JP6772591B2 - 透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、高い透光性及び強度を有するジルコニア焼結体及びその製造方法に関する。
ジルコニアを主成分とする焼結体であって透光性を有するもの(以下、「透光性ジルコニア焼結体」ともいう。)は、ガラスやアルミナよりも機械的特性に優れる。そのため、透光性ジルコニア焼結体は、光学特性のみならず機械的特性をも必要とする用途を目的とした素材として検討されている。
例えば、特許文献1には歯科用材料や外装部材等に適した素材としての透光性ジルコニア焼結体が開示されている。当該透光性ジルコニア焼結体は、3mol%のイットリアを含有するジルコニア焼結体であった。
特許文献2には、歯科用材料、特に歯列矯正ブラケットに適した素材としての透光性ジルコニア焼結体が開示されている。当該透光性ジルコニア焼結体は、8mol%のイットリアを含有するジルコニア焼結体であった。
特許文献3には、歯科用材料、特に義歯及び義歯を得るためのミルブランクに適した素材としてのジルコニア焼結体が開示されている。当該ジルコニア焼結体は、イットリア及びチタニアを含有するジルコニア焼結体であった。
特開2008−050247号公報 特開2009−269812号公報 特開2008−222450号公報
従来のジルコニア焼結体は、ジルコニア中の安定化剤の含有量が高くなることにより、透光性が高くなるとともに強度が低下するものであった。他方、安定化剤の含有量が低くなることにより、従来のジルコニア焼結体は、透光性が低くなるとともに強度が高くなるものであった。このように、従来のジルコニア焼結体は、透光性又は強度のいずれかが高いものしかなかった。
本発明は、これらの課題を解決し、高い透光性及び高い強度を兼備したジルコニア焼結体を提供することを目的とする。
本研究者等は、透光性を有するジルコニア焼結体について検討した。その結果、結晶粒子内の組織構造を制御することで、強度及び透光性を兼備した焼結体となることを見出した。さらに、このような結晶粒子内の組織構造は、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)及びガドリニウム(Gd)からなる群の少なくとも1種をジルコニアに固溶させることで制御できることを見出した。
すなわち、本発明は、正方晶ドメインを有する立方晶の結晶粒子を含み、ネオジム、プラセオジム及びガドリニウムからなる群の少なくとも1種と、安定化剤とを固溶し、なおかつ、CuKαを線源とする粉末X線回折パターンにおける2θ=30±2°のピークの半値幅から算出される平均結晶子径が255nm超であることを特徴とするジルコニア焼結体である。
以下、本発明のジルコニア焼結体について説明する。
本発明のジルコニア焼結体は焼結体中にネオジム、プラセオジム、ガドリニウムからなる群の少なくとも1種(以下、「安定化ランタノイド」ともいう。)を単に含むのではなく、安定化ランタノイドがジルコニアに固溶した、安定化ランタノイド固溶ジルコニア焼結体である。これらの元素が固溶することで、焼結体の結晶粒子の組織構造が微細になる。
本発明のジルコニア焼結体(以下、「本発明の焼結体」ともいう。)において、安定化ランタノイドが固溶していることは粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターンから確認することができる。本発明の焼結体はCuKα線(λ=0.15418nm)を線源とするXRD測定において、2θ=30±2°のピーク(以下、「メインピーク」ともいう。)を有する。メインピークは正方晶ジルコニアのXRDピーク(2θ=30.0±2°)及び立方晶ジルコニアのXRDピーク(2θ=29.6±2°)が重複したピークであり、なおかつ、本発明の焼結体のXRDパターンにおける回折強度が最も強いXRDピークである。メインピークから求められる格子定数が安定化ランタノイドを固溶しないジルコニア焼結体よりも大きいことから、本発明の焼結体において安定化ランタノイドが固溶していることが確認できる。例えば、本発明の焼結体が安定化ランタノイド及び3mol%のイットリアを含有する場合、その格子定数は、同量のイットリアのみを含有するジルコニア焼結体の格子定数よりも大きくなる。格子定数が大きいことは、XRDパターンにおいてメインピークが低角側へシフトすることから確認できる。
さらに、本発明の焼結体は、安定化ランタノイドとジルコニウムとからなる複合酸化物又は安定化ランタノイドの酸化物(以下、「安定化ランタノイド酸化物等」ともいう。)を実質的に含有しないことが好ましい。安定化ランタノイド酸化物等を含まないことで、本発明の焼結体が、より透光性の高い焼結体となる。安定化ランタノイド酸化物等を含まないことは、本発明の焼結体のXRDパターンにおいて、ジルコニアのXRDピーク以外に相当するXRDピークを有さないことから確認することができる。安定化ランタノイド酸化物等としてはNdZr、Nd3、PrZr,Pr11、GdZr及びGdからなる群のいずれかを例示することができる。
