JP2024036467A - 焼結体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、優れた機械的強度及び透光性を兼備する、焼結体及びその製造方法の少なくともいずれかを提供する。
【解決手段】本発明は、安定化元素及びランタンを固溶したジルコニアをマトリックスとした焼結体であって、前記安定化元素の含有量が8mol%以上、12mol%以下であり、二軸曲げ強度が、500MPa以上である、焼結体である。また、本発明は、ランタン含有量が1mol%以上、10mol%以下であることが好ましい。
【選択図】図2

Description

本開示は、焼結体及びその製造方法に関する。
高炉及び半導体製造装置等に使用される窓材として、石英ガラス及び耐熱ガラス等のガラス材が用いられている。しかしながら、これらのガラス材は優れた透光性を有するものの、機械的強度が低く、物理的な衝撃に弱いという課題があった。
ガラス材よりも機械的強度に優れ、かつ透光性を有する材料として、ジルコニアを主成分とし、透光性を有する透光性ジルコニア焼結体が知られている。透光性ジルコニア焼結体は赤外光も透過可能なため、窓材を通して赤外式温度計を使用して、炉内の被加熱物の温度を測定することも可能となる。このため、透光性ジルコニア焼結体に関する研究が行われてきた。
例えば、特許文献1には、2~4mol%のイットリアを含有する透光性ジルコニア焼結体が開示されている。
特許文献2には、3~20mol%のチタニアと6~15mol%のイットリアを含有する透光性ジルコニア焼結体が開示されている。
特開2010-150063号公報 特開2011-011970号公報
しかしながら、特許文献1の透光性ジルコニア焼結体は、優れた機械的強度(二軸曲げ強度が1000MPa以上)を有するものの、透光性が低い(全光線透過率が40%以下、試料厚さ1mm、測定波長600nm)。このため、窓材として使用すると擦りガラスのように濁って見え、中の様子が十分に観察できなかった。
特許文献2のジルコニア焼結体は、優れた透明性(直線透過率が73~75%、試料厚さ1mm、測定波長600nm)を有するものの、機械的強度が低い(3点曲げ強度が255MPa)。このため、窓材として使用すると物理的な衝突による衝撃破壊、及び表面損傷等が生じる可能性が高かった。
そこで、窓材として使用される透光性ジルコニア焼結体においては、より優れた機械的強度及び透光性を兼備する透光性ジルコニア焼結体が求められている。
本開示は、ランタンが固溶し、なおかつ、結晶構造が制御された透光性ジルコニア焼結体において、優れた機械的強度及び透光性を兼備する、焼結体及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。好ましくは、本開示は優れた機械的強度及び透明性を兼備するジルコニアの焼結体及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
本発明者等は、安定化元素及び特定含有量のランタンを含む、一定以上の立方晶率のジルコニアをマトリックスとすることにより、優れた機械的強度及び透光性を兼備する焼結体、更には優れた機械的強度及び透明性を兼備する焼結体、が得られることを見出し、本開示に係る発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載のとおりであり、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1]安定化元素及びランタンを固溶した、立方晶率が95%以上のジルコニアをマトリックスとした焼結体であって、
前記安定化元素の含有量が8mol%以上、12mol%以下である、焼結体。
[2]ランタン含有量が1mol%以上、10mol%以下である、[1]に記載の焼結体。
[3]前記安定化元素が、イットリウム、スカンジウム、カルシウム、マグネシウム及びセリウムの群から選ばれる少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の焼結体。
[4]前記安定化元素が、イットリウムである、[1]乃至[3]のいずれかに記載の焼結体。
[5]試料厚さ1mmにおける直線透過率が55%以上である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の焼結体。
[6]二軸曲げ強度が、500MPa以上である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の焼結体。
[7]ジルコニア原料、安定化元素原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
[8]前記外容器がカーボン製の外容器である、[7]に記載の焼結体の製造方法。
[9][1]乃至[6]のいずれかに記載の焼結体を含む、窓材。
本開示により、優れた機械的強度及び透光性を兼備する、焼結体及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することができる。さらに、本開示は優れた機械的強度及び透明性を兼備するジルコニアの焼結体及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することができる。
焼結工程における成形体の配置の一例を示す模式図 実施例1の焼結体におけるXRDパターン 比較例3の焼結体におけるXRDパターン 比較例4の焼結体におけるXRDパターン
以下、本開示の焼結体について実施形態の一例を示しながら説明する。
本実施形態の焼結体は焼結体中に単にランタン(La)を含むだけではなく、ジルコニアにランタンが固溶した焼結体(以下、「ランタン固溶ジルコニア焼結体」ともいう。)である。ランタンが固溶することで、焼結体の結晶粒子の組織構造が微細になる。
