JP2024026992A - 銅-液晶性樹脂複合体およびその製造方法 - Google Patents

銅-液晶性樹脂複合体およびその製造方法 Download PDF

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修平 三浦
Shuhei Miura
康之 竹田
Yasuyuki Takeda
祐政 鄭
U-Jeong Jung
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Abstract

【課題】本発明は、液晶性樹脂組成物と銅部材との接合面での気密性に優れた銅-液晶性樹脂複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の銅-液晶性樹脂複合体は、銅部材と液晶性樹脂組成物とを有する銅-液晶性樹脂複合体であって、前記銅部材は、前記液晶性樹脂組成物と接合する接合面を有し、前記銅部材の接合面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上であり、かつ、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)の比(Ra/Rz)が0.06以上であり、前記液晶性樹脂組成物は、結晶化温度での損失係数が0.2以上である。【選択図】図3

Description

本発明は、銅-液晶性樹脂複合体およびその製造方法に関する。
芳香族ポリエステル樹脂や芳香族ポリエステルアミド樹脂に代表される液晶性樹脂は、機械的性質、熱的性質、成形加工性に優れたエンジニアリングプラスチックとして各種用途に広く使用されており、良流動性を必要とするコネクターなどの電気・電子部品に好適に用いられている。また、液晶性樹脂は、水蒸気透過性にも優れることから、ICチップ等を搭載した半導体パッケージ分野への応用が期待されている。
半導体パッケージではICチップを実装することで熱や紫外線などの外的環境から保護することに加え、マザーボードとの電気的接続が容易になるというメリットがあり、配線に使用される金属としては、線膨張率や放熱性、電気伝導度などの理由から銅部材が使用されている。
一方、液晶性樹脂は融点が高く、固化速度が速いため、射出成形により金属と一体的に成形されるインサート成形品では、金属の熱伝導度が高いことから液晶性樹脂の固化が早く進み、液晶性樹脂と金属部材との接合面で十分な密着性が得られず、接合面の気密性が低くなる場合がある。そのため、液晶性樹脂は、防水コネクターやハーメチックコネクタなどの防水性や気密性が求められるインサート成形品への適用が困難である。
また、液晶性樹脂と金属との接合面の気密性が低い場合、電子部品の基板等に実装する過程でインサート成形品をリフロー処理する際に、はんだ中のフラックスが端子部分に上がってくる、いわゆるフラックス上がりの現象が生じやすくなる。そのため、耐フラックス上がり性が求められるインサート成形品への適用も困難である。
たとえば、特許文献1では、液晶性樹脂と金属との接合面での気密性を向上させる方法として、液晶性樹脂にポリアリーレンサルファイド樹脂や環状オレフィン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂と、平均粒径が20μm以上50μm以下であり、アスペクト比が10以上である板状充填材を含む液晶性樹脂組成物が提案されている。
また、特許文献2、3では、銅製部品の表面をエッチング剤によって粗化処理する工程において、エッチング剤として、硫酸、過酸化水素、テトラゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンゼンスルホン酸類および塩化物イオンを含む水溶液を用いることで、液晶性樹脂との密着性を向上させる方法が提案されている。
また、特許文献4では、窒素を含む官能基を有するカップリング剤の水溶液で、粗化処理されていない金属材料の表面処理を行い、液晶性樹脂と射出成形で接合させる製造方法が提案されている。
国際公開第2017/110646号 特開2013-22761号公報 特開2011-124142号公報 特開2014-27053号公報
しかし、特許文献1では、液晶性樹脂が本来有している耐熱性の低下や水蒸気透過性を促進させ、バリが発生してしまうことがあった。また、特許文献2~4を用いても液晶性樹脂組成物と金属部材とを接合させた場合、液晶性樹脂と金属との接合面における十分な密着強度や気密性を得られないことがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、液晶性樹脂組成物と銅部材との接合面での気密性に優れた銅-液晶性樹脂複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、下記によって上記課題を解決できることを見出した。具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 銅部材と液晶性樹脂組成物とを有する銅-液晶性樹脂複合体であって、
前記銅部材は、前記液晶性樹脂組成物と接合する接合面を有し、
前記銅部材の接合面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上であり、かつ、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)の比(Ra/Rz)が0.06以上であり、
前記液晶性樹脂組成物は、結晶化温度での損失係数が0.2以上である、
銅-液晶性樹脂複合体。
(2) 銅部材を準備する工程と、
液晶性樹脂組成物を準備する工程と、
前記銅部材に前記液晶性樹脂組成物を射出成形し、前記銅部材と前記液晶性樹脂組成物とが接合した、銅-液晶性樹脂複合体を成形する工程と、
