Zr(1,3-ブタジエニル)、Zr(1,3-ペンタジエニル)、Zr(2,4-ヘキサジエニル)、Zr(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Zr(CH2-Si(Me)32、Zr(ОMe)2、Zr(ОiPr)2、Zr(NMe22、Zr(ОMs)2、Zr(ОTs)2、Zr(ОTf)2、HfF2、HfCl2、HfBr2、HfI2、Hf(Me)2、Hf(Bn)2、Hf(Allyl)2、Hf(CH2-tBu)2、Hf(1,3-ブタジエニル)、Hf(1,3-ペンタジエニル)、Hf(2,4-ヘキサジエニル)、Hf(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Hf(CH2-Si(Me)32、Hf(ОMe)2、Hf(ОiPr)2、Hf(NMe22、Hf(ОMs)2、Hf(ОTs)2、Hf(ОTf)2などが挙げられる。Meはメチル基、Bnはベンジル基、tBuはtert-ブチル基、Si(Me)3はトリメチルシリル基、ОMeはメトキシ基、ОiPrはiso-プロポキシ基、NMe2はジメチルアミノ基、ОMsはメタンスルホナート基、ОTsはp-トルエンスルホナート基、ОTfはトリフルオロメタンスルホナート基である。
上記の表記に従えば、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-5、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-1、2-インデニル環部分R3およびR4置換基がいずれも[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-30、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-38、1-インデニル環部分R12置換基が[表4]中のδ-3、架橋部分が[表7]中のη-20の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZrCl2の場合は、下記式[6]で表される化合物を例示している。
Figure 2024043633000010
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-2、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-2、2-インデニル環部分R3およびR4置換基がいずれも[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-1、架橋部分が[表7]中のη-4の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZr(NMe22の場合は、下記式[7]で表される化合物を例示している。
Figure 2024043633000011
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-3、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-2、インデニル環部分R2、R5およびR12置換基がいずれも[表4]中のδ-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-12、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-1、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-42、1-インデニル環部分R10置換基が[表5]中のε-3、1-インデニル環部分R11置換基が[表5]中のε-12、架橋部分が[表7]中のη-31の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがHfMe2の場合は、下記式[8]で表される化合物を例示している。
Figure 2024043633000012
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2置換基が[表4]中のδ-7、2-インデニル環部分R3、R4、R10およびR11置換基がいずれも[表5]中のε-1、2-インデニル環部分R5置換基が[表4]中のδ-2、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-1、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-9、1-インデニル環部分R9およびR12置換基がいずれも[表4]中のδ-1、架橋部分が[表7]中のη-29の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZr(1,3-ペンタジエニル)の場合は、下記式[9]で表される化合物を例示している。
Figure 2024043633000013
前記遷移金属化合物(1)は、従来公知の方法を利用して製造することができ、特に製造方法が限定されるわけではない。
出発物質である置換インデン化合物は、公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の製造方法として例えば、「Оrganometallics 1994,13,954.」、「Оrganometallics 2006,25,1217.」、特表2006-509059号公報、「Bioorg.Med.Chem. 2008,16,7399.」、WО2009/080216号公報、「Оrganometallics 2011,30,5744.」、特表2011-500800号公報、「Оrganometallics 2012,31,4962.」、「Chem.Eur.J. 2012,18,4174.」、特開2012-012307号公報、特開2012-121882号公報、特開2014-196319号公報、特表2014-513735号公報、特開2015-063495号公報、特表2016-501952号公報、特開2019-059933号公報などに開示された製造方法が挙げられる。
遷移金属化合物(1)および前駆体化合物(配位子)の公知の製造方法としては、例えば、「Macromolecules 2001,34,2072.」、「Macromolecules 2003,36,9325.」、「Organometallics 2004,23,5332.」、「Eur.J.Inorg.Chem. 2005,1003.」、「Eur.J.Inorg.Chem. 2009,1759.」などが挙げられる。
また、前記遷移金属化合物(1)は、架橋部分を挟んで中心金属と結合するインデニル環部分の面が2方向存在する(表面と裏面)。故に、2-インデニル環部分に対称面が存在しない場合、一例として下記一般式[10a]あるいは[10b]で示される2種類の構造異性体が存在する。
Figure 2024043633000014
同様に、架橋部分の置換基R13とR14が同一でない場合にも、一例として下記一般式[11a]あるいは[11b]で示される2種類の構造異性体が存在する。
Figure 2024043633000015
これら構造異性体混合物の精製、分取、あるいは構造異性体の選択的な製造は、公知の方法によって可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の製造方法としては、前記遷移金属化合物(1)の製造方法として挙げたものの他に、特開平10-109996号公報、「Оrganometallics 1999,18,5347.」、「Оrganometallics 2012,31,4340.」、特表2011-502192号公報などに開示された製造方法が挙げられる。
なお、前記遷移金属化合物(1)の範囲内で、遷移金属化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、構造異性体混合物を用いてもよく、構造異性体を1種単独で用いてもよく、2種以上の構造異性体混合物を用いてもよい。オレフィン重合用触媒を構成する遷移金属化合物として前記遷移金属化合物(1)を使用した場合、長鎖分岐が多く導入されたエチレン系重合体を高い触媒活性で製造することができる。また、この効果が損なわれない範囲で、前記遷移金属化合物として前記遷移金属化合物(1)とは別の1種以上の遷移金属化合物を併用してもよい。この際、遷移金属化合物(1)は上記のいずれの態様であってもよい。
<固体状担体(S)>
オレフィン重合用触媒(X)に含まれる固体状担体(S)は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
前記固体状担体(S)として用いられる無機化合物としては、多孔質酸化物、固体状アルミノキサン化合物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられる。
前記多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaOおよびThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23およびSiO2-TiO2-MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
