JP2024028711A - 微小血管血栓症の処置のための標的化血栓溶解 - Google Patents

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Abstract

【課題】血小板-VWF複合体、或いは血小板-VWF複合体が位置する部位に、フィブリン非依存性様式で、プラスミノーゲン活性化因子の標的化送達を行うための融合タンパク質を提供する。【解決手段】本発明の融合タンパク質は、例えば血栓性血小板減少性紫斑病などの疾患において微小血管血栓症を引き起こしうる、かかる血小板-VWF複合体に関連する疾患又は病態の防止又は処置の方法において使用するためのものである。融合タンパク質に組み込むのに好ましい標的化因子は、例えば、VWF又は血小板に対するナノボディである。融合タンパク質に使用するのに好ましいプラスミノーゲン活性化因子は、uPA又はtPAのプロテアーゼドメインを含む。本発明はさらに、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子、例えば遺伝子療法ベクター、及び本発明の融合タンパク質又はかかる遺伝子療法ベクターを含む医薬組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、医薬及び薬学の分野、特に、例えば血栓性血小板減少性紫斑病などの微小血管血栓症に関連する疾患又は病態の防止又は処置において使用するための生物製剤の分野に関する。より詳細には、本発明は、標的化因子及びプラスミノーゲン活性化因子を含む融合タンパク質に関し、この標的化因子は、フィブリン非依存性様式で血管閉塞を酵素的に分解することを目的として、VWF、血小板、及び活性化した血管内皮のうちの少なくとも1つにプラスミノーゲン活性化因子を標的化する。本発明はさらに、かかる融合タンパク質をコードする遺伝子療法ベクターに関する。
微小血管血栓症(MVT:Microvascular thrombosis)は、微小血管の血小板凝集体の形成を特徴とする。血小板凝集体は、最低でも血小板及びVWFから構成される。このことは、血小板及びVWFは豊富だがフィブリンに乏しい微小血栓が微小血管系を閉塞させ、生命を脅かす結果をもたらす、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)において明らかになる。したがって、大血管血栓症において見られるフィブリンは、こうした微小血管閉塞に本質的に必要であるわけではない。MVTは、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、及び補体媒介性血栓性微小血管症を含むいくつかの病状に共通する特徴である(Georgeら、2014年、N Engl J Med.371巻(7号):654~66頁)。MVTの重症例では、致命的な結果を伴う多臓器不全が起こる場合がある。重症度の低い症例においても臓器損傷が生じ、患者の生活の質と平均余命との両方を低下させる可能性がある。近年の研究では、循環器疾患を有し、放射線検査で大血管閉塞の明白な兆候を示さない、より一般的な集団の患者における循環器疾患/事象の根底には、微小血管疾患があると示唆されている。微小血管疾患は、特に女性において、最終的に心不全を引き起こすと考えられている。
TTP患者は、血小板がフォンヴィルブランド因子(VWF)の超大型多量体と複合体を形成すると、微小血管血栓症の発作を経験する。この発作は、酵素ADAMTS13(ディスインテグリン及びトロンボスポンジンI型モチーフを有するメタロプロテイナーゼメンバー13)の活性の著しい減少の結果である。ADAMTS13は通常、VWF多量体のサイズを酵素的に低減させることにより、VWFの血栓形成性を調節する。そのためには、VWFは、球状形態をほどいて展開された立体構造になることにより、A2ドメインをタンパク質分解のために露出させる必要がある。大多数のTTP患者は、ADAMTS13に対する中和自己抗体の影響を受ける。小さな下位集団では、欠損をもたらすADAMTS13の変異について記述されている(Upshaw-Shulman症候群)。
現在のTTP療法は、阻害性抗体を枯渇させると同時にADAMTS13活性を回復させるための大量の血漿交換を必要とする。しかしながら、持続性のある自己抗体により、微小血栓の排除が妨げられる。そのため治療は時間がかかり、非常に高コストなものになる(Fijnheerら、Ned Tijdsch Hematol 2016年、13巻(1号):18~24頁)。
ADAMTS13のほかに、酵素のプラスミンによってもVWFは切断されうる(Berkowitzら、J Clin Invest 1987年2月、79巻(2号):524~31頁)。本発明者らは、TTPのマウスモデルにおける(ストレプトキナーゼによる)全身的なプラスミノーゲンの活性化に治療能があることを過去に特定したが、このことは、プラスミンがADAMTS13の機能的代替物として作用しうることを示唆している(Tersteegら、2014年、Circulation、129巻(12号):1320~31頁)。プラスミン(プラスミノーゲン)は展開されたVWFに直接結合することができるが、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)及びウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)といった天然のプラスミノーゲン活性化因子にはVWFに直接結合することができない。tPA及びuPAの天然の標的は、それぞれ、フィブリン及び内皮細胞受容体uPARである。さらに、TTPにおける微小血栓はフィブリンに乏しく、フィブリンが他のタイプのMVTに必須であるかどうかは不明である。このため、大血管疾患の処置において血栓溶解剤として一般的に使用されている分子(すなわちtPA、uPA)が、MVTの処置においては無効になる。さらに、安全上の理由(すなわち血小板数低下)のため、全身的なプラスミノーゲンの活性化は避けることが望ましい。
本発明の目的の1つは、MVT及び関連する病態を処置するための手段及び方法を提供することである。したがって、本発明は、血小板-VWF複合体、或いは血小板-VWF複合体が位置する部位に、フィブリン非依存性様式で、プラスミノーゲン活性化因子の標的化送達を行うための融合タンパク質を提供する。本発明はさらに、微小血管閉塞の部位に対するプラスミノーゲン活性化の局所送達/刺激によって防止又は処置されうる病態の治療方法を提供する。
第1の態様において、本発明は、プラスミノーゲン活性化因子と、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓の部位にプラスミノーゲン活性化因子を標的化するための標的化因子とを含む、融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合することが好ましい。さらに、本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、血小板にあるGPIIb/IIIa受容体の活性化型のみに特異的に結合する標的化因子ではないことが好ましい。より好ましくは、本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、a)少なくとも折り畳まれていないVWFに結合する標的化因子であって、好ましくは、球状VWFよりも折り畳まれていないVWFに優先的に結合する、標的化因子、b)VWFのD3ドメインに結合する標的化因子、c)血小板のGP1B受容体に結合する標的化因子、d)血小板のインテグリンαIIb/βIIIに結合する標的化因子、e)活性化した内皮によって優先的に発現される受容体に結合する標的化因子であって、好ましくは該受容体が、E-セレクチン、P-セレクチン、uPAR、c1q受容体、キニンB1受容体、プラスミノーゲン受容体KT(PLGR-KT)、内皮タンパク質C受容体、トロンボモジュリン、n-カドヘリン、ICAM-1、及びVCAM-1からなる群から選択される、標的化因子、並びにf)活性化又は損傷した内皮の膜マーカーに結合する標的化因子であって、該膜マーカーが、アニオン性リン脂質、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルエタノールアミンのうちの1つ又は複数である、標的化因子のうちの1つ又は複数である。一実施形態において、好ましくは、本発明の融合タンパク質は、2種以上の標的化因子を含む。
本発明に係る融合タンパク質は、好ましくは、標的化因子が、a)VWF、血小板、及び活性化した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する抗体可変ドメイン、並びにb)VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮に天然に結合するタンパク質由来の結合性ドメインであって、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する、結合性ドメインのうちの少なくとも1つを含む、融合タンパク質である。したがって、本発明に係る融合タンパク質において、抗体可変ドメインは、好ましくはVHH、より好ましくはヒト化VHHである。或いは、本発明に係る融合タンパク質において、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮に天然に結合するタンパク質由来の結合性ドメインは、好ましくは、i)VWFの血小板GP1B受容体結合性A1ドメイン、ii)ADAMTS13、第XII因子、第H因子(補体調節因子)、プラスミノーゲン、及び第VIII因子のうちの1つのVWF結合性ドメイン、並びにiii)ビタミンK依存性カルボキシル化/ガンマカルボキシグルタミン酸(GLA)ドメイン、第V因子のCドメイン、及び第VIII因子のCドメインから選択される膜結合性ドメインからなる群から選択される結合性ドメインを含む。
上記に定義した本発明の融合タンパク質において、プラスミノーゲン活性化因子は、好ましくは、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、又はスタフィロキナーゼのプロテアーゼドメインを含む。本発明の融合タンパク質では、プラスミノーゲン活性化因子が、そのプロテアーゼドメインのすぐ上流にプラスミノーゲン活性化因子において天然に発生する連結ペプチドのシステイン含有部分を少なくともさらに含むことが好ましい。任意選択で、本発明の融合タンパク質は、標的化因子とプラスミノーゲン活性化因子とを結合させるリンカーアミノ酸配列を含む。
したがって、本発明に係る融合タンパク質は、好ましくは、N末端からC末端の順に、a)上記に定義した1つ又は複数の標的化因子であって、任意選択でリンカーアミノ酸配列によって結合している、標的化因子と、b)任意選択で、リンカーアミノ酸配列と、c)上記に定義したプラスミノーゲン活性化因子又はプラスミノーゲン由来プロテアーゼドメインとを含む。
第2の態様において、本発明は、上記に定義した本発明に係る融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。好ましくは、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、融合タンパク質に作動可能に連結したシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。核酸分子は、好ましくは、融合タンパク質の発現を助ける調節エレメントをさらに含み、この調節エレメントは、ヌクレオチド配列に作動可能に連結している。
第3の態様において、本発明は、本発明に係る核酸分子を含む遺伝子療法ベクターに関する。
第4の態様において、本発明は、本発明に係る融合タンパク質、又は本発明に係る遺伝子療法ベクター、及び薬学的に許容できる賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
第5の態様において、本発明は、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連する疾患又は病態、好ましくは微小血管血栓症に関連する疾患又は病態の防止又は処置に使用するための、本発明に係る融合タンパク質、本発明に係る遺伝子療法ベクター、又は本発明に係る医薬組成物に関する。より好ましくは、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む(微小)血栓に関連する疾患又は病態は、後天性又は遺伝性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、補体媒介性血栓性微小血管症、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、非閉塞性血栓、閉塞性血栓の形成、動脈血栓形成、急性冠閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈バイパスグラフト、冠状動脈弁置換術、及び血管形成術、ステント術、又は粥腫切除術などの冠動脈インターベンションに起因する再狭窄及び障害、血管形成術、粥腫切除術、又は動脈ステント術の後の肥厚、脈管系の閉塞性症候群又は罹患動脈の開存性の欠如、一過性脳虚血発作、不安定狭心症又は安定狭心症、大脳梗塞、HELLP症候群、頸動脈内膜剥離術、頸動脈狭窄、重症虚血肢、心塞栓、末梢血管疾患、再狭窄、鎌状赤血球症、並びに心筋梗塞からなる群から選択される。
第6の態様において、本発明は、本発明に係る融合タンパク質、本発明に係る遺伝子療法ベクター、又は本発明に係る医薬組成物を、それを必要とする対象に有効量で投与するステップを含む、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連する疾患又は病態、好ましくは、微小血管血栓症に関連する疾患又は病態の処置又はリスク低減の方法に関する。より好ましくは、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む(微小)血栓に関連する疾患又は病態は、後天性又は遺伝性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、補体媒介性血栓性微小血管症、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、非閉塞性血栓、閉塞性血栓の形成、動脈血栓形成、急性冠閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈バイパスグラフト、冠状動脈弁置換術、及び血管形成術、ステント術、又は粥腫切除術などの冠動脈インターベンションに起因する再狭窄及び障害、血管形成術、粥腫切除術、又は動脈ステント術の後の肥厚、脈管系の閉塞性症候群又は罹患動脈の開存性の欠如、一過性脳虚血発作、不安定狭心症又は安定狭心症、大脳梗塞、HELLP症候群、頸動脈内膜剥離術、頸動脈狭窄、重症虚血肢、心塞栓、末梢血管疾患、再狭窄、並びに心筋梗塞からなる群から選択される。
VHH-miniUPA(mUPA)構築物。A)mUPA構築物の概略図。B)VHHコード配列を含むmUPA構築物(VHH-mUPA)の概略図。 VHH-miniUPA(mUPA)構築物。A)mUPA構築物の概略図。B)VHHコード配列を含むmUPA構築物(VHH-mUPA)の概略図。 精製されたVHH-mUPA構築物のウェスタンブロット。 プラスミンによる活性化後のVHH-mUPA構築物の活性。 VHH-mUPA構築物によるプラスミノーゲン活性化。 球状VWF又は開いたVWFの存在下におけるVHH-mUPA構築物によるプラスミノーゲン活性化。A)VHH-sVWFによるプラスミノーゲン活性化、B)VHH-D3によるプラスミノーゲン活性化、C)VHH-GP1B17によるプラスミノーゲン活性化、D)VHH-R2によるプラスミノーゲン活性化、E)VHH-A12によるプラスミノーゲン活性化。 球状VWF又は開いたVWFの存在下におけるVHH-mUPA構築物によるプラスミノーゲン活性化。A)VHH-sVWFによるプラスミノーゲン活性化、B)VHH-D3によるプラスミノーゲン活性化、C)VHH-GP1B17によるプラスミノーゲン活性化、D)VHH-R2によるプラスミノーゲン活性化、E)VHH-A12によるプラスミノーゲン活性化。 球状VWF又は開いたVWFの存在下におけるVHH-mUPA構築物によるプラスミノーゲン活性化。A)VHH-sVWFによるプラスミノーゲン活性化、B)VHH-D3によるプラスミノーゲン活性化、C)VHH-GP1B17によるプラスミノーゲン活性化、D)VHH-R2によるプラスミノーゲン活性化、E)VHH-A12によるプラスミノーゲン活性化。 球状VWF又は開いたVWFの存在下におけるVHH-mUPA構築物によるプラスミノーゲン活性化。A)VHH-sVWFによるプラスミノーゲン活性化、B)VHH-D3によるプラスミノーゲン活性化、C)VHH-GP1B17によるプラスミノーゲン活性化、D)VHH-R2によるプラスミノーゲン活性化、E)VHH-A12によるプラスミノーゲン活性化。 球状VWF又は開いたVWFの存在下におけるVHH-mUPA構築物によるプラスミノーゲン活性化。A)VHH-sVWFによるプラスミノーゲン活性化、B)VHH-D3によるプラスミノーゲン活性化、C)VHH-GP1B17によるプラスミノーゲン活性化、D)VHH-R2によるプラスミノーゲン活性化、E)VHH-A12によるプラスミノーゲン活性化。 構築物VHH-sVWF、VHH-D3、VHH-GP1B17、VHH-R2、及びVHH-A12の37℃で5分間のインキュベーション後のプラスミン基質の変換。 VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解(すなわち酵素的分解)。凝集物の溶解を経時的にモニタリングした。A)VHH-sVWFにより誘導された微小血栓溶解、B)VHH-D3により誘導された微小血栓溶解、C)VHH-R2により誘導された微小血栓溶解、D)VHH-GP1B17により誘導された微小血栓溶解。 VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解(すなわち酵素的分解)。