JP2024006097A - 樹脂組成物、硬化物、及び物品 - Google Patents

樹脂組成物、硬化物、及び物品 Download PDF

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Abstract

【課題】本開示は、得られる硬化物において、優れた密着性及び低誘電特性を発現させることのできる、樹脂組成物、及び、前記樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、物品を提供することにある。【解決手段】以下の一般式(1a)で表される構造単位を有し、前記構造単位に結合される末端部位の少なくとも一つがアルケニル基であるインダン環含有化合物(A)と、重合性不飽和基を有する化合物(B)と、光重合開始剤と、を含有する樹脂組成物である。TIFF2024006097000038.tif50151【選択図】なし

Description

本開示は、樹脂組成物、前記樹脂組成物より得られる硬化物、及び物品に関する。
近年、紫外線等の活性エネルギー線により硬化可能な活性エネルギー線硬化性組成物や、熱により硬化可能な熱硬化性組成物などの硬化性組成物は、インキ、塗料、コーティング剤、接着剤、光学部材等の分野において広く用いられている。
なかでも、上記コーティング剤は、用途に応じて、硬化性、耐熱性又は低誘電特性をはじめとする種々の特性が求められることから、上記特性に見合った適切な材料を用いて製造することが肝要である。この点に関し、硬化物における低誘電特性に優れる傾向を示す材料として、特許文献1の技術がある。
当該特許文献1には、空孔導入しなくとも低い誘電率を有し、好適な層間絶縁膜材料として、所定のインダン骨格を有するポリインダン誘導体からなる炭化水素樹脂が開示されている。
特開2007-311732号公報
しかしながら、特許文献1の技術により得られたポリインダン誘導体からなる低誘電材料では、分子中に残存するビニル基の量が限られてしまうため、上記コーティング剤に用いると、基材に対する硬化物の密着性が実用できるレベルに至っていない。そのため、硬化物の諸物性において、昨今の市場要求を満たすものではなく、特許文献1の技術を上記コーティング剤に適用することについて、検討の余地が残る。
そこで、本開示は、優れた密着性及び低誘電特性を有する硬化塗膜を得ることが可能な樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本開示は、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物、及びかかる硬化物を用いた物品を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のインダン環含有化合物(A)と、重合性不飽和基を有する化合物(B)と、光重合開始剤とを含有する樹脂組成物が、優れた密着性及び低誘電特性を発現させることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
本開示の樹脂組成物は、以下の一般式(1a)で表される構造単位を有し、前記構造単位に結合される末端部位の少なくとも一つがアルケニル基である、インダン環含有化合物(A)と、重合性不飽和基を有する化合物(B)と、光重合開始剤と、を含有する。
Figure 2024006097000001
(上記一般式(1a)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、n12は繰り返し単位数を表す。)
本開示によれば、優れた密着性及び低誘電特性を有する硬化塗膜を得ることが可能な樹脂組成物を提供することができる。また、本開示によれば、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物、及びかかる硬化物を用いた物品を提供することができる。
図1は、合成例1で得られたインダン環含有化合物(A-1)のGPCチャートを示す。 図2は、合成例2で得られたインダン環含有化合物(A-2)のGPCチャートを示す。 図3は、合成例3で得られたインダン環含有化合物(A-3)のGPCチャートを示す。 図4は、合成例4で得られたインダン環含有化合物(A-4)のGPCチャートを示す。 図5は、合成例5で得られたインダン環含有化合物(A-5)のGPCチャートを示す。 図6は、合成例1で得られたインダン環含有化合物(A-1)のFD-MSチャートを示す。 図7は、合成例1で得られたインダン環含有化合物(A-1)の13C-NMRチャートを示す。
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において特段の記載が無い限り、以下の用語を適用できる。
[用語]
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、インダン環含有化合物(A)(当該インダン環含有化合物(A)を1種又は2種以上含む混合物を含む)を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「芳香族基」は、炭素原子数3~30の芳香族環を有することが好ましく、炭素原子数4~26の芳香族環を有することがより好ましい。そして、本明細書における「芳香族基」は、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、置換基、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。また、「芳香族基」は、複素芳香族を含み、「芳香族基」中の-CH-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。
当該芳香族環の種類は、例えば、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環等が挙げられる。前記単環芳香族環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮環芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香族環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
なお、一価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を1つ除いた基をいい、二価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を2つ除いた基をいい、三価~六価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を3~6つ除いた基をいう。
本明細書における「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。また、当該「アリール基」は、当該アリール基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アリーレン基」は、前記「アリール基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビフェニル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。当該アラルキル基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数2~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アラルキレン基」は、前記「アラルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。
本明細書における「シクロアルキル基」は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基等が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、アクリル基又はメタクリル基等が挙げられる。また、「アルケニレン基」は、前記「アルケニル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基又はノニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリール基」は、フェニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基等が挙げられる。
本明細書における「アリールオキシ基」は、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基、フェナントリルオキシ基又はピレニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書における「アルキレン基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、上記の「アルキル基」の例示の基から任意の位置の水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
本明細書における「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。「フルオロアルキル基」は、直鎖状又は分枝状のフルオロアルキル基でありうる。そして、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上、好ましくは1~11個でありうる。また、「フルオロアルキル基」は、アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基を包含する。
本明細書における「パーフルオロアルキル基」は、例えば、トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-C)、ヘプタフルオロプロピル基(-CFCFCF)及びヘプタフルオロイソプロピル基(-CF(CF)が挙げられる。
本明細書における「フルオロアルキル基」は、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、パーフルオロペンチル基及びパーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
本明細書における「一価の有機基」とは、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、前記炭素原子数6~20のアリール基は、当該アリール基中の1又は2以上の水素原子がハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基に置換されてもよい。また、本明細書における「アミノ基」は、-NHだけでなく、置換アミノ基を含み、例えば、-NR(R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)で表される。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
[樹脂組成物]
本開示は、インダン環含有化合物(A)(以下、(A)成分とも称する。)と、重合性不飽和基を有する化合物(B)(以下、(B)成分とも称する。)と、光重合開始剤とを含有する樹脂組成物である。そして、前記インダン環含有化合物(A)は、上記一般式(1a)で表される構造単位と、前記構造単位に結合される末端部位の少なくとも1つがアルケニル基である。
本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が非常に高いことに起因して、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示すことから、誘電正接が極めて低く、かつインダン環が備える縮環構造により化学的熱安定性に優れる。そして、インダン環含有化合物(A)の分子鎖の末端部にアルケニル基を有するため、重合性不飽和基を有する化合物(B)と組み合わせることにより、得られる硬化物において、優れた密着性及び低誘電特性を発現させることができる。
本開示の樹脂組成物において、インダン環含有化合物(A)の含有量は、優れた密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、1~50質量%の範囲が好ましい。インダン環含有化合物(A)の含有量の上限又は下限は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
また、本開示の樹脂組成物において、重合性不飽和基を有する化合物(B)の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、10~95質量%の範囲が好ましい。また、重合性不飽和基を有する化合物(B)の含有量の上限又は下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
さらに、本開示の樹脂組成物において、光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.1~14質量%の範囲が好ましい。また、光重合開始剤の含有量の上限又は下限は、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上が更に好ましく、また、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい
本実施形態において、インダン環含有化合物(A)と、重合性不飽和基を有する化合物(B)との固形分の質量比[(A)/(B)]は、優れた密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、5/95~50/50の範囲が好ましい。同様の観点から、上記質量比[(A)/(B)]の上限又は下限は、10/90以上であることがより好ましく、20/80以上であることが更に好ましく、また、40/60以下であることがより好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、必須成分であるインダン環含有化合物(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する化合物(B)並びに光重合開始剤以外、任意に添加される添加成分をさらに含有してもよい。
また、本実施形態における樹脂組成物は(A)成分、(B)成分、光重合開始剤及び任意に添加される添加成分のみから、実質的に構成されてもよい。さらには、(A)成分、(B)成分及び光重合開始剤のみから構成されてもよい。
本実施形態の樹脂組成物の総量(100質量%)における(A)成分、(B)成分及び光重合開始剤の合計含有量は、優れた密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
上記(A)成分、(B)成分、光重合開始剤及び添加成分のみから」とは、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは40~98質量%、又は少なくとも50~95質量%が(A)成分、(B)成分及び光重合開始剤である、あるいは(A)成分、(B)成分、光重合開始剤及び添加成分であることを意味する。
また、本実施形態の好ましい樹脂組成物において、上記の、(A)成分、(B)成分、光重合開始剤、無機充填剤及び添加成分の総量は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~99質量%でありうる。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、本開示の効果を損なわない範囲あれば、(A)成分、(B)成分、光重合開始剤及び添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
以下、本実施形態における樹脂組成物に含有される各成分である、インダン環含有化合物(A)、重合性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤及び添加成分について説明する。
(インダン環含有化合物(A))
本開示に係るインダン環含有化合物(A)は、以下の一般式(1a)で表される構造単位を有し、かつ前記インダン環含有化合物(A)の分子鎖の末端部位の少なくとも1つにアルケニル基を有する。
Figure 2024006097000002
(上記一般式(1a)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、n12は平均繰り返し単位数を表す。)
本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が非常に高いことに起因して、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示すことから、誘電正接が極めて低く、かつインダン環が備える縮環構造により化学的熱安定性に優れる。これにより、優れた耐熱性及び低誘電正接性を高次に両立することができると考えられる。
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、一般式(1a)で表される構造単位を有し、かつ前記インダン環含有化合物(A)の分子鎖の末端部位の少なくとも1つにアルケニル基を有していればよく、化合物単体であっても、あるいは混合物であってもよい。
上記一般式(1a)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基が挙げられる。中でも、R11、R12及びR13は同一のアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(1a)中、n12は平均繰り返し単位数を表し、具体的には、0.5~20の範囲であることが好ましく、0.8~15の範囲であることがより好ましく、1~10の範囲であることがさらに好ましい。
平均繰り返し単位数n12が、0.5~20の範囲であると、比較的高分子量のインダン環含有化合物(A)を形成できるため好ましい。また、平均繰り返し単位数n12が上記範囲であると、架橋点間距離が比較的短くなり、高架橋密度化に伴う耐熱性向上の観点で好ましい。また、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が高くなるため、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示しやくなり、誘電正接をより低減できる。
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、その分子鎖の末端部位の少なくとも1つにアルケニル基を有する。これにより、インダン環含有化合物(A)が熱硬化性及び光(UV等の活性エネルギー線)硬化性(以下、UV硬化性とも称する。)を示すため、種々の反応又は用途に応用することができる。特に、良好な現像性の観点から、樹脂組成物全体として、光(UV等の活性エネルギー線)硬化性に優れるインダン環含有化合物(A)であることが好ましい。
