JP2024034190A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーダ装置における物標の検知精度を向上する。【解決手段】レーダ装置は、第1のビームを形成する第1の送信アンテナ、及び、第1のビームと異なる第2のビームを形成する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、複数の送信アンテナのそれぞれに割り当てられるドップラシフト量に対応する位相回転が付与された送信信号を、複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、複数の送信アンテナによるドップラシフト間隔は、ドップラ周波数軸上で不等間隔であり、第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第1のパターンと、第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第2のパターンと、が異なる。【選択図】図7

Description

本開示は、レーダ装置に関する。
近年、高分解能が得られるマイクロ波又はミリ波を含む波長の短いレーダ送信信号を用いたレーダ装置の検討が進められている。また、屋外での安全性を向上させるために、車両以外にも、歩行者といった小物体を広角範囲で検知するレーダ装置(例えば、広角レーダ装置と呼ぶ)の開発が求められている。
広角な検知範囲を有するレーダ装置の構成として、例えば、複数のアンテナ(又は、アンテナ素子とも呼ぶ)で構成されるアレーアンテナによってターゲットからの反射波を受信し、素子間隔(アンテナ間隔)に対する受信位相差に基づいて、ターゲットからの反射波の到来する方向(又は、到来角と呼ぶ)を推定する手法(到来角推定手法。Direction of Arrival (DOA) estimation)を用いる構成がある。例えば、到来角推定手法には、フーリエ法(Fourier法)、又は、高い分解能が得られる手法としてCapon法、MUSIC(Multiple Signal Classification)及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)が挙げられる。
また、レーダ装置として、例えば、受信部に加え、送信部にも複数のアンテナ(アレーアンテナ)を備え、送受信アレーアンテナを用いた信号処理によりビーム走査を行う構成(MIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダと呼ぶこともある)が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
特開2019-211388号公報 米国特許公開第2022/0066012号明細書 特開2008-304417号公報 特表2011-526371号公報 特開2014-119344号公報 特開2019-052952号公報 特開2020-148754号公報
J. Li, and P. Stoica, "MIMO Radar with Colocated Antennas", Signal Processing Magazine, IEEE Vol. 24, Issue: 5, pp. 106-114, 2007 M. Kronauge, H.Rohling,"Fast two-dimensional CFAR procedure", IEEE Trans. Aerosp. Electron. Syst., 2013, 49, (3), pp. 1817-1823 Direction-of-arrival estimation using signal subspace modeling Cadzow, J.A.; Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on Volume: 28 , Issue: 1 Publication Year: 1992 , Page(s): 64 - 79
しかしながら、レーダ装置(例えば、MIMOレーダ)において物標(又はターゲット)を検知する方法について十分に検討されていない。
本開示の非限定的な実施例は、物標の検知精度を向上するレーダ装置の提供に資する。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1のビームを形成する第1の送信アンテナ、及び、前記第1のビームと異なる第2のビームを形成する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、前記複数の送信アンテナのそれぞれに割り当てられるドップラシフト量に対応する位相回転が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記複数の送信アンテナによるドップラシフト間隔は、ドップラ周波数軸上で不等間隔であり、前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第1のパターンと、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第2のパターンと、が異なる。
なお、これらの包括的または具体的な実施例は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示の一実施例によれば、レーダ装置における物標の検知精度を向上できる。
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)送信の一例を示す図 ドップラ多重(DDM:Doppler Division Multiplexing)送信の一例を示す図 不等間隔ドップラ多重送信の一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダにおけるドップラ多重送信の一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダにおけるドップラ多重送信の一例を示す図 レーダ装置の構成例を示すブロック図 チャープ信号を用いた場合の送信信号の一例を示す図 チャープ信号の一例を示す図 チャープ信号を用いた場合の送信信号及び受信信号の一例を示す図 ドップラシフト量の設定例を示す図 ドップラ多重送信における受信信号の一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 ドップラシフト量の設定例を示す図 ドップラ多重送信における受信信号の一例を示す図 ドップラシフト量の設定例を示す図 ドップラシフト量の設定例を示す図 ドップラ多重信号の分離の動作例を示すフローチャート 送信アンテナの構成例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 MIMOアンテナ配置及び仮想受信アンテナ配置の一例を示す図 MIMOアンテナ配置及び仮想受信アンテナ配置の一例を示す図 MIMOアンテナ配置及び仮想受信アンテナ配置の一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 MIMOアンテナ配置の一例を示す図 ドップラシフト量の設定例を示す図 ドップラシフト量の設定例を示す図 ドップラシフト量の設定例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図 マルチビーム送信MIMOレーダの一例を示す図
MIMOレーダは、例えば、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重した信号(レーダ送信波)を複数の送信アンテナ(又は、送信アレーアンテナと呼ぶ)から送信し、周辺物体において反射された信号(レーダ反射波)を複数の受信アンテナ(又は、受信アレーアンテナと呼ぶ)を用いて受信し、それぞれの受信信号から、多重された送信信号を分離して受信する。このような処理により、MIMOレーダは、送信アンテナ数と受信アンテナ数との積で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。また、MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおける素子間隔を適切に配置することにより、仮想受信アレーのアンテナ開口を拡大し、角度分解能の向上を図ることができる。
[マルチビームレーダについて]
MIMOレーダを構成する複数の送信アンテナあるいは受信アンテナの指向特性(又は、単に「指向性」と呼ぶ)は、測角精度又は角度分解能といった測角性能の向上のため、同等であることが望ましい。その一方で、送信アンテナあるいは受信アンテナの指向特性は、レーダに要求される検知距離又は検知角度範囲に応じて設定されるため、送信アンテナあるいは受信アンテナの指向特性が1種類では、要求仕様をカバーすることが困難となり得る。
例えば、広角の検知角度範囲を満たしつつ、所要の検知距離を満たすために、主ビーム方向(以下、「ビーム方向」、「送信ビーム方向」又は「受信ビーム方向」と記載することもある)の異なる複数の指向特性の送信アンテナあるいは受信アンテナを用いる場合があり得る。
また、例えば、検知角度方向毎に所要の検知距離が大きく異なる場合など、それぞれの角度方向毎に適したビーム方向及びビーム幅の少なくとも一つが異なる複数の指向特性の送信アンテナあるいは受信アンテナを用いる場合があり得る。
また、例えば、複数の検知距離毎(例えば、遠距離範囲、中距離範囲、近距離範囲毎)に検知角度範囲が大きく異なる場合など、ビーム方向がほぼ同じであり、検知距離に応じてビーム幅(例えば3dBビーム幅あるいは6dBビーム幅)の異なる複数の指向特性の送信アンテナあるいは受信アンテナを用いる場合があり得る。
例えば、レーダ装置のサイズ又はコストの制約から、送信アンテナ数あるいは受信アンテナ数が制限される場合は、異なる指向特性の送信アンテナあるいは受信アンテナを用いることが要求仕様を満たすための有効な手段となる。
このような場合に、複数の異なる指向特性の送信アンテナあるいは受信アンテナを用いて、MIMOレーダを構成することが期待される。
送信アンテナあるいは受信アンテナの複数の異なる指向特性として、例えば、ビーム幅が同等であり、ビーム方向が異なる指向特性、ビーム方向及びビーム幅の両方が異なる指向特性、又は、ビーム方向が同等であり、ビーム幅が異なる指向特性等が挙げられる。
以下では、上記のような異なる指向特性を有する送信アンテナ(例えば、異なるビームを形成する送信アンテナ)を複数用いるMIMOレーダを「マルチビーム送信MIMOレーダ」と呼ぶ。ここで、マルチビーム送信MIMOレーダには、異なる指向特性を有する送信アンテナが複数含まれる。なお、マルチビーム送信MIMOレーダは、同一の指向性の送信アンテナを1個あるいは複数個を含む構成でもよい。
また、以下では、上記のような異なる指向特性を有する受信アンテナ(例えば、異なるビームを形成する受信アンテナ)を複数用いるMIMOレーダを「マルチビーム受信MIMOレーダ」と呼ぶ。ここで、マルチビーム受信MIMOレーダには、異なる指向特性を有する受信アンテナが複数含まれる。なお、マルチビーム受信MIMOレーダは、同一の指向性の受信アンテナを1個あるいは複数個含む構成でもよい。
同様に、以下では、上記のような異なる指向特性を有する送信アンテナ及び受信アンテナを複数用いるMIMOレーダを「マルチビーム送受信MIMOレーダ」(又は、マルチビームMIMOレーダ)と呼ぶ。
例えば、特許文献1には、或る指向性の送信アンテナ2個と、異なる指向性の送信アンテナ1個とを時分割で切り替える3送信MIMOレーダ構成が開示されている。また、特許文献1には、或る指向性の送信アンテナ2個を符号多重送信する時間周期と、異なる指向性の送信アンテナ2個を符号多重送信する時間周期と、を切り替える構成が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、遠距離用の指向性の送信アンテナと、中近距離用の指向性の送信アンテナとを、時分割及びドップラ多重を組み合わせて切り替えるMIMOレーダ構成が開示されている。
以下では、異なる指向特性を有する複数の送信アンテナ(例えば、異なるビームを形成する複数の送信アンテナ)を用いるマルチビーム送信MIMOレーダにおける多重送信方法について着目する。
[時分割多重送信について]
例えば、複数の送信アンテナを用いたMIMOレーダの多重送信方法として、送信アンテナ毎に送信時間をシフトして信号を送信する時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)が挙げられる。時分割多重は、周波数多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)及び符号多重(CDM:Code Division Multiplexing)と比較して、簡易な構成で実現可能であり、また、送信時間間隔を十分に広げることにより、送信信号間の直交性を良好に保つことが可能である。
例えば、特許文献3に開示された時分割多重送信を用いるMIMOレーダは、送信信号(例えば送信パルス又はレーダ送信波)を送信する送信アンテナを、規定の周期で逐次的に切り替えながら、送信信号の一例である送信パルスを出力する。時分割多重送信を用いるMIMOレーダは、送信パルスが物体で反射された信号を複数の受信アンテナで受信し、受信信号と送信パルスとの相関処理後に、例えば、空間的なFFT(Fast Fourier Transform)処理(反射波の到来方向推定処理)を行う。
時分割多重送信を用いるMIMOレーダは、複数の送信アンテナ毎に規定の送信時間(又は、送信区間)が予め割り当てられる。したがって、時分割多重送信を用いるマルチビーム送信MIMOレーダは、複数の異なるビーム方向の指向性を有する送信アンテナを割り当てた送信時間毎に物標からの反射を受信することで、複数の異なるビーム方向の送信アンテナ毎の送信信号に対応する、物標からの反射波を分離して受信する。
時分割多重送信を用いるMIMOレーダは、レーダ送信波を送信する送信アンテナを、規定された時間毎に逐次的に切り替えるため、全ての送信アンテナからの送信が完了するまでの時間は、周波数分割多重送信又は符号分割多重送信を用いる場合と比較して長くなりやすい。このため、時分割多重送信を用いるMIMOレーダでは、送信アンテナ毎に複数のレーダ送信波を送信し、それらの受信位相変化からドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)を行う場合(例えば、特許文献4の図4)、ドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のためにフーリエ周波数解析を適用する際の受信位相変化を観測する時間間隔が長くなる。フーリエ周波数解析を適用する際の受信位相変化を観測する時間間隔が長くなると、サンプリング定理に基づく、検出可能な最大ドップラ周波数が低減し、検出可能なドップラ周波数範囲(例えば、相対速度範囲)が狭まりやすい。
例えば、図1に示すように、送信レーダ波としてチャープ信号を送出する送信アンテナ(例えば、Tx#1及びTx#2)を送信周期Trで逐次的に切り替えながら送信パルスを出力する時分割多重送信を用いるMIMOレーダについて説明する。
例えば、Nt個の送信アンテナの場合(図1の場合、Nt=2)、Nt個の送信アンテナからのレーダ送信波の送信が完了するまでの送信時間はTr×Nt(図1の場合、2Tr)である。時分割多重送信を用いるMIMOレーダにおいて、このような時分割多重送信をNc回繰り返して、ドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のためにフーリエ周波数解析を適用すると、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能なドップラ周波数範囲は、サンプリング定理より±1/(2Tr×Nt)となる。したがって、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能なドップラ周波数範囲は、送信アンテナ数Ntが増大するほど狭くなる。また、時分割多重送信を用いるMIMOレーダにおいて、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能な範囲を超えるドップラ周波数を受信する場合、ドップラ周波数(例えば、相対速度)を一意に確定することは困難であり、曖昧性が生じやすくなる。
例えば、特許文献1のように時分割多重送信を用いるマルチビーム送信MIMOレーダにおいても、上述した時分割多重送信を用いるMIMOレーダと同様、送信アンテナ数Ntが増大するほど、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能なドップラ周波数範囲は狭くなりやすい。
以上、時分割多重送信の例について説明した。
次に、一例として、複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する方法に着目する。
[ドップラ多重送信について]
複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する方法として、例えば、受信部においてドップラ周波数領域の複数の送信信号を分離できるように信号を送信する方法(以下、「ドップラ多重(DDM:Doppler Division Multiplexing)送信」と呼ぶ)がある(例えば、特許文献5を参照)。
ドップラ多重送信において、送信部では、例えば、送信アンテナ毎に、送信される送信信号に対して異なるドップラシフト量を与える位相回転が付与され、複数の送信アンテナから送信信号が同時に送信される。ドップラ多重送信において、複数の受信アンテナを用いて受信した信号(物標からの反射波)は、それぞれドップラ周波数領域においてフィルタリングすることにより、各送信アンテナから送信された送信信号が分離して受信される。
ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダでは、例えば、複数の送信アンテナ毎に、規定のドップラ周波数領域(又は、ドップラシフト量)が予め割り当てられる。例えば、ドップラ多重送信を用いるマルチビーム送信MIMOレーダは、複数の異なるビーム方向の送信アンテナに割り当てられたドップラ周波数領域毎に物標からの反射を受信することで、複数の異なるビーム方向の送信アンテナ毎の送信信号に対応する、物標からの反射波を分離して受信する。
ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダでは、複数の送信アンテナから送信信号を同時に送信することにより、時分割多重送信と比較して、ドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のためにフーリエ周波数解析を適用する際の受信位相変化を観測する時間間隔を短縮できる。その一方で、ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダでは、ドップラ周波数軸上でフィルタリングすることにより各送信アンテナの送信信号を分離するため、送信信号あたりの実効的なドップラ周波数帯域幅が制限される。
例えば、図2の(a)に示すように、送信レーダ波としてチャープ信号を送信周期Trで出力する送信をNc回繰り返して、ドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のためにフーリエ周波数解析を適用するドップラ多重送信を用いるMIMOレーダについて説明する。
例えば、図2の(b)において、ドップラ周波数軸上で、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能なドップラ周波数範囲は、サンプリング定理より±1/(2Tr)となり、時分割多重送信を行う場合と比較して、Nt倍(図2の場合、Nt=2)に拡大される。その一方で、ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダでは、ドップラ周波数軸上でのフィルタリングにより送信信号を分離するため、送信信号あたりの実効的なドップラ周波数範囲は、ドップラ周波数範囲±1/(2Tr)よりも狭くなる。例えば、ドップラ周波数範囲±1/(2Tr)を、Nt個(図2の場合、Nt=2)に等分割するドップラシフト(以下、「ドップラシフト量」又は「送信ドップラシフト量」とも呼ぶ)である0[Hz]、及び、-1/(2Tr)[Hz]が、Tx#1及びTx#2にそれぞれ付与される場合、ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、位相回転Φ1(n)=(n-1)ΔΦ1、Φ2(n)=(n-1)ΔΦ2(ここで、ΔΦ1=0、ΔΦ2=π)を送信信号であるチャープ信号(cp(t))に送信周期Tr毎に乗算する。ここで、n=1,2,3,4,…であり、チャープ信号の送信回数を表すインデックスである。
この場合、図2の(b)に示すように、複数の送信アンテナTx#1及びTx#2のそれぞれにドップラ周波数領域が予め割り当てられる。例えば、Tx#1のドップラ周波数fd1の領域(例えば、「ドップラ分割領域」とも呼ぶ)には、-1/(4Tr)≦fd1<1/(4Tr)が割り当てられ、Tx#2のドップラ周波数fd2の領域には、-1/(2Tr)≦fd2<-1/(4Tr)、及び、1/(4Tr)≦fd2<1/(2Tr)が割り当てられる。
ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、例えば、各送信アンテナからの送信信号が物標に反射した信号を受信し、ドップラ周波数軸上でフィルタリング処理することにより、送信信号を分離して受信する。例えば、図2の(b)において、ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、送信アンテナTx#1からの送信信号が物標に反射した信号を、ドップラ周波数軸上の-1/(4Tr)≦fd1<1/(4Tr)の範囲をフィルタリング処理して抽出することにより、分離受信する。同様に、ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、送信アンテナTx#2からの送信信号が物標に反射した信号を、ドップラ周波数軸上の-1/(2Tr)≦fd2<-1/(4Tr)及び1/(4Tr)≦fd2<1/(2Tr)の範囲をフィルタリング処理して抽出することにより、分離受信する。
このように、ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダでは、各送信アンテナからの送信信号に対応する反射波信号は、それぞれ±1/(2Tr×Nt)のドップラ周波数範囲内に含まれることを想定して受信処理されるため、時分割多重送信を行う場合と同様のドップラ周波数範囲となる。例えば、ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダでは、送信アンテナ数Ntが増大するほど、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能なドップラ周波数範囲は狭くなりやすい。
また、ドップラ多重送信を用いるマルチビーム送信MIMOレーダにおいても、上述したドップラ多重送信を用いるMIMOレーダと同様、送信アンテナ数Ntが増大するほど、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能なドップラ周波数範囲が狭くなりやすい。
[不等間隔ドップラ多重送信について]
上述した時分割多重送信又はドップラ多重送信は、割り当てた送信時間又はドップラ周波数領域を用いて、複数の送信アンテナからの送信信号に対応する反射波を分離できる。その一方で、時分割多重送信及びドップラ多重送信では、送信アンテナ数が増加すると、ドップラ周波数の検出範囲が狭まりやすい。例えば、時分割多重及びドップラ多重分割では、検出可能なドップラ周波数範囲は、-1/(2Nt×Tr)≦fd<1/(2Nt×Tr)となり、送信アンテナ数に反比例してドップラ周波数の検出範囲が狭まる。ここで、Ntは送信アンテナ数である。
例えば,ドップラ多重送信においてドップラ周波数の検出範囲を拡大する方法として、特許文献6が開示されている。特許文献6(例えば、図8)には、以下の方法が開示されている。例えば、折り返し無しでドップラ周波数を検出可能なドップラ周波数範囲±1/(2Tr)を、(Nt+1)個に等分割したドップラシフト量(又は、ドップラ周波数領域)のうち、Nt個のドップラシフト量がNt個の送信信号に割り当てられ、Nt個の送信アンテナから送信信号が同時に送信される。
このようなドップラ多重送信では、(Nt+1)個に等分割されるドップラシフト量のうち一部が送信信号に割り当てられない。このため、ドップラ周波数領域において、ドップラ多重される送信信号に付与されるドップラシフト量の各間隔(以下、「ドップラ多重間隔」又は「ドップラシフト間隔」とも呼ぶ)は、不等間隔となる。以下、このようなドップラ多重送信を「不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)」と呼ぶ。
図3は、レーダ送信波(例えば、チャープ信号)を送信周期Tr毎に送出する場合に、Nt=2の送信アンテナを用いて、ドップラシフト間隔の単位をΔfd=1/(3Tr)とした場合の不等間隔ドップラ多重送信を用いたドップラ多重信号の割り当て例を示す。
図3において、送信アンテナTx#1及びTx#2に対して割り当てられる送信ドップラシフト量は、それぞれΔfd1=0、Δfd2=1/(3Tr)[Hz]である。例えば、n番目の送信周期毎に送信アンテナTx#1に送信ドップラシフト量Δfd1を付与するため、位相回転Φ1(n)=ΔΦ1×(n-1)がレーダ送信波(チャープ信号)に付与される。同様に、例えば、n番目の送信周期毎に送信アンテナTx#2に送信ドップラシフト量Δfd2を付与するため、位相回転Φ2(n)=ΔΦ2×(n-1)がレーダ送信波(チャープ信号)に付与される。なお、位相回転Φ3(n)=ΔΦ3×(n-1)に対応するドップラシフト量Δfd3に対する送信アンテナの割り当てはない。
ここで、図3は、Δfd1=0、Δfd2=1/(3Tr)であり、ΔΦ1=0、ΔΦ2=2π×Δfd×Tr=2π/3である場合の送信アンテナTx#1及びTx#2に対して割り当てられる送信ドップラ周波数を示す。図3において、Δfd3=2/(3Tr)とし、ΔΦ3=2π×2Δfd×Tr=4π/3(又は、-2π/3)とした場合の送信ドップラ周波数を「×」印で表す。図3に示すように、ドップラシフト量Δfd3に対する送信アンテナの割り当てはない。
なお、位相回転Φnは、-π≦ΔΦn<πとして表記してもよい。例えば、ΔΦ3=-2π/3として表記してもよい。以降同様である。
例えば、図3に示すように、Tx#1及びTx#2に対するドップラシフト間隔がΔfd=1/(3Tr)であり、観測可能なドップラ周波数の範囲(領域)が-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)であり、この範囲外のドップラ周波数を含む場合について考慮する。例えば、Tx#1又はTx#2のドップラ多重信号の受信ドップラ周波数が1/(2Tr)を超える場合、又は、-1/(2Tr)より小さい場合、図3に示すように、Tx#1及びTx#2に対するドップラシフト間隔は、Δfalias=1/Tr-Δfd=2/3Trとなる。以下では、「ドップラ多重間隔」又は「ドップラシフト間隔」と記載する場合、Δfdに加え、Δfaliasを含む。
次に、不等間隔ドップラ多重送信を用いる場合のドップラ多重信号の分離受信処理の例について説明する。
不等間隔ドップラ多重送信を用いる場合のドップラ多重信号の分離受信処理では、例えば、レーダ反射波の受信信号に対するドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のために、以下の性質を利用する。
例えば、フーリエ周波数解析を適用した出力において、Nt+1個に等分割されるドップラシフト量のうち、送信信号が割り当てられないドップラシフト量に相当するドップラ周波数の受信電力レベルは、送信信号が割り当てられるドップラシフト量に相当するドップラ周波数の受信電力レベルよりも十分に低い(例えば、ノイズレベル程度に十分低い)。
不等間隔ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、この性質を利用して、物標からの反射波の受信ドップラ周波数の推定、及び、送信アンテナの分離処理を行う。
例えば、物標からの反射波の受信ドップラ周波数を「fdtarget」とする。この場合、レーダ反射波受信信号に対して、ドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のためにフーリエ周波数解析を適用した出力において、fdtarget+Δfd1及びfdtarget+Δfd2となるドップラ周波数の受信レベルは高く(例えば、閾値以上に)観測される。その一方で、ドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のためにフーリエ周波数解析を適用した出力において、fdtarget+Δfd3となるドップラ周波数の受信レベルは、fdtarget+Δfd1及びfdtarget+Δfd2となるドップラ周波数の受信レベルと比較して、ノイズレベル程度に十分低く観測される。
なお、ドップラ周波数検出(例えば、相対速度検出)のためにフーリエ周波数解析を適用した出力は、-1/(2Tr)≦fd <1/(2Tr)の範囲において観測されるため、この範囲を超える場合、フーリエ周波数解析を適用した出力は、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)で折り返した信号として観測される。
物標からの反射波の受信ドップラ周波数fdtargetが、-1/(2Tr)≦fdtarget < 1/(2Tr)の範囲内であれば、上述した関係性を満たす受信ドップラ周波数は、-1/(2Tr)≦fdtarget < 1/(2Tr)の範囲で一意となるため、不等間隔ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、この範囲内において曖昧性なく物標のドップラ周波数fdtargetを決定できる。不等間隔ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、例えば、物標に対応するドップラ周波数fdtargetを決定した場合、送信アンテナ毎の受信ドップラ周波数を決定でき、ドップラ多重信号の分離受信が可能となる。
このようなドップラ多重信号の分離受信処理により、不等間隔ドップラ多重送信を用いるMIMOレーダは、例えば、ドップラ周波数範囲±1/(2Tr)においてレーダ反射波のドップラ周波数の推定が可能となる。不等間隔ドップラ多重送信により、検出可能なドップラ周波数範囲を±1/(2Tr)にまで拡大する。例えば、不等間隔ドップラ多重送信により、特許文献3の方法と比較して、検出可能なドップラ周波数範囲はNt倍に拡大される。
[マルチビーム送信MIMOレーダへの不等間隔ドップラ多重送信の適用について]
上述したように、不等間隔ドップラ多重では、例えば、等間隔のドップラ多重と異なり、一部のドップラ周波数領域が送信信号に割り当てられず、MIMOレーダは、物標からの反射波の受信ドップラ周波数の受信電力に基づいて、物標のドップラ周波数を推定するドップラ多重信号の分離処理を行う。