本実施形態の焼結体において、ランタンがジルコニアに固溶していることは粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンから確認することができる。本実施形態の焼結体はCuKα線(λ=0.15418nm)を線源とするXRD測定において、2θ=72.0±2°のピーク(以下、「メインピーク」ともいう。)を有する。メインピークは立方晶ジルコニアのXRDピーク(2θ=72.0±2°)であり、なおかつ、焼結体のXRDパターンにおける回折強度が最も強いXRDピークである。メインピークから求められる格子定数(Lattice Parameter)が、ランタンを固溶しない焼結体よりも大きいことから、本実施形態の焼結体においてランタンがジルコニアに固溶していることが確認できる。例えば、ランタン及び安定化元素として8mol%のイットリウムを含有するランタン固溶ジルコニア焼結体である場合、その格子定数は、安定化元素として8mol%のイットリウムのみを含有し、残部がジルコニアからなる焼結体の格子定数よりも大きくなる。格子定数が大きいことは、XRDパターンにおいてメインピークが低角側へシフトすることから確認できる。
さらに、本実施形態の焼結体は、ランタンとジルコニウムとからなる複合酸化物及びランタン酸化物(以下、「ランタン酸化物等」ともいう。)を実質的に含有しないことが好ましい。ランタン酸化物等を含まないことで、本実施形態の焼結体が、より透光性の高い焼結体となる。ランタン酸化物等を含まないことは、本実施形態の焼結体のXRDパターンにおいて、ジルコニアのXRDピーク以外に相当するXRDピークを有さないことから確認することができる。ランタン酸化物等としてはLaZr及びLaを例示することができる。
本実施形態の焼結体のランタン含有量は1mol%以上であることが好ましい。ランタン含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、酸化物換算した安定化元素及び酸化物換算したランタン(La)の合計に対する、酸化物換算したランタンのモル割合である。例えば、安定化元素としてイットリウムを含む場合、ランタンの含有量[mol%]は、{La[mol]/(Y+La+ZrO)[mol]}×100として求めればよい。
ジルコニアに全てのランタンを固溶させるため、焼結体のランタンの含有量は10mol%以下であることが好ましい。また、ランタン含有量としては、1mol%以上、2mol%以上、又は、3mol%以上であることが好ましい。また、10mol%以下、7mol%以下、6.5mol%以下、又は、5mol%以下であることが好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよい。したがって、例えば、ランタン含有量として、1mol%以上10mol%以下、更には1mol%以上7mol%以下、また更には2mol%以上10mol%以下、また更には2mol%以上7mol%以下、また更には2mol%以上6.5mol%以下、また更には3mol%以上6.5mol%以下、また更には3mol%以上5mol%以下を挙げることができる。機械的強度が高くなる傾向があるため、ランタン含有量は3mol%以上4.5mol%以下、更には3.5mol%以上4.2mol%以下であることが好ましい。
本実施形態の焼結体はランタン以外のランタノイド系希土類元素を含まないことが好ましい。ランタン以外のランタノイド系希土類元素として、例えば、ユーロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロジム(Dy)、ホロニウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を挙げることができる。本実施形態の焼結体はランタン以外のランタノイド系希土類元素を含まないことが好ましいが、組成分析の測定誤差を考慮すると本実施形態の焼結体におけるランタン以外のランタノイド系希土類元素の含有量は0.1mol%以下であることが例示できる。
本実施形態の焼結体は、安定化元素を含む。安定化元素はジルコニア中に固溶する。ランタン及び安定化元素がジルコニアに固溶することで、室温等の低温環境下においても、焼結体のジルコニアが立方晶相を含んだ状態となる。
安定化元素は、ジルコニアを安定化させる元素である。安定化元素は、例えば、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、及びセリウム(Ce)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、カルシウム、マグネシウム及びイットリウムの群から選ばれる少なくとも1種、更にはイットリウムであること、がより好ましい。
本実施形態の焼結体に含まれる安定化元素の含有量は、ジルコニアを部分安定化させるため、8mol%以上12mol%以下である。安定化元素の含有量としては、8mol%以上、又は、8.5mol%以上であることが好ましい。また、12mol%以下、11.5mol%以下、又は、11mol%以下であることが好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよい。したがって、安定化元素の含有量は、例えば、8mol%以上11mol%以下、8mol%以上10.5mol%以下、又は、8.5mol%以上10.5mol%以下、が好ましい。透明性がより高くなりやすいため、安定化元素の含有量は8mol%以上9.5mol%以下であることが好ましい。
なお、安定化元素の含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、それぞれ酸化物換算した、安定化元素及びランタン(La)の合計に対する、安定化元素のモル割合である。安定化元素としてイットリウムを含む場合、安定化元素含有量[mol%]は、{(Y)[mol]/(Y+La+ZrO)[mol]}×100として求めればよい。安定化元素としてスカンジウム、カルシウム、マグネシウム、及びセリウムを含む場合、その酸化物はそれぞれ、Sc、CaO、MgO及びCeOであるとして換算すればよい。
本実施形態の焼結体は、いわゆるジルコニア焼結体であり、ジルコニアをマトリックス(主成分)とする焼結体である。そのため、本実施形態の焼結体に含まれる安定化元素及びランタンの合計含有量は50mol%未満であればよく、30mol%以下又は20mol%以下であり、かつ、9mol%以上又は10mol%以上であること、が好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよく、例えば、9mol%以上30mol%以下、10mol%以上20mol%以下、又は11mol%以上15mol%以下が挙げられる。本実施形態の焼結体のジルコニア含有量は50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、80mol%以上、又は85mol%以上、かつ、91mol%以下、または90mol%以下であることが好ましい。
