JP2024042363A - ポリアミド樹脂組成物、およびその成形体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物、およびその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】より十分に引張破断伸びを高めることができ、かつ高温下での流動性を高めることができるポリアミド樹脂組成物およびその成形体を提供すること。【解決手段】上記半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含むポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(A)は芳香環を含む成分単位を含み、前記ポリアミド樹脂(A)に含まれる成分単位を構成する炭素原子の総数に対する、前記芳香環を構成する炭素原子の総数の割合は30~60%であり、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して1~30質量%である、ポリアミド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物、およびその成形体に関する。
従来より、成形材料として、種々のポリアミド樹脂組成物が知られている。例えば、特許文献1には、<A>テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから誘導された単位40乃至90重量%と、<B>ε-カプロラクタムから誘導された単位0乃至50重量%と、<C>アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンから誘導された単位0乃至60重量%とを含有し、上記<B>および/または<C>が全体のうち少なくとも10重量%となり、コポリアミドが0.5重量%より少ないトリアミン分を含有する部分芳香族(半芳香族)コポリアミドが開示されている。特許文献1によれば、上記部分芳香族コポリアミドは、機械的強度を維持しつつ、加熱成形性を良好にすることができたとされている。
また、特許文献2には、ヘキサンメチレンテレフタルアミド単位を所定の分量含む結晶性コポリアミドに、ポリオレフィン系エラストマーおよびジエン系エラストマーから選択される変性または未変性のエラストマーを所定の分量含ませたポリアミド樹脂組成物が開示されている。特許文献2によれば、上記ポリアミド樹脂組成物は、機械的特性、耐熱性および成形性に優れているとされている。
これらの文献に記載されたポリアミド樹脂は、金属より格段に軽量であり、優れた機械的強度、耐熱性を有することから、例えば、自動車用部品を構成する樹脂材料として好適に用いられ得る。
特開平2-41318号公報 特開平5-98152号公報
従来のポリアミド樹脂組成物は、高い機械的強度を有するものの、柔軟性が低く、引張破断伸びが低いという問題があった。引張破断伸びが低いと、成形体を組み付けする際などに成形体が破損しやすい。これに対し、特許文献2に記載のようにエラストマーを配合すると、成形体の引張破断伸びをある程度高めることはできるものの、より十分に引張破断伸びを高めることはできなかった。また、成型時の高温下におけるポリアミド樹脂組成物の流動性を高めたいという要望が存在する。上記流動性を高めることができると、成形条件や製品形状の制約を小さくすることができるためである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、より十分に引張破断伸びを高めることができ、かつ高温下での流動性を高めることができるポリアミド樹脂組成物およびその成形体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための、本発明の一態様は、下記[1]~[9]のポリアミド樹脂組成物に関する。
[1]ポリアミド樹脂(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含むポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(A)は芳香環を含む成分単位を含み、前記ポリアミド樹脂(A)に含まれる成分単位を構成する炭素原子の総数に対する、前記芳香環を構成する炭素原子の総数の割合は30~60%であり、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して1~30質量%である、ポリアミド樹脂組成物。
[2]前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、およびスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)からなる群より選ばれるスチレン系熱可塑性エラストマー、またはこれらの変性体である、[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたエラストマーを含み、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の全質量に対する、前記不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位の平均含有量は、0.05~5.0質量%である、[1]または[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量は、10~200mmol/kgである、[3]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]前記ポリアミド樹脂組成物の単位質量あたりの末端アミノ基量のモル数を[X]とし、前記ポリアミド樹脂組成物の単位質量あたりの、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に含まれる前記不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位のモル数を[Y]としたとき、[X]/[Y]は0.01~500である、[3]または[4]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[6]前記ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアミンに由来する成分単位(a2)と、を含み、前記芳香環を有する成分単位は、芳香環を有するジカルボン酸に由来する成分単位であって、前記芳香環を有する成分単位の含有量は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、60モル%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[7]前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、テレフタル酸に由来する成分単位45~100モル%を含み、前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、前記ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、炭素原子数4~18の直鎖状アルキレンジアミンに由来する成分単位40~100モル%と、炭素原子数4~18の分岐状アルキレンジアミンに由来する成分単位0~60モル%と、を含む、[6]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[8]前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、テレフタル酸に由来する成分単位90~100モル%を含み、前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、前記ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、炭素原子数4~18の直鎖状アルキレンジアミンに由来する成分単位40~80モル%と、炭素原子数4~18の分岐状アルキレンジアミンに由来する成分単位20~60モル%と、を含む、[7]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[9]前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、テレフタル酸に由来する成分単位20~80モル%と、イソフタル酸に由来する成分単位20~80モル%と、を含み、
前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含む、[7]に記載のポリアミド樹脂組成物。
上記課題を解決するための、本発明の一態様は、下記[10]の成形体に関する。
[10][1]~[9]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる、成形体。
本発明によれば、より十分に引張破断伸びを高めることができ、かつ高温下での流動性を高めることができるポリアミド樹脂組成物およびその成形体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。
上述のように、ポリアミド樹脂にエラストマーを添加することで、これらを含むポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体の柔軟性を高めて引張破断伸びをある程度高めることができる。しかしながら、特許文献2に記載されたポリアミド樹脂組成物では、成形体の引張破断伸びは、十分に高まらなかった。
これに対して本発明者らは、分子構造中に芳香環をより多く有するポリアミド樹脂(A)に対して、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を用いることで、同種の上記ポリアミド樹脂(A)に対して他のエラストマーを用いたときよりも、成形体の引張破断伸びをより十分に高めることができ、かつその向上率(改善率)が、分子構造中の芳香環がより少ないポリアミド樹脂を用いたときよりも高いことを見出した。
上記ポリアミド樹脂(A)は、具体的には、上記ポリアミド樹脂(A)は芳香環を含む成分単位を含み、上記ポリアミド樹脂(A)に含まれる成分単位を構成する炭素原子の総数に対する、上記芳香環を構成する炭素原子の総数の割合は30~60%であるポリアミド樹脂(A)である。このようなポリアミド樹脂(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)とを用いることで引張破断伸び、およびその改善率がより十分に高まる理由は、以下のように考えられる。
ポリアミド樹脂(A)の分子構造に含まれる芳香環と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の分子構造に含まれる芳香環との間では、ポリアミド樹脂組成物中で相互作用が生じると考えられる。このとき、ポリアミド樹脂(A)の分子構造中により多くの芳香環が含まれることで、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の芳香環との間でより相互作用を生じやすくすることができると考えられる。ポリアミド樹脂組成物において、上記相互作用がより生じやすくなることで、ポリアミド樹脂(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の分子同士が密接した状態で存在することができると考えられる。これにより、成形体の強度が高まり、成形体に引張応力が加わったときに破断が生じにくくなると考えられる。エラストマーの添加により柔軟性が高まったポリアミド樹脂組成物において、上記破断が生じにくくなることで、成形体に引張応力が加わったときに、より十分に引張破断伸びを高めることができると考えられる。