を有し、
前記銅部材の、前記液晶性樹脂組成物との接合面は化学粗化処理されており、
前記接合面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上であり、かつ、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)の比(Ra/Rz)が0.06以上であり、
前記液晶性樹脂組成物は、結晶化温度での損失係数が0.2以上である、
銅-液晶性樹脂複合体の製造方法。
(3) 前記化学粗化処理は、
前記銅部材に、1,2,3-ベンゾトリアゾールおよび5-アミノ-1H-テトラゾールを含む腐食抑制剤と、硫酸および過酸化水素水を含む化学粗化液と、を接触させて、前記銅部材に、有機皮膜で覆われた粗化形状を形成する粗化工程と、
前記銅部材に、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも一種と、アミンと、を含むアルカリ性溶液を接触させて、前記有機皮膜を除去する皮膜除去工程と、
カップリング剤およびトリアジン系化合物からなる群から選択される少なくとも一種を用いて、前記銅部材の表面処理をする表面処理工程と、
を有する、
前記(2)に記載の銅-液晶性樹脂複合体の製造方法。
本発明によれば、液晶性樹脂組成物と銅部材との接合面での気密性に優れた銅-液晶性樹脂複合体およびその製造方法を提供できる。
図1Aは、本発明の銅-液晶性樹脂複合体の気密性試験片の形状の一例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示すX-X線の断面図である。 図2は、気密性試験の試験装置の概略的な構成を示す図である。 図3は、化学粗化処理Aにより処理した銅部材の接合面を示すSEM画像である。 図4は、化学粗化処理Bにより処理した銅部材の接合面を示すSEM画像である。 図5は、化学粗化処理Cにより処理した銅部材の接合面を示すSEM画像である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
1.銅-液晶性樹脂複合体
本発明の銅-液晶性樹脂複合体は、後述する銅部材と液晶性樹脂組成とが射出成形により接合されたものである。以下に、各構成について説明する。
1-1.銅部材
本発明で使用する銅部材は、銅または銅合金である。銅合金としては、導電性と耐摩耗性の両立などの観点から、Cu(銅),Si(ケイ素),Fe(鉄),Mg(マグネシウム),P(リン),Ni(ニッケル),Sn(スズ),Co(コバルト),Zn(亜鉛),Be(ベリリウム),Pb(鉛),Te(テルル),Ag(銀),Zr(ジルコニウム),Cr(クロム),Al(アルミニウム)およびTi(チタン)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、不可避不純物とで構成される合金が好ましい。銅合金におけるCuの含有量は、85質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましい(Cuの量は99.95質量%以下であることが好ましい)。
また、本発明の銅部材は、後述する液晶性樹脂組成物と接合する接合面を有する。上記接合面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上であり、かつ、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.06以上である。また、上記接合面は、酸などの薬液により、化学粗化処理され、その表面に微細な凹凸が形成されている。
1-2.化学粗化処理
本発明の化学粗化処理は、脱脂工程、粗化工程、および皮膜除去工程を有する。以下に各工程について説明する。
(脱脂工程)
本発明の脱脂工程は、汎用の脱脂液や有機溶剤を用いて、銅部材の被処理面を清浄化する工程である。
上記脱脂液の例には、アルカリ性溶液(界面活性剤、および水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを含む水溶液)などが含まれる。また、上記有機溶剤の例には、アセトン、メチルエチルケトン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタンなどが含まれる。
脱脂方法は、銅部材を脱脂することができれば特に制限されず、溶剤で拭き取る方法、水で洗浄する方法、界面活性剤を含む水溶液もしくは洗剤で洗浄する方法、加熱して油成分を揮発させる方法、アルカリ脱脂などの公知の方法を用いることができる。
(粗化工程)
本発明の粗化工程は、腐食抑制剤と、塩酸、硫酸、過酸化水素水などの酸性水溶液と、を含む化学粗化液を用いて、銅部材に有機皮膜で覆われた粗化形状を形成する工程である。
上記腐食抑制剤は、金属部材の表面に所望の粗化形状を形成することができれば、特に制限されないが、1,2,3-ベンゾトリアゾールおよび5-アミノ-1H-テトラゾールを含むことが好ましい。1,2,3-ベンゾトリアゾールは、金属部材に粗化形状を効率よく形成することができ、さらに5-アミノ-1H-テトラゾールを併用することにより、処理ムラを低減して、均一な粗化形状を形成することができる。また、金属表面が有機皮膜で覆われることにより、表面に錆が生じにくくなるため金属部材を長期保存することができる。
また、上記腐食抑制剤に含まれる、1,2,3-ベンゾトリアゾールおよび5-アミノ-1H-テトラゾールのそれぞれの濃度は、形成する粗化形状の大きさを調整する観点、および処理ムラの発生を低減する観点から、0.5g/L以上20g/L以下が好ましく、0.5g/L以上10g/L以下がより好ましく、0.5g/L以上7g/L以下がさらに好ましい。上記濃度を0.5g/L以上とすることで、金属表面に充分な粗化形状を形成することができ、20g/L以下とすることで、処理ムラの発生を低減することができる。
