JP2024042604A - 硬化性樹脂組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材 - Google Patents

硬化性樹脂組成物、硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材 Download PDF

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和賢 青山
Kazumasa Aoyama
慎太郎 橋本
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Abstract

【課題】優れた光感度性を有し、かつ高いガラス転移温度を示し、密着性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供する。【解決手段】芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)及び無水マレイン酸を反応原料(1)とするポリマレイミド化合物(A)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)とを含有する硬化性樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本開示は、硬化性樹脂組成物、及び硬化性樹脂組成物より得られる硬化物、絶縁材料、及びレジスト部材に関する。
プリント配線板上に電子部品を実装してはんだ付けする際に、実装部以外の部分にはんだが付着することを防止したり、配線の酸化又は腐食を半永久的に防止する被膜を形成する材料としてソルダーレジストが広く用いられている。このようなソルダーレジストのパターンを形成する技術としては、特に環境面の配慮等から、微細なパターンを正確に形成できる、アルカリ現像型の液状フォトレジスト法が主流となっている。
そして、近年における電子部品の高密度化実現のために、プリント配線板は微細化(ファイン化)、多層化及びワンボード化の一途をたどっており、実装方式も、表面実装技術(SMT)へと推移している。そのため、ソルダーレジスト膜も、ファイン化、高Tg、高解像性、高精度、高信頼性の要求が高まっている。そしてさらには、伝送信号の高速化に伴い、高周波(ギガヘルツ帯)の利用のために、時間遅延を小さくする低誘電率及び低誘電正接を示す技術がソルダーレジスト市場にも求められている。
例えば特許文献1には、耐熱性を損なわずに積層板としての誘電率が4.0以下であるような樹脂組成物として、インダン環を有するポリマレイミド化合物と当該ポリマレイミド化合物と反応して三次元架橋を生ずる反応成分とを含む熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許3033327号公報
しかしながら、特許文献1の技術により得られたインダン環を有するポリマレイミド化合物からなる低誘電材料は、低誘電特性に改善の余地が残るばかりではなく、熱硬化性樹脂組成物であるため、光感度性については一切検討されていない。
そこで、本開示は、優れた光感度性を示し、かつ得られる硬化物(硬化塗膜)において、優れた密着性、低誘電特性及び高ガラス転移温度を発現させることが可能な硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。本開示は、当該硬化性樹脂組成物を用いて得られる、優れた密着性、低誘電特性及び高ガラス転移温度を有する、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリマレイミド化合物(A)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)とを含有する硬化性樹脂組成物を用いることにより、優れた光感度性を示し、かつ得られる硬化物において、優れた密着性、低誘電特性及び高ガラス転移温度を発現させることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
本開示の硬化性樹脂組成物は、芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)及び無水マレイン酸を反応原料(1)とするポリマレイミド化合物(A)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)と、を含有する。
本開示によれば、優れた光感度性を示し、かつ得られる硬化物において、優れた密着性、低誘電特性及び高ガラス転移温度を発現させることのできる、硬化性樹脂組成物を提供できる。
本開示によれば、当該硬化性樹脂組成物を用いて得られる、優れた密着性及び低誘電特性を有する、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供できる。
図1Aは、本実施例のポリマレイミド化合物(1)のGPC測定結果を示す。 図1Bは、本実施例のポリマレイミド化合物(1)のFD-MS測定結果を示す。 図1Cは、本実施例のポリマレイミド化合物(1)のNMR測定結果を示す。 図2は、本実施例のポリマレイミド化合物(2)のGPC測定結果を示す。 図3は、本実施例のポリマレイミド化合物(3)のGPC測定結果を示す。 図4は、本実施例のポリマレイミド化合物(4)のGPC測定結果を示す。 図5Aは、本実施例のポリマレイミド化合物(5)のGPC測定結果を示す。 図5Bは、本実施例のポリマレイミド化合物(5)のFD-MS測定結果を示す。 図5Cは、本実施例のポリマレイミド化合物(5)のNMR測定結果を示す。
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において特段の記載が無い限り、以下の用語を適用できる。
<用語>
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、目的のポリマレイミド化合物(A)又はその前駆体化合物(前駆体化合物の例としては、芳香族アミン化合物(a1)同士が芳香族ジビニル化合物(a2)を介して連結された中間体アミン化合物(a4))を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「芳香族」は、炭素原子数3~30の芳香環を有する原子団をいい、複素芳香族を含み、「芳香族」中の-CH-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。
当該芳香環の種類は、例えば、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環等が挙げられる。前記単環芳香族環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮環芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香族環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
本明細書における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。
本明細書における「シクロアルキル基」は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基等が挙げられる。
本明細書における「アルキルチオ基」は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、オクチルチオ基又は2-エチルヘキシルチオ基が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基又はイソプロペニル基等が挙げられる。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基又はノニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリール基」は、フェニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基等が挙げられる。
本明細書における「アリールオキシ基」は、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基、フェナントリルオキシ基又はピレニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリールチオ基」は、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アンスリルチオ基、フェナントリルチオ基又はピレニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
[硬化性樹脂組成物]
本開示は、ポリマレイミド化合物(A)(以下、(A)成分とも称する。)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)(以下、(B)成分とも称する。)と、を含有する硬化性樹脂組成物である。そして、前記ポリマレイミド化合物(A)は、芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)(以下、芳香族アミン化合物(a1)とも称する。)と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)(以下、芳香族ジビニル化合物(a2)とも称する。)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とする化合物である。
酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)に対して特定の化学構造を有するポリマレイミド化合物(A)を組み合わせることにより、組成物全体として、高密着性、低誘電特性、高Tg及び高感度を示す効果を発現しうる。
本開示の硬化性樹脂組成物において、ポリマレイミド化合物(A)の含有量は、高感度及び高いガラス転移温度を有し、かつ優れた密着性、低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、1~50質量%の範囲が好ましい。ポリマレイミド化合物(A)の含有量の上限又は下限は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
また、本開示の硬化性樹脂組成物において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、10~95質量%の範囲が好ましい。また、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の含有量の上限又は下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
さらに、本開示の硬化性樹脂組成物は光重合開始剤を含有してもよく、当該光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.1~14質量%の範囲が好ましい。また、光重合開始剤の含有量の上限又は下限は、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上が更に好ましく、また、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
上記各含有量の下限及び上限は、それぞれを任意に組み合わせすることができる。
本実施形態において、ポリマレイミド化合物(A)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)との固形分の質量比[(A)/(B)]は、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、1/100~100/100の範囲であることが好ましく、5/95~50/50の範囲がより好ましい。同様の観点から、上記質量比[(A)/(B)]の上限又は下限は、10/90以上であることがさらに好ましく、20/80以上であることがより更に好ましく、また、40/60以下であることがより好ましい。
本実施形態における硬化性樹脂組成物は、必須成分であるポリマレイミド化合物(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)並びに、任意に添加される、光重合開始剤、及び/又は添加成分をさらに含有してもよい。
また、本実施形態における硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、光重合開始剤及び任意に添加される添加成分のみから、実質的に構成されてもよい。さらには、(A)成分、(B)成分及び光重合開始剤のみから構成されてもよい。
本実施形態の硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)における(A)成分、(B)成分及び光重合開始剤の合計含有量は、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
「上記(A)成分、(B)成分及び光重合開始剤のみから」とは、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは20~98質量%、又は少なくとも30~95質量%が(A)成分、(B)成分及び光重合開始剤であることを意味する。
また、本実施形態の好ましい硬化性樹脂組成物において、上記の、(A)成分、(B)成分、光重合開始剤、無機充填剤及び添加成分の総量は、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~99質量%でありうる。
なお、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、本開示の効果を損なわない範囲あれば、(A)成分、(B)成分、光重合開始剤及び添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
以下、本実施形態における硬化性樹脂組成物に含有される必須成分である、ポリマレイミド化合物(A)及び酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)と、任意に添加される、光重合開始剤及び添加成分とについて説明する。
(ポリマレイミド化合物(A))
本実施形態のポリマレイミド化合物(A)は、1以上3以下のアルキル基を芳香環に有する芳香族アミン化合物(a1)と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とする化合物である。そして、本実施形態の硬化性組成物は、ポリマレイミド化合物(A)を必須に含有することにより、硬化時において、寸法変化率が小さく、かつ硬化物の低誘電正接性を高次に両立することができる。
本実施形態において、エテニル基を1つ有する芳香族モノビニル化合物(a3)(以下、芳香族モノビニル化合物(a3)とも称する。)をさらに前記反応原料(1)に含有されてもよい。また、本実施形態のポリマレイミド化合物(A)は、芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)同士がエテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)を介して架橋された中間体アミン化合物(a4)と、無水マレイン酸とを反応原料(3)とするポリマレイミド化合物(A)であることが好ましい。さらには、前記中間体アミン化合物(a4)は、芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)と、必要により添加されるエテニル基を1つ有する芳香族モノビニル化合物(a3)とを反応原料(2)とする化合物であることが好ましい。
換言すると、本実施形態における中間体アミン化合物(a4)は、アミノ基(アミノ基の水素原子がさらに炭素原子数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基も含む。)が結合された芳香環及び前記芳香環に結合されたアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)の構造単位と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)の構造単位とが化学結合により連結され、かつ必要により芳香族モノビニル化合物(a3)の構造単位が前記芳香族アミン化合物(a1)の構造単位中の前記芳香環に化学結合された構造を有することが好ましい。そして、本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)は、前記中間体アミン化合物(a4)の芳香環に結合したアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)がN-置換マレイミド環に置換された構造を有する。
したがって、本実施形態における「ポリマレイミド化合物(A)」と、当該「ポリマレイミド化合物(A)」の前駆体である「中間体アミン化合物(a4)」とは、芳香環に結合したアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)がN-置換マレイミド環に置き換わっている点が異なる重合体化合物である。
なお、上記芳香族アミン化合物(a1)の構造単位とは、芳香族アミン化合物(a1)の芳香環から2つの水素原子を取り除いた基をいう。例えば、芳香族アミン化合物(a1)が後述の一般式(i)で表される場合、一般式(i)のベンゼン環から2つの水素原子を取り除いた基を芳香族アミン化合物(a1)の構造単位という。また、上記芳香族ジビニル化合物(a2)の構造単位とは、芳香族ジビニル化合物(a2)の2つのエテニル基の不飽和結合が開裂した基をいう。
本実施形態において、特定の芳香環構造を有する芳香族アミン化合物(a1)を反応原料としていることから、後述の芳香族ジビニル化合物(a2)との反応部位を制御しやすくなるため、均一な化学構造又は鎖長のポリマレイミド化合物(A)が得られやすくなり、その結果、硬化時における低吸湿率及び低誘電正接性を示すポリマレイミド化合物(A)を提供しうる。
