JP2024039587A - ポリ乳酸樹脂組成物、並びに、成形体及びその製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸樹脂組成物、並びに、成形体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2024039587A
JP2024039587A JP2023058787A JP2023058787A JP2024039587A JP 2024039587 A JP2024039587 A JP 2024039587A JP 2023058787 A JP2023058787 A JP 2023058787A JP 2023058787 A JP2023058787 A JP 2023058787A JP 2024039587 A JP2024039587 A JP 2024039587A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polylactic acid
acid resin
resin composition
mass
composition according
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2023058787A
Other languages
English (en)
Inventor
太一 根本
Taichi Nemoto
千秋 田中
Chiaki Tanaka
祐一 佐藤
Yuichi Sato
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to CN202311136955.5A priority Critical patent/CN117683215A/zh
Priority to EP23195354.8A priority patent/EP4335887A1/en
Priority to US18/461,814 priority patent/US20240092966A1/en
Publication of JP2024039587A publication Critical patent/JP2024039587A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)

Abstract

【課題】生分解性を有し、溶融安定性に優れるポリ乳酸樹脂組成物を提供すること。【解決手段】ポリ乳酸樹脂を99質量%以上含有し、パラレルプレート型回転粘度計を用いて、パラレルプレート:直径20mm、アルミニウム製、温度:200℃、ギャップ:1.00mm、周波数:1Hz(6.28rad/s)、雰囲気:乾燥空気下(露点:-60℃)、測定用試料サイズ:厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状の測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、前記複素粘度η*(20)が1×104Pa・s以上であり、前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上であるポリ乳酸樹脂組成物である。【選択図】図3

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、並びに、成形体及びその製造方法に関する。
近年、各種分野において、ポリ乳酸樹脂が注目されている。それは、ポリ乳酸が、バイオプラスチックとしての生分解性とバイオマスプラスチックの両方の特徴を有する数少ない樹脂であるためであり、ごみ問題に関連して材料開発が盛んに行われている。
前記ポリ乳酸は、一般的にラクチドと言われる乳酸を縮合した環状二量体の開環付加重合法で得られる。重合反応が平衡反応であるために、一定量の未反応モノマー(開環重合性モノマー)を有し、また溶融成形を行う際に、少量の水と、該ポリ乳酸の末端の水酸基又はカルボキシル基とが反応し、加水分解が生じることがある。また、ポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステルは、芳香環を有するポリエステルと比較して、融点以降での粘度低下が大きく、成形加工にかかる非ニュートン流体特性(ひずみ硬化性)が発現できず、また溶融強度が足りないためにブロー成形などで操業が不安定になるなど、成形加工しにくい樹脂とみなされている。
成形加工しやすくするために、高分子量の他の樹脂(例えば、ポリ乳酸と比較的相溶性のよいポリメタクリル酸メチルやポリオキシメチレンなど)をブレンドする手段も提案されているが(非特許文献1参照)、ポリ乳酸が有するバイオマスかつ生分解性、特にコンポスト性を損なうものである。仮に、ポリ乳酸と同様の素材を組み合わせた場合でも、リサイクル性は大幅に悪化するため、ポリ乳酸単独で成形加工性が改善できることが求められている。
ポリ乳酸は、融点が140℃~175℃であって、ポリスチレンやポリエチレン等の汎用樹脂と比較しても十分高い融点を有している。ポリ乳酸の欠点としては、脂肪族ポリエステルのため、分子間相互剤用が、芳香族ポリエステルやポリアミドと比べて低いことが挙げられる。そのため、溶融成形を前提としたポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は10万を超える。前記分子量を達成するためには、ラクチド、工業的には好ましくは乳酸の環状2量体の開環付加重合法で得られるが、競争反応であるエステル交換反応や粘度上昇による分子鎖切断等の副反応として起こるため、市販されているポリ乳酸の重量平均分子量は25万以下であった。
超臨界二酸化炭素を可塑剤として機能させ、副反応を抑制しつつ高分子量のポリ乳酸を得る提案もされているが(特許文献1参照)、単に分子量を上げるだけでは溶融安定性に欠けるという問題があった。
ポリマーの溶融安定性は、安定的に成形加工を行うために非常に重要である。溶融安定性を担保するために、カルボジイミドのような添加剤を加えることが一般的知られているが(非特許文献2参照)、一般的に低分子量成分を多量に加えると、特に糸やフィルムのような延伸加工をする場合にポリ乳酸の結晶化に伴いブリードアウトするなどの問題があった。
本発明は、生分解性を有し、溶融安定性に優れるポリ乳酸樹脂組成物を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂を99質量%以上含有し、パラレルプレート型回転粘度計を用いて下記測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s以上であり、前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上であることを特徴とする。
[測定条件]
・ パラレルプレート:直径20mm、アルミニウム製
・ 温度:200℃
・ ギャップ:1.00mm
・ 周波数:1Hz(6.28rad/s)
・ 雰囲気:乾燥空気下(露点:-60℃)
・ 測定用試料サイズ:厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状
本発明によれば、生分解性を有し、溶融安定性に優れるポリ乳酸樹脂組成物を提供することができる。
図1は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造で好適に用いられる圧縮性流体の温度と圧力に対する物質の状態を説明する相図である。 図2は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造で好適に用いられる圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。 図3は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造で好適に用いられる連続式重合装置の一例を示す図である。
(ポリ乳酸樹脂組成物)
本発明の第1の態様のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対する前記ポリ乳酸樹脂の含有量は、99質量%以上である。
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、パラレルプレート型回転粘度計を用いて下記測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s以上であり、前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上である。
本発明の第2の態様のポリ乳酸樹脂組成物は、スズ系化合物を金属触媒としてラクチドを開環付加重合することにより得られるポリ乳酸と、モノカルボン酸又はモノカルボン酸無水物と、を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
以下に、第1の態様のポリ乳酸樹脂組成物の説明と併せて、第2の態様のポリ乳酸樹脂組成物について説明する。
従来、ポリ乳酸の成形加工において、溶融時の安定性に欠けることが大きな問題であった。ポリ乳酸はその分子構造から、溶融成形用途としてはポリアミドやポリエステルなどと比較して分子量の高いもの、一般的には重量平均分子量で10万から20万程度のものが使用されている。しかし、このような分子量のポリ乳酸でも溶融強度は十分でなく、かつ成形加工時に分解して経時的に強度が低下し、成形性が悪化するなどの問題があった。
本発明者らは鋭意検討を行い、上記問題に対して、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記構成を満たすことで、生分解性を有し、溶融安定性に優れ、更に成形性にも優れるポリ乳酸樹脂組成物を提供することができることを見出した。
[複素粘度η*]
前記ポリ乳酸樹脂組成物のパラレルプレート型回転粘度計(ARES-G2、TAインスツルメント社製)を用いて下記測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s以上であり、前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上である。
[測定条件]
・ パラレルプレート:直径20mm、アルミニウム製
・ 温度:200℃
・ ギャップ:1.00mm
・ 周波数:1Hz(6.28rad/s)
・ 雰囲気:乾燥空気下(露点:-60℃)
・ 測定用試料サイズ:厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状
なお、前記複素粘度η*の測定用試料は、以下のようにして調製することができる。
ペレット状の前記ポリ乳酸樹脂組成物を80℃にて約12時間乾燥し、測定治具上で、前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸樹脂の融点+20℃に3分間~5分間置いて溶融させた後、パラレルプレート間のギャップが1.05mmとなるまで押圧する。次いで、パラレルプレート外周部からはみ出した前記ポリ乳酸含有組成物をスパチュラ等で掻き取り、パラレルプレート間のギャップが1.00mmとなるまで再度押圧し、3分間~5分間静置して残留応力を取り除き、上記測定用試料サイズに調製することができる。
-複素粘度η*(20)
前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記複素粘度η*(20)は2×10Pa・s以上であるが、2.5×10Pa・s以上が好ましく、5×10Pa・s以上がより好ましく、1×10Pa・s以上が更に好ましい。前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s未満であると、前記ポリ乳酸樹脂組成物の成形に必要な溶融強度を担保することができない。また、前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記複素粘度η*(20)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、流動性及び成形加工性が良好である点から、5×10Pa・s以下が好ましく、2×10Pa・s以下がより好ましい。
-比[η*(20)/η*(5)]-
前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記比[η*(20)/η*(5)]は0.6以上であるが、0.7以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記比[η*(20)/η*(5)]が0.6未満であると、前記ポリ乳酸樹脂組成物の成形品の品質のバラつきや、不具合が生じる。また、前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記比[η*(20)/η*(5)]は高い程好ましいため、その上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記複素粘度η*(20)が5×10Pa・s以上であり、かつ前記比[η*(20)/η*(5)]が0.7以上であることが更に好ましい。
また、前記複素粘度η*の測定用試料について、ペレット状の前記ポリ乳酸樹脂組成物を80℃にて約12時間乾燥した後、更に、23℃、50RH%環境下に1日間静置した測定用試料を、前記パラレルプレート型回転粘度計(ARES-G2、TAインスツルメント社製)を用いて前記測定条件で測定した複素粘度η*(5)に対する複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましい。23℃、50RH%環境下に1日間静置した後でも、前記比[η*(20)/η*(5)]が変化しないことにより、成形加工時の環境変化、特に湿度によって、成形加工品の品質が変動しない点で好ましい。
ポリ乳酸樹脂の融点は、概ね140℃~175℃の範囲内である。
上記の通り、前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記複素粘度η*(20)は2×10Pa・s以上であり、前記比[η*(20)/η*(5)]は0.6以上である。したがって、ポリ乳酸樹脂の融点以降での粘度低下が小さく、成形加工にかかる非ニュートン流体特性(ひずみ硬化性の発現)が発現でき、溶融安定性に優れるものである。また、これにより、シート及び発泡シート成形やブロー成形などで操業が安定であり、成形性に優れるものである。
ここで、前記ポリ乳酸樹脂の融点は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求められる。
具体的には、前記ポリ乳酸樹脂の融点のDSC測定には、例えば、示差走査熱量計装置(例えば、Q-2000型、TAインスツルメント社製)を用いることができ、ペレット状の前記ポリ乳酸樹脂組成物をハサミ、ニッパなどで切断した測定用試料5mg~10mgをTAインスツルメント社製の専用のパンに入れ、測定に供する。前記示差走査熱量計装置の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温する。前記ポリ乳酸樹脂の融点は、1st coolingの後に、再び25℃から200℃まで昇温し、速度10℃/分間で走査した際、ガラス転移点以上の温度域で観測される吸熱ピークのピークトップ温度を指す。
[生分解性]
前記ポリ乳酸樹脂組成物は、生分解性、特にコンポスト性に優れるものである。
ここで、「生分解性」とは、自然界において微生物等の生物の作用により分解することができる性質を意味する。
また、「コンポスト性」とは、58℃での生分解性を有することを意味する。
前記ポリ乳酸樹脂組成物の生分解性は、ISO 14855-1又はISO 14855-2に準拠して確認することができる。
[黄色度]
前記ポリ乳酸樹脂組成物は、黄変のないものであることが好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂組成物に黄変がないことは、JIS K 7103:1977(プラスチックの黄色度及び黄変度試験方法)に準拠して黄色度(YI)を測定することにより確認することができる。
具体的には、前記ポリ乳酸樹脂組成物の厚さ2mmのペレットを測定用試料として用い、カラーメーター(SM-T、スガ試験機株式会社製)を用いて測定し、黄色度(YI)を求める。YIは、25以下が好ましく、15以下がより好ましく、9以下が更に好ましく、6以下が特に好ましい。前記ポリ乳酸樹脂組成物のYIが25以下であれば、着色がなく、良好なポリ乳酸樹脂組成物である。
[メルトマスフローレート(MFR)]
前記ポリ乳酸樹脂組成物のJIS K 7210-1:2014に準拠して190℃、2.16kg荷重にて求めたメルトマスフローレート(MFR)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、2g/10分以下が好ましく、1g/10分以下がより好ましい。前記ポリ乳酸樹脂組成物の前記メルトマスフローレート(MFR)は低い程好ましいため、その下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ポリ乳酸樹脂組成物は、生分解性を有し、溶融安定性に優れ、かつ、好ましくは直鎖のポリ乳酸樹脂を含有するため、前記メルトマスフローレート(MFR)を2g/10分以下とすることができ、ゲル化を抑制できる点で好ましい。前記ポリ乳酸組成物の前記メルトマスフローレート(MFR)は、前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸樹脂の分子量、残存モノマー量、光学純度などを調整することで、容易に制御することができる。
<ポリ乳酸樹脂>
前記ポリ乳酸樹脂組成物における前記ポリ乳酸樹脂の含有量は、リサイクル性の点から、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対して99質量%以上であり、99.5質量%以上が好ましい。したがって、前記ポリ乳酸樹脂組成物中の有機物としては、主にポリ乳酸樹脂であるが、該ポリ乳酸樹脂以外の有機物としては、例えば、後述する加水分解抑制剤や酸化防止剤等の添加剤、開始剤、触媒、フィラーなどが挙げられる。
前記ポリ乳酸樹脂は脂肪族ポリエステル樹脂の1つであり、微生物により生分解されるため、環境に優しい低環境負荷高分子材料として注目されている(「脂肪族ポリエステルの構造、物性、生分解性」、井上 義夫、高分子、2001年、50巻、6号、p374-377参照)。