なお、上記多孔質酸化物には、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO43、BaSO4、KNO3、Mg(NO32、Al(NO33、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、固体状担体(S)としては、粒径が通常0.2~300μm、好ましくは1~200μmであって、比表面積が通常50~1200m2/g、好ましくは100~1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3~30cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成して用いられる。
前記固体状アルミノキサン化合物としては、下記一般式(S-a)で表される構造のアルミノキサン、下記一般式(S-b)で表される構造のアルミノキサン、および下記一般式(S-c)で表される繰り返し単位と下記一般式(S-d)で表される繰り返し単位とを構造として有するアルミノキサンなどが挙げられる。
Figure 2024043633000016
上記式(S-a)~(S-d)において、Reは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10、好ましくは1~4の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基などの炭化水素基を例示することができ、メチル基、エチル基、イソブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、Reの一部が塩素や臭素などのハロゲン原子で置換され、かつハロゲン含有率がReを基準として40重量%以下であってもよい。上記式(S-c)および(S-d)中の、片方が原子と繋がっていない直線は、図示していない別の原子との結合を示す。
前記式(S-a)および(S-b)中、rは2~500、好ましくは6~300、特に好ましくは10~100の整数を示す。前記式(S-c)および(S-d)中、sおよびtはそれぞれ1以上の整数を示す。r、sおよびtは、前記アルミノキサンが、用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持できるように、選択される。
前記固体状アルミノキサン化合物は、従来公知のオレフィン重合触媒用担体と異なり、シリカやアルミナなどの無機固体成分、および、ポリエチレンやポリスチレンなどの有機系ポリマー成分を含まず、アルキルアルミニウム化合物を主たる成分として固体化したものである。「固体状」とは、アルミノキサン成分が、用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持することである。より具体的には、後述のように前記成分(A)とアルミノキサン成分とを接触させてオレフィン重合用触媒(例:エチレン重合用触媒)を調製する際、および調製されたオレフィン重合用触媒を用いてオレフィン(例:エチレン)の重合(たとえば懸濁重合)を行う際に、アルミノキサン成分が実質的に固体状態を維持することである。
前記アルミノキサン成分が固体状態であるかどうかは、目視による確認が最も簡便な方法であるが、例えば重合時などは目視による確認が困難である場合が多い。その場合は、例えば重合後に得られた重合体パウダーの性状や反応器への付着状態などから判断することが可能である。逆に、重合体パウダーの性状が良好で、反応器への付着が少なければ、重合環境下において前記アルミノキサン成分の一部が多少溶出したとしてもよい。重合体パウダーの性状を判断する指標としては、嵩密度、粒子形状、表面形状、不定形ポリマーの存在度合いなどが挙げられるが、定量性の観点からポリマー嵩密度が好ましい。前記嵩密度は通常0.01~0.9であり、好ましくは0.05~0.6、より好ましくは0.1~0.5の範囲内である。
前記固体状アルミノキサン化合物の、25℃の温度に保持されたn-ヘキサンに対する溶解割合は、通常0~40モル%、好ましくは0~20モル%、特に好ましくは0~10モル%の範囲にある。
前記溶解割合は、25℃に保持された50mLのn-ヘキサンに固体状アルミノキサン化合物担体2gを加えてから2時間の撹拌を行ない、次いでG-4グラス製フイルターを用いて溶液部を分離し、この濾液中のアルミニウム濃度を測定することにより求められる。従って、溶解割合は用いたアルミノキサン2gに相当するアルミニウム原子の量に対する前記濾液中に存在するアルミニウム原子の割合として決定される。
前記固体状アルミノキサン化合物としては、公知の固体状アルミノキサンを制限なく用いることができ、たとえば国際公開第2014/123212号に記載された固体状ポリアルミノキサン組成物を用いることもできる。公知の製造方法としては、例えば、特公平7-42301号公報、特開平6-220126号公報、特開平6-220128号公報、特開平11-140113号公報、特開平11-310607号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、国際公開第2010/55652号などに記載された製造方法が挙げられる。
前記固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径は、一般に0.01~50,000μm、好ましくは0.1~1,000μm、特に好ましくは1~200μmの範囲にある。固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により粒子を観察し、100個以上の粒子の粒径を測定し、重量平均化することにより求められる。まず、各粒子の粒径dは、粒子像を水平方向、垂直方向それぞれに2本の平行線ではさんで長さを測り、下式により求められる。
粒径d=((水平方向長さ)2+(垂直方向長さ)20.5
次に、固体状アルミノキサン化合物の重量平均粒子径は、上記で求めた粒径dと粒子個数nとを用いて下式により求められる。
平均粒子径=Σnd4/Σnd3
前記固体状アルミノキサン化合物は、比表面積が50~1,000m2/g、好ましくは100~800m2/gであり、細孔容積が0.1~2.5cm3/gであることが望ましい。
前記無機ハロゲン化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2などが挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO42・H2O、α-Zr(HPO42、α-Zr(KPO42・3H2O、α-Ti(HPO42、α-Ti(HAsO42・H2O、α-Sn(HPO42・H2O、γ-Zr(HPO42、γ-Ti(HPO42、γ-Ti(NH4PO42・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3~5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20~3×104Åの範囲について測定される。半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
粘土および粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、いずれも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理や有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これら化合物は単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。また、これら化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分け等の処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記固体状担体(S)として用いられる有機化合物としては、例えば、粒径が10~300μmの範囲にある顆粒状または微粒子状固体などが挙げられる。前記有機化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素原子数が2~14のオレフィンを主成分として生成される重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレン、ジビニルベンゼンを主成分として生成される重合体や反応体、およびそれらの変成体からなる顆粒状または微粒子状固体などが挙げられる。
前記固体状担体(S)としては、成形時の異物防止の観点から、多孔質酸化物が好ましい。
<成分(C)>
オレフィン重合用触媒(X)は、好ましくは、さらに成分(C)を含んでよく、成分(C)は下記一般式(3)~(5)で表される有機金属化合物(c-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)、ならびに、成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
