JP2024040730A - 非水電解質蓄電素子、機器、非水電解質蓄電素子の使用方法及び非水電解質蓄電素子の製造方法 - Google Patents

非水電解質蓄電素子、機器、非水電解質蓄電素子の使用方法及び非水電解質蓄電素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】非水電解質蓄電素子であって、充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子、このような非水電解質蓄電素子を備える機器、このような非水電解質蓄電素子の使用方法、及びこのような非水電解質蓄電素子の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子は、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li+)以下であり、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質とを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質蓄電素子、機器、非水電解質蓄電素子の使用方法及び非水電解質蓄電素子の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極と、この電極間に介在する非水電解質とを有し、両電極間で電荷輸送イオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。非水電解質二次電池以外の非水電解質蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
特許文献1には、リチウム金属複合酸化物を有する正極と、黒鉛を有する負極とを備えた非水電解質二次電池であって、上記リチウム金属複合酸化物が、平均粒径が50nmから5μmの一次粒子が凝集してなる二次粒子を含む非水電解質二次電池の発明が記載されている。引用文献1においては、実施例として、非水電解質二次電池に対して、充電終止電圧4.4V、放電終止電圧2.5Vでの充放電サイクル試験を行うことにより容量維持率が評価されている。
国際公開第2019/163483号
非水電解質蓄電素子においては、放電終止電圧を低く設定することにより、非水電解質蓄電素子から取り出せる電気量を大きくすること、すなわち放電容量を大きくすることができる。しかし、特に、二次粒子を含む正極活物質が用いられた非水電解質蓄電素子に対して放電終止電圧を低く設定し、正極電位が低い電位に至る充放電を繰り返した場合、充放電の繰り返しに伴う放電容量の低下が生じ易くなる。
本発明の目的は、二次粒子を含む正極活物質が用いられ、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子であって、充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子、このような非水電解質蓄電素子を備える機器、このような非水電解質蓄電素子の使用方法、及びこのような非水電解質蓄電素子の製造方法を提供することである。
本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子は、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下であり、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質とを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である。
本発明の他の一側面に係る機器は、本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子を備える。
本発明の他の一側面に係る非水電解質蓄電素子の使用方法は、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質とを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である非水電解質蓄電素子に対し、正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下に至るまで放電を行うことを備える。
本発明の他の一側面に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極を準備することと、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質を準備することとを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子の製造方法である。
本発明のいずれかの一側面によれば、二次粒子を含む正極活物質が用いられ、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子であって、充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子、このような非水電解質蓄電素子を備える機器、このような非水電解質蓄電素子の使用方法、及びこのような非水電解質蓄電素子の製造方法を提供することができる。
図1は、非水電解質蓄電素子の一実施形態を示す透視斜視図である。 図2は、非水電解質蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。
初めに、本明細書によって開示される非水電解質蓄電素子、機器、非水電解質蓄電素子の使用方法及び非水電解質蓄電素子の製造方法の概要について説明する。
(1)本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子は、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下であり、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質とを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である。