さらに、本発明者らは、上記ポリアミド樹脂(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)とを用いることで、同種の上記ポリアミド樹脂(A)に対して他のエラストマーを用いたときよりも、ポリアミド樹脂組成物の高温下における流動性(以下、単に流動性ともいう)を高めることができ、かつその向上率(改善率)が、分子構造中の芳香環がより少ないポリアミド樹脂を用いたときよりも高いことを見出した。その理由は以下のように考えられる。
高温環境下では、ポリアミド樹脂(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の分子運動が活性化される。分子運動が活性化されると、ポリアミド樹脂(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、両者の分子構造における芳香環同士が近づいた状態で存在しにくくなる。これにより、ポリアミド樹脂(A)の芳香環と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の芳香環との間で相互作用が生じにくくなり、ポリアミド樹脂(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の分子同士は密接して存在しにくくなる。その結果として、高温環境下では、ポリアミド樹脂組成物の流動性が高まると考えられる。
以下、本発明の構成について説明する。
1.ポリアミド樹脂組成物
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)とを含む。
1-1.ポリアミド樹脂(A)
ポリアミド樹脂(A)は、上述のように、芳香環を含む成分単位を含む。上記芳香環は、ベンゼン環であることが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、例えば、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアミンに由来する成分単位(a2)とを含むポリアミドとすることができる。以下、ポリアミド樹脂(A)が、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアミンに由来する成分単位(a2)とを含む場合について説明する。
(ジカルボン酸に由来する成分単位(a1))
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、例えば、芳香環を有するジカルボン酸に由来する成分単位などを含むことができる。
ポリアミド樹脂(A)に含まれる芳香環を有する成分単位は、芳香環を有するジカルボン酸に由来する成分単位であることが好ましい。このとき、上記芳香環を有する成分単位の含有量は、上記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。上記含有量が60モル%以上であると、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)をポリアミド樹脂組成物中に均一に分散させやすくなり、ポリアミド樹脂(A)の芳香環と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の芳香環との相互作用を生じやすくすることができる。上記含有量の上限値は、特に限定されないが、例えば100モル%以下であり、90モル%以下であることが好ましい。
上記芳香環を有するジカルボン酸の例には、芳香族ジカルボン酸が含まれる。
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、テレフタル酸以外の芳香族カルボン酸が含まれる。
テレフタル酸の例には、テレフタル酸、テレフタル酸エステルなどが含まれる。これらのうち、テレフタル酸が好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、テレフタル酸に由来する成分単位45~100モル%を含むことが好ましく、テレフタル酸に由来する成分単位90~100モル%を含むことがより好ましい。テレフタル酸に由来する成分単位の含有量が45モル%以上であると、ポリアミド樹脂(A)の融点を高めやすく、得られる成形体の耐熱性を高めることができる。また、ポリアミド樹脂(A)に含まれる成分単位を構成する炭素原子の総数に対する、前記芳香環を構成する炭素原子の総数の割合をより高めやすくすることができる。これにより、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、ポリアミド樹脂(A)との相互作用をより生じやすくさせて、引張破断伸び、および流動性をより高めやすくすることができる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸などが含まれる。これらのうち、イソフタル酸が好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)が、イソフタル酸に由来する成分単位を含むとき、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分単位20~80モル%と、イソフタル酸に由来する成分単位20~80モル%と、を含むことが好ましく、テレフタル酸に由来する成分単位25~75モル%と、イソフタル酸に由来する成分単位25~75モル%と、を含むことがより好ましく、テレフタル酸に由来する成分単位55~75モル%と、イソフタル酸に由来する成分単位25~45モル%と、を含むことがさらに好ましい。テレフタル酸およびイソフタル酸の含有量が上記範囲にあることでポリアミド樹脂(A)の結晶性を維持しつつ成形性を良好にすることができる。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ジカルボン酸以外の、他のジカルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジカルボン酸に由来する成分単位の例には、炭素原子数4~20の脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位、炭素原子数4~20の脂環族ジカルボン酸に由来する成分単位などが含まれる。
上記脂肪族ジカルボン酸は、炭素原子数4~20の脂肪族ジカルボン酸であり、上記炭素原子数は6~12であることが好ましい。そのような脂肪族ジカルボン酸の例には、アジピン酸、アゼライン酸およびセバシン酸が含まれる。これらの中でも、アジピン酸およびセバシン酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸の例には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などが含まれる。
他のジカルボン酸に由来する成分単位の含有量は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、0~40モル%とすることができ、0~30モル%であることが好ましく、0~10モル%であることがより好ましい。
(ジアミンに由来する成分単位(a2))
ジアミンに由来する成分単位(a2)は、例えば、炭素原子数4~18の脂肪族ジアミンに由来する成分単位、炭素数4~20の脂環式ジアミンに由来する成分単位、および芳香族ジアミンなどを含むことができる。これらのうち、ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4~18の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むことが好ましい。
上記脂肪族ジアミンは、炭素原子数4~18の脂肪族ジアミンであり、上記炭素原子数は4~15であることが好ましい。そのような脂肪族ジアミンの例には、炭素原子数4~18の直鎖状アルキレンジアミン、および炭素原子数4~18の分岐状アルキレンジアミン(側鎖を有するアルキレンジアミン)などが含まれる。
上記直鎖状アルキレンジアミンの例には、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンなどが含まれる。これらの中でも、1,6-ジアミノヘキサン、1,9-ノナンジアミンおよび1,10-ジアミノデカンが好ましい。直鎖状アルキレンジアミンは、1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
上記直鎖状アルキレンジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、40~100モル%であることが好ましく、40~80モル%であることがより好ましい。
上記分岐状アルキレンジアミンの例には、1-ブチル-1,2-ジアミノエタン、2,2-ジメチルジアミノプロパン、1,1-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、1-エチル-1,4-ジアミノブタン、1,2-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、1,3-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、1,4-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、2,3-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2,5-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,4-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、3,3-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,2-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,4-ジエチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,3-ジメチル-1,7-ジアミノヘプタン、2,4-ジメチル-1,7-ジアミノヘプタン、2,5-ジメチル-1,7-ジアミノヘプタン、2,2-ジメチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-4-エチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-エチル-4-メチル-1,7-ジアミノヘプタン、2,2,5,5-テトラメチル-1,7-ジアミノヘプタン、3-イソプロピル-1,7-ジアミノヘプタン、3-イソオクチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、1,3-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、1,4-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、2,4-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、3,4-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、4,5-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、2,2-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、3,3-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、4,4-ジメチル-1,8-ジアミノオクタン、3,3,5-トリメチル-1,8-ジアミノオクタン、2,4-ジエチル-1,8-ジアミノオクタン、および5-メチル-1,9-ジアミノノナンなどが含まれる。これらの中でも、2-メチル-1,5-ジアミノペンタンがより好ましい。