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)の分子鎖の末端部位に結合されるアルケニル基としては、直鎖状又は分岐状の炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましく、直鎖状又は分岐状の炭素原子数2~6のアルケニル基であることがより好ましく、直鎖状又は分岐状の炭素原子数2~4のアルケニル基であることがさらに好ましい。
本実施形態において、上記アルケニル基は、上記「定義」の欄に記載した通り、種々のアルケニル基が挙げられるが、中でも、第4級炭素を少なくとも1つ有するアルケニル基であることが好ましく、第4級炭素を少なくとも1つ有し、かつ前記第4級原子の結合手の1つが一般式(1a)で表される構造単位と直接又は間接的に化学結合するアルケニル基であることがより好ましく、以下の一般式(x)で表されるアルケニル基であることがさらに好ましい。
Figure 2024006097000003
(上記一般式(x)中、Rx1は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、Rx2は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、*は他の原子と化学的に結合される結合手を表す。)
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、その分子鎖の末端部位の少なくとも1つにアルケニル基を有し、その他の分子鎖の末端部位としては特に制限はなく、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基又は一価の有機基が挙げられる。優れたUV硬化性を示す観点から、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の分子鎖の末端部位にはアルケニル基が多く導入されることが好ましく、理想的にはインダン環含有化合物(A)の分子鎖の末端部位の全てがアルケニル基であることが好ましい。例えば、一般式(1a)で表される構造単位が10単位当たり(n12=10)、1以上のアルケニル基を有することが好ましい。
実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、直鎖状の分子鎖、あるいは分岐状の分子鎖を有し、前記分子鎖は上記一般式(1a)で表される構造単位を主鎖として構成されていることが好ましい。
より詳細には、本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)が直鎖状の分子鎖である場合、当該インダン環含有化合物(A)の好ましい一態様は、上記一般式(1a)で表される構造単位が直線状に連結され、かつ直線状に連結された一般式(1a)で表される構造単位の少なくとも一方の末端部にアルケニル基が結合されている化学構造を有する。また、前記直線状に連結された一般式(1a)で表される構造単位の他方の末端部の基は特に制限されることは無く、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基又は一価の有機基が挙げられ、前記直線状に連結された一般式(1a)で表される構造単位の他方の末端部の基は、アルケニル基であることが好ましい。
一方、本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)が分岐状の分子鎖を有する場合、当該インダン環含有化合物(A)の好ましい一態様は、上記一般式(1a)で表される構造単位が直線状に連結された縮合環含有分子鎖を3以上有し、かつ3以上の前記縮合環含有分子鎖の一方の末端部が三価以上の有機基又は上記一般式(1a)中のベンゼン環の炭素原子に化学的に結合され、そして、前記3以上の前記縮合環含有分子鎖の他方の末端部が水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルケニル基又は一価の有機基に化学的に結合された化学構造を有し、さらには前記3以上の前記他方の末端部の少なくとも1以上がアルケニル基に化学的に結合されている構造である。
なお、本明細書における「三価の有機基」とは、上記「一価の有機基」から水素原子を任意の位置で2つ取り除いた基をいう。
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、直鎖状の分子鎖から構成されていることがより好ましい。インダン骨格を直鎖状に有することにより、より可撓性に優れ、耐脆性の改善も見込まれ、好ましい。
本開示のインダン環含有化合物(A)の数平均分子量(Mn)は、320~3,000の範囲であることが好ましく、350~2,000の範囲であることがより好ましい。また、インダン環含有化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は350~7,000の範囲であることが好ましく、400~4,000の範囲であることがより好ましい。
本開示のインダン環含有化合物(A)は、耐熱性及び誘電特性に優れる点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.1~15の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.1~10であり、更に好ましくは、1.1~8である。なお、GPC測定から得られるGPCチャートより、分子量分布が広範囲にわたり、高分子量成分が多い場合には、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が多くなるため、従来のインダン環含有化合物(A)を使用した硬化物と比較して、脆性が抑えられ、可撓性や柔軟性に優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
なお、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定したものである。
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)が直鎖状の分子鎖である場合、すなわち、上記一般式(1a)で表される構造単位が直線状に連結され、かつ直線状に連結された一般式(1a)で表される構造単位の少なくとも一方の末端部にアルケニル基が結合されている化学構造を一例にして、インダン環含有化合物(A)の好ましい形態について以下説明する。
<インダン環含有化合物(A)の好ましい形態>
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、以下の一般式(1b):
Figure 2024006097000004
(上記一般式(1b)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
11、Q12、L11及びL12はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表し、但し、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよく、
11及びP12はそれぞれ独立して、水素原子、極性基、前記極性基に置換されてもよい炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基又は以下の一般式(2)で表される基を表し、
11及びM12はそれぞれ独立して、単結合又は以下の一般式(3)で表される基を表し、
12は平均繰り返し単位数を表し、n11及びn13はそれぞれ独立して、0~20を表す。但し、P11及びP12の少なくともいずれか一方が炭素原子数2~10のアルケニル基である。
Figure 2024006097000005
[上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。]
[上記一般式(3)中、R16はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。])
なお、上記一般式(2)及び(3)中、*は他の原子との結合を表す。)で表されることが好ましい。
また、本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、一般式(1b)で表される化合物であっても、あるいは、一般式(1b)で表される化合物が複数種混合した混合物であってもよい。本明細書において、インダン環含有化合物(A)が混合物である場合の態様を、インダン系混合物と称して後述する。
本実施形態の上記一般式(1b)において、n12が2以上である場合、複数存在するR11、R12及びR13はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。また、n11が2以上である場合、複数存在するM11はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。同様に、複数存在するL11はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
さらには、n13が2以上である場合、複数存在するM12はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。同様に、複数存在するL12はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(2)において、nが2以上である場合、複数存在するR15はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(3)において、nが2以上である場合、複数存在するR16はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(1b)中、R11はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表すことがより好ましい。また、n12が2以上である場合、複数存在するR11は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1b)中の特に好ましいR11としては、メチル基、エチル基又はn-プロピル基である。なお、一般式(1b)中のR11が結合したインダン環中のベンゼン環は、後述の芳香族化合物(i)のベンゼン環に対応する。
上記一般式(1b)中、R12はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表すことがより好ましい。また、n12が2以上である場合、複数存在するR12は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1b)中の特に好ましいR12としては、メチル基、エチル基又はn-プロピル基である。なお、一般式(1b)中のR12が結合したインダン環中のベンゼン環は、後述の芳香族化合物(i)のベンゼン環に対応する。
上記一般式(1b)中、R13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、炭素原子数1~4のアルキル基を表すことがより好ましい。また、n12が2以上である場合、複数存在するR13は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1b)中の特に好ましいR13としては、メチル基、エチル基又はn-プロピル基である。なお、一般式(1b)中のR13が結合したインダン環中のベンゼン環は、後述の芳香族化合物(i)のベンゼン環に対応する。
上記一般式(1b)中、Q11は、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表すことが好ましい。但し、Q11が炭素原子数2以上のアルキレン基である場合、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよい。上記一般式(1b)中、Q11は、単結合、炭素原子数1~6のアルキレン基又は炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。一般式(1b)中の特に好ましいQ11としては、単結合、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基、ネオペンチレン基又は1,2-ジメチルプロピレン基である。上記一般式(1b)中、Q12は、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表すことが好ましい。但し、Q12が炭素原子数2以上のアルキレン基である場合、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよい。上記一般式(1b)中、Q12は、単結合、炭素原子数1~6のアルキレン基又は炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。一般式(1b)中の特に好ましいQ12は、前記特に好ましいQ11と同様である。また、Q11及びQ12は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(1b)中、L11は、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表すことが好ましい。但し、L11が炭素原子数2以上のアルキレン基である場合、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよい。上記一般式(1b)中、L11は、単結合、炭素原子数1~6のアルキレン基又は炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。一般式(1b)中の特に好ましいL11としては、単結合、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基、ネオペンチレン基又は1,2-ジメチルプロピレン基である。
上記一般式(1b)中、L12は、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表すことが好ましい。但し、L12が炭素原子数2以上のアルキレン基である場合、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよい。上記一般式(1b)中、L12は、単結合、炭素原子数1~6のアルキレン基又は炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。一般式(1b)中の特に好ましいL12としては、単結合、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基、ネオペンチレン基又は1,2-ジメチルプロピレン基である。また、L11及びL12は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(1b)中、P11及びP12はそれぞれ独立して、水素原子、極性基、前記極性基に置換されてもよい炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基又は以下の一般式(2)で表される基である。
Figure 2024006097000006
(上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。)
また、前記極性基としては、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子が挙げられる。また、前記極性基に置換されてもよい炭素原子数1~6のアルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基の1以上の任意の水素原子が、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換された基をいう。
そして、前記炭素原子数2~10のアルケニル基は、第4級原子を少なくとも1つ有するアルケニル基であることが好ましく、第4級原子を少なくとも1つ有し、かつ前記第4級原子の結合手の1つがL11又はL12と結合するアルケニル基であることがより好ましく、以下の一般式(x-2)で表されるアルケニル基であることがさらに好ましい。
Figure 2024006097000007
(上記一般式(x-2)中、Rx3は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、Rx4は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、上記一般式(x-2)中において、*は芳香族環の炭素原子と化学的に結合される結合手を表す。)
上記一般式(1a)中、P11又はP12の少なくとも一方が、一般式(x-2)で表されるアルケニル基であることが好ましく、P11及びP12の両方が、一般式(x-2)で表されるアルケニル基であることがより好ましい。これにより、インダン環含有化合物(A)がより高いUV硬化性を示すため、重合により分子量が向上しやすいことに伴い耐熱性がより向上する傾向を示す。
本実施形態において、P11又はP12の一方が上記一般式(2)で表される基である場合、インダン環含有化合物(A)の好ましい形態としては、上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、炭素原子数1~3のフルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表しうる。P11及びP12の少なくとも一方が一般式(2)で表される基である場合、他方のアルケニル基の単独重合をある程度抑制しうる。
なお、一般式(2)中のベンゼン環は、後述のアニリン系化合物のベンゼン環に対応する場合がある。
上記一般式(1b)中、M11及びM12はそれぞれ独立して、単結合又は以下の一般式(3)で表される基である。
Figure 2024006097000008
(上記一般式(3)中、R16はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。好ましくは、R16はそれぞれ独立して、アミノ基、炭素原子数1~6のフルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基であり、nは0、1又は2である。)
上記一般式(1b)中のM11は、好ましくは単結合、あるいは上記一般式(3)に示す通り、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基に置換されてもよいフェニレン基である。当該フェニレン基としては、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基が挙げられる。
同様に、上記一般式(1b)中のM12は、好ましくは単結合、あるいは上記一般式(3)に示す通り、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基に置換されてもよいフェニレン基である。当該フェニレン基としては、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基が挙げられる。
