JP2024041866A - 強化されたhATファミリーのトランスポゾンが介在する遺伝子導入ならびに関連する組成物、システム、及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物や動物に広く分布するhATファミリーのトランスポゾン成分を用いてヒト造血系細胞及び免疫系細胞への遺伝子導入を増強するための相乗的アプローチに関連する種々の装置、システム、及び方法を提供する。【解決手段】完全長のTcBusterトランスポザーゼ配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、特定の位置にアミノ酸置換を有し、ならびに少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有する変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
[技術分野]
相互参照
本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる2018年6月21日に出願された米国仮特許出願第62/688,278号の利益も主張する。
[背景技術]
トランスポゾンとも呼ばれる転位性の遺伝因子は、単一の細胞内でゲノム1つの位置から別の位置に動くことができるDNAのセグメントである。トランスポゾンは、転位のメカニズムに従って2つの主要な群に分けることができ:転位は、(1)レトロトランスポゾンと呼ばれる要素のRNA中間体の逆転写を介して、及び(2)DNAトランスポゾンのための末端逆向き反復配列(TIR)が隣接するDNAの直接転位を介して発生することができる。活性があるトランスポゾンは、転位に必要な1以上のタンパク質をコードする。天然の活性DNAトランスポゾンはトランスポザーゼ酵素遺伝子を内部に持つ。
hATファミリーのDNAトランスポゾンは植物や動物に広く分布している。Hermesトランスポゾン、Acトランスポゾン、hoboトランスポゾン及びTol2トランスポゾンを含むが、これらに限定されない活性がある多数のhATトランスポゾン系が特定され、機能的であることが見いだされている。hATファミリーは、トランスポザーゼの一次配列に基づいて、ACサブファミリーとBusterサブファミリーに分類されている2つのファミリーで構成される。hATファミリーのメンバーはクラスIIの転位因子に属する。クラスII可動因子は、転位のカットアンドペーストメカニズムを使用する。hAT因子は、同様のトランスポザーゼ、短い末端逆向き反復配列、及びゲノム標的の8塩基対重複を共有する。
[発明の概要]
本明細書に記載されているのは、一態様では、完全長の配列番号1と少なくとも70%同一であり、表1.1の1以上のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む変異型TcBusterトランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、中性pHで正味電荷を増加させるアミノ酸置換はリシンまたはアルギニンへの置換を含む。いくつかの実施形態では、中性pHで正味電荷を増加させるアミノ酸置換は、アスパラギン酸またはグルタミン酸の中性アミノ酸、リシンまたはアルギニンへの置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは表4.1の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは表4の1以上のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン、挿入ドメイン、Zn-BEDドメイン、またはそれらの組み合わせにてアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1と比べて、触媒ドメイン内または触媒ドメインの近傍にて中性pHで正味電荷を増加させるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させるアミノ酸置換を含み;その際、配列番号1に従って番号付けされる場合、1以上のアミノ酸はD223、D289、またはE589の近傍に位置する。いくつかの実施形態では、近傍は約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、近傍は約70~80アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列は完全長の配列番号1と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらに表2の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらに表3の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換K573E及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換I452Kを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換A358Kを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換V297Kを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換N85Sを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換I452F、V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号付けされる場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換A358K、V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、配列番号1に従って番号が付けされた場合、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらにアミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573E及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼはさらに表1の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する。いくつかの実施形態では、転位効率は、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは野生型TcBusterトランスポザーゼとレポーターカーゴカセットを含有するTcBusterトランスポゾンとを細胞集団に導入し、その細胞集団のゲノムにてレポーターカーゴカセットの転位を検出することを含むアッセイによって測定される。
本明細書に記載されているのは、一態様では、TcBusterトランスポザーゼ配列と1以上の追加の核局在化シグナル配列とを含む融合トランスポザーゼであり、TcBusterトランスポザーゼ配列は完全長の配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、完全長の配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、1以上のアミノ酸置換はリシンまたはアルギニンによる置換を含む。いくつかの実施形態では、1以上のアミノ酸置換は、アスパラギン酸またはグルタミン酸の、中性アミノ酸、リシンまたはアルギニンによる置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は表4、表4.1、またはその双方からの1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン;挿入ドメイン;Zn-BEDドメイン;またはそれらの組み合わせにて1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、表1、表1.1、またはその双方からの1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列の転位効率は、融合TcBusterトランスポザーゼまたは野生型TcBusterトランスポザーゼとレポーターカーゴカセットを含有するTcBusterトランスポゾンとを細胞集団に導入し、その細胞集団のゲノムにてレポーターカーゴカセットの転位を検出することを含むアッセイによって測定される。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比べて、触媒ドメイン内またはその近傍にて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含み、1以上のアミノ酸置換は配列番号1に従って番号付けされる場合、D223、D289またはE589の近傍に位置する。いくつかの実施形態では、近傍は約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、近傍は約70~80アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は表2の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は表3の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換K573E及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換I452Kを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換A358Kを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V297Kを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換N85Sを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573E及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は完全長の配列番号1に対して100%の同一性を有する。
本明細書に記載されているのは、一態様では、TcBusterトランスポザーゼ配列とDNA配列特異的結合ドメインとを含む融合トランスポザーゼであり、その際、TcBusterトランスポザーゼ配列は、請求項1~26のいずれか1項に記載の変異型TcBusterのアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、DNA配列特異的結合ドメインはTALEドメイン、ジンクフィンガードメイン、AAV Rep DNA結合ドメイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNA配列特異的結合ドメインはTALEドメインを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列及びDNA配列特異的結合ドメインはリンカーによって分離される。いくつかの実施形態では、リンカーは少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、または少なくとも50のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは配列番号9を含む。
本明細書に記載されているのは、一態様では、完全長の配列番号204または207と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または98%同一または相補性である核酸配列を含むポリヌクレオチドである。本明細書に記載されているのは、一態様では、本明細書に記載されている変異型TcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドである。本明細書に記載されているのは、本明細書に記載されているのは、一態様では、本明細書に記載されている融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAベクターに存在する。いくつかの実施形態では、DNAベクターはミニサークルプラスミドを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはヒト細胞での発現のためにコドンが最適化される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは完全長の配列番号204または207と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%同一または相補性である核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは完全長の配列番号204または207と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または98%同一または相補性である核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは完全長の配列番号204または207と少なくとも約95%同一または相補性である核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは完全長の配列番号204または207と100%同一であるまたは相補性である核酸配列を含む。
本開示の一態様は、完全長の配列番号1と少なくとも70%同一であり、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する。本開示の別の態様は、完全長の配列番号1と少なくとも70%同一であり、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン;挿入ドメイン;Zn-BEDドメイン;またはそれらの組み合わせにもう1つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する。本開示のさらに別の態様は、全長配列番号1と少なくとも70%同一であり、表1の1以上のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比べて触媒ドメイン内でまたはその近傍にて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比べて中性pHにて正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含み、1以上のアミノ酸は配列番号1に従って番号付けされる場合、D223、D289、またはE589の近傍に位置する。いくつかの実施形態では、近傍は約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、近傍は約70~80アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列は、完全長の配列番号1と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。いくつかの実施形態では、1以上のアミノ酸置換はリシンまたはアルギニンへの置換を含む。いくつかの実施形態では、1以上のアミノ酸置換はアスパラギン酸またはグルタミン酸の、中性アミノ酸、リシンまたはアルギニンへの置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは表4の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは表2の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは表3の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換K573E及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換I452Kを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換A358Kを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V297Kを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換N85Sを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573E及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、転位効率は、変異型TcBusterトランスポザーゼとレポーターカーゴカセットを含有するTcBusterトランスポゾンとを細胞集団に導入し、その細胞集団のゲノムにてレポーターカーゴカセットの転位を検出することを含むアッセイによって測定される。
本開示のさらに別の態様は、TcBusterトランスポザーゼ配列とDNA配列特異的結合ドメインとを含む融合トランスポザーゼを提供する。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、完全長の配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、DNA配列特異的結合ドメインは、TALEドメイン、ジンクフィンガードメイン、AAV Rep DNA結合ドメインまたはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNA配列特異的結合ドメインはTALEドメインを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、完全長の配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比べて中性pHにて正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン;挿入ドメイン;Zn-BEDドメイン;またはそれらの組み合わせにて1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、表1の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比べて、触媒ドメイン内またはその近傍にて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含み、1以上のアミノ酸置換は配列番号1に従って番号が付けされる場合、D223、D289またはE589の近傍に位置する。いくつかの実施形態では、近傍は約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、近傍は約70~80アミノ酸の距離である。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は表2の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は表3の1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換K573E及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換I452Kを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換A358Kを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V297Kを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換N85Sを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、及びD189Aを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は、配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573E、及びE578Lを含む。いくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列は完全長の配列番号1に対して100%の同一性を有する。融合トランスポザーゼのいくつかの実施形態では、TcBusterトランスポザーゼ配列及びDNA配列特異的結合ドメインはリンカーによって分離される。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、または少なくとも50のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは配列番号9を含む。
本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているような融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAベクターに存在する。いくつかの実施形態では、DNAベクターはミニサークルプラスミドを含む。