上記(1)に記載の非水電解質蓄電素子は、二次粒子を含む正極活物質が用いられ、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子であって、充放電サイクル後の容量維持率が高い。この理由は定かではないが、以下の理由が推測される。二次粒子を含む正極活物質が用いられた従来の非水電解質蓄電素子に対して正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下に至る充放電を行う場合、二次粒子である正極活物質の一次粒子間の粒界での割れが生じ易い。このような正極活物質の割れが充放電の繰り返しによって進行し、放電容量の低下を引き起こす。これに対し、非水電解質がフルオロエチレンカーボネートを含む場合、正極活物質の表面にフルオロエチレンカーボネートに由来するLiFを主成分とする硬い被膜が形成されるため、二次粒子である正極活物質の割れが抑制され、放電容量の低下が抑制される。一方、非水電解質におけるフルオロエチレンカーボネートの含有量が4質量%を超える場合、正極活物質の表面にフルオロエチレンカーボネートに由来する被膜が過剰に形成され抵抗が高くなること等により、放電容量が逆に低下する。このような理由から、非水電解質におけるフルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である上記(1)に記載の非水電解質蓄電素子は、二次粒子を含む正極活物質が用いられ、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子であるにもかかわらず、充放電サイクル後の容量維持率が高いと推測される。
「通常使用時」とは、当該非水電解質蓄電素子について推奨され、又は指定される充放電条件を採用して当該非水電解質蓄電素子を使用する場合をいう。放電条件は、例えば当該非水電解質蓄電素子を使用する機器の設定等によって定まる。
「二次粒子」とは、複数の一次粒子が凝集してなる粒子をいう。「一次粒子」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)での観察において、外観上に粒界が観測されない粒子である。
(2)上記(1)に記載の非水電解質蓄電素子において、上記非水電解質がビニレンカーボネートをさらに含有することが好ましい。
上記(2)に記載の非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の容量維持率がより高い。
(3)本発明の他の一側面に係る機器は、上記(1)又は(2)に記載の非水電解質蓄電素子を備える。
上記(3)に記載の機器に備わる非水電解質蓄電素子は、二次粒子を含む正極活物質が用いられ、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子であって、充放電サイクル後の容量維持率が高い。従って、上記(3)に記載の機器は長期にわたって使用することができ、また、非水電解質蓄電素子の交換頻度を下げることができる。
(4)本発明の他の一側面に係る非水電解質蓄電素子の使用方法は、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質とを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である非水電解質蓄電素子に対し、正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下に至るまで放電を行うことを備える。
上記(4)に記載の非水電解質蓄電素子の使用方法は、非水電解質蓄電素子に二次粒子を含む正極活物質が用いられており、非水電解質蓄電素子の正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下に至るにもかかわらず、充放電サイクル後の容量維持率が高い。従って、上記(4)に記載の非水電解質蓄電素子の使用方法は、非水電解質蓄電素子を長期にわたって使用することができ、また、非水電解質蓄電素子の交換頻度を下げることができる。
(5)本発明の他の一側面に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極を準備することと、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質を準備することとを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子の製造方法である。
上記(5)に記載の非水電解質蓄電素子の製造方法によれば、二次粒子を含む正極活物質が用いられ、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子であって、充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子を製造することができる。
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子、蓄電装置、機器、非水電解質蓄電素子の使用方法、非水電解質蓄電素子の製造方法、及びその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
<非水電解質蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子(以下、単に「蓄電素子」ともいう。)は、正極、負極及びセパレータを有する電極体と、非水電解質と、上記電極体及び非水電解質を収容する容器と、を備える。電極体は、通常、複数の正極及び複数の負極がセパレータを介して積層された積層型、又は、正極及び負極がセパレータを介して積層された状態で巻回された巻回型である。非水電解質は、正極、負極及びセパレータに含浸した状態で存在する。非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。
(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層とを有する。
正極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するか否かは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10-2Ω・cmを閾値として判定する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H-4160(2006年)に規定されるA1085、A3003、A1N30等が例示できる。
正極基材の平均厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材の強度を高めつつ、非水電解質蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
中間層は、正極基材と正極活物質層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電剤を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、バインダ及び導電剤を含む。
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層は、必要に応じて、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
正極活物質は、粒子状である。正極活物質は、二次粒子を含む。二次粒子である正極活物質は、一次粒子からなる正極活物質と比べて反応抵抗が低い等の利点を有する。また、二次粒子である正極活物質は、一次粒子からなる正極活物質と比べて入手が容易であり安価である傾向にある。