a mAl(ORbnpq ・・・(3)
式(3)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1~15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。
aAlRa 4 ・・・(4)
式(4)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示す。
a rbb st ・・・(5)
式(5)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示し、MbはMg、ZnおよびCdから選ばれ、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。
前記有機金属化合物(c-1)の中では、前記式(3)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;
ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジヒドロフェニルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ-n-ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジイソヘキシルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジシクロヘキシルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ヘプチルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ノニルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド;
ジメチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジイソプロピルアルミニウムメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイドなどのジアルキルアルミニウムアルコキサイド
などが挙げられる。
前記式(4)の例としては、水素化アルミニウムリチウムなどが挙げられ、前記式(5)の例としては、特開2003-171412号公報などに記載されたジアルキル亜鉛化合物などが挙げられ、フェノール化合物などと組合せて用いることもできる。
前記有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサン、例えばメチルアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
前記成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物などを用いることができる。
オレフィン重合用触媒(X)では、助触媒成分としてメチルアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示すだけでなく、固体状担体中の活性水素と反応し助触媒成分を含有した固体担体成分を容易に調製できるため、成分(C)は、少なくとも有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)を含むことが好ましい。
<各成分の使用法および添加順序>
オレフィン重合用触媒(X)は、成分(A)および成分(S)、ならびに任意に成分(C)を不活性炭化水素中で混合し接触させることにより、調製することができる。
各成分を接触させる方法としては、接触の順序に着目すると、例えば、
(i) 成分(S)に成分(A)を接触させる方法
(ii) 成分(S)に成分(C)を接触させ、次いで成分(A)を接触させる方法
(iii) 成分(A)に成分(C)を接触させ、次いで成分(S)を接触させる方法
(iv) 成分(S)に成分(C)を接触させ、次いで成分(A)と成分(C)との混合物を接触させる方法、
(v) 成分(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させ、次いで成分(A)と成分(C)との混合物を接触させる方法
などが挙げられる。成分(C)が複数種用いられる場合は、その成分(C)同士が同一であっても異なっていてもよい。上記の方法のうち(i)、(ii)および(iii)が好ましい。
上記接触順序形態を示した各方法において、成分(S)と成分(C)との接触を含む工程、および成分(S)と成分(A)との接触を含む工程においては、成分(G)を共存させることにより、重合反応中のファウリングが抑制されたり、生成重合体の粒子性状が改善されたりする。成分(G)としては、極性官能基を有する化合物を用いることができ、非イオン性(ノニオン)界面活性剤が好ましく、ポリアルキレンオキサイドブロック、高級脂肪族アミド、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、N-アシルアミノ酸がより好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オレフィン重合用触媒(X)の調製に用いる溶媒としては、不活性炭化水素溶媒が挙げられ、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができる。
成分(C)と成分(S)との接触においては、成分(C)中の反応部位と成分(S)中の反応部位との反応により化学的に結合され、成分(C)と成分(S)との接触物が形成される。成分(C)と成分(S)との接触時間は、通常1分~20時間、好ましくは30分~10時間であり、接触温度は、通常-50~200℃、好ましくは-20~120℃で行われる。成分(C)と成分(S)との初期接触を急激に行うと、その反応発熱や反応エネルギーにより成分(S)が崩壊し、得られる固体触媒成分のモルフォロジーが悪化し、これを重合に用いた場合ポリマーモルフォロジー不良により連続運転が困難になることが多い。そのため、成分(C)と成分(S)との接触初期は、反応発熱を抑制する目的で、より低温で接触させる、または、反応発熱を制御し、初期接触温度を維持可能な速度で反応させることが好ましい。また、成分(C)と成分(S)を接触させ、さらに成分(C)を接触させる場合においても同様である。成分(C)と成分(S)との接触質量比(成分(C)の質量/成分(S)の質量)は、任意に選択できるが、接触質量比が高いほうが、より多くの成分(A)を接触させることができ、固体触媒成分の質量当たりの触媒活性を向上させることができる。
成分(C)と成分(S)の接触質量比[=成分(C)の質量/成分(S)の質量]は、好ましくは0.05~3.0、特に好ましくは、0.1~2.0である。
成分(C)と成分(S)との接触物と、成分(A)とを接触させる際には、接触時間は、通常1分~20時間、好ましくは1分~10時間であり、接触温度は、通常-50~200℃、好ましくは-50~100℃の範囲内である。
成分(C-1)は、成分(C-1)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(C-1)/M]が、通常0.01~100,000、好ましくは0.05~50,000となるような量で用いられる。
成分(C-2)は、成分(C-2)(アルミニウム原子換算)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(C-2)/M]が、通常10~500,000、好ましくは20~100,000となるような量で用いられる。
成分(C-3)は、成分(C-3)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(C-3)/M]が、通常1~10、好ましくは1~5となるような量で用いられる。
なお、成分(C)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP分析法)により求めることができる。エチレン重合には、オレフィン重合用触媒(X)をそのまま用いることができるが、このオレフィン重合用触媒にオレフィンを予備重合させて予備重合触媒(XP)を形成してから用いることもできる。
予備重合触媒(XP)は、オレフィン重合用触媒(X)の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、エチレン等を予備重合させることにより調製することができ、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても実施することができ、また減圧、常圧あるいは加圧下、いずれでも行うことができる。さらに、予備重合によって、固体触媒成分1g当り0.01~1000g、好ましくは0.1~800g、さらに好ましくは0.2~500gの量で予備重合触媒(XP)を生成することが望ましい。
不活性炭化水素溶媒中で生成した予備重合触媒(XP)を懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にエチレンを導入してもよく、また、乾燥させた後エチレンを導入してもよい。