本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼを産生する細胞を提供する。本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているようなポリヌクレオチドを含有する細胞を提供する。本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼと変異型TcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを細胞に導入することを含む方法を提供する。本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているような融合トランスポザーゼと融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを細胞に導入することを含む方法を提供する。方法のいくつかの実施形態では、導入することは、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと細胞を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは化学的に修飾される。方法のいくつかの実施形態では、導入することはトランスポゾンを含有するDNAベクターと細胞を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、DNAベクターはミニサークルプラスミドを含む。いくつかの実施形態では、導入することは、トランスポゾンと、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドとの双方を含有するプラスミドベクターと細胞を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、導入することは精製タンパク質としての変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼと細胞を接触させることを含む。方法のいくつかの実施形態では、トランスポゾンは2つの逆向き反復配列の間に配置されたカーゴカセットを含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復のうち左の逆向き反復配列は、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうちの左の逆向き反復配列は配列番号3を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号4を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号5を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号6を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号205に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号205を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号206に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号206を含む。いくつかの実施形態では、カーゴカセットはCMV、EFS、MND、EF1α、CAGCs、PGK、UBC、U6、H1、及びクメートから成る群から選択されるプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、ベクターはCMVプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、カーゴカセットは順方向で存在する。いくつかの実施形態では、カーゴカセットは逆向きで存在する。いくつかの実施形態では、カーゴカセットは導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、細胞受容体、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子はT細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される細胞受容体をコードする。いくつかの実施形態では、導入することは、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、カチオン性ポリマー、デンドリマー、リポソーム、微粒子銃、FuGene、直接音波負荷、細胞圧搾、光学形質移入、プロトプラスト融合、インパレフェクション、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、またはそれらの任意の組み合わせの助けを借りて細胞に形質移入することを含む。いくつかの実施形態では、導入することは細胞でエレクトロポレーションを行なうことを含む。方法のいくつかの実施形態では、細胞は対象から単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつか実施形態では、対象は疾患患者である。いくつかの実施形態では、対象はがんまたは腫瘍であると診断されている。いくつかの実施形態では、細胞は対象の血液から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は初代免疫細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は初代白血球を含む。いくつかの実施形態では、細胞は初代T細胞を含む。いくつかの実施形態では、初代T細胞は、ガンマデルタT細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、エフェクターT細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、初代免疫細胞はCD3+細胞を含む。いくつかの実施形態で、細胞は幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、上皮幹細胞、気管支肺胞幹細胞、乳腺幹細胞、間葉系幹細胞、腸幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経堤幹細胞、精巣細胞、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、幹細胞は人工多能性幹細胞を含む。
本開示の別の態様は、(a)トランスポゾンと、トランスポゾンを認識する本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼとを細胞に導入し、それによって遺伝子操作された細胞を生成することと;(b)治療を必要としている患者に遺伝子操作された細胞を投与することとを含む治療の方法を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞はトランスポゾンによって導入された導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、患者はがんまたは腫瘍であると診断されている。いくつかの実施形態では、投与することは、遺伝子操作された細胞を患者の血管に輸注することを含む。
本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼと、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを含む、ゲノム編集のためのシステムを提供する。本開示のさらに別の態様は、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを含む、ゲノム編集のためのシステムを提供する。システムのいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、トランスポゾンはDNAベクターに存在する。いくつかの実施形態では、DNAベクターはミニサークルプラスミドを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド及びトランスポゾンは同じプラスミドに存在する。いくつかの実施形態では、トランスポゾンは2つの逆向き反復配列の間に配置されたカーゴカセットを含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号3を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号4を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号5を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号6を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号205に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち左の逆向き反復配列は配列番号205を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号206に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの逆向き反復配列のうち右の逆向き反復配列は配列番号206を含む。いくつかの実施形態では、カーゴカセットはCMV、EFS、MND、EF1α、CAGCs、PGK、UBC、U6、H1、及びクメートから成る群から選択されるプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、ベクターはCMVプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、カーゴカセットは導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、細胞受容体、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子はT細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される細胞受容体をコードする。いくつかの実施形態では、カーゴカセットは順方向で存在する。いくつかの実施形態では、カーゴカセットは逆向きで存在する。
参照による組込み
本明細書に記述されている刊行物、特許及び特許出願はすべて、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、具体的に且つ個別に参照によって組み込まれるように指示されたかのようなことと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれる用語が本明細書で定義される用語と矛盾する範囲内では、本明細書が支配する。
本開示の新規の特徴は、添付のクレームにて詳細に記述されている。本開示に記述されているこれらの特徴及び利点のさらに良好な理解は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を記述している以下の詳細な説明及び添付図面を参照することによって得られるであろう。
[図面の簡単な説明]
[図1]野生型(WT)TcBusterトランスポザーゼ及び例示的なTcBusterトランスポゾンで形質移入した細胞におけるmCherry陽性細胞の比率によって測定された、いくつかの例示的なTcBusterトランスポゾンベクター構築物の転位効率を示す図である。
[図2]例示的なTcBuster IR/DR配列1(それぞれ出現順に配列番号3~4)及び配列2(それぞれ出現順に配列番号5~6)のヌクレオチド配列比較を示す図である。
[図3]Aは例示的なTcBusterトランスポゾンTn-8(puro-mCherryカセットを含有する;図1に示す)及び野生型TcBusterトランスポザーゼまたはV596A変異型トランスポザーゼ(V596A置換を含有する)による形質移入の2週間後のHEK-293T細胞の代表的な明視野画像及び蛍光画像を示す。形質移入された細胞を、形質移入の2日後に1μg/mLのピューロマイシンと共に6ウェルプレートに入れ、コロニーの定量のために形質移入の2週間後に固定し、クリスタルバイオレットで染色した。Bは形質移入の2週間後の6ウェルプレートにおける形質移入された細胞コロニーの代表的な写真を示す。Cは形質移入の2週間後の各形質移入条件ごとのコロニーの定量を示すグラフである。
[図4]ACサブファミリーにおけるいくつかのトランスポザーゼに対比させたTcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列の配列比較を示し、アミノ酸保存の領域のみが示されている(それぞれ、出現順に配列番号89~194)。
[図5]Busterサブファミリーにおける多数の他のトランスポザーゼメンバーに対比させたTcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列の配列比較を示す図である(それぞれ、出現順に配列番号195~203)。特定の例示的なアミノ酸置換をタンパク質配列の上に示し、併せて、配列比較の上に示す比率はTcBuster配列に置換されていると考えられるアミノ酸を含有する他のBusterサブファミリーメンバーの比率であり、下に示す比率はその位置で標準的なTcBusterアミノ酸を含有する他のBusterサブファミリーメンバーの比率である。
[図6]TcBusterトランスポザーゼ変異型を調べるのに使用された例示的な発現ベクターpcDNA-DEST40のベクターマップを示す。
[図7]例示的なトランスポザーゼ変異型と共にTcBusterトランスポゾンTn-8(図1に示す)で形質移入したHEK-293T細胞におけるmCherry陽性細胞の比率によって測定される、例示的なTcBusterトランスポザーゼ変異型の転位効率を定量化するグラフである。
[図8]任意のリンカーによって連結されたDNA配列特異的結合ドメインとTcBusterトランスポザーゼ配列とを含有する1つの例示的な融合トランスポザーゼを示す。
[図9]タグを含有する例示的なトランスポザーゼと共にTcBusterトランスポゾンTn-8(図1に示す)で形質移入したHEK-293T細胞におけるmCherry陽性細胞の割合によって測定したときの、異なるタグを含有する例示的なTcBusterトランスポザーゼの転位効率を定量化するグラフである。
[図10]AはGFP陽性細胞の比率によって測定されたときの、ヒトCD3+T細胞における例示的なTcBuster転位システムの転位効率を定量化するグラフである。Bはフローサイトメトリーによる形質移入の2日後及び7日後の形質移入されたT細胞の生存率を定量化するグラフである。データはパルス制御に関連する。
[図11]特定のアミノ酸に注釈が付けられた野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す(配列番号1)。
[図12]アミノ酸置換D189A/V377T/E469K(配列番号78)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。
[図13]アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/I452K(配列番号79)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。
[図14]アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/N85S(配列番号80)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。
[図15]アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/A358K(配列番号81)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。
[図16]アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/K573E/E578L(配列番号13)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。
[発明を実施するための形態]
概要
DNAトランスポゾンは、非複製性の「カットアンドペースト」メカニズムを介して転座することができる。これには、触媒酵素、すなわち、その標的を切断し、その結果、そのドナーテンプレートからDNAトランスポゾンを遊離することができるトランスポザーゼによる2つの末端の逆向き反復配列の認識が必要である。切除すると、DNAトランスポゾンはその後、同じトランスポザーゼによって切断されるアクセプターDNAに組み込まれてもよい。それらの自然な構成のいくつかでは、DNAトランスポゾンは2つの逆向き反復配列に隣接しており、転位を触媒するトランスポザーゼをコードする遺伝子を含有してもよい。
DNAトランスポゾンによるゲノム編集の応用については、2つの異なるプラスミドに基づいてバイナリシステムを開発するようにトランスポゾンを設計し、それによってトランスポザーゼは逆向き反復配列に隣接する対象とする遺伝子を含有するトランスポゾンDNAから物理的に分離されることが望ましい。トランスポゾンとトランスポザーゼのプラスミドの標的細胞への同時送達により、従来のカットアンドペーストメカニズムを介した転位が可能になる。
TcBusterはDNAトランスポゾンのhATファミリーのメンバーである。ファミリーの他のメンバーにはSleeping Beauty及びPiggBacが挙げられる。本明細書で議論されるのは、hATファミリーのトランスポゾン成分を用いてヒト造血系細胞及び免疫系細胞への遺伝子導入を増強するための相乗的アプローチに関連する種々の装置、システム、及び方法である。本開示は、改良されたhATトランスポザーゼ、トランスポゾンのベクター配列、トランスポザーゼの送達方法、及びトランスポゾンの送達方法に関する。一実施形態では、本研究は、機能亢進hATトランスポザーゼを作製するための特定の普遍的な部位を特定した。別の実施態様では、ゲノム空間を保存する最小サイズのhATトランスポゾンベクターの逆向き末端反復配列(ITR)を作製する方法が記載されている。別の実施態様では、化学的に修飾された試験管内で転写されたmRNAとしてhATファミリートランスポザーゼを送達するための改善された方法が記載されている。別の実施態様では、hATファミリートランスポゾンベクターをDNAの「ミニチュア」サークルとして送達する方法が記載されており、実質的にすべての原核生物配列が組換え法によって除去されている。別の実施態様では、hATトランスポザーゼに融合された転写活性化因子様(TAL)ドメインを用いてDNA配列特異的結合ドメインを融合する方法が記載されている。これらの改善は、個別にまたは組み合わせて、問題の細胞型への予想外に高レベルの遺伝子導入、及び対象とする配列へのトランスポゾンベクターの送達の改善を得ることができる。
変異型TcBusterトランスポザーゼ
本開示の一態様は変異型TcBusterトランスポザーゼを提供する。変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)と比べて1以上のアミノ酸置換を含んでもよい。
変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)の完全長配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)の完全長配列に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。場合によっては、変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)の完全長配列に対して少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
本明細書で使用されるとき「同一性パーセント(%)」という用語は、最大比率の同一性を達成するために配列を並べ、必要に応じてギャップ(すなわち、ギャップは、最適な配列比較のために候補配列及び参照配列の一方または双方に導入することができ、非相同配列は比較の目的で無視することができる)を導入した後の、参照配列のアミノ酸(または核酸)残基と同一である候補配列のアミノ酸(または核酸)残基の比率を指すことができる。同一性パーセントを決定する目的のための配列比較は、例えば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて当該技術分野の技量の範囲内にある種々の方法で達成することができる。2つの配列の同一性パーセントは、BLASTを用いて試験配列を比較配列と共に並べ、比較配列の同じ位置にあるアミノ酸またはヌクレオチドと同一である並べた試験配列内のアミノ酸またはヌクレオチドの数を決定し、同一のアミノ酸またはヌクレオチドの数を比較配列内のアミノ酸またはヌクレオチドの数で割ることによって算出することができる。