本実施形態の焼結体はアルミナ(Al)を含んでいてもよい。アルミナを含有することで、特に強度が高い焼結体における透光性が高くなりやすい。本実施形態の焼結体がアルミナを含む場合、アルミナ含有量は100質量ppm以上、又は、200質量ppm以上であり、また、2000質量ppm以下、又は、1000質量ppm以下であること、が好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよい。したがって、アルミナ含有量は、例えば、100質量ppm以上2000質量ppm以下、更には200質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましい。アルミナの含有量(質量ppm)は、焼結体中のジルコニア、それぞれ酸化物換算した安定化元素、ランタン(La)及び酸化物換算したアルミニウム(Al)の合計質量に対する、酸化物換算したアルミニウム(Al)の質量割合である。アルミナ及びランタンを含み、安定化元素としてイットリウムを含む場合、アルミナの含有量[質量ppm]は、{Al[g]/(Y+La+Al+ZrO)[g]}×1000000として求めればよい。
本実施形態の焼結体は上記の組成を有するが、不可避不純物は含んでいてもよい。不可避不純物としては、ハフニア(HfO)が挙げられる。なお、本実施形態における理論密度、安定化元素や添加成分などの含有量など、組成に関連した値の算出において、不可避不純物であるハフニア(HfO)はジルコニア(ZrO)とみなして計算すればよい。
また他の遷移金属酸化物を含まないことが好ましく、例えばチタニア(TiO)の含有量が1mol%以下、更には0.1mol%以下であることが挙げられる。
本実施形態の焼結体の好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア : 81.5mol%以上、90mol%以下
安定化元素 : 8mol%以上、12mol%以下
ランタン : 2mol%以上、6.5mol%以下
本実施形態の焼結体の特に好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア : 85mol%以上、89mol%以下
安定化元素 : 8mol%以上、10mol%以下
ランタン : 3mol%以上、5mol%以下
上記組成は、ジルコニア、安定化元素、及びランタンの合計を100mol%として算出するものとする。すなわち、例えばジルコニアが85mol%、安定化元素が10mol%、及び、ランタンが5mol%であることが好ましい。
上記組成における安定化元素はイットリウムであることが好ましい。
本実施形態の焼結体におけるジルコニアは、立方晶のみの結晶相を有する。「立方晶のみの結晶構造を有する」とは、立方晶率が95%以上であることをいい、好ましくは97%以上であり、更に好ましくは98%以上、また更に好ましくは99.5%以上である。立方晶率が95%以上であれば、優れた透光性を有する焼結体、更には優れた透明性を有する焼結体が得られる傾向がある。ここで「立方晶率」は、ジルコニアの結晶相に占める、立方晶相の割合である。立方晶率は下記の式(1)から求めることができる。立方晶率は例えば、99.5%以下、99.9%以下、又は、100%以下であることが例示できる。好ましい立方晶率として、例えば、98%以上100%以下、又は、99.5%以上100%以下が挙げられる。
=I(111)/[I(111)+I(11-1)
+I(111)+I(111)]×100 (1)
式(1)において、fcは立方晶率(%)、I(111)は立方晶相の(111)面に相当するXRDピークの面積強度、I(111)及びI(11-1)は、それぞれ、単斜晶相の(111)面及び(11-1)面に相当するXRDピークの面積強度、並びにI(111)は正方晶相の(111)面に相当するXRDピークの面積強度である。なお、I(111)及びI(111)は、複数のXRDピークの面積強度を合算した合算値である。
本実施形態におけるXRDパターンはCuKα線を線源として測定され、測定条件として、以下の条件が挙げられる。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 0.04°/秒
測定範囲 : 2θ=20°から80°
発散スリット : 0.5deg
散乱スリット : 0.5deg
受光スリット : 0.3mm
検出器 : シンチレーションカウンター
XRDパターンは、一般的な粉末X線回折装置(例えば、UltimaIII、リガク社製)を使用して測定することができる。
各結晶面のXRDピークの面積強度は、計算プログラムに“PRO-FIT”を使用し、H. Toraya,J. Appl. Crystallogr.,19,440-447(1986)に記載の方法で、各XRDピークを分離した上で求めることができる。
なお、本実施形態の焼結体におけるジルコニアが立方晶のみの結晶相を有すること、すなわち、本実施形態の焼結体におけるジルコニアの立方晶率が95%以上であることは、立方晶率の算出に用いた上記のXRDピーク以外に、表1に示す位置のXRDピークの有無によっても確認することができる。すなわち、2θ=73.1±2°、73.5±2°、73.7±2°及び73.9±2°の位置にピークが検出されれば、焼結体におけるジルコニアは立方晶相を含む。また、2θ=72±2°、73±2°、74.1±2°及び74.4±2°の位置にピークが検出されなければ、焼結体におけるジルコニアは正方晶相を含まない。本実施形態の焼結体におけるジルコニアが立方晶相を含み、正方晶相を含まなければ、本実施形態の焼結体におけるジルコニアが立方晶のみの結晶相を有する。すなわち、本実施形態の焼結体におけるジルコニアの立方晶率が95%以上である。
