JP2024035324A - 金属表面処理剤、並びに皮膜を有する金属材料およびその製造方法 - Google Patents

金属表面処理剤、並びに皮膜を有する金属材料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属材料の表面または表面上に、ひび割れを抑制し、良好な耐食性を有する皮膜を形成し得る、金属表面処理剤を提供する。【解決手段】リン酸類、ホスホン酸類、有機スルホン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸およびアミノ基を有するモノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸成分(A)と、タングステン化合物(B)と、ジルコニウム、チタン、ケイ素、アルミニウム、イットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、セリウムおよびニッケルからなる群より選ばれる元素を含有する少なくとも1種の酸化物(C)と、を含有する金属表面処理剤であって、前記タングステン化合物(B)のW換算固形分質量が前記金属表面処理剤の全固形分質量に対して18.5%以上30.0%以下である金属表面処理剤。【選択図】なし

Description

本発明は、金属材料の表面または表面上に皮膜を形成する金属表面処理剤、該金属表面処理剤を用いた皮膜を有する金属材料の製造方法、および該皮膜を有する金属材料に関する。
亜鉛めっき鋼板、鋼板等の金属材料には、耐食性を付与するために、その表面に表面処理皮膜を形成させる。近年、環境面や安全面への配慮から、クロム含有の表面処理剤から他の金属含有表面処理剤へとシフトしている。例えば特許文献1には、ジルコニウム化合物を含む金属表面処理剤が開示されており、ジルコニウム化合物に加えて、更にLi、Mg、Al、Ca、Mn、Co、Ni、Zn、Sr、W、Ce及びMoから選ばれる少なくとも1種の金属を含有する化合物を配合することが開示されている。
また、特許文献2には、クロム含有の表面処理剤の代替として、エポキシ基またはアミノ基を有する少なくとも1種のシランカップリング剤と二つの加水分解基を有する少なくとも1種のチタンカップリング剤とを縮合してなる縮合体化合物と、Mg、Al、Ti、V、Mn、Zn、Zr、Mo、W、La、Ce、NbおよびNdからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含有する金属表面処理剤が開示されている。
特開2006-152435号公報 特開2011-001623号公報
特許文献1及び2などのように、表面処理皮膜に更なる性能を付与するために、金属化合物を含有させることが行われている。本発明者は、これらの金属化合物のうちタングステンに着目して研究を進めたところ、タングステンを一定量以上含有する金属表面処理剤から形成される表面処理皮膜は、良好な耐食性に加えて、親水性と耐アルカリ性とを両立できる皮膜となり得ることを見出した。一方で、タングステンを一定量以上含有する金属表面処理剤により形成された表面処理皮膜は、皮膜の焼付け工程や、皮膜を有する金属を加工する工程で、皮膜にひび割れが生じやすく、耐食性が悪化する場合があるという新たな課題に想到した。
本発明は、ひび割れを抑制し、良好な耐食性を有する皮膜を形成し得る、タングステンを一定量以上含有する金属表面処理剤を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、リン酸類、ホスホン酸類、有機スルホン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸およびアミノ基を有するモノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸成分(A)と、所定量のタングステン化合物(B)と、ジルコニウム、チタン、ケイ素、アルミニウム、イットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、セリウムおよびニッケルからなる群より選ばれる元素を含有する少なくとも1種の酸化物(C)と、を配合した金属表面処理剤を用いることにより、金属材料の表面または表面上に、ひび割れを抑制し、良好な耐食性を有する皮膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)リン酸類、ホスホン酸類、有機スルホン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸およびアミノ基を有するモノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸成分(A)と、タングステン化合物(B)と、ジルコニウム、チタン、ケイ素、アルミニウム、イットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、セリウムおよびニッケルからなる群より選ばれる元素を含有する少なくとも1種の酸化物(C)と、を配合した金属表面処理剤であって、前記タングステン化合物(B)のW換算固形分質量が前記金属表面処理剤の全固形分質量に対して18.5%以上30.0%以下である金属表面処理剤;
