JP2024042990A - 電縫鋼管の端部の変形予測方法及び変形予測装置、並びに電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法及び位置調整装置 - Google Patents

電縫鋼管の端部の変形予測方法及び変形予測装置、並びに電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法及び位置調整装置 Download PDF

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Abstract

【課題】切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する電縫鋼管の端部の変形予測予測装置等を提供する。【解決手段】変形予測装置100は、サイザーロール1と切断機2との間において、電縫鋼管Pの周方向に沿って配置された複数のプローブコイル10と、各プローブコイルで測定した誘起電圧に基づき、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する信号処理手段20とを備える。複数のプローブコイルは、電縫鋼管の周方向に作用する磁界によって生じる第1誘起電圧と、軸方向に作用する磁界によって生じる第2誘起電圧とを測定し、第1誘起電圧、第2誘起電圧から電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分VC、VLをそれぞれ抽出し、これらの積VCVLの標準偏差σCLを算出し、標準偏差σCLと、予め記憶された標準偏差σCLと変形度合いとの第1相関関係と、を用いて、変形度合いを予測する。【選択図】 図1

Description

本発明は、軸方向に搬送される電縫鋼管の外径をサイザーロールで調整した後、所定の長さ毎に切断した後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する電縫鋼管の端部の変形予測方法及び変形予測装置、並びに予測した切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いに基づき、サイザーロールの位置を調整する電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法及び位置調整装置に関する。
電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管、ERW鋼管ともいう)は、公知のように、造管ラインにおいて、コイルから巻き出された素材(鋼板)をロールで管状に成形し、管状に成形された素材の両エッジを突き合わせて溶接(電気抵抗溶接)することで製造される。この電気抵抗溶接は、高周波電力が印加されたインダクションコイルを用いて、素材の両エッジに渦電流を生成し、この渦電流によって加熱(誘導加熱)された素材の両エッジを孔型ロールで圧接する方法である。
上記のようにして溶接された電縫鋼管は、軸方向(長手方向)に搬送され、複数段のサイザーロールで所望する外径に調整された後、所望する所定の長さ毎に切断されて、製品としての電縫鋼管が製造される。
上記サイザーロールの位置(サイザーロールの回転軸に直交する方向の位置)は、電縫鋼管の外径の変形、特に肉厚の薄い電縫鋼管の場合には、電縫鋼管の残留応力の不均一性に起因して、切断後の電縫鋼管の端部(軸方向端部)における外径の変形を生じさせる要因になることが知られている(例えば、特許文献1の段落0003参照)。
このため、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形を十分に抑制するため、サイザーロールを適切な位置に調整することは、端部の不良品が大量発生することを防止する上で、電縫鋼管を製造する際の重要な品質管理項目である。
例えば、特許文献1には、サイザー工程における、最終段のサイザーロールを4分割以上として、各ロールの底径を鋼管径の3倍以上のロール径とし、かつ、各ロールの底径は等径とし、サイザーロールは無駆動にて、0.05から0.5%以下の絞り率を用いて、長手方向、周方向の残留応力の鋼管の周方向分布を均一にすることを特徴とする真円度の優れた電縫鋼管の製造方法が提案されている。
特許文献1に記載の方法は、サイザー工程よりも前工程(例えば、素材の管状への成形工程)での各種設定や素材の材質等によって変わり得る電縫鋼管の残留応力を実際に測定し、その測定値に応じてサイザーロールの位置を調整する方法ではない(残留応力に関わらず、0.05~0.5%の範囲内の固定の絞り率を設定する方法である)ため、残留応力に起因して発生する切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形を十分に抑制できないおそれがある。
このため、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形を十分に抑制するには、電縫鋼管の残留応力を実際に測定し、その測定値に応じてサイザーロールの位置を調整することが考えられる。
例えば、特許文献2には、超音波を用いて被測定材料の残留応力を測定する方法が提案されている。
特許文献2に記載の方法は、被測定材料の内部に向けて発振器より超音波を発振し、被測定材料からの反射波を受振器にて受振しつつ、超音波の発振位置を少しずつ摺動させ、受振した反射波が最大値をとる方向を測定することにより、被測定材料の残留応力を算出する方法である(特許文献2の請求項1等)。
特許文献2に記載の方法は、被測定材料が静止していることが前提の方法であるため、軸方向に搬送される電縫鋼管の残留応力を測定するのに用いることは困難である。
また、特許文献3には、ショットピーニングを施した鋼材を検査対象として、そのショットピーニング処理面の残留応力をコイルを用いて電磁気的に測定する方法が提案されている。
特許文献3に記載の方法は、検査対象と同材質で且つ残留応力の発生状態が判明しているサンプルのショットピーニング処理面上、検査対象のショットピーニング処理面上、及び、検査対象と同材質で且つショットピーニング処理がされていない基準材の表面上のそれぞれに、検査回路に設けられたコイルを配置し、検査回路に周波数を変化させながら交流信号を入力して、検査回路における電圧と電流の位相角変化の周波数応答特性を測定し、これらを比較することで、検査対象におけるショットピーニング処理面の残留応力を算出する方法である(特許文献3の請求項1等)。
特許文献3に記載の方法も、検査対象が静止していることが前提の方法であるため、軸方向に搬送される電縫鋼管の残留応力を測定するのに用いることは困難である。
さらに、特許文献4には、測定対象物の残留応力を測定可能なX線回折装置が提案されている。
特許文献4に記載の装置は、測定対象物に対する装置の配置条件を変更して、第1~第3回目の測定を行い、各回で測定した回折環の形状の測定結果に基づき、互いに直交する3軸の残留応力を算出するものである(特許文献4の段落0010~0013)。
特許文献4に記載の装置も、検査対象が静止していることが前提の方法であるため、軸方向に搬送される電縫鋼管の残留応力を測定するのに用いることは困難である。
以上のように、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形を十分に抑制するため、電縫鋼管の残留応力を実際に測定し、その測定値に応じてサイザーロールを適切な位置に調整する方法について、従来は提案されていない。
特許第2543283号公報 特許第3396287号公報 特許第5004519号公報 特許第5728753号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する電縫鋼管の端部の変形予測方法及び変形予測装置、並びに予測した切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いに基づきサイザーロールの位置を調整する電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法及び位置調整装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは、電縫鋼管の残留応力に起因した磁性変化を検出するため、電縫鋼管の周方向に沿って電縫鋼管の外面に対向して複数のプローブコイルを配置し、このプローブコイルを用いて電縫鋼管に磁界を作用させ、この磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧を測定することに着眼した。