なお、表1に示す各ピーク位置2θにおける「±2°」とは、測定において焼結体の全XRDピークが最大2°シフトすることがあり、そのピークシフトを許容することを表している。シフトしたピークが表1に記載のピークであるかどうかの判別については、表1に記載の立方晶相の4つのピーク、及び、正方晶相の4つのピークが同一の幅だけシフトするため、4つのピークの形状や間隔をもとに判別可能である。例えば、立方晶相の4つのピークについては、73.1°のピークに相当する低角側のピークから0.4°、0.2°、及び、0.2°の間隔で4つのピークが存在することをもって立方晶相の4つのピークと判定すればよい。
Figure 2024036467000002
本実施形態の焼結体の平均結晶粒子径(Average Crystal Grain Size)は、20μm以上、又は、30μm以上であることが好ましい。また、100μm以下、90μm以下、又は、60μm以下であることが好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよい。したがって、焼結体の平均結晶粒子径は、例えば、20μm以上100μm以下、30μm以上90μm以下、更には30μm以上60μm以下であることが挙げられる。平均結晶粒子径がこの範囲であることで透光性が高い焼結体となる。本実施形態において、平均結晶粒子径はプラニメトリック法により測定することができる。
本実施形態の焼結体は密度が高いことが好ましい。安定化元素及びランタンの量により、密度は異なる。本実施形態の焼結体の密度は6.0g/cm以上6.2g/cm以下、更には6.0g/cm以上6.12g/cm以下を例示することができる。
本実施形態の焼結体は、表面の算術平均粗さ(以下、「Ra」ともいう。)が、20nm以上、又は、25nm以上であることが好ましい。また、60nm以下、又は、45nm以下であることが好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよい。したがって、表面の算術平均粗さは、例えば、20nm以上60nm以下であり、25nm以上45nm以下であることが好ましい。Raが60nmを超えると機械的強度、特に破断強度が低くなる。Raは小さいほど好ましいが、研磨処理等を施した場合であっても焼結体のRaは20nm程度である。
本実施形態の焼結体は、表面の最大高さ(以下、「Rz」ともいう。)が、100nm以上、又は、300nm以上であることが好ましい。また、1000nm以下、又は、900nm以下であることが好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよい。したがって、表面の最大高さは、例えば、100nm以上1000nm以下であることが挙げられ、300nm以上900nm以下であることが好ましい。
本実施形態の焼結体は、表面の二乗平均平方根高さ(以下、「Rq」ともいう。)が、10nm以上、又は、20nm以上であることが好ましい。また、100nm以下、又は、50nm以下であることが好ましい。これらの上限と下限はいかなる組合せでもよい。したがって、表面の二乗平均平方根高さは、例えば、10nm以上100nm以下であることが挙げられ、20nm以上50nm以下であることが好ましい。
本実施形態において、Ra、Rz及びRqはJIS B 0601に準じた方法により測定することができる。
本実施形態の焼結体は、その表面に研磨痕を有さないことが好ましい。通常、焼結直後の焼結体はその表面が粗いため、研磨等の後処理を施すことで表面を平滑化する。しかしながら、後処理により焼結体の表面に研磨痕が生じる。研磨痕は研磨に伴い発生し、例えば、規則的な筋状模様を挙げることができる。これに対し、本実施形態の焼結体は、焼結後の状態で実用的な平滑性を有することが好ましく、この場合、研磨痕を有さずに上記のRa、Rz及びRqを満たす。研磨痕は焼結体の表面をSEM観察することで確認することができる。
本実施形態の焼結体は高い透光性(Translucency)を有する。
本実施形態の焼結体は、試料厚さ1mm、JIS K 7361-1に準じて測定される全光線透過率が55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、76%以下、更には70%以下であることが例示できる。本実施形態の焼結体の全光線透過率として60%以上76%以下、60%以上70%以下、又は60%以上65%以下、が例示できる。
本実施形態の焼結体は、試料厚さ1mm、JIS K 7361-1に準じて測定される直線透過率が55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。直線透過率は、70%以下、更には68%以下であることが例示できる。直線透過率は透明性を示す指標の一つであり、直線透過率が高ければ、より透明性(Transparency)が高い焼結体となるため好ましい。本実施形態の焼結体の直線透過率は55%以上70%以下、55%以上65%以下、又は60%以上65%以下、が例示できる。
全光線透過率及び直線透過率は、測定試料として、試料厚さ1mm、かつ、両面の表面粗さRa≦0.02μmである焼結体を使用し、測定装置として光源にD65光源を備えた一般的なヘーズメータ(装置名:ヘーズメーターNDH2000、NIPPON DENSOKU製))を使用して測定すること、が例示できる。
本実施形態の焼結体は高い機械的強度を有する。本実施形態における強度は、ISO/DIS6872に準じて測定される二軸曲げ強度として、500MPa以上、更には600MPa以上であることが挙げられる。適用できる用途が広がるため、本実施形態の焼結体の強度は800MPa以上、更には1000MPa以上であることが好ましい。曲げ強度は、1100MPa以下、又は、1200MPa以下であることが例示できる。本実施形態の焼結体の強度(二軸曲げ強度)は500MPa以上1200MPa以下、又は500MPa以上700MPa以下が挙げられ、更には510MPa以上600MPa以下、また更には510MPa以上550MPa以下であってもよい。
以上説明したように、本実施形態の焼結体は、優れた機械的強度及び透光性を兼備するため、窓材、装飾部材、電子機器の外装部材をはじめとする公知の透光性ジルコニア焼結体の用途に使用することができる。特に、高い機械的強度及び透光性、更には高い機械的強度及び透明性が要求される、窓材に好適に使用することができる。窓材は、視認に必要な波長の光線を透過させる部材であれば特に制限されない。窓材の中でも、窓材を通して赤外式温度計を使用して、炉内の被加熱物の温度を測定することができる、高炉、加熱炉、熱処理炉等の高温環境となる炉用の窓材として好適に使用することができる。