凝集物の溶解を経時的にモニタリングした。A)VHH-sVWFにより誘導された微小血栓溶解、B)VHH-D3により誘導された微小血栓溶解、C)VHH-R2により誘導された微小血栓溶解、D)VHH-GP1B17により誘導された微小血栓溶解。 VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解(すなわち酵素的分解)。凝集物の溶解を経時的にモニタリングした。A)VHH-sVWFにより誘導された微小血栓溶解、B)VHH-D3により誘導された微小血栓溶解、C)VHH-R2により誘導された微小血栓溶解、D)VHH-GP1B17により誘導された微小血栓溶解。 VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解(すなわち酵素的分解)。凝集物の溶解を経時的にモニタリングした。A)VHH-sVWFにより誘導された微小血栓溶解、B)VHH-D3により誘導された微小血栓溶解、C)VHH-R2により誘導された微小血栓溶解、D)VHH-GP1B17により誘導された微小血栓溶解。 A)50%の微小血栓の分解が起こった時点を判定するための分析方法の図式的な例。B)構築物VHH-sVWF、VHH-D3、VHH-GP1B17、VHH-R2、及びVHH-A12による50%の微小血栓の分解。 A)50%の微小血栓の分解が起こった時点を判定するための分析方法の図式的な例。B)構築物VHH-sVWF、VHH-D3、VHH-GP1B17、VHH-R2、及びVHH-A12による50%の微小血栓の分解。 流動灌流実験において分析した、ヒト血管内皮細胞に粘着したVWF-血小板複合体の微小血栓溶解。VWF-血小板複合体は血小板のストリングとして視認でき、視認できるストリングの数は、示されている融合タンパク質の添加に応じた時間の関数として計数されている。 VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解(すなわち酵素的分解)。凝集物の溶解を光透過凝集計で経時的にモニタリングした。A)プラスミノーゲン(100μg/mL)の存在下で、カプラシズマブ(154.3nM)又はUPAを含むVHH-D3融合タンパク質(154.3nM)によって誘導した微小血栓溶解。B)プラスミノーゲン(100μg/mL)の存在下で、カプラシズマブ(154.3nM)又はUPAを含むVHH-GP1B17融合タンパク質(154.3nM)によって誘導した微小血栓溶解。 VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解(すなわち酵素的分解)。凝集物の溶解を光透過凝集計で経時的にモニタリングした。A)プラスミノーゲン(100μg/mL)の存在下で、カプラシズマブ(154.3nM)又はUPAを含むVHH-D3融合タンパク質(154.3nM)によって誘導した微小血栓溶解。B)プラスミノーゲン(100μg/mL)の存在下で、カプラシズマブ(154.3nM)又はUPAを含むVHH-GP1B17融合タンパク質(154.3nM)によって誘導した微小血栓溶解。
定義
「相同性」、「配列同一性」などの用語は、本明細書では交換可能に使用される。本明細書において、配列同一性は、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド若しくはタンパク質)の配列又は2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)の配列を比較することによって決定される、これらの配列間の関係として定義される。当技術分野において、「同一性」は、アミノ酸配列又は核酸配列(場合による)のストリング間のマッチによって決定される、このような配列同士の間の配列関連性の程度も意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存的アミノ酸置換物を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」及び「類似性」は、公知の方法によって容易に計算することができる。
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じて大域的又は局所的なアライメントアルゴリズムを使用した、2つのペプチド又は2つのヌクレオチドの配列のアライメントによって決定することができる。同様な長さの配列は、全長にわたって配列を最適にアラインする大域的アライメントアルゴリズム(例えばNeedleman Wunsch)を使用してアラインするのが好ましいが、長さが実質的に異なる配列は、局所的アライメントアルゴリズム(例えばSmith Waterman)を使用してアラインするのが好ましい。配列が(デフォルトパラメータを使用して例えばGAP又はBESTFITなどのプログラムによって最適にアラインした場合に)少なくとも一定の最小配列同一性パーセンテージ(以下に定義するとおり)を共有するとき、これらの配列は「実質的に同一」又は「本質的に同様」であるということができる。GAPでは、2つの配列を全長(完全長)にわたってアラインしてマッチの数を最大にし、ギャップの数を最小限に抑える、Needleman及びWunschの大域的アライメントアルゴリズムを使用する。大域的アライメントは、2つの配列の長さが同様である場合に配列同一性を決定するために好適に使用される。一般的に、ギャップ生成ペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)、及びギャップ伸長ペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)のGAPデフォルトパラメータが使用される。ヌクレオチドの場合は、使用されるデフォルトのスコアリング行列はnwsgapdnaであり、タンパク質の場合は、デフォルトのスコアリング行列はBlosum62である(Henikoff&Henikoff、1992年、PNAS 89巻、915~919頁)。配列アライメント及び配列同一性パーセンテージのスコアは、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121-3752 USAから入手可能なGCG Wisconsin Packageバージョン10.3などのコンピュータプログラムを使用すること、又は、上記のGAPと同じパラメータ若しくはデフォルト設定を使用して、EmbossWINバージョン2.10.0のプログラム「needle」(大域的なNeedleman Wunschアルゴリズムを使用するもの)若しくは「water」(局所的なSmith Watermanアルゴリズムを使用するもの)などのオープンソースソフトウェアを使用することにより、決定することができる(「needle」及び「water」の両方、並びにタンパク質及びDNAのアライメントの両方で、デフォルトのギャップオープニングペナルティは10.0であり、デフォルトのギャップ伸長ペナルティは0.5であり、デフォルトのスコアリング行列は、タンパク質の場合はBlossum62であり、DNAの場合はDNAFullである)。配列の全体的な長さが実質的に異なる場合、Smith Watermanアルゴリズムを使用するものなどの局所的アライメントが好ましい。
代替的な類似性又は同一性のパーセンテージは、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用し、公開データベースに対して検索することによって決定することができる。したがって、本発明の核酸及びタンパク質の配列を「クエリ配列」としてさらに使用して、公開データベースに対する検索を行い、例えば、他のファミリーメンバー又は関連する配列を特定することができる。このような検索は、Altschulら(1990年)J.Mol.Biol.215巻:403~10頁のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、単語長=12で行うと、本発明のオキシドレダクターゼ核酸分子と相同のヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、BLASTxプログラム、スコア=50、単語長=3で行うと、本発明のタンパク質分子と相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的のためにギャップ付きアライメントを得るためには、Altschulら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻(17号):3389~3402頁に記載されているようにGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する際は、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメータを使用することができる。National Center for Biotechnology Informationのホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照されたい。
当業者には明らかであろうが、アミノ酸類似性の程度を決定する際、当業者は、任意選択で、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮に入れてもよい。保存的アミノ酸置換とは、同様の側鎖を有する残基の互換性を指す。保存的置換のためのアミノ酸残基のクラスの例を、以下の表に示す。
Figure 2024028711000001

Figure 2024028711000002

Figure 2024028711000003
本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列はまた、中等度、又は好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に例示するコード融合タンパク質のヌクレオチド配列とハイブリダイズする能力によって定義されうる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、本明細書では、少なくとも約25、好ましくは約50ヌクレオチド、75又は100、最も好ましくは約200以上のヌクレオチドからなる核酸配列が、約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液中、約65℃の温度でハイブリダイズすることができる条件、及び約0.1M以下の塩を含む溶液、好ましくは0.2×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液中で65℃における洗浄と定義される。ハイブリダイゼーションは、好ましくは一晩、すなわち少なくとも10時間にわたって行われ、洗浄は、好ましくは少なくとも1時間にわたり、洗浄液を少なくとも2回交換して行われる。これらの条件は通常、約90%以上の配列同一性を有する配列の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする。
中等度の条件は、本明細書では、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは約200以上のヌクレオチドからなる核酸配列が、約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液中、約45℃の温度でハイブリダイズすることができる条件、及び約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液中で室温における洗浄と定義される。ハイブリダイゼーションは、好ましくは一晩、すなわち少なくとも10時間にわたって行われ、洗浄は、好ましくは少なくとも1時間にわたり、洗浄液を少なくとも2回交換して行われる。これらの条件は通常、最大50%の配列同一性を有する配列の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする。当業者であれば、同一性が50%~90%と異なる配列を特異的に特定するために、これらのハイブリダイゼーション条件を改変することができよう。
「核酸構築物」又は「核酸ベクター」は、本明細書では、組換えDNA技術の使用からもたらされる人工の核酸分子を意味するものと理解される。したがって、核酸構築物は天然に発生する核酸分子(の一部)を含んでもよいが、「核酸構築物」という用語には、天然に発生する核酸分子は含まれない。「発現ベクター」又は「発現構築物」という用語は、かかる発現ベクター又は構築物と適合する宿主細胞又は宿主生物においてヌクレオチド配列又は遺伝子の発現をもたらすことができる核酸分子を指す。これらの発現ベクターには、典型的に、発現させようとするヌクレオチド配列に作動可能に連結し、ヌクレオチド配列の発現をもたらす、調節配列エレメントが含まれる。かかる調節エレメントは通常、少なくとも好適な転写調節配列と、任意選択で、3’転写終結シグナルとを含む。発現エンハンサーエレメントなど、発現をもたらすのに必要又は有用な追加のエレメントが存在する場合もある。発現ベクターは好適な宿主細胞に導入され、宿主細胞のインビトロ細胞培養物においてコード配列の発現をもたらすことができるようになる。発現ベクターは、本発明の宿主細胞又は宿主生物における複製に好適であるが、発現構築物は通常、宿主細胞のゲノムが維持されるように宿主細胞のゲノムに組み込まれる。核酸を細胞に導入するための技術は、当技術分野で十分に確立されており、特定の状況に応じて任意の好適な技術を用いることができる。真核細胞の場合、好適な技術としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、電気穿孔、リポソーム媒介性トランスフェクション、及びレトロウイルス又は他のウイルス、例えばアデノウイルス、AAV、レンチウイルス、又はワクシニアを使用した形質導入を挙げることができる。微生物細胞、例えば細菌細胞の場合、好適な技術としては、塩化カルシウム形質転換、電気穿孔、及びバクテリオファージを使用したトランスフェクションを挙げることができる。導入される核酸は、細胞内の染色体外ベクターに搭載される場合もあれば、又は核酸は、宿主細胞のゲノム内に組み込まれる場合もある。組み込みは、標準的な技術に従い、ゲノムとの組換えを促進する核酸又はベクターに配列を含めることによって促進されうる。導入の後に核酸の発現を行い、コードされた融合タンパク質を産生してもよい。いくつかの実施形態では、コードされた融合タンパク質ポリペプチドが産生されるように、核酸を発現させる条件下にてインビトロで宿主細胞を培養してもよく(宿主細胞は形質転換細胞の子孫であることが多いが、実際に形質転換した細胞を含むこともある)、誘導性プロモーターが使用される場合、発現には誘導性プロモーターの活性化が必要でありうる。
本明細書において使用される場合、「プロモーター」又は「転写調節配列」という用語は、1つ又は複数のコード配列の転写を制御するように機能し、転写の方向を基準としてコード配列の転写開始部位の上流に位置し、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位、及び任意の他のDNA配列、例えば、限定されるものではないが、転写因子結合部位、リプレッサー及び活性化因子タンパク質結合部位、並びにプロモーターからの転写の量を調節するように直接的又は間接的に作用することが当業者に公知である任意の他のヌクレオチド配列の存在によって構造的に特定される、核酸断片を指す。「構成的」プロモーターとは、ほとんどの生理条件及び発生条件下で、ほとんどの組織において活性のあるプロモーターである。「誘導性」プロモーターとは、例えば化学誘導物質の適用により、生理的又は発生的に調節されるプロモーターである。
「選択マーカー」という用語は、当業者であれば精通している用語であり、本明細書では、発現すると、選択マーカーを含む単数又は複数の細胞を選択するために使用することができる、あらゆる遺伝的実体を表すように使用される。「レポーター」という用語は、主に緑色蛍光タンパク質(GFP)などの視認できるマーカーを指すように使用されるが、マーカーと交換可能に使用される場合もある。選択マーカーは、優性、又は劣性、又は双方向性でありうる。
本明細書において使用される場合、「作動可能に連結した」という用語は、機能的な関係におけるポリヌクレオチド要素のつながりを指す。核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれた場合、「作動可能に連結」している。例えば、転写調節配列は、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、そのコード配列に作動可能に連結している。作動可能に連結したとは、連結しているDNA配列が典型的には連続的であること、また、2つのタンパク質コード領域を結合させるのに必要な場合は、連続的であり、リーディングフレーム内にあることを意味する。
「タンパク質」又は「ポリペプチド」という用語は、交換可能に使用され、特定の作用様式、サイズ、3次元構造、又は起源に関係なく、アミノ酸の鎖からなる分子を指す。
「シグナルペプチド」という用語(シグナル配列ということもある)は、分泌経路に運命付けられた新たに合成されたタンパク質の大部分のN末端に存在する短いペプチド(通常16~30アミノ酸長)である。シグナルペプチドの末端には、通常、移行(サイトゾルから分泌経路、すなわちERへの移行)の間又は移行完了後のいずれかで、シグナルペプチダーゼによって認識及び切断されて、遊離シグナルペプチド及び成熟タンパク質を生成する、アミノ酸の区間が存在する。シグナルペプチドは不均一性が極めて高く、多くの原核生物及び真核生物のシグナルペプチドは、異なる種間であっても機能的に互換性があるが、タンパク質分泌の効率はシグナルペプチドに依存しうる。好適なシグナルペプチドについては、当技術分野において、例えばKallら(2004年J.Mol.Biol.338巻:1027~1036頁)及びvon Heijne(1985年、J Mol Biol.184巻(1号):99~105頁)から広く知られている。