前記ポリ乳酸樹脂としては、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対する前記ポリ乳酸樹脂の含有量が99質量%以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ乳酸、ポリ乳酸とポリ乳酸以外のポリマーとのポリマーブレンドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記ポリ乳酸樹脂としては、適宜合成したものを用いても、市販されているものを用いてもよい。
前記ポリ乳酸としては、例えば、乳酸のD体(D-乳酸)又は乳酸のL体(L-乳酸)のいずれか一方の単独重合体;D-乳酸とL-乳酸との共重合体(ポリDL-乳酸);ラクチドのD体(D-ラクチド)、ラクチドのL体(L-ラクチド)、及びD-ラクチドとL-ラクチドとの共重合体(ポリDL-ラクチド)からなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドの開環重合体などが挙げられる。
前記ポリ乳酸が共重合体である場合、該共重合体の配列様式は、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーのいずれであってもよい。
前記ポリ乳酸樹脂の原材料モノマーである前記乳酸又は前記ラクチドの光学純度は、前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸樹脂の光学純度にも直接影響する。前記ポリ乳酸樹脂の光学純度は、結晶化速度や融点に影響あり、調整することができる。前記ポリ乳酸樹脂の原材料モノマーである前記乳酸又は前記ラクチドとしては、D体又はL体を0.01質量%~10質量%程度混合したものを使用してもよい。
前記ポリマーブレンドとしては、前記ポリ乳酸樹脂組成物の使徒や所期の物性により、ポリ乳酸を用いた公知のポリマーブレンドの中から適宜選択することができ、例えば、前記ポリ乳酸と、該ポリ乳酸以外の生分解性ポリマー又はそのモノマーとのポリマーブレンドが挙げられる。
前記ポリマーブレンドの具体例としては、ポリ乳酸と、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ブチレンサクシネート)、又はこれらのモノマーとの共重合体;ポリ乳酸と、可撓性付与のためのポリアルキレン樹脂との共重合体;ポリ乳酸と、透明核剤成分としてのカルボジイミド化合物との共重合体;ポリ乳酸と、ポリシロキサンとの共重合体;ポリ乳酸と、脂肪族カルボン酸アミドとの共重合体;ポリ乳酸と、脂肪族カルボン酸との共重合体;ポリ乳酸と、脂肪族アルコールとの共重合体;ポリ乳酸と、脂肪族カルボン酸エステルとの共重合体;ポリ乳酸と、耐熱性向上のための(ポリ)エチレンオキシド付加ビスフエノールAをアミド化触媒の存在下でイソシアネート系化合物によりウレタン化架橋させてなる変性ポリラクチドとの共重合体;ポリ乳酸中に、ポリエチレン(PET)樹脂又はポリブチレン(PBT)樹脂をブレンドしてなる樹脂アロイ;ポリ乳酸と、衝撃性向上のためのポリシロキサン/アクリル系複合ゴムをブレンドした樹脂アロイ;ポリ乳酸-アクリレート-ポリシロキサンのグラフト共重合体;ビニルポロリドン/L-乳酸共重合体;スクロース/L-乳酸共重合体;グリコール酸/L-乳酸共重合体;グリコリド/L-ラクチド共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ乳酸樹脂として、DL-乳酸、D-ラクチド、L-ラクチド、及びDL-ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のモノマーの開環重合体を用いる場合、D体及びL体のうち少ない方の光学異性体が減少するに従って、結晶性が高くなり融点や結晶化速度が高くなり、融点やガラス転移点が高くなる傾向がある。また、D体及びL体のうち少ない方の光学異性体が増加するに従って、結晶性が低くなり、やがて非晶性となる傾向がある。
前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸樹脂の構成モノマー単位としてのD-乳酸及びL-乳酸のいずれか一方の含有量(光学純度)は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の成形体の耐熱性及び成形温度に関連するため、用途に応じて使い分ければよく、特に限定されないが、L-乳酸が多いほど好ましく、L-乳酸の含有量が90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。前記ポリ乳酸樹脂の構成モノマー単位におけるL-乳酸の含有量が90モル%以上であると、成形加工性との兼ね合いで、程度にもよるが、前記ポリ乳酸樹脂が結晶性を有し、成形材料としての力学的強度や耐熱性を担保することができる。
前記ポリ乳酸樹脂の光学純度は、液体クロマトグラフィー(HPLC;High Performance Liquid Chromatography)により測定することができる。
具体的には、前記ポリ乳酸樹脂組成物を凍結粉砕して粉末0.1gを計り取り、1N水酸化ナトリウム水溶液5mLを添加し、室温(25℃)で約4時間還流して加水分解する。還流後の溶液を1mol/Lの硫酸で中和したものを測定用試料として用い、HPLC分析に供し、下記分析条件で測定する。また、L-乳酸の標準試料及びD-乳酸の標準試料を用いて、同様の方法でHPLC分析を行い、予めそれぞれの検量線を作成する。
HPLC分析により得られたL-乳酸及びD-乳酸のピーク面積より、前記検量線からそれぞれの含有量を算出し、下記式(1)に基づきL-乳酸の光学純度を算出することができる。また、下記式(2)に基づきD-乳酸の光学純度を算出することができる。
L-乳酸の光学純度(%)=100×(L体量-D体量)/(L体量+D体量) ・・・ 式(1)
D-乳酸の光学純度(%)=100×(D体量-L体量)/(L体量+D体量) ・・・ 式(2)
ただし、前記式(1)及び前記式(2)において、「L体量」はHPLC分析により得られたL-乳酸の含有量(質量%)を示し、「D体量」はHPLC分析により得られたD-乳酸の含有量(質量%)を示す。
[分析条件]
・ 装置:PU-2085plusシリーズ(日本分光株式会社製)
・ カラム:Chromolith(登録商標) coated with SUMICHIRAL OA-5000(内径:4.6mm、長さ:150mm、株式会社住化分析センター製)
・ カラム温度:25℃
・ 移動相:2mM CuSO水溶液と2-プロパノールとの混合液(2mM CuSO水溶液:2-プロパノール=95:5(体積比))
・ 流速:1.0mL/分間
・ 検出器:UV(254nm)
・ 注入量:20μL
前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30万以上100万以下が好ましく、35万以上50万以下がより好ましい。前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)が30万以上100万以下であると、好適にシートや糸などへ成形でき、強度の高い成形品が得られる。前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)が30万以上であると、前記ポリ乳酸樹脂組成物をシート状に成形した場合に、溶融強度やひずみ硬化性などが十分に発現でき、目的とするシート成形や紡糸などを好適に行うことができ、前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)が100万以下であると、前記ポリ乳酸樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、加工時の設備負荷が低く、安定して生産することができる。
前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した分子量分布(Mw/Mn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.3~2.4が好ましく、1.5~2.2がより好ましい。前記分子量分布(Mw/Mn)が1.3~2.4であると、分解や架橋反応などの重合反応での意図しない副反応が起きておらず、好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸樹脂の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;Gel Permeation Chromatography)により測定することができる。
具体的には、前記ポリ乳酸樹脂組成物を濃度0.5質量%となるように、クロロホルムで溶解して測定用試料を調製する。調製した測定用試料を1mL注入し、下記分析条件で測定する。また、単分散ポリスチレン標準試料を用いて、同様の方法でゲル浸透クロマトグラフィーを行い、予め分子量校正曲線を作成する。
前記ポリ乳酸樹脂組成物の分子量分布(Mw/Mn)から、前記分子量校正曲線を使用して、ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出することができる。
[分析条件]
・装置:GPC-8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSKgel(登録商標) G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:クロロホルム
・注入量:1mL
・流速:1.0mL/分間
前記ポリ乳酸樹脂の含有量としては、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対する前記ポリ乳酸樹脂の含有量が99質量%以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対して、99.5質量%以上であることが好ましく、99.7質量%以上であることがより好ましく、99.9質量%以上であることが更に好ましい。前記ポリ乳酸樹脂の含有量が99質量%以上であると、リサイクル性や生分解性に優れる。なお、前記ポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸樹脂のみからなるもの(即ち、前記ポリ乳酸樹脂の含有量が100質量%)であってもよい。
<その他の成分>
前記ポリ乳酸樹脂組成物における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、開始剤、触媒、各種添加剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<<開始剤>>
前記開始剤は、前記ポリ乳酸樹脂の開環付加重合反応において、該ポリ乳酸樹脂の分子量を制御するために用いられる。
前記開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、活性水素を有する開始剤が好ましく、例えば、アルコール系開始剤などが挙げられる。
前記アルコール系開始剤としては、脂肪族アルコールのモノアルコール及び多価アルコールのいずれであってもよく、また飽和アルコール及び不飽和アルコールのいずれであってもよい。
前記開始剤の具体例としては、モノアルコール、多価アルコール、乳酸エステルなどが挙げられる。これらの開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどが挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジアルコール;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
前記乳酸エステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
前記開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目標とするポリ乳酸樹脂の分子量に応じて適宜選択することができるが、モノマー1モルに対し、1/10,000モル以下が好ましく、1/20,000モル以下がより好ましく、1/40,000モル以下が更に好ましい。
前記開始剤の水分含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、充分乾燥させ水分量を低減したものが好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppmが更に好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
<<触媒>>
前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機触媒、金属触媒などが挙げられる。前記触媒は、前記ポリ乳酸樹脂の製造、特にポリ乳酸樹脂の前記原材料モノマーの重合に用いられるものである。
-有機触媒-
前記有機触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属原子を含まず、開環重合性モノマーの開環重合反応に寄与し、開環重合性モノマーとの活性中間体を形成した後、アルコールとの反応で脱離、再生するものが好ましい。
例えば、エステル結合を有する開環重合性モノマーを重合する場合、前記有機触媒としては、塩基性を有する求核剤として働く(求核性の)化合物が好ましく、窒素原子を含有する化合物がより好ましく、窒素原子を含有する環状化合物が特に好ましい。このような化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、環状モノアミン、環状ジアミン(例えば、アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物など)、グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物、窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物、N-ヘテロサイクリックカルベンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記環状モノアミンとしては、例えば、キヌクリジンなどが挙げられる。
前記環状ジアミンとしては、例えば、1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネンなどが挙げられる。
前記アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ジアザビシクロノネンなどが挙げられる。
前記グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物としては、例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられる。
前記窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物としては、例えば、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、4-ピロリジノピリジン(PPY)、ピロコリン、イミダゾール、ピリミジン、プリンなどが挙げられる。
前記N-ヘテロサイクリックカルベンとしては、例えば、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン(ITBU)などが挙げられる。
これらの中でも、前記有機触媒としては、立体障害による影響が少なく求核性が高い、或いは、減圧除去可能な沸点を有するという理由により、1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ジフェニルグアニジン(DPG)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、4-ピロリジノピリジン(PPY)、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン(ITBU)が好ましい。
なお、カチオン系の有機触媒も開環重合に用いることができるが、この場合、前記ポリ乳酸樹脂の主鎖から水素を引き抜く(バック-バイティング)ため、分子量分布が広くなり高分子量の生成物を得にくい。
これらの有機触媒のうち、例えば、DBUは、室温で液状であって沸点を有する。このような有機触媒を選択した場合、前記ポリ乳酸樹脂組成物を減圧処理することで、該ポリ乳酸樹脂組成物中から有機触媒をほぼ定量的に取り除くことができる。なお、前記有機触媒の種類や除去処理の有無は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の使用目的等に応じて適宜決定することができる。
-金属触媒-
前記金属触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スズ系化合物、アルミ系化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、アンチモン系化合物等の塩基性を示す化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記スズ系化合物としては、例えば、オクチル酸スズ、ジブチル酸スズ、2-エチルヘキサン酸スズ(II)などが挙げられる。
前記アルミ系化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、酢酸アルミニウムなどが挙げられる。
前記チタン系化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが挙げられる。
前記ジルコニウム系化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロオイキシドなどが挙げられる。
前記アンチモン系化合物としては、例えば、三酸化アンチモンなどが挙げられる。
前記触媒の中でも、前記ポリ乳酸樹脂の製造においては、金属触媒が好ましく、スズ系化合物がより好ましく、2-エチルヘキサン酸スズ(II)が高分子量化しやすいため更に好ましい。前記金属触媒として前記スズ系化合物を使用した場合、好ましくは、前記スズ系化合物を金属触媒として、前記ポリ乳酸樹脂の原材料モノマーであるラクチドを開環付加重合した場合、得られる前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸樹は、その骨格内にスズ原子が配位される。