次に、本実施形態の焼結体の製造方法について説明する。
本実施形態においては、ジルコニア原料、安定化元素原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする製造方法、により本実施形態の焼結体を製造することができる。
混合工程では、ジルコニア原料、安定化元素原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る。ジルコニア原料、安定化元素原料及びランタン原料が均一に混合されれば、混合方法は任意であり、湿式混合又は乾式混合のいずれであってもよい。得られる混合粉末の均一性がより高くなるため、混合方法は、好ましくは湿式混合、より好ましくは湿式ボールミル及び湿式攪拌ミルの少なくともいずれかによる湿式混合である。
ジルコニア原料は、ジルコニア又はその前駆体であり、BET比表面積が4m/g以上20m/g以下であるジルコニア粉末を挙げることができる。
安定化元素原料は、イットリウム、スカンジウム、カルシウム、マグネシウム及びセリウムの群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物の粉末であり、好ましくはイットリウムを含む化合物の粉末又はその前駆体が挙げられる。
さらに、ジルコニア原料は安定化元素を含むジルコニア粉末(以下、「安定化元素含有ジルコニア」ともいう。)であることが好ましい。このようなジルコニア粉末は、ジルコニア原料及び安定化元素原料となる。ジルコニア粉末が含有する安定化元素は、イットリウム、スカンジウム、カルシウム、マグネシウム及びセリウムの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、イットリウムであることがより好ましい。安定化元素含有ジルコニア粉末は酸化物換算で8mol%以上12mol%以下の安定化元素を含有するジルコニア粉末であり、さらには、BET比表面積が4m/g以上20m/gであり8mol%以上12mol%以下の安定化元素を含有するジルコニア粉末であることが好ましい。また、安定化元素含有ジルコニア粉末が含有する安定化元素量は酸化物換算で8mol%以上12mol%以下、更には8.5mol%以上11.5mol%以下、また更には9mol%以上11mol%以下であることが好ましい。
ランタン原料は、ランタンを含む化合物を挙げることができ、酸化ランタン、水酸化ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、塩化ランタン、炭酸ランタン及びパイロクロア型LaZrの群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、好ましくは水酸化ランタン、酸化ランタン及びLaZrの群から選ばれる少なくともいずれかであり、より好ましくは水酸化ランタン及び酸化ランタンの少なくともいずれかであり、更に好ましくは水酸化ランタンである。
混合粉末は、アルミナ原料を含んでいてもよい。アルミナ原料はアルミニウムを含む化合物を挙げることができ、好ましくはアルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム及びスピネルの群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアルミナである。好ましいアルミナとしてα型アルミナ及びγ型アルミナの少なくともいずれか、更にはα型アルミナが挙げられる。
混合粉末の組成は所望の割合であればよいが、酸化物換算でジルコニアが80mol%以上91mol%以下、安定化元素が8mol%以上12mol%以下、ランタンが1mol%以上10mol%以下であることが挙げられる。
好ましい混合粉末の組成として以下のモル組成が挙げられる。
ジルコニア : 81.5mol%以上、90mol%以下
好ましくは85mol%以上、89mol%以下
安定化元素 : 8mol%以上、12mol%以下
好ましくは8mol%以上、10mol%以下
ランタン : 2mol%以上、6.5mol%以下
好ましくは3mol%以上、5mol%以下
上記組成における安定化元素はイットリウムであることが好ましい。
本実施形態の混合粉末は、結合剤を含んでいてもよい。結合剤を含むことで操作性(ハンドリング)や、保形性がより高くなる。結合剤は、セラミックスの造粒や成形に使用され得る結合剤であればよく、有機バインダーであることが好ましい。バインダーとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス及びアクリル系樹脂の群から選ばれる1種以上、好ましくはポリビニルアルコール及びアクリル系樹脂の少なくともいずれかであり、より好ましくはアクリル系樹脂、が挙げられる。本実施形態において、アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくともいずれかを含む重合体である。具体的な結合剤として、例えば、AS-1100,AS-1800及びAS-2000の群から選ばれる1以上(いずれも製品名。東亜合成社製)が挙げられる。
結合剤の含有量は、0.5質量%以上又は1質量%以上であり、また、10質量%以下又は5質量%以下であることが例示できる。
成形工程では、混合粉末を成形して成形体を得る。所望の形状の成形体が得られれば成形方法は任意である。成形方法として、プレス成形、射出成形、シート成形、押出成形、及び鋳込み成形の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、プレス成形及び射出成形の少なくともいずれかであることが好ましい。
成形体の形状は任意であるが、例えば、円板状、円柱状、及び多面体状などの形状や、歯列矯正ブラケットや半導体製造治具、その他の複雑形状など、目的や用途に応じた任意の形状を例示することができる。
