JP2024034893A - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

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Tetsuya Eguchi
晃弘 黒田
Akihiro Kuroda
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薫志 井上
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Abstract

【課題】シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するインクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制しつつ、インクジェット記録における長期吐出信頼性及び吐出回復性にも優れるインクジェット記録用水系インク、及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供することを課題とする。【解決手段】[1]カーボンブラックを含有するポリマー粒子、有機溶剤、ケイ酸化合物及び水を含有するインクジェット記録用水系インクであって、該ケイ酸化合物の含有量が、インク中、1質量ppm以上450質量ppm以下である、インクジェット記録用水系インク。[2]前記[1]のインクジェット記録用水系インクを用いて、シリコン及び酸化シリコンから選ばれる1種以上をノズルプレート部材に用いたインクジェットヘッドから該インクを吐出する、インクジェット記録方法。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水系インク、及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方式は、微細なノズルからインク液滴を直接吐出し、記録媒体に付着させて、文字や画像が記録された記録物を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、記録媒体に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
商業印刷分野では、従来の普通紙、コピー紙等の高吸水性記録媒体への印刷に加えて、オフセットコート紙等の低吸水性記録媒体への印刷が求められている。
近年ではMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するノズルプレート等を加工することで、吐出精度を飛躍的に高めたインクジェットヘッドが使用されるようになってきている。
インクジェットプリンタに用いられるインクには、着色剤として耐光性や耐水性の良好な水系顔料インクが汎用されているが、このような水系顔料インクをシリコン部材や酸化シリコン部材を使用するインクジェットヘッドに充填し、長時間使用又は放置すると、インクに接しているシリコン等が溶出し、ノズルプレート等の部材の劣化によりインクジェットヘッドの撥水性が低下して、プリンタの吐出精度が低下し、画像品質の低下を招く場合があった。
上記の問題を改善するため種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、形成される画像の定着性、耐擦過性、耐水性、耐マーカー性を低下させることなく、ノズルやペン先からの吐出安定性や耐目詰まり性を向上させた水性インクの提供を目的として、色材と樹脂と水ガラスと有機溶媒とを含む水性インクにおいて、前記色材が、表面にアニオン性の親水性基を持つ自己分散性カーボンブラックである水性インクが記載されている。
また、特許文献2には、インクの吐出信頼性が良好で、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制しうるインク組成物の提供を目的として、水と、色材と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、全質量に対し0.0001質量%以上、0.5質量%以下の水可溶性のケイ酸塩とを含有するインク組成物が記載されている。
特開2003-342501号公報 特開2011-63725号公報
引用文献1の水性インクは、印刷が停止した際のノズル乾燥に伴う吐出回復性の点で不十分であった。また、インクの経時劣化により吐出性の悪化が起こることから、長期吐出信頼性の点で不十分であった。
また、引用文献2のインク組成物は、カーボンブラックを用いる黒インクにおいては、インクジェットヘッドの撥水性の低下の抑制が十分でなく、長期吐出信頼性の点で不十分であった。
本発明は、シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するインクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制しつつ、インクジェット記録における長期吐出信頼性及び吐出回復性にも優れるインクジェット記録用水系インク、及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、カーボンブラックを含有するポリマー粒子、有機溶剤、ケイ酸化合物を含有するインクジェット記録用水系インクにおいて、特定の含有量のケイ酸化合物を含有させることにより、シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するインクジェットヘッドに対する撥水性に優れることに起因して、上記の課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]カーボンブラックを含有するポリマー粒子、有機溶剤、ケイ酸化合物及び水を含有するインクジェット記録用水系インクであって、該ケイ酸化合物の含有量が、インク中、1質量ppm以上450質量ppm以下である、インクジェット記録用水系インク。
[2]前記[1]のインクジェット記録用水系インクを用いて、シリコン及び酸化シリコンから選ばれる1種以上をノズルプレート部材に用いたインクジェットヘッドから該インクを吐出する、インクジェット記録方法。
本発明によれば、シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するインクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制しつつ、インクジェット記録における長期吐出信頼性及び吐出回復性にも優れるインクジェット記録用水系インク、及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
[インクジェット記録用水系インク]
本発明のインクジェット記録用水系インク(以下、「本発明インク」ともいう)は、カーボンブラックを含有するポリマー粒子、有機溶剤、ケイ酸化合物及び水を含有するインクジェット記録用水系インクであって、該ケイ酸化合物の含有量が、インク中、1質量ppm以上450質量ppm以下であることを特徴とする。
なお、本明細書において「水系」とは、カーボンブラックを分散させる媒体中で、水が質量比で最大割合を占めていることを意味する。
また、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
本発明インクは、シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するインクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制しつつ、インクジェット記録における長期吐出信頼性及び吐出回復性にも優れる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するノズルプレート等をMEMS技術により加工したインクジェットヘッドにおいては、通常、シリコン等からのケイ酸イオンの溶出があるが、本発明インクは、ケイ酸ナトリウムやコロイダルシリカ等のケイ酸化合物を含有するため、シリコンや酸化シリコンからのケイ酸イオンの溶出を抑制し、長期にインクと接触した場合も、ノズルプレートの腐食に伴うインクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制できると考えられる。
一方で、着色剤にカーボンブラックを用いた一般的なインクジェット記録用インクでは、カーボンブラックの物質の捕捉力が強いため、インク中にケイ酸化合物を含有させても、長期間の間にインク中のケイ酸化合物の含有量のバランスが崩れてしまうため、上記のインクジェットヘッドの撥水性低下を抑制する効果を発現できず、インクジェットインクの長期吐出信頼性や吐出回復性を発現できなかった。
本発明インクは、カーボンブラックを含有するポリマー粒子を用いることで、カーボンブラックがポリマーに少なくとも部分的に被覆されていることで、カーボンブラックがケイ酸化合物等の捕捉する能力を適切な範囲にできるため、インク中のケイ酸化合物の含有量のバランスを適切に保つことができると考えられる。そのため、上記のインクジェットヘッドの撥水性低下を抑制する効果を発現でき、本発明インクは長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上できると考えられる。また、カーボンブラックを含有するポリマー粒子を用いることで、カーボンブラックをインク中で安定して分散させることができるため、カーボンブラックの凝集による粗大粒子の発生を制御し、インクジェット記録における長期吐出信頼性及び吐出回復性の更なる向上に寄与していると考えられる。
<カーボンブラックを含有するポリマー粒子>
カーボンブラックを含有するポリマー粒子は、カーボンブラックと、該カーボンブラックを水を主成分とする媒体に分散させる機能を有するポリマー(以下、「ポリマー(a)」ともいう)から構成される。ポリマー(a)は、水を主成分とする水系媒体にカーボンブラックを分散させる機能を有するポリマーであれば特に制限はない。
ポリマー(a)は、水不溶性ポリマーが好ましい。
