JP2024030261A - 二次電池電極用複合物の製造方法及び二次電池電極の製造方法、二次電池の製造方法 - Google Patents

二次電池電極用複合物の製造方法及び二次電池電極の製造方法、二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い導電性を有する二次電池電極用複合物の製造方法を提供すること。【解決手段】二次電池電極用複合物の製造方法であって、カーボンナノチューブ分散体と、活物質と、分散媒とを含む複合スラリーを作製する工程と、前記複合スラリーを乾燥させる工程を含み、前記複合スラリーの動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上4000以下であることを特徴とする二次電池電極用複合物の製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、二次電池電極用複合物の製造方法及び二次電池電極の製造方法、二次電池の製造方法に関する。
電気自動車の普及や携帯機器の小型軽量化及び高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池、さらに、その二次電池の高容量化が求められている。このような背景の下で高エネルギー密度、高電圧という特徴から非水系電解液を用いる非水電解質二次電池、特に、リチウムイオン二次電池が多くの機器に使われるようになっている。
二次電池の電極は、正極活物質又は負極活物質、導電材、バインダー樹脂等を含む合材スラリーを集電体に塗工して作製される。分散媒に導電材を分散させた導電材分散液を用意しておき、導電材分散液に活物質及びバインダー樹脂を添加して合材スラリーを作製することで、電極膜において導電材が均一に分散して含まれ、電極膜の導電性を改善することができる。二次電池の高容量化に向けては、電極中の活物質比率の増加が望まれるため、導電剤として少量でも効率的に導電ネットワークを形成することができ、電極抵抗を低減できるカーボンナノチューブが有望とされている。
一方で、より少量添加で低抵抗化を図るためには平均外径が小さく繊維長が大きいカーボンナノチューブを用いるのが効果的であるが、これらカーボンナノチューブは凝集力が強く、電極中に均一に分布させることが難しくなる。
電極中の導電ネットワークを効率的に形成し、活物質への導電パス担保するためには、予め活物質表面にカーボンナノチューブなどの導電材を吸着させた複合物を利用する方法が提案されている。
特許文献1には、ニッケル酸リチウムとカーボンナノチューブを窒素雰囲気下でメカノケミカル処理により複合化させ、高電子伝導性と高機械的強度を有する正極活物質を製造する例が開示されている。
また、特許文献2では、遷移金属化合物とリチウム化合物とを混合して、焼成し得られた正極活物質と炭素粉などの導電助剤を噴霧乾燥で複合化する例が開示されている。
更に、特許文献3では、平均凝集径が0.1~10μmである正極活物質とカーボンナノチューブを含むスラリーを噴霧乾燥により複合化した後、分散剤を溶剤で除去する例が開示されている。
特開2017-142997号公報 特開2003-173777号公報 特許5377946号公報
特許文献1に開示の方法では、繊維状で絡み合ったカーボンナノチューブを複合化の過程で解すことが困難であり、カーボンナノチューブの活物質表面への均一な吸着には至らず不均一な複合物となり易く、電極中での均一な導電ネットワーク形成は難しい。
特許文献2では、噴霧乾燥前の複合スラリーの混合時に分散剤の使用もなく、活物質と導電材の分散が十分でなく、乾燥の過程で導電材の凝集が生じやすく均一な複合物を得ることは難しい。
特許文献3では、噴霧乾燥前の複合スラリーの分散状態を評価するために、活物質の分散粒度を測定し指標としている。一方で、分散粒度が小さく好ましい範囲であっても、カーボンナノチューブの破断が進み繊維長が不足する場合、導電ネットワークの形成に不利に働き、導電性が低下することがある。
また、同じ分散粒度であっても噴霧乾燥前の複合スラリーの濃度が異なると噴霧乾燥時の液滴の大きさや形状が変化し、得られる複合体の密度や活物質と導電材の複合状態に影響を与えることが懸念される。
更に、粒度分布の場合には、カーボンナノチューブの等の繊維状の非球状粒子を、球状と仮定して算出していることから、実態との乖離が生じやすい問題がある。
本発明者らが、複合スラリー中の活物質や導電材の分散状態の細かな違いについて詳細に比較検討したところ、繊維状のカーボンナノチューブを導電材として用いる場合には、従来分散度の指標としてしばしば用いられてきた粒度分布では、同じ測定値であっても複合物の特性が異なる場合があり、スラリー中の分散状態を的確に捉えていないことがわかった。例えば、粒度分布の場合には、繊維状の非球状粒子を、球状と仮定して算出していることから、実態との乖離が生じやすい。粘度の場合には、一般に、導電材の分散状態が良好なほど低粘度になると言われているが、導電材が繊維状で絡まりやすい場合には、導電材が分散媒中で均一かつ安定に解れた状態であっても、導電材自体の構造粘性があるため弾性が強くなる。また、繊維が破断されている場合には、解凝集と破断の二つの要素によって粘度が変化することから、粘度だけで導電材の状態を的確に表すことは難しい。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、複合スラリーの中の活物質やカーボンナノチューブの分散状態を細かくコントロールし、複合スラリーを乾燥して得られる導電性の優れる二次電池電極用複合物の製造方法を提供することである。
本発明は、カーボンナノチューブおよび活物質を含む二次電池電極用複合物の製造方法であって、カーボンナノチューブ分散体と、活物質と、分散媒とを含み、動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上4000以下である複合スラリーを乾燥する工程を含むことを特徴とする二次電池電極用複合物の製造方法に関する。
本発明は、前記複合スラリーが、更に、バインダー樹脂を含み、動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上3000以下であることを特徴とする請求項1記載の二次電池電極複合物の製造方法に関する。
本発明は、カーボンナノチューブ分散体の動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が30以上3000以下であることを特徴とする前記二次電池電極用複合物の製造方法に関する。
本発明は、乾燥方法が噴霧乾燥であることを特徴とする前記の二次電池用電極複合物の製造方法に関する。
本発明は、前記方法にしたがって二次電池用電極複合物を作製し、前記二次電池用電極複合物を用いて電極膜を形成することを含む、電極膜の製造方法に関する。
本発明は、前記記載の方法にしたがって二次電池用電極複合物を作製し、前記二次電池用電極複合物を用いて電極膜を形成することを含む、二次電池の製造方法に関する。
本発明の実施形態によれば、複合スラリーの中の活物質やカーボンナノチューブの分散状態を細かくコントロールし、複合スラリーを乾燥して得られる導電性の優れる二次電池電極用複合物の製造方法を提供することが可能である。本発明のさらに他の実施形態によれば、高出力、高寿命な非水電解質二次電池及びこれに用いられる電極膜を提供することができる。
実施例で製造した電極用複合物7をSEMにより観察した図である。 比較例で製造した電極用複合物16をSEMにより観察した図である。
以下、本発明の実施形態である二次電池電極用複合物の製造方法について詳しく説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明には要旨を変更しない範囲において実施される実施形態も含まれる。
本明細書において、カーボンナノチューブを「CNT」と表記することがある。水素化ニトリルゴムを「H-NBR」、N-メチル-2-ピロリドンを「NMP」と表記することがある。なお、本明細書では、カーボンナノチューブ分散体を単に「CNT分散体」または「分散液」という場合がある。また、二次電池電極用複合物を「電極用複合物」または、「複合物」をいう場合がある。
本発明の二次電池電極用複合物の製造方法は、カーボンナノチューブ分散体と、活物質と、分散媒とを含み、動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上4000以下である複合スラリーを乾燥する工程を含む。
<カーボンナノチューブ分散体>
カーボンナノチューブ分散体の準備について説明する。カーボンナノチューブ分散体は、カーボンナノチューブ(CNT)と、分散剤と、分散媒とを含む。CNTは、導電材として機能する。CNT分散体には、カーボンナノチューブ以外の導電材が含まれてもよい。その他の導電材としては、例えば、カーボンブラック、フラーレン、グラフェン、多層グラフェン、グラファイト等の炭素材料等が挙げられる。CNT以外の導電材を用いる場合、分散剤の吸着性能の観点から、カーボンブラックが好ましく、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、中空カーボンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックが挙げられる。これらのカーボンブラックは、中性、酸性、塩基性のいずれでもよく、酸化処理されたカーボンブラックや、黒鉛化処理されたカーボンブラックを使用してもよい。その他の導電材は、1種または2種以上併用して用いてもよい。
CNTは、平面的なグラファイトを円筒状に巻いた形状であり、単層CNT、二層CNT、薄層(数層)CNT、多層CNTを含み、これらが混在してもよい。単層CNTは一層のグラファイトが巻かれた構造を有する。多層CNTは、二または三以上の層のグラファイトが巻かれた構造を有する。また、CNTの側壁はグラファイト構造でなくともよい。また、例えば、アモルファス構造を有する側壁を備えるCNTも本明細書ではCNTである。
