JP2024022280A - 樹脂フィルム、金属張積層板及び回路基板 - Google Patents

樹脂フィルム、金属張積層板及び回路基板 Download PDF

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Hongyuan Wang
敏弘 森本
Toshihiro Morimoto
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Abstract

【課題】放熱性(厚み方向の熱伝導性と熱抵抗)と柔軟性・靭性とに優れた、フィラー含有ポリイミド層を有する樹脂フィルムを提供する。【解決手段】ポリイミド及び熱伝導性フィラーを含有するフィラー含有ポリイミド層を、少なくとも1層有する樹脂フィルムであって、前記ポリイミドは、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物またはビフェニルテトラカルボン酸二無水物から誘導される酸無水物残基を全酸無水物残基に対して50モル%以上含有し、また、ベンゼン環を2以上有するジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を全ジアミン残基に対して30モル%以上含有し、前記樹脂フィルムは、1cm2単位面積当たりの厚み方向熱抵抗率が0.2K/W以下であるとともに、20mm幅で測定した端裂抵抗が0.6N以上であることを特徴とする樹脂フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂フィルム並びに該樹脂フィルムを用いた金属張積層板及び回路基板に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPCの多くは、金属箔などを用いた金属層と、絶縁性を持った樹脂基材(絶縁樹脂層)とを積層した金属張積層板の金属層に回路を形成することで製造される。
さらに、最近では、電子機器の小型化や情報処理量の増加などに伴って、回路の集積度が上がってきており、搭載部品から発生する熱の増加が見込まれ、さらには、情報処理の高速化や信頼性の向上を図ろうとするためには、機器内に生じる熱の放熱特性を高めることが要求されている。機器内の放熱性を高めるためには、従来から、熱伝導率が高いアルミニウムの厚板や冷却ファンなどを設置する方法が採用されてきたが、機器の小型化の要求から、そのような設備を設けることができない場合がある。
また、放熱性を高めるためには、電子機器それ自体の熱伝導性を高めることが有効と考えられる。例えば、配線基板を構成する絶縁樹脂層中に熱伝導性フィラーを含有させる技術が検討されている。より具体的には、絶縁樹脂層を形成する樹脂中に、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの熱伝導性の高い充填材を分散配合することが検討されており、例えば、耐熱性の高いポリイミドに対して熱伝導性フィラーを配合する技術が報告されている(例えば、特許文献1~7)。さらには、電子機器(絶縁樹脂層)それ自体を薄くするなどによって厚み方向の放熱性を高めることも考えられている。
特許第5235211号公報 特許第5442491号公報 特許第5297740号公報 特許第5665449号公報 特許第5330396号公報 特許第5665846号公報 特許第5650084号公報
ところが、樹脂中の熱伝導性フィラーの充填率を高めると、相対的に樹脂成分の含有量が低下するために、樹脂硬化物の柔軟性や靭性が低下する傾向がみられ、FPC加工中に回路パターン形成後のフィルム単体部分が破れるおそれがある。また、絶縁樹脂層を薄くした場合はそれがより顕著になることが想定される。
このように、電子機器内の放熱性の向上の要求があるものの、従来技術においては配線基板を構成する絶縁樹脂層の柔軟性・靭性を満足させることについて、改善の余地があった。
そこで本願の発明者らが熱伝導性フィラーを含有するポリイミド層について鋭意検討したところ、ポリイミドを構成する酸無水物成分及びジアミン成分としてそれぞれ特定の化合物を用いると共に、それらの含有量を所定の範囲に調整することにより、放熱性(厚み方向の高熱伝導性と低熱抵抗)に優れ、尚且つ柔軟性・靭性にも優れたフィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)が得られることを見出して、本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、放熱性(厚み方向の高熱伝導性と低熱抵抗)と柔軟性・靭性に優れた、フィラー含有ポリイミド層を有する樹脂フィルムを提供することである。
また、本発明の他の目的は、該樹脂フィルムからなる絶縁樹脂層が積層されてなる金属張積層板及び回路基板を提供することである。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]ポリイミド及び熱伝導性フィラーを含有するフィラー含有ポリイミド層を、少なくとも1層有する樹脂フィルムであって、
前記ポリイミドは、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物から誘導される酸無水物残基を全酸無水物残基に対して50モル%以上含有し、また、下記一般式(2)で表わされるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を全ジアミン残基に対して30モル%以上含有し、
前記樹脂フィルムは、1cm単位面積当たりの厚み方向熱抵抗率が0.2K/W以下であるとともに、20mm幅で測定した端裂抵抗が0.6N以上であることを特徴とする樹脂フィルム。
Figure 2024022280000001
Figure 2024022280000002
[式(2)中、Zは-O-を示す。Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。nは置換数を示し、0~4の整数である。nは0~3の整数を示す。]
[2]前記ポリイミドが、下記一般式(3)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を全ジアミン残基に対して30モル%~70モル%の範囲内で含有することを特徴とする[1]に記載の樹脂フィルム。
Figure 2024022280000003