前記金属触媒の水分含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、充分乾燥させ水分量を低減したものが好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppmが更に好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
前記触媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記金属触媒としてのスズ系化合物の含有量は、IPC発光分析法で定量が可能である。
<<添加剤>>
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加水分解抑制剤、酸化防止剤、安定剤、重合停止剤、界面活性剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、フィラー、熱安定剤、耐光剤、難燃剤、結晶核剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、天然物、離型剤、可塑剤、エントレーナー、未反応のモノマー、その他これらに類似のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、高分子量のポリ乳酸樹脂を製造する過程で、前記ポリ乳酸樹脂組成物に用いる添加剤を用いない、又は最小限に抑えつつ、溶融安定性を担保することが可能となる。したがって、前記ポリ乳酸樹脂組成物の生分解性、並びに、溶融安定性、成形性、及び黄変のない点から、前記添加剤は実質的に含有しないことが好ましく、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対して、1質量%未満がより好ましく、0.5質量%未満が更に好ましい。
-加水分解抑制剤-
前記ポリ乳酸は、一般的に溶融成形を行う際に、少量の水と、該ポリ乳酸樹脂の末端の水酸基又はカルボキシル基とが反応し、加水分解が生じることがある。そのため、前記ポリ乳酸樹脂組成物は、更に、前記ポリ乳酸樹脂が有する水酸基及びカルボキシル基の少なくともいずれかの反応性基と結合する加水分解抑制剤を含有することが好ましい。
前記加水分解抑制剤としては、前記ポリ乳酸樹脂が有する水酸基及びカルボキシル基の少なくともいずれかの反応性基と結合するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル等の架橋剤として広く知られている化合物を使用することができ、例えば、エポキシ系化合物、有機酸ハロゲン化物系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記エポキシ系化合物としては、例えば、メタクリレート系樹脂の側鎖にエポキシ基を導入したもの(例えば、Joncryl(登録商標) ADR 4468、BASF社製)などが挙げられる。
前記有機酸ハロゲン化物系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(例えば、ACTOR TSH、川口化学工業株式会社製)などが挙げられる。
前記イソシアネート系化合物としては、例えば、ポリイソシアネート(例えば、BURNOCK DNW-5500、DIC株式会社製)などが挙げられる。
前記カルボジイミド系化合物としては、特に制限はなく、例えば、ポリカルボジイミド化合物、モノカルボジイミド化合物などが挙げられる。
前記ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、ポリ(4,4'-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4'-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルベンゼン及び1,5-ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドなどが挙げられる。
前記モノカルボジイミド化合物としては、例えば、N,N'-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。
3官能以上の多官能化合物を用いた場合、前記ポリ乳酸樹脂が有する生分解性を損なうことや、加水分解が生じやすいポリ乳酸樹脂の末端の反応性基(例えば、水酸基など)が増えることがある。また、局所的に網目構造が形成される分子内3次元架橋高分子(ミクロゲル)などが形成されることがあり、前記ポリ乳酸樹脂組成物の成形体(例えば、フィルム等)でのフィッシュアイが発生することや、繊維の紡糸工程で糸切れ等のトラブルが発生することがある。そのため、前記加水分解抑制剤としては、2官能の化合物が好ましく、2官能のカルボジイミド化合物が特に好ましい。
前記加水分解抑制剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対して1質量%未満とすることが好ましく、0.5質量%以下とすることがより好ましい。
-酸化防止剤-
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、例えば、(3-(3,5-ジ-テトラ-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート(ヒンダードフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの酸化防止剤は、溶融時のラジカルによる分解を抑制するものである。
-重合停止剤-
一般的に、ラクチドの開環重合でポリ乳酸を得る場合、塩基性を示す触媒を用いる。重合反応後は、分解反応の触媒としても機能するため、重合反応後は失活させることが好ましい。前記塩基性を示す触媒を失活させる酸成分としては、例えば、二次酸化防止剤としても用いられる安息香酸、塩酸、燐酸、メタリン酸等のリン元素を含有する化合物、酢酸、乳酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記重合停止剤の含有量としては、特に制限はなく、後述する重合反応で使用する触媒量に応じて、適宜添加量を決定することができる。
-フィラー-
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機フィラー、有機フィラーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記無機フィラーとしては、例えば、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、層状珪酸塩、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。これらの無機フィラーは、前記ポリ乳酸樹脂組成物の成形体の機械的強度、耐熱性、及び線膨張率の改善に好適である。
前記有機フィラーとしては、例えば、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品、またソルビトール化合物、安息香酸及びその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物などが挙げられる。
前記フィラーの平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、7nm~100nmが好ましい。
前記フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対して、0.3質量%~5質量%が好ましい。
-エントレーナー-
一般的に、エントレーナーとは、溶解度を上昇させる物質を意味する(岩井 芳夫、内田 博久、「超臨界流体に対する高沸点化合物の溶解度」、高圧力の科学と技術、1996、Vol.5、No.2、p.71-77参照)。
本発明においては、前記ポリ乳酸樹脂組成物又はその原材料の溶解度を上昇させる物質を意味する。ただし、前記圧縮性流体は、前記その他の成分としてのエントレーナーに含まず、前記圧縮性流体の作用を補助する物質であることが好ましい。
前記エントレーナーとしては、上述の作用を有する物質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の溶剤などが挙げられる。
前記エントレーナーの含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂組成物の生分解性、並びに、溶融安定性、成形性、及び黄変がない点から、前記添加剤は実質的に含有しないことが好ましく、前記ポリ乳酸樹脂組成物の全質量に対して、1質量%未満がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
-未反応モノマー-
前記ポリ乳酸は、一般的にラクチドと言われる乳酸を縮合した環状二量体の開環付加重合で得られる。重合反応が平衡反応であるために、一定量の未反応モノマー(以下、「残存モノマー」、「残存開環重合性モノマー」などと称することがある)が生じることがある。したがって、前記ポリ乳酸樹脂組成物は未反応のモノマーを含有していてもよく、その含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましい。前記ポリ乳酸樹脂組成物に含まれる未反応のモノマーの含有量が5,000ppm以下であると、前記ポリ乳酸樹脂組成物の成形体の製造時の溶融安定性を担保することができる。
前記未反応モノマーの含有量は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準、第3版改訂版、2004年6月追補、第3部、衛生試験法、P13」に記載の開環重合性モノマー量の測定方法に従って求めることができる。
具体的には、前記ポリ乳酸樹脂組成物0.1gをジクロロメタン5mLに均一に溶解し、2mM CuSO水溶液/2-プロパノール=95/5(体積比)を加えてポリ乳酸樹脂組成物を再沈させて得られた上澄み液を、HPLCに供し、下記分析条件で未反応モノマーを分離し、内部標準法により定量することにより、ポリ乳酸樹脂組成物中の残存開環重合性モノマーの含有量を測定することができる。
[分析条件]
・装置:分取精製HPLCシステム(日本分光株式会社製)
・分析カラム:SUMICHIRAL OA-5000(内径4.6mm、長さ150mm、粒子径5μm、株式会社住化分析センター製)
・移動相:2mM CuSO水溶液/2-プロパノール=95/5(体積比)
・内部標準:2,6-ジメチル-γピロン
・流速:1.0mL/分間
・カラム温度:25℃
・検出器:フォトダイオードアレイ検出器(PDA)(UV:254nm)
・測定時注入量:20μL
<ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、乳酸のD体、乳酸のL体、ラクチドのD体、及びラクチドのL体の少なくともいずれかを原材料として用い、パラレルプレート型回転粘度計を用いて下記測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s以上となるように、かつ、前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上となるように、かつ、ポリ乳酸樹脂の含有量が99質量%以上となるように重合反応を行う重合工程を含み、更に必要に応じて、原材料混合及び溶融工程、重合停止工程、脱モノマー工程、添加剤添加工程などのその他の工程を含んでいてもよい。
前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造に用いる重合装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、連続重合プロセス及び回分式プロセスのいずれの反応プロセスも採用することができ、各段階で前記ポリ乳酸樹脂組成物の溶融粘度に対応した重合装置を使用することが好ましい。これらの中でも、前記重合装置としては、装置効率や製品の特性、品質等を勘案し、連続重合プロセスを選択することが好ましい。また、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料モノマー(ラクチドなど)、更に必要に応じて、触媒、開始剤等のその他の材料を混合する工程や、ラクチドを10質量%~30質量%含有するポリラクチドは、ラクチドの含有量が10質量%未満のポリラクチドに比較して溶融粘度が大きく低下しており、その時の粘度に合わせて連続重合プロセスとすることが好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂組成物の溶融粘度としては、特に制限はなく、フィード、流速、モノマー転化率、反応温度などで一概に規定は難しいが、600Pa・s以下が好ましく、300Pa・s以下がより好ましい。前記ポリ乳酸樹脂組成物の溶融粘度が600Pa・sを超えないときは、通常の縦型重合槽が使用できる。
前記縦型重合槽としては、例えば、碇翼重合槽、傾斜翼重合槽、スパイラル掻きあげ翼重合槽、フルゾーン翼重合槽、マックスブレンド翼重合槽、ログボーン翼重合槽などの従来公知の撹拌翼を具備した低粘度から中粘度用溶融重合装置が挙げられる。これらの中でも、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料モノマー(ラクチドなど)、更に必要に応じて、触媒、開始剤等のその他の材料を効率よく混合し、開環重合熱を効率よく除去できるフルゾーン翼、及び比較的溶融粘度の高いプレポリマーの重合に適した碇翼を具備する縦型重合槽を直列で使用することが好ましい。
また、前記ポリ乳酸樹脂組成物の溶融粘度が600Pa・sを超える場合、比較的高い溶融粘度の樹脂の製造に好適な重合装置が好ましく使用できる。この時に、モノマー(例えば、ラクチド)の重合反応で生じる副反応として、エステル交換反応や分子鎖切断を抑制しつつ、反応熱を除去する必要があり、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、無軸籠型撹拌槽、バイボラック(住友重機械工業株式会社製)、N-SCR(三菱重工業株式会社製)、めがね翼(株式会社日立製作所製)、格子翼、ケニックス式、又はズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合槽などを使用できる。前記ポリ乳酸樹脂組成物の色調の点で、セルフクリーニング式の重合装置であるフィニッシャー、N-SCR、二軸押出しルーダーなども好適に使用できる。これらの中でも、混練性、生産効率、前記ポリ乳酸樹脂組成物の色調、安定性、耐熱性などの点から、前記重合装置としては、二軸押出機を使用するのが特に好ましい。
前記連続重合プロセスを採用する場合は、重合装置に先行する仕込み溶融槽を使用することが好ましい。前記仕込み溶融槽としては、特に制限はないが、効率よく撹拌できるフルゾーン翼撹拌槽を使用することが好ましい。
<<原材料混合及び溶融工程>>
前記原材料混合及び溶融工程は、前記重合工程の前に行われ、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料(乳酸、ラクチド、その他のモノマー、更に必要に応じて、前記その他の成分等)を混合及び溶融する工程である。
前記原材料を溶融する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料を昇温して溶融する方法などが挙げられる。
前記原材料を混合及び溶融する際の加熱温度としては、前記原材料を混合及び溶融することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂のモノマーの溶融温度以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましく、105℃~130℃が更に好ましい。前記溶融工程の温度を前記ポリ乳酸樹脂のモノマーの溶融温度以上に設定することで、前記原材料を混合及び溶融することができる。
前記重合工程において、前記触媒を使用することができ、前記原材料混合工程において、予め前記原材料として前記触媒を添加してもよい。
前記触媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記モノマーに対して、50ppm以上5,000ppm以下が好ましく、100ppm以上1,000ppm以下がより好ましい。前記触媒の使用量が前記モノマーに対して、50ppm以上であると、該触媒が失活することなく、ラクチドの開環付加重合を定量的に進行することができる。また、前記触媒の使用量が前記モノマーに対して、5,000ppm以下であると、過剰に反応することによる副反応で、前記ポリ乳酸樹脂が着色したり、前記ポリ乳酸樹脂の分子量が低下したりすることを防ぐことができる。
また、前記重合工程において、不均一に重合が開始されることを防ぐために、モノマーが前記触媒に触れる前に、予めモノマーと開始剤とをよく混合しておくことが好ましい。
前記原材料混合工程は、前記仕込み溶融槽で行うこともできる。
前記仕込み溶融槽の反応条件としては、原材料モノマーの融点(例えば、ラクチドの融点は100℃)より高い限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内温105℃~190℃、不活性雰囲気下、微加圧であることが好ましく、内温110℃~180℃、不活性雰囲気下、内圧12kPa~550kPaであることがより好ましく、反応系内に外気、水分などを取り込まないようにする点から、101.3kPa~304kPaであることが更に好ましく、内圧が111.5kPa~202.7kPaであることが、扱いが簡単で、水分、外気の防護効果も十分大きく特に好ましい。
前記回分式プロセスを採用する場合、各重合槽での生成物を所望により、固化し、取り出しすることもできる。あるいは反応の当初より、碇型撹拌翼具備撹拌槽にて、撹拌力モーメントや溶融粘度を機械的あるいはモータ撹拌電力などで電気的にモニタしつつ、反応の初期(即ち、前記原材料混合工程)は、例えば190℃以下の温度で、次いで反応の進行と共に反応温度を上昇させ、最終的に(即ち、後述する重合工程)190℃~240℃で反応させることも好ましい実施態様の一つである。