(2)上記(1)に記載の金属表面処理剤を金属材料の表面または表面上に接触させる工程と、前記金属材料の表面または表面上に接触させた前記金属表面処理剤を乾燥させる工程と、を含む皮膜を有する金属材料の製造方法;
(3)上記(2)に記載の製造方法により得られる、皮膜を有する金属材料;
等である。
本発明によれば、金属材料の表面または表面上に、ひび割れを抑制し、良好な耐食性を有する皮膜を形成可能な金属表面処理剤を提供することができる。
本実施形態に係る金属表面処理剤は、リン酸類、ホスホン酸類、有機スルホン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸およびアミノ基を有するモノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸成分(A)と、タングステン化合物(B)と、ジルコニウム、チタン、ケイ素、アルミニウム、イットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、セリウムおよびニッケルからなる群より選ばれる元素を含有する少なくとも1種の酸化物(C)と、を所定量配合した、金属表面処理剤である。このような金属表面処理剤を用いることにより、金属材料の表面または表面上に、ひび割れを抑制し、良好な耐食性を有する皮膜を形成することができる。なお、本実施形態に係る金属表面処理剤は、水性媒体に、酸成分(A)、タングステン化合物(B)、酸化物(C)のみが配合されたものであってもよいし、その他の成分がさらに配合されたものであってもよいが、耐食性の観点からアルカリ金属は含まないほうが好ましい。また、酸成分(A)とタングステン化合物(B)は同一の化合物であってもよく、異なる化合物であってもよい。
<酸成分(A)>
金属表面処理剤は、酸成分(A)を配合する。酸成分(A)としては、リン酸類、ホスホン酸類、有機スルホン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸およびアミノ基を有するモノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であれば特に制限されるものではなく、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩等を用いてもよい。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。1種のみを用いる場合はリン酸類又はホスホン酸類を用いることが好ましい。2種以上を併用する場合は、リン酸類及びホスホン酸類、リン酸類及びポリカルボン酸、又はホスホン酸類及びポリカルボン酸の組み合わせが好ましい。
酸成分(A)の分子量は特に制限されるものではないが、1,000以下が好ましく、700以下がより好ましく、400以下が特に好ましい。
リン酸類としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のモノリン酸;二リン酸、三リン酸等のポリリン酸;フィチン酸等のリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、リン酸、二リン酸または三リン酸を用いることが好ましく、リン酸を用いることがより好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホスホン酸類とは、ホスホン酸または少なくとも1つのホスホン酸基{-P(=O)(OH)}を有する有機ホスホン酸を意味する。有機ホスホン酸は、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基を有していてもよい。有機ホスホン酸としては、例えば、メチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、4-ヒドロキシフェニルホスホン酸、4-カルボキシフェニルホスホン酸、(アミノメチル)ホスホン酸、3-ホスホノプロピオン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等の1つのホスホン酸基を有する化合物;1,2-エチレンジホスホン酸、1,6-ヘキサンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、p-キシリレンジホスホン酸、イミノジ(メチルホスホン酸)等の2つのホスホン酸基を有する化合物;ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(エチレンホスホン酸)等の3つのホスホン酸基を有する化合物;N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタキス(メチレンホスホン酸)等の4つ以上のホスホン酸基を有する化合物等が挙げられる。