このため、マルチビーム送信MIMOレーダに、不等間隔ドップラ多重を適用する場合には、以下のことが想定され得る。
マルチビーム送信MIMOレーダでは、例えば、ビーム方向(又は、送信ビーム方向)と物標方向とに依存して、反射波の受信レベルが大きく変動する現象が発生し得る。マルチビーム送信MIMOレーダにおいて、ビーム方向及び物標方向が一致する場合と、ビーム方向及び物標方向が一致しない場合とで、送信アンテナからの反射波受信レベルが大きく変動し得る。そのため、マルチビーム送信MIMOレーダにおいて、不等間隔ドップラ多重を用いて多重送信する場合、異なるビーム方向のマルチビーム間における反射波受信レベルの差が大きいと、不等間隔ドップラ多重によるドップラ多重分離が困難となり得る。ドップラ多重分離が困難になると、MIMOレーダにおける物標の検出性能の劣化、あるいは、ドップラ多重分離を誤り、ドップラ誤推定又は測角性能の劣化が発生し得る。
以下、不等間隔ドップラ多重を適用するマルチビーム送信MIMOレーダにおいてドップラ多重分離が困難となる例について説明する。
例えば、2つのビーム方向のそれぞれに2個の送信アンテナが含まれる4Tx MIMOレーダの場合について説明する。例えば、2つのビーム方向のそれぞれに対応する送信アンテナ数を「NTxBeam#1」及び「NTxBeam#2」と表す(NTxBeam#1=NTxBeam#2=2)。
例えば、図4に示すように、4個の送信アンテナTx#1~#4のうち2個の送信アンテナを用いて異なる2方向の各送信ビーム(TxBeam#1、TxBeam#2)を形成するマルチビーム送信MIMOレーダの構成について説明する。図4において、Tx#1及びTx#2の送信ビーム(ビーム方向)をTxBeam#1とし、Tx#3及びTx#4の送信ビーム(ビーム方向)をTxBeam#2とする。また、例えば、受信アンテナの指向特性は、無指向性でもよく、又は、複数の異なる指向性の送信アンテナがカバーする視野角(FOV:field of view)内でほぼ均一の指向特性でもよい。
例えば、4個の送信アンテナTx#1~#4に対して、図5の(a)に示すように、不等間隔のドップラ多重信号が割り当てられる場合について説明する。図5において、ドップラシフト間隔の単位はΔfd=1/(5Tr)であり、送信アンテナTx#1~Tx#4に対して割り当てられる送信ドップラ周波数(Hz)は、それぞれドップラシフト量Δfd1=-1/(2Tr)、Δfd2=-3/(10Tr)、Δfd3=-1/(10Tr)、Δfd4=1/(10Tr)であり、「×」印で表した送信ドップラ周波数はドップラシフト量Δfd5=3/(10Tr)であり、送信アンテナの割り当てはない場合を示す。
例えば、物標方向が図4に示す物標方向(1)の場合、TxBeam#1を形成するTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の方向は、物標方向(1)に一致するため、図5の(b)に示すように、TxBeam#1を形成するTx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベル(例えば、反射波受信レベル)は比較的高くなる。その一方で、物標方向が図4に示す物標方向(1)の場合、TxBeam#2を形成するTx#3及びTx#4から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の方向は、物標方向(1)に一致せず、物標方向(1)はTxBeam#2の指向性ヌル方向(以下、ヌル方向とも呼ぶ)に該当する。このため、例えば、図5の(b)に示すように、TxBeam#2を形成するTx#3及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルは、TxBeam#1(Tx#1及びTx#2)に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、TxBeam#2に対応する受信レベルは、TxBeam#1に対応する受信レベルと大きく異なり、TxBeam#2のヌル方向のビーム指向特性によっては10dB以上小さくなることもあり得る。
また、例えば、物標方向がTxBeam#1のビーム方向とTxBeam#2のビーム方向との中間的な方向であり、両ビームの3dB又は6dB程度となるビーム幅が互いに重なるエリア方向にある場合(例えば、図4に示す物標方向(2)の場合)、TxBeam#1を形成するTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波と、TxBeam#2を形成するTx#3及びTx#4から送信されるレーダ送信波に対応する反射波とは、図5の(c)に示すように、同様なレベルで受信される。
また、例えば、物標方向が図4に示す物標方向(3)の場合、TxBeam#2を形成するTx#3及びTx#4から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の方向は、物標方向(3)に一致するため、図5の(d)に示すように、TxBeam#2を形成するTx#3及びTx#4に対応する受信信号の受信レベル(例えば、反射波受信レベル)は比較的高くなる。その一方で、物標方向が図4に示す物標方向(3)の場合、TxBeam#1を形成するTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の方向は、物標方向(3)に一致せず、物標方向(3)はTxBeam#1のヌル方向に該当する。このため、例えば、図5の(d)に示すように、TxBeam#1を形成するTx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルは、TxBeam#2(Tx#3及びTx#4)に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、TxBeam#1に対応する受信レベルは、TxBeam#2に対応する受信レベルと大きく異なり、TxBeam#1のヌル方向のビーム指向特性によっては10dB以上小さくなることもあり得る。
例えば、図5の(c)のような場合、TxBeam#1を形成するTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルと、TxBeam#2を形成するTx#3及びTx#4から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルとは同程度である。マルチビーム送信MIMOレーダは、これらの受信信号の受信レベルに基づいて、検出されるドップラ周波数のピークが、不等間間隔ドップラ多重送信に用いる何れの送信アンテナに対応する信号であるかを判別できる。また、図5の(c)では、物標反射波のドップラ周波数fdは、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲で確定できる。
その一方で、図5の(b)又は図5の(d)のような場合、マルチビーム送信MIMOレーダは、物標のドップラ周波数が不明であるため、受信信号の受信レベルに基づいて、TxBeam#1を形成するTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルが低下したか(例えば、図5の(d)のケース)、TxBeam#2を形成するTx#3及びTx#4から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルが低下したか(例えば、図5の(b)のケース)を判別することは困難である。このため、マルチビーム送信MIMOレーダは、受信信号の受信レベルに基づいて、検出されるドップラ周波数のピークが、不等間間隔ドップラ多重送信に用いる何れの送信アンテナに対応する信号であるかを判別することが困難である。このため、マルチビーム送信MIMOレーダは、ドップラ多重信号の分離が困難となり、物標からの反射波(例えば、「物標反射波」と呼ぶ)のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定することが困難となる。
このように、不等間隔ドップラ多重では、各送信アンテナに対応する反射波の受信レベルが同程度であり、ドップラ多重されないドップラシフト間隔(×印)の受信レベルがノイズレベル程度に十分に低いことを前提に、ドップラ多重分離処理が行われる。不等間隔ドップラ多重を用いるマルチビーム送信MIMOレーダでは、図5の(b)及び(d)のように、不等間隔ドップラ多重の分離処理での前提が崩れる場合(一部のビームに対応する受信レベルが低下する場合)があり、ドップラ多重分離処理を誤る可能性がある。
他の例として、4個の送信アンテナTx#1~#4に対して、図6の(a)に示すように、不等間隔のドップラ多重信号が割り当てられる場合について説明する。図6の(a)において、ドップラシフト間隔の単位はΔfd=1/(6Tr)であり、送信アンテナTx#1~Tx#4に対して割り当てられる送信ドップラ周波数(Hz)は、それぞれドップラシフト量Δfd1=-1/(2Tr)、Δfd2=-1/(3Tr)、Δfd3=-1/(6Tr)、及びΔfd4=0であり、2つの「×」印で表した送信ドップラ周波数は、それぞれドップラシフト量Δfd5=1/(6Tr), Δfd6=1/(3Tr)であり、送信アンテナの割り当てはない場合を示す。
例えば、Tx#1及びTx#4の送信ビーム(ビーム方向)を図4に示したTxBeam#1とし、Tx#2及びTx#3の送信ビーム(ビーム方向)を図4に示したTxBeam#2とする。物標方向が図4に示す物標方向(1)の場合、図6の(b)に示す受信信号の受信レベルとなり、物標方向が図4に示す物標方向(2)の場合、図6の(c)に示す受信信号の受信レベルとなり、物標方向が図4に示す物標方向(3)の場合、図6の(d)に示す受信信号の受信レベルとなる。
例えば、図6の(c)のような場合、TxBeam#1のTx#1及びTx#4から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルと、TxBeam#2のTx#2及びTx#3から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルとは同程度である。マルチビーム送信MIMOレーダは、これらの受信信号の受信レベルに基づいて、検出されるドップラ周波数のピークが、不等間間隔ドップラ多重送信に用いる何れの送信アンテナに対応する信号であるかを判別できる。また、図6の(c)では、物標反射波のドップラ周波数fdは、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲で確定できる。
その一方で、図6の(b)又は図6の(d)のような場合、マルチビーム送信MIMOレーダは、物標のドップラ周波数が不明であるため、受信信号の受信レベルに基づいて、TxBeam#1のTx#1及びTx#4から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルが低下したか、TxBeam#2のTx#2及びTx#3から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルが低下したかを判別することは困難である。このため、マルチビーム送信MIMOレーダは、受信信号の受信レベルに基づいて、検出されるドップラ周波数のピークが、不等間間隔ドップラ多重送信に用いる何れの送信アンテナに対応する信号であるかを判別することが困難である。このため、マルチビーム送信MIMOレーダは、ドップラ多重信号の分離が困難となり、物標反射波のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定することが困難となる。
本開示の非限定的な実施例では、不等間隔ドップラ多重送信を用いたマルチビーム送信MIMOレーダの検出性能を向上する方法について説明する。
以下、本開示の一実施例に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
以下では、レーダ装置において、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから同時に多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成(例えば、MIMOレーダ構成)について説明する。
また、以下では、一例として、チャープ(chirp)パルスのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式(例えば、チャープパルス送信(fast chirp modulation)とも呼ぶ)の構成について説明する。ただし、変調方式は、周波数変調に限定されない。例えば、本開示の一実施例は、パルス列を位相変調又は振幅変調して送信するパルス圧縮レーダを用いたレーダ方式についても適用可能である。
また、レーダ装置は、例えば、ドップラ多重送信(例えば、不等間隔ドップラ多重送信)を行う。また、レーダ装置は、例えば、複数の異なる指向特性を有する送信アンテナを備えてよい。
[レーダ装置の構成]
図7のレーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、を有する。
レーダ送信部100は、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、複数の送信アンテナ(例えば、Nt個)によって構成される送信アンテナ部105を用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期(例えば、「レーダ送信周期」と呼ぶ)にて送信する。
レーダ受信部200は、物標(ターゲット。図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナを含む受信アンテナ部202を用いて受信する。レーダ受信部200は、受信アンテナ部202の各受信アンテナにおいて受信した反射波信号を信号処理し、例えば、物標の有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(例えば相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(例えば、測位情報)を出力する。
なお、レーダ装置10は、例えば、車両といった移動体に搭載されてよく、測位出力部300からの測位出力(例えば、推定結果に関する情報)は、例えば、衝突安全性を高める先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)又は自動運転システムといった制御装置ECU(Electronic Control Unit)(図示なし)に接続され、車両駆動制御又は警報発呼制御に利用されてもよい。
また、レーダ装置10は、例えば、路側の電柱又は信号機といった比較的高所の構造物(図示なし)に取り付けられてよい。また、レーダ装置10は、例えば、通行する車両又は歩行者の安全性を高める支援システム又は不審者の侵入防止システム(図示なし)におけるセンサとして利用されてもよい。また、レーダ受信部200の測位出力は、例えば、安全性を高める支援システム又は不審者侵入防止システムにおける制御装置(図示なし)に接続され、警報発呼制御又は異常検出制御に利用されてもよい。なお、レーダ装置10の用途はこれらに限定されず、他の用途に利用されてもよい。
また、物標はレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石などを含む。
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101と、ドップラシフト部104と、送信アンテナ部105と、を有する。なお、レーダ送信信号生成部101と、ドップラシフト部104と、をまとめて、送信回路と称してもよい。
レーダ送信信号生成部101は、レーダ送信信号を生成する。レーダ送信信号生成部101は、例えば、変調信号発生部102及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)103を有する。以下、レーダ送信信号生成部101における各構成部について説明する。
変調信号発生部102は、例えば、のこぎり歯形状の変調信号を周期的に発生させる。
VCO103は、変調信号発生部102から入力される変調信号に基づいて、例えば、図8に示すようなレーダ送信信号(レーダ送信波)として、周波数変調信号(以下、例えば、周波数チャープ信号又はチャープ信号と呼ぶ)をドップラシフト部104、及び、レーダ受信部200(後述するミキサ部204)へ出力する。
なお、以下では、変調信号発生部102は、1回のレーダ測位につき、チャープ信号を、送信周期Tr毎にNc回送信するように、変調信号を発生する。VCO103は、変調信号発生部102の動作に基づいて、チャープ信号を送信周期Tr毎にNc回出力する。
レーダ装置10は、例えば、複数回のレーダ測位を行うことにより、物標位置の時間変動を検出してよい。
また、以下では、Nc回の送信周期Trのうち、それぞれの送信周期をインデックス「m」で表す。ここで、m=1~Ncである。
図9は、レーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号の例を示す。
図9に示すように、チャープ信号に関する変調パラメータには、例えば、中心周波数fc、周波数掃引帯域幅Bw、掃引開始周波数fcstart、掃引終了周波数fcend、周波数掃引時間Tsw、及び、周波数掃引変化率Dmが含まれてよい。なお、Dm=Bw/Tswである。また、Bw=fcend-fcstart及びfc=(fcstart+fcend)/2である。
また、周波数掃引時間Tswは、例えば、後述するレーダ受信部200のAD変換部207におけるA/Dサンプルデータを取り込む時間範囲(又は、レンジゲートと呼ぶ)に対応する。周波数掃引時間Tswは、例えば、図9の(a)に示すようにチャープ信号の全体の区間に設定されてもよく、図9の(b)に示すように、チャープ信号の一部の区間に設定されてもよい。
なお、図8及び図9では、変調周波数が時間の経過とともに徐々に高くなるアップチャープの波形の例を示すが、これに限定されず、変調周波数が時間の経過とともに徐々に低くなるダウンチャープが適用されてもよい。変調周波数がアップチャープ及びダウンチャープの何れであるかに依らず同様な効果を得ることができる。
レーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号は、Nt個のドップラシフト部104にそれぞれ入力される。また、チャープ信号は、レーダ受信部200の各ミキサ部204にもそれぞれ入力される。
第n番目のドップラシフト部104は、例えば、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して規定のドップラシフト量DOPを付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φn(m)を付与する。第n番目のドップラシフト部104は、位相回転Φn(m)が付与されたチャープ信号を、送信アンテナ部105の第n番目の送信アンテナ(例えば、Tx#n)に出力する。ここで、n=1~Ntである。
送信アンテナ部105は、Nt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntを含んでよい。送信アンテナTx#1~Tx#Ntは、少なくとも2種類の異なる主ビーム方向(又は、ビーム方向)の送信アンテナを含むマルチビーム送信レーダを構成してよい。例えば、ドップラシフト部104は、送信アンテナ部105における複数のビーム方向に対応する送信アンテナの構成に基づいて、チャープ信号が送信される送信アンテナ毎に、異なるドップラシフト量を付与する位相回転Φn(m)をチャープ信号に付与して、送信アンテナ部105に出力してよい。これにより、異なるビーム方向の送信アンテナに対応する受信信号間において受信レベル(例えば、反射波の受信電力レベル)が大きく異なる場合(例えば、受信レベル差あるいは受信レベル比が閾値以上の場合)でも、レーダ装置10は、ドップラ多重信号の分離を可能とし、測位性能及びレーダ検出性能の劣化を低減できる(動作例については後述する)。
Nt個のドップラシフト部104からの出力は、規定された送信電力に増幅後に、送信アンテナ部105の各送信アンテナTx#1~Tx#Ntから空間に放射される。
[レーダ受信部200の構成]
図7において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナRx#1~Rx#Naを含む受信アンテナ部202を備える。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR(Constant False Alarm Rate)部210と、ドップラ多重分離部211と、方向推定部212と、を有する。なお、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR部210と、ドップラ多重分離部211と、方向推定部212と、をまとめて、受信回路と称してもよい。なお、受信回路は、送信信号が物標(ターゲット)で反射した反射波信号を用いてターゲットの方向推定を行う。
受信アンテナ部202の受信アンテナRx#1~Rx#Naは、物標(ターゲット)で反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206とを有する。
Na個の受信アンテナRx#1~Rx#Naにおいて受信された各信号は、それぞれNa個の受信無線部203に出力される。また、Na個の受信無線部203からの出力信号は、それぞれNa個の信号処理部206に出力される。
受信無線部203は、ミキサ部204と、LPF(low pass filter)205と、を有する。ミキサ部204は、受信した反射波信号と、レーダ送信信号生成部101から入力される、送信信号であるチャープ信号とのミキシングを行う。受信無線部203は、例えば、ミキサ部204の出力にLPF205を通過させる。これにより、反射波信号の遅延時間に応じた周波数となるビート信号が出力される。例えば、図10に示すように、送信信号(レーダ送信波)である送信チャープ信号(送信周波数変調波)の周波数と、受信信号(レーダ反射波)である受信チャープ信号(受信周波数変調波)の周波数との差分周波数がビート周波数として得られる。
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206は、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、ドップラ解析部209と、を有する。
LPF205から出力された信号(例えば、ビート信号)は、信号処理部206において、AD変換部207によって、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換される。
ビート周波数解析部208は、送信周期Tr毎に、規定された時間範囲(レンジゲート)において得られたNdata個の離散サンプルデータを周波数解析処理(例えば、FFT処理)する。これにより、信号処理部206では、反射波信号(レーダ反射波)の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。なお、FFT処理の際、ビート周波数解析部208は、例えば、Han窓又はHamming窓等の窓関数係数を乗算してもよい。窓関数係数を用いることにより、ビート周波数のピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
なお、Ndataが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理が可能である。このような場合、ゼロ埋めしたデータを含めたデータサイズをNdataと見なすことにより、上記同様に扱ってよい。
ここで、第m番目のチャープパルス送信によって得られる第z番目の信号処理部206におけるビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答を「RFT(fb, m)」で表す。ここで、fbはビート周波数インデックスを表し、FFTのインデックス(ビン番号)に対応する。例えば、fb=0,~,(Ndata/2)-1であり、z=1~Naであり、m=1~NCである。ビート周波数インデックスfbが小さいほど、反射波信号の遅延時間が小さい(例えば、物標との距離が近い)ビート周波数を示す。
また、ビート周波数インデックスfbは、次式(1)を用いて距離情報R(fb)に変換できる。そのため、以下では、ビート周波数インデックスfbを「距離インデックスfb」と呼ぶ。
Figure 2024034190000002
ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。また、式(1)において、C0/(2Bw)は、距離分解能を表す。
第z番目の信号処理部206におけるドップラ解析部209は、チャープ信号のNc回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から入力されるビート周波数応答RFT(fb, 1)、RFT(fb, 2)、~、RFT(fb, Nc))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。
例えば、Ncが2のべき乗値である場合、ドップラ解析部209は、次式(2)のようなドップラ解析においてFFT処理を適用できる。
Figure 2024034190000003
ここで、FFTサイズはNcであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Nc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs= -Nc/2, ~, 0, ~, (Nc/2)-1である。また、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
以下では、一例として、Ncが2のべき乗値である場合について説明する。なお、Ncが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理が可能である。また、ドップラ解析部209は、FFT処理の際に、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することでドップラ周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
以上、信号処理部206の各構成部における処理について説明した。
図7において、CFAR部210は、第1~第Na番目の信号処理部206それぞれのドップラ解析部209の出力を用いて、CFAR処理(例えば、適応的な閾値判定)を行う。例えば、CFAR処理において、送信アンテナ部105から送出されたレーダ送信信号の反射波受信信号の局所的なピークが選択的に抽出され、適応的な閾値判定が行われてよい。CFAR部210は、例えば、局所的なピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出し、ドップラ多重分離部211に出力する。
ドップラ多重分離部211は、例えば、第1~第Naの信号処理部206のドップラ解析部209の出力、及び、CFAR部210の出力を用いて、ドップラ多重を用いて複数の送信アンテナから送出されたレーダ送信信号毎のレーダ反射波受信信号を分離(以下、「ドップラ多重分離」と呼ぶ)する。
なお、ドップラ多重分離部211の動作は、例えば、レーダ送信部100のドップラシフト部104の動作と関連する。同様に、CFAR部210の動作は、例えば、ドップラシフト部104の動作と関連する。以下では、ドップラシフト部104の動作例について説明し、その後、CFAR部210の動作例及びドップラ多重分離部211の動作例について説明する。
[レーダ送信部100におけるドップラシフト部104の動作例]
第1~第Ntのドップラシフト部104は、例えば、それぞれに入力されるレーダ送信信号に対して、互いに異なるドップラシフト量DOPを付与する。レーダ装置10は、ドップラシフト部104によってNt個の送信アンテナのそれぞれに割り当てられるドップラシフト量に対応する位相回転が付与されたレーダ送信信号を、Nt個の送信アンテナから送信(ドップラ多重送信)する。
なお、以下では、レーダ送信信号として、チャープ信号を用いる例について説明する。
例えば、第n番目のドップラシフト部104は、第n番目の送信アンテナTx#nに対して規定のドップラシフト量DOPを付与するために、入力されるチャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ(m)を付与して出力する。ここで、ドップラシフト部104は、チャープ信号が送信される送信アンテナ毎に異なるドップラシフトを付与する位相回転Φ(m)をチャープ信号に付与して出力してよい。ここで、n=1~Ntである。例えば、チャープ信号の送信周期Tr毎に付与する位相回転Φ(m)は、Φ(m)=2πDOP×Trを用いて設定されてよい。
例えば、送信アンテナ部105の送信アンテナTx#1~Tx#Ntは、少なくとも2方向の異なるビーム方向に対応する送信アンテナ(例えば、少なくとも2方向の異なるビームを形成する送信アンテナ)を含むマルチビーム送信レーダを構成する。例えば、ドップラシフト部104は、ビーム方向の異なる送信アンテナTx#1~Tx#Ntの構成を考慮して、チャープ信号が送信される送信アンテナ毎に異なるドップラシフトを付与する位相回転Φ(m)をチャープ信号に付与して出力してよい。これにより、異なるビーム方向の送信アンテナから送信されるチャープ信号に対応する受信信号間において、反射波の受信電力レベルが大きく異なる場合でも、レーダ装置10は、ドップラ多重信号の分離が可能となり、レーダ装置10の測位性能、及び、レーダ検出性能を向上できる。
なお、送信アンテナTx#1~Tx#Ntには、異なるビーム方向に対応する送信アンテナが複数含まれてよい。また、送信アンテナTx#1~Tx#Ntには、同一ビーム方向に対応する送信アンテナが複数含まれてもよい。
レーダ装置10は、例えば、異なるビーム方向の送信アンテナを含むNt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntを用いるマルチビーム送信MIMOレーダであり、Nt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntを用いて不等間隔ドップラ多重送信してよい。
また、レーダ装置10は、例えば、以下の条件1を満たすドップラ多重送信を用いて、Nt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntからレーダ送信信号を同時多重送信してよい。
以下の説明では、マルチビーム送信MIMOレーダにおいて用いる複数のビーム方向(又は、複数のビーム)のうち、第1のビーム方向(又は、ビーム)を「B1」と記載し、第2のビーム方向(又は、ビーム)を「B2」と記載する。また、例えば、第qのビーム方向(又は、ビーム)を「Bq」と記載する。qは、異なるビーム方向数(例えば、マルチビーム数NB)内の整数値である。例えば、マルチビーム数NB=2の場合、q=1又は2である。