なお、一般式(3)中のベンゼン環は、後述のアニリン系化合物のベンゼン環に対応する場合がある。
上記一般式(1b)中、n12は平均繰り返し単位数を表し、0.5~20の範囲であることが好ましく、0.8~15の範囲であることがより好ましく、1~10の範囲であることがさらに好ましい。平均繰り返し単位数であるn12が上記範囲であると、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が高くなるため、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示しやくなり、誘電正接をより低減できる。
上記一般式(1b)中、n11は平均繰り返し単位数を表し、0~20の範囲であることが好ましく、0~15の範囲であることがより好ましく、0~10の範囲であることがさらに好ましい。平均繰り返し単位数であるn11が上記範囲であると、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が高くなるため、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示しやくなり、誘電正接をより低減できる。
上記一般式(1b)中、n13は平均繰り返し単位数を表し、0~20の範囲であることが好ましく、0~15の範囲であることがより好ましく、0~10の範囲であることがさらに好ましい。平均繰り返し単位数であるn13が上記範囲であると、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が高くなるため、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示しやくなり、誘電正接をより低減できる。
本実施形態において、インダン環含有化合物(A)1分子当たりのアルケニル基(不飽和結合)の数は、1~10個であることが好ましく、1~5個であることがより好ましく、1~3個であることがさらに好ましい。当該アルケニル基(不飽和結合)の数の下限は1個以上が好ましく、2個以上がより好ましい。当該アルケニル基(不飽和結合)の数の上限は10個以下が好ましく、5個以下がより好ましく、3個以下がさらに好ましい。
本実施形態のインダン環含有化合物(A)1分子中にアルケニル基(例えば、ビニル基又はイソプロペニル基)を平均2個以上残存させることにより、得られるインダン環含有化合物(A)がUV硬化性をより示しやすくなるため、インダン環含有化合物(A)を含むインダン系混合物又はインダン環含有化合物(A)を含有する樹脂組成物が高感度でより硬化しやすくなる。
また、インダン環含有化合物(A)1分子中にアルケニル基(例えば、ビニル基又はイソプロペニル基)を平均2個以上残存させ、かつ光重合開始剤を含有することにより、UV照射時から樹脂組成物が硬化するまでの時間を短縮することができる。また、本実施形態の樹脂組成物は光により硬化するため、乾燥に伴う加熱等による現像後の未露光部の残存が生じにくく、結果として、熱重合開始剤を使用した系と比べて現像性がより優れると考えられる。
なお、上記アルケニル基(不飽和結合)の定量方法は、後述の実施例の欄で示す通り、特開2012-214728号公報に記載の「二重結合の定量方法」を用いて算出している。
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)は、当該インダン環含有化合物(A)の総量(100質量%)に対して、一般式(1b)で表される構造単位を50質量%以上100質量%以下含有することが好ましく、55質量%以上100質量%未満含有することが好ましく、55質量%以上85質量%以下含有することがさらに好ましい。
インダン環含有化合物(A)における一般式(1b)で表される構造単位の占める割合が55質量%以上であると、インダン骨格の縮環構造により、より優れた化学的熱安定性を発揮しうる。
<インダン環含有化合物(A)の別の好ましい形態>
本実施形態のインダン環含有化合物(A)は混合物であってもよい。そして、混合物である場合のインダン環含有化合物(A)を、インダン系混合物と称する。
本実施形態のインダン系混合物は、優れた低誘電正接を示すインダン環含有化合物(A)を複数種含有するため、樹脂組成物全体としてより優れた低誘電正接を発揮する。
本実施形態におけるインダン系混合物は、以下の一般式(1a):
Figure 2024006097000009
(上記一般式(1a)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、n12は平均繰り返し単位数を表す。)
で表される構造単位と、
前記構造単位の末端部位の少なくとも1つに結合されるアルケニル基と、を有するインダン環成分から構成され、
以下の一般式(1b):
Figure 2024006097000010
(上記一般式(1b)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
11、Q12、L11及びL12はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表し、
11及びP12はそれぞれ独立して、水素原子、極性基、前記極性基に置換されてもよい炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基又は以下の一般式(2)を表し、
11及びM12はそれぞれ独立して、単結合又は以下の一般式(3)を表し、
12は平均繰り返し単位数を表し、n11及びn13はそれぞれ独立して、0~20を表す。但し、P11及びP12の少なくともいずれか一方が炭素原子数2~10のアルケニル基である。
Figure 2024006097000011
[上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。]
[上記一般式(3)中、R16はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。]
なお、一般式(2)及び(3)中の*は他の原子との結合を表す。)表される2種以上の化合物を含有することが好ましい。
また、前記極性基としては、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子が挙げられる。また、前記極性基に置換されてもよい炭素原子数1~6のアルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基の1以上の任意の水素原子が、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換された基をいう。
本実施形態のインダン系混合物を構成する各化合物は、炭素原子及び水素原子で構成される原子の割合が非常に高いインダン環骨格を備えたインダン環成分を必須としているため、インダン系混合物全体としても誘電正接が極めて低い特性を示す。さらには、本実施形態のインダン系混合物を構成する各化合物は、インダン環が備える縮環構造により化学的熱安定性に優れる。これにより、より優れた耐熱性及び低誘電正接性を高次に両立することができると考えられる。特に、インダン系混合物は、インダン環含有化合物(A)を2種以上ブレンドされているため、ブレンドされた各インダン環含有化合物(A)の組成比によって、優れた耐熱性及び低誘電正接性をより高次に両立することができると考えられる。
本実施形態のインダン系混合物において、一般式(1a)で表される構造単位及び前記構造単位の末端に結合されたアルケニル基を有するインダン環成分、すなわちインダン系混合物(=インダン環含有化合物(A))の総量100質量%に対して、一般式(1b)で表される化合物の占有割合は、0.1~50質量%の範囲であることが好ましく、5~95質量%の範囲であることがより好ましく、10~90質量%の範囲であることがより好ましく、15~90質量%の範囲であることがさらに好ましく、20~90質量%の範囲であることが特に好ましい。
一般式(1a)で表される構造単位を有するインダン環成分全体に対して、一般式(1b)で表されるインダン環含有化合物(A)の占有割合が1~30質量%の範囲であると、より優れた耐熱性及び低誘電正接を発揮しやすくなる。
本実施形態のインダン系混合物の一形態として、当該インダン系混合物にアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)を含有してもよい。
これにより、インダン系混合物は、アニリン骨格を有する芳香環を有するインダン環含有化合物(A1)を含有するため、樹脂組成物全体としての耐熱性の一層の向上のため、エポキシ樹脂やビスマレイミド樹脂など、各種硬化性樹脂との併用を可能とする観点で好ましい。
前記アニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)は、下記一般式(1a)で表される構造単位と、以下の一般式(2)又は一般式(4)で表される構造単位とを有し、かつ末端部位の少なくとも1つがアルケニル基であることが好ましい。
Figure 2024006097000012
(上記一般式(1a)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、n12は平均繰り返し単位数を表す。)
Figure 2024006097000013
(上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。)
(上記一般式(4)中、R14はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上3以下の整数を表す。)
上記一般式(4)中、R14はそれぞれ独立して、アミノ基、炭素原子数1~6のフルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。また、nは0又は1であることが好ましい。
また、本実施形態のアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)は、下記一般式(1c)で表されることがより好ましい。
Figure 2024006097000014
(上記一般式(1c)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
21、Q22、L21及びL22はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表し、但し、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよく、
21及びP22はそれぞれ独立して、炭素原子数2~10のアルケニル基又は以下の一般式(2)で表される基を表し、
21及びM22はそれぞれ独立して、単結合又は以下の一般式(5)で表される基を表し、
12は平均繰り返し単位数を表し、n21及びn23はそれぞれ独立して、0~20を表す。
但し、P21及びP22の少なくともいずれか一方が炭素原子数2~10のアルケニル基であり、かつn21個のM21とn23個のM22とP21とP22とのうち、少なくとも1つの基がアミノ基で置換されている。
Figure 2024006097000015
[上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。]
[上記一般式(5)中、R17はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。])
なお、上記一般式(2)及び(5)中、*は他の原子との結合を表す。)で表されることが好ましい。
また、インダン系混合物にアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)を含有する場合、当該インダン系混合物中に2種以上含まれる上記一般式(1b)で表される化合物のうち1種以上が、上記一般式(1c)で表される化合物であってもよい。
上記一般式(1c)の「n21個のM21とn23個のM22とP21とP22とのうち、少なくとも1つの基がアミノ基で置換されている。」とは、一般式(1c)で表されるインダン環含有化合物一分子中に、1以上のアミノ基を有する芳香族環を少なくとも1つ有することを意味している。より詳細には、一般式(1c)で表されるインダン環含有化合物には、n21個のM21とn23個のM22と1個のP21と1個のP22とが存在する。そして、これら「n21個のM21、n23個のM22、1個のP21及び1個のP22」の合計n21+n23+2個の基のうち、少なくとも1つの基がアミノ基を有する芳香族環(例えばアニリン骨格)であることを意味する。
したがって、一般式(1c)中のM21又はM22で示される基がアミノ基で置換されている場合(M21又はM22で示される基が一般式(5)である場合)、M21又はM22はそれぞれ独立して、上記一般式(4)で表される基となりうる。換言すると、一般式(1c)中のM21又はM22で示される基がアミノ基で置換されている場合、M21又はM22は、一般式(5)で表される基であって、nは1以上の整数であり、かつn個存在するR17のうち少なくとも1つのR17がアミノ基である。また、一般式(1c)中のP21又はP22で示される基がアミノ基で置換されている場合は、P21又はP22の一方が一般式(2)で表される基であって、他方が炭素原子数2~10のアルケニル基でありうる。
上記一般式(1c)において、n21が2以上である場合、複数存在するM21はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。同様に、複数存在するL21はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
さらには、n23が2以上である場合、複数存在するM22はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。同様に、複数存在するL22はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(5)において、nが2以上である場合、複数存在するR17はそれぞれ独立して、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(1c)中、Q21及びQ22はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表すことが好ましい。但し、Q21又はQ22が炭素原子数2以上のアルキレン基である場合、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよい。上記一般式(1c)中、Q21又はQ22はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1~6のアルキレン基又は炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。
一般式(1c)中の特に好ましいQ21又はQ22としては、単結合、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基、ネオペンチレン基又は1,2-ジメチルプロピレン基である。また、Q21及びQ22は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(1c)中、L21及びL22はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表すことが好ましい。但し、L21又はL22が炭素原子数2以上のアルキレン基である場合、前記アルキレン基中の-CH-CH-は、-CH=CH-に置換されてもよい。上記一般式(1c)中、L21及びL22はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1~6のアルキレン基又は炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。一般式(1c)中の特に好ましいL21及びL22はそれぞれ独立して、単結合、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基、ネオペンチレン基又は1,2-ジメチルプロピレン基である。また、L21及びL22は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(1c)中、P21及びP22はそれぞれ独立して、炭素原子数2~10のアルケニル基又は以下の一般式(2)で表される基である。
Figure 2024006097000016
(上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。)
そして、前記炭素原子数2~10のアルケニル基は、第4級原子を少なくとも1つ有するアルケニル基であることが好ましく、第4級原子を少なくとも1つ有し、かつ前記第4級原子の結合手の1つがL21又はL22と結合するアルケニル基であることがより好ましく、以下の一般式(x-2)で表されるアルケニル基であることがさらに好ましい。
Figure 2024006097000017
(上記一般式(x-2)中、Rx3は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、Rx4は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、上記一般式(x-2)中において、*は芳香族環の炭素原子と化学的に結合される結合手を表す。)
上記一般式(1c)中、P21又はP22の少なくとも一方が、一般式(x-2)で表されるアルケニル基であることが好ましく、P21及びP22の両方が、一般式(x-2)で表されるアルケニル基であることがより好ましい。これにより、インダン環含有化合物(A)がより高いUV硬化性を示すため、耐熱性がより向上する傾向を示す。
本実施形態において、P11又はP12の一方が上記一般式(2)で表される基である場合、インダン環含有化合物(A)の好ましい形態としては、上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、炭素原子数1~3のフルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表しうる。P21及びP22の少なくとも一方が一般式(2)で表される基である場合、他方のアルケニル基の単独重合をある程度抑制しうる。
なお、一般式(2)中のベンゼン環は、後述のアニリン系化合物のベンゼン環に対応する場合がある。
上記一般式(1c)中、M21及びM22はそれぞれ独立して、単結合又は上記一般式(5)で表される基である。上記一般式(1c)中のM21及びM22はそれぞれ独立して、好ましくは単結合、あるいは上記一般式(5)に示す通り、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基に置換されてもよいフェニレン基である。当該フェニレン基としては、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基が挙げられる。なお、一般式(5)中のベンゼン環は、後述のアニリン系化合物のベンゼン環に対応する場合がある。