[式(3)中、連結基Xは単結合、-COO-、若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、Yは独立にハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示し、nは1又は2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。]
[3]フィラー含有ポリイミド層の該熱伝導性フィラーの含有割合が、10~60体積%の範囲内であることを特徴とする[1]に記載の樹脂フィルム。
[4]熱伝導性フィラーが、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする[1]に記載の樹脂フィルム。
[5]ガラス転移温度が210℃以上であることを特徴とする[1]に記載の樹脂フィルム。
[6]熱膨張係数が40ppm/K以下であることを特徴とする[1]に記載の樹脂フィルム。
[7]引き裂き伝播抵抗が0.5kN/m以上であることを特徴とする[1]に記載の樹脂フィルム。
[8]単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている金属層とを備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が、[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
[9]単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている導体回路層と、を備えた回路基板であって、
前記絶縁樹脂層が、[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする回路基板。
本発明によれば、放熱性(厚み方向の高熱伝導性と低熱抵抗)と柔軟性・靭性に優れたフィラー含有ポリイミド層及びそれを有する樹脂フィルムを得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<樹脂フィルム>
本発明の樹脂フィルムは、熱伝導性フィラーを含有するフィラー含有ポリイミド層を少なくとも1層有してなる。該樹脂フィルムは、該フィラー含有ポリイミド層の1層又は複数層のみから構成されてもよく、フィラーを含有しないポリイミド層やポリイミド以外の樹脂層を有してもよい。層構成については後述する。
[フィラー含有ポリイミド層]
〔熱伝導性フィラー〕
本発明の樹脂フィルムに使用されるフィラー含有ポリイミド層は、ポリイミド及び熱伝導性フィラーを含有する。該フィラーがポリイミド中に分散状態で含有されていることが好ましい。熱伝導性フィラーとしては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、有機ホスフィン酸の金属塩などのフィラーやその他の成分を含有してもよい。これらの成分は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、高熱伝導性のものが好ましく、熱伝導率が10W/m・K以上のものを用いることがより好ましい。例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上のフィラーであることが好ましい。
フィラー含有ポリイミド層における熱伝導性フィラーの含有割合は、10~60体積%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20~60体積%、さらに好ましくは30~60体積%、さらにより好ましくは40~55体積%であることがよい。熱伝導性フィラーの含有割合をこの範囲にすることにより、フィラー含有ポリイミド層及び樹脂フィルムの放熱性(厚み方向の高熱伝導性と低熱抵抗)の向上効果を高めることができ、また、フィラーとフィラーの間に樹脂が少ないこと、及び、樹脂とフィラーの界面が生じることを防止、すなわち、フィラー含有ポリイミド層及び樹脂フィルムが過度に脆くなること(柔軟性・靭性が過度に低下すること)を防止することができる。
熱伝導性フィラーの含有割合については、添加前の原料の添加量(体積)から算出することができる。他の手法としては、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてフィラー含有ポリイミド層の断面観察を行ない、ポリイミドと熱伝導性フィラーの明暗差をもとに、パーソナルコンピュータ用ソフトウェア(例えば、伯東社製、商品名;Image-Pro)を用いて、図形処理した画像におけるサンプル断面全領域を選択し面積を算出した後、二値化処理によって、熱伝導性フィラーのみを抽出、面積を算出し、熱伝導性フィラーの面積をサンプル断面全領域で除した値をフィラー体積含有量と見做す方法や、ポリイミド層のエッチングにより、熱伝導性フィラーを取り出し、熱伝導性フィラーの重量とサンプルの総重量から換算することなどを挙げることができる。
熱伝導性フィラーの形状は、特に制限されるものではなく、例えば板状(燐片状を含む)、球状、針状、棒状のいずれでもよい。また、熱伝導性フィラーの含有量を高め、熱伝導性などの特性とのバランスを考慮し、異なる形状(例えば、板状と球状、板状と針状など)のフィラーを併用することもできる。
熱伝導性フィラーの粒子径については、平均粒子径D50が0.5~5μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0~4.0μm、さらに好ましくは1.5~3.0μmであることがよい。D50がこのような範囲であると、ポリイミド中への分散性や充填性において好ましく、フィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)として形成した際の過度な空隙の発生などを防止することができる。また、フィラーどうしの凝集が起こりにくく、熱を逃がすチャンネルも形成しやすいため、放熱性(厚み方向の高熱伝導性と低熱抵抗)の向上効果を高めることができる。更に、粒径が樹脂フィルムの厚みより小さいことから、フィラーが樹脂に覆われて、樹脂からの脱落を防ぐころできる。
ここで、平均粒子径D50は、レーザー回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる頻度分布曲線における累積値が50%となる粒子径を示す。後述のD10及びD90についても同様に定義される。