CNTの形状は限定されない。かかる形状としては、針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン又はカップ積層型)、トランプ状(プレートレット)及びコイル状を含む様々な形状が挙げられる。中でも、CNTの形状は、針状、又は、円筒チューブ状であることが好ましい。CNTは、単独の形状、または2種以上の形状の組合せであってもよい。
CNTの形態は、例えば、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ及びカーボンナノファイバー等が挙げられる。カーボンナノチューブは、これらの単独の形態又は2種以上を組み合わせた形態を有していてもよい。
CNTの平均外径は1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。また、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、13nm以下であることがさらに好ましい。なお、CNTの平均外径は、まず透過型電子顕微鏡によって、CNTを観測するとともに撮像し、観測写真において、任意の300個のCNTを選び、それぞれの外径を計測することで算出できる。
CNT分散体は、平均外径が異なる2種以上のCNTを別々に用意して、分散媒に添加して用意してもよい。CNTとして、平均外径が異なる2種以上のCNTを使用する場合、第一のCNTの平均外径は1nm以上、5nm未満であることが好ましい。第二のCNTの平均外径は5nm以上、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。CNTとして、平均外径が異なる2種以上のCNTを使用する場合、第一のCNTと第二のCNTの質量比率は1:10~1:100であることが好ましく、1:10~1:50であることがより好ましい。
CNTの平均繊維長は0.5μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることがさらに好ましい。また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、CNTの平均繊維長は、まず走査型電子顕微鏡によって、CNTを観測するとともに撮像し、観測写真において、任意の300個のCNTを選び、それぞれの繊維長を計測することで算出できる。
CNTの繊維長を、外径で除した値がアスペクト比である。平均繊維長と平均外径の値を用いて、代表的なアスペクト比を求めることができる。アスペクト比が高い導電材ほど、電極を形成した際に高い導電性を得ることができる。CNTのアスペクト比は、30以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、80以上であることがさらに好ましい。また、10,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。
CNTの比表面積は100m/g以上であることが好ましく、150m/g以上であることがより好ましく、200m/g以上であることがさらに好ましい。また、1200m/g以下であることが好ましく、1000m/g以下であることがより好ましい。CNTの比表面積は窒素吸着測定によるBET法で算出する。CNTの平均外径、平均繊維長、アスペクト比、および比表面積が上記範囲内であると、電極中で発達した導電パスを形成しやすくなる。
CNTの炭素純度はCNT中の炭素原子の含有率(質量%)で表される。炭素純度はCNT100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましい。
金属触媒等の不純物を除去または低減し、炭素純度を上げる目的で、高純度化処理を行ったCNTを用いてもよい。
CNTをビーズミル等のメディアとの衝突による分散機で分散する場合や、長時間かけて繰り返し分散機を通過させるような処理を行う場合、CNTが破損して短片状の炭素質が生じる場合がある。短片状の炭素質が生じると、CNT分散体の粘度は低下し、CNT分散体を塗工乾燥させて得た塗膜の光沢は高くなることから、これらの評価結果のみで判断すると分散状態が良好なように思われるが、短片状の炭素質は接触抵抗が高く、導電ネットワーク形成が難しいため、電極の抵抗を悪化させる場合がある。短片状の炭素質が生じた程度は、分散液を希釈し、表面が平滑で分散媒と親和性のよい基材に滴下し乾燥した試料を、走査型電子顕微鏡で観察する等の方法で確認できる。0.1μm以下の炭素質が生じないように分散条件や分散液の配合を調整すると、導電性の高い電極を得ることができる。
カーボンナノチューブはどのような方法で製造したカーボンナノチューブでも構わない。カーボンナノチューブは一般にレーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法及び燃焼法で製造できるが、これらに限定されない。例えば、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気中、500~1000℃にて、炭素源を触媒と接触反応させることでカーボンナノチューブを製造することができる。炭素源は炭化水素及びアルコールの少なくともいずれか一方でもよい。
<分散剤>
カーボンナノチューブ分散体は分散剤を含む。分散剤は、カーボンナノチューブ分散体中でCNTを分散安定化できるものが好ましい。分散剤は、樹脂型分散剤及び界面活性剤のいずれも使用することができるが、CNTへの吸着力が強く良好な分散安定性が得られることから、樹脂型分散剤が好ましい。カーボンナノチューブの分散に要求される特性に応じて適宜好適な種類の分散剤を、好適な配合量で使用することができる。
樹脂型分散剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、エチレン性不飽和炭化水素由来のポリマー、セルロース系誘導体、これらのコポリマー等が使用できる。エチレン性不飽和炭化水素由来のポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ニトリルゴム類等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、水酸基以外の官能基(例えば、アセチル基、スルホ基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基)を有する変性ポリビニルアルコール、各種塩によって変性されたポリビニルアルコール、その他アニオン変性またはカチオン変性されたポリビニルアルコール、アルデヒド類によってアセタール変性(アセトアセタール変性またはブチラール変性等)されたポリビニルアセタール(ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等)等が挙げられる。ポリアクリロニトリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリルのホモポリマー、ポリアクリロニトリルのコポリマー、これらの変性体等であってよく、ヒドロキシル基、カルボキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、及びメルカプト基等の活性水素基、塩基性基、(メタ)アクリル酸アルキルエステルまたはα―オレフィン等に由来して導入されるアルキル基等からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリアクリロニトリル系樹脂等が好ましく、例えば特開2020-163362号公報記載のアクリロニトリル共重合体を用いることができる。ニトリルゴム類としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。セルロース系誘導体としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、またはこれらのコポリマー等が挙げられる。また、国際公開2008/108360号パンフレット、特開2018-192379号公報、特開2019-087304号公報、特許6524479号公報、特開2009-026744号公報に記載の分散剤を用いてよいが、これらに限定されるものではない。特にメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリルのホモポリマー、ポリアクリロニトリルのコポリマー、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムが好ましい。これらのポリマーの一部に他の置換基を導入したポリマー、変性させたポリマー等を用いてもよい。樹脂型分散剤の重量平均分子量は、被分散物と分散媒との親和性バランスの観点および、電解液への耐性の観点から、500,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましく、3,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。樹脂型分散剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
市販のポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、クラレポバール(クラレ製ポリビニルアルコール樹脂)、ゴーセノール、ゴーセネックス(日本合成化学工業製ポリビニルアルコール樹脂)、などの商品名で、種々のグレードを入手することができる。また、各種官能基を有する変性ポリビニルアルコールも同様に入手できる。市販のポリビニルピロリドン系樹脂としては、具体的には、ポリビニルピロリドンK30、K90(富士フィルム和光)、K120(DSP五経フード&ケミカル製)などが挙げられる。市販のニトリルゴム類としては、テルバン(Therban)(アランセオ製水素化ニトリルゴム)、バイモード(Baymod)(アランセオ製ニトリルゴム)、Zetpole(日本ゼオン製水素化ニトリルゴム)、NipoleNBR(日本ゼオン製ニトリルゴム)などの商品名で、ニトリル比率、水素化率、および分子量等が異なる種々のグレードを入手することができる。また、公知の合成方法で合成したものを用いてもよい。上記した樹脂型分散剤に代えて又は加えて界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、両性のイオン性界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤に分類される。