焼結工程においては、成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して焼結することにより、高い平滑性の表面を有する焼結体が得られる。焼結時の容器は、焼結炉の雰囲気ガスの流れに被焼結物が直接接することによる焼結体表面の平滑性の低下を避けるため、すなわち系外から焼結炉に導入される雰囲気ガスの流れに直接被焼結物が晒されることによる焼結体表面粗さの増大を避けるために使用されている。
図1は焼結工程における成形体の配置の一例を示す模式図である。成形体(100)は内容器(101)の内部に配置されており、該内容器(101)は外容器(102)の内部に配置されている。内容器は成形体をその内部に配置できる任意の形状であればよく、外容器は内容器をその内部に配置できる任意の形状であればよい。
内容器及び外容器は、密封容器以外、すなわち雰囲気ガスの流れを遮断しない容器であればよく、例えば、系外から焼結炉に導入される雰囲気ガスの流れに直接被焼結物を晒すことなく、該容器内の雰囲気が、焼結炉中の雰囲気に対して閉鎖系とはならない状態となる容器である。具体的な容器として、蓋付容器、例えば、蓋付るつぼ及び蓋付匣鉢の少なくともいずれかを挙げることができる。なお、図1おいて、内容器(101)及び外容器(102)は、それぞれ、蓋付容器として示しており、内容器(101)は、被焼結物を収納して該内容器(101)を密封することなく蓋を配置した状態、及び、外容器(102)は内容器(101)を収納して該外容器(102)を密封することなく蓋を配置した状態を示している。
内容器の材質は、金属酸化物及び金属窒化物の少なくともいずれかであり、好ましくは金属酸化物、より好ましくはアルミナ、ジルコニア、ムライト、イットリア、スピネル、マグネシア、窒化ケイ素及び窒化ホウ素の群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアルミナ、ジルコニア、ムライト及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはイットリアが挙げられる。
外容器の材質は、カーボン、金属酸化物及び金属窒化物の群から選ばれる少なくともいずれかである。中でも、優れた機械的強度及び透光性を兼備した焼結体が得られ、かつ、焼結体間の機械的強度のばらつきを抑制する観点から、外容器の材質はカーボンが好ましい。また、金属酸化物製又は金属窒化物製の外容器と比較して安価であり、工業的利用価値が高いため、外容器は、カーボン製の外容器が好ましい。本実施形態の製造方法においては、容器の二重化を行っているため、容器由来のカーボンが被焼結物の表面に付着せず、機械的強度及び透光性に優れる焼結体が得られやすくなる。さらに、カーボン製の外容器を用いた場合、特に焼結体同士で機械的強度のばらつきが抑制される。
なお、焼結工程が後述の二段焼結法である場合、成形体に代わり一次焼結体を内容器に配置すればよい。すなわち、二次焼結において、一次焼結体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して焼結すればよい。
焼結工程において、前記成形工程で得られた成形体を1650℃以上の焼結温度で焼結する。1650℃以上で焼結することで、焼結体の結晶構造が高温型の結晶構造になると考えられる。焼結温度は1650℃以上であり、好ましくは1700℃以上、より好ましくは1725℃以上、更に好ましくは1750℃以上である。汎用の焼成炉を使用する場合、焼結温度は2000℃以下、1900℃以下又は1800℃以下であることが例示できる。好ましい焼結温度として1650℃以上2000℃以下、又は1700℃以上1900℃以下が挙げられる。
上記の焼結温度で焼結すれば、焼結方法は任意である。焼結方法として、例えば、常圧焼結、加圧焼結及び真空焼結の群から選ばれる少なくともいずれかを挙げることができ、常圧焼結及び加圧焼結であることが好ましい。
好ましい焼結方法として、常圧焼結のみで行う焼結方法(以下、「一段焼結法」ともいう。)、又は、成形体を1000℃以上1650℃未満で焼成して一次焼結体を得る一次焼結及び該一次焼結体を1650℃以上で焼結する二次焼結を含む焼結方法(以下、「二段焼結法」ともいう。)を挙げることができる。
一段焼結法は、成形体を常圧焼結(Pressureless Sintering)に供することで焼結体を得ればよい。常圧焼結とは、焼結時に被焼結物に対して外的な力を加えず単に加熱することにより焼結する方法である。本実施形態においては成形工程で得られた成形体を常圧焼結し焼結体とすればよい。焼結温度は1600℃以上であればよく、1700℃以上1900℃以下であることが好ましい。焼結雰囲気は酸化雰囲気又は還元雰囲気の何れであってもよい。簡便であるため大気中であることが好ましい。
二段焼結法は、成形体を一次焼結することにより一次焼結体とし、該一次焼結体を二次焼結する方法である。一次焼結は、成形体を1000℃以上1650℃未満、更には1200℃以上1600℃以下、で焼結することが好ましい。一次焼結の雰囲気は酸化雰囲気又は還元雰囲気であることが好ましく、酸化雰囲気、更には大気中であることが好ましい。好ましい一次焼結として、大気中、1000℃以上又は1400℃以上であり、また、1650℃未満又は1520℃以下の常圧焼結、を挙げられる。これにより、得られる一次焼結体の組織が微細となる。これに加え、一次焼結体の結晶粒子内に気孔が生成しにくくなる。
二次焼結は、一次焼結体を1650℃以上、好ましくは1700℃以上、より好ましくは1725℃以上、更に好ましくは1750℃以上で焼結する。高い強度を有する焼結体を得るため、二次焼結温度は2000℃以下、好ましくは1900℃以下、より好ましくは1800℃以下である。二次焼結温度を2000℃以下とすることで、粗大な結晶粒子が生成しにくくなる。好ましい二次焼結温度として1650℃以上2000℃以下、又は1700℃以上1900℃以下が挙げられる。
より高密度の焼結体を得るために、二次焼結は熱間静水圧プレス(以下、「HIP」ともいう。)処理であることが好ましい。
HIP処理の時間(以下、「HIP時間」ともいう。)は、HIPに供する一次焼結体の大きさや量及びHIP処理装置により異なるが、10分以上又は30分以上であり、4時間以下又は2時間以下であることが例示できる。HIP処理中に、焼結体の気孔が十分に除去されるため、HIP時間が10分以上であることが好ましい。