また、送信アンテナ数Nt≧3とする。例えば、ドップラ多重数NDDM≧3とする。なお、送信アンテナ数はNt≧3に限定されず、例えば、Nt=2でもよい。なお、Nt=2の場合は、変形例1において後述する。
また、送信アンテナ部105において、ビーム方向B1に対応する送信アンテナの数をNB1とし、ビーム方向B2に対応する送信アンテナの数をNB2とする。この場合、NB1+NB2=Ntとなる。また、レーダ装置10は、例えば、1つの送信アンテナに対して、1つのドップラ多重信号を割り当ててよい。
<条件1>
ビーム方向B1の送信アンテナ及びビーム方向B2の送信アンテナのそれぞれに割り当てられるドップラ多重信号間において、以下の何れか一つの条件を満たす。
(1)各ビーム方向に対応するドップラ多重数が同一であり(例えば、NB1=NB2。ただし、NB1≧2、NB2≧2の場合に考慮し、NNB1=NNB2=1では考慮不要)、各ビーム方向において異なるドップラシフト間隔を含む。
(2)ビーム方向毎のドップラ多重数(又は、送信アンテナ数)が異なる(NB1≠NB2)。
(3)NB1 ≧3、NB2 ≧3の場合に、各ビーム方向に対応するドップラ多重数が同一であり(NB1=NB2)、ビーム方向毎のドップラシフト間隔において、同一のドップラシフト間隔を含む場合に、ドップラシフト間隔の順序が異なる。
また、レーダ装置10は、例えば、更に、以下の条件2を満たすドップラ多重送信を用いて、Nt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntからレーダ送信信号を同時多重送信してよい。
<条件2>
ビーム方向B1の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重(ただし、NB1≧2の場合に考慮し、NNB1=1では考慮不要)、
ビーム方向B2の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重(ただし、NB2≧2の場合に考慮し、NNB2=1では考慮不要)、
となるようにビーム方向B1、B2のそれぞれにドップラ多重信号が割り当てられる。
例えば、条件1の(1)では、ビーム方向B1の送信アンテナによるドップラ多重数NB1とビーム方向B2の送信アンテナによるドップラ多重数NB2とが同じである場合に、ビーム方向B1の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の間隔(ドップラシフト間隔)のうち少なくとも一つは、ビーム方向B2の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の各間隔と異なってよい。条件1の(1)の例として、ビーム方向B1及びビーム方向B2の各送信アンテナに割り当てられるドップラ多重信号間において、最大ドップラシフト間隔が異なるケース、最小ドップラシフト間隔が異なるケース、又は、最大でも最小でもないドップラシフト間隔が異なるケースが挙げられる。
また、例えば、条件1の(2)では、ビーム方向B1の送信アンテナによるドップラ多重数(例えば、送信アンテナ数)NB1と、ビーム方向B2の送信アンテナによるドップラ多重数(例えば、送信アンテナ数)NB2と、が異なってよい。
また、例えば、条件1の(3)では、ビーム方向B1の送信アンテナによるドップラ多重数NB1とビーム方向B2の送信アンテナによるドップラ多重数NB2とが同じであり、ビーム方向B1の送信アンテナとビーム方向B2の送信アンテナとで、割り当てられるドップラシフト量の複数の間隔のそれぞれの値(例えば、ドップラシフト間隔の組み合わせ)が同一である場合、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する複数のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上での順序と、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する複数のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上の順序と、が異なってよい。
例えば、ビーム方向B1の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の間隔をドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列(例えば、第1の配列)に含まれる各間隔の組み合わせと、ビーム方向B2の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の間隔をドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列(例えば、第2の配列)に含まれる各間隔の組み合わせとが一致し、かつ、第1の配列と第2の配列とは、円順列において異なる配列である。
条件1の(3)を満たす場合、ビーム方向B1の送信アンテナのドップラシフト間隔、及び、ビーム方向B2の送信アンテナのドップラシフト間隔は、何れか一方をドップラ周波数領域において巡回シフトしても一致しない。
また、例えば、条件2では、ドップラ周波数軸上で、ビーム方向B1の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の各間隔は不等間隔に設定されてよい。同様に、条件2では、ドップラ周波数軸上で、ビーム方向B2の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の各間隔は不等間隔に設定されてよい。なお、条件2において、ビーム方向B1及びビーム方向B2の何れか一方又は両方において不等間隔ドップラ多重送信が適用されてよい。
このように、マルチビーム送信MIMOレーダであるレーダ装置10による不等間隔ドップラ多重送信では、送信アンテナ部105に含まれる複数の送信アンテナのそれぞれに割り当てられるドップラシフト量の各間隔は、ドップラ周波数軸上で不等間隔である。また、例えば、ビーム方向B1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量のパターン(例えば、ドップラシフト間隔、又は、送信アンテナ数(ドップラ多重数)、ドップラシフト量の間隔のドップラ周波数軸上での順序に関するパターン)と、ビーム方向B2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量のパターンとが異なる(条件1に対応)。
これにより、異なるビーム方向の送信アンテナからの受信信号間において、反射波の受信電力レベルが大きく異なる場合でも、レーダ装置10は、ドップラ多重信号の分離を可能とし、測位性能及びレーダ検出性能の劣化を抑制できる。
また、例えば、送信アンテナ部105に含まれる複数の送信アンテナのうち、複数のビーム方向のそれぞれに対応する送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の各間隔が不等間隔でよい(条件2に対応)。条件2を満たすことにより、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲は、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲となり、等間隔ドップラ多重送信の場合のドップラ検出範囲-1/(2 Nt Tr)≦fd < 1/(2 Nt Tr)よりも拡大できる。
例えば、レーダ装置10によるドップラ多重送信において、条件1及び条件2の双方を満たしてもよく、条件1を満たし、条件2を満たさなくてもよい。条件1を満たし、条件2を満たさないケースとして、以下の3つのケースが挙げられる。
(ケース1)
ケース1は、ビーム方向B1の送信アンテナ間及びビーム方向B2の送信アンテナ間において等間隔ドップラ多重のケースである(ただし、NB1≧2、NB2≧2に考慮し、NNB1=NNB2=1では考慮不要)。ケース1では、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲fdは、物標方向に依存して、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲、-1/(2 NB1Tr)≦fd < 1/(2 NB1Tr)の範囲、又は、-1/(2 NB2Tr)≦fd < 1/(2 NB2Tr)の範囲となる。
(ケース2)
ケース2は、ビーム方向B1の送信アンテナ間は不等間隔ドップラ多重であり、ビーム方向B2の送信アンテナ間は等間隔ドップラ多重であるケースである(ただし、NB1≧2、NB2≧2に考慮し、NNB1=NNB2=1では考慮不要)。ケース2では、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲fdは、物標方向に依存して、-1/(2 Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲、又は、-1/(2 NB2Tr)≦fd < 1/(2 NB2Tr)の範囲となる。
(ケース3)
ケース3は、ビーム方向B1の送信アンテナ間は等間隔ドップラ多重であり、ビーム方向B2の送信アンテナ間は不等間隔ドップラ多重であるケースである(ただし、NB1≧2、NB2≧2に考慮し、NNB1=NNB2=1では考慮不要)。ケース3では、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲fdは、物標方向に依存して、-1/(2 Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲、又は、-1/(2 NB1Tr)≦fd < 1/(2 NB1Tr)の範囲となる。
ケース1~3の何れのケースでも、検出可能なドップラ周波数範囲を、等間隔ドップラ多重の場合のドップラ検出範囲-1/(2 Nt Tr)≦fd < 1/(2 Nt Tr)よりも拡大できる。
なお、ドップラ解析部209が送信周期Trで距離インデックス毎のビート周波数解析部208の出力をドップラ周波数解析することから、サンプリング定理から導出される、折り返しが発生しないドップラ周波数fdの範囲は-1/(2Tr) ≦fd <1/(2Tr)であり、この範囲を超えるドップラ周波数であっても、観測されるドップラ周波数fdの範囲は-1/(2Tr) ≦ fd<1/(2Tr)となる。
例えば、ドップラシフト部104が-1/(2Tr)≦fd <1/(2Tr)の範囲内においてドップラシフト量を付与する場合、Nt個の送信アンテナ(=ドップラ多重数)に対する最大のドップラシフト間隔はΔfdmax=1/(TrNt)=1/(TrNDM)となる。ドップラシフト部104は、例えば、ドップラシフト間隔を、Δfdmaxよりも小さい間隔で設定してよい。このようなドップラシフト量を与える位相回転φは、例えば、-π≦φ<πの範囲で設定可能である。
なお、以下のドップラシフト部104の動作に関する説明において、-π≦φ<πの範囲を超える位相回転φが付与される場合、-πからπの範囲で同位相となる位相回転φ+2παが付与されてよい。ここで、αは、-π≦φ+2πα<πとなる整数値である。
また、ドップラシフト部104が設定するドップラ多重信号に付与するドップラシフト間隔は、例えば、次式(3)に示すΔfdを単位に設定されてよい。ここで、δ>0で、δは正の整数でもよく、正の実数でもよい。δを正の整数とすることで、後述するCFAR部210における処理を簡易化する効果が得られる。なお、以下では、δを正の整数の場合を示すが、これに限定されず、正の実数を用いてもよい。
Figure 2024034190000004
また、式(3)において、δをδ>1となる正の整数とする場合、ドップラ多重信号が割り当てられないドップラシフト量(例えば、以下のドップラシフト量の設定例において用いる図における「×」印で示すドップラシフト量)が複数ある。この場合、例えば、それらのドップラシフト量が等間隔にならないドップラ多重信号の割り当てにより、レーダ装置10が検出可能なドップラ周波数範囲fdを-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲に設定できる。
以下、ドップラシフト部104におけるドップラシフト量の設定例について説明する。なお、各送信アンテナに対するドップラシフト量の割り当ては、送信ドップラ周波数に対し、昇順、降順あるいはランダム的に割り当ててもよく、各設定例は一例にすぎない。
<ドップラシフト量の設定例1>
図11は、送信アンテナ数Nt=3、NB1=2、NB2=1の場合の送信ドップラ周波数に対するドップラシフト量のパターンの設定例を示す。図11において、Tx#1及びTx#2は、それぞれビーム方向B1の送信アンテナ(例えば、送信ビームB1を形成する送信アンテナ)であり、Tx#3はビーム方向B2の送信アンテナ(例えば、送信ビームB2を形成する送信アンテナ)である。
なお、ドップラシフト量の設定例1では、図11に示すように、ドップラシフト部104におけるドップラシフト間隔の基本単位をΔfd=1/(Tr×(NDM+δ))=1/(4Tr)とし、δ=1を設定するが、δの値はこれに限定されない。δは正の整数でもよく、正の実数でもよい。
図11に示す例では、第1~第3のドップラシフト部104(又は、ドップラシフト部104-1、104-2及び104-3)は、以下の動作を行ってよい。
第1のドップラシフト部104は、例えば、第1番目の送信アンテナTx#1に対してドップラシフト量DOP1=-1/(2Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ1(m)=2πDOP1×(m-1)Tr=-π(m-1)を付与して出力する。
第2のドップラシフト部104は、例えば、第2番目の送信アンテナTx#2に対してドップラシフト量DOP2=-1/(4Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ2(m)=2πDOP2×(m-1)Tr=-π(m-1)/2を付与して出力する。
第3のドップラシフト部104は、例えば、第3番目の送信アンテナTx#3に対してドップラシフト量DOP3=0を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ3(m)=2πDOP3×(m-1)Tr=0を付与して出力する。
以下では、Tx#n1及びTx#n2に付与するドップラシフト量の間隔をドップラシフト間隔「Δfd(n1, n2)」と表記する。ここで、Δfd(n1, n2)は、Tx#n1に付与されたドップラシフト量Δfdn1を基準としたTx#n2に付与されたドップラシフト量Δfdn2の間隔(Δfdn2-Δfdn1)を表す。なお、ドップラシフト間隔Δfd(n1, n2)が負値となる場合(例えば、(Δfdn2-Δfdn1)<0となる場合)は、ドップラ解析部209での観測範囲である-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満の範囲での折り返しを考慮して、Δfd(n1, n2)=1/Tr-Δfd(n1, n2)を用いてドップラシフト間隔Δfd(n1, n2)を算出し、正値として表す。これ以降のドップラシフト間隔Δfd(n1, n2)の記載も同様な表記を用いる。
図11において、各送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#3に付与されるドップラシフト量の間隔(ドップラシフト間隔)のパターンは、Δfd(1, 2)=Δfd、Δfd(2, 3)=Δfd、Δfd(3,1)=2Δfdである。よって、図11において送信アンテナ数Nt=3の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(例えば、Δfd(1, 2)=Δfd(2, 3)≠Δfd(3,1))、不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図11において、送信アンテナのうち、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2間のドップラシフト間隔は、Δfd(1, 2)=Δfd、Δfd(2, 1)=3Δfdである。よって、ビーム方向B1の送信アンテナ数NB1=2の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(Δfd(1, 2)≠Δfd(2, 1))、ビーム方向B1の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図11において、送信アンテナのうち、ビーム方向B2の送信アンテナ数は、NB2=1であるため、ビーム方向B2の送信アンテナでは、ドップラ多重送信となる関係とならないケースである。
以上より、図11に示す例は、条件2を満たすドップラシフト量のパターンの設定例である。
また、図11において、NB1(=2)≠NB2(=1)である。例えば、図11に示す例では、ビーム方向B1の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量のパターンと、ビーム方向B2の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量のパターンとが異なる。
よって、図11に示す例は、条件1の(2)を満たすドップラシフト量のパターンの設定例である。
以下、送信アンテナ部105が、図11に示すドップラシフト量の設定に基づくビーム方向B1及びB2の送信アンテナを含み、受信アンテナ部202が、無指向性アンテナ(又は、ビーム方向B1及びビーム方向B2の双方の送信アンテナがカバーする視野角内においてほぼ均一の指向特性のアンテナ)である場合のドップラ解析部209の出力における受信信号の例について説明する。
図12は、或る距離インデックスにおける物標反射波のドップラ解析部209の出力例を示す。例えば、物標反射波には、fdtargetのドップラ周波数が含まれる。したがって、図12に示すように、レーダ装置10は、図11に示すドップラシフト量からfdtarget分のドップラシフトを受けた信号を受信する。
また、図13は、ビーム方向B1(Tx Beam#1)及びビーム方向B2(Tx Beam#2)の送信ビームを形成するマルチビーム送信MIMOレーダ(例えば、レーダ装置10)の一例を示す。
例えば、物標方向が図13に示す物標方向(1)の場合(例えば、ビーム方向B1の周辺に物標が存在する場合)、ビーム方向B1のTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致する。このため、図12の(a)に示すように、レーダ装置10におけるTx#1及びTx#2に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、比較的高くなる。その一方で、物標方向が図13に示す物標方向(1)の場合、ビーム方向B2のTx#3から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致せず、物標方向は送信ビームB2のヌル方向に該当する。このため、図12の(a)に示すように、レーダ装置10におけるTx#3に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、図12の(a)に示すように、Tx#3に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#3のヌル方向のビーム指向特性に依存して、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。
また、例えば、物標方向がビーム方向B1とビーム方向B2の中間的な方向であり、物標方向が、両方のビームの3dB又は6dB程度となるビーム幅が互いに重なるエリア方向である場合(例えば、図13に示す物標方向(2))、図12の(b)に示すように、ビーム方向B1のTx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと、ビーム方向B2のTx#3に対応する受信信号の受信レベルとは同程度である。
また、例えば、物標方向が図13に示す物標方向(3)の場合(例えば、ビーム方向B2の周辺に物標が存在する場合)、ビーム方向B2のTx#3から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致する。このため、図12の(c)に示すように、レーダ装置10におけるTx#3に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、比較的高くなる。その一方で、物標方向が図13に示す物標方向(3)の場合、ビーム方向B1のTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致せず、物標方向は送信ビームB1のヌル方向に該当する。このため、図12の(c)に示すように、レーダ装置10におけるTx#1及びTx#2に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、Tx#3に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、図12の(c)に示すように、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#3に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#1及びTx#2のヌル方向のビーム指向特性に依存して、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。
例えば、図12の(b)のように、物標方向がビーム方向B1とビーム方向B2との中間的な方向(図13に示す物標方向(2))の場合、レーダ装置10は、各ビーム方向の送信アンテナに対応する受信信号を、ほぼ同程度の受信レベルで受信する。したがって、ビーム方向B1及びビーム方向B2のそれぞれの送信アンテナを含むNt本の送信アンテナから送信される信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作に基づいてドップラ多重信号を分離可能となる(既存のドップラ多重信号の分離動作については、例えば、特許文献6や7などに開示されている。以下の実施の形態においても同様である)。
また、図12の(a)に示すように物標方向がビーム方向B1の場合(図13に示す物標方向(1))、及び、図12の(c)に示すように、物標方向がビーム方向B2の場合(図13に示す物標方向(3))、レーダ装置10は、物標方向に依存して、異なるドップラ多重信号(例えば、条件1の(2)を満たすドップラ多重信号)を受信する。例えば、レーダ装置10は、図12の(a)の場合(図13に示す物標方向(1)の場合)には、ドップラシフト間隔Δfd(1, 2)又はΔfd(2, 1)の2つのドップラ周波数成分の信号を受信する。その一方で、例えば、レーダ装置10は、図12の(c)の場合(図13に示す物標方向(3)の場合)には、1つのドップラ周波数成分の信号を受信する。
このように、物標方向がビーム方向B1又はB2の場合、レーダ装置10は、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合と、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合とで、互いに異なるパターンのドップラ周波数成分を含む反射波信号を受信する。
これにより、レーダ装置10は、例えば、検出したドップラ周波数のピーク(例えば、ピークの数)に基づいて、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか(例えば、図12の(c)の状態)、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか(例えば、図12の(a)の状態)を、後述するドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1及びTx#2から送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1及びTx#2に対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。
また、例えば、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3は1アンテナ送信である。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3に対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、ビーム方向B2の受信信号に対するドップラ多重信号の分離処理を行わなくてもよい。
このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
<ドップラシフト量の設定例2>
図14は、送信アンテナ数Nt=4、NB1=2、NB2=2の場合の送信ドップラ周波数に対するドップラシフト量のパターンの設定例を示す。図14において、Tx#1及びTx#2は、それぞれビーム方向B1の送信アンテナ(例えば、送信ビームB1を形成する送信アンテナ)であり、Tx#3及びTx#4は、それぞれビーム方向B2の送信アンテナ(例えば、送信ビームB2を形成する送信アンテナ)である。
なお、ドップラシフト量の設定例2では、図14に示すように、ドップラシフト部104におけるドップラシフト間隔の基本単位をΔfd=1/(Tr×(NDM+δ))=1/(5Tr)とし、δ=1を設定するが、δの値はこれに限定されない。δは正の整数でもよく、正の実数でもよい。
図14に示す例では、第1~第4のドップラシフト部104(又は、ドップラシフト部104-1~104-4)は、以下の動作を行ってよい。
第1のドップラシフト部104は、例えば、第1番目の送信アンテナTx#1に対してドップラシフト量DOP1=-1/(2Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ1(m)=-π(m-1)を付与して出力する。
第2のドップラシフト部104は、例えば、第2番目の送信アンテナTx#2に対してドップラシフト量DOP2=-3/(10Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ2(m)=-3π(m-1)/5を付与して出力する。
第3のドップラシフト部104は、例えば、第3番目の送信アンテナTx#3に対してドップラシフト量DOP3=-1/(10Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ3(m)=-π(m-1)/5を付与して出力する。
第4のドップラシフト部104は、例えば、第4番目の送信アンテナTx#4に対してドップラシフト量DOP4=3/(10Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ4(m)=3π(m-1)/5を付与して出力する。
以下では、Tx#n1及びTx#n2に付与するドップラシフト量の間隔をドップラシフト間隔「Δfd(n1, n2)」と表記する。
図14において、各送信アンテナTx#1~Tx#4に付与されるドップラシフト量の間隔(ドップラシフト間隔)は、Δfd(1, 2)=Δfd、Δfd(2, 3)=Δfd、Δfd(3, 4)=2Δfd、Δfd(4, 1)=Δfdである。よって、図14において送信アンテナ数Nt=4の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(例えば、Δfd(1, 2)=Δfd(2, 3)=Δfd(4, 1)≠Δfd(3, 4))、不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図14において、送信アンテナのうち、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(1, 2)=Δfd、Δfd(2, 1)=4Δfdである。よって、ビーム方向B1の送信アンテナ数NB1=2の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(Δfd(1, 2)≠Δfd(2, 1)、ビーム方向B1の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図14において、送信アンテナのうち、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#4間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(3, 4)=2Δfd、Δfd(4, 3)=3Δfdである。よって、ビーム方向B2の送信アンテナ数NB2=2の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(Δfd(3, 4)≠Δfd(4, 3))、ビーム方向B2の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
以上より、図14に示す例は、条件2を満たすドップラシフト量のパターンの設定例である。
また、図14において、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(1, 2)=Δfd、Δfd(2, 1)=4Δfdであり、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#4間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(3, 4)=2Δfd、Δfd(4, 3)=3Δfdである。よって、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2間のドップラシフト量、及び、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#4間のドップラシフト量には、異なるドップラシフト間隔が含まれる。
例えば、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2間のドップラシフト量の最大DDM間隔はΔfd(2, 1)=4Δfdであり、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#4間のドップラシフト量の最大DDM間隔はΔfd(4, 3)=3Δfdであり、互いに異なる。同様に、例えば、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2間のドップラシフト量の最小DDM間隔はΔfd(1, 2)=Δfdであり、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#4間のドップラシフト量の最小DDM間隔はΔfd(3, 4)=2Δfdであり、互いに異なる。