本発明の焼結体の安定化ランタノイドの含有量は0.1mol%以上であることが好ましい。ジルコニアに全ての安定化ランタノイドを固溶させるため、本発明の焼結体の安定化ランタノイドの含有量は10mol%以下であることが好ましい。安定化ランタノイドの含有量を10mol%以下とすることで、安定化ランタノイド酸化物等の析出がより抑制され、なおかつ、本発明の焼結体の強度が高くなりやすい。好ましい安定化ランタノイドの含有量として、0.1mol%以上、10mol%以下、更には0.1mol%以上、5mol%以下、更には1.0mol%以上、5mol%以下、また更には1.2mol%以上、4.5mol%以下を挙げることができる。安定化ランタノイドの含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、安定化剤及び酸化物換算した安定化ランタノイドの合計に対する、酸化物換算した安定化ランタノイドのモル割合である。安定化ランタノイドの酸化物換算は、ネオジムを酸化ネオジム(Nd)、プラセオジムを酸化プラセオジム(Pr11)及びガドリウムを酸化ガドリウム(Ga)とすればよい。
本発明の焼結体は、安定化剤を含む。安定化剤はジルコニア中に固溶する。安定化ランタノイド及び安定化剤がジルコニアに固溶することで、室温等の低温環境下においても、本発明の焼結体の結晶粒子が正方晶ドメインを含んだ立方晶の結晶粒子となる。安定化剤は、イットリア(Y)、スカンジア(Sc)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、及びセリア(CeO)からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。工業的に利用しやすいため、安定化剤はカルシア又はイットリアの少なくともいずれか、更にはイットリアであることが好ましい。
本発明の焼結体が含む安定化剤は、2mol%以上、8.5mol%以下、更には2mol%以上8mol%以下、また更には2.5mol%を超え8mol%以下であることが挙げられる。より好ましい安定化剤含有量として2.5mol%以上3.5mol%以下であることが挙げられる。安定化剤含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、安定化剤及び酸化物換算した安定化ランタノイドの合計に対する、安定化剤のモル割合である。
本発明の焼結体はジルコニア焼結体であり、ジルコニアを主成分とする焼結体である。そのため、本発明の焼結体に含まれる安定化剤及び安定化ランタノイドの合計含有量が50mol%未満であればよい。本発明の焼結体のジルコニア含有量は50mol%超であればよく、更には60mol%以上、また更には80mol%以上、また更には83mol%超、また更には90mol%以上であることが好ましい。
本発明の焼結体の好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア(ZrO) :80mol%以上、97mol%以下
安定化剤 :2mol%以上、8mol%以下
安定化ランタノイド :1mol%以上、6.5mol%以下
本発明の焼結体の特に好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア(ZrO) :85mol%以上、97mol%以下
安定化剤 :2.5mol%以上、7.7mol%以下
安定化ランタノイド :1mol%以上、4.5mol%以下
上記組成における安定化剤はイットリアであることが好ましい。
本発明の焼結体の結晶粒子は、正方晶ドメインを有する立方晶の結晶粒子を含む。立方晶の結晶粒子中に正方晶ドメインが含まれることで、透光性が高いだけでなく、強度が高くなる。本発明において、ドメインとは、結晶粒子中の結晶子又は結晶子の集合体の少なくともいずれかであって、同一の結晶構造が連続した部分である。また、正方晶ドメインとは結晶構造が正方晶蛍石型構造であるドメインである。本発明の焼結体が、その結晶粒子中に正方晶ドメインを有することは、XRDパターンのリートベルト解析により確認することができる。すなわち、XRDパターンのリートベルト解析により、本発明の焼結体が立方晶と正方晶とを含むことが確認できる。なおかつ、リートベルト解析により算出される正方晶の結晶子径が、平均結晶子径よりも小さいことから、立方晶の結晶粒子中に正方晶ドメインを含むことを確認することができる。本発明の焼結体は、正方晶ドメインを有する結晶粒子を含むが、実質的に、正方晶ドメインを有する立方晶の結晶粒子のみからなることが好ましい。
正方晶ドメインが立方晶の結晶粒子中に含まれることは、本発明の焼結体の透光性からも確認することができる。結晶粒子中にある程度の大きさの正方晶が存在すると焼結体の透光性は著しく低下する。しかしながら、本発明の焼結体は後述の全光線透過率を有する透光性ジルコニア焼結体である。このように、焼結体が高い透光性を有することをもって、正方晶が凝集や偏在した状態ではなく、立方晶の結晶粒子中に分散していることが確認できる。そのため、正方晶ドメインが立方晶の結晶粒子中に含まれることは、正方晶の結晶子径が平均結晶子径より小さいこと、例えば、平均結晶子径に対する正方晶の結晶子径が0.1〜0.45であることからも確認することができる。