本明細書で使用されるとき「相補体(単数)」、「相補体(複数)」、「相補性の」、及び「相補性」という用語は、所与の配列に完全に相補性であり、ハイブリッド形成可能である配列を指すことができる。場合によっては、所与の領域にわたるその塩基の配列がその結合相手の塩基配列を相補性に結合することができるので、例えば、A-T、A-U、G-C、及びG-Uの塩基対が形成されるならば、所与の核酸とハイブリッド形成する配列は所与の分子の「相補体」または「逆相補体」と呼ばれる。一般に、第2の配列にハイブリッド形成可能な第1の配列は第2の配列に特異的または選択的にハイブリッド形成可能であるので、第2の配列または第2の配列のセットへのハイブリッド形成(例えば、当該技術分野で一般的に使用されるストリンジェントな条件のような所与の設定の条件下で熱力学的にさらに安定な)はハイブリッド形成反応中の非標的配列とのハイブリッド形成よりも好まれる。通常、ハイブリッド形成可能な配列は、それぞれの長さの全部または一部にわたる配列相補性、例えば、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び100%の配列相補性を含む25%~100%の間の相補性の程度を共有する。相補性パーセントを評価する目的のような配列同一性は、Needleman-Wunschアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.htmlにて利用できる任意で初期設定の設定でのEMBOSS Needleアライナーを参照のこと)、BLASTアルゴリズム(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiにて利用できる任意で初期設定の設定でのBLAST配列比較ツールを参照のこと)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/nucleotide.htmlにて利用できる任意で初期設定の設定でのEMBOSS Waterアライナーを参照のこと)を含むが、これらに限定されない好適な配列比較アルゴリズムによって測定することができる。最適な配列比較は、初期設定のパラメーターを含む、選択したアルゴリズムの適切なパラメーターを用いて評価することができる。
相補性は完全であることができ、または実質的/十分であることができる。2つの核酸間の完全な相補性は、2つの核酸が二本鎖のすべての塩基がワトソン・クリック対合によって相補性塩基に結合する二本鎖を形成することができることを意味する。実質的なまたは十分な相補性は、一方の鎖の配列が反対側の鎖の配列に完全及び/または完璧に相補性ではないが、ハイブリッド形成条件の設定(例えば、塩濃度と温度)で安定したハイブリッド複合体を形成するために2つの鎖の塩基間で十分な結合が生じることを意味することができる。そのような条件は、配列と標準的な数学的計算を用いてハイブリッド形成した鎖のTmを予測することによって、または日常の方法を用いてTmを経験的に決定することによって予測することができる。
変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼの完全長配列(配列番号1)とは異なる少なくとも1つのアミノ酸を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)の完全長配列とは異なる少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10以上のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含むことができる。場合によっては、変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)の完全長配列とは異なる少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、または少なくとも300のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含むことができる。場合によっては、変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)の完全長配列とは異なる多くても3、多くても6、多くても12、多くても25、多くても35、多くても45、多くても55、多くても65、多くても75、多くても85、多くても95、多くても150、多くても250、または多くても350のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含むことができる。
図4に示すように、通常、野生型TcBusterトランスポサーゼはN末端からC末端までにて、ZnF-BEDドメイン(アミノ酸76~98)、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン(アミノ酸112~213)、第1の触媒ドメイン(アミノ酸213~312)、挿入ドメイン(アミノ酸312~543)、及び第2の触媒ドメイン(アミノ酸583~620)、ならびにこれらの注釈付きドメイン間における少なくとも4つのドメイン間領域を含むと見なすことができる。特に明記しない限り、本明細書で使用されているようなアミノ酸への数的言及はすべて配列番号1に従う。変異型TcBusterトランスポザーゼは、これらのドメインのいずれか1つ、またはそれらの任意の組み合わせにて1以上のアミノ酸置換を含むことができる。場合によっては、変異型TcBusterトランスポザーゼは、ZnF-BEDドメイン、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン、第1の触媒ドメイン、挿入ドメイン、またはそれらの組み合わせにて1以上のアミノ酸置換を含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、2つの触媒ドメインの少なくとも一方にて1以上のアミノ酸置換を含むことができる。
例示的な変異型TcBusterトランスポザーゼは、表1または表1.1の1以上のアミノ酸置換を含むことができる。時には、変異型TcBusterトランスポザーゼは、表1または表1.1のアミノ酸置換の少なくとも1つを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、表1または表1.1のアミノ酸置換の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30以上を含むことができる。






例示的な変異型TcBusterトランスポザーゼは表2の1以上のアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含む。場合によっては、変異型TcBusterトランスポザーゼは表2のアミノ酸置換の少なくとも1つまたは置換の組み合わせを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは表2のアミノ酸置換の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30以上、または置換の組み合わせを含むことができる。

例示的な変異型TcBusterトランスポザーゼは表3の1以上のアミノ酸置換、または置換の組み合わせを含む。場合によっては、変異型TcBusterトランスポザーゼは表3のアミノ酸置換の少なくとも1つまたは置換の組み合わせを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは表3のアミノ酸置換の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30以上、または置換の組み合わせを含むことができる。
機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼ
本開示の別の態様は機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼを提供することである。本明細書で使用されるとき「機能亢進」変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する任意の変異型TcBusterトランスポザーゼを指すことができる。
いくつかの実施形態では、機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて、特定の状況下で高い転位効率を有してもよい。例えば、機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは特定の種類の逆向き反復配列を有するトランスポゾンの転位を触媒するのに使用される場合、野生型TcBusterトランスポザーゼよりも良好な転位効率を有してもよい。他の種類の逆向き反復配列を有する他のいくつかのトランスポゾンでは、機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは、野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有さない可能性がある。いくつかの他の非限定的な例では、機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは、特定の形質移入条件下で、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有してもよい。限定されないで、野生型TcBusterトランスポザーゼと比較した場合、機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは温度が通常の細胞培養温度よりも高ければ、さらに良好な転位効率を有してもよく;機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは、相対的に酸性または塩基性の水性媒体にてさらに良好な転位効率を有してもよく;機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは、特定の種類の形質移入技術(例えば、エレクトロポレーション)を実施すれば、さらに良好な転位効率を有してもよい。
転位効率は、宿主細胞の集団に導入されたトランスポゾン及びトランスポザーゼの量によって基準化される、その宿主細胞の集団で発生する成功した転位事象の割合によって測定することができる。多くの場合、2以上のトランスポザーゼの転位効率を比較すると、同じまたは類似の形質移入条件下での宿主細胞の形質移入のために、同じトランスポゾン構築物が2以上のトランスポザーゼのそれぞれと対合する。宿主細胞における転位事象の量は種々のアプローチによって調べることができる。例えば、トランスポゾン構築物は、逆向き反復配列の間に配置されたレポーター遺伝子を含有するように設計されてもよく、レポーター遺伝子について陽性の形質移入された細胞は、転位事象の量の推定値を与えることができる、成功した転位事象が発生する細胞として数えられ得る。別の非限定的な例には、トランスポゾンのカセットカーゴの挿入を調べるための宿主細胞ゲノムの配列決定が挙げられる。いくつかの実施形態では、2以上の異なるトランスポゾンの転位効率を比較する場合、同じまたは類似の形質移入条件下での宿主細胞の形質移入のために、同じトランスポザーゼが異なるトランスポゾンのそれぞれと対合することができる。同様のアプローチは転位効率の測定に利用することができる。当業者に知られている他の方法もまた転位効率の比較のために実施されてもよい。
本明細書で提供されているのはまた、機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼを取得する方法である。
例示的な方法の1つは、TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸を体系的に変異させてアミノ酸配列の正味電荷を増加させることを含むことができる。時には、方法は、体系的なアラニン走査を実施して中性pHで負に荷電しているアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)をアラニン残基に変異させることを含むことができる。方法は、中性pHで正に荷電しているリシン(K)またはアルギニン(R)の残基に対して体系的な変異を実行することを含むことができる。
特定の理論に束縛されることを望まないが、中性pHでのアミノ酸配列の正味電荷の増加はTcBusterトランスポザーゼの転位効率を増加させてもよい。特に、トランスポザーゼの触媒ドメインの近傍で正味電荷が増加すると、転位効率が増加すると予想される。正に荷電したアミノ酸は、DNA標的との接触点を形成し、触媒ドメインがDNA標的に作用することを可能にすることができると考えることができる。これらの正に荷電したアミノ酸が失われると、トランスポザーゼの切除または組込みの活性のいずれかが低下し得ることも考えられてもよい。
図11は、野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示しており、DNAとの接触点であってもよいアミノ酸を強調している。図11では、大きな太字の文字は触媒三連構造アミノ酸を示す;ボックスの文字は正に荷電したアミノ酸に置換されると転位を増加させるアミノ酸を示し;イタリック体及び小文字の文字は、異なるアミノ酸に置換すると転位が減少する正に荷電したアミノ酸を示し;太字のイタリック体と下線は、正に荷電したアミノ酸に置換すると転位が増加し、負に荷電したアミノ酸に置換すると転位が減少するアミノ酸を示し;下線が引かれた文字は、Busterサブファミリーに対するタンパク質配列の配列比較に基づいて正に荷電したアミノ酸である可能性があるアミノ酸を示す。
変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含むことができる。時には、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む変異型TcBusterトランスポザーゼは機能亢進性であることができる。時には、変異型TcBusterトランスポザーゼは、例えば、リシン(K)またはアルギニン(R)のような正に荷電したアミノ酸への1以上の置換を含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)のような、しかし、これらに限定されない負に荷電したアミノ酸の、中性アミノ酸または正に荷電したアミノ酸による1以上の置換を含むことができる。
非限定的な例の1つには、配列番号1と比べて触媒ドメイン内でまたは触媒ドメインの近傍で中性pHにて正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む変異型TcBusterトランスポザーゼが挙げられる。触媒ドメインは第1の触媒ドメインまたは第2の触媒ドメインであることができる。触媒ドメインはまたトランスポザーゼの双方の触媒ドメインも含むことができる。
本開示の例示的な方法は、DNAに近接している、またはDNAと直接接触すると予測されるアミノ酸を変異させることを含むことができる。これらのアミノ酸は、hATファミリーの他のメンバー(複数可)(例えば、Buster及び/またはAcサブファミリーの他のメンバー)で保存されていると同定された置換アミノ酸であることができる。DNAに近接している、またはDNAと直接接触すると予測されるアミノ酸は、例えば、結晶構造、予測される構造、変異分析、機能分析、hATファミリーの他のメンバーとの配列比較または他の好適な方法を参照することによって同定することができる。
特定の理論に束縛されることを望まないが、TcBusterトランスポザーゼはhATトランスポザーゼファミリーの他のメンバーと同様に、トランスポゾンの動きを触媒する活性部位であってもよいDDEモチーフを有する。D223、D289、及びE589は酸性残基の三連構造である活性部位を構成すると考えられる。DDEモチーフは二価の金属イオンを配位させてもよく、触媒反応において重要であることができる。いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含むことができ、且つ1以上のアミノ酸は配列番号1に従って番号付けされる場合、D223、D289またはE589の近傍に位置する。
特定の実施形態では、本明細書で提供されているような変異型TcBusterトランスポザーゼは、触媒三連構造、すなわちD223、D289、またはE589の破壊を含まない。変異型TcBusterトランスポザーゼは、D223、D289、またはE589でのアミノ酸置換を含まなくてもよい。変異型TcBusterトランスポザーゼは、D223、D289、またはE589でのアミノ酸置換を含んでもよいが、そのような置換は触媒三連構造によってもたらされる触媒活性を破壊しない。
場合によっては、「近傍」という用語は、トランスポザーゼの一次構造における直線距離の測定を指すことができる。例えば、野生型TcBusterトランスポザーゼの一次構造におけるD223とD289の間の距離は66アミノ酸である。特定の実施形態では、近傍は約70~80アミノ酸の距離を指すことができる。多くの場合、近傍は約80、75、70、60、50、40、30、20、10、または5アミノ酸の距離を指すことができる。
場合によっては、「近傍」という用語は、トランスポザーゼの二次または三次構造における空間的関係の測定、すなわち、トランスポザーゼがその三次元構成に折り畳まれるときを指すことができる。タンパク質の二次構造は、タンパク質の局所セグメントの三次元形態を指すことができる。一般的な二次構造要素には、アルファヘリックス、ベータシート、ベータターン、及びオメガループが挙げられる。二次構造要素は、タンパク質がその三次元三次構造に折り畳む前に中間体として形成されてもよい。タンパク質の三次構造はタンパク質の三次元形状を指すことができる。タンパク質の三次構造は、生理学的条件下または他の条件下で動的な構成変化を示してもよい。三次構造は、1以上のタンパク質二次構造であるタンパク質ドメインを持つ単一のポリペプチド鎖「主鎖」を有するであろう。アミノ酸側鎖は多数の方法で相互作用し、結合してもよい。特定のタンパク質内の側鎖の相互作用及び結合がその三次構造を決定する。多くの実施態様では、近傍は、約1Å、約2Å、約5Å、約8Å、約10Å、約15Å、約20Å、約25Å、約30Å、約35Å、約40Å、約50Å、約60Å、約70Å、約80Å、約90Å、または約100Åの距離を指すことができる。
中性pHは約7のpH値であることができる。時には、中性pHは、6.9~7.1、6.8~7.2、6.7~7.3、6.6~7.4、6.5~7.5、6.4~7.6、6.3~7.7、6.2~7.8、6.1~7.9、6.0~8.0、5~8、またはそれらから派生した範囲のpH値であることができる。
配列番号1と比べて中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含む非限定的な例示的変異型TcBusterトランスポザーゼには、表4、表4.1、またはその双方のアミノ酸置換の組み合わせの少なくとも1つを含むTcBusterトランスポザーゼが挙げられる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、表4、表4.1、またはその双方のアミノ酸置換の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30以上を含むことができる。
いくつかの実施形態では、変異型TcBusterトランスポザーゼは、配列番号1と比べて非中性pHで正味電荷を増加させる1以上のアミノ酸置換を含むことができる。場合によっては、正味電荷は非中性pHでの触媒ドメイン内またはその近傍で増加する。多くの場合、正味電荷は非中性pHにてD223、D289、またはE589の近傍で増加する。非中性pHは、7未満、6.5未満、6未満、5.5未満、5未満、4.5未満、4未満、3.5未満、3未満、2.5未満、2未満、1.5未満、または1未満のpH値であることができる。非中性pHは、7を超える、7.5を超える、8を超える、8.5を超える、9を超える、9.5を超える、または10を超えるpH値であることができる。


例示的な一実施形態では、方法はDNA結合及びオリゴマー化ドメインにてアミノ酸を体系的に変異させることを含むことができる。特定の理論に束縛されることを望まないが、DNA結合及びオリゴマー化ドメインにおける変異は、DNA標的への結合親和性を高めてもよく、トランスポザーゼのオリゴマー化活性を促進してもよく、その結果、転位効率を促進してもよい。さらに具体的には、方法は、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン(例えば、アミノ酸112~213)内またはその近傍でアミノ酸を1つずつ体系的に変異させることを含むことができる。方法はまた、DNA結合及びオリゴマー化ドメイン内またはその近傍で1を超えるアミノ酸を変異させることも含むことができる。方法はまた、DNA結合及びオリゴマー化ドメインの外側の1以上のアミノ酸と一緒にDNA結合及びオリゴマー化ドメイン内でまたはその近傍で1以上のアミノ酸を変異させることも含むことができる。
いくつかの実施形態では、方法は、他のhATファミリートランスポザーゼ(Ac、Hermes、Hobo、Tag2、Tam3、Hermes、Restless及びTol2)またはBusterサブファミリーの他のメンバー(例えば、AeBuster1、AeBuster2、AeBuster3、BtBuster1、BtBuster2、CfBuster1、及びCfBuster2)とのTcBusterの複数の配列比較に基づいて選択的アミノ酸残基の合理的な置換を行うことを含むことができる。特定の理論に束縛されないで、他のhATファミリーのトランスポザーゼの間、特に活性があるトランスポザーゼの間での特定のアミノ酸の保存性は、トランスポザーゼの触媒活性についてのそれらの重要性を示してもよい。したがって、野生型TcBuster配列(配列番号1)の保存されていないアミノ酸を他のhATファミリーの中で保存されたアミノ酸で置き換えると、機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼが得られてもよい。方法は、TcBusterと同様に他のhATファミリートランスポザーゼの配列を取得することと;配列を整列させ、他のhATファミリートランスポザーゼの中で異なる保存された対応物でTcBusterトランスポザーゼのアミノ酸を同定することと;部位特異的変異誘発を実施して、変異(複数可)を内部に含む変異型TcBusterトランスポザーゼを作り出すこととを含んでもよい。