そして、本発明者らは、プローブコイルによって作用させる磁界の方向や、プローブコイルによって測定した誘起電圧と、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いとの関係を鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)各プローブコイルによって、電縫鋼管の周方向及び軸方向に磁界を作用させる(周方向に延びる磁界と、軸方向に延びる磁界とを作用させる)。
(2)各プローブコイルによって、電縫鋼管の周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧と、電縫鋼管の軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧とを測定する。
(3)第1誘起電圧のうち電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vと、第2誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとを抽出する。
(4)同一測定点(電縫鋼管の同じ周方向位置)における誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出する。この標準偏差σCLは、電縫鋼管の残留応力の不均一性を表す指標になると考えられる。
(5)上記の標準偏差σCLは、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いと高い相関を有する。切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いとしては、例えば、切断後の電縫鋼管の端部の縦楕円度の変化量(=切断後の電縫鋼管の端部の縦楕円度-切断後の電縫鋼管の中央部(軸方向中央部)の縦楕円度)を例示できる。
(6)したがって、予め上記の相関関係を取得しておけば、上記の標準偏差σCLと、上記の相関関係とを用いて、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測することが可能である。
本発明は、上記本発明者らの知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、軸方向に搬送される電縫鋼管の外径をサイザーロールで調整した後、所定の長さ毎に切断する前に、前記電縫鋼管の周方向に沿って前記電縫鋼管の外面に対向配置された複数のプローブコイルを用いて、前記電縫鋼管の周方向及び軸方向に磁界を作用させ、前記磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧を測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定した誘起電圧に基づき、切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する予測ステップと、を有し、前記測定ステップでは、前記複数のプローブコイルが配置された前記電縫鋼管の周方向に沿った複数箇所において、前記電縫鋼管の周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧と、前記電縫鋼管の軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧とを測定し、前記予測ステップでは、前記第1誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vと、前記第2誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとを抽出し、前記誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出し、前記標準偏差σCLと、予め取得した前記標準偏差σCLと前記変形度合いとの第1相関関係と、を用いて、前記変形度合いを予測する、ことを特徴とする電縫鋼管の端部の変形予測方法を提供する。
本発明に係る変形予測方法によれば、測定ステップにおいて、複数のプローブコイルが配置された電縫鋼管の周方向に沿った複数箇所において、各プローブコイルを用いて、電縫鋼管の周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧と、電縫鋼管の軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧とを測定する。
そして、予測ステップにおいて、第1誘起電圧のうち電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vと、第2誘起電圧のうち電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとを抽出し、誘起電圧成分Vと誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出する。すなわち、電縫鋼管の周方向に沿った複数箇所で誘起電圧成分Vと誘起電圧成分Vとを抽出するため、これらの積Vも電縫鋼管の周方向に沿った複数箇所で算出され、この複数箇所の積Vの標準偏差σCLを算出可能である。
前述のように、本発明者らの知見によれば、標準偏差σCLは、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いと高い相関を有するため、この標準偏差σCLと変形度合いとの第1相関関係を予め取得しておけば、予測ステップにおいて、標準偏差σCLと第1相関関係とを用いて、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測することが可能である。本発明に係る変形予測方法は、電縫鋼管の残留応力を直接測定する方法でないものの、残留応力の不均一性を表す指標になる標準偏差σCLを実際に測定(算出)し、これを用いて切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測するため、精度良く予測することが可能である。
ここで、電縫鋼管の素材である鋼板の引張強度Tは、鋼板の材質に応じて変化し得るパラメータである。一方、電縫鋼管の残留応力も、素材である鋼板の材質に応じて変化し得るパラメータである。したがって、電縫鋼管の残留応力は、素材である鋼板の引張強度Tに応じて変化し得るパラメータであるといえる。
このため、電縫鋼管の造管ラインにおいて、種々の材質の鋼板を素材として電縫鋼管を製造する場合には、鋼板の引張強度Tを考慮して切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測すると、より一層精度の良い予測が可能になることが期待できる。本発明者らの知見によれば、標準偏差σCLに電縫鋼管の素材である鋼板の引張強度TのN乗(Nは1以上の自然数)を乗算した値が、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いと高い相関を有することが判った。
したがって、本発明に係る変形予測方法において、好ましくは、前記予測ステップでは、前記標準偏差σCLと、予め取得した前記標準偏差σCLと前記変形度合いとの第1相関関係と、を用いて前記変形度合いを予測することに代えて、前記標準偏差σCLに前記電縫鋼管の素材である鋼板の引張強度TのN乗(Nは1以上の自然数)を乗算した値を指標として算出し、前記指標と、予め取得した前記指標と前記変形度合いとの第2相関関係と、を用いて、前記変形度合いを予測する。
上記の好ましい方法によれば、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを、より一層精度良く予測することが可能である。
本発明に係る変形予測方法において、前記予測ステップでは、例えば、前記第1誘起電圧を位相解析することで、前記第1誘起電圧を、前記プローブコイルのリフトオフの変化によって得られる誘起電圧成分と、当該誘起電圧成分と位相が直交する誘起電圧成分とに分解し、前記直交する誘起電圧成分を、前記誘起電圧成分Vとして抽出し、前記第2誘起電圧を位相解析することで、前記第2誘起電圧を、前記プローブコイルのリフトオフの変化によって得られる誘起電圧成分と、当該誘起電圧成分と位相が直交する誘起電圧成分とに分解し、前記直交する誘起電圧成分を、前記誘起電圧成分Vとして抽出することが可能である。