予備重合温度は、-20~80℃、好ましくは0~60℃であり、また予備重合時間は、0.5~100時間、好ましくは1~50時間程度である。予備重合には、好ましくはエチレンを主成分とするオレフィンが用いられる。
予備重合に使用する固体触媒成分の形態としては、既に述べたものを制限無く利用できる。また、必要に応じて成分(C)が用いられ、前記式(3)で示される有機金属化合物(c-1)が好ましく使用される。成分(C)が用いられる場合は、成分(C)は、成分(C)中のアルミニウム原子(Al)と成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比(Al/M)が、0.1~10000、好ましくは0.5~5000となる量で用いられる。
予備重合系におけるオレフィン重合用触媒(X)の濃度は、オレフィン重合用触媒/重合容積比で、通常1~1000グラム/リットル、さらには10~500グラム/リットルであることが望ましい。予備重合時には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、前記の成分(G)を共存させてもよい。
また、予備重合触媒(XP)の流動性改善や重合時のヒートスポット・シーティングやポリマー塊の発生抑制を目的に、予備重合によって一旦生成させた予備重合触媒(XP)に成分(G)を接触させてもよい。
上記成分(G)を接触させる際の温度は、通常-50~50℃、好ましくは-20~50℃であり、接触時間は、通常1分~20時間、好ましくは5分~10時間である。
オレフィン重合用触媒(X)と成分(G)とを接触させるに際して、成分(G)は、オレフィン重合用触媒(X)100質量部に対して、0.1~20質量部、好ましくは0.3~10質量部、より好ましくは0.4~5質量部の量で用いられる。
オレフィン重合用触媒(X)と成分(G)との混合接触は、不活性炭化水素溶媒中で行うことができ、不活性炭化水素溶媒としては、前記と同様のものが挙げられる。
後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(B)の製造方法において、オレフィン重合用触媒(X)として、予備重合触媒(XP)を乾燥させたもの(以下「乾燥予備重合触媒」ともいう。)を用いることができる。予備重合触媒(XP)の乾燥は、通常、得られた予備重合触媒の懸濁液から濾過などにより分散媒である炭化水素を除去した後に行われる。
予備重合触媒(XP)の乾燥は、予備重合触媒(XP)を不活性ガスの流通下、70℃以下、好ましくは20~50℃の範囲の温度に保持することにより行われる。得られた乾燥予備重合触媒の揮発成分量は2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下であることが望ましい。乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、少ないほどよく、特に下限はないが、実用的には0.001質量%である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが通常1~48時間である。
前記乾燥予備重合触媒は、流動性に優れているので、重合反応器へ安定的に供給することができる。また、前記乾燥予備重合触媒を使用すると、気相重合系内に懸濁に用いた溶媒を同伴させずに済むため安定的に重合を行うことができる。
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の製造方法としては、上述したオレフィン重合用触媒(X)の存在下、エチレンを重合(単独重合または共重合)することによりエチレン-α-オレフィン共重合体(B)を得ることが好ましい。オレフィン重合用触媒(X)を用いることで、高い重合活性を持って、成型加工性および機械的強度に優れ、数多くの長鎖分岐を有する低密度のエチレン系重合体を効率的に製造できる。エチレン-α-オレフィン共重合体(B)は、重合体中のエチレン含量が好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上である。
エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の重合方法としては、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できるが、懸濁重合法および気相重合法においては前記予備重合触媒(XP)を用いることが好ましい。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素およびこれらの混合物等が挙げられる。また、液相重合法においては、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
上記オレフィン重合用触媒を用いて、エチレンの重合を行うに際して、オレフィン重合用触媒(X)の成分(A)は、反応容積1リットル当たり、通常1×10-12~1×10-1モル、好ましくは1×10-8~1×10-2モルになるような量で用いられる。また、オレフィン重合用触媒(X)は成分(C)を含むことが好ましく、特に(c-1)中の式(3)に示される有機アルミニウム化合物を含むことがより好ましい。
また、前記予備重合触媒(XP)を用いたエチレンの重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~170℃、特に好ましくは60~170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧~100kgf/cm2、好ましくは常圧~50kgf/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られる重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。一般的に低分子量成分が多くなるほど、重合反応器壁や撹拌翼への付着も多くなり、清掃工程への負荷がかかることにより生産性の低下を招くことがある。重合時には、ファウリング抑制または粒子性状改善を目的として、オレフィン重合用触媒(X)中に成分(G)を共存させることができる。
また、共重合反応にエチレンと共に供給されるα-オレフィンモノマーは、炭素数4~10のα-オレフィンであり、好ましくは炭素数6~10のα-オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーである。炭素数が4~10のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンが挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲でエチレンおよび炭素数4~10のα-オレフィン以外のモノマーを供給してもよく、供給しなくてもよい。
<プロピレン系樹脂組成物(Z)の製造方法>
プロピレン系樹脂組成物(Z)の製造方法としては、上記プロピレン系重合体(A)と上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)とを溶融混練することによって製造してもよいし、または、プロピレン系重合体(A)を造粒したペレットとエチレン-α-オレフィン共重合体(B)のペレットとをドライブレンドすることによって製造してもよい。溶融混練により製造する場合は、連続式押出機や密閉式混練機を用いることができる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の装置を挙げることができる。これらのうち、経済性、処理効率等の観点から一軸押出機及びまたは二軸押出機を用いることが好ましい。
上記溶融混練及びドライブレンドを行う際、上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)に加えて、上記「他の熱可塑性樹脂」をブレンドしてもよい。また、「他の熱可塑性樹脂」に加えて、あるいは、「他の熱可塑性樹脂」に代えて、上記「添加剤」をさらに配合してもよい。
上記「他の熱可塑性樹脂」および上記「添加剤」を加える順序は、特に限定されない。例えば、上記「他の熱可塑性樹脂」および上記「添加剤」を、上記プロピレン系重合体(A)および上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)のうちの一方または両方と同時にブレンドしてもよいし、あるいは、上記プロピレン系重合体(A)と上記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)とを混練してから加えてもよい。
〔成形体、フィルム、および、積層体〕
本発明の成形体、フィルム、および、積層体は、プロピレン系樹脂組成物(Z)を含むことにより、優れた成形性で、機械的強度、低温度でのヒートシール性、耐ブロッキング性に優れる。
本発明の成形体、フィルム、および、積層体は、プロピレン系樹脂組成物(Z)を一般のフィルム成形やシート成形、ブロー成形、インジェクション成形及び押出成形等することにより得られる。フィルム成形では押出ラミネート成形、Tダイフィルム成形、インフレーション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などが挙げられる。