-ポリマレイミド化合物(A)の好ましい形態-
本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)は、以下の一般式(1):
Figure 2024042604000001
(上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
は、以下の一般式(x):
Figure 2024042604000002
(一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、tは0~4の整数を表す。なお、一般式(1)中の*は他の原子との結合を表す。)
で表される置換基を表し、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)で表される構造単位を有することが好ましい。
また、上記一般式(1)において、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがより好ましい。また、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1)中の好ましいRとしては、メチル基、エチル基又はn-プロピル基である。なお、一般式(1)中のRが結合したベンゼン環は、芳香族アミン化合物(a1)のベンゼン環でありうる。
上記一般式(1)中、pは1又は2を表すことが好ましい。なお、一般式(1)中のRが結合されたベンゼン環の2位、3位、4位、5位又は6位の少なくとも1つにRが結合されていることが好ましい。
上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがさらに好ましい。また、qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1)中の好ましいRとしては、メチル基、エチル基又はn-プロピル基である。なお、一般式(1)中のRが結合したベンゼン環は、芳香族ジビニル化合物(a2)のベンゼン環でありうる。また、上記一般式(1)中、qは0、1又は2を表すことが好ましい。
上記一般式(1)中、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基である。これにより、ポリマレイミド化合物(A)自体が有する不飽和結合の反応性を高い水準に維持することができる。上記一般式(1)中のR、R、R及びRにおいて、アルキル基の占める割合が多くなるとその立体的障害により、ポリマレイミド化合物(A)自体が有する不飽和結合の反応性が低下しうる傾向が見受けられる。そのため、R、R、R及びRが全てアルキル基であると、ポリマレイミド化合物(A)自体が有する不飽和結合の反応性が低下し、効率よく硬化物を形成できず、結果として、寸法変化率の悪化等の原因になりうる。
上記一般式(1)中、Xは上記の一般式(x)で表され、かつ当該一般式(x)において、Rは水素原子、Rはメチル基を表すことが好ましい。また、上記一般式(x)中、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基を表すことがさらに好ましい。また、上記一般式(x)中、tは0~4の整数を表すことが好ましく、0~3の整数を表すことがより好ましい。なお、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(1)中、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値を意味し、0~4の範囲であることが好ましく、0~3の範囲であることがさらに好ましい。
上記一般式(1)中、kは繰り返し単位数を表し、1~100の整数であることが好ましく、1~90の整数であることがより好ましく、1~80の整数であることがさらに好ましい。
本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)は、当該ポリマレイミド化合物(A)の総量(100質量%)に対して、インダン骨格(又はインダン骨格を有する構造単位)を10質量%以下含有することが好ましく、5質量%以下含有することが好ましく、3質量%以下含有することがさらに好ましく、2質量%以下含有することがよりさらに好ましく、0.9質量%以下含有することが特に好ましい。
上記インダン骨格を有する構造単位は、以下の一般式(3)で表されることが好ましい。
Figure 2024042604000003
(上記一般式(3)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、R34はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10の、アルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10の、アリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、qは、0~3の整数を表し、qが2以上の整数の場合、複数存在するR34は、互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。また、*は他の原子との結合を表す。)
上記一般式(3)中、R34はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基を表すことがより好ましい。また、上記一般式(3)中、R31、R32及びR33は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
以下、ポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)の構成成分である、芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)、任意成分でありうるエテニル基を1つ有する芳香族モノビニル化合物(a3)及び無水マレイン酸について説明した後、ポリマレイミド化合物(A)の別の好ましい形態及びポリマレイミド化合物(A)の製造方法について説明する。
-芳香族アミン化合物(a1)-
本実施形態における芳香族アミン化合物(a1)は、アミノ基(-NH又は置換アミノ基)が結合された芳香環を有し、かつ前記芳香環にはアルキル基が1以上3以下結合されている。そのため、芳香族アミン化合物(a1)はアミン系化合物でありうる。また、芳香族アミン化合物(a1)の中心構造を形成する芳香環は、単環式であることが好ましく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む。芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環であることが好ましい。芳香族複素環としては、例えば、ピラン環又はピリジン環などのヘテロ六員環が挙げられる。また、本実施形態における芳香族アミン化合物(a1)は、置換アミノ基を含まない-NHが結合された芳香環を有し、かつ前記芳香環にはアルキル基が1以上3以下結合されていることがより好ましい。
本実施形態の芳香族アミン化合物(a1)において、当該芳香族アミン化合物(a1)の芳香環の1以上3以下の水素原子に置換されるアルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。前記アルキル基は、直鎖型、分岐型又は環状型のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。前記アルキル基の分子量が小さくなるほど、本発明が奏する効果(低寸法変化率)が一層顕著なものとなる。また、前記アルキル基の分子量が高くなるほど、本発明が奏する効果(低吸湿)が一層顕著なものとなる。
芳香族アミン化合物(a1)におけるアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)を有する芳香環に結合されるアルキル基の数の上限は、前記芳香環がアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)を有し、かつ2本の結合手が重合に用いられる観点から、無置換状態の前記芳香環における置換可能な環構成原子の数から3を引いた数であればよい。例えば、前記芳香環がベンゼン環である場合、前記アルキル基の数は、3以下である。
また、芳香族アミン化合物(a1)の芳香環に置換されるアルキル基の数を2以上にすることにより、後述の芳香族ジビニル化合物(a2)と反応部位を制御しやすくなるため、均一な化学構造又は鎖長のポリマレイミド化合物(A)が得られやすくなる。その結果、ポリマレイミド化合物(A)の硬化物において、低吸湿性及び優れた高周波電気特性を発揮しやすくなる。
本実施形態における芳香族アミン化合物(a1)の芳香環がベンゼン環である場合を一例として、芳香族アミン化合物(a1)の好ましい形態について説明する。
本実施形態において、芳香族アミン化合物(a1)を構成するベンゼン環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子が1以上無置換である(又は水素原子に置換されている)ことが好ましい。
これにより、後述の芳香族ジビニル化合物(a2)から形成されるカチオノイド試剤によるArS反応及び分子設計を制御しやすくなる。より詳細に説明すると、芳香族アミン化合物(a1)を構成するベンゼン環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子が無置換であると、当該最も大きいHOMOの電子密度を有する炭素原子に対して、カチオノイド試剤である芳香族ジビニル化合物(a2)のカルボカチオンが反応しやすい。そのため、ベンゼン環の炭素原子に結合するアルキル基の数及び位置等を制御することにより、芳香族ジビニル化合物(a2)との結合部位又は結合数等を調整できる。そのため、得られるポリマレイミド化合物(A)の化学構造又は分子鎖長を設計しやすくなると推測している。
例えば、芳香族アミン化合物(a1)が1つのベンゼン環と1つのアミノ基とを有するアニリン骨格を有する場合、当該アニリン核の2位,4位及び6位のうち少なくとも1つの炭素原子が水素原子に置換されていることが好ましい。これにより、アニリン核の電子密度の高いオルト位及びパラ位である2位,4位及び6位のうち少なくとも1つの炭素原子に対して、後述の芳香族ジビニル化合物(a2)から形成されるカチオノイド試剤が攻撃しやすくなる。特に、特定の位置にアルキル基が置換されたアニリン核を有する芳香族アミン化合物(a1)を使用すると、芳香族ジビニル化合物(a2)との結合部位を概ね制御できるため、均一な化学構造又は鎖長のポリマレイミド化合物(A)が得られやすくなる。例えば、芳香族アミン化合物(a1)として2,6-ジアルキルアミンを使用すると、4位に芳香族ジビニル化合物(a2)と結合したポリマレイミド化合物(A)を多く得られると考えられる。
本実施形態の芳香族アミン化合物(a1)の具体例としては、例えば、ジメチルアニリン(2,3-キシリジン、2,4-キシリジン、2,6-キシリジン、3,4-キシリジン又は3,5-キシリジン)、ジエチルアニリン(2,3-ジエチルアニリン、2,4-ジエチルアニリン、2,6-ジエチルアニリン、3,4-ジエチルアニリン若しくは3,5-ジエチルアニリン)、ジイソプロピルアニリン(2,3-ジイソプロピルアニリン、2,4-ジイソプロピルアニリン、2,6-ジイソプロピルアニリン、3,4-ジイソプロピルアニリン若しくは3,5-ジイソプロピルアニリン)、エチルメチルアニリン(例えば、2,3位、2,4位、2,6位、3,4位若しくは3,5位のいずれか一方がメチル基であり、他方がエチル基であるエチルメチルアニリン)、シクロブチルアニリン、シクロペンチルアニリン、シクロヘキシルアニリン、o,m,若しくはp-トルイジン、o,m,若しくはp-エチルアニリン、o,m,若しくはp-イソプロピルアニリン、o,m,若しくはp-プロピルアニリン、o,m,若しくはp-ブチルアニリン、メチルイソプロピルアニリン(例えば、2,3位、2,4位、2,6位、3,4位若しくは3,5位のいずれか一方がメチル基であり、他方がイソプロピル基であるメチルイソプロピルアニリン)、あるいはエチルブチルアニリン(例えば、2,3位、2,4位、2,6位、3,4位若しくは3,5位のいずれか一方がエチル基であり、他方がブチル基であるエチルブチルアニリン)等を用いることができる。また前記ブチルは、n-ブチル,tert-ブチル及びsec-ブチルを含む。なお、本実施形態における芳香族アミン化合物(a1)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
例えば、N-フェニルマレイミドのように、無置換のベンゼン環にマレイミド基が直接結合する化学構造の場合、ベンゼン環とマレイミドの5員環が、同一平面上に並んだ状態が安定なため、スタッキングしやすくなり、高い結晶性が発現してしまう。そのため、溶剤溶解性が劣る原因となる。これに対して、本開示の場合、例えば、2,6-ジメチルアニリンのように、ベンゼン環に対する置換基として、アルキル基(例えば、メチル基)を有する場合、メチル基の立体障害からベンゼン環とマレイミドの5員環とがねじれた配座をとり、スタッキングしにくくなることから結晶性が低下し、溶剤溶解性が向上し、好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、マレイミドの合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基を有する芳香族アミン化合物(a1)を使用することが好ましい。
本実施形態における反応原料(1)の必須である芳香族アミン化合物(a1)は、例えば、下記一般式(4-1)で表すことができる。
Figure 2024042604000004
(上記一般式(4-1)中、R1aはアルキル基を表し、p1aは、1~3の整数を表す。複数存在するR1aは同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
上記一般式(4-1)中、アルキル基は、炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基であることがより好ましい。当該炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~3のアルキル基の例示は、上記と同様である。
上記一般式(4-1)中、p1aは、1又は2であることが好ましい。なお、R1aが複数存在する場合、互いに同一のアルキル基であっても、あるいは異なるアルキル基であってもよい。
なお、本実施形態において、上記一般式(4-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
-芳香族ジビニル化合物(a2)-
本実施形態における芳香族ジビニル化合物(a2)は、芳香環上の置換基として2つのエテニル基(CH=CH-)(ビニル基とも称する。)を有し、前記芳香族アミン化合物(a1)と反応できれば、特に制限なく使用できる。
また、本実施形態において、芳香族ジビニル化合物(a2)と芳香族モノビニル化合物(a3)との混合物を反応原料(1)に含むことが好ましい。
芳香族ジビニル化合物(a2)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、及びこれらの芳香環上に炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基等の置換基が1以上置換した各種の化合物等が挙げられる。当該置換基の好ましい形態としては、上記一般式(1)中のRと同様である。また、前記アルキル基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよい。中でも、高耐熱性の効果を示す観点から、前記アルキル基又はアルコキシ基の炭素原子数は、1~4であることが好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
本開示のポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)である芳香族ジビニル化合物(a2)は、下記式(4-2)で表すことが好ましい。
Figure 2024042604000005
(上記一般式(4-2)中、R2aはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、q2aは0~4の整数を表す。なお、q2aが2以上の整数の場合、複数存在するR2aは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
上記式(4-2)中のR2aは、一般式(1)中のRに対応しうる。したがって、上記一般式(4-2)中のR2aは、一般式(1)と同様に、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがさらに好ましい。
上記一般式(4-2)中、q2aは、0~2であることが好ましい。なお、q2aが2以上の場合、複数存在するR2aは、互いに同一の基であっても、あるいは異なる基であってもよい。