上記粗化工程は、1回のみであっても、複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けて行う場合は、処理ムラを低減しつつ、安定して銅部材の表面(接合面)を粗化する観点から、化学粗化液の濃度は順に高くしていくことが好ましい。
(接合面の表面粗さ)
上記粗化工程によって形成される銅部材の接合面の算術平均粗さ(Ra)は0.6μm以上であり、0.6μm以上5.0μm以下が好ましく、0.8μm以上3.0μm以下がより好ましく、0.9μm以上2.0μm以下がさらに好ましい。Raが0.6μm以上であると、液晶性樹脂との良好な密着性が得られ、Raが5.0μm以下であると、銅の表面が脆くなりにくいため、液晶性樹脂との密着性の低下を抑制できる。
また、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)は0.06以上であり、0.06以上0.25以下が好ましく、0.07以上0.2以下がより好ましい。Ra/Rzが0.06以上0.25以下であると、銅部材の接合面の形状に、基準面(処理前の銅部材の表面をいう)から深さ方向に数μmオーダーの凹凸と、それよりも微細なサブμmオーダーの凹凸が共存した複雑な形状を形成できる。その結果、液晶性樹脂と銅部材とが接合面で十分な密着性を得られるので、気密性も向上させることができる。すなわち、液晶性樹脂と銅部材とが接合面で十分な気密性を得るためには、一定のRaを有するとともに、一定のRzを有する必要があることがわかる。
また、本発明の銅部材の接合面は、フラクタル次元が1以上であることが好ましく、1.1以上2.0以下であることがより好ましい。フラクタル次元が1以上であると、銅部材の接合面はフラクタルな接合面となり、十分なアンカー効果が得られる。また、フラクタル次元が2以下であると、液晶性樹脂を銅部材の接合面の微細な表面に充填できるので、液晶性樹脂と銅部材の接合面との間で十分な密着性が得られる。ここで、「フラクタル次元」とは、フラクタル幾何学において、より細かなスケールへと拡大するにつれ、あるフラクタルがどれだけ完全に空間を満たしているように見えるかを示す統計的な量である。
フラクタル次元を測定する一例としてボックスカウンティング法がある。これは、一定の領域を一定の大きさ(ボックスサイズ)で分割して見たときに、フラクタルな図形がどの程度含まれているのかを調べることで、フラクタル次元を推定する方法である。
また、「フラクタル次元(ボックスカウント次元)」とは、形の複雑さ、表面の凹凸の度合いなどを表す指標であり、フラクタル次元の値が大きいほど凹凸が複雑であることを示し、以下のように定義される。
ある図形Fを、一辺の大きさδの正方形の箱(ボックス)で覆うために必要なボックスの個数をNδ(F)とすると、フラクタル次元は下記式で定義される。本発明ではフラクタル次元が1.0以上あればフラクタル構造を有すると判断する。
Figure 2024026992000002
(皮膜除去工程)
本発明の皮膜除去工程とは、粗化工程で形成された銅部材(接合面)の有機皮膜を除去する工程である。具体的には、有機皮膜で覆われた銅部材(接合面)に、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも一種と、任意にアミンと、を含有するアルカリ性溶液を接触させる工程である。
粗化工程で述べたように、銅部材の表面に有機皮膜を形成することで、銅部材を長期保存することができる。そのため、使用の直前に本工程(皮膜除去工程)において、有機皮膜を除去することにより、汚染の少ない銅または銅合金の表面が得られ、液晶性樹脂との接合性を向上させることができる。
有機皮膜の除去方法は、特に制限はないが、アルカリ性溶液に接触させる処理方法が好ましく、スプレー法やディップ法で行うことが効率的でより好ましい。アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を溶解した水溶液が好ましい。有機皮膜の除去性の観点からは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択されるアルカリ金属化合物がより好ましい。
また、上記アルカリ性溶液は、さらにアミンを含有していることが好ましい。アミンを含有することで均一かつ容易に有機皮膜を除去できる。使用できるアミンは、特に制限されないが、有機皮膜の除去性の観点から、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましく、トリエタノールアミンがより好ましい。
上記アルカリ性溶液に含まれるアルカリ金属化合物の濃度は、5g/L以上100g/L以下が好ましく、30g/L以上70g/L以下がより好ましい。5g/L以上にすることで、有機皮膜の除去性が充分に得られ、100g/L以下にすることで銅部材の変色を抑制できる。
また、上記アルカリ性溶液に含まれるアミンの濃度は、5g/L以上100g/L以下が好ましく、30g/L以上70g/L以下がより好ましい。アミンの濃度を、5g/L以上とすることで有機皮膜の除去性が充分に得られ、100g/L以下とすることでアミンによる銅部材の変色を抑制できる。
上記皮膜除去工程の処理温度および処理時間は、特に制限はないが、有機皮膜を完全に除去する観点から、温度は30~80℃、時間は10~200秒であることが好ましい。
1-3.表面処理工程
本発明では、皮膜除去工程後に、銅部材と液晶性樹脂との接合性や、銅部材と液晶性樹脂との接合面での気密性を向上させるため分子向上剤による処理を行ってもよい。分子向上剤とは、銅部材の接合面に反応性基を形成し、銅部材と液晶性樹脂との接合面を共有結合で結ぶものである。分子向上剤の例には、カップリング剤、トリアジン系化合物などが含まれる。