上記分岐状アルキレンジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、0~60モル%であることが好ましく、20~60モル%であることがより好ましい。
ジアミンに由来する成分単位(a2)が、直鎖状および分岐状のアルキレンジアミンに由来する成分単位を上記のような量で含有するとき、ポリアミド樹脂(A)の融点を、成形時にポリアミド樹脂組成物がガス焼けを引き起こさない程度にまで低下させることができる。また、成形時のポリアミド樹脂組成物の溶融流動性をより高めたり、成形体の高温下でのクリープ耐性を高めたりすることができる。
ジアミンに由来する成分単位(a2)が、炭素原子数4~18の直鎖状アルキレンジアミンに由来する成分単位、および炭素原子数4~18の分岐状アルキレンジアミンに由来する成分単位の両方を含む場合、上記直鎖状アルキレンジアミンに由来する成分単位の含有量が、両者の合計モル数に対して99モル%以下であると、成形時の溶融流動性をより高めることができる。また、上記分岐状アルキレンジアミンに由来する成分単位の含有量が、上記合計モル数に対して50モル%以下であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度が遅くなりにくく、耐熱性が十分になりやすい。
ジアミンに由来する成分単位(a2)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がイソフタル酸に由来する成分単位を含むとき、炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むことが好ましい。
このとき、炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、30~100モル%であることが好ましく、70~100モル%であることがより好ましい。
炭素原子数4~20の脂環式ジアミンの例には、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5-ビスアミノメチルノルボルナンおよび2,6-ビスアミノメチルノルボルナンなどが含まれる。芳香族ジアミンの例には、メタキシリレンジアミンなどが含まれる。
炭素原子数4~20の脂環式ジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、0~75モル%とすることができ、35~65モル%であることが好ましい。
芳香族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位の総モル数に対して、0~50モル%とすることができ、0~30モル%であることが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の各構成単位およびその比率は、ポリアミド樹脂(A)の調製時の仕込み比から算出するか、または、NMR法で測定することができる。
H-NMR測定の場合、例えば、核磁気共鳴装置(日本電子(株)製 ECX400型)を用い、溶媒は重水素化オルトジクロロベンゼンとし、試料濃度は20mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核はH(400MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は5.12μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は7.0秒、積算回数は500回以上とする条件である。基準のケミカルシフトは、テトラメチルシランの水素を0ppmとするが、他にも、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素由来のピークを7.10ppmとしてケミカルシフトの基準値とすることでも同様の結果を得ることができる。官能基含有化合物由来のHなどのピークは、常法によりアサインしうる。
13C-NMR測定の場合、例えば、測定装置として核磁気共鳴装置(日本電子(株)製ECP500型)を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シングルパルスプロトンデカップリング、45°パルス、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値とする条件である。各種シグナルのアサインは常法を基にして行い、シグナル強度の積算値を基に定量を行うことができる。
ポリアミド樹脂(A)の具体例には、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位であり、ジアミンに由来する成分単位(a2)が1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位および2-メチル-1,5-ペンタンジアミンに由来する成分単位であるポリアミド樹脂、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位及びイソフタル酸に由来する成分単位であり、ジアミンに由来する成分単位(a2)が1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位であるポリアミド樹脂、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位であり、ジアミンに由来する成分単位(a2)が1,9-ジアミノノナンに由来する成分単位であるポリアミド樹脂、ならびにジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位であり、ジアミンに由来する成分単位(a2)が1,10-ジアミノデカンに由来する成分単位であるポリアミド樹脂などが含まれる。
(ポリアミド樹脂(A)の物性)
本発明におけるポリアミド樹脂は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)は280℃以上であることが好ましく、280~340℃であることがより好ましく、300~330℃であることがさらに好ましい。上記融点(Tm)が280℃以上であると、ポリアミド樹脂組成物および成形体の引張強度や耐熱性をより高めることができる。また、上記融点(Tm)が340℃以下であると、成形温度を過剰に高くせずに、ポリアミド樹脂組成物を成形しやすくすることができ、成形加工性をより良好にすることができる。また、溶融時におけるポリアミド樹脂(A)や他の成分の熱分解をより抑制することができる。
上述したポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)は、ポリアミド樹脂(A)の組成を調整することによって、上記範囲にすることができる。例えば、後述するテレフタル酸に由来する成分単位の含有比率を多くすることによって、上記融点(Tm)を高めることができる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定されるガラス転移温度(Tg)が、90~145℃であることが好ましく、100~145℃であることがより好ましい。上記ガラス転移温度(Tg)が90℃以上であると、高温環境下における分子の運動性が活発になる温度が高くなるため、分子の運動性を抑制してポリアミド樹脂組成物および成形体の耐熱性をより高めることができる。また、上記ガラス転移温度(Tg)が145℃以下であると、成形時における溶融状態のポリアミド樹脂組成物を冷却したとき、射出成形時のサイクルタイムを短縮することができる。
ポリアミド樹脂(A)の示差走査熱量測定(DSC)により測定される融解熱量(ΔH)は、0~70J/gであることが好ましく、20~65J/gであることがより好ましく、30~60J/gであることがさらに好ましい。融解熱量は、樹脂の結晶性の指標であり、融解熱量が大きいほど、ポリアミド樹脂(A)の結晶性が高いことを示す。ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)が30J/g以上であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶性がより高まるため、ポリアミド樹脂組成物および成形体の引張強度より高めることができる。
なお、ポリアミド樹脂の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)および融解熱量(ΔH)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定することができる。
具体的には、約5mgのポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱する。樹脂を完全融解させるために、350℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却する。30℃で5分間置いた後、10℃/minで350℃まで2度目の加熱を行う。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とする。融解熱量(ΔH)は、JIS K7122:2012に準じて、1度目の昇温過程での融解時の吸熱ピークの面積から求める。
ポリアミド樹脂(A)の、濃硫酸中25℃の温度で測定される極限粘度[η]は、0.70~1.2dl/gであることが好ましく、0.75~1.1dl/gであることがより好ましい。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が0.75dl/g以上であると、ポリアミド樹脂組成物の引張強度の低下を十分に抑制することができる。極限粘度[η]が1.1dl/g以下であると、ポリアミド樹脂組成物の成形時の流動性が損なわれにくい。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。半芳香族ポリアミド樹脂(A)0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解させて、試料溶液とする。得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定し、下記式に基づき算出する。
[η]=ηSP/(C*(1+0.205ηSP))
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t-t)/t
上述のように、ポリアミド樹脂(A)は芳香環を含む成分単位を含み、ポリアミド樹脂(A)に含まれる成分単位を構成する炭素原子の総数に対する、芳香環を構成する炭素原子の総数の割合は30~60%である。30%以上であれば、スチレン系熱可塑性エラストマーの芳香環との相互作用を生じさせて、成形体の引張破断伸びおよびポリアミド樹脂組成物の流動性を高めることができる。また、60%以下であれば、上記相互作用が過剰に生じることを抑制して、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度を適度に調整することができる。これにより、ポリアミド樹脂組成物の成形性を高めることができる。これらの観点から、上記割合は、35~55%であることが好ましく、40~50%であることがより好ましい。上記炭素原子数の割合は、ポリアミド樹脂(A)の調製に用いるジカルボン酸およびジアミンの組み合わせ、および芳香族ジカルボン酸および芳香族ジアミンの含有比率によって調整することができる。
ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量は、10mmol/kg以上であることが好ましく、20mmol/kg以上であることがより好ましく、40mmol/kg以上であることがさらに好ましい。上記末端アミノ基量が10mmol/kg以上であることで、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、後述する不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーを含むとき、上記変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーの変性部分と、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基との間に相互作用が生じやすくなる。これにより、ポリアミド樹脂(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の分子同士がより密接して存在することができるため、成形体がより破断しにくくなり、ポリアミド樹脂組成物の引張破断伸びをより高めることができる。上記末端アミノ基量の上限値は、特に限定されないが、例えば、200mmol/kg以下とすることができる。