本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g未満であるポリマーを意味する。ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、本発明インクが含有する状態のカーボンブラックを含有するポリマー粒子を構成するポリマーの中和度と、同じ中和度になるようにポリマー(a)を水酸化ナトリウムで中和した時の溶解量である。
水不溶性かどうかを確認する際、分散状態を呈する場合は、遠心分離で該分散体を沈降させ、水相部分の溶解量で判断する。また、目視で分散状態が確認できず透明に見えたとしても、実施例に記載のポリマー粒子の粒子径の測定と同様の手順で、粒子径が測定されれば分散状態であると判断する。
(カーボンブラック)
本発明インクにおいて、カーボンブラックを含有するポリマー粒子に含まれるカーボンブラックは、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなどの公知のカーボンブラックを用いることができる。これらの中でも、長期吐出信頼性と吐出回復性の観点から、チャンネルブラック及びファーネスブラックから選ばれる1種以上が好ましく、チャンネルブラックがより好ましい。
カーボンブラックは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
カーボンブラックの具体例として、Regal400R、660R、Monarch717、800、880、900、1100(以上、キャボット社製)、ColorBlack FW1、FW18、S160、S170、Nipex180IQ、170IQ、160IQ、Printex55、70、80、90、L6、U、V、150T、(以上、オリオンエンジニアードカーボン社製)、No.45、47、900、2200B、2300、2600、990、980、970、960、950、850、MCF-88、MA8、600、100(以上、三菱ケミカル社製)等を挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
カーボンブラックの比表面積は、好ましくは100m/g以上450m/g以下である。本発明において、用いられるカーボンブラックの比表面積が100m/g以上450m/g以下であると、インク中に溶解したケイ酸化合物の所定量をカーボンブラックが捕捉することで、インク中のケイ酸化合物の濃度を再結晶化が起こらない濃度以下に保つことができ、本発明インクの長期吐出信頼性を高め、吐出回復性を向上させすることができると考えられる。カーボンブラックの比表面積は、長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、より好ましくは110m/g以上、更に好ましくは180m/g以上、より更に好ましくは230m/g以上である。また、カーボンブラックの比表面積は、カーボンブラック同士の凝集を抑制し、長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、より好ましくは400m/g以下、更に好ましくは340m/g以下、より更に好ましくは280m/g以下である。
カーボンブラックの比表面積は、実施例に記載の方法で測定される。
カーボンブラックのpHは、好ましくは3.0以上9.5以下である。本発明において、用いられるカーボンブラックのpHが3.0以上9.5以下であると、カーボンブラックを含有するポリマー粒子におけるカーボンブラックとポリマー(a)との親和力を強めることができると考えられ、カーボンブラックを含有するポリマー粒子の水系媒体への分散安定性が向上し、本発明インクの長期吐出安定性と吐出回復性を向上させることができると考えられる。
また、カーボンブラックは、酸成分を有しており、インク保管時において、カーボンブラック表面より、水素イオンがインク中に持続的に供給されることが知られている。この水素イオンの供給力はカーボンブラックのpHが低いほど顕著となる。カーボンブラック表面から供給された水素イオンがインク中に存在することにより、ノズルプレート等のシリコンの加水分解を抑制できるため、よりインクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制できる。
カーボンブラックのpHはインクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制させ、長期吐出信頼性と吐出回復性を向上させる観点から、好ましくは9.5以下、より好ましくは8.5以下、更に好ましくはpH7.0以下、より更に好ましくはpH5.5以下である。
カーボンブラックのpHは、実施例に記載の方法で測定される。
本明細書において、カーボンブラックを含有するポリマー粒子の形態とは、ポリマーがカーボンブラックを包含した形態の粒子、ポリマーとカーボンブラックからなる粒子の表面にカーボンブラックの一部が露出している形態の粒子、ポリマーがカーボンブラックの一部に吸着している形態の粒子、及びこれらの混合物を意味する。
本発明インクにおいて、カーボンブラックを含有するポリマー粒子は、長期吐出信頼性と吐出回復性を向上させる観点から、後述の「カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子」であることが好ましい。
(ポリマー(a))
ポリマー(a)は任意の組成のものを用いることができるが、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物等のビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
ビニル系ポリマーとしては、(a-1)イオン性モノマーに由来する構成単位を含有するポリマーが好ましく、(a-1)イオン性モノマー由来の構成単位と(a-2)疎水性モノマー由来の構成単位を有する共重合ポリマーがより好ましい。
〔(a-1)イオン性モノマー〕
(a-1)イオン性モノマー(以下「(a-1)成分」ともいう)としては、カーボンブラックの分散安定性を向上させる観点から、アニオン性モノマーが好ましい。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等が挙げられる。
これらの中でも、カルボン酸モノマーがより好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
〔(a-2)疎水性モノマー〕
(a-2)疎水性モノマー(以下「(a-2)成分」ともいう)は、カーボンブラックの分散安定性を向上させる観点から、(a-1)成分に加えて、更にモノマー成分として用いることが好ましい。
(a-2)成分の具体例としては、特開2018-83938号公報の段落〔0020〕~〔0022〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、炭素数1以上22以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、スチレンがより好ましい。
〔(a-3)ノニオン性モノマー〕
(a-3)ノニオン性モノマー(以下「(a-3)成分」ともいう)は、カーボンブラックの分散安定性をより向上させる観点から、用いることができる。
(a-3)成分は、水や水溶性有機溶剤との親和性が高いモノマーであり、例えば水酸基やポリアルキレングリコール鎖を含むモノマーである。
(a-3)成分の具体例としては、特開2018-83938号公報の段落〔0018〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。ここで、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。
上記(a-1)~(a-3)成分は、それぞれ、各成分に含まれるモノマー成分を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
以上の観点から、ポリマー(a)は、(a-1)成分がアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上であり、(a-2)成分がスチレン及びα-メチルスチレンから選ばれる1種以上であることが好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体であることがより好ましい。
〔ポリマー(a)中における各構成単位の含有量〕
ポリマー(a)製造時における、モノマー混合物中における各成分の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はポリマー(a)中における各成分に由来する構成単位の含有量は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a-1)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
(a-2)成分の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(a-3)成分を含有する場合、(a-3)成分の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
[(a-1)成分/(a-2)成分]の質量比は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.35以上、より更に好ましくは0.38以上であり、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.8以下であり、特に好ましくは0.6以下である。
〔ポリマー(a)の製造〕
ポリマー(a)は、前記(a-1)成分と(a-2)成分、及び必要に応じて更に(a-3)成分を含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
ポリマー(a)の酸価はカルボキシ基に由来するが、本発明インクの長期吐出信頼性及び保存安定性等を向上させる観点から、その酸価は、好ましくは160mgKOH/g以上、より好ましくは180mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは280mgKOH/g以下、更に好ましくは260mgKOH/g以下である。