(カップリング剤)
カップリング剤の例には、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどが含まれる。
カップリング剤の市販品の例には、KBE-903、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-9103P、KBM-573(いずれも信越化学工業株式会社製)などが含まれる。
(トリアジン系化合物)
上記トリアジン系化合物の例には、2,4-ジアジド-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアジド-6-(4-トリエトキシシリルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン、6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、2,4-ジアミノ-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジンなどが含まれる。
また、上記トリアジン系化合物としては、チオール基を有するトリアジン化合物(トリアジンチオール化合物)を用いてもよい。トリアジンチオール化合物の例には、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール・モノナトリウム、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール・トリエタノールアミン、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-ジブチルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-フェニルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、1-ヘキシルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジンなどが含まれる。
上記トリアジン系化合物の市販品の例には、A-TES、n-TES、p-TES(いずれも株式会社いおう化学研究所製)などが含まれる。
また、分子向上剤は、カップリング基およびトリアジン基の両方を有する化合物であってもよい。このような化合物の例には、6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-(3-エトキシジメチルシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウムなどが含まれる。
本発明の化学粗化処理において、それぞれの工程の間には、それぞれの工程で使用した薬液の混合を防止するための水洗工程を有する。また、上記各工程においては、水槽で被処理体を浸漬するバッチ式、被処理体をチェーンコンベアに吊下げる連続搬送式、被処理体を搬送ローラに乗せる水平搬送式等の装置を用いることができる。
1-4.液晶性樹脂
本発明の液晶性樹脂は、上述の銅部材の接合面に接合させる液晶性樹脂組成物を構成する成分である。液晶性樹脂の種類は、特に制限されないが、芳香族ポリエステルおよび芳香族ポリエステルアミドから選択された少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。また、液晶性樹脂は、芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルも含まれるものとする。
本発明に適用できる液晶性樹脂としての、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドであることが特に好ましい。具体的には、上記液晶性樹脂は、下記(1)~(5)の樹脂を用いることができる。
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位からなるポリエステル;
(2)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、からなるポリエステル;
(3)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、およびそれらの誘導体の少なくとも1種または2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステル;
(4)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、およびそれらの誘導体の少なくとも1種または2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド等、が含まれる。
上記液晶性樹脂を構成する化合物の具体例には、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)で表される化合物、および下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、および下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が含まれる。
Figure 2024026992000003
式(I)中、Xは、アルキレン(炭素数C1~C4)、アルキリデン、-O-、-SO-、-SO-、-S-、および-CO-より選択される基である。
式(III)中、Yは、-(CH-(n=1~4)および-O(CHO-(n=1~4)より選択される基である。
本発明に使用できる最も好ましい液晶性樹脂は、下記構造式で示される、構成単位(IV)~(IX)の2つ以上からなることが好ましい。
