JP2024024696A - 化粧シート及び化粧材 - Google Patents

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孝史 冨永
Takashi Tominaga
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健介 桑村
Kensuke Kuwamura
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Abstract

【課題】植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供する。【解決手段】基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える化粧材10であり、化粧シート1は、着色基材層2と、着色基材層2の一方の面に積層された透明樹脂層4とを備え、透明樹脂層4は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物には、核剤が添加されている。【選択図】図1

Description

本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。
ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとして、例えば、特許文献1に開示されているように、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが提案されている。
特開2014-188941号公報
近年では、環境問題の背景から、化粧シートの材料を、従来の材料である石油由来の材料から、植物由来の材料へ代える要求がある。しかしながら、化粧シートに用いることが可能な植物由来の材料として、バイオマスポリエチレンを用いると、化粧シートとして用いるためには、表面硬度が低下するという課題があった。
本発明は、上述した問題点を鑑み、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、着色基材層と、着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層とを備え、透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物には、核剤(造核剤)が添加されている化粧シートである。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、基材の少なくとも一方の面に積層された化粧シートとを備える化粧材である。
本発明の一態様によれば、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することが可能となる。
本発明の第1実施形態における化粧シート及び化粧材の構成を示す断面図である。
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
(第1実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材9は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(図1では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材9と、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8を備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
着色基材層2を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、着色熱可塑性のポリオレフィン系樹脂を用いることが可能である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂のうち、単独又は2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を用いることが可能である。
また、ポリオレフィン系樹脂としては、上述した種類から、化粧シート1の使用目的等に応じて、適宜選択して用いることが可能である。特に、一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体である。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合してもよく、更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することが可能である。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等を用いることが可能である。また、通常ではポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、又は、水素添加物等の改質剤を適宜添加することが可能である。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上150[μm]以下の範囲内であることが好ましく、50[μm]以上130[μm]以下であることがより好ましい。これは、着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが150[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
絵柄層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、透明な植物由来の高密度ポリエチレン(例えば、ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン(SHC7260)」)を用いて形成されている。
なお、植物由来の高密度ポリエチレンは、例えば、密度が0.94を超えるポリエチレンである。
透明樹脂層5を形成する高密度ポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されている。すなわち、透明樹脂層5を形成する高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物には、核剤が添加されている。
核剤は、高密度ポリエチレンの質量を基準として、500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、高密度ポリエチレンに添加されている。
第1実施形態では、一例として、核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、高密度ポリエチレンに添加されている場合について説明する。また、透明樹脂層5の密度は、例えば、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm]以上0.98[g/cm]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm]以上0.97[g/cm]以下の範囲内の密度を有する。
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
透明樹脂層5の厚さは、例えば、20[μm]以上200[μm]以下の範囲内とする。
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層6は、例えば、アクリル系樹脂組成物を用いて形成されている。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
なお、上述した第1実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第1実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2と、着色基材層2の一方の面に積層された透明樹脂層5とを備え、透明樹脂層5は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物には、核剤が添加されている。透明樹脂層5の密度は、例えば、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm]以上0.98[g/cm]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm]以上0.97[g/cm]以下の範囲内の密度を有する。
このため、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いた構成であっても、化石燃料由来のポリエチレンを用いて形成した構成と同等である高い硬度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
その結果、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
また、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いた構成であっても、化石燃料由来のポリエチレン等を用いて形成した構成と同等である高い透明度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
(2)核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で添加されている。
その結果、ヘイズの少ない化粧シート1を提供することが可能となる。
(3)核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で添加されている。
その結果、核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として1500[ppm]未満で添加されている構成と比較して、ヘイズの少ない化粧シート1を提供することが可能となる。
また、第1実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(4)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧材10を提供することが可能となる。
<第1実施形態の変形例>
(1)第1実施形態では、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に加え、基材9の他方の面(図1では、下側の面)に積層された化粧シート1を備える構成としてもよい。
第1実施例
第1実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から3の化粧材と、比較例1及び2の化粧材について説明する。
(実施例1)
着色基材層は、着色ポリエチレン樹脂を用いて、厚さを55[μm]として形成した。
絵柄層は、着色基材層の一方の面にコロナ放電処理を施した後に、ウレタン系印刷インキを用いて形成した。
接着層は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を用いて形成した。
透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)である、ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」を用い、「グリーンポリエチレン」に対し、「グリーンポリエチレン」の質量を基準として、1500[ppm]となるように、核剤である理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」を添加して形成した。また、透明樹脂層の厚さは、70[μm]とした。
表面保護層は、アクリル系樹脂組成物を主成分として形成した。
プライマー層は、ポリエステルウレタン樹脂を用いて、着色基材層の一方の面にコロナ放電処理を施した後に、厚さを1[μm]以上2[μm]以下の範囲内として形成した。
そして、ルーダーラミネートを実施することで、厚さが135[μm]である実施例1の化粧シートを形成した。
実施例1の化粧シートを形成した後、プライマー層の基材と対向する面に、ジャパンコーティングレジン製の「BA-10L(硬化剤:BA-11B)」を用いて基材に貼り合わせることで、実施例1の化粧材を形成した。
(実施例2)
核剤である理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」を、高密度ポリエチレンの質量を基準として500[ppm]となるように添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例3)
核剤である理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」を、高密度ポリエチレンの質量を基準として2000[ppm]となるように添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の化粧シート及び化粧材を形成した。
(比較例1)
高密度ポリエチレンに核剤を添加しなかった点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の化粧シート及び化粧材を形成した。
(比較例2)
高密度ポリエチレンに核剤を添加しなかった点を除き、比較例2と同様に形成して、比較例3の化粧シート及び化粧材を形成した。
(性能評価、評価結果)
実施例1から3の化粧材と、比較例1及び2の化粧材に対し、それぞれ、表面硬度、生産性、透過度、ヘイズを評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<表面硬度>
化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、表面硬度を評価した。そして、硬度が2B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「◎」と評価し、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が5B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
<生産性>
化粧シートの製造において問題が有るか否かにより、生産性を評価した。そして、化粧シートの製造において全く問題が無い場合を「◎」と評価し、化粧シートの製造において生産上の問題が無い場合を「○」と評価し、化粧シートの製造において問題が有る場合を「×」と評価した。
<透過度>
透明樹脂層の厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内に設定した状態において、波長が555[nm]の全光線透過率を分光光度計(積分球)により測定して、透過度を評価した。そして、全光線透過率が85%である場合を「◎」と評価し、全光線透過率が80%以上85%以下の範囲内である場合を「○」と評価し、全光線透過率が80%未満である場合を「×」と評価した。
<ヘイズ>
発明者等の定めた基準を用い、化粧シートとして用いる際に、意匠に支障が有るか否か無いかを評価して、ヘイズを評価した。
Figure 2024024696000002
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から3の化粧材は、全ての評価試験に対して、優れた性能を示した。一方、比較例1及び2の化粧材は、全ての評価試験に対しては、優れた性能を示すことが不可能であった。
(第2実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。
なお、第2実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8を備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
着色基材層2を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、着色熱可塑性のポリオレフィン系樹脂を用いることが可能である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂のうち、単独又は2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を用いることが可能である。
また、着色基材層2は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物で形成されていてもよい。さらに、着色基材層2は、植物由来の高密度ポリエチレンに加えて、植物由来の低密度ポリエチレンや、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでいてもよい。
また、ポリオレフィン系樹脂としては、上述した種類から、化粧シート1の使用目的等に応じて、適宜選択して用いることが可能である。特に、一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体である。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合してもよく、更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することが可能である。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等を用いることが可能である。また、通常ではポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、又は、水素添加物等の改質剤を適宜添加することが可能である。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上150[μm]以下の範囲内であることが好ましく、50[μm]以上130[μm]以下であることがより好ましい。これは、着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが150[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
また、着色基材層2は、例えば、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.98[g/cm]以上1.10[g/cm]以下の範囲内の密度を有する。
着色基材層2の密度は、JIS K6760‐1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112‐1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。
着色基材層2の密度が0.92[g/cm]以上であれば、密度が0.92[g/cm]未満である場合と比較して、着色基材層2の剛性を高めることが可能となる。また、着色基材層2の密度が1.12[g/cm]以下であれば、密度が1.12[g/cm]を超える場合と比較して、着色基材層2の透明性や機械的強度を高めることが可能となる。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
絵柄層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、オレフィン系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、透明な植物由来の高密度ポリエチレン(例えば、ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン(SHC7260)」)を含む樹脂組成物を用いて形成されている。
なお、透明樹脂層5は、植物由来の低密度ポリエチレンや、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでいてもよい。
透明樹脂層5の密度は、例えば、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm]以上0.98[g/cm]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm]以上0.97[g/cm]以下の範囲内の密度を有する。
透明樹脂層5の密度が0.92[g/cm]以上であれば、密度が0.92[g/cm]未満である場合と比較して、透明樹脂層5の剛性を高めることが可能となる。また、透明樹脂層5の密度が0.99[g/cm]以下であれば、密度が0.99[g/cm]を超える場合と比較して、透明樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることが可能となる。
また、透明樹脂層5には、例えば、密度が0.90[g/cm]以上0.91[g/cm]以下の範囲内である植物由来のポリプロピレンを用いてもよい。
透明樹脂層5を形成する高密度ポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されている。
核剤は、高密度ポリエチレンの質量を基準として、500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、高密度ポリエチレンに添加されている。
第1実施形態では、一例として、核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、高密度ポリエチレンに添加されている場合について説明する。
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
透明樹脂層5の厚さは、例えば、20[μm]以上200[μm]以下の範囲内、好ましくは55[μm]以上150[μm]以下の範囲内、より好ましくは60[μm]以上80[μm]以下の範囲内とする。
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層6は、例えば、アクリル系樹脂組成物を用いて形成されている。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗ウイルス剤、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
第2実施形態では、一例として、プライマー層8が、ポリエステルポリオールをイソシアネート架橋したポリエステルウレタンを用いて形成されている場合について説明する。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
なお、上述した第2実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第2実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2と、着色基材層2の一方の面に積層された透明樹脂層5とを備え、透明樹脂層5は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、高密度ポリエチレンには、核剤が添加されている。