樹脂型分散剤として、少なくとも脂肪族炭化水素構造単位、およびニトリル基含有構造単位を含む重合体を用いてもよい。重合体の脂肪族炭化水素構造単位は、アルキレン構造単位を含んでもよい。この重合体は水素添加されていてもよい。
脂肪族炭化水素構造単位は、脂肪族炭化水素構造を含む構造単位であり、好ましくは脂肪族炭化水素構造のみからなる構造単位である。脂肪族炭化水素構造は、飽和脂肪族炭化水素構造を少なくとも含み、不飽和脂肪族炭化水素構造を更に含んでもよい。脂肪族炭化水素構造は、直鎖状脂肪族炭化水素構造を少なくとも含むことが好ましく、分岐状脂肪族炭化水素構造を更に含んでもよい。
脂肪族炭化水素構造単位の例として、アルキレン構造単位、アルケニレン構造単位、アルキル構造単位、アルカントリイル構造単位、アルカンテトライル構造単位等が挙げられる。アルカントリイル構造単位、アルカンテトライル構造単位等の分岐点を含む構造単位は、後述の分岐状アルキレン構造を含む構造単位及び分岐状アルキル構造を含む構造単位とは異なる構造単位である。脂肪族炭化水素構造単位は、少なくともアルキレン構造単位を含むことが好ましい。
アルキレン構造単位は、アルキレン構造を含む構造単位であり、好ましくはアルキレン構造のみからなる構造単位である。アルキレン構造は、直鎖状アルキレン構造又は分岐状アルキレン構造であることが好ましい。
樹脂組成物中に塩基を含有すると、CNTの分散媒への濡れ性を高めて分散性を向上させたり、分散安定性が向上することから、好ましい。添加する塩基は、無機塩基、無機金属塩、有機塩基、有機金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
無機塩基および無機金属塩としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、ホウ酸塩;および、水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも容易にカチオンを供給できる観点から、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物またはアルコキシドが好ましい。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。なお、無機塩基が有する金属は、遷移金属であってもよい。
有機塩基としては、置換基を有してもよい炭素数1~40の1級、2級、3級アミン化合物(アルキルアミン、アミノアルコール等)、または有機水酸化物が挙げられる。
有機金属塩としては、例えば、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の酢酸塩などが挙げられる。アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウム-t-ブトキシド、リチウム-n-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-n-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウム-t-ブトキシド、カリウム-n-ブトキシド等が挙げられる。これらの中でも、容易にカチオンを供給できる観点から、ナトリウム-t-ブトキシドが好ましい。なお、無機塩基が有する金属は、遷移金属であってもよい。
塩基の使用量は、重合体の質量を基準として0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。塩基の使用量は、重合体の質量を基準として20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。使用量が少なすぎると、ムーニー粘度の低下が起こりにくい傾向がある。使用量が多すぎると、分散装置及び/又は電池内部の腐食の原因となり得る。
CNT分散体は、上記した分散剤に加えて、無機塩基、無機金属塩、有機塩基、有機金属塩、又はこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。これらは、合計量で、樹脂組成物の全量に対し、0.001~0.1質量%が好ましく、0.005~0.05質量%がより好ましい。
<分散媒>
カーボンナノチューブ分散体は分散媒を含む。分散媒は、特に限定されないが、高誘電率溶媒であることが好ましく、高誘電率溶媒のいずれか1種からなる溶媒、または2種以上からなる混合溶媒を含むことが好ましい。また、高誘電率溶媒に、その他の溶媒を1種または2種以上混合して用いてもよい。
高誘電率溶媒としては、アミド系(N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルカプロラクタムなど)、複素環系(シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトンなど)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシドなど)、スルホン系(ヘキサメチルホスホロトリアミド、スルホランなど)、低級ケトン系(アセトン、メチルエチルケトンなど)、カーボネート系(ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート)、水、その他、テトラヒドロフラン、尿素、アセトニトリルなどを使用することができる。分散媒としては、アミド系有機溶媒や水を含むことが好ましく、アミド系有機溶媒はN-メチル-2-ピロリドンおよびN-エチル-2-ピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。高誘電率溶媒の比誘電率は、溶剤ハンドブック等に記載の数値とすることができ、20℃において2.5以上であることが好ましい。
<カーボンナノチューブ分散体>
カーボンナノチューブ分散体は、前述の通りカーボンナノチューブと、分散剤と、分散媒とを含む。CNT分散体は、必要に応じて、湿潤剤、界面活性剤、pH調整剤、濡れ浸透剤、レベリング剤等のその他の添加剤、その他の導電材、その他の高分子成分等の任意成分を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜含んでもよい。任意成分は、分散液作製前、分散時、分散後、又はこれらの組み合わせ等、任意のタイミングで添加することができる。
CNT分散体におけるCNTの分散性は、動的粘弾性測定による複素弾性率および位相角で評価できる。本明細書において、CNT分散体の複素弾性率および位相角は、25℃、周波数1Hzでの測定値である。詳しくは、実施例に記載の方法により測定することができる。CNT分散体の複素弾性率は、CNT分散体の硬さを示し、CNTの分散性が良好であるほど、また、CNT分散体が低粘度であるほど小さくなる傾向にある。しかし、CNTの繊維長が大きい場合には、CNTが媒体中で均一かつ安定に解れた状態であっても、CNT自体の構造粘性があるため、複素弾性率が高い数値となる場合がある。また、CNTの分散状態に加え、CNT、分散剤、およびその他樹脂成分の絡まり、またはこれらの分子間力等の影響によっても変化する。
また、位相角は、CNT分散体に与えるひずみを正弦波とした場合の応力波の位相ズレを意味している。純弾性体であれば、与えたひずみと同位相の正弦波となるため、位相角0°となる。一方で、純粘性体であれば90°進んだ応力波となる。一般的な粘弾性測定用試料では、位相角が0°より大きく90°より小さい正弦波となり、CNT分散体におけるCNTの分散性が良好であれば、位相角は純粘性体である90°に近づく。しかし、複素弾性率と同様に、CNT自体の構造粘性がある場合には、CNTが分散媒中で均一かつ安定に解れた状態であっても、位相角が低い数値となる場合がある。また、複素弾性率と同様に、CNTの分散状態に加え、CNT、分散剤、およびその他樹脂成分の絡まり、またはこれらの分子間力等の影響によっても変化する。
CNT分散体において、複素弾性率X(Pa)および位相角Y(°)の積(X×Y)が30以上3,000以下であることで、CNT分散体が高濃度で高い流動性を有し、かつ、導電性が非常に良好な電極膜を得ることができる。複素弾性率X(Pa)および位相角Y(°)の積(X×Y)は、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、45以上であることがさらに好ましい。また、2,000以下であることが好ましく、1,700以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。さらに、800以下が好ましく、500以下がより好ましく、100以下が一層好ましい。これによって、CNT分散と活物質を混合した状態で分散性及び流動性をさらに改善することができる。
CNT分散体の動的粘弾性測定による複素弾性率は、0.1Pa以上であることが好ましく、0.3Pa以上であることがより好ましく、0.5Pa以上であることがさらに好ましい。また、200Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、30Pa以下であることがさらに好ましい。より好ましくは0.1Pa以上200Pa以下であり、さらに好ましくは0.3Pa以上50Pa以下であり、一層好ましくは0.5Pa以上30Pa以下である。
CNT分散体の動的粘弾性測定による位相角は、3°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、10°以上であることがさらに好ましく、30°以上であることが特に好ましい。また、90°以下であってよく、88°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましい。より好ましくは3°以上90°以下であり、さらに好ましくは10°以上90°以下であり、一層好ましくは30°以上88°以下である。