HIP処理の圧力媒体(以下、単に「圧力媒体」ともいう。)は、アルゴンガス、窒素ガス、酸素などが例示できるが、一般的なアルゴンガスが簡便である。
HIP処理の圧力(以下、「HIP圧力」ともいう。)は、5MPa以上、更には50MPa以上であることが好ましい。HIP圧力が5MPa以上であることで、焼結体中の気孔の除去がより促進される。圧力の上限に関しては特に指定はないが、通常のHIP装置を使用した場合、HIP圧力は200MPa以下であり、50MPa以上200MPa以下、更には100MPa以上170MPa以下であることが例示できる。
降温工程では、二次焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する。二次焼結温度を1650℃以上、かつ、降温速度を1℃/min超、好ましくは5℃/min以上、より好ましくは8℃/min以上とすることで、焼結体のジルコニア結晶構造が立方晶相のみを有し、透光性の高い焼結体、更には透明性の高い焼結体、が得られる。降温速度が1℃/min以下の場合は、析出物や単斜晶が生成するため、得られる焼結体が透光性の低いものとなる。より高い透光性を有するランタン固溶ジルコニア焼結体を得るため、焼成温度から1000℃への降温は、降温速度を好ましくは10℃/min以上、より好ましくは15℃/min以上、更に好ましくは30℃/min以上、更により好ましくは50℃/min以上とすることが挙げられる。該降温速度の上限は特にないが、150℃/min以下又は100℃/min以下が例示できる。
本実施形態の製造方法は、降温工程後の焼結体を熱処理するアニール工程を有していてもよい。焼結体をアニール工程に供することで、焼結体の透光性をより高くすることができる。アニール工程は、酸化雰囲気中、900℃以上1200℃以下、好ましくは980℃以上1030℃以下で焼結体を処理することが挙げられる。
上記の方法で得られる焼結体は、優れた機械的強度及び透光性を兼備するため、窓材、装飾部材、電子機器の外装部材をはじめとする公知の透光性ジルコニア焼結体の用途に使用することができる。特に、高い機械的強度及び透光性、更には高い機械的強度及び透明性が要求される、窓材に好適に使用することができる。
以下、実施例及び比較例により本開示を具体的に説明する。しかしながら、本開示は実施例に限定されるものではない。
(平均結晶粒子径の測定)
焼結体試料を平面研削した後、9μm、6μm及び1μmのダイアモンド砥粒を順に用いて鏡面研磨した。研磨面を1400℃で1時間保持し、熱エッチングした後、SEM観察し、得られたSEM観察図からプラニメトリック法により平均結晶粒子径を求めた。
(結晶構造の同定)
焼結体試料のXRD測定によって得られたXRDパターンを同定分析することで、各焼結体試料の結晶構造の同定、及び、不純物層の有無を確認した。XRD測定は、一般的な粉末X線回折装置(装置名:UltimaIII、リガク社製)を用い、鏡面研磨をした焼結体試料について行った。表2に、実施例および比較例について、各結晶構造に帰属されるXRDピークの検出の有無に基づいて、検出された結晶構造を「C:立方晶」「T:正方晶」として記載した。すなわち、立方晶のみが検出された場合、「C」と記載し、立方晶と正方晶が検出された場合は、「C+T」と記載した。いずれの試料についても単斜晶は検出されなかった。さらに、上記式(1)に基づいて、立方晶率を算出した。
XRD測定はCuKα線を線源として、以下の条件で行った。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 0.04°/秒
測定範囲 : 2θ=20°から80°
発散スリット : 0.5deg
散乱スリット : 0.5deg
受光スリット : 0.3mm
検出器 : シンチレーションカウンター
XRDパターンは一般的な粉末X線回折装置(装置名:UltimaIII、リガク社製)を使用して測定した。
(二軸曲げ強度の測定)
ISO/DIS6872に準じた二軸曲げ強度測定によって、焼結体試料の二軸曲げ強度を測定した。焼結体試料の厚みは1mmとして、焼結体試料を平面研削した後、9μm、6μm及び1μmのダイアモンド砥粒を順に用いて鏡面研磨した試料について測定した。
(全光線透過率及び直線透過率の測定)
全光線透過率及び直線透過率は、ヘーズメータ(装置名:NDH2000、NIPPON DENSOKU製)を用い、D65光源を使用して、JIS K 7361-1に準拠した方法によって測定した。
なお、測定に先立ち、焼結体試料の両面を平面研削した後、9μm、6μm及び1μmのダイアモンド砥粒を順に用いて表面粗さRaが0.02μm以下となるよう、鏡面研磨した。
<実施例1>
8mol%イットリウム含有ジルコニア粉末(BET比表面積7m/g)に対するLa(OH)粉末の質量割合が11.5質量%となるように、La(OH)粉末をジルコニア粉末に添加し、これを純水中に分散させて固形分50質量%のスラリーを作製した。得られたスラリーを直径10mmのジルコニアボールを用いた湿式ボールミルにより、粉砕した。得られた混合粉末の平均粒子径は0.4μmであった。このスラリーを、スプレードライヤーにて乾燥・造粒することで原料粉末を作製した。
得られた混合粉末と、ワックス、可塑剤及び熱可塑性樹脂を含む有機バインダーとを混合した後、これを射出成形して30mm×25mm、厚さ1.0mmの矩形板状の成形体を得た。
得られた成形体を、大気中、450℃で加熱した後、大気中、1500℃で2時間焼成して一次焼結体を得た。得られた一次焼結体をイットリア製の内容器の内部に配置した。一次焼結体を含む内容器をカーボン製の外容器の内部に配置した。
これをこの状態で99.9%のアルゴンガス雰囲気中、昇温速度600℃/h、HIP温度1750℃、HIP圧力150MPa及び保持時間1時間で一次焼結体をHIP処理した。HIP処理後、焼結温度から室温まで降温しHIP処理体を得た。なお、HIP温度から1000℃までの降温速度は45℃/minであった。カーボン製の外容器を使用したため、アルゴンガス雰囲気下であっても、還元雰囲気で焼結が進行すると考えられる。
得られたHIP処理体を、大気中、1000℃で1時間熱処理をすることで、無色かつ透光性を有する焼結体が得られた。得られた焼結体は4.0mol%のランタンと8.0mol%のイットリウムが固溶したジルコニアからなる焼結体であった。