ポリマー(a)の酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、構成するモノマーの質量比から算出することもできる。
ポリマー(a)の数平均分子量は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性等を向上させる観点から、好ましくは4,000以上、より好ましくは6,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、そして、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下である。
なお、前記数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
〔中和〕
ポリマー(a)のカルボキシ基の少なくとも一部は、アルカリ金属化合物等によって中和されていることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸のアルカリ金属塩等から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中では、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。
ポリマー(a)の中和度は、カーボンブラックの分散安定性を確保する観点から、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは100モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
本発明においてポリマー(a)の中和度が100モル%以下の場合は、中和度は中和剤の使用当量と同義であり、ポリマー(a)の中和剤の使用当量(モル%)は、下記式により算出される。
ポリマー(a)の中和剤の使用当量(モル%)=〔[ポリマー(a)を中和するために添加した中和剤の質量(g)/中和剤の当量]/[ポリマー(a)の酸価(mgKOH/g)×ポリマー(a)の質量(g)/(56×1000)]〕×100
本発明においては、ポリマー(a)のカルボキシ基のモル数よりも中和剤を過剰に用いた場合は、中和剤がポリマー(a)のカルボキシ基に対して過剰であることを意味し、この場合の中和度は100モル%とみなす。
〔ポリマー(a)の架橋構造〕
ポリマー(a)は、架橋剤を用いて架橋処理され架橋構造を形成されたものであることが好ましい。すなわち、本発明において、カーボンブラックを含有するポリマー粒子は架橋構造を有するものが好ましく、すなわち、カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子であることが好ましい。
カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子を構成する架橋ポリマーは、ポリマー(a)由来の構成成分と、架橋剤由来の構成成分からなる架橋ポリマー(A)であることが好ましい。カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子を構成する架橋ポリマー(A)(以下、単に「架橋ポリマー(A)」ともいう。)は、三次元構造を有しており、それがカーボンブラック表面に強固に吸着又は固定化される。そのため、本発明インク中でのカーボンブラックの凝集が抑制され、更にポリマーの膨潤が抑制され、本発明インクの長期吐出信頼性及び保存安定性が向上されると考えられる。
架橋剤は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」ともいう)であることが好ましい。架橋剤は、水溶性でも水不溶性でもよいが、水を主体とする媒体中でより効率的にポリマー(a)のカルボキシ基と架橋反応させる観点から、その水溶率は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。ここで、水溶率(質量%)とは、室温25℃にて水90質量部に架橋剤10質量部を溶解したときの架橋剤の溶解率(質量%)をいう。水溶率(質量%)は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物は、好ましくは分子内にグリシジルエーテル基を2個以上有する化合物、より好ましくは炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物である。
分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ当量は、水を主体とする媒体中で、より効率的にポリマー(a)のカルボキシ基と架橋反応させる観点から、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは170以下である。
分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物の具体例としては、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中では、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
架橋ポリマー(A)の酸価は、本発明インクの長期吐出信頼性及び保存安定性等を向上させる観点から、好ましくは90mgKOH/g以上、より好ましくは95mgKOH/g以上、更に好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは180mgKOH/g以下、更に好ましくは160mgKOH/g以下である。
架橋ポリマー(A)の中和度は、カーボンブラックの分散安定性を確保する観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
架橋ポリマー(A)の酸価は、ポリマー(a)の酸価を基に、仕込み比から求めることができる。
(カーボンブラックを含有するポリマー粒子の製造)
カーボンブラックを含有するポリマー粒子は、下記工程1~2を含む方法により効率的に製造することができる。
工程1:ポリマー(a)のカルボキシ基の少なくとも一部をアルカリ金属化合物で中和して、該ポリマー(a)の水分散液を得る工程
工程2:工程1で得られたポリマー(a)の水分散液とカーボンブラックとを分散処理して、カーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体を得る工程
また、カーボンブラックを含有するポリマー粒子がカーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子である場合には、カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子は、前記工程1~2に加えて、更に下記工程3を含む方法により効率的に製造することができる。
工程3:工程2で得られたカーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体に架橋剤を添加し、架橋処理して、カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子の水分散体を得る工程
工程1における中和は、pHが7以上11以下になるように行うことが好ましい。中和に用いるアルカリ金属化合物及びポリマー(a)の中和度は、前記のとおりである。
工程2における分散処理は、剪断応力による本分散だけでカーボンブラック粒子を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、均一なカーボンブラック水分散体を得る観点から、カーボンブラックとポリマー(a)を含む混合物を予備的に分散した後、更に本分散するといった,二段階以上の多段階で分散処理することが好ましい。予備的分散に用いる分散機としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
本分散に用いる分散機としては、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックを小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて分散処理を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、カーボンブラック水分散液中のカーボンブラック粒子の平均粒径を調整することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上300MPa以下であり、パス回数は、好ましくは3以上30以下である。
工程3では、カーボンブラック水分散液中で、カーボンブラックを分散させているポリマー(a)が架橋剤によって架橋され、三次元構造を有する架橋ポリマー(A)が形成され、カーボンブラックを含有する架橋ポリマー(A)の粒子が水系媒体に分散された形態の水分散体を得ることができる。
好ましい架橋剤は前述のとおりである。
架橋処理の温度は、架橋反応の完結と経済性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは92℃以下である。また、架橋処理の時間は、上記と同様の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは6時間以下である。
カーボンブラックを含有するポリマー粒子を構成するポリマー(a)の酸価は、好ましくは160mgKOH/g以上、より好ましくは180mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは280mgKOH/g以下、更に好ましくは260mgKOH/g以下である。
カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子を構成する架橋ポリマー(A)の酸価は、好ましくは90mgKOH/g以上、より好ましくは95mgKOH/g以上、更に好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは180mgKOH/g以下、更に好ましくは160mgKOH/g以下である。
得られるカーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体又はカーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子の水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、本発明インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
得られるカーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体又はカーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子の水分散体中のカーボンブラックの含有量は、記録物の発色性を向上させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。
架橋ポリマー(A)の架橋率は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性等を向上させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
架橋剤としてエポキシ化合物を用いる場合、架橋ポリマー(A)の架橋率(モル%)は、下記式により算出される。
架橋ポリマー(A)の架橋率(モル%)=[架橋ポリマー(A)調製におけるエポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数]/[架橋ポリマー(A)調製におけるポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数]×100
架橋ポリマー(A)は、その架橋率が上記の好適な架橋率の範囲内である場合は、三次元構造が適切に形成され、ポリマー(a)の種類、架橋剤の種類によらず、水不溶性を示す。
カーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体中のカーボンブラックを含有するポリマー粒子の平均粒径、又はカーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子の水分散体中のカーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子の平均粒径は、該水分散体を用いた本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、また、好ましくは200nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは120nm以下である。平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
なお、水系インク調製後の水系インク中のカーボンブラックを含有するポリマー粒子の平均粒径又はカーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子の平均粒径は、カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子の水分散体における平均粒径と実質的に同じである。
<有機溶剤>
本発明インクで用いられる有機溶剤は、主として本発明インクの長期吐出信頼性と吐出回復性を向上させる役割を果たす。有機溶剤は、25℃で液体であっても固体であってもよいが、該有機溶剤を25℃の水100mLに溶解させたときに、その溶解量は10mL以上である水溶性有機溶剤が好ましい。
水溶性有機溶剤の沸点は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは130℃以上、より更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましく240℃以下、更に好ましく235℃以下である。
水溶性有機溶剤は、上記と同様の観点から、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
これらの中では、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオールから選ばれる1種以上が好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルがより好ましい。
上記の有機溶剤の中では、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、プロピレングリコール及びジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
有機溶剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、更に上記以外の有機溶剤を含有することができる。
ここで用いられる有機溶剤は、沸点90℃以上の1種又は2種以上の水溶性有機溶剤を含むことが好ましく、沸点90℃以上の2種以上の水溶性有機溶剤を含むことがより好ましい。有機溶剤が2種以上の水溶性有機溶剤を含む場合には、有機溶剤の沸点の加重平均値は、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは220℃以下、より更に好ましくは200℃以下である。有機溶剤として2種以上の水溶性有機溶剤を用いる場合には、有機溶剤の沸点加重平均値は、各水溶性有機溶剤の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
<ケイ酸化合物>
本発明インクは、シリコンや酸化シリコンからのケイ酸イオンの溶出を抑制し、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制し、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、ケイ酸化合物を含有する。
ケイ酸化合物としては、ケイ酸及びケイ酸塩の中から広く選ばれてよいが、特に、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属とのケイ酸塩、及び無水ケイ酸(シリカ)から選ばれる1以上であることが好ましい。
ケイ酸塩としては、水ガラスと呼ばれるケイ酸のアルカリ金属塩が好ましい。
無水ケイ酸(シリカ)としては、コロイダルシリカが好ましい。
これらケイ酸化合物の中では、本発明インクを保管した際の経時安定性を向上させ、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムから選ばれる1種以上のケイ酸のアルカリ金属塩がより好ましく、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制し、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、ケイ酸ナトリウムを用いることが更に好ましい。
アルカリ金属塩がナトリウム塩又はカリウム塩の場合、ケイ酸のアルカリ金属塩の示性式は、XO・nSiO(Xはナトリウム又はカリウムを表し、nはモル比を表す)表される。
本発明インクにおいて、ケイ酸のアルカリ金属塩中のSiOの含有量とXOの含有量との質量比[(SiO(質量%))/(XO(質量%))]は、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制し、本発明インクの長期吐出信頼性を向上させる観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは3.0以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下である。
なお、ケイ酸のアルカリ金属塩としてケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムを含有する場合には、ケイ酸のアルカリ金属塩中のSiOの含有量及びXOの含有量はケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムに含まれるそれぞれのSiOの含有量及びXOの含有量の合計量である。
ケイ酸ナトリウムとしては、工業的に使用されるケイ酸ナトリウムが好ましい。ケイ酸ナトリウムは日本無機薬品協会の団体規格(けい酸ナトリウム(けい酸ソーダ))にその規格が規定されており、溶液状態である1号ケイ酸ナトリウム、2号ケイ酸ナトリウム及び3号ケイ酸ナトリウム並びに固体状態であるメタケイ酸ナトリウムのいずれにおいても使用することができる。これらの中ではインクへの配合安定性の観点から水溶液状態である1号ケイ酸ナトリウム、2号ケイ酸ナトリウム及び3号ケイ酸ナトリウムのいずれかを使用することが好ましい。また、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制し、本発明インクの長期吐出信頼性を向上させる観点から3号ケイ酸ナトリウムがより好ましい。
<顔料を含有しないポリマー粒子>
本発明インクは、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、本発明インクの記録媒体への定着性を向上させ、記録物に画像堅牢性を付与する観点から、顔料を含有しないポリマー粒子を更に含有することが好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子を構成するポリマー(以下、「ポリマー(b)」ともいう)としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの中では、本発明インクの定着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子は、それが水中に分散した水分散体として用いることが好ましい。ポリマー(b)は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