上記一般式(1c)中、n21は平均繰り返し単位数を表し、0~20の範囲であることが好ましく、0~15の範囲であることがより好ましく、0~10の範囲であることがさらに好ましい。平均繰り返し単位数であるn21が上記範囲であると、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が高くなるため、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示しやくなり、誘電正接をより低減できる。
上記一般式(1c)中、n23は平均繰り返し単位数を表し、0~20の範囲であることが好ましく、0~15の範囲であることがより好ましく、0~10の範囲であることがさらに好ましい。平均繰り返し単位数であるn23が上記範囲であると、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が高くなるため、インダン環含有化合物(A)全体が低極性を示しやくなり、誘電正接をより低減できる。
なお、上記一般式(1c)中の記号である「R11、R12、R13、及びn12」は、上記一般式(1b)中の「R11、R12、R13、及びn12」と同義である。
本実施形態において、一般式(1c)で表されるアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)の含有量は、インダン系混合物の総量100質量%(又はインダン環含有化合物(A)全体)に対して、0.1~50質量%の範囲であることが好ましく、1~40質量%の範囲であることがより好ましく、1~30質量%の範囲であることがより好ましい。
一般式(1c)で表されるアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)の含有量が上記範囲であると、誘電特性を悪化させることなく、樹脂組成物全体としての耐熱性の一層の向上のため、エポキシ樹脂やビスマレイミド樹脂など、各種硬化性樹脂との併用を可能とする。
また、本実施形態において、一般式(1c)で表されるアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)がその末端部にアニリン系化合物由来のアミノフェニル基を有する場合、耐熱性の一層の向上のため、エポキシ樹脂やビスマレイミド樹脂など、各種硬化性樹脂との併用を可能とする観点で好ましい。また、一般式(1c)で表されるアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)を含む場合、他の硬化性樹脂と組み合わせた際に、例えばエポキシ基含有硬化性樹脂とは通常の付加反応が進行し、又はマレイミド基含有硬化性樹脂とはマイケル付加型の硬化反応が進行するため、物理的耐熱性(Tg)の向上が期待できる。
以上が、本開示のインダン環含有化合物(A)の説明である。以下、本開示のインダン環含有化合物(A)の製造方法について説明する。
<インダン環含有化合物(A)の製造方法>
本実施形態のインダン環含有化合物(A)の製造方法の一例としては、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)(以下、単に芳香族化合物(i)とも称する。)、より好ましくはカルボカチオンを形成する置換基が2以上ベンゼン環に結合した芳香族化合物(i)を、アニリン系化合物を用いて酸存在下で反応させる工程を有する。したがって、本実施形態の別の態様としては、本実施形態のインダン環含有化合物(A)は、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)を反応原料とする化合物であるとも言える。
本開示のインダン環含有化合物(A)の製造方法の一例としては、例えば、以下の工程(1)を含む製造方法が挙げられる。
工程(1):反応原料として芳香族化合物(i)をアニリン系化合物及び酸存在下(好ましくは固体酸触媒存在下)で、本開示のインダン環含有化合物(A)を得る工程。
具体的には、本実施形態のインダン環含有化合物(A)の製造方法は、アニリン系化合物及び酸存在下(好ましくは固体酸触媒存在下)で、カルボカチオンを形成する置換基が2以上ベンゼン環に結合した芳香族化合物(i)同士を反応させる工程を有することが好ましい。
アニリン系化合物を使用することにより、カチオン重合の暴走による高分子量化を抑制し、比較的低分子量~中分子量の領域の末端二重結合(例えばイソプロペニル基)を有するインダン環含有化合物(A)が得られる。
また、アニリン系化合物を使用することにより、ゲル化を抑制・防止することができる。特に、カルボカチオンを形成する置換基として、例えば下記の一般式(x-1)で表される基であって、かつα炭素に水酸基が結合した構造を有する芳香族化合物(i)を反応原料に使用する場合、昇温の過程で反応が進行すると水が生成し、突沸を伴い激しく発熱するため、例えば180~200℃の反応温度に至るまでに一般的には脱水処理が必要となる。しかし、アニリン系化合物を使用することによって、当該脱水処理の省略又は脱水処理の回数を低減できる。
本実施形態のインダン環含有化合物(A)の製造方法において、上記工程(1)の後、必要により、公知の精製工程(例えば、反応溶媒による洗浄、吸着、分別蒸留、イオン交換樹脂処理、再沈殿、晶析、ろ過又は加熱若しくは減圧下での反応溶媒の留去等)を行ってもよい。これにより、反応溶媒、未反応物等の低分子量成分、イオン性不純物等が除去されるため、誘電特性をより向上させうる。
また、本実施形態において、上記工程(1)で得られた反応生成物は、インダン環含有化合物(A)が混在した混合物、すなわち上述したインダン系混合物でありうる。そのため、上記工程(1)又は上記の精製工程後、必要により公知の分離手段を用いて、特定の分子量を有するインダン環含有化合物(A)、特定の官能基を有するインダン環含有化合物(A)、又は両端にアルケニル基を有するインダン環含有化合物(A)を回収することができる。
当該分離手段としては、分別蒸留、クロマトグラフィー、吸着剤による吸着、晶析、抽出又は再沈殿等が挙げられる。例えば、上記工程(1)で得られた反応生成物に貧溶媒を添加した後冷却することによって、目的物を結晶として析出せしめる晶析工程、クロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー又はゲル浸透クロマトグラフィー等)を用いて反応生成物を含む液体移動相から目的物を分離する工程、又は活性炭、シリカゲル、アルミナ若しくはセライト等の吸着剤を用いて、目的物又は不要物を吸着させて分離する工程が挙げられる。より詳細には、特定の分子量を有するインダン環含有化合物(A)を回収する場合は、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分離することが好ましく、特定の官能基(例えば、アミン基)を有するインダン環含有化合物(A)を回収する場合は、イオン交換クロマトグラフィーを用いて分離することが好ましい。
以下、本開示のインダン環含有化合物(A)の製造方法に使用する反応原料、アニリン系化合物、酸触媒及び反応条件について順に説明する。
<<芳香族化合物(i)>>
本開示のインダン環含有化合物(A)の製造方法は、反応原料として、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)を使用することが好ましい。より詳細には、前記芳香族化合物(i)は、カルボカチオンを形成する置換基が2以上芳香環に結合した化合物を主成分として有する。
なお、“主成分”とは、芳香族化合物(i)全体のうち50質量%以上100質量%以下を前記化合物で占めることをいう。
本実施形態におけるカルボカチオンを形成する置換基は、下記一般式(x-1)で表される基又は炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましい。
Figure 2024006097000018
(上記一般式(x-1)中、Xx1は極性基を表し、Rx1又はRx2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
上記一般式(x-1)中において、*は芳香族環と化学的に結合される結合手を表す。
上記一般式(x-1)中、極性基としては、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子などが挙げられる。これにより、極性基Xx1が比較的容易に脱離することにより、当該極性基Xx1と結合するα炭素がカルボカチオンを形成しうる。また、上記一般式(x-1)中のXx1としては、水酸基が特に好ましい。
本実施形態のカルボカチオンを形成する置換基において、上記炭素原子数2~10のアルケニル基は、第4級炭素を少なくとも1つ有する炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましく、第4級炭素を少なくとも1つ有し、かつ前記第4級原子の結合手の1つが一般式(1a)で表される構造単位と直接又は間接的に化学結合する、炭素原子数2~10のアルケニル基であることがより好ましく、下記一般式(x-2)で表される基がさらに好ましい。
Figure 2024006097000019
(上記一般式(x-2)中、Rx3は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、Rx4は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)上記一般式(x-2)中において、*は芳香族環と化学的に結合される結合手を表す。
一般式(x-2)で表される炭素原子数2~10のアルケニル基であれば、第4級炭素が比較的安定にカルボカチオンを形成しうる。
上記一般式(x-2)中、Rx3は炭素原子数1~3の直鎖状アルキル基であることが好ましい。Rx4は水素原子又は炭素原子数1~3の直鎖状アルキル基であることが好ましい。
本実施形態におけるカルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)は、インダン環含有化合物(A)を構成する一般式(1a)の構造単位を形成するモノマーでありうる。本実施形態において、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)は、以下の一般式(i-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2024006097000020
(上記一般式(i-1)中、Ri3はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Ri1及びRi2はそれぞれ独立して、カルボカチオンを形成する置換基であり、ni1は1以上5以下の整数を表し、ni2は0以上4以下の整数を表す。但し、ni1+ni2は5以下である。)
上記一般式(i-1)中、Ri1及びRi2はそれぞれ互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。また、ni1が2以上5以下の場合、複数存在するRi2はそれぞれ互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。さらには、ni2が2以上場合、複数存在するRi3はそれぞれ互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
上記一般式(i-1)中、ni1は、1、2又は3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。ni2は、0、1又は2であることが好ましく、0又は1であることが好ましい。また、ni1+ni2は2以上5以下であることが好ましい。
本実施形態において、一般式(i-1)で表される化合物は、上記一般式(i-1)中、Ri1とRi2とが同一の基であることが好ましい。
本実施形態において、一般式(i-1)で表される化合物の好ましい形態としては、ni1が1である場合、上記一般式(i-1)中のベンゼン環の1位及び3位、あるいは上記一般式(i-1)中のベンゼン環の1位及び4位に、Ri1及びRi2がそれぞれ置換されていることが好ましい。また、ni1が2である場合、上記一般式(i-1)中のベンゼン環の1位、3位及び5位に、Ri1と2つのR42とがそれぞれ置換されていることが好ましい。これにより、立体障害を受けにくくなり、インダン環含有化合物(A)の分子量又は収率をより向上することができる。
本実施形態において、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)は、上記一般式(i-1)で表される化合物の他に、カルボカチオンを形成する置換基(例えば、上記一般式(x-1)で表される基)を1つ有する芳香族化合物(ii)をさらに含んでもよい。当該芳香族化合物(ii)としては、以下の一般式(ii-1)で表されることが好ましい。
Figure 2024006097000021
(上記一般式(ii-1)中、Rii1はカルボカチオンを形成する置換基(例えば、好ましくは、炭素原子数2~10のアルケニル基、上記一般式(x-1)で表される基又は一般式(x-2)で表される基)であり、Rii2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、nii1は0以上5以下の整数を表す。)
<アニリン系化合物>
本実施形態におけるアニリン系化合物は、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物に対して、酸触媒存在下のカチオン重合による高分子量化を緩和させ、その添加量により、数平均分子量(Mn)で、およそ3,000以下、重量平均分子量(Mw)で、7,000以下の末端アルケニル構造体であるインダン環含有化合物(A)を主生成物として有意に得られる効果を奏する。その結果、末端アルケニル構造体の末端二重結合の存在により、インダン環含有化合物(A)は光硬化性樹脂として使用できる。一方、アニリン系化合物を使用しない場合、高分子量化は不可避になり、これにより得られる生成物は基本的に熱可塑性樹脂が主成分となる傾向を示す。
本実施形態のインダン環含有化合物(A)の製造方法において、アニリン系化合物を共触媒として使用することにより、ゲル化を抑制・防止することができる。例えば、カルボカチオンを形成する置換基として、上記の一般式(x-1)で表される基であって、かつα炭素に水酸基が結合した構造を有する芳香族化合物(i)を反応原料に使用する場合、反応が進行すると水が生成されるため、一般的には脱水処理が必要となる。しかし、アニリン系化合物を使用することによって、当該脱水処理の省略又は脱水処理の回数を低減できる。
また、アニリン系化合物は共触媒として使用するものであるが、本開示のインダン環含有化合物(A)の構造単位の一部に取り込まれてもよい。当該アニリン系化合物は、以下の一般式(iii-1)で表されることが好ましい。
Figure 2024006097000022
(上記一般式(iii-1)中、Riii1はそれぞれ独立して、アミノ基、炭素原子数1~6のフルオロアルキル基又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、niii1は0以上5以下の整数を表す。)
上記一般式(iii-1)中、niii1が2以上5以下の場合、複数存在するRiii1は互いに独立しており、複数存在するRiii1が互いに同一であっても、あるいは互いに異なっていてもよい。
上記一般式(iii-1)中、炭素原子数1~6のフルオロアルキル基は、炭素原子数1~6のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
本実施形態のアニリン系化合物の好ましい形態としては、上記一般式(iii-1)中、niii1が1以上4以下の整数であり、1以上4以下のRiii1はそれぞれ独立して、アミノ基、炭素原子数1~3のフルオロアルキル基又は炭素原子数1~4のアルキル基を表すことが好ましい。
本実施形態のアニリン系化合物は、例えば、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジイソプロピルアニリン、エチルメチルアニリン、シクロブチルアニリン、シクロペンチルアニリン、シクロヘキシルアニリン、トルイジン、エチルアニリン、プロピルアニリン、ブチルアニリン、2-メチル-3-エチルアニリン、2-メチル-4-イソプロピルアニリン、2,6-ジエチルアニリン、あるいは2-エチル-5-tert-ブチルアニリン、2,4-ジイソプロピルアニリン、トリメチルアニリン(例えば、2,4,6-トリメチルアニリン)、ジエチルトルエンジアミン等を用いることができる。また、前記プロピルは、n-プロピル及びイソプロピルを含み、前記ブチルは、n-ブチル,tert-ブチル及びsec-ブチルを含む。なお、本実施形態におけるアニリン系化合物は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、芳香族化合物(i)と、アニリン系化合物との配合割合としては、得られる硬化物の製造時の成形性、硬化性の物性バランスを考慮すると、前記芳香族化合物(i)100質量部に対して、前記アニリン系化合物の配合量は、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。
また、上記工程(1)を実施する具体的方法としては、全原料を一括装入し、そのまま所定の温度で反応させるか、又は、芳香族化合物(i)又はアニリン系化合物の一方と酸触媒と反応溶媒とを装入し、所定の温度に保ちつつ、前記芳香族化合物(i)又は前記アニリン系化合物の他方等を滴下させながら反応させる方法が一般的である。反応後、溶媒を使用した場合は、必要により、溶媒と未反応物を留去させて、目的物であるインダン環含有化合物(A)を得ることができ、溶媒を使用しない場合は、未反応物を留去することによって目的物であるインダン環含有化合物(A)を得ることができる。
<酸触媒>
本実施形態の工程(1)に用いる酸触媒には、例えば、ニッケル、コバルト、ナトリウム、カルシウム、鉄、リチウム、マンガン等の酢酸塩、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機塩、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、反応後、ろ過により簡便に触媒除去が可能な固体酸がハンドリンク性の観点からも好ましく、他の酸を用いるときは、反応後、塩基による中和と水による洗浄を行うことが好ましい。
前記酸触媒の配合量は、仕込む原料(カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i))の総量100質量部に対して、酸触媒を0.1~50質量部の範囲で配合されることが好ましく、ハンドリング性と経済性の点から、1~30質量部の範囲がより好ましい。
<反応条件>
本実施形態におけるインダン環含有化合物(A)の製造方法においては、必ずしも反応溶媒を用いなくてもよいが、反応溶媒として有機溶媒を用いることも可能である。