上記末端アミノ基量は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)およびジアミンに由来する成分単位(a2)の含有量を調整するか、ポリアミド樹脂の合成時に末端封止剤を用いることによって、上記範囲に調整することができる。
末端封止剤は、例えば分子末端がカルボキシル基の場合は、モノアミンであることが好ましく、分子末端がアミノ基である場合は、モノカルボン酸であることが好ましい。
モノアミンの例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、およびブチルアミンなどを含む脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、およびジシクロヘキシルアミンなどを含む脂環式モノアミン、ならびに、アニリン、およびトルイジンなどを含む芳香族モノアミンなどが含まれる。モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ-ル酸などを含む炭素原子数2以上30以下の脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などを含む芳香族モノカルボン酸、ならびにシクロヘキサンカルボン酸などを含む脂環式モノカルボン酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸および脂環式モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
上記末端アミノ基量は、例えば、以下の方法により測定することができる。
ポリアミド樹脂1gをフェノール35mLに溶解させ、メタノールを2mL混合し、試料溶液とする。チモールブルーを指示薬とし、当該試料溶液に対して0.01規定の塩酸水溶液を、電位差滴定装置(メトローム社製)を用いて、青色から黄色になるまで滴定を実施し、末端アミノ基量([NH]、単位:mmol/kg)を測定する。
ポリアミド樹脂は、公知のポリアミド樹脂と同様の方法で製造することができ、例えばジカルボン酸とジアミンとを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いでこの低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与して重縮合させることで製造することができる。
なお、ポリアミド樹脂(A1)のジカルボン酸に由来する成分単位は、バイオマス由来のジカルボン酸に由来する成分単位を含んでもよいし、ジアミンに由来する成分単位は、バイオマス由来のジアミンに由来する成分単位を含んでもよい。また、ポリアミド樹脂(A1)は、バイオマス由来の原料を含む原料群を重合してなる、バイオマス由来のポリアミド樹脂(A1)であってもよい。
1-2.スチレン系熱可塑性エラストマー(B)
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、ポリアミド樹脂組成物に配合されることにより、得られる成形体の引張破断伸び、引張破断強度、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性等を高めることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の例には、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、およびスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)からなる群より選ばれるスチレン系熱可塑性エラストマー、またはこれらの変性体などが含まれる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)における、スチレンに由来する成分単位の含有量は、全成分単位の総モル数に対して、20~80モル%であることが好ましく、30~65モル%であることがより好ましい。上記含有量が20モル%以上であると、ポリアミド樹脂(A)の芳香環と、スチレン系熱可塑性エラストマーの芳香環との間で、より相互作用を生じさせることができるため、ポリアミド樹脂組成物の引張破断伸び、および高温下での流動性をより高めることができる。上記含有量が80モル%以下であることで、上記相互作用が過剰に生じることを抑制して、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度を適度に調整することができる。上記スチレンに由来する成分単位の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の調製時の仕込み比から算出するか、または、NMR法で測定することができる。NMR法については、ポリアミド樹脂(A)で述べたものと同様とすることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K7112:1999に準拠して測定される密度は、0.850~1.000g/cmであることが好ましく、0.890~0.980g/cmであることがより好ましい。上記密度が0.850g/cm以上であると、得られる成形体の強度が損なわれにくく、0.980g/cm以下であると、得られる成形体に適度な柔軟性を付与し、引張破断伸びの低下をより抑制することができる。スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の密度は、原料である変性前の樹脂の合成に用いる原料の組成や重合温度、水素濃度などによって調整することができる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238による190℃、2.16kg荷重における測定値が、0.1~50g/10分であることが好ましく、0.2~20g/10分であることがより好ましい。上記MFRが0.1g/10分以上であると、ポリアミド樹脂組成物の高温下における流動性をより高めることができ、50g/10分以下であると、得られたポリアミド樹脂組成物を射出成形しやすくすることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー(以下、変性エラストマーとする)を含むことが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が変性エラストマーを含むことで、ポリアミド樹脂(A)と反応し、柔軟性をより付与しやすくすることができる。上記変性エラストマーは、不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位を含む。
変性エラストマーは、未変性のスチレン系熱可塑性エラストマーを、不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性させて得られる。
不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが含まれる。不飽和カルボン酸の誘導体の例には、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などが含まれ、具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウムなどが含まれる。これらの中でも、無水マレイン酸が好ましい。
グラフト変性は、従来公知の種々の方法で行うことができる。例えば、未変性のスチレン系熱可塑性エラストマーを押出機を用いて溶融させ、グラフトモノマーを添加してグラフト共重合させる溶融変性法で行ってもよい。グラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させる観点から、ラジカル開始剤の存在下で反応を行うことが好ましい。
ラジカル開始剤の例には、有機ペルオキシド、有機ペルエステルなどが含まれ、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシドなどの有機ペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルビバレート、tert-ブチルペルジエチルアセテートなどの有機ペルエステル、アゾイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどのアゾ化合物が含まれる。これらの中では、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましい。ラジカル開始剤は、原料としてのエチレン・α-オレフィン共重合体の質量に対して、通常、0.001質量%以上1質量%以下の割合で用いられる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の全質量に対する、上記不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位の平均含有量(変性エラストマーの平均変性量)は、0.05~5.00質量%であることが好ましく、0.10~3.00質量%であることがより好ましく、0.10~2.00質量%であることがさらに好ましく、0.30~2.00質量%であることが特に好ましい。上記平均含有量(平均変性量)が、0.05質量%以上であると、変性エラストマーがよりポリアミド樹脂と反応しやすくなる。また、上記平均含有量(平均変性量)が5.00質量%以下であると、増粘やゲル化による成形不良を抑制することができる。
上記平均含有量(平均変性量)は、測定によって求めてもよいし、ポリアミド樹脂組成物の調製に用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の組成から算出して求めてもよい。
例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位の平均含有量は、NMR法により測定することができる。測定条件は、後述する実施例と同様とすることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、未変性エラストマーを含んでもよい。未変性エラストマーは、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されていないスチレン系熱可塑性エラストマーである。スチレン系熱可塑性エラストマーが未変性エラストマーを含むことで、ポリアミド樹脂組成物の溶融流動性をより高めることができる。
未変性エラストマーは、例えば、変性エラストマーの原料として用いられるスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。なお、未変性エラストマーは、変性エラストマーの原料であるスチレン系熱可塑性エラストマーと異なってもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、未変性エラストマーを含むとき、上記平均含有量(上記平均変性量)は、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を構成する変性エラストマーおよび未変性エラストマーの、不飽和カルボン酸またはその誘導体などに由来する成分単位の含有量(変性量)をxi(質量%)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)中の変性エラストマーおよび未変性エラストマーの含有量をMi(質量部)としたとき(iは、2以上の整数)、下記式(1)からも求めることができる。