本発明の焼結体は上記のドメインを含むため、その結晶構造は立方晶蛍石型構造及び正方晶蛍石型構造を含む。さらに、本発明の焼結体は正方晶ドメインを含む立方晶の結晶粒子からなるため、その結晶相において立方晶が正方晶よりも多くなる。そのため、本発明の焼結体は、結晶相における立方晶の割合が50重量%以上、更には70%以上、また更には80%以上であることが挙げられる。結晶相における立方晶の割合はメインピークのリートベルト解析から求めることができる。
本発明の焼結体は、単斜晶を実質的に含まないことが好ましい。ここで、単斜晶を実質的に含まないとは、XRDパターンにおいて単斜晶のXRDピークが確認されないことが挙げられる。
正方晶ドメインの安定化ランタノイドの濃度は同じであってもよいが、本発明の焼結体において、結晶粒子中の正方晶ドメインのそれぞれの安定化ランタノイドの濃度が異なっていてもよい。
本発明の焼結体は、メインピークの半値幅(以下、「FWHM」とする。)から算出される平均結晶子径(以下、単に「平均結晶子径」ともいう。)が225nm超である。平均結晶子径が260nm以上であることで透光性が高くなりやすい。
本発明の焼結体においては、平均結晶子径は、800nm以下、更には750nm以下であることが挙げられる。好ましい平均結晶子径として250nm以上500nm以下、更には250nm以上400nm以下を挙げることができる。
本発明の焼結体の平均結晶子径が255nm超であることは、本発明の焼結体のXRDパターンにおいてFWHMが0.1536°未満であることをもって、確認することができる。そのため、本発明の焼結体はFWHMが0.1536°未満あることが好ましい。FWHMが小さくなるほど、平均結晶子径が大きくなる。例えば、FWHMは、平均結晶子径が260nm以上の場合は0.153°、300nm以上の場合は0.1483°となる。一方、結晶性が高くなるほどXRDピークのFWHMは小さくなるが、通常のXRD測定において測定できるFWHMは40°程度までである。本発明の焼結体のメインピークのFWHMとして1°以下、更には0.7°以下であることが挙げられる。
なお、本発明の結晶粒子中に含まれる、立方晶及び正方晶それぞれの結晶子径は、本発明の焼結体のXRDパターンのリートベルト解析により求めることができる。すなわち、リートベルト法により、本発明の焼結体のXRDパターンを、立方晶に起因するXRDピーク及び正方晶に起因するXRDピークに分離する。分離後の各結晶構造のXRDピークの半値幅を求め、得られた半値幅から以下のシェラー式によって結晶子径を求めればよい。
D=K×λ/((β−B)×cosθ)
上記式において、Dは各結晶の結晶子径(nm)、Kはシェラー定数(1.0)、λはCuKαの波長(0.15418nm)、βは半値幅(°)、Bは装置定数(0.1177°)、及び、θはXRDピークの回折角(°)である。半値幅を求める際のXRDピークは、正方晶が2θ=30.0±2°のXRDピーク、及び、立方晶が2θ=29.6±2°のXRDピークである。
本発明の焼結体の平均結晶粒子径は20μm以上、100μm以下、更には30μm以上、90μm以下であることが挙げられる。平均結晶粒子径がこの範囲であることで透光性が高い焼結体となる。本発明において、平均結晶粒子径はプラニメトリック法により測定することができる。
本発明の焼結体は密度が高いことが好ましい。安定化剤及び安定化ランタノイドの量により、密度は異なる。本発明の焼結体の密度は6.0g/cm以上6.4g/cm以下、更には6.0g/cm以上6.3g/cm以下を例示することができる。
本発明の焼結体は、安定化ランタノイドの種類及び量によっては可視光域の波長を吸収し、無色以外の色調を有する焼結体、いわゆる着色透光性ジルコニア焼結体であってもよい。例えば、安定化ランタノイドがネオジムである場合は青色を呈する着色透光性ジルコニア焼結体、安定化ランタノイドがプラセオジムである場合はオレンジ色を呈する着色透光性ジルコニア焼結体となる場合がある。
本発明の焼結体は高い透光性を有する。そのため、本発明の焼結体は、試料厚さ1mm及び測定波長300〜800nmにおける全光線透過率(以下、単に「全光線透過率」ともいう。)が高いことが好ましい。本発明の焼結体は、全光線透過率の最大値が50%以上、更には60%以上、また更には70%以上であることが好ましい。本発明の焼結体は呈色による可視光域の波長を吸収する場合がある。そのため、いずれかの測定波長において上記の全光線透過率を有していれば、本発明の焼結体が高い透光性を有することが確認できる。一方、測定波長を固定(例えば、測定波長600nm)して測定される透過率の値や、複数の波長を有する線源(例えば、太陽光やD65光源)で測定される透過率の値は、異なる呈色を有する焼結体の透光性を比較する指標とすることはできない。