このため、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いた構成であっても、化石燃料由来のポリエチレンを用いて形成した構成と同等である高い硬度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
その結果、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
また、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いた構成であっても、化石燃料由来のポリエチレンを用いて形成した構成と同等である高い透明度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
(2)核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で添加されている。
その結果、ヘイズの少ない化粧シート1を提供することが可能となる。
(3)核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で添加されている。
その結果、核剤が、高密度ポリエチレンの質量を基準として1500[ppm]未満で添加されている構成と比較して、ヘイズの少ない化粧シート1を提供することが可能となる。
また、第2実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(4)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、植物由来の材料である植物由来の高密度ポリエチレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧材10を提供することが可能となる。
(第3実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。
なお、第3実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8を備える。
なお、第3実施形態における化粧シート1の構成は、着色基材層2の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、着色基材層2以外の構成については、説明を省略する。
<着色基材層>
着色基材層2の構成は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物を用いて形成されている点を除き、上述した第1実施形態と同様の構成である。
植物由来の高密度ポリエチレンとしては、例えば、ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン(SHC7260)」を用いる。
低密度ポリエチレンは、例えば、密度が0.94以下のポリエチレンである。
第3実施形態では、一例として、着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンが、植物由来の低密度ポリエチレンである場合について説明する。
植物由来の低密度ポリエチレンとしては、例えば、ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン(SPB681)」を用いる。
また、着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンは、着色基材層2の100質量%のうち、5質量%以上30質量%以下の範囲内で、着色基材層2に含有されている。
第3実施形態では、一例として、着色基材層2における高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合比が、95:5~70:30の範囲内である場合について説明する。
なお、上述した第3実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第3実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第3実施形態の効果)
第3実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2が、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、を混合した樹脂組成物を用いて形成されている。
その結果、曲げ加工適正の低下と、切削性の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
(2)着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンが、植物由来の低密度ポリエチレンである。
その結果、環境へ及ぼす負荷を低減させることが可能となる。
(3)着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンが、着色基材層2の100質量%のうち、5質量%以上30質量%以下の範囲内で、着色基材層2に含有されている。
その結果、化粧シート1の製膜安定性と強度が低下することを抑制することが可能となる。
すなわち、低密度ポリエチレンの含有量が少ないと化粧シート1の製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと化粧シート1が柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。しかしながら、着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンが、着色基材層2の100質量%のうち、5質量%以上30質量%以下の範囲内で、着色基材層2に含有されていることで、問題を解決することが可能となる。
(4)着色基材層2における高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合比が、95:5~70:30の範囲内である。
その結果、化粧シート1の製膜安定性と強度が低下することを抑制することが可能となる。
すなわち、低密度ポリエチレンの含有量が少ないと化粧シート1の製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと化粧シート1が柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。しかしながら、着色基材層2における高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合比が、95:5~70:30の範囲内であることで、問題を解決することが可能となる。
(第4実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。
なお、第2実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8を備える。
なお、第4実施形態における化粧シート1の構成は、透明樹脂層5の構成を除き、上述した第2実施形態と同様であるため、透明樹脂層5以外の構成については、説明を省略する。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5の構成は、植物由来の高密度ポリエチレンと、植物由来の低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物を用いて形成されている点を除き、上述した第1実施形態と同様の構成である。
第4実施形態では、一例として、透明樹脂層5における高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合比が、80:20~60:40の範囲内である場合について説明する。
なお、上述した第4実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第2実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第4実施形態の効果)
第4実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)透明樹脂層5が、植物由来の高密度ポリエチレンと、植物由来の低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物を用いて形成されている。
その結果、透明樹脂層5の柔軟性及び透明性を向上させることが可能となる。
(2)透明樹脂層5における高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合比が、80:20~60:40の範囲内である。
その結果、透明樹脂層5の柔軟性及び透明性を向上させることが可能となる。
第2実施例
第2実施形態から第4実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から22の化粧材と、比較例1から5の化粧材について説明する。
(実施例1)
着色基材層は、着色ポリエチレン樹脂を用いて、厚さを55[μm]として形成した。
絵柄層は、着色基材層の一方の面にコロナ放電処理を施した後に、ウレタン系印刷インキを用いて形成した。
接着層は、ウレタン系接着剤を用いて形成した。
透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)である、ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」を用い、「グリーンポリエチレン」に対し、「グリーンポリエチレン」の質量を基準として、1500[ppm]となるように、核剤である理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」を添加して形成した。また、透明樹脂層の厚さは、70[μm]とした。
表面保護層は、アクリル系樹脂組成物を主成分として形成した。
プライマー層は、ポリエステルウレタン樹脂を用いて、着色基材層の一方の面にコロナ放電処理を施した後に、厚さを1[μm]以上2[μm]以下の範囲内として形成した。
さらに、ラミネートすることで、厚さが135[μm]である実施例1の化粧シートを形成した。
実施例1の化粧シートを形成した後、プライマー層の基材と対向する面に、ジャパンコーティングレジン製の「BA-10L(硬化剤:BA-11B)」を用いて基材に貼り合わせることで、実施例1の化粧材を形成した。
(実施例2)
核剤である理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」を、高密度ポリエチレンの質量を基準として500[ppm]となるように添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例3)
核剤である理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」を、高密度ポリエチレンの質量を基準として2000[ppm]となるように添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例4)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、95:5の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例4の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例5)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、95:5の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例2と同様に形成して、実施例5の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例6)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、95:5の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例3と同様に形成して、実施例6の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例7)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例7の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例8)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例2と同様に形成して、実施例8の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例9)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例3と同様に形成して、実施例9の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例10)
透明樹脂層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを80:20の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例4と同様に形成して、実施例10の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例11)
透明樹脂層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを80:20の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例5と同様に形成して、実施例11の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例12)
透明樹脂層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを80:20の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例6と同様に形成して、実施例12の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例13)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例10と同様に形成して、実施例13の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例14)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例11と同様に形成して、実施例14の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例15)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例12と同様に形成して、実施例15の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例16)
透明樹脂層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを60:40の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例10と同様に形成して、実施例16の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例17)
透明樹脂層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを60:40の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例11と同様に形成して、実施例17の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例18)
透明樹脂層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを60:40の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例12と同様に形成して、実施例18の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例19)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例16と同様に形成して、実施例19の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例20)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例17と同様に形成して、実施例20の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例21)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、70:30の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例18と同様に形成して、実施例21の化粧シート及び化粧材を形成した。
(実施例22)
接着層を、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例22の化粧シート及び化粧材を形成した。
(比較例1)
高密度ポリエチレンに核剤を添加しなかった点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の化粧シート及び化粧材を形成した。
(比較例2)
透明樹脂層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを50:50の比率で混合したポリエチレンを用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の化粧シート及び化粧材を形成した。
(比較例3)
高密度ポリエチレンに核剤を添加しなかった点を除き、比較例2と同様に形成して、比較例3の化粧シート及び化粧材を形成した。
(比較例4)
透明樹脂層を、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)で形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例4の化粧シート及び化粧材を形成した。
(比較例5)
着色基材層を、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)とを、60:40の比率で混合した樹脂組成物を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例5の化粧シート及び化粧材を形成した。
(性能評価、評価結果)
実施例1から22の化粧材と、比較例1から5の化粧材に対し、それぞれ、表面硬度、生産性、透過度、ヘイズ、曲げ加工適正、切削性を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<表面硬度>
化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、表面硬度を評価した。そして、硬度が2B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「◎」と評価し、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が5B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
<生産性>
化粧シートの製造において問題が有るか否かにより、生産性を評価した。そして、化粧シートの製造において全く問題が無い場合を「◎」と評価し、化粧シートの製造において生産上の問題が無い場合を「○」と評価し、化粧シートの製造において問題が有る場合を「×」と評価した。
<透過度>
透明樹脂層の厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内に設定した状態において、波長が555[nm]の全光線透過率を分光光度計(積分球)により測定して、透過度を評価した。そして、全光線透過率が85%である場合を「◎」と評価し、全光線透過率が80%以上85%以下の範囲内である場合を「○」と評価し、全光線透過率が80%未満である場合を「×」と評価した。
<ヘイズ>
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製:「UV-3600」)を用いて、透明樹脂層のヘイズ%を測定した。
透明樹脂層のヘイズ%を測定する際には、まず、実施例1から22の化粧シートが備える透明樹脂層と、比較例1から5の化粧シートが備える透明樹脂層と、同じ組成である樹脂を、厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内に設定して押し出すことで、樹脂フィルムを形成した。次に、波長が555[nm]のヘイズを、分光光度計(積分球)により測定して、ヘイズを評価した。そして、ヘイズが15%未満である場合を「◎」と評価し、ヘイズが15%以上25%未満の範囲内である場合を「○」と評価し、ヘイズが25%以上である場合を「×」と評価した。
<曲げ加工適正>
MDF(Medium Density Fiberboard)に貼り合わせた化粧シート(すなわち、化粧材)を用いて、Vカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認して、曲げ加工適正を評価した。そして、白化が生じなかったものを「〇」(合格)と評価し、少し白化が生じてしまったものを「△」(合格)と評価し、白化が生じしてしまったものを「×」(不合格)と評価した。
<切削性>
MDFに貼り合わせた化粧シート(すなわち、化粧材)に対して、丸鋸による切断加工と、ハンドルータによるMDFに達する切削加工を行い、化粧シートに発生したバリの状態を確認して、切削性を評価した。そして、バリが発生しない場合を「○」と評価し、バリがほぼ全面に発生し、修正も困難である場合を「×」と評価した。
Figure 2024024696000003
Figure 2024024696000004
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から22の化粧材は、全ての評価試験に対して、優れた性能を示した。一方、比較例1から5の化粧材は、全ての評価試験に対しては、優れた性能を示すことが不可能であった。
(第5実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
なお、第5実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
第5実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。第5実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