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記電縫鋼管の端部の変形予測方法を用いて前記サイザーロールの位置を調整する電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法であって、前記変形予測方法で予測した切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いに基づき、前記変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、前記サイザーロールの位置を調整する調整ステップを有する、ことを特徴とする電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法としても提供される。
本発明に係る位置調整方法によれば、調整ステップにおいて、予測した切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、サイザーロールの位置を調整するため、端部の不良品が大量発生することを防止可能である。
また、前記課題を解決するため、本発明は、軸方向に搬送される電縫鋼管の外径を調整するサイザーロールと、外径調整後の前記電縫鋼管を所定の長さ毎に切断する切断機との間において、前記電縫鋼管の周方向に沿って前記電縫鋼管の外面に対向配置され、前記電縫鋼管の周方向及び軸方向に磁界を作用させ、前記磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧を測定する複数のプローブコイルと、前記複数のプローブコイルで測定した誘起電圧に基づき、前記切断機で切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する信号処理手段と、を備え、前記複数のプローブコイルは、前記複数のプローブコイルが配置された前記電縫鋼管の周方向に沿った複数箇所において、前記電縫鋼管の周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧と、前記電縫鋼管の軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧とを測定し、前記信号処理手段は、前記第1誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vと、前記第2誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとを抽出し、前記誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出し、前記標準偏差σCLと、予め記憶された前記標準偏差σCLと前記変形度合いとの第1相関関係と、を用いて、前記変形度合いを予測する、ことを特徴とする電縫鋼管の端部の変形予測装置としても提供される。
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記電縫鋼管の端部の変形予測装置と、前記変形予測装置で予測した切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いに基づき、前記変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、前記サイザーロールの位置を調整する調整手段と、を備える、ことを特徴とする電縫鋼管用サイザーロールの位置調整装置としても提供される。
本発明によれば、切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測可能である。また、予測した切断後の電縫鋼管の端部における外径の変形度合いに基づきサイザーロールの位置を調整することで、切断後の電縫鋼管の端部の不良品が大量発生することを防止可能である。
本発明の一実施形態に係る電縫鋼管の端部の変形予測装置の概略構成を模式的に示す図である。 図1に示す回路部21の校正手順を模式的に説明する説明図である。 本発明者らが検討し算出した標準偏差σODと縦楕円度の変化量との相関関係を示す図である。 本発明者らが知見を得た試験の結果を示す図である。 第1相関関係及び標準偏差σC/Lと縦楕円度の変化量との相関関係を示す図である。 図5に示す第1相関関係と同じデータを用いて算出した第2相関関係を示す図である。 図1に示すサイザーロール1の位置調整の具体例を説明する説明図である。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る電縫鋼管の端部の変形予測装置、及び、この変形予測装置を用いた電縫鋼管用サイザーロールの位置調整装置について説明する。
<電縫鋼管の端部の変形予測装置>
最初に、電縫鋼管の端部の変形予測装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電縫鋼管の端部の変形予測装置(以下、適宜、単に「変形予測装置」という)の概略構成を模式的に示す図である。図1(a)は、変形予測装置全体の概略構成を模式的に示す側面図(電縫鋼管の軸方向に直交する水平方向から見た図)である。図1(b)は、変形予測装置が備えるプローブコイルのうち、第1プローブコイルの概略構成を模式的に示す正面図(電縫鋼管の軸方向から見た図)である。図1(c)は、変形予測装置が備えるプローブコイルのうち、第2プローブコイルの概略構成を模式的に示す正面図である。図1に示すX方向は電縫鋼管Pの軸方向(長手方向)であり、Y方向は電縫鋼管Pの軸方向に直交する水平方向であり、Z方向は上下方向である。なお、図1に示す各構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る変形予測装置100は、軸方向(X方向)に搬送される電縫鋼管Pの外径を調整するサイザーロール1と、外径調整後の電縫鋼管Pを所定の長さ毎に切断する切断機2との間において、電縫鋼管Pの周方向(X方向周りの方向)に沿って電縫鋼管Pの外面に対向配置され、電縫鋼管Pの周方向及び軸方向に磁界を作用させ、磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧を測定する複数のプローブコイル10と、複数のプローブコイル10で測定した誘起電圧に基づき、切断機2で切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いを予測する信号処理手段20と、を備える。また、本実施形態に係る変形予測装置100は、好ましい構成として、電縫鋼管Pの外面に接触し、電縫鋼管Pの搬送距離(図1に示す例では、切断後の電縫鋼管Pの搬送距離)に応じたパルス数のパルス信号を出力するエンコーダ30を備える。
以下、プローブコイル10及び信号処理手段20について、具体的に説明する。
[プローブコイル10]
本実施形態に係る変形予測装置100は、プローブコイル10として、電縫鋼管Pの周方向に沿って配置された第1プローブコイル11と、電縫鋼管Pの周方向に沿って配置された第2プローブコイル12と、を備えている。図1(b)及び図1(c)に示すように、本実施形態では、それぞれ4個の第1プローブコイル11(11a~11d)及び第2プローブコイル12(12a~12d)が、電縫鋼管Pの最上部にある溶接部PWの位置を0°の位置として、反時計回りに45°、135°、225°、315°の各位置(電縫鋼管Pの中心と溶接部PWとを結ぶ直線に対して、電縫鋼管Pの中心と各位置とを結ぶ直線の成す角度が反時計回りに45°、135°、225°、315°)に、90°の等ピッチで配置されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、2~3個又は5個以上のプローブコイル10(第1プローブコイル11及び第2プローブコイル12)を電縫鋼管Pの周方向に沿って配置してもよいし、配置ピッチを必ずしも等ピッチにしなくてもよい。
各プローブコイル10のリフトオフ(各プローブコイル10と電縫鋼管Pの外面とのギャップ)は、公知の追従機構(図示せず)によって一定(例えば、約1mm)に保たれている。
なお、図1(a)に示す例では、第1プローブコイル11を電縫鋼管Pの搬送方向上流側に配置し、第2プローブコイル12を電縫鋼管Pの搬送方向下流側に配置しているが、本発明はこれに限られるものではなく、第2プローブコイル12を電縫鋼管Pの搬送方向上流側に配置し、第1プローブコイル11を電縫鋼管Pの搬送方向下流側に配置する構成を採用することも可能である。