正極活物質には、一つの一次粒子からなる粒子が含まれていてもよい。但し、正極活物質層に含まれる全ての正極活物質において、60質量%以上が二次粒子であることが好ましく、80質量%以上が二次粒子であることがより好ましく、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、さらには99.9質量%以上が二次粒子であることがさらに好ましい。
正極活物質の平均一次粒子径に対する平均粒径の比は、例えば5以上100以下であってもよく、8以上60以下であってもよく、10以上40以下であってもよい。なお、「正極活物質の平均一次粒子径に対する平均粒径の比」における「平均一次粒子径」及び「平均粒径」は、正極活物質層に含まれる全ての正極活物質を測定対象として測定される値である。すなわち、正極活物質が二次粒子以外の粒子を含む場合も、二次粒子のみを選別して測定される値ではない。
正極活物質の「平均一次粒子径」とは、SEMにおいて観察される正極活物質を構成する任意の50個の一次粒子における各一次粒子径の平均値である。一次粒子における一次粒子径は、次のようにして求める。一次粒子の最小外接円の中心を通り最も短い径を短径とし、上記中心を通り短径に直交する径を長径とする。長径と短径との平均値を粒子径とする。最も短い径が2本以上存在する場合、直交する径が最も長いものを短径とする。
正極活物質の「平均粒径」とは、JIS-Z-8815(2013年)に準拠し、正極活物質を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値(D50:メジアン径)である。なお、上記測定に基づく平均粒径は、粒子のSEM像から、極端に大きい粒子及び極端に小さい粒子を避けて50個の粒子を抽出して測定する各粒子の粒子径(二次粒子の場合は二次粒子径)の平均値とほぼ一致することが確認されている。このSEM像からの測定に基づく各粒子の粒子径は、次のようにして求める。SEM像は、上記した「平均一次粒子径」を求める場合に準じて取得する。各粒子の最小外接円の中心を通り最も短い径を短径とし、上記中心を通り短径に直交する径を長径とする。長径と短径との平均値を各粒子の粒子径とする。最も短い径が2本以上存在する場合、直交する径が最も長いものを短径とする。
平均一次粒子径及び平均粒径を測定する正極活物質は、充放電前又は以下の方法により完全放電状態としたときの正極活物質とする。まず、非水電解質蓄電素子を、0.05Cの電流で通常使用時の充電終止電圧となるまで定電流充電し、満充電状態とする。30分の休止後、0.05Cの電流で通常使用時の下限電圧まで定電流放電する。解体し、正極を取り出し、金属リチウム電極を対極とした半電池を組み立て、正極活物質1gあたり10mAの電流で、正極電位が3.0V vs.Li/Liとなるまで定電流放電を行い、正極を完全放電状態に調整する。再解体し、正極を取り出す。ジメチルカーボネートを用いて、取り出した正極に付着した非水電解質を十分に洗浄し、室温にて24時間乾燥後、正極活物質を採取する。採取した正極活物質を測定に供する。非水電解質蓄電素子の解体から正極活物質の採取までの作業は露点-60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。
正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上12μm以下がさらに好ましく、5μm以上10μm以下がよりさらに好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。
正極活物質を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LiNi(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγCo(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1、0<1-x-γ)、Li[LiCo(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγMn(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1、0<1-x-γ)、Li[LiNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1、0<1-x-γ-β)、Li[LiNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1、0<1-x-γ-β)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LiMn、LiNiγMn(2-γ)等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質としては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。換言すれば、正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子を含むことが好ましく、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子を含むことがより好ましい。このリチウム遷移金属複合酸化物としては、ニッケル元素を含むものであってもよく、ニッケル元素と、コバルト元素とを含むものであってもよく、ニッケル元素と、コバルト元素と、マンガン元素及びアルミニウム元素のうちの少なくとも一方とを含むものであってもよい。このようなリチウム遷移金属複合酸化物は、初期の放電容量が大きい等の利点を有する一方、二次粒子である場合、充放電サイクルに伴う割れが生じ易い。このため、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物が用いられた非水電解質蓄電素子に本発明の一実施形態を適用した場合、充放電サイクル後の容量維持率が高まるという効果が特に顕著に生じる。
リチウム遷移金属複合酸化物におけるリチウム元素以外の金属元素に対するニッケル元素の含有量は、30モル%以上100モル%以下が好ましく、40モル%以上90モル%以下がより好ましく、50モル%以上80モル%以下がさらに好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物におけるリチウム元素以外の金属元素に対するコバルト元素の含有量は、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、15モル%以上40モル%以下がさらに好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物におけるリチウム元素以外の金属元素に対するマンガン元素の含有量は、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、15モル%以上40モル%以下がさらに好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物におけるリチウム元素以外の金属元素に対するアルミニウム元素の含有量は、0モル%以上10モル%以下が好ましく、0.1モル%以上5モル%以下であってもよい。リチウム遷移金属複合酸化物におけるリチウム元素以外の金属元素に対するアルミニウム元素の含有量は、1モル%以下であってもよく、0モル%であってもよい。
リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム元素、ニッケル元素、コバルト元素、マンガン元素及びアルミニウム元素以外の他の金属元素をさらに含んでいてもよい。但し、リチウム遷移金属複合酸化物におけるリチウム元素以外の金属元素に対するニッケル元素、コバルト元素、マンガン元素及びアルミニウム元素の合計含有量は、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上又は100モル%が好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物としては、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
Li1+αMe1-α ・・・(1)
式(1)中、Meは、Li以外の金属元素である。0≦α<1である。
式(1)中のαは、0以上0.5以下であってもよく、0以上0.3以下であってもよく、0以上0.1以下であってもよく、0であってもよい。Meは、1種又は2種以上の金属元素から構成されていてよい。Me(Li以外の金属元素)を構成する具体的金属元素の種類及びその含有量(組成比)は、上記したリチウム遷移金属複合酸化物に含まれる各金属元素及びその好適な含有量の値を採用することができる。
なお、リチウム遷移金属複合酸化物の組成比は、充放電前の組成比、又は上記した正極活物質を完全放電状態とする方法により完全放電状態としたときの組成比をいう。
正極活物質層における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上97質量%以下がさらに好ましく、90質量%以上96質量%以下がよりさらに好ましく、93質量%以上95質量%以下がよりさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛、非黒鉛質炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
正極活物質層における導電剤の含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解質蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
正極活物質層におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質を安定して保持することができる。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。正極活物質層に増粘剤を使用する場合、正極活物質層における増粘剤の含有量は、0.1質量%以上8質量%以下とすることができ、通常、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。ここで開示される技術は、正極活物質層が増粘剤を含まない態様で好ましく実施され得る。
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。正極活物質層にフィラーを使用する場合、正極活物質層におけるフィラーの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下とすることができ、通常、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。ここで開示される技術は、正極活物質層がフィラーを含まない態様で好ましく実施され得る。
正極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
(負極)
負極は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極で例示した構成から選択することができる。
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、炭素質材料等が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材の強度を高めつつ、非水電解質蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質層は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示した材料から選択できる。
負極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属リチウム;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましく、黒鉛がより好ましい。負極活物質としては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
ここで、「放電状態」とは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されるように放電された状態を意味する。例えば、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属リチウムを対極として用いた半電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態である。
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質が炭素材料、チタン含有酸化物又はポリリン酸化合物である場合、その平均粒径は、1μm以上100μm以下であってもよい。負極活物質が、Si、Sn、Si酸化物、又は、Sn酸化物等である場合、その平均粒径は、1nm以上1μm以下であってもよい。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、負極活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び分級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。負極活物質が金属リチウム等の金属である場合、負極活物質層は、箔状であってもよい。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