CNTの繊維長が大きいCNTを、長さを一定以上に保ったまま均一かつ良好に分散させることで、発達した導電ネットワークが形成される。したがって、単にCNT分散体の粘度が低く(見かけ上の)分散性が良好であればよいのではなく、複素弾性率および位相角を、粘度等の従来の指標と組み合わせて分散状態を判断することが特に有効である。複素弾性率および位相角を上記範囲とすることで、導電性および電極強度の良好なCNT分散体を得ることができる。例えば、CNT分散体は、動的粘弾性測定による複素弾性率及び位相角がそれぞれ0.1Pa以上200Pa以下及び3°以上90°以下を満たすことが好ましい。さらに、CNT分散体は、複素弾性率X(Pa)および位相角Y(°)の積(X×Y)が上記好ましい範囲を満たし、かつ、動的粘弾性測定による複素弾性率及び位相角がそれぞれ上記好ましい範囲を満たすことが好ましい。
CNT分散体におけるCNTの分散性は、レーザー回折/散乱式の粒度分布計にて求めたメジアン径(μm)でも評価できる。レーザー回折/散乱式の粒度分布計にて求めたメジアン径(μm)では、粒子による散乱光強度分布により、CNT凝集粒子の粒子径を見積もることができる。メジアン径(μm)は0.4μm以上であることが好ましく、また、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。上記範囲とすることで適切な分散状態のCNT分散体を得ることができる。上記範囲を下回ると凝集した状態のCNTが存在し、また、上記範囲を上回ると微細に切断されたCNTが多数生じることから、効率的な導電ネットワークの形成が難しくなる。メジアン径は実施例に記載の方法により測定することができる。
CNT分散体の粘度は、B型粘度計を用いて、25℃において60rpmで測定した粘度が10mPa・s以上10000mPa・s未満であることが好ましく、10mPa・s以上2000mPa・s未満であることがより好ましく、10mPa・s以上1000mPa・s未満であることがさらに好ましい。
CNT分散体のTI値は、B型粘度計にて25℃において測定した6rpmにおける粘度(mPa・s)を、60rpmにおける粘度(mPa・s)で除した値から算出できる。TI値は1.0以上10.0未満であることが好ましく、1.0以上5.0未満がより好ましく、1.0以上3.0未満がさらに好ましい。TI値が高いほどCNT、分散剤、その他樹脂成分の絡まり、またはこれらの分子間力等に起因する構造粘性が大きく、TI値が低いほど構造粘性が小さくなる。TI値を上記範囲とすることで、CNT、分散剤、その他樹脂成分の絡まりを抑えつつ、これらの分子間力を適度に作用させることができる。
CNT分散体中のCNTの平均繊維長は0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、CNT分散体中のCNTの平均繊維長は、CNT分散体をNMP等の非水溶媒によって50倍に希釈したものを基材に滴下して乾燥させた試料を走査型電子顕微鏡によって観察し、観測写真において、任意の300個のCNTを選び、それぞれの繊維長を計測することで算出できる。
CNTの含有量は、CNT分散体の全量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。上記範囲にすることで、沈降やゲル化を起こすことなく、CNTを良好に、かつ安定に存在させることができる。より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.5~10質量%である。また、CNTの含有量は、CNTの比表面積、分散媒への親和性、分散剤の分散能等によって、適当な流動性または粘度のカーボンナノチューブ分散液が得られるように、適宜調整することが好ましい。
分散剤の含有量は、CNTの100質量部に対して、5~200質量部使用することが好ましく、10~100質量部使用することがより好ましく、15~80質量部使用することがさらに好ましい。分散剤の含有量は、CNT分散体の全量に対し、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
CNT分散体の固形分量は、0.2~40質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
<分散方法>
以下、CNT分散体の製造方法の一例として、分散媒にCNTを分散させる方法について説明する。なお、CNT分散体の製造方法において、カーボンナノチューブ分散体は、製造方法によらずに、上記した成分及び特性を備えるものを用いることができる。CNT分散体は、例えば、CNT、分散剤、及び分散媒を、分散装置を使用して分散処理を行い微細に分散して製造することが好ましい。なお、分散処理は、使用する材料の添加タイミングを任意に調整し、2回以上の多段階処理ができる。
分散装置は、例えば、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、プラネタリーミキサー、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター、ハイシアミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。なかでも、CNT分散体中にCNTを微細に分散させ、好適な分散性を得るために、ハイシアミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、又はこれらを組み合わせて用いることが好ましい。特に、CNTの濡れを促進し、粗い粒子を解す観点から、分散の初期工程ではハイシアミキサーを用い、続いて、CNTのアスペクト比を保ったまま分散させる観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。また、高圧ホモジナイザーで分散させたあと、さらにビーズミルにて分散させることで、繊維長を保ちつつ、分散状態を均一化させることができる。高圧ホモジナイザーを使用する際の圧力は60~150MPaが好ましく、60~120MPaであることがより好ましい。
分散装置を用いた分散方式には、バッチ式分散、パス式分散、循環分散等があるが、いずれの方式でもよく、2つ以上の方式を組み合わせてもよい。バッチ式分散とは、配管などを用いずに、分散装置本体のみで分散を行う方法である。取扱いが簡易であるため、少量製造する場合に好ましい。パス式分散とは、分散装置本体に、配管を介して被分散液を供給するタンクと、被分散液を受けるタンクとを備え、分散装置本体を通過させる分散方式である。また、循環式分散とは、分散装置本体を通過した被分散液を、被分散液を供給するタンクに戻して、循環させながら分散を行う方式である。いずれも処理時間を長くするほど分散が進むため、目的の分散状態になるまでパス、あるいは循環を繰り返せばよく、タンクの大きさや処理時間を変更すれば処理量を増やすことができる。パス式分散は循環式分散と比較して分散状態を均一化させやすい点で好ましい。循環式分散はパス式分散と比較して作業や製造設備が簡易である点で好ましい。分散工程は、凝集粒子の解砕、導電材の解れ、濡れ、安定化等が順次、あるいは同時に進行し、進行の仕方によって仕上がりの分散状態が異なることから、各分散工程における分散状態を各種評価方法を用いることにより管理することが好ましい。例えば、実施例に記載の方法で管理することができる。
<複合スラリー>
複合スラリーは、カーボンナノチューブ分散体と、活物質と、分散媒とを少なくとも含み、更にバインダー樹脂を含んでも良い。
活物質は電気エネルギーを取り出すために必要な電池反応を起こす物質であり、正極に使われる正極活物質と負極に使われる負極活物質がある。
正極活物質は、特に限定されないが、例えば、二次電池用途は、リチウムイオンを可逆的にドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物および金属硫化物等の金属化合物を使用することができる。例えば、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMnまたはLiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCo)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1-y)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiNiCoMn1-y-z)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiMn2-yNi)等のリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物粉末(例えばLiFePO、LiFe1-yMnPO、LiCoPOなど)、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、バナジウム酸化物(例えばV、V13)、酸化チタン等の遷移金属酸化物粉末、硫酸鉄(Fe(SO)、TiS、およびFeS等の遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。ただし、x、y、zは、数であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<y+z<1である。これら正極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。これらの活物質の中でも、特に、Niおよび/またはMnを含有する活物質は(遷移金属中のNiおよび/またはMnの合計量が50mol%以上の場合は殊更)、原料由来成分または金属イオンの溶出によって、塩基性が高くなる傾向があり、その影響によってバインダー樹脂のゲル化や分散状態の悪化が起こりやすいことから、Niおよび/またはMnを含有する活物質を含有する電池の場合、本実施形態が特に有効である。
