JP7135501B2 - ジルコニア焼結体及びその製造方法 - Google Patents

ジルコニア焼結体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はジルコニア焼結体に関する。
ジルコニアを主成分とする焼結体であって透光性を有するもの(以下、「透光性ジルコニア焼結体」ともいう。)は、ガラスやアルミナよりも機械的特性に優れる。そのため、透光性ジルコニア焼結体は、光学特性のみならず機械的特性をも必要とする用途を目的とした素材として検討されている。
例えば、特許文献1には歯科用材料や外装部材等に適した素材としての透光性ジルコニア焼結体が開示されている。当該透光性ジルコニア焼結体は、3mol%のイットリアを含有するジルコニア焼結体であった。
特許文献2には、歯科用材料、特に歯列矯正ブラケットに適した素材としての透光性ジルコニア焼結体が開示されている。当該透光性ジルコニア焼結体は、8mol%のイットリアを含有するジルコニア焼結体であった。
特許文献3には、歯科用材料、特に義歯及び義歯を得るためのミルブランクに適した素材としてのジルコニア焼結体が開示されている。当該ジルコニア焼結体は、イットリア及びチタニアを含有するジルコニア焼結体であった。
特許文献4には、ランタンが固溶し、なおかつ、結晶粒子のドメイン構造が制御された透光性ジルコニア焼結体が報告されている。
特開2008-050247号公報 特開2009-269812号公報 特開2008-222450号公報 特開2017-104689号公報
特許文献4の透光性ジルコニア焼結体は、従来の透光性ジルコニア焼結体及び透光性アルミナと比べて透光性が高く、なおかつ、歯列矯正ブラケットに適用できる機械的強度を有していた。さらに、特許文献4では、焼結後の透光性ジルコニア焼結体の表面を研磨することで、機械的強度がさらに向上することが開示されていた。
本発明は、焼結後の状態、すなわち研磨等の焼結後の処理を施さない状態であっても、高い機械的強度を有するジルコニア焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法について検討した。その結果、焼結条件、特に焼結時の被焼結物の状態を制御することで、研磨処理等の焼結後の処理を必須とすることなく、高い機械的強度を有する透光性ジルコニア焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 立方晶ドメイン及び正方晶ドメインを有する結晶粒子を含み、安定化剤及びランタンを固溶し、なおかつ、CuKαを線源とする粉末X線回折パターンにおける2θ=30±2°のピークの半値幅から算出される平均結晶子径が255nm以下であり、表面の算術平均粗さが20nm以上60nm以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
[2] ランタン含有量が1mol%以上、10mol%以下である上記[1]に記載のジルコニア焼結体。
[3] 前記安定化剤が、イットリア、スカンジア、カルシア、マグネシア及びセリアの群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]又は[2]に記載のジルコニア焼結体。
[4] ランタン以外のランタノイド又は遷移金属の少なくとも1種を含む上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のジルコニア焼結体。
[5] 試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする全光線透過率が45%以上である上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載のジルコニア焼結体。
[6] 表面に研磨痕を有さない上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のジルコニア焼結体。
[7] ジルコニア原料、安定化剤原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載のジルコニア焼結体の製造方法。
[8] 上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載のジルコニア焼結体を含む歯列矯正ブラケット。
本発明により、焼結後の状態、すなわち研磨等の焼結後の処理を施さない状態であっても、高い機械的強度を有するジルコニア焼結体及びその製造方法を提供することができる。
焼結工程における成形体の配置を示す模式図
以下、本発明のジルコニア焼結体について実施態様の一例を示しながら説明する。
本実施態様のジルコニア焼結体は焼結体中に単にランタン(La)を含むではなく、ジルコニアにランタンが固溶した、ランタン固溶ジルコニア焼結体である。ランタンが固溶することで、焼結体の結晶粒子の組織構造が微細になる。