第5実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
第5実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
第5実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
第5実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、第5実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
第5実施形態によれば、樹脂組成物は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンと、好ましくは10~95質量%、より好ましくは25~75質量%の化石燃料由来のポリエチレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
着色基材層2は、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.98[g/cm]以上1.10[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。着色基材層2の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。着色基材層2の密度が0.92[g/cm]以上であれば、着色基材層2の剛性を高めることができる。また、着色基材層2の密度が1.12[g/cm]以下であれば、着色基材層2の透明性や機械的強度を高めることができる。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンにバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むものいずれであってもよい。
着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであってもよい)が95:5~70:30の範囲内でブレンドされたものがよい。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第5実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、51[μm]以上120[μm]以下であることがより好ましく、55[μm]以上100[μm]以下であることがさらに好ましい。これは、バイオマス由来のポリエチレンからなる着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが200[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
なお、第5実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第5実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
絵柄層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、上述したバイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層である。より詳しくは、透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。つまり、透明樹脂層5において、着色基材層2で用いたバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いてもよい。また、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合した化石燃料由来のポリエチレンを含んでいてもよい。
透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものであってもよい。透明樹脂層5中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
透明樹脂層5の密度は、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm]以上0.98[g/cm]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm]以上0.97[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。透明樹脂層5の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。透明樹脂層5の密度が0.92[g/cm]以上であれば、透明樹脂層5の剛性を高めることができる。また、透明樹脂層5の密度が0.99[g/cm]以下であれば、透明樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることができる。
透明樹脂層5は、55~150[μm]、好ましくは55~100[μm]、より好ましくは60~80[μm]の厚さを有するものである。
透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第5実施形態においては、押出成形で形成することが好ましく、押出成形が、Tダイ法又はインフレーション法により行われることがより好ましい。
第5実施形態においては、透明樹脂層5と着色基材層2が、密度、厚さ、およびバイオマス度(バイオマス由来のエチレン濃度)について、以下の特定の関係を満たすものであることが好ましい。
第5実施形態においては、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2が、d2>d1を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには賦形性が要求され、着色基材層2として機能するためには生産性が要求されるからである。
なお、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2との比(d2/d1)が、1.1以上1.5以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上1.3以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.2以下の範囲内であればさらに好ましい。透明樹脂層と着色基材層の密度の比がこの範囲であることによって、バイオマス由来のポリエチレンを用いた場合であっても化粧シートとして必要な押出適正、曲げ加工適正を有することができる。
第5実施形態においては、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2が、t1≧t2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが要求され、着色基材層2として機能するためには、透明樹脂層5ほどの厚みは必要ないからである。
なお、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2との比(t1/t2)が、1.1以上3以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上2以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.5以下の範囲内であればさらに好ましい。
第5実施形態においては、透明樹脂層5におけるバイオマス由来のエチレン濃度C1と着色基材層2におけるバイオマス由来のエチレン濃度C2が、C1>C2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが大きくエチレン使用量が多いことから、透明樹脂層5のバイオマス度を上げることで化石燃料の使用量をより削減できるからである。
透明樹脂層5を形成するバイオマス由来のポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されていてもよい。
核剤は、ポリエチレンの質量を基準として、500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていれば好ましく、1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていればさらに好ましい。
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
なお、第5実施形態では、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第5実施形態においては、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層6は、熱硬化樹脂、電離放射線硬化樹脂が使用でき、例えば、アクリル系樹脂組成物を用いて形成されている。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合してもよい。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第5実施形態の効果)
第5実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれ、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり透明樹脂層5は、バイオマス由来のエチレンを含み、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内の密度を有し、55[μm]以上150[μm]以下の範囲内の厚さを有し、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを含み、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内の密度を有し、51[μm]以上120[μm]以下の範囲内の厚さを有している。
このため、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いた構成であっても、例えば、ポリプロピレン等を用いて形成した構成と同等である高い硬度を有する着色基材層2及び透明樹脂層5を形成することが可能となる。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
また、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いた構成であっても、例えば、ポリプロピレン等を用いて形成した構成と同等である高い透明度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
(2)透明樹脂層5及び着色基材層2の少なくとも一方の層は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含んでいる。
その結果、さらに柔軟性を有する透明樹脂層5及び着色基材層2を形成することが可能となる。
(3)透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでいる。 その結果、さらに高い硬度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
(4)着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含み、且つ、バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内である。
その結果、製膜安定性が良く、化粧シートとして十分な柔らかさを有する着色基材層2を形成することが可能となる。
(5)透明樹脂層5の密度をd1とし、着色基材層2の密度をd2とした場合、d2>d1を満たす。
その結果、十分な押出適正を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
(6)透明樹脂層5の厚さをt1とし、着色基材層2の厚さをt2とした場合、t1≧t2を満たす。
その結果、十分な曲げ加工適正を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
また、第5実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(7)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧材10を提供することが可能となる。
第3実施例
第5実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から11の化粧材と、比較例1から5の化粧材について説明する。
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された絵柄層と、ウレタン系接着剤層と、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層(透明接着層)と、透明樹脂層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、ポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2[μm])を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:135[μm])を得た。
実施例1では、基材として、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成された着色基材層(厚さ:55[μm])を用いた。この樹脂組成物をカレンダー成形することで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は80%であり、着色基材層の密度は1.08[g/cm]である。
透明樹脂層には、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層(厚さ:80[μm])を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が80/20となるようにブレンドした樹脂である。この樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た。こうして形成された透明樹脂層のバイオマス度は94%であり、透明樹脂層の密度は0.95[g/cm]である。
(実施例2)
ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」を用いて、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が100/0となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。なお、こうして形成された透明樹脂層のバイオマス度は94%であり、密度は、0.96[g/cm]であった。
(実施例3)
ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」を用いて、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が60/40となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。なお、こうして形成された透明樹脂層の密度は、0.94[g/cm]であった。
(実施例4)
ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」を用いて、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が50/50となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。なお、こうして形成された透明樹脂層の密度は、0.93[g/cm]であった。
(実施例5)
ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」を用いて、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が30/70となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。なお、こうして形成された透明樹脂層の密度は、0.92[g/cm]であった。
(実施例6)
透明樹脂層の厚さを55[μm]、着色基材層の厚さを55[μm]とした以外は実施例1と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
(実施例7)
透明樹脂層の厚さを150[μm]とした以外は実施例1と同様にして、実施例7の化粧シートを得た。
(実施例8)
着色基材層の密度を0.92[g/cm]とした以外は実施例1と同様にして、実施例8の化粧シートを得た。
(実施例9)
着色基材層の密度を1.12[g/cm]とした以外は実施例1と同様にして、実施例9の化粧シートを得た。
(実施例10)
着色基材層の厚さを51[μm]とした以外は実施例1と同様にして、実施例10の化粧シートを得た。
(実施例11)
着色基材層の厚さを120[μm]とした以外は実施例1と同様にして、実施例11の化粧シートを得た。
(比較例1)
ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」を用いて、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が0/100となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、比較例1の化粧シートを得た。なお、こうして形成された透明樹脂層の密度は、0.91[g/cm]であった。
(比較例2)
透明樹脂層の厚さを30[μm]とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の化粧シートを得た。
(比較例3)
透明樹脂層の厚さを200[μm]とした以外は実施例1と同様にして、比較例3の化粧シートを得た。
(比較例4)
着色基材層の厚さを40[μm]とした以外は実施例1と同様にして、比較例4の化粧シートを得た。
(比較例5)
着色基材層の厚さを150[μm]とした以外は実施例1と同様にして、比較例5の化粧シートを得た。
(性能評価、評価結果)
実施例1から11の化粧シートと、比較例1から5の化粧シートに対し、それぞれ、「透明樹脂層のヘイズ(%)」、「鉛筆硬度」、「ホフマンスクラッチ試験」、「押出適正」、「折り曲げ白化」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<透明樹脂層のヘイズ(%)>
透明樹脂層のヘイズ(%)は、紫外可視近赤外分光光度計(メーカー:島津製作所 型番:UV-3600)を用いて測定した。
各実施例・比較例の透明樹脂層と同じ組成の樹脂を、厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内で押し出し、樹脂フィルムを得た。波長が555[nm]のヘイズを分光光度計(積分球)により測定して、ヘイズを評価した。そして、ヘイズが15%未満である場合を「◎」と評価し、ヘイズが15%以上25%未満の範囲内である場合を「○」と評価し、ヘイズが25%以上である場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験機(自動)(メーカー:吉満精機 型番:C221A)で測定した。
各実施例・比較例の化粧シートを含む化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、表面硬度を評価した。そして、硬度が2B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「◎」と評価し、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が5B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<ホフマンスクラッチ試験>
ホフマンスクラッチ試験は、化粧シート表面に対して45度の角度で接するようにスクラッチ刃(Φ7の円柱形の刃)をセットし、試験機を化粧シート上で移動させて行った。
200~2000g荷重の範囲内で徐々に(200g刻みで)荷重(錘)を高めて引っかき、サンプル表面に傷がついた荷重(g)で評価した。なお、荷重800gで傷が付いた場合には、「600g」を耐荷重として表に記載した。
なお、本実施例では、耐荷重が「200g」の場合を不合格とした。
<押出適正>
透明樹脂層を押出成形し、その生産適正(押出適正)を確認した。
その結果、問題なく製造(成形)できるようであれば、「〇」(合格)とした。一方、不良が出る可能性があるものを「△」(不合格)とした。
<折り曲げ白化>
MDFに貼り合わせた化粧シート(即ち化粧材)を用いてVカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認した。
その結果、白化が生じなかったものを「〇」(合格)とし、少し白化が生じてしまったものを「△」(合格)とし、白化が生じしてしまったものを「×」(不合格)とした。
Figure 2024024696000005
Figure 2024024696000006
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から11の化粧シートは、全ての評価試験に対して、優れた性能を示した。一方、比較例1から5の化粧シートは、少なくとも一部の評価試験において不十分な性能を示した。
(第6実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
なお、第6実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
第6実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。第6実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
第6実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
第6実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
第6実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
第6実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、第6実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