また、熱伝導性フィラーの粒子径については、ポリイミドの流動性、フィラーの分散性及び充填性等の観点から、粒子径が異なるもので構成されることが好ましい。より具体的には、粒子径が2~10μmの範囲の大粒子が全粒子の70%(頻度)であることがよく、また、粒子径が1~2μmの範囲の中粒子が全粒子の20%(頻度)であることがよく、さらには、粒子径が0.1~1.0μmの範囲の小粒子が全粒子の10%(頻度)であることがよく、これらのいずれか又は全部を満足することが好ましい。また、フィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)とした場合の表面平滑性等の観点から、最大粒子径については15μm以下であることが好ましく、より好ましくは最大粒子径が10μm以下であることがよい。
これら粒子径の分布や割合については、前記同様にレーザー回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって把握することができる。
〔ポリイミド〕
本発明のポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸無水物」ということがある。)から誘導される4価の基である酸無水物残基と、ジアミン化合物(以下、単に「ジアミン」ということがある。)から誘導される2価の基であるジアミン残基とを有して構成され、これらの構成が連結したものを1つの繰り返し単位としてみた場合に、その繰り返し単位の重合物から構成される。ポリイミドの前駆体であるイミド化により製造することができ、酸無水物とジアミンとの仕込み量(モル比)を調整することでポリアミド酸、ポリイミドの化学構造を制御することが可能である。
(テトラカルボン酸二無水物)
ここで、本発明のポリイミドに用いられる酸無水物としては、以下の一般式(1)で表される酸無水物を必須とする。
Figure 2024022280000004
この式(1)で表される酸無水物は、芳香環が直接結合(単結合)で結ばれた剛直な構造を有し、ビフェニル構造を有することから、高耐熱性と高熱伝導性を付与することが可能となる。この酸無水物成分としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができるが、その限りではない。好ましくはBPDAである。
本発明のポリイミドにおいては、当該式(1)で表される酸無水物を、全酸無水物の合計100モル%に対して、50モル%以上含有するようにする。すなわち、この酸無水物から誘導される酸無水物残基が、製造されるポリイミドの全酸無水物残基100モル%に対して、50モル%以上となるようにする。この式(1)の酸無水物(酸無水物残基)が50モル%未満であると、これを用いて製造されるポリイミドにおいて十分な耐熱性と熱伝導性が得られないおそれがある。好ましくは、75モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
また、本発明のポリイミドを構成する上記以外の酸無水物としては、ポリイミドの製造に使用される公知のものを制限なく用いることができるが、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。また、脂肪族骨格を有するテトラカルボン酸の無水物を用いてもよく、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族鎖状テトラカルボン酸二無水物や、脂環式テトラカルボン酸の無水物を用いてもよく、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、フルオレニリデンビス無水フタル酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸ニ無水物、シクロペンタノンビススピロノルボルナンテトラカルボン酸二無水物などの脂環式テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(パラフェニレンジカルボニル)ジフタル酸無水物、4,4’-(メタフェニレンジカルボニル)ジフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-オキシジフタル酸ニ無水物(ODPA)、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}、ビス(ジカルボキシフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’’,3,3’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’’,4’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、トリフルオロメチルベンゼン二無水物等が挙げられる。
(ジアミン化合物)
本発明のポリイミドに用いられるジアミン化合物としては、以下の一般式(2)で表されるジアミンを必須とする。
Figure 2024022280000005
ここで、式(2)中、Zは-O-を示す。Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。nは置換数を示し、0~4の整数である。nは0~3の整数を示す。なお、n=0又はn=0は、それぞれRを有さない(無置換、側鎖を有さない)ことを意味する。
上記式(2)で表される芳香族ジアミン化合物は2つ以上の芳香環を有し、2価の連結基Zであるエーテル結合があることで、これを用いて製造されるポリイミド分子鎖の自由度が増加して屈曲性を付与することができ、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与し、高靭性化を促すと考えられる。この式(2)のジアミン化合物(ジアミン残基)を用いることにより、耐熱性・放熱性(厚み方向の熱伝導性)を比較的高く維持しながらも、柔軟性・靭性(引き裂き伝播抵抗、端裂抵抗)も向上することができ、これらの特性を両立できるようになるため好ましい。
式(2)で表されるジアミン化合物(ジアミン残基)は、全ジアミン化合物(ジアミン残基)の合計100モル%に対して、30モル%以上となるようにする。この式(2)のジアミン化合物(ジアミン残基)が30モル%未満であると、これを用いて製造されるポリイミドにおいて十分な柔軟性・靭性(引き裂き伝播抵抗、端裂抵抗)が得られないおそれがある。好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは100モル%である。