本実施態様のジルコニア焼結体において、ランタンがジルコニアに固溶していることは粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターンから確認することができる。本実施態様のジルコニア焼結体はCuKα線(λ=0.15418nm)を線源とするXRD測定において、2θ=30±2°のピーク(以下、「メインピーク」ともいう。)を有する。メインピークは正方晶ジルコニアのXRDピーク(2θ=30.0±2°)及び立方晶ジルコニアのXRDピーク(2θ=29.6±2°)が重複したピークであり、なおかつ、ジルコニア焼結体のXRDパターンにおける回折強度が最も強いXRDピークである。メインピークから求められる格子定数(Lattice Parameter)が、ランタンを固溶しないジルコニア焼結体よりも大きいことから、本実施態様のジルコニア焼結体においてランタンがジルコニアに固溶していることが確認できる。例えば、ジルコニア焼結体がランタン及び3mol%のイットリアを含有する場合、その格子定数は、同量のイットリアのみを含有するジルコニア焼結体の格子定数よりも大きくなる。格子定数が大きいことは、XRDパターンにおいてメインピークが低角側へシフトすることから確認できる。
さらに、本実施態様のジルコニア焼結体は、ランタンとジルコニウムとからなる複合酸化物又はランタン酸化物(以下、「ランタン酸化物等」ともいう。)を実質的に含有しないことが好ましい。ランタン酸化物等を含まないことで、ジルコニア焼結体が、より透光性の高い焼結体となる。ランタン酸化物等を含まないことは、ジルコニア焼結体のXRDパターンにおいて、ジルコニアのXRDピーク以外に相当するXRDピークを有さないことから確認することができる。ランタン酸化物等としてはLaZr、及びLaを例示することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体のランタン含有量は1mol%以上であることが好ましい。ランタンを2mol%以上含有することで、結晶粒子中のドメインが微細になりやすい。ランタン含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、安定化剤及び酸化物換算したランタン(La)の合計に対する、酸化物換算したランタンのモル割合である。ジルコニアに全てのランタンを固溶させるため、ジルコニア焼結体のランタンの含有量は10mol%以下であることが好ましい。好ましいランタン含有量として、1mol%以上、10mol%以下、更には1mol%以上、7mol%以下、また更には2mol%以上、10mol%以下、また更には2mol%以上、7mol%以下、また更には2mol%以上、6.5mol%以下、また更には3mol%以上、6.5mol%以下を挙げることができる。
ランタンはランタノイド元素であるが、本実施態様のジルコニア焼結体はランタン以外のランタノイド元素を含まないことが好ましい。ランタン以外のランタノイド元素として、例えば、ユーロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロジム(Dy)、ホロニウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)又はルテチウム(Lu)を挙げることができる。本実施態様のジルコニア焼結体はランタン以外のランタノイド元素を含まないことが好ましいが、組成分析の測定誤差を考慮すると本実施態様のジルコニア焼結体におけるランタン以外のランタノイド元素の含有量は0.6mol%以下であることが例示できる。
本実施態様のジルコニア焼結体は、安定化剤を含む。安定化剤はジルコニア中に固溶する。ランタン及び安定化剤がジルコニアに固溶することで、室温等の低温環境下においても、ジルコニア焼結体の結晶粒子(Crystal Grain)が立方晶ドメイン及び正方晶ドメインを含んだ状態となる。安定化剤は、イットリア(Y)、スカンジア(Sc)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、及びセリア(CeO)からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。工業的に利用しやすいため、安定化剤はカルシア、マグネシア及びイットリアからなる群の少なくともいずれか、更にはイットリアであることが好ましい。
本実施態様のジルコニア焼結体が含む安定化剤は、2mol%以上、7mol%以下、更には2mol%以上、5mol%以下、また更には2.1mol%以上、4.9mol%以下、また更には2mol%以上、4mol%以下であることが挙げられる。なお、安定化剤含有量(mol%)は、焼結体中のジルコニア、安定化剤及び酸化物換算したランタン(La)の合計に対する、安定化剤のモル割合である。
本実施態様のジルコニア焼結体はジルコニア焼結体であり、ジルコニアを主成分とする焼結体である。そのため、本実施態様のジルコニア焼結体に含まれる安定化剤及びランタンの合計含有量は50mol%未満であればよい。本実施態様のジルコニア焼結体のジルコニア含有量は50mol%超であればよく、更には60mol%以上、また更には80mol%以上、また更には83mol%超、また更には90mol%以上であることが好ましい。
本実施態様のジルコニア焼結体はアルミナ(Al)を含んでいてもよい。アルミナを含有することで、特に強度が高い焼結体における透光性が高くなりやすい。本実施態様のジルコニア焼結体がアルミナを含む場合、アルミナ含有量は100重量ppm以上2000重量ppm以下、更には200重量ppm以上1000重量ppm以下であることが好ましい。アルミナの含有量(重量ppm)は、焼結体中のジルコニア、安定化剤及び酸化物換算したランタン(La)の合計重量に対する、酸化物換算したアルミニウム(Al)の重量割合である。
ジルコニア焼結体は上記の組成を有するが、不可避不純物は含んでいてもよい。不可避不純物としては、ハフニウム(Hf)及びランタン以外の希土類元素(Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm、Yb,Lu)が挙げられる。