Figure 2024026992000004
エステル形成能を有する上記化合物類は、そのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階で前駆体から上記エステル形成能を有する誘導体に変性されたものでもよい。
また、上記構成単位(IV)の含有量は、全構成単位に対して30モル%以上80モル%以下であることが好ましく、35モル%以上70モル%以下であることがより好ましい。
構成単位(V)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上70モル%未満であることが好ましく、3モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
構成単位(VI)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、5モル%以上25モル%以下であることがより好ましい。
構成単位(VII)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%未満であることが好ましく、5モル%以上25モル%以下であることがより好ましい。
構成単位(VIII)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、5モル%以上25モル%以下であることがより好ましい。
構成単位(IX)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、0モル%以上15モル%以下であることがより好ましい。
構成単位(IV)~(IX)の合計の含有量は、全構成単位に対して100モル%である。
ここで、上記構成単位(V)の含有量を0モル%以上とすると、液晶性樹脂組成物の耐熱性を向上させやすくなり、上記構成単位(V)の含有量を70モル%未満とすると、液晶性樹脂組成物の損失係数の低下を低減できる。
なお、上記液晶性樹脂は、上記構成成分のほかに、必要に応じて分子量調整剤を含んでいてもよい。
(液晶性樹脂の調製方法)
本発明の液晶性樹脂の調製は、上述の化合物(モノマー)または上述の化合物(モノマー)の混合物から直接重合法やエステル交換法などの公知の方法で行うことができる。公知の方法の例には溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、またはこれらの2種以上の組み合わせが含まれる。上記方法の中では、溶融重合法、または溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましい。
本発明の液晶性樹脂の調製(重合)方法においては、種々の触媒の使用が可能である。上記触媒の例には、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)などの金属塩系触媒、N-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒が含まれる。
触媒の使用量は、一般にはモノマーの全質量に対して0.001~1質量%であることが好ましく、0.01~0.2質量%であることがより好ましい。これらの調製(重合)方法により調製されたポリマーはさらに必要があれば、減圧または不活性ガス中で加熱する固相重合法により分子量の増加を図ることができる。
上記方法で得られた液晶性樹脂の溶融粘度は、示差走査熱量計で測定される融点よりも10~30℃高い温度を有することが好ましく、剪断速度1000sec-1で測定した溶融粘度が3Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以上100Pa・s以下であることがより好ましく、5Pa・s以上50Pa/s以下であることが特に好ましい。液晶性樹脂の溶融粘度が、3Pa・s以上であると、成形時にバックフローやはなたれ問題が生じるのを抑制でき、200Pa・s以下であると、液晶性樹脂組成物を銅部材の微細な表面まで充填できる。溶融粘度は、例えば、キャピラリー式レオメーター キャピログラフ1D(株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定することができる。なお、上記液晶性樹脂は2種以上の液晶性樹脂の混合物であってもよい。
1-5.液晶性樹脂組成物
本発明の液晶性樹脂組成物は、上述の液晶性樹脂を、液晶性樹脂組成物の全質量に対して、60.0質量%以上90.0質量%以下含むことが好ましく、62.0質量%以上85.0質量%以下含むことがより好ましく、65.0質量%以上80.0質量%以下含むことがさらに好ましい。上記液晶性樹脂の含有量が、60.0質量%以上90.0質量%以下であると、流動性が良く、表面が粗化された金属部材の細部まで充填することができるとともに、形成された成形品の荷重たわみ温度や高温での曲げ弾性率を容易に好ましい範囲に調整することができる。
(無機充填材)
本発明の液晶性樹脂組成物は無機充填材を含んでもよい。無機充填材の例には、タルク、球状シリカ、マイカ、ガラス繊維、ウィスカなどが含まれる。ここで、タルク、球状シリカ、マイカ等は損失係数を上昇させる効果があり、ガラス繊維、ウィスカ等は損失係数を低下させる効果がある。
上記無機充填材の含有量は、液晶性樹脂組成物の全質量に対して、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。無機充填材の含有量が、15質量%以上30質量%以下であることにより、液晶性樹脂組成物の耐熱性や機械特性を向上できるとともに、液晶性樹脂組成物の結晶化温度での損失係数を調整しやすくなる。
(その他の成分)