第1プローブコイル11は、電縫鋼管Pの周方向に磁界を作用させ、電縫鋼管Pの周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧を測定するプローブコイルである。第2プローブコイル12は、電縫鋼管Pの軸方向に磁界を作用させ、電縫鋼管Pの軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧を測定するプローブコイルである。
図1(b)に示すように、第1プローブコイル11は、正面視コの字状のヨーク111と、ヨーク111に巻回された励磁コイル112と、ヨーク111に巻回された検出コイル113と、を具備する。励磁コイル112に交流電流を通電させることで、ヨーク111の両端を通る方向(すなわち、電縫鋼管Pの周方向)に交流の磁界が形成され、この磁界が電縫鋼管Pに作用する。そして、この磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧(第1誘起電圧)が、検出コイル113で検出されることになる。本実施形態では、第1誘起電圧は、4個の第1プローブコイル11a~11dでそれぞれ測定される。
同様に、図1(c)に示すように、第2プローブコイル12は、正面視コの字状のヨーク121と、ヨーク121に巻回された励磁コイル(図1(c)には図示せず)と、ヨーク121に巻回された検出コイル123と、を具備する。第2プローブコイル12の励磁コイルに交流の電流を通電させることで、ヨーク121の両端を通る方向(すなわち、電縫鋼管Pの軸方向であるX方向)に交流の磁界が形成され、この磁界が電縫鋼管Pに作用する。そして、この磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧(第2誘起電圧)が、検出コイル123で検出されることになる。本実施形態では、第2誘起電圧は、4個の第1プローブコイル12a~12dでそれぞれ測定される。
なお、本実施形態の第1プローブコイル11及び第2プローブコイル12は、互いに同じ構成のプローブコイルであり、ヨーク111の両端が電縫鋼管Pの周方向に沿うように配置したものを第1プローブコイル11として用い、ヨーク121の両端が電縫鋼管Pの軸方向に沿うように配置したものを第2プローブコイル12として用いている。ただし、本発明は、必ずしもこれに限られるものではなく、第1プローブコイル11及び第2プローブコイル12として、互いに異なる構成のプローブコイルを用いることも可能である。
[信号処理手段20]
本実施形態の信号処理手段20は、回路部21と、演算部22と、を具備する。
回路部21は、発振器211、ブリッジ回路212、増幅器213、同期検波回路214、位相回転器215及びA/D変換器216を有する。
発振器211は、計8個のプローブコイル10(4個の第1プローブコイル11及び4個の第2プローブコイル12)が具備する励磁コイルにそれぞれ接続されており、発振器211から出力された発振信号(交流電流)が各励磁コイルに印加される。これにより、各プローブコイル10に磁界が形成され、この磁界が電縫鋼管Pに作用する。
なお、発振器211は、プローブコイル10と同じ構成を有する計8個のバランス調整用のプローブコイルRC(図1では図示省略)の励磁コイルにも接続されており、発振器211から出力された発振信号(交流電流)が各プローブコイルRCの励磁コイルに印加されることで、各プローブコイルRCに磁界が形成されることになる。なお、プローブコイルRCは、後述の回路部21の校正時だけではなく、電縫鋼管Pの誘起電圧を測定する際にも接続されている。
ブリッジ回路212は、プローブコイル10毎に設けられ(すなわち、本実施形態では、8個設けられ)ており、各ブリッジ回路212に各プローブコイル10と各プローブコイルRCとが接続されている。具体的には、ブリッジ回路212における隣り合う2辺に、プローブコイル11の検出コイル113及びプローブコイルRCの検出コイル(又は、プローブコイル12の検出コイル123及びプローブコイルRCの検出コイル)が相互に直列状態となるように接続されている。後述のように、プローブコイルRCは、空芯状態(プローブコイルRCに電縫鋼管Pの外面を対向させない状態)で、磁界が形成され、誘起電圧が検出されるものであるため、同じくプローブコイル10が空芯状態(プローブコイル10に電縫鋼管Pの外面を対向させない状態)のときに、ブリッジ回路212が平衡状態となる(すなわち、ブリッジ回路212からの出力が0となる)ように、ブリッジ回路212が校正されている。
換言すれば、ブリッジ回路212からは、プローブコイル10で測定した誘起電圧(第1誘起電圧及び第2誘起電圧)から、空芯状態でのプローブコイル10のインピーダンスの影響が相殺された誘起電圧が出力されることになる。
増幅器213は、プローブコイル10毎に設けられ(すなわち、本実施形態では、8個設けられ)ており、ブリッジ回路212から出力された誘起電圧(空芯状態の影響が相殺された第1誘起電圧及び第2誘起電圧)を増幅し、同期検波回路214に出力する。
同期検波回路214は、入力された誘起電圧(増幅後の第1誘起電圧及び第2誘起電圧)を、発振器211から出力された発振信号(プローブコイル10の励磁コイルに印加されるものと同じ発振信号)に基づき同期検波し、互いに位相が直交する2つの誘起電圧成分に分解して、位相回転器215に出力する。具体的には、同期検波回路214は、入力された第1誘起電圧を第1プローブコイル11のリフトオフの変化によって得られる誘起電圧成分と、当該誘起電圧成分と位相が直交し、電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとに分解して、位相回転器215に出力する。また、同期検波回路214は、入力された第2誘起電圧を第2プローブコイル12のリフトオフの変化によって得られる誘起電圧成分と、当該誘起電圧成分と位相が直交し、電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとに分解して、位相回転器215に出力する。
位相回転器215は、入力された互いに直交する2つの誘起電圧成分の位相を回転させて、一方の誘起電圧成分がX軸の値として表示され、他方の誘起電圧成分がX軸に直交するY軸の値として表示されるように、XY2軸平面上に誘起電圧成分を表示する。具体的には、本実施形態の位相回転器215は、第1誘起電圧については、誘起電圧成分VをX軸の値として表示するように調整されている。同様に、本実施形態の位相回転器215は、第2誘起電圧については、誘起電圧成分VをX軸の値として表示するように調整されている。
なお、誘起電圧成分V及び誘起電圧成分VをX軸の値として表示するための校正手順の具体例については後述する。
A/D変換器216は、位相回転器215から出力された誘起電圧成分(XY2軸平面におけるX軸及びY軸の値)をデジタル信号に変換した後、演算部22に出力する。なお、演算部22での演算処理には、X軸の値である誘起電圧成分V及び誘起電圧成分Vしか用いないため、X軸の値のみをデジタル信号に変換してもよいし、X軸の値及びY軸の値の双方をデジタル信号に変換するものの、X軸の値のみを演算部22に出力してもよい。
本実施形態の演算部22は、後述の標準偏差σCLの算出や変形度合いの予測等の演算処理を実行するためのプログラムがインストールされたコンピュータから構成されている。
なお、本実施形態では、電縫鋼管Pの誘起電圧測定中のプローブコイル10のリフトオフ変動が小さいため、演算部22での演算処理にX軸の値のみを用いているが、プローブコイル10のリフトオフ変動が大きい場合には、Y軸の値からリフトオフの変動量を計算して、リフトオフ変動によって生じる計測誤差を補正することも可能である。
演算部22は、A/D変換器216から出力された、第1誘起電圧から抽出された誘起電圧成分Vと第2誘起電圧から抽出された誘起電圧成分Vとの積Vを算出する。本実施形態では、電縫鋼管Pの周方向に沿った4箇所で誘起電圧成分V及びVが抽出されるため、電縫鋼管Pの周方向に沿った4箇所で積Vが算出されることになる。
ここで、演算部22には、エンコーダ30から出力されたパルス信号が入力される。演算部22は、エンコーダ30から出力されたパルス信号に基づき、電縫鋼管Pの搬送方向について所定のピッチで、積Vを算出する。例えば、切断機2で5.5m毎に電縫鋼管Pを切断する場合、演算部22は、1m毎に積Vを算出することが考えられる。