式(1):平均含有量(平均変性量)(質量%)=(Σxi*Mi/ΣMi)×100
1-3.他の成分
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、無機充填材、有機充填材、有機難燃剤、無機難燃剤、滑剤、酸化防止剤(耐熱安定剤)、熱安定剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、顔料、染料、天然油、合成油およびワックスなどの添加剤が含まれる。また、他のエラストマー、および他の耐熱性樹脂がさらに含まれてもよい。
(無機充填材(C))
無機充填材(C)は、繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状の形状を有する無機充填材でありうる。
繊維状の無機充填材の例には、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維およびホウ素繊維が含まれる。これらの中でも、ガラス繊維が特に好ましい。ガラス繊維を使用することにより、成形性が向上すると共に、無機充填材を含有する成形体の強度(弾性率)などの機械的特性および熱変形温度などの耐熱特性が向上する。
繊維状の無機充填材の平均長さは、通常は、0.1~20.0mmであり、0.3~6.0mm以下であることが好ましい。繊維状の無機充填材のアスペクト比は、通常は10~2000、30~600であることが好ましい。
繊維状の無機充填材の他、粉末状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状の形状を有する他の充填材を使用することもできる。そのような他の充填材の例には、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、ワラストナイト、ケイソウ土、クレー、カオリン、球状ガラス、マイカ、セッコウ、ベンガラ、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛などの粉状或いは板状の無機化合物、チタン酸カリウムなどの針状の無機化合物が含まれる。これらの充填材は、2種以上混合して使用することもできる。
他の充填材の平均粒径は、通常0.1~200μmであり、1~100μmであることが好ましい。
繊維状の充填材や他の充填材は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤で処理して使用することもできる。
無機充填材(C)は、繊維状の充填材と他の充填材の少なくとも一方を含むことが好ましく、繊維状の充填材とタルクの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
(滑剤(D))
滑剤(D)は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の溶融混練時の流動性をより高め、離型抵抗を低減することができる。
滑剤(D)として、高級脂肪酸やその金属塩、エステルまたはアミドを用いることができる。
高級脂肪酸は、炭素数8以上であり、炭素数8~40の脂肪酸であることが好ましい。脂肪酸は、モノカルボン酸であることが好ましい。高級脂肪酸の例には、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セバシン酸などの飽和の脂肪酸や、エルカ酸、オレイン酸、リシノール酸などの不飽和の脂肪酸が含まれる。これらのうち、モンタン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、およびベヘン酸が好ましい。
高級脂肪酸金属塩は、上記高級脂肪酸の金属塩である。金属塩を形成する金属元素の例には、ナトリウム、カリウムなどの第1族元素(アルカリ金属)、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどの第2族元素(アルカリ土類金属)、亜鉛、アルミニウムなどの第3族元素などが含まれ、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩である。そのような高級脂肪酸金属塩の例には、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウムが含まれる。これらのうち、モンタン酸金属塩および12-ヒドロキシステアリン酸金属塩が好ましい。
高級脂肪酸エステルは、上記高級脂肪酸とアルコール(好ましくは炭素数8以上40以下の脂肪族アルコール)とのエステル化物である。脂肪族アルコールの例には、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコールが含まれる。高級脂肪酸エステルの例には、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルが含まれる。
高級脂肪酸アミドの例には、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N-ステアリルステアリルアミド、N-ステアリルエルカアミドが含まれる。
(酸化防止剤(E))
酸化防止剤(E)の例には、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が含まれる。
リン系酸化防止剤の例には、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、トリフェニルホスファイト、2-エチルヘキシル酸ホスフェート、ジラウリルホスファイト、トリ-iso-オクチルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリラウリル-ジ-チオホスファイト、トリラウリル-トリ-チオホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-ジ-トリデシルホスファイト-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4′-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチル)トリデシルホスファイト、4,4′-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチル-ジ-トリデシル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4′-ビスフェニレンジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ソルビット-トリス-ホスファイト-ジステアリル-モノ-C30-ジオールエステルおよびビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが含まれる。これらの中でも、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイトおよびビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイトなどのペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト系のリン系酸化防止剤、ならびに、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4′-ビスフェニレンジホスファイトが含まれる。
フェノール系酸化防止剤の例には、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニル]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピオネート、スチレン化フェノール、4-ヒドロキシ-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチル-ハイドロキノン、シクロヘキシルフェノール、ブチルヒドロキシアニゾール、2,2′-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2′-メチレン-ビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4′-イソ-プロピリデンビスフェノール、4,4′-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1-ビス-(4-ヒドロオキシ-フェニル)シクロヘキサン、4,4′-メチレン-ビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,6-ビス(2′-ヒドロオキシ-3′-tert-ブチル-5′-メチルメチルベンジル)4-メチル-フェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロオキシ-5-tert-ブチル-フェニル)ブタン、1,3,5-トリス-メチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロオキシ-ベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)イソシアヌレート、トリス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル-オキシエチル]イソシアネート、4,4′-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2′-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、およびN,N′-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェノール-4-ヒドロキシシンナムアミド)が含まれる。
アミン系酸化防止剤の例には、4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、N,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、アルドール-α-ナフチルアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジハイドロキノンのポリマーおよび6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンが含まれる。
硫黄系酸化防止剤の例には、チオビス(β-ナフトール)、チオビス(N-フェニル-β-ナフチルアミン)、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、ドデシルメルカプタン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、ジラウリルチオジプロピオネートおよびジステアリルチオジプロピオネートが含まれる。
(有機充填材)
有機充填材の例には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンテレフタルアミド、ポリパラフェニレンイソフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ジアミノジフェニルエーテルとテレフタル酸(イソフタル酸)との縮合物およびパラ(メタ)アミノ安息香酸の縮合物などの全芳香族ポリアミド、ジアミノジフェニルエーテルと無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸との縮合物などの全芳香族ポリアミドイミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリイミド、ポリベンツイミダゾールおよびポリイミダゾフェナントロリンなどの複素環含有化合物、ならびに、ポリテトラフルオロエチレンなどから形成されている粉状、板状、繊維状またはクロス状物などの二次加工品が含まれる。