得られたフィルムは単層でも使用することができるが、多層とすることでさらに様々な機能を付与することができる。その場合に用いられる成形法としては、共押出法が挙げられる。一方、押出ラミネート成形やドライラミネート法のような貼合ラミネート成形法によって、共押出が困難な紙やバリアフィルム(延伸フィルム、アルミニウム箔、蒸着フィルム、コ-ティングフィルムなど)との積層ができる。
ブロー成形やインジェクション成形、押出成形での、共押出法による多層化での高機能製品の作製については、フィルム成形と同様に可能である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む成形体としては、各種フィルム、シート、日用雑貨、台所用品、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品等の射出成型物、繊維などが挙げられる。
さらに、本発明のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含むフィルムは、食品、医薬品等の包装用フィルム、プロテクトフィルム、輸液バック、電池用封止材等に用いられるフィルム等に好適に用いることができる。また、上記フィルムは、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンフィルム等の基材と貼り合わせて、多層フィルムとして用いることもできる。
本発明の積層体は、好ましくは、上記プロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を備える。本発明の積層体が備える構成についてさらに詳しく以下に説明する。
積層体を構成するプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層以外の層の例としては、基材層およびバリア層等が挙げられる。
基材層としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のフィルムが挙げられる。前記フィルムは延伸フィルムであることが好ましい。
また基材層としては、紙や、紙の上にポリエチレンをコートした紙基材等も挙げられる。
これらの基材には必要に応じて印刷や各種コーティングが施されてもよい。また、基材層は、必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、紫外線処理、アンカーコート処理等の各種前処理がなされていてもよい。
基材層としては、具体的には上質紙、クラフト紙、薄葉紙、ケント紙等の紙、セロファン、織布、不織布、延伸ナイロン、無延伸ナイロン、特殊ナイロン(MXD6等)、K-ナイロン(ポリフッ化ビニリデンコート)等のナイロン系基材、延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)、無延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)、K-PET(ポリエチレンテレフタレート)、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、K-PP、共押出フィルムPP等のポリプロピレン系基材、LDPEフィルム、LLDPEフィルム、EVAフィルム、延伸LDPEフィルム、延伸HDPEフィルム等が挙げられる。
バリア層として用いられるバリア基材としては、金属箔や、金属または無機物を蒸着した熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられ、またバリア性コーティングを施した熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては延伸ナイロン、延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)等が挙げられる。
基材、バリア基材などの積層体の一部の原料は、バイオマス由来モノマーまたはケミカルリサイクル由来モノマーを含むエチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンを含んでいてもよい。
上記金属箔としては、アルミニウム、金、銀、鉄、銅、ニッケル、これらを主成分とする合金等の金属箔が挙げられる。金属を蒸着した熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムの表面にアルミニウム、ケイ素等の金属等を蒸着したフィルムが挙げられる。無機物を蒸着した熱可塑性樹脂フィルムとしては、シリカやアルミナを蒸着した熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。
バリア性コーティング方法としては、特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコールやポリ塩化ビニリデン等のバリア性樹脂をフィルム表面にコーティングする方法があげられる。
基材層は、たとえば印刷基材として用いられる。一方、バリア基材は、通常、印刷基材としては用いられない。
本発明に係る積層体は、基材層と、上記プロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層とを備えていてもよいし、バリア層と、上記プロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層と、を備えていてもよい。
積層体は、基材層およびバリア層とプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層との間に、接着剤層を備えていてもよい。
接着剤層は、特に制限はなく、公知の接着剤を含む層が挙げられる。
プロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層と基材層とバリア層とを備える積層体の製造方法(以下、単に「積層体の製造方法」ともいう。)としては、基材層またはバリア層に上記プロピレン系樹脂組成物(Z)を押出ラミネートする工程(以下、「押出ラミネート工程」ともいう。)を含むことが好ましい。
押出ラミネート工程は、基材層またはバリア層に上記プロピレン系樹脂組成物(Z)を押出ラミネートして、プロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を積層することができる。
押出ラミネートの条件としては、例えば、ダイス幅500mm、リップ開度0.7mm、押出量50kg/h、温度280℃、引取速度100m/分の条件等が挙げられる。
本発明に係る積層体の具体的な構成は、以下に例示するが、これらに限られない。
以下、積層体の構成中の「PPラミ」とは、プロピレン系樹脂を押出ラミネート成形により積層した層である。各構成中の少なくとも1つのPPラミに用いられるプロピレン系樹脂は、本発明のプロピレン系樹脂組成物(Z)である。
以下、積層体の具体的な構成について例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)は、共押出ラミネートによって酸コポリマーとプロピレン系樹脂とを2層積層した層である。上記酸コポリマーの例としては、エチレン-アクリル共重合体(EAA)、エチレン-メタアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA、EMA、EMMA等)などが挙げられる。
共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)は共押出ラミネートによって酸変性ポリオレフィンとプロピレン系樹脂とを2層積層した層である。酸変性ポリオレフィンの例としては、マレイン酸グラフトポリプロピレン系樹脂や無水マレイン酸グラフトポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
積層体において最内層(延伸基材フィルムの反対側)に使用されるフィルムは、好ましくは熱可塑性樹脂フィルムであり、より好ましくはプロピレン系樹脂フィルムまたはエチレン系樹脂フィルムである。
積層体の層構成の順序は特に制限はなく、例えば、以下の構成を備える積層体が挙げられる。なお、積層体中の少なくとも1つのPPラミは、プロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を備える。
積層体の層構成としては、例えば、延伸ポリプロピレン/PPラミ、
延伸ポリプロピレン/PPラミ(1)/PPラミ(2)、
延伸ポリプロピレン/PPラミ/PEラミ
無延伸ポリプロピレン/PPラミ、
無延伸ポリプロピレン/PPラミ(1)/PPラミ(2)、
延伸PET/接着剤/PPラミ、
延伸PET/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸PET/接着剤/アルミニウム箔/PPラミ、