「遺伝子」という用語は、好適な調節性領域(例えばプロモーター)に作動可能に連結した、細胞内でRNA分子(例えばmRNA)に転写される領域(転写領域)を含むDNA断片を意味する。遺伝子は通常、プロモーター、5’リーダー配列、コード領域、及びポリアデニル化部位を含む3’非翻訳配列(3’末端)など、いくつかの作動可能に連結した断片を含む。「遺伝子の発現」とは、適切な調節性領域、特にプロモーターに作動可能に連結したDNA領域が、生物学的活性のある、すなわち生物学的活性のあるタンパク質又はペプチドに翻訳されることができるRNAに転写されるプロセスを指す。
「相同」という用語は、所与の(組換え)核酸又はポリペプチド分子と、所与の宿主生物又は宿主細胞との間の関係を示すために使用される場合、本質的に、核酸又はポリペプチド分子が、同じ種、好ましくは同じ変種又は系統の宿主細胞又は生物によって生成されることを意味するものと理解される。宿主細胞と相同である場合、ポリペプチドをコードする核酸配列は、典型的には(必ずしもそうであるとは限らないが)、自然環境におけるものとは別の(異種)プロモーター配列に、また該当する場合は、別の(異種)分泌シグナル配列及び/又はターミネーター配列に、作動可能に連結している。調節配列、シグナル配列、ターミネーター配列などが宿主細胞と相同である場合もあると理解される。2つの核酸配列の関連性を示すために使用される場合、「相同」という用語は、1つの一本鎖核酸配列が、相補的な一本鎖核酸配列にハイブリダイズしうることを意味する。ハイブリダイゼーションの程度は、後述するように、配列間の同一性の量、並びに温度及び塩濃度などのハイブリダイゼーション条件を含む、いくつかの要因に左右されうる。
核酸(DNA若しくはRNA)又はタンパク質に関して使用される場合の「異種」という用語は、核酸又はタンパク質が存在する生物、細胞、ゲノム、又はDNA配列若しくはRNA配列の一部として天然に発生しない核酸又はタンパク質、或いは、核酸又はタンパク質が天然に見出されるものとは異なる細胞、又はゲノム、又はDNA配列若しくはRNA配列内の単数又は複数の位置に見出される核酸又はタンパク質を指す。異種核酸又は異種タンパク質は、導入される細胞に内在しないが、別の細胞から得られたもの、又は合成若しくは組換えで生成されたものである。必ずしもそうであるとは限らないが、一般的に、このような核酸は、DNAが転写又は発現される細胞によって通常は産生されないタンパク質をコードする。同様に、外来性RNAは、外来性RNAが存在する細胞で通常は発現されないタンパク質をコードする。異種核酸及び異種タンパク質は、外来核酸又は外来タンパク質と呼ばれる場合もある。核酸又はタンパク質が発現される細胞に対して異種又は外来であると当業者が認識するであろう核酸又はタンパク質はいずれも、本明細書では、異種核酸又は異種タンパク質という用語に包含される。異種という用語は、核酸配列又はアミノ酸配列の非天然の組み合わせ、すなわち、組み合わせられた配列のうちの少なくとも2つが互いに対して外来である組み合わせにも適用される。
特記なき限り、「免疫グロブリン」及び「抗体」という用語は、本明細書において重鎖抗体を指すために使用されるか従来の4本鎖抗体を指すために使用されるかにかかわらず、完全サイズの抗体、抗体の個々の鎖、並びに抗体のすべての部分、ドメイン、又は断片(抗原結合性ドメイン又は断片、例えばそれぞれVHHドメイン又はV/Vドメインなどを含むがこれらに限定されない)の両方を含む一般的用語として使用される。さらに、本明細書で(例えば「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「VHH配列」、又は「タンパク質配列」のような用語において)使用される「配列」という用語は、文脈上さらに具体的な解釈が必要な場合を除き、概して、関連するアミノ酸配列と、このアミノ酸配列をコードする核酸配列又はヌクレオチド配列との両方を含むものと理解されるべきである。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」、又は重鎖のみからなるラクダ科抗体などの重鎖抗体の場合は「VHH」と呼ばれる場合がある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれる場合がある。これらのドメインは、一般的に、抗体において最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含む。「可変」という用語は、可変ドメインのうちの特定のセグメントの配列が抗体間で大きく異なるという事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの平均110アミノ酸のスパンにわたって均一に分布してはいない。むしろ、V領域は、それぞれ約9~12アミノ酸長の「超可変領域」(HVR)又は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる可変性が極めて高い短い領域で区切られた、約15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的インバリアントな区間からなる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、大部分がβシート構成をとる4つのFRを含み、βシートは3つの超可変領域によって連結され、超可変領域はループを形成し、このループはβシート構造を連結し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。各鎖における超可変領域は、FRによって緊密にまとめられ、他方の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD.(1991年)を参照されたい)。
「VHH」、「VHHドメイン」、及び「ナノボディ」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、本明細書では、重鎖抗体、すなわち、例えばラクダ科抗体から公知のように重鎖のみからなり軽鎖を含まない抗体の可変ドメインを指すように使用される。VHHのアミノ酸配列及び構造は、当技術分野及び本明細書以下でそれぞれ「フレームワーク領域1」又は「FR1」、「フレームワーク領域2」又は「FR2」、「フレームワーク領域3」又は「FR3」、及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」と呼ばれる4つのフレームワーク領域すなわち「FR」の間に、当技術分野でそれぞれ「相補性決定領域1」又は「CDR1」、「相補性決定領域2」又は「CDR2」、及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と呼ばれる3つの相補性決定領域すなわち「CDR」が介在する構成をとると考えることができるが、この構成に限定されるものではない。VHHにおけるアミノ酸残基の総数は110~120の領域内でありえ、好ましくは112~115であり、最も好ましくは113である。しかしながら、VHHの部分、断片、又は類似体(本明細書以下でさらに説明する)は、かかる部分、断片、又は類似体が、本明細書以下に概説するさらなる機能的要件を満たし、好ましくは本明細書に記載する目的に好適である限り、その長さ及び/又はサイズに関して特に限定されないことに留意されたい。
VHH(又は従来の可変ドメイン)のアミノ酸残基は、Kabatら(「Sequence of proteins of immunological interest」、US Public Health Services、NIH Bethesda、Md.、論文番号91)によって示されたVドメインの一般的な付番法に従い、Riechmann及びMuyldermans(1999年、J.Immunol.Methods、231巻:25~38頁;例えば該参考文献の図2を参照されたい)によりラクダ科抗体のVHHドメインに適用されるように付番される。この付番法によれば、VHHのFR1は1~30位のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR1は31~36位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR2は36~49位のアミノ酸を含み、VHHのCDR2は50~65位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR3は66~94位のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR3は95~102位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR4は103~113位のアミノ酸残基を含む。この点において、当技術分野において周知のように、Vドメイン及びVHHドメインに関しては、CDRのそれぞれにおけるアミノ酸残基の総数が異なる場合があり、Kabat付番法により示されるアミノ酸残基の総数に対応しない場合がある(つまり、Kabat付番法に従う1つ又は複数の位置が、実際の配列では使用されていない場合があるか、又は実際の配列が、Kabat付番法において可能な数よりも多くのアミノ酸残基を含む場合がある)ことに留意されたい。これが意味するのは、一般的に、Kabatによる付番法が、実際の配列におけるアミノ酸残基の実際の付番に対応する場合もあれば、対応しない場合もあるということである。しかしながら、一般的に、Kabatの付番法によれば、CDRにおけるアミノ酸残基の数とは無関係に、Kabat付番法による1位はFR1の始点に対応し、逆もまた同様であり、Kabat付番法による36位はFR2の始点に対応し、逆もまた同様であり、Kabat付番法による66位はFR3の始点に対応し、逆もまた同様であり、Kabat付番法による103位はFR4の始点に対応すると言うことができる。
ドメインのアミノ酸残基を付番する代替的方法で、ラクダ科抗体のVHHドメインにも類似の様式で適用することができる方法は、Chothiaら(1989年、Nature 342巻、877~883頁)によって説明されている方法、いわゆる「AbM定義」及びいわゆる「接触定義」である。しかしながら、本明細書、特許請求の範囲、及び図面では、特記なき限り、Riechmann及びMuyldermansによるVHHドメインに適用されるKabatによる付番法に従う。
重鎖抗体及び重鎖抗体の可変VHHドメインの概説に関しては、とりわけ、一般的な背景技術として挙げられる次の参考文献:国際公開第94/04678号、国際公開第95/04079号、国際公開第96/34103号、国際公開第94/25591号、国際公開第99/37681号、国際公開第00/40968号、国際公開第00/43507号、国際公開第00/65057号、国際公開第01/40310号、国際公開第01/44301号、欧州特許第1134231号、国際公開第02/48193号、国際公開第97/49805号、国際公開第01/21817号、国際公開第03/035694号、国際公開第03/054016号、国際公開第03/055527号、国際公開第03/050531号、国際公開第01/90190号、国際公開第03/025020号、国際公開第04/041867号、国際公開第04/041862号、国際公開第04/041865号、国際公開第04/041863号、及び国際公開第04/062551号、並びにHassanzadeh-Ghassabehら(2013年、Nanomedicine、8巻(6号):1013~1026頁)が参照される。フォンヴィルブランド因子又は血小板受容体GPIbに対する単一ドメインVHH抗体のより具体的な説明については、国際公開第2004/062551号及び国際公開第2006/122825号が参照される。
一般的に、本明細書において最も広い意味で使用される「VHH」(又はナノボディ)という用語は、特定の生物学的起源又は特定の調製方法に限定されないことに留意されたい。例えば、本発明で使用されるVHHは、(1)天然に発生する重鎖抗体のVHHドメインの単離、(2)天然に発生するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現、(3)天然に発生するVHHドメインの「ヒト化」(後述するとおり)若しくはかかるヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現、(4)任意の動物種由来、特に哺乳動物の種、例えばヒト由来の天然に発生するVドメインの「ラクダ化」、若しくはかかるラクダ化Vドメインをコードする核酸の発現、(5)タンパク質、ポリペプチド、若しくは他のアミノ酸配列を調製するための合成技術若しくは半合成技術の使用、(6)核酸合成の技術を使用してVHHをコードする核酸を調製した後に得られた核酸の発現、及び/又は(7)前述の内容の任意の組み合わせにより、得ることができる。前述の内容を行うために好適な方法及び技術は、現時点の技術水準であり、したがって当業者には公知である。
本発明で使用されるVHHの特に好ましいクラスの1つには、天然に発生するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化されている」、すなわち、天然に発生する該VHH配列のアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸残基が、ヒト由来の従来の4本鎖抗体のVドメインの対応する位置(複数可)で生じるアミノ酸残基のうちの1つ又は複数で置換されている、アミノ酸配列を有するVHHが含まれる。ヒト化は、当業者には明らかであろう本質的に公知の様式、例えば、ヒト化に関する、例えばJonesら(Nature 321巻:522~525頁、1986年)、Riechmannら(Nature 332巻:323~329頁、1988年)、Presta(Curr.Op.Struct.Biol.2巻:593~596頁、1992年)、Vaswani及びHamilton(Ann.Allergy,Asthma and Immunol.、1巻:105~115頁1998年)、Harris(Biochem.Soc.Transactions、23巻:1035~1038頁、1995年)、Hurle及びGross(Curr.Op.Biotech.、5巻:428~433頁、1994年)などの先行技術、並びに、例えばVinckeら(2009年、J.Biol.Chem.284巻:3273~3284頁)などのVHHのヒト化に関する特定の先行技術に基づいて行うことができる。繰り返しになるが、かかる本発明のヒト化VHHは、本質的に公知である任意の好適な様式において得ることができ、したがって、出発材料として天然に発生するVHHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されるものではないことに留意されたい。
「ブロッキング」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害又は低減するものである。好ましいブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的又は完全に阻害する。本明細書において使用される「アゴニスト抗体」は、目的のポリペプチドの機能的活性のうちの少なくとも1つを模倣する抗体である。
「結合親和性」は、一般的に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位と分子の結合パートナー(例えば、抗原又は標的)との間の非共有結合的相互作用の全体の強度を指す。特記なき限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体及び抗原/標的)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般的に、解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含めた当技術分野において公知の一般的方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般的に、抗原/標的にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向にあるが、高親和性抗体は一般的に、より急速に抗原に結合し、より長く結合した状態を保つ傾向にある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野において公知であり、そのいずれを本発明の目的に使用してもよい。特定の例示的な実施形態を以下に記載する。
「K」又は「K値」は、本明細書の実施例に記載するようにELISAを使用すること、又は約10~50反応単位(RU)で固定化抗原CM5チップとともに25℃でビアコア(BIAcore)(商標)-2000若しくはビアコア(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用することにより、測定することができる。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給元の説明に従い、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させる。抗原をpH4.8の10mM酢酸ナトリウムで5μg/ml(約0.2μM)に希釈してから、5μl/分の流速で注入すると、およそ10反応単位(RU)のタンパク質の結合が達成される。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応基をブロッキングする。動態を測定するには、抗体又はFab(0.78nM~500nM)の二倍段階希釈物を、25℃で0.05%のトゥイーン(Tween)20を含むPBS(PBST)に、およそ25μl/分の流速で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な一対一のLangmuir結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用し、会合及び解離のセンサグラムを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(K)は、koff/konの比として計算される。例えば、Chen,Yら(1999年)J.Mol Biol 293巻:865~881頁を参照されたい。オン速度が上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって10-1-1を超える場合、オン速度は、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instrument)又は撹拌赤色キュベットを備えた8000シリーズのSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定されるような、漸増濃度の抗原の存在下におけるpH7.2のPBS中の20nMの抗抗原抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、帯域16nm)の増加又は減少を測定する蛍光消光技術を使用することにより、決定することができる。