本発明の焼結体は高い強度を有する。本発明の焼結体の曲げ強度として500MPa以上、更には520MPa以上であることが挙げられる。本発明における強度は、ISO/DIS6872に準じて測定される二軸曲げ強度であることが好ましい。本発明の焼結体の二軸曲げ強度は500MPa以上、1000MPa以下、更には500MPa以上、700MPa以下であることが挙げられる。
本発明の焼結体は、8mol%イットリア含有ジルコニア焼結体などの立方晶ジルコニアからなる透光性ジルコニア焼結体と同等以上の破壊靱性を有することが好ましい。これにより、本発明の焼結体が、従来の透光性ジルコニア焼結体が使用されている部材として使用することができる。本発明の焼結体の破壊靱性として1.5MPa・m0.5以上、更には1.7MP・m0.5以上であることが挙げられる。
次に、本発明のジルコニア焼結体の製造方法について説明する。
本発明のジルコニア焼結体は、ネオジム原料、プラセオジム原料及びガドリニウム原料からなる群の少なくとも1つ、ジルコニア原料及び安定化剤原料を含む原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を1500℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする製造方法、により製造することができる。
混合工程では、ネオジム原料、プラセオジム原料及びガドリニウム原料からなる群の少なくとも1つ(以下、「安定化ランタノイド原料」ともいう。)、ジルコニア原料及び安定化剤原料を混合して混合粉末を得る。
ジルコニア原料は、ジルコニア又はその前駆体であり、BET比表面積が4〜20m/gであるジルコニア粉末を挙げることができる。
安定化剤原料は、イットリア、スカンジア、カルシア、マグネシア、及びセリアからなる群の少なくとも1種(安定化剤)の粉末又はその前駆体、更にはイットリアの粉末又はその前駆体を挙げることができる。
さらに、ジルコニア原料は安定化剤を含むジルコニア粉末であることが好ましい。このようなジルコニア粉末は、ジルコニア原料及び安定化剤原料となる。ジルコニア粉末が含有する安定化剤は、イットリア、スカンジア、カルシア、マグネシア、及びセリアからなる群の少なくとも1種であることが好ましく、イットリアであることがより好ましい。安定化剤含有ジルコニア粉末として、2mol%〜8mol%の安定化剤を含有するジルコニア粉末、更にはBET比表面積が4〜20m/gであり2mol%〜8mol%の安定化剤を含有するジルコニア粉末であることが好ましい。安定化剤含有ジルコニア粉末が含有する安定化剤量は2mol%〜8mol%、更には2.5mol%〜6mol%、また更には2.5mol%〜3.9mol%であることが好ましい。
安定化ランタノイド原料は、安定化ランタノイドの酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩及びパイロクロア型構造からなる群の少なくとも1種以上であればよく、好ましくは安定化ランタノイドの不溶性の塩であることが好ましく、酸化物又は炭酸塩の少なくともいずれかであることがより好ましい。
混合粉末の組成は所望の割合であればよいが、酸化物換算でジルコニアが85mol%超97mol%以下、安定化剤が2mol%以上8mol%以下、安定化ランタノイドが1mol%以上10mol%以下であることが挙げられる。
混合粉末の好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア(ZrO) :80mol%以上、95mol%以下
安定化剤 :2mol%以上、8mol%以下
安定化ランタノイド :1mol%以上、6.5mol%以下
混合粉末の特に好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア(ZrO) :85mol%以上、95mol%以下
安定化剤 :2.5mol%以上、7.7mol%以下
安定化ランタノイド :1mol%以上、4.5mol%以下
上記組成における安定化剤はイットリアであることが好ましい。
成形工程では、混合粉末を成形して成形体を得る。所望の形状の成形体が得られれば成形方法は任意である。成形方法として、プレス成形、射出成形、シート成形、押出成形、及び鋳込み成形からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、プレス成形又は射出成型の少なくともいずれかであることが好ましい。
また、得られる成形体の形状は任意であるが、例えば、円板状、円柱状、及び多面体状などの形状や、歯列矯正ブラケットや半導体製造治具、その他の複雑形状を例示することができる。