本実施形態の製造方法において使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
本実施形態の工程(1)において、有機溶媒の使用量としては、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)100質量部に対して、10~3,000質量部の範囲に配合することが好ましく、より好ましくは50~1000質量部で仕込む。
また、芳香族化合物(i)を原料として反応させるため、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶媒を用いて、必要により触媒等に含まれる水分を共沸脱水させた後、水分を留去してから、後述の反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
本実施形態の工程(1)において、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)同士の環化反応の反応温度としては、好ましくは80~250℃、より好ましくは100~220℃の温度範囲であることが好ましい。
本実施形態の工程(1)において、カルボカチオンを形成する置換基を有する芳香族化合物(i)の反応時間、すなわち前記芳香族化合物(i)同士の環化反応の反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5~20時間の範囲であるが、好ましくは、のべ1~10時間の範囲である。
本実施形態の工程(1)の好ましい反応条件としては、上記芳香族化合物(i)とアニリン系化合物と酸触媒と有機溶媒とを仕込み、好ましくは80~250℃、より好ましくは100~220℃の温度範囲で、0.5~20時間、好ましくは1.0~10時間反応させた後、さらに、反応温度を100~220℃、好ましくは120~210℃の温度範囲に上げた後、0.5~20時間、好ましくは1.0~10時間反応させる条件が挙げられる。
本実施形態の工程(1)には、必要により、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸のような低級脂肪族カルボン酸無水物、五酸化リン、酸化カルシウム、酸化バリウム等の酸化物、硫酸等の無機酸、モレキュラーシーブ等の多孔性セラミック等の脱水剤を使用してもよい。また、上記脱水剤の代わりに、反応の途中で留出水を取り除いてもよい。
(重合性不飽和基を有する化合物(B))
本実施形態の重合性不飽和基を有する化合物(B)は、本実施形態の樹脂組成物における必須成分の一つである。当該成分(B)としては、重合性不飽和基を有していればよく、その他の具体構造又は分子量等は特に限定されず、多種多様な樹脂又は化合物を用いることができる。重合性不飽和基を有する化合物(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、重合性不飽和基を有する化合物(B)は、重合性不飽和基を有するが酸基を有さないことが好ましい。なお。ここでいう酸基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。
本実施形態において、成分(B)が有する重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
重合性不飽和基を有する化合物(B)としては、具体的には、(メタ)アクリレート化合物(B0)、重合性不飽和基を有する樹脂等が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート化合物(B0)としては、(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に制限されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物等のモノ(メタ)アクリレート化合物:前記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した4官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物;前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体;2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーや、ドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテルのジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物(B0)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合性不飽和基を有する樹脂としては、樹脂中に重合性不飽和基を有する高分子材料であれば何れでもよく、例えば、以下の〔1〕~〔6〕:
〔1〕重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)、
〔2〕重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)、
〔3〕重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)、
〔4〕重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)、
〔5〕重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)、
〔6〕重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)、
等が挙げられる。
<重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>
本実施形態の重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)(以下、樹脂(B1)とも称する。)としては、例えば、エポキシ樹脂及び不飽和一塩基酸、並びに必要に応じて多塩基酸無水物を反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂;エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、ポリイソシアネート化合物、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、並びに必要に応じて多塩基酸無水物を反応させて得られたウレタン基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂;などが挙げられる。なお、多塩基酸無水物は、上述の通り、樹脂(B1)の反応原料として用いることができるが、用いないことが好ましい。上記樹脂(B1)は、重合性不飽和基を有するが酸基を有さないことが好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、上記不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。また、上記不飽和一塩基酸のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物等も用いることができる。更に、上記不飽和一塩基酸としては、下記一般式(6):
Figure 2024006097000023
(上記一般式(6)中、X61は、炭素数1~10のアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、(ポリ)エステル鎖、芳香族炭化水素鎖、又は(ポリ)カーボネート鎖を表し、X61の構造中の水素原子がハロゲン原子又はアルコキシ基に置換されてもよく、Y61は、水素原子又はメチル基である。)で表される化合物等も用いることができる。
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等が挙げられる。
上記(ポリ)エステル鎖としては、例えば、下記一般式(7):
Figure 2024006097000024
(上記一般式(7)中、R71及びR72は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n71は1~5の整数を表す。)で表される(ポリ)エステル鎖が挙げられる。
これら不飽和一塩基酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記芳香族炭化水素鎖としては、例えば、フェニレン鎖、ナフチレン鎖、ビフェニレン鎖、フェニルナフチレン鎖又はビナフチレン鎖等が挙げられる。また、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香環を有する炭化水素鎖も用いることができる。
上記(ポリ)カーボネート鎖としては、例えば、下記一般式(8):
Figure 2024006097000025
(上記一般式(8)中、R81は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n81は1~5の整数を表す。)で表される(ポリ)カーボネート鎖が挙げられる。
上記多塩基酸無水物としては、例えば、脂肪族多塩基酸無水物、脂環式多塩基酸無水物、芳香族多塩基酸無水物等が挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。また、前記脂肪族多塩基酸無水物としては、脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有してもよい。
上記脂環式多塩基酸無水物としては、本発明では、酸無水物基が脂環構造に結合しているものを脂環式多塩基酸無水物とし、それ以外の構造部位における芳香環の有無は問わないものとする。前記脂環式多塩基酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
上記芳香族多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
これら多塩基酸無水物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記一般式(9)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2024006097000026
(上記一般式(9)中、R92及びR93はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の一価の炭化水素基のいずれかを表し、R91はそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、k91は0又は1~3の整数であり、n91は1以上の整数である。)
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。
上記重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。上記重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル系溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記有機溶剤としては、市販品を用いることもでき、当該市販品としては、例えば、ENEOS株式会社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学株式会社製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;出光興産株式会社「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;ExxonMobil Chemical社製「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;等が挙げられる。
塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物類;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物などが挙げられる。また、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等を用いることもできる。
上記塩基性触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)>
本実施形態の重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)(以下、樹脂(B2)とも称する。)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、並びに必要に応じてポリオール化合物及び/又は多塩基酸無水物を反応させて得られたもの等が挙げられる。なお、多塩基酸無水物は、上述の通り、樹脂(B2)の反応原料として用いることができるが、用いないことが好ましい。上記樹脂(B2)は、重合性不飽和基を有するが酸基を有さないことが好ましい。
ポリイソシアネート化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、多塩基酸無水物については、上記樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
上記ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。上記ポリオール化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。上記重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。その場合、有機溶剤、塩基性触媒については、上記樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
<重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)>
本実施形態の重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)(以下、樹脂(B3)とも称する。)としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)をさらに反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られる反応生成物や、必要に応じて前記反応生成物中の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるもの等が挙げられる。なお、多塩基酸無水物は、上述の通り、樹脂(B3)の反応原料として用いることができるが、用いないことが好ましい。上記樹脂(B3)は、重合性不飽和基を有するが酸基を有さないことが好ましい。
上記アクリル樹脂中間体は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基を有する化合物を共重合させたものであってもよい。前記その他の重合性不飽和基を有する化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。
その他の重合性不飽和基を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(メタ)アクリレート化合物(β)は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多塩基酸無水物については、上記樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
上記重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。上記重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。その場合、有機溶剤、塩基性触媒については、上記樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
<重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)>
本実施形態の重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)(以下、樹脂(B4)とも称する。)としては、例えば、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じて、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基、及び酸無水物基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが挙げられる。なお、前記反応性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよいし、有していなくてもよい。なお、上記樹脂(B4)は、重合性不飽和基を有するが酸基を有さないことが好ましい。
上記重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)としては、酸基又は酸無水物基のどちらか一方のみを有するものであってもよいし、両方を有するものであってもよい。但し、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物との反応性や反応制御の観点から、上記重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)としては、酸無水物基を有するものであることが好ましく、酸基及び酸無水物基の両方を有するものであることがより好ましい。前記アミドイミド樹脂の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~350mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~360mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
上記重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、多塩基酸無水物とを反応原料として得られるものが挙げられる。その場合、ポリイソシアネート化合物、多塩基酸無水物については、樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。なお、多塩基酸無水物は、上述の通り、樹脂(B4)の反応原料として用いることができるが、用いないことが好ましい。
また、上記重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の反応原料としては、必要に応じて、前記ポリイソシアネート化合物及び多塩基酸無水物以外に、多塩基酸を併用することもできる。