これらのうち、1つのホスホン酸基と1つ以上のカルボキシ基とを有する化合物または2つ以上のホスホン酸基を有する化合物を用いることが好ましく、1つのホスホン酸基と3つ以上のカルボキシ基とを有する化合物または2つ以上のホスホン酸基を有する化合物を用いることがより好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機スルホン酸とは、少なくとも1つのスルホン酸基{-S(=O)(OH)}を有する化合物を意味する。有機スルホン酸は、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基を有していてもよい。ただし、ホスホン酸基を有する化合物は除く。例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸等の1つのスルホン酸基を有する化合物;4,5-ジヒドロキシ-1,3-ベンゼンジスルホン酸等の2つのスルホン酸基を有する化合物等が挙げられる。これらのうち、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸を用いることが好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリカルボン酸とは、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物を意味する。ポリカルボン酸は、ヒドロキシ基またはアミノ基を有していてもよい。ただし、ホスホン酸基を有する化合物およびスルホン酸基を有する化合物は除く。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アゼライン酸、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸等の2つのカルボキシ基を有する化合物;酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシ基と2つのカルボキシ基とを有する化合物;アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ基と2つのカルボキシ基とを有する化合物;アコニット酸等の3つのカルボキシ基を有する化合物;クエン酸等のヒドロキシ基と3つのカルボキシ基とを有する化合物;エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸等の2つ以上のカルボキシ基を有するアミン化合物等が挙げられる。これらのうち、2つのカルボキシ基を有する化合物、ヒドロキシ基と2つのカルボキシ基とを有する化合物、ヒドロキシ基と3つのカルボキシ基とを有する化合物または2つ以上のカルボキシ基を有するアミン化合物を用いることが好ましく、ヒドロキシ基と2つのカルボキシ基とを有する化合物またはヒドロキシ基と3つのカルボキシ基とを有する化合物を用いることがより好ましく、ヒドロキシ基と3つのカルボキシ基とを有する化合物を用いることが特に好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸とは、1つ以上のヒドロキシ基と1つのカルボキシ基とを有する化合物を意味する。ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸は、アミノ基を有していてもよい。ただし、ホスホン酸基を有する化合物およびスルホン酸基を有する化合物は除く。例えば、グリコール酸、乳酸等の1つのヒドロキシ基と1つのカルボキシ基
とを有する化合物;グルコン酸等の2つ以上のヒドロキシ基と1つのカルボキシ基とを有する化合物等が挙げられる。これらのうち、2つ以上のヒドロキシ基と1つのカルボキシ基とを有する化合物を用いることが好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミノ基を有するモノカルボン酸とは、1つ以上のアミノ基と1つのカルボキシ基とを有する化合物を意味する。ただし、ホスホン酸基を有する化合物、スルホン酸基を有する化合物およびヒドロキシ基を有する化合物は除く。例えば、アラニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、リシン等が挙げられる。