焼結工程においては、成形体を焼結することにより、結晶構造が立方晶等の高温型の結晶構造である焼結体を得る。そのため、焼結工程において、得られた成形体を1500℃以上の焼結温度で焼結する。1500℃以上で焼結することで、焼結体の結晶構造が高温型の結晶構造になると考えられる。高温型の結晶構造を有する焼結体が降温工程を経ることにより、結晶粒子中の結晶構造が立方晶ドメインと正方晶ドメインとが生成し、本発明の焼結体の結晶構造を含む焼結体を得ることができる。焼結温度は1600℃以上であることが好ましく、更には1625℃以上、また更には1650℃以上であることが好ましい。汎用の焼成炉を使用する場合、焼結温度は2000℃以下、更には1900℃以下、また更には1800℃以下であることが挙げられる。
上記の焼結温度で焼結すれば、焼結方法は任意である。焼結方法として、例えば、常圧焼結、加圧焼結及び真空焼結からなる群の少なくともいずれかを挙げることができ、常圧焼結及び加圧焼結であることが好ましい。
本発明の製造方法における、好ましい焼結工程として、成形体を1000℃以上1500℃未満で焼成して一次焼結体を得る一次焼結、及び、該一次焼結体を1500℃以上で焼結する二次焼結を含む焼結工程を挙げることができる。
一次焼結は、成形体を1000℃以上1500℃未満で焼結することが好ましい。これにより、得られる一次焼結体の組織が微細となる。これに加え、一次焼結体の結晶粒子内に気孔が生成しにくくなる。
二次焼結は、一次焼結体を1500℃以上、更には1600℃以上、また更には1625℃以上、また更には1650℃以上で焼結する。高い強度を有する焼結体を得るため、二次焼結温度は2000℃以下、更には1900℃以下、また更には1800℃以下であることが好ましい。二次焼結温度を2000℃以下とすることで、粗大な結晶粒子が生成しにくくなる。
より高密度な焼結体を得るために、二次焼成は熱間静水圧プレス(以下、「HIP」とする。)処理であることが好ましい。
HIP処理の時間(以下、「HIP時間」とする。)は、少なくとも10分であることが好ましい。HIP時間が少なくとも10分であれば、HIP処理中に、焼結体の気孔が十分に除去される。
HIP処理の圧力媒体(以下、単に「圧力媒体」ともいう。)は、アルゴンガス、窒素ガス、酸素などが例示できるが、一般的なアルゴンガスが簡便である。
HIP処理の圧力(以下、「HIP圧力」ともいう。)は、5MPa以上、更には50MPa以上であることが好ましい。HIP圧力が5MPa以上であることで、焼結体中の気孔の除去がより促進される。圧力の上限に関しては特に指定はないが、通常のHIP装置を使用した場合、HIP圧力は200MPa以下である。
HIP処理では、非還元性の材質からなる容器に成形体又は一次焼結体を配置することが好ましい。これにより、発熱体等のHIP装置の材質に由来する還元成分による焼結体の局所的な還元が抑制される。非還元性の材質としては、アルミナ、ジルコニア、ムライト、イットリア、スピネル、マグネシア、窒化ケイ素及び窒化ホウ素からなる群の少なくとも1種、更にはアルミナ又はジルコニアの少なくともいずれかが例示できる。
降温工程では、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する。降温速度を1℃/min超、更には5℃/min以上、また更には8℃/min以上とすることで、透光性の高い焼結体が得られる。降温速度が1℃/min以下の場合は、析出物や単斜晶が生成するため、得られる焼結体が透光性の低いものとなる。これにより得られる焼結体の透光性が著しく低いものとなる。より高い透光性を有する安定化ランタノイド固溶ジルコニア焼結体を得るため、焼成温度から1000℃への降温は、降温速度を10℃/min以上、更には15℃/min以上、また更に20℃/min以上、また更には30℃/min以上とすることが好ましい。好ましい降温速度として30℃/min以上100℃/min以下、更には50℃/min以上100℃/min以下を挙げることができる。
本発明の製造方法では、降温工程後の焼結体を熱処理するアニール工程を有していてもよい。焼結体をアニール工程に供することで、焼結体の透光性をより高くすることができる。アニール工程は、酸化雰囲気中、900℃以上1200℃以下、更には980℃以上1030℃以下で焼結体を処理することが挙げられる。
本発明により、高い透光性及び高い強度を兼備したジルコニア焼結体を提供することができる。
実施例1のジルコニア焼結体のXRDパターンのリートベルト解析結果。 実施例1のジルコニア焼結体のSEM観察図。(図中スケールは30μm) 実施例1のジルコニア焼結体の外観。 実施例1のジルコニア焼結体のUV−VISスペクトル。 実施例2のジルコニア焼結体のUV−VISスペクトル。 実施例3のジルコニア焼結体のUV−VISスペクトル。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明は実施例に限定されるものではない。
(密度の測定)
焼結体試料の実測密度はアルキメデス法による水中重量を測定することにより求めた。
(平均結晶粒径の測定)