負極活物質は、特に限定されないが、例えば、リチウムイオンを可逆的にドーピングまたはインターカレーション可能な金属Li、またはその合金、スズ合金、シリコン系材料(金属Si,Si合金、SiOなど)、LiTiO、LiFe、LiFe、LiWO等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、樹脂焼成炭素材料を用いることができる。ただし、xは数であり、0<x<1である。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。特にシリコン系材料を用いる場合、理論容量が大きい反面、体積膨張が極めて大きいため、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、樹脂焼成炭素材料等と組み合わせて用いるのが好ましい。
分散媒は、CNT分散体の説明で記載した分散媒と同様のものが使用できる。CNTの分散性の観点からCNT分散体に含まれる分散媒を使用することが好ましい。
バインダー樹脂は、通常、塗料のバインダー樹脂として用いられるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。複合スラリーに用いるバインダー樹脂は、活物質、CNT等の物質間を結合することができる樹脂が好ましい。複合スラリーに用いるバインダー樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン等を構造単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース系樹脂;、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなエラストマー;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でもよい。特にフッ素樹脂が好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、これらの変性体等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐性面から分子内にフッ素原子を有する重合体または共重合体、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等、これらの構造単位を有する樹脂、これらの変性体等が好ましい。
ポリフッ化ビニリデン及びその変性体の市販品としては、例えば、株式会社クレハ製のKFポリマーシリーズ「W#7300、W#7200、W#1700、W#1300、W#1100、W#9700、W#9300、W#9100、L#7305、L#7208、L#1710、L#1320、L#1120」等、solvay製solefシリーズ「6008、6010、6012、1015、6020、5130、9007、460、41308、11010、21510、31508、60512」等が挙げられる(いずれも商品名)。
複合スラリー中の活物質及びCNTの分散性は、CNT分散体と同様、動的粘弾性測定による複素弾性率および位相角で評価できる。複合スラリーの複素弾性率は、複合スラリーの硬さを示し、活物質とCNTの分散性が良好であるほど、また、スラリーが低粘度であるほど小さくなる傾向にある。しかし、CNTの繊維長が大きい場合には、CNT分散体同様、構造粘性により、複素弾性率が高い数値となる場合がある。また、活物質やCNTの分散状態に加え、CNT、分散剤、およびその他樹脂成分の絡まり、またはこれらの分子間力等の影響によっても変化する。
また、位相角も複素弾性率と同様に、複合スラリーに構造粘性がある場合には、活物質やCNTがスラリー中で均一かつ安定に分散された状態であっても、位相角が低い数値となる場合がある。また、複素弾性率と同様に、活物質やCNTの分散状態に加え、CNT、分散剤、およびその他樹脂成分の絡まり、またはこれらの分子間力等の影響によっても変化する。
複合スラリーにおいて、複素弾性率X(Pa)および位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上4,000以下であることで、複合スラリーが高濃度で高い流動性を有し、かつ、導電性が非常に良好な電極用複合物及び電極膜を得ることができる。複素弾性率X(Pa)および位相角Y(°)の積(X×Y)は、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、45以上であることがさらに好ましい。また、3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。さらに、500以下が一層好ましい。これによって、活物質とCNTが混合した状態で分散性及び流動性をさらに改善することができる。
複合スラリーにおいては、CNT分散体を含むことで活物質の分散がし易くなり、上記パラメータの範囲内への調整が容易となり均一な複合体が形成される。これはCNT分散体中に含まれるCNTや分散剤等の成分が活物質の分散安定化に作用するためと思われる。
複合スラリーにバインダー樹脂を含む場合、複素弾性率X(Pa)および位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上3,000以下であることで、複合スラリーが高濃度で高い流動性を有し、かつ、導電性が非常に良好な電極用複合物及び電極膜を得ることができる。複素弾性率X(Pa)および位相角Y(°)の積(X×Y)は、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、45以上であることがさらに好ましい。また、2,000以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。さらに、100以下が一層好ましい。
複合スラリーは、必要に応じて、その他の任意成分を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜含んでもよい。任意成分は、複合スラリー作製前、混合時、混合後、又はこれらの組み合わせ等、任意のタイミングで添加することができる。任意成分は、上記CNT分散体で説明したものであってよい。
複合スラリーの粘度は、B型粘度計を用いて、25℃において60rpmで測定した粘度が10mPa・s以上10000mPa・s未満であることが好ましく、10mPa・s以上5000mPa・s未満であることがより好ましく、10mPa・s以上2,000mPa・s未満であることがさらに好ましい。
複合スラリーの動的粘弾性測定による複素弾性率は、0.1Pa以上であることが好ましく、0.3Pa以上であることがより好ましく、0.5Pa以上であることがさらに好ましい。また、300Pa以下であってよく、200Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、30Pa以下であることがさらに好ましい。より好ましくは、0.1Pa以上200Pa以下である。
複合スラリーの動的粘弾性測定による位相角は、5°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましく、30°以上であることがさらに好ましく、40°以上であることが特に好ましい。また、90°以下であることが好ましく、88°以下であることがより好ましく、80°以下であることがさらに好ましい。より好ましくは5°以上88°以下である。例えば、複合スラリーは、動的粘弾性測定による複素弾性率及び位相角がそれぞれ0.1Pa以上200Pa以下及び5°以上90°以下を満たすことが好ましい。本明細書において、樹脂組成物の複素弾性率および位相角は、25℃、周波数1Hzでの測定値である。詳しくは、実施例に記載の方法により測定することができる。
複合スラリー中の固形分量は、複合スラリーの質量を基準として(複合スラリーの質量を100質量%として)、生産性や乾燥ムラ低減の観点から10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、50%質量以上が更に好ましい。また、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
複合スラリー中の活物質の含有量は、8質量%以上であることが好ましく、28質量%以上であることがより好ましく、48%以上であることがさらに好ましい。また、88質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
複合スラリー中のCNTの含有量は、活物質の質量を基準として(活物質の質量を100質量%として)、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05%以上であることがさらに好ましい。また、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲を上回ると、電極を作製した際の活物質の充填量が低下して電池の低容量化を招く。また、上記範囲を下回ると、活物質への導電パスが不十分となる場合がある。
複合スラリー中のバインダー樹脂の含有量は、活物質の質量を基準として(活物質の質量を100質量%として)、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
複合スラリー中に活物質の分散性を改善するために分散剤を添加しても良い。分散剤の含有量は、活物質の質量を基準として(活物質の質量を100質量%として)、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
<複合スラリーの製造方法>
本発明の製造方法は、複合スラリーを作製する工程を含んでよい。複合スラリーを作製する工程において、CNT分散体に活物質やバインダー樹脂、溶剤を添加する順序は特に限定されない。例えば、CNT分散体に活物質を添加して作製する方法;CNT分散体にバインダー樹脂を添加し組成物を作製し、次いで同組成物に活物質を添加して作製する方法;CNT分散体に活物質を添加し、次いでバインダー樹脂を添加して作製する方法;CNT分散体にバインダー樹脂及び活物質を一括して添加して作製する方法;等が挙げられる。バインダー樹脂を含む複合スラリーを作製する方法としては、CNT分散体にバインダー樹脂を添加し組成物を作製し、組成物に活物質をさらに添加し撹拌させる処理を行う方法が好ましい。撹拌に使用される撹拌装置は特に限定されない。撹拌装置には、ディスパー、ホモジナイザー等を用いることができる。