前記仕込み溶融槽で得られた前記ポリ乳酸樹脂組成物の前駆体(「プレポリマー」と称することがある)は、製造効率を向上させるため、固化させることなく溶融状態を維持したまま、次の重合工程における重合槽に移送されることが好ましいが、場合によっては所定の形状、例えばチップとして固化させた後移送することも可能である。特に重合途中のプレポリマーはチップ化され、適宜保存された後、次の重合槽に移送することもできる。このとき溶融重合法の常として、プレポリマーが水分を吸収、光、酸素などにより劣化を防ぐ必要がある。
次工程での重合活性を十分高いレベルに保つためには、前記プレポリマーの水分の含有量としては、20ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下が更に好ましい。
<<重合工程>>
前記重合工程は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料である乳酸及びラクチドの少なくともいずれか、更に必要に応じて、その他のモノマーを重合させる工程である。
前記ポリ乳酸樹脂の原材料のモノマーを重合させる方法としては、特に制限はなく、公知の高分子量のポリ乳酸樹脂の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、乳酸の直接溶融重合法、固相重合法、乳酸の2量体であるラクチドの溶融開環重合法(ラクチド法)などが挙げられる。これらの中でも、前記ポリ乳酸樹脂のモノマーを重合させる方法としては、ラクチドの溶融開環重合法が、縮合水が生成しない製造プロセスであり、高分子量化しやすく、重量平均分子量(Mw)が30万以上の高分子量体を得る観点から好適に用いられる。
前記ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の酸価は、残存モノマー(乳酸)に関連付けられる数値である。前記乳酸は、上記した通り、加水分解により分子量を低下させる水酸基と、触媒活性を失活させるカルボキシル基とを併せ持つため、ラクチドの開環付加重合の反応プロセスにおいて、乳酸の存在は好ましくない。したがって、前記ポリ乳酸樹脂の酸価としては、0.5mgKOH/g以下が好ましく、0.1mgKOH/g以下がより好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂の酸価は、JIS K 0070-1992などにより測定することができる。
前記ポリ乳酸樹脂組成物は、圧縮性流体中で重合して製造することができる。前記圧縮性流体中で重合して製造する方法は、高温での加熱を避けることができ、劣化した生成物をより生じ難い点で好ましい。
次に、圧縮性流体について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造で好適に用いられる圧縮性流体の温度と圧力に対する物質の状態を示す相図である。図2は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造で好適に用いられる圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。
「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、及び(3)のいずれかの領域に存在するときの状態を意味する。このような領域においては、物質はその密度が非常に高い状態となり、常温常圧時とは異なる挙動を示すことが知られている。なお、物質が(1)の領域に存在する場合には超臨界流体となる。
「超臨界流体」とは、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度(臨界温度)及び圧力(臨界圧力)領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮しない流体のことである。また、物質が(2)の領域に存在する場合には液体となるが、本実施形態においては、常温(25℃)、常圧(1気圧)において気体状態である物質を圧縮して得られた液化ガスを表す。また、物質が(3)の領域に存在する場合には気体状態であるが、本実施形態においては、圧力が臨界圧力(Pc)の1/2(1/2Pc)以上の高圧ガスを表す。前記圧縮性流体は、臨界圧力以上かつ臨界温度以上の超臨界流体であることが好ましい。
前記圧縮性流体を構成する物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素、メタン、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、エチレン、ジメチルエーテルなどが挙げられる。これらの圧縮性流体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力が約7.4MPa、臨界温度が約31℃であって、容易に超臨界状態を作り出せること、取扱いが容易であることなどの点で好ましい。
前記溶融状態となった前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料への前記圧縮性流体の供給量としては、前記ポリ乳酸樹脂の種類と前記圧縮性流体との組合せ、温度、圧力などによって、前記圧縮性流体の前記ポリ乳酸への溶解度が変わるため、特に制限はなく、適宜調整することができる。例えば、前記ポリ乳酸と前記二酸化炭素の組合せであれば、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料を100質量部とした場合、前記二酸化炭素の供給量は、2質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上10質量部以下がより好ましく、7質量部以上10質量部以下が更に好ましい。前記ポリ乳酸樹脂組成物100質量部に対して、前記二酸化炭素の供給量が2質量部以上であると、前記ポリ乳酸樹脂組成物を可塑化し、前述の副反応を抑制することができる。また、前記ポリ乳酸樹脂組成物100質量部に対して、前記二酸化炭素の供給量が20質量部以下であると、前記二酸化炭素と前記ポリ乳酸樹脂組成物が分離することがなく、均一に反応することができる。
重合時の圧力、即ち圧縮性流体の圧力は、圧縮性流体が液化ガス(図2の相図の(2))、又は高圧ガス(図2の相図の(3))となる圧力でもよいが、超臨界流体(図2の相図の(1))となる圧力が好ましい。圧縮性流体を超臨界流体の状態とすることで、ラクチドの開環重合性モノマーの溶解又は可塑化が促進され、均一かつ定量的に重合反応を進めることができる。
なお、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、反応の効率化やポリマー転化率等を考慮すると、その圧力としては、3.7MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、臨界圧力の7.4MPa以上が更に好ましい。また、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、同様の理由により、その温度は25℃以上であることが好ましい。
本実施形態において、圧縮性流体の濃度としては、圧縮性流体に開環重合性モノマー及び開環重合性モノマーから生成されるポリマーを溶解又は可塑化させることが可能な濃度である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記圧縮性流体中で重合して前記ポリ乳酸樹脂組成物を製造する方法は、連続式重合装置を使用して行うことができる。
<<重合停止工程>>
前記重合停止工程は、前記重合反応を停止する工程である。
前記重合反応を停止する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記重合工程で得られた生成物に、末端封止剤(重合停止剤)を添加する方法、触媒を失活させる失活剤を加える方法などが挙げられる。前記重合停止工程は、後述する脱モノマー工程の前に行うことが好ましい。なお、前記末端封止剤を添加する方法においては、粘度が急激に上昇する前の段階で加えることが好ましく、具体的には前記圧縮性流体を添加した環境下で、前記末端封止剤を添加することが好ましい。
前記末端封止剤としては、ポリ乳酸樹脂の水酸基と反応するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン系化合物(リン元素を含有する化合物)、カルボン酸化合物、塩酸、又はこれらの無水物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記リン系化合物としては、例えば、リン酸、ホスホノ酢酸トリエチル、メタリン酸などが挙げられる。
前記カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、乳酸、クエン酸などが挙げられる。
これらの中でも、モノカルボン酸化合物及びモノカルボン酸無水物の少なくともいずれかが好ましく、無水酢酸、酢酸、クエン酸が、前記ポリ乳酸樹脂の末端水酸基と効率良く反応することができる点でより好ましい。
なお、これらの末端封止剤としての酸成分は、前記触媒に配位することで、触媒活性を低下させる効果を有することから、失活剤としても機能する。
前記末端封止剤の使用量としては、特に制限はなく、添加する目的や、前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記添加剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以下が好ましい。前記末端封止剤の使用量を、前記ポリ乳酸樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以下とすることで、コンポスト可能な樹脂であるポリ乳酸樹脂の特徴を生かすことができる。また、前記ポリ乳酸樹脂組成物の末端封止を行うことで、後述する脱モノマー工程での分子量低下を抑制することができる。
前記末端封止剤は、前記ポリ乳酸樹脂が有する水酸基と反応することが必須であり、カルボン酸等の酸成分が好ましい。したがって、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料として前記触媒を含む場合、前記重合停止工程は、該触媒を失活させるための触媒失活工程としても作用する。
前記ポリ乳酸樹脂組成物が前記触媒を含む場合、該触媒は、解重合(分解)反応の触媒としても機能するため、前記重合反応後に触媒活性を残すことは好ましくない。前記触媒は物質的に除去することが困難であるため、失活させることが好ましい。前記触媒の活性を失活させることで、温湿度に対して耐久性が付与され、前記ポリ乳酸樹脂組成物の溶融時の粘度低下を抑制することができる。これは、前記末端封止剤、好ましくは前記モノカルボン酸化合物及び前記モノカルボン酸無水物の少なくともいずれかが前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸樹脂が有する金属触媒由来の金属原子、好ましくはスズ原子に配位することで、該金属原子への水分子の配位を阻害し、前記ポリ乳酸樹脂の加水分解を起こさせないためであると考えられる。したがって、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造において、前記末端封止剤を用いることで、前記ポリ乳酸樹脂組成物を再溶融して成形体に加工する際に、該ポリ乳酸樹脂組成物に含まれる微量の水分による加水分解を抑制することができる。
<<脱モノマー工程>>
前記脱モノマー工程は、前記重合工程後、好ましくは、前記重合停止工程後に未反応モノマーを除去する工程である。前記脱モノマー工程は、前記ポリ乳酸樹脂の分子量低下の抑制や副反応の抑制に有利である。
前記未反応モノマーを除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリ乳酸樹脂組成物中を真空ポンプ等で減圧処理し、フィルターで除去する方法などが挙げられる。
前記未反応モノマーは前記圧縮性流体に溶解する性質を有するため、効率的に前記未反応モノマーを除去することができる。したがって、前記脱モノマー工程により、同時に前記圧縮性流体も除去することができる。
<<添加剤添加工程>>
前記添加剤添加工程は、前記重合工程で得られた生成物に、前記添加剤を添加する工程である。
乳酸は、水酸基及びカルボキシル基の2つの反応性基を有する。前記乳酸の水酸基は、開始剤のアルコールと同様に作用し、前記ポリ乳酸樹脂の分子量を低下させ、前記乳酸のカルボキシル基は、触媒の活性を損なわせることで重合反応を阻害するため、これらを除去することが好ましい。
前記乳酸の水酸基及びカルボキシル基の少なくともいずれかを除去する方法としては、例えば、前記ポリ乳酸樹脂組成物に前記加水分解抑制剤を添加する方法の他、低分子化合物であれば減圧操作を行うこと方法などが挙げられる。
前記加水分解抑制剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記加水分解抑制剤は、一般的に1質量%以上で使用することが推奨されているが、前記ポリ乳酸樹脂組成物における前記ポリ乳酸樹脂は、上記の通り、ポリ乳酸樹脂の末端の反応性基が少ない方が好ましく、この観点から、前記加水分解抑制剤の使用量は、前記生成物に対して1質量%未満とすることが好ましい。
また、前記添加剤添加工程で前記酸化防止剤を添加することにより、得られるポリ乳酸樹脂組成物の溶融時のラジカル分解を抑制することができる。
また、前記添加剤添加工程で前記重合停止剤を添加することにより、得られるポリ乳酸樹脂組成物が重合後に分解されることを抑制することができる。
次に、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法に使用する連続式重合装置の一例を、図を用いて具体的に説明するが、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法及び製造装置は、これに限られるものではない。
図3は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造で好適に用いられる連続式重合装置の一例を示す図である。
図3に示すように、連続式重合装置100は、二軸押出機(例えば、JSW 株式会社日本製鋼所製)を用い、原材料混合エリアa、重合エリアb、及び脱モノマーエリアcから構成される。液体材料は計量ポンプで供給し、常温固体の原材料は別途タンクで加熱溶融させた後計量ポンプで供給することができる。
-原材料混合エリアa-
原材料混合エリアaでは、モノマー、開始剤、及び圧縮性流体の混合と昇温を行う。原材料として、タンク1からポリ乳酸樹脂のモノマーが計量ポンプ2を経て供給され、タンク3から開始剤が計量ポンプ4を経て供給され、タンク5から触媒が計量ポンプ6を経て供給され、タンク7から圧縮性流体が計量ポンプ8を経て供給される。連続式重合装置100(押出機)の上流部から、圧縮性流体、モノマー、開始剤、及び触媒の順に投入される。原材料混合エリアaにおけるこれらの原材料の滞留時間としては、特に制限はないが、1分間~10分間が好ましい。前記原材料の滞留時間が1分間以上であると、原材料を均一に混ぜることができ、得られるポリマーの分子量分布がブロードになるのを防止することができる。また、前記原材料の滞留時間が10分間以下である場合は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の着色を防止することができる。また、材料を速やかに均一にすることが望まれるため、原材料混合エリアaにおける撹拌は乱流場とすることが望しい。重合エリアbでの重合反応での滞留時間と切り分けるために、原材料混合エリアaをループリアクターとすることもできる。
使用するモノマーは、含有する水分やポリ乳酸樹脂のモノマーであるラクチドの分解物である乳酸などの低分子有機酸などを除去するための前処理を行っていてもよい。
前記モノマーの前処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、減圧乾燥、再結晶などのプロセスによる除去方法;活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂などの吸着剤を使用する方法などが挙げられる。
また、前記モノマーが常温固体である場合は、供給前に所定の温度で溶融させたものを供給してもよい。
前記開始剤及び前記圧縮性流体を混合する方法としては、特に制限はなく、連続式重合装置100(押出機)で混合してもよく、またラクチドを溶解させたタンク内で混合してもよい。
前記熱安定化剤や耐光剤等の添加剤を加える場合は、重合反応を阻害しない限り、原材料混合エリアaで混合することもできるし、重合エリアb及び脱モノマーエリアcのいずれか1つ又は2つ以上のエリアで添加することもできる。
なお、原材料混合エリアaと記載しているが、触媒を投入した時点で、重合反応は開始される。ただし、その反応率としては、おおよそ50%以下(残存モノマーが50%以上)、好ましくは20%以下(残存モノマーが80%以上)である。
原材料混合エリアaで混合した原材料混合物は、調圧バルブ17により重合エリアbに供給する。
-重合エリアb-
重合エリアbでは、高温状態を維持することでポリ乳酸樹脂の重合反応を完結させる。前述の原材料混合エリアaは、原材料の混合及び均一化に特化したプロセスに対して、重合エリアbは、粘度上昇した流体を均一に撹拌し、反応熱を速やかに除去する必要がある。
重合エリアbにおける反応時間としては、特に制限はなく、得られるポリ乳酸樹脂の分子量によって調整することができるが、30分間~90分間が好ましい。前記反応時間が30分間以上である場合、転化率を高くすることができる。後述する脱モノマーエリアcにおける着色防止、生産性の観点から、重合エリアbにおける反応時間は120分間以下が好ましい。後述する脱モノマーエリアcにおいて所定の真空度を得るには、重合エリアbの出口における転化率が90%以上であることが好ましい。
ここで、「転化率」とは、前記ポリ乳酸樹脂組成物(100質量%)から後述する未反応モノマー量(質量%)を差し引いた割合(%)を意味する。
重合エリアbにおける反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、180℃~230℃が好ましい。前記反応温度が230℃以下であると、エステル交換反応や分子鎖切断等の副反応を抑制でき、ポリ乳酸樹脂を好適に高分子量化することができ、前記反応温度が180℃以上であると、前記モノマーの重合反応において副反応が抑制でき、高分子量化することができる。