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、すなわち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等のその他の成分も要求性能に応じて適宜含むことができる。その他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(270~380℃)での損失係数は0.2以上であり、0.25以上0.60以下であることが好ましく、0.30以上0.55以下であることがより好ましい。損失係数が0.20以上であると粘性が高いため、射出時のヘジテーションや圧損、固化による接合面での剥がれが生じにくく、高い密着強度を得ることができる。液晶性樹脂組成物の結晶化温度の測定方法は、例えば、DSC(TAインスツルメント社製)を用いて求めることができる。損失係数は、例えば、RSAIII(Rheometric Scientific社製)を用いて求めることができる。
(液晶性樹脂組成物の製造方法)
本発明に係る液晶性樹脂組成物の製造方法は、液晶性樹脂組成物中の成分を均一に混合できれば特に制限されず、公知の樹脂組成物の製造方法から適宜選択することができる。上記製造方法の例には、1軸または2軸押出機等の溶融混練装置(たとえば、TEX-30α(株式会社日本製鋼所製))を用いて、各成分を溶融混練して押出した後、得られた液晶性樹脂組成物を粉末、フレーク、ペレット等の所望の形態に加工する方法などが含まれる。
1-6.銅-液晶性樹脂複合体の製造方法
本発明の銅-液晶性樹脂複合体の製造方法は、
(1)銅部材を準備する工程と、
(2)液晶性樹脂組成物を準備する工程と、
(3)上記銅部材に上記液晶性樹脂組成物を射出成形し、上記銅部材と上記液晶性樹脂組成物とが接合した、銅-液晶性樹脂複合体を成形する工程と、を有する。
上記製造方法で製造される銅-液晶性樹脂複合体は、銅部材の、液晶性樹脂組成物との接合面は化学粗化処理されており、接合面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上であり、かつ、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)の比(Ra/Rz)が0.06以上であり、液晶性樹脂組成物は、結晶化温度での損失係数が0.2以上である。
(工程(1))
工程(1)は、上述の化学粗化処理されている銅部材を準備する工程である。本発明の銅部材を準備する工程は、酸などの薬液により、表面に微細な凹凸を有する接合面が形成された銅部材を準備する工程である。なお、本発明は、上記化学粗化処理後に分子向上剤などで処理する表面処理工程を含んでもよい。
(工程(2))
工程(2)は、上述の液晶性樹脂組成物を準備する工程である。まず、上述の液晶性樹脂を準備し、その液晶性樹脂と、任意に無機充填材およびその他の成分を、公知の方法で、例えば、2軸押出機(たとえば、TEX-30α、株式会社日本製鋼所製))を用いて混練することで、液晶性樹脂組成物を製造することができる。上記液晶性樹脂は、液晶性樹脂組成物とする前に、ペレット状に形成する工程を有してもよい。ペレット状に形成する方法としては、例えば、ストランドカッターを用いる方法がある。
(工程(3))
工程(3)は、上記銅部材に上記液晶性樹脂組成物を射出成形して、液晶性樹脂組成物と銅部材との銅-液晶性樹脂複合体を形成する工程である。化学粗化処理した銅部材を金型に固定し、そこに液晶性樹脂組成物を射出成形し、銅-液晶性樹脂複合体を作製する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特段の断りの無い限り、実験および測定は、23℃、50%RHの雰囲気下で行った。
1.液晶性樹脂の調製
液晶性樹脂1、2を、下記原料(モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤)を用いて、下記に示す調製方法により調製した。
(液晶性樹脂1)
[原料]
(モノマー)
(IV) 4-ヒドロキシ安息香酸 :1040g(48モル%)
(V) 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 : 89g(3モル%)
(VI) テレフタル酸 : 547g(21モル%)
(VII) イソフタル酸 : 91g(3.5モル%)
(VIII)4,4’-ジヒドロキシビフェニル : 716g(24.5モル%)
(脂肪酸金属塩触媒)
酢酸カリウム触媒:110mg
(アシル化剤)
無水酢酸:1644g
[調製方法]
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、上記原料を仕込んだ後、重合容器内を窒素置換し、反応系の温度を140℃まで昇温し、140℃で1時間反応させた。その後、360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(すなわち、1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行い、液晶性樹脂1を調製した。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にし、上記重合容器の下部から液晶性樹脂1を重合容器から排出してから、ストランド状に押し出し、それをペレタイズすることにより、ペレット状の液晶性樹脂1を得た。得られたペレットの融点は、DSC(TAインスツルメント社製)で測定したところ、355℃であった。
(液晶性樹脂2)
液晶性樹脂2は、液晶性樹脂1で用いた原料を下記原料に変更した以外は、液晶性樹脂1の調製方法と同様の方法で調製した。得られたペレットの融点は、360℃であった。
[原料]
(モノマー)
(IV) 4-ヒドロキシ安息香酸 : 46g(2モル%)
(V) 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 :845g(48モル%)