本発明に係る「オン速度」、又は「会合の速度」、又は「会合速度」、又は「kon」は、上述のようにビアコア(商標)-2000又はビアコア(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用して、上述のものと同じ表面プラズモン共鳴を用いて決定することもできる。
「薬学的又は薬理学的に許容できる」という表現は、例えばヒトなどの動物に適切に投与したときに有害反応、アレルギー反応、若しくは他の不都合な反応をもたらさないか、又は許容できる反応をもたらす、分子的実体及び組成物を指す。特定の有害作用が許容できるかどうかは、疾患の重症度に基づいて決定される。少なくとも1つのキメラポリペプチド又はさらなる有効成分を含む医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれる「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(Allen,L.V編、第22版、2012年、www.pharmpress.com)に例示されているように、本開示を踏まえれば、当業者に公知となるであろう。さらに、動物(例えばヒト)への投与の場合、調製物が、FDA Office of Biological Standardsにより要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たす必要があることは理解されよう。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容できる担体」は、当業者には公知であるように(例えば、参照により本明細書に組み込まれる「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(Allen,L.V編、第22版、2012年、www.pharmpress.com)を参照されたい)、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素などの材料及びこれらの組み合わせを含む。従来の担体が有効成分と不適合である場合を除いて、治療用組成物又は医薬組成物における従来の担体の使用が想定される。
公開配列データベースにおいてアクセス可能なヌクレオチド又はアミノ酸の配列が本明細書において言及される場合はいずれも、本文書の出願日に利用可能なバージョンの配列エントリーを参照する。
実施形態の説明
本発明者らは、驚くべきことに、MVTの部位へのプラスミノーゲン活性化の標的化が、TTPを処置するための実現可能なアプローチであることを見出した。TTP患者は、血小板が超大型VWFと複合体を形成すると、MVTの発作を経験する。本発明者らは、TTPのマウスモデルにおける(ストレプトキナーゼによる)全身的なプラスミノーゲンの活性化に治療能があることを過去に報告したが、このことは、プラスミンがADAMTS13の機能的代替物として作用しうることを示唆している(Tersteegら、2014年、上記参照)。プラスミン(プラスミノーゲン)はVWFに直接結合することができるが、天然のプラスミノーゲン活性化因子(tPA、uPA)にはVWFに直接結合することができない。さらに、微小血栓はフィブリンに乏しく、安全上の理由のため、全身的なプラスミノーゲンの活性化は避けることが望ましい。したがって、本発明は、治療有効性及び安全性を増大させるために、血栓形成性多量体タンパク質VWFのプラスミンによる切断を刺激することを目的とする。より詳細には、本発明は、フィブリン非依存性様式で、MVTのクリアランスのためにプラスミン活性を局所的に誘導するように、VWF、血小板、又は活性化/損傷した(微小)血管内皮細胞のいずれかに結合する能力を獲得した、改変されたプラスミノーゲン活性化因子に関する。本発明はさらに、MVTの部位に対するプラスミノーゲン活性化の局所送達/刺激によって防止又は処置されうる病態の治療方法を提供する。
したがって、第1の態様において、本発明は、プラスミノーゲン活性化因子と、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓の部位にプラスミノーゲン活性化因子を標的化するための標的化因子とを含む、融合タンパク質に関する。標的化因子が本発明の融合タンパク質を標的化する血栓部位は、原理上、大血管血栓及び微小血管血栓(MVT)の部位、並びに(未だ)非閉塞性の大血管血栓又は微小血管血栓の部位を含む、血栓が存在又は発生している任意の部位でありうる。しかしながら、本発明の融合タンパク質は、フィブリンに乏しいが、VWF、血小板、及び血管内皮の活性化又は損傷の可能性がある場所を含む、MVTの部位の排除を(また)目的とする。したがって、本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する標的化因子であることが好ましい。
標的化因子は、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する任意のリガンド又は結合性分子でありうる。しかしながら、標的化因子は、タンパク質性標的化因子であることが好ましい。より好ましくは、タンパク質性標的化因子は、融合タンパク質の単一のアミノ酸鎖の一部であり、この鎖は、プラスミノーゲン活性化因子も含む。
目的の標的、例えばVWF、血小板、又は活性化/損傷した内皮に「結合する」標的化因子は、標的を発現又は露出させるMVT、細胞、又は組織のような構造体を標的化する際に標的化因子が治療剤として有用となるような十分な親和性で標的に結合し、他のタンパク質又は分子と著しく交差反応しない薬剤である。このような実施形態において、「非標的」分子(例えばタンパク質)に対する標的化因子の結合の程度は、蛍光標識細胞分取(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)によって判定した場合、特定の標的分子に対する標的化因子の結合の約10%未満になる。標的分子に対する標的化因子の結合に関し、「特異的結合」、又は特定の標的分子若しくはポリペプチド、例えば特定のポリペプチド標的におけるエピトープに「特異的に結合する」若しくは「結合する」若しくは「特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般的に結合活性を有しない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較した分子の結合を判定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的と類似する対照分子、例えば過剰量の標識されていない標的との競合によって判定することができる。この場合、標識された標的のプローブに対する結合が、過剰量の標識されていない標的によって競合的に阻害されれば、特異的結合が示される。本明細書で使用される、「特異的結合」、又は特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド標的におけるエピトープに「特異的に結合する」若しくは「特異的である」という用語は、例えば、標的に対するK(上述のように判定されうる)が少なくとも約10-4M、或いは少なくとも約10-5M、或いは少なくとも約10-6M、或いは少なくとも約10-7M、或いは少なくとも約10-8M、或いは少なくとも約10-9M、或いは少なくとも約10-10M、或いは少なくとも約10-11M、或いは少なくとも約10-12M、又はそれ以上である分子によって示されうる。一実施形態において、「特異的結合」という用語は、標的化因子が特定の標的分子、ポリペプチド、又は特定のポリペプチドにおけるエピトープに結合し、いかなる他の分子、ポリペプチド、又はエピトープにも実質的に結合しないような結合を指す。
本発明の一実施形態において、融合タンパク質中の標的化因子は、フォンヴィルブランド因子(VWF)、好ましくはヒトVWFに特異的に結合する。基本的なヒトVWF単量体は、2050アミノ酸のタンパク質である。すべての単量体には、例えば、第VIII因子に結合するD’/D3ドメイン、血小板GPIb受容体に特に結合するA1ドメイン、A2ドメイン(大幅に小さい多量体を作ることによりVWFを不活性化する特異的なADAMTS13プロテアーゼの隠れた切断部位を露出させるために部分的にほどける必要がある)、コラーゲンに結合するA3ドメイン、C1ドメイン(血小板インテグリンαIIbβ3が活性化するとインテグリンαIIbβ3にRGDモチーフが結合する)、及び「システインノット」ドメイン(タンパク質のC末端における)を含め、特異的な機能を有するいくつかの特異的なドメインが含まれる。VWFの多量体は、極めて大きく20,000kDaを超えることがあり、80個を超えるそれぞれ250kDaのサブユニットからなることがある。VWFの主な機能は、他のタンパク質、特に第VIII因子に結合することであり、これは創傷部位への血小板の粘着において重要である。VWFは酵素ではないため、触媒活性を有しない。VWFは、例えばコラーゲン(例えば、血管に生じた損傷に起因して内皮細胞で露出した場合)、及び血小板GP1B受容体を含め、いくつかの細胞及び分子に結合する。後者の結合はあらゆる状況下で起こるが、高せん断応力(すなわち、狭い血管内の急速な血流)下で最も効率的である。VWFは、他の血小板受容体が例えばトロンビンによって活性化されると(すなわち、凝血が刺激されると)、こうした血小板受容体に結合する。
本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、VWFのありとあらゆる形態、立体構造、ドメイン、及びエピトープに特異的に結合することができる。したがって、標的化因子は、折り畳まれていない(活性化型)立体構造のVWF、及び球状(循環中の非活性化型)立体構造のVWF(sVWF)のうちの少なくとも1つに特異的に結合することができる。一実施形態において、標的化因子は、少なくとも折り畳まれていないVWFに結合し、好ましくは、標的化因子は、球状VWFよりも折り畳まれていないVWFに優先的に結合し(すなわち、球状VWFよりも折り畳まれていないVWFに対して高い親和性を有し)、より好ましくは、標的化因子は、折り畳まれていない(活性化型)立体構造のVWFに結合し、循環中の非活性化型球状形態のVWFには結合しない。より詳細には、本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、VWF A1ドメイン、活性化VWFのA1ドメイン、VWF A2ドメイン、活性化VWFのA2ドメイン、VWF A3ドメイン、及びVWF D3ドメインのうちの少なくとも1つに特異的に結合する。VWFに結合する標的化因子の好適な例は、以下にさらに詳述するように、本明細書の実施例で使用したVHHラクダ科抗体断片である。
本発明の別の実施形態では、融合タンパク質中の標的化因子は、血小板(platelet)(血小板(thrombocyte)ともいう)、好ましくはヒト血小板に特異的に結合する。VWFとともに、血小板はMVTの主成分であり、したがって、本発明の融合タンパク質中の標的化因子の好適な標的でもある。本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、ありとあらゆる形態の血小板に特異的に結合することができる。したがって、標的化因子は、活性化血小板及び非活性化血小板のうちの少なくとも1つに特異的に結合することができる。好ましくは、標的化因子は(少なくとも)非活性化血小板に結合する。大血管血栓症又は通常の血栓症とは異なり、MVTは活性化血小板を必然的に含み、特に非活性化血小板は(VWFとともに)、例えばTTPのMVTにおける問題を引き起こしている。したがって、融合タンパク質中の標的化因子は、活性化血小板のみに特異的に結合する(非活性化血小板には特異的に結合しない)標的化因子でないことが好ましい。より詳細には、標的化因子は、例えばSchwarzら(2004年、FASEB J.18巻:1704~1706頁)によって説明されている一本鎖抗体SCE5など、血小板にあるGPIIb/IIIa受容体の活性化型のみに特異的に結合する標的化因子ではないことが好ましい。したがって標的化因子は、好ましくは、非活性型のインテグリンαIIb/βIIIに特異的に結合する。好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質中の標的化因子は、a)血小板GP1B受容体、及びb)血小板のインテグリンαIIb/βIIIのうちの少なくとも1つに特異的に結合する。しかしながら、血小板GP1B受容体に特異的に結合する標的化因子が好ましい。血小板に結合する好適な標的化因子は、例えば、Fontayneら(2006年、Thromb Haemost.96巻(5号):671~84頁)によって説明されている抗GPIbα抗体6B4、又は本明細書の実施例で使用した抗GP1BのVHH抗体断片によって例示されるように、当技術分野において公知である。
本発明のさらなる実施形態では、融合タンパク質中の標的化因子は、活性化、損傷、及び/又は疲弊した内皮(以降、本明細書では活性化した内皮と総称する)に特異的に結合する。活性化した内皮は、好ましくは活性化した血管内皮、より好ましくは活性化した微小血管内皮である。したがって、標的化因子は、活性化した内皮によって優先的に発現される受容体、及び活性化した内皮の膜マーカーのうちの少なくとも1つに特異的に結合することができる。好ましくは、活性化した内皮によって優先的に発現される受容体は、E-セレクチン、P-セレクチン、uPAR、c1q受容体、キニンB1受容体、プラスミノーゲン受容体KT(PLGR-KT)、内皮タンパク質C受容体、トロンボモジュリン、n-カドヘリン、ICAM-1、及びVCAM-1からなる群から選択される。好ましくは、活性化した内皮の膜マーカーは、アニオン性リン脂質、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルエタノールアミンのうちの1つ又は複数である。
本発明の融合タンパク質の一実施形態において、上記に定義した標的のうちの1つに特異的に結合する標的化因子は、好ましくは、a)該標的のうちの1つに特異的に結合する抗体可変ドメイン、及びb)該標的のうちの1つに天然に結合するタンパク質由来の結合性ドメインのうちの少なくとも1つを含む。
本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在する好ましい抗体可変ドメインは、本明細書上記に定義したVHHであり、より好ましくは、抗体可変ドメインはヒト化VHHである。
好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在するVHHは、VWFに特異的に結合するVHHである。VWFに結合し、標的化因子として本発明の融合タンパク質の一部であるVHHの好適な例は、本明細書の実施例における融合タンパク質の一部であるか、又は参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0136736号A1に記載されている、VWF結合性VHHである。
可溶性球状VWFに結合し、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在する好ましいVHHは、配列番号7の55~178位のアミノ酸配列を有するVHH-sVWF、又は配列番号7の55~178位と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、VWFに対するKが1、0.5、0.2、0.1、0.05若しくは0.0306nM未満のVHHである。
VWFのD3ドメインに結合し、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在する好ましいVHHは、配列番号8の55~178位のアミノ酸配列を有するVHH-D3、又は配列番号8の55~178位と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、VWFに対するKが1、0.5、0.4、0.35、若しくは0.33nM未満のVHHである。
VWFのA1ドメインに結合し、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在する好ましいVHHは、配列番号11の55~179位のアミノ酸配列を有するVHH-A12、又は配列番号11の55~179位と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、VWFに対するKが25、20、18、15若しくは13nM未満のVHHである。VWFのA1ドメインに結合し、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在する別の好ましいVHHは、配列番号13のアミノ酸配列を有するVHH若しくは配列番号14のアミノ酸配列を有するそのヒト化バージョン、又は配列番号13若しくは14と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、VWFに対するKが10、5若しくは2nM未満のVHHである。