第6実施形態によれば、樹脂組成物は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンと、好ましくは10~95質量%、より好ましくは25~75質量%の化石燃料由来のポリエチレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
着色基材層2は、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.98[g/cm]以上1.10[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。着色基材層2の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。着色基材層2の密度が0.92[g/cm]以上であれば、着色基材層2の剛性を高めることができる。また、着色基材層2の密度が1.12[g/cm]以下であれば、着色基材層2の透明性や機械的強度を高めることができる。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンにバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むものいずれであってもよい。着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであってもよい)が95:5~70:30の範囲内でブレンドされたものがよい。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第6実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、51[μm]以上120[μm]以下であることがより好ましく、55[μm]以上100[μm]以下であることがさらに好ましい。これは、バイオマス由来のポリエチレンからなる着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが200[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
なお、第6実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第6実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
絵柄層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、上述したバイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層である。より詳しくは、透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。つまり、透明樹脂層5において、着色基材層2で用いたバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いてもよい。また、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合した化石燃料由来のポリエチレンを含んでいてもよい。
透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものであってもよい。透明樹脂層5中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
透明樹脂層5の密度は、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm]以上0.98[g/cm]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm]以上0.97[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。透明樹脂層5の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。透明樹脂層5の密度が0.92[g/cm]以上であれば、透明樹脂層5の剛性を高めることができる。また、透明樹脂層5の密度が0.99[g/cm]以下であれば、透明樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることができる。
透明樹脂層5は、55~150[μm]、好ましくは55~100[μm]、より好ましくは60~80[μm]の厚さを有するものである。
透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第6実施形態においては、押出成形で形成することが好ましく、押出成形が、Tダイ法又はインフレーション法により行われることがより好ましい。
第6実施形態においては、透明樹脂層5と着色基材層2が、密度、厚さ、およびバイオマス度(バイオマス由来のエチレン濃度)について、以下の特定の関係を満たすものであることが好ましい。
第6実施形態においては、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2が、d2>d1を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには賦形性が要求され、着色基材層2として機能するためには生産性が要求されるからである。
なお、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2との比(d2/d1)が、1.1以上1.5以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上1.3以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.2以下の範囲内であればさらに好ましい。透明樹脂層と着色基材層の密度の比がこの範囲であることによって、バイオマス由来のポリエチレンを用いた場合であっても化粧シートとして必要な押出適正、曲げ加工適正を有することができる。
第6実施形態においては、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2が、t1≧t2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが要求され、着色基材層2として機能するためには、透明樹脂層5ほどの厚みは必要ないからである。
なお、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2との比(t1/t2)が、1.1以上3以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上2以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.5以下の範囲内であればさらに好ましい。
第6実施形態においては、透明樹脂層5におけるバイオマス由来のエチレン濃度C1と着色基材層2におけるバイオマス由来のエチレン濃度C2が、C1>C2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが大きくエチレン使用量が多いことから、透明樹脂層5のバイオマス度を上げることで化石燃料の使用量をより削減できるからである。
透明樹脂層5を形成するバイオマス由来のポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されていてもよい。
核剤は、ポリエチレンの質量を基準として、500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていれば好ましく、1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていればさらに好ましい。
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
なお、第6実施形態では、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第6実施形態においては、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層6は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。また表面保護層6において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物又はヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。つまり、表面保護層6は、バイオマス由来成分を含んでいる。ポリオール、イソシアネート化合物又はヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかは、バイオマス由来成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい。以下の説明において、バイオマス由来成分を含むウレタン(メタ)アクリレートのことを、バイオウレタン(メタ)アクリレートとも称する。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール及びイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られるものである。バイオウレタン(メタ)アクリレートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオールを使用するか、イソシアネートとして植物由来のイソシアネートを使用するか、或いはポリオール及びイソシアネートの何れも植物由来のものを使用することができる。
ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は、多官能アルコールとカーボネートとの反応物であるポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、各ポリオールについて説明する。
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))が挙げられる。
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いることができる。又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物を用いることができる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコールを用いることができる。
<イソシアネート化合物>
次に、イソシアネート化合物について説明する。バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能イソシアネートを用いることができる。
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートにニトロセルロースを添加して形成されてもよい。
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースが支障なく利用できるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3~2.7個のニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
表面保護層6は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。表面保護層6の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下、より好ましくは3[g/m]以上10[g/m]以下、さらに好ましくは6[g/m]以上9[g/m]以下である。表面保護層6は、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下、より好ましくは3[μm]以上10[μm]以下、さらに好ましくは6[μm]以上9[μm]以下の厚さを有する。
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
また「バイオマス度」について、例えばニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、この水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、もとのセルロース骨格がバイオマス材料100重量%からなるとして、グルコース単位1個あたりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量%)は、(172-n)×100/(172-n+46n)で計算できる。
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は、約78.8重量%、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量%、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量%になる(上記の式での計算値)。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合してもよい。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第6実施形態の効果)
第6実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれ、バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、表面保護層6は、バイオマス由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(2)表面保護層6は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートで形成された樹脂層であり、前記樹脂組成物に含まれるポリオール、イソシアネート化合物、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(3)表面保護層6を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールは、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオール、バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオール、又はバイオマス由来成分を含むポリカーボネートポリオールである。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をより確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をより確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(4)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリエステルポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(5)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリエーテルポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(6)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリカーボネートポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含むカーボネートとの反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(7)表面保護層6を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるイソシアネート化合物は、バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(8)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧材を提供することが可能となる。
第4実施例
第6実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から9の化粧材と、参考例1から3の化粧材について説明する。
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された絵柄層と、ウレタン系接着剤層と、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層(透明接着層)と、透明樹脂層と、表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、ポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2[μm])を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:135[μm])を得た。
実施例1では、基材として、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成された着色基材層(厚さ:55[μm])を用いた。この樹脂組成物をカレンダー成形することで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は80%であり、着色基材層の密度は1.08[g/cm]である。
透明樹脂層には、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層(厚さ:80[μm])を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が80/20となるようにブレンドした樹脂である。この樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た。こうして形成された透明樹脂層のバイオマス度は94%であり、透明樹脂層の密度は0.95[g/cm]である。
表面保護層には、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールと化石燃料由来のイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いた。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールを用いた。
(実施例2)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエステルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを得た。
(実施例3)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートとして、化石燃料由来のポリエステルポリオールとバイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
(実施例4)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとしてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。具体的には、ポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
(実施例5)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエーテルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
(実施例6)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
(実施例7)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、ポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の化粧シートを得た。具体的には、ポリカーボネートポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いた。
(実施例8)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例8の化粧シートを得た。
(実施例9)
透明樹脂層に使用したバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が100/0となるようにブレンドした樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例9の化粧シートを得た。
(参考例1)
表面保護層をアクリル樹脂系紫外線硬化型樹脂から形成した以外は実施例1と同様にして、参考例1の化粧シートを得た。
(参考例2)
プライムポリマー社製の化石燃料由来のホモポリプロピレン樹脂のみをルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、参考例2の化粧シートを得た。
(参考例3)
化石燃料由来の着色ポリエチレン樹脂のみを用いて着色基材層を得た以外は実施例1と同様にして、参考例3の化粧シートを得た。
(性能評価、評価結果)
実施例1から9の化粧シートと、参考例1から3の化粧シートに対し、それぞれ、「透明樹脂層のヘイズ(%)」、「鉛筆硬度」、「ホフマンスクラッチ試験」、「押出適正」、「折り曲げ白化」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<透明樹脂層のヘイズ(%)>
透明樹脂層のヘイズ(%)は、紫外可視近赤外分光光度計(メーカー:島津製作所 型番:UV-3600)を用いて測定した。
各実施例・参考例の透明樹脂層と同じ組成の樹脂を、厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内で押し出し、樹脂フィルムを得た。波長が555nmのヘイズを分光光度計(積分球)により測定して、ヘイズを評価した。そして、ヘイズが15%未満である場合を「◎」と評価し、ヘイズが15%以上25%未満の範囲内である場合を「○」と評価し、ヘイズが25%以上である場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験機(自動)(メーカー:吉満精機 型番:C221A)で測定した。
各実施例・参考例の化粧シートを含む化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、表面硬度を評価した。そして、硬度が2B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「◎」と評価し、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が5B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<ホフマンスクラッチ試験>