このように、図14に示す例では、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1及びTx#2によるドップラ多重数NB1と、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3及びTx#4によるドップラ多重数NB2とが同じであり、また、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1及びTx#2と、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3及びTx#4とで、それぞれに割り当てられるドップラシフト量のパターン(例えば、ドップラシフト間隔)が異なる。
以上より、図14に示す例は、条件1の(1)を満たすドップラシフト量のパターンの設定例である。
以下、送信アンテナ部105が、図14に示すドップラシフト量の設定に基づくビーム方向B1及びB2の異なるビーム方向の送信アンテナを含み、受信アンテナ部202が、無指向性アンテナ(又は、ビーム方向B1及びビーム方向B2の双方の送信アンテナがカバーする視野角内においてほぼ均一の指向特性のアンテナ)である場合のドップラ解析部209の出力における受信信号の例について説明する。
図15は、或る距離インデックスにおける物標反射波のドップラ解析部209の出力例を示す。例えば、物標反射波には、fdtargetのドップラ周波数が含まれる。したがって、図15に示すように、レーダ装置10は、図14に示すドップラシフト量からfdtarget分のドップラシフトを受けた信号を受信する。
また、設定例2では、図13と同様のビーム方向B1(Tx Beam#1)及びビーム方向B2(Tx Beam#2)の送信ビームを形成するマルチビーム送信MIMOレーダ(例えば、レーダ装置10)の一例について説明する。
例えば、物標方向が図13に示す物標方向(1)の場合(例えば、ビーム方向B1の周辺に物標が存在する場合)、ビーム方向B1のTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致する。このため、図15の(a)に示すように、レーダ装置10におけるTx#1及びTx#2に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、比較的高くなる。その一方で、物標方向が図13に示す物標方向(1)の場合、ビーム方向B2のTx#3及びTx#4から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致せず、物標方向は送信ビームB2のヌル方向に該当する。このため、図15の(a)に示すように、レーダ装置10におけるTx#3及びTx#4に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、図15の(a)に示すように、Tx#3及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#3及びTx#4のヌル方向のビーム指向特性に依存して、例えば、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。
また、例えば、物標方向がビーム方向B1とビーム方向B2の中間的な方向であり、物標方向が、両方のビームの3dB又は6dB程度となるビーム幅が互いに重なるエリア方向である場合(例えば、図13に示す物標方向(2))、図15の(b)に示すように、ビーム方向B1のTx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと、ビーム方向B2のTx#3及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルとは同程度である。
また、例えば、物標方向が図13に示す物標方向(3)の場合、ビーム方向B2のTx#3及びTx#4から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致する。このため、図15の(c)に示すように、レーダ装置10におけるTx#3及びTx#4に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、比較的高くなる。その一方で、物標方向が図13に示す物標方向(3)の場合、ビーム方向B1のTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致せず、物標方向は送信ビームB1のヌル方向に該当する。このため、図15の(c)に示すように、レーダ装置10におけるTx#1及びTx#2に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、Tx#3及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、図15の(c)に示すように、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#3及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#1及びTx#2のヌル方向のビーム指向特性に依存して、例えば、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。
例えば、図15の(b)のように、物標方向がビーム方向B1とビーム方向B2との中間的な方向(図13に示す物標方向(2))の場合、レーダ装置10は、各ビーム方向の送信アンテナに対応する受信信号を、ほぼ同程度の受信レベルで受信する。したがって、ビーム方向B1及びビーム方向B2のそれぞれの送信アンテナを含むNt本の送信アンテナから送信される信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作に基づいてドップラ多重信号を分離可能となる。
また、図15の(a)に示すように物標方向がビーム方向B1の場合(図13に示す物標方向(1))、及び、図15の(c)に示すように、物標方向がビーム方向B2の場合(図13に示す物標方向(3))、レーダ装置10は、物標方向に依存して、異なるドップラ多重信号(例えば、条件1の(1)を満たすドップラ多重信号)を受信する。例えば、レーダ装置10は、図15の(a)の場合(図13に示す物標方向(1))には、ドップラシフト間隔Δfd(1, 2)又はΔfd(2, 1)の2つのドップラ周波数成分の信号を受信する。その一方で、例えば、レーダ装置10は、図15の(c)の場合(図13に示す物標方向(3)の場合)には、ドップラシフト間隔Δfd(3, 4)又はΔfd(4, 3)の2つのドップラ周波数成分の信号を受信する。
このように、物標方向がビーム方向B1又はB2の場合、レーダ装置10は、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合と、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合とで、互いに異なるパターンのドップラ周波数成分を含む反射波信号を受信する。
これにより、レーダ装置10は、例えば、検出したドップラ周波数のピーク(例えば、ピークの間隔)に基づいて、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか(例えば、図15の(c)の状態)、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか(例えば、図15の(a)の状態)を、後述するドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1及びTx#2から送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1及びTx#2に対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。
同様に、例えば、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3及びTx#4から送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3及びTx#4に対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。
このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
以上、ドップラシフト量の設定例1及び設定例2について説明した。以下、異なるドップラ設定例について説明する。
<ドップラシフト量の設定例3>
図16は、送信アンテナ数Nt=3、NB1=2、NB2=1の場合の送信ドップラ周波数に対するドップラシフト量のパターンの設定例を示す。図16において、Tx#1及びTx#2は、それぞれビーム方向B1の送信アンテナ(例えば、送信ビームB1を形成する送信アンテナ)であり、Tx#3はビーム方向B2の送信アンテナ(例えば、送信ビームB2を形成する送信アンテナ)である。
なお、ドップラシフト量の設定例3では、図16に示すように、ドップラシフト部104におけるドップラシフト間隔の基本単位をΔfd= 1/(Tr×(NDM+δ))=1/(4Tr)とし、δ=1を設定するが、δの値はこれに限定されない。δは正の整数でもよく、正の実数でもよい。
図16に示す例では、第1~第3のドップラシフト部104(又は、ドップラシフト部104-1~104-3)は、以下の動作を行ってよい。
第1のドップラシフト部104は、例えば、第1番目の送信アンテナTx#1に対してドップラシフト量DOP1=-1/(2Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ1(m)=2πDOP1×(m-1)Tr=-π(m-1)を付与して出力する。
第2のドップラシフト部104は、例えば、第2番目の送信アンテナTx#2に対してドップラシフト量DOP2=0を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ2(m)=2πDOP2×(m-1)Tr=0を付与して出力する。
第3のドップラシフト部104は、例えば、第3番目の送信アンテナTx#3に対してドップラシフト量DOP3=-1/(4Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ3(m)=2πDOP3×(m-1)Tr=-π(m-1)/2を付与して出力する。
以下では、Tx#n1及びTx#n2に付与するドップラシフト量の間隔をドップラシフト間隔「Δfd(n1, n2)」と表記する。
図16において、各送信アンテナTx#1~Tx#3に付与されるドップラシフト量の間隔(ドップラシフト間隔)のパターンは、Δfd(1, 3)=Δfd(3, 2)=Δfd、Δfd(2, 1)=2Δfdである。よって、図16において送信アンテナ数Nt=3の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(例えば、Δfd(1, 3)=Δfd(3, 2)≠Δfd(2, 1))、不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図16において、送信アンテナのうち、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(1, 2)=2Δfd、Δfd(2, 1)=2Δfdである。よって、ビーム方向B1の送信アンテナ数NB1=2の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔であり、等間隔ドップラ多重送信(等間隔DDM送信)となる。
また、図16において、送信アンテナのうち、ビーム方向B2の送信アンテナ数は、NB2=1であるため、ビーム方向B2の送信アンテナでは、ドップラ多重送信となる関係とならないケースである。
また、図16において、NB1(=2)≠NB2(=1)である。例えば、図16に示す例では、ビーム方向B1の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量のパターンと、ビーム方向B2の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量のパターンとが異なる。
よって、図16に示す例は、条件1の(2)を満たし、条件2を満たさないドップラシフト量のパターンの設定例である。
例えば、物標方向がビーム方向B1の場合(例えば、図13に示す物標方向(1)の場合)、及び、物標方向がビーム方向B2の場合(例えば、図13に示す物標方向(3)の場合)、設定例1と同様、レーダ装置10は、物標方向に依存して、異なるドップラ多重信号(例えば、条件1の(2)を満たすドップラ多重信号)を受信する。よって、レーダ装置10は、例えば、検出したドップラ周波数のピーク(例えば、ピークの数)に基づいて、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、後述するドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1及びTx#2から送信されるドップラ多重信号は、条件2を満たさず、等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。この場合、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(4Tr)≦fd<1/(4Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
また、例えば、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3は1アンテナ送信である。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3に対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、ビーム方向B2の受信信号に対するドップラ多重信号の分離処理を行わなくてもよい。このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
<ドップラシフト量の設定例4>
図17は、送信アンテナ数Nt=6、NB1=3、NB2=3の場合の送信ドップラ周波数に対するドップラシフト量のパターンの設定例を示す。図17において、Tx#1、Tx#2及びTx#4は、それぞれビーム方向B1の送信アンテナ(例えば、送信ビームB1を形成する送信アンテナ)であり、Tx#3、Tx#5及びTx#6は、それぞれビーム方向B2の送信アンテナ(例えば、送信ビームB2を形成する送信アンテナ)である。
なお、ドップラシフト量の設定例4では、図17に示すように、ドップラシフト部104におけるドップラシフト間隔の基本単位をΔfd=1/(Tr×(NDM+δ))=1/(8Tr)とし、δ=2を設定するが、δの値はこれに限定されない。δは正の整数でもよく、正の実数でもよい。
図17に示す例では、第1~第6のドップラシフト部104(又は、ドップラシフト部104-1~104-6)は、以下の動作を行ってよい。
第1のドップラシフト部104は、例えば、第1番目の送信アンテナTx#1に対してドップラシフト量DOP1=-1/(2Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ1(m)=-π(m-1)を付与して出力する。
第2のドップラシフト部104は、例えば、第2番目の送信アンテナTx#2に対してドップラシフト量DOP2=-3/(8Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ2(m)=-3π(m-1)/4を付与して出力する。
第3のドップラシフト部104は、例えば、第3番目の送信アンテナTx#3に対してドップラシフト量DOP3=-1/(4Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ3(m)=-π(m-1)/2を付与して出力する。
第4のドップラシフト部104は、例えば、第4番目の送信アンテナTx#4に対してドップラシフト量DOP4=-1/(8Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ4(m)=-π(m-1)/4を付与して出力する。
第5のドップラシフト部104は、例えば、第5番目の送信アンテナTx#5に対してドップラシフト量DOP5=0を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ5(m)=0を付与して出力する。
第6のドップラシフト部104は、例えば、第6番目の送信アンテナTx#6に対してドップラシフト量DOP6=1/(8Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ6(m)=π(m-1)/4を付与して出力する。
以下では、Tx#n1及びTx#n2に付与するドップラシフト量の間隔をドップラシフト間隔「Δfd(n1, n2)」と表記する。
図17において、各送信アンテナTx#1~Tx#6に付与されるドップラシフト量の間隔(ドップラシフト間隔)のパターンは、Δfd(1, 2)=Δfd(2, 3)=Δfd(3, 4)=Δfd(4, 5)=Δfd(5, 6)=Δfd、Δfd(6, 1)=3Δfdである。よって、図17において送信アンテナ数Nt=6の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(例えば、Δfd(1, 2)=Δfd(2, 3)=Δfd(3, 4)=Δfd(4, 5)=Δfd(5, 6)≠Δfd(6, 1))、不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図17において、送信アンテナのうち、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4の間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(1, 2)=Δfd、Δfd(2, 4)=2Δfd、Δfd(4, 1)=5Δfdである。よって、ビーム方向B1の送信アンテナ数NB1=3の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(Δfd(1, 2)≠Δfd(2, 4)=Δfd(4, 1))、ビーム方向B1の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図17において、送信アンテナのうち、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6の間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(3, 5)=2Δfd、Δfd(5, 6)=Δfd、Δfd(6, 3)=5Δfdである。よって、ビーム方向B2の送信アンテナ数NB2=3の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(Δfd(3, 5)≠Δfd(5, 6)≠Δfd(6, 3))、ビーム方向B2の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
以上より、図17に示す例は、条件2を満たすドップラシフト量のパターンの設定例である。
また、図17において、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4間のドップラシフト量は、Δfd(1, 2)=Δfd、Δfd(2, 4)=2Δfd、Δfd(4, 1)=5Δfdであり、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6間のドップラシフト量は、Δfd(3, 5)=2Δfd、Δfd(5, 6)=Δfd、Δfd(6, 3)=5Δfdである。このように、図17では、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4によるドップラ多重数NB1と、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6によるドップラ多重数NB2とが同じである。また、図17では、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4間のドップラシフト量、及び、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6間のドップラシフト量には、同一のドップラシフト間隔の組み合わせが含まれるが、ドップラ周波数軸でのビーム方向B1とビーム方向B2との間のドップラシフト間隔の順序が異なる。
例えば、図17において、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4のそれぞれに割り当てられるドップラシフト量の各間隔の順序は、Δfd、2Δfd、5Δfdの順である。また、図17において、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6のそれぞれに割り当てられるドップラシフト量の各間隔の順序は、2Δfd、Δfd、5Δfdの順である。よって、図17では、ビーム方向B1の送信アンテナ及びビーム方向B2の送信アンテナに対して、同一のドップラシフト間隔の組み合わせ(例えば、Δfd、2Δfd、5Δfd)が含まれるが、それらの間隔の順序はビーム方向間で互いに異なる。例えば、図17において、ビーム方向B1の送信アンテナ間のドップラシフト間隔、又は、ビーム方向B2の送信アンテナ間のドップラシフト間隔をドップラ周波数軸上で巡回シフトさせても、異なるビーム方向の間においてドップラシフト量は一致しない。
このように、図17に示す例では、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4に割り当てられるドップラシフト量のパターンと、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6に割り当てられるドップラシフト量のパターンとが異なる。
以上より、図17に示す例は、条件1の(3)を満たすドップラシフト量のパターンの設定例である。
以下、送信アンテナ部105が、図17に示すドップラシフト量の設定に基づくビーム方向B1及びB2の異なるビーム方向の送信アンテナを含み、受信アンテナ部202が、無指向性アンテナ(又は、ビーム方向B1及びビーム方向B2の双方の送信アンテナがカバーする視野角内においてほぼ均一の指向特性のアンテナ)である場合のドップラ解析部209の出力における受信信号の例について説明する。
また、設定例4では、図13と同様のビーム方向B1(Tx Beam#1)及びビーム方向B2(Tx Beam#2)の送信ビームを形成するマルチビーム送信MIMOレーダ(例えば、レーダ装置10)の一例について説明する。
例えば、物標方向が図13に示す物標方向(1)の場合(例えば、ビーム方向B1の周辺に物標が存在する場合)、ビーム方向B1のTx#1、Tx#2及びTx#4から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致する。このため、レーダ装置10におけるTx#1、Tx#2及びTx#4に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、比較的高くなる。その一方で、物標方向が図13に示す物標方向(1)の場合、ビーム方向B2のTx#3、Tx#5及びTx#6から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致せず、物標方向は送信ビームB2のヌル方向に該当する。このため、レーダ装置10におけるTx#3、Tx#5及びTx#6に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、Tx#1、Tx#2及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、Tx#3、Tx#5及びTx#6に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#1、Tx#2及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#3、Tx#5及びTx#6のヌル方向のビーム指向特性に依存して、例えば、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。
また、例えば、物標方向が図13に示す物標方向(3)の場合(例えば、ビーム方向B2の周辺に物標が存在する場合)、ビーム方向B2のTx#3、Tx#5及びTx#6から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致する。このため、レーダ装置10におけるTx#3、Tx#5及びTx#6に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルは、比較的高くなる。その一方で、物標方向が図13に示す物標方向(3)の場合、ビーム方向B1のTx#1、Tx#2及びTx#4から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標方向に一致せず、物標方向は送信ビームB1のヌル方向に該当する。このため、レーダ装置10におけるTx#1、Tx#2及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#3、Tx#5及びTx#6に対応する物標からの反射波の受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、Tx#1、Tx#2及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#3、Tx#5及びTx#6に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#1、Tx#2及びTx#4のヌル方向のビーム指向特性に依存して、例えば、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。
このように、物標方向が信ビーム方向B1の場合(図13に示す物標方向(1))、及び、物標方向がビーム方向B2の場合(図13に示す物標方向(3))、レーダ装置10は、物標方向に依存して、異なるドップラ多重信号(例えば、条件1の(3)を満たすドップラ多重信号)を受信する。よって、物標方向がビーム方向B1又はB2の場合、レーダ装置10は、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合と、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合とで、互いに異なるパターンのドップラ周波数成分を含む反射波信号を受信する。
これにより、レーダ装置10は、例えば、検出したドップラ周波数のピーク(例えば、ピークの間隔の順序)に基づいて、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、後述するドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4から送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B1の送信アンテナTx#1、Tx#2及びTx#4に対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。
同様に、例えば、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6から送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B2の送信アンテナTx#3、Tx#5及びTx#6に対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。
その一方で、例えば、物標方向がビーム方向B1とビーム方向B2の中間的な方向であり、物標方向が、両方のビームの3dB又は6dB程度となるビーム幅が互いに重なるエリア方向である場合(例えば、図13に示す物標方向(2))、ビーム方向B1のTx#1、Tx#2及びTx#4に対応する受信信号の受信レベルと、ビーム方向B2のTx#3、Tx#5及びTx#6に対応する受信信号の受信レベルとは同程度である。そのため、物標方向がビーム方向B1とビーム方向B2との中間的な方向(図13に示す物標方向(2))の場合、レーダ装置10は、各ビーム方向の送信アンテナに対応する受信信号を、ほぼ同程度の受信レベルで受信する。したがって、ビーム方向B1及びビーム方向B2のそれぞれの送信アンテナを含むNt本の送信アンテナから送信される信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作に基づいてドップラ多重信号を分離可能となる。
このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
以上、ドップラシフト量の設定例について説明した。
なお、ドップラシフト量の設定は、上述した設定例1~4に限定されない。例えば、送信アンテナ数Nt(又は、ドップラ多重数)、ビーム方向B1の送信アンテナ数NB1、ビーム方向B2の送信アンテナ数NB2、及び、ドップラシフト間隔の少なくとも一つは他の値でもよい。
また、ドップラシフト部104において、Nt個の送信アンテナから送信されるレーダ送信信号に対してドップラシフト量DOPnを付与する位相回転Φn(m)は、次式(4)のように表されてよい。
Figure 2024034190000005
ここで、Φ0は初期位相であり、ΔΦ0は基準ドップラシフト位相である。
例えば、送信アンテナ数Nt=3を用いてドップラ多重送信する場合、第1番目のドップラシフト部104は、レーダ送信信号生成部101から入力されるレーダ送信信号(例えばチャープ信号)に対して、送信周期Tr毎に、次式(5)のように位相回転Φ1(m)を付与する。第1番目のドップラシフト部104の出力は、例えば、第1番目の送信アンテナ(Tx#1)から出力される。ここで、cp(t)は、送信周期毎のチャープ信号を表す。
Figure 2024034190000006
また、例えば、第2番目のドップラシフト部104は、レーダ送信信号生成部101から入力されるレーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して、送信周期Tr毎に、次式(6)のように位相回転Φ2(m)を付与する。第2番目のドップラシフト部104の出力は、例えば、第2番目の送信アンテナ(Tx#2)から出力される。
Figure 2024034190000007
同様に、例えば、第3番目のドップラシフト部104は、レーダ送信信号生成部101から入力されるレーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して、送信周期Tr毎に、次式(7)のように位相回転Φ3(m)を付与する。第3番目のドップラシフト部104の出力は、例えば、第3番目の送信アンテナ(Tx#3)から出力される。
Figure 2024034190000008
以上、ドップラシフト量の設定例について説明した。