また、撹拌中に混合物を加温してバインダー樹脂の溶解を促進させてもよい。加温温度は30~80℃であってよい。またより高濃度の複合スラリーを提供するため、粉状のバインダー樹脂を複合スラリーに添加することで、バインダー樹脂の添加において分散媒の量が増加を抑えることができる。複合スラリーの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が所定範囲であることで、粉状のバインダー樹脂を添加する場合でも、複合スラリーの流動性及び分散性の低下を防止することができる。
液状媒体を除去し乾燥する方法としては、例えば、噴霧乾燥や凍結乾燥、真空乾燥などの乾燥方法が挙げられる。中でも噴霧乾燥は生産性や粒子径、形状の制御が容易なため好ましい。
噴霧乾燥法は供給された原料液を加熱された乾燥チャンバーに噴霧し、乾燥粉体を得ることが出来る。微小な霧状の液滴から形成される粒子は一般的な熱風オーブンなどに比べて乾燥凝集が抑制されるため微小な粒子径且つ狭い粒子径分布を持つ。噴霧方式は二流体ノズルや超音波ノズル、圧力ノズル、ロータリーアトマイザーなどがあり、原料液の濃度や粘度、液滴径などによって適宜選択される。
また、噴霧方式の外にも、乾燥温度や圧力、雰囲気などの乾燥条件によっても得られる粒子の物性は異なるため、得たい乾燥粉体の粒子径や形状、密度などにより適宜選択される。乾燥温度は溶剤の沸点以上が好ましい。
<二次電池電極用複合物>
二次電池用電極複合物は、複合スラリーから液状媒体を除去し乾燥してなるものであり、活物質、CNT、分散剤、及び任意でバインダー樹脂を含む。電極用複合物は、任意成分がさらに含まれてもよい。
二次電池用電極複合物の体積抵抗率が1Ωcm以下であることで、電極膜とした時に導電パスを効果的に得ることができ好ましい。5×10-1Ωcm以下であることが好ましく、1×10―1Ωcm以下がより好ましく、8×10-2Ωcm以下であることがさらに好ましい。
二次電池用電極複合物は、粒子状であることが好ましく、平均粒子径は、0.5μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上10μm以下がより好ましい。
<二次電池電極用合材スラリー>
二次電池電極用複合物を用いて二次電池電極用スラリーを作製することができる。二次電池電極用合材スラリーは、分散媒に電極用複合体とバインダー樹脂を添加して得ることができる。必要に応じて、CNT分散体、その他の任意成分を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜含んでもよい。任意成分は、合材スラリー作製前、混合時、混合後、又はこれらの組み合わせ等、任意のタイミングで添加することができる。任意成分は、上記CNT分散体で説明したものであってよい。活物質は、正極活物質または負極活物質であってよい。本明細書では、正極活物質および負極活物質を、単に「活物質」という場合がある。
合材スラリー中の固形分量は、合材スラリーの質量を基準として(合材スラリーの質量を100質量%として)、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
合材スラリー中の電極用複合物の含有量は、合材スラリーの質量を基準として(合材スラリーの質量を100質量%として)、28質量%以上であることが好ましく、38質量%以上であることがより好ましく、48%以上であることがさらに好ましい。また、88質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
合材スラリー中のバインダー樹脂の含有量は、活物質の質量を基準として(活物質の質量を100質量%として)、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。なお、電極用複合物にバインダー樹脂が含まれている場合は、合材スラリー中のバインダー樹脂全量が上記の範囲になるよう調整することが好ましい。
合材スラリー中のCNTの含有量は、活物質の質量を基準として(活物質の質量を100質量%として)、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05%以上であることがさらに好ましい。また、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本発明の電極用複合物にはCNTが含まれるため、合材スラリー中のCNTの全量が上記の範囲になるよう調整することが好ましい。上記範囲を上回ると、電極中の活物質の充填量が低下して電池の低容量化を招く。また、上記範囲を下回ると、電極および電池の導電性が不十分となる場合がある。
<二次電池電極用合材スラリーの製造方法>
合材スラリーを作製する方法において、分散媒に電極用複合物とバインダー樹脂を添加する順序は特に限定されない。例えば、分散媒にバインダー樹脂を添加しバインダー樹脂組成物を作製し、次いでバインダー樹脂組成物に電極用複合物を添加して作製する方法;分散媒に電極用複合物を添加し、次いでバインダー樹脂を添加して作製する方法;分散媒にバインダー樹脂及び電極用複合物を一括して添加して作製する方法等が挙げられる。合材スラリーを作製する方法としては、分散媒にバインダー樹脂を添加しバインダー樹脂組成物を作製し、次いでバインダー樹脂組成物に電極用複合物を添加し撹拌させる処理を行う方法が好ましい。撹拌に使用される撹拌装置は特に限定されない。撹拌装置には、ディスパー、ホモジナイザー等を用いることができる。
<二次電池用電極>
二次電池用電極は、正極又は負極活物質を含む合材スラリーを膜状に形成してなるものであり、CNT、分散剤、バインダー樹脂、及び活物質を含む。電極には、任意成分がさらに含まれてもよい。電極は、上記した方法にしたがって合材スラリーを作製し、合材スラリーを塗工して形成することができる。例えば、電極膜は、合材スラリーを集電体上に塗工し揮発分を除去することで形成することができる。
<二次電池電極の製造方法>
集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。集電体の厚みは、0.5~30μm程度が好ましい。
集電体上に合材スラリーを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げられる。塗工後の乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
合材スラリーの塗工後に、平版プレス、カレンダーロール等により圧延処理を行ってもよい。電極膜の厚みは、例えば、1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
<二次電池>
二次電池は、正極と、負極と、電解質とを含み、正極及び負極からなる群から選択される少なくとも1つが本発明の複合体から作製された電極膜を含む。二次電池の製造方法は、上記した方法にしたがって電極膜を形成することを含む。すなわち、電極用複合物を用意すること、電極用複合物に溶剤を添加すること、得られた合材スラリーを集電体に塗工して電極膜を形成することによって、二次電池を作製することができる。
正極としては、集電体上に正極活物質を含む合材スラリーを塗工乾燥して電極膜を作製したものを使用することができる。負極としては、集電体上負極活物質を含む合材スラリーを塗工乾燥して電極膜を作製したものを使用することができる。正極活物質及び負極活物質には、上記したものを用いることができる。合材スラリーは、上記した方法にしたがって作製することができる。
電解質は、液体電解質、ゲル状電解質、及び固体電解質のいずれであってもよい。例えば、液体電解質は、リチウム塩等の電解質塩及び非水溶媒を含むものであってよい。電解質塩としては、イオンが移動可能な従来公知の様々なものを使用することができる。例えば、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh(ただし、Phはフェニル基である)等のリチウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。電解質塩は非水溶媒に溶解して、電解液として使用することが好ましい。
非水溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びγ-オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用してもよい。
二次電池は、セパレーターを含むことが好ましい。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施した不織布等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
二次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとを備え、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
本発明の二次電池電極用複合物は、活物質とCNTが予め均一に複合されているため、上記で例示した合材スラリーから作製した電極だけでなく、固体や半固体プロセスで作製した電極にも好適に使用することができる。上記固体や半固体プロセスで作製した電極は、従来の非水電解液を用いるリチウムイオン電池に加え、全固体電池や半固体電池などにも適用することが可能となる。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
<分散剤の製造>
(製造例1 H-NBRの製造)