本実施態様のジルコニア焼結体の好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア(ZrO) :90mol%以上、95mol%以下
安定化剤 :2mol%以上、5mol%以下
ランタン(La) :2mol%以上、6.5mol%以下
本実施態様のジルコニア焼結体の特に好ましい組成として以下のモル組成を挙げることができる。
ジルコニア(ZrO) :92mol%以上、94mol%以下
安定化剤 :2mol%以上、4mol%以下
ランタン(La) :3mol%以上、5mol%以下
上記組成における安定化剤はイットリアであることが好ましい。
本実施態様のジルコニア焼結体は、結晶粒子中に立方晶ドメイン及び正方晶ドメインを有する。結晶粒子中に立方晶ドメインと正方晶ドメインとが含まれることで、透光性が高いだけでなく、強度が高くなる。本実施態様において、ドメインとは、結晶粒子中の結晶子(Crystallite)又は結晶子の集合体の少なくともいずれかであって、同一の結晶構造が連続した部分である。また、立方晶ドメインとは結晶構造が立方晶蛍石型構造であるドメイン、及び、正方晶ドメインとは結晶構造が正方晶蛍石型構造であるドメインである。ジルコニア焼結体が、その結晶粒子中に立方晶ドメイン及び正方晶ドメインを有することは、XRDパターンのリートベルト解析により確認することができる。すなわち、XRDパターンのリートベルト解析により、ジルコニア焼結体が立方晶と正方晶とを含むことが確認できる。なおかつ、リートベルト解析により算出される立方晶と正方晶のそれぞれの結晶子径が、結晶粒子径よりも小さいことから、結晶粒子中に立方晶ドメインと正方晶ドメインを含むことを確認することができる。本実施態様のジルコニア焼結体は、立方晶ドメイン及び正方晶ドメインを有する結晶粒子を含むが、立方晶ドメイン及び正方晶ドメインを有する結晶粒子からなることが好ましい。
本実施態様のジルコニア焼結体は上記のドメインを含むため、その結晶構造は立方晶蛍石型構造及び正方晶蛍石型構造を含む。さらに、本実施態様のジルコニア焼結体は、単斜晶を実質的に含まないことが好ましい。ここで、単斜晶を実質的に含まないとは、XRDパターンにおいて単斜晶のXRDピークが確認されないことが挙げられる。
立方晶ドメイン及び正方晶ドメインのランタン濃度は同じであってもよいが、ジルコニア焼結体において、結晶粒子中の立方晶ドメイン及び正方晶ドメインのそれぞれのランタン濃度が異なっていてもよく、さらには立方晶ドメインのランタン濃度が正方晶ドメインのランタン濃度よりも高くなっていてもよい。本実施態様において各ドメイン中のランタン濃度は透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」とする。)観察における組成分析により観察することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体は、メインピークの半値幅(以下、「FWHM」とする。)から算出される平均結晶子径(Average Crystallite Size;以下、単に「平均結晶子径」ともいう。)が255nm以下である。平均結晶子径が250nm以下、更には200nm以下、また更には150nm以下、また更には130nm以下であることで透光性が高くなりやすい。さらに、平均結晶子径が100nm以下、更には60nm以下、また更には50nm以下、また更には30nm以下であることで、光散乱がより抑制される。これによりジルコニア焼結体の透光性がより高くなる。
平均結晶子径は小さいことが好ましいが、本実施態様のジルコニア焼結体においては、2nm以上、更には5nm以上、また更には10nm以上、また更には15nm以上であることが挙げられる。
平均結晶子径が255nm以下であることは、本実施態様のジルコニア焼結体のXRDパターンにおいてFWHMが0.1536°以上であることをもって確認することができる。そのため、本実施態様のジルコニア焼結体はFWHMが0.1536°以上あることが好ましい。FWHMが大きくなるほど、平均結晶子径が小さくなる。例えば、FWHMは、平均結晶子径が250nm以下の場合は0.154°以上、200nm以下の場合は0.1635°以上、150nm以下の場合は0.178°以上、130nm以下の場合は0.187°以上、及び、100nm以下の場合は0.25℃以上となる。FWHMは0.3°以上、更には0.4°以上であることが好ましい。一方、結晶性が高くなるほどXRDピークのFWHMは小さくなるが、通常のXRD測定において測定できるFWHMは40°程度までである。本実施態様のジルコニア焼結体のメインピークのFWHMとして1°以下、更には0.7°以下であることが挙げられる。
なお、本実施態様のジルコニア焼結体の結晶粒子中に含まれる、立方晶及び正方晶それぞれの結晶子径は、本実施態様のジルコニア焼結体のXRDパターンのリートベルト解析により求めることができる。すなわち、リートベルト法により、ジルコニア焼結体のXRDパターンを、立方晶に起因するXRDピーク及び正方晶に起因するXRDピークに分離する。分離後の各結晶構造のXRDピークの半値幅を求め、得られた半値幅から以下のシェラー式によって結晶子径を求めればよい。
D=K×λ/((β-B)×cosθ)