次に、上述したドップラシフト部104の動作に対応する、CFAR部210、及び、ドップラ多重分離部211の動作例について説明する。
[CFAR部210の動作例]
例えば、CFAR部210は、レーダ送信部100からのレーダ送信信号に対する反射波信号を受信するために、以下の動作例1又は動作例2の動作を行ってよい。
なお、以下の説明では、受信アンテナ部202の複数の受信アンテナが、無指向性のアンテナ(又は、複数の異なるビーム方向の送信アンテナがカバーする視野角内においてほぼ均一の指向特性を有するアンテナ)である場合のCFAR部210の動作例について説明する。
<CFAR部210の動作例1>
動作例1では、ドップラシフト部104において、式(3)に示すδの値が正の整数に設定される場合のCFAR部210の動作例について説明する。
この場合、ドップラ多重信号に割り当てられるドップラシフト量の間隔には、Δfdの間隔、又は、Δfdの整数倍の間隔が使用される。そのため、ドップラ多重される各信号は、ドップラ解析部209のドップラ周波数領域の出力において、Δfdの間隔で折り返したように検出され得る。このような性質を利用すると、例えば、CFAR部210の動作を以下のように簡易化できる。
CFAR部210は、例えば、ドップラ解析部209の出力のCFAR処理対象のドップラ周波数範囲のうち、レーダ送信信号にそれぞれ付与されるドップラシフト量の各間隔の単位となる範囲(例えば、Δfdの範囲)毎の反射波信号の受信電力を加算した電力加算値に対して閾値を用いて、ドップラピークを検出する。
例えば、CFAR部210は、第1~第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部209の出力に対して、式(8)に示すように、Δfdの間隔(例えば、NΔfdに対応)で、式(9)に示す電力値PowerqFT(fb, fs)を加算した電力加算値PowerDDM(fb, fsddm)を算出して、CFAR処理を行う。
Figure 2024034190000009
Figure 2024034190000010
ここで、fsddm=-Nc/2,~,-Nc/2+NΔfd-1であり、NΔfdは、Δfdの間隔に含まれるドップラ周波数インデックス数を表し、NΔfd= round(Δfd/(1/(TrNc))である。また、round(x)は実数xを四捨五入して整数値を出力する演算子である。
なお、CFAR処理の動作については、例えば、非特許文献2に開示された動作に基づいてよく、詳細な動作例の説明を省略する。
これにより、CFAR部210におけるCFAR処理対象のドップラ周波数範囲を、全範囲のドップラ周波数インデックス範囲fs(例えば、-Nc/2~Nc/2-1の範囲)から、Δfdの範囲に狭めることができるので、CFAR処理の演算量を、1/(Nt+δ)=1/(NDM+δ)に削減できる。
そして、CFAR部210は、例えば、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfsddm_cfar、及び、受信電力情報(PowerFT(fb_cfar, fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd))をドップラ多重分離部211へ出力する。ここで、ndm =1~NDM+δの整数である。
<CFAR部210の動作例2>
動作例2では、ドップラシフト部104において、式(3)に示すδの値が正の整数でない実数値に設定される場合のCFAR部210の動作例について説明する。
CFAR部210は、例えば、第1~第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部209の出力に基づいて、式(9)の電力加算値を算出し、距離インデックス毎にレーダ送信信号に設定されるドップラシフト間隔に合致する電力ピークを、適応的な閾値処理(CFAR処理)により検出してよい。
そして、CFAR部210は、例えば、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、レーダ送信信号に設定されるドップラシフト間隔に合致する電力ピークにおけるドップラ周波数インデックスfs_cfar(ndm)、及び、ドップラ周波数インデックスfs_cfar(ndm)の受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar(ndm))をドップラ多重分離部211へ出力する。ここで、ndm =1~NDM+δの整数である。
以上、CFAR部210の動作例について説明した。
なお、後述するドップラ多重分離部211の動作例では、一例として、CFAR部210における動作例1による出力を用いる場合について説明するが、これに限定されず、CFAR部210における動作例2による出力を用いてもよい。CFAR部210における動作例2による出力を用いる場合、CFAR部210における動作例1におけるドップラ周波数インデックスfsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfdの代わりに、ドップラ周波数インデックスfs_cfar(ndm)を出力する点が異なるが、これ以外は同様の動作となり、同様の効果が得られる。
[ドップラ多重分離部211の動作例]
ドップラ多重分離部211は、例えば、ドップラシフト部104において、式(3)に示すδの値が正の整数に設定される場合に、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfsddm_cfar、及び、受信電力情報(PowerFT(fb_cfar, fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd))に基づいて、以下の動作を行う。ただし、ndm=1~NDM+δの整数である。
なお、以下の説明では、受信アンテナ部202の複数の受信アンテナが無指向性のアンテナ(又は、ビーム方向B1及びビーム方向B2の送信アンテナがカバーする視野角内においてほぼ均一の指向特性を有するアンテナ)である場合のドップラ多重分離部211の動作例について説明する。受信アンテナ部202の複数の受信アンテナが異なるビーム方向の受信アンテナを含む場合のドップラ多重分離部211の動作例については後述する。
図18は、ドップラ多重分離部211におけるドップラ多重信号の分離動作の例を示すフローチャートである。なお、以下では、物標のドップラ速度は、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲内であることを想定する。
<ステップA-1>
ドップラ多重分離部211は、Nt個(=NDM個)のドップラ多重信号に対するドップラ多重分離処理を行う。
<ステップA-2>
この場合、例えば、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfarにおけるNDM+δ個のドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd)に、NDM個の不等間隔となるドップラ多重信号が含まれることが想定される。
ドップラ多重分離部211は、例えば、ドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)における受信電力(PowerFT(fb_cfar, fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd))(例えば、ndm=1~NDM+δの整数)を比較して、受信電力の上位NDM個のドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)が送信時に付与されるドップラシフト間隔に合致するか否かを判定する(例えば、「NDM個ドップラシフト間隔合致判定」と呼ぶ)。
また、ドップラ多重分離部211は、例えば、受信電力の上位NDM個のドップラ周波数インデックスの受信レベルと、受信電力の上位NDM個のドップラ周波数インデックスと異なるδ個の他のドップラ周波数インデックスの受信レベルとの差(又は、受信レベル比)が大きく異なる(例えば、差分が閾値以上となる、あるいは、受信レベル比が閾値以上となる)か否かを判定する(例えば、「NDM個ドップラ多重信号受信レベル差判定」と呼ぶ)。
ドップラ多重分離部211は、例えば、これらの判定に基づいて-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲におけるドップラ多重信号に対応するドップラ周波数及び送信アンテナを決定する。
なお、不等間隔となるドップラ多重信号を分離するドップラ多重分離部211の動作例は、例えば、特許文献7に開示されるため、ここではその動作の詳細についての説明は省略する。
例えば、ドップラ多重分離部211は、NDM個ドップラシフト間隔合致判定、及び、NDM個ドップラ多重信号受信レベル差判定の双方の条件(例えば、ステップA-2の条件)を満たすか否かを判断する。例えば、NDM個ドップラシフト間隔合致判定において、受信電力の上位NDM個のドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)が送信時に付与されるドップラシフト間隔に合致すると判定され、かつ、NDM個ドップラ多重信号受信レベル差判定において、該当の受信レベル差が閾値以上と判定される場合、ステップA-2の条件を満たす。
ドップラ多重分離部211は、ステップA-2の条件を満たす場合、ステップA-3の処理を行い、ステップA-2の条件を満たさない場合、物標方向がビーム方向B1の場合を想定して、ステップB-1の処理を行ってよい。
<ステップA-3>
ドップラ多重分離部211は、例えば、ドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)のうち、受信レベルの小さいδ個のドップラ周波数インデックスと、受信電力の高い上位NDM個のドップラ周波数インデックスとの関係に基づいて、送信されるNt個のドップラ多重信号のドップラシフト量DOP1, DOP2,~,DOPNtと、ドップラ周波数インデックスとを対応づけて、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1,~,fdemul_Tx#NDM)として、距離インデックスfb_cfarと共に、方向推定部212へ出力する。
ここで、fdemul_Tx#nは、第n番目の送信アンテナ(Tx#n)から送信されるレーダ送信信号に対する反射波信号のドップラ周波数インデックスを示す。
また、ドップラ多重分離部211は、例えば、これらの距離及びドップラ分離インデックスに該当するドップラ解析部209の出力を方向推定部212に出力する。
なお、レーダ送信部100のドップラシフト部104において送信アンテナ部105の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量は既知である。このため、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex(fb_cfar)が示すドップラ周波数と、レーダ送信部100においてに各送信アンテナに付与されるドップラシフト量との差分が、物標のドップラ周波数となる。したがって、ドップラ多重分離部211は、例えば、分離インデックス情報DDM_RXindex(fb_cfar)の代わりに、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定される物標のドップラ周波数を、方向推定部212へ出力してもよい。この場合、方向推定部212は、ドップラ多重分離部211から入力される物標のドップラ周波数と、レーダ送信部100のドップラシフト部104において各送信アンテナに付与されるドップラシフト量とに基づいて、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex(fb_cfar)を生成することにより、同様の動作が可能となる。
<ステップB-1>
ドップラ多重分離部211は、物標方向がビーム方向B1の場合を想定して、NB1個のドップラ多重信号に対するドップラ多重分離処理を行う。
<ステップB-2>
この場合、例えば、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfarにおけるNDM+δ個のドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd)に、ビーム方向B1の送信アンテナからのNB1個のドップラ多重信号が含まれていることが想定される。
ドップラ多重分離部211は、例えば、ドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)における受信電力(PowerFT(fb_cfar, fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd))(例えば、ndm=1~NDM+δの整数)を比較して、受信電力の上位NB1個のドップラ周波数インデックスfsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)が送信時にビーム方向B1の送信アンテナに付与されるドップラシフト間隔に合致するか否かを判定する(例えば、「ビーム方向B1ドップラシフト間隔合致判定」と呼ぶ)。
また、ドップラ多重分離部211は、例えば、受信電力の上位NB1個のドップラ周波数インデックスと、受信電力の上位NB1個のドップラ周波数インデックスと異なる(NDM+δ-NB1)個の他のドップラ周波数インデックスの受信レベルとの差(又は、受信レベル比)が大きく異なる(例えば、差分が閾値以上となる、又は、受信レベル比が閾値以上となる)か否かを判定する(例えば、「ビーム方向B1ドップラ多重信号受信レベル差判定」と呼ぶ)。
ドップラ多重分離部211は、例えば、これらの判定に基づいて-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲におけるドップラ多重信号に対応するドップラ周波数及び送信アンテナを決定する。
なお、不等間隔となるドップラ多重信号を分離するドップラ多重分離部211の動作例は、例えば、特許文献7に開示されるため、ここではその動作の詳細についての説明は省略する。
例えば、ドップラ多重分離部211は、ビーム方向B1ドップラシフト間隔合致判定、及び、ビーム方向B1ドップラ多重信号受信レベル差判定の双方の条件(例えば、ステップB-2の条件)を満たすか否かを判断する。例えば、ビーム方向B1ドップラシフト間隔合致判定において、受信電力の上位NB1個のドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd)が送信時にビーム方向B1の送信アンテナに付与されるドップラシフト間隔に合致すると判定され、かつ、ビーム方向B1ドップラ多重信号受信レベル差判定において、該当の受信レベル差が閾値以上と判定される場合、ステップB-2の条件を満たす。
ドップラ多重分離部211は、ステップB-2の条件を満たす場合、ステップB-3の処理を行い、ステップB-2の条件を満たさない場合、物標方向がビーム方向B2の場合を想定して、ステップC-1の処理を行ってよい。
なお、NB1個=1の場合、ビーム方向B1ドップラシフト間隔合致判定処理は行われなくてもよい。
<ステップB-3>
ドップラ多重分離部211は、例えば、ドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)のうち、受信レベルの小さいNDM+δ-NB1個のドップラ周波数インデックスと、受信電力の高い上位NB1個のドップラ周波数インデックスとの関係に基づいて、送信されるNt個のドップラ多重信号のドップラシフト量DOP1, DOP2,~,DOPNtと、ドップラ周波数インデックスとを対応づけて、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex_B1(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1,~,fdemul_Tx#NDM)として、距離インデックスfb_cfarと共に、方向推定部212へ出力する。
ここで、fdemul_Tx#nは、第n番目の送信アンテナ(Tx#n)から送信されるレーダ送信信号に対する反射波信号のドップラ周波数インデックスを示す。
また、ドップラ多重分離部211は、例えば、これらの距離及びドップラ分離インデックスに該当するドップラ解析部209の出力を方向推定部212に出力する。
なお、レーダ送信部100のドップラシフト部104において送信アンテナ部105の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量は既知である。このため、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex_B1(fb_cfar)が示すドップラ周波数と、レーダ送信部100においてに各送信アンテナに付与されるドップラシフト量との差分が、物標のドップラ周波数となる。したがって、ドップラ多重分離部211は、例えば、分離インデックス情報DDM_RXindex_B1(fb_cfar)の代わりに、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定される物標のドップラ周波数を、方向推定部212へ出力してもよい。この場合、方向推定部212は、ドップラ多重分離部211から入力される物標のドップラ周波数と、レーダ送信部100のドップラシフト部104において各送信アンテナに付与されるドップラシフト量とに基づいて、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex_B1(fb_cfar)を生成することにより、同様の動作が可能となる。
または、ドップラ多重分離部211は、Nt個の送信アンテナのうち、ビーム方向B1のNB1個の送信アンテナからのドップラ多重信号のドップラシフト量と、ドップラ周波数インデックスとを対応づけて、ドップラ多重信号のビーム方向B1分離インデックス情報をDDM_Rxindex_B1(fb_cfar)として、距離インデックスfb_cfarと共に、方向推定部212に出力してもよい。
<ステップC-1>
ドップラ多重分離部211は、物標方向がビーム方向B2の場合を想定して、NB2個のドップラ多重信号に対するドップラ多重分離処理を行う。
<ステップC-2>
この場合、例えば、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfarにおけるNDM+δ個のドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd)に、ビーム方向B2の送信アンテナからのNB2個のドップラ多重信号が含まれていることが想定される。
ドップラ多重分離部211は、例えば、ドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)における受信電力(PowerFT(fb_cfar, fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd))(例えば、ndm=1~NDM+δの整数)を比較して、受信電力の上位NB2個のドップラ周波数インデックスfsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)が送信時にビーム方向B2の送信アンテナに付与されるドップラシフト間隔に合致するか否かを判定する(例えば、「ビーム方向B2ドップラシフト間隔合致判定」と呼ぶ)。
また、ドップラ多重分離部211は、例えば、受信電力の上位NB2個のドップラ周波数インデックスと、受信電力の上位NB2個のドップラ周波数インデックスと異なる(NDM+δ-NB2)個の他のドップラ周波数インデックスの受信レベルとの差(又は、受信レベル比)が大きく異なる(例えば、差分が閾値以上となる、又は、受信レベル比が閾値以上となる)か否かを判定する(例えば、「ビーム方向B2ドップラ多重信号受信レベル差判定」と呼ぶ)。
ドップラ多重分離部211は、例えば、これらの判定に基づいて-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲におけるドップラ周波数及び送信アンテナを決定する。
なお、不等間隔となるドップラ多重信号を分離するドップラ多重分離部211の動作例は、例えば、特許文献7に開示されるため、ここではその動作の詳細についての説明は省略する。
例えば、ドップラ多重分離部211は、ビーム方向B2ドップラシフト間隔合致判定、及び、ビーム方向B2ドップラ多重信号受信レベル差判定の双方の条件(例えば、ステップC-2の条件)を満たすか否かを判断する。例えば、ビーム方向B2ドップラシフト間隔合致判定において、受信電力の上位NB2個のドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd)が送信時にビーム方向B2の送信アンテナに付与されるドップラシフト間隔に合致すると判定され、かつ、ビーム方向B2ドップラ多重信号受信レベル差判定において、該当の受信レベル差が閾値以上と判定される場合、ステップC-2の条件を満たす。
ドップラ多重分離部211は、ステップC-2の条件を満たす場合、ステップC-3の処理を行ってよい。また、ドップラ多重分離部211は、ステップC-2の条件を満たさない場合、受信信号が雑音成分又は干渉成分であると判定し、方向推定部212への出力を行わなくてもよい(ステップD)。
なお、NB2個=1の場合、ビーム方向B2ドップラシフト間隔合致判定処理は行われなくてもよい。
<ステップC-3>
ドップラ多重分離部211は、例えば、ドップラ周波数インデックス(fsddm_cfar+(ndm-1)×NΔfd)のうち、受信レベルの小さいNDM+δ-NB2個のドップラ周波数インデックスと、受信電力の高い上位NB2個のドップラ周波数インデックスとの関係に基づいて、送信されるNt個のドップラ多重信号のドップラシフト量DOP1, DOP2,~,DOPNtと、ドップラ周波数インデックスとを対応づけて、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_B2(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1,~,fdemul_Tx#NDM)として、距離インデックスfb_cfarと共に、方向推定部212へ出力する。
ここで、fdemul_Tx#nは、第n番目の送信アンテナ(Tx#n)から送信されるレーダ送信信号に対する反射波信号のドップラ周波数インデックスを示す。
また、ドップラ多重分離部211は、例えば、これらの距離及びドップラ分離インデックスに該当するドップラ解析部209の出力を方向推定部212に出力する。
なお、レーダ送信部100のドップラシフト部104において送信アンテナ部105の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量は既知である。このため、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex_B2(fb_cfar)が示すドップラ周波数と、レーダ送信部100において各送信アンテナに付与されるドップラシフト量との差分が、物標のドップラ周波数となる。したがって、ドップラ多重分離部211は、例えば、分離インデックス情報DDM_RXindex_B2(fb_cfar)の代わりに、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定される物標のドップラ周波数を、方向推定部212へ出力してもよい。この場合、方向推定部212は、ドップラ多重分離部211から入力される物標のドップラ周波数と、レーダ送信部100のドップラシフト部104において各送信アンテナに付与されるドップラシフト量とに基づいて、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_RXindex_B2(fb_cfar)を生成することにより、同様の動作が可能となる。
また、ドップラ多重分離部211は、Nt個の送信アンテナのうち、ビーム方向B2のNB2個の送信アンテナからのドップラ多重信号のドップラシフト量と、ドップラ周波数インデックスとを対応づけて、ドップラ多重信号のビーム方向B2分離インデックス情報をDDM_Rxindex_B2(fb_cfar)として、距離インデックスfb_cfarと共に、方向推定部212に出力してもよい。
以上、ドップラ多重分離部211の動作例について説明した。
なお、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfsddm_cfar、及び、受信電力情報(PowerFT(fb_cfar, fsddm_cfar +(ndm-1)×NΔfd))が複数ある場合、ドップラ多重分離部211は、それぞれの距離インデックス、ドップラ周波数インデックス及び、受信電力情報に対して、上述したドップラ多重分離の動作を複数回行ってよい。
また、上述したドップラ多重分離部211の動作例では、マルチビーム数NB=2の場合について説明したが、マルチビーム数NBは、これに限定されず、例えば、NBは3以上でもよい。例えば、マルチビーム数NB=3の場合、ドップラ多重分離部211は、図18のステップD(又は、ステップC-2とステップDとの間)において、更に、ビーム方向B1及びB2と異なるビーム方向(又は、重複ビーム範囲あるいは異なるビーム。例えば、ビーム方向B3)に対するドップラ多重分離処理を継続して行ってもよい。これにより、マルチビーム数が更に増加する場合でも同様なドップラ多重分離動作が可能である。
[方向推定部212の動作例]
次に、図7に示す方向推定部212の動作例について説明する。
なお、以下の説明では、受信アンテナ部202の複数の受信アンテナが同一の無指向性のアンテナ又は複数の異なるビーム方向の送信アンテナの視野角内においてほぼ均一な指向特性のアンテナである場合の方向推定部212の動作例について説明する。
方向推定部212は、例えば、ドップラ多重分離部211から入力される情報(例えば、距離インデックスfb_cfar、ドップラ多重信号の分離インデックス情報(DDM_Rxindex(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1, fdemul_Tx#2,~,fdemul_Tx#Nt)又はDDM_Rxindex_Bq(fb_cfar))、及び、これらの距離及びドップラ分離インデックスに対応するドップラ解析部209の出力に基づいて、物標の方向推定処理を行う。ここで、例えば、q=1又は2である。
以下、方向推定部212の動作例1及び動作例2について説明する。
<方向推定部212の動作例1>
例えば、方向推定部212は、距離インデックスfb_cfar及びドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)に基づいて、ドップラ解析部209の出力を抽出し、次式(10)に示すような方向推定部212の仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))を生成し、方向推定処理を行う。
ここで、ドップラ多重分離部211から入力される情報は、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1, fdemul_Tx#2,~,fdemul_Tx#Nt)を含む場合には、Nt個の送信アンテナに対するドップラ分離情報を含む。よって、方向推定部212の仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))は、式(10)に示すように、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。方向推定部212は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))を用いて、物標からの反射波信号に対して各送受アンテナ間の位相差に基づく方向推定を行う。
Figure 2024034190000011
式(10)において、hcal[b]は、送信アンテナ間及び受信アンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値である。b=1~(Nt×Na)の整数である。
方向推定部212は、例えば、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))を用いて、方向推定評価関数PHu, fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))における方位方向θuを所定の角度範囲内で可変して空間プロファイルを算出する。
方向推定部212は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を、到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力してよい。
なお、方向推定評価関数値PHu, fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、仮想受信アンテナ数がNt×Na個であり、等間隔dHで直線状に配置される場合、ビームフォーマ法は次式(11)のように表すことができる。ビームフォーマ法の他にも、Capon、MUSICといった手法も同様に適用可能である。
Figure 2024034190000012
式(11)において、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、式(11)において、a(θu)は、レーダ送信信号の中心周波数fcにおける方位方向θuの到来波に対する仮想受信アレーの方向ベクトルを示し、式(12)で表されるように、Nt×Naの要素を有する列ベクトルである。式(12)において、λは、中心周波数fcの場合のレーダ送信信号(例えば、チャープ信号)の波長であり、λ=C0/fcである。
Figure 2024034190000013
また、方位方向θuは到来方向推定を行う方位範囲内を所定の方位間隔β1で変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定される。
θu=θmin + uβ1、整数u=0~ NU
NU=floor[(θmax-θmin)/β1]+1
ここでfloor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
また、上述した例では、方向推定部212が到来方向推定値として方位方向を算出する例について説明したが、これに限定されず、仰角方向に並んだ仮想受信アンテナを用いることで仰角方向の到来方向推定、又は、矩形の格子状など方位方向及び仰角方向に配置された仮想受信アンテナを用いることにより、方位方向及び仰角方向の到来方向推定も可能である。例えば、方向推定部212は、異なるビーム方向の送信アンテナ毎に、到来方向推定値として方位方向及び仰角方向を算出して、測位出力としてもよい。