なお、特に肉厚の薄い電縫鋼管Pの場合に、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形が顕著になるため、積Vの算出ピッチ(ひいては、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いの予測ピッチ)は、電縫鋼管Pのt/D(肉厚と外径との比)や電縫鋼管Pの搬送速度を考慮して適切な値に設定すればよい。
本実施形態の演算部22は、単純に、同じタイミングで測定された第1誘起電圧及び第2誘導電圧からそれぞれ抽出された誘起電圧成分Vと誘起電圧成分Vとの積Vを算出している。このため、算出される積Vは、電縫鋼管Pの同じ断面について得られた誘起電圧成分Vと誘起電圧成分Vとの積ではない。第1誘起電圧を測定する第1プローブコイル11と第2誘起電圧を測定する第2プローブコイル12との離隔距離(電縫鋼管Pの搬送方向(X方向)についての離隔距離)だけ離れた断面についてそれぞれ得られた誘起電圧成分Vと誘起電圧成分Vとの積である。
図1(a)に示すように、本実施形態では、第1プローブコイル11と第2プローブコイル12との離隔距離が小さいため、本実施形態で算出される積Vは、電縫鋼管Pの同じ断面について得られた誘起電圧成分Vと誘起電圧成分Vとの積ではないものの、電縫鋼管Pの残留応力の軸方向についての変動は小さいと考えられ、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いの予測精度に大きな影響は生じないと考えられる。
しかしながら、例えば、造管ラインの制約上、第1プローブコイル11と第2プローブコイル12との離隔距離を大きく設定せざるを得ない場合には、エンコーダ30から出力されたパルス信号を用いて、積Vを算出する際に誘起電圧成分Vに乗算する誘起電圧成分Vを、第1プローブコイル11と第2プローブコイル12との離隔距離に応じて遅延させることで、同じ断面について得られた誘起電圧成分Vと誘起電圧成分Vとの積Vを算出すればよい。これにより、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いの予測精度を高めることが可能である。
演算部22は、電縫鋼管Pの周方向に沿った4箇所における積Vの標準偏差σCLを算出する。そして、演算部22には、予め取得した、標準偏差σCLと切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いとの第1相関関係が記憶されている。演算部22は、算出した標準偏差σCLと、記憶されている第1相関関係とを用いて、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いを予測する。上記の第1相関関係の具体例については後述する。
切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いとしては、例えば、縦楕円度の変化量を例示できる。
縦楕円度は、電縫鋼管Pの0°の位置の外径(すなわち、Z方向の外径)と、電縫鋼管Pの90°の位置の外径(すなわち、Y方向の外径)との差(=0°の位置の外径-90°の位置の外径)を意味する。
縦楕円度の変化量は、電縫鋼管Pの端部の縦楕円度と、電縫鋼管Pの中央部の縦楕円度との差(=電縫鋼管Pの端部の縦楕円度-電縫鋼管Pの中央部の縦楕円度)を意味する。なお、後述のように、切断後の電縫鋼管Pの長さが2mの場合、電縫鋼管Pの中央部は、電縫鋼管Pの端面(切断面)から1m程度の位置にある部位に相当するが、切断面から1m程度離れていれば、残留応力は電縫鋼管Pの切断前後で大きく変化しないと考えられる。
以上の構成を有する変形予測装置100によれば、演算部22で算出される標準偏差σCLが、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いと高い相関を有するため、この第1相関関係を予め取得して記憶させておくことで、演算部22は、算出した標準偏差σCLと、予め記憶された第1相関関係とを用いて、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いを予測することが可能である。
予測した変形度合いが予め定めた基準範囲外である場合には、例えば、演算部22がアラームを出力する(さらには、算出した標準偏差σCLや第1相関関係をモニタに表示することが好ましい)構成にしておくことで、このアラームを検知したオペレータが、サイザーロール1の位置を調整する等の処置を施すことも可能である。
なお、本実施形態では、回路部21が、位相回転器215で互いに直交する2つの誘起電圧成分の位相を回転させた後、A/D変換器216で誘起電圧成分をデジタル信号に変換する場合、換言すれば、位相回転器215まではアナログ処理を行う場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、増幅器213で誘起電圧を増幅した後、A/D変換器216で増幅後の誘起電圧をデジタル信号に変換し、前述の同期検波回路214や位相回転器215で実行していたアナログ処理をデジタル処理に代える態様を採用することも可能である。
また、本実施形態では、演算部22が、算出した標準偏差σCLと、記憶されている第1相関関係(標準偏差σCLと変形度合いとの相関関係)とを用いて、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いを予測する態様に説明したが、本発明はこれに限られるものではない。
電縫鋼管Pの素材である鋼板の引張強度Tを演算部22に予め入力して記憶させておき、演算部22が、算出した標準偏差σCLに引張強度TのN乗(Nは1以上の自然数)を乗算した値を指標として算出するように構成する。演算部22には、予め取得した、前記指標と切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いとの第2相関関係を記憶させておく。そして、演算部22が、前記指標と、記憶されている第2相関関係(前記指標と変形度合いとの相関関係)とを用いて、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いを予測する態様を採用することも可能である。上記の第2相関関係の具体例については後述する。
電縫鋼管Pの残留応力は、素材である鋼板の引張強度Tに応じて変化し得るパラメータであるといえる。このため、電縫鋼管Pの造管ラインにおいて、種々の材質の鋼板を素材として電縫鋼管Pを製造する場合には、鋼板の引張強度Tを考慮して切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いを予測すると、より一層精度の良い予測が可能になることが期待できる。
<電縫鋼管用サイザーロールの位置調整装置>
次に、電縫鋼管用サイザーロールの位置調整装置について説明する。
本実施形態に係る電縫鋼管用サイザーロールの位置調整装置(以下、適宜、単に「位置調整装置」という)は、以上に説明した変形予測装置100と、変形予測装置100で予測した切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いに基づき、変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、サイザーロール1の位置を調整する調整手段(図1には図示せず)と、を備える。すなわち、位置調整装置は、前述のオペレータの処置を自動化したものである。
図1に示す例では、サイザーロール1として、4段のサイザーロール1a~1dが配置されている。各サイザーロール1a~1bは、電縫鋼管Pを挟んで対向配置された一対の孔型ロール(電縫鋼管Pの外径に応じた曲率を有する円弧状の凹溝(孔型)が外面に形成されたロール)から構成されている。奇数段目に配置されたサイザーロール1a、1cは、電縫鋼管Pの上下方向(Z方向)の外径が小さくなるように、電縫鋼管Pを上下方向(Z方向)に押圧する孔型ロール(Vロールと称する場合がある)である。偶数段目に配置されたサイザーロール1b、1dは、電縫鋼管Pの水平方向(Y方向)の外径が小さくなるように、電縫鋼管Pを水平方向(Y方向)に押圧する孔型ロール(Hロールと称する場合がある)である。
後段のサイザーロール1c、1dは、製品としての電縫鋼管Pの外径を決定づける孔型ロールであるため、製品の外径仕様によって決まるサイザーロール1c、1dの位置を調整することができない。このため、本実施形態では、調整手段によって、前段のサイザーロール1a、1bの位置を調整する。具体的には、調整手段によって、サイザーロール1aを上下方向(Z方向)に開閉することで、電縫鋼管Pの上下方向(Z方向)の外径の縮減量を調整したり、サイザーロール1bを水平方向(Y方向)に開閉することで、電縫鋼管Pの水平方向(Y方向)の外径の縮減量を調整する。調整手段によるサイザーロール1の位置調整の具体例については後述する。