また、ポリマー(b)は、本発明インクの長期吐出信頼性を向上させる観点から、架橋構造を有することが好ましい。すなわち、顔料を含有しないポリマー粒子は顔料を含有しない架橋ポリマー粒子であることが好ましい。この顔料を含有しない架橋ポリマー粒子は、ポリマー(b)由来の構成成分と、架橋剤由来の構成成分からなる架橋ポリマー(B)であることが好ましい。
〔ポリマー(b)〕
ポリマー(b)としての(メタ)アクリル系樹脂は、(b-1)カルボキシ基含有ビニルモノマー由来の構成単位(以下「(b-1)成分」ともいう)と、(b-2)疎水性ビニルモノマー由来の構成単位(以下「(b-2)成分」ともいう)とを有することが好ましい。
(b-1)成分としては、前記(a-1)成分と同様のカルボン酸モノマーが挙げられる。それらの中でも、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、記録物の画像堅牢性を向上させる観点から、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
(b-2)成分としては、前記(a-2)成分と同様のアルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマーが好ましく挙げられる。また、塩化ビニルモノマーも用いることができる。それらの中でも、スチレン系モノマーが好ましく、スチレン及びα-メチルスチレンから選ばれる1種以上が好ましく、スチレンがより好ましい。
上記(b-1)及び(b-2)成分は、それぞれ、各成分に含まれるモノマー成分を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
〔ポリマー(b)中における各構成単位の含有量〕
ポリマー(b)中における(b-1)及び(b-2)成分に由来する構成単位の含有量は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、記録物の画像堅牢性を向上させる観点から、次のとおりである。
(b-1)成分の含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
(b-2)成分の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
ポリマー(b)は、(b-1)成分、(b-2)成分等を含むモノマー混合物を公知の溶液重合法等により共重合させることにより製造できる。
ポリマー(b)の製造方法、中和方法、架橋処理の方法は、前述したポリマー(a)の製造方法、中和方法、架橋処理方法と同じであるので、その記載を省略する。
ポリマー(b)の酸価は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、記録物の画像堅牢性を向上させる観点から、好ましくは180mgKOH/g以上であり、より好ましくは200mgKOH/g以上、より更に好ましくは220mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは320mgKOH/g以下であり、より好ましくは300mgKOH/g以下、より更に好ましくは280mgKOH/g以下である。
ポリマー(b)の数平均分子量は、好ましくは4,000以上、より好ましくは6,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、そして、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下である。
ポリマー(b)の酸価と数平均分子量の測定は、ポリマー(a)の場合と同様にして行うことができる。
架橋ポリマー(B)の酸価は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、本発明インクの記録媒体への定着性を向上させ、記録物に画像堅牢性を付与する観点から、好ましくは90mgKOH/g以上、より好ましくは95mgKOH/g以上、更に好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは180mgKOH/g以下、更に好ましくは160mgKOH/g以下である。
架橋ポリマー(B)の酸価の測定は、ポリマー(b)の値を基に、仕込み比から算出できる。
架橋ポリマー(B)の架橋率は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、本発明インクの記録媒体への定着性を向上させ、記録物に画像堅牢性を付与する観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
架橋剤としてエポキシ化合物を用いる場合、架橋ポリマー(B)の架橋率(モル%)は、下記式より算出される。
架橋ポリマー(B)の架橋率(モル%)=[架橋ポリマー(B)調製におけるエポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数]/[架橋ポリマー(B)調製におけるポリマー(b)のカルボキシ基のモル当量数]×100
顔料を含有しないポリマー粒子の平均粒径は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、記録物の画像堅牢性を向上させる観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは40nm以上であり、また、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは70nm以下である。
なお、顔料を含有しないポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明インク調製後の本発明インク中の顔料を含有しないポリマー粒子の平均粒径は、水系インク調製前に準備された顔料を含有しないポリマー粒子の平均粒径と実質的に同じである。
ポリマー(a)とポリマー(b)とは、同一でも異なっていてもよい。すなわち、ポリマー(a)及びポリマー(b)は、異なる組成(構造)であってもよく、また、組成(構造)も含めて同一のポリマーであって、顔料の有無だけが異なるものであってもよい。
ポリマー(a)及びポリマー(b)は市販品を使用することもできる。
使用しうるポリマー(a)及び(b)の分散体の市販品例としては、DSM Neo Resins社製のNeocryl A1127(アニオン性自己架橋水系アクリル系樹脂)、BASF社製のジョンクリル390等(アクリル系樹脂)、ジョンクリルPDX-7775等(スチレン-アクリル系樹脂)、日信化学工業株式会社製のビニブラン700等(塩化ビニル-アクリル系樹脂)等が挙げられる。
カーボンブラックを含有するポリマー粒子、顔料を含有しないポリマー粒子がともに架橋ポリマー粒子である場合、架橋ポリマーを構成する成分のうちの架橋剤由来の成分は同一であることが好ましい。
また、カーボンブラックを含有するポリマー粒子、顔料を含有しないポリマー粒子がともに架橋ポリマー粒子である場合、架橋ポリマーを構成する成分のうちのポリマー(a)成分とポリマー(b)成分が同一であり、且つ、架橋ポリマーを構成する成分のうちの架橋剤由来の成分も同一であることが好ましい。
本発明インクを構成するカーボンブラックが、カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子であり、顔料を含有しないポリマー粒子が顔料を含有しない架橋ポリマー粒子であり、かつ、架橋ポリマーを構成する成分のうちのポリマー(a)成分とポリマー(b)成分が同一であり、かつ、架橋ポリマーを構成する成分のうちの架橋剤由来の成分も同一であると、画像堅牢性を高めるだけではなく、長期吐出信頼性及び吐出回復性が著しく向上する。この理由については詳細は不明であるが、ポリマーの種類が同一であると、カーボンブラックのポリマーによる被覆がより安定になると考えられ、これによりインク中のケイ酸化合物の存在量を一定に保つ性能がより発現されやすくなっていると考えられる。
<ワックス>
本発明インクは記録物の画像堅牢性を向上させる観点から別途ワックスを含有してもよい。ワックスとしては、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を維持しつつ、記録物の画像堅牢性を向上させる観点から、その融点は、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上であり、そして、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
ワックスとしては、オレフィン系モノマーを主成分とするポリオレフィン系ワックス、炭素数20~30の鎖式飽和炭化水素の混合物からなる石油系パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックスが挙げられる。
これらの中では、ポリオレフィン系ワックス及びパラフィンワックスから選ばれる1種以上が好ましい。
ワックスは水系媒体にワックスを分散させたワックス粒子としてインクに含有されることが好ましい。
<界面活性剤>
本発明インクは、界面活性剤を含有していてもよい。
本発明インクが含有してもよい界面活性剤は、本発明インクがワックスエマルションや樹脂エマルションを含有する場合に該ワックスエマルションや樹脂エマルションから持ち込まれる界面活性剤以外のものを意味し、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。これらの中では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤とアセチレングリコール系界面活性剤が好ましく、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールとポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤を併用することがより好ましい。