本実施形態の芳香族ジビニル化合物(a2)の具体例としては、例えば、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-ジビニルベンゼン、2,5-ジエチル-1,4-ジビニルベンゼン、cis,cis,β,β’-ジエトキシ-m-m-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジブチルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジヘキシルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジメトキシベンゼン及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルベンゼン類、並びに、1,3-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、1,6-ジビニルナフタレン、1,7-ジビニルナフタレン、2,3-ジビニルナフタレン、2,6-ジビニルナフタレン、2,7-ジビニルナフタレン、3,4-ジビニルナフタレン、1,8-ジビニルナフタレン、1,5-ジメトキシ-4,8-ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルナフタレン類が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、本実施形態における芳香族ジビニル化合物(a2)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、流動性の観点から、芳香族ジビニル化合物(a2)として、ジビニルベンゼン及びその芳香環上に置換基を有する化合物が好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。また、本実施形態において、ジビニルベンゼンのビニル基の置換位置は、特に限定されないが、メタ体を主成分とすることが好ましい。ジビニルベンゼン中のメタ体の含有量は、ジビニルベンゼンの総量に対して40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上あることがより好ましい。
本実施形態において、ポリマレイミド化合物(A)の総量(100質量%)に対して、芳香族ジビニル化合物(a2)の構造単位は10~90質量%含有することが好ましく、20~90質量%含有することがより好ましい。上記芳香族ジビニル化合物(a2)の構造単位とは、芳香族ジビニル化合物(a2)の2つのエテニル基から水素原子をそれぞれ2つ(合計水素原子を4つ)取り除いた基をいう。
-芳香族モノビニル化合物(a3)-
本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)は、芳香族アミン化合物(a1)、芳香族ジビニル化合物(a2)及び無水マレイン酸の他、更に、その他の化合物を反応原料として用いてもよい。当該その他の化合物としては、例えば、エテニル基を一つ有する芳香族モノビニル化合物(a3)等が挙げられる。すなわち、実施形態において、芳香族アミン化合物(a1)と、芳香族ジビニル化合物(a2)と、芳香族モノビニル化合物(a3)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とすることが好ましい。本実施形態のポリマレイミド化合物(A)が、その反応原料として芳香族アミン化合物(a1)、芳香族ジビニル化合物(a2)及び無水マレイン酸に加えて、芳香族モノビニル化合物(a3)を用いることにより、最終的に得られるポリマレイミド化合物(A)の硬化物が低誘電正接の点に優れることから好ましい。
また、芳香族モノビニル化合物(a3)も芳香族ジビニル化合物(a2)と同様にカルボカチオンを生成するため、芳香族アミン化合物(a1)を構成する芳香族炭化水素環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子に対して反応しやすい。
本実施形態における芳香族モノビニル化合物(a3)は、例えば、ビニルベンゼン(スチレン)、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、及びこれらの芳香環上に炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基等の置換基が1以上置換した各種の化合物等が挙げられる。前記アルキル基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。中でも、低吸湿性を重視する場合、前記アルキル基又は前記アルコキシ基は、炭素原子数1~4であることが好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
本開示のポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)となり得る芳香族モノビニル化合物(a3)は、下記一般式(4-3)で表すことができる。
Figure 2024042604000006
(上記一般式(4-3)中、R3aはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、t3aは0~5の整数を表す。なお、t3aが2以上の整数の場合、複数存在するR3aは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
上記一般式(4-3)中のR3aは、一般式(x)中のRに対応しうる。したがって、上記一般式(4-3)中のR3aは、一般式(x)と同様に、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがさらに好ましい。
上記一般式(4-3)中、t3aは、1~4であることが好ましい。なお、t3aが2以上の場合、複数存在するR3aは、互いに同一の基であっても、あるいは異なる基であってもよい。
本実施形態の芳香族モノビニル化合物(a3)の具体例としては、例えば、スチレン、フルオロスチレン、ビニル塩化ベンジル、アルキルビニルベンゼン(o-,m-,p-メチルスチレン、o-,m-,p-エチルビニルベンゼン)、o-,m-,p-(クロロメチル)スチレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のビニルベンゼン類;4-ビニルビフェニル、4-ビニル-p-ターフェニル及びこれらの誘導体からなる化合物等のビフェニル化合物;並びに、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のビニルナフタレン類が挙げられるが、これらに限定されない。
特に、原料入手の観点から、アルキルビニルベンゼン及びその芳香環上に置換基を有する化合物が好ましく、エチルビニルベンゼンがより好ましい。
また、エチルビニルベンゼンのビニル基及びエチル基の置換位置は、特に限定されないが、メタ体を主成分とすることが好ましく、エチルビニルベンゼン中のメタ体の含有量は、エチルビニルベンゼンの総量に対して40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)として、芳香族モノビニル化合物(a3)を用いる場合、前記反応原料(1)中の芳香族ジビニル化合物(a2)に対する芳香族モノビニル化合物(a3)のモル比((a2)/(a3))が、99/1~50/50であることが好ましく、より好ましくは、98/2~70/30である。
本実施形態において、ポリマレイミド化合物(A)の総量(100質量%)に対して、芳香族モノビニル化合物(a3)の構造単位は0~40質量%含有することが好ましく、0~30質量%含有することがより好ましい。上記芳香族モノビニル化合物(a3)の構造単位とは、芳香族モノビニル化合物(a3)の1つのビニル基から水素原子を2つ取り除いた基をいう。
-無水マレイン酸-
本実施形態において、無水マレイン酸は、ポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)の必須成分であり、後述のポリマレイミド化合物(A)の製造方法の欄で説明する通り、芳香族アミン化合物(a1)に由来するアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)をマレイミド化する反応に使用される。
<ポリマレイミド化合物(A)の好ましい形態>
以下、本開示の好適なポリマレイミド化合物(A)の態様について、各芳香環がベンゼン環である場合を例に取り説明する。以下の化学構造式は、本開示を例示的に説明するためのものであり、本開示の範囲は、以下の化学構造式に限定されることはない。
本実施形態にポリマレイミド化合物(A)は、以下の一般式(2)で表されることが好ましい。
Figure 2024042604000007
(上記一般式(2)中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
は、以下の一般式(x):
Figure 2024042604000008
(一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、tは0~4の整数を表す。)
で表される置換基を表し、
21は水素原子又は下記一般式(i)で表される基を表し、M22は、水素原子、下記一般式(ii)で表される基又は下記一般式(iii)で表される基を表し、
Figure 2024042604000009
[上記一般式(i)中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、tは0~4の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。なお、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。]
Figure 2024042604000010
[上記一般式(ii)中、R1iiはアルキル基を表し、piiは0~4の整数を表す。なお、piiが2以上の整数である場合、複数存在するR1iiは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。上記一般式(iii)中、R1iiiはアルキル基を表し、Rは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、piiiは0~3の整数を表し、tは0~4の整数を表し、r1iiiは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりの置換数の平均値であり、1~4の数を表し、*は他の原子との結合を表す。なお、piiiが2以上の整数である場合、複数存在するR1iiiは互いに同一であっても、又は異なっていてもよく、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。]
rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)
上記一般式(2)中、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよく、qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよく、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。)で表されることが好ましい。
なお、上記一般式(2)中のR~R、X、p、q、r、t及びkの好ましい形態は、上記一般式(1)と同様である。さらには、上記一般式(i)は上記一般式(x)に対応し、上記一般式(ii)中のR1iiは上記一般式(1)中のRに対応し、上記一般式(iii)中のR1iiiは上記一般式(1)中のRに対応する。
本開示のポリマレイミド化合物(A)の数平均分子量(Mn)は、350~2,000の範囲であることが好ましく、400~1,500の範囲であることがより好ましい。また、ポリマレイミド化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は400~500,000の範囲であることが好ましく、450~400,000の範囲であることがより好ましい。
本開示のポリマレイミド化合物(A)は、低誘電率及び低誘電正接に優れる点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.001~500の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.001~400である。なお、GPC測定から得られるGPCチャートより、分子量分布が広範囲にわたり、高分子量成分が多い場合には、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が多くなるため、従来のマレイミドを使用した硬化物と比較して、脆性が抑えられ、可撓性や柔軟性に優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
なお、本実施形態のポリマレイミド化合物(A)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定したものである。
<ポリマレイミド化合物(A)の製造方法>
以下、本開示のポリマレイミド化合物(A)の製造方法について説明する。
本実施形態のポリマレイミド化合物(A)は、その製法は特に限定されず、芳香族アミン化合物(a1)と、芳香族ジビニル化合物(a2)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)として使用する、あるいは、上記一般式(1)で表される構造単位を有する限りどのように製造されたものでもよい。本開示のポリマレイミド化合物(A)の製造方法の一例としては、例えば、以下の工程(1)及び(2)を含む製造方法が挙げられる。
工程(1):反応原料(2)中において、芳香族アミン化合物(a1)と、芳香族ジビニル化合物(a2)とを反応させて、本実施形態における中間体アミン化合物(a4)を得る工程;
工程(2):反応原料(3)中において、上記工程(1)で得られた中間体アミン化合物(a4)と、無水マレイン酸とを反応させて、本開示のポリマレイミド化合物(A)を得る工程。
具体的には、本実施形態のポリマレイミド化合物(A)の製造方法は、芳香族アミン化合物(a1)と、芳香族ジビニル化合物(a2)とを固体酸触媒下で反応させる工程(1)(架橋工程とも称する。)と、前記工程(1)により生成した中間体アミン化合物(a4)と無水マレイン酸とを縮合させる工程(2)(縮合工程とも称する。)を有することが好ましい。
以下、本開示のポリマレイミド化合物(A)を製造する方法の各工程について順に説明する。
<<工程(1):中間体アミン化合物(a4)の製造工程>>
以下に、本実施形態における中間体アミン化合物(a4)の製造工程について説明する。
本実施形態における工程(1)は、特に制限されないが、例えば、上述した芳香族アミン化合物(a1)と、上述した芳香族ジビニル化合物(a2)(例えば、ジビニルベンゼン)と、更に必要に応じて、芳香族モノビニル化合物(a3)(例えば、エチルビニルベンゼン)等のその他の化合物を、酸触媒の存在下で反応させる工程である。これにより、中間体アミン化合物(a4)が生成されうる。
前記芳香族アミン化合物(a1)と、前記芳香族ジビニル化合物(a2)の配合割合としては、得られる硬化物の製造時の成形性、硬化性の物性バランスを考慮すると、前記芳香族アミン化合物(a1)1モルに対して、前記芳香族ジビニル化合物(a2)のモル割合として、0.1~10モルが好ましく、0.2~3モルがより好ましい。また、前記芳香族モノビニル化合物(a3)を併用する場合には、前記芳香族アミン化合物(a1)1モルに対して、前記芳香族ジビニル化合物(a2)と前記芳香族モノビニル化合物(a3)との合計のモル割合として、0.1~10モルが好ましく、0.2~3モルがより好ましい。
また、上記反応を実施する具体的方法としては、全原料を一括装入し、そのまま所定の温度で反応させるか、又は、芳香族アミン化合物(a1)と酸触媒とを装入し、所定の温度に保ちつつ、芳香族ジビニル化合物(a2)やその他の化合物(例えば、芳香族モノビニル化合物(a3))等を滴下させながら反応させる方法が一般的である。この際、滴下時間は、通常、0.1~12時間であり、6時間以下が好ましい。反応後、溶媒を使用した場合は、必要により、溶媒と未反応物を留去させて、前記中間体アミン化合物(a4)を得ることができ、溶媒を使用しない場合は、未反応物を留去することによって目的物である前記中間体アミン化合物(a4)を得ることができる。
本実施形態の工程(1)に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、反応後、ろ過により簡便に触媒除去が可能な固体酸がハンドリンク性の観点からも好ましく、他の酸を用いるときは、反応後、塩基による中和と水による洗浄を行うことが好ましい。
前記酸触媒の配合量は、仕込む原料(芳香族ジビニル化合物(a2)又は芳香族ジビニル化合物(a2)及び芳香族モノビニル化合物(a3)の混合物、及び、芳香族アミン化合物(a1))の総量100質量部に対して、酸触媒を1~100質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、1~60質量部が好ましい。反応温度は、通常100~270℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避けるためには100~220℃が好ましい。
本実施形態の工程(1)において、芳香族ジビニル化合物(a2)又は芳香族ジビニル化合物(a2)及び芳香族モノビニル化合物(a3)の混合物と、芳香族アミン化合物(a1)との混合物反応時間、すなわち架橋反応の時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ1~48時間の範囲であるが、好ましくは、のべ1~30時間の範囲である。
本実施形態における中間体アミン化合物(a4)の製造方法においては、アニリン又はその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。例えば、ジビニルベンゼンを原料として反応させる場合には、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、必要により触媒等に含まれる水分を共沸脱水させた後、溶媒を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
上記工程(1)により得られる中間体アミン化合物(a4)は、例えば、以下の一般式(5)で表されることが好ましい。
Figure 2024042604000011
(上記一般式(5)中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基又はメルカプト基を表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