ホフマンスクラッチ試験は、化粧シート表面に対して45度の角度で接するようにスクラッチ刃(Φ7の円柱形の刃)をセットし、試験機を化粧シート上で移動させて行った。
200~2000g荷重の範囲内で徐々に(200g刻みで)荷重(錘)を高めて引っかき、サンプル表面に傷がついた荷重(g)で評価した。なお、荷重800gで傷が付いた場合には、「600g」を耐荷重として表に記載した。
なお、本実施例では耐荷重が「200g」の場合を不合格とした。
<押出適正>
透明樹脂層を押出成形し、その生産適正(押出適正)を確認した。
その結果、問題なく製造(成形)できるようであれば、「〇」(合格)とした。一方、不良が出る可能性があるものを「△」(不合格)とした。
<折り曲げ白化>
MDFに貼り合わせた化粧シート(即ち化粧材)を用いてVカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認した。
その結果、白化が生じなかったものを「〇」(合格)とし、少し白化が生じてしまったものを「△」(合格)とし、白化が生じしてしまったものを「×」(不合格)とした。
Figure 2024024696000007
Figure 2024024696000008
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から9の化粧シートは、全ての評価試験に対して、参考例1-3と同等以上の優れた性能を示した。つまり、実施例1から9の化粧シートは、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することが可能であることが分かった。
(第7実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
なお、第7実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
第7実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。第7実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
第7実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
第7実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
第7実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
第7実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、第7実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
第7実施形態によれば、樹脂組成物は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンと、好ましくは10~95質量%、より好ましくは25~75質量%の化石燃料由来のポリエチレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
着色基材層2は、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.98[g/cm]以上1.10[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。着色基材層2の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。着色基材層2の密度が0.92[g/cm]以上であれば、着色基材層2の剛性を高めることができる。また、着色基材層2の密度が1.12[g/cm]以下であれば、着色基材層2の透明性や機械的強度を高めることができる。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンにバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むものいずれであってもよい。着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであってもよい)が95:5~70:30の範囲内でブレンドされたものがよい。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第7実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、51[μm]以上120[μm]以下であることがより好ましく、55[μm]以上100[μm]以下であることがさらに好ましい。これは、バイオマス由来のポリエチレンからなる着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが200[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
なお、第7実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第7実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
絵柄層3は、上述の着色剤とバインダ樹脂とを含んで形成される。以下、第7実施形態において絵柄層3に用いられるバインダ樹脂について、説明する
〔バインダ樹脂〕
絵柄層3が含有するバインダ樹脂は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含む。また、絵柄層3において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物又はヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。ポリオール、イソシアネート化合物又はヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかは、バイオマス由来成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい。以下の説明において、バイオマス由来成分を含むウレタン(メタ)アクリレートのことを、バイオウレタン(メタ)アクリレートとも称する。
つまり、絵柄層3は、上述の着色剤と、バイオウレタン(メタ)アクリレートと、を含有する樹脂層である。すなわち絵柄層3は、着色剤とバイオマス由来成分とを含んでいる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール及びイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られるものである。バイオウレタン(メタ)アクリレートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオールを使用するか、イソシアネートとして植物由来のイソシアネートを使用するか、或いはポリオール及びイソシアネートの何れも植物由来のものを使用することができる。
ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は、多官能アルコールとカーボネートとの反応物であるポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、各ポリオールについて説明する。
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))が挙げられる。
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いることができる。又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物を用いることができる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコールを用いることができる。
<イソシアネート化合物>
次に、イソシアネート化合物について説明する。バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能イソシアネートを用いることができる。
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、絵柄層3のバインダ樹脂は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、絵柄層3は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートに加えてニトロセルロースを含んでいてもよい。
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースが支障なく利用できるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3~2.7個のニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
絵柄層3は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。絵柄層3の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下、より好ましくは3[g/m]以上10[g/m]以下、さらに好ましくは6[g/m]以上9[g/m]以下である。絵柄層3は、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下、より好ましくは0.5[μm]以上5[μm]以下、さらに好ましくは0.7[μm]以上3[μm]以下の厚さを有する。なお、このような重量や厚さを有する絵柄層3が複数設けられていてもよい。
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
また「バイオマス度」について、例えばニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、この水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、もとのセルロース骨格がバイオマス材料100重量%からなるとして、グルコース単位1個あたりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量%)は、(172-n)×100/(172-n+46n)で計算できる。
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は、約78.8重量%、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量%、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量%になる(上記の式での計算値)。
また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
絵柄層3の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、上述したバイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層である。より詳しくは、透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。つまり、透明樹脂層5において、着色基材層2で用いたバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いてもよい。また、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合した化石燃料由来のポリエチレンを含んでいてもよい。
透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものであってもよい。透明樹脂層5中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
透明樹脂層5の密度は、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm]以上0.98[g/cm]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm]以上0.97[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。透明樹脂層5の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。透明樹脂層5の密度が0.92[g/cm]以上であれば、透明樹脂層5の剛性を高めることができる。また、透明樹脂層5の密度が0.99[g/cm]以下であれば、透明樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることができる。
透明樹脂層5は、55~150[μm]、好ましくは55~100[μm]、より好ましくは60~80[μm]の厚さを有するものである。
透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第7実施形態においては、押出成形で形成することが好ましく、押出成形が、Tダイ法又はインフレーション法により行われることがより好ましい。
第7実施形態においては、透明樹脂層5と着色基材層2が、密度、厚さ、およびバイオマス度(バイオマス由来のエチレン濃度)について、以下の特定の関係を満たすものであることが好ましい。
第7実施形態においては、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2が、d2>d1を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには賦形性が要求され、着色基材層2として機能するためには生産性が要求されるからである。
なお、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2との比(d2/d1)が、1.1以上1.5以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上1.3以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.2以下の範囲内であればさらに好ましい。透明樹脂層と着色基材層の密度の比がこの範囲であることによって、バイオマス由来のポリエチレンを用いた場合であっても化粧シートとして必要な押出適正、曲げ加工適正を有することができる。
第7実施形態においては、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2が、t1≧t2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが要求され、着色基材層2として機能するためには、透明樹脂層5ほどの厚みは必要ないからである。
なお、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2との比(t1/t2)が、1.1以上3以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上2以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.5以下の範囲内であればさらに好ましい。
第7実施形態においては、透明樹脂層5におけるバイオマス由来のエチレン濃度C1と着色基材層2におけるバイオマス由来のエチレン濃度C2が、C1>C2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが大きくエチレン使用量が多いことから、透明樹脂層5のバイオマス度を上げることで化石燃料の使用量をより削減できるからである。
透明樹脂層5を形成するバイオマス由来のポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されていてもよい。
核剤は、ポリエチレンの質量を基準として、500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていれば好ましく、1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていればさらに好ましい。
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
なお、第7実施形態では、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第7実施形態においては、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層6は、熱硬化樹脂、電離放射線硬化樹脂が使用でき、例えば、アクリル系樹脂組成物を用いて形成されている。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合してもよい。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第7実施形態の効果)
第7実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれ、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり透明樹脂層5は、バイオマス由来のオレフィンを5質量%以上含み、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内の密度を有し、着色基材層2は、バイオマス由来のオレフィンを5質量%以上含み、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内の密度を有し、絵柄層3は、着色剤とバイオマス由来成分とを含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(2)絵柄層3は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含有する樹脂層であり、前記樹脂組成物に含まれるポリオール、イソシアネート化合物、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(3)絵柄層3が含有するバイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールは、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオール、バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオール、又はバイオマス由来成分を含むポリカーボネートポリオールである。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をより確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をより確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(4)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリエステルポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(5)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリエーテルポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(6)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリカーボネートポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含むカーボネートとの反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(7)絵柄層3が含有するバイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるイソシアネート化合物は、バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(8)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧材を提供することが可能となる。
第5実施例
第7実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から9の化粧材と、参考例1から3の化粧材について説明する。
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、絵柄層と、ウレタン系接着剤層と、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層(透明接着層)と、透明樹脂層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、ポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2[μm])を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:135[μm])を得た。
実施例1では、基材として、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成された着色基材層(厚さ:55[μm])を用いた。この樹脂組成物をカレンダー成形することで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は80%であり、着色基材層の密度は1.08[g/cm]である。
透明樹脂層には、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層(厚さ:80[μm])を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が80/20となるようにブレンドした樹脂である。この樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た。こうして形成された透明樹脂層のバイオマス度は94%であり、透明樹脂層の密度は0.95[g/cm]である。
絵柄層のバインダ樹脂には、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールと化石燃料由来のイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いた。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールを用いた。