血小板GP1B受容体に結合し、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在する好ましいVHHは、配列番号12の55~178位のアミノ酸配列を有するVHH-GP1B17、又は配列番号12の55~178位と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、血小板GP1B受容体に対するKが20、15、10、5、2、1、0.5、0.2若しくは0.1nM未満のVHHである。血小板GP1B受容体に結合し、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在する他の好ましいVHHは、配列番号20の55~175位、配列番号21の55~178位、配列番号22の55~172位、配列番号23の55~171位、配列番号24の55~174位、配列番号25の55~176位、配列番号26の55~178位、配列番号27の55~178位、配列番号28の55~178位、配列番号29の55~166位、配列番号30の55~180位、配列番号31の55~176位、配列番号32の55~176位、配列番号33の55~179位、配列番号34の55~179位、配列番号35の55~177位、配列番号36の55~178位、及び配列番号37の55~181位のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するか、又は、この群のアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%の配列同一性をもち、血小板GP1B受容体に対するKが20、15、10、5、2、1、0.5、0.2若しくは0.1nM未満のアミノ酸配列を有する。
VWFのA1ドメインに結合する別の好ましいVHHは、配列番号46と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性をもつアミノ酸配列を含む。好ましくは、VWFのA1ドメインに結合し、配列番号46のアミノ酸配列を含むVHHは、本発明の融合タンパク質中に標的化因子として存在し、配列番号45のアミノ酸配列を有するVHH若しくは配列番号44のアミノ酸配列を有するそのヒト化バージョン、又は配列番号44若しくは45と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、VWFに対するKdが10、5若しくは2nM未満のVHHである。
本発明の融合タンパク質の別の実施形態では、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する標的化因子は、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに天然に結合するタンパク質由来の結合性ドメインを含む。好ましくは、結合性ドメインは、i)VWFのA1ドメイン、又は血小板GP1B受容体に結合するVWF A1ドメインの少なくとも一部、ii)ADAMTS13、第XII因子、第H因子(補体調節因子)、プラスミノーゲン、及び第VIII因子のうちの1つのVWF結合性ドメイン、これらのドメインのうち少なくともVWFに結合する部分、並びにiii)活性化又は損傷した血管内皮の膜(複数可)に結合するドメインであって、ビタミンK依存性カルボキシル化/ガンマカルボキシグルタミン酸(GLA)ドメイン、第V因子のCドメイン、及び第VIII因子のCドメインから選択されるドメインからなる群から選択される、結合性ドメインを含む。
本発明の一実施形態において、融合タンパク質は、2種以上の標的化因子を含む。したがって、融合タンパク質は、例えば2種、3種、4種、5種、6種、又はそれ以上の標的化因子を含んでもよい。2種以上の標的化因子が融合タンパク質中に存在する場合、2コピー以上の同じ標的化因子が融合タンパク質中に存在してもよい。或いは、融合タンパク質は、少なくとも2つの異なる標的化因子を含んでもよい。例えば、融合タンパク質は、VWFの少なくとも2つの異なるドメイン又は血小板にある少なくとも2つの異なる受容体に(それぞれ)結合する少なくとも2つの異なる標的化因子を含んでもよい。又は、融合タンパク質は、少なくとも2つの異なる標的化因子を含み、そのうち少なくとも1つの標的化因子がVWFに結合し、少なくとも1つの他の標的化因子が血小板に結合してもよい。2種以上の標的化因子を融合タンパク質に組み込むことの利点は、MVTの部位における多価結合のアビディティ、すなわち個々の標的化因子による個々の結合相互作用の複数の親和性の累積強度である。2種以上の標的化因子が融合タンパク質中に存在する場合、個々の標的化因子は、タンデム配置されることが好ましく、個々の標的化因子同士の間に好適な(可動性)スペーサーアミノ酸配列又はリンカーアミノ酸配列が存在することが好ましい。
好適な可動性リンカーアミノ酸配列は、当技術分野で(例えば、Chenら、2013年、Adv Drug Deliv Rev.65巻(10号):1357~1369頁から)公知である。可動性リンカーは通常、結合されるドメインがある程度の動き又は相互作用を必要とする場合に適用される。可動性リンカーは概して、小さく非極性のアミノ酸(例えばGly)又は極性のアミノ酸(例えばSer又はThr)から構成される。これらのアミノ酸はサイズが小さいため可動性がもたらされ、連結する機能的ドメインの易動性が可能になる。Ser又はThrの組み込みは、水分子と水素結合を形成することによって水溶液中のリンカーの安定性を維持することができ、したがって、リンカーとタンパク質部分との間の好ましくない相互作用を低減させる。好ましい可動性リンカーは、Gly及びSer残基の区間(「GS」リンカー)から主になる配列を有する。好ましい(そして広く使用されている)可動性リンカーの一例は、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)の配列を有する。コピー数「n」を調節することにより、このGSリンカーの長さを最適化して、機能性ドメインの適切な分離を達成したり、又は必要なドメイン間相互作用を維持したりすることができる。GSリンカーに加えて、多くの他の可動性リンカーが組換え融合タンパク質のために設計されている。こうした可動性リンカーはまた、Gly及びSerなどの小型又は極性のアミノ酸に富むが、例えば、生理活性のあるscFvの構築のために適用されている可動性リンカーKESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号38)及びEGKSSGSGSESKST(配列番号38)のように、可動性を維持するためのThr及びAlaなどのさらなるアミノ酸、並びに可溶性を向上させるためのLys及びGluなどの極性アミノ酸を含んでもよい。
MVTへ標的化するための上述の1つ又は複数の標的化因子に加えて、本発明の融合タンパク質は、プラスミノーゲン活性化因子を少なくともさらに含む。プラスミノーゲン活性化因子は、チモーゲン型プラスミノーゲンのタンパク質分解性切断を介してプラスミンの活性化を触媒するセリンプロテアーゼである。プラスミンは線維素溶解において重要な因子であるが、本発明の範囲では、MVTに対するフィブリン非依存性血栓溶解活性のためにプラスミノーゲン活性化に依存する。したがって、本発明に係る融合タンパク質は、プラスミノーゲン活性化因子を含み、このプラスミノーゲン活性化は、好ましくは、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、又はスタフィロキナーゼの(触媒的)プロテアーゼドメインを含む。tPA、uPA、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、及びスタフィロキナーゼの触媒的プロテアーゼドメインは、当技術分野において周知である。本発明の融合タンパク質への組み込みに好ましいプラスミノーゲン活性化触媒的プロテアーゼドメインは、配列番号1の16~268位のアミノ酸配列を含む、uPAの、好ましくはヒトuPAの触媒的プロテアーゼドメイン、又は配列番号19の15~266位のアミノ酸配列を含む、tPAの、好ましくはヒトtPAの触媒的プロテアーゼドメインである。
本発明の融合タンパク質に組み込むための触媒的ドメインプロテアーゼドメインが、uPAの、好ましくはヒトuPAの触媒的プロテアーゼドメインである一実施形態において、(ヒト)uPAドメインは、その配列に(ヒト)uPAを安定化する変異を含む。安定化変異は、全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,472,692号及びSunら(J Biol Chem 1997年9月19日;272巻(38号):23818~23823頁)によって説明されている。好ましい一実施形態において、触媒的ドメインプロテアーゼは、配列番号1の157位に位置するリジン(K)がヒスチジン(H)に変異した配列番号1を含むもの、及び/又はそれからなるものである。好ましい一実施形態において、触媒的ドメインプロテアーゼは、配列番号2の158位に位置するリジン(K)がヒスチジン(H)に変異した配列番号2を含むもの、及び/又はそれからなるものである。
一実施形態において、本発明の融合タンパク質に組み込まれるプラスミノーゲン活性化因子は、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PAI-1)などのプラスミノーゲン活性化因子の天然の阻害因子に対する感受性が低減している触媒的プロテアーゼドメインのバリアントを含む。このようなバリアントには、例えば、PAI-1との相互作用に関与するエキソサイトループ、例えば、uPAのプロテアーゼドメインにおける37ループ及び147ループ、又はtPAのプロテアーゼドメインにおける類似のループ、例えば37ループ、60ループ、97ループ、147ループ、及び217ループなどに、1つ又は複数の修飾を有するuPA又はtPAのプロテアーゼドメインのバリアントが含まれる(Linら、J Biol Chem.2011年3月4日;286巻(9号):7027~7032頁を参照されたい)。このような修飾の例は、PAI-1との相互作用に特異的なエキソサイトの欠失(tPA del 296-302)、又はPAI-1との相互作用を特異的に媒介する特定のアミノ酸の置換(tPA Arg→Glu 304又はArg→Ser 304)である(Madisonら、Nature.1989年6月29日;339巻(6227号):721~4頁)。
好ましい実施形態において、本発明の融合タンパク質に組み込まれるプラスミノーゲン活性化因子は、そのプロテアーゼドメインのすぐ上流(N末端側)にプラスミノーゲン活性化因子において天然に発生する連結ペプチドのシステイン含有部分を少なくともさらに含む。システインを含む連結ペプチドの存在は、プロテアーゼドメインにおける対応するシステインが不要なジスルフィド架橋を形成することを回避する。
本発明の融合タンパク質に組み込まれるプラスミノーゲン活性化因子に含めるのに好ましい連結ペプチドは、a)配列番号16のアミノ酸17~27を少なくとも含むuPAの連結ペプチド、より好ましくは配列番号16のアミノ酸13~27を少なくとも含む連結ペプチド、b)配列番号17のアミノ酸3~14を少なくとも含むtPAの連結ペプチド、より好ましくは配列番号17のアミノ酸1~14を少なくとも含む連結ペプチド、又はc)配列番号18のアミノ酸5~18を少なくとも含むプラスミノーゲンの連結ペプチド、より好ましくは配列番号18のアミノ酸1~18を少なくとも含む連結ペプチドである。
別の好ましい実施形態において、本発明の融合タンパク質は、好ましくは、一方の1つ又は複数の標的化因子と、他方のプラスミノーゲン活性化因子との間に位置するリンカーアミノ酸配列を含む。したがって、プラスミノーゲン活性化因子が、例えば上述のような連結ペプチドを含む場合、リンカーアミノ酸配列は、プラスミノーゲン活性化因子の連結ペプチドの上流に位置することが理解される。標的化因子とプラスミノーゲン活性化因子とを結合させるリンカーアミノ酸配列は、好ましくは、上述のような可動性リンカーアミノ酸配列である。標的化因子とプラスミノーゲン活性化因子とを結合させる好ましいリンカーアミノ酸配列は、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)の配列を有し、式中、nは1~4、より好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。特に好ましいリンカーアミノ酸配列は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
したがって、本発明に係る好ましい融合タンパク質は、N末端からC末端の順に、a)上記に定義した1つ又は複数の標的化因子であって、任意選択で上記に定義したリンカーアミノ酸配列によって結合している、標的化因子と、b)任意選択で、上記に定義したリンカーアミノ酸配列と、c)上記に定義したプラスミノーゲン活性化因子とを含む、融合タンパク質である。融合タンパク質は、望ましくないアミノ酸配列(例えば単離タグ)を融合タンパク質から切断することができるように、例えば単離タグ、例えばHisタグ若しくはSTREP単離タグなど、又は特異的なプロテアーゼによってのみ認識される切断部位、例えばタバコエッチウイルス切断部位などを含む、さらなる機能的エレメントをさらに含んでもよい。本発明に係る好ましい融合タンパク質の構成の一例が図1A及び図1Bに示されており、ここで、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、融合タンパク質の上流にある、タンパク質が産生される細胞からのタンパク質の分泌を指示する(Igκ)シグナル配列もコードする。
第2の態様において、本発明は、上記に定義した本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好ましくは、融合タンパク質に作動可能に連結したシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。本発明の融合タンパク質の分泌を指示するのに好ましいシグナルペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を有するIgκシグナルペプチドである。本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子は、好ましくは、適切な宿主細胞における融合タンパク質の発現を助ける調節エレメントをさらに含み、この調節エレメントは、ヌクレオチド配列に作動可能に連結している。
第3の態様において、本発明は、本発明に係る核酸分子を含むベクターに関する。任意選択で、本発明に係るベクターは、遺伝子療法ベクターである。
好ましくは、遺伝子療法ベクターは、ウイルス遺伝子療法ベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、腫瘍溶解性ウイルスベクター、及びレトロウイルスに基づく遺伝子療法ベクターから選択されるウイルス遺伝子療法ベクターである。好ましいウイルス遺伝子療法ベクターは、AAVベクター又はレンチウイルスベクターである。
第4の態様において、本発明は、本発明に係るベクターを含む宿主細胞に関し、この宿主細胞は、本発明に係る融合タンパク質を発現する。
細胞は、好ましくは、単離細胞又は培養細胞である。用いることができる宿主細胞には、原核細胞、酵母細胞、又は高等真核細胞がある。原核生物としては、グラム陰性生物又はグラム陽性生物、例えば大腸菌(Escherichia coli)又は桿菌(bacilli)が挙げられる。高等真核細胞としては、昆虫細胞及び哺乳動物起源の樹立細胞株が挙げられる。好適な哺乳動物宿主細胞株の例としては、サル腎臓細胞のCOS-7株(Gluzmanら、1981年、Cell 23巻:175頁)、L細胞、HEK293細胞、C127細胞、3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK細胞株、及びMcMahanら、1991年、EMBO J.10巻:2821頁に記載されているアフリカミドリザル腎臓細胞株CVIに由来するCVI/EBNA細胞株が挙げられる。細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、及び哺乳動物細胞の宿主で使用するのに適切なクローニングベクター及び発現ベクターは、Pouwelsら(Cloning Vectors:A Laboratory Manual、Elsevier、New York、1985年)によって説明されている。
宿主細胞が本発明に係る融合タンパク質を発現することを促進する条件下で形質転換細胞を培養することができる。したがって、一態様において、本発明は、本発明に係る融合タンパク質の発現を助ける条件下で、本明細書で定義する少なくとも1つの発現ベクターを含む細胞を培養するステップと、任意選択で、本発明に係る融合タンパク質を回収するステップとを含む、本発明に係る融合タンパク質を生成する方法に関する。
本発明に係る融合タンパク質は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又は例えばストレプトアビジン/ビオチンを使用した親和性クロマトグラフィーを含む従来のタンパク質精製手段によって回収することができる(例えば、Lowら、2007年、J.Chromatography B、848巻:48~63頁、Shuklaら、2007年、J.Chromatography B、848巻:28~39頁を参照されたい)。
第5の態様において、本発明は、本発明に係る融合タンパク質、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター若しくは遺伝子療法ベクター、又は本発明に係る宿主細胞、及び薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物、及び/又はそれらからなる医薬組成物に関する。
医薬組成物は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容できる担体をさらに含む。アジュバント又はビヒクルなどの薬学的に許容できる担体は、抗体又は抗体断片を対象に投与するためのものである。該医薬組成物は、有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することによる、本明細書以下に記載される処置方法において使用することができる。「対象」という用語は、本明細書において使用される場合、哺乳動物に分類されるすべての動物を指し、霊長類及びヒトを含むが、これらに制限されない。対象は、好ましくは、任意の年齢又は人種の男性又は女性のヒトである。