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属表面処理剤中の酸成分(A)の濃度は特に制限されるものではないが、酸成分(A)の固形分質量が表面処理剤の全固形分質量に対して通常1.0%以上であり、5.0%~75.0%の範囲内であることが好ましく、40.0%~65.0%の範囲内であることがより好ましい。なお、金属表面処理剤中において酸成分(A)は、それぞれの酸の形態で存在する場合、イオン化していない形態で存在する場合、一部又は全部の官能基がイオン化した形態で存在する場合、アルカリ金属塩やアンモニウム塩などの塩の形態で存在する場合、金属錯体の形態で存在する場合、これらの形態が交じり合った状態で存在する場合、などがある。酸成分(A)が存在することで、皮膜に生じるひび割れを抑制することができ、タングステンを皮膜中に留めて良好な耐食性を有する皮膜を形成することができる。
<タングステン化合物(B)>
金属表面処理剤は、タングステン化合物(B)を配合する。タングステン化合物(B)としては、1分子中に1つ以上のタングステン元素を含む化合物であれば特に制限されるものではなく、またタングステン元素を含む化合物は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。例えば、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム等のタングステンを含有するオキソ酸の無水物及び水和物;メタタングステン酸ナトリウム、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム等のタングステンを含有するイソポリ酸の無水物及び水和物;ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等のタングステンを含有するヘテロポリ酸の無水物及び水和物等が挙げられる。これらのうち、タングステンを含有するオキソ酸またはタングステンを含有するイソポリ酸を用いることが好ましく、タングステン酸、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウムまたはこれらの水和物を用いることがより好ましく、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウムまたはこれらの水和物を用いることが特に好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属表面処理剤中のタングステン化合物(B)の濃度は、W(タングステン)換算固形分質量が表面処理剤の全固形分質量に対して18.5%以上30.0%以下であればよい。20.0%~50.0%の範囲内であることが好ましく、22.0%~40.0%の範囲内であることがより好ましく、24.0%~30.0%の範囲内であることが特に好ましい。なお、金属表面処理剤中においてタングステン化合物(B)は、タングステンを含有する酸の形態で存在する場合、イオン化していない形態で存在する場合、一部又は全部の官能基がイオン化した形態で存在する場合、アルカリ金属塩やアンモニウム塩などの塩の形態で存在する場合、金属錯体の形態で存在する場合、これらの形態が交じり合った状態で存在する場合、などがある。タングステンが存在することで、良好な耐食性を有する皮膜を形成することができる。また、皮膜中にタングステンが多く存在することで、抗菌性能が向上するとともに、耐酸性や耐アルカリ性が向上する。
金属表面処理剤中に配合する、タングステン化合物(B)のW換算固形分質量(B
に対する酸成分(A)の固形分質量(A)の割合[A/B]は、皮膜のひび割れを抑制する観点から、1.0~5.0の範囲内であることが好ましく、1.5~3.8の範囲内であることがより好ましい。
<酸化物(C)>
金属表面処理剤は、酸化物(C)を配合する。酸化物(C)としては、ジルコニウム、チタン、ケイ素、アルミニウム、イットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、セリウムおよびニッケルからなる群より選ばれる元素を含有する少なくとも1種の酸化物であれば特に制限されるものではない。なお、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ジルコニウム酸化物、チタン酸化物、ケイ素酸化物またはアルミニウム酸化物を用いることが好ましい。
酸化物(C)の粒子径は、一次粒子径が1nm~1,000nmであることが好ましく、1nm~500nmであることがより好ましく、1nm~100nmであることが特に好ましい。なお、本明細書における粒子径は、動的光散乱法により測定したメジアン径を意味する。測定機器としては、例えば、日機装株式会社製UPA-EX150等が挙げられる。
酸化物(C)としては、粉末状の固体粒子を用いてもよいし、固体粒子と分散剤とを含有した分散溶液を用いてもよい。