前記多塩基酸としては、一分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物であれば何れのものも用いることができる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。これらの多塩基酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物については、樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマー;ジヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。これらエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。上記重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。その場合、有機溶剤、塩基性触媒については、樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
<重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)>
本実施形態の重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)(以下、樹脂(B5)とも称する。)としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物と、アルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートと、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物と、必要に応じて多塩基酸無水物、不飽和一塩基酸とを反応させて得られたものが挙げられる。なお、多塩基酸無水物は、上述の通り、樹脂(B5)の反応原料として用いることができるが、用いないことが好ましい。上記樹脂(B5)は、重合性不飽和基を有するが酸基を有さないことが好ましい。
前記フェノール性水酸基を有する化合物とは、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物をいう。前記分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物としては、例えば、下記一般式(10.1)~(10.5)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2024006097000027
(上記一般式(10.1)~(10.5)中、R101~R104及びR107はそれぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基又はハロゲン原子のいずれかを表し、R105及びR106はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、j101~j105はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、好ましくは0又は1~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。k101~k105はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、好ましくは、2又は3である。)
なお、上記一般式(10.1)~(10.5)における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、一般式(10.2)のナフタレン環においてはいずれの環上の水素原子と置換してもよく、一般式(10.3)では、ビフェニル1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子に置換してもよく、一般式(10.4)では、アラルキル1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの水素原子と置換してもよく、一般式(10.5)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子と置換していてもよいことを示し、1分子中における置換基の個数がj101~j105及びk101~k105であることを示している。
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物と下記一般式(11.1)~(11.5)のいずれかで表される化合物及び/又はホルムアルデヒドとを必須の反応原料とする反応生成物などが挙げられる。また、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物の1種又は2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
Figure 2024006097000028
(上記一般式(11.1)~(11.5)中、h111は、0又は1を表し、R111~R116はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基のいずれかを表し、k111~k116はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Z111~Z116はそれぞれ独立して、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基又はアルキルオキシメチル基のいずれかを表し、Y111は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n111は1~4の整数を表す。)
上記化合物の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール;ジメチルフェノール、ジエチルフェノール等のジアルキルフェノール;トリメチルフェノール、トリエチルフェノール等のトリアルキルフェノール;ジフェニルフェノール、トリフェニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、4-アリルピロカテコール、テトラメチルビスフェノールA、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1-ナフトール、2-ナフトール、1,3-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、ポリフェニレンエーテル型ジオール、ポリナフチレンエーテル型ジオール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、シクロ環構造を有するフェノール樹脂などが挙げられる。
上記フェノール性水酸基を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド等が挙げられる。前記アルキレンオキサイドは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。
上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。前記アルキレンカーボネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、上記アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。
上記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。上記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多塩基酸無水物、不飽和一塩基酸については、樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
上記重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。上記重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。その場合、有機溶剤、塩基性触媒については、樹脂(B1)等に関して既述したものと同様である。
上記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。また、スルホニル基等の強酸を有する固体酸触媒等も用いることができる。これらの酸性触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)>
本実施形態の重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)(以下、樹脂(B6)とも称する。)としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物と、アルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートと、不飽和一塩基酸と、必要に応じて多塩基酸無水物を反応させて得られたものが挙げられる。なお、多塩基酸無水物は、上述の通り、樹脂(B6)の反応原料として用いることができるが、用いないことが好ましい。上記樹脂(B6)は、重合性不飽和基を有するが酸基を有さないことが好ましい。
フェノール性水酸基を有する化合物、アルキレンオキサイド、アルキレンカーボネート、不飽和一塩基酸、及び多塩基酸無水物については、樹脂(B1)及び樹脂(B5)等に関して既述したものと同様である。
上記重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。上記重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。その場合、有機溶剤、塩基性触媒、酸性触媒については、樹脂(B1)及び樹脂(B5)等に関して既述したものと同様である。
(光重合開始剤)
本実施形態にかかる樹脂組成物は、光重合開始剤を含有する。そして、本実施形態の光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いることができる。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、光重合開始剤を含有しているため、温度に関係なく効率よく反応が進行し、樹脂組成物が硬化するまでの時間を短縮することができる。また、本実施形態の樹脂組成物は光により硬化するため、乾燥に伴う加熱等による現像後の未露光部の残存が生じにくく、結果として、熱重合開始剤を用いた系より現像性がより優れると考えられる。
また、前記光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。
さらに、光重合開始剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等も挙げられる。
また、本実施形態に使用可能な光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。
以上が、本実施形態における樹脂組成物に含有される必須成分の内容である。なお、本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
(任意添加成分)
本実施形態における樹脂組成物は、上述したインダン環含有化合物(A)、重合性不飽和基を有する化合物(B)及び光重合開始剤以外に、紫外線安定剤、保存安定化剤等の公知の各種安定剤、他の樹脂、溶媒、あるいは添加剤といった添加成分を任意に含有してもよい。
より詳細には、本実施形態の好適な樹脂組成物は、上述した必須成分(インダン環含有化合物(A)、重合性不飽和基を有する化合物(B)及び光重合開始剤を必須に含む。)と、必要により添加される、硬化剤と、溶媒と、他の樹脂と、添加剤と、を含有してもよい。
上記硬化剤としては、エポキシ樹脂及び当該エポキシ樹脂以外の他の硬化剤(以下、他の硬化剤とも称する。)が挙げられる。また、前記他の樹脂としては、インダン環含有化合物(A)並びに重合性不飽和基を有する化合物(B)以外の樹脂が挙げられる。さらには、前記添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、いわゆる硬化性組成物でもありうる。そして、本実施形態における樹脂組成物において、インダン環含有化合物(A)の含有量は、樹脂組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態における樹脂組成物において、重合性不飽和基を有する化合物(B)の含有量は、樹脂組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態における樹脂組成物において、上述した必須成分の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、10~95質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。
本実施形態における樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
本実施形態における樹脂組成物において、添加剤の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
以下、本実施形態における樹脂組成物に含有されうる各成分である、光重合開始剤、硬化剤、溶媒、他の樹脂及び添加剤について詳説する。
<硬化剤>
本実施形態の硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂及び他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等)が挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。
<<エポキシ樹脂>>
本実施形態の好適な硬化剤であるエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を含み、前記エポキシ基で架橋ネットワークを形成することにより硬化できる硬化性樹脂であることが好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;
ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格及びジグリシジルオキシベンゼン骨格を有するエポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂;
ビナフトール型エポキシ樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
ジベンゾピラン、ヘキサメチルジベンゾピラン、7-フェニルヘキサメチルジベンゾピラン等のベンゾピラン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂のうち、フェノール化合物をエポキシ化して得られる、いわゆるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、その中でもノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であることが、誘電特性の観点からより好ましい。なお、上述のエポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、120~400g/eqであることが好ましく、150~300g/eqであることがより好ましい。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が120g/eq以上であると、得られる硬化物の誘電特性により優れることから好ましく、一方、エポキシ樹脂のエポキシ当量が400g/eq以下であると、得られる硬化物の密着性及び低誘電特性のバランスに優れることから好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂の軟化点は、密着性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、20~200℃であることが好ましく、40~150℃であることがより好ましい。
本実施形態において、エポキシ樹脂の使用量に関し、重合性不飽和基を有する化合物(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、エポキシ樹脂の使用量の官能基当量比((重合性不飽和基を有する化合物(B))/エポキシ樹脂)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物が、より低誘電正接、高い柔軟性となりうることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、耐熱性、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
<他の硬化剤>
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ樹脂と共に、あるいはエポキシ樹脂の代わりに他の硬化剤を含有してもよい。前記他の硬化剤としては、特に制限されないが、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に制限されないが、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン(MDA)、イソフオロンジアミン(IPDA)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、ピペリジン、N,N,-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン等の脂肪族アミン;m-キシレンジアミン(XDA)、メタンフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン等が挙げられる。
上記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
上記フェノール樹脂硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
上述の他の硬化剤はいずれも、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤)の使用量に関し、重合性不飽和基を有する化合物(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、当該他の硬化剤の使用量の官能基当量比((重合性不飽和基を有する化合物(B))/他の硬化剤)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物が、より低誘電正接、高い柔軟性となりうることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、耐熱性、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