また、得られるポリ乳酸樹脂の着色及び分子量の低下を避けるため、所望の反応温度に昇温する過程での連続式重合装置100(押出機)側面及びシリンダー温度は、ポリ乳酸樹脂の温度に対して+20℃以内で制御することが望ましい。
-脱モノマーエリアc-
ラクチドの開環付加重合は、平衡反応のため一定の未反応モノマー(ラクチド)が存在する。これを除去するために、圧縮性流体とモノマー除去するプロセスが必要である。連続式重合装置100において、脱モノマーエリアcは、残存モノマー除去トラップ14及び真空ポンプ15から構成される。
また、前記圧縮性流体にモノマーであるラクチドが溶解する特徴を利用することで、得られるポリ乳酸樹脂の分子量の低下や副反応の抑制に有利となり、効率的に残存モノマーを除去することができる。
脱モノマーエリアcの温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、180℃~220℃が好ましく、190℃~210℃がより好ましい。脱モノマーエリアcの温度が180℃~220℃であると、重合平衡が比較的ポリマー(ポリ乳酸樹脂)生成寄りとなり、かつ分子切断なく未反応モノマーを除去することができる。
-その他のエリア-
連続式重合装置100は、重合エリアbにおいて原材料モノマーを重合させた後に、タンク9から末端封止剤を、計量ポンプ10を経て供給し、ポリ乳酸樹脂と末端封止剤とを反応させるエリアや、更に必要に応じて、タンク11から加水分解抑制剤を、計量フィーダー12を経て供給するエリアを有していてもよい。なお、脱モノマー後のポリ乳酸樹脂は、連続式重合装置100中で分子鎖の切断による分子量の低下が起こるため、高分子量体のポリ乳酸樹脂を得るためには、末端封止剤の供給エリア及び加水分解抑制剤の供給エリアの合計滞留時間は30分間以下であることが好ましく、10分間以下であることがより好ましい。
連続式重合装置100では、以上の工程を経て得られる反応生成物を、ポリ乳酸樹脂組成物とする。このようにして得られるポリ乳酸樹脂組成物の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペレット状、シート状などが挙げられる。
前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、粘度上昇に伴う副反応を抑制することができ、生分解性を有し、溶融安定性及び成形性に優れ、かつ黄変のない、高分子量のポリ乳酸樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物を好適に製造することができる。
前記ポリ乳酸樹脂組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粒子、フィルム、シート、発泡シート、発泡ビーズ、射出成形品、繊維、容器などに成形して、例えば、日用品、工業用資材、農業用品、衛生資材、医薬品、化粧品、電子写真用トナー、包装材料、電気機器材料、家電筐体、自動車材料等の用途に幅広く用いることができる。
(成形体及び成形体の製造方法)
本発明の成形体は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなるものである。
前記成形体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム、シート、発泡シート、発泡ビーズ、繊維、容器などが挙げられる。
本発明による溶融粘度の高いポリ乳酸樹脂組成物は、高い溶融粘度が求められるブロー成型による容器や、分子量が低いポリ乳酸を適宜ブレンドしてひずみ硬化性を利用したフィルム、シート、発泡シートなどに好適である。
本発明の成形体の製造方法は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形する工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記成形方法としては、特に制限はなく、目的とする成形体の形状に応じて、公知の方法の中から適宜選択することができる。例えば、シート状の成形体の製造には、シート加工など熱可塑性樹脂に対して用いられる従来公知のシートの製造方法を用いることができる。
シートやキャストフィルム等の成形体においては、シート幅又はフィルム幅がダイ出口幅より狭くなるネックイン現象があるが、このネックイン量も溶融粘度や溶融張力と密接な関係がある。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、溶融安定性に優れるだけでなく、分子量が大きくばらついたり、ゲル分が生じたりすることもないため、得られる成形体の再現性や均一性にも優れる。そのため、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、伸び特性に優れ、ネックインが生じにくい点で優れる。したがって、このような本発明のポリ乳酸樹脂組成物を製造することができる本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、実用的な製造方法を提供するものである。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、溶融紡糸及び乾式紡糸にも好適な材料である。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、製糸条件、紡績条件、編織条件、後処理条件、染色条件、加工条件を目的に応じて設定でき、本発明の溶融粘度の高いポリ乳酸樹脂組成物は、糸切れ等のトラブルなく、所望の、太さ、断面形状、繊度(テックス、デニール、番手等)、より、引っ張り強さ及び伸び率、結束強さ、耐熱性、捲縮度、吸水性、吸油性、嵩高さ、腰の強さ、風合い等の物性や特性を有する糸やテキスタイルに加工することができる。
前記成形体の製造方法の具体例としては、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法、発泡成形法、ブロー成形法、紡糸法などが挙げられる。
前記ブロー成形法としては、例えば、従来、ドローダウン等の不具合を解消するために、多官能イソシアネートでポリ乳酸を伸長させて分子量を上げる方法があった(例えば、特開2014-88579号公報参照)。しかし、この従来の方法は、ポリ乳酸樹脂の残存モノマーやラクチド等が伸長を阻害する原因であり、バラつきの原因となるため、制御が難しいという問題があった。これに対し、本発明の成形体の製造方法によれば、溶融安定性に優れ、ゲル化を抑制できる本発明のポリ乳酸樹脂組成物用いるため、ブロー成形法や、ゲル成分の発生が好ましくない繊維やフィルムなど製造に好適である。
前記ポリ乳酸樹脂組成物をシート状に加工する際の加工条件としては、前記ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の種類や、装置等に基づいて、適宜決定することができ、例えば、前記ポリ乳酸樹脂組成物をTダイ法で加工する場合、温度は、Tダイを出口に取り付けた押出成形機によって、好ましくは160℃以上250℃以下に加熱した前記ポリ乳酸樹脂組成物をTダイから押し出すことにより、シート状に成形加工することができる。
なお、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造装置において、更に成形エリアを設け、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造と、前記成形体の製造とを一体化して行ってもよい。
前記成形体の一態様としての容器及び発泡シートについて、以下に具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
<容器及び容器の製造方法>
前記容器は、前記ポリ乳酸樹脂組成物、更に必要に応じて、その他の成分を用いて得られる容器である。
<<容器の製造方法>>
前記容器の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ブロー成形法が好適に用いられる。前記ブロー成形法としては、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いる限り、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
前記ブロー成形においては、賦形性の指標としてダイスウェルがある。前記ダイスウェルの度合いは、出てきたポリ乳酸樹脂組成物の最大径とノズル径との比で示される。本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いたブロー成形のダイスウエル比としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、1.2~3.5が好ましく、1.3~2.5がより好ましく、1.4~2.0が更に好ましい。前記ダイスウエル比が1.2以上であると、前記ポリ乳酸樹脂組成物が高倍率において良好なセル形態を保つことができ、発泡ブロー成形性が向上する。一方、ダイスウエル比が3.5以下であると、工業的に製造が容易であり、実用性が高い。
<発泡シート及び発泡シートの製造方法>
前記発泡シートは、前記ポリ乳酸樹脂組成物、更に必要に応じて、その他の成分を用いて得られるポリ乳酸発泡体である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、高分子量かつ、溶融時に分解しにくいため、シートの強度を損ねることなく、発泡倍率を高くすることができるため、前記発泡シートに好適に用いることができる。
<<発泡シートの物性>>
前記発泡シートの物性として、かさ密度、発泡倍率、平均発泡径、及びシート厚みについて説明する。
-かさ密度-
前記発泡シートのかさ密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01g/cm以上0.250g/cm以下であることが好ましく、0.025g/cm以上0.125g/cm以下であることがより好ましく、0.030g/cm以上0.083g/cm以下であることが更に好ましい。本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて前記発泡シートのかさ密度を0.01g/cm以上0.250g/cm以下にすることで、前記発泡シートは、シート強度と緩衝性とを優れたバランスで有することができる。
前記発泡シートのかさ密度は、前記発泡シート製造時の発泡温度、発泡剤の量、及びダイの種類などで発泡倍率を変えることにより調整可能である。具体的には、前記発泡シート製造時の発泡温度を低くする、前記発泡剤の量を多くするなどの方法を取ることで発泡倍率が上がるため、前記発泡シートのかさ密度を小さくすることができる。
本発明において、前記発泡シートのかさ密度は、次のように測定した値である。
前記発泡シートを温度23℃、相対湿度50%に調整された環境下で24時間以上静置し、50mm×50mmの試験片を切り出す。切り出した試験片に対して、自動比重計(例えば、DSG-1、株式会社東洋精機製作所製)を用い、液中秤量法を用いてかさ密度を求める。これは発泡シート大気中の重量(g)を精秤し、次いで発泡シートの水中での重量(g)を精秤し、下記式(3)により算出されるものである。
かさ密度[g/cm]=大気中の試料重量[g]/{(大気中の試料重量[g]-液体中の重量[g])×液体密度[g/cm]} ・・・ 式(3)
-発泡倍率-
前記発泡シートの発泡倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5倍~100倍が好ましく、10倍~40倍がより好ましく、15倍~35倍がさらに好ましい。前記発泡シートの発泡倍率が5倍~100倍であると、前記発泡シートは、緩衝性能と強度を維持できる。
なお、前記発泡シートの発泡倍率は、下記式(4)の通り、発泡シートを構成しているポリ乳酸樹脂組成物の密度(真密度ρ0)をかさ密度(ρ1)で除することで、求めることができる。なお、ここでの真密度は、原材料のポリ乳酸樹脂の密度であり、文献値や原材料のペレットを実測しても構わない。真密度は、約1.25g/cmである。
発泡倍率=真密度(ρ0)/かさ密度(ρ1) ・・・ 式(4)
-平均発泡径-
前記発泡シートの発泡径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~200μmが好ましく、20μm~100μmがより好ましく、30μm~80μmが更に好ましい。
前記平均発泡径は、フィラーの含有量、発泡の分散状態、発泡シートの溶融張力等により適宜調整できるが、これらに限定されない。例えば、かさ密度が0.025g/cm~0.010g/cmである場合、平均発泡径は200μm以下が好ましい。
前記発泡シートの平均発泡径の測定方法は、例えば、イオンミリング装置を用いて発泡シートを断面加工し、その断面をSEMで撮影し、画像SEM写真を取得する。得られた断面SEM写真(倍率は、例えば3,000倍とする)は、Image-Pro Premier(mediacy社製)のソフトを使用して、発泡(空隙)に該当する灰色成分と樹脂成分に該当する白色成分とに二値化する。次いで、所定の範囲内(例えば、35μm×20μm)における発泡に該当する灰色成分の平均粒子径(フェレ径)を求める。フェレ径が0.5μm以上の灰色成分(発泡)のみの平均値を算出することで、平均発泡径を算出できる。
-シート厚み-
前記発泡シートのシート厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0mm~10.0mmが好ましく、1.5mm~7.0mmがより好ましく、2.0mm~5.0mmが更に好ましい。前記シート厚みが、1.0mm~10.0mmであると、発泡を微細かつ均一にできるため、前記発泡シートが容易に成形できると共に、十分な緩衝性を有することができる。
前記シート厚みは、平均厚みとしてよい。平均厚みは、発泡シートの断面において発泡シートの厚みを複数箇所で測定し、これらの測定した厚みの平均値としてもよい。
<<発泡シートの製造方法>>
前記発泡シートの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、押出し混練成形法、射出成形法などが挙げられる。これらの中でも、前記発泡シートの製造方法としては、押出し混練成形法が好適に用いられる。
前記発泡シートの製造方法は、溶融工程と、圧縮性流体供給工程と、混練工程と、発泡工程と、成形工程と、を含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
-溶融工程-
前記溶融工程は、前記ポリ乳酸樹脂組成物を溶融する工程である。
前記溶融工程は、前記ポリ乳酸樹脂組成物を昇温して溶融する。
なお、前記発泡シートの製造方法における溶融工程は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法における原材料混合工程と同様にして行うことができる。そのため、前記溶融工程は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料を混合及び溶融する工程であってもよい。
前記溶融工程における加熱温度としては、前記ポリ乳酸樹脂組成物を溶融することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂の溶融温度以上であることが好ましい。前記溶融工程における加熱温度を前記ポリ乳酸樹脂の溶融温度以上とすることで、前記ポリ乳酸樹脂組成物を溶融することができる。これにより、次の圧縮性流体供給工程において、前記ポリ乳酸樹脂組成物を圧縮性流体と均一に混合できる状態にすることができる。
前記溶融工程において、前記ポリ乳酸樹脂組成物に加え、発泡核材、鎖伸長剤、発泡剤、添加剤等のその他の成分を添加し、これらを溶融混合することが好ましい。
--発泡核剤--
前記発泡核材(以下「フィラー」と称することもある)は、前記発泡シートの気泡径及び数密度などを調節するために含有することが好ましい。
前記発泡核材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系核材、有機系核材などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記無機系核材としては、例えば、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、層状珪酸塩、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられるこれらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記無機系核材としては、効率的に分散が可能で添加量を少なくでき、環境負荷を低くできる点から、シリカ、酸化チタン、層状珪酸塩が好ましい。
前記有機系核材としては、例えば、澱粉、セルロースナノファイバー、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品、またグリセリン化合物、ソルビトール化合物、安息香酸及びその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記発泡核材の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、添加量当たりの表面積を大きくでき、添加量を少なくできる観点から、短軸方向の長さの個数平均粒径が100nm以下であることが好ましい。
前記発泡核材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記発泡シートの原材料の全質量に対して、3質量%以下が好ましい。前記発泡核材の含有量が3質量%以下であると、前記発泡シートの物性が硬くなり、脆くなることを防ぐことができる。また、生分解性のない発泡核材の含有量はより少ない方が好ましいため、前記発泡核材の含有量は、前記発泡シートの原材料の全質量に対して、1質量%以下であることがより好ましい。
なお、前記有機発泡核材の含有量は、下記測定装置及び測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を用いて求めることができる。
[GC-MSの測定装置及び測定条件]
・ GC-MS装置(ガスクロマトグラフ質量分析):GC-MS QP2010(株式会社島津製作所製)、補器 Py3030D(フロンティア・ラボ株式会社製)
・分離カラム:Ultra ALLOY UA5-30M-0.25F(フロンティア・ラボ株式会社製)