は、以下の一般式(x):
Figure 2024042604000012
(一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rはアルキル基を表し、tは0~4の整数を表す。)
で表される置換基を表し、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)で表される構造単位を有することが好ましい。
また、上記一般式(5)において、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
なお、上記一般式(5)中のR~R、X、p、q、r、t及びkの好ましい形態は、上記一般式(1)と同様である。また、上記工程(1)により得られる中間体アミン化合物(a4)の別の好ましい形態としては、ポリマレイミド化合物(A)の好ましい形態でもある上記一般式(2)中のN-置換マレイミド基をアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)に置換した構造が挙げられる。
本実施形態において、中間体アミン化合物(a4)のアミン当量としては、172~400g/当量であることが好ましく、より好ましくは172~350g/当量である。
なお、本明細書における中間体アミン化合物(a4)のアミン当量の測定は、JIS K 0070(1992)に規定される中和滴定法に準拠した方法で測定した値とする。
<<工程(2):マレイミド化>>
本実施形態における工程(2)は、工程(1)で得られた中間体アミン化合物(a4)と、無水マレイン酸とを反応させる工程である。中間体アミン化合物(a4)のアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)がマレイミド化反応により、前記アミノ基がN-置換マレイミド環に置換された化学構造を形成することができるため、本開示のポリマレイミド化合物(A)が得られる。
本実施形態において、工程(1)により得られた上記一般式(5)で表される中間体アミン化合物(a4)を反応器に仕込み、適当な溶媒に溶解した後、触媒の存在下で無水マレイン酸と反応させる。そして反応後、水洗等により未反応の無水マレイン酸又は他の不純物を除去し、減圧によって溶媒を除くことにより目的物であるポリマレイミド化合物(A)を得ることができる。また、必要により反応時に脱水剤を用いてもよい。
本実施形態の工程(2)において使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
本実施形態の工程(2)において、中間体アミン化合物(a4)と無水マレイン酸との混合比率としては、中間体アミン化合物(a4)のアミノ当量に対する無水マレイン酸の当量比を、1~5の範囲に配合することが好ましく、より好ましくは1~3で仕込み、中間体アミン化合物(a4)と無水マレイン酸との合計量に対して、0.1~10の質量比、好ましくは0.2~5の質量比の有機溶媒中で反応させることが好ましい態様となる。
本実施形態の工程(2)において使用可能な触媒としては、ニッケル、コバルト、ナトリウム、カルシウム、鉄、リチウム、マンガン等の酢酸塩、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機塩、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、特にトルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
本実施形態の工程(2)に用いる脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸のような低級脂肪族カルボン酸無水物、五酸化リン、酸化カルシウム、酸化バリウム等の酸化物、硫酸等の無機酸、モレキュラーシーブ等の多孔性セラミック等が挙げられるが、好ましくは無水酢酸を用いることができる。
本実施形態の工程(2)において使用される触媒、脱水剤の使用量の制限は特にないが、通常、中間体アミン化合物(a4)のアミノ基(-NH)1当量に対し、触媒は0.0001~1.0モル、好ましくは0.01~0.3モル、脱水剤は1~3モル、好ましくは1~1.5モルで使用することができる。
本実施形態の工程(2)において、マレイミド化の反応条件としては、上記中間体アミン化合物(a4)と無水マレイン酸を仕込み、10~100℃、好ましくは30~60℃の温度範囲で、0.5~12時間、好ましくは1~4時間反応させた後、前記触媒を加えて、90~130℃、好ましくは105~120℃の温度範囲で、1~24時間、好ましくは1~10時間反応させることができる。
(酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を必須成分として含有する。当該(B)成分は、酸基及び重合性不飽和基を有していればよく、その他の具体構造又は分子量等は特に問われず、多種多様な樹脂を用いることができる。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)が含有する酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。これらの中でも優れたアルカリ現像性を重視する観点では、カルボキシル基が好ましい。そして、本明細書において、“重合性不飽和基”としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)としては、例えば、以下の〔1〕~〔6〕:
〔1〕酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)、
〔2〕酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)
〔3〕酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)、
〔4〕酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)、
〔5〕酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)、
〔6〕酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)、
の樹脂等が挙げられる。上記エポキシ樹脂(B1)からエステル樹脂(B6)について以下順に説明する。
<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)としては、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、及び多塩基酸無水物(b1-3)を必須の反応原料とする酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂;エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、多塩基酸無水物(b1-3)、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)を反応原料とする酸基及びウレタン結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂;などが挙げられる。
上記エポキシ樹脂(b1-1)としては、樹脂中に複数のエポキシ基を有している樹脂であれば、その具体構造は特に限定されない。前記エポキシ樹脂(b1-1)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂(b1-1)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
上記不飽和一塩基酸(b1-2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。また、前記不飽和一塩基酸の酸ハロゲン化物、エステル化物も用いることができる。さらに、下記一般式(6)で表される化合物等も用いることができる。
Figure 2024042604000013
[上記一般式(6)中、X61は、炭素数1~10のアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、(ポリ)エステル鎖、芳香族炭化水素鎖、又は(ポリ)カーボネート鎖を表し、X61の構造中の水素原子がハロゲン原子又はアルコキシ基に置換されてもよく、Y61は、水素原子又はメチル基である。]
上記一般式(6)におけるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等が挙げられる。
上記一般式(6)における(ポリ)エステル鎖としては、例えば、下記一般式(7)で表される(ポリ)エステル鎖が挙げられる。
Figure 2024042604000014
(上記一般式(7)中、R71及びR72は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n71は1~5の整数を表す。)
上記一般式(6)における芳香族炭化水素鎖としては、例えば、フェニレン鎖、ナフチレン鎖、ビフェニレン鎖、フェニルナフチレン鎖又はビナフチレン鎖等が挙げられる。また、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香環を有する炭化水素鎖も用いることができる。
上記一般式(6)における(ポリ)カーボネート鎖としては、例えば、下記一般式(8)で表される(ポリ)カーボネート鎖が挙げられる。
Figure 2024042604000015
(上記一般式(8)中、R81は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n81は1~5の整数を表す。)
一般式(6)で表される化合物の分子量は、100~500の範囲が好ましく、150~400の範囲がより好ましい。
不飽和一塩基酸(b1-2)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記多塩基酸無水物(b1-3)としては、例えば、脂肪族多塩基酸無水物、脂環式多塩基酸無水物、芳香族多塩基酸無水物、脂肪族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物、脂環式多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物、芳香族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物等が挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。また、前記脂肪族多塩基酸無水物としては、脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
上記脂環式多塩基酸無水物としては、本発明では、酸無水物基が脂環構造に結合しているものを脂環式多塩基酸無水物とし、それ以外の構造部位における芳香環の有無は問わないものとする。前記脂環式多塩基酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
上記芳香族多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
多塩基酸無水物(b1-3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物が好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物(b1-4)としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記一般式(6)で表される繰返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(b1-4)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
Figure 2024042604000016
(上記一般式(9)中、R92及びR93はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の一価の炭化水素基のいずれかを表し、R91はそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、k91は0又は1~3の整数であり、n91は1以上の整数である。)
上記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。
これらの中でも、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、分子量が1,000以下のものが好ましい。また、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)が、オキシアルキレン変性体又はラクトン変性体である場合には、重量平均分子量(Mw)が1,000以下であることが好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法は、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、及び多塩基酸無水物(b1-3)を必須の反応原料とするか、あるいは、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、多塩基酸無水物(b1-3)、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)を反応原料とするものであれば特に限定されることはない。例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法により前記エポキシ樹脂(B1)を製造してもよいし、あるいは反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、先にエポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを反応させ、次いで、多塩基酸無水物(b1-3)を反応させる方法が好ましい。該反応は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを塩基性触媒の存在下、100~150℃の温度範囲で反応させた後、反応系中に多塩基酸無水物(b1-3)を加え、80~150℃の温度範囲で反応させる方法等により行うことができる。
本実施形態において、エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)との反応割合は、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、不飽和一塩基酸(b1-2)を0.9~1.1モルの範囲で用いることが好ましい。また、多塩基酸無水物(b1-3)の反応割合は、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、0.2~1.0モルの範囲で用いることが好ましい。
上記有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド等のケトン溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶媒;カルビトール、セロソルブ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶媒;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル系溶媒;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶媒;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、上記有機溶媒としては、市販品を用いることもでき、当該市販品としては、例えば、ENEOS株式会社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学株式会社製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;出光興産株式会社「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;ExxonMobil Chemical社製「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;等が挙げられる。
上記有機溶媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、本実施形態において、有機溶媒の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
上記塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物類;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物などが挙げられる。また、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等を用いることもできる。