<他の樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に加えて、あるいは前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に代えて他の樹脂を含んでいてもよい。
前記他の樹脂の具体例としては、特に制限されないが、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、シアン酸エステル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物における他の樹脂の含有量は、全体の50質量%以下であることが好ましい。
<溶媒>
本実施形態の樹脂組成物は、無溶媒で調製しても構わないし、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒は、樹脂組成物の粘度を調整する機能等を有する。
前記溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物における溶媒の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)中、0~90質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることがさらに好ましい。前記溶媒の含有量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の含有量が90質量%以下であると、経済性の観点から好ましい。
<添加剤>
本実施形態の樹脂組成物は、添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、重合禁止剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤等が挙げられる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、目的を逸脱しない範囲において、必要に応じて、上記他の樹脂、上記溶媒、上記硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤等のその他の各種添加剤を適量含有することもできる。
<<硬化促進剤>>
本実施形態の硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。上述の硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
上記アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
上記イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
上記グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
上記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
上述の硬化促進剤のうち、2-エチル-4-メチルイミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)を用いることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は、所望の硬化性を得るために適宜調整できるが、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることが更に好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上であると、硬化性に優れることから好ましい。一方、硬化促進剤の含有量が5質量部以下であると、絶縁信頼性に優れることから好ましい。同様の観点から、硬化促進剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上であることがより好ましく、また、3質量部以下であることがより好ましい。
<<重合禁止剤>>
本実施形態の重合禁止剤としては、特に制限されないが、p-メトキシフェノール(メトキノン)、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物;ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物;メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物;フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物;N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物;リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物;ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物;ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物;1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<酸化防止剤>>
本実施形態の酸化防止剤としては、特に制限されないが、重合禁止剤で例示した化合物と同様のものを用いることができる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記重合禁止剤及び酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80が」等が挙げられる。
<<難燃剤>>
本実施形態の難燃剤としては、特に制限されないが、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
前記無機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等が挙げられる。
上記有機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸エステル;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等ジフェニルホスフィン;10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジオキシナフタレン)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等のリン含有フェノール;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状リン化合物;前記リン酸エステル、前記ジフェニルホスフィン、前記リン含有フェノールと、エポキシ樹脂やアルデヒド化合物、フェノール化合物と反応させて得られる化合物等が挙げられる。
上記ハロゲン系難燃剤としては、特に制限されないが、臭素化ポリスチレン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、1,2、-ビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、テトラブロモフタル酸等が挙げられる。上述の難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の難燃剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましい。難燃剤の含有量が0.1質量部以上であると、難燃性を付与できることから好ましい。一方、難燃剤の含有量が50質量部以下であると、誘電特性を維持しながら難燃性を付与できることから好ましい。同様の観点から、難燃剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1質量部以上であることがより好ましく、また、30質量部以下であることがより好ましい。
<<充填剤>>
本実施形態の充填剤としては、有機充填剤、無機充填剤が挙げられる。有機充填剤は、伸びを向上させる機能、機械的強度を向上させる機能等を有する。無機充填剤は、熱膨張率の低減や難燃性の付与といった機能を有する。
前記有機充填剤としては、特に制限されないが、ポリアミド粒子等が挙げられる。
上記無機充填剤としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、シリカを用いることが好ましい。この際、シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が用いられうる。
また、上記充填剤は、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際、使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用されうる。表面処理剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。なお、上述の充填剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の充填剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.5~95質量部であることが好ましく、5~80質量部であることがより好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部以上であると、充填剤の効果を十分に付与できることから好ましい。一方、配合物の粘度が高くなり成形性を損なわないように、充填剤の含有量が95質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、充填剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、5質量部以上であることがより好ましく、また、80質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
[硬化物]
本実施形態における硬化物は、上述した樹脂組成物を硬化してなる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、いわゆる硬化性組成物としても使用することができる。当該樹脂組成物に含有されるインダン環含有化合物(A)自体が、実質的に極性官能基を有していないため誘電正接が低いことから、前記樹脂組成物から得られる硬化物も誘電正接が低くなり、また、得られる硬化物は柔軟性、柔軟性に起因する銅箔等の金属への密着性、及び、低誘電特性を発現させることのでき、好ましい態様となる。
本実施形態の硬化物は、前記樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
本実施形態において、紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/mであることが好ましく、0.5~10kJ/mであることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上の複数回に分けて行ってもよい。
本実施形態における樹脂組成物又は硬化物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、樹脂注型材料、接着剤、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、導電ペースト、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、繊維強化複合材料、上記複合材料を硬化させてなる成形品等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。さらに、上記の中でも、硬化物が優れた柔軟性、密着性、低誘電特性、及び、耐熱性等を有するといった特性を生かし、本発明の樹脂組成物は、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、フレキシルブル配線基板、回路基板、及び、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、多層プリント配線板、繊維強化複合材料、前記複合材料を硬化させてなる成形品に用いることが好ましい。
[物品]
本実施形態の物品は、上述した硬化物からなる塗膜を有することを特徴とする。かかる本実施形態の物品においては、上記塗膜が、耐熱性及び塗膜外観性に優れた絶縁材料として機能し得る。
本実施形態の物品は、典型的には、ソルダーレジスト膜(上記塗膜)が表層の適所に形成されてなる、プリント配線基板又は半導体パッケージ用基板である。
[絶縁材料]
本実施形態における絶縁材料は、上述した樹脂組成物からなる。当該絶縁材料としては、上述のビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、回路基板用絶縁材料及び電子部品内蔵用基板用の絶縁材料などが挙げられる。例えば、上記樹脂組成物からビルドアップ基板を製造する方法としては、以下に示す3つの工程からなる方法で製造されるものが挙げられる。第1の工程は、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程であり、第2の工程は、その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程であり、第3の工程は、このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程である。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましい。第一の工程は、上述の溶液塗布によるもの以外にも、あらかじめ所望の厚みに塗工して乾燥したビルドアップフィルムのラミネートによる方法でも行うことができる。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を製造することも可能である。
[レジスト部材]
本実施形態におけるレジスト部材は、上述した樹脂組成物からなる。当該レジスト部材は、例えば、前記樹脂組成物を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で有機溶剤を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、必要により更に140~180℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。かかる本実施形態のレジスト部材は、低誘電特性及び伸度に優れる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、GPC測定、H-NMR測定、13C-NMR測定、FD-MSスペクトル測定に関しては、以下の条件等にて測定した。
(評価方法)
<GPC測定>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成例・実施例等で得られたインダン環含有化合物(A)、及び、重合性不飽和基を有する化合物(B)のGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、原料ピークの減少及び消失から、目的生成物(インダン環含有化合物(A)、及び、重合性不飽和基を有する化合物(B))が生成していることを確認した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:以下に示す合成例・実施例等で得られた、インダン環含有化合物(A-1)~(A-5)、縮合環化合物(C-1)、及び重合性不飽和基を有する化合物(B-1)をそれぞれ固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)を使用した。
<FD-MSスペクトル測定>
FD-MSスペクトルは、以下の測定装置、測定条件を用いて測定した。この結果より、目的生成物(インダン環含有化合物(A-1)~(A-5)及び縮合環化合物(C-1))に相当する質量ピークを確認した。
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
H-NMR測定>
H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記H―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
13C-NMR測定>
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:150MHz
積算回数:320回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記13C―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
<不飽和結合の定量>
特開2012-214728号公報に記載の不飽和結合の定量方法を用いて不飽和結合の量を算出した。
<試験片の作製及びピール強度の測定(密着性の評価)>
-試験片の作製-
銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に対して、各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて1000mJ/cmの紫外線を塗膜に照射した後、160℃で1時間加熱し、試験片1を得た。
-ピール強度測定(密着性の評価)-
密着性の評価は、下記のピール強度の測定により行った。
上記試験片1を幅1cm、長さ12cmの大きさに切り出し、剥離試験機(株式会社A&D製「A&Dテンシロン」、剥離速度50mm/分)を用いて90°ピール強度(N/cm)を測定した。
<誘電率及び誘電正接測定(誘電特性の評価)>
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて1000mJ/cmの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、前記硬化塗膜をガラス基材から剥離し、硬化物を得た。次いで、当該硬化物を温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管したものを試験片2とし、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「4291B RFインピーダンスマテリアルアナライザー、16453A」を用いて、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。