機能亢進変異型TcBusterトランスポザーゼは、Busterサブファミリーの他のメンバーまたはhATファミリーの他のメンバーに対する配列比較に基づいて1以上のアミノ酸置換を含むことができる。多くの場合、1以上のアミノ酸置換は、野生型TcBuster配列(配列番号1)での保存されていないアミノ酸についての保存されたアミノ酸の置換であることができる。変異型TcBusterトランスポザーゼの非限定的な例には、表5、表5.1、またはその双方のアミノ酸置換の少なくとも1つを含むTcBusterトランスポザーゼが挙げられる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、表5、表5.1、またはその双方のアミノ酸置換の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30以上を含むことができる。
別の例示的な方法は、酸性アミノ酸を塩基性アミノ酸に体系的に変異させ、機能亢進変異トランスポザーゼを同定することを含むことができる。
場合によっては、変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換V377T、E469K、及びD189Aを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼはアミノ酸置換K573E及びE578Lを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼはアミノ酸置換I452Kを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼはアミノ酸置換A358Kを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼはアミノ酸置換V297Kを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼはアミノ酸置換N85Sを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換N85S、V377T、E469K、及びD189Aを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換I452F、V377T、E469K、及びD189Aを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換A358K、V377T、E469K、及びD189Aを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573E及びE578Lを含むことができる。




核局在化シグナル
本開示の別の態様は、1以上の追加の核局在化シグナル(NLS)配列を持つ融合TcBusterトランスポザーゼを提供する。野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)は、2つの推定上の単節型NLS配列RKKR及びKKRKを含有する。本開示のいくつかの実施形態では、本明細書で提供されているような融合TcBusterトランスポザーゼは、アミノ酸置換を介して作り出された追加の単節型NLS配列を含むことができる。場合によっては、追加の単節型NLS配列は、配列K(K/R)X(K/R)を有することができ、その際、Xは任意のアミノ酸を表す。場合によっては、本明細書で提供されているような追加の単節型NLS配列を含む融合TcBusterトランスポザーゼは、追加の単節型NLS配列を有さない他の点では同一のTcBusterトランスポザーゼと比べて、高い転位効率を有することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されているような融合TcBusterトランスポザーゼは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの追加のNLS配列を含む。場合によっては、追加のNLS配列には表6でリストにされているものが含まれる。本明細書で提供されているように、追加のNLS配列はTcBusterトランスポザーゼのN末端、C末端、及び/または内部部分に融合することができる。
本明細書で提供されているような双節型NLS配列を含む例示的なTcBusterトランスポザーゼは、K(K/R)XXXXXXXXXXXX(K/R)(K/R)(K/R)(K/R)、K(K/R)XXXXXXXXXXX(K/R)(K/R)(K/R)(K/R)、K(K/R)XXXXXXXXXX(K/R)(K/R)(K/R)(K/R)、K(K/R)XXXXXXXXX(K/R)(K/R)(K/R)(K/R)、K(K/R)XXXXXXXX(K/R)(K/R)(K/R)(K/R)、またはK(K/R)XXXXXXX(K/R)(K/R)(K/R)(K/R)のようなNLS配列を有することができ、その際、Xは任意のアミノ酸を表す。
DNA結合ドメインを持つ融合トランスポザーゼ
本開示の別の態様は融合トランスポザーゼを提供する。融合トランスポザーゼは、TcBusterトランスポザーゼ配列とDNA配列特異的結合ドメインとを含むことができる。
融合トランスポザーゼのTcBusterトランスポザーゼ配列は、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼのいずれかのアミノ酸配列を含むことができる。融合トランスポザーゼのTcBusterトランスポザーゼ配列はまた、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を含むこともできる。
本明細書に記載されているようなDNA配列特異的結合ドメインは、特定の配列モチーフを含有する配列領域(「標的配列」)でDNA分子に結合するように適合させるタンパク質ドメインを指すことができる。例えば、例示的なDNA配列特異的結合ドメインは配列モチーフTATAに選択的に結合してもよい一方で、別の例示的なDNA配列特異的結合ドメインは異なる配列モチーフATGCNTAGAT(配列番号82)に選択的に結合してもよい(NはA、T、G及びCのいずれか1つを示す)。
本明細書で提供されているような融合トランスポザーゼはトランスポゾンの配列特異的挿入を指示してもよい。例えば、DNA配列特異的結合ドメインは、結合ドメインの結合特異性に基づいて融合トランスポザーゼが標的配列に結合するように誘導してもよい。特定の配列領域に結合することまたは限定されることは、融合トランスポザーゼとトランスポゾンとの間の相互作用を空間的に制限し、それによって、触媒される転位を標的配列の近傍の配列領域に制限してもよい。DNA結合ドメインのサイズ、三次元構成、及び配列結合親和性、と同様にDNA結合ドメインとTcBusterトランスポザーゼ配列との間の空間的関係、及び2つのドメイン間の接続の柔軟性に応じて、標的配列への実際の転位部位の距離は変化してもよい。融合トランスポザーゼの構成の適切な設計は転位を望ましい標的ゲノム領域に向けることができる。
転位についての標的ゲノム領域は適用の目的に応じて任意の特定のゲノム領域であることができる。例えば、時には、細胞の特定の重要な内在性遺伝子(複数可)の発現レベルにおける望ましくない、または有害でさえある変化を引き起こしてもよい、転位の転写開始部位を回避することが望ましい。融合トランスポザーゼは、宿主ゲノムの安全域に転位を向けることができるDNA配列特異的結合ドメインを含有してもよい。安全域の非限定的な例には、HPRT、AAVS部位(例えば、AAVS1、AAVS2、ETC)、CCR5、またはRosa26を挙げることができる。安全域部位は一般に、その使用は、細胞のゲノムの完全性または細胞の健全性と機能にほとんどまたはまったく破壊的な効果を発揮しない、導入遺伝子挿入のための部位を指すことができる。
DNA配列特異的結合ドメインは、配列特異性を有する任意のDNA結合タンパク質に由来してもよく、またはその変異型であってもよい。多くの場合、DNA配列特異的結合ドメインは天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質と、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を含んでもよい。DNA配列特異的結合ドメインは、天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含んでもよい。天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質の非限定的な例には、種々の起源由来の転写因子、特異的配列ヌクレアーゼ、及びウイルス複製タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在する配列特異的DNA結合タンパク質はまた種々の起源由来の特異的結合能力を有する他の任意のタンパク質であることもできる。DNA結合タンパク質の選択及び予測は、DP-Bind(http://lcg.rit.albany.edu/dp-bind/)またはDNABIND(http://dnabind.szialab.org/)のようなオンラインで利用可能な計算予測データベースの使用を含むが,これらに限定されない種々のアプローチによって実施することができる。
「転写因子」という用語は、特定のDNA配列に結合することによって、DNAからメッセンジャーDNAへの遺伝情報の転写速度を制御するタンパク質を指すことができる。本明細書に記載されている融合トランスポザーゼで使用することができる転写因子は、それが標的DNA分子に結合するときに配列特異性を付与する限り、原核生物転写因子または真核生物転写因子に基づくことができる。本開示を適用するための適切な転写因子を選択のためにDBD(http://www.transcriptionfactor.org)のような転写因子予測データベースを用いてもよい。
本明細書で使用されているようなDNA配列特異的結合ドメインは、天然に存在する転写因子由来の1以上のDNA結合ドメインを含むことができる。転写因子のDNA結合ドメインの非限定的な例には、塩基性ヘリックスループヘリックス、塩基性ロイシンジッパー(bZIP)、双節型応答調節因子のC末端エフェクタードメイン、AP2/ERF/GCCボックス、ヘリックスターンヘリックス、ホメオドメインタンパク質、ラムダリプレッサー様、srf様(血清応答因子)、対合ボックス、翼のあるヘリックス、ジンクフィンガー、マルチドメインCys2His2(C2H2)ジンクフィンガー、Zn2/Cys6、またはZn2/Cys8核受容体ジンクフィンガーのようなファミリーに属するDNA結合ドメインが挙げられる。
DNA配列特異的結合ドメインは、特定のDNA配列に結合する人工的に操作されたアミノ酸配列であることができる。そのような人工的に設計されたアミノ酸配列の非限定的な例には、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALE)DNA結合ドメイン、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、アデノ随伴ウイルス(AAV)Repタンパク質、及び本明細書に記載されているような他の好適なDNA結合タンパク質のようなフレームワークに基づいて作り出される配列が挙げられる。
天然のTALEは、植物種の感染を助けるXanthomonas細菌によって分泌されるタンパク質である。天然のTALEは、特定のDNA配列に結合し、宿主遺伝子の発現を活性化することによって感染を助けることができる。一般に、TALEタンパク質は中央反復ドメインから成り、それはDNA標的指向化の特異性を決定するが、新たに迅速に合成され得る。TALEは残基の反復配列を含有するモジュールDNA結合ドメイン(DBD)を有する。一部のTALEでは、各反復領域は34のアミノ酸を含有する。本明細書で使用されるとき「TALEドメイン」という用語はTALEのモジュールDBDを指すことができる。各反復領域の12位と13位にある残基のペアは、ヌクレオチドの特異性を決定することができ、反復可変二残基(RVD)と呼ばれる。半反復と呼ばれる最後の反復領域は通常、20アミノ酸に切り詰められる。これらの反復領域を組み合わせることで、配列特異的な合成TALEを合成することができる。C末端は通常、TALEを核に向ける核局在化シグナル(NLS)と同様に、酸性活性化ドメイン(AD)のような転写を調節する機能ドメインを含有する。内在性NLSは、生物固有の局在化シグナルに置き換えることができる。例えば、サルウイルス40ラージT抗原に由来するNLSは哺乳動物細胞で使用することができる。RVDのHD、NG、NI、及びNNは、それぞれC、T、A、及びG/Aを標的とする。ヌクレオチドの特定の状況下でのRVDとそれらの結合優先度のリストを表7で見いだすことができる。追加のTALEのRVDはカスタム縮重TALE-DNA相互作用にも使用することができる。例えば、NAはDNAの4つの塩基すべてに対して高い親和性を有する。さらに、が13番目の残基が欠失したRVDであるNは、メチル化シトシンを含むすべてのDNA文字に対応することができる。また、Sは任意のDNAヌクレオチドに結合する能力を有してもよい。
例えば、TALE-NT(https://tale-nt.cac.cornell.edu/)、Mojoハンド(http://www.talendesign.org/)のような特定のDNA配列を標的とするTALEを設計するために多数のオンラインツールが利用可能である。市販のキットは、タンパク質のN末端とC末端の間にTALE反復領域のカスタムアセンブリを作り出すのにも役立ってもよい。これらの方法を用いてカスタムDBDを構築し、次いでそれを機能ドメイン、例えば、TcBusterトランスポザーゼ配列を含有する発現ベクターにクローニングすることができる。

TALEは、例えば、Golden Gate反応における消化工程及びライゲーション工程をII型制限酵素と組み合わせることによって実験室で新たに合成することができる。あるいは、TALEは、ライゲーションに依存しないクローニング(LIC)、高速ライゲーションに基づく自動化可能な固相ハイスループット(FLASH)アセンブリ、反復キャップアセンブリ(ICA)を含むが、これらに限定されない、多数のさまざまなアプローチで構築することができる。
ジンクフィンガー(ZF)は、約3ヌクレオチドの限られた組み合わせに結合することができる約30アミノ酸である。C2H2のZFドメインは、最も一般的な種類のZFであってもよく、真核細胞で最も豊富に発現されるタンパク質の1つであると思われる。ZFはその構造にて亜鉛分子と協調する小型の、機能的で、独立して折り畳まれるドメインである。各ZFのアミノ酸は特定のヌクレオチドに対して親和性を有することができ、各フィンガーにDNAの3~4ヌクレオチドを選択的に認識させる。複数のZFは縦列アレイに配置され、DNA上のヌクレオチドのセットを認識することができる。異なるジンクフィンガーの組み合わせを使用することによって、ゲノム内の独特のDNA配列を標的とすることができる。種々の長さのさまざまなZFPを生成することができ、それは、考えられる64のトリプレット亜部位からほぼどんな所望のDNA配列の認識も可能にする。
本開示に関連して使用されるジンクフィンガーは、Barbas及び共同研究者によって開発されたモジュールアセンブリフィンガードメインのセット、及びToolGenによるモジュールアセンブリフィンガードメインの別のセットのような確立されたモジュールアセンブリフィンガーを用いて作り出すことができる。ドメインの双方のセットは、3つのbpのGNNすべて、ほとんどのANN、多くのCNN、及びいくつかのTNNのトリプレット(Nは4つのヌクレオチドのいずれかであることができる)を網羅する。双方は、必要に応じて異なるZFモジュールを検索する及びコードするのを可能にする異なるフィンガーセットを有する。コンビナトリアル選択に基づいたオリゴマー化プールの操作(OPEN)戦略を採用して、タンパク質におけるフィンガーの位置と隣接するフィンガーの配列を含むモジュールアセンブリの背景依存性の影響を出来るだけ抑えることもできる。OPEN ZFアレイはジンクフィンガー共同体データベースから公的に利用可能である。
AAV RepのDNA結合ドメインは、本開示の主題に関連して使用することができる別のDNA配列特異的結合ドメインである。ウイルスのシス作用性逆向き末端反復配列(ITR)、及びトランス作用性ウイルスRepタンパク質(Rep)は、ヘルパーウイルスの非存在下で宿主ゲノムのAAVS1部位へのAAVの優先的組込みに介在する因子であると考えられている。AAV Repタンパク質はAAVS1部位における特定のDNA配列に結合することができる。したがって、部位特異的DNA結合ドメインは本明細書に記載されているようなTcBusterトランスポザーゼドメインと一緒に融合させることができる。
本明細書で提供されているような融合トランスポザーゼはTcBusterトランスポザーゼ配列及びタグ配列を含むことができる。本明細書で提供されているようなタグ配列は、抗体によって認識され得るレポータータンパク質及び親和性タグのような、しかし、これらに限定されない融合タンパク質の検出タグとして使用され得る任意のタンパク質配列を指すことができる。レポータータンパク質には、蛍光タンパク質(例えばGFP、RFP、mCherry、YFP)、β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)、アルカリホスファターゼ(AP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が挙げられるが、これらに限定されない。親和性タグの非限定的な例には、ポリヒスチジン(Hisタグ)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、インテイン-キチン結合ドメイン(インテイン-CBD)、ストレプトアビジン/ビオチン系のタグ、FLAG、HA、c-myc、T7、Glu-Gluのようなエピトープタグ、等が挙げられる。
本明細書で提供されているような融合トランスポザーゼは、どんな中間配列も含まずに(例えば、「背中合わせで」)一緒に融合されるTcBusterトランスポザーゼ配列と、DNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列とを含むことができる。場合によっては、本明細書で提供されているような融合トランスポザーゼは、リンカー配列によって連結されるTcBusterトランスポザーゼ配列と、DNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列とを含むことができる。図8は、リンカーによって連結されたDNA配列特異的結合ドメインとTcBusterトランスポザーゼ配列とを含む例示的な融合トランスポザーゼの概略図である。例示的な融合トランスポザーゼでは、リンカーは主に、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間のスペーサーとして役立ってもよい。リンカーは、単一のポリペプチドにて複数のドメインを分離するための短いアミノ酸配列であることができる。リンカー配列は、天然のマルチドメインタンパク質に存在するリンカーを含むことができる。場合によっては、リンカー配列は人工的に作り出されたリンカーを含むことができる。リンカー配列の選択は融合トランスポザーゼの適用に基づいてもよい。リンカー配列は、3、4、5、6、7、8、9、10以上のアミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、または少なくとも50のアミノ酸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、多くても4、多くても5、多くても7、多くても8、多くても9、多くても10、多くても11、多くても12、多くても15を含むことができる。多くても20、多くても30、多くても40、多くても50、または多くても100のアミノ酸を含むことができる。特定の場合では、(GGGGS)n(n=2~8)(配列番号83)、(Gly)(配列番号84)、GSAGSAAGSGEF(配列番号85)、(GGGGS)(配列番号86)のようなGlyとSer残基の区間(「GS」リンカー)のような、しかし、これらに限定されない柔軟なリンカー配列を使用することが望ましくてもよい。(EAAAK)n(n=2~7)(配列番号87)、Xが任意のアミノ酸を指定する(XP)nのようなプロリッチ配列のような、しかし、これらに限定されない剛直なリンカー配列を使用することが望ましくてもよい。
本明細書で提供されている例示的な融合トランスポザーゼでは、TcBusterトランスポザーゼ配列をDNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列のN末端に融合させることができる。あるいは、TcBusterトランスポザーゼ配列をDNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列のC末端に融合させることができる。いくつかの実施形態では、融合トランスポザーゼの適用に応じて、第3のドメイン配列または複数の他の配列が、TcBusterトランスポザーゼとDNA配列特異的結合ドメインまたはタグ配列との間に存在することができる。
TcBusterのヌクレオチド配列