ノニオン性界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社及びAir Products & Chemicals社製の「サーフィノール」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ、花王株式会社製の「エマルゲン」シリーズ等が挙げられる。
上記の界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<本発明インクの製造方法>
本発明インクは、前記のカーボンブラックを含有するポリマー粒子、有機溶剤、ケイ酸化合物、水と、必要に応じて、顔料を含有しないポリマー粒子、ワックスと、更にインクに通常用いられる保湿剤、湿潤剤、浸透剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を混合することにより得ることができる。
<本発明インクの各成分の含有量>
本発明インク中の各成分の含有量は、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制する観点、並びに本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、以下のとおりである。
(カーボンブラックの含有量)
本発明インク中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく8質量%以下である。
本発明インク中のカーボンブラックを含有するポリマー粒子の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下である。
本発明インク中のケイ酸化合物の含有量は、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制する観点から、1質量ppm以上であり、好ましくは3質量ppm以上、より好ましくは5質量ppm以上、更に好ましくは10質量ppm以上、より更に好ましくは25質量ppm以上である。また、本発明インクの長期吐出信頼性を向上させる観点からインク中のケイ酸化合物の含有量は、450質量ppm以下であり、好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは150質量ppm以下、より更に好ましくは100質量ppm以下、より更に好ましくは75質量ppm以下、より更に好ましくは50質量ppm以下である。
(有機溶剤の含有量)
本発明インク中の有機溶剤の含有量は、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制し、長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。そして、同様の観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは28質量%以下である。
本発明インク中に顔料を含有しないポリマー粒子が含有される場合、その含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
(インク中のケイ酸化合物の含有量と、インク中のカーボンブラックの比表面積及びカーボンブラックの含有量の積との比)
本発明インクにおいて、インク中のケイ酸化合物の含有量と、インク中のカーボンブラックの比表面積及びカーボンブラックの含有量の積との比[(ケイ酸化合物の含有量(質量ppm))/(カーボンブラックの比表面積(m/g)×カーボンブラックの含有量(質量%))/100]は、0.1以上30以下であることが好ましい。
前記の比において、インク中のカーボンブラックの比表面積及びカーボンブラックの含有量の積は、本発明インク中に存在するカーボンブラックが、どの程度のケイ酸化合物を補足するかを示す指標である。すなわち、前記の比は、インク中のカーボンブラックがインク中に溶解したケイ酸化合物を補足する能力に対して、インク中にどの程度のケイ酸化合物が含有されているかを示した指標であり、前記の比が大きいほど、インク中に溶解したケイ酸化合物が過剰となり再結晶化し、粗大粒子となることで長期吐出信頼性に悪影響を与えるものと考えられる。また前記の比が小さすぎればインクジェットヘッドの撥水性を維持するに十分な量のケイ酸化合物がインク中に不足していることを示す。
前記の比は、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制し、長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは2以上であり、また、カーボンブラックを含有する粒子の凝集を抑制し、長期吐出信頼性を向上させる観点から、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下である。
本発明インク中の水の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
<インク物性>
本発明インクの32℃の粘度は、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは4mPa・s以上であり、そして、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは7mPa・s以下、更に好ましくは6mPa・s以下である。本発明において、インクの粘度は、E型粘度計を用いて測定できる。
本発明インクのpHは、本発明インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させる観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.2以上、更に好ましくは7.5以上である。また、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制させる観点から、pHは、好ましくは10以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9.0以下である。水系インクのpHは、実施例に記載の方法により測定できる。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録用水系インク用いて、シリコン、酸化シリコンから選ばれる1種以上をノズルプレート部材に用いたインクジェットヘッドからインクを吐出することを特徴とする。
シリコン及び酸化シリコンを部材として使用したノズルプレートは、ノズルプレート表面に撥水膜を形成することで、ノズルプレート表面のインク撥液性を向上させている。
シリコン等をノズルプレート部材として使用するインクジェットヘッドとしては、例えば富士フイルムDimatix社製のSamba G3L、Samba G5L、セイコーエプソン社製のS3200、S800、I3200、I1600、D3000等が挙げられる。
本発明インクは、ピエゾ式等の公知のインクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて記録物を得ることができる。インクジェット記録媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙及び非吸水性の樹脂フィルムが用いられる。
普通紙としては、例えば「4200」(富士ゼロックス株式会社製)、「NPiフォーム NEXT-IJ」(日本製紙株式会社製)等が挙げられる。
コート紙としては、例えば、汎用光沢紙「OKトップコートプラス」(王子製紙株式会社製)、多色フォームグロス紙(王子製紙株式会社製)、UPM Finesse Gloss(UPM社製)、UPM Finesse Matt(UPM社製)、TerraPress Silk(Stora Enso社製)、LumiArt(Stora Enso社製)等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、透明合成樹脂フィルムが挙げられ、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ナイロン等のフィルムが挙げられる。これらの中では、ポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムが好ましく、コロナ放電処理されたものがより好ましい。
本発明インクは、シリコン部材や酸化シリコン部材を使用するノズルプレート等を備えるインクジェットヘッドに対して用いても、シリコン部材等の溶出抑制とインク中での凝集異物発生を抑制することによって、インクジェットヘッドの撥水性の低下を抑制し、長期吐出信頼性及び吐出回復性を向上させることができる。
以下の調製例、製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各物性等の測定方法は以下のとおりである。
<測定>
(1)ポリマーの数平均分子量の測定
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolumn Super AW-H)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中にポリマー0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間撹拌し、シリンジフィルター(DISMIC-13HP、PTFE製、0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
(2)カーボンブラックを含有するポリマー粒子及び顔料を含有しないポリマー粒子の水分散体の固形分濃度の測定
30mLの軟膏容器にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して混合した後、正確に秤量し、105℃で2時間保持して揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。
揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、最初のサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(3)カーボンブラックを含有するポリマー粒子及び顔料を含有しないポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム(大塚電子株式会社製、商品名:ELS-8000)を用いて、動的光散乱法により前記ポリマー粒子の水分散体から、前記ポリマー粒子の平均粒径を測定し、キュムラント法解析により算出した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定試料には、前記ポリマー粒子の水分散体をスクリュー管(マルエム株式会社製No.5)に計量し、固形分濃度が2×10-4質量%になるように水を加えてマグネティックスターラーを用いて25℃で1時間撹拌したものを用いた。
(4)ポリマーの酸価の測定
電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、電動ビューレット、型番:APB-610)に樹脂をトルエンとアセトン(2:1)を混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1N水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とした。水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から酸価(mgKOH/g)を算出した。
(5)カーボンブラックのpHの測定
JIS K 5101-17-2:2004に準拠し、カーボンブラックと蒸留水の混合液をガラス電極pHメーターにて測定した。測定温度は23℃±1℃とした。
(6)カーボンブラックの比表面積の測定
ASTM D 6556に準拠し、窒素吸着量からBET式にて算出した。
(7)架橋剤の水溶率の測定
室温25℃にてイオン交換水90質量部及び架橋剤10質量部(W1)をガラス管(25mmφ×250mmh)に添加し、該ガラス管を水温25℃に調整した恒温槽中で1時間静置した。次いで、該ガラス管を1分間激しく振とうした後、再び恒温槽中で12時間静置した。次いで、水から分離して沈殿又は浮遊する未溶解物を回収し、40℃、ゲージ圧-0.08MPaの環境下で6時間乾燥後、秤量した(W2)。下記(1)式により、水溶率(質量%)を算出した。
水溶率(質量%)={(W1-W2)/W1}×100 (1)
(8)水系インクのpHの測定
pH電極「6337-10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F-71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、水系インクの25℃におけるpHを測定した。
調製例1(ポリマー(a1)の調製)
アクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)31部、スチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)69部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK 富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)10部、2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤 富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)0.2部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、2-メルカプトエタノール0.13部、MEK30部及び2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製 商品名:V-65 重合開始剤)1.1部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の内容物を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の内容物を3時間かけて滴下した。反応容器は滴下ロートからの滴下終了後2時間65℃を維持し、その後前記重合開始剤0.1部をMEK2部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間保持し、更に70℃で2時間熟成させた後に減圧乾燥してポリマー(a1)(非架橋)(数平均分子量:12000、酸価:240mgKOH/g)を得た。
製造例1(カーボンブラックを含有するポリマー粒子(該粒子を構成するポリマー=架橋ポリマー(A1))の水分散体の製造)
(工程1)
調製例1で得られたポリマー(a1)25部をMEK78.6部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、富士フイルム和光純薬株式会社製、容量滴定用)10.2部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が40%になるように中和した(中和度40%)。更にイオン交換水400部を加え、その中にカーボンブラック顔料(C.I.ピグメント・ブラック7、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製、商品名:NIPex 180IQ)100部を加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
(工程2)
次いで、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で150MPaの圧力で15パス分散処理した。得られた分散液にイオン交換水250部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去した。得られた分散液を遠心分離装置で液相部分を回収して孔径5μmのセルロースアセテート製メンブランフィルターで濾過してカーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体を得た。このときカーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体の固形分濃度は25%であった。
(工程3)
カーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体100部をねじ口付きガラス瓶に取り、イオン交換水31部を加え、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-321LT、エポキシ当量:140、水溶率27%)1.5部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した(架橋率:50モル%)。5時間経過後、分散液を室温(25℃)まで降温し、孔径5μmのセルロースアセテート製メンブランフィルターで濾過して、カーボンブラックを含有するポリマー粒子(ポリマー=架橋ポリマー(A1)、酸価120mgKOH/g 中和度80%)の水分散体I-1(固形分濃度:20%、カーボンブラック15.1%、ポリマー4.9%、平均粒径107nm)を得た。
製造例2~6(カーボンブラックを含有するポリマー粒子(ポリマー=架橋ポリマー(A1))の水分散体の製造)
製造例1において、カーボンブラックを表1に記載のものに変更した以外は、製造例1と同様の手順にてカーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体I-2~I-6を得た。
製造例1~6で用いた、表1に記載のカーボンブラックは次の通りである。
・NIPex180IQ(オリオン・エンジニアドカーボンズ社製、pH4.5、比表面積260m/g、チャンネルブラック)
・NIPex160IQ(オリオン・エンジニアドカーボンズ社製、pH4.5、比表面積180m/g、チャンネルブラック)
・COLOUR BLACK FW 1(オリオン・エンジニアドカーボンズ社製、pH3.5、比表面積320m/g、チャンネルブラック)
・MA8(三菱ケミカル社製、pH3.0、比表面積120m/g、ファーネスブラック)
・Monarch717(キャボット社製、pH8.5、比表面積183m/g、ファーネスブラック)
・Printex55(オリオン・エンジニアドカーボンズ社製、pH9.5、比表面積110m/g、ファーネスブラック)
製造例7(カーボンブラックを含有するポリマー粒子(ポリマー=ポリマー(a1)(非架橋))の水分散体の製造)
製造例1の手順において、(工程1)及び(工程2)の操作を行い、(工程3)の操作は行わない手順とし、(工程1)において、調製例1で得られたポリマー(a1)25部を33.3部に、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が80%になるように5N水酸化ナトリウム水溶液10.2部を20.2部として(中和度80%)、カーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体I―7(ポリマー=ポリマー(a1)(非架橋)、酸価240mgKOH/g 中和度80%)を得た(固形分濃度:20%、カーボンブラック15.1%、ポリマー4.9%、平均粒径105nm)。
製造例8(顔料を含有しないポリマー粒子の水分散体の製造)
調製例1で得られたポリマー(a1)15.3部をイオン交換水63.5部と混合し、更に、5N水酸化ナトリウム水溶液(固形分:16.9%)6.2部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が40%になるように中和し(中和度:40モル%)、温浴を用いて90℃まで加熱し、1時間撹拌してポリマーを水中に完全に分散させ、ポリマー分散液を得た。