この式(2)で表されるジアミン化合物としては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、p-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明のポリイミドにおいては、前記式(2)のジアミン化合物(ジアミン残基)に加えて、下記一般式(3)で表されるジアミン化合物を用いることが好ましい。
Figure 2024022280000006
ここで、式(3)中、連結基Xは単結合、-COO-、若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、Yは独立にハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示し、nは1又は2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。
このようなジアミン化合物としては、Xが単結合のものとしては、例えば、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4"-ジアミノ-p-ターフェニル、3,3"-ジアミノ-p-ターフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、オクタフルオロベンジジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジ-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、4,4’-ジアミノ-p-テルフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)などを挙げることができる。また、Xが-COO-基のものとしては、例えば、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)などを挙げることができる。
さらに、Xが-CONH-基のものとしては、下記式(4)で表されるジアミン化合物を挙げることができる。
Figure 2024022280000007
ここで、式(4)中、Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。m、nはそれぞれ独立して置換数を示し、mは0~4の整数、nは0~4の整数を示す。なお、m=0又はn=0は、それぞれRを有さない(無置換、側鎖を有さない)ことを意味する。
この式(4)のジアミン化合物としては、例えば、4、4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)、4、4’-ジアミノ-2’-メトキシベンズアニリド(MABA)、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリドなどを挙げることができる。高耐熱性と高熱伝導性のために、好ましくはDABAである。
このような式(3)で表されるジアミン化合物は、連結基Xによって芳香環が連結された剛直な構造を有することにより、耐熱性、高熱伝導性及び低熱膨張性等に優れるようにすることができる。とくに、式(4)のジアミン化合物は芳香環がアミド結合で結ばれた剛直な構造を有し、尚且つ式(2)のジアミン化合物との併用において酸素原子(O)と水素原子(H)とによる分子間の相互作用(水素結合など)をもたらすことから、高耐熱性と高熱伝導性を付与することが可能となるため好ましい。
式(3)で表されるジアミン化合物を使用する場合には、全ジアミン化合物(ジアミン残基)の合計100モル%に対して、30~70モル%の範囲内で含有されることが好ましい。より好ましくは40~70モル%の範囲内、さらに好ましくは50~70モル%の範囲内である。式(3)に表される2種以上のジアミン化合物を用いてもよい。とくに、Xが単結合であるもの(例えば、m-TBなど)と、Xが-NHCO-基のもの(例えば、DABAなど)とを併用することにより、フィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)においても高い靭性を付与することができるためより好ましい。
上記以外のジアミン化合物としては、ポリイミドの製造に使用される公知のものを制限なく用いることができるが、芳香族ジアミン化合物が好ましい。また、脂肪族骨格を有するジアミン化合物を用いてもよい。例えば、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3',5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、4-(1H,1H,11H-エイコサフルオロウンデカノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-ブタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-オクタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-ペンタフルオロフェノキシ-1,3-ジアミノベンゼン、4-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(4-フルオロフェノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-ヘキサノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-ドデカノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、(2,5)-ジアミノベンゾトリフルオライド、ジアミノテトラ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジアミノ(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、2,5-ジアミノ(パーフルオロヘキシル)ベンゼン、2,5-ジアミノ(パーフルオロブチル)