(有機難燃剤)
有機難燃剤は、ホスフィン酸化合物または臭素化スチレンモノマーから製造した下記式[I]で表される成分単位を主要構成成分とするポリ臭素化スチレン、ポリエチレンエーテルの臭素化物、ポリスチレンの臭素化物などの有機難燃剤を配合することができる。下記式において、mは1~5の数である。
Figure 2024042363000001
ポリ臭素化スチレンは二臭素化スチレン単位を60質量%以上含有しているものが好ましく、70質量%以上含有しているものが特に好ましい。二臭素化スチレン以外に一臭素化スチレンおよび/または三臭素化スチレンを40質量%以下、好ましくは30質量%以下共重合したポリ臭素化スチレンであってもよい。
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物において、上記有機難燃剤以外に酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、酸化スズ、酸化鉄、酸化亜鉛、硝酸亜鉛の中から選ばれた少なくとも1種の難燃助剤を使用することができる。特にアンチモン酸ソーダ、とりわけ550℃以上の高温で熱処理した実質的に無水のアンチモン酸ソーダが好ましい。
(無機難燃剤)
無機難燃剤の例には、水和金属化合物、金属化合物、金属酸化物などが含まれる。
(他のエラストマー)
他のエラストマーの例には、オレフィン系重合体などが含まれる。オレフィン系重合体の例には、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体などのオレフィン系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、およびこれらの変性体などが含まれる。これらのうち、エチレン・α-オレフィン共重合体、およびその変性体が好ましい。
(他の耐熱性樹脂)
他の耐熱性樹脂の例には、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニルエーテル)、PES(ポリエーテルスルフォン)、PEI(ポリエーテルイミド)、LCP(液晶ポリマー)およびこれらの樹脂の変性物が含まれる。これらのうち、ポリフェニレンスルフィドが好ましい。
1-4.ポリアミド樹脂組成物の組成
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)とを含む。
ポリアミド樹脂(A)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して、60~99質量%であることが好ましく、70~95質量%であることが好ましい。上記含有量が70質量%以上であると、成形体の強度や耐熱性をより高めることができる。上記含有量が99質量%以下であると、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)などの他の成分をポリアミド樹脂組成物に含ませることができるため、成形体の引張破断伸びやポリアミド樹脂組成物の高温下での流動性を高めることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して、1~30質量%であり、5~30質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましい。上記含有量が1質量%以上であることで、ポリアミド樹脂(A)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)との相互作用を生じさせやすくして、ポリアミド樹脂組成物の引張破断伸びおよび流動長を高めることができる。また、上記含有量が30質量%以下であることで、ポリアミド樹脂組成物の柔軟性が適度に調整して、成形体の強度を高めることができる。また、上記含有量が30質量%以下であることで、ポリアミド樹脂(A)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)との相互作用が過剰に生じることを抑制して、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度を適度に調整することができる。これにより、ポリアミド樹脂組成物の高温下における流動性を高め、成形性を高めることができる。
ポリアミド樹脂組成物の単位質量あたりの末端アミノ基量のモル数を[X]とし、ポリアミド樹脂組成物の単位質量あたりの、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に含まれる不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位のモル数を[Y]としたとき、[X]/[Y]は、0.01~1000であることが好ましく、0.01~500であることが好ましく、0.05~500であることがより好ましく、0.1~500であることがより好ましく、0.5~500であることがさらに好ましく、0.5~50であることがさらに好ましく、0.5~10であることが特に好ましく、0.5~4であることが特に好ましく、0.5~3であることが最も好ましい。
[X]/[Y]が上記範囲にあると、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基と、変性エラストマーの不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位との間でより相互作用が生じやすくなり、よりポリアミド樹脂組成物の引張破断伸び、および流動性を高めやすくすることができる。
ポリアミド樹脂(A)の分子構造に含まれる芳香環のモル数をαとし、スチレン系熱可塑性エラストマーの分子構造に含まれる芳香環のモル数をβとしたとき、α/βは、3.7~100であることが好ましく、3.7~30であることがより好ましく、3.7~10であることがさらに好ましく、3.7~7.5であることが特に好ましい。α/βが3.7以上であると、ポリアミド樹脂(A)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)との相互作用が過剰に生じることを抑制して、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度を適度に調整することができる。そのため、溶融時におけるポリアミド樹脂組成物の流動性をより高めて、成形性をより高めることができる。また、α/βが100以下であることで、ポリアミド樹脂(A)の芳香環と、スチレン系熱可塑性エラストマーの芳香環とがより相互作用しやすくなるため、ポリアミド樹脂組成物の引張破断伸びおよび流動性をより高めることができる。上記モル数αおよびβは、ポリアミド樹脂(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の調製時における、芳香環を有する化合物の仕込み比から算出するか、または、NMR法で測定することができる。NMR法については、ポリアミド樹脂(A)で述べたものと同様とすることができる。
ポリアミド樹脂組成物が無機充填材(C)を含むとき、無機充填材(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の合計質量に対して、0.01~100質量%であることが好ましく、1~50質量%であることがより好ましい。無機充填材(C)の含有量が0.01質量%以上であると、成形体の強度を高めやすく、100質量%以下であると、ポリアミド樹脂組成物の溶融流動性が損なわれにくい。
ポリアミド樹脂組成物を結束バンドなどの部品に使用するとき、成形体の柔軟性をより高める観点から、無機充填材(C)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂組成物が滑剤(D)を含むとき、滑剤(D)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して、0.01~1.00質量%とすることができ、0.05~0.50質量%であることが好ましく、0.06~0.40質量%であることがより好ましい。滑剤(D)の含有量が0.06質量%以上であると、ポリアミド樹脂組成物の溶融混練時の流動性をより高めることができ、0.4質量%以下であると、得られる成形体の機械的強度が損なわれにくく、ブリードアウトによる外観不良などを生じにくい。
ポリアミド樹脂組成物が酸化防止剤(E)を含むとき、酸化防止剤(E)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して0~2.0質量%とすることができ、0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。酸化防止剤(E)の含有量が0.1質量%以上であると、成形体の熱劣化などを抑制しやすく、5.0質量%以下であると、着色などを生じにくい。
ポリアミド樹脂組成物が、上述した他のエラストマーを含むとき、他のエラストマーの含有量は、ポリアミド樹脂組成物に含まれる全エラストマーの総質量に対して、0~30質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0~3質量%であることがさらに好ましい。他のエラストマーの含有量が上記範囲であると、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量をより多くして、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の芳香環と、ポリアミド樹脂(A)の芳香環との相互作用により、成形体の引張破断伸び、およびポリアミド樹脂組成物の流動性を高める効果をより十分に発揮させることができる。
1-5.ポリアミド樹脂組成物の物性
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を使用し、射出圧力を2000kg/cmで、シリンダー温度を前記ポリアミド樹脂(A)の融点よりも10℃高くして、射出したときの前記金型内の流動長が25mm以上であり、28mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましい。上記流動長の上限値は、特に限定されないが、例えば、80mm以下である。
1-6.ポリアミド樹脂組成物の製造方法
本発明のポリアミド樹脂組成物は、任意の方法で製造することができる。例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を準備する工程と、準備したスチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、ポリアミド樹脂(A)と、その他任意の成分を溶融混練する工程と、必要に応じてさらに造粒若しくは粉砕する工程とを経て製造することができる。
また、溶融混練する工程の前に、少なくともポリアミド樹脂(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を混合する工程をさらに行ってもよい。混合方法としては、例えば。ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー若しくはタンブラーブレンダーなどを用いた混合方法を用いることができる。
2.成形体
本発明の成形体は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる。
すなわち、上記のようにして調製したポリアミド樹脂組成物を用いて、通常の溶融成形法、例えば圧縮成形法、射出成形法または押し出し成形法などにより、所望の形状の成形体を製造することができる。