ステンレス製重合反応器に、アクリロニトリル32部、1,3-ブタジエン68部、オレイン酸カリ石ケン3部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、t-ドデシルメルカプタン0.48部、及びイオン交換水200部を加えた。窒素雰囲気下において、撹拌しながら、45℃で20時間の重合を行い、転化率90%で重合を終了した。未反応のモノマーを減圧ストリッピングにより除き、固形分濃度約30%のアクリロニトリル-共役ジエン系ゴムラテックスを得た。続いて、ラテックスにイオン交換水を追加して全固形分濃度を12%に調整し、容積1Lの撹拌機付きオートクレーブに投入して、窒素ガスを10分間にわたり流して内容物中の溶存酸素を除去した。水素化触媒としての酢酸パラジウム75mgを、パラジウムに対して4倍モルの硝酸を添加したイオン交換水180mLに溶解して調製した触媒液を、オートクレーブに添加した。オートクレーブ内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間の水素化反応を行った。その後、内容物を常温に戻し、オートクレーブ内を窒素雰囲気とした後、固形分を乾燥させて分散剤(H-NBR)を得た。H-NBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)(日本工業規格JISK6300-1に準拠して温度100℃でL形ローターを使用して測定した)は、44であった。また、水素添加率(全反射測定法による赤外分光分析から算出)は0.7%であった。1H-NMR定量スペクトルから求めたアクリロニトリル由来の構造単位は32%であった。
実施例および比較例では、以下のカーボンナノチューブを用いた。
・10B:JENOTUBE10B(JEIO製、多層CNT、平均外径10nm、比表面積230m/g)
・6A:JENOTUBE6A(JEIO製、多層CNT、平均外径6nm、比表面積700m/g)
・TUBALL:シングルウォールカーボンナノチューブ(OCSiAl製、平均外径1.6nm、炭素純度93%、比表面積975m/g)
実施例および比較例では、以下の分散剤およびバインダーを用いた。
・PVDF1:KFポリマーW#7200(クレハ製、ポリフッ化ビニリデン樹脂)
・PVDF2:KFポリマーW#9300(クレハ製、ポリフッ化ビニリデン樹脂)
・CMC1:サンローズAPP-84(日本製紙製、カルボキシメチルセルロース)
・CMC2:#1190(ダイセルファインイム製、カルボキシメチルセルロース)
実施例および比較例では、以下の活物質を用いた。
・NMC:S800(LiNi0.8Mn0.1Co0.1、金和製)
・黒鉛:SG―BH8(伊藤黒鉛製、球状黒鉛)
<カーボンナノチューブ分散体の作製>
(製造例1)
表1に示す材料と組成に従い、以下の通りカーボンナノチューブ分散体を作製した。まず、ステンレス容器にNMPをとり、50℃に加温した。ディスパーで撹拌しながら分散剤、添加剤を添加した後、1時間撹拌して、分散剤を溶解させた。続いて、CNTをディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、7,000rpmの速度で全体が均一になり、溝の最大深さ300μmのグラインドゲージにて分散粒度が250μm以下になるまでバッチ式分散を行った。このとき、グラインドゲージにて確認した分散粒度は180μmであった。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、循環式分散処理を行った。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。被分散液のB型粘度計(TOKISANGYO製、VISCOMETER、MODEL:BL)で測定した60rpmにおける粘度が3,000mPa・s以下となるまで分散した後、高圧ホモジナイザーにて表1に示すパス回数に従いパス式分散処理を行い、カーボンナノチューブ分散体1を得た。
(製造例2~5)
表1に示す材料、組成、およびパス回数に従い変更した以外は、製造例1-1と同様にしてカーボンナノチューブ分散体2~5を得た。
(製造例6)
表1に示す組成に従い、ステンレス容器にイオン交換水、分散剤を加えて、ディスパーで均一になるまで撹拌した。その後、CNTをディスパーで撹拌しながら添加し、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,000rpmの速度で全体が均一になり、グラインドゲージにて分散粒度が250μm以下になるまでバッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、20回パス式分散処理を行った。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力80MPaにて行い、カーボンナノチューブ分散体6を得た。

尚、表1に記載の添加剤は以下の通りである。
・NaOH:水酸化ナトリウム(東京化成工業製、純度>98.0%、顆粒状)
<複合スラリーの作製>
(実施例1-1)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器にカーボンナノチューブ分散体1と溶剤(NMP)を量り取り、ディスパーで撹拌しながら活物質(NMC)を添加した後、30分撹拌して複合スラリー1を得た。
(実施例1-2~1-8)
表2に示す組成に従い、実施例1―1と同様にして複合スラリー2~8を得た。
(実施例1-9)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器にカーボンナノチューブ分散体1と予めNMPに溶解した10%のバインダー溶液(ポリフッ化ビニリデン樹脂)、溶剤(NMP)を量り取り、ディスパーで撹拌しながら活物質(NMC)を添加した後、30分撹拌して複合スラリー9を得た。
(実施例1-10~1-12)
表2に示す組成に従い、実施例1―9と同様にして複合スラリー10~12を得た。
(実施例1-13)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器にカーボンナノチューブ分散体6と予めイオン交換水に溶解した2%のバインダー溶液(カルボキシメチルセルロース)、溶剤(イオン交換水)を量り取り、ディスパーで撹拌しながら活物質(黒鉛)を添加した後、30分撹拌して複合スラリー13を得た。
(実施例1-14)
表2に示す組成に従い、実施例1―13と同様にして複合スラリー14を得た。
(比較例1-1)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器にカーボンナノチューブ(10B)と溶剤(NMP)を量り取り、ディスパーで撹拌しながら活物質(NMC)を添加した後、30分撹拌して複合スラリー15を得た。
(比較例1-2)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器にカーボンナノチューブ分散体1と予めNMPに溶解した10%のバインダー溶液(ポリフッ化ビニリデン樹脂)、溶剤(NMP)を量り取り、ディスパーで撹拌しながら活物質(NMC)を添加した後、30分撹拌して複合スラリー16を得た。
(比較例1-3)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器にカーボンナノチューブ(10B)と予めイオン交換水に溶解した2%のバインダー溶液(カルボキシメチルセルロース)、溶剤(イオン交換水)を量り取り、ディスパーで撹拌しながら活物質(黒鉛)を添加した後、30分撹拌して複合スラリー17を得た。
<カーボンナノチューブ分散体及び複合スラリーの複素弾性率及び位相角の測定>
カーボンナノチューブ分散体及び複合スラリーの複素弾性率X及び位相角Yは、直径50mm、1°のコーンにてレオメーター(アントンパール・ジャパン株式会社製MCR302粘弾性測定装置)を用い、25℃、周波数1Hzにて、ひずみ率0.01%から5%の範囲で動的粘弾性測定を実施することで評価した。得られた複素弾性率が小さいほど分散性が良好であり、大きいほど分散性が不良である。また、得られた位相角が大きいほど分散性が良好であり、小さいほど分散性が不良である。さらに、得られた複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)を算出した。

<二次電池電極用複合物の作製>
(実施例2-1)
日本ビュッヒ社の噴霧乾燥器ミニスプレードライヤーB-290を使用し二次電池電極用複合物を作製した。イナートループB-295を使用したクローズドシステム条件(窒素雰囲気)で、複合スラリー1を210℃で噴霧乾燥することによって、電極用複合物1を得た。
(実施例2-2~2-12、比較例2-1、2-2)
実施例2―1と同様にして、複合スラリー2~12、15、16から、電極用複合物2~12、15、16を得た。
(実施例2-13)
日本ビュッヒ社の噴霧乾燥器ミニスプレードライヤーB-290を使用し複合物を作製した。オープンシステム条件で複合スラリー13を125℃で噴霧乾燥することによって、電極用複合物13を得た。
(実施例2-14、比較例2-3)
実施例2―13と同様にして、複合スラリー13、17から、電極用複合物13、17を得た。
<二次電池電極用複合物の導電性評価>
日東精工アナリテック社製粉体抵抗測定システムMCP-PD51型を用いて電極用複合物の導電性を評価した。低抵抗用粉体プロープを用いて四探針方式にて測定を行い、各サンプルに20kNの荷重を加えた際の体積抵抗率を導電性の評価値として使用した。
なお電極用複合物の導電性評価は比較例で作製した電極用複合物に対する相対値で比較した。
実施例2-1~2-8は比較例1、実施例2-9~2-12は比較例2、実施例2-13、2-14は比較例3で作製した電極用複合物をそれぞれ比較対象とした。
・導電性判定基準(比較用サンプルに対する相対値)
◎:0.2倍以下(優良)
〇:0.7倍未満0.2倍以上(良)
△:1倍未満0.7倍以上(不良)
×:1倍以上(不可)
<粒子形状の評価>
日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM―7800Fを用いて電極用複合物の粒子形状を評価した。
・粒子判定基準
〇:CNTやバインダーが、活物質の一次粒子または二次粒子表面に均一に複合(優良)
△:CNTやバインダーが、活物質と一部分離した状態で複合(不良)
×:CNTやバインダーが、活物質と分離した状態で複合(不可)
<正極合材スラリーおよび正極の作製>
容量150cmのプラスチック容器に予めNMPに溶解した10%のバインダー溶液(ポリフッ化ビニリデン樹脂:W#9300)13部と溶剤(NMP)23.3を量り取り、その後電極用複合物1を63.7部添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで150秒間撹拌し、合材スラリー1を得た。合材スラリー1の不揮発分は65質量%とした。