調整手段としては、これに限られるものではないが、例えば、サイザーロール1a、1bの回転軸にそれぞれ取り付けられたサーボモータ付き一軸ステージと、サーボモータの回転量を制御することで一軸ステージの移動量を制御する制御部とを具備する構成が用いられる。この制御部に変形予測装置100の演算部22が電気的に接続され、演算部22で予測した縦楕円度の変化量に応じて、制御部がサーボモータの回転量、ひいては一軸ステージの移動量を制御すればよい。
以上の構成を有する位置調整装置によれば、調整手段によって、変形予測装置100で予測した切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、サイザーロール1(特に、前段のサイザーロール1a、1b)の位置を調整するため、端部の不良品が大量発生することを防止可能である。
なお、調整手段によるサイザーロール1の位置調整は、予測した切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いが予め定めた基準範囲内を1回外れれば直ちに実施する場合に限られるものではない。例えば、演算部22が、1m毎に積Vを算出し、1m毎に変形度合いを予測する場合に、予測した変形度合いが5回連続して基準範囲外であれば(すなわち、5mに亘って基準範囲外となれば)、サイザーロール1の位置を調整するなど、複数回連続して基準範囲外となった場合(換言すれば、実際に生じる変形度合いが基準範囲外となる可能性が非常に高い場合)に初めて、変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、サイザーロール1の位置を調整することも可能である。
以下、変形予測装置100及び位置調整装置のより具体的な内容について説明する。
<校正手順>
信号処理手段20が具備する回路部21の校正手順について説明する。
図2は、回路部21の校正手順を模式的に説明する説明図である。図2(a)及び図2(b)は、各プローブコイルと電縫鋼管Pとの位置関係を示す図である。図2(c)は、位相回転器215で表示されるXY2軸平面上の誘起電圧成分を示す。
なお、以下では、図2に示す第2プローブコイル12dで測定した誘起電圧に対して回路部21を校正する手順を例に挙げて説明するが、他の第2プローブコイル12a~12cや、第1プローブコイル11a~11dで測定した誘起電圧に対して回路部21を校正する場合も同様の手順である。
前述のように、第2プローブコイル12d及びプローブコイルRCは、回路部21のブリッジ回路212に接続されている。プローブコイルRCは、空芯状態で、磁界が形成され、誘起電圧が検出されるものである。
回路部21を校正する際には、まず、図2(a)に示すように、プローブコイルRCのみならず、第2プローブコイル12dも空芯状態とする。すなわち、第2プローブコイル12dに電縫鋼管Pの外面を対向させずに、空間上の点ETに対向するように、第2プローブコイル12dを配置する。そして、第2プローブコイル12d及びプローブコイルRCの双方に接続されたブリッジ回路212が平衡状態となる(すなわち、ブリッジ回路212からの出力が0となる)ように、ブリッジ回路212を校正する。
そして、図2(c)に示すように、位相回転器215で表示されるXY2軸平面上の原点(X=0[V]、Y=0[V])に、図2(a)に示す状態において第2プローブコイル12dで測定した誘起電圧によって得られた誘起電圧成分がプロットされるように、演算部22で確認する。
次に、図2(b)に示すように、プローブコイルRCは移動させずに空芯状態を維持する一方、第2プローブコイル12dを電縫鋼管Pの外面に徐々に近づくように移動させ、第2プローブコイル12dのリフトオフ(電縫鋼管Pの外面に対するリフトオフ)が最も小さくなる電縫鋼管Pの外面上の点ETに対向する位置まで移動させる。電縫鋼管Pの外面上の点ETとしては、残留応力が0又は極めて小さい点を選択する。点ETの残留応力は、例えば、特許文献4に記載のようなX線回折装置を用いて測定すればよい。
上記のように、電縫鋼管Pの外面上の点ETに対向する位置まで第2プローブコイル12dを移動させる際、図2(c)に太線矢印で示すように、位相回転器215で表示されるXY2軸平面上のY軸に沿って、誘起電圧成分のプロット点が徐々に移動し、そのY軸の値が徐々に大きくなるように、位相回転器215を調整する。そして、第2プローブコイル12dが電縫鋼管Pの外面上の点ETに対向する位置に到達した時点で、Y軸の値が予め決めた一定の値(図2(c)に示す例では、5[V])となるように、増幅器213のゲインを調整する。
以上に説明した回路部21の校正手順を、全てのプローブコイル10で測定した誘起電圧に対して実行することで、プローブコイル10のリフトオフの変化によって得られる誘起電圧成分は、位相回転器215で表示されるXY2軸平面上のY軸の値として表示され、電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分V、Vは、位相回転器215で表示されるXY2軸平面上のX軸の値として表示されることになる。
図2(c)において、「〇」でプロットしたデータは、材質の異なる4種類の鋼板からそれぞれ形成された電縫鋼管Pを材質毎に4本(計16本)用意し、各電縫鋼管Pの周方向に沿った4箇所(電縫鋼管Pの最上部にある溶接部PWの位置を0°の位置として、反時計回りに45°、135°、225°、315°の位置の4箇所)で測定した誘起電圧成分V(計64箇所の誘起電圧成分V)を纏めてプロットしたものである。16本の電縫鋼管Pとしては、X線解析装置を用いて、いずれの電縫鋼管Pにも一定以上の大きさの残留応力が存在することを確認している。図2(c)に示すように、電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分VがX軸の値として正しく表示されていると考えられる。
<相関関係>
信号処理手段20が具備する演算部22が切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いを予測するのに用いる相関関係の具体例について説明する。
まず、演算部22が予測に用いる相関関係(標準偏差σCLと変形度合いとの相関関係である第1相関関係、又は、標準偏差σCLに電縫鋼管Pの素材である鋼板の引張強度TのN乗を乗算した値である指標と変形度合いとの第2相関関係)の具体例について説明する前に、本発明者らが検討した他のパラメータと変形度合いとの相関関係や、演算部22が第1相関関係を用いて変形度合いを予測する構成に本発明者らが想到した経緯について説明する。
[電縫鋼管の外径の標準偏差と変形度合いとの相関関係]
本発明者らは、材質の異なる4種類の鋼板からそれぞれ形成され、切断後の長さが2mの電縫鋼管Pを、材質毎に4本(計16本)用意し、その中央部において、溶接部PWの位置を0°の位置として、0°、45°、90°、135°の各位置で外径を測定し、各位置で測定した外径の標準偏差σODを算出した。一方、切断後の電縫鋼管Pの端部においても、0°、45°、90°、135°の各位置で外径を測定し、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合いとして、前述した縦楕円度の変化量を算出した。そして、標準偏差σODと縦楕円度の変化量との相関関係を算出した。具体的には、縦楕円度の変化量を標準偏差σODの一次式で近似した。
なお、標準偏差σODは、上記のように、切断後の電縫鋼管Pを用いて、その中央部で測定した外径から算出したものであるが、中央部の外径は電縫鋼管Pの切断前後で大きく変化しないと考えられるため、仮に造管ラインに公知の外径計を設置して切断前の電縫鋼管Pの外径を測定する場合にも、上記の標準偏差σODと同等の値の標準偏差が算出されると考えられる。
図3は、上記のようにして算出した標準偏差σODと縦楕円度の変化量との相関関係を示す図である。図3に示す破線が、標準偏差σODの一次式で表される近似直線である。
図3に示すように、両者の相関係数Rの二乗は0.348と小さく、両者の相関はあまり高くない。したがって、造管ラインにおいて切断前の電縫鋼管Pの外径を測定したとしても、この標準偏差σODを用いて、切断後の電縫鋼管Pの端部の縦楕円度の変化量を精度良く予測することは困難であるといえる。