本開示の別の態様は、本明細書で提供されているようなTcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド配列を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されているようなポリヌクレオチドは、その細胞にポリヌクレオチドが送達される生物の翻訳システムによって有利である1以上のコドンを含む。例えば、本明細書で提供されているようなポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドがゲノム編集の目的でヒト細胞に送達される場合、ヒト(例えば、Homo Sapiens)翻訳システムによって有利である1以上のコドンを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されているようなTcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドにおける1以上のコドンは、その細胞にポリヌクレオチドが送達される生物にてさらに高い頻度で見いだされるコドンであることができる。特定の理論に束縛されないで、場合によっては、本明細書で提供されているようなTcBusterトランスポザーゼは、それをコードするポリヌクレオチドの形態で標的細胞に送達され、標的細胞における高頻度のコドンは、TcBusterトランスポザーゼをコードするDNAの天然コドンと比べて、細胞の翻訳システムがさらに効率的に利用することができ、それによって標的細胞におけるTcBusterトランスポザーゼの高い発現をもたらす。
本明細書で提供されているようなポリヌクレオチドの特定の実施形態は、その細胞にポリヌクレオチドが送達される生物で有利であるコドンによって置き換えられる少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10を含み得る。少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、または少なくとも200のコドンを含むことができる。ポリヌクレオチドの特定の実施形態は、Homo Sapiensにおいて高頻度で見いだされる1以上のコドン、例えば、表8に列挙された高い頻度/1000(または少数部)のものを含むことができる。場合によっては、Homo Sapiensにおけるその頻度/1000が少なくとも5、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30であれば、表8のコドンが選択される。場合によっては、Homo Sapiensにおけるその少数部が少なくとも0.1、少なくとも0.12、少なくとも0.14、少なくとも0.16、少なくとも0.18、少なくとも0.2、少なくとも0.22、少なくとも0.24である場合に選択されます。少なくとも0.26、少なくとも0.28、少なくとも0.3、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.45、少なくとも0.5、または少なくとも0.55であれば、表8のコドンが選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されているポリヌクレオチドは標的種の 細胞、例えば、ヒト細胞における発現のために最適化されたコドンである。ポリヌクレオチドは、例えば、標的種にて高頻度で存在するポリヌクレオチドにおけるコドンの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%(例えば、標的種における少なくとも5、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30の頻度/1000、または例えば、標的種における少なくとも0.1、少なくとも0.12、少なくとも0.14、少なくとも0.16、少なくとも0.18、少なくとも0.2、少なくとも0.22、少なくとも0.24、少なくとも0.26、少なくとも0.28、少なくとも0.3、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.45、少なくとも0.5、または少なくとも0.55の少数部)標的種の細胞における発現のためにコドンを最適化することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、標的種にて高頻度で存在するポリヌクレオチドにおけるコドンの少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%(例えば、標的種における少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30の頻度/1000、または標的種における少なくとも0.2、少なくとも0.22、少なくとも、0.24、少なくとも0.26、少なくとも0.28、少なくとも0.3、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.45、少なくとも0.5、または少なくとも0.55の少数部)標的種の細胞における発現のためにコドンが最適化される。
配列番号204はヒト細胞での発現のためにコドンが最適化され、野生型TcBusterトランスポザーゼをコードする例示的なDNA配列である。配列番号207はヒト細胞での発現のためにコドンが最適化され、野生型TcBusterトランスポザーゼをコードする例示的なmRNA配列である。本明細書で提供されているポリヌクレオチドは完全長の配列番号204または207と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%同一または相補性であるヌクレオチド配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは完全長の配列番号204または207と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または98%同一または相補性であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは完全長の配列番号204または207と少なくとも約95%同一である、または相補性であるヌクレオチド配列を有する。

TcBusterトランスポゾン
本開示の別の態様は、2つの逆向き反復配列の間に配置されたカセットカーゴを含むTcBusterトランスポゾンを提供する。TcBusterトランスポゾンは、本明細書に記載されているようなTcBusterトランスポザーゼによって認識されることができ、例えば、TcBusterトランスポザーゼはTcBusterトランスポゾンを認識し、TcBusterトランスポゾンのDNA配列への転位を触媒することができる。
本明細書で相互交換可能に使用されるとき「逆向き反復配列」、「末端逆向き反復配列」、「逆向き末端反復配列」という用語は、天然トランスポゾンにおけるトランスポザーゼ遺伝子または人工的に操作されたトランスポゾンにおけるカセットカーゴに隣接する短い配列反復を指すことができる。対応するトランスポザーゼの存在下でのトランスポゾンの動員には、一般に2つの逆向き反復配列が必要である。本明細書に記載されているような逆向き反復配列は、1以上の直接反復(DR)配列を含有してもよい。これらの配列は通常、因子の末端逆向き反復配列(TIR)に埋め込まれている。本明細書で使用されるとき「カーゴカセット」という用語は、TcBusterトランスポザーゼ遺伝子を含有する逆向き反復配列間のネイティブのヌクレオチド配列以外のヌクレオチド配列を指すことができる。カーゴカセットは人工的に操作することができる。
本明細書に記載されているトランスポゾンは、IR/DR配列が隣接するカーゴカセットを含有してもよい。いくつかの実施形態では、反復配列の少なくとも1つは少なくとも1つの直接反復配列を含有する。図1及び図2に示すように、トランスポゾンは、IRDR-L-Seq1(配列番号3)及びIRDR-R-Seq1(配列番号4)が隣接するカーゴカセットを含有してもよい。多くの場合、左の逆向き反復配列は、IRDR-L-Seq1(配列番号3)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。場合によっては、右の逆向き反復配列は、IRDR-R-Seq1(配列番号4)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。他の場合では、右の逆向き反復配列は、IRDR-L-Seq1(配列番号3)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。時には、左の逆向き反復配列はIRDR-R-Seq1(配列番号4)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。本明細書で使用されるとき「左」及び「右」という用語は、それぞれ、二本鎖トランスポゾンのセンス鎖上のカーゴカセットの5’側及び3’側を指すことができる。トランスポゾンはIRDR-L-Seq2(配列番号5)及びIRDR-R-Seq2(配列番号6)が隣接するカーゴカセットを含有してもよい可能性もある。多くの場合、左の逆向き反復配列はIRDR-L-Seq2(配列番号5)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。場合によっては、右の逆向き反復配列はIRDR-R-Seq2(配列番号6)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。他の場合において、右の逆向き反復配列はIRDR-L-Seq2(配列番号5)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。時には、左の逆向き反復はIRDR-R-Seq2(配列番号6)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。あるいは、トランスポゾンはIRDR-L-Seq3(配列番号205)及びIRDR-R-Seq3(配列番号206)が隣接するカーゴカセットを含有することができる。多くの場合、左の逆向き反復配列はIRDR-L-Seq3(配列番号205)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。場合によっては、右の逆向き反復配列はIRDR-R-Seq3(配列番号206)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。他の場合において、右の逆向き反復配列はIRDR-L-Seq3(配列番号205)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。時には、左の逆向き反復はIRDR-R-Seq3(配列番号206)と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%少なくとも99%、または100%同一である配列を含むことができる。トランスポゾンは、図2に与えられたものとは異なるヌクレオチド配列、または当業者に知られているさまざまな配列の組み合わせを有する2つの逆向き反復配列が隣接するカーゴカセットを含有してもよい。本明細書に記載されているトランスポゾンの2つの逆向き反復配列のうちの少なくとも一方は配列番号3~6のいずれか1つと少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含有してもよい。本明細書に記載されているトランスポゾンの逆向き反復配列の少なくとも一方は、配列番号3または4と少なくとも80%同一である配列を含有してもよい。本明細書に記載されているトランスポゾンの逆向き反復配列の少なくとも一方は、配列番号5または6と少なくとも80%同一である配列を含有してもよい。逆向き反復配列の選択は、予想される転位効率、操作される細胞の種類、使用するトランスポザーゼ、及び他の多くの因子に応じて変化してもよい。
多くの実施態様では、ゲノム空間を保存する最小サイズのトランスポゾンベクターの逆向き末端反復配列が使用されてもよい。hATファミリートランスポゾンのITRは、右側と左側のITRの差異によって大きく異なる。多くの場合、わずか100~200ヌクレオチドから成る小さなITRは、hATトランスポゾンベクターの長いネイティブITRと同じくらい活性がある。これらの配列は、hATファミリーの転位に介在しながら一貫して減らされてもよい。これらの短いITRは、hATトランスポゾンベクター内のゲノム空間を保存することができる。
本明細書で提供されているトランスポゾンの逆向き反復配列は、約50~2000ヌクレオチド、約50~1000ヌクレオチド、約50~800ヌクレオチド、約50~600ヌクレオチド、約50~500ヌクレオチド、約50~400ヌクレオチド、約50~350ヌクレオチド、約50~300ヌクレオチド、約50~250ヌクレオチド、約50~200ヌクレオチド、約50~180ヌクレオチド、約50~160ヌクレオチド、約50~140ヌクレオチド、約50~120ヌクレオチド、約50~110ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、約50~90ヌクレオチド、約50~80ヌクレオチド、約50~70ヌクレオチド、約50~60ヌクレオチド、約75~750ヌクレオチド、約75~450ヌクレオチド、約75~325ヌクレオチド、約75~250ヌクレオチド、約75~150ヌクレオチド、約75~95ヌクレオチド、約100~500ヌクレオチド、約100~400ヌクレオチド、約100~350ヌクレオチド、約100~300ヌクレオチド、約100~250ヌクレオチド、約100~220ヌクレオチド、約100~200ヌクレオチド、またはそれらに由来する任意の範囲であることができる。
場合によっては、カーゴカセットは、プロモーター、導入遺伝子、またはそれらの組み合わせを含むことができる。プロモーターと導入遺伝子の双方を含むカーゴカセットでは、導入遺伝子の発現はプロモーターによって指示され得る。プロモーターは、当業者が利用できる任意の種類のプロモーターであることができる。TcBusterトランスポゾンで使用することができるプロモーターの非限定的な例にはEFS、CMV、MND、EF1α、CAGGs、PGK、UBC、U6、H1、及びクメートが挙げられる。TcBuster転位で使用されるプロモーターの選択は、プロモーターの発現効率、遺伝子操作される細胞の種類、及び所望の導入遺伝子発現レベルのような、しかし、これらに限定されない多くの因子に依存する。
TcBusterトランスポゾンにおける導入遺伝子は、対象とする任意の遺伝子であることができ、当業者に利用可能である。導入遺伝子は、自然界の遺伝子、もしくはその変異型に由来することができ、または人工的に設計することができる。導入遺伝子は、操作される細胞と同じ種起源のものであることができ、または異なる種のものであることができる。導入遺伝子は、原核生物遺伝子または真核生物遺伝子であることができる。時には、導入遺伝子は非ヒト動物、植物、またはヒトに由来する遺伝子であることができる。導入遺伝子はイントロンを含むことができる。あるいは、導入遺伝子はイントロンが除去されていてもよく、または存在しなくてもよい。
いくつかの実施形態では、導入遺伝子はタンパク質をコードすることができる。例示的なタンパク質には、細胞受容体、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。時には、本明細書に記載されているような細胞受容体には、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書に記載されているようなカーゴカセットは、いかなる種類のタンパク質産物をコードする導入遺伝子を含有しなくてもよいが、それは他の目的に有用である。例えば、例えば、宿主ゲノムの遺伝子のエキソンに挿入される場合、カーゴカセットは挿入部位にフレームシフトを作り出すために使用されてもよい。これは遺伝子産物の切り詰めまたはヌル変異につながってもよい。時には、内在性ゲノム配列を外来性ヌクレオチド配列で置き換え、それによって宿主ゲノムを操作するのにカーゴカセットが使用されてもよい。
本明細書に記載されているトランスポゾンは、順方向または逆向きのいずれかでカーゴカセットを有してもよい。多くの場合、カーゴカセットはその独自の方向性を有する。例えば、導入遺伝子を含有するカーゴカセットは5’から3’のコード配列を有する。プロモーターと遺伝子挿入とを含有するカーゴカセットは、遺伝子挿入の5’部位にプロモーターを有する。本明細書で使用されるとき「順方向」という用語は、カーゴカセットが二本鎖トランスポゾンのセンス鎖上でその方向性を維持する状況を指すことができる。本明細書で使用されるとき「逆方向」という用語は、カーゴカセットが二本鎖トランスポゾンのアンチセンス鎖上でその方向性を維持する状況を指すことができる。
ゲノム編集のためのシステム及び使用方法
本開示の別の態様はゲノム編集のためのシステムを提供する。システムはTcBusterトランスポザーゼとTcBusterトランスポゾンとを含むことができる。宿主細胞の内在性ゲノム領域を破壊または修飾し、外来性遺伝子を宿主ゲノムに挿入し、内在性ヌクレオチド配列を外来性ヌクレオチド配列で置き換える、またはそれらの任意の組み合わせがある、宿主細胞のゲノム編集にシステムを使用することができる。
ゲノム編集のためのシステムは、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼと、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを含むことができる。変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼは精製タンパク質として提供することができる。タンパク質の生産及び精製の技術は当業者に知られている。精製されたタンパク質は、トランスポゾンとは異なる容器に保管することができ、または同じ容器に保管することができる。
多くの場合、ゲノム編集のためのシステムは、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを含むことができる。時には、システムのポリヌクレオチドは、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAを含むことができる。代わりにまたはさらに、システムのポリヌクレオチドは、変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含むことができる。mRNAは、生体内転写及びRNA精製、試験管内転写、及びデノボ合成のような、しかし、これらに限定されない、当業者に周知の多数のアプローチによって作り出すことができる。多くの場合、mRNAは化学的に修飾することができる。化学的に修飾されたmRNAは、修飾されていないmRNAや天然のmRNAよりも分解に耐性であってもよい、またはさらに迅速に分解してもよい。多くの場合、mRNAの化学修飾はmRNAがさらに効率的に翻訳されようにしてもよい。mRNAの化学修飾は、当業者に利用可能な周知の技術によって、または供給業者によって実施することができる。
多くの応用については、安全性はhATトランスポザーゼ発現の持続時間が安全なトランスポゾン送達に介在するのに十分長いにすぎないことを決定づける。さらに、トランスポゾンベクターのレベルの高さと一致するhATトランスポザーゼ発現のパルスは最大の遺伝子送達を達成することができる。実施態様は、DNAプラスミドテンプレートからのRNA分子の試験管内転写に利用可能な技術を用いて行われる。RNA分子は、DNAコピーからの試験管内(例えば、無細胞)転写のための種々の方法を用いて合成することができる。これを行う方法は説明されており、市販されている。例えば、Life Technologiesを通じて入手可能なmMessage Machine試験管内転写キット。
サービスベースの料金で試験管内転写を実施することができる企業も数多くある。我々はまた、hAT発現用に化学的に修飾されたRNAが遺伝子導入に特に都合がいいことも見いだしている。これらの化学的に修飾されたRNAは、細胞性免疫反応を誘導せず、細胞性免疫反応も回避する独自の方法を用いて生成されたRNAである。これらのRNA調製物は、RNA二量体(Clean-Cap)を取り除き、細胞反応性(シュードウリシンの取り込み)は、我々に毒性を与えることなく、ヒトT細胞でさらに良好な一過性遺伝子発現を生じる(データは示さず)。RNA分子は、RNA形質移入について説明されている多くの方法のいずれかを用いて細胞に導入でき、それはふつう、ほとんどの細胞に対して無毒である。これを行う方法は説明されており、市販されている。例えば、Amaxaヌクレオフェクター、Neonエレクトロポレーター、Maxcyteプラットフォームである。
本明細書に記載されているようなトランスポゾンは発現ベクターに存在してもよい。多くの場合、発現ベクターはDNAプラスミドであることができる。時には、発現ベクターはミニサークルベクターであることができる。本明細書で使用されるとき「ミニサークルベクター」という用語は、すべてではないにしてもほとんどの原核生物ベクター部分(例えば、原核生物起源の制御配列または非機能的配列)を含まない小さな環状プラスミド誘導体を指すことができる。状況下では、形質移入またはエレクトロポレーションによって作り出された細胞への毒性は、本明細書に記載されているような「ミニサークル」を使用することによって軽減することができる。