上記塩基性触媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、前記塩基性触媒の添加量は、反応原料の合計100質量部に対して0.001~5質量部の範囲が好ましい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の酸価は、優れた光感度性を有し、かつ高ガラス転移温度を示し、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示において酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の酸価は、JIS 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)と、カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)と、必要に応じて多塩基酸無水物(b1-3)と、前記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)とを反応させて得られた樹脂;ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、及び前記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)と、を反応させて得られた樹脂;あるいはエポキシ樹脂(b1-1)と、不飽和一塩基酸(b1-2)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)とを反応させて得られた樹脂等が挙げられる。
上記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
上記記有機溶媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載した有機溶媒と同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、上記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
<酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)>
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)としては、例えば、水酸基又はカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)をさらに反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られる反応生成物、あるいは前記反応生成物中の水酸基に多塩基酸無水物(b1-3)を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
本実施形態において、アクリル樹脂中間体は、(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであってもよい。当該その他の重合性不飽和基含有化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。
その他の重合性不飽和基含有化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
上記(メタ)アクリレート化合物(β)は、上記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
(メタ)アクリレート化合物(β)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載した有機溶媒と同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の酸価は、優れた光感度性を示し、かつ密着性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示において酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)>
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)としては、例えば、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じて、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基、及び酸無水物基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが挙げられる。なお、前記反応性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよく、あるいは有していなくてもよい。
酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)としては、酸基又は酸無水物基のどちらか一方のみを有しても、あるいは両方を有してもよい。当該アミドイミド樹脂(b4-1)は、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(1-5)又は(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物との反応性や反応制御の観点から、酸無水物基を有するものであることが好ましく、酸基と酸無水物基との両方を有するものであることがより好ましい。前記アミドイミド樹脂(b4-1)の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~350mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~360mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
また、アミドイミド樹脂(b4-1)は、必要に応じて、ポリイソシアネート化合物(b1-4)及び多塩基酸無水物(b1-3)以外に、多塩基酸を反応原料として併用することもできる。
上記多塩基酸としては、一分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物であれば何れのものも用いることができる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。
上記多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、分子構造中に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有するものであれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーや、ヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテルのジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。
上記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
また、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)の具体構造又は製造方法は特に限定されず、一般的なアミドイミド樹脂等を広く用いることができる。本実施形態のアミドイミド樹脂(b4-1)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応原料として得られるものが好ましい。
また、本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(b1-4)としては、高い溶媒溶解性を有する硬化性樹脂組成物が得られることから、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体が好ましく、脂環式ジイソシアネート又はそのイソシアヌレート変性体、脂肪族ジイソシアネート又はそのイソシアヌレート変性体がより好ましい。
本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(b1-4)の総質量中における、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体と、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体の合計質量の割合が、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましい。
また、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体と、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体とを併用する場合には、両者の質量比(脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体/脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体)が30/70~70/30の範囲であることが好ましい。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記有機溶媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の有機溶媒と同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)は、所望の樹脂性能等に応じて、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)の反応原料以外に、他の反応原料を併用することもできる。この場合、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B4)の反応原料の総質量中の前記(b4-1)~(b4-2)成分の合計質量の割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、アミドイミド樹脂(b4-1)、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)を含む反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。また、例えば、アミドイミド樹脂(b4-1)と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)との反応は、適当な塩基性触媒の存在下、80~140℃程度の温度条件下で加熱撹拌して行うことができる。酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒又は酸性触媒を用いてもよい。
上記塩基性触媒は、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の酸性触媒及び塩基性触媒と同様のものを用いることができ、それらは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。また、スルホニル基等の強酸を有する固体酸触媒等も用いることができる。これらの酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の酸価は、優れた光感度性を示し、かつ密着性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンカーボネート(b5-2a)又はアルキレンオキサイド(b5-2b)と、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、必要に応じて不飽和一塩基酸(b1-2)と反応原料とし、当該反応原料を反応させて得られた樹脂が挙げられる。
本実施形態において、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)とは、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物をいう。フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)としては、例えば、下記一般式(10.1)~(10.5)のいずれかで表される化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)と下記一般式(11.1)~(11.5)のいずれかで表される化合物とを必須の反応原料とする反応生成物、あるいは芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)又はその他分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物(b5-5)の1種又は2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
Figure 2024042604000017
(上記一般式(10.1)~(10.5)中、R101~R104及びR107それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基又はハロゲン原子のいずれかを表し、R105及びR106はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、j101~j105はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、好ましくは0又は1~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。k101~k105はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、好ましくは、2又は3である。)
なお、上記一般式(10.1)~(10.5)における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、一般式(10.2)のナフタレン環においてはいずれの環上の水素原子と置換していてもよく、一般式(10.3)では、ビフェニル1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子に置換していてもよく、一般式(10.4)では、アラルキル1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの水素原子と置換していてもよく、一般式(10.5)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子と置換していてもよいことを示し、1分子中における置換基の個数がj101~j105及びk101~k105であることを示している。
Figure 2024042604000018
(上記一般式(11.1)~(11.5)中、h81は、0又は1を表し、R111~R116はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基のいずれかを表し、k111~k116はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Z111~Z116はそれぞれ独立して、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基又はアルキルオキシメチル基のいずれかを表し、Y111は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n111は1~4の整数を表す。)
上記一般式(11.1)~(11.5)で表される化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ビフェノール、テトラヒドロキシビフェニル、ビスフェノール等の他、これらの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有する化合物などが挙げられる。また、前記芳香核上の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の一価の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアリールオキシ基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアラルキル基などが挙げられる。これらの芳香族ポリヒドロキシ化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、高い絶縁信頼性を有する酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂が得られることから、ハロゲンを含有しない化合物が好ましい。
上記ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の1種又は2種以上と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で反応させて得られる樹脂が挙げられる。