「薬学的に許容できる担体」という用語は、本明細書において使用される場合、薬学的投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことが意図される(例えば、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、Roweら編、第7版、2012年、www.pharmpress.comを参照されたい)。このような媒体及び薬剤の薬学的に活性な物質のための使用は、当技術分野において周知である。従来の媒体又は薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物における従来の媒体又は薬剤の使用が想定される。許容できる担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度においてレシピエントに無毒であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール、メチルパラベン若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属複合体(例えばZn2+-タンパク質複合体)、及び/又はトゥイーン(商標)、プルロニックス(PLURONICS)(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
補足的な活性化合物を本発明の医薬組成物に組み込むこともできる。したがって、特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、処置されている特定の適応症に必要であれば、2種以上の活性化合物、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含んでもよい。例えば、化学療法剤、サイトカイン、鎮痛剤、血栓溶解剤、又は免疫調節剤、例えば、免疫抑制剤又は免疫刺激剤をさらに供給することが望ましい場合がある。このような他の活性剤の有効量は、数ある中でもとりわけ、医薬組成物中に存在する本発明の抗体の量、疾患若しくは障害又は処置のタイプなどに左右される。
ある実施形態では、本発明に係る融合タンパク質は、インプラント及びマイクロカプセル化された送達系、例えばリポソームを含む、徐放製剤のように、該化合物が身体から急速に排除されることを防ぐ担体とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生物分解性、生体適合性のポリマーを使用してもよい。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液も、薬学的に許容できる担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号又は国際公開第2010/095940号に記載されているような、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
本発明に係る融合タンパク質の投与経路は、非経口でありうる。本明細書で使用される「非経口」という用語には、静脈内投与、動脈内投与、リンパ内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、又は腟内投与が含まれる。静脈内形態の非経口投与が好ましい。「全身投与」とは、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、及び筋肉内投与を意味する。治療効果又は予防効果のために必要とされる融合タンパク質の量は、当然ながら、選択される融合タンパク質、処置されている病態の性質及び重症度、並びに患者によって異なる。さらに、融合タンパク質は、例えば、漸減用量の融合タンパク質を用いるパルス注入によって好適に投与されうる。好ましくは、投薬は、投与が短時間であるか、又は慢性であるかに部分的に応じて、注射、最も好ましくは静脈内注射又は皮下注射によって行われる。
したがって、特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、例えば適切な単位剤形における無菌溶液、懸濁液、又は凍結乾燥生成物など、非経口投与に好適な形態であってもよい。注射用途に好適な医薬組成物は、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌の注射液又は分散液の即時調製のための無菌粉末を含む。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、CremophorEM(BASF、Parsippany、N.J.)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合においても、組成物は無菌でなければならず、容易なシリンジ操作性(syringability)が存在する程度に流動的であるべきである。組成物は、製造及び保管の条件下で安定である必要があり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護される必要がある。担体は、例えば水、エタノール、薬学的に許容できるポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。
注射用組成物の長期にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらされうる。
無菌注射液は、必要量の活性化合物(例えば融合タンパク質)を、必要に応じて上記に列挙した成分のうちの1つ又は成分の組み合わせとともに、適切な溶媒に組み込んだ後、滅菌濾過を行うことによって調製することができる。一般に分散液は、塩基性分散媒と上記に列挙したもののうち必要な他の成分とを含む無菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分と任意のさらなる所望の成分の予め滅菌濾過された溶液から、それらの粉末をもたらす真空乾燥及び凍結乾燥である。
特定の実施形態において、該医薬組成物は、静脈内(IV)又は皮下(SC)に投与される。増量剤、緩衝剤、又は界面活性剤などの適当な賦形剤を使用することができる。ここに挙げた製剤は、当技術分野において周知であり、例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(Allen,L.V編、第22版、2012年、www.pharmpress.com)を含む様々な情報源にさらに詳細に記載されているように、非経口投与可能な組成物を調製するための標準的な方法を使用して調製される。
医薬組成物、すなわち非経口組成物を、容易な投与、及び均一な投与量のための単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、処置される対象に対する投与量単位として適した物理的に別個の単位を指し、それぞれが、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物(本発明の抗体)を含む。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特徴、及び達成しようとする特定の治療効果、並びに個体を処置するためのこのような活性化合物を配合する分野に特有の制限によって決まり、これらに直接依存する。
概して、本明細書で挙げられる疾患及び障害の防止及び/又は処置に関しては、処置しようとする特定の疾患又は病態及びその重症度、使用される特定の本発明の融合タンパク質の効力、特定の投与経路、並びに使用される特定の医薬製剤又は組成物によっては、本発明の融合タンパク質は概して、0.001~1,000mg/kg体重/日、好ましくは約0.01~約100mg/kg体重/日、最も好ましくは約0.05~10mg/kg体重/日の範囲、例えば約1、10、100又は1000マイクログラム/kg体重/日で、連続的に(例えば注入により)、単一の一日用量として、又は一日の間で分割された複数の用量として投与される。臨床医は一般的に、本明細書で挙げられる要因に応じて、好適な一日用量を決定することができよう。また特定の場合においては、臨床医が、例えば上述の要因及び臨床医自身の専門家判断に基づいて、これらの量から外れてもよいことは明らかであろう。
本発明に係る融合タンパク質の患者への投与に加えて、本願は、遺伝子療法による融合タンパク質の投与を想定する。
医薬組成物は、投与のための説明書とともに、容器、パック、又はディスペンサーに含まれうる。
本発明の融合タンパク質及び医薬組成物は、併用療法を行うために他の薬物とともに使用してもよい。他の薬物は同じ組成物の一部を形成してもよいし、又は同時若しくは異なる時点で投与される別個の組成物として用意されてもよい。
第6の態様において、本発明は、血栓症に関連する疾患又は病態の処置又は防止に使用するための、融合タンパク質、遺伝子療法ベクター、及び医薬組成物(それぞれ上記に定義したとおり)のうちの少なくとも1つに関する。防止又は処置しようとする疾患又は病態は、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連又は関与する任意の疾患又は病態でありうる。このような、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連する疾患又は病態は、大血管血栓及び/又は微小血管血栓(MVT)に関与する任意の疾患若しくは病態、及び/又は(未だ)非閉塞性の大血管血栓若しくは微小血管血栓の部位に関与する任意の疾患若しくは病態でありうる。しかしながら、防止又は処置しようとする疾患又は病態は、少なくとも微小血管血栓症(MVT)に関連する疾患又は病態であることが好ましい。本明細書において、「疾患又は病態を防止する」という用語は、その疾患若しくは病態が発生若しくは発達するリスクを低減させることを含むもの、及び/又はこれと等しいものであると理解されたい。
好ましい実施形態において、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連する疾患又は病態は、後天性又は遺伝性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、補体媒介性血栓性微小血管症(Georgeら、2014年、N Engl J Med.371巻(7号):654~66頁の総説のとおり)、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、閉塞性血栓の形成、動脈血栓形成、急性冠閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈バイパスグラフト、冠状動脈弁置換術、及び血管形成術、ステント術、又は粥腫切除術などの冠動脈インターベンションに起因する再狭窄及び障害、血管形成術、粥腫切除術、又は動脈ステント術の後の肥厚、脈管系の閉塞性症候群又は罹患動脈の開存性の欠如、一過性脳虚血発作、不安定狭心症又は安定狭心症、大脳梗塞、HELLP症候群(HELLPは、溶血、肝酵素上昇、及び血小板数減少である)、頸動脈内膜剥離術、頸動脈狭窄、重症虚血肢、心塞栓、末梢血管疾患、再狭窄、鎌状赤血球症、並びに心筋梗塞からなる群から選択される疾患又は病態である。
本発明の方法によって処置又は防止される、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連するさらなる疾患又は病態は、不安定狭心症、安定狭心症、狭心症、塞栓形成、深部静脈血栓症、溶血性貧血、急性腎不全、血栓溶解合併症、播種性血管内凝固障害(DIC)、血栓症、冠動脈心疾患、血栓塞栓性合併症、心筋梗塞症、再狭窄、及び心房細動における心房血栓症形成、慢性不安定狭心症、一過性脳虚血発作及び卒中、末梢血管疾患、動脈血栓症、子癇前症、塞栓症、血管形成術、移植血管の吻合術、及び心血管装置への慢性曝露後の再狭窄及び/又は血栓症からなる群から選択される疾患又は病態である。このような病態は、血栓溶解療法の間及びその後、血管形成術後、並びに冠状動脈バイパス後の血栓塞栓症及び再閉塞に起因する場合もある。
さらなる実施形態において、融合タンパク質、遺伝子療法ベクター、及び医薬組成物(それぞれ上記に定義したとおり)は、個体のプラーク又は血栓の処置又は防止に使用するためのものである。該プラーク又は血栓の形成は、高せん断の条件下で起こりうる。血栓症及び再閉塞のいずれにおいても、高せん断速度における血小板の可逆的な粘着又はテザリングの後に、血小板のコラーゲン受容体を介した強力な粘着が起こり、血小板活性化がもたらされる。損傷した血管壁で露出したコラーゲンに対する、VWFによる血小板のテザリングは、高せん断条件下で特に重要である。本発明の融合タンパク質は、高せん断条件下で良好に機能する。
第7の態様において、本発明は、上記に定義した融合タンパク質、上記に定義した遺伝子療法ベクター、又は上記に定義した医薬組成物を、それを必要とする対象に有効量で投与するステップを含む、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連する疾患又は病態、好ましくは、微小血管血栓症に関連する疾患又は病態の処置又はリスク低減の方法に関する。好ましくは、本方法において、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓に関連する疾患又は病態は、後天性又は遺伝性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、補体媒介性血栓性微小血管症、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、非閉塞性血栓、閉塞性血栓の形成、動脈血栓形成、急性冠閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈バイパスグラフト、冠状動脈弁置換術、及び血管形成術、ステント術、又は粥腫切除術などの冠動脈インターベンションに起因する再狭窄及び障害、血管形成術、粥腫切除術、又は動脈ステント術の後の肥厚、脈管系の閉塞性症候群又は罹患動脈の開存性の欠如、一過性脳虚血発作、不安定狭心症又は安定狭心症、大脳梗塞、HELLP症候群、頸動脈内膜剥離術、頸動脈狭窄、重症虚血肢、心塞栓、末梢血管疾患、再狭窄、鎌状赤血球症、並びに心筋梗塞、又は上記に定義したさらなる疾患若しくは病態からなる群から選択される。
第8の態様において、本発明は、微小血管血栓、フィブリン非依存性血栓、並びにVWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓のうちの少なくとも1つの処置又はリスク低減の方法に関する。好ましくは、本方法において、後天性又は遺伝性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、補体媒介性血栓性微小血管症、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、非閉塞性血栓、閉塞性血栓の形成、動脈血栓形成、急性冠閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈バイパスグラフト、冠状動脈弁置換術、及び血管形成術、ステント術、又は粥腫切除術などの冠動脈インターベンションに起因する再狭窄及び障害、血管形成術、粥腫切除術、又は動脈ステント術の後の肥厚、脈管系の閉塞性症候群又は罹患動脈の開存性の欠如、一過性脳虚血発作、不安定狭心症又は安定狭心症、大脳梗塞、HELLP症候群、頸動脈内膜剥離術、頸動脈狭窄、重症虚血肢、心塞栓、末梢血管疾患、再狭窄、鎌状赤血球症、並びに心筋梗塞、又は上記に定義したさらなる疾患若しくは病態からなる群から選択される疾患又は病態において、これらの血栓のうちの少なくとも1つが処置されるか、又はその発生リスクが低減する。
本文書及び特許請求の範囲において、「含む」という動詞及びその活用形は、この言葉に続く項目が含まれるが、明確に挙げられていない項目が除外されるものではないことを意味するよう、非限定的な意味で使用される。さらに、「a」又は「an」という不定冠詞による要素への言及は、その要素がただ1つしか存在しないことが文脈上明らかに必要である場合を除いて、その要素が2つ以上存在する可能性を除外するものではない。したがって、「a」又は「an」という不定冠詞は通常、「少なくとも1つ」を意味する。
「約」又は「およそ」という言葉は、数値と関連して使用される場合(例えば約10)、好ましくは、その値が所与の値(10)から0.1%多いか又は少ない値であってもよいことを意味する。
本明細書で引用するすべての特許文献及び参考文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例1
方法及び材料
ナノボディ-mUPAの構築
ヒト及びマウスの両方のウロキナーゼ(PLAU)のcDNA配列を、NCBIデータベースから得た(それぞれNM_002658.4及びNM_008873.3)。シグナルペプチドドメイン、EGF様ドメイン、及びKringleドメインの配列は、連結ペプチドの最初の部分とともに除去した。残りの連結ペプチド及びS1ペプチダーゼドメイン(触媒的ドメイン)に、GGGGSリンカーが続くタバコエッチウイルス切断部位をコードするN末端配列を付加した。GGGGSリンカーに、アミノ酸配列を乱すことなくPstI・BamHI消化部位を組み込んだ。5’側にはEcoRI消化部位を付加し、3’側にはPLAUの終止コドン後にNotI消化を付加した。この構築物は、IDT(Integrated DNA Technologies、Leuven、Belgium)からカスタム遺伝子構築物として得た。
IDTを介して、ナノボディ(別名VHH)のコード配列をヒト宿主細胞で発現させるためにコドン最適化した。VHHコード配列のN末端側には、タバコエッチウイルス切断部位をコードする配列を配置し、C末端側には、GGGGSリンカー(PstI・BamHI消化部位をコードする)を配置した。これらのDNAセグメントは、IDTから二本鎖DNA断片(gBLocks)として得た。