焼結体試料を平面研削した後、9μm、6μm及び1μmのダイアモンド砥粒を順に用いて鏡面研磨した。研磨面を1400℃で1時間保持し、熱エッチングした後、SEM観察し、得られたSEM観察図からプラニメトリック法により平均結晶粒径を求めた。
(結晶構造の同定)
焼結体試料のXRD測定によって得られたXRDパターンを同定分析することで、各焼結体試料の結晶構造の同定、及び、不純物層の有無を確認した。XRD測定は、一般的な粉末X線回折装置(装置名:UltimaIII、リガク社製)を用い、鏡面研磨をした焼結体試料について行った。XRD測定の条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎秒0.04°
発散スリット: 0.5deg
散乱スリット: 0.5deg
受光スリット: 0.3mm
計測時間 : 1.0秒
測定範囲 : 2θ=20°〜80°
XRDパターンの同定分析には、XRD解析ソフトウェア(商品名:JADE7、MID社製)を用いた。
(平均結晶子径の測定)
結晶相の同定と同様な測定方法で得られたXRDパターンの2θ=27°〜30°の範囲について、シェラー式を使用して焼結体試料の平均結晶子径を求めた。
D=K×λ/((β−B)×cosθ)
上記式において、Dは平均結晶子径(nm)、Kはシェラー定数(1.0)、λはCuKαの波長(0.15418nm)、βは半値幅(°)、Bは装置定数(0.1177°)、及びθはメインピークの回折角(°)である。
なお、メインピークは、ジルコニアの立方晶(111)面に相当するピーク、及び、正方晶(111)面に相当するピークが重複するピークを単一ピークとみなした。
また、半値幅は、Rigaku社製Integral Analysis for Windows(Version 6.0)を用いて求めた。
(リートベルト解析)
結晶構造の同定と同様な測定方法で得られたXRDパターンをリートベルト解析することにより、焼結体試料中の立方晶及び正方晶の各結晶構造の割合、結晶子径、及び、格子定数を求めた。リートベルト解析は汎用のプログラム(Rietan−2000)を用いた。
得られた格子定数から、以下の式に基づいて正方晶中のY濃度を求めた。
YO1.5=(1.0223−cf/af)/0.001319
=100×YO1.5/(200−YO1.5
上記式において、YO1.5はイットリア濃度、cf及びafは、それぞれ、リートベルト解析で求めた正方晶蛍石型構造のc軸及びa軸の格子定数である。
(透過率の波長依存性の測定)
焼結体試料の透過率の波長依存性として、全光線透過率及び直線透過率をUV−VISにより測定した。測定条件は以下のとおりである。
光源 :重水素ランプ、及び、ハロゲンランプ
測定波長 :200〜800nm
測定ステップ :1nm
UV−VIS測定には、一般的なダブルビーム方式の分光光度計(装置名:V−650型、日本分光社製)を使用した。
測定試料には直径16mm、厚さ1.0mmの円板状成形体を用いた。測定に先立ち、測定試料の両面を研磨し、表面粗さRaを0.02μm以下に鏡面研磨した。
(二軸曲げ強度の測定)
ISO/DIS6872に準じた二軸曲げ強度測定によって、試料の二軸曲げ強度を測定した。測定試料の厚みは1mmとして、両面鏡面研磨した試料について測定した。
(破壊靱性の測定)
JIS R1607に準じた方法により、試料の破壊靱性を測定した。測定試料としては、表面粗さRaを0.02μm以下に鏡面研磨したものを試料に用いた。
押し込み加重 :5kgf
焼結体の弾性率 :205GPa
実施例1
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(BET比表面積が7m/g、商品名:TZ−3YS、東ソー製)と酸化ネオジム(Nd)粉末を混合し、混合粉末を得た。混合は、ジルコニア粉末に対する酸化ネオジム粉末の重量割合が10重量%となるように、酸化ネオジム粉末をジルコニア粉末に添加し、エタノール溶媒中、直径10mmのジルコニアボールを用いたボールミルにより行った。得られた混合粉末を大気中、80℃で乾燥し、原料粉末とした。
金型プレスによる一軸加圧で原料粉末を成形し、予備成形体を得た。一軸加圧の圧力は50MPaとした。得られた予備成形体を冷間静水圧プレス(以下、「CIP」とする。)処理することで、直径20mm、及び、厚さ約3mmの円柱状成形体を得た。CIP処理の圧力は200MPaとした。
当該成形体を、大気中、昇温速度を100℃/h、焼結温度1450℃、及び焼結時間2時間で一次焼結することで一次焼結体を得た。
得られた一次焼結体を蓋付きのジルコニア製の容器に配置し、これをHIP処理することでHIP処理体を得、これを本実施例のジルコニア焼結体を得た。HIP処理条件は、圧力媒体として99.9%のアルゴンガス雰囲気中、昇温速度600℃/h、HIP温度1750℃、HIP圧力150MPa、及び保持時間1時間とした。
HIP処理後、焼結温度から室温まで降温しHIP処理体を得た。なお、HIP温度から1000℃までの降温速度は83℃/minであった。