上記その他分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物(b5-5)としては、芳香核上に水酸基を1つ有する芳香族化合物であれば何れの化合物でもよく、例えば、フェノール或いはフェノールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するフェノール化合物、ナフトール或いはナフトールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するナフトール化合物、アントラセノール或いはアントラセノールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するアントラセノール化合物等が挙げられる。また、芳香核上の置換基としては、例えば、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられ、それぞれの具体例は前述の通りである。これらのフェノール性水酸基を1つ有する化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド;アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、へキシルアルデヒド等のアルキルアルデヒド;サリチルアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2-ヒドロキシ-4-メチルベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド等のヒドロキシベンズアルデヒド;2-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド等のヒドロキシ基とアルコキシ基の両方を有するベンズアルデヒド;メトキシベンズアルデヒド、エトキシベンズアルデヒド等のアルコキシベンズアルデヒド;1-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、6-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド等のヒドロキシナフトアルデヒド;ブロムベンズアルデヒド等のハロゲン化ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アルキレンカーボネート(b5-2a)としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記アルキレンオキサイド(b5-2b)としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)としては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態において、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)を酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の反応原料に用いる場合、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)と多塩基酸無水物(b1-3)との当量比[(b5-3)/(b1-3)]は、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、0.2~7の範囲が好ましく、0.25~6.7の範囲がより好ましい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の製造方法は、特に限定されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、先にフェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンカーボネート(b5-2a)又はアルキレンオキサイド(b5-2b)とを反応させて(例えば、塩基性触媒の存在下、100~200℃の温度範囲での反応)、次いで、不飽和一塩基酸(b1-2)及び/又はN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b2-3b)を反応(例えば、酸性触媒の存在下、80~140℃の温度範囲での反応)させた後、多塩基酸無水物(b1-3)を反応(例えば、80~140℃の温度範囲で反応)させる方法が好ましい。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)は、上記の反応原料から得られる樹脂である。例えば、当該アクリルアミド樹脂(B5)としては、下記一般式(12.1)で表される構造部位(I)と下記一般式(12.2)で表される構造部位(II)とを繰り返し構造単位とする樹脂構造を有する樹脂、あるいは下記式(12.3)で表される構造部位(III)と下記式(12.4)で表される構造部位(IV)とを繰り返し構造単位とする樹脂構造を有する樹脂が挙げられる。
Figure 2024042604000019
[上記式(12.1)又は(12.2)中、Rb2及びRb8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の一価の炭化水素基を表し、Rb3及びRb9はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、炭素原子数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表し、n121及びn122はそれぞれ独立して、1又は2を表し、Rb4及びRb10はそれぞれ独立して、メチレン基又は下記一般式(13.1)~(13.5)のいずれかで表される構造部位を表し、Rb5及びRb6はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、Rb5とRb6とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、Rb11は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、Rb12は、水素原子又はメチル基を表し、Rb1及びRb7はそれぞれ独立して、前記Rb3及び前記Rb9で表される基、或いは、式(12.1)で表される構造部位(I)又は式(12.2)で表される構造部位(II)が、*印が付されたRb4又はRb10を介して連結する結合点である。]
Figure 2024042604000020
[上記一般式(12.3)又は(12.4)中、Rb2及びRb8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基を表し、Rb3及びRb9はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、炭素原子数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表し、n123及びn124はそれぞれ独立して、1又は2を表し、Rb4及びRb10はそれぞれ独立して、メチレン基又は下記式(13.1)~(13.5)のいずれかで表される構造部位を表し、Rb5及びRb6はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、Rb5とRb6とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、Rb11は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、Rb12は、水素原子又はメチル基を表し、Rb1及びRb7はそれぞれ独立して、前記Rb3及び前記Rb9で表される基、或いは、一般式(12.3)で表される構造部位(III)又は一般式(12.4)で表される構造部位(IV)が、*印が付されたRb4又はRb10を介して連結する結合点である。]
Figure 2024042604000021
[上記一般式(13.1)~(13.5)中、h111は、0又は1を表し、R111~R116はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基又はアラルキル基のいずれかを表し、n111~n116はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Y111は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n111は1~4の整数を表し、R131~R136はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Wは、下記式(14.1)又は(14.2)を表す。]
Figure 2024042604000022
[上記式(14.1)又は(14.2)中、R141及びR144はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基を表し、R142及びR143はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、R142とR143とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、R145は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、R146は、水素原子又はメチル基を表す。*は酸素原子と結合する結合手を表す。]
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の酸価は、優れた光感度性を有し、かつ高いガラス転移温度を示し、密着性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定される値である。
<酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)>
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンオキサイド(b5-2b)又はアルキレンカーボネート(b5-2a)と、不飽和一塩基酸(b1-2)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応させて得られた樹脂が挙げられる。
上記アルキレンオキサイド(b5-2b)としては、上述のアルキレンオキサイド(b5-2b)として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。
アルキレンオキサイド(b5-2b)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記アルキレンカーボネート(b5-2a)としては、上述のアルキレンカーボネート(b5-2a)として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。
アルキレンカーボネート(b5-2a)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
上記有機溶媒としては、上述の樹脂(B1)~樹脂(5)の欄に記載の有機溶媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。上記塩基性触媒としては、上述の樹脂(B1)~樹脂(5)の欄に記載の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。上記酸性触媒としては、上述の樹脂(B1)~樹脂(5)の欄に記載の酸性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
以上が、本実施形態における硬化性樹脂組成物に含有される必須成分の内容である。また、本実施形態における硬化性樹脂組成物は、上述したポリマレイミド化合物(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)以外に、光重合開始剤、紫外線安定剤、保存安定化剤等の公知の各種安定剤、他の樹脂、溶媒、硬化剤、硬化助剤あるいは添加剤といった添加成分を任意に含有してもよい。
なお、本実施形態の硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
以下、本実施形態の硬化性樹脂組成物の任意成分について説明する。
(光重合開始剤)
本実施形態にかかる硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。そして、本実施形態の光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いることができる。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。
本実施形態の硬化性樹脂組成物が光重合開始剤を含有すると、温度に関係なく効率よく反応が進行し、硬化性樹脂組成物が硬化するまでの時間を短縮することができる。また、本実施形態の硬化性樹脂組成物は熱又は光により硬化することが好ましく、光により硬化することがより好ましい。光重合開始剤を使用すると、乾燥に伴う加熱等による現像後の未露光部の残存が生じにくく、結果として、熱重合開始剤を用いた系より現像性がより優れると考えられる。
また、前記光重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。
さらに、光重合開始剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等も挙げられる。
また、本実施形態に使用可能な光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。
(任意添加成分)
本実施形態における硬化性樹脂組成物は、上述したポリマレイミド化合物(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)、並びに任意に配合される光重合開始剤以外に、紫外線安定剤、保存安定化剤等の公知の各種安定剤、他の樹脂、溶媒、硬化剤、硬化助剤あるいは添加剤といった添加成分を任意に含有してもよい。
より詳細には、本実施形態の好適な硬化性樹脂組成物は、上述した必須成分(ポリマレイミド化合物(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)並びに光重合開始剤を必須に含む。)と、必要により添加される、硬化剤と、溶媒と、他の樹脂と、添加剤と、を含有してもよい。
上記硬化剤としては、エポキシ樹脂及び当該エポキシ樹脂以外の他の硬化剤(以下、他の硬化剤とも称する。)が挙げられる。また、前記他の樹脂としては、ポリマレイミド化合物(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)以外の樹脂が挙げられる。さらには、前記添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤などが挙げられる。
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、いわゆる硬化性組成物でもありうる。そして、本実施形態における硬化性樹脂組成物において、ポリマレイミド化合物(A)の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態における硬化性樹脂組成物において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態における硬化性樹脂組成物において、上述した成分(ポリマレイミド化合物(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)並びに光重合開始剤)の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、10~95質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。
本実施形態における硬化性樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
本実施形態における硬化性樹脂組成物において、添加剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
以下、本実施形態における硬化性樹脂組成物に含有されうる各成分である、硬化剤、溶媒、他の樹脂及び添加剤について詳説する。
(硬化剤)
本実施形態の硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂及び他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等)が挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。
<エポキシ樹脂>
本実施形態の好適な硬化剤であるエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を含み、前記エポキシ基で架橋ネットワークを形成することにより硬化できる硬化性樹脂であることが好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;
ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格及びジグリシジルオキシベンゼン骨格を有するエポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂;
ビナフトール型エポキシ樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
ジベンゾピラン、ヘキサメチルジベンゾピラン、7-フェニルヘキサメチルジベンゾピラン等のベンゾピラン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂のうち、フェノール化合物をエポキシ化して得られる、いわゆるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、その中でもノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であることが、誘電特性の観点からより好ましい。なお、上述のエポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、120~400g/eqであることが好ましく、150~300g/eqであることがより好ましい。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が120g/eq以上であると、得られる硬化物の誘電特性により優れることから好ましく、一方、エポキシ樹脂のエポキシ当量が400g/eq以下であると、得られる硬化物の密着性及び低誘電特性のバランスに優れることから好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂の軟化点は、優れた光感度性、高密着性、高ガラス転移温度及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、20~200℃であることが好ましく、40~150℃であることがより好ましい。