延伸PET/接着剤/アルミニウム箔/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸PET/接着剤/アルミニウム箔/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸PET/接着剤/アルミニウム蒸着フィルム/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸PET/接着剤/アルミニウム蒸着フィルム/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸PET/接着剤/無機物蒸着フィルム/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸PET/接着剤/無機物蒸着フィルム/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム箔/PPラミ、
延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム箔/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム箔/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム蒸着フィルム/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム蒸着フィルム/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸ナイロン/接着剤/無機物蒸着フィルム/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸ナイロン/接着剤/無機物蒸着フィルム/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸PET/延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム箔/PPラミ、
延伸PET/延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム箔/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸PET/延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム箔/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸PET/延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム蒸着フィルム/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸PET/延伸ナイロン/接着剤/アルミニウム蒸着フィルム/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)、
延伸PET/延伸ナイロン/接着剤/無機物蒸着フィルム/共押出ラミ(酸コポリマー/PPラミ)、
延伸PET/延伸ナイロン/接着剤/無機物蒸着フィルム/共押出ラミ(酸変性ポリオレフィン/PPラミ)
などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[物性測定および評価方法]
以下の実施例等において、プロピレン系重合体(A)、エチレン-α-オレフィン共重合体(B)、および、プロピレン系樹脂組成物(Z)の各種物性は、[発明を実施するための形態]に記載の方法で測定し、[発明を実施するための形態]に記載のない評価方法としては以下の方法を採用した。
[成形性:小試ネックイン比(LNR)]
フィルム成形した際のネックイン量の尺度として、小試ネックイン比(LNR)を測定した。
LNRでは、測定サンプルとして後述する実施例および比較例で調製したペレット用いた。この測定サンプルを小型のスリットダイスを用いてフィルム成形した際のネックイン量と、三井化学株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソンM11)を同様の方法によりフィルム成形した際のネックイン量との比によって決定される。
LNRは、(a)キャピラリーレオメーター、(b)スリットダイス、(c)冷却ロール、エアーノズル、(d)引取ロール、からなる装置により測定される。
(a)キャピラリーレオメーター
キャピラリーレオメーターを上方向から眺めた図面を図6に示し、キャピラリーレオメーターの側面から眺めた図面を図7に示した。キャピラリーレオメーターは溶融樹脂を押し出す役割を果たす。キャピラリーレオメーターは東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1B(バレル系10mmφ)を用い、バレル温度200℃、ピストン速度50mm/分の条件で行った。なお、測定サンプルは1回の測定につき20g使用し、溶融時間は6分間とした。
(b)スリットダイス
スリットダイスを上方向から眺めた図面を図1に示した。スリットダイスを横方向から眺めた図面を図2に示し、スリットダイスのA-B断面図を図3に示した。スリットダイスには、締め込みノズル1、ジョイント部2に接合したアダプターを介して、キャピラリーレオメーターのバレル下に固定され、プレートヒーターを用い200℃(図2の3は、熱電対挿入部を示す)に加熱された。
(c)冷却ロール、エアーノズル
冷却ロール、および、エアーノズルの正面方向の図面を図4に示し、冷却ロール、および、エアーノズルの横方向の図面を図5に示した。冷却ロール4、エアーノズル5はスリットダイス下に設置され、スリットダイス下端と冷却ロール4上端との距離が10mmになるように固定された。エアーノズル長は26cmであり、5.5mm間隔で直径1mmのエアー吹き出し孔が空けられている。冷却エアーの流量は50L/分の条件で行った。
測定サンプルのフィルムを上記装置により成形し、フィルム終端から1.75m~1.95mのフィルムをサンプリングした。測定サンプルのネックイン量(C)は、サンプリングしたフィルムのフィルム幅をスリットダイスのダイス幅(40mm)より差し引いた値により決定される。なお、フィルム幅は任意の3点について測定し、その平均値を用いた。また、三井化学株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソンM11)のネックイン量(D)も上記と同じ方法により決定される。
LNRは、下記式により決定される。LNRの値が小さいほど、成形性に優れるといえる。
LNR=ネックイン量(C)/ネックイン量(D)
〔キャスト成形〕
後述する実施例および比較例で調製したペレットを用いて、キャスト成形フィルムを作製した。株式会社プラスチック工学研究所製のTダイ成膜機(型式:GT―25―A、スクリュー直径:25mm)を用いて、スクリュー回転数80rpm、ダイス温度230℃、ダイス幅230mm、リップ開度1mm、引取速度9m/min、ロール温度40℃の条件下で厚さ30μmのフィルムを作成した。得られたフィルムについて以下の項目を測定した。
[機械的強度:引裂強度]
引裂強度としてエルメンドルフ引裂強度をASTM D1922にしたがい、下記の通り測定した。
軽荷重引裂試験機(東洋精機製作所製:振り子の左端に容量ウェイトB:79gを取り付け)を使用し、フィルムから引裂き方向(MD)に長さ63.5mm(長辺)及び引裂き方向と直角方向(TD)に幅50mm(短辺)の長方形の試験片を切出し、短辺の中央に端から12.7mmの切り込みを入れて複数枚の試験片を用意した。しかる後、試験機の指針(置き針)が20~80の範囲に収まるように、試験片を複数枚重ねて予備テストを行い、測定に用いる試験片の枚数を調整した後、引裂試験を行い、以下の式によりMD方向の引裂強度(N/cm)(エルメンドルフ引裂強度MD)および、TD方向の引裂強度(N/cm)(エルメンドルフ引裂強度TD)を求めた。なお、試験機の測定レンジ(R)は200とした。
T=(A×0.001×9.81×R/100)/(t)
ただし、T:引裂強度(N/cm)、A:指針の指した値(g)、t:重ねた試験片の合計厚み(cm)とした。
エルメンドルフ引裂強度MDおよび、エルメンドルフ引裂強度TDの値が大きいほど、機械的強度に優れるといえる。
[低温ヒートシール強度]
低温度におけるヒートシール性の指標として、シール温度130℃にてヒートシール強度を測定した。測定は、片面加熱バーシーラーを使用し、キャストフィルムのチルロールと接していた側の面同士を重ね合わせたものを試験片としヒートシールを行った。なお、ヒートシール条件は、ヒートシール圧力を2kg/cm2、ヒートシール時間を0.5秒、シールバーの幅を10mmであった。試験片を幅15mmにカットし、ヒートシールした試験片を剥離速度を300mm/分で剥離角度を180度で剥離した。このときの引張強度[N/15mm]を測定した。
130℃ヒートシール強度の値が大きいほど、低温ヒートシール性に優れるといえる。
[耐ブロッキング性]
耐ブロッキング性の指標として、ASTM-D1893にしたがい、ブロッキング試験の測定を行った。
得られたキャストフィルムのチル面同士を2枚重ねた試験片に、50℃で、20kg荷重をかけ、3日間エージング)した。その後、試験片を200mm幅に切り、23℃、200mm/分で引き離す際のブロッキング係数を測定した。
ブロッキング係数が小さいほど、耐ブロッキング性に優れるといえる。
<予備重合触媒(XP-1)の合成>