負極活物質層に導電剤を使用する場合、負極活物質層における導電剤の含有量としては、1質量%以上10質量%以下であってもよく、3質量%以上9質量%以下であってもよい。負極活物質が炭素材料等である場合、負極活物質層は導電剤を含有していなくてもよい。
負極活物質層におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質を安定して保持することができる。
負極活物質層における増粘剤の含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がより好ましい。
負極活物質層にフィラーを使用する場合、負極活物質層におけるフィラーの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下とすることができ、通常、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。ここで開示される技術は、負極活物質層がフィラーを含まない態様で好ましく実施され得る。
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の形状としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの形状の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、1気圧の空気雰囲気下で室温から500℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、室温から800℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、チタン酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、蓄電素子の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
(非水電解質)
非水電解質は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む。非水電解質におけるFECの含有量は、0.1質量%以上4質量%以下であり、0.3質量%以上3.5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上2.5質量以下がさらに好ましく、1.5質量%以上2.2質量%以下がよりさらに好ましい。非水電解質におけるFECの含有量が上記範囲内であることで、正極活物質の表面にFECに由来する適度な量の被膜が形成され、充放電サイクル後の容量維持率が高まる。また、非水電解質におけるFECの含有量が上記上限以下であることにより、充放電サイクル後の抵抗が低くなる。
非水電解質は、ビニレンカーボネート(VC)をさらに含有することが好ましい。非水電解質がVCを含有することにより、充放電サイクル後の容量維持率がより高まる。非水電解質におけるVCの含有量としては、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。非水電解質におけるVCの含有量が上記範囲内であることで、充放電サイクル後の容量維持率がより高まる。
非水電解質は、非水電解液であってもよい。非水電解液は、非水溶媒と電解質塩と上記したFECとを含む。さらに、非水電解液には、上記したVCを含むことが好ましい。
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。なお、FEC及びVCは、非水溶媒には含まれないものとする。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもEC及びPCの少なくとも一方を含むことが好ましく、EC及びPCの双方を含むことがより好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。また、リチウム塩としては、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を用いることも好ましい。リチウム塩としては、LiPFとLiPOとを併用することがより好ましい。
非水電解液における電解質塩の含有量は、20℃1気圧下において、0.1mol/dm以上2.5mol/dm以下であると好ましく、0.3mol/dm以上2.0mol/dm以下であるとより好ましく、0.5mol/dm以上1.7mol/dm以下であるとさらに好ましく、0.7mol/dm以上1.5mol/dm以下であると特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
LiPOを用いる場合、非水電解質におけるLiPOの含有量は、例えば0.01質量%以上2質量%以下であってもよく、0.1質量%以上1質量%以下であってもよい。
非水電解液は、非水溶媒と電解質塩とFECとVC以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,4-ブテンスルトン等の硫黄元素を含む非イオン性化合物;パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル等が挙げられる。これら他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記他の成分の中でも、硫黄元素を含む非イオン性化合物が好ましく、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン等のサルフェート類がより好ましく、硫酸エチレン、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン等の環構造を有するサルフェート類がさらに好ましく、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)がよりさらに好ましい。他の成分としてこのような化合物を含む場合、充放電サイクル後の容量維持率がより高まる傾向にある。
非水電解液に含まれる上記他の成分の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。上記他の成分の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
非水電解質としては、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃から25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
(通常使用時の放電終止電圧における正極電位)