[X線回折装置を用いて得られるパラメータと変形度合いとの相関関係]
詳細については割愛するが、本発明者らは、特許文献4に記載のようなX線回折装置を用いて、残留応力を測定し、その測定値から得られる種々のパラメータと、切断後の電縫鋼管Pの端部の縦楕円度の変化量との相関関係について調査した。その結果、いずれのパラメータについても、縦楕円度の変化量との相関関係は高くないことが判った。
X線回折装置を用いた場合の測定領域は、一般に、電縫鋼管Pの外面において外径数μmの円形で、深さ方向(肉厚方向)が数十μmの微小領域である。すなわち、X線回折装置を用いる場合には、局所的な残留応力を測定することになるため、切断後の電縫鋼管Pの端部における外径の変形度合い(縦楕円度の変化量)との間に良好な相関関係が得られないのだと推測される。
[第1相関関係を用いて変形度合いを予測する構成に本発明者らが想到した経緯]
前述のように、特許文献4に記載のようなX線回折装置を軸方向に搬送される電縫鋼管Pの残留応力を測定するのに用いること自体は困難である上、X線回折装置による残留応力の測定値から得られるパラメータと、縦楕円度の変化量との相関関係も高くないことが判った。本発明者らは、相関関係が高くない理由が、X線回折装置の測定領域が微小であることに起因するのであれば、測定領域が広くなる方法を検討すれば良いのではないかと考え、電縫鋼管Pの残留応力に起因した磁性変化を検出するためにプローブコイル10を用いる方法を検討することにした。プローブコイル10の測定範囲は、例えば、電縫鋼管Pの外面において10mm×25mmで、深さ方向(肉厚方向)が数mmであり、X線回折装置の測定領域に比べて遥かに広いからである。
そして、プローブコイル10で測定した誘起電圧から得られる種々のパラメータと、縦楕円率の変化量との相関関係を検討した結果、前述の第1相関関係が高い相関を有する可能性のあることが判った。
すなわち、プローブコイル10によって、電縫鋼管Pの周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧と、電縫鋼管Pの軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧とを測定し、第1誘起電圧のうち電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vと、第2誘起電圧のうち電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとを抽出し、誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出すれば、この標準偏差σCLが縦楕円度の変化量と高い相関を有する可能性のあることが判った。
以下、本発明者らが上記の知見を得た試験の内容について説明する。
上記の試験では、材質の異なる3種類の鋼板からそれぞれ形成され、切断後の長さが2mの電縫鋼管P(TP1、TP2、TP3)を3本用意し、その中央部において、溶接部PWの位置を0°の位置として、0°、45°、90°、135°の各位置で外径を測定し、縦楕円度の変化量を算出した。
また、上記と同じ3本の電縫鋼管P(TP1、TP2、TP3)について、その中央部において、溶接部PWの位置を0°の位置として、45°、135°、225°、315°の各位置で、プローブコイル10を用いて誘起電圧を測定し、電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分V、Vを抽出し、誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出した。
そして、標準偏差σCLと縦楕円度の変化量との相関関係を算出した。具体的には、縦楕円度の変化量を標準偏差σCLの一次式で近似した。
図4は、上記試験の結果を示す図である。図4(a)は、各電縫鋼管Pについて縦楕円度の変化量を算出した結果を示す。図4(b)は、各電縫鋼管Pについて標準偏差σCLを算出した結果を示す。図4(c)は、標準偏差σCLと縦楕円度の変化量との相関関係を算出した結果を示す。図4(c)に示す破線が、標準偏差σCLの一次式で表される近似直線である。
図4(c)に示すように、標準偏差σCLと縦楕円度の変化量との相関係数Rの二乗は0.9804であり、両者は非常に高い相関を有することが判った。
[第1相関関係の具体例]
本発明者らは、上記の知見に基づき、図3に示す相関関係を得た場合と同じ、切断後の長さが2mの16本の電縫鋼管Pを用いて、その中央部において、溶接部PWの位置を0°の位置として、45°、135°、225°、315°の各位置で、プローブコイル10を用いて誘起電圧を測定し、電縫鋼管Pの残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分V、Vを抽出し、誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出し、標準偏差σCLと縦楕円度の変化量との第1相関関係を算出した。具体的には、縦楕円度の変化量を標準偏差σCLの一次式で近似した。また、第1相関関係と比較するために、各位置で測定した誘起電圧成分Vを誘起電圧成分Vで除算した値の標準偏差σC/Lと縦楕円度の変化量との相関関係も算出した。具体的には、縦楕円度の変化量を標準偏差σC/Lの一次式で近似した。
図5は、上記のようにして算出した第1相関関係及び標準偏差σC/Lと縦楕円度の変化量との相関関係を示す図である。図5(a)は、第1相関関係を示す。図5(b)は、標準偏差σC/Lと縦楕円度の変化量との相関関係を示す。
図5(a)に示すように、第1相関関係の相関係数Rの二乗は0.7408であり、データ数が増えても、高い相関を有することが判る。したがって、このような第1相関関係を予め取得して演算部22に記憶させておくことで、演算部22は、造管ラインで搬送される電縫鋼管Pについて算出した標準偏差σCLと、予め記憶された図5(a)に示すような第1相関関係とを用いて、切断後の電縫鋼管Pの端部における縦楕円度の変化量を予測することが可能である。
一方、図5(b)に示すように、標準偏差σC/Lと縦楕円度の変化量との相関係数Rの二乗は0.0076と非常に小さく、両者に相関は無いといえる。このため、標準偏差σC/Lを縦楕円度の変化量を予測するのに用いることは困難である。
なお、標準偏差σCLは、上記のように、切断後の電縫鋼管Pを用いて、その中央部で測定した誘起電圧成分V、Vから算出したものであるが、中央部の残留応力は電縫鋼管Pの切断前後で大きく変化しないと考えられるため、造管ラインに設置した変形予測装置100で切断前の電縫鋼管Pの誘起電圧成分V、Vを測定する場合にも、測定位置が電縫鋼管Pの端面(切断面から)1m以上離れていれば、上記の標準偏差σCLと同等の値の標準偏差が算出されると考えられる。
[第2相関関係の具体例]
図6は、図5に示す第1相関関係と同じデータを用いて算出した第2相関関係を示す図である。図6(a)は、算出した標準偏差σCLに引張強度Tの一乗を乗算した値を指標として算出した第2相関関係を示す。図6(b)は、算出した標準偏差σCLに引張強度Tの二乗を乗算した値を指標として算出した第2相関関係を示す。図6(c)は、算出した標準偏差σCLに引張強度Tの三乗を乗算した値を指標として算出した第2相関関係を示す。図6に示す破線が、横軸に示す各パラメータの一次式で表される近似直線である。
図6に示す相関係数Rの二乗の値から、第2相関関係は、図5に示す第1相関関係と略同等(図6(a)の場合)、又は、第1相関関係よりもさらに高い相関(図6(b)及び図6(c)の場合)を有することが判る。したがって、電縫鋼管Pの造管ラインにおいて、種々の材質の鋼板(種々の引張強度Tを有する鋼板)を素材として電縫鋼管Pを製造する場合には、各材質の鋼板から形成された電縫鋼管Pを用いて第2相関関係を算出しておき、この第2相関関係を用いて切断後の電縫鋼管Pの端部における縦楕円度の変化量を予測すると、より一層精度の良い予測が可能になることが期待できる。
[サイザーロールの位置調整の具体例]
図7は、サイザーロール1(具体的には、サイザーロール1a、1b)の位置調整の具体例を説明する説明図である。ここでは、図5(a)に示す第1相関関係を用いて切断後の電縫鋼管Pの端部における縦楕円度の変化量を予測し、この予測した縦楕円度の変化量に基づき、サイザーロール1の位置を調整する例を説明する。