上記式において、Dは各結晶の結晶子径(nm)、Kはシェラー定数(1.0)、λはCuKαの波長(0.15418nm)、βは半値幅(°)、Bは装置定数(0.1177°)、及び、θはXRDピークの回折角(°)である。半値幅を求める際のXRDピークは、正方晶が2θ=30.0±2°のXRDピーク、及び、立方晶が2θ=29.6±2°のXRDピークである。
本実施態様のジルコニア焼結体の平均結晶粒子径(Average Cryatal Grain Size)は20μm以上、100μm以下、更には30μm以上、90μm以下であることが挙げられる。平均結晶粒子径がこの範囲であることで透光性が高い焼結体となる。本実施態様において、平均結晶粒子径はプラニメトリック法により測定することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体は密度が高いことが好ましい。安定化剤及びランタンの量により、密度は異なる。本実施態様のジルコニア焼結体の密度は6.0g/cm以上6.2g/cm以下、更には6.0g/cm以上6.12g/cm以下を例示することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体は、表面の算術平均粗さ(以下、「Ra」ともいう。)が20nm以上60nm以下であり、25nm以上45nm以下であることが好ましい。Raが60nmを超えると機械的強度、特に破断強度が低くなる。Raは小さいほど好ましいが、研磨処理等を施した場合であってもジルコニア焼結体のRaは20nm程度である。
本実施態様のジルコニア焼結体は、表面の最大高さ(以下、「Rz」ともいう。)が100nm以上1000nm以下であることが挙げられ、300nm以上900nm以下であることが好ましい。
本実施態様のジルコニア焼結体は、表面の二乗平均平方根高さ(以下、「Rq」ともいう。)が10nm以上100nm以下であることが挙げられ、20nm以上50nm以下であることが好ましい。
本実施態様において、Ra、Rz及びRqはJIS B 0601に準じた方法により測定することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体は、その表面に研磨痕を有さないことが好ましい。通常、焼結直後の焼結体はその表面が粗いため、研磨等の後処理を施すことで表面を平滑化する。しかしながら、後処理により焼結体の表面に研磨痕が生じる。これに対し、本実施態様のジルコニア焼結体は、焼結後の状態で実用的な平滑性を有することが好ましく、この場合、研磨痕を有さずに上記のRaを満たす。研磨痕は研磨に伴い発生し、例えば、規則的な筋状模様が挙げることができる。
研磨痕は焼結体の表面をSEM観察することで確認することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体は高い透光性(Translucency)を有する。そのため、本実施態様のジルコニア焼結体は、試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする全光線透過率(以下、単に「全光線透過率」ともいう。)が45%以上であることが好ましい。透光性は高いほど好ましく、全光線透過率は50%以上、また更には55%以上であることが好ましい。平均結晶子径が大きくなるほど全光透過率が高くなる傾向にある。例えば、ランタン含有量が2.5mol%以上の場合、平均結晶子径が25nm以上であることで全光線透過率が65%以上となる。
本実施態様のジルコニア焼結体の透光性は上記の全光線透過率を満たせばよいが、試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする直線透過率(以下、単に「直線透過率」ともいう。)が1%以上、更には3%以上、また更には10%以上、また更には20%以上、また更には30%以上であることにより、より透明性(Transparency)が高い焼結体となるため好ましい。本実施態様のジルコニア焼結体の直線透過率の上限は70%以下、更には66%以下であることが例示できる。一方、ジルコニア焼結体の試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする拡散透過率(以下、単に「拡散透過率」ともいう。)は10%以上、更には15%以上、また更には20%以上であることが好ましい。より好ましい拡散透過率として30%以上、65%以下を例示することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体は高い強度を有することが好ましい。本実施態様のジルコニア焼結体の曲げ強度として500MPa以上、更には600MPa以上であることが挙げられる。適用できる用途が広がるため、本実施態様のジルコニア焼結体の強度は800MPa以上、更には1000MPa以上であることが好ましい。本実施態様における強度は、ISO/DIS6872に準じて測定される二軸曲げ強度として500MPa以上、1600MPa以下、更には600MPa以上、1500MPa以下であることが挙げられる。また、本実施態様における強度は、JIS R1601に準じて測定される三点曲げ強度として500MPa以上、1500MPa以下、更には600MPa以上、1200MPa以下であることが挙げられる。