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子における通常使用時の放電終止電圧における正極電位の上限は、3.3V(vs.Li/Li)であり、3.2V(vs.Li/Li)が好ましく、3.1V(vs.Li/Li)がより好ましく、3.0V(vs.Li/Li)がさらに好ましい。通常使用時の放電終止電圧における正極電位を上記上限以下とすることで、非水電解質蓄電素子の放電容量を大きくすること等ができる。この正極電位の下限としては、2.6V(vs.Li/Li)が好ましく、2.7V(vs.Li/Li)がより好ましく、2.8V(vs.Li/Li)がさらに好ましく、2.9V(vs.Li/Li)がよりさらに好ましい。通常使用時の放電終止電圧における正極電位を上記下限以上とすることで、充放電サイクル後の容量維持率をより高めることができる。上記正極電位は、上記したいずれかの下限以上且つ上記したいずれかの上限以下とすることができる。
本実施形態の非水電解質蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
図1に角型電池の一例としての非水電解質蓄電素子1を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極を有する電極体2が角型の容器3に収納される。正極は正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続されている。負極は負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。
<蓄電装置>
本実施形態の非水電解質蓄電素子は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の非水電解質蓄電素子を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)として搭載することができる。この場合、蓄電ユニットに含まれる少なくとも一つの非水電解質蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
図2に、電気的に接続された二つ以上の非水電解質蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二つ以上の非水電解質蓄電素子1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二つ以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一つ以上の非水電解質蓄電素子1の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
<機器>
本発明の一実施形態に係る機器は、上述した本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を備える。当該機器としては、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、家電製品、自動車(EV、HEV、PHEV等)、その他産業用機器等、特に限定されるものではない。
当該機器は、通常使用時において、非水電解質蓄電素子の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下となるように、放電終止電圧が設定されることが好ましい。このように設定されていることにより、当該機器に備わる非水電解質蓄電素子の放電容量が大きくなる。また、当該機器に備わる非水電解質蓄電素子は、正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下となるように放電終止電圧が設定されていても、充放電サイクル後の容量維持率が高い。当該機器において設定される非水電解質蓄電素子の放電終止電圧における正極電位の好適範囲は、非水電解質蓄電素子の通常使用時の放電終止電圧における正極電位の好適範囲として上述したものと同様である。当該機器は、放電終止電圧等を制御する制御装置を備えていることが好ましい。
<非水電解質蓄電素子の使用方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の使用方法は、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質とを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である非水電解質蓄電素子に対し、正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下に至るまで放電を行うことを備える。
当該使用方法においては、上述した本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を好適に用いることができる。また、当該使用方法において放電を行う際の正極下限電位(正極電位の下限値)の好適範囲は、非水電解質蓄電素子の通常使用時の放電終止電圧における正極電位の好適範囲として上述したものと同様である。当該使用方法においては、上述した本発明の一実施形態に係る機器を好適に使用することができる。当該使用方法においては、放電の際に非水電解質蓄電素子の正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下に至るにもかかわらず、充放電サイクル後の容量維持率が高い。
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、二次粒子を含む正極活物質を含有する正極を準備することと、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質を準備することとを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子の製造方法である。
正極を準備することは、正極を作製することであってもよい。正極の作製は、例えば正極基材に直接又は中間層を介して、正極合剤ペーストを塗布し、乾燥させることにより行うことができる。乾燥後、必要に応じてプレス等を行ってもよい。正極合剤ペーストには、正極活物質、及び任意成分である導電剤、バインダ等、正極活物質層を構成する各成分が含まれる。正極合剤ペーストには、通常さらに分散媒が含まれる。準備される正極の具体的形態及び好適形態は、上述した本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子に備わる正極の具体的形態及び好適形態と同様である。
非水電解質を準備することは、非水電解質を調製することであってもよい。非水電解質の調製は、例えば、非水溶媒と電解質塩とFECとを混合することにより行うことができる。準備される非水電解質の具体的形態及び好適形態は、上述した本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子に備わる非水電解質の具体的形態及び好適形態と同様である。