カスタム遺伝子構築物を大腸菌(E.coli)TOP10で増殖させ、アンピシリン耐性によって選択した。得られたプラスミドDNAをEcoRI及びNotIによって消化した。結果として得られたインサート(886)をアガロースゲルで分離及び単離し、改変されたpcDNA6発現ベクター(pSM2)(De Maatら、2016年、J Allergy Clin Immunol、11月30日;138巻(5号):1414~23頁))にライゲートした。pSM2は、N末端側のマウスIgK分泌シグナル及び二重STREP単離タグをコードし、二重STREP単離タグの後に、改変されたUPA構築物がライゲーションされる。
メーカーの説明に従って、gBlocksをpJET1.2クローニングベクターにライゲートした(CloneJET PCRクローニングキット、Thermo Fisher)。これらの構築物を大腸菌TOP10で増殖させ、アンピシリン耐性によって選択した。得られたプラスミドDNAをEcoRI及びBamHIによって消化した。結果として得られたインサートをアガロースゲルで分離及び単離し、miniUPA構築物を含むpSM2ベクターにライゲートした。これらの遺伝子構築物を図1A及び図1Bに概略的に示す。
表1は、調製されたナノボディ-mUPA融合タンパク質構築物の一覧であり、それらのナノボディの標的及びそれらの名称を含む。
Figure 2024028711000004
ナノボディ-mUPAの生成
239フェクチンをメーカー(ThermoFisher)による説明のとおりに使用して、ナノボディ/mUPA-pSM2構築物をHEK293フリースタイル(FreeStyle)(商標)細胞にトランスフェクトした。1日後、細胞を20mLに増やした。それから2日後、細胞をブラストサイジン(5μg/mL)による選択下に置いた。構築物がHEKゲノムに安定に組み込まれるまで、メーカーの説明に従って、トランスフェクト細胞をさらに培養した。細胞を増やし(1.1×10細胞/mLまで)、7日間のタンパク質産生の後に、細胞を2000×gで5分間スピンダウンした。それから、上清を収集し、ベンザミン(0.174mg/mL)を添加し、その後、上清をさらなる使用まで-20℃で保管した。
ナノボディ-mUPAの精製
収集した上清(400mL)を、10kDAカットオフ膜(GE healthcare)を使用し、Quixstandで150mLまで濃縮させた。それから、ベンズアミジンを含有する2Lの1×STREPバッファー(100mMのトリス、150mMのNaCl、0.174mg/mLのベンズアミジン、pH8.0)に対して濃縮物を透析した。8mLのStrep-Tactinスーパーフロービーズ(IBA)を含むカラムに濃縮物を流した。20mLの1×STREPバッファーでカラムを洗浄した後、d-デスチオビオチン(2.5mM、Sigma Aldrich)を含む1×STREPバッファーによってタンパク質を溶出させた。精製されたタンパク質を2Lの酢酸ナトリウム(4mMの酢酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH5.4)に対して透析し、-80℃で保管した。
結果
精製されたナノボディ-mUPA構築物のウェスタンブロット
ナノボディ-mUPA構築物を試料バッファー(25mMのDTT)で100μg/mLの濃度まで希釈した。4~12%の勾配でビス-トリスゲルを含むMESバッファーに、10μLの試料をロードした。試料の分離は165ボルトで50分間にわたって行った。ブロッティングバッファーに漬けたイモビロン-FL膜上に、125ボルトで1時間にわたってゲルを移す。0.5×Odysseyブロッキングバッファーで膜をブロッキングし、その後、ウサギポリクローナル抗ヒトUPA抗体をIR800標識ヤギ抗ウサギ抗体と組み合わせて用い、構築物を検出する。近赤外オデッセイスキャナー(Licor)により、メーカーの説明に従って結果を分析した。図2は、A11-mUPAを除くすべての融合タンパク質が、ほぼ等しいレベルで発現されたことを示す。
ナノボディ-mUPA構築物のウロキナーゼ活性
ナノボディ-mUPA構築物は、非自発的(すなわち非誘導性)の活性を示すはずだが、プラスミンによる分子切断によって活性化可能であるはずである。
ナノボディ-mUPA構築物のうちのいずれも自発的活性を示さないことを立証するため、構築物(1μg/mL)を、0.2%のBSA-HBS中、0.5mMのウロキナーゼ基質(I1140;Bachem)の存在下でインキュベートした。基質の変換を、メーカーの説明に従って37℃で測定した。融合タンパク質のうち、ウロキナーゼ基質に対する検出可能な自発的活性を示したものはなかった(データは示さない)。
ナノボディ-mUPA構築物がプラスミンによって活性化可能であるかどうかを試験するため、プラスミノーゲンを37℃で15分間にわたり、ストレプトキナーゼによって予備活性化した(以降、プラスミンと呼ぶ)。ナノボディ-mUPA融合構築物(最終濃度1μg/mL)を0.2%のBSA-HBSで希釈し、プラスミン(最終濃度1μg/mL)とともに12分間インキュベートした。その後、ウロキナーゼ基質(0.5mMのI1140、Bachem)を添加し、その変換をメーカーの説明に従って37℃で測定した。図3は、融合タンパク質が正常に活性化可能であることを示す。
プラスミノーゲン活性化
ウロキナーゼによるプラスミノーゲン活性化の原理は、ウロキナーゼとプラスミノーゲンとの間の相反的な切断に依存する。ナノボディ-mUPA構築物によるプラスミノーゲン活性化を試験するため、構築物(1μg/mL)を、0.2%のBSA-HBS中、100μg/mLのプラスミノーゲン及び0.2mMのプラスミン基質(I1390;Bachem)の存在下でインキュベートした。基質の変換を、メーカーの説明に従って37℃で測定した。図4は、すべての構築物が同等の酵素活性の発生を示したことを示す。
ELISAによって判定したVWFに対する抗VWF構築物の結合
ヌンクマキシソーププレート(Thermo)をPBS中1μg/mLのVWFで一晩コーティングした。翌日、プレートを1%のBSA-PBSでブロッキングした。抗VWFナノボディ-mUPA融合構築物を1%のBSA-PBSで様々な濃度に希釈し、その後、50uLを各ウェルに加え、1時間インキュベートした。それから、プレートをPBS-トゥイーン20(PBST、0.05% v/v)で洗浄する。結合した構築物を、ヤギ抗ウサギHRP二次抗体(Abcam)と組み合わせたウサギ抗UPAポリクローナル抗体によって検出した。ウェルをPBSTですすぎ、その後、100μlのTMBを室温で添加した。基質を5分間にわたって展開させ、その後、50μlのHSO(0.3M)を添加した。結果は450nmの吸収によって分析した。Graphpad Prism 7.02によって結果を分析し、非線形回帰曲線の当てはめによってK(nM単位)を判定した。結合親和性を表2に記載する。
Figure 2024028711000005
球状VWF又は開いたVWFの存在下におけるプラスミノーゲン活性化
VWFは、微小血栓形成のための足場である。VWFには、タンパク質の立体構造に依存するプラスミン(プラスミノーゲン)結合特性もある(Tersteegら、2014年、上記参照)。VWFは、せん断応力下で(また、マイクロタイタープレートにおける固定化中にも(過去の実験を参照されたい))ほどける。これは、小分子のリストセチンとともにインキュベーションすることによって模倣することができる。本発明者らは、本発明の標的化される融合タンパク質によるプラスミノーゲン活性化が、VWFの立体構造による影響を受けるかどうかを調べた。ナノボディ融合構築物(0.25μg/mL)及びVWF(5μg/mL)を0.2%のBSA-HBSで希釈する。それから、37℃で5分間インキュベートしながら、それぞれVWFを開くためか又はVWFを球状に保つために、リストセチン(0.6mg/mL)又はバッファーを添加する。それから、プラスミノーゲン(100μg/mL)、続いてプラスミン基質(I1390 Bachem;0.2mM)を添加する。基質の変換を、メーカーの説明に従って37℃で測定した。比較のため、異なる構築物について、5分後の基質の変換を、以下の棒グラフに示した。データはGraphpad Prism 7.02で処理し、一元配置分散分析によって分析した。*P<0.05。図5A~5E及び図6は、プラスミン活性の発生までの時間が、開いたVWF(リストセチンの存在下)では、閉じたVWFと比較して有意に短縮されることを示す。
VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解。
これまでに説明されている方法(Tersteegら、2014年、上記参照)に従い、クエン酸加全血から血小板を単離した。単離した血小板(200.000/mL)を、VWF(5μg/mL)、プラスミノーゲン(100μg/mL)、並びに凝集阻害因子のRGDW(200μM)及びイロプロスト(0.4μg/mL)とともに、37℃で15分間にわたり、光透過凝集計においてインキュベートした。リストセチン(0.6mg/mL)の添加により、凝集を誘導した。それから6分後、ナノボディ-mUPA構築物(1μg/mL)を添加し、凝集物の溶解を経時的にモニタリングした(図7A~7D)。すべての試料で、50%の微小血栓の分解が起こった時点を判定した(分析方法の図式的な例を図8Aに示す)。結果をGraphpad Prism 7.02で処理し、一元配置分散分析によって分析した(*P<0.05)。その結果を図8Bに示す。明らかに、少なくとも融合タンパク質のsVWF-mUPA、D3-mUPA、及びGP1B17-mUPAによるプラスミノーゲン活性化の標的化は、微小血栓溶解を加速させる。
実施例2:流動灌流における内皮細胞のVWF-血小板の微小血栓溶解
材料及び方法
カバーガラスでのヒト血管内皮細胞(Huvecs)の培養
液体窒素中で保管したHuvecs(継代0)を37℃で解凍し、1:10で培地(huvec増殖因子EGM2を補充したEBM-2、Lonza又はPromocel)に添加し、100gで5分間スピンダウンした。上清を処分し、細胞を5mLの培地に取り、T25フラスコにて摂氏37度、5%COで培養した。翌日、細胞を3つのT75フラスコに継代した。6日目、1,25%のグルタルアルデヒドを含むpH7.4のHTバッファー(HEPESタイロードバッファー:10mMのHEPES、0.5mMのNaHPO、145mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgSO)で前処理したカバーガラスに、細胞を1:6で継代する。
カバーガラスをグルタルアルデヒドでコーティングするために、カバーガラスを脱塩水及びエタノールですすいだ。次いで、カバーガラスをHCL 37%:メタノール(1:1)中で30分間インキュベートし、その後、脱塩水で5分間すすいだ。次に、カバーガラスをアミノプロピルトリエトキシシラン:エタノール(1:100)中で30秒間インキュベートし、その後、脱塩水及びエタノールですすいだ。次いで、カバーガラスを乾燥させ、グルタルアルデヒド20%:HTバッファーpH7.4(1:20)とともに1時間インキュベートし、その後、脱塩水ですすぎ、使用までガラスをエタノール中で保管した。
Huvecsをカバーガラス上で使用までおよそ10~15日間培養した。
熱失活した血漿の調製
2袋の血漿(OctapharmaのOminplasma、血液型はいずれもAB、ロット番号:C442A9521、バッグ:X000214223782、X000214223577)を混合することにより、熱失活した血漿を調製した。このミックス200mLを10本のファルコンチューブ(50mL、各20mL)に分配し、56℃ちょうどに設定した水浴で30分間インキュベートし(20mLを完全に水面下に置いた)、中間時点(15分)でファルコンチューブを混合した。30分間のインキュベーション後、ファルコンチューブを氷で覆い、遠心分離するまで氷上に保った(注:チューブを遠心分離のために氷から取り出したとき、チューブは依然としてある程度温かかった)。チューブを15.000gで5分間(冷却せずに)遠心分離した。上清を合わせ、1mLのアリコートに分けるまで氷上に保った。
フローチャンバの設定
層流灌流チャンバに予め温めた培地を充填して、カバースリップを置く前にチューブ類からすべての空気を除去した。灌流中にインレットに入る流体がちょうど1分後に灌流チャンバに到達するように、インレットチューブを90,6μLの容積に対応する長さに切断した。使用するシリンジの直径は16mmであり(ブラウンの12mlシリンジの場合のみ)、シリンジポンプは90,6μL/分に設定する。これにより(3mmのチューブ類を用いた場合に)、300s-1のせん断速度が得られるからである。huvecカバースリップを培地に置き、10バールに設定した真空発生装置を取り付け、灌流チャンバを37℃に保つ加熱モジュールを備えた倒立顕微鏡(Zeiss observer Z.1、Carl Zeiss)下に灌流チャンバを置く。残存する気泡があれば、培地を灌流することによって除去する。
熱失活した血漿中の洗浄血小板
同意した健康なボランティアの血液を、0.1容積で3.2%(10.9mM)のクエン酸三ナトリウムに収集した。遠心分離(15分間にわたり室温で160g)により、多血小板血漿(PRP)を得た。10%(v/v)のクエン酸デキストロース、85mMのクエン酸三ナトリウム、71mMのクエン酸、111mMのD-グルコースを補充したPRPを遠心分離し(15分間にわたり室温で400g)、0.145MのNaCl、5mMのKCl、0.5mMのNaHPO、1mMのMgSO、10mMのHEPES、及び5.5mMのD-グルコースを含むpH6.5のHEPESタイロードバッファーに血小板を再懸濁した。10μg/mLのPGIを血小板懸濁液に添加した後、別の遠心分離ステップ(15分間にわたり室温で400g)を行い、熱失活した血漿に血小板を再懸濁し、最終的な計数が200G/Lになるように血小板数を調節した。
灌流実験の設定
200G/Lの血小板を含む(37℃の水浴で予め温めてある)熱失活した血漿を、2mLエッペンドルフカップ(40分間の実験→必要量2×2mLなど)に分配し、開始前にすべてのエッペンドルフカップに、イロプロスト(0.1mg/mLのストックを8μL(250倍希釈)添加、最終濃度0.4μg/mL、Bayer Schering Pharma AG)をまず添加し、その後ヒスタミン(培地中500μMのストック4μL(500倍希釈)、最終濃度100μM)を添加する。イロプロスト及びヒスタミンの添加直後、空気が導入されないことを確実にするようにチューブを圧迫することにより、培地を含む2mLエッペンドルフカップから、熱失活した血漿を血小板とともに含むエッペンドルフカップにインレットチューブを移すことによって、灌流を開始する。およそ1分後、最初の血小板がフローチャンバに入ったとき(視認できる変化)、フレーム1から実験を開始する。7分後、必要量を直接エッペンドルフカップにピペット操作で入れ、プラスチックピペットで混合することにより、構築物を残り(この時点で7×90.6=634μLが使用されているため、2000-634.2=1365.8μL)に添加し、最終濃度を10μg/mLとする。この時点で、血漿とのプレインキュベーション時間が等しいことを確実にするため、構築物をさらなるエッペンドルフカップにも加える。灌流中は、プラスチックピペットで血漿を一滴ずつ慎重に添加することにより、2mLエッペンドルフカップを再充填する必要がある。この再充填は、再充填に起因する可能性のある乱れを対応するフレーム/時点に一致させることができるように、フレーム150、250などで行う。実験中は5秒毎にDIC画像を作成し、実験の終わりに、灌流チャンバ内の他の領域のスクリーンショットを5枚取り、「血小板ストリング」の形態で視認できる血小板-VWF複合体の数を計数する。
結果
結果を図9に示す。図9は、少なくとも融合タンパク質のGP1B17-mUPA、sVWF-mUPA、及びD3-mUPAにより標的化されたプラスミノーゲン活性化が、Huvecsに結合した血小板-VWF複合体の血栓溶解を、対照融合タンパク質R2-mUPAと比較して加速させることを示す。特に、融合タンパク質GP1B17-mUPAは、血小板-VWF複合体を急速に排除し、特に血小板の標的化が、微小血栓中の血小板-VWF複合体を排除するのに効率的であることを示している。
実施例3:
方法及び材料
カプラシズマブの生成
クローニング
カプラシズマブ(カブリビVHHの二価バリアント)を大腸菌で産生させ、HISタグ親和性クロマトグラフィーによって精製した。カプラシズマブのタンパク質配列をEMA審査報告(EMA/490172/2018、手続き番号EMEA/H/C/004426/0000)から得て、IDT(integrated DNA technologies)のコドン最適化ツールにより、大腸菌での発現のためにコドン最適化した。N末端側のBamHI消化部位及びC末端側のNotI消化部位を構築物に付加し、二本鎖DNA断片としてIDTに発注した(配列番号40)。
このDNA断片を5mMのトリスバッファー(pH=8.5)に溶解させ、50℃で20分間加熱した。それから、メーカーの説明に従って、DNA断片をpJET1.2ベクターにライゲートした(CloneJET PCRクローニングキット、Thermo Fisher)。ライゲートした産物を、メーカーの説明に従い、熱ショックによってケミカルコンピテントな大腸菌TOP10(Thermo Fisher)に形質転換させた。形質転換した細菌を10mLの2×YT培地(100μg/mLのアンピシリンを含む)で培養し、37℃で一晩増殖させた。プラスミド単離キット(M&N)により、メーカーの説明に従ってプラスミドDNAを単離した。BamHI-HF及びNotI-HF(NEB)を含むCutsmartバッファーによってインサートを消化し、130Vで1時間にわたり、0.7%(w/v)のアガロースゲル(1×TBEバッファー、1:10.00ゲルレッド)で分離させた。インサートをゲルから切り取り、PCR&ゲルクリーンアップキット(M&N)により、メーカーの説明に従って精製した。