本実施形態において、エポキシ樹脂の使用量に関し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、エポキシ樹脂の使用量の官能基当量比((酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))/エポキシ樹脂)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物が、より低誘電正接、高い柔軟性となりうることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、耐熱性、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
<他の硬化剤>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と共に、あるいはエポキシ樹脂の代わりに他の硬化剤を含有してもよい。前記他の硬化剤としては、特に制限されないが、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に制限されないが、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン(MDA)、イソフオロンジアミン(IPDA)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、ピペリジン、N,N,-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン等の脂肪族アミン;m-キシレンジアミン(XDA)、メタンフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン等が挙げられる。
上記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
上記フェノール樹脂硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
上述の他の硬化剤はいずれも、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤)の使用量に関し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、当該他の硬化剤の使用量の官能基当量比((酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))/他の硬化剤)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物が、より低誘電正接、高い柔軟性となりうることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、耐熱性、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
(他の樹脂)
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に加えて、あるいは前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に代えて他の樹脂を含んでいてもよい。
前記他の樹脂の具体例としては、特に制限されないが、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、シアン酸エステル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の硬化性樹脂組成物における他の樹脂の含有量は、全体の50質量%以下であることが好ましい。
(溶媒)
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、無溶媒で調製しても構わないし、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒は、硬化性樹脂組成物の粘度を調整する機能等を有する。
前記溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の硬化性樹脂組成物における溶媒の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)中、0~90質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることがさらに好ましい。前記溶媒の含有量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の含有量が90質量%以下であると、経済性の観点から好ましい。
(添加剤)
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤等が挙げられる。すなわち、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、目的を逸脱しない範囲において、必要に応じて、上記他の樹脂、上記溶媒、上記硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤等のその他の各種添加剤を適量含有することもできる。
<硬化促進剤>
本実施形態の硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。上述の硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
上記アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
上記イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
上記グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
上記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
上述の硬化促進剤のうち、2-エチル-4-メチルイミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)を用いることが好ましい。
本実施形態の硬化性樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は、所望の硬化性を得るために適宜調整できるが、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることが更に好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上であると、硬化性に優れることから好ましい。一方、硬化促進剤の含有量が5質量部以下であると、絶縁信頼性に優れることから好ましい。同様の観点から、硬化促進剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上であることがより好ましく、また、3質量部以下であることがより好ましい。
<難燃剤>
本実施形態の難燃剤としては、特に制限されないが、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
前記無機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等が挙げられる。
上記有機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸エステル;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等ジフェニルホスフィン;10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジオキシナフタレン)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等のリン含有フェノール;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状リン化合物;前記リン酸エステル、前記ジフェニルホスフィン、前記リン含有フェノールと、エポキシ樹脂やアルデヒド化合物、フェノール化合物と反応させて得られる化合物等が挙げられる。
上記ハロゲン系難燃剤としては、特に制限されないが、臭素化ポリスチレン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、1,2、-ビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、テトラブロモフタル酸等が挙げられる。上述の難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の難燃剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましい。難燃剤の含有量が0.1質量部以上であると、難燃性を付与できることから好ましい。一方、難燃剤の含有量が50質量部以下であると、誘電特性を維持しながら難燃性を付与できることから好ましい。同様の観点から、難燃剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1質量部以上であることがより好ましく、また、30質量部以下であることがより好ましい。
<充填剤>
本実施形態の充填剤としては、有機充填剤、無機充填剤が挙げられる。有機充填剤は、伸びを向上させる機能、機械的強度を向上させる機能等を有する。無機充填剤は、熱膨張率の低減や難燃性の付与といった機能を有する。
前記有機充填剤としては、特に制限されないが、ポリアミド粒子等が挙げられる。
上記無機充填剤としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、シリカを用いることが好ましい。この際、シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が用いられうる。
また、上記充填剤は、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際、使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用されうる。表面処理剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。なお、上述の充填剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の充填剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.5~95質量部であることが好ましく、5~80質量部であることがより好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部以上であると、充填剤の効果を十分に付与できることから好ましい。一方、配合物の粘度が高くなり成形性を損なわないように、充填剤の含有量が95質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、充填剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、5質量部以上であることがより好ましく、また、80質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態の硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
[硬化物]
本実施形態における硬化物は、上述した硬化性樹脂組成物を硬化してなる。すなわち、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、いわゆる硬化性組成物としても使用することができる。当該硬化性樹脂組成物に含有されるポリマレイミド化合物(A)自体が、実質的に極性官能基を有していないため誘電正接が低いことから、前記硬化性樹脂組成物から得られる硬化物も誘電正接が低くなり、また、得られる硬化物は柔軟性、柔軟性に起因する銅箔等の金属への密着性、及び、低誘電特性を発現させることのでき、好ましい態様となる。
本実施形態の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
本実施形態において、紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/mであることが好ましく、0.5~10kJ/mであることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上の複数回に分けて行ってもよい。
本実施形態における硬化性樹脂組成物又は硬化物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用硬化性樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、樹脂注型材料、接着剤、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、導電ペースト、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、繊維強化複合材料、上記複合材料を硬化させてなる成形品等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。さらに、上記の中でも、硬化物が優れた柔軟性、密着性、低誘電特性、及び、耐熱性等を有するといった特性を生かし、本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、フレキシルブル配線基板、回路基板、及び、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、多層プリント配線板、繊維強化複合材料、前記複合材料を硬化させてなる成形品に用いることが好ましい。
[絶縁材料]
本実施形態における絶縁材料は、上述した硬化性樹脂組成物からなる。当該絶縁材料としては、上述のビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、回路基板用絶縁材料及び電子部品内蔵用基板用の絶縁材料などが挙げられる。例えば、上記硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板を製造する方法としては、以下に示す3つの工程からなる方法で製造されるものが挙げられる。第1の工程は、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記硬化性樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程であり、第2の工程は、その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程であり、第3の工程は、このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程である。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましい。第一の工程は、上述の溶液塗布によるもの以外にも、あらかじめ所望の厚みに塗工して乾燥したビルドアップフィルムのラミネートによる方法でも行うことができる。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該硬化性樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を製造することも可能である。
[レジスト部材]
本実施形態におけるレジスト部材は、上述した硬化性樹脂組成物からなる。当該レジスト部材は、例えば、前記硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で有機溶媒を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、必要により更に140~180℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。かかる本実施形態のレジスト部材は、低誘電特性及び伸度に優れる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、GPC測定、H-NMR測定、13C-NMR測定、FD-MSスペクトル測定に関しては、以下の条件等にて測定した。
(評価方法)
<GPC測定>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成例・実施例等で得られたポリマレイミド化合物(A)、及び、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)のGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、原料ピークの減少及び消失から、目的生成物(ポリマレイミド化合物(A)、及び、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))が生成していることを確認した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:以下に示す合成例・実施例等で得られた、ポリマレイミド化合物(1)~(5)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-1)~(B-2)をそれぞれ固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)を使用した。
<FD-MSスペクトル測定>
FD-MSスペクトルは、以下の測定装置、測定条件を用いて測定した。この結果より、目的生成物(ポリマレイミド化合物(1)~(5))に相当する質量ピークを確認した。
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
H-NMR測定>