得られたHIP処理体を、大気中、1000℃で1時間熱処理をすることで、透光性を有し、なおかつ、青色を呈する本実施例のジルコニア焼結体を得た。本実施例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に示した。
本実施例のジルコニア焼結体のリートベルト解析結果を図1、SEM観察図を図2に示す。図1のXRDパターンより、本実施例のジルコニア焼結体は正方晶および立方晶ジルコニアであり、ネオジム酸化物等を含有しないことが確認できた。
リートベルト解析より、立方晶が86.0重量%及び正方晶が14.0重量%であることが確認できた。格子定数は、立方晶がa=0.51535nm、並びに、正方晶はaf=0.51228nm及びcf=0.51585nmであった。正方晶の結晶子径は68.7nmであり、これより求めた正方晶のY濃度は6.2mol%であった。当該リートベルト解析は、信頼度因子Rwp=22%及びS=1.46であった。
また、平均結晶子径は306nmであり、リートベルト解析より求めた立方晶の結晶子径と同程度であった。平均結晶子径に対する正方晶の結晶子径の割合が0.22と、正方晶の結晶子径が平均結晶子径よりも小さく、なおかつ、平均結晶子径と立方晶の結晶子径が同程度であったことから、本実施例のジルコニア焼結体は正方晶ドメインを有する立方晶の結晶粒子から成ることが確認できた。
また、平均結晶粒径は29.9μmであった。
本実施例のジルコニア焼結体の概観を図3に、UV−VISスペクトルを図4に示した。図3より、本実施例のジルコニア焼結体を通して背面の線図が確認でき、本発明のジルコニア焼結体が透光性を有することが確認できる。さらに、全光線透過率の最大値が70%以上であり、高い透光性を有することが確認できた。
実施例2
酸化ネオジム粉末の代わりに酸化プラセオジム(Pr11)粉末を使用したこと、酸化プラセオジム粉末の重量割合が10重量%となるように酸化プラセオジム粉末とジルコニア粉末を混合したこと、及び、HIP処理温度を1650℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のジルコニア焼結体を得た。得られた焼結体は、オレンジ色を呈する透光性ジルコニア焼結体であった。本実施例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に、UV−VISスペクトルを図5に示した。
図5より、全光線透過率の最大値は70%を超え、本実施例は高い透光性を有する透光性ジルコニア焼結体であることが確認できた。
リートベルト解析より、立方晶が84.3重量%及び正方晶が15.7重量%であることが確認できた。格子定数は、立方晶がa=0.51619nm、並びに、正方晶はaf=0.51331nm及びcf=0.51678nmであった。正方晶の結晶子径は110.7nmであり、これより求めた正方晶のY濃度は6.26mol%であった。当該リートベルト解析は、信頼度因子Rwp=21%及びS=1.47であった。
本実施例のジルコニア焼結体は平均結晶子径が262nmであり、なおかつ、立方晶の結晶子径と同程度であった。平均結晶子径に対する正方晶の結晶子径の割合が0.42と、正方晶の結晶子径が平均結晶子径よりも小さく、なおかつ、平均結晶子径と立方晶の結晶子径が同程度であったことから、本実施例のジルコニア焼結体は正方晶ドメインを有する立方晶の結晶粒子から成ることが確認できた。
実施例3
酸化ネオジム粉末の代わりに酸化ガドリニウム(Gd)粉末を使用したこと、酸化ガドリニウム粉末の重量割合が10重量%となるように酸化ガドリニウム粉末とジルコニア粉末を混合したこと、及び、HIP処理温度を1650℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のジルコニア焼結体を得た。得られた焼結体は、無色の透光性ジルコニア焼結体であった。本実施例のジルコニア焼結体の評価結果を表1に、UV−VISスペクトルを図6に示した。
図6より、全光線透過率の最大値は58%を超え、本実施例は高い透光性を有する透光性ジルコニア焼結体であることが確認できた。
リートベルト解析より、立方晶が50.4重量%及び正方晶が49.6重量%であることが確認できた。格子定数は、立方晶がa=0.51508nm、並びに、正方晶はaf=0.51335nm及びcf=0.51662nmであった。正方晶の結晶子径は66.4nmであり、これより求めた正方晶のY濃度は6.4mol%であった。当該リートベルト解析は、信頼度因子Rwp=19%及びS=1.2であった。本実施例のジルコニア焼結体は平均結晶子径が325nmであり、なおかつ、立方晶の結晶子径と同程度であった。平均結晶子径に対する正方晶の結晶子径の割合が0.20と、正方晶の結晶子径が平均結晶子径よりも小さく、なおかつ、平均結晶子径と立方晶の結晶子径が同程度であったことから、本実施例のジルコニア焼結体は正方晶ドメインを有する立方晶の結晶粒子から成ることが確認できた。
比較例1