実施例1の焼結体におけるXRDパターンを図2に示す。図2のXRDパターンより、表1に示す立方晶のピークが確認され、正方晶のピークは確認されなかった。この結果より、実施例1の焼結体における結晶構造は立方晶のみからなり、正方晶が実質的に含まれていないことが確認できた。
得られた焼結体について、二軸曲げ強度及び直線透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
<実施例2及び3>
表2に記載の組成となるように、8mol%イットリウム含有ジルコニア粉末及びLa(OH)粉末の混合割合を変化させたこと以外は実施例1と同様な方法で実施例2及び3のジルコニア焼結体を得た。実施例2及び3の焼結体における結晶構造は、立方晶のみからなり、正方晶が実質的に含まれていないことが確認できた。得られた焼結体について、二軸曲げ強度及び直線透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
<実施例4乃至6>
8mol%イットリウム含有ジルコニア粉末の代わりに10mol%イットリウム含有ジルコニア粉末を用いたこと、及び表2に記載の組成となるように10mol%イットリウム含有ジルコニア粉末及びLa(OH)粉末の混合割合を変化させたこと以外は、実施例1と同様な方法で実施例4乃至6のジルコニア焼結体を得た。実施例4乃至6の焼結体における結晶構造は、立方晶のみからなり、正方晶が実質的に含まれていないことが確認できた。得られた焼結体について、二軸曲げ強度及び直線透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
<比較例1>
La(OH)粉末をジルコニア粉末に添加しなかったこと以外は実施例1と同様な方法で比較例1のジルコニア焼結体を得た。比較例1の焼結体における結晶構造は立方晶のみからなり、正方晶が実質的に含まれていないことが確認できた。得られた焼結体について、二軸曲げ強度及び直線透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
<比較例2>
8mol%イットリウム含有ジルコニア粉末の代わりに10mol%イットリウム含有ジルコニア粉末を用いたこと、及び、La(OH)粉末をジルコニア粉末に添加しなかったこと以外は、実施例1と同様な方法で比較例2のジルコニア焼結体を得た。比較例2の焼結体における結晶構造は立方晶のみからなり、正方晶が実質的に含まれていないことが確認できた。得られた焼結体について、二軸曲げ強度及び直線透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
<比較例3>
8mol%イットリウム含有ジルコニア粉末の代わりに10mol%イットリウム含有ジルコニア粉末を用いたこと、La(OH)粉末の代わりにTi(OH)粉末を用いたこと、表2に記載の組成となるように10mol%イットリウム含有ジルコニア粉末及びTi(OH)粉末の混合割合を変化させたこと、及びHIP温度を1500℃としたこと以外は、実施例1と同様な方法で比較例3のジルコニア焼結体を得た。
比較例3の焼結体におけるXRDパターンを図3に示す。図3のXRDパターンより、比較例3の焼結体における結晶構造は、立方晶のみからなり、正方晶が実質的に含まれていないことが確認された。得られた焼結体について、二軸曲げ強度及び直線透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
<比較例4>
8mol%イットリウム含有ジルコニア粉末の代わりに3mol%イットリウム含有ジルコニア粉末を用いたこと、外容器を使用しなかったこと、及びHIP処理温度から1000℃までの降温速度を83℃/minとしたこと以外は実施例1と同様な方法で比較例4のジルコニア焼結体を得た。比較例4の焼結体における結晶構造は正方晶及び立方晶からなることが確認できた。得られた焼結体について、二軸曲げ強度及び直線透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 2024036467000003
実施例1乃至6の焼結体の測定結果から、本実施形態様の焼結体は、比較例1乃至4の焼結体と比較して、優れた機械的強度及び透光性を兼備するものであることが確認できる。すなわち、実施例1乃至6の焼結体の二軸曲げ強度は500MPa以上であり、なおかつ、直線透過率が55%以上であるのに対し、比較例1乃至3の焼結体は曲げ強度が290MPa以下と二軸曲げ強度が低く、また、比較例4の焼結体は直線透過率が40%と透明性が低かった。
本出願は、2022年1月18日に出願された日本特許出願である特願2022-5933号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
100…成形体、101…内容器、102…外容器

Claims (8)

  1. 安定化元素及びランタンを固溶したジルコニアをマトリックスとした焼結体であって、
    前記安定化元素の含有量が8mol%以上、12mol%以下であり、二軸曲げ強度が、500MPa以上である、焼結体。
  2. ランタン含有量が1mol%以上、10mol%以下である、請求項1に記載の焼結体。
  3. 前記安定化元素が、イットリウム、スカンジウム、カルシウム、マグネシウム及びセリウムの群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の焼結体。
  4. 前記安定化元素が、イットリウムである、請求項1又は2に記載の焼結体。
  5. 試料厚さ1mmにおける直線透過率が55%以上である、請求項1又は2に記載の焼結体。
  6. ジルコニア原料、安定化元素原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体の製造方法。
  7. 前記外容器がカーボン製の外容器である、請求項6に記載の焼結体の製造方法。
  8. 請求項1又は2に記載の焼結体を含む、窓材。

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