H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記H―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
13C-NMR測定>
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:150MHz
積算回数:320回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記13C―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
<試験片の作製及びピール強度の測定(密着性の評価)>
-試験片の作製-
銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に対して、各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を塗膜に照射した後、160℃で1時間加熱し、試験片1を得た。
-ピール強度測定(密着性の評価)-
密着性の評価は、下記のピール強度の測定により行った。
上記試験片1を幅1cm、長さ12cmの大きさに切り出し、剥離試験機(株式会社A&D製「A&Dテンシロン」、剥離速度50mm/分)を用いて90°ピール強度(N/cm)を測定した。
<誘電率及び誘電正接測定(誘電特性の評価)>
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、前記硬化塗膜をガラス基材から剥離し、硬化物を得た。次いで、当該硬化物を温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管したものを試験片2とし、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「4291B RFインピーダンスマテリアルアナライザー、16453A」を用いて、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。
<光感度の評価方法>
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布した後、80℃でそれぞれ30分間乾燥させた。次いで、コダック社製のステップタブレットNo.2を介し、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射した。これを1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で180秒現像し、残存した段数を評価した。なお、残存段数が多いほど光感度が高いことを表す。
(合成例1)ポリマレイミド化合物(A-1)の合成
(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けたフラスコに、2-エチルアニリン242.4質量部(2.0mol)、キシレン242質量部及び活性白土80質量部を仕込み、攪拌しながら130℃まで昇温し、30分間ホールドした。その後、DVB-810(ジビニルベンゼン/エチルスチレンの混合物(ジビニルベンゼン/エチルスチレン=81/19(mol)%)、日鉄ケミカル&マテリアル製)272.0質量部を2時間かけて滴下し、そのまま1時間反応させた。その後、6時間かけて190℃に昇温させ、10時間ホールドした。反応後、100℃まで空冷し、トルエン300質量部で希釈してろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体アミン化合物(c-1)を得た。中間体アミン化合物(c-1)のアミン当量は214g/当量であった。
当該中間体アミン化合物(c-1)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。
(II)マレイミド化
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、無水マレイン酸117.7質量部(1.2mol)及びトルエン700質量部を仕込み、室温で攪拌した。次に、上記中間体アミン化合物(c-1)を214質量部(1当量)とDMF175質量部との混合溶液を1時間かけて滴下し、その後2時間反応させた。その反応液にp-トルエンスルホン酸一水和物37.1質量部を加え、115℃まで加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンとを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を5時間行った。室温まで空冷後、49%NaOHで中和した。その後、60℃でトルエンと水を減圧留去し、フラスコ内に残ったDMF溶液にMEK(メチルエチルケトン)600質量部を加えた。その溶液を60℃に昇温後、イオン交換水200質量部で3回分液処理して溶液中の塩を取り除いた。さらに硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し得られた反応物を80℃で真空乾燥を行い、ポリマレイミド化合物(1)を得た。当該ポリマレイミド化合物(1)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その測定結果を、図1A~図1Cに示す。また、GPC測定結果より、ポリマレイミド化合物(1)のMnは578、Mwは717、Mw/Mnは1.24であった。
(合成例2)ポリマレイミド化合物(2)の合成
上記合成例1の“(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成”の欄において、2-エチルアニリンを2,3-ジメチルアニリンへと変更した以外は、合成例1と同様に反応を行い、ポリマレイミド化合物(2)を合成した。その後、該ポリマレイミド化合物(2)の化学構造及び特性解析を、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。GPC測定結果より、ポリマレイミド化合物(2)のMnは511、Mwは9,869、Mw/Mnは19.32であった。当該ポリマレイミド化合物(2)のGPC測定結果を図2に示す。
(合成例3)ポリマレイミド化合物(3)の合成
上記合成例1の“(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成”の欄において、2-エチルアニリンを2,6-ジメチルアニリンへと変更した以外は、合成例1と同様に反応を行い、ポリマレイミド化合物(3)を合成した。その後、該ポリマレイミド化合物(3)の化学構造及び特性解析を、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。GPC測定結果より、ポリマレイミド化合物(3)のMnは509、Mwは560、Mw/Mnは1.10であった。当該ポリマレイミド化合物(3)のGPC測定結果を図3に示す。
(合成例4)ポリマレイミド化合物(4)の合成
上記合成例1の“(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成”の欄において、2-エチルアニリンを2-エチル-6-メチルアニリン270.4質量部(2mol)へと変更した以外は、合成例1と同様に反応を行い、ポリマレイミド化合物(4)を合成した。その後、該ポリマレイミド化合物(4)の化学構造及び特性解析を、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。GPC測定結果より、ポリマレイミド化合物(4)のMnは550、Mwは1,029、Mw/Mnは1.87であった。当該ポリマレイミド化合物(4)のGPC測定結果を図4に示す。
(合成例5)ポリマレイミド化合物(5)の合成
(1)中間体アミン化合物(c-5)の合成
上記合成例1の“(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成”の欄において、「DVB-810の仕込み量272.0質量部」を、「DVB-570(ジビニルベンゼン/エチルスチレンの混合物(ジビニルベンゼン/エチルスチレン=57/43(mol)%)、日鉄ケミカル&マテリアル製)の仕込み量316.4質量部」に変更し、かつ「活性白土の仕込み量80質量部」を「活性白土の仕込み量112質量部」に変更した以外は、合成例1と同様に反応を行い、中間体アミン化合物(c-5)を得た。中間体アミン化合物(c-5)のアミン当量は272g/当量であった。
(2)マレイミド化
上記合成例1の“(II)マレイミド化”の欄において、「中間体アミン化合物(c-1)214g(1当量)」を、「中間体アミン化合物(c-5)272g(1当量)」に変更した以外は、合成例1と同様に反応を行い、ポリマレイミド化合物(5)を合成した。その後、該ポリマレイミド化合物(5)の化学構造及び特性解析を、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その結果を、図5A~図5Cに示す。GPC測定結果より、ポリマレイミド化合物(5)のMnは998、Mwは367,834、Mw/Mnは368.70であった。
(合成例6)酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-1)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート123質量部を入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON N-680」(DIC株式会社製、軟化点86℃、エポキシ当量:214g/eq、)214質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、メトキノン0.2質量部加えた後、アクリル酸72質量部、トリフェニルホスフィン1.4質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート72質量部、テトラヒドロ無水フタル酸76質量部を加え110℃で3時間反応し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-1)を得た。当該酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-1)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は80mgKOH/gであった。なお、酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定した値である。
(合成例7):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-2)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート499.7質量部を入れ、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(EVONIK社製「VESTANAT T-1890/100」、NCO%=17.2%)244.3質量部及び無水トリメリット酸192.0質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1.0質量部を添加した。窒素雰囲気下で160℃、6時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認した。次いで、熱重合禁止剤としてメトキノン0.4質量部加えた後、ペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(東亜合成株式会社製「アロニックス M-306」、水酸基価:159.7mgKOH/g)147.6質量部及びトリフェニルホスフィン3.5質量部を添加し、空気を吹き込みながら110℃で5時間反応を行なった。その後、グリシジルメタクリレート165.0質量部を添加し、110℃で6時間反応させた。次に、無水コハク酸110.4質量部を加え110℃で5時間反応させて、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-2)を得た。当該樹脂(B-2)の固形分酸価は、80mgKOH/gであった。
(比較合成例1)比較用マレイミド化合物(C1)>
比較用マレイミド化合物(C1)として、以下の式(c1):
Figure 2024042604000023
で表される比較用マレイミド(「BMI-2300」大和化成工業株式会社製)を使用した。
(実施例1~11:硬化性樹脂組成物(1)~(10)の調製と評価)
上記合成例で得られたポリマレイミド化合物(1)~(5)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B―1)~(B-2)と、光重合性開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 907」)と、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214)と、有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)と、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと、顔料としてフタロシアニングリーンとを、表1に示す組成比で混合し、硬化性樹脂組成物(1)~(10)を得た。
そして、上記(評価方法)の欄に記載の評価方法の手順に従い、当該硬化性樹脂組成物(1)~(10)について、光感度の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
(比較例1:比較用組成物の調製(C1)と評価)
実施例1~10と同様に、表1に示す組成比で各成分を混合し、比較用組成物(C1)を得た。そして、比較例1の比較用組成物(C1)について、上記(評価方法)の欄に記載の評価方法の手順に従い、光感度の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
(実施例11~20:硬化性樹脂組成物(11)~(20)の調製と評価)
上記合成例で得られたポリマレイミド化合物(1)~(5)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B―1)~(B-2)と、光重合性開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 907」)と、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214)とを、表2に示す組成比で混合し、硬化性樹脂組成物(11)~(20)を得た。
そして、上記(評価方法)の欄に記載の評価方法の手順に従い、当該硬化性樹脂組成物(11)~(20)について、ガラス転移温度(Tg)、ピール強度及び誘電特性(誘電率及び誘電正接)の評価を行った。その結果を以下の表2に示す。
(比較例2:比較用組成物の調製(C2)と評価)
実施例11~20と同様に、表2に示す組成比で各成分を混合し、比較用組成物(C2)を得た。そして、比較例2の比較用組成物(C2)について、上記(評価方法)の欄に記載の評価方法の手順に従い、ガラス転移温度(Tg)、ピール強度及び誘電特性(誘電率及び誘電正接)の評価を行った。その結果を以下の表2に示す。
Figure 2024042604000024
Figure 2024042604000025
表1及び表2の結果から、実施例の硬化性樹脂組成物は、比較例の比較用組成物に比べ、優れた光感度性を示し、かつ得られる硬化物において、優れた密着性及び低誘電特性を発現できることが確認された。
本開示によれば、優れた光感度性を有し、かつ高いガラス転移温度を示し、密着性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、絶縁材料及びレジスト材料を提供することができる。

Claims (6)

  1. 芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)及び無水マレイン酸を反応原料(1)とするポリマレイミド化合物(A)と、
    酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)と、を含有する硬化性樹脂組成物。
  2. 前記ポリマレイミド化合物(A)と、前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)との固形分の質量比[(A)/(B)]が、1/100~100/100の範囲である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記ポリマレイミド化合物(A)は、以下の一般式(1):
    Figure 2024042604000026
    (上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、前記アルキル基を表し、
    はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、
    、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
    は、以下の一般式(x):
    Figure 2024042604000027
    (一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、tは0~4の整数を表す。)
    で表される置換基を表し、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)で表される構造単位を有する、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
  5. 請求項3に記載の硬化性樹脂組成物を用いたことを特徴とする、絶縁材料。
  6. 請求項3に記載の硬化性樹脂組成物を用いたことを特徴とする、レジスト部材。
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