・試料加熱温度:300℃
・カラムオーブン温度:50℃(1分間保持)~昇温速度15℃/分間~320℃(6分間保持)
・イオン化法:Electron Ionization(E.I)法
・検出質量範囲:25~700(m/z)
また、前記無機発泡核剤の含有量は、例えば、JIS K 7250-1:2006(プラスチック-灰分の求め方-第1部:通則)に準拠した方法で求めることができる。
--鎖伸長剤--
前記鎖伸長剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸樹脂の水酸基及びカルボン酸基の少なくともいずれかの反応性基と反応性を有する化合物であることが好ましく、例えば、エポキシ系鎖伸長剤(エポキシ基を有する鎖伸長剤)、イソシアネート系鎖伸長剤(イソシアネート基を有する鎖伸長剤)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記鎖伸長剤としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートなどが好ましく、前記ポリ乳酸に分岐構造を導入し、溶融強度を効率的に向上でき、未反応物の残留を少なくできる点から、分子内に3つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤、分子内に3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートがより好ましい。このような鎖伸長剤を用いると、気泡の合一、破泡を抑制でき、発泡倍率を向上させることができる。
ここで、前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤とは、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとスチレンモノマーとを共重合させて得られた重合体である。
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の1,2-エポキシ基を含有するモノマーなどが挙げられる。また、前記スチレンモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤は、その共重合成分にエポキシ基を有しない(メタ)アクリルモノマーを含有していてもよい。このような(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
前記分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-イソシアネート、1,5’-ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-イソシアネート-4,4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のトリイソシアネート;トリメチロールプロパンと2,4-トルイレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとのアダクト体等のトリイソシアネート化合物、及びグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールを、前記脂肪族及び芳香族ジイソシアネート化合物又は前記トリイソシアネート化合物などと反応させて得られる変性ポリイソシアネート化合物などがある。これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
前記鎖伸長剤の含有量としては、特に制限はなく、前記ポリ乳酸樹脂の分子量や該ポリ乳酸樹脂の分子量分布によって適宜選択することができる。低分子量のポリ乳酸樹脂が多くなると、発泡に適した溶融強度を付与するために、前記鎖伸長剤はより多く含有することが必要となる傾向がある。しかし、前記鎖伸長剤の含有量が増えると、前記ポリ乳酸樹脂組成物により得られる発泡シートの生分解性及び前記ポリ乳酸樹脂の結晶性に劣る傾向があることから、前記鎖伸長剤の含有量としては、前記ポリ乳酸樹脂組成物及び前記鎖伸長剤の合計質量100質部に対して、前記鎖伸長剤が2質量部以下であることが好ましい。
その他の鎖伸長剤としては、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、分子中に2以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド系鎖伸長剤)なども用いることができる。
--発泡剤--
前記発泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、物理発泡剤、化学発泡剤などが挙げられる。前記成形体の製造方法は、後述する発泡処理において、発泡シートへの残留物が少なくクリーンであることが好ましいことから、物理発泡であることが好ましく、前記発泡剤としても、物理発泡剤が好ましい。
前記物理発泡に用いられる発泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の低級アルカン等の炭化水素類;ジメチルエーテル等のエーテル類;メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素;窒素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、取扱いが容易であり、臭気がなく、環境負荷が低いという観点で、二酸化炭素や窒素を用いることが好ましい。
前記発泡剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記発泡シートの原材料の全質量に対して、2質量%以上7質量%以下が好ましく、3質量%以上7質量%以下がより好ましく、4質量%以上5質量%以下が更に好ましい。前記発泡剤の含有量が2質量%以上であると、発泡径が小さくなり、前記発泡シートを成形した成形体の断熱性が上がり耐熱性が向上し、7質量%以下であると、過剰量の前記発泡剤が発泡シートから抜ける際にできる欠陥の発生が抑制され、前記発泡シートの強度が向上し成形時に割れにくくなるため、該発泡シートを成形した成形体の成形性が向上する。
--添加剤--
前記添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記発泡シートの原材料の全質量に対して、2質量%以下が好ましい。前記添加剤の含有量が、前記発泡シートの原材料の全質量に対して2質量%以下であると、リサイクル性がより良好になる。
-圧縮性流体供給工程-
前記圧縮性流体供給工程は、前記溶融工程で得られた、溶融状態となった前記ポリ乳酸樹脂組成物に圧縮性流体を供給し、溶融したポリ乳酸樹脂組成物を可塑化させる工程である。前記発泡シート作製工程が、前記圧縮性流体供給工程を含むと、前記ポリ乳酸樹脂組成物中に前記発泡核材を均一に分散させることができる点で好ましい。前記圧縮性流体が、前記発泡剤と同じである場合、前記混練工程における前記発泡核材の混練と、前記発泡工程における発泡とを一連のプロセスで実施できるため、環境負荷低減の観点でより製造形態として好ましい。
なお、前記発泡シートの製造方法における圧縮性流体供給工程は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法における重合工程と同様にして行うことができる。そのため、前記圧縮性流体供給工程は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の原材料に圧縮性流体を供給する工程であってもよい。
前記発泡シートの製造方法における前記圧縮性流体は、前記ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法に記載のものと同様のものを使用することができる。
-混練工程-
前記混練工程は、前記圧縮性流体供給工程で得られた、圧縮性流体を供給した前記ポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練する工程である。前記混練は、後述する発泡工程での発泡をより効率的に行うために、前記ポリ乳酸樹脂組成物に、更に発泡剤を添加して行うことが好ましい。
-発泡工程-
前記発泡工程は、前記混練工程で得られた前記ポリ乳酸樹脂組成物に溶解していた圧縮性流体を気化させて除去し、前記ポリ乳酸樹脂組成物に気泡を発生させ、発泡させる工程である。
前記混練工程及び前記発泡工程は、同時に行ってもよく、別々の工程として行ってもよい。
前記発泡工程において、前記ポリ乳酸樹脂組成物に溶解していた圧縮性流体を気化させる方法としては、例えば、前記ポリ乳酸樹脂組成物を大気に開放することにより減圧する方法などが挙げられる。これにより、前記圧縮性流体を大気下で徐々に空気と置換し、発泡シートから除去することができる。
-成形工程-
前記成形工程は、前記発泡工程で圧縮性流体を気化させて除去したポリ乳酸樹脂組成物を、シート状に成形加工し、発泡シートを得る工程である。
前記シート状に成形する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プレス成形等の型を用いて、ポリ乳酸発泡体をシート状に成形加工し、発泡シートとする方法などが挙げられる。
成形に用いる型の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、S45C、S50C、SS400、SCM440、SUS316、SUS304、及びこれらと同等の材質などを用いることができる。成形に用いる型の材質としては、熱伝導率向上の目的で、C2810、A5052、アルミナ等を用いてもよいし、分析目的で、石英ガラス等を用いてもよい。成形に用いる型は、耐久性向上の目的で、上記の材質の表面にクロムメッキ等を施してもよいし、離型性向上の目的で、鏡面研磨仕上げ等を施してもよい。また、ブラスト仕上げとしてもよいし、離型剤を塗工してもよい。これらの中でも、成形に用いる型としては、製造のし易さと耐久性の向上の点から、SCM440にクロムメッキ等を施したものを用いることが好ましい。更に、金型には、構造が可変する金型等を用いてもよい。
成形工程により、ポリ乳酸発泡体をシート状に成形することで、シート成形物である本実施形態に係る発泡シートが得られる。
(製造物及び製造物の製造方法)
本発明の製造物は、本発明の成形体を含み、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、通常の樹脂製品に用いられるものの中から適宜選択することができる。
前記製造物の概念には、製造物を加工するための中間体として、例えば、前記成形体としてのシートをロール状にした原反や、単体としての製造物のみでなく、トレーの取手のような製造物からなる部品や、取手が取り付けられたトレーのような製造物を備えた製品なども含まれる。
前記製造物(「消費材」とも称される)としては、例えば、袋、包装容器、トレー、食器、カトラリー、文房具、緩衝材等の生活用品などが挙げられる。また、前記製造物は、前記生活用品以外の用途に適用されるものであってもよく、例えば、工業用資材、日用品、農業用品、食品用、医薬品用、化粧品用等のシート、包装材などに幅広く適用することができる。
前記袋としては、例えば、レジ袋、ショッピングバッグ、ごみ袋などが挙げられる。
前記文房具としては、例えば、クリアファイル、ワッペンなどが挙げられる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、別段の断りない限り、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
(実施例1)
<原材料混合工程>
図3に示す連続式重合装置100を用い、タンク1からモノマーとしてL-ラクチド(Lumilact(登録商標) L Polymer Grade、Total Corbion製)を計量ポンプ2により流量1kg/時間で供給し、タンク3から開始剤として1,6-ヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、モノマー(L-ラクチド)1モルに対して1/10,000モルとなるように計量ポンプ4により流量0.08g/時間で供給し、タンク5から触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(II)(富士フイルム和光純薬株式会社製)を計量ポンプ6により流量0.05g/時間で供給し、タンク7から圧縮性流体として二酸化炭素(純度99.999体積%、昭和電工ガスプロダクツ株式会社製)を、モノマー(L-ラクチド)100質量部に対して10質量部となるように、計量ポンプ8により100g/時間で供給して、原材料混合エリアaで混合、溶融、及び混練した。
<重合工程>
次に、調圧バルブ17により原材料混合物を重合エリアbに供給し、重合反応を行った。
<重合停止工程>
次に、タンク9から末端封止剤として無水酢酸を計量ポンプ10により流量10g/時間(1phr)(開始剤に対して100倍等量)で供給して、前記重合反応物中のポリ乳酸樹脂と反応させた。
<脱モノマー工程>
その後、脱モノマーエリアcで、真空ポンプ15及び残存モノマー除去トラップ14により、重合反応物から残存モノマー及び圧縮性流体を除去し、ポリ乳酸樹脂組成物Pを得た。
得られたポリ乳酸樹脂組成物Pは、押出口金(ダイ)16から、ストランドとして取り出し、冷水のバスを通して冷却を行い、ペレタイザーでペレット化を行い、厚み2mmのペレットとした。なお、実施例1では、添加剤は添加しなかった。
各エリアの温度条件は、原材料混合エリアaを170℃、重合エリアbを200℃、脱モノマーエリアcを185℃とした。各エリアの圧力条件は、原材料混合エリアaを不活性雰囲気下、内圧100kPa、押出機入口における調圧バルブ17を10MPaに設定し、重合エリアbを15MPa、脱モノマーエリアcを0.05kPa、押出口金(ダイ)部分はポリ乳酸樹脂組成物の溶融粘度による圧力損失に依存するが、概ね5MPa程度とした。
(実施例2)
実施例1の原材料混合工程において、タンク1から計量ポンプ2により供給したモノマーを、L-ラクチドのみから、L-ラクチド(Lumilact(登録商標) L Polymer Grade、Total Corbion製)及びD-ラクチド(Lumilact(登録商標) D Polymer Grade、Total Corbion製)の混合物(L-ラクチド:D-ラクチド=95:5(質量比))に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例3)
実施例1の原材料混合工程において、タンク1から計量ポンプ2により供給したモノマーを、L-ラクチドのみから、L-ラクチド(Lumilact(登録商標) L Polymer Grade、Total Corbion製)及びD-ラクチド(Lumilact(登録商標) D Polymer Grade、Total Corbion製)の混合物(L-ラクチド:D-ラクチド=90:10(質量比))に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例4)
実施例1の原材料混合工程において、開始剤の種類を、1,6-ヘキサンジオールからヘキサノール(東京化成工業株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例5)
実施例1の原材料混合工程において、開始剤の種類を、1,6-ヘキサンジオールからグリセロール(東京化成工業株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例6)
実施例1の原材料混合工程において、開始剤の供給量を、モノマー(L-ラクチド)1モルに対して1/20,000モルとなるように計量ポンプ4により流量0.04g/時間で供給したことに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例7)
実施例1の原材料混合工程において、開始剤の供給量を、モノマー(L-ラクチド)1モルに対して1/40,000モルとなるように計量ポンプ4により流量0.02g/時間で供給したことに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例8)
実施例1の脱モノマー工程において、脱モノマーエリアcで、真空ポンプ15及び残存モノマー除去トラップ14により、重合反応物から残存モノマー及び圧縮性流体を除去した後、ポリ乳酸樹脂組成物Pを押出口金(ダイ)16からストランドとして取り出す前に、以下の添加剤添加工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
<添加剤添加工程>
タンク11から添加剤(加水分解抑制剤)としてカルボジイミド(カルボジライトLA-1、日清紡ケミカル株式会社製)を、ポリ乳酸樹脂組成物の全量に対して0.25質量%となるように、計量フィーダー12のラインを通して添加した。
(実施例9)
実施例1の脱モノマー工程において、脱モノマーエリアcで、真空ポンプ15及び残存モノマー除去トラップ14により、重合反応物から残存モノマー及び圧縮性流体を除去した後、ポリ乳酸樹脂組成物Pを押出口金(ダイ)16からストランドとして取り出す前に、以下の添加剤添加工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
<添加剤添加工程>
タンク11から添加剤(加水分解抑制剤)としてカルボジイミド(カルボジライトLA-1、日清紡ケミカル株式会社製)を、ポリ乳酸樹脂組成物の全量に対して0.50質量%となるように、計量フィーダー12のラインを通して添加した。
(実施例10)
実施例1の原材料混合工程において、圧縮性流体としての二酸化炭素の供給量を、モノマー(ラクチド)100質量部に対して3質量部となるように、計量ポンプ8により30g/時間で供給したことに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例11)
実施例1の原材料混合工程において、圧縮性流体としての二酸化炭素の供給量を、モノマー(ラクチド)100質量部に対して5質量部となるように、計量ポンプ8により50g/時間で供給したことに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例12)