ジルコニア焼結体は、8mol%イットリア含有ジルコニア焼結体などの立方晶ジルコニアからなる透光性ジルコニア焼結体と同等以上の破壊靱性を有することが好ましい。これにより、ジルコニア焼結体が、従来の透光性ジルコニア焼結体が使用されている部材として使用することができる。ジルコニア焼結体の破壊靱性として1.7MP・m0.5以上、更には1.8MPa・m0.5以上、また更には2MPa・m0.5以上、また更には2.2MPa・m0.5以上であることが挙げられる。
本実施態様において、破壊靱性はJIS R1607に準じたIF法又はSEPB法のいずれかにより測定することができる。
本実施態様のジルコニア焼結体は、高い透光性、及び、高い強度を兼備するため、審美性が要求される歯科矯正用部材、特印歯列矯正ブラケットに使用することができる。
次に、本実施態様の歯列矯正ブラケットの製造方法について説明する。
本実施態様においては、ジルコニア原料、安定化剤原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする製造方法、によりジルコニア焼結体を製造することができる。
混合工程では、ジルコニア原料、安定化剤原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る。ジルコニア原料、安定化剤原料及びランタン原料が均一に混合されれば、混合方法は湿式混合又は乾式混合のいずれであってもよい。より均一な混合粉末が得られるため、混合方法は、好ましくは湿式混合、より好ましくは湿式ボールミル又は湿式攪拌ミルの少なくともいずれかによる湿式混合である。
ジルコニア原料は、ジルコニア又はその前駆体であり、BET比表面積が4~20m/gであるジルコニア粉末を挙げることができる。
安定化剤原料は、イットリア、スカンジア、カルシア、マグネシア及びセリアの群から選ばれる少なくとも1種(安定化剤)の粉末又はその前駆体であり、好ましくはイットリアの粉末又はその前駆体が挙げられる。
さらに、ジルコニア原料は安定化剤を含むジルコニア粉末であることが好ましい。このようなジルコニア粉末は、ジルコニア原料及び安定化剤原料となる。ジルコニア粉末が含有する安定化剤は、イットリア、スカンジア、カルシア、マグネシア及びセリアの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、イットリアであることがより好ましい。安定化剤含有ジルコニア粉末は2mol%~7mol%の安定化剤を含有するジルコニア粉末であることが好ましく、BET比表面積が4~20m/gであり2mol%~7mol%の安定化剤を含有するジルコニア粉末であることがより好ましい。安定化剤含有ジルコニア粉末が含有する安定化剤量は2mol%~5mol%、更には2mol%~4mol%であることが好ましい。
ランタン原料は、ランタンを含む化合物を挙げることができ、酸化ランタン、水酸化ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、塩化ランタン、炭酸ランタン及びパイロクロア型LaZrの群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、好ましくは酸化ランタン又はLaZrの少なくともいずれかである。
混合粉末は、アルミナ原料を含んでいてもよい。アルミナ原料はアルミニウムを含む化合物を挙げることができ、好ましくはアルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム及びスピネルの群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアルミナである。好ましいアルミナとしてα型アルミナ又はγ型アルミナの少なくともいずれか、更にはα型アルミナが挙げられる。
混合粉末の組成は所望の割合であればよいが、酸化物換算でジルコニアが83mol%超97mol%以下、安定化剤が2mol%以上7mol%以下、ランタンが1mol%以上10mol%以下であることが挙げられる。
好ましい混合粉末の組成として以下のモル組成が挙げられる。
ジルコニア(ZrO) :90mol%以上、95mol%以下
好ましくは92mol%以上、94mol%以下
安定化剤 :2mol%以上、5mol%以下
好ましくは2mol%以上、4mol%以下
ランタン(La) :2mol%以上、6.5mol%以下
好ましくは3mol%以上、5mol%以下
上記組成における安定化剤はイットリアであることが好ましい。
成形工程では、混合粉末を成形して成形体を得る。所望の形状の成形体が得られれば成形方法は任意である。成形方法として、プレス成形、射出成形、シート成形、押出成形、及び鋳込み成形の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、プレス成形又は射出成型の少なくともいずれかであることが好ましい。
成形体の形状は任意であるが、例えば、円板状、円柱状、及び多面体状などの形状や、歯列矯正ブラケットや半導体製造治具、その他の複雑形状を例示することができる
焼結工程においては、成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して焼結することにより、高い平滑性の表面を有するジルコニア焼結体が得られる。焼結時の容器は、焼結炉の雰囲気媒体の流れに直接接することを避けるために使用されている。さらに、焼結雰囲気の均一性が損なわれるため、容器を複数使用することは従来行われていない。これに対し、本実施態様では容器の二重化等、複数の容器内に成形体を配置にすることで、焼結後のジルコニア焼結体の表面がより平滑になることを見出した。