以上の動作により、レーダ装置10の方向推定部212は、例えば、測位出力として、距離インデックスfb_cfar、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1,~,fdemul_Tx#NDM)における到来方向推定値を出力してよい。また、方向推定部212は、更に、測位出力として、距離インデックスfb_cfar、及び、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)を出力してよい。
また、方向推定部212は、例えば、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)に基づいて、物標のドップラ周波数推定値を出力してもよい。
また、距離インデックスfb_cfarは、式(1)を用いて距離情報に変換して出力されてもよい。
また、ドップラ多重分離部211から入力される情報(例えば、距離インデックスfb_cfar、及び、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1, fdemul_Tx#2,~,fdemul_Tx#Nt))が複数ある場合、方向推定部212は、それらに対して、上述した処理と同様に到来方向推定値を算出し、測位結果を出力してもよい。
<方向推定部212の動作例2>
例えば、方向推定部212は、距離インデックスfb_cfar及びドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)に基づいて、ドップラ解析部209の出力を抽出し、方向推定部212の仮想受信アレー相関ベクトルhq(fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))を生成し、ビーム方向Bqの送信アンテナに対応する受信信号に基づく方向推定処理を行う。ここで、q=1,…, NB である。例えば、マルチビーム数NB=2の場合、q=1又は2である。以下、NB=2の場合について動作を説明するがこれに限定されない。方向推定部212は、例えば、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)と一致するqに対応するビーム方向Bqの方向推定処理を行う。
例えば、方向推定部212は、ビーム方向Bqの送信アンテナからのレーダ送信信号に対応する受信信号に基づく方向推定処理を行うため、ビーム方向Bqの送信アンテナに対応する受信信号を抽出するBqビームアンテナ抽出ベクトルSPBq、及び、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq (fb_cfar))に基づいて、Bqビームアンテナ仮想受信アレー相関ベクトルhBq(fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar))を生成する。ここで、hBq(fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq (fb_cfar))は、NBq×Na個の要素を有する列ベクトルである。
例えば、ビーム方向B1の送信アンテナがTx#1及びTx#3であり、ビーム方向B2の送信アンテナがTx#2及びTx#4であり、NB1=2、NB2=2、Nt=4であり、受信アンテナ数Na=4の場合、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号を抽出するB1ビームアンテナ抽出ベクトルSPB1、及び、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号を抽出するB2ビームアンテナ抽出ベクトルSPB2は、次式(13)及び式(14)のような16(=Nt×Na)次の列ベクトルで表されてよい。ここで、上付き文字のTはベクトル転置を表す。
Figure 2024034190000014
Figure 2024034190000015
方向推定部212は、例えば、B1ビームアンテナ抽出ベクトルSPB1の要素が1となる要素インデックスを用いて、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex_B1(fb_cfar))から当該要素インデックスの要素成分を抽出し、当該要素インデックスの小さい順に並べた列ベクトルを、B1ビームアンテナによる仮想受信アレー相関ベクトルhB1(fb_cfar, DDM_Rxindex_B1(fb_cfar))として生成する。例えば式(13)に示すB1ビームアンテナ抽出ベクトルSPB1は、第1~第4及び第9~第12番目の要素インデックスにおける要素が1である。この場合、方向推定部212は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex_B1(fb_cfar))から、第1~第4及び第9~第12番目の要素インデックスの順に要素成分を抽出し、B1ビームアンテナ仮想受信アレー相関ベクトルhB1(fb_cfar, DDM_Rxindex_B1(fb_cfar))を生成する。
同様に、方向推定部212は、例えば、B2ビームアンテナ抽出ベクトルSPB2の要素が1となる要素インデックスを用いて、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex_B2(fb_cfar))から当該要素インデックスの要素成分を抽出し、当該要素インデックスの小さい順に並べた列ベクトルを、B2ビームアンテナによる仮想受信アレー相関ベクトルhB2(fb_cfar, DDM_Rxindex_B2(fb_cfar))として生成する。例えば式(14)に示すB2ビームアンテナ抽出ベクトルSPB2は、第5~第8及び第13~第16番目の要素インデックスにおける要素が1である。この場合、方向推定部212は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex_B2(fb_cfar))から、第5~第8及び第13~第16番目の要素インデックスの順に要素成分を抽出し、B2ビームアンテナ仮想受信アレー相関ベクトルhB2(fb_cfar, DDM_Rxindex_B2(fb_cfar))を生成する。
方向推定部212は、例えば、Bqビームアンテナ仮想受信アレー相関ベクトルhBq(fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar))を用いて、方向推定評価関数PH-Bqu, fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar))における方位方向θuを所定の角度範囲内で可変してそれぞれのBqビームによる空間プロファイルを算出する。ここでq=1又は2である。
方向推定部212は、算出したビーム方向Bqの送信アンテナに対応する受信信号に基づく空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向をBqビームによる到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力してよい。
なお、方向推定評価関数値PH-Bqu, fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar))は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
また、上述した例では、方向推定部212が到来方向推定値として方位方向を算出する例について説明したが、これに限定されず、仰角方向に並んだ仮想受信アンテナを用いることで仰角方向の到来方向推定、又は、矩形の格子状など方位方向及び仰角方向に配置された仮想受信アンテナを用いることにより、方位方向及び仰角方向の到来方向推定も可能である。例えば、方向推定部212は、到来方向推定値として方位方向及び仰角方向を算出して、測位出力としてもよい。
以上の動作により、レーダ装置10の方向推定部212は、例えば、測位出力として、距離インデックスfb_cfar、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1,~,fdemul_Tx#NDM)におけるビーム方向Bqの送信アンテナからの受信信号に基づいて、Bqビームによる到来方向推定値を出力してよい。また、方向推定部212は、更に、測位出力として、距離インデックスfb_cfar、及び、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)を出力してよい。
また、方向推定部212は、例えば、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)に基づいて、物標のドップラ周波数推定値を出力してもよい。
また、距離インデックスfb_cfarは、式(1)を用いて距離情報に変換して出力されてもよい。
また、ドップラ多重分離部211から入力される情報(例えば、距離インデックスfb_cfar、及び、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1, fdemul_Tx#2,~,fdemul_Tx#Nt))が複数ある場合、方向推定部212は、それらに対して、上述した処理と同様に到来方向推定値を算出し、測位結果を出力してもよい。
以上、方向推定部212の動作例1及び動作例2について説明した。
次に、MIMOアンテナの配置例、及び、MIMOアンテナの配置例を用いた場合の方向推定部212の動作例について説明する。なお、以下ではMIMOレーダにおける送信アンテナ及び受信アンテナを総称してMIMOアンテナと呼ぶ。
なお、以下の説明において、送信アンテナ部105に含まれる各送信アンテナは、例えば、図19に示すように、複数の平面パッチアンテナを縦方向及び横方向に並べたサブアレー構成でもよい。図19の例では、送信アンテナは、縦方向に8個、横方向に4個の平面パッチアンテナから構成される。例えば、1つの送信アンテナに含まれる各パッチアンテナに対する給電位相を変えることにより、所望の方向に指向性ビームを向けたビームパターン(送信アンテナのエレメントパターン)の形成が可能である。また、例えば、1つの送信アンテナを構成する水平(又は、垂直)方向の平面パッチアンテナ数が多いほど、水平(又は、垂直)方向の指向性ビームを鋭く形成できる。1つの送信アンテナは、例えば、所望のビーム幅を満たすような平面パッチ数から構成されてよい。
なお、1つの送信アンテナの構成は、図19に示す例に限定されず、1つの送信アンテナを構成するパッチアンテナ数(例えば、総数、横方向の数、及び、縦方向の数の少なくとも一つ)は、図19に示す個数に限定されない。また、1つの送信アンテナは、平面パッチアンテナに限定されず、縦方向及び横方向の何れか一方の方向にパッチアンテナを並べた構成でもよい。
[配置例A]
配置例Aは、送信ビーム毎に1個の送信アンテナが対応する場合のMIMOアンテナの配置例である。配置例Aでは、各送信ビームは、1個の送信アンテナによって形成されてよい。
以下では、一例として、送信アンテナ数Nt=2(例えば、Tx#1、Tx#2)、受信アンテナ数Na=3(例えば、Rx#1、Rx#2、Rx#3)のMIMOレーダのアンテナ配置について説明する。
例えば、図20に示すように、送信アンテナTx#1及びTx#2は、送信ビーム方向(又は、指向性ビーム方向)が異なる指向性パターンを有する。図20において、Tx#1はビーム方向B1(ビームB1)の指向性パターンであり、Tx#2はビーム方向B2(ビームB2)の指向性パターンである。配置例Aでは、図20に示すように、ビーム方向B1及びビーム方向B2のそれぞれの指向性パターンを有する送信アンテナ数は1個であり、NB1=1、NB2=1である。
また、以下では、受信アンテナ(例えば、Rx#1、Rx#2、Rx#3)の指向性は、無指向性、又は、複数のビーム方向の送信アンテナ(例えば、Tx#1及びTx#2)の視野角内においてほぼ均一の指向特性でもよい。
例えば、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=2の場合に、レーダ装置10は、ドップラシフト部104においてドップラ多重数NDM=2となるドップラ多重信号を用いてレーダ送信信号を送信する。この場合、例えば、上述したドップラシフト量の設定において、NB1=1、NB2=1のドップラ多重信号の割り当てを適用できる。
また、例えば、送信アンテナTx#1、Tx#2、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置から、仮想受信アンテナ(又は、MIMO仮想アンテナ)の配置VA#1~VA#6が構成される。
ここで、仮想受信アンテナ(仮想受信アレー)の配置は、例えば、送信アンテナ部105を構成する送信アンテナの位置(例えば、給電点の位置)及び受信アンテナ部202を構成する受信アンテナの位置(例えば、給電点の位置)に基づいて、次式(15)のように表されてよい。
Figure 2024034190000016
ここで、送信アンテナ部105を構成する送信アンテナ(例えば、Tx#n)の位置座標を(XT_#n,YT_#n)(例えば、n=1,~, Nt)と表し、受信アンテナ部202を構成する受信アンテナ(例えば、Rx#z)の位置座標を(XR_#z,YR_#z)(例えば、z=1,~, Na)と表し、仮想受信アレーアンテナを構成する仮想アンテナVA#bの位置座標を(XV_#b,YV_#b)(例えば、b=1,~, Nt×Na)と表す。
なお、式(15)では、例えば、VA#1を仮想受信アレーの位置基準(0,0)として表す
以下、MIMOアンテナの配置例A-1、A-2及びA-3について説明する。なお、以下では、XT_#nは水平方向の位置座標を表し、YT_#nは垂直方向の位置座標を表すものとして説明するが、これに限定されない。
<配置例A-1>
図21は、配置例A-1に係るアンテナ配置の例を示す。図21の(a)は、MIMOアンテナ(Tx#1、Tx#2、Rx#1~Rx#3)の配置例を示し、図21の(b)は、図21の(a)のMIMOアンテナ配置によって構成される仮想受信アンテナ(VA#1~VA#6)の配置例を示す。
図21の(a)に示すように、配置例A-1では、受信アンテナRx#1~Rx#3は、水平方向(図21の横方向)にDrの間隔で配置される。また、配置例A-1では、送信アンテナTx#1及びTx#2は、水平方向にDrの間隔(Dt=Dr)で配置され、垂直方向(図21の縦方向)において異なる位置(例えば、Dvの間隔)に配置される。
例えば、図21の(a)に示す送信アンテナTx#1及びTx#2の配置(XT_#1,YT_#1)=(0,0),(XT_#2,YT_#2)=(Dr, DV)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置(XR_#1,YR_#1)=(ax,ay),(XR_#2,YR_#2)=(ax+Dr,ay),(XR_#3,YR_#3)=(ax+2Dr,ay)の場合、仮想受信アンテナを構成する仮想アンテナVA#1~VA#6の位置座標は、式(15)より算出される。ここで、ax及びayは任意の定数である。
例えば、仮想アンテナVA#1~VA#6の位置座標は、図21の(b)に示ように、ax及びayに依らず、(XV_#1,YV_#1)=(0,0)、(XV_#2,YV_#2)=(Dr, 0)、(XV_#3,YV_#3)=(2Dr, 0)、(XV_#4,YV_#4)=(Dr,DV)、(XV_#5,YV_#5)=(2Dr, DV)、(XV_#6,YV_#6)=(3Dr, DV)となる。
例えば、上述した方向推定部212の動作例1では、方向推定部212は、ドップラ多重分離部211から入力される情報がドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)=(fdemul_Tx#1, fdemul_Tx#2,~,fdemul_Tx#Nt)を含む場合、式(10)に示す仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar、DDM_Rxindex(fb_cfar))を生成し、方向推定処理を行う。
ここで、第b番目の仮想アンテナVA#bによる受信信号は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))の第b番目の要素で表される。
また、ドップラ多重分離部211から入力されるドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)は、Nt個の送信アンテナに対するドップラ分離情報を含む。これは、物標方向が、例えば、図20に示す物標方向(2)の場合であり、送信アンテナTx#1及びTx#2のビーム方向が重複する領域に対応するケースである。このケースでは、送信アンテナTx#1及びTx#2の両方からのレーダ送信信号が物標に反射されて受信アンテナRx#1~Rx#3により受信される。よって、このケースでは、方向推定部212は、Tx#1及びTx#2の両方に対応する仮想アンテナVA#1~VA#6の受信信号を用いて方向推定を行うことができる。
図21の(a)のMIMOアンテナ配置において、Tx#1はビーム方向B1の指向特性を有し、Tx#2はビーム方向B2の指向特性を有し、互いに異なるビーム方向に対応する。また、図20に示すように、Tx#1及びTx#2のビーム方向は、ビーム幅程度内の角度領域において重複する。ここで、図21の(a)に示すようにTx#1及びTx#2の配置は、垂直方向にオフセット(オフセット値Dv)されるため、Tx#1及びTx#2のビーム方向の重複領域(例えば、図20に示す物標方向(2))に物標が存在する場合、方向推定部212において水平方向に加え、垂直方向の測角が可能となる配置である。
また、図21の(a)に示すTx#1及びTx#2の配置において、水平方向のオフセットDtは、Dt=Drである。このように、Tx#1及びTx#2は、水平方向において、受信アンテナRx#1~Rx#3の素子間隔Drに等しい素子間隔でオフセットされて配置されるため、図21の(b)に示すように、仮想受信アンテナ配置において、複数の仮想アンテナ(例えば、VA#2とVA#4、又は、VA#3とVA#5)の水平位置が一致し、垂直位置がDv異なる配置が含まれる。このような仮想受信アンテナの配置により、方向推定部212は、例えば、水平位置が一致する2つの仮想アンテナ(例えば、VA#2とVA#4、又は、VA#3とVA#5)間の受信位相差に基づいて、垂直方向の測角を簡易に行うことができる。
なお、方向推定部212の動作例1では、図21において、Dt及びDrは、例えば、1波長以上に設定されてもよい。この場合、方向推定部212における方向推定処理の結果、グレーティングローブが発生し、水平方向の方向推定に曖昧性が生じ得る。方向推定部212は、例えば、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex(fb_cfar)に基づいて、ビーム方向B1とビーム方向B2との重複領域の方向に物標があることを特定することから、グレーティングローブが発生しても、真値方向を検出できる。
また、上述した方向推定部212の動作例2では、方向推定部212は、ドップラ多重分離部211から入力される情報がドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)を含む場合、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq (fb_cfar))とBqビームアンテナ抽出ベクトルSPBqに基づいて、Bqビームアンテナ仮想受信アレー相関ベクトルhBq(fb_cfar, DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar))を生成し、方向推定処理を行う。
ここで、第b番目の仮想アンテナVA#bによる受信信号は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, DDM_Rxindex(fb_cfar))の第b番目の要素で表される。
また、ドップラ多重分離部211から入力されるドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)は、NBq個のビーム方向Bqの送信アンテナに対するドップラ分離情報を含む。これは、物標方向が、例えば、図20に示す物標方向(1)(例えば、ビーム方向B1の場合)又は物標方向(3)(例えば、ビーム方向B2の場合)の場合であり、送信アンテナTx#qのビーム方向の領域に対応するケースである。このケースでは、送信アンテナTx#qからのレーダ送信信号が物標に反射されて受信アンテナRx#1~Rx#3により受信される。
よって、このケースでは、例えば、q=1の場合(物標方向が図20に示す物標方向(1)の場合)、方向推定部212は、Tx#1に対応する仮想アンテナVA#1~VA#3の受信信号を用いて、方向推定を行うことができる。また、例えば、q=2の場合(物標方向が図20に示す物標方向(3)の場合)、方向推定部212は、Tx#2に対応する仮想アンテナVA#4~VA#6の受信信号を用いて、方向推定を行うことができる。
なお、方向推定部212の動作例2では、図21において、Drは、例えば、1波長以上に設定されてもよい。この場合、方向推定部212における方向推定処理の結果、グレーティングローブが発生し、水平方向の方向推定に曖昧性が生じ得る。方向推定部212は、例えば、ドップラ多重信号の分離インデックス情報DDM_Rxindex_Bq(fb_cfar)に基づいて、ビーム方向B1又はビーム方向B2の方向に物標があることを特定することから、グレーティングローブが発生しても、真値方向を検出できる。
<配置例A-2>
図22は、配置例A-2に係るアンテナ配置の例を示す。図22の(a)は、MIMOアンテナ(Tx#1、Tx#2、Rx#1~Rx#3)の配置例を示し、図22の(b)は、図22の(a)のMIMOアンテナ配置によって構成される仮想受信アンテナ(VA#1~VA#6)の配置例を示す。
図22に示すように、配置例A-2では、受信アンテナRx#1~Rx#3は、水平方向(図22の横方向)にDrの間隔で配置される。また、配置例A-2では、送信アンテナTx#1及びTx#2は、水平方向にDtの間隔で配置され、垂直方向(図22の縦方向)において同じ位置に(例えば、オフセット無しで)配置される。また、間隔Dtと間隔Drとの差は、レーダ送信信号の波長λに基づく規定値(例えば、半波長)でよい。
例えば、図22の(a)に示す送信アンテナTx#1及びTx#2の配置(XT_#1,YT_#1)=(0,0),(XT_#2,YT_#2)=(Dt, 0)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置(XR_#1,YR_#1)=(ax,ay),(XR_#2,YR_#2)=(ax+Dr,ay),(XR_#3,YR_#3)=(ax+2Dr,ay)の場合、仮想受信アンテナを構成する仮想アンテナVA#1~VA#6の位置座標は、式(15)より算出される。ここで、ax及びayは任意の定数である。
例えば、仮想アンテナVA#1~VA#6の位置座標は、図22の(b)に示ように、ax及びayに依らず、(XV_#1,YV_#1)=(0,0)、(XV_#2,YV_#2)=(Dr, 0)、(XV_#3,YV_#3)=(2Dr, 0)、(XV_#4,YV_#4)=(Dt,0)、(XV_#5,YV_#5)=( Dt+Dr, 0)、(XV_#6,YV_#6)=(Dt+2Dr, 0)となる。
例えば、上述した方向推定部212の動作例1は、物標方向が図20に示す物標方向(2)の場合であり、送信アンテナTx#1及びTx#2のビーム方向が重複する領域に対応するケースである。このケースでは、送信アンテナTx#1及びTx#2の両方からのレーダ送信信号が物標に反射されて受信アンテナRx#1~Rx#3により受信される。よって、このケースでは、方向推定部212は、Tx#1及びTx#2の両方に対応する仮想アンテナVA#1~VA#6の受信信号を用いて方向推定を行うことができる。
図22の(a)のMIMOアンテナ配置において、Tx#1はビーム方向B1の指向特性を有し、Tx#2はビーム方向B2の指向特性を有し、互いに異なるビーム方向に対応する。また、図20に示すように、Tx#1及びTx#2のビーム方向は、ビーム幅程度内の角度領域において重複する。ここで、図22の(a)に示すように、Tx#1及びTx#2の配置は、水平方向にオフセット(オフセット値Dt)されるため、図22の(b)に示すように、仮想受信アンテナ配置において、水平方向の開口長が拡大する。このため、Tx#1及びTx#2のビーム方向の重複領域(例えば、図20に示す物標方向(2))に物標が存在する場合、方向推定部212の方向推定処理において角度分解能が向上する。
また、図22の(b)において、例えば、仮想アンテナVA#2とVA#4との間隔、及び、仮想アンテナVA#3とVA#5との間隔は、Dt>Drの場合、Dt-Drであり、Dr>Dtの場合、Dr-Dtとなる。例えば、送信アンテナ間隔Dtと受信アンテナ間隔Drとの間の差分の絶対値|Dt-Dr|が半波長に設定される場合、レーダ装置10では、±90°範囲の視野角内でグレーティングローブを抑圧できる。例えば、Dt=1.5λ、Dr=1λの場合、|Dt-Dr|=0.5λとなる。
なお、DtとDrとの差分|Dt-Dr|(規定値)が半波長(0.5λ)に設定される場合について説明したが、これに限定されず、例えば、|Dt-Dr|は、0.45λ~0.8λ程度の範囲の何れかの値(例えば、レーダ送信信号の波長の0.5倍から0.8倍の範囲の何れかの値)に設定されてもよい。
例えば、|Dt-Dr|は、レーダ装置10の水平方向の視野角に応じて設定されてよく、視野角内でのグレーティングローブを抑圧できる。例えば、水平方向の視野角が±70度~±90度の範囲程度の広視野角の場合、|Dt-Dr|は0.5λ程度に設定されてもよい。または、水平方向の視野角が±20度~±40度の範囲程度の狭視野角の場合、|Dt-Dr|は、より広い間隔として、例えば、0.7λ程度に設定されてもよい。
なお、配置例A-2、及び、他の配置例におけるDvは、例えば、それぞれ0.45λ~0.8λ程度の値(例えば、レーダ送信信号の波長の0.5倍から0.8倍の範囲の何れかの値)に設定されてもよい。Dvは、例えば、レーダ装置10の垂直方向の視野角に応じて設定されてよい。例えば、垂直方向の視野角が±70度~±90度の範囲程度の広視野角の場合、Dvは0.5λ程度に設定されてもよい。または、垂直方向の視野角が±20度~±40度の範囲程度の狭視野角の場合、Dvはより広い間隔として、例えば、0.7λ程度に設定されてもよい。
ここで、λはレーダ送信信号のキャリア周波数の波長を表す。例えば、レーダ送信信号としてチャープ信号を用いる場合、λは、チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数の波長である。
また、上述した方向推定部212の動作例2は、物標方向が、例えば、図20に示す物標方向(1)又は物標方向(3)の場合であり、送信アンテナTx#qのビーム方向の領域に対応するケースである。このケースでは、送信アンテナTx#qからのレーダ送信信号が物標に反射されて受信アンテナRx#1~Rx#3により受信される。
よって、このケースでは、例えば、q=1の場合(物標方向が図20に示す物標方向(1)の場合)、方向推定部212は、Tx#1に対応する仮想アンテナVA#1~VA#3の受信信号を用いて、方向推定を行うことができる。また、例えば、q=2の場合(物標方向が図20に示す物標方向(3)の場合)、方向推定部212は、Tx#2に対応する仮想アンテナVA#4~VA#6の受信信号を用いて、方向推定を行うことができる。配置例A-2における方向推定部212の動作例2のケースでは、配置例A-1と同様の配置となり、配置例A-1と同様の効果が得られる。
<配置例A-3>
図23は、配置例A-3に係るアンテナ配置の例を示す。図23の(a)は、MIMOアンテナ(Tx#1、Tx#2、Rx#1~Rx#3)の配置例を示し、図23の(b)は、図23の(a)のMIMOアンテナ配置によって構成される仮想受信アンテナ(VA#1~VA#6)の配置例を示す。
図23に示すように、配置例A-3では、受信アンテナRx#1~Rx#3は、水平方向(図23の横方向)にDrの間隔で配置される。また、配置例A-3では、送信アンテナTx#1及びTx#2は、水平方向にDtの間隔で配置され、垂直方向(図23の縦方向)において異なる位置に(例えば、オフセットDvで)配置される。また、間隔Dtと間隔Drとの差は、レーダ送信信号の波長λに基づく規定値(例えば、半波長)でよい。
例えば、図23の(a)に示す送信アンテナTx#1及びTx#2の配置(XT_#1,YT_#1)=(0,0),(XT_#2,YT_#2)=(Dt, Dv)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置(XR_#1,YR_#1)=(ax,ay),(XR_#2,YR_#2)=(ax+Dr,ay),(XR_#3,YR_#3)=(ax+2Dr,ay)の場合、仮想受信アンテナを構成する仮想アンテナVA#1~VA#6の位置座標は、式(15)より算出される。ここで、ax及びayは任意の定数である。
例えば、仮想アンテナVA#1~VA#6の位置座標は、図23の(b)に示ように、ax及びayに依らず、(XV_#1,YV_#1)=(0,0)、(XV_#2,YV_#2)=(Dr, 0)、(XV_#3,YV_#3)=(2Dr, 0)、(XV_#4,YV_#4)=(Dt, Dv)、(XV_#5,YV_#5)=(Dt+Dr, Dv)、(XV_#6,YV_#6)=(Dt+2Dr, Dv)となる。
例えば、上述した方向推定部212の動作例1は、物標方向が図20に示す物標方向(2)の場合であり、送信アンテナTx#1及びTx#2のビーム方向が重複する領域に対応するケースである。このケースでは、送信アンテナTx#1及びTx#2の両方からのレーダ送信信号が物標に反射されて受信アンテナRx#1~Rx#3により受信される。よって、このケースでは、方向推定部212は、Tx#1及びTx#2の両方に対応する仮想アンテナVA#1~VA#6の受信信号を用いて、方向推定を行うことができる。
図23の(a)のMIMOアンテナ配置において、Tx#1はビーム方向B1の指向特性を有し、Tx#2はビーム方向B2の指向特性を有し、互いに異なるビーム方向に対応する。また、図20に示すように、Tx#1及びTx#2のビーム方向は、ビーム幅程度内の角度領域において重複する。ここで、図23の(a)に示すように、Tx#1及びTx#2の配置は、配置例A-1と同様、垂直方向にオフセット(オフセット値Dv)されるため、Tx#1及びTx#2の重複領域(例えば、図20に示す物標方向(2))に物標が存在する場合、方向推定部212において水平方向に加え、垂直方向の測角が可能となる配置である。
また、図23の(a)に示すように、Tx#1及びTx#2の配置は、配置例A-2と同様、水平方向にオフセット(オフセット値Dt)されるため、図23の(b)に示すように、仮想受信アンテナ配置において、水平方向の開口長が拡大する。このため、Tx#1及びTx#2のビーム方向の重複領域(例えば、図20に示す物標方向(2))に物標が存在する場合、方向推定部212の方向推定処理において角度分解能が向上する。