このポリマー分散液を室温まで冷却した後、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-321LT、エポキシ当量:140、水溶率27%)4.6部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら90℃で1.5時間加熱した(架橋率50モル%)。その後、ポリマー分散液を室温(25℃)まで降温し、孔径5μmのセルロースアセテート製メンブランフィルターで濾過して、顔料を含有しないポリマー粒子(架橋ポリマー、酸価120mgKOH/g、中和度80%)の水分散体II-1(固形分濃度:20%、平均粒径51nm)を得た。
実施例1(水系インクの製造)
製造例1で得られたカーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体I-1(固形分濃度:20質量%)28.2部(内訳:カーボンブラック4.2部、架橋ポリマーA1 1.4部、イオン交換水22.6部)、製造例8で得られた顔料を含有しないポリマー粒子の水分散体II-1(固形分濃度:20質量%)25部(内訳:ポリマー5.0部、イオン交換水20.0部)、プロピレングリコール(PG、富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)20部、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(iPDG、日本乳化剤株式会社製)5部、サーフィノール104PG-50(日信化学工業株式会社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのプロピレングリコール50%溶液)2部(2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール固形分1部)、エマルゲン120(花王株式会社製、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物 有効分100%)0.5部、3号ケイ酸ナトリウム(富士化学株式会社製、ケイ酸ナトリウム水溶液、有効分38質量%、(SiO(質量%))/(NaO(質量%))=3.2)0.0079部(ケイ酸ナトリウム有効分0.003部)と、1N水酸化ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製 容量分析用)をインクpHが8.5となるように適量配合し、更に合計量が100部となるようイオン交換水を添加して、孔径5μmのセルロースアセテート製メンブランフィルターで濾過して水系インクIII-1を得た(カーボンブラックを含有するポリマー粒子:5.6質量%(うちカーボンブラック4.0質量%、顔料を含有しないポリマー粒子5.0質量%、ケイ酸化合物30質量ppm)。
実施例2~11、及び比較例1~3(水系インクの製造)
実施例1において、表2に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして水系インクIII-2~III-11及びIII-12~III-14を得た。結果を表2に示す。
なお、比較例1ではカーボンブラックを含有するポリマー粒子に代えて変性カーボンブラックの水分散体(CAB-O-JET200:商品名 キャボット社製 固形分20% ポリマー不含有 平均粒子径130nm)を用いた。
<評価>
実施例及び比較例で得られた水系インクを用いて、下記の方法で、酸化シリコン製ノズルプレートを使用したインクジェットヘッドの撥水性の評価、並びに該インクジェットヘッドにおける、水系インクの長期吐出信頼性及び吐出回復性の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)酸化シリコン製ノズルプレートを使用したインクジェットヘッドの撥水性の評価
酸化シリコン製ノズルプレートを使用したインクジェットヘッドとして富士フイルムDimatix株式会社製のSamba G3L インクジェットヘッドを試験片として用いて、以下のようにして撥水膜における水の接触角を測定し、インク組成物による撥水膜の撥液性に対する影響を評価した。
実施例及び比較例で得られた水系インク300mlを、500ml広口ビン(アイボーイ広口ビン500ml(アズワン株式会社製))にそれぞれ量りとった。次いで上記試験片を水系インク中に浸漬し、容器を密栓した後に50℃に設定した恒温槽中で28日間静置した。その後、試験片を取り出し、イオン交換水で洗浄して、ノズルプレート部の撥水膜表面の水の接触角を測定した。水の接触角の測定にはイオン交換水を使用し、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、DM-500)を用いて25℃、相対湿度50%の環境下で常法により測定した。
シリコン製ノズルプレートの撥水性について、接触角が80°以上であれば実用上支障はなく、接触角が90°以上であれば好適に使用できる。
(2)長期吐出信頼性の評価
実施例及び比較例で得られた水系インクをガラス容器に入れた後密栓して50℃の恒温槽中に28日間静置した後、更に室温で24時間静置した。その後該インクを富士フイルムDimatix社製のSamba G3L インクジェットヘッドへ充填し、jetXpertインクジェット液観測装置(imageXpert社製)を用いて、温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で吐出試験を行い飛翔挙動の確認を行った。吐出条件はシングルパルス標準波形を用いて、滴量2.4pLとなるように電圧を調整し、30分間連続吐出を行った。
その後、ノズルから0.2mm程度の位置にある滴1と、同0.6mm程度の位置にある滴2とを同時にストロボ撮影し、0.4mm程度離れた滴1と滴2の2滴間をつないだ直線の角度について、垂直(90度)からのずれを1ノズルにつき1000回測定し標準偏差σを算出することで吐出方向乱れの指標として測定した。標準偏差σは1つのインクにつき30のノズルの平均値とした。2滴がノズルプレートから完全に垂直に吐出されれば標準偏差σ=0である。一方で、滴1と滴2の位置がノズルプレートからの垂線に対し左右にずれれば標準偏差σの値が大きくなり吐出方向の乱れが生じていると評価される。
標準偏差σが15mrad未満であれば実使用上問題はないが、10mrad未満であれば好適に使用でき、5mrad未満であればより好適に使用できる。
(3)吐出回復性の評価
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、富士フイルムDimatix社製のSamba G3L インクジェットヘッドを装備した印刷評価装置(株式会社アルテック製)に実施例及び比較例で得られた水系インクを充填した。
記録媒体として、コート紙「OKトップコート+」(王子製紙株式会社製、商品名、吸水量4.9g/m)を、該記録媒体の長手方向と搬送方向が同じ向きになるように、前記印刷評価装置の搬送台に減圧して固定した。
吐出条件はシングルパルス標準波形を用いて、滴量2.4pLとなるように電圧を調整し、駆動周波数20kHz、解像度1200×1200dpiとし、Duty100%の2cm四方のベタ画像をワンパス方式で印刷した。その後、10分間印刷機を停止させインクジェットヘッドを大気暴露させた。10分間経過後、印刷基材を新しいものに変更し、フラッシングなし、20kHzの条件にて再度印刷を再開し、インクジェットヘッドを大気暴露する前に印刷したのと同じ画像の印刷を行い、得られた印刷物の観察により下記基準で吐出回復率(%)を算出し、吐出安定性を評価した。
吐出回復率(%)=(10分間大気暴露後のベタ印刷の吐出面積/10分間大気暴露前のベタ印刷の吐出面積)×100
吐出回復率(%)が大きいほど吐出安定性が優れていると判断される。
表2から、実施例1~11で得られた水系インクは、比較例1~3で得られた水系インクに比べて、インクジェットヘッドの撥水性の低下の抑制、並びにインクジェット記録における長期吐出信頼性及び吐出回復性に優れていることが分かる。

Claims (8)

  1. カーボンブラックを含有するポリマー粒子、有機溶剤、ケイ酸化合物及び水を含有するインクジェット記録用水系インクであって、
    該ケイ酸化合物の含有量が、インク中、1質量ppm以上450質量ppm以下である、インクジェット記録用水系インク。
  2. 前記カーボンブラックを含有するポリマー粒子が、カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子である、請求項1に記載のインクジェット記録用水系インク。
  3. 前記カーボンブラックを含有する架橋ポリマー粒子を構成する架橋ポリマーの酸価が90mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項2に記載のインクジェット記録用水系インク。
  4. 前記有機溶剤が、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
  5. 顔料を含有しないポリマー粒子を更に含有する、請求項1~4のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
  6. 前記カーボンブラックのpHが3.0以上9.5以下であり、かつ、前記カーボンブラックの比表面積が100m/g以上450m/g以下である、請求項1~5のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
  7. インク中のケイ酸化合物の含有量と、インク中のカーボンブラックの比表面積及びカーボンブラックの含有量の積との比[(ケイ酸化合物の含有量(質量ppm))/{カーボンブラックの比表面積(m/g)×カーボンブラックの含有量(質量%)}/100]が、0.1以上30以下である、請求項1~6のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクを用いて、シリコン及び酸化シリコンから選ばれる1種以上をノズルプレート部材に用いたインクジェットヘッドから該インクを吐出する、インクジェット記録方法。
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