図1は焼結工程における成形体の配置状態の一例を示す模式図である。成形体(101)は内容器(102)の内部に配置されており、該内容器(102)は外容器(103)の内部に配置されている。内容器は成形体がその内部に配置できる任意の形状であればよく、外容器は内容器がその内部に配置できる任意の形状であればよい。
内容器及び外容器は、密封容器以外、すなわち雰囲気ガスの流れを遮断しない容器であればよく、蓋付容器、例えば、蓋付るつぼ又は蓋付匣鉢を挙げることができる。なお、図1において、内容器(102)及び外容器(103)は、それぞれ、蓋付容器として示している。
内容器(102)及び外容器(103)の材質は、それぞれ、金属酸化物又は金属窒化物の少なくともいずれかであり、好ましくは金属酸化物、より好ましくはアルミナ、ジルコニア、ムライト、イットリア、スピネル、マグネシア、窒化ケイ素及び窒化ホウ素の群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアルミナ、ジルコニア、ムライト及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはアルミナ又はジルコニアの少なくともいずれか、が挙げられる。
なお、焼結工程が後述の二段焼結法である場合、該成形体に代わり一次焼結体を内容器に配置すること、すなわち、二次焼結において、一次焼結体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して焼結すればよい。
焼結工程において、得られた成形体を1650℃以上の焼結温度で焼結する。1650℃以上で焼結することで、焼結体の結晶構造が高温型の結晶構造になると考えられる。高温型の結晶構造を有する焼結体が降温工程を経ることにより、結晶粒子中の結晶構造が立方晶ドメインと正方晶ドメインとが生成し、本実施態様の焼結体の結晶構造を含む焼結体を得ることができる。焼結温度は1650℃以上であり、好ましくは1700℃以上、より好ましくは1725℃以上、更に好ましくは1750℃以上である。汎用の焼成炉を使用する場合、焼結温度は2000℃以下が挙げられ、好ましくは1900℃以下、より好ましくは1800℃以下である。
上記の焼結温度で焼結すれば、焼結方法は任意である。焼結方法として、例えば、常圧焼結、加圧焼結及び真空焼結の群から選ばれる少なくともいずれかを挙げることができ、常圧焼結及び加圧焼結であることが好ましい。
好ましい焼結工程として、常圧焼結のみで行う焼結方法(以下、「一段焼結法」ともいう。)、又は、成形体を1000℃以上1650℃未満で焼成して一次焼結体を得る一次焼結及び該一次焼結体を1650℃以上で焼結する二次焼結を含む焼結工程(以下、「二段焼結法」ともいう。)を挙げることができる。
一段焼結法は、焼結工程を常圧焼結(Pressureless Sintering)に供することで焼結体を得ればよい。常圧焼結とは、焼結時に成形体に対して外的な力を加えず単に加熱することにより焼結する方法である。常圧焼結においては成形工程で得られた成形体を常圧焼結し焼結体とすればよい。焼結温度は1600℃以上であればよく、1700℃以上1900℃以下であることが好ましい。焼結雰囲気は酸化雰囲気又は還元雰囲気の何れであってもよい。簡便であるため大気雰囲気であることが好ましい。
二段焼結法は、成形体を一次焼結することにより一次焼結体とし、当該一次焼結体を二次焼結する。一次焼結は、成形体を1000℃以上1650℃未満で焼結することが好ましい。一次焼結の雰囲気は酸化雰囲気又は還元雰囲気の少なくともいずれかであることが好ましく、大気雰囲気であることが好ましい。好ましい一次焼結として、大気中1000℃以上1650℃未満、更には1400℃以上1520℃以下の常圧焼結を挙げることができる。これにより、得られる一次焼結体の組織が微細となる。これに加え、一次焼結体の結晶粒子内に気孔が生成しにくくなる。
二次焼結は、一次焼結体を1650℃以上、好ましくは1700℃以上、より好ましくは1725℃以上、更に好ましくは1750℃以上で焼結する。高い強度を有する焼結体を得るため、二次焼結温度は2000℃以下、好ましくは1900℃以下、より好ましくは1800℃以下である。二次焼結温度を2000℃以下とすることで、粗大な結晶粒子が生成しにくくなる。
より高密度な焼結体を得るために、二次焼結は熱間静水圧プレス(以下、「HIP」とする。)処理であることが好ましい。
HIP処理の時間(以下、「HIP時間」ともいう。)は、少なくとも10分であることが好ましい。HIP時間が少なくとも10分であれば、HIP処理中に、焼結体の気孔が十分に除去される。
HIP処理の圧力媒体(以下、単に「圧力媒体」ともいう。)は、アルゴンガス、窒素ガス、酸素などが例示できるが、一般的なアルゴンガスが簡便である。
HIP処理の圧力(以下、「HIP圧力」ともいう。)は、5MPa以上、更には50MPa以上であることが好ましい。HIP圧力が5MPa以上であることで、焼結体中の気孔の除去がより促進される。圧力の上限に関しては特に指定はないが、通常のHIP装置を使用した場合、HIP圧力は200MPa以下である。
降温工程では、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する。降温速度を1℃/min超であり、好ましくは5℃/min以上、より好ましくは8℃/min以上とすることで、透光性の高い焼結体が得られる。降温速度が1℃/min以下の場合は、析出物や単斜晶が生成するため、得られる焼結体が透光性の低いものとなる。より高い透光性を有するランタン固溶ジルコニア焼結体を得るため、焼成温度から1000℃への降温は、降温速度を好ましくは10℃/min以上、より好ましくは15℃/min以上、更に好ましくは30℃/min以上、更により好ましくは50℃/min以上とすることが挙げられる。