外径公差を公称外径±0.2mmとする場合、図7から判るように、標準偏差σCLが0.005以下である場合、予測される縦楕円度の変化量の絶対値は0.4mm(公称外径±0.2mm)以内である。この程度の縦楕円度の変化量であれば、サイザーロール1の位置調整は不要であると考えられる。一方、標準偏差σCLが0.005を超え、例えば0.01を超えると、予測される縦楕円度の変化量の絶対値は0.8mm(公称外径±0.4mm)を超える。この程度の縦楕円度の変化量であれば、サイザーロール1の位置調整が必要であると考えられる。
例えば、造管ラインで製造されている電縫鋼管Pについて算出した標準偏差σCLが0.01で、予測された縦楕円度の変化量が-0.85mmである場合(すなわち、電縫鋼管Pの中央部に比べて、端部における上下方向(Z方向)の外径と水平方向(Y方向)の外径との差が水平方向(Y方向)に0.85mmだけ拡大すると予測される場合)には、電縫鋼管Pの水平方向(Y方向)の外径が小さくなるように、電縫鋼管Pを水平方向(Y方向)に押圧するサイザーロール1bを閉じるように調整すればよい。この際、演算部22で逐次(例えば、1mピッチで)予測される縦楕円度の変化量を調整手段の制御部が監視しておき、その監視している縦楕円度の変化量の絶対値が0.4mm(公称外径±0.2mm)以内となるように、制御部がサイザーロール1bの位置を調整する一軸ステージの移動量を制御すればよい。すなわち、0.4mm(公称外径±0.2mm)以内を基準範囲内として予め定めておき、縦楕円度の変化量の絶対値がこの基準範囲内となるように、サイザーロール1b(又はサイザーロール1a)の位置を調整することが考えられる。
なお、第1相関関係によって、標準偏差σCLと予測される縦楕円度の変化量との対応関係が予め分かっているため、例えば、演算部22で逐次算出される標準偏差σCLを調整手段の制御部が監視しておき、その監視している標準偏差σCLが0.005以下となるように、制御部がサイザーロール1bの位置を調整する一軸ステージの移動量を制御してもよい。このような調整方法であっても、結局のところ、縦楕円度の変化量が±0.4mm以内となるように、サイザーロール1bの位置を調整する場合と同様の作用効果が得られる。
1、1a、1b、1c、1d・・・サイザーロール
2・・・切断機
10・・・プローブコイル
11、11a、11b、11c、11d・・・第1プローブコイル
12、12a、12b、12c、12d・・・第2プローブコイル
20・・・信号処理手段
21・・・回路部
22・・・演算部
100・・・変形予測装置
111、121・・・ヨーク
112・・・励磁コイル
113、123・・・検出コイル
P・・・電縫鋼管
PW・・・溶接部

Claims (6)

  1. 軸方向に搬送される電縫鋼管の外径をサイザーロールで調整した後、所定の長さ毎に切断する前に、前記電縫鋼管の周方向に沿って前記電縫鋼管の外面に対向配置された複数のプローブコイルを用いて、前記電縫鋼管の周方向及び軸方向に磁界を作用させ、前記磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧を測定する測定ステップと、
    前記測定ステップで測定した誘起電圧に基づき、切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する予測ステップと、を有し、
    前記測定ステップでは、前記複数のプローブコイルが配置された前記電縫鋼管の周方向に沿った複数箇所において、前記電縫鋼管の周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧と、前記電縫鋼管の軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧とを測定し、
    前記予測ステップでは、前記第1誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vと、前記第2誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとを抽出し、前記誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出し、前記標準偏差σCLと、予め取得した前記標準偏差σCLと前記変形度合いとの第1相関関係と、を用いて、前記変形度合いを予測する、
    ことを特徴とする電縫鋼管の端部の変形予測方法。
  2. 前記予測ステップでは、前記標準偏差σCLと、予め取得した前記標準偏差σCLと前記変形度合いとの第1相関関係と、を用いて前記変形度合いを予測することに代えて、前記標準偏差σCLに前記電縫鋼管の素材である鋼板の引張強度TのN乗(Nは1以上の自然数)を乗算した値を指標として算出し、前記指標と、予め取得した前記指標と前記変形度合いとの第2相関関係と、を用いて、前記変形度合いを予測する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電縫鋼管の端部の変形予測方法。
  3. 前記予測ステップでは、
    前記第1誘起電圧を位相解析することで、前記第1誘起電圧を、前記プローブコイルのリフトオフの変化によって得られる誘起電圧成分と、当該誘起電圧成分と位相が直交する誘起電圧成分とに分解し、前記直交する誘起電圧成分を、前記誘起電圧成分Vとして抽出し、
    前記第2誘起電圧を位相解析することで、前記第2誘起電圧を、前記プローブコイルのリフトオフの変化によって得られる誘起電圧成分と、当該誘起電圧成分と位相が直交する誘起電圧成分とに分解し、前記直交する誘起電圧成分を、前記誘起電圧成分Vとして抽出する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電縫鋼管の端部の変形予測方法。
  4. 請求項1又は2に記載の電縫鋼管の端部の変形予測方法を用いて前記サイザーロールの位置を調整する電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法であって、
    前記変形予測方法で予測した切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いに基づき、前記変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、前記サイザーロールの位置を調整する調整ステップを有する、
    ことを特徴とする電縫鋼管用サイザーロールの位置調整方法。
  5. 軸方向に搬送される電縫鋼管の外径を調整するサイザーロールと、外径調整後の前記電縫鋼管を所定の長さ毎に切断する切断機との間において、前記電縫鋼管の周方向に沿って前記電縫鋼管の外面に対向配置され、前記電縫鋼管の周方向及び軸方向に磁界を作用させ、前記磁界の電磁誘導によって生じる誘起電圧を測定する複数のプローブコイルと、
    前記複数のプローブコイルで測定した誘起電圧に基づき、前記切断機で切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いを予測する信号処理手段と、を備え、
    前記複数のプローブコイルは、前記複数のプローブコイルが配置された前記電縫鋼管の周方向に沿った複数箇所において、前記電縫鋼管の周方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第1誘起電圧と、前記電縫鋼管の軸方向に作用する磁界の電磁誘導によって生じる第2誘起電圧とを測定し、
    前記信号処理手段は、前記第1誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vと、前記第2誘起電圧のうち前記電縫鋼管の残留応力による磁性変化に起因する誘起電圧成分Vとを抽出し、前記誘起電圧成分Vと前記誘起電圧成分Vとの積Vの標準偏差σCLを算出し、前記標準偏差σCLと、予め記憶された前記標準偏差σCLと前記変形度合いとの第1相関関係と、を用いて、前記変形度合いを予測する、
    ことを特徴とする電縫鋼管の端部の変形予測装置。
  6. 請求項5に記載の電縫鋼管の端部の変形予測装置と、
    前記変形予測装置で予測した切断後の前記電縫鋼管の端部における外径の変形度合いに基づき、前記変形度合いが予め定めた基準範囲内となるように、前記サイザーロールの位置を調整する調整手段と、を備える、
    ことを特徴とする電縫鋼管用サイザーロールの位置調整装置。
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