前記分散剤としては特に制限されないが、例えば、1つのカルボキシ基を有するカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸およびアミノ基を有するモノカルボン酸等が挙げられる。
金属表面処理剤中の酸化物(C)の濃度は特に制限されるものではないが、酸化物(C)の固形分質量が表面処理剤の全固形分質量に対して通常1.0%以上であり、5.0%~50.0%の範囲内であることが好ましく、5.0%~30.0%の範囲内であることがより好ましく、10.0%~30.0%の範囲内であることが特に好ましい。なお、金属表面処理剤中において酸化物(C)は、酸化物そのままの形態で存在する場合もあるが、他の化合物等と化学的及び/又は物理的に結合して存在する場合もある。
<水性媒体>
金属表面処理剤は、水性媒体に上記酸成分(A)、タングステン化合物(B)及び酸化物(C)を配合してなる。水性媒体としては、水または水と水混和性有機溶媒との混合物(水性媒体の体積を基準として50体積%以上の水を含有するもの)であれば特に制限されるものではない。水混和性有機溶媒としては、水と混和するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル等のエーテル系溶媒;1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの水混和性有機溶媒は1種を水と混合させてもよいし、2種以上を水と混合させてもよい。
<その他の成分>
その他の成分としては特に制限されるものではないが、例えば、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、架橋剤、可塑剤、防菌防黴剤、着色剤等が挙げられる。
<金属表面処理剤のpH>
金属表面処理剤のpHは特に制限されないが、1~10の範囲内であることが好ましく、2~9の範囲内であることがより好ましく、3~8の範囲内であることが特に好ましい
。ここで、本明細書における金属表面処理剤のpH値は、pHメーターを用いて25℃で測定した値を意味する。
金属表面処理剤のpHは、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、ホウ酸、有機酸等の酸成分;水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、アルカリ金属塩、アンモニア水、アンモニウム塩、アミン類等のアルカリ成分;等のpH調整剤を用いて調整することができるが、これらの成分に制限されるものではない。なお、pH調整剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
<金属表面処理剤の製造方法>
本実施形態に係る金属表面処理剤の製造方法は特に制限されないが、例えば、酸成分(A)、タングステン化合物(B)および酸化物(C)をこの順序で水性媒体に所定量配合することにより製造可能である。pH調整剤を配合する場合は、酸成分(A)、タングステン化合物(B)、pH調整剤および酸化物(C)をこの順序で水性媒体に所定量配合して製造することが好ましい。なお、その他の成分を配合する場合には、例えば、上記の各原料を水性媒体に配合した後、その他の成分を配合することにより製造できる。
<皮膜を有する金属材料の製造方法>
本実施形態に係る皮膜を有する金属材料の製造方法は、金属材料の表面または表面上に本実施形態に係る金属表面処理剤を接触させる接触工程と、金属材料の表面または表面上に接触させた金属表面処理剤を乾燥させる乾燥工程と、を含む。これにより、金属材料の表面または表面上に皮膜が形成される。なお、接触工程の前に脱脂工程等を行ってもよい。
<接触工程>
接触方法としては、例えば、スプレー法、浸漬法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、またはこれらの組み合わせ等の方法が挙げられるが、これらに制限されるものではない。接触温度や接触時間は、金属表面処理剤の組成や濃度によって適宜設定される。通常、接触温度は10℃~90℃以下の範囲内であり、接触時間は5秒~600秒の範囲内であるが、これらに制限されるものではない。
<乾燥工程>
乾燥方法は特に制限されず、公知の乾燥機器、例えば、バッチ式の乾燥炉、連続式の熱風循環式乾燥炉、コンベアー式の熱風乾燥炉、電磁誘導加熱炉等を用いた乾燥方法等を挙げることができる。乾燥温度や乾燥時間は、金属材料の種類や接触させた金属表面処理剤の組成または量によって適宜設定される。乾燥温度は、特に制限されるものではないが、金属材料の最高到達温度(PMT)が50℃~200℃の範囲内であることが好ましく、80℃~170℃の範囲内であることがより好ましく、100℃~130℃の範囲内であることが特に好ましい。乾燥時間も特に制限されるものではないが、通常2秒~1800秒の範囲内である。
<脱脂工程>