実施例1の原材料混合工程において、圧縮性流体としての二酸化炭素の供給量を、モノマー(L-ラクチド)100質量部に対して20質量部となるように、計量ポンプ8により200g/時間で供給したことに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例13)
実施例1の重合工程において、押出機入口における調圧バルブ17の圧力の設定を、10MPaから25MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例14)
実施例1の重合停止工程において、末端封止剤の種類を、無水酢酸から酢酸(規格:特級、関東化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例15)
実施例1の重合停止工程において、末端封止剤の種類を、無水酢酸からクエン酸(関東化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(実施例16)
実施例1の脱モノマー工程において、脱モノマーエリアcで、真空ポンプ15及び残存モノマー除去トラップ14により、重合反応物から残存モノマー及び圧縮性流体を除去した後、ポリ乳酸樹脂組成物Pを押出口金(ダイ)16からストランドとして取り出す前に、以下の添加剤添加工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
<添加剤添加工程>
タンク11から添加剤(酸化防止剤)としてヒンダードフェノール((3-(3,5-ジ-テトラ-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート、Irganox 1010、BASFジャパン株式会社製)を、ポリ乳酸樹脂組成物の全量に対して0.20質量%となるように、計量フィーダー12のラインを通して添加した。
(実施例17)
実施例1の原材料混合工程において、開始剤の供給量を、モノマー(L-ラクチド)1モルに対して1/20,000モルとなるように計量ポンプ4により流量0.04g/時間で供給したことに変更し、更に実施例1の脱モノマー工程において、脱モノマーエリアcで、真空ポンプ15及び残存モノマー除去トラップ14により、重合反応物から残存モノマー及び圧縮性流体を除去した後、ポリ乳酸樹脂組成物Pを押出口金(ダイ)16からストランドとして取り出す前に、以下の添加剤添加工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
<添加剤添加工程>
タンク11から添加剤(重合停止剤)としてホスホノ酢酸トリエチル(ナカライテスク株式会社製)を、ポリ乳酸樹脂組成物の全量に対して0.20質量%となるように、計量フィーダー12のラインを通して添加した。
(実施例18)
実施例1の脱モノマー工程において、脱モノマーエリアcで、真空ポンプ15及び残存モノマー除去トラップ14により、重合反応物から残存モノマー及び圧縮性流体を除去した後、ポリ乳酸樹脂組成物Pを押出口金(ダイ)16からストランドとして取り出す前に、以下の添加剤添加工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
<添加剤添加工程>
タンク11から添加剤(加水分解抑制剤)としてカルボジイミド(カルボジライトLA-1、日清紡ケミカル株式会社製)を、ポリ乳酸樹脂組成物の全量に対して0.50質量%となるように、計量フィーダー12のラインを通して添加した。また、タンク11から添加剤(重合停止剤)としてホスホノ酢酸トリエチル(ナカライテスク株式会社製)を、ポリ乳酸樹脂組成物の全量に対して0.20質量%となるように、計量フィーダー12のラインを通して添加した。
(比較例1)
実施例1の原材料混合工程において、タンク1から計量ポンプ2により供給したモノマーを、L-ラクチドのみから、L-ラクチド(Lumilact(登録商標) L Polymer Grade、Total Corbion製)及びD-ラクチド(Lumilact(登録商標) D Polymer Grade、Total Corbion製)の混合物(L-ラクチド:D-ラクチド=70:30(質量比))に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(比較例2)
実施例1の原材料混合工程において、開始剤の供給量を、モノマー(L-ラクチド)1モルに対して1/1,000モルとなるように計量ポンプ4により流量0.8g/時間で供給したことに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(比較例3)
実施例1の原材料混合工程において、開始剤の供給量を、モノマー(L-ラクチド)1モルに対して1/40,000モルとなるように計量ポンプ4により流量0.02g/時間で供給したことに変更し、圧縮性流体としての二酸化炭素を供給せず、更に重合停止工程を行わなかった(即ち、末端封止剤としての無水酢酸を添加しなかった)こと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物Pのペレットを得た。
(比較例4)
実施例1において、タンク7から圧縮性流体として二酸化炭素(純度99.999体積%、昭和電工ガスプロダクツ株式会社製)を、モノマー(ラクチド)100質量部に対して10質量部となるように、計量ポンプ8により50g/時間で供給したことを、タンク7から圧縮性流体として二酸化炭素(純度99.999体積%、昭和電工ガスプロダクツ株式会社製)を、モノマー(ラクチド)100質量部に対して3質量部となるように、計量ポンプ8により16.7g/時間で供給したことに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸含有組成物Pのペレットを得た。
(比較例5)
密閉したSUS製500mL容のバッチ容器に、モノマーとしてL-ラクチド(Lumilact(登録商標) L Polymer Grade、Total Corbion製)200gを入れ、開始剤としての1,6-ヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、モノマー(L-ラクチド)1モルに対して1/10,000モルとなるように仕込み、更に触媒としての2-エチルヘキサン酸スズ(II)(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、モノマーに対して200ppm仕込んだ。窒素置換を5回繰り返した後、株式会社東洋高圧製のヘリカルリボン型の撹拌機付きの密閉したバッチ容器を140℃で加熱し、固相重合を行った。固相重合から1週間後に、得られたポリ乳酸樹脂組成物を取り出した。
<評価1>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の融点、分子量、及びL-乳酸の光学純度、各ポリ乳酸樹脂組成物中の残存開環重合性モノマーの含有量、並びに、各ポリ乳酸樹脂組成物のYI値、複素粘度(溶融安定性)、及びメルトマスフローレート(MFR)を以下の方法で測定した。結果を下記表1~表5に示した。
<<融点の測定>>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の融点は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定法により測定した。
具体的には、示差走査熱量計装置(Q-2000型、TAインスツルメント社製)を用い、ペレット状の前記ポリ乳酸樹脂組成物をニッパで切断した測定用試料5mgをTAインスツルメント社製の専用のパンに入れ、測定に供した。前記示差走査熱量計装置の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温した。1st coolingの後に、再び25℃から200℃まで昇温し、速度10℃/分間で走査した際、ガラス転移点以上の温度域で観測される吸熱ピークのピークトップ温度を前記ポリ乳酸樹脂の融点とした。下記表1~表5に、融点の結果を示した。
<<分子量の測定>>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記分析条件で測定した。
具体的には、各ポリ乳酸樹脂組成物を濃度0.5質量%となるように、クロロホルムで溶解して測定用試料を調製した。調製した測定用試料を1mL注入し、下記分析条件で測定した。また、単分散ポリスチレン標準試料(東ソー株式会社製)を用いて、同様の方法でゲル浸透クロマトグラフィーを行い、予め分子量校正曲線を作成した。
ポリ乳酸樹脂の分子量分布から、前記分子量校正曲線を使用して、ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出した。なお、分子量分布はMwをMnで除した値(Mw/Mn)である。下記表1~表5に、重量平均分子量(Mw)の結果を示した。
[分析条件]
・装置:GPC-8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSKgel(登録商標) G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:クロロホルム
・注入量:1mL
・流速:1.0mL/分間
<<L-乳酸の光学純度の測定>>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物中のL-乳酸の光学純度は、液体クロマトグラフィー(HPLC)により下記分析条件で測定した。
具体的には、各ポリ乳酸樹脂組成物を凍結粉砕して粉末0.1gを計り取り、1N水酸化ナトリウム水溶液5mLを添加し、室温(25℃)で約4時間還流して加水分解した。還流後の溶液を1mol/L 硫酸で中和したものを測定用試料として用い、HPLC分析に供した。
[分析条件]
・ 装置:PU-2085plusシリーズ(日本分光株式会社製)
・ カラム:Chromolith(登録商標) coated with SUMICHIRAL OA-5000(内径:4.6mm、長さ:150mm、株式会社住化分析センター製)
・ カラム温度:25℃
・ 移動相:2mM CuSO水溶液と2-プロパノールとの混合液(2mM CuSO水溶液:2-プロパノール=95:5(体積比))
・ 流速:1.0mL/分間
・ 検出器:UV(254nm)
・ 注入量:20μL
L-乳酸の標準試料(コービオン社製)及びD-乳酸の標準試料(コービオン社製)を用いて、同様の方法でHPLC分析を行い、予めそれぞれの検量線を作成した。
HPLC分析により得られたL-乳酸及びD-乳酸のピーク面積より、前記検量線からそれぞれの含有量を算出し、下記式(1)に基づきL-乳酸の光学純度を算出した。下記表1~表5に、L-乳酸の光学純度の結果を示した。
L-乳酸の光学純度(%)=100×(L体量-D体量)/(L体量+D体量) ・・・ 式(1)
ただし、式(1)において、「L体量」はHPLC分析により得られたL-乳酸の含有量(質量%)を示し、「D体量」はHPLC分析により得られたD-乳酸の含有量(質量%)を示す。
<<黄色度(YI)の測定>>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物の黄色度(YI)は、JIS K 7103:1977(プラスチックの黄色度及び黄変度試験方法)に準拠して測定した。
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物の厚さ2mmのペレットを測定用試料として用い、カラーメーター(SM-T、スガ試験機株式会社製)を用いて測定し、黄色度(YI)を求めた。YI=25以下を着色がなく、良好なポリ乳酸樹脂組成物と評価した。
<<残存開環重合性モノマーの含有量の測定>>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物の残存開環重合性モノマーの含有量は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準、第3版改訂版、2004年6月追補、第3部、衛生試験法、P13」に記載の開環重合性モノマー量の測定方法に従って求めた。
具体的には、前記ポリ乳酸樹脂組成物0.1gをジクロロメタン5mLに均一に溶解し、2mM CuSO水溶液/2-プロパノール=95/5(体積比)を加えてポリ乳酸樹脂組成物を再沈させて得られた上澄み液を、HPLCに供し、下記分析条件で開環重合性モノマーを分離し、内部標準法により定量することによりポリ乳酸樹脂組成物中の残存開環重合性モノマーの含有量を測定した。
下記表1~表5に、残存開環重合性モノマーの含有量の結果を示した。下記表1~表5における「ppm」は、質量分率を示す。
[分析条件]
・装置:分取精製HPLCシステム(日本分光株式会社製)
・分析カラム:SUMICHIRAL OA-5000(内径4.6mm、長さ150mm、粒子径5μm、株式会社住化分析センター製)
・移動相:2mM CuSO水溶液/2-プロパノール=95/5(体積比)
・内部標準:2,6-ジメチル-γピロン
・流速:1.0mL/分間
・カラム温度:25℃
・検出器:フォトダイオードアレイ検出器(PDA)(UV:254nm)
・測定時注入量:20μL
<<複素粘度の測定>>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物のペレットの複素粘度は、パラレルプレート型回転粘度計(ARES-G2、TAインスツルメント社製)を用いて測定した。
各ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを80℃にて12時間乾燥し、測定用サンプルAを作製した。
また、各ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを80℃にて12時間乾燥し、23℃、50RH%環境下に1日間静置し、測定用サンプルBを作製した。
測定用サンプルA又は測定用サンプルBを測定治具上で、200℃に5分間置いて溶融させた後、パラレルプレート間のギャップが1.05mmとなるまで押圧した。次いで、パラレルプレート外周部からはみ出した前記ポリ乳酸含有組成物をスパチュラで掻き取り、パラレルプレート間のギャップが1.00mmとなるまで再度押圧し、5分間静置して残留応力を取り除き、厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状として測定用試料を調製した。この測定用試料を用いて、下記測定条件にて測定開始から5分間後の複素粘度η*(5)及び20分間後の複素粘度η*(20)を測定した。
[測定条件]
・ パラレルプレート:直径20mm、アルミニウム製
・ 温度:200℃
・ ギャップ:1.00mm
・ 周波数:1Hz(6.28rad/s)
・ 雰囲気:乾燥空気下(露点:-60℃)
・ 測定用試料サイズ:厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状
測定値より、測定用サンプルA及び測定用サンプルBの前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]を求めた。下記表1~表5に、測定用サンプルAの複素粘度η*(20)の測定値、並びに、測定用サンプルA及び測定用サンプルBの比[η*(20)/η*(5)]の結果を示した。
<<メルトマスフローレート(MFR)の測定>>
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物のペレットのメルトマスフローレート(MFR)の測定は、JIS K 7210-1:2014に準拠して、メルトマスフローレート測定装置(Dynisco社製、形式D405913)を用い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定を行った。
(製造例1~18及び比較製造例1~5)
実施例1~18及び比較例1~5で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物を用いて、以下の方法でポリ乳酸モノフィラメントを製糸した。
200℃で溶融混練した各ポリ乳酸樹脂組成物を口金孔から押し出し、冷却浴中に導いて冷却固化して未延伸糸を得た。その後、紡糸速度150m/分間の条件で、前記未延伸糸を100℃且つ4.0倍の条件で1段目の延伸を行い、更に190℃且つ2.0倍の条件で2段目の延伸を行い、合計8.0倍の延伸を行った。次に、200℃且つ0.90倍の条件で熱セットを行うことにより、直径0.4mmの製造例1~18及び比較製造例1~5のポリ乳酸モノフィラメントを製糸した。
<評価2>
製造例1~18及び比較製造例1~5で得られたポリ乳酸モノフィラメントについて、以下の方法で引張強度を測定した。結果は、下記表6に示した。
<<引張強度の測定>>
JIS L 1013:2021(化学繊維フィラメント糸試験方法)の項目8.5(引張強さ及び伸び率)に準拠して、糸長250mmの各ポリ乳酸モノフィラメントを引張速度300mm/分間の条件で測定し、破断時の引張強度(N)を求めた。そして、引張強度(N)を各ポリ乳酸モノフィラメントの繊度(dtex)で割り返して引張強度(cN/dtex)を算出した。この測定及び算出を、製造例1~18及び比較製造例1~5で得られたポリ乳酸モノフィラメントそれぞれについて10本ずつ行い、その平均値を算出し、下記評価基準に基づきポリ乳酸モノフィラメント強度を評価した。
[ポリ乳酸モノフィラメント強度の評価基準]
◎ : 10本の平均引張強度が4.0cN/dtax以上
〇 : 10本の平均引張強度が3.5cN/dtax以上4.0cN/dtax未満
△ : 10本の平均引張強度が3.0cN/dtax以上3.5cN/dtax未満
× : 10本の平均引張強度が3.0cN/dtax未満
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> ポリ乳酸樹脂を99質量%以上含有し、
パラレルプレート型回転粘度計を用いて下記測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、
前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s以上であり、
前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物である。
[測定条件]
・ パラレルプレート:直径20mm、アルミニウム製
・ 温度:200℃
・ ギャップ:1.00mm
・ 周波数:1Hz(6.28rad/s)
・ 雰囲気:乾燥空気下(露点:-60℃)