(VI) テレフタル酸 :741g(25モル%)
(VIII)4,4’-ジヒドロキシビフェニル:798g(25モル%)
(脂肪酸金属塩触媒)
酢酸カリウム触媒:120mg
(アシル化剤)
無水酢酸:1644g
2.液晶性樹脂組成物の調製
(液晶性樹脂組成物I)
液晶性樹脂1(68質量%)を、二軸押出機(TEX-30α、株式会社日本製鋼所製)のメインフィード口から供給し、サイドフィード口から、タルク(22質量%、クラウンタルクPP、松村産業株式会社製、「クラウンタルク」は同社の登録商標)、およびガラス繊維(10質量%、CS 3J-257、日東紡績株式会社製)を供給して、混合することにより液晶性樹脂組成物Iを得た。なお、上記二軸押出機のメインフィード口に設けられたシリンダーの温度を280℃に設定し、他のシリンダーの温度はすべて360℃に設定した。
(液晶性樹脂組成物II)
液晶性樹脂組成物IIは、液晶性樹脂1を液晶性樹脂2に変更した以外は、液晶性樹脂組成物Iの調製方法と同様の方法で調製した。
3.液晶性樹脂組成物の結晶化温度および損失係数の測定
上記液晶性樹脂組成物I、IIの結晶化温度および損失係数を以下の方法で測定した。
(結晶化温度)
結晶化温度は、DSC(TAインスツルメント社製)を用いて、液晶性樹脂組成物を20℃/分の条件で400℃まで昇温した後、20℃/分の条件で降温する条件下で測定した。
(損失係数)
損失係数は、上記液晶性樹脂組成物の成形片(130×12.7×1.6mm)を射出成形し、40mmのスパンに3点曲げモード、昇温速度2℃/分で、RSAIII(Rheometric Scientific社製)を用いて、1Hzの周波数について測定を行った。なお、上記損失係数は、上記液晶性樹脂組成物の結晶化温度での損失係数である。
上記液晶性樹脂組成物I、IIの組成および結晶化温度、損失係数を表1に示す。なお、表1における成分の量の単位は質量%である。
Figure 2024026992000005
4.銅-液晶性樹脂複合体の作製
銅部材の化学粗化処理(脱脂工程、粗化工程、および皮膜除去工程)を以下のように行った。
<化学粗化処理A>
(脱脂工程)
18mm×45mm×1.5mmtの銅部材(C1100)の表面を、アルカリ脱脂剤メルクリーナー1106(メルテックス株式会社製、「メルクリーナー」は同社の登録商標)を用いて電解処理することにより表面を脱脂した。
(粗化工程)
上記脱脂した銅部材を、75質量%の硫酸水溶液(80mL/L)、35質量%の過酸化水素水(60mL/L)、5-アミノ-1H-テトラゾール(2g/L)、および1,2,3-ベンゾトリアゾール(3g/L)を含む化学粗化液Aに液温32℃で、90秒間浸漬した後、水洗し、乾燥させることにより有機皮膜付き銅部材を得た。
(皮膜除去工程)
水酸化ナトリウム(40g/L)、トリエタノールアミン(50g/L)からなるアルカリ性溶液に40℃で3分間浸漬し、水洗した後、乾燥させ、銅部材表面の有機皮膜が除去された銅部材を得た。
<化学粗化処理B>
(脱脂工程)
18mm×45mm×1.5mmtの銅部材(C1100)の表面を、アルカリ脱脂剤メルクリーナー1106を用いて電解処理することにより表面を脱脂した。
(粗化処理)
上記脱脂した銅部材を、75質量%の硫酸水溶液(15mL/L)、および過硫酸ナトリウム(150g/L)を含む化学粗化液Bに液温25℃で、180秒間浸漬した後、水洗し、乾燥させることにより銅部材を得た。
<化学粗化処理C>
(脱脂工程)
18mm×45mm×1.5mmtの銅部材(C1100)の表面を、アルカリ脱脂剤メルクリーナー1106を用いて電解処理することにより表面を脱脂した。
(粗化処理)
上記脱脂した銅部材を、75質量%の硫酸水溶液(15mL/L)、35質量%の過酸化水素水(100mL/L)、および1,2,3-ベンゾトリアゾール(5g/L)を含む化学粗化液Cに液温32℃で、90秒間浸漬した後、水洗して有機皮膜付き銅部材を得た。
(皮膜除去工程)
上記有機皮膜付き銅部材を、水酸化ナトリウム(40g/L)、トリエタノールアミン(50g/L)からなるアルカリ性溶液に40℃で3分間浸漬し、水洗した後、乾燥させることにより、銅部材表面の有機皮膜が除去された銅部材を得た。
<分子向上剤付き銅部材の作製>
化学粗化処理A、B、およびCで処理した銅部材のそれぞれを、A-TES(2-トリエトキシシリルプロピルアミノ-4,6-エチルジアミノ-1,3,5-トリアジン)が0.1質量%含まれた溶液に浸漬した後、水洗し、80℃で30分間乾燥させることにより、分子向上剤付き銅部材を得た。なお、使用したA-TESは株式会社いおう化学研究所製である。
5.測定
<表面粗さの測定>
形状解析レーザ顕微鏡VK-8710(株式会社キーエンス製)を用いて、化学粗化処理をした銅部材の表面を150μm測定し、JIS B 0601(2001)に準拠して、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)を求めた。
<フラクタル次元の測定>
上記表面粗さの測定で得られたチャートを用いて、ボックスカウンティング法を用い、次の(1)~(3)の手順で解析を実施した。
(1)チャートより輪郭曲線を1片が0.25μm~5μmに設定した正方形の方眼紙を重ねて合わせ、輪郭曲線が存在する格子の数を測定する。
(2)正方形の大きさと輪郭曲線が存在する格子の数を両対数グラフにプロットし、最小二乗法曲線を求め、その乗数をフラクタル次元とする。
(3)フラクタル次元が1.0以上であればフラクタル構造を持つとする。
6.銅-液晶性樹脂複合体の作製
上記化学粗化処理を行った銅部材に対して、以下の条件で銅部材をインサート部材とするインサート成形により、上記液晶性樹脂組成物と接合することで、銅-液晶性樹脂複合体を作製した。