また、図23の(b)において、例えば、仮想アンテナVA#2とVA#4との間隔、及び、仮想アンテナVA#3とVA#5との間隔は、Dt>Drの場合、Dt-Drであり、Dr>Dtの場合、Dr-Dtとなる。例えば、送信アンテナ間隔Dtと受信アンテナ間隔Drとの間の差分の絶対値|Dt-Dr|が半波長に設定される場合、レーダ装置10では、±90°範囲の視野角内でグレーティングローブを抑圧できる。例えば、Dt=1.5λ、Dr=λの場合、|Dt-Dr|=0.5λとなる。例えば、レーダ装置10の測角検出での視野角が±90°範囲より狭い場合、|Dt-Dr|を0.5~0.8波長程度に設定することで、レーダ装置10は、視野角内でのグレーティングローブを抑圧することができる。
また、上述した方向推定部212の動作例2は、物標方向が、例えば、図20に示す物標方向(1)又は物標方向(3)の場合であり、送信アンテナTx#qのビーム方向の領域に対応するケースである。このケースでは、送信アンテナTx#qからのレーダ送信信号が物標に反射されて受信アンテナRx#1~Rx#3により受信される。
よって、このケースでは、例えば、q=1の場合(物標方向が図20に示す物標方向(1)の場合)、方向推定部212は、Tx#1に対応する仮想アンテナVA#1~VA#3の受信信号を用いて、方向推定を行うことができる。また、例えば、q=2の場合(物標方向が図20に示す物標方向(3)の場合)、方向推定部212は、Tx#2に対応する仮想アンテナVA#4~VA#6の受信信号を用いて、方向推定を行うことができる。配置例A-3における方向推定部212の動作例2のケースでは、配置例A-1と同様の配置となり、配置例A-1と同様の効果が得られる。
以上、配置例Aについて説明した。
[配置例B]
配置例Bは、送信ビーム毎に2個以上の送信アンテナが対応する場合のMIMOアンテナ配置例である。配置例Bでは、各送信ビームは、2個以上の送信アンテナによって形成されてよい。
以下では、一例として、送信アンテナ数Nt=4(例えば、Tx#1、Tx#2、Tx#3、Tx#4)、受信アンテナ数Na=3(例えば、Rx#1、Rx#2、Rx#3)のMIMOレーダのアンテナ配置について説明する。
例えば、図24に示すように、送信アンテナTx#1、Tx#3と、送信アンテナTx#2、Tx#4とは、送信ビーム方向(又は、指向性ビーム方向)が異なる指向性パターンを有する。図25において、Tx#1及びTx#3はビーム方向B1(ビームB1)の指向性パターンであり、Tx#2及びTx#4はビーム方向B2(ビームB2)の指向性パターンである。配置例Bでは、図24に示すように、ビーム方向B1及びビーム方向B2のそれぞれの指向性パターンを有する送信アンテナ数は2個であり、NB1=2、NB2=2である。
また、以下では、受信アンテナ(例えば、Rx#1、Rx#2、Rx#3)の指向性は、無指向性、又は、複数のビーム方向の送信アンテナ(例えば、Tx#1~Tx#4)の視野角内においてほぼ均一の指向特性でもよい。
例えば、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=4の場合に、レーダ装置10は、ドップラシフト部104においてドップラ多重数NDM=4となるドップラ多重信号を用いてレーダ送信信号を送信する。この場合、例えば、上述したドップラシフト量の設定において、NB1=2、NB2=2のドップラ多重信号の割り当てを適用できる。
また、例えば、送信アンテナTx#1~Tx#4、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置から、仮想受信アンテナ(又は、MIMO仮想アンテナ)の配置VA#1~VA#12が構成される(図示せず)。
配置例Bでは、配置例AのMIMOアンテナ配置例に基づいて、送信ビーム毎の送信アンテナが、水平方向又は垂直方向にオフセットした位置、又は、水平方向及び垂直方向の双方にオフセット(例えば、斜め方向にオフセット)した位置に更に配置されてよい。
図25は、配置例Bに係るMIMOアンテナ(Tx#1~Tx#4、Rx#1~Rx#3)の配置例を示す。
図25の(a)は、配置例A-1(例えば、図21の(a))のMIMOアンテナ配置に基づいて、送信ビーム(例えば、ビーム方向B1及びB2)のそれぞれにおいて、送信アンテナ(例えば、Tx#3及びTx#4)を水平方向に追加拡張した配置例を示す。
また、図25の(b)は、配置例A-1(例えば、図21の(a))のMIMOアンテナ配置に基づいて、送信ビーム(例えば、ビーム方向B1及びB2)のそれぞれにおいて、送信アンテナ(例えば、Tx#3及びTx#4)を垂直方向に追加拡張した配置例を示す。
例えば、図25の(a)及び図25の(b)において、送信アンテナTx#1、Tx#2、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置は、図21のMIMOアンテナ配置と同様である。
図25の(a)では、送信アンテナTx#1に対して、送信アンテナTx#3は、受信アンテナの水平方向の開口長(例えば、2Dr)よりも大きい間隔分(例えば、3Dr)、水平方向にオフセットされて配置される。同様に、図25の(a)では、送信アンテナTx#2に対して、送信アンテナTx#4は、受信アンテナの水平方向の開口長(例えば、2Dr)よりも大きい間隔分(例えば、3Dr)、水平方向にオフセットされて配置される。
図25の(a)のような配置により、仮想受信アンテナ(図示せず)の開口長が拡大するため、レーダ装置10における水平方向の角度分解能が向上する。
また、図25の(b)では、送信アンテナTx#1に対して、送信アンテナTx#3は、垂直方向に2Dvオフセットされて配置される。同様に、図25の(b)では、送信アンテナTx#2に対して、送信アンテナTx#4は、垂直方向に2Dvオフセットされて配置される。
図25の(b)のような配置により、仮想受信アンテナの垂直方向の開口長が拡大するため、例えば、方向推定部212の動作例1において、垂直方向の角度分解能が向上する。また、図25の(b)のような配置により、例えば、方向推定部212の動作例2において、物標方向が図24に示す物標方向(1)の場合でも、Tx#1及びTx#3の配置が垂直方向にオフセットされているため、方向推定部212は、水平方向に加え、垂直方向の測角が可能となる。同様に、物標方向が図24に示す物標方向(3)の場合でも、Tx#2及びTx#4の配置が垂直方向にオフセットされているため、方向推定部212は、水平方向に加え、垂直方向の測角が可能となる。
なお、ビーム方向及び送信アンテナの配置は、図24及び図25に示す例に限定されない。例えば、図25の(a)のTx#2とTx#3の配置を入れ替えてもよく、図25の(b)のTx#2とTx#3の配置を入れ替えてもよい。
また、各ビーム方向の送信アンテナ数は2個に限定されず、複数の異なるビーム方向うち、少なくとも一つのビーム方向の送信アンテナの数は、3個以上でもよい。
以上、配置例Bについて説明した。
なお、配置例A及び配置例Bでは、受信アンテナ(Rx#1~Rx#3)の配置について、垂直方向の位置を同じ位置とし、水平方向の配置を等間隔でDr間隔ずつオフセットさせた配置の場合について説明したが、受信アンテナの配置はこれに限定されない。例えば、受信アンテナの水平方向の配置において、受信アンテナ間の間隔は不等間隔でもよい。
また、例えば、受信アンテナの垂直方向の位置は、すべて同一の位置とせずに、一部の受信アンテナの垂直方向の位置をオフセットさせた配置でもよい。例えば、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置を、(XR_#1,YR_#1)=(ax,ay),(XR_#2,YR_#2)=(ax+Dr,ay),(XR_#3,YR_#3)=(ax+2Dr,ay+Dv_offset)のようにする。この場合、Rx#3は、垂直方向において、Rx#1,#2の垂直方向の位置に対し、Dv_offsetずれて(オフセットされて、又は、異なる位置に)配置される。このように、受信アンテナの垂直方向の位置をすべて同一の位置とせず、一部の受信アンテナの垂直方向の位置をオフセットさせた配置により、例えば、方向推定部212の動作例2でも、方向推定部212は、水平方向に加え、垂直方向の測角が可能となる。
また、例えば、受信アンテナの垂直方向の位置は、すべて同一の位置とせずに、一部の受信アンテナの垂直方向の位置をオフセットさせ、さらに、水平方向の位置を他の受信アンテナの水平方向の位置と同一にさせた配置でもよい。例えば、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置を、(XR_#1,YR_#1)=(ax,ay),(XR_#2,YR_#2)=(ax+Dr,ay),(XR_#3,YR_#3)=(ax+Dr,ay+Dv_offset)のようにする。この場合、Rx#3は、垂直方向において、Rx#1,#2の垂直方向の位置に対し、Dv_offsetずれて(オフセットされて)配置され、かつ、水平方向において、Rx#2の水平方向の位置と同一位置に配置される。
このように、受信アンテナの垂直方向の位置をすべて同一の位置とせず、一部の受信アンテナの垂直方向の位置をオフセットさせ、さらに、水平方向の位置を他の受信アンテナの水平方向の位置と同一にさせた配置により、例えば、方向推定部212の動作例2でも、方向推定部212は、水平方向に加え、垂直方向の測角が可能となる。
ここで、ax及びayは任意の定数であり、Dv_offsetは、例えば、0.45λ~0.8λ程度の値(例えば、レーダ送信信号の波長の0.5倍から0.8倍の範囲の何れかの値)に設定されてもよい。Dv_offsetは、例えば、レーダ装置10の垂直方向の視野角に応じて設定されてよい。例えば、垂直方向の視野角が±70度~±90度の範囲程度の広視野角の場合、Dv_offsetは0.5λ程度に設定されてもよい。または、垂直方向の視野角が±20度~±40度の範囲程度の狭視野角の場合、Dv_offsetはより広い間隔として、例えば、0.7λ程度に設定されてもよい。このように、受信アンテナの垂直方向の位置をすべて同一の位置とせず、一部の受信アンテナの垂直方向の位置をオフセットさせた配置により、例えば、方向推定部212の動作例2でも、方向推定部212は、水平方向に加え、垂直方向の測角が可能となる。また、例えば、受信アンテナ数は3個に限定されず、2個でもよく、4個以上でもよい。
また、配置例A及び配置例Bにおいて説明したMIMOアンテナ配置は一例であり、限定されない。例えば、配置例A及び配置例Bにおいて説明したMIMOアンテナ配置に対して、他のアンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方)が更に配置される構成でもよい。また、配置例A及び配置例Bにおいて、水平方向と垂直方向とを入れ替えたアンテナ配置でもよい。また、配置例A及び配置例Bにおいて説明した送信アンテナ間の間隔を受信アンテナ間の間隔に適用し、配置例A及び配置例Bにおいて説明した受信アンテナ間の間隔を送信アンテナ間の間隔に適用してもよい。
また、配置例Aと配置例Bとを組み合わせたMIMOアンテナ配置でもよい。例えば、複数の異なるビーム方向の何れか一方に対応する送信アンテナ(アンテナ数1個)は、配置例Aに基づき、複数の異なるビーム方向の他方に対応する送信アンテナ(アンテナ数2個以上)は、配置例Bに基づいてもよい。
方向推定部212は、以上のような動作により、マルチビーム送信において、物標方向に応じてドップラ多重分離部211の分離動作が異なることに対応して方向推定処理を行うことができる。
例えば、方向推定部212は、ドップラ多重分離部211が全ての送信アンテナからのドップラ多重信号を分離可能である場合(例えば、物標方向(2)の場合)には、Nt×Na個の仮想受信アンテナの受信信号を用いて方向推定を行うことにより、測角精度及び測角分解能を向上できる。
また、例えば、方向推定部212は、ドップラ多重分離部211がビーム方向Bqの送信アンテナからのドップラ多重信号を分離可能である場合(例えば、物標方向(1)又は(3)の場合)には、NBq×Na個の仮想受信アンテナの受信信号を用いて方向推定を行うことにより、測角精度及び測角分解能を向上できる。
以上、方向推定部212の動作例について説明した。
以上のように本実施の形態では、レーダ装置10は、不等間隔ドップラ多重を用いるマルチビーム送信MIMOレーダにおいて、ドップラシフト部104において少なくとも条件1を満たすマルチビーム間で異なるドップラ多重信号(例えば、異なるドップラシフト量のパターン)を割り当てる。これにより、レーダ装置10は、異なる指向特性を有する送信アンテナに対応する反射波間の受信レベル差が大きい場合でも、ドップラ多重分離部211において送信アンテナを判別でき、ドップラ多重分離が可能となる。よって、本実施の形態によれば、物標検出性能の劣化、又は、ドップラ周波数の誤推定又は測角性能の劣化を抑制できる。
また、例えば、ドップラシフト部104におけるドップラ多重信号の割り当てにおいて、上述した条件1及び条件2を満たす場合、レーダ装置10では、異なる指向特性を有する送信アンテナに対応する反射波間の受信レベル差が大きい場合でも、検出可能なドップラ周波数範囲fdが-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲となり、1送信アンテナを用いる場合と同様のドップラ周波数範囲に拡大できる。
また、本実施の形態におけるレーダ装置10では、マルチビーム送受信MIMOレーダ構成として、指向性を有する受信アンテナ(又は、受信アレーアンテナを用いた指向性受信処理)を用いたビーム方向判定処理を用いずに、ドップラ多重分離が可能となるため、受信処理演算量を低減できる。
また、例えば、マルチビーム送受信MIMOレーダ構成として、受信アンテナにビーム方向が異なる受信アンテナを用いる場合、測角時に利用可能な受信アンテナ数が、物標方向によっては減少し得るため、レーダ装置10の測角精度又は測角分解能が低下し得る。本実施の形態では、例えば、指向性を有する受信アンテナを用いずに、物標方向に依らずドップラ多重分離が可能となるため、測角精度及び測角分解能の低下を抑制できる。
よって、本実施の形態によれば、不等間隔ドップラ多重送信を用いたマルチビーム送信MIMOレーダの検出性能を向上できる。
(変形例1)
変形例1では、マルチビーム送信において、異なるビーム方向のそれぞれに対応する送信アンテナ数が1個の場合(例えば、NB1=NB2=1の場合であり、Nt=2の場合)について説明する。
例えば、ドップラシフト部104は、複数の送信アンテナのうち何れか1つの送信アンテナに対して、複数のドップラ多重信号を発生させる位相回転Φn(m)を付与してもよい。例えば、複数の送信アンテナのうち何れか1つの送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の数は複数設定されてよい。
以下では、NBq=1個のビーム方向Bqの送信アンテナに対して、ドップラシフト部104において発生させるドップラ多重信号の数を「ドップラ多重信号数NDOP(Bq)」と表記する。ここで、q=1又は2である。一例として、ドップラシフト量の設定例1におけるビーム方向B2の送信アンテナ数はNB2=1であり、ドップラ多重信号数はNDOP(B2)=1である。
例えば、以下の条件1の(4)を満たすことにより、条件1の(2)に準じた効果を得ることができる。
<条件1>
(4)ビーム方向毎のドップラ多重信号数が異なる(NDOP(B1)≠NDOP(B2)。ただし、NB1=NB2=1の場合)。
例えば、ビーム方向B1の送信アンテナに対して発生させるドップラ多重信号数(又は、割り当てられるドップラシフト量の数)NDOP(B1)と、ビーム方向B2の送信アンテナに対して発生させるドップラ多重信号数(又は、割り当てられるドップラシフト量の数)NDOP(B2)とが異なってよい。条件1の(4)の設定により、送信アンテナ数Nt=2であり、ドップラ多重数NDDM=2の場合でも、異なるビーム方向の送信アンテナに対応する反射波間の受信レベル差が大きい場合でも、上述した実施の形態と同様、ドップラ多重分離が可能となる。
以下、ドップラシフト部104におけるドップラシフト量の設定例について説明する。
<ドップラシフト量の設定例5>
図26は、送信アンテナ数Nt=2、NB1=1、NB2=1の場合の送信ドップラ周波数に対するドップラシフト量のパターンの設定例を示す。図26において、Tx#1はビーム方向B1の送信アンテナ(例えば、送信ビームB1を形成する送信アンテナ)であり、Tx#2はビーム方向B2の送信アンテナ(例えば、送信ビームB2を形成する送信アンテナ)である。
なお、ドップラシフト量の設定例5では、図26に示すように、ドップラシフト部104におけるドップラシフト間隔の基本単位をΔfd= 1/(Tr×(NDM+δ))=1/(4Tr)とし、δ=1を設定するが、δの値はこれに限定されない。δは正の整数でもよく、正の実数でもよい。
図26に示す例では、NB1=1個のビーム方向B1の送信アンテナTx#1に対して、ドップラシフト部104で発生させるドップラ多重信号数はNDOP(B1)=1であり、NB2=1個のビーム方向B2の送信アンテナTx#2に対して、ドップラシフト部104で発生させるドップラ多重信号数はNDOP(B2)=2である。
図26に示す例では、第1~第2のドップラシフト部104(又は、ドップラシフト部104-1~104-2)は、以下の動作を行ってよい。
第1のドップラシフト部104は、例えば、第1番目の送信アンテナTx#1に対してドップラシフト量DOP1=-1/(2Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ1(m)=2πDOP1×(m-1)Tr=-π(m-1)を付与して出力する。
第2のドップラシフト部104は、例えば、第2番目の送信アンテナTx#2に対して、2個のドップラ多重信号を発生させる。図26の例では、第2のドップラシフト部104は、ドップラシフト量DOP2-1=-1/(4Tr)及びドップラシフト量DOP2-2=1/(4Tr)を付与する。第2のドップラシフト部104は、第2番目の送信アンテナTx#2に対して、2個のドップラシフト量DOP2-1及びDOP2-2を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ2(m)=phseq[mod(m,4)+1]を付与して出力する。
ここで、phseq[ps]は、PhaseSeq=[0, 0, π, π]のps番目の要素を表す。例えば、phseq[1]=phseq[2]=0、phseq[3]=phase[4]=πである。また、mod(x,y)はxをyで割った場合の剰余を表す剰余演算関数である。なお、送信アンテナTx#2に対して、2個のドップラ多重信号を発生させることから、ドップラシフト量DOP2-1とドップラシフト量DOP2-2とで電力は2分される。
以下では、Tx#n1及びTx#n2に付与するドップラシフト量の間隔をドップラシフト間隔「Δfd(n1, n2)」と表記する。
また、図26に示すように、ドップラシフト量DOP2-1が付与されるTx#2を「Tx#2-1」と表記し、ドップラシフト量DOP2-2が付与されるTx#2を「Tx#2-2」と表記する。
図26において、各送信アンテナTx#1及びTx#2(例えば、Tx#2-1、Tx#2-2)に付与されるドップラシフト量の間隔(ドップラシフト間隔)は、Δfd(1, 2-1)=Δfd、Δfd(2-1, 2-2)=2Δfd、Δfd(2-2,1)=Δfdである。よって、図26において送信アンテナ数Nt=2の各送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔ではなく、不等間隔を含むため(Δfd(1,2-1)=Δfd(2-2,1)≠Δfd(2-1,2-2))、不等間隔ドップラ多重送信(不等間隔DDM送信)となる。
また、図26において、送信アンテナのうち、ビーム方向B1の送信アンテナ数はNB1=1であり、ドップラ多重信号数NDOP(B1)=1であるため、ビーム方向B1の送信アンテナでは、ドップラ多重送信となる関係とならないケースである。
また、図26において、送信アンテナのうち、ビーム方向B2の送信アンテナ数はNB2=1であり、ドップラ多重信号数NDOP(B2)=2である。また、図26において、ビーム方向B2の送信アンテナTx#2-1、Tx#2-2間のドップラシフト量の間隔は、Δfd(2-1,2-2)=Δfd(2-2,2-1)=2Δfdである。よって、ビーム方向B2の送信アンテナに付与されるドップラシフト量の間隔は、全て同一の間隔であり、等間隔ドップラ多重送信(等間隔DDM送信)となる。
よって、図26に示す例は、条件2を満たさないドップラシフト量のパターンの設定例である。
また、図26に示す例では、NDOP(B1)≠NDOP(B2)であり、NB1=NB2=1であるので、図26に示す例は、条件1の(4)を満たすドップラシフト量のパターンの設定例である。
例えば、物標方向がビーム方向B1の場合、及び、物標方向がビーム方向B2の場合、設定例1と同様、レーダ装置10は、物標方向に依存して、異なる数のドップラ多重信号(例えば、条件1の(4)を満たすドップラ多重信号の数)を受信する。これにより、レーダ装置10は、例えば、検出したドップラ周波数のピーク(例えば、ピークの数)に基づいて、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、ドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、ビーム方向B1の送信アンテナは1アンテナ送信であり(NB1=1)、ドップラ多重信号数NDOP(B1)=1である。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、ビーム方向B1の受信信号に対するドップラ多重信号の分離処理を行わなくてもよい。このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応づけた出力を得ることができる。
また、例えば、ビーム方向B2の送信アンテナから送信されるドップラ多重信号は、ドップラ多重信号数NDOP(B2)=2であり、また、条件2を満たさずに等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。また、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(4Tr)≦fd<1/(4Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
また、例えば、物標方向がビーム方向B1とビーム方向B2の中間的な方向であり、物標方向が、両方のビームの3dB又は6dB程度となるビーム幅が互いに重なるエリア方向である場合(例えば、図13に示す物標方向(2))、ビーム方向B1のTx#1に対応する受信信号の受信レベルと、ビーム方向B2のTx#2に対応する受信信号の受信レベルとは同程度である。そのため、ビーム方向B1及びビーム方向B2のそれぞれの送信アンテナを含むNt本の送信アンテナから送信される信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作に基づいてドップラ多重信号を分離可能となる。このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
なお、1つの送信アンテナに対して、2個のドップラ多重信号を発生させる例は、図26に示す例に限定されず、例えば、図27に示す設定例でも同様に、複数のドップラ多重信号を発生させることができる。
図27に示す例では、第1~第2のドップラシフト部104(又は、ドップラシフト部104-1~104-2)は、以下の動作を行ってよい。
第1のドップラシフト部104は、例えば、第1番目の送信アンテナTx#1に対してドップラシフト量DOP1=1/(4Tr)を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ1(m)=2πDOP1×(m-1)Tr=π(m-1)/2を付与して出力する。
第2のドップラシフト部104は、例えば、第2番目の送信アンテナTx#2に対して、2個のドップラ多重信号を発生させる。図27の例では、第2のドップラシフト部104は、ドップラシフト量DOP2-1=-1/(2Tr)及びドップラシフト量DOP2-2=0を付与する。第2のドップラシフト部104は、第2番目の送信アンテナTx#2に対して、2個のドップラシフト量DOP2-1及びDOP2-2を付与するために、チャープ信号の送信周期Tr毎に位相回転Φ2(m)=phseq[mod(m,4)+1]を付与して出力する。
ここで、phseq[ps]は、PhaseSeq=[0, π/2, 0, π/2]のps番目の要素を表す。例えば、phseq[1]=phseq[3]=0、phseq[2]=phase[4]=π/2である。また、mod(x,y)はxをyで割った場合の剰余を表す剰余演算関数である。なお、送信アンテナTx#2に対して、2個のドップラ多重信号を発生させることから、ドップラシフト量DOP2-1とドップラシフト量DOP2-2とで電力は2分される。
なお、2個のドップラ多重信号を発生させる例は、上述した例に限定されず、例えば、PhaseSeq=[0, -π/2, 0, -π/2], [π, -π/2,π, -π/2]、又は、[π, π/2,π, π/2]を用いても2個のドップラ多重信号を発生させることができる。
また、ドップラシフト部104は、例えば、送信アンテナに対して、ドップラシフト量を固定的に割り当ててもよく、送信周期によってドップラシフト量を可変に割り当ててもよい。例えば、ドップラシフト部104は、奇数番目の送信周期において図27に示すドップラシフト量の割り当てを行い、偶数番目の送信周期において図28に示すドップラシフト量の割り当てを行ってもよい。
図28に示すドップラシフト量の設定例では、図27に示すドップラシフト量の設定における、ビーム方向B1に対するドップラシフト量の割り当てと、ビーム方向B2に対するドップラシフト量の割り当てとを入れ替えた割り当てが適用される。
このような場合、レーダ装置10は、奇数番目の送信周期のチャープ信号を用いたドップラ解析部209の処理(例えば、VFFT1)と、偶数番目の送信周期のチャープ信号を用いたドップラ解析部209の処理(例えば、VFFT2)を行ってよい。レーダ装置10は、例えば、VFFT1及びVFFT2によるFFTピーク間の位相差を検出することにより、ドップラ範囲 [±1/(4Tr)]での折り返し有無の判定を行ってもよい。
(変形例2)
上記実施の形態では、マルチビーム数NB=2の場合について説明したが、マルチビーム数NBは3以上でもよい。変形例2では、マルチビーム数NB>2の場合について説明する。
マルチビーム数NB>2の場合、ドップラシフト部104は、上述した条件1及び条件2の代わりに、後述する条件1a、及び、条件2aを適用して、送信アンテナ毎に異なるドップラシフト量を付与する所定の位相回転Φ(m)を付与して出力してよい。これにより、レーダ装置10は、上述した実施の形態と同様に、異なるビーム方向の送信アンテナに対応する受信信号(反射波)間の受信電力レベルが大きく異なる場合でも、ドップラ多重信号を分離可能とし、測位性能及びレーダ検出性能の劣化を抑制できる。
以下、マルチビーム数NB>2の場合にドップラシフト部104が付与するドップラシフト量に関する条件1a及び条件2aについて説明する。
レーダ装置10は、例えば、異なるビーム方向の送信アンテナを含むNt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntを用いるマルチビーム送信MIMOレーダであり、Nt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntを用いて不等間隔ドップラ多重送信してよい。例えば、ドップラシフト部104は、Nt個の送信アンテナに対して不等間隔となるドップラシフトを付与してよい。
また、レーダ装置10は、例えば、以下の条件1aを満たすドップラ多重送信を用いて、Nt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntからレーダ送信信号を同時多重送信してよい。
ここで、各ビーム方向Bqの送信アンテナ数NBq≧1とする。また、送信アンテナ数Nt≧2NB-1とし、ドップラ多重数NDDM≧2NB-1とする。なお、下記の説明において、各ビーム方向Bqの送信アンテナ数NBqを、NB(q)とも記載する(例えば、NBq=NB(q))。
例えば、送信アンテナ数Ntは、Nt=2NB-1の場合が最小のケースであり、各ビーム方向Bqの送信アンテナのうち、1つのビーム方向の送信アンテナ数は1個であり、他のビーム方向の送信アンテナ数は2個となる場合である。
また、各ビーム方向Bqの送信アンテナ数の総和はNtとなる。レーダ装置10は、例えば、1つの送信アンテナに対して、1つのドップラ多重信号を割り当ててよい。この場合、ドップラ多重数NDDMはNtと等しい。
<条件1a>
第q番目のビーム方向B(q)のNB(q)個の送信アンテナに割り当てられるNB(q)個のドップラ多重信号は、以下の何れか一つの条件を満たす。ここで、q=1,~,NBである。
(1)同一のドップラ多重数となるビーム方向の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重信号間において、異なるドップラ間隔を含む(1-i)、又は、ドップラ多重数が3以上の場合に、同一のドップラ間隔を含み、それらのドップラシフト間隔の順序が異なる(例えば、各ビーム方向に対応するドップラシフト間隔の何れかをドップラ周波数軸上で巡回シフトしても一致しない)(1-ii)。
(2)全てのビーム方向間のドップラ多重数が異なる。
例えば、NB個のマルチビームのうち、ビーム方向B(a)、B(b)及びB(c)が、同一のドップラ多重数となる場合(例えば、NB(a)=NB(b)=NB(c)の場合。ただし、NB(a)≧2、NB(b)≧2、NB(c)≧2の場合)について説明する。ここでa,b,cは1~NB内の整数で、同一のドップラ多重数となるビーム方向を表す。
この場合、ビーム方向B(a)とビーム方向B(b)とにそれぞれ割り当てられるドップラ多重信号間、ビーム方向B(b)とビーム方向B(c)に割り当てられるドップラ多重信号間、及び、ビーム方向B(c)とビーム方向B(a)に割り当てられるドップラ多重信号間において異なるドップラ間隔が含まれる場合、条件1aの(1-i)を満たす。また、例えば、ドップラ多重数が3以上の場合に、ビーム方向B(a)、B(b)及びB(c)のそれぞれに割り当てられるドップラ間隔が同一であり、それらのドップラシフト間隔の順序が異なる場合(例えば、B(a)、B(b)及びB(c)の何れかのドップラシフト間隔をドップラ周波数領域において巡回シフトしても他のドップラシフト間隔と一致しない場合)、条件1aの(1-ii)を満たす。
また、例えば、NB個のマルチビームであるビーム方向B(1), B(2), ~, B(NB)の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重数(NB(1), NB(2), ~, NB(NB))が全て異なる場合、条件1aの(2)を満たす。
また、レーダ装置10は、例えば、更に、以下の条件2aを満たすドップラ多重送信を用いて、Nt個の送信アンテナTx#1~Tx#Ntからレーダ送信信号を同時多重送信してよい。
<条件2a>
ビーム方向BqのNB(q)個の送信アンテナに対して、不等間隔ドップラ多重(ただし、NBq≧2の場合)となるようにビーム方向Bqの送信アンテナにドップラ多重信号が割り当てられる。