・ 測定用試料サイズ:厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状
<2> 前記複素粘度η*(20)が2.5×10Pa・s以上である、前記<1>に記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<3> 前記複素粘度η*(20)が5×10Pa・s以上であり、かつ前記比[η*(20)/η*(5)]が0.7以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<4> 前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が30万以上100万以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<5> JIS K 7210-1:2014に準拠して190℃、2.16kg荷重にて求めたメルトマスフローレート(MFR)が2g/10分以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<6> JIS K 7210-1:2014に準拠して190℃、2.16kg荷重にて求めたメルトマスフローレート(MFR)が1g/10分以下である、前記<1>から<5>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<7> 前記ポリ乳酸樹脂を99.5質量%以上含有する、前記<1>から<6>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<8> 更に添加剤を1質量%未満含有し、
前記添加剤が、前記ポリ乳酸樹脂が有する水酸基及びカルボキシル基の少なくともいずれかの反応性基と結合する、前記<1>から<7>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<9> 前記添加剤がカルボジイミド化合物である、前記<8>に記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<10> 更に添加剤を1質量%未満含有し、
前記添加剤が、ヒンダードフェノール及びリン元素の少なくともいずれかを含有する化合物である、前記<1>から<7>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<11> 前記ポリ乳酸樹脂組成物に含まれる未反応のモノマーが5,000ppm以下である、前記<1>から<10>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<12> 前記ポリ乳酸樹脂が、構成モノマー単位に乳酸のL体を90モル%以上含有する、前記<1>から<11>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<13> 前記ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを厚さ2mmとした場合に、JIS K 7103:1977に準拠して測定した黄色度(YI)が25以下である、前記<1>から<12>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<14> 前記ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを厚さ2mmとした場合に、JIS K 7103:1977に準拠して測定した黄色度(YI)が15以下である、前記<1>から<13>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体である。
<16> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することを特徴とする成形体の製造方法である。
<17> スズ系化合物を金属触媒としてラクチドを開環付加重合することにより得られるポリ乳酸と、モノカルボン酸又はモノカルボン酸無水物と、を含有することを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物である。
<18> 前記モノカルボン酸が脂肪族モノカルボン酸であり、
前記モノカルボン酸無水物が脂肪族モノカルボン酸無水物である、前記<17>に記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<19> 前記モノカルボン酸が酢酸であり、
前記モノカルボン酸無水物が無水酢酸である、前記<17>又は<18>に記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<20> 圧縮性流体を添加した環境下で前記モノカルボン酸又は前記モノカルボン酸無水物を添加して得られる、前記<17>から<19>のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<21> 前記圧縮性流体が超臨界二酸化炭素である、前記<20>に記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
<22> 乳酸のD体、乳酸のL体、ラクチドのD体、及びラクチドのL体の少なくともいずれかを原材料として用い、
パラレルプレート型回転粘度計を用いて下記測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、
前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s以上となるように、かつ、
前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上となるように、かつ、
ポリ乳酸樹脂の含有量が99質量%以上となるように重合反応を行うことを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物の製造方法である。
[測定条件]
・ パラレルプレート:直径20mm、アルミニウム製
・ 温度:200℃
・ ギャップ:1.00mm
・ 周波数:1Hz(6.28rad/s)
・ 雰囲気:乾燥空気下(露点:-60℃)
・ 測定用試料サイズ:厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状
a 原材料混合エリア
b 重合エリア
c 脱モノマーエリア
1 タンク
2 計量ポンプ
3 タンク
4 計量ポンプ
5 タンク
6 計量ポンプ
7 タンク
8 計量ポンプ
9 タンク
10 計量ポンプ
11 タンク
12 計量フィーダー
14 残存モノマー除去トラップ
15 真空ポンプ
16 押出口金
17 調圧バルブ
100 連続式重合装置
特許第6024299号
長井 聡、永井 雅之、「バイオポリマーアロイ化技術」、成形加工、第24巻、第8号、2012、p.444-448、「2.2 PLA/POMアロイの熱的性質」 公益社団法人 高分子学会、予稿集、2010、Vol.67、No.9、pp.537-540

Claims (20)

  1. ポリ乳酸樹脂を99質量%以上含有し、
    パラレルプレート型回転粘度計を用いて下記測定条件で測定を開始して、5分間後と20分間後の複素粘度を測定した結果をそれぞれ複素粘度η*(5)及び複素粘度η*(20)としたときに、
    前記複素粘度η*(20)が2×10Pa・s以上であり、
    前記複素粘度η*(5)に対する前記複素粘度η*(20)の比[η*(20)/η*(5)]が0.6以上であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
    [測定条件]
    ・ パラレルプレート:直径20mm、アルミニウム製
    ・ 温度:200℃
    ・ ギャップ:1.00mm
    ・ 周波数:1Hz(6.28rad/s)
    ・ 雰囲気:乾燥空気下(露点:-60℃)
    ・ 測定用試料サイズ:厚さ30μm、幅7mm、長さ35mmの短冊状
  2. 前記複素粘度η*(20)が2.5×10Pa・s以上である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  3. 前記複素粘度η*(20)が5×10Pa・s以上であり、かつ前記比[η*(20)/η*(5)]が0.7以上である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. 前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が30万以上100万以下である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. JIS K 7210-1:2014に準拠して190℃、2.16kg荷重にて求めたメルトマスフローレート(MFR)が2g/10分以下である、請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  6. JIS K 7210-1:2014に準拠して190℃、2.16kg荷重にて求めたメルトマスフローレート(MFR)が1g/10分以下である、請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  7. 前記ポリ乳酸樹脂を99.5質量%以上含有する、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  8. 更に添加剤を1質量%未満含有し、
    前記添加剤が、前記ポリ乳酸樹脂が有する水酸基及びカルボキシル基の少なくともいずれかの反応性基と結合する、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  9. 前記添加剤がカルボジイミド化合物である、請求項8に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  10. 更に添加剤を1質量%未満含有し、
    前記添加剤が、ヒンダードフェノール及びリン元素の少なくともいずれかを含有する化合物である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  11. 前記ポリ乳酸樹脂組成物に含まれる未反応のモノマーが5,000ppm以下である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  12. 前記ポリ乳酸樹脂が、構成モノマー単位に乳酸のL体を90モル%以上含有する、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  13. 前記ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを厚さ2mmとした場合に、JIS K 7103:1977に準拠して測定した黄色度(YI)が25以下である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  14. 前記ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを厚さ2mmとした場合に、JIS K 7103:1977に準拠して測定した黄色度(YI)が15以下である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  15. 請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
  16. 請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することを特徴とする成形体の製造方法。
  17. スズ系化合物を金属触媒としてラクチドを開環付加重合することにより得られるポリ乳酸と、モノカルボン酸又はモノカルボン酸無水物と、を含有することを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
  18. 前記モノカルボン酸が脂肪族モノカルボン酸であり、
    前記モノカルボン酸無水物が脂肪族モノカルボン酸無水物である、請求項17に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  19. 前記モノカルボン酸が酢酸であり、
    前記モノカルボン酸無水物が無水酢酸である、請求項17又は18に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  20. 圧縮性流体を添加した環境下で前記モノカルボン酸又は前記モノカルボン酸無水物を添加して得られる、請求項17又は18に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
JP2023058787A 2022-09-09 2023-03-31 ポリ乳酸樹脂組成物、並びに、成形体及びその製造方法 Pending JP2024039587A (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
CN202311136955.5A CN117683215A (zh) 2022-09-09 2023-09-05 聚乳酸树脂组合物、以及成型体及其制造方法
EP23195354.8A EP4335887A1 (en) 2022-09-09 2023-09-05 Polylactic acid resin composition, and molded body and production method thereof
US18/461,814 US20240092966A1 (en) 2022-09-09 2023-09-06 Polylactic acid resin composition, and molded body and production method thereof

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022143657 2022-09-09
JP2022143657 2022-09-09

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024039587A true JP2024039587A (ja) 2024-03-22

Family

ID=90326366

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023058787A Pending JP2024039587A (ja) 2022-09-09 2023-03-31 ポリ乳酸樹脂組成物、並びに、成形体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024039587A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Hamad et al. Polylactic acid blends: The future of green, light and tough
EP2607428B1 (en) Resin composition
Murcia Valderrama et al. PLGA barrier materials from CO2. The influence of lactide co-monomer on glycolic acid polyesters
JP4672409B2 (ja) 脂肪族ポリエステル樹脂組成物
Rigotti et al. Novel biobased polylactic acid/poly (pentamethylene 2, 5-furanoate) blends for sustainable food packaging
KR20140007859A (ko) 폴리락트산계 필름
JP2013507501A (ja) ポリエステル混合物の連続的な製造法
KR20130108277A (ko) 다공성 필름
JP7287092B2 (ja) 発泡シートの製造方法
Baniasadi et al. High-concentration lignin biocomposites with low-melting point biopolyamide
KR101412516B1 (ko) 폴리락트산을 포함하는 생분해성 수지 조성물 및 그의 제조방법
JP2022180468A (ja) 発泡シート、製造物及び発泡シートの製造方法
JP4503215B2 (ja) 乳酸系樹脂組成物、過酸化物変性乳酸系樹脂組成物、並びに、それらの成形体
EP2799492B1 (en) Biodegradable resin composition and method using same for manufacturing a biodegradable sheet
JP2024039587A (ja) ポリ乳酸樹脂組成物、並びに、成形体及びその製造方法
EP4335887A1 (en) Polylactic acid resin composition, and molded body and production method thereof
AU2010200315A1 (en) Biodegradable resin composition, method for production thereof and biodegradable film therefrom
JP3860163B2 (ja) 脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びフィルム
CN117683215A (zh) 聚乳酸树脂组合物、以及成型体及其制造方法
JP2022083401A (ja) 発泡シート、製造物、成形体及び発泡シートの製造方法
JP2004359730A (ja) 樹脂組成物
WO2021201185A1 (ja) 生分解性樹脂組成物及び成形体
JP4366848B2 (ja) 架橋型軟質乳酸系ポリマーの製造方法及びその組成物
JP7143929B2 (ja) 発泡シート、製造物及び発泡シートの製造方法
EP4361206A1 (en) Polylactic acid resin composition, foamed polylactic acid resin, method of manufacturing foamed polylactic acid resin, and product