BET比表面積が7m/gの3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(商品名:3YS、東ソー製)を、本比較例の原料粉末とした。
金型プレスによる一軸加圧で原料粉末を成形し、予備成形体を得た。CIP処理することで、直径20mm、及び、厚さ約3mmの円柱状成形体を得た。CIPの圧力は200MPaとした。
当該成形体を、大気中、昇温速度を100℃/hr、焼結温度1450℃、及び焼結時間2時間で一次焼結することで一次焼結体を得た。
得られた一次焼結体を蓋付のアルミナ性容器に配置し、これをHIP処理した。HIP処理条件は、圧力媒体として99.9%のアルゴンガス雰囲気中、昇温速度600℃/hr、HIP温度1750℃、HIP圧力150MPa、及び保持時間1時間とした。
HIP処理後、HIP温度から1000℃までの降温速度は83℃/minとして、これを冷却した。
得られたHIP処理体を、大気中、1000℃で1時間熱処理をすることで、本比較例のジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体の平均結晶粒子径は1.80μmであり、結晶粒子が正方晶を主とするものであった。本比較例のジルコニア焼結体の二軸曲げ強度は1GPaを超える高い強度を示したが、全光線透過率は39.0%であり、透光性が著しく低いものであった。
比較例2
BET比表面積が7m/gの8mol%イットリア含有ジルコニア粉末(商品名:8YS、東ソー製)を、本比較例の原料粉末としたこと以外は比較例1と同様な方法で本比較例のジルコニア焼結体を得た。
得られたジルコニア焼結体の平均結晶粒子径は52.9μmであり、結晶相は立方晶のみからなり、正方晶ドメインを有していなかった。本比較例のジルコニア焼結体の全光線透過率は62.0%であり、高い透光性を有する。しかしながら、二軸曲げ強度は253MPaであり強度が非常に低い焼結体であることが確認できた。
Figure 0006772591
表1からも明らかなように、本発明のジルコニア焼結体は二軸曲げ強度が500MPa以上、なおかつ、全光線透過率が58%以上であり、高い強度と高い透光性とを兼備することが分かる。これに対し、比較例1は高い強度のみを有する一方、透光性は有さず、比較例2は高い透光性を有するが強度が低く、従らのジルコニア焼結体では強度及び透光性を兼備するものは得られないことが分かった。
本発明のジルコニア焼結体は、高い透光性、及び、高い強度を兼備する。そのため、審美性が要求される歯科補綴材、歯科矯正用部材などの歯科用部材に使用することができる。さらに、本発明のジルコニア焼結体は高い意匠性を有するため、時計や宝飾品などの装飾部材として使用することができ、さらには、半導体製造装置用部材の耐プラズマ部材として使用することができる。

Claims (9)

  1. 正方晶ドメインを有する立方晶の結晶粒子を含み、ネオジム、プラセオジム及びガドリニウムからなる群の少なくとも1種と、安定化剤とを固溶し、なおかつ、CuKαを線源とする粉末X線回折パターンにおける2θ=30±2°のピークの半値幅から算出される平均結晶子径が255nm超であることを特徴とするジルコニア焼結体。
  2. ネオジム、プラセオジム及びガドリニウムからなる群の少なくとも1種の含有量が0.1mol%以上、10mol%以下である請求項1に記載のジルコニア焼結体。
  3. 安定化剤が、イットリア、スカンジア、カルシア、マグネシア、及びセリアからなる群の少なくとも1種である請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
  4. 結晶相における立方晶の割合が50重量%以上である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  5. 曲げ強度が500MPa以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  6. 試料厚さ1mm及び測定波長300〜800nmにおける全光線透過率の最大値が50%以上である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  7. ネオジム原料、プラセオジム原料及びガドリニウム原料からなる群の少なくとも1つ、ジルコニア原料及び安定化剤原料を含む原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を1500℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  8. 前記焼結工程が、1000℃以上1500℃未満で焼成して一次焼結体を得る一次焼結、及び、該一次焼結体を1500℃以上で焼結する二次焼結を含む請求項7に記載の製造方法。
  9. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を含む歯科用部材。
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