条件2aを満たすことにより、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲fdは、-1/(2 Tr)≦fd <1/(2Tr)の範囲となり、既存の等間隔ドップラ多重のドップラ検出範囲である-1/(2 Nt Tr)≦fd < 1/(2 Nt Tr)よりも拡大できる。
なお、条件1aを満たし、条件2aを満たさない場合でも、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲fdは、既存の等間隔ドップラ多重のドップラ検出範囲である-1/(2 Nt Tr)≦fd <1/(2 Nt Tr)よりも拡大できる。
また、条件1a及び条件2aは、ビーム方向間の視野角(FOV)が重複するビームが無い場合の条件である。ビーム方向間の視野角が重複するビームが有る場合、視野角が重複するビーム方向(以下、「重複ビーム方向」と呼ぶ)の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重信号(以下、「重複ビーム方向のドップラ多重信号」と呼ぶ)を含む、以下の条件1b及び条件2bが適用されてもよい。
例えば、ビーム方向B(1)及びビーム方向B(2)の視野角が重複する場合、重複ビーム方向のドップラ多重信号は、ビーム方向B(1)及びビーム方向B(2)のそれぞれに割り当てられるドップラ多重信号を意味し、ドップラ多重数はNB(1)+NB(2)となる。
<条件1b>
第q番目のビーム方向B(q)のNB(q)個の送信アンテナに割り当てられるNB(q)個のドップラ多重信号は、以下の何れか一つの条件を満たす。ここで、q=1,~,NBである。
(1)同一のドップラ多重数となる、ビーム方向又は重複ビーム方向の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重信号間において、異なるドップラ間隔を含む(1-i)、又は、ドップラ多重数が3以上の場合に、同一のドップラ間隔を含み、それらのドップラシフト間隔の順序が異なる(例えば、各ビーム方向又は重複ビーム方向に対応するドップラシフト間隔の何れかをドップラ周波数軸上で巡回シフトしても一致しない)(1-ii)。
(2)全てのビーム方向間及び重複ビーム方向間のドップラ多重数が異なる。
<条件2b>
ビーム方向Bqの送信アンテナ間及び重複ビーム方向の送信アンテナによる不等間隔ドップラ多重(ただし、NBq≧2の場合)となるようにドップラ多重信号が割り当てられる。
条件2bを満たすことにより、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲fdは、-1/(2 Tr)≦fd <1/(2Tr)の範囲となる。また、条件1bを満たし、条件2bを満たさない場合でも、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲fdは、既存の等間隔ドップラ多重のドップラ検出範囲である-1/(2 Nt Tr)≦fd <1/(2 Nt Tr)よりも拡大できる。
以下、一例として、NB=3の場合の動作例について説明する。
<動作例1>
動作例1では、NB=3であり、重複ビーム方向が無い場合の動作例について説明する。
図29は、マルチビーム数NB=3であり、重複ビーム方向が無い場合のビーム方向B1、B2、B3のビームパターン例を示す。図29に示すように、ビームパターンに重複する部分が無い場合(又は、重複する部分が少ない場合)、条件1a及び条件2aが適用されてよい。
例えば、図29において、物標方向がビーム方向B1、ビーム方向B2、及び、ビーム方向B3の何れかとなる場合、ドップラシフト部104によるドップラ多重信号の割り当てが条件1aを満たすことにより、レーダ装置10は、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下か、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下か、ビーム方向B3の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下かを、ドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、ドップラシフト部104によるドップラ多重信号の割り当てが条件2aを満たすことにより、ビーム方向B1(又は、B2、B3)の送信アンテナから送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。
よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受診信号が、ビーム方向B1(又は、B2、B3)の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応づけた出力を得ることができる。
<動作例2>
動作例2では、NB=3であり、重複ビーム方向が有る場合の動作例について説明する。
図30は、マルチビーム数NB=3であり、重複ビーム方向が有る場合のビーム方向B1、B2、B3のビームパターン例を示す。図30に示すように、ビームパターンに重複する部分が有る場合(又は、重複する部分が多い場合)、条件1b及び条件2bが適用されてよい。
例えば、図30において、物標方向が、重複ビーム範囲と異なる、ビーム方向B1、ビーム方向B2、及び、ビーム方向B3の何れかとなる場合(図30に示す物標方向(1)、(3)、(5)の何れかの場合)、ドップラシフト部104によるドップラ多重信号の割り当てが条件1bを満たすことにより、レーダ装置10は、受信信号が、ビーム方向B1の送信アンテナに対応する受信信号か、ビーム方向B2の送信アンテナに対応する受信信号か、ビーム方向B3の送信アンテナに対応する受信信号かを、ドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、図30において、物標方向が、重複ビーム範囲内の場合(図30に示す物標方向(2)又は(4)の場合)、ドップラシフト部104によるドップラ多重信号の割り当てが条件1bを満たすことにより、レーダ装置10は、受信信号が、ビーム方向B1及びB2の送信アンテナに対応する受信信号か、ビーム方向B2及びB3の送信アンテナに対応する受信信号かを、ドップラ多重分離部211において判別可能となる。
また、例えば、ドップラシフト部104によるドップラ多重信号の割り当てが条件2bを満たすことにより、ビーム方向B1(又は、B2、B3)の送信アンテナから送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信されている。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受診信号が、ビーム方向B1(又は、B2、B3)の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応づけた出力を得ることができる。
また、例えば、ドップラシフト部104によるドップラ多重信号の割り当てが条件2bを満たすことにより、ビーム方向B1及びB2(又は、ビーム方向B2及びB3)の送信アンテナから送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信されている。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受診信号が、ビーム方向B1及びB2(又は、ビーム方向B2及びB3)の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応づけた出力を得ることができる。
(変形例3)
上記実施の形態及び変形例では、図13、図20、図24、図29及び図30に示すように、マルチビームにおける各ビーム方向が互いに異なる場合について説明したが、マルチビームの設定(例えば、ビーム方向及びビーム幅)は、上述した例に限定されない。
例えば、マルチビームを構成する各ビームは、ビーム方向及びビーム幅の少なくとも一つが異なってよい。また、マルチビーム数NB≧2であってよい。
以下、マルチビームの設定例について説明する。
<マルチビームの設定例1>
設定例1では、例えば、図31に示すように、マルチビーム(例えば、ビーム方向B1、B2及びB3)において、ビーム方向が互いに異なり、また、ビーム幅が異なってもよい。マルチビーム(例えば、ビーム方向B1、B2及びB3)において、水平方向(又は、水平面)のビーム方向が互いに異なり、また、水平方向(又は、水平面)のビーム幅が異なってもよい。垂直方向(又は、垂直面)のビーム方向が互いに異なり、また、垂直方向(又は、垂直面)のビーム幅が異なってもよい。
<マルチビームの設定例2>
上記実施の形態では、図13に示すように、水平方向(又は、水平面)においてビーム方向が異なる例について説明したが、これに限定されない。
設定例2では、例えば、垂直方向(又は、垂直面)においてもビーム方向が異なってもよい。
例えば、図32の(a)に示すように、マルチビーム(例えば、ビーム方向B1及びB2)において、水平方向(又は、水平面)では各ビーム方向がほぼ同一であり、垂直方向(又は、垂直面)では、各ビーム方向が異なってもよい。
また、例えば、図32の(b)に示すように、マルチビーム(例えば、ビーム方向B1、B2及びB3)において、水平方向(又は、水平面)及び垂直方向(又は、垂直面)の双方においてビーム方向が異なってもよい。
<マルチビームの設定例3>
設定例3では、例えば、図33に示すように、マルチビーム(例えば、ビーム方向B1及びB2)において、ビーム方向が同一であり、ビーム幅が異なってもよい。また、マルチビーム(例えば、ビーム方向B1及びB2)において、水平方向(又は、水平面)のビーム方向が同一であり、水平方向(又は、水平面)のビーム幅が異なってもよい。また、マルチビーム(例えば、ビーム方向B1及びB2)において、垂直方向(又は、垂直面)のビーム方向が同一であり、垂直方向(又は、垂直面)のビーム幅が異なってもよい。
設定例3では、例えば、上記実施の形態において説明した「ビーム方向が異なる送信アンテナ」の代わりに、「ビーム幅が異なる送信アンテナ」(以下では、「ビームが異なる」と表記する)と置き換えることにより、上記実施の形態と同様に適用が可能である。
以下、一例として、ドップラシフト量の設定例1を用いて、ビーム方向が同一であり、ビーム幅が異なる場合のレーダ装置10の動作例について説明する。なお、ドップラシフト量の設定は、設定例1に限定されず、他のドップラシフト量の設定例を用いた場合も同様に動作でき、上記実施の形態と同様な効果が得られる。
例えば、送信アンテナ数Nt=3(例えば、Tx#1、Tx#2、Tx#3)、NB1=2、NB2=1の場合に、上述したドップラシフト量の設定例1を適用する。なお、例えば、Tx#1及びTx#2は、図33に示すビーム幅B1(例えば、ビームB1)の送信アンテナであり、Tx#3は、図33に示すビーム幅B2(例えば、ビームB2)の送信アンテナである。図33において、ビームB1のビーム幅は、ビームB2のビーム幅よりも広い場合の例を示す。ここで、ビームB1、ビームB2のビーム幅は水平方向(又は、水平面)としてもよく、あるいは垂直方向(又は、垂直面)としてもよく、あるいは、水平方向(又は、水平面)及び垂直方向(又は、垂直面)の両者としてもよく、同様な効果が得られる。
また、レーダ装置10において、受信アンテナは、無指向性アンテナ(又は、ビームB1及びビームB2の双方の送信アンテナがカバーする視野角内においてほぼ均一の指向特性のアンテナ)でよい。
例えば、物標位置が、図33に示す物標位置(1)又は物標位置(3)の場合、物標位置はビームB1のビーム幅内にあり、視野角内にあるため、ビームB1のTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルは比較的高くなる。その一方で、物標位置(1)及び物標位置(3)は、ビームB2のビーム幅外であり、視野角外にあるため、ビームB2のTx#3から送信されるレーダ送信波の放射方向は、物標位置(1)及び(3)の方向に一致せず、物標位置(1)及び物標位置(3)は、ビームB2の送信アンテナTx#3のヌル方向に該当する。このため、レーダ装置10におけるTx#3に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、Tx#3に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#3のヌル方向のビーム指向特性に依存して、例えば、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。このような場合、レーダ装置10が受信する受信信号は、図12の(a)に示す受信信号となる。
また、例えば、物標位置が、図33に示す物標位置(4)のように、ビームB1及びビームB2の双方の視野角が重なる領域にある場合(例えば、近距離にある場合)、レーダ装置10は、ビームB1のTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波、及び、ビームB2のTx#3から送信されるレーダ送信波に対応する反射波を受信する。この場合、レーダ装置10が受信する受信信号は、例えば、図12の(b)のような受信信号となり得る。または、例えば、ビームB2の指向性利得がビームB1と比較して10dB程度以上高い場合、レーダ装置10が受信する受信信号は、例えば、図12の(c)のような受信信号となり得る。
また、例えば、物標位置が、図33に示す物標位置(2)のように、ビームB2の視野角内にあり、ビームB1の視野角外となる場合(例えば、遠方距離にある場合)、ビームB2のTx#3から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルは比較的高くなる。その一方で、ビームB1の指向性利得はビームB2の指向性利得よりも小さいため、ビームB1のTx#1及びTx#2から送信されるレーダ送信波に対応する反射波の受信レベルは、Tx#3に対応する受信信号の受信レベルと比較して低くなる。例えば、Tx#1及びTx#2に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#3に対応する受信信号の受信レベルと大きく異なり、Tx#1及びTx#2のビーム指向特性によっては、例えば、10dB以上小さい受信レベルとなり得る。このような場合、レーダ装置10が受信する受信信号は、図12の(c)に示す受信信号となる。
例えば、図12の(b)のように、レーダ装置10が、各ビームの送信アンテナに対応する受信信号をほぼ同程度の受信レベルで受信する場合、ビームB1及びビームB2のそれぞれの送信アンテナを含むNt本の送信アンテナから送信される信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信される。よって、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作に基づいてドップラ多重信号を分離可能となる。
また、図12の(a)及び図12の(c)に示すように、レーダ装置10が、ビームB1及びビームB2の何れか一方からの反射波を受信する場合(受信レベル差が大きい場合)、物標位置に依存して、異なるドップラ多重信号(例えば、条件1を満たすドップラ多重信号)を受信する。このため、レーダ装置10は、ビームB1の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、ビームB2の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、ドップラ多重分離部211において判別可能となる。
例えば、ビームB1の送信アンテナから送信されるドップラ多重信号は、不等間隔ドップラ多重となるドップラシフト間隔を用いてドップラ多重送信されている。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビームB1の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。
また、例えば、ビームB2の送信アンテナは1アンテナ送信である。よって、例えば、ドップラ多重分離部211の判別結果により、受信信号が、ビームB2の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、ビームB2の受信信号に対するドップラ多重信号の分離処理を行わなくてもよい。
このようなドップラ多重分離部211の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのドップラ多重信号に対する送信アンテナを対応づけた出力を得ることができる。
以上、本開示の実施の形態について説明した。
[他の実施の形態]
なお、本開示の一実施例に係るレーダ装置において、レーダ送信部及びレーダ受信部は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。また、本開示の一実施例に係るレーダ受信部において、方向推定部と、他の構成部とは、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
また、本開示の一実施例において用いた、送信アンテナ数Nt、受信アンテナ数Na、ドップラ多重数NDM、マルチビームにおけるビーム数NB、各ビーム方向の送信アンテナ数NBq、ドップラシフト量、ドップラシフト間隔といったパラメータの数値は一例であり、それらの値に限定されない。また、レーダ装置が具備している送信アンテナの一部を、送信アンテナ数Ntとして用いてよい。
また、本開示の一実施例において用いたMIMOアンテナの配置例(例えば、配置例A、配置例B)は、ドップラ多重送信を用いて複数の送信アンテナからレーダ送信信号を送信するものとして説明を行ったが、これに限定されない。例えば、時分割多重送信や符号多重送信を用いて複数の送信アンテナからレーダ送信信号を送信する場合にも適用することができ、開示したMIMOアンテナの配置による効果を得ることができる。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
<本開示のまとめ>
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1のビームを形成する第1の送信アンテナ、及び、前記第1のビームと異なる第2のビームを形成する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、前記複数の送信アンテナのそれぞれに割り当てられるドップラシフト量に対応する位相回転が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記複数の送信アンテナによるドップラシフト間隔は、ドップラ周波数軸上で不等間隔であり、前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第1のパターンと、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第2のパターンと、が異なる。
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記ドップラシフト間隔に関し、前記第1の送信アンテナによるドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナによるドップラ多重数と、が同じであり、前記第1の送信アンテナによるドップラシフト間隔のうち少なくとも1つは、前記第2の送信アンテナによるドップラシフト間隔と異なる。
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、送信アンテナの数に関し、前記第1の送信アンテナの数と、前記第2の送信アンテナの数とは異なる。
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、ドップラ多重数に関し、前記第1の送信アンテナによるドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナによるドップラ多重数とは異なる。
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記ドップラシフト量の間隔の順序に関し、前記第1の送信アンテナによるドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナによるドップラ多重数と、が同じであり、前記第1の送信アンテナによる複数の第1のドップラシフト間隔と、前記第2の送信アンテナによる複数の第2のドップラシフト間隔と、が同じであり、前記複数の第1のドップラシフト間隔の前記ドップラ周波数軸上での順序は、前記複数の第2のドップラシフト間隔の前記ドップラ周波数軸上での順序と異なる。
本開示の一実施例において、前記ドップラ周波数軸上で、前記第1の送信アンテナによる前記ドップラシフト間隔は不等間隔である。
本開示の一実施例において、前記ドップラ周波数軸上で、前記第2の送信アンテナによる前記ドップラシフト間隔は不等間隔である。
本開示の一実施例において、前記送信信号がターゲットで反射した反射波信号を受信する複数の受信アンテナと、前記反射波信号を用いて前記ターゲットの方向推定を行う受信回路と、を更に具備する。
本開示の一実施例において、第1の方向に第1の間隔で配置される複数の受信アンテナを更に具備し、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、前記第1の方向に前記第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向において異なる位置に配置される。
本開示の一実施例において、第1の方向に第1の間隔で配置される複数の受信アンテナを更に具備し、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、前記第1の方向に第2の間隔で配置され、前記第1の間隔と前記第2の間隔との差は、前記送信信号の波長に基づく規定値である。
本開示の一実施例において、前記規定値は、前記波長の0.45倍から0.8倍の範囲の何れかの値である。
本開示の一実施例において、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとは、前記第1の方向と直交する第2の方向において同じ位置に配置される。
本開示の一実施例において、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとは、前記第1の方向と直交する第2の方向において異なる位置に配置される。
本開示の一実施例において、前記複数の受信アンテナのうち、第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとは、前記第2の方向において異なる位置に配置される。
本開示の一実施例において、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナのそれぞれの数は1つであり、前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の数と、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の数とは異なる。
本開示の一実施例において、前記第1の送信アンテナに割り当てられる前記ドップラシフト量の数と、前記第2の送信アンテナに割り当てられる前記ドップラシフト量の数とは、前記送信信号の送信周期毎に入れ替わる。
本開示の一実施例において、前記第1のビームと前記第2のビームとは、ビーム方向及びビーム幅の少なくとも一つが異なる。
本開示は、広角範囲を検知するレーダ装置として好適である。
10 レーダ装置
100 レーダ送信部
101 レーダ送信信号生成部
102 変調信号発生部
103 VCO
104 ドップラシフト部
105 送信アンテナ部
200 レーダ受信部
201 アンテナ系統処理部
202 受信アンテナ部
203 受信無線部
204 ミキサ部
205 LPF
206 信号処理部
207 AD変換部
208 ビート周波数解析部
209 ドップラ解析部
210 CFAR部
211 ドップラ多重分離部
212 方向推定部

Claims (17)

  1. 第1のビームを形成する第1の送信アンテナ、及び、前記第1のビームと異なる第2のビームを形成する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、
    前記複数の送信アンテナのそれぞれに割り当てられるドップラシフト量に対応する位相回転が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、
    を具備し、
    前記複数の送信アンテナによるドップラシフト間隔は、ドップラ周波数軸上で不等間隔であり、
    前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第1のパターンと、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の第2のパターンと、が異なる、
    レーダ装置。
  2. 前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記ドップラシフト間隔に関し、
    前記第1の送信アンテナによるドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナによるドップラ多重数と、が同じであり、
    前記第1の送信アンテナによるドップラシフト間隔のうち少なくとも1つは、前記第2の送信アンテナによるドップラシフト間隔と異なる、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  3. 前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、送信アンテナの数に関し、
    前記第1の送信アンテナの数と、前記第2の送信アンテナの数とは異なる、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  4. 前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、ドップラ多重数に関し、
    前記第1の送信アンテナによるドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナによるドップラ多重数とは異なる、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  5. 前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記ドップラシフト量の間隔の順序に関し、
    前記第1の送信アンテナによるドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナによるドップラ多重数と、が同じであり、
    前記第1の送信アンテナによる複数の第1のドップラシフト間隔と、前記第2の送信アンテナによる複数の第2のドップラシフト間隔と、が同じであり、
    前記複数の第1のドップラシフト間隔の前記ドップラ周波数軸上での順序は、前記複数の第2のドップラシフト間隔の前記ドップラ周波数軸上での順序と異なる、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  6. 前記ドップラ周波数軸上で、前記第1の送信アンテナによる前記ドップラシフト間隔は不等間隔である、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  7. 前記ドップラ周波数軸上で、前記第2の送信アンテナによる前記ドップラシフト間隔は不等間隔である、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  8. 前記送信信号がターゲットで反射した反射波信号を受信する複数の受信アンテナと、
    前記反射波信号を用いて前記ターゲットの方向推定を行う受信回路と、
    を更に具備する、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  9. 第1の方向に第1の間隔で配置される複数の受信アンテナを更に具備し、
    前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、前記第1の方向に前記第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向において異なる位置に配置される、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  10. 第1の方向に第1の間隔で配置される複数の受信アンテナを更に具備し、
    前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、前記第1の方向に第2の間隔で配置され、
    前記第1の間隔と前記第2の間隔との差は、前記送信信号の波長に基づく規定値である、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  11. 前記規定値は、前記波長の0.45倍から0.8倍の範囲の何れかの値である、
    請求項9に記載のレーダ装置。
  12. 前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとは、前記第1の方向と直交する第2の方向において同じ位置に配置される、
    請求項9に記載のレーダ装置。
  13. 前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとは、前記第1の方向と直交する第2の方向において異なる位置に配置される、
    請求項9に記載のレーダ装置。
  14. 前記複数の受信アンテナのうち、第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとは、前記第2の方向において異なる位置に配置される、
    請求項8又は9に記載のレーダ装置。
  15. 前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナのそれぞれの数は1つであり、
    前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の数と、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量の数とは異なる、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  16. 前記第1の送信アンテナに割り当てられる前記ドップラシフト量の数と、前記第2の送信アンテナに割り当てられる前記ドップラシフト量の数とは、前記送信信号の送信周期毎に入れ替わる、
    請求項13に記載のレーダ装置。
  17. 前記第1のビームと前記第2のビームとは、ビーム方向及びビーム幅の少なくとも一つが異なる、
    請求項1に記載のレーダ装置。
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