[成形条件]
・射出成形機:TR100EH(株式会社ソディック製)
・シリンダー温度:330℃
・金型温度:140℃
・射出速度:70mm/s
・保圧力:70MPa
7.気密性評価
気密性試験(ヘリウムリーク試験、真空法)について、図1および図2を用いて説明する。図1Aは、本発明の銅部材11および液晶性樹脂組成物12を含む、銅-液晶性樹脂複合体(気密性試験片)10の形状を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示すX-X線の断面図である。図2は、気密性試験の試験装置1の概略的な構成を示す図である。
図2に示すように、試験装置1は、銅-液晶性樹脂複合体(試験片)10を配置するための治具2、外部から密閉されたチャンバー3、ヘリウムボンベ4、真空ポンプ5、弁6、ヘリウム検出器7、およびヘリウムガスの検出結果を表示する制御装置8を有する。なお、治具2は有底直方体状を有する。
(測定方法)
チャンバー内に配置された治具上に、銅-液晶性樹脂複合体を配置した後、チャンバー内を密閉した。次いで、弁を開状態にして治具内を真空ポンプによって真空状態にした後、弁を閉状態にしてヘリウムボンベによりチャンバー内をヘリウムガスで満たした。このとき、チャンバー内のヘリウムの圧力を400kPaとし、治具内の真空圧を100kPaとして測定を行った。
本測定においては、チャンバー内において試験片の接合部分から漏れたヘリウムガスは、ヘリウム検出器によって検出され、銅部材と液晶性樹脂成形品の接合部分との気密性が低い場合には、チャンバー内のヘリウムガスが治具内に流入し、ヘリウム検出器によって検出される。なお、この試験では、ヘリウム検出器で検出されるヘリウムが1.0×10-7Pa・m/s以上の場合は気密性が実用レベルにはないと判断し、1.0×10-7Pa・m/s未満の場合は気密性に実用上問題なしと判断した。
銅-液晶性樹脂複合体を構成する液晶性樹脂組成物の種類、銅部材の表面処理方法、表面状態の評価結果、および気密性の評価結果を表2および3に示す。
Figure 2024026992000006
Figure 2024026992000007
表2および表3に示されるとおり、銅部材の接合面の算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上、Ra/Rzが0.06以上であり、かつ、液晶性樹脂組成物の損失係数が0.2以上である実施例1~4では良好な気密性が得られた。図3は、実施例2の化学粗化処理後の銅部材の接合面の表面をSEMで観察した画像であり、微細な表面凹凸が確認できる。
一方、算術平均粗さ(Ra)が0.6以下、または液晶性樹脂組成物の損失係数が0.2未満の比較例1~5は十分な気密性が得られなかった。図4は比較例3の銅部材の接合面の表面を、図5は比較例4の銅部材の接合面の表面をSEM画像で観察した結果であり、図3に比べ明らかに微細な表面の凹凸が確認できない。
本発明に係る銅部材と液晶性樹脂組成物とからなる銅-液晶性樹脂複合体の接合部の気密性に優れていることが確認された。
本発明の銅-液晶性樹脂複合体は、金属部材と液晶性樹脂組成物との接合面での気密性が良好であることから、防水性や気密性が求められるインサート成形品への適用が期待される。
1 試験装置
2 治具
3 チャンバー
4 ヘリウムボンベ
5 真空ポンプ
6 弁
7 ヘリウム検出器
8 制御装置
10 銅-液晶性樹脂複合体(気密性試験片)
11 銅部材
12 液晶性樹脂成形品

Claims (3)

  1. 銅部材と液晶性樹脂組成物とを有する銅-液晶性樹脂複合体であって、
    前記銅部材は、前記液晶性樹脂組成物と接合する接合面を有し、
    前記銅部材の接合面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上であり、かつ、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)の比(Ra/Rz)が0.06以上であり、
    前記液晶性樹脂組成物は、結晶化温度での損失係数が0.2以上である、
    銅-液晶性樹脂複合体。
  2. 銅部材を準備する工程と、
    液晶性樹脂組成物を準備する工程と、
    前記銅部材に前記液晶性樹脂組成物を射出成形し、前記銅部材と前記液晶性樹脂組成物とが接合した、銅-液晶性樹脂複合体を成形する工程と、
    を有し、
    前記銅部材の、前記液晶性樹脂組成物との接合面は化学粗化処理されており、
    前記接合面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上であり、かつ、算術平均粗さ(Ra)と最大平均粗さ(Rz)の比(Ra/Rz)が0.06以上であり、
    前記液晶性樹脂組成物は、結晶化温度での損失係数が0.2以上である、
    銅-液晶性樹脂複合体の製造方法。
  3. 前記化学粗化処理は、
    前記銅部材に、1,2,3-ベンゾトリアゾールおよび5-アミノ-1H-テトラゾールを含む腐食抑制剤と、硫酸および過酸化水素水を含む化学粗化液と、を接触させて、前記銅部材に、有機皮膜で覆われた粗化形状を形成する粗化工程と、
    前記銅部材に、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも一種と、アミンと、を含むアルカリ性溶液を接触させて、前記有機皮膜を除去する皮膜除去工程と、
    カップリング剤およびトリアジン系化合物からなる群から選択される少なくとも一種を用いて、前記銅部材の表面処理をする表面処理工程と、
    を有する、
    請求項2に記載の銅-液晶性樹脂複合体の製造方法。


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