ミニサークルベクターは、利用可能な周知の分子クローニング技術によって調製することができる。先ず、E.coliのような細菌における「親プラスミド」(トランスポゾン構築物のような挿入を伴う細菌プラスミド)を生成することができ、その後、部位特異的リコンビナーゼを誘導することができる。次に、これらの工程の後に、挿入物の両端にある2つのリコンビナーゼ標的配列を介して原核生物ベクターの部分を切除し、得られたミニサークルベクターを回収することができる。精製されたミニサークルは、形質移入またはリポフェクションによってレシピエント細胞に移され、例えばジェット注射によって分化した組織に移される。TcBusterトランスポゾンを含有するミニサークルは約1.5kb、約2kb、約2.2kb、約2.4kb、約2.6kb、約2.8kb、約3kb、約3.2kb、約3.4kb、約3.6kb、約3.8kb、約4kb、約4.2kb、約4.4kb、約4.6kb、約4.8kb、約5kb、約5.2kb、約5.4kb、約5.6kb、約5.8kb、約6kb、約6.5kb、約7kb、約8kb、約9kb、約10kb、約12kb、約25kb、約50kb、またはこれらの数値のいずれか2つの間の値のサイズを有することができる。時には、本明細書で提供されているようなTcBusterトランスポゾンを含有するミニサークルは大きくても2.1kb、大きくても3.1kb、大きくても4.1kb、大きくても4.5kb、大きくても5.1kb、大きくても5.5kb、大きくても6.5kb、大きくても7.5kb、大きくても8.5kb、大きくても9.5kb、大きくても11kb、大きくても13kb、大きくても15kb、大きくても30kb、または大きくても60kbのサイズを有することができる。
特定の実施形態では、本明細書に記載されているようなシステムは、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと、同じ発現ベクター、例えばプラスミドに存在するトランスポゾンとを含有してもよい。
本開示のさらに別の態様は遺伝子操作の方法を提供する。遺伝子操作の方法は、TcBusterトランスポザーゼとTcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを細胞に導入することを含むことができる。遺伝子操作の方法は無細胞環境でも実施することができる。無細胞環境における遺伝子操作の方法は、TcBusterトランスポザーゼと、トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンと、標的核酸とをウェルまたは試験管のような容器にて合わせることを含むことができる。
本明細書に記載されている方法は、本明細書で提供されている変異型TcBusterトランスポザーゼと、変異型TcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを細胞に導入することを含むことができる。ゲノム編集の方法は、本明細書で提供されている融合トランスポザーゼと、融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンとを細胞に導入することを含むことができる。
変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼは、タンパク質として、または変異型TcBusterトランスポザーゼもしくは融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドを介して細胞に導入することができる。上記で議論されたように、ポリヌクレオチドは変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼをコードするDNAまたはmRNAを含むことができる。
多くの場合、TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼはタンパク質として宿主細胞に形質移入することができ、タンパク質の濃度は少なくとも0.05nM、少なくとも0.1nM、少なくとも0.2nM、少なくとも0.5nM、少なくとも1nM、少なくとも2nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも500nM、少なくとも1μM、少なくとも2μM、少なくとも5μM、少なくとも7.5μM、少なくとも10μM、少なくとも15μM、少なくとも20μM、少なくとも25μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも200μM、少なくとも500μM、または少なくとも1μMであることができる。時には、タンパク質の濃度はおよそ1μM~およそ50μM、およそ2μM~およそ25μM、およそ5μM~およそ12.5μM、またはおよそ7.5μM~およそ10μMであることができる。
多くの場合、TcBusterトランスポサーゼまたは融合トランスポサーゼはポリヌクレオチドを介して宿主細胞に形質移入することができ、ポリヌクレオチドの濃度は、少なくとも約5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、80ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、150ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、220ng/ml、250ng/ml、280ng/ml、300ng/ml、500ng/ml、750ng/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、5μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、250μg/ml、300μg/ml、350μg/ml、400μg/ml、450μg/ml、500μg/ml、550μg/ml、600μg/ml、650μg/ml、700μg/ml、750μg/ml、または800μg/mlであることができる。時には、ポリヌクレオチドの濃度は約5~25μg/ml、25~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、250~500μg/ml、5~800μg/ml、200~800μg/ml、250~800μg/ml、400~800μg/ml、500~800μg/mlの間、またはそれらから導出可能な任意の範囲であることができる。多くの場合、トランスポゾンはトランスポナーゼとは別の発現ベクターに存在し、トランスポゾンの濃度は少なくとも約5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、80ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、150ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、220ng/ml、250ng/ml、280ng/ml、300ng/ml、500ng/ml、750ng/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、5μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、250μg/ml、300μg/ml、350μg/ml、400μg/ml、450μg/ml、500μg/ml、550μg/ml、600μg/ml、650μg/ml、700μg/ml、750μg/ml、または800μg/mlであることができる。時には、トランスポゾンの濃度は、約5~25μg/ml、25~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、250~500μg/ml、5~800μg/ml、200~800μg/ml、250~800μg/ml、400~800μg/ml、500~800μg/mlの間、またはそれらから導出可能な任意の範囲であることができる。トランスポゾンのトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドに対する比率は大きくても10000、大きくても5000、大きくても1000、大きくても500、大きくても200、大きくても100、大きくても50、大きくても20、大きくても10、大きくても5、大きくても2、大きくても1、大きくても0.1、大きくても0.05、大きくても0.01、大きくても0.001、大きくても0.0001、またはそれらの任意の2つの間の任意の数であることが可能である。
他のいくつかの場合では、トランスポゾン及びトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドは同じ発現ベクターに存在し、トランスポゾン及びトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドの双方を含有する発現ベクターの濃度は少なくとも約5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、80ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、150ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、220ng/ml、250ng/ml、280ng/ml、300ng/ml、500ng/ml、750ng/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、5μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、250μg/ml、300μg/ml、350μg/ml、400μg/ml、450μg/ml、500μg/ml、550μg/ml、600μg/ml、650μg/ml、700μg/ml、750μg/ml、または800μg/mlであることができる。時には、トランスポゾン及びトランスポナーゼをコードするポリヌクレオチドの双方を含有する発現ベクターの濃度は約5~25μg/ml、25~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、250~500μg/ml、5~800μg/ml、200~800μg/ml、250~800μg/ml、400~800μg/ml、500~800μg/mlの間、またはその中で導出可能な任意の範囲であることができる。
場合によっては、エレクトロポレーションによって細胞に導入されてもよいポリ核酸の量を変化させて、形質移入効率及び/または細胞生存率を最適化してもよい。場合によっては、約100pg未満の核酸が各細胞試料(例えば、エレクトロポレーションが行われる1以上の細胞)に加えられてもよい。場合によっては、少なくとも約100pg、少なくとも約200pg、少なくとも約300pg、少なくとも約400pg、少なくとも約500pg、少なくとも約600pg、少なくとも約700pg、少なくとも約800pg、少なくとも約900pg、少なくとも約1マイクログラム、少なくとも約1.5μg、少なくとも約2μg、少なくとも約2.5μg、少なくとも約3μg、少なくとも約3.5μg、少なくとも約4μg、少なくとも約4.5μg、少なくとも約5μg、少なくとも約5.5μg、少なくとも約6μg、少なくとも約6.5μg、少なくとも約7μg、少なくとも約7.5μg、少なくとも約8μg、少なくとも約8.5μg、少なくとも約9μg、少なくとも約9.5μg、少なくとも約10μg、少なくとも約11μg、少なくとも約12μg、少なくとも約13μg、少なくとも約14μg、少なくとも約15μg、少なくとも約20μg、少なくとも約25μg、少なくとも約30μg、少なくとも約35μg、少なくとも約40μg、少なくとも約45μg、または少なくとも約50μgの核酸が各細胞試料(例えば、エレクトロポレーションが行われる1以上の細胞)に加えられてもよい。例えば、エレクトロポレーションのために1マイクログラムのdsDNAが各細胞試料に加えられてもよい。場合によっては、最適な形質移入効率及び/または細胞生存率に必要とされるポリ核酸(例えば、dsDNA)の量は細胞の種類に特有であってもよい。
本明細書で開示されている主題は広範囲の種々の種類の宿主細胞のゲノム編集において使用されてもよい。好ましい実施形態では、宿主細胞は真核生物に由来してもよい。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物起源に由来してもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト起源に由来してもよい。
一般に、細胞は不死化細胞株または初代細胞に由来してもよい。
本明細書で相互交換可能に使用されるとき「細胞株」及び「不死化細胞株」という用語は、通常は無期限に増殖しないが、突然変異のために正常な細胞老化を回避してもよく、代わりに分裂を受け続けることができる生物由来の細胞の集団を指すことができる。本明細書で提供されている主題は、ヒトBC-1細胞、ヒトBJAB細胞、ヒトIM-9細胞、ヒトJiyoye細胞、ヒトK-562細胞、ヒトLCL細胞、マウスMPC-11細胞、ヒトRaji細胞、ヒトRamos細胞、マウスRamos細胞、ヒトRPMI8226細胞、ヒトRS4-11細胞、ヒトSKW6.4細胞、ヒト樹状細胞、マウスP815細胞、マウスRBL-2H3細胞、ヒトHL-60細胞、ヒトNAMALWA細胞、ヒトマクロファージ細胞、マウスRAW264.7細胞、ヒトKG-1細胞、マウスM1細胞、ヒトPBMC細胞、マウスBW5147(T200-A)5.2細胞、ヒトCCRF-CEM細胞、マウスEL4細胞、ヒトJurkat細胞、ヒトSCID.adh細胞、ヒトU-937細胞、またはそれらの細胞の任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、いろいろな一般的な確立された細胞株で使用されてもよい。
本明細書で使用されるとき「初代細胞」という用語及びその文法上の同等物は、生物、通常、動物または植物のような多細胞生物の生体組織から直接採取される細胞を指すことができる。多くの場合、初代細胞は試験管内での増殖のために確立されてもよい。場合によっては、初代細胞は生物から取り出されたばかりであり、形質移入の前にまだ試験管内での増殖が確立されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、初代細胞はまた、試験管内で増殖させることができ、すなわち、初代細胞はまた、生物から直接採取された細胞の増殖から生成される子孫細胞も含んでもよい。これらの場合、子孫細胞は確立された細胞株における細胞のような無期限の増殖特性を示さない。例えば、宿主細胞はヒト初代T細胞であってもよい一方で、形質移入に先立って、T細胞の増殖及び細胞集団の拡大を生じてもよい刺激因子に曝露されている。
遺伝子操作される細胞は、例えば、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、骨格筋、平滑筋、皮膚、骨、脂肪組織、毛髪、甲状腺、気管、胆嚢、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、静脈、食道、横隔膜、胃、直腸、副腎、気管支、耳、目、網膜、生殖器、視床下部、喉頭、鼻、舌、脊髄、または尿管、子宮、卵巣、精巣、及びそれらの任意の組み合わせのような、しかし、これらに限定されない組織または器官に由来する初代細胞であってもよい。特定の実施形態では、細胞には、血球細胞、毛包、角化細胞、性腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞、甲状腺刺激ホルモン分泌細胞、体細胞刺激ホルモン分泌細胞、プロラクチン産生細胞、クロム親和性細胞、傍濾胞細胞、グロムス細胞、メラニン細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、角膜角質細胞、網膜ミュラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア、上衣細胞、松果体細胞、肺細胞、クララ細胞、ゴブレット細胞、G細胞、D細胞、腸クロム親和性様細胞、胃主細胞、壁細胞、小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、パネート細胞、腸細胞、小襞細胞、肝細胞、肝星状細胞、胆嚢細胞、中心蝸牛細胞、膵臓星状細胞、膵臓α細胞、膵臓β細胞、膵臓δ細胞、膵臓F細胞、膵臓ε細胞、甲状腺副甲状腺、好酸球細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋芽細胞、筋細胞、筋サテライト細胞、腱細胞、心筋細胞、脂肪芽細胞、脂肪細胞、カハール介在細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、間質細胞、間質細胞、間質細胞、単純上皮細胞、有足細胞、腎臓近位尿細管ブラシ境界細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、ペグ細胞、生殖細胞、精巣卵子、リンパ球、骨髄細胞、内皮前駆細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、中胚葉性血管芽細胞、周皮壁細胞、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられてもよいが、これらに限定されない。多くの場合、操作される細胞は、例えば、胚性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、上皮幹細胞、気管支肺胞幹細胞、乳腺幹細胞、間葉系幹細胞、腸幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経堤幹細胞、精巣細胞、及びそれらの任意の組み合わせのような、しかし、これらに限定されない幹細胞であってもよい。時には、細胞は任意の種類の組織に由来する人工多能性幹細胞であることができる。
いくつかの実施形態では、遺伝子操作される細胞は哺乳動物細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は免疫細胞であってもよい。細胞の非限定的な例には、B細胞、好塩基球、樹状細胞、好酸球、ガンマデルタT細胞、顆粒球、ヘルパーT細胞、ランゲルハンス細胞、リンパ系細胞、自然リンパ系細胞(ILC)、マクロファージ、マスト細胞、巨核球、メモリーT細胞、単球、骨髄細胞、ナチュラルキラーT細胞、好中球、前駆細胞、形質細胞、前駆細胞、制御性T-細胞、T細胞、胸腺細胞、それらの任意の分化細胞または脱分化細胞、またはそれらの細胞の任意の混合物または組み合わせを挙げることができる。場合によっては、細胞はT細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は初代T細胞であってもよい。場合によっては、細胞は抗原提示細胞(APC)であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は初代APCであってもよい。本開示に関連するAPCは樹状細胞、マクロファージ、B細胞、他の非プロフェッショナルAPC、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
いくつかの実施形態では、細胞はILC(自然リンパ系細胞)であってもよく、ILCは、グループ1のILC、グループ2のILC、またはグループ3のILCであることができる。グループ1のILCは一般に、T-bet転写因子によって制御され、細胞内病原体に応答してIFN-γやTNF-αのような1型サイトカインを分泌する細胞として記載されてもよい。グループ2のILCは一般に、GATA-3及びROR-アルファ転写因子に依存し、細胞外寄生虫感染に応答して2型サイトカインを産生する細胞として記載されてもよい。グループ3のILCは一般に、ROR-ガンマt転写因子によって制御される細胞として記載されてもよく、IL-17及び/またはIL-22を産生する。
いくつかの実施形態では、細胞は所与の因子に対して陽性または陰性である細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、CD3+細胞、CD3-細胞、CD5+細胞、CD5-細胞、CD7+細胞、CD7-細胞、CD14+細胞、CD14-細胞、CD8+細胞、CD8-細胞、CD103+、細胞、CD103-細胞、CD11b+細胞、CD11b-細胞、BDCA1+細胞、BDCA1-細胞、L-セレクチン+細胞、L-セレクチン-細胞、CD25+、CD25-細胞、CD27+、CD27-細胞、CD28+細胞、CD28-細胞、CD44+細胞、CD44-細胞、CD56+細胞、CD56-細胞、CD57+細胞、CD57-細胞、CD62L+細胞、CD62L-細胞、CD69+細胞、CD69-細胞、CD45RO+細胞、CD45RO-細胞、CD127+細胞、CD127-細胞、CD132+細胞、CD132-細胞、IL-7+細胞、IL-7-細胞、IL-15+細胞、IL-15-細胞、レクチン様受容体G1陽性細胞、レクチン様受容体G1陰性細胞、またはそれらの分化細胞または脱分化細胞であってもよい。細胞によって発現される因子の例は、限定することを意図するものではなく、当業者は、細胞が当該技術分野で知られている任意の因子について陽性または陰性であってもよいことを理解するであろう。いくつかの実施形態では、細胞は2以上の因子について陽性であってもよい。例えば、細胞はCD4+及びCD8+であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は2以上の因子について陰性であってもよい。例えば、細胞はCD25-、CD44-、及びCD69-であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、1以上の因子について陽性であってもよく、且つ1以上の因子について陰性であってもよい。例えば、細胞はCD4+及びCD8-であってもよい。