(実施例2)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエステルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを得た。
(実施例3)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートとして、化石燃料由来のポリエステルポリオールとバイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
(実施例4)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとしてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。具体的には、ポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
(実施例5)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエーテルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
(実施例6)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
(実施例7)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、ポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の化粧シートを得た。具体的には、ポリカーボネートポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いた。
(実施例8)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例8の化粧シートを得た。
(実施例9)
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が100/0となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例9の化粧シートを得た。
(参考例1)
絵柄層をウレタン系印刷インキから形成した以外は実施例1と同様にして、参考例1の化粧シートを得た。
(参考例2)
プライムポリマー社製の化石燃料由来のホモポリプロピレン樹脂のみをルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、参考例2の化粧シートを得た。
(参考例3)
化石燃料由来の着色ポリエチレン樹脂のみを用いて着色基材層を得た以外は実施例1と同様にして、参考例3の化粧シートを得た。
(性能評価、評価結果)
実施例1から9の化粧シートと、参考例1から3の化粧シートに対し、それぞれ、「透明樹脂層のヘイズ(%)」、「鉛筆硬度」、「ホフマンスクラッチ試験」、「押出適正」、「折り曲げ白化」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<透明樹脂層のヘイズ(%)>
透明樹脂層のヘイズ(%)は、紫外可視近赤外分光光度計(メーカー:島津製作所 型番:UV-3600)を用いて測定した。
各実施例・参考例の透明樹脂層と同じ組成の樹脂を、厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内で押し出し、樹脂フィルムを得た。波長が555nmのヘイズを分光光度計(積分球)により測定して、ヘイズを評価した。そして、ヘイズが15%未満である場合を「◎」と評価し、ヘイズが15%以上25%未満の範囲内である場合を「○」と評価し、ヘイズが25%以上である場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験機(自動)(メーカー:吉満精機 型番:C221A)で測定した。
各実施例・参考例の化粧シートを含む化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、表面硬度を評価した。そして、硬度が2B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「◎」と評価し、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が5B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<ホフマンスクラッチ試験>
ホフマンスクラッチ試験は、化粧シート表面に対して45度の角度で接するようにスクラッチ刃(Φ7の円柱形の刃)をセットし、試験機を化粧シート上で移動させて行った。
200~2000g荷重の範囲内で徐々に(200g刻みで)荷重(錘)を高めて引っかき、サンプル表面に傷がついた荷重(g)で評価した。なお、荷重800gで傷が付いた場合には、「600g」を耐荷重として表に記載した。
なお、本実施例では耐荷重が「200g」の場合を不合格とした。
<押出適正>
透明樹脂層を押出成形し、その生産適正(押出適正)を確認した。
その結果、問題なく製造(成形)できるようであれば、「〇」(合格)とした。一方、不良が出る可能性があるものを「△」(不合格)とした。
<折り曲げ白化>
MDFに貼り合わせた化粧シート(即ち化粧材)を用いてVカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認した。
その結果、白化が生じなかったものを「〇」(合格)とし、少し白化が生じてしまったものを「△」(合格)とし、白化が生じしてしまったものを「×」(不合格)とした。
Figure 2024024696000009
Figure 2024024696000010
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から9の化粧シートは、全ての評価試験に対して、参考例1-3と同等以上の優れた性能を示した。つまり、実施例1から9の化粧シートは、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することが可能であることが分かった。
(第8実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
なお、第8実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
第8実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。第8実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
第8実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
第8実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
第8実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
第8実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、第8実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
第8実施形態によれば、樹脂組成物は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンと、好ましくは10~95質量%、より好ましくは25~75質量%の化石燃料由来のポリエチレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
着色基材層2は、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.98[g/cm]以上1.10[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。着色基材層2の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。着色基材層2の密度が0.92[g/cm]以上であれば、着色基材層2の剛性を高めることができる。また、着色基材層2の密度が1.12[g/cm]以下であれば、着色基材層2の透明性や機械的強度を高めることができる。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンにバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むものいずれであってもよい。着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであってもよい)が95:5~70:30の範囲内でブレンドされたものがよい。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第8実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、51[μm]以上120[μm]以下であることがより好ましく、55[μm]以上100[μm]以下であることがさらに好ましい。これは、バイオマス由来のポリエチレンからなる着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが200[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
なお、第8実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第8実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
絵柄層3は、上述の着色剤とバインダ樹脂とを含んで形成される。以下、第8実施形態において絵柄層3に用いられるバインダ樹脂について、説明する
〔バインダ樹脂〕
絵柄層3が含有するバインダ樹脂は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含む。また、絵柄層3において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物又はヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。ポリオール、イソシアネート化合物又はヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかは、バイオマス由来成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい。以下の説明において、バイオマス由来成分を含むウレタン(メタ)アクリレートのことを、バイオウレタン(メタ)アクリレートとも称する。
つまり、絵柄層3は、上述の着色剤と、バイオウレタン(メタ)アクリレートと、を含有する樹脂層である。すなわち絵柄層3は、着色剤とバイオマス由来成分とを含んでいる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール及びイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られるものである。バイオウレタン(メタ)アクリレートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオールを使用するか、イソシアネートとして植物由来のイソシアネートを使用するか、或いはポリオール及びイソシアネートの何れも植物由来のものを使用することができる。
ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は、多官能アルコールとカーボネートとの反応物であるポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、各ポリオールについて説明する。
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))が挙げられる。
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いることができる。又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物を用いることができる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコールを用いることができる。
<イソシアネート化合物>
次に、イソシアネート化合物について説明する。バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能イソシアネートを用いることができる。
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、絵柄層3のバインダ樹脂は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、絵柄層3は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートに加えてニトロセルロースを含んでいてもよい。
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースが支障なく利用できるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3~2.7個のニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
絵柄層3は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。絵柄層3の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下、より好ましくは3[g/m]以上10[g/m]以下、さらに好ましくは6[g/m]以上9[g/m]以下である。絵柄層3は、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下、より好ましくは0.5[μm]以上5[μm]以下、さらに好ましくは0.7[μm]以上3[μm]以下の厚さを有する。なお、このような重量や厚さを有する絵柄層3が複数設けられていてもよい。
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
また「バイオマス度」について、例えばニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、この水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、もとのセルロース骨格がバイオマス材料100重量%からなるとして、グルコース単位1個あたりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量%)は、(172-n)×100/(172-n+46n)で計算できる。
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は、約78.8重量%、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量%、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量%になる(上記の式での計算値)。
また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
絵柄層3の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、上述したバイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層である。より詳しくは、透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。つまり、透明樹脂層5において、着色基材層2で用いたバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いてもよい。また、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合した化石燃料由来のポリエチレンを含んでいてもよい。
透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものであってもよい。透明樹脂層5中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
透明樹脂層5の密度は、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm]以上0.98[g/cm]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm]以上0.97[g/cm]以下の範囲内の密度を有するものである。透明樹脂層5の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。透明樹脂層5の密度が0.92[g/cm]以上であれば、透明樹脂層5の剛性を高めることができる。また、透明樹脂層5の密度が0.99[g/cm]以下であれば、透明樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることができる。
透明樹脂層5は、55~150[μm]、好ましくは55~100[μm]、より好ましくは60~80[μm]の厚さを有するものである。
透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第8実施形態においては、押出成形で形成することが好ましく、押出成形が、Tダイ法又はインフレーション法により行われることがより好ましい。
第8実施形態においては、透明樹脂層5と着色基材層2が、密度、厚さ、およびバイオマス度(バイオマス由来のエチレン濃度)について、以下の特定の関係を満たすものであることが好ましい。
第8実施形態においては、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2が、d2>d1を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには賦形性が要求され、着色基材層2として機能するためには生産性が要求されるからである。
なお、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2との比(d2/d1)が、1.1以上1.5以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上1.3以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.2以下の範囲内であればさらに好ましい。透明樹脂層と着色基材層の密度の比がこの範囲であることによって、バイオマス由来のポリエチレンを用いた場合であっても化粧シートとして必要な押出適正、曲げ加工適正を有することができる。
第8実施形態においては、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2が、t1≧t2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが要求され、着色基材層2として機能するためには、透明樹脂層5ほどの厚みは必要ないからである。
なお、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2との比(t1/t2)が、1.1以上3以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上2以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.5以下の範囲内であればさらに好ましい。
第8実施形態においては、透明樹脂層5におけるバイオマス由来のエチレン濃度C1と着色基材層2におけるバイオマス由来のエチレン濃度C2が、C1>C2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが大きくエチレン使用量が多いことから、透明樹脂層5のバイオマス度を上げることで化石燃料の使用量をより削減できるからである。
透明樹脂層5を形成するバイオマス由来のポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されていてもよい。
核剤は、ポリエチレンの質量を基準として、500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていれば好ましく、1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていればさらに好ましい。
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
なお、第8実施形態では、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第8実施形態においては、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層6は、絵柄層3のバインダ樹脂と同様の材料を用いて形成することができる。このため、表面保護層6の構成は、着色剤を含まない点以外は、絵柄層3の構成と同様である。
表面保護層6は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレート、すなわちバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。また表面保護層6において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物又はヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。つまり、表面保護層6は、バイオマス由来成分を含んでいる。
また、表面保護層6は、絵柄層3のバインダ樹脂と同様に、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートにニトロセルロースを添加して形成されてもよい。
表面保護層6は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。表面保護層6の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下、より好ましくは3[g/m]以上10[g/m]以下、さらに好ましくは6[g/m]以上9[g/m]以下である。表面保護層6は、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下、より好ましくは3[μm]以上10[μm]以下、さらに好ましくは6[μm]以上9[μm]以下の厚さを有する。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合してもよい。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第8実施形態の効果)