本実施態様の製造方法は、降温工程後の焼結体を熱処理するアニール工程を有していてもよい。焼結体をアニール工程に供することで、焼結体の透光性をより高くすることができる。アニール工程は、酸化雰囲気中、900℃以上1200℃以下、好ましくは980℃以上1030℃以下で焼結体を処理することが挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明は実施例に限定されるものではない。
(粒子径分布測定)
原料粉末が含有したスラリーを水で希釈し、超音波ホモジナイザーを用いて300Wの出力で超音波を3分間照射して得た懸濁液を測定試料とした。これをレーザー回折散乱法のマイクロトラック・ベル社製MT3200IIにより粒子径分布を測定した。
(平均結晶粒径の測定)
焼結体試料を平面研削した後、9μm、6μm及び1μmのダイアモンド砥粒を順に用いて鏡面研磨した。研磨面を1400℃で1時間保持し、熱エッチングした後、SEM観察し、得られたSEM観察図からプラニメトリック法により平均結晶粒径を求めた。
(結晶構造の同定)
焼結体試料のXRD測定によって得られたXRDパターンを同定分析することで、各焼結体試料の結晶構造の同定、及び、不純物層の有無を確認した。XRD測定は、一般的な粉末X線回折装置(装置名:UltimaIII、リガク社製)を用い、鏡面研磨をした焼結体試料について行った。XRD測定の条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎秒0.04°
発散スリット: 0.5deg
散乱スリット: 0.5deg
受光スリット: 0.3mm
計測時間 : 1.0秒
測定範囲 : 2θ=20°~80°
XRDパターンの同定分析には、XRD解析ソフトウェア(商品名:JADE7、MID社製)を用いた。
(平均結晶子径の測定)
結晶相の同定と同様な測定方法で得られたXRDパターンの2θ=27°~30°の範囲について、シェラー式を使用して焼結体試料の平均結晶子径を求めた。
D=K×λ/((β-B)×cosθ)
上式において、Dは平均結晶子径(nm)、Kはシェラー定数(1.0)、λはCuKαの波長(0.15418nm)、βは半値幅(°)、Bは装置定数(0.1177°)、及びθはメインピークの回折角(°)である。
なお、メインピークは、ジルコニアの立方晶(111)面に相当するピーク、及び、正方晶(111)面に相当するピークが重複するピークを単一ピークとみなした。
また、半値幅は、Rigaku社製Integral Analysis for Windows(Version 6.0)を用いて求めた。
(透過率の測定)
JIS K321-1の方法に準じた方法によって、試料の全光線透過率(以下、「TT」ともいう。)、拡散透過率(以下、「DF」ともいう。)、及び直線透過率(以下、「PT」ともいう。)を測定した。標準光D65を測定試料に照射し、当該測定試料を透過した光束を積分球によって検出することによって、光透過率を測定した。測定には一般的なヘーズメーター(装置名:ヘーズメーターNDH2000、NIPPON DENSOKU製)を用いた。
測定試料には直径16mm、厚さ1.0mmの円板状成形体を用いた。測定に先立ち、測定試料の両面を研磨し、表面粗さRaを0.02μm以下に鏡面研磨した。
(三点曲げ強度の測定)
試料片の大きさを変更した以外は、JIS R 1601に準じた三点曲げ強度測定によって、試料の三点曲げ強度を測定した。板状焼結体から厚み1.5mm×幅4mm×長さ25mmの試料片を作製し、両面鏡面研磨した試料について測定した。
(破断強度試験)
歯列矯正ブラケットを台座に固定し、試料のスロット部にステンレススチールワイヤー(0.019×0.025インチ)を通して固定した。ステンレススチールワイヤーに荷重を加え、ブラケットが破断される際の荷重を測定し、これを試料の破断強度として測定した。測定は各試料で10回行い、その平均値をもって試料の破断強度とした。
(表面粗さの測定)
焼結体の表面粗さは、光学式表面性状測定機(装置名:Zygo New View 7100、Zyzo社製)を用いて測定した。測定倍率は50倍にて、測定視野は横187.62μm×縦170.42μmの範囲でRa、Rz及びRqを測定した。
実施例1
(原料粉末及びコンパウンドの作製)
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(BET比表面積7m/g)に対するLa(OH)粉末の重量割合が11.7重量%となるように、La(OH)粉末をジルコニア粉末に添加し、これを蒸留水中に分散させて固形分50重量%のスラリーを作製した。得られたスラリーを直径10mmのジルコニアボールを用いた振動ミル装置を使用し、粉砕した。得られた混合粉末の平均粒子径は0.4μmであった。このスラリーを粘度調整後、スプレードライヤーにて乾燥・造粒することで原料粉末を作製した。
得られた混合粉末と、ワックス、可塑剤及び熱可塑性樹脂を含む有機バインダーとを混合した後、これを射出成形して縦70mm×横30mm×厚み2mmの板状成形体を得た。