当該製造方法は、その他、負極を準備すること、セパレータを準備すること、セパレータを介して正極及び負極を積層又は巻回することにより電極体を形成すること、電極体及び非水電解質を容器に収容すること、初期充放電を行うこと等を備えていてよい。通常、初期充放電を行うことで、FECの少なくとも一部が分解され、正極活物質を覆う被膜が形成される。準備される負極及びセパレータの具体的形態及び好適形態は、上述した本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子に備わる負極及びセパレータの具体的形態及び好適形態と同様である。
非水電解質を容器に収容することは、公知の方法から適宜選択できる。例えば、非水電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、注入口を封止すればよい。
<その他の実施形態>
尚、本発明の非水電解質蓄電素子、機器、非水電解質蓄電素子の使用方法及び非水電解質蓄電素子の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
上記実施形態では、非水電解質蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、非水電解質蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。
上記実施形態では、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極体について説明したが、電極体は、セパレータを備えなくてもよい。例えば、正極又は負極の活物質層上に導電性を有さない層が形成された状態で、正極及び負極が直接接してもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(正極の作製)
正極活物質として、平均一次粒子径が0.6μm、平均粒径が8.5μmであり、平均一次粒子径に対する平均粒径の比が14.2であるLi1.0Ni0.6Co0.2Mn0.2(二次粒子)を準備した。
上記正極活物質と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電剤としてのアセチレンブラック(AB)とを含有し、N-メチルピロリドン(NMP)を分散媒とする正極合剤ペーストを調製した。正極活物質とバインダと導電剤との質量比は、固形分換算で、94.5:1.5:4.0とした。正極合剤ペーストを正極基材としてのアルミニウム箔に塗工し、乾燥させ、プレスすることにより正極活物質層を形成した。これにより、正極基材に正極活物質層が積層された正極を得た。
(負極の作製)
負極活物質としての黒鉛と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを含有し、水を分散媒とする負極合剤ペーストを調製した。負極活物質とバインダと増粘剤との質量比は、固形分換算で、97.8:1.0:1.2とした。負極合剤ペーストを負極基材としての銅箔に塗工し、乾燥させ、プレスすることにより負極活物質層を形成した。これにより、負極基材に負極活物質層が積層された負極を得た。
(非水電解質の調製)
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比25:5:70で混合してなる非水溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/dmの濃度で混合した。この混合溶液に、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を1.0質量%、ビニレンカーボネート(VC)を0.4質量%、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を0.5質量%及び4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)を0.8質量%の含有量で混合し、非水電解質を調製した。
(非水電解質蓄電素子の組み立て)
上記正極と負極とをポリエチレン製微多孔膜セパレータを介して積層し、電極体を作製した。電極体を容器に収容し、上記非水電解質を容器に注入することにより、実施例1の非水電解質蓄電素子を得た。
[実施例2、比較例1、参考例1から3]
非水電解質に含有させたFECの含有量を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2、比較例1及び参考例1から3の各非水電解質蓄電素子を得た。
なお、参考例1の非水電解質蓄電素子と比較例1の非水電解質蓄電素子、参考例2の非水電解質蓄電素子と実施例1の非水電解質蓄電素子、及び参考例3の非水電解質蓄電素子と実施例2の非水電解質蓄電素子は、それぞれ後述する充放電条件が異なるのみであり、構造としては同じものである。
[評価]
(初期充放電)
組み立てた実施例1、2、比較例1及び参考例1から3の各非水電解質蓄電素子について、以下の初期充放電を行った。25℃にて、充電電流1.0C、充電終止電圧4.25Vの条件で、充電時間が合計3時間になるまで定電流定電圧充電を行った。その後、10分間の休止期間を設けた。次いで、放電電流1.0C、表1に記載の放電終止電圧の条件で、定電流放電を行った。
(充放電サイクル試験)
上記初期充放電を行った実施例1、2、比較例1及び参考例1から3の各非水電解質蓄電素子について、以下の要領で充放電サイクル試験を行った。45℃にて、充電電流1.0C、充電終止電圧4.25Vで定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は、充電電流が0.01Cに減衰した時点とした。その後、放電電流1.0C、表1に記載の放電終止電圧とした定電流放電を行った。充電後及び放電後にはそれぞれ10分間の休止期間を設けた。この充放電を2,000サイクル実施した。なお、表1には、放電終止電圧における正極電位をあわせて示す。
(容量維持率)
実施例1、2、比較例1及び参考例1から3の各非水電解質蓄電素子における1サイクル目の放電容量に対する2,000サイクル目の放電容量の百分率を容量維持率として求めた。結果を表1に示す。
Figure 2024040730000002
比較例1と参考例1との対比からわかるように、二次粒子を含む正極活物質が用いられた非水電解質蓄電素子において、放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である場合、充放電サイクル後の容量維持率が大きく低下した。そして、比較例1と実施例1、2との対比からわかるように、二次粒子を含む正極活物質が用いられた非水電解質蓄電素子において、非水電解質にFECを0.1質量%以上4質量%以下含有させると、放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である充放電サイクル後の容量維持率が高まった。
一方、参考例1から3からわかるように、二次粒子を含む正極活物質が用いられた非水電解質蓄電素子において非水電解質にFECを含有させても、放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下ではない場合は、充放電サイクル後の容量維持率は高まらず、逆に低下する傾向がみられた。非水電解質にFECを含有させることによる充放電サイクル後の容量維持率の向上効果は、放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子の場合に生じる特有の効果であることが確認できる。