第8実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれ、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり透明樹脂層5は、バイオマス由来のオレフィンを5質量%以上含み、0.92[g/cm]以上0.99[g/cm]以下の範囲内の密度を有し、着色基材層2は、バイオマス由来のオレフィンを5質量%以上含み、0.92[g/cm]以上1.12[g/cm]以下の範囲内の密度を有し、絵柄層3は、着色剤と、バイオマス由来成分とを含み、表面保護層6は、バイオマス由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(2)絵柄層3は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含有する樹脂層であり、表面保護層6は、該ウレタン(メタ)アクリレートで形成された樹脂層であり、該ウレタン(メタ)アクリレートが含有するポリオール、イソシアネート化合物、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(3)絵柄層3および表面保護層6が含有するバイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールは、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオール、バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオール、又はバイオマス由来成分を含むポリカーボネートポリオールである。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をより確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をより確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(4)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリエステルポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(5)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリエーテルポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(6)上記バイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるポリオールのうちポリカーボネートポリオールは、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来成分を含むカーボネートとの反応物である、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(7)絵柄層3および表面保護層6が含有するバイオウレタン(メタ)アクリレートの構成要素であるイソシアネート化合物は、バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量をさらに確実に削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性をさらに確実に維持することができる化粧シートを提供することが可能となる。
(8)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧材を提供することが可能となる。
第6実施例
第8実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から16の化粧材と、参考例1から3の化粧材について説明する。
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、絵柄層と、ウレタン系接着剤層と、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層(透明接着層)と、透明樹脂層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、ポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2[μm])を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:135[μm])を得た。
実施例1では、基材として、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成された着色基材層(厚さ:55[μm])を用いた。この樹脂組成物をカレンダー成形することで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は80%であり、着色基材層の密度は1.08[g/cm]である。
透明樹脂層には、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「バイオマスポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層(厚さ:80[μm])を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が80/20となるようにブレンドした樹脂である。この樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た。こうして形成された透明樹脂層のバイオマス度は94%であり、透明樹脂層の密度は0.95[g/cm]である。
絵柄層のバインダ樹脂には、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールと化石燃料由来のイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いた。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールを用いた。
また、表面保護層は、絵柄層のバインダ樹脂と同じバイオウレタン(メタ)アクリレートを用いて形成した。
(実施例2)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエステルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを得た。
(実施例3)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートとして、化石燃料由来のポリエステルポリオールとバイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
(実施例4)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとしてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。具体的には、ポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
(実施例5)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエーテルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
(実施例6)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
(実施例7)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、ポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の化粧シートを得た。具体的には、ポリカーボネートポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いた。
(実施例8)
表面保護層を形成するバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例8の化粧シートを得た。
(実施例9)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエステルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の化粧シートを得た。
(実施例10)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートとして、化石燃料由来のポリエステルポリオールとバイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10の化粧シートを得た。
(実施例11)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとしてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11の化粧シートを得た。具体的には、ポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
(実施例12)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリエーテルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物を用いたこと以外は実施例11と同様にして、実施例12の化粧シートを得た。
(実施例13)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリエーテルポリオールを用いたこと以外は実施例10と同様にして、実施例13の化粧シートを得た。
(実施例14)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、ポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例14の化粧シートを得た。具体的には、ポリカーボネートポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いた。
(実施例15)
絵柄層のバインダ樹脂であるバイオウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオールとして、化石燃料由来のポリカーボネートポリオールを用いたこと以外は実施例10と同様にして、実施例15の化粧シートを得た。
(実施例16)
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が100/0となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例16の化粧シートを得た。
(参考例1)
絵柄層をウレタン系印刷インキから形成し、表面保護層をアクリル樹脂系紫外線硬化型樹脂から形成した以外は実施例1と同様にして、参考例1の化粧シートを得た。
(参考例2)
プライムポリマー社製の化石燃料由来のホモポリプロピレン樹脂のみをルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、参考例2の化粧シートを得た。
(参考例3)
化石燃料由来の着色ポリエチレン樹脂のみを用いて着色基材層を得た以外は実施例1と同様にして、参考例3の化粧シートを得た。
(性能評価、評価結果)
実施例1から16の化粧シートと、参考例1から3の化粧シートに対し、それぞれ、「透明樹脂層のヘイズ(%)」、「鉛筆硬度」、「ホフマンスクラッチ試験」、「押出適正」、「折り曲げ白化」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<透明樹脂層のヘイズ(%)>
透明樹脂層のヘイズ(%)は、紫外可視近赤外分光光度計(メーカー:島津製作所 型番:UV-3600)を用いて測定した。
各実施例・参考例の透明樹脂層と同じ組成の樹脂を、厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内で押し出し、樹脂フィルムを得た。波長が555nmのヘイズを分光光度計(積分球)により測定して、ヘイズを評価した。そして、ヘイズが15%未満である場合を「◎」と評価し、ヘイズが15%以上25%未満の範囲内である場合を「○」と評価し、ヘイズが25%以上である場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験機(自動)(メーカー:吉満精機 型番:C221A)で測定した。
各実施例・参考例の化粧シートを含む化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、表面硬度を評価した。そして、硬度が2B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「◎」と評価し、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が5B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
<ホフマンスクラッチ試験>
ホフマンスクラッチ試験は、化粧シート表面に対して45度の角度で接するようにスクラッチ刃(Φ7の円柱形の刃)をセットし、試験機を化粧シート上で移動させて行った。
200~2000g荷重の範囲内で徐々に(200g刻みで)荷重(錘)を高めて引っかき、サンプル表面に傷がついた荷重(g)で評価した。なお、荷重800gで傷が付いた場合には、「600g」を耐荷重として表に記載した。
なお、本実施例では耐荷重が「200g」の場合を不合格とした。
<押出適正>
透明樹脂層を押出成形し、その生産適正(押出適正)を確認した。
その結果、問題なく製造(成形)できるようであれば、「〇」(合格)とした。一方、不良が出る可能性があるものを「△」(不合格)とした。
<折り曲げ白化>
MDFに貼り合わせた化粧シート(即ち化粧材)を用いてVカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認した。
その結果、白化が生じなかったものを「〇」(合格)とし、少し白化が生じてしまったものを「△」(合格)とし、白化が生じしてしまったものを「×」(不合格)とした。
Figure 2024024696000011
Figure 2024024696000012
Figure 2024024696000013
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から16の化粧シートは、全ての評価試験に対して、参考例1-3と同等以上の優れた性能を示した。つまり、実施例1から16の化粧シートは、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することが可能であることが分かった。
(第9実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
なお、第9実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層であり、さらにこの着色樹脂層は無機物を含んでいる。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
第9実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。第9実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
第9実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
第9実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
第9実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
第9実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来の化石燃料を用いる場合に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、第9実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
第9実施形態によれば、樹脂組成物は、5質量%以上好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンを含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、例えば化石燃料由来のポリエチレンとの混合物を含んでいてもよく、このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、5質量%以上好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%の範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
(無機物)
着色基材層2は無機物を含み、着色基材層2の比重は0.97以上1.5以下である。
無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
さらに、着色基材層2は、比重が0.97以上1.5以下となるように無機物が添加されている。比重が0.97以上1.5以下となるように、着色基材層2に無機物を添加することによって、着色基材層2の隠蔽性を高めることができる。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもののうちのいずれであっても良く、また、着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであってもよい)を、95:5~70:30の範囲内でブレントしたものが良い。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第9実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、51[μm]以上200[μm]以下であることがより好ましく、55[μm]以上100[μm]以下であることがさらに好ましい。これは、着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが200[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
なお、第9実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第9実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
絵柄層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、上述したバイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物、もしくは化石燃料由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層である。より詳しくは、透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。つまり、透明樹脂層5では、着色基材層2で用いたバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物において、無機物が添加されていない樹脂組成物を用いてもよい。言い替えれば、着色基材層2及び透明樹脂層5は共に、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成され、着色基材層2にはさらに無機物が添加されているが、透明樹脂層5には無機物が添加されていない。絵柄層3の上層にある透明樹脂層5には無機物を添加せず、絵柄層3の下層にある着色基材層2のみに無機物を添加しているため、透明樹脂層5の透明性を保つことで絵柄層3が隠蔽されることを抑制しつつ、着色基材層2の隠蔽性を高めることで、化粧シート1が貼り付けられる下地の色・模様を隠蔽することができる。
透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のエチレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものであってもよい。透明樹脂層5中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでもよい。
また、透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第9実施形態においては、押出成形で形成することが好ましく、押出成形が、Tダイ法又はインフレーション法により行われることがより好ましい。
透明樹脂層5を形成するバイオマス由来のポリエチレンには、核剤(例えば、理研ビタミン株式会社製の「リケマスターCN-002」)が添加されていてもよい。
核剤は、ポリエチレンの質量を基準として、500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていれば好ましく、1500[ppm]以上2000[ppm]以下の範囲内で、ポリエチレンに添加されていればさらに好ましい。
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層6は、例えば、アクリル系樹脂組成物を用いて形成されている。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
<化粧シート中のバイオマス由来のエチレンの濃度>
上述のように、着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれバイオマス由来のエチレンを5質量%以上含み、化粧シート1全体では、バイオマス由来の材料を、5質量%以上含むことが好ましい。
<化粧シート全体の比重>
化粧シート1全体の比重は、着色熱可塑性樹脂層に無機物を添加することで0.97以上1.5以下であることが好ましい。このようにすることによって、例えば、化石燃料由来のポリエチレンを用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第9実施形態の効果)
第9実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、バイオマス由来のエチレンを5質量%以上含み、さらに着色基材層2には無機物が添加されており、着色基材層2の比重は0.97以上1.5以下である。