脱脂方法としては、金属材料の表面に付着している油脂類や汚れを除去することができればいかなる方法であってもよく、例えば、溶剤脱脂、アルカリ系または酸系の脱脂剤等を用いた公知の方法を挙げることができる。なお、脱脂工程を行った後に接触工程を行う場合には、脱脂工程後であって、接触工程の前に金属材料の表面または表面上を水洗する工程を行ってもよいし、行わなくてもよい。水洗を行った場合には、続いて金属材料の表面または表面上を乾燥してもよいし、乾燥しなくてもよい。
<金属材料>
皮膜を形成させる金属材料の形状や構造等は特に限定されず、例えば、板状、箔状等を挙げることができる。金属材料の種類についても特に限定されず、例えば、鉄鋼材料(例えば、冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板、黒皮材、酸洗鋼板、高張力鋼板、工具鋼、合金工具鋼、球状化黒鉛鋳鉄、ねずみ鋳鉄等);めっき材料、例えば、亜鉛めっき材(例えば、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、アルミニウム含有亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、亜鉛ニッケルめっき、亜鉛コバルトめっき、蒸着亜鉛めっき等)、亜鉛合金めっき材(例えば、合金化溶融亜鉛めっき、Zn-Al合金めっき、Zn-Al-Mg合金めっき、電気亜鉛合金めっき等)、アルミめっき材、ニッケルめっき材、スズめっき材、クロムめっき材、クロム合金めっき材(例えば、Cr-Ni合金めっき等)等;アルミニウム材またはアルミニウム合金材(例えば、1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、アルミニウム鋳物、アルミニウム合金鋳物、ダイキャスト材等);銅材または銅合金材;チタン材またはチタン合金材;マグネシウム材またはマグネシウム合金材等が挙げられる。
<皮膜>
金属表面処理剤によって金属材料の表面または表面上に形成される皮膜の付着量は、本発明の性能が発揮できれば特に制限されるものではないが、例えば、0.05g/m~3.0g/mの範囲内であることが好ましく、0.1g/m~1.0g/mの範囲内であることがより好ましい。前記皮膜が形成された金属材料は、耐食性が向上することで長寿命化が可能となり、もって資源の有効活用を図ることができる。
<塗装工程>
皮膜を有する金属材料は、塗装工程により塗装されてもよい。塗装方法としては特に制限されないが、例えば、電着塗装(例えば、カチオン電着塗装)、バーコート塗装、スプレー塗装、粉体塗装、ラミネート圧着等の方法を挙げることができる。本実施形態に係る金属表面処理剤により形成された皮膜は、皮膜上に形成された塗装との密着性が優れている。
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
<金属表面処理剤の製造>
下記に示す酸成分(A)、タングステン化合物(B)、pH調整剤(アンモニア水)および酸化物(C)をこの順序で脱イオン水に配合し、表1に示す金属表面処理剤を調製した。
<酸成分(A)>
A1:リン酸
A2:2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸
A3:メタンスルホン酸
A4:クエン酸(無水物)
A5:グリコール酸
A6:アスパラギン
<タングステン化合物(B)>
B1:タングステン酸アンモニウムパラ五水和物
B2:メタタングステン酸アンモニウム
<酸化物(C)>
C1:ジルコニアゾル(平均粒子径30nm)
C2:チタニアゾル(平均粒子径9nm)
C3:コロイダルシリカ(平均粒子径10nm)
C4:アルミナゾル(平均粒子径20nm)
C5:イットリウムゾル(平均粒子径10nm)
C6:ニオブゾル(平均粒子径15nm)
C7:スズゾル(平均粒子径8nm)
C8:ランタンゾル(平均粒子径100nm)
C9:セリウムゾル(平均粒子径15nm)
C10:ニッケルゾル(平均粒子径10nm)
Figure 2024035324000001

*1は、金属表面処理剤の全固形分質量に対する酸成分(A)の固形分質量をパーセント表記した濃度である。
*2は、金属表面処理剤の全固形分質量に対するタングステン化合物(B)のW換算固形分質量をパーセント表記した濃度である。
*3は、金属表面処理剤の全固形分質量に対する酸化物(C)の固形分質量をパーセン
ト表記した濃度である。
<金属材料>
下記に示す金属材料を使用した。
GI:溶融亜鉛めっき鋼板
GL:溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板
SUS:オーステナイト系ステンレス鋼板(SUS304)
Cu:無酸素銅板(C1020P)
<皮膜を有する金属材料の製造方法>