電極用複合物1を2~8,15にした以外は合材スラリー1と同様にして、合材スラリー2~8、15を得た。
容量150cmのプラスチック容器に溶剤(NMP)35部を量り取り、その後電極用複合物9を65部添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで150秒間撹拌し、合材スラリー9を得た。合材スラリー9の不揮発分は65質量%とした。
電極用複合物9を10~12,16にした以外は合材スラリー9と同様にして、合材スラリー10~12、16を得た。
合材スラリー1~12、15、16を、アプリケーターを用いて、厚さ20μmのアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥し、電極膜を作製した。その後、電極膜をロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、正極1~12、15、16を得た。なお、合材層の単位当たりの目付量が20mg/cmであり、圧延処理後の合材層の密度は3.2g/ccであった。
<負極合材スラリーおよび負極の作製>
容量150cmのプラスチック容器に溶剤(イオン交換水)49.19を量り取り、その後電極用複合物13を49.25部添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで150秒間撹拌し、その後バインダー(スチレンブタジエンゴム TRD-2001固形分48%水溶液)を1.56部を添加し、同自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌し合材スラリー9を得た。合材スラリー13の不揮発分は50質量%とした。
電極用複合物13を14、17にした以外は合材スラリー13と同様にして、合材スラリー14、17を得た。
合材スラリー13、14、17を集電体となる厚さ20μmの銅箔上にアプリケーターを用いて塗工した後、電気オーブン中で80℃±5℃で25分間乾燥して電極の単位面積当たりの目付量が10mg/cmとなるように調整した。さらにロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が1.6g/cmとなる負極13、14、17を作製した。
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て>
先に作製した正極1~12、15、16をφ16mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間にセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1 :1 で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<リチウムイオン二次電池正極のレート特性評価>
作製したリチウムイオン二次電池正極評価用セルを25℃ の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電レート0.2Cにて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流:0.02C電流 )を行った後、放電レート0.2Cにて放電終止電圧2.5Vで定電流放電を行った。この操作を3回繰り返した後、充電レート0.2Cにて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流:0.02C電流 )を行い、放電レート3Cにて放電終止電圧2.5Vで定電流放電を行った。1Cは負極の理論容量を1時間で充電または放電する電流値とした。レート特性は、0.2C放電容量と3C放電容量の比、下記の式1で表すことができる。
(式1)サイクル特性=3回目の0.2C放電容量/20回目の0.2C放電容量×100(%)
レート特性判定基準
◎:80%以上(優良)
○:60%以上80%未満(良)
△:40%以上60%未満(不良)
×:40%未満(極めて不良)
<リチウムイオン二次電池正極のサイクル特性評価>
作製したリチウムイオン二次電池正極評価用セルを25℃ の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電レート0.2Cにて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流:0.02C電流 )を行った後、放電レート0.2Cにて放電終止電圧2.5Vで定電流放電を行った。この操作を200回繰り返した。1Cは正極の理論容量を1時間で充電または放電する電流値とした。サイクル特性は、3回目の0.2C放電容量と200回目の0.2C放電容量の比、下記の式2で表すことができる。
(式2)サイクル特性=3回目の0.2C放電容量/200回目の0.2C放電容量×100(%)
サイクル特性判定基準
◎:85%以上(優良)
○:80%以上85%未満(良)
△:50%以上80%未満(不良)
×:50%未満(極めて不良)
<リチウムイオン二次電池負極評価用セルの組み立て>
先に作製した負極13、14、17をφ16mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間にセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートを3:5:2(体積比)の割合で混合した混合溶媒を作製し、さらに添加剤として、VC(ビニレンカーボネート)とFEC(フルオロエチレンカーボネート)を混合溶媒100質量部に対してそれぞれ1質量部加えた後、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<リチウムイオン二次電池負極のレート特性評価>
作製したリチウムイオン二次電池負極評価用セルを25℃ の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電レート0.2Cにて充電終止電圧0.05Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流:0.02C電流 )を行った後、放電レート0.2Cにて放電終止電圧1.5Vで定電流放電を行った。この操作を3回繰り返した後、充電レート0.2Cにて充電終止電圧0.05Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流:0.02C電流 )を行い、放電レート3Cにて放電終止電圧1.5Vで定電流放電を行った。1Cは負極の理論容量を1時間で充電または放電する電流値とした。レート特性は、0.2C放電容量と3C放電容量の比、上記の式1で表すことができる。
レート特性判定基準
◎:80%以上(優良)
○:60%以上80%未満(良)
△:40%以上60%未満(不良)
×:40%未満(極めて不良)
<リチウムイオン二次電池負極のサイクル特性評価>
作製したリチウムイオン二次電池負極評価用セルを25℃ の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電レート0.2Cにて充電終止電圧0.05Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流:0.02C電流 )を行った後、放電レート0.2Cにて放電終止電圧1.5Vで定電流放電を行った。この操作を20回繰り返した。1Cは負極の理論容量を1時間で充電または放電する電流値とした。サイクル特性は、3回目の0.2C放電容量と20回目の0.2C放電容量の比、上記の式2で表すことができる。
サイクル特性判定基準
◎:85%以上(優良)
○:80%以上85%未満(良)
△:50%以上80%未満(不良)
×:50%未満(極めて不良)

表3に示すように、比較例2―1~3に比べ、実施例2―1~14ではCNT分散体を用いて複合スラリーの粘弾性特性が適切な範囲にあり、得られた電極用複合物の導電性が高く且つ、優れた電池特性を持つことが確認された。
比較例では、複合スラリーの粘弾性特性が適切な範囲より外れることで、例えば図2でも示された通り、CNTやバインダー樹脂が析出し均一な複合状態とならずに導電性や電池特性が低いものと考えられる。
以上より、本発明の製造方法により、作製された電極用複合物を用いると優れた導電性や電池特性を発現できることが示された。

Claims (6)

  1. カーボンナノチューブおよび活物質を含む二次電池電極用複合物の製造方法であって、
    カーボンナノチューブ分散体と、活物質と、分散媒とを含み、動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上4000以下である複合スラリーを乾燥する工程を含むことを特徴とする二次電池電極用複合物の製造方法。
  2. 前記複合スラリーが、更に、バインダー樹脂を含み、動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が5以上3000以下であることを特徴とする請求項1記載の二次電池電極複合物の製造方法。
  3. カーボンナノチューブ分散体の動的粘弾性測定による25℃及び1Hzでの複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)が30以上3000以下であることを特徴とする請求項1または2記載の二次電池電極用複合物の製造方法。
  4. 乾燥方法が噴霧乾燥であることを特徴とする請求項1または2記載の二次電池用電極複合物の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の方法にしたがって二次電池用電極複合物を作製し、前記二次電池用電極複合物を用いて電極膜を形成することを含む、電極膜の製造方法。
  6. 請求項1または2に記載の方法にしたがって二次電池用電極複合物を作製し、前記二次電池用電極複合物を用いて電極膜を形成することを含む、二次電池の製造方法。





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