内容積270Lの撹拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、固体状担体(S)として、富士シリシア株式会社製シリカ(平均粒子径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃焼成)10kgを77Lのトルエンに懸濁させた後0~5℃に冷却した。この懸濁液に成分(C)として、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mol/L)20.4Lを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0~5℃に保った。引き続き0~5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95~100℃まで昇温して、引き続き95~100℃で4時間反応させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量58.0Lのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:248.0g/L、Al濃度:1.21mol/Lであった。
次いで、充分に窒素置換した内容積114Lの撹拌機付き反応器に、上記で得られたトルエンスラリーを6.1Lおよびトルエン21.9Lを装入し、遷移金属化合物(ジメチルシリレン(2-インデニル)(4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド[特開2019-059933号公報記載の方法によって合成した。])の8mMトルエン溶液を5.4L加え、系内温度20~25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて2回洗浄した後、全量30.9Lのスラリーを調製した。得られたスラリーを10~15℃に調整しながら、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.92Mヘキサン溶液を3.1L添加し、エチレンガスを0.74kg/hrの流量で供給を開始し、1-ヘキセンを34.3mL添加した後昇温を開始し、系内温度32~38℃に調整しながら、1時間ごとに計5回、1-ヘキセンを34.3mL添加し、エチレン供給を開始してから6時間後にエチレン供給量が4.5kgに到達したところで、エチレン供給を停止した。その後系内を充分に窒素置換し、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、全量21.9Lのスラリーを調製した。得られたスラリーを35~40℃で維持しながら、ラウリルジエタノールアミン(花王株式会社製)の10g/Lヘキサン溶液を6.1L添加し、2時間接触させた。得られたスラリーを全量、内容積43Lの撹拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下で挿入した後、乾燥機内を約60分かけて-68kPaGまで減圧し、-68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥しヘキサンならびに予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。さらに-100kPaGまで減圧し、-100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、予備重合触媒(XP-1)6.2kgを得た。得られた予備重合触媒(XP-1)の一部を採取し、組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たりZr原子が0.56mg含まれていた。
<エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の製造>
[製造例1]
(エチレン-α-オレフィン共重合体(B-1)の製造)
流動層型気相重合反応器を用いた気相重合プロセスによりエチレン系重合体((エチレン-α-オレフィン共重合体(B-1))の製造を行った。反応器に予め平均粒子径900μmの球状のエチレン重合体粒子24kgを導入し、窒素を供給して、流動床を形成させた後、表8-1に示す重合条件にて定常状態になるようにエチレン、水素、1-ヘキセン、予備重合触媒、エレクトロストリッパーEA、および、ケミスタット2500などを連続的に供給した。重合反応物は反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン系重合体のパウダーを得た。
得られたエチレン系重合体のパウダーに、耐熱安定剤としてスミライザーGP(住友化学社製)850ppm、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)210ppmを加え、株式会社池貝社製の二軸同方向46mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてペレットを作製した。
[製造例2~21]
(エチレン-α-オレフィン共重合体(B-2)~(B-21)の製造)
重合条件を表8-2に記載のとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、エチレン系重合体(B-2)~(B-21)のパウダーを得た。得られたパウダーを製造例1で得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-1)と同様にして、ペレットを作製した。
<重合体の物性測定>
[プロピレン系重合体(A-1)]
プロピレン系重合体(A-1)として、株式会社プライムポリマー製のY―2045GPを用いた。プロピレン系重合体(A-1)について、物性測定を行った。測定結果を表9に示す。
[プロピレン系重合体(A-2)]
プロピレン系重合体(A-2)として、株式会社プライムポリマー製のF327を用いた。プロピレン系重合体(A-2)について、物性測定を行った。測定結果を表9に示す。
[エチレン-α-オレフィン共重合体(B-1)]
上記で得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った。測定結果を表10に示す。
[エチレン-α-オレフィン共重合体(B-2)~(B-21)]
上記で作製したペレットを用いて、物性測定を行った。測定結果を表10に示す。
[エチレン系重合体(B-22)]
エチレン系重合体(B-22)として高圧法低密度ポリエチレン(旭化成株式会社製のサンテック-LD「L1850A」)を用いた。エチレン系重合体(B-22)の測定結果を表10に示す。
<プロピレン系樹脂組成物(Z)の製造>
[実施例1]
上記で作製したプロピレン系重合体(A-1)のペレットを85質量%と、上記で作製したエチレン-α-オレフィン共重合体(B-2)のペレット15質量%と、を撹拌混合し、得られた混合物を東芝機械株式会社製の二軸押出機(TEM35BS)を用いて下記条件にて溶融混練してストランドを得た。
型式:TEM35BS(35mm二軸押出機)
スクリュー回転数:200rpm
スクリーンメッシュ:#200
樹脂温度:210℃
得られたストランドを水冷後ペレタイザーにて切断することにより、プロピレン系樹脂組成物(Z)のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(Z)のペレットについて、上述のLNR測定およびキャスト成形方法に従いフィルムを作製した。得られたフィルムについて上記各種評価を行った。評価結果を表11-1、および、表12にそれぞれ示す。
[実施例2]
上記で作製したプロピレン系重合体(A-1)のペレットを75質量%と、上記で作製したエチレン-α-オレフィン共重合体(B-2)のペレット25質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物(Z)のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(Z)のペレットについて、上述のLNR測定およびキャスト成形方法に従いフィルムを作製した。得られたフィルムについて上記各種評価を行った。評価結果を表11-1および、表12にそれぞれ示す。
[実施例3]
プロピレン系重合体(A-1)のペレットを85質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-11)のペレット15質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定およびキャスト成形方法に従いフィルムを作製した。得られたフィルムについて上記各種評価を行った。評価結果を表11-1、および、表12にそれぞれ示す。
[実施例4]
プロピレン系重合体(A-1)のペレットを75質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-11)のペレット25質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定およびキャスト成形方法に従いフィルムを作製した。得られたフィルムについて上記各種評価を行った。評価結果を表11-1、および、表12にそれぞれ示す。