本明細書で開示されている方法のいずれかで使用される細胞は、本明細書で開示されている細胞のいずれかの混合物(例えば、2以上の異なる細胞)であってもよいことが理解されるべきである。例えば、本開示の方法は細胞を含んでもよく、細胞はCD4+細胞及びCD8+細胞の混合物である。別の例では、本開示の方法は細胞を含んでもよく、細胞はCD4+細胞及びナイーブ細胞の混合物である。
本明細書で提供されているように、トランスポザーゼ及びトランスポゾンは多数のアプローチを介して細胞に導入することができる。本明細書で使用されるとき「形質移入」という用語及びその文法上の同等物は一般に、核酸が真核細胞に導入されるプロセスを指すことができる。主題に関連して使用することができる形質移入法には、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、カチオン性ポリマー、デンドリマー、リポソーム、微粒子銃、FuGene、直接音波負荷、細胞圧搾、光学形質移入、プロトプラスト融合、インパレフェクション、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。多くの場合、本明細書に記載されているトランスポザーゼ及びトランスポゾンはエレクトロポレーションを介して宿主細胞に形質移入することができる。時には、形質移入はヌクレオフェクション(Nucleofector(商標)技術としても知られている)のようなエレクトロポレーション法の変形を介して行うこともできる。本明細書で使用されるとき「エレクトロポレーション」という用語及びその文法上の同等物は、細胞膜の透過性を高めるために電場が細胞に印加され、化学物質、薬物、またはDNAが細胞に導入されることを可能にするプロセスを指すことができる。エレクトロポレーションの間、電場は非常に短い期間、例えば、5ミリ秒、10ミリ秒、及び50ミリ秒の「パルス」の形態で提供されることが多い。当業者が理解するように、エレクトロポレーションはパルス回転電場を使用することによって細胞の外膜で細孔を一時的に開く。試験管内及び生体内でのエレクトロポレーションに使用される方法及び装置も周知である。エレクトロポレーションが行われる細胞の種類及び細胞によって取り込まれる分子の物理的特性に応じて、例えば、パルス強度、パルス長、パルス数のような種々の電気的パラメーターを選択することができる。
適用
本明細書で提供されている主題、例えば、組成物(例えば、変異型TcBusterトランスポザーゼ、融合トランスポザーゼ、TcBusterトランスポザーゼ)、システム及び方法は、現代生活の種々の態様においてゲノム編集に関連する広範囲の用途で使用されてもよい。
特定の状況下では、本明細書に記載されている主題の利点には、コストの削減、規制上の考慮、低い免疫原性、及び複雑さの軽減が挙げられてもよいが、これらに限定されない。場合によっては、本開示の重要な利点は高い転位効率である。本開示の別の利点は、多くの場合、本明細書で提供されている転位システムが「調整可能」であることができ、例えば、転位は、無作為な挿入ではなく選択されたゲノム領域を標的とするように設計できることである。
1つの非限定的な例は、研究及び臨床応用のために遺伝子操作された細胞を作り出すことに関連する。例えば、上記で議論したように、遺伝子操作されたT細胞は、本明細書で提供されている主題を用いて作り出すことができ、それは、がん及び感染症のような、しかし、これらに限定されない種々の疾患と戦う人々を助けるのに使用されてもよい。
1つの特定の例には、本明細書で提供されている方法を用いた遺伝子操作された初代白血球の生成、及びそれを必要とする患者に遺伝子操作された初代白血球を投与することが挙げられる。遺伝子操作された初代白血球の生成は、トランスポゾンと、そのトランスポゾンを認識することができる、本明細書に記載されているような変異型TcBusterトランスポザーゼまたは融合トランスポザーゼとを白血球に導入し、それによって、遺伝子操作された白血球を生成することを含むことができる。多くの場合、トランスポゾンは導入遺伝子を含んでもよい。導入遺伝子は、細胞受容体、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン、及びそれらの任意の組み合わせであることができる。時には、細胞受容体には、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。他のいくつかの場合では、トランスポゾン及びトランスポザーゼは、内在性遺伝子、例えば、サイトカイン、免疫チェックポイントタンパク質、がん遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせを欠失させるまたは修飾するように設計される。初代白血球の遺伝子操作は、患者を病的状態にする感染性病原体またはがん細胞に対する免疫を促進するように設計することができる。
別の非限定的な例は、農業、食料生産、医学、及び薬剤学のために遺伝子操作した生物を作り出すことに関連する。遺伝子操作することができる種は、植物や動物を含むがこれらに限定されない幅広い範囲に及ぶ。遺伝子操作した作物や家畜のような遺伝子操作した生物はその生理学的特性の特定の態様で改変されてもよい。食用作物の例には、特定の害虫、病気、または環境条件への耐性、腐敗の減少、または化学処理への耐性(例えば、除草剤への耐性)、または作物の栄養プロファイルの改善が挙げられる。非食用作物の例には、医薬品、バイオ燃料、及び他の工業的に有用な商品の生産、と同様にバイオレメディエーションが挙げられる。家畜の例には、特定の寄生虫への耐性、特定の栄養要素の生産、成長率の増加、及び乳生産の増加が挙げられる。
本明細書で使用されるとき参照数値に関連する「約」という用語及びその文法上の同等物はその値からプラスまたはマイナス10%の値の範囲を含むことができる。例えば、「約10」の量には9~11の量が含まれる。参照数値に関連する「約」という用語はまた、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の値の範囲を含むこともできる。
以下の実施例は、本開示の範囲を限定することなく、記載されている実施形態をさらに説明する。
実施例1.材料及び方法
この実施例は、例示的な変異型TcBusterトランスポザーゼの生成及び評価に利用されるいくつかの方法を記載している。
TcBuster変異型調製のための部位特異的変異誘発
推定上の機能亢進のTcBuster(TcB)トランスポザーゼ変異型は、hAT及びBusterサブファミリーのヌクレオチド配列及びアミノ酸の配列比較によって同定された。Q5部位特異的突然変異誘発キット(New England BioLabs)をすべての部位特異的突然変異誘発に使用した。PCR変異誘発に続いて、PCR産物をGeneJET PCR精製キット(Thermo Fisher Scientific)で精製した。T4 DNAリガーゼ(New England BioLabs)を用いて、精製PCR産物の20uLライゲーション反応を行なった。5uLのライゲーション反応物をDH10Beta細胞での形質転換に使用した。Sequetechによる直接コロニー配列決定を用いて所望の変異の存在を確認した。確認された変異のDNAは、ZymoPUREプラスミドミニプレップキット(Zymo Research)を用いて調製した。
HEK-293T細胞の形質移入効率の測定
HEK-293T細胞は、形質移入の1日前に6ウェルプレートのウェルあたり300,000個の細胞でプレートに播いた。細胞は、製造元の指示書(Mirus Bio)に従って、TransIT X2試薬を用いて、500ngのトランスポゾンを運ぶmCherry-ピューロマイシンカセットと62.5ngのTcBトランスポザーゼで細胞に形質移入した。形質移入の2日後、細胞を3,000個の細胞/ウェルの密度でピューロマイシン(1ug/mL)と共に3つ組での6ウェルプレートのDMEM完全培地に再び播いた、またはピューロマイシン選択を行わずに再び播いた。導入遺伝子の安定した組込みは、ピューロマイシン処理した細胞のコロニー計数(薬物選択を生き延びた各細胞がコロニーを形成した)またはフローサイトメトリーによって評価した。コロニー計数のために、ピューロマイシン選択の2週間後、DMEM完全+ピューロマイシンの培地を取り除いた。細胞を1×PBSで洗浄し、細胞を1×クリスタルバイオレット溶液で10分間染色した。プレートをPBSで2回洗浄し、コロニーを数えた。
フローサイトメトリー分析については、導入遺伝子の安定した組込みを、薬剤選択を行わずに増殖させた細胞でのmCherry蛍光の検出によって評価した。形質移入した細胞を、形質移入後の示された時点で回収し、PBSで1回洗浄し、分析のために200uLのRDFII緩衝液に再浮遊させた。Novocyte(Acea Biosciences)を用いて細胞を分析し、PE-Texasレッドチャネルを用いてmCherryの発現を評価した。
HEK-293T細胞におけるTcBトランスポザーゼ変異型のスクリーニング
HEK-293T細胞は、形質移入の1日前に24ウェルプレートのウェルあたり75,000個の細胞でプレートに播いた。TransIT X2試薬を製造元の指示書(Mirus Bio)に従って2つ組で用いて500ngトランスポゾンと125ngトランスポザーゼで細胞に形質移入した。導入遺伝子の安定した組込みはmCherry蛍光の検出によって評価した。形質移入の14日後に細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、200uLのRDFII緩衝液に再浮遊させた。Novocyte(Acea Biosciences)を用いて細胞を分析し、PE-Texasレッドチャネルを用いてmCherryの発現を評価した。
CD3+T細胞におけるTcBusterトランスポゾンとトランスポザーゼの形質移入
CD3+T細胞は、ロイコパック(StemCellTechnologies)から濃縮し、凍結保存した。CD3+T細胞を解凍し、CD3/CD28 Dynabeads(ThermoFisher)を用いて、ヒト血清とIL-2、IL-15、及びIL-7サイトカインで補完したX-Vivo-15培地にて2日間活性化した。形質移入に先立って、CD3/CD28ビーズを取り除き、細胞を洗浄し、Neon形質移入システム(ThermoFisher)を用いてTcBusterトランスポゾン(TcBusterとSleeping Beauty IR/DR及びGFPのカーゴを運ぶミニサークル)及びRNA形態でのTcBusterまたはSleeping Beautyトランスポザーゼと共にエレクトロポレーションを行なった。生存率対照として、細胞に対してDNAまたはRNAなしで「パルス」エレクトロポレーションを行なった。エレクトロポレーションを行なった細胞を形質移入後21日間増殖させ、GFPカーゴの生存率が安定した組込みをフローサイトメトリーで評価した。生存率をSSC-A対FSC-Aによって測定し、パルスのみの対照に対して基準化し、GFPの発現は2、7、14、及び21日目にFITCチャネルを用いて評価した。
実施例2.例示的なトランスポゾン構築物
この試験の目的は、さまざまな例示的なTcBusterトランスポゾン構築物の転位効率を調べることだった。発明者らは、10のTcBuster(TcB)トランスポゾン(Tn)の構造(図1A)を比べて、哺乳類細胞におけるその転位効率を調べた。これらの10のTcB Tnは、使用するプロモーター(EFSとCMV)、IR/DR配列、及びトランスポゾンカーゴの方向が異なった。トランスポゾンはそれぞれ、2Aによって薬剤耐性遺伝子であるピューロマイシンに連結されたmCherryをコードする同一のカセットを含有していたので、形質移入された細胞は蛍光及び/またはピューロマイシンによる選択によって同定することができた。HEK-293T細胞に10のTcB Tn及びTcB野生型トランスポザーゼの1つで形質移入した(1つトランスポゾン:1つのトランスポザーゼの比)。導入遺伝子の安定した組込みは、形質移入後10~30日間のmCherry蛍光の検出によるフローサイトメトリーによって評価した(図1B)。
実験条件下で、導入遺伝子mCherryの安定した発現はEFSと比べてCMVプロモーターを用いて大幅に増強されることが見いだされた。転位は、配列1 IR/DRが使用された場合にのみ発生すると思われた。逆方向でのカーゴの転写は、順方向と比べてさらに大きな転位活性を促進することも見いだされた。
TcB Tn-8は10の試験Tnの間でフローサイトメトリーによって最大の転位効率を示した。TcB Tn-8の転位効率を確認するために、HEK-293T細胞にWTトランスポザーゼまたはV596A変異型トランスポザーゼと共にTcB Tn-8を形質移入した。形質移入の2日後、細胞を3,000個の細胞/ウェルの密度でピューロマイシン(1ug/mL)と共に3つ組の6ウェルプレートのDMEM完全培地に再び播いた。2週間の選択後、薬物選択を生き延びた各細胞はコロニーを形成し、mCherry発現についてそれを評価し(図3A)、導入遺伝子の安定した組込みを確認するためにそれを数えた(図3B~C)。TcB-Tn8の転位効率は、HEK-293T細胞におけるmCherryの発現及びピューロマイシン耐性コロニーによって確認された。
実施例3.例示的なトランスポザーゼ変異型
この試験の目的は、TcBusterトランスポザーゼ変異型を生成し、それらの転位効率を調べることだった。
この目的のために、発明者らは、野生型TcBトランスポザーゼのcDNA及びアミノ酸配列を他の同様のトランスポザーゼと比較することによってコンセンサス配列を生成した。比較のために、Sleeping beautyは13の類似したトランスポザーゼの配列比較によって、及びSPINは8つの別々の生物由来のSPIN様トランスポザーゼの配列比較によって復帰させた。SPIN及びTcBusterは豊富なhATファミリーのトランスポザーゼの一部である。
hATトランスポゾンファミリーは、has hobo、hermes、及びTol2のようなACと、SPINやTcBusterのようなBusterサブファミリーとの2つのサブファミリーから成る。TcBusterのアミノ酸配列を、AC及びBusterサブファミリーメンバーの双方のアミノ酸配列に対して並べ、機能亢進置換の標的であってもよいTcBusterに保存されていない重要なアミノ酸を特定した。TcBusterのACサブファミリーのメンバーであるHermes、Hobo、Tag2、Tam3、Herves、Restless、及びTol2に対する配列比較は、TcBusterで置換され得る高度に保存された領域内のアミノ酸を我々が特定するのを可能にした(図4)。さらに、TcBusterのBusterサブファミリーに対する配列比較は、置換されてもよい多数の候補アミノ酸をもたらした(図5)。候補TcBトランスポザーゼ変異型は、表9に記載されている部位突然変異を含むオリゴヌクレオチドを用いて生成された。次に、変異型の配列を検証し、pcDNA-DEST40発現ベクター(図6)にクローニングし、形質移入の前にミニプレップを行なった。


TcBトランスポザーゼ変異型の転位効率を調べるために、HEK-293T細胞に2つ組にてWTトランスポザーゼまたはV596A変異型トランスポザーゼ、または候補トランスポザーゼ変異型と共にTcB Tn-8(mCherry-ピューロマイシンカセット)で形質移入した。細胞をDMEM完全培地(薬剤選択なし)で増殖させ、mCherryの発現を形質移入後14日目にフローサイトメトリーで評価した。野生型トランスポザーゼよりも大きな転位効率を有する20を超えるTcBトランスポザーゼ変異型が同定された(図7)。これらの調べた変異型の中で、3つのアミノ酸置換、D189A、V377T、及びE469Kの組み合わせを含有する変異型トランスポザーゼ1つは、それぞれの単一置換を含有する変異型と比べて転位活性の実質的な上昇をもたらすことが発見された。高い転位活性を持つ変異型には、とりわけ、K573E/E578L、I452F、A358K、V297K、N85S、S447E、E247K、及びQ258Tも含まれた。
これらの調べた変異型の中で、触媒三連構造アミノ酸(D234、D289、及びE589)の1つの近傍でのリシン(K)またはアルギニン(R)のような正に荷電したアミノ酸への置換のほとんどは転位を増加させることが発見された。加えて、正電荷の除去、または負電荷の追加は転位を減らした。これらのデータは、特にこれらのアミノ酸が正に荷電したアミノ酸に変異している場合、触媒ドメインに近いアミノ酸がTcBの転位活性を促進するのに役立ってもよいことを示唆している。
機能亢進TcBuster変異型D189A/V377T/E469K(配列番号78)のアミノ酸配列を図12に示す。この変異型のさらなる変異分析が実施されるであろう。図13で説明されるように、TcBuster変異型D189A/V377T/E469K/I452F(配列番号79)が構築されるであろう。図14で説明されるように、TcBuster変異型D189A/V377T/E469K/N85S(配列番号80)が構築されるであろう。図15で説明されるように、TcBuster変異型D189A/V377T/E469K/S358K(配列番号81)が構築されるであろう。図16で説明されるように、TcBuster変異型D189A/V377T/E469K/K573E/E578L(配列番号13)が構築されるであろう。図12~16のそれぞれにて、TcBusterのドメインは以下:ZnF-BED(小文字)、DNA結合/オリゴ化ドメイン(太字)、触媒ドメイン(下線付き文字)、及び挿入ドメイン(斜体文字)のように示され;コアのD189A/V377T/E469Kの置換は、大きく、太字で、イタリック体で、下線付きの文字で示され;追加の置換は大きな太字で示される。これらの構築物のそれぞれは、すでに記載されたように調べられ、野生型TcBusterと比べて機能亢進を示すことが予想される。
実施例4.タグを含有する例示的な融合トランスポザーゼ
この試験の目的は、融合TcBusterトランスポザーゼを生成してその転位効率を調べることだった。一例として、タンパク質タグ、GSTまたはPESTのドメインをTcBusterトランスポザーゼのN末端に融合させて融合TcBusterトランスポザーゼを生成した。配列番号10によってコードされる柔軟なリンカーGGSGGSGGSGGSGTS(配列番号9)を用いて、GSTドメイン/PESTドメインをTcBusterトランスポザーゼから分離した。この柔軟性リンカーの存在は融合タンパク質における非特異的相互作用を最小限に抑えるので、その活性を高めてもよい。例示的な融合トランスポザーゼは、上記に記載されているようなTcB Tn-8と共に形質移入され、転位効率は、フローサイトメトリーによる14日目のmCherry発現によって測定された。転位効率はGFPドメインまたはPESTドメインのタグ付けによって影響を受けなかった(図9)ということは、トランスポザーゼのDNA結合ドメインをTcBusterカーゴの直接組込みに融合して安全域部位のようなゲノム部位を選択することが安全な組込みプロファイルを可能にするTcBusterにとって実行可能な選択肢であり得ることを示唆している。
実施例5.TALEドメインを含む例示的な融合トランスポザーゼ
この試験の目的は、TALEドメインを含む融合TcBusterトランスポザーゼを生成し、融合トランスポザーゼの転位活性を調べることである。TALE配列(配列番号11)は、ヒトゲノムのヒトAAVS1(hAAVS1)部位を標的とするように設計される。したがって、TALE配列は、野生型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号1)のN末端に融合されて融合トランスポザーゼを生成する。配列番号12によってコードされる柔軟なリンカーGly4Ser2(配列番号88)を用いて、TALEドメインとTcBusterトランスポザーゼ配列を分離する。例示的な融合トランスポザーゼは配列番号8のアミノ酸配列を有する。
例示的な融合トランスポザーゼは、エレクトロポレーションの助けを借りて上記に記載されているようなTcB Tn-8と共にHela細胞に形質移入されるであろう。TcB Tn-8はレポーター遺伝子mCherryを含む。形質移入効率は、mCherry陽性細胞を数える形質移入の2日後のフローサイトメトリーによって調べることができる。さらに、ゲノムにおけるmCherry遺伝子の挿入部位を評価するために、次世代配列決定が実施されるであろう。設計されたTALE配列は、hAAVS1部位の近くのゲノム部位でのmCherry遺伝子の標的挿入に介在することができると予想される。
実施例6.初代ヒトT細胞における転位効率
この試験の目的は、初代CD3+T細胞を操作するTcBusterトランスポゾンシステムを開発することだった。この目的のために、発明者らはGFP導入遺伝子を運ぶ例示的なTcBusterトランスポゾンをミニサークルプラスミドに組み込んだ。活性化されたCD3+T細胞でTcBミニサークルトランスポゾン及び野生型TcBusterトランスポザーゼのようなRNAトランスポザーゼと共にエレクトロポレーションを行ない、実施例2に記載されているように例示的な変異型を選択した。導入遺伝子の発現をエレクトロポレーション後21日間フローサイトメトリーによってモニターした。
TcBトランスポゾンの転位は、野生型TcBusterトランスポザーゼ及びV596A変異トランスポザーゼと比べて、形質移入の14日後に、例示的な変異型V377T/E469K及びV377T/E469K/D189Aを用いてほぼ2倍に改善されることが見いだされた(図10A)。さらに、機能亢進変異型V377T/E469K及びV377T/E469K/D189Aによる平均転位効率は、SB11(平均=8.4)と比べてそれぞれ2倍(平均=20.2)及び3倍(平均=24.1)効率的だった。