[比較例2]
正極活物質として、平均一次粒子径が0.54μm、平均粒径が8.0μmであり、平均一次粒子径に対する平均粒径の比が14.8であるLi1.0Ni0.5Co0.2Mn0.3(二次粒子)を準備した。
上記正極活物質と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電剤としてのアセチレンブラック(AB)とを含有し、N-メチルピロリドン(NMP)を分散媒とする正極合剤ペーストを調製した。正極活物質とバインダと導電剤との質量比は、固形分換算で、94.0:3.0:3.0とした。正極合剤ペーストを正極基材としてのアルミニウム箔に塗工し、乾燥させ、プレスすることにより正極活物質層を形成した。これにより、正極基材に正極活物質層が積層された正極を得た。
非水電解質として、ECとPCとEMCとを体積比25:5:70で混合してなる非水溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/dmの濃度で混合し、非水電解質を調製した。
上記正極及び上記非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の非水電解質蓄電素子を得た。
[比較例3]
非水電解質として、ECとPCとEMCとFECとを体積比20:5:70:5で混合してなる非水溶媒とFECとの混合液に、LiPFを1.0mol/dmの濃度で混合し、調製したものを用いたこと以外は比較例2と同様にして、比較例3の非水電解質蓄電素子を得た。比較例3の非水電解質蓄電素子の非水電解質におけるFECの含有量は6質量%であった。
[比較例4]
非水電解質として、ECとPCとEMCとFECとを体積比15:5:70:10で混合してなる非水溶媒とFECとの混合液に、LiPFを1.0mol/dmの濃度で混合し、調製したものを用いたこと以外は比較例2と同様にして、比較例4の非水電解質蓄電素子を得た。比較例4の非水電解質蓄電素子の非水電解質におけるFECの含有量は12質量%であった。
[評価]
(初期充放電)
組み立てた比較例2から4の各非水電解質蓄電素子について、以下の初期充放電を行った。25℃にて、充電電流1.0C、充電終止電圧4.25Vの条件で、充電時間が合計3時間になるまで定電流定電圧充電を行った。その後、10分間の休止期間を設けた。次いで、放電電流1.0C、放電終止電圧2.75Vの条件で、定電流放電を行った。
(充放電サイクル試験)
上記初期充放電を行った比較例2から4の各非水電解質蓄電素子について、以下の要領で充放電サイクル試験を行った。45℃にて、充電電流2.0C、充電終止電圧4.25Vの条件で、充電時間が合計3時間になるまで定電流定電圧充電を行った。その後、放電電流2.0C、放電終止電圧2.75Vとした定電流放電を行った。充電後及び放電後にはそれぞれ10分間の休止期間を設けた。この充放電を1,200サイクル実施した。なお、表2には、放電終止電圧における正極電位をあわせて示す。
(容量維持率)
比較例2から4の各非水電解質蓄電素子における1サイクル目の放電容量に対する1,200サイクル目の放電容量の百分率を容量維持率として求めた。結果を表2に示す。
(直流抵抗)
比較例2から4の各非水電解質蓄電素子について、上記充放電サイクル試験後に以下の要領で直流抵抗を測定した。25℃の恒温槽内において、充電電流1.0Cの定電流充電を行い、SOCを50%にした。その後、-10℃の恒温槽内において、放電電流0.2C、0.5C、1.0Cの順で、30秒間ずつ放電した。各放電終了後には、充電電流0.05Cで定電流充電を行い、SOCを50%にした。各放電電流における放電電流と放電開始後10秒目の電圧との関係をプロットし、3点のプロットから得られた直線の傾きから充放電サイクル後の直流抵抗(DCR)を求めた。各DCRについて、比較例2の値を基準(100.0%)とした相対値として、表2に示す。
Figure 2024040730000003
比較例2から4の比較からわかるように、二次粒子を含む正極活物質が用いられ、放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子において、非水電解質にFECを4質量%超含有させると、FECを含有させない場合よりも、充放電サイクル後の容量維持率は低下し、充放電サイクル後の直流抵抗は高くなる結果となった。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車などの電源として使用される非水電解質蓄電素子などに適用できる。
1 非水電解質蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (5)

  1. 通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下であり、
    二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、
    フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質と
    を備え、
    上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である非水電解質蓄電素子。
  2. 上記非水電解質がビニレンカーボネートをさらに含有する請求項1に記載の非水電解質蓄電素子。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子を備える機器。
  4. 二次粒子を含む正極活物質を含有する正極と、フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質とを備え、上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である非水電解質蓄電素子に対し、正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下に至るまで放電を行うことを備える非水電解質蓄電素子の使用方法。
  5. 二次粒子を含む正極活物質を含有する正極を準備することと、
    フルオロエチレンカーボネートを含有する非水電解質を準備することと
    を備え、
    上記非水電解質における上記フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1質量%以上4質量%以下である、通常使用時の放電終止電圧における正極電位が3.3V(vs.Li/Li)以下である非水電解質蓄電素子の製造方法。
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