[比較例1]
プロピレン系重合体(A-1)のペレットを85質量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体(B-22)のペレット15質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定およびキャスト成形方法に従いフィルムを作製した。得られたフィルムについて上記各種評価を行った。評価結果を表11-1、および、表12にそれぞれ示す。
[比較例2]
プロピレン系重合体(A-1)のペレットについて、上述のLNR測定およびキャスト成形方法に従いフィルムを作製した。得られたフィルムについて上記各種評価を行った。評価結果を表11-1、および、表12にそれぞれ示す。
[実施例6]
プロピレン系重合体(A-2)のペレットを85質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-15)のペレット15質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定を行った。評価結果を表11-2に示す。
[実施例7]
プロピレン系重合体(A-2)のペレットを75質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-15)のペレット25質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定を行った。評価結果を表11-2に示す。
[実施例8]
プロピレン系重合体(A-2)のペレットを85質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-11)のペレット15質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定を行った。評価結果を表11-2に示す。
[実施例9]
プロピレン系重合体(A-2)のペレットを75質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-11)のペレット25質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定を行った。評価結果を表11-2に示す。
[実施例10]
プロピレン系重合体(A-2)のペレットを75質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-2)のペレット25質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、上述のLNR測定を行った。評価結果を表11-2に示す。
[比較例3]
プロピレン系重合体(A-2)のペレットを85質量%と、得られたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-22)のペレット15質量%とを撹拌混合し、得られた混合物から実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、LNR測定を行った。評価結果を表11-2に示す。
[比較例4]
プロピレン系重合体(A-2)のペレットについて、上述のLNR測定を行った。評価結果を表11-2に示す。
表11-1、表11-2および表12中、「‐」は、該当する成分を含まないことを意味している。比較例1および比較例3に用いたエチレン-α-オレフィン共重合体(B-22)は高圧法低密度ポリエチレンであり、MT/η*が1.20×10-4以上2.90×10-4以下の範囲外であった。
表11-1と表12に示されるとおり、実施例1~4の本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)は、比較例1および比較例2のプロピレン系樹脂組成物よりも成形性に優れ、また、実施例1~4の本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)より得られたフィルムは、比較例1および比較例2のプロピレン系樹脂組成物から得られたフィルムに比べて、機械的強度、低温でのヒートシール強度および、耐ブロッキング性のバランスに優れることが分かる。
また、実施例1~4の本発明に係るプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を備える作積層体は、比較例1および比較例2のプロピレン系樹脂組成物より作製された積層体に比べて、機械的強度、低温でのヒートシール強度および、耐ブロッキング性のバランスに優れることが分かる。
1:締め込みノズル、2:ジョイント部、3:熱電対挿入部、4:冷却ロール、5:エアーノズル

Claims (9)

  1. 230℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR(230))が1.0g/10分以上100g/10分以下のプロピレン系重合体(A)と、
    エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(1)~(4)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(B)と、
    を含み、
    前記プロピレン系重合体(A)の質量分率(WA)が50質量%以上95質量%以下であり、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)の質量分率(WB)が5質量%以上50質量%以下である(ただし、WAとWBとの合計を100質量%とする。)プロピレン系樹脂組成物(Z)。
    (1)密度が890kg/m3以上950kg/m3以下の範囲にある。
    (2)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR(190))が0.1g/10分以上15.0g/10分以下の範囲にある。
    (3)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MT/η*(g/P)〕が1.20×10-4以上2.90×10-4以下の範囲にある。
    (4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)が、下記関係式(Eq-1)を満たす。
    0.01×10-13×Mw3.4≦η0≦2.5×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1)
  2. 前記プロピレン系重合体(A)が、示差走査熱量測定(DSC)で測定した融点が100~150℃であり、
    プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンの少なくとも一方と、を共重合して得られる重合体であり、
    前記エチレン-α-オレフィン共重合体(B)がさらに下記要件(5)~(7)を満たす、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)。
    (5)1H-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計(個/1000C)が0.1以上1.0以下の範囲にある。
    (6)示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在する。
    (7)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-2)を満たす。
    0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.20×10-4×Mw0.776 ・・・(Eq-2)
  3. 熱可塑性樹脂(ただし、前記プロピレン系重合体(A)およびエチレン-α-オレフィン共重合体(B)を除く。)をさらに含む、請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)。
  4. 請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む成形体。
  5. 請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含むフィルム。
  6. 請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を有する多層フィルム。
  7. 請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を備える積層体。
  8. 請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を有し、さらに基材層を有する積層体。
  9. 請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物(Z)を含む層を有し、さらにバリア層を有する積層体。
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