このため、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いた構成であっても、例えば、化石燃料由来のポリエチレン等を用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する着色基材層2を形成することが可能となる。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
(2)透明樹脂層5及び着色基材層2の少なくとも一方の層は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含んでいてもよい。
その結果、さらに柔軟性を有する透明樹脂層5及び着色基材層2を形成することが可能となる。
(3)透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含んでいてもよい。
その結果、高い硬度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
(4)着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含み、且つ、バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
その結果、製膜安定性が良く、化粧シートとして充分な柔らかさを有する着色基材層2を形成することが可能となる。
また、第9実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(5)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧材10を提供することが可能となる。
第7実施例
第9実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から6の化粧シートと、比較例1から3の化粧シートとについて説明する。
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された絵柄層と、ウレタン系接着剤層と、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層(接着層)と、透明樹脂層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の他方の面にポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2[μm])を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:135[μm])を得た。化粧シートのバイオマス度は80%である。
この化粧シートのプライマー層側に、例えばエバジャパンコーティングレジン社製の接着剤BA-10Lとジャパンコーティングレジン社製硬化剤BA-11Bとを用いて、MDF(Medium density fiberboard:中質繊維板)を張り合わせることで化粧材を得ることができる。
実施例1では、基材として、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成され、無機物が添加された着色基材層(厚さ:55[μm])を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の低密度ポリエチレンとをブレンドした樹脂である。着色基材層の比重が1.2となるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合した。この樹脂をルーダーラミネートすることで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は80%である。
透明樹脂層には、着色基材層と同様に、バイオマス由来のポリエチレン(ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」)を含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層(厚さ:60[μm])ではあるが、無機物が添加されていない透明樹脂層を用いた。このバイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が80/20となるようにブレンドした樹脂である。この樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た。
(実施例2)
着色基材層の比重が0.97となるように、無機物として炭酸カルシウムを配合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
(実施例3)
着色基材層の比重が1.5となるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
(実施例4)
着色基材層の比重が1.0となるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
(実施例5)
透明樹脂層を化石燃料由来のポリプロピレンを用いて形成した以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
(実施例6)
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(SHC7260)とバイオマス由来の低密度ポリエチレン(SPB681)とを、その比率(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が100/0となるようにブレンドし、その樹脂をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た以外は実施例1と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
(比較例1)
無機物として、比重が0.96となるように炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の化粧シートを得た。
(比較例2)
無機物として、比重が0.95となるように酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の化粧シートを得た。
(比較例3)
無機物として、比重が1.6となるように炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の化粧シートを得た。
(性能評価、評価結果)
実施例1から5の化粧シートと、比較例1から3の化粧シートに対し、それぞれ、「隠蔽性」、「着色熱可塑性樹脂層(着色基材層)の生産性」、「印刷適正」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<隠蔽性>
化粧シートに対し、JIS6921壁紙で記載されている隠蔽性試験を行った。
JIS6921の隠蔽性の判定基準に従って判定を行い、4級を「◎」、3級を「○」、2級を「△」とした。
<着色熱可塑性樹脂層の生産性>
化粧シートについて、表面状態等の製膜性、フィッシュアイの有無、厚みムラの有無等といった不良度合を目視により判定した。不良がほとんどない場合を「◎」、不良が存在するが、生産には影響がない場合を「○」、生産に影響するほどの不良がある場合を「×」とした。なお、不良個所が平米あたりに1~2個程度である場合には「○」と判定した。
<印刷適正>
化粧シートについて、着肉不良の有無、乾燥時の熱ジワの有無などを目視により判定した。現行の化粧シートの印刷適正と遜色がない場合を「◎」、現行の印刷適正よりも劣るが、生産に影響がない場合を「○」、条件によっては生産に影響する場合を「△」とした。
Figure 2024024696000014
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果を表1に示す。実施例1から6の化粧シートは、全ての評価試験に対して、ほぼ優れた性能を示した。一方、比較例1から3の化粧シートは、少なくとも一部の評価試験において不十分な性能を示した。
(第10実施形態)
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
なお、第10実施形態における化粧材10の構成は、化粧シート1の構成を除き、上述した第1実施形態と同様であるため、化粧シート1以外の構成については、説明を省略する。
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、表面保護層6と、プライマー層8とを備える。
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
第10実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。第10実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
第10実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
第10実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
第10実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
第10実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、第10実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
第10実施形態によれば、樹脂組成物は、5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンを含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、例えば化石燃料由来のポリエチレンとの混合物を含んでいてもよく、このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%の範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
(無機物)
着色基材層2は無機物を含み、着色基材層2の比重は0.97以上1.5以下である。
無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
さらに、着色基材層2は、比重が0.97以上1.5以下となるように無機物が添加されている。比重が0.97以上1.5以下となるように、着色基材層2に無機物を添加することによって、着色基材層2の隠蔽性を高めることができる。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもののうちのいずれであっても良く、また、着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであっても良い)を、95:5~70:30の範囲内でブレントしたものが良い。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。第10実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、40[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、51[μm]以上200[μm]以下であることがより好ましく、55[μm]以上100[μm]以下であることがさらに好ましい。これは、着色基材層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが200[μm]以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
なお、第10実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、第10実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
絵柄層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
<表面保護層>
表面保護層6は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層6は、例えば、アクリル系樹脂組成物を用いて形成されている。
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
<化粧シート全体の比重>
化粧シート1全体の比重は、0.97以上1.5以下であることが好ましい。より好ましくは、比重が0.99以上1.4以下である。このようにすることによって、例えば、化石燃料由来のポリエチレン等を用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
<化粧シート全体の総厚>
化粧シート1全体の厚みは、50[μm]以上200[μm]以下であることが好ましい。より好ましくは、70[μm]以上150[μm]以下である。このようにすることによって、例えば、化石燃料由来のポリエチレン等を用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する化粧シート1を形成することが可能となる。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第10実施形態の効果)
第10実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、バイオマス由来のエチレンを5質量%以上含み、さらに無機物が添加されており、着色基材層2の比重は0.97以上1.5以下である。
このため、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いた構成であっても、例えば、化石燃料由来のポリエチレン等を用いて形成した構成と同等程度の隠蔽性を有する着色基材層2を形成することが可能となる。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
また、隠蔽用の層を別途設けることなく、着色基材層2に無機物を添加することで隠蔽性を持たせることができるため、単層構造の化粧シートとすることができる。そのため、従来の隠蔽性を有する複層フィルムに比較して樹脂量を削減することができ、カーボンニュートラルな社会の実現へ貢献することができる。
(2)着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含んでいてもよい。
その結果、さらに柔軟性を有する着色基材層2を形成することが可能となる。
(3)着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含み、且つ、バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
その結果、さらに柔軟性を有する着色基材層2を形成することが可能となる。
また、第10実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(4)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリエチレンを用いて形成した場合であっても、隠蔽性の低下を抑制することが可能な化粧材10を提供することが可能となる。
第8実施例
第10実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から7の化粧材と、比較例1から3の化粧材について説明する。
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された絵柄層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の他方の面にポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2[μm])を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:110[μm])を得た。化粧シートのバイオマス度は70%である。この化粧シートのプライマー層側に、例えばエバジャパンコーティングレジン社製の接着剤BA-10Lとジャパンコーティングレジン社製硬化剤BA-11Bとを用いて、MDF(Medium density fiberboard:中質繊維板)を張り合わせることで化粧材を得ることができる。
実施例1では、基材として、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」)とバイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成され、無機物が添加された着色基材層(厚さ:100[μm])を用いた。着色基材層の比重が1.1になるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合した。この樹脂をルーダーラミネートすることで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は70%である。
(実施例2)
着色基材層の比重が0.97になるように、無機物として酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(実施例3)
着色基材層の比重が1.5になるように、無機物として酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(実施例4)
着色基材層の比重が1.0になるように、無機物としてシリカを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(実施例5)
着色基材をバイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
(実施例6)
化粧シートの総厚が45[μm]となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(実施例7)
化粧シートの総厚が210[μm]となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(比較例1)
着色基材層の比重が0.96になるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(比較例2)
着色基材層の比重が0.95になるように、無機物として炭酸カルシウムを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(比較例3)
着色基材層の比重が1.6になるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
(性能評価、評価結果)
実施例1から7の化粧シートと、比較例1から3の化粧シートに対し、それぞれ、「隠蔽性」、「着色熱可塑性樹脂層(着色基材層)の生産性」、「印刷適正」、「加工適正」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
<隠蔽性>
化粧シートに対し、JIS6921壁紙で記載されている隠蔽性試験を行った。
JIS6921の隠蔽性の判定基準に従って判定を行い、4級を「◎」、3級を「○」、2級を「△」、1級を「×」とした。
<着色熱可塑性樹脂層の生産性>
化粧シートについて、表面状態等の製膜性、フィッシュアイの有無、厚みムラの有無等といった不良度合を目視により判定した。不良がほとんどない場合を「◎」、不良が存在するが、生産には影響がない場合を「○」、生産に影響するほどの不良がある場合を「×」とした。なお、不良個所が平米あたりに1~2個程度である場合には「○」と判定した。
<印刷適正>
化粧シートについて、着肉不良の有無、乾燥時の熱ジワの有無などを目視により判定した。現行の化粧シートの印刷適正と遜色がない場合を「◎」、現行の印刷適正よりも劣るが、生産に影響がない場合を「○」、条件によっては生産に影響する場合を「△」とした。
<加工適正>
化粧シートについて、ラッピング加工したときに、クラック等の異常がみられるかどうかを目視により判定した。異常を確認できない場合を「○」、部分的に異常が確認できる場合を「△」、全体的に異常が確認できる場合を「×」とした。
Figure 2024024696000015
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果を表1に示す。実施例1から7の化粧シートは、全ての評価試験に対して、ほぼ優れた性能を示した。つまり、隠蔽性、生産性、物性の点で、現行の化粧シートと同様の作用硬化を得ることが確認された。一方、比較例1から3の化粧シートは、少なくとも一部の評価試験において不十分な性能を示した。
1…化粧シート、2…着色基材層、3…絵柄層、4…接着層、5…透明樹脂層、6…表面保護層、7…凹凸部、8…プライマー層、9…基材、10…化粧材

Claims (7)

  1. 着色基材層と、
    前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、
    前記透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、
    前記高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物には、核剤が添加されている化粧シート。
  2. 前記核剤は、前記高密度ポリエチレンの質量を基準として500ppm以上2000ppm以下の範囲内で添加されている請求項1に記載した化粧シート。
  3. 前記核剤は、前記高密度ポリエチレンの質量を基準として1500ppm以上2000ppm以下の範囲内で添加されている請求項1に記載した化粧シート。
  4. 着色基材層と、
    前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、
    前記透明樹脂層は、植物由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物を用いて形成され、
    前記ポリオレフィンには、核剤が添加されている化粧シート。
  5. 着色基材層と、
    前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、
    前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、を混合した樹脂組成物を用いて形成され、
    前記透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、
    前記透明樹脂層を形成する前記樹脂組成物には、核剤が添加されている化粧シート。
  6. 前記着色基材層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
  7. 基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。
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