例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物を、シリンダ温度がポリアミド樹脂(A)の融点以上、例えば、300℃以上350℃以下程度に調整された射出成形機に投入して溶融状態にして、所定の形状の金型内に導入することにより成形体を製造することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて製造される成形体の形状は、特に制限はなく、用途に応じて種々の形状をとりうる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、各種成形体、好ましくは自動車内外装部品、エンジンルーム内部品および自動車電装部品を形成するための樹脂としても好適である。本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物から得られる成形体の例には、ラジエータグリル、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベント・グリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダーおよびバックドアなどの自動車用外装部品;シリンダーヘッド・カバー、エンジンマウント、エアインテーク・マニホールド、スロットルボディ、エアインテーク・パイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ウォーターポンプ・インレット、ウォーターポンプ・アウトレットなどのウォーターポンプ筐体、ウォータージャケットスペーサー、サーモスタットハウジングなどのサーモスタット筐体、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルター・ハウジング、オイルフィラー・キャップ、オイルレベル・ゲージ、タイミング・ベルト、タイミング・ベルトカバーおよびエンジン・カバーなどの自動車用エンジンルーム内部品;フューエルキャップ、フューエルフィラー・チューブ、自動車用燃料タンク、フューエルセンダー・モジュール、フューエルカットオフ・バルブ、クイックコネクター、キャニスター、フューエルデリバリー・パイプおよびフューエルフィラーネックなどの自動車用燃料系部品;シフトレバー・ハウジングおよびプロペラシャフトなどの自動車用駆動系部品;スタビライザーバー・リンケージロッドなどの自動車用シャシー部品;ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイド・ドアミラー・ステー、アクセルペダル、ペダル・モジュール、シールリング、軸受、ベアリングリテーナー、ギアおよびアクチュエーターなどの自動車用機能部品;ワイヤーハーネス・コネクター、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイルおよびディストリビューター・キャップなどの自動車用エレクトロニクス部品;汎用機器(刈り払い機、芝刈り機およびチェーンソーなど)用燃料タンクなどの汎用機器用燃料系部品;ならびにコネクターおよびLEDリフレクタなどの電気電子部品、建材部品、各種筐体、外装部品などが含まれる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の成形体は、良好な強度と破断伸びとを有する。したがって、自動車用燃料タンク、クイックコネクター、ベアリングリテーナー、汎用機器用燃料タンク、フューエルキャップ、フューエルフィラーネック、フューエルセンダー・モジュール、ホイールキャップ、フェンダー、自動車用クランプ、自動車用クリップ、結束バンドまたはバックドア、各種筐体、外装部品などに好適である。各種筐体、外装部品としては、小型筐体、外装成形品、携帯電話筐体が挙げられ、特に携帯電話筐体として好ましく使用することができる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物が電子回路を相互に連結するコネクター製造用の樹脂としても好ましく用いられる。
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
1.構成材料
1-1.ポリアミド樹脂(A)
<ポリアミド樹脂(PA-1)(6T6I)の調製>
1,6-ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、テレフタル酸2774g(16.7モル)、イソフタル酸1196g(7.2モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g(5.4×10-2モル)、分子量調整剤として安息香酸36.6g(0.30モル)、および蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.02MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。その後、低次縮合物を室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3000ppm、極限粘度[η]が0.14dl/gであった。
次いで、この低次縮合物を、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機を用いてシリンダー設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させてポリアミド(PA-1)を調製した。
得られたポリアミド樹脂(PA-1)の組成は、ジカルボン酸に由来する成分単位中のテレフタル酸に由来する成分単位の含有量は70モル%、イソフタル酸に由来する成分単位の含有量は30モル%であり、ジアミンに由来する成分単位中の1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位の含有量は100モル%であった。また、ポリアミド樹脂(PA-1)の極限粘度[η]は1.00dl/gであり、融点Tmは330℃、ガラス転移温度Tgは125℃、融解熱量ΔHは50J/g、末端アミノ基量[X]は30mmol/kgであった。
<ポリアミド樹脂(PA-2)(6TDT)の調製>
1,6-ジアミノヘキサン1312g(11.3モル)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン1312g(11.3モル)、テレフタル酸3655g(22.0モル)、触媒としての次亜リン酸ナトリウム一水和物5.5g(5.2×10-2モル)、イオン交換水640mLを内容量1.0Lの反応器に入れ、窒素置換後、温度250℃、圧力35kg/cmの条件で1時間反応させた。1時間経過後、反応器内で生成した反応生成物を、反応器と連結され、かつ圧力が10kg/cm低く設定された受器に抜き出し、極限粘度[η]が0.15dl/gであるポリアミド前駆体を得た。
次いで、このポリアミド前駆体を乾燥させた後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機を用いてシリンダー設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させてポリアミド(PA-2)を調製した。
得られたポリアミド樹脂(PA-2)の組成は、ジカルボン酸に由来する成分単位中のテレフタル酸に由来する成分単位の含有量は100モル%であり、ジアミンに由来する成分単位中の1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位の含有量は50モル%、2-メチル-1,5-ペンタンジアミンに由来する成分単位の含有量は50モル%であった。また、ポリアミド樹脂(PA-2)の極限粘度[η]は1.00dl/gであり、融点Tmは300℃、ガラス転移温度Tgは140℃、融解熱量ΔHは45J/g、末端アミノ基量[X]は50mmol/kgであった。
<ポリアミド樹脂(PA-3)(6T66)>
1,6-ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、テレフタル酸2093g(12.6モル)、アジピン酸1505g(10.3モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物5.67g(5.4×10-2モル)、分子量調整剤として安息香酸36.5g(0.30モル)、およびイオン交換水409mlを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.02MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。その後、低次縮合物を室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3000ppm、極限粘度[η]が0.15dl/gのポリアミド前駆体5440gを得た。
次いで、このポリアミド前駆体を乾燥させ、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機を用いてシリンダー設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させてポリアミド(PA-3)を得た。
得られたポリアミド樹脂(PA-3)の組成は、ジカルボン酸に由来する成分単位中のテレフタル酸に由来する成分単位の含有量は55モル%、アジピン酸に由来する成分単位の含有量は45モル%であり、ジアミンに由来する成分単位中の1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位の含有量は100モル%であった。また、ポリアミド(PA-3)の極限粘度[η]は0.80dl/gであり、融点Tmは310℃、ガラス転移温度Tgは85℃、融解熱量ΔHは50J/g、末端アミノ基量[X]は120mmol/kgであった。
ポリアミド樹脂(PA-1)~(PA-3)について、各ポリアミド樹脂に含まれる成分単位を構成する炭素原子数の総数に対する、各ポリアミド樹脂に含まれる芳香環を構成する炭素原子の総数の割合を求めた(表1参照)。
[極限粘度[η]]
得られたポリアミド樹脂(PA-1)~(PA-3)の極限粘度[η]は以下のようにして測定した。半芳香族ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解させた。得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定し、「数式:[η]=ηSP/(C(1+0.205ηSP))」に基づき算出した。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t-t)/t
[融点Tm、ガラス転移温度Tg、融解熱量ΔH]
ポリアミド樹脂(PA-1)~(PA-3)の融点Tm、ガラス転移温度Tg、および融解熱量ΔHは、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル株式会社製)を用いて以下のように測定した。
約5mgのポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱した。樹脂を完全融解させるために、350℃で3分間保持した後、10℃/minで30℃まで冷却した。そして、30℃で5分間置いた後、10℃/minで350℃まで2度目の加熱を行った。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とした。融解熱量ΔHは、JIS K7121:2012に準拠して、1度目の昇温過程での融解時の吸熱ピークの面積から求めた。
[末端アミノ基量[X]]
ポリアミド樹脂(PA-1)~(PA-3)の末端アミノ基量[X]は、以下のように測定した。
ポリアミド樹脂1gをフェノール35mLに溶解させ、メタノールを2mL混合し、試料溶液とした。チモールブルーを指示薬とし、当該試料溶液に対して0.01規定の塩酸水溶液を、電位差滴定装置(メトローム社製)を用いて、青色から黄色になるまで滴定を実施し、末端アミノ基量([NH]、単位:mmol/kg)を測定した。
ポリアミド樹脂(PA-1)~(PA-3)の各物性を表1にまとめた。
Figure 2024042363000002
1-2.スチレン系熱可塑性エラストマー(B)
<変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(B)>