前記金属材料を60℃のアルカリ脱脂剤[ファインクリーナーE6406(日本パーカライジング株式会社製)を20g/Lとなるように水に混合した溶液]に10秒間浸漬し、純水で水洗した後乾燥した。その後、表1に示した金属表面処理剤を乾燥後の皮膜質量が0.5g/mとなるように塗布し、100℃(金属材料の最高到達板温度)で乾燥して皮膜を有する金属材料(試験板)を作製した。
<塗装板の製造方法>
試験板にメラミンアルキッド系塗料(大日本塗料株式会社製、デリコン#700)を塗布し、140℃で30分間乾燥して厚さ25μmの塗膜を有する金属材料(塗装板)を作製した。
<評価>
試験板および塗装板を用いて、下記の評価を行った。表2に評価結果を示す。
<平面部耐食性>
JIS Z 2371:2015に基づき中性塩水噴霧試験を24時間行った後、錆発生面積率を目視で確認し4段階で評価した。
4:5%未満
3:5%以上、10%未満
2:10%以上、20%未満
1:20%以上
<耐加工性>
試験板をエリクセン試験機で5mm押し出し加工した。この試験板の加工部を走査電子顕微鏡[JSM-IT100(日本電子株式会社製);倍率200倍]で観察し、3段階で評価した。
3:クラックおよび金属素地の露出なし
2:クラックあり
1:金属素地の露出あり
<加工部耐食性>
前記押し出し加工した試験板に対して、JIS Z 2371:2015に基づき中性塩水噴霧試験を24時間行った後、押し出し加工部の錆発生面積率を目視で確認し4段階で評価した。
4:10%未満
3:10%以上、20%未満
2:20%以上、30%未満
1:30%以上
<親水性>
試験板の表面に1μLの水滴を滴下し、滴下直後の水滴と試験板との接触角を接触角測定装置で測定した。その後、水滴を布で拭き取って水滴痕を目視で確認した。水滴痕が認められた場合は1点とし、水滴痕が認められなかった場合は接触角に基づき2段階で評価した。
3:5°未満
2:5°以上20°未満
1:水滴拭き取り後、水滴痕が認められる
<耐アルカリ性>
試験板を25℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬した後、水洗し、乾燥することにより耐アルカリ性試験を行った。耐アルカリ性試験前後の試験板におけるタングステンの付着量を走査型蛍光X線分析装置[ZSX PrimusII(株式会社リガク製)]を用いて測定し、耐アルカリ性試験後の試験板におけるタングステンの残存率を4段階で評価した。
4:90%以上
3:90%未満70%以上
2:70%未満50%以上
1:50%未満
<抗菌性>
JIS Z 2801:2010に基づき抗菌性試験を行い、細菌の減少率を2段階で評価した。評価部に腐食または変色が認められた場合は1点とした。細菌には黄色ぶどう球菌と大腸菌を用いた。試験板の評価部以外はマスキングして抗菌性試験への影響がでないようにした。無加工試験片および比較用の試験片には清浄なガラス板を用いた。細菌の減少率は式[対象菌の減少率(%)=100-Y/Z×100]で算出した。式中、Yは試験板を用いた際の生菌数を意味し、Zはガラス板を用いた際の生菌数を意味する。
3:99.0%以上
2:99.0%未満95.0%以上
1:評価部に腐食または変色が認められる
<塗装密着性>
JIS K 5600-5-6:1999に基づき、塗装板に1mm角で碁盤目状に切込みを100個入れ、テープ剥離を行った。塗膜の残存面積率を目視で確認し3段階で評価した。
3:90%以上
2:90%未満、80%以上
1:80%未満
Figure 2024035324000002

Claims (3)

  1. リン酸類、ホスホン酸類、有機スルホン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ基を有するモノカルボン酸およびアミノ基を有するモノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸成分(A)と、
    タングステン化合物(B)と、
    ジルコニウム、チタン、ケイ素、アルミニウム、イットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、セリウムおよびニッケルからなる群より選ばれる元素を含有する少なくとも1種の酸化物(C)と、
    を含有する金属表面処理剤であって、
    前記タングステン化合物(B)のW換算固形分質量が前記金属表面処理剤の全固形分質量に対して18.5%以上30.0%以下である金属表面処理剤。
  2. 請求項1に記載の金属表面処理剤を金属材料の表面または表面上に接触させる工程と、前記金属材料の表面または表面上に接触させた前記金属表面処理剤を乾燥させる工程と、を含む皮膜を有する金属材料の製造方法。
  3. 請求項2に記載の製造方法により得られる、皮膜を有する金属材料。
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