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(2-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)-3.5-ジトリフルオロメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4'-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス{4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}ビフェニル、ビス〔{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス{2-〔(アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロイソプロピル}ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニルから誘導される芳香族ジアミンなどが挙げられる。また、ダイマージアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。
〔その他の成分〕
本発明のフィラー含有ポリイミド層は、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、前記熱伝導性フィラー以外の他のフィラーやその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、顔料、難燃剤などである。これらの成分は、通常、当該フィラー含有ポリイミド層に0~10質量%の範囲で使用され、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
[フィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)の形成方法]
本発明のフィラー含有ポリイミド層は、公知の方法で形成することできる。すなわち、原料である熱伝導性フィラーを含有するポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を用いて、例えば、[1]支持基材(例えば、金属層)に、フィラー含有ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してフィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)を製造する方法(以下、キャスト法)、[2]支持基材に、フィラー含有ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、フィラー含有ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化してフィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)を製造する方法などで形成されたものが挙げられる。また、樹脂フィルムが複数のポリイミドの層を有する場合、その製造方法の態様としては、例えば、[3]支持基材に、フィラー含有ポリイミド酸及び/又はフィラーを含有しないポリアミド酸の溶液を、それぞれ塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化を行う方法(以下、逐次塗工法)、[4]支持基材に、多層押出により、同時にフィラー含有ポリイミド酸及び/又はフィラーを含有しないポリアミド酸の積層構造体を塗布・乾燥した後、イミド化を行う方法(以下、多層押出法)などにより形成されたものが挙げられる。
寸法安定性や、金属層との接着性などの制御の観点から、キャスト法・逐次塗工法により、フィラー含有ポリイミド層を少なくとも1層有する積層体として、樹脂フィルム、及びこれを用いた後述の絶縁樹脂層、金属張積層板又は回路基板を形成することが好ましい。
フィラーを含有した(又はフィラーを含有しない)ポリアミド酸溶液又はポリイミド溶液を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。多層のポリイミド層の形成に際しては、使用するポリアミド酸溶液(又はポリイミド溶液)を基材に塗布、乾燥する操作を繰り返す方法が好ましい。本発明における樹脂フィルム、絶縁樹脂層(後述)は、フィラー含有ポリイミド層のみの単層から形成されてもよく、複数のフィラー含有ポリイミド層又はこれとフィラーを含有しないポリイミド層との積層体から形成されてもよい。前述のとおり、ポリイミド以外の樹脂層を含んでもよい。
ここで、フィラーを含有するポリアミド酸の溶液は、ポリアミド酸の溶液に熱伝導性フィラーを直接配合させてもよいが、該フィラーの分散性を考慮して、原料である酸二無水物又はジアミン化合物の一方を投入した反応溶媒に予めフィラーを配合し、攪拌下に重合を進行させてもよい。また、高固形分のポリアミド酸の溶液に熱伝導性フィラーを配合させてから、溶剤で塗工に好ましい粘度に希釈・調整してもよいし、一部のポリアミド酸に全量の熱伝導性フィラーを配合させてから、残りのポリアミド酸で塗工できる粘度を調整してもよい。
通常ポリアミド酸は、所定の酸二無水物とジアミン化合物とをほぼ等モルで有機溶剤中に溶解させ、通常0~100℃の範囲の温度で30分から24時間攪拌して重合反応させることで得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、γ‐プチロラクトン等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
本発明のフィラー含有ポリイミド層の形成においては、前述のとおり、酸無水物及びジアミン化合物はそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。酸無水物及びジアミン化合物の種類や、2種以上の酸無水物又はジアミン化合物を使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、例えば、熱伝導性(熱抵抗)、熱膨張性、接着性、ガラス転移温度、引き裂き伝播抵抗、端裂抵抗、引張伸度等の物性を制御することができる。
また、使用するポリアミド酸及びポリイミドは、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、酸無水物1