変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(タフテックM1913、旭化成株式会社製)を用いた。上記共重合体の全質量に対する無水マレイン酸に由来する成分単位の平均含有量(変性量)[Y]は0.9質量%であり、スチレン/エチレン・ブチレンのモル比は30/70であった。また、上記共重合体の密度は0.920g/cm、MFRは0.2g/10分であった。
[変性量]
スチレン系熱可塑性エラストマー中の無水マレイン酸に由来する成分単位の平均含有量(変性量)(質量%)は、NMR法にて測定した。測定条件は、下記の通りである。
測定装置: 核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核: 13C(125MHz)
シーケンス: シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅: 4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間: 5.5秒
積算回数: 1万回以上
溶媒: オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度: 55mg/0.6mL
測定温度: 120℃
ケミカルシフトの基準値: 27.50ppm
[密度]
密度は、密度勾配管を用いて、JIS K7112:1999に準拠し、温度23℃で測定した。
[MFR]
MFRは、ASTM D1238に準拠し、190℃で2.16kgの荷重にて測定した。
1-2.オレフィン重合体(B’)
Ti系触媒を用いて、エチレン・1-ブテン共重合体を調製した。
上記調製したエチレン・1-ブテン共重合体は、エチレン含有量が81モル%であり、密度は0.861g/cmであり、MFR(ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重)は0.5g/10分であった。
上記調製したエチレン・1-ブテン共重合体100質量部、無水マレイン酸1.2質量部、および過酸化物(パーヘキシン-25B、日本油脂株式会社製)0.06質量部をヘンシェルミキサーで混合し、得られた混合物を230℃に設定した65mmφの一軸押出機で溶融グラフト変性して、変性エチレン・1-ブテン共重合体(B’)を得た。
1-4.他の成分
<無機充填材(C)>
タルク(平均粒子径1.6μm)
<滑材(D)>
モンタン酸ナトリウム
<酸化防止剤(E)>
フェノール系酸化防止剤
2.ポリアミド樹脂組成物の調製
(実施例1、2、および比較例1~4)
表2に示される組成となるように、ポリアミド樹脂(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、オレフィン重合体(B’)、無機充填材(C)、滑材(D)および酸化防止剤(E)を、タンブラーブレンダーにて混合した後、30mmφのベント式二軸スクリュー押出機を用いて310℃のシリンダー温度条件で溶融混練した。その後、混練物をストランド状に押出し、水槽で冷却させた。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットして、ペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
得られたポリアミド樹脂組成物の、引張破断強度および引張破断伸び率、曲げ強度および曲げ弾性率、ならびに射出流動性をそれぞれ以下の方法で評価した。
[引張破断強度、引張破断伸び率]
得られたポリアミド樹脂組成物を、下記の射出成形機を用いて、下記成形条件で成形して、厚み3.2mmのASTMダンベル型試験片Type Iを得た。
成形機: 東芝機械株式会社製 EC75N-2A
シリンダー温度: 335℃(実施例1、比較例1)、
310℃(実施例2、比較例2)、
320℃(比較例3、4)
金型温度: 160℃(実施例1、2、比較例1、2)、
120℃(比較例3、4)
射出設定速度: 100mm/sec
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で引張試験を行い、引張破断強度(MPa)および引張破断伸び率(%)を測定した。
[曲げ強度、曲げ弾性率]
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、下記の成形条件で射出成形し、長さ:127mm、幅:12.7mm、厚さ:3.2mmの試験片を作製した。
成形機: 東芝機械株式会社製 EC75N-2A
シリンダー温度: 335℃(実施例1、比較例1)、
310℃(実施例2、比較例2)、
320℃(比較例3、4)
金型温度: 160℃(実施例1、2、比較例1、2)、
120℃(比較例3、4)
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン51mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(MPa)を測定した。
[流動長試験(流動性)]
幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を使用し、以下の条件で射出を行い、金型内の樹脂の流動長(mm)を測定した。
射出成型機: 株式会社ソディックプラステック製 ツパールTR40S3A
射出圧力設定値: 2000kg/cm
シリンダー設定温度: 335℃(実施例1、比較例1)、
310℃(実施例2、比較例2)、
320℃(比較例3、4)
金型温度: 160℃(実施例1、2、比較例1、2)、
120℃(比較例3、4)
実施例1、2、比較例1~4のポリアミド樹脂組成物の組成および評価結果を表2に示す。
なお、表2中の、「引張破断伸びの改善率」は、実施例1においては、比較例1の引張破断伸びに対する実施例1の引張破断伸びの割合を表し、実施例2においては、比較例2の引張破断伸びに対する実施例2の引張破断伸びの割合を表し、比較例4においては、比較例3の引張破断伸びに対する比較例4の引張破断伸びの割合を表す。
また、表2中の、「流動性の改善率」は、実施例1においては、比較例1の流動長に対する実施例1の流動長の割合を表し、実施例2においては、比較例2の流動長に対する実施例2の流動長の割合を表し、比較例4においては、比較例3の流動長に対する比較例4の流動長の割合を表す。
Figure 2024042363000003
スチレン系熱可塑性エラストマーを用いた実施例1、2では、同種のポリアミド樹脂(A)を用いた比較例1、2よりも、引張破断伸び、および流動性が改善した。また、ポリアミド樹脂(A)に含まれる成分単位を構成する炭素原子の総数に対する芳香環を構成する炭素原子数の割合が30~60%であるPA-1、PA-2を用いた実施例1、2は、上記割合が30%未満のPA-3を用いた比較例4よりも引張破断伸びの改善率、および流動性の改善率が高かった。
特に、上記割合が30~60%であり、末端アミノ基量がPA-1よりも多いPA-2を用いた実施例2では、引張破断伸びの改善率が特に高かった。
本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形体は、良好な引張破断伸び、および高温下の流動性を有する。そのため、ポリアミド樹脂組成物の、各種筐体、外装部品などへの適用可能性を広げ、ポリアミド樹脂組成物のさらなる普及に寄与することが期待される。

Claims (10)

  1. ポリアミド樹脂(A)と、
    スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、
    を含むポリアミド樹脂組成物であって、
    前記ポリアミド樹脂(A)は芳香環を含む成分単位を含み、
    前記ポリアミド樹脂(A)に含まれる成分単位を構成する炭素原子の総数に対する、前記芳香環を構成する炭素原子の総数の割合は30~60%であり、
    前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して1~30質量%である、
    ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアミンに由来する成分単位(a2)と、を含み、
    前記芳香環を有する成分単位は、芳香環を有するジカルボン酸に由来する成分単位であって、
    前記芳香環を有する成分単位の含有量は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、60モル%以上である、
    請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、およびスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)からなる群より選ばれるスチレン系熱可塑性エラストマー、またはこれらの変性体である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたエラストマーを含み、
    前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の全質量に対する、前記不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位の平均含有量は、0.05~5.0質量%である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量は、10~200mmol/kgである、請求項4に記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミド樹脂組成物の単位質量あたりの末端アミノ基量のモル数を[X]とし、前記ポリアミド樹脂組成物の単位質量あたりの、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に含まれる前記不飽和カルボン酸またはその誘導体に由来する成分単位のモル数を[Y]としたとき、[X]/[Y]は0.01~500である、請求項5に記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、テレフタル酸に由来する成分単位45~100モル%を含み、
    前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、前記ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、炭素原子数4~18の直鎖状アルキレンジアミンに由来する成分単位40~100モル%と、炭素原子数4~18の分岐状アルキレンジアミンに由来する成分単位0~60モル%と、を含む、
    請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、テレフタル酸に由来する成分単位90~100モル%を含み、
    前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、前記ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して、炭素原子数4~18の直鎖状アルキレンジアミンに由来する成分単位40~80モル%と、炭素原子数4~18の分岐状アルキレンジアミンに由来する成分単位20~60モル%と、を含む、
    請求項7に記載のポリアミド樹脂組成物。
  9. 前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して、テレフタル酸に由来する成分単位20~80モル%と、イソフタル酸に由来する成分単位20~80モル%と、を含み、
    前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含む、請求項7に記載のポリアミド樹脂組成物。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる、成形体。
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