次に、CD3+T細胞の生存率をエレクトロポレーションの2日後にミニサークルTcBトランスポゾンとRNAトランスポザーゼで評価した。CD3+T細胞にTcBミニサークルとRNAトランスポザーゼを形質移入すると、生存率が中程度に低下することが見いだされた;しかしながら、細胞は7日目までに生存率を急速に回復した(図10B)。これらの実験は、初代T細胞の細胞工学における本開示のいくつかの実施形態に係るTcBusterトランスポゾンシステムの能力を実証している。
実施例7.がん患者の治療のためのキメラ抗原受容体修飾T細胞の生成。
前述のTcB Tn-8構築物を含有するミニサークルプラスミドは、トランスポゾンの逆向き反復配列の間でキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を内部に持つように設計することができる。CARは、CD137(T細胞における共刺激受容体[4-1BB])及びCD3-ゼータ(T細胞抗原受容体のシグナル伝達成分)シグナル伝達ドメインと一体となってB細胞抗原CD19に特異性を有するように設計することができる。
自己T細胞は、がん、例えば、白血病の患者の末梢血から得られるであろう。T細胞は、赤血球を溶解し、PERCOLL(商標)勾配を介して遠心分離によって単球を枯渇させることにより単離することができる。CD3+T細胞は、DYNABEAD M-450 CD3/CD28Tのような抗CD3/抗CD28結合ビーズを使用したフローサイトメトリーによって単離することができる。単離されたT細胞はGMPガイダンスに従って標準的な条件下で培養されるであろう。
初代T細胞の遺伝子操作は、上記に記載されているように、アミノ酸置換V377T、E469K、D189A、K573E及びE578Lを含む変異型TcBusterトランスポザーゼ(配列番号13)と、CARを含むTcBuster Tn-8トランスポザーゼとを用いて行われるであろう。T細胞は、変異型TcBusterトランスポザーゼと、CARを含有するTn-8トランスポザーゼとの存在下でエレクトロポレーションが行なわれるであろう。形質移入後、T細胞は活性化及び増殖のために免疫刺激試薬(例えば、抗CD3抗体やIL-2、IL-7、IL-15)で処理されるであろう。形質移入の検証は、形質移入の2週間後に次世代配列決定によって実施されるであろう。形質移入されたT細胞における形質移入効率及び導入遺伝子の負荷は、治療計画の設計を支援するように決定することができる。危険な導入遺伝子の挿入部位が配列決定の結果によって明らかにされれば、安全上の懸念を排除するために特定の措置も講じられるであろう。
キメラ抗原受容体修飾T細胞(CAR-T細胞)をがん患者に注入して戻すことは、導入遺伝子の挿入と臨床的に望ましいレベルへのCAR-T細胞の試験管内増殖との検証後に開始されるであろう。
注入用量は、がんの病期、患者の治療歴、CBC(全血球計算)及び治療当日の患者のバイタルサインを含むが、これらに限定されない多数の因子によって決定されるであろう。注入用量は、疾患の進行、患者の反発反応、及び他の多くの医学的因子に応じて増加してもよいし、または減少してもよい。その間、治療計画中に、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析が実行され、血液及び骨髄にてキメラ抗原受容体T細胞を検出するであろう。qPCR分析は、投与戦略及び他の治療計画に関する医学的決定を下すために利用することができる。



















本開示の好ましい実施形態を示し、本明細書に記載しているが、そのような実施形態が、例示として提供されるにすぎないことは当業者に明らかである。当業者は、本開示から逸脱せずに、数多くの変形、変更及び置換を思いつくであろう。本明細書で開示されている主題を実践することにおいて、本明細書に記載されている主題の実施形態に対する種々の代替物が採用されてもよいことが理解されるべきである。以下のクレームが本発明の範囲を定義し、これらのクレームの範囲内の方法及び構造、ならびにそれらの等価物がそれによって包含されることが意図される。
[配列表フリーテキスト]
配列82の内容は以下に示す通りである。
<210> 82
<211> 10
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic oligonucleotide
<220>
<221> modified_base
<222> (5)..(5)
<223> a, c, t, or g
<220>
<221> misc_feature
<222> (5)..(5)
<223> n is a, c, g, or t
<400> 82
atgcntagat 10
配列208の内容は以下に示す通りである。
<210> 208
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (2)..(2)
<223> X = K or R
<220>
<221> misc_feature
<222> (3)..(14)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (15)..(18)
<223> X = K or R
<400> 208
Lys Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5 10 15
Xaa Xaa
配列209の内容は以下に示す通りである。
<210> 209
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (2)..(2)
<223> X = K or R
<220>
<221> misc_feature
<222> (3)..(13)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (14)..(17)
<223> X = K or R
<400> 209
Lys Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5 10 15
Xaa
配列210の内容は以下に示す通りである。
<210> 210
<211> 16
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (2)..(2)
<223> X= K or R
<220>
<221> misc_feature
<222> (3)..(12)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (13)..(16)
<223> X= K or R
<400> 210
Lys Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5 10 15
配列211の内容は以下に示す通りである。
<210> 211
<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (2)..(2)
<223> X= K or R
<220>
<221> misc_feature
<222> (3)..(11)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (12)..(15)
<223> X= K or R
<400> 211
Lys Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5 10 15
配列212の内容は以下に示す通りである。
<210> 212
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (2)..(2)
<223> X= K or R
<220>
<221> misc_feature
<222> (3)..(10)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (11)..(14)
<223> X= K or R
<400> 212
Lys Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5 10
配列213の内容は以下に示す通りである。
<210> 213
<211> 13
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (2)..(2)
<223> X= K or R
<220>
<221> misc_feature
<222> (3)..(9)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> MISC_FEATURE
<222> (10)..(13)
<223> X= K or R
<400> 213
Lys Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5 10
野生型(WT)TcBusterトランスポザーゼ及び例示的なTcBusterトランスポゾンで形質移入した細胞におけるmCherry陽性細胞の比率によって測定された、いくつかの例示的なTcBusterトランスポゾンベクター構築物の転位効率を示す図である。 図1-1の続き。 例示的なTcBuster IR/DR配列1(それぞれ出現順に配列番号3~4)及び配列2(それぞれ出現順に配列番号5~6)のヌクレオチド配列比較を示す図である。 図2-1の続き。 Aは例示的なTcBusterトランスポゾンTn-8(puro-mCherryカセットを含有する;図1に示す)及び野生型TcBusterトランスポザーゼまたはV596A変異型トランスポザーゼ(V596A置換を含有する)による形質移入の2週間後のHEK-293T細胞の代表的な明視野画像及び蛍光画像を示す。形質移入された細胞を、形質移入の2日後に1μg/mLのピューロマイシンと共に6ウェルプレートに入れ、コロニーの定量のために形質移入の2週間後に固定し、クリスタルバイオレットで染色した。Bは形質移入の2週間後の6ウェルプレートにおける形質移入された細胞コロニーの代表的な写真を示す。Cは形質移入の2週間後の各形質移入条件ごとのコロニーの定量を示すグラフである。 ACサブファミリーにおけるいくつかのトランスポザーゼに対比させたTcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列の配列比較を示し、アミノ酸保存の領域のみが示されている(それぞれ、出現順に配列番号89~194)。 Busterサブファミリーにおける多数の他のトランスポザーゼメンバーに対比させたTcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列の配列比較を示す図である(それぞれ、出現順に配列番号195~203)。特定の例示的なアミノ酸置換をタンパク質配列の上に示し、併せて、配列比較の上に示す比率はTcBuster配列に置換されていると考えられるアミノ酸を含有する他のBusterサブファミリーメンバーの比率であり、下に示す比率はその位置で標準的なTcBusterアミノ酸を含有する他のBusterサブファミリーメンバーの比率である。 TcBusterトランスポザーゼ変異型を調べるのに使用された例示的な発現ベクターpcDNA-DEST40のベクターマップを示す。 例示的なトランスポザーゼ変異型と共にTcBusterトランスポゾンTn-8(図1に示す)で形質移入したHEK-293T細胞におけるmCherry陽性細胞の比率によって測定される、例示的なTcBusterトランスポザーゼ変異型の転位効率を定量化するグラフである。 任意のリンカーによって連結されたDNA配列特異的結合ドメインとTcBusterトランスポザーゼ配列とを含有する1つの例示的な融合トランスポザーゼを示す。 タグを含有する例示的なトランスポザーゼと共にTcBusterトランスポゾンTn-8(図1に示す)で形質移入したHEK-293T細胞におけるmCherry陽性細胞の割合によって測定したときの、異なるタグを含有する例示的なTcBusterトランスポザーゼの転位効率を定量化するグラフである。 AはGFP陽性細胞の比率によって測定されたときの、ヒトCD3+T細胞における例示的なTcBuster転位システムの転位効率を定量化するグラフである。Bはフローサイトメトリーによる形質移入の2日後及び7日後の形質移入されたT細胞の生存率を定量化するグラフである。データはパルス制御に関連する。 特定のアミノ酸に注釈が付けられた野生型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す(配列番号1)。 アミノ酸置換D189A/V377T/E469K(配列番号78)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。 アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/I452K(配列番号79)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。 アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/N85S(配列番号80)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。 アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/A358K(配列番号81)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。 アミノ酸置換D189A/V377T/E469K/K573E/E578L(配列番号13)を含有する変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。

Claims (23)

  1. 完全長の配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、およびE469Kを有し、ならびに少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有する変異型TcBusterトランスポザーゼ。
  2. 前記変異型TcBusterトランスポザーゼが、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する、請求項1に記載の変異型TcBusterトランスポザーゼ。
  3. 配列番号1に従って番号付けされる場合、前記少なくとも1つの追加のアミノ酸置換が、N85S、D99A、N209E、T219S、V356L、C470M、A472P、K490I、C512E、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の変異型TcBusterトランスポザーゼ。
  4. 配列番号1に従って番号付けされる場合、前記少なくとも1つの追加のアミノ酸置換が、D189A、E247K、Q258T、V297K、A358K、S447E、I452F、K573E、E578L、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の変異型TcBusterトランスポザーゼ。
  5. 前記変異型TcBusterトランスポザーゼのアミノ酸配列が、完全長の配列番号1と少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である、請求項1に記載の変異型TcBusterトランスポザーゼ。
  6. TcBusterトランスポザーゼ配列と、1以上のDNA配列特異的結合ドメインおよび追加の核局在化シグナル配列とを含む融合トランスポザーゼであって、前記TcBusterトランスポザーゼ配列が、完全長の配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有し、配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、およびE469Kを含み、および配列番号1に従って番号付けされる場合、N85S、D99A、D189A、N209E、T219S、E247K、Q258T、V297K、V356L、A358K、S447E、I452F、C470M、A472P、K490I、C512E、K573E、E578L、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を含む、融合トランスポザーゼ。
  7. 前記DNA配列特異的結合ドメインが、TALEドメイン、ジンクフィンガードメイン、AAV Rep DNA結合ドメイン、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項6に記載の融合トランスポザーゼ。
  8. 前記TcBusterトランスポザーゼ配列が、アミノ酸配列の配列番号1を有する野生型TcBusterトランスポザーゼと比べて高い転位効率を有する、請求項6に記載の融合トランスポザーゼ。
  9. 前記TcBusterトランスポザーゼ配列、ならびに1以上のDNA配列特異的結合ドメインおよび/または追加の核局在化シグナル配列が、リンカーによって分離されている、請求項6に記載の融合トランスポザーゼ。
  10. 前記リンカーが、3から50のアミノ酸を含み、および/または配列番号9を含む、請求項9に記載の融合トランスポザーゼ。
  11. 請求項6に記載の融合トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド。
  12. 請求項1に記載の変異型TcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドであって、以下の1以上を含む、ポリヌクレオチド:
    a)前記変異型TcBusterトランスポザーゼまたは請求項6に記載の融合トランスポザーゼをコードする、DNA、未修飾のメッセンジャーRNA(mRNA)、または化学的に修飾されたmRNA;
    b)完全長の配列番号204または207と少なくとも90%同一または相補性である核酸配列;
    c)DNAベクター;
    d)ミニサークルプラスミド;および/または
    e)前記変異型TcBusterトランスポザーゼまたは請求項6に記載の融合トランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンをコードする核酸配列。
  13. 前記ポリヌクレオチドがヒト細胞における発現のためにコドンで最適化される、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  14. 請求項12に記載のポリヌクレオチドを含有する細胞。
  15. 変異型TcBusterトランスポザーゼ、前記変異型TcBusterトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド、および変異型TcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを細胞に導入することを含むゲノム編集の方法であって、前記変異型TcBusterトランスポザーゼは、完全長の配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号1に従って番号付けされる場合、アミノ酸置換V377T、およびE469Kを含み、および配列番号1に従って番号付けされる場合、N85S、D99A、D189A、N209E、T219S、E247K、Q258T、V297K、V356L、A358K、S447E、I452F、C470M、A472P、K490I、C512E、K573E、E578L、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を含む、ゲノム編集のex vivo方法。
  16. 前記導入することが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、カチオン性ポリマー、デンドリマー、リポソーム、微粒子銃、FuGene(登録商標)、直接音波負荷、細胞圧搾、光学形質移入、プロトプラスト融合、インパレフェクション、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、またはそれらの任意の組み合わせの助けを借りて細胞に形質移入することを含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記細胞が、対象から得られた初代細胞を含む、請求項15に記載の方法。
  18. 前記初代細胞が免疫細胞である、請求項17に記載の方法。
  19. 請求項1に記載の変異型TcBusterトランスポザーゼ、および前記変異型TcBusterトランスポザーゼによって認識可能なトランスポゾンを含む、ゲノム編集のためのシステム。
  20. 前記トランスポゾンが2つの逆向き反復配列の間に配置されたカーゴカセットを含む、請求項19に記載のシステム。
  21. 前記2つの逆向き反復配列の左の逆向き反復配列が、配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項20に記載のシステム。
  22. 前記2つの逆向き反復配列の右の逆向き反復配列が、配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項20に記載のシステム。
  23. 前記カーゴカセットが逆方向に存在する、請求項20に記載のシステム。
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