得られた成形体、それぞれ、大気中、450℃で加熱した後、大気中、1500℃で2時間焼成して一次焼結体を得た。得られた一次焼結体を内容器の内部に配置した。一次焼結体を含む内容器を外容器の内部に配置した。
これをこの状態で99.9%のアルゴンガス雰囲気中、昇温速度600℃/h、HIP温度1750℃、HIP圧力150MPa及び保持時間1時間で一次焼結体をHIP処理した。HIP処理後、焼結温度から室温まで降温しHIP処理体を得た。なお、HIP温度から1000℃までの降温速度は50℃/minであった。
得られたHIP処理体を、大気中、1000℃で1時間熱処理をすることで、無色かつ透光性を有する焼結体が得られた。得られた焼結体は4.13mol%のランタンと2.88mol%のイットリアが固溶したジルコニア焼結体であり、その平均結晶子径は27nmであった。
比較例1
外容器を使用せず、一次焼結体を内容器の内部に配置した状態でHIP処理したこと以外は、実施例1と同様な方法で焼結体を得た。HIP後のサンプルは真黒な色調を示していた。
比較例2
高純度アルミナ粉末(純度99.99%、BET比表面積が14m/g)と、ワックス、可塑剤及び熱可塑性樹脂を含む有機バインダーとを混合し、アルミナコンパウンドを得た。
得られたアルミナコンパウンドを射出成形し、縦70mm×横30mm×厚み2mmの板状成形体を作製した。
得られた成形体を大気中、450℃で加熱した後、大気中、1300℃で2時間焼成して一次焼結体を得た。得られた一次焼結体を、99.9%のアルゴンガス雰囲気中、昇温速度600℃/h、HIP温度1330℃、HIP圧力150MPa及び保持時間2時間でHIP処理した。HIP処理後、焼結温度から室温まで降温しHIP処理体を得、これを本比較例のアルミナ焼結体とした。
本比較例のアルミナ焼結体は、無色かつ透光性を有していた。
実施例及び比較例の結果を下表に示す。なお、下表における表面粗さは焼結後の焼結体の表面、すなわち焼結後に研磨処理を施していない状態、の観察結果である。
Figure 0007135501000001
測定例
実施例1、比較例1及び比較例2と同様な方法で、それぞれ、ジルコニア焼結体からなる歯列矯正ブラケット(以下、「ブラケット1」乃至「ブラケット3」という。)を得、その破断強度を測定した。結果を下表に示す。
ブラケット1 :(製造方法)実施例1と同様なジルコニア焼結体
(寸法) 縦4.4mm×横3.7mm×高さ3.0mm
ブラケット2 :(製造方法)比較例1と同様なジルコニア焼結体
(寸法) 縦4.4mm×横3.7mm×高さ3.0mm
ブラケット3 :(製造方法)比較例2と同様なアルミナ焼結体
(寸法) 縦5.5mm×横4.6mm×高さ3.8mm
Figure 0007135501000002
ブラケット1乃至3は、いずれも、焼結後の後処理をしていないため、表面は焼結後の状態である。ブラケット1の破断強度は1.3N以上であるのに対し、ブラケット2の破断強度は0.54Nであり、ブラケット1の破断強度の半分以下であることが確認できる。これより、焼結時の一次焼結体の配置状態が異なることにより表面粗さ小さくなること、及び、破断強度が高くなることが確認できる。
さらに、ジルコニア焼結体からなるブラケット1は、アルミナ焼結体からなり、サイズが大きいブラケット3よりも破断強度が高いことが確認できる。

Claims (8)

  1. 立方晶ドメイン及び正方晶ドメインを有する結晶粒子を含み、安定化剤及びランタンを固溶し、なおかつ、CuKαを線源とする粉末X線回折パターンにおける2θ=30±2°のピークの半値幅から算出される平均結晶子径が255nm以下であり、焼結後、表面を平滑化する処理を施さない状態の表面の算術平均粗さが20nm以上60nm以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
  2. ランタン含有量が1mol%以上、10mol%以下である請求項1に記載のジルコニア焼結体。
  3. 前記安定化剤が、イットリア、スカンジア、カルシア、マグネシア及びセリアの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
  4. ランタン以外のランタノイド又は遷移金属の少なくとも1種を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  5. 試料厚さ1mmとし、D65光線を線源とする全光線透過率が45%以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  6. 表面にSEM観察することで確認することができる筋状模様の研磨痕を有さない請求項1乃至5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  7. ジルコニア原料、安定化剤原料及びランタン原料を混合して混合粉末を得る混合工程、得られた混合粉末を成形して成形体を得る成形工程、得られた成形体を内容器内に配置し、該内容器を外容器内に配置して1650℃以上の焼結温度で焼結して焼結体を得る焼結工程、及び、焼結温度から1000℃までを1℃/min超の降温速度で降温する降温工程、を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  8. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を含む歯列矯正ブラケット。
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