(合成例1)インダン環含有化合物(A-1)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、2,4,6-トリメチルアニリン40.6g(0.30mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン582.8g(3.0mol)、キシレン600.0g及び活性白土62.3gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら200℃になるまで昇温し、8時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、トルエン500gで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶媒及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、インダン環含有化合物(A-1)を384g得た。当該インダン環含有化合物(A-1)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その結果、インダン環含有化合物(A-1)の数平均分子量(Mw)は845であった。また、インダン環含有化合物(A-1)のFD-MSスペクトル結果にて、M=316、474、632のピークが確認された。さらに、インダン環含有化合物(A-1)のFD-MSスペクトル結果にて、M=293、451、610のピークも確認されたことから、インダン環含有化合物(A-1)は、アニリン骨格(一般式(2)又は一般式(3)に相当)を有する化合物を含むことを確認した。そして、インダン環含有化合物(A-1)は、UV硬化性を示した。さらに、得られたインダン環含有化合物(A-1)1分子当たりのアルケニル基(不飽和結合)の数は、平均1~10個の範囲であることを確認した。なお、参考までに、合成例1で得られたインダン環含有化合物(A-1)のGPCチャート(図1)、FD-MSチャート(図6)、及び13C-NMRチャート(図7)を示す。
したがって、MS及びNMRの測定結果から、合成例1で得られたインダン環含有化合物(A-1)は、以下の式(A-1.1)で表される化合物と、上記一般式(1c)で表される化合物との混合物であると考えられる。
Figure 2024006097000029
(合成例2)インダン環含有化合物(A-2)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコに2,4,6-トリメチルアニリン56.7g(0.40mol)、ジイソプロペニルベンゼン666.7g(4.20mol)、キシレン700.0g及び活性白土133.3gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら180℃になるまで昇温し、5時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、キシレンで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶媒及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、インダン環含有化合物(A-2)を得た。当該インダン環含有化合物(A-2)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その結果、インダン環含有化合物(A-2)の数平均分子量(Mw)は814であった。インダン環含有化合物(A-2)のFD-MSスペクトル結果にて、M=316、474、632のピークが確認された。さらに、インダン環含有化合物(A-2)のFD-MSスペクトル結果にて、M=293、451、610のピークも確認されたことから、インダン環含有化合物(A-2)は、アニリン骨格(一般式(2)又は一般式(3)に相当)を有する化合物を含むことを確認した。そして、インダン環含有化合物(A-2)は、UV硬化性を示した。さらに、得られたインダン環含有化合物(A-2)1分子当たりのアルケニル基(不飽和結合)の数は、平均1~10個の範囲であることを確認した。なお、参考までに、図2に合成例2で得られたインダン環含有化合物(A-2)のGPCチャートを示す。
なお、合成例2で得られたインダン環含有化合物(A-2)も合成例1と同様に13C-NMR測定を行ったところ、合成例1のインダン環含有化合物(A-1)と同様のピークチャートが得られたことから、インダン環含有化合物(A-2)は、以下の式(A-2.1)で表される化合物と、上記一般式(1c)で表される化合物との混合物であると考えられる。
Figure 2024006097000030
(合成例3)インダン環含有化合物(A-3)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコに2-トリフルオロメチルアニリン25.3g(0.13mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン333.3g(1.73mol)、キシレン340.0g及び活性白土66.7gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら180℃になるまで昇温し、5時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、キシレンで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶媒及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、インダン環含有化合物(A-3)を得た。当該インダン環含有化合物(A-3)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その結果、インダン環含有化合物(A-3)の数平均分子量(Mw)は689であった。インダン環含有化合物(A-3)のFD-MSスペクトル結果にて、M=316、474、632のピークが確認された。さらに、インダン環含有化合物(A-3)のFD-MSスペクトル結果にて、M=319、478、636のピークも確認されたことから、インダン環含有化合物(A-3)は、アニリン骨格(一般式(2)又は一般式(3)に相当)を有する化合物を含むことを確認した。そして、インダン環含有化合物(A-3)は、UV硬化性を示した。さらに、得られたインダン環含有化合物(A-3)1分子当たりのアルケニル基(不飽和結合)の数は、平均1~10個の範囲であることを確認した。なお、参考までに、図3に合成例3で得られたインダン環含有化合物(A-3)のGPCチャートを示す。
なお、合成例3で得られたインダン環含有化合物(A-3)も合成例1と同様に13C-NMR測定を行ったところ、合成例1のインダン環含有化合物(A-1)と同様のピークチャートが得られたことから、インダン環含有化合物(A-3)は、以下の式(A-3.1)で表される化合物と、上記一般式(1c)で表される化合物との混合物であると考えられる。
Figure 2024006097000031
(合成例4)インダン環含有化合物(A-4)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコにジエチルトルエンジアミン31.4g(0.20mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン333.3g(1.73mol)、キシレン340.0g及び活性白土66.7gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら180℃になるまで昇温し、5時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、キシレンで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶媒及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、インダン環含有化合物(A-4)を得た。当該インダン環含有化合物(A-4)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その結果、インダン環含有化合物(A-4)の数平均分子量(Mw)は393であった。インダン環含有化合物(A-4)のFD-MSスペクトル結果にて、M=316、474、632のピークが確認された。さらに、インダン環含有化合物(A-4)のFD-MSスペクトル結果にて、M=337、494、653のピークも確認されたことから、インダン環含有化合物(A-4)は、アニリン骨格(一般式(2)又は一般式(3)に相当)を有する化合物を含むことを確認した。なお、インダン環含有化合物(A-4)は、UV硬化性を示した。さらに、得られたインダン環含有化合物(A-4)1分子当たりのアルケニル基(不飽和結合)の数は、平均1~10個の範囲であることを確認した。なお、参考までに、図4に合成例4で得られたインダン環含有化合物(A-4)のGPCチャートを示す。
なお、合成例4で得られたインダン環含有化合物(A-4)も合成例1と同様に13C-NMR測定を行ったところ、合成例1のインダン環含有化合物(A-1)と同様のピークチャートが得られたことから、インダン環含有化合物(A-4)は、以下の式(A-4.1)で表される化合物と、上記一般式(1c)で表される化合物との混合物であると考えられる。
Figure 2024006097000032
(合成例5)インダン環含有化合物(A-5)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコに2,4,6-トリメチルアニリン10.2g(0.07mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,4-ジイソプロピルベンゼン100.0g(0.51mol)、キシレン300.0g及び活性白土23.5gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら180℃になるまで昇温し、5時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、キシレンで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶媒及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、インダン環含有化合物(A-5)を得た。当該インダン環含有化合物(A-5)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その結果、インダン環含有化合物(A-5)の数平均分子量(Mw)は1142であった。インダン環含有化合物(A-5)のFD-MSスペクトル結果にて、M=316、474、632のピークが確認された。さらに、インダン環含有化合物(A-5)のFD-MSスペクトル結果にて、M=293、451、610のピークも確認されたことから、インダン環含有化合物(A-5)は、アニリン骨格(一般式(2)又は一般式(3)に相当)を有する化合物を含むことを確認した。なお、インダン環含有化合物(A-5)はUV硬化性を示した。さらに、得られたインダン環含有化合物(A-5)1分子当たりのアルケニル基(不飽和結合)の数は、平均1~10個の範囲であることを確認した。なお、参考までに、図5に合成例5で得られたインダン環含有化合物(A-5)のGPCチャートを示す。
なお、合成例5で得られたインダン環含有化合物(A-5)も実施例1と同様に13C-NMR測定を行ったところ、合成例1のインダン環含有化合物(A-1)と同様のピークチャートが得られたことから、インダン環含有化合物(A-5)は、以下の式(A-5.1)で表される化合物と、上記一般式(1c)で表される化合物との混合物であると考えられる。
Figure 2024006097000033
(合成例6)インダン環含有化合物(A-6)の合成
シリカゲルカラムを用いて上記インダン環含有化合物(A-1)を精製することにより、上記一般式(1c)で表されるアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)を吸着させて、上記一般式(A-1.1)で表されるインダン環含有化合物(A-6)を調製した。シリカゲルカラムの展開溶媒としては、ヘキサンと酢酸エチルとを30:1の体積比で混合した混合溶媒を用いた。なお、得られたインダン環含有化合物(A-6)についてFD-MS測定を行った結果、上記一般式(1c)で表されるアニリン骨格を有するインダン環含有化合物(A1)由来のピークを確認できなかった。
(合成例7)重合性不飽和基を有する化合物(B-1)の合成
温度計、撹拌機、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」、エポキシ当量188g/当量)188質量部を仕込み、ジブチルヒドロキシトルエン0.3質量部、熱重合禁止剤としてメトキノン0.1質量部加えた後、アクリル酸72質量部、トリフェニルホスフィン1.3質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で8時間反応を行い、重合性不飽和基を有する化合物(B-1)を得た。
(比較合成例1)縮合環化合物(C1)の合成
温度計、冷却管及び攪拌器を取り付けたフラスコにノルボルネン72.0質量部、DVB-810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、ジビニルベンゼン81質量%及びエチルスチレン19質量%含有)25.0質量部、DVB-570(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、ジビニルベンゼン57質量%及びエチルスチレン43質量%含有)を75.0質量部仕込むことにより、ノルボルネン1モルに対し、ジビニルベンゼン0.63モル、エチルスチレンを0.37モルで仕込み量を調整した。続いて、酢酸ブチル35.6質量部及びトルエン114.7質量部を仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温し、トリフルオロボラン・ジエチルエーテル錯体を加え、同温度で6時間反応させて反応溶液を得た。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、水洗により触媒残渣を除去し、60℃減圧下で揮発分を除去することにより縮合環化合物(C1)を得た。
(実施例1~6:樹脂組成物の調製と評価)
上記合成例で得られたインデン環化合物(A-1)~(A-6)と、重合性不飽和基を有する化合物(B―1)と、光重合性開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 907」)と、有機溶媒(メチルエチルケトン)と、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールとを、表1に示す組成比で混合し、樹脂組成物(1)~(6)を得た。
そして、上記(評価方法)の欄に記載の評価方法の手順に従い、当該樹脂組成物(1)~(6)について、ピール強度(密着性)及び誘電特性(誘電率及び誘電正接)の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
(比較例1:組成物の調製と評価)
実施例1~6と同様に、表1に示す組成比で各成分を混合し、比較例1の比較用樹脂組成物(C1)を得た。そして、比較例1の比較用樹脂組成物(C1)について、上記(評価方法)の欄に記載の評価方法の手順に従い、ピール強度(密着性)、誘電率及び誘電正接の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
Figure 2024006097000034
表1の結果から、実施例の樹脂組成物は、比較例の比較用樹脂組成物に比べ、得られる硬化物において、優れた密着性及び低誘電特性を発現できることが確認された。
本開示によれば、得られる硬化物において、優れた密着性及び低誘電特性を発現させることのできる、樹脂組成物、及び、前記樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、及び物品を提供することができる。

Claims (5)

  1. 以下の一般式(1a)で表される構造単位を有し、前記構造単位に結合される末端部位の少なくとも一つがアルケニル基である、インダン環含有化合物(A)と、
    重合性不飽和基を有する化合物(B)と、
    光重合開始剤と、を含有する樹脂組成物。
    Figure 2024006097000035
    (上記一般式(1a)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、n12は繰り返し単位数を表す。)
  2. 前記インダン環含有化合物(A)と、前記重合性不飽和基を有する化合物(B)との固形分の質量比[(A)/(B)]が、1/100~100/100の範囲である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記インダン環含有化合物(A)は、以下の一般式(1b):
    Figure 2024006097000036
    (上記一般式(1b)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
    11、Q12、L11及びL12はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基を表し、
    11及びP12はそれぞれ独立して、水素原子、極性基、前記極性基に置換されてもよい炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基又は以下の一般式(2)を表し、
    11及びM12はそれぞれ独立して、単結合又は以下の一般式(3)を表し、
    12は平均繰り返し単位数を表し、n11及びn13はそれぞれ独立して、0~20を表す。
    但し、P11及びP12の少なくともいずれか一方が炭素原子数2~10のアルケニル基である。
    Figure 2024006097000037
    [上記一般式(2)中、R15はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。]
    [上記一般式(3)中、R16はそれぞれ独立して、アミノ基、フルオロアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上4以下の整数を表す。]
    なお、一般式(2)及び(3)中の*は他の原子との結合を表す。)表される、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物の硬化物。
  5. 請求項4に記載の硬化物からなる塗膜を有することを特徴とする、物品。
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