精製したインサートをpTH4.0ベクターにライゲートした。pTH4.0ベクターは、N末端側のPelBシグナルペプチド、精製目的のためのHis6タグ、及びBamHI消化部位が続くタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼの切断部位をコードする配列をコードする、改変されたpET32a(+)ベクターである。C末端側のNotI消化の後には、検出目的のためのmycタグ、続いて終止コドンを配置した(表1)。pTH4.0ベクターをBamHI-HF及びNotI-HFによって消化し、その後、断片について説明したように精製した。メーカーの説明に従い、T4リガーゼを含む1×T4ライゲートバッファーにより、消化されたpTH4.0ベクターに3:1の比で断片をライゲートした。前述のようにTOP10菌においてライゲーション混合物を形質転換させ、形質転換した細菌をYT寒天プレート(100μg/mLのアンピシリン、2%(w/v)のグルコース)において37℃で一晩増殖させた。コロニーを採取し、10mLの2×YT培地(100μg/mLのアンピシリン、2%(w/v)のグルコースを含む)で増殖させた。プラスミドDNAを前述のように単離した。MacrogenによるサンガーシーケンシングによってDNA配列を確認した(配列番号41)。
産生
pTH4.0プラスミドDNAにおけるカプラシズマブを、メーカーの説明に従い、ケミカルコンピテントなBL21 pLysS大腸菌(Thermo)に形質転換させた。形質転換した細菌を、10mLの2×YT培地(100μg/mLのアンピシリン、34μg/mLのクロラムフェニコール、及び2%(w/v)のグルコースを含む)において、37℃で一晩培養した。一晩培養物を2×YT培地(100μg/mLのアンピシリン、34μg/mLのクロラムフェニコール、及び2%(w/v)のグルコースを含む)で1:10に希釈し、3時間にわたって37℃で増殖させた。その後、培養物を2×YT培地(100μg/mLのアンピシリン、34μg/mLのクロラムフェニコールを含む)で1:100に希釈し、37℃で約3時間にわたって増殖させた。細菌がOD600nm=0.6に達したとき、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドの添加(0.1mMの最終濃度)によってタンパク質産生を誘導した。タンパク質産生は一晩24℃で行った。細菌を5000×gで15分間にわたってペレット化し、上清を処分した。400mlの培養物からの細菌ペレットを、25mLのダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS;137mMのNaCl、2.7mMのKCl、1.5mMのKH2PO4、8.2mMのNa2HPO4、pH=7.4)に再懸濁し、-20℃で凍結させた。
精製
凍結した細菌を37℃で解凍し、遠心分離により10.000×gで15分間にわたってペレット化した。上清を新しいチューブに移した。5mLのコバルトセファロースビーズ(TALON Superflow、G&E Heatlhcare、50%溶液)を、メーカーの説明に従ってPBSによって洗浄し、上清に加え、2時間にわたり室温でローラーベンチにおいてインキュベートした。TALONを遠心分離により1000×gで5分間にわたってペレット化した。上清を処分し、ペレットを20mLのPBSに溶解させた。TALONの洗浄を合計3回繰り返した。最後のステップの後、TALONを8mLのPBSに溶解させ、PD-10カラムにロードした。カラムを過剰量のPBSですすいだ。カラムをイミダゾール(PBS中150mM)で溶出させ、0.5mLの画分を収集した。タンパク質含有画分をプールし、HEPES緩衝食塩水(HBS:10mMのHEPES、150mMのNaCl、pH=7.4)に対し、3.500 MWCO透析膜(3 RCチューブ;Spectra/Por)によって一晩透析した。DeNovix分光光度計(DS-11)において、280nmの吸収によりタンパク質濃度を判定し、その後、濃度を消衰係数(ProtParamによって計算した)に対して補正した。クーマシーページブルー染色を用いたSDS-PAGEによって純度を評価した。
VWF-血小板凝集物の微小血栓溶解。
これまでに説明されている方法(Tersteegら、2014年、上記参照)に従い、クエン酸加全血から血小板を単離した。単離した血小板(200.000/μL)を、VWF(5μg/mL)、血漿精製プラスミノーゲン(100μg/mL)、並びに凝集阻害因子のRGDW(200μM)及びイロプロスト(0.4μg/mL)とともに、37℃で15分間にわたり、光透過凝集計においてインキュベートした。リストセチン(0.6mg/mL)の添加により、凝集を誘導した。それから6分後、ナノボディ-mUPA構築物又はカプラシズマブを添加し、凝集物の溶解を経時的にモニタリングした。すべての試料で、50%の微小血栓の分解が起こった時点を判定した(分析方法の図式的な例を図8Aに示す)。結果をGraphpad Prism 7.02で処理し、一元配置分散分析によって分析した(*P<0.05)。その結果を図10A及び10Bに示す。
結果
結果を図10A及び10Bに示す。少なくとも融合タンパク質のD3-mUPA及びGP1B17-mUPAによるプラスミノーゲン活性化の標的化が、カプラシズマブによって誘導される微小血栓溶解と比較して微小血栓溶解を加速させることが明らかに分かる。
Figure 2024028711000006

Figure 2024028711000007

Figure 2024028711000008

Figure 2024028711000009

Figure 2024028711000010

Figure 2024028711000011

Figure 2024028711000012

Figure 2024028711000013

Figure 2024028711000014

Claims (20)

  1. 微小血管血栓症の防止又は処置に使用するための、プラスミノーゲン活性化因子と、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓の部位に前記プラスミノーゲン活性化因子を標的化するための標的化因子とを含む、融合タンパク質であって、前記標的化因子が、血小板にあるGPIIb/IIIa受容体の活性化型のみに特異的に結合する標的化因子ではない、融合タンパク質。
  2. 前記標的化因子が、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する、請求項1に記載の使用のための融合タンパク質。
  3. 前記標的化因子が、
    a)少なくとも折り畳まれていないVWFに結合する標的化因子であって、好ましくは、球状VWFよりも折り畳まれていないVWFに優先的に結合する、標的化因子、
    b)VWFのD3ドメインに結合する標的化因子、
    c)血小板のGP1B受容体に結合する標的化因子、
    d)血小板のインテグリンαIIb/βIIIに結合する標的化因子、
    e)活性化した内皮によって優先的に発現される受容体に結合する標的化因子であって、好ましくは前記受容体が、E-セレクチン、P-セレクチン、uPAR、c1q受容体、キニンB1受容体、プラスミノーゲン受容体KT(PLGR-KT)、内皮タンパク質C受容体、トロンボモジュリン、n-カドヘリン、ICAM-1、及びVCAM-1からなる群から選択される、標的化因子、並びに
    f)活性化又は損傷した内皮の膜マーカーに結合する標的化因子であって、前記膜マーカーが、アニオン性リン脂質、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルエタノールアミンのうちの1つ又は複数である、標的化因子
    のうちの1つ又は複数である、請求項1又は2に記載の使用のための融合タンパク質。
  4. 前記融合タンパク質が、2種以上の標的化因子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための融合タンパク質。
  5. 前記標的化因子が、
    a)VWF、血小板、及び活性化した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する抗体可変ドメイン、並びに
    b)VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮に天然に結合するタンパク質由来の結合性ドメインであって、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する、結合性ドメイン
    のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための融合タンパク質。
  6. 前記抗体可変ドメインが、VHH、好ましくはヒト化VHHであるか、又は前記結合性ドメインが、
    i)VWFの血小板GP1B受容体結合性A1ドメイン、
    ii)ADAMTS13、第XII因子、第H因子(補体調節因子)、プラスミノーゲン、及び第VIII因子のうちの1つのVWF結合性ドメイン、並びに
    iii)ビタミンK依存性カルボキシル化/ガンマカルボキシグルタミン酸(GLA)ドメイン、第V因子のCドメイン、及び第VIII因子のCドメインから選択される膜結合性ドメイン
    からなる群から選択される結合性ドメインを含む、請求項5に記載の使用のための融合タンパク質。
  7. 前記プラスミノーゲン活性化因子が、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、又はスタフィロキナーゼのプロテアーゼドメインを含み、
    好ましくは、前記プラスミノーゲン活性化因子が、そのプロテアーゼドメインのすぐ上流に前記プラスミノーゲン活性化因子において天然に発生する連結ペプチドのシステイン含有部分を少なくともさらに含み、
    前記融合タンパク質が、任意選択で、前記標的化因子と前記プラスミノーゲン活性化因子とを結合させるリンカーアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための融合タンパク質。
  8. 前記融合タンパク質が、N末端からC末端の順に、
    a)請求項1~6のいずれか一項に記載の1つ又は複数の標的化因子であって、任意選択でリンカーアミノ酸配列によって結合している、標的化因子と、
    b)任意選択で、リンカーアミノ酸配列と、
    c)請求項7に記載のプラスミノーゲン活性化因子又はプラスミノーゲン由来プロテアーゼドメインと
    を含む、請求項7に記載の使用のための融合タンパク質。
  9. 後天性又は遺伝性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、補体媒介性血栓性微小血管症、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、非閉塞性血栓、閉塞性血栓の形成、動脈血栓形成、急性冠閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈バイパスグラフト、冠状動脈弁置換術、及び血管形成術、ステント術、又は粥腫切除術などの冠動脈インターベンションに起因する再狭窄及び障害、血管形成術、粥腫切除術、又は動脈ステント術の後の肥厚、脈管系の閉塞性症候群又は罹患動脈の開存性の欠如、一過性脳虚血発作、不安定狭心症又は安定狭心症、大脳梗塞、HELLP症候群、頸動脈内膜剥離術、頸動脈狭窄、重症虚血肢、心塞栓、末梢血管疾患、再狭窄、鎌状赤血球症、並びに心筋梗塞からなる群から選択される疾患又は病態において、前記微小血管血栓症が防止又は処置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための融合タンパク質。
  10. 請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質を、それを必要とする対象に有効量で投与するステップを含む、微小血管血栓症の処置又はリスク低減の方法。
  11. 後天性又は遺伝性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、補体媒介性血栓性微小血管症、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、非閉塞性血栓、閉塞性血栓の形成、動脈血栓形成、急性冠閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈バイパスグラフト、冠状動脈弁置換術、及び血管形成術、ステント術、又は粥腫切除術などの冠動脈インターベンションに起因する再狭窄及び障害、血管形成術、粥腫切除術、又は動脈ステント術の後の肥厚、脈管系の閉塞性症候群又は罹患動脈の開存性の欠如、一過性脳虚血発作、不安定狭心症又は安定狭心症、大脳梗塞、HELLP症候群、頸動脈内膜剥離術、頸動脈狭窄、重症虚血肢、心塞栓、末梢血管疾患、再狭窄、鎌状赤血球症、並びに心筋梗塞からなる群から選択される疾患又は病態において、前記微小血管血栓症が処置されるか、又はその発生リスクが低減する、請求項10に記載の方法。
  12. プラスミノーゲン活性化因子と、VWF及び血小板のうちの少なくとも1つを含む血栓の部位に前記プラスミノーゲン活性化因子を標的化するための標的化因子とを含む、融合タンパク質であって、前記標的化因子が、
    a)少なくとも折り畳まれていないVWFに結合する標的化因子であって、好ましくは、球状VWFよりも折り畳まれていないVWFに優先的に結合する、標的化因子、
    b)VWFのD3ドメインに結合する標的化因子、
    c)血小板のインテグリンαIIb/βIIIに結合する標的化因子、
    d)活性化した内皮によって優先的に発現される受容体に結合する標的化因子であって、好ましくは前記受容体が、E-セレクチン、P-セレクチン、uPAR、c1q受容体、キニンB1受容体、プラスミノーゲン受容体KT(PLGR-KT)、内皮タンパク質C受容体、トロンボモジュリン、n-カドヘリン、ICAM-1、及びVCAM-1からなる群から選択される、標的化因子、並びに
    e)活性化又は損傷した内皮の膜マーカーに結合する標的化因子であって、前記膜マーカーが、アニオン性リン脂質、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルエタノールアミンのうちの1つ又は複数である、標的化因子
    のうちの1つ又は複数である、融合タンパク質。
  13. 前記融合タンパク質が、2種以上の標的化因子を含む、請求項12に記載の融合タンパク質。
  14. 前記標的化因子が、
    a)VWF、血小板、及び活性化した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する抗体可変ドメイン、並びに
    b)VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮に天然に結合するタンパク質由来の結合性ドメインであって、VWF、血小板、及び活性化又は損傷した血管内皮のうちの少なくとも1つに特異的に結合する、結合性ドメイン
    のうちの少なくとも1つを含む、請求項12又は13に記載の融合タンパク質。
  15. 前記抗体可変ドメインが、VHH、好ましくはヒト化VHHであるか、又は前記結合性ドメインが、
    i)ADAMTS13、第XII因子、第H因子(補体調節因子)、プラスミノーゲン、及び第VIII因子のうちの1つのVWF結合性ドメイン、並びに
    ii)ビタミンK依存性カルボキシル化/ガンマカルボキシグルタミン酸(GLA)ドメイン、第V因子のCドメイン、及び第VIII因子のCドメインから選択される膜結合性ドメイン
    からなる群から選択される結合性ドメインを含む、請求項14に記載の融合タンパク質。
  16. 前記プラスミノーゲン活性化因子が、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、又はスタフィロキナーゼのプロテアーゼドメインを含み、
    好ましくは、前記プラスミノーゲン活性化因子が、そのプロテアーゼドメインのすぐ上流に前記プラスミノーゲン活性化因子において天然に発生する連結ペプチドのシステイン含有部分を少なくともさらに含み、
    前記融合タンパク質が、任意選択で、前記標的化因子と前記プラスミノーゲン活性化因子とを結合させるリンカーアミノ酸配列を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
  17. 前記融合タンパク質が、N末端からC末端の順に、
    a)請求項12~14のいずれか一項に記載の1つ又は複数の標的化因子であって、任意選択でリンカーアミノ酸配列によって結合している、標的化因子と、
    b)任意選択で、リンカーアミノ酸配列と、
    c)請求項16に記載のプラスミノーゲン活性化因子又はプラスミノーゲン由来プロテアーゼドメインと
    を含む、請求項16に記載の融合タンパク質。
  18. 請求項12~17のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記融合タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列が、好ましくは、前記融合タンパク質に作動可能に連結したシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、核酸分子が、好ましくは、前記融合タンパク質の発現を助ける調節エレメントをさらに含み、前記調節エレメントが、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結している、核酸分子。
  19. 請求項18に記載の核酸分子を含む遺伝子療法ベクター。
  20. 請求項12~18のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項19に記載の遺伝子療法ベクター、及び薬学的に許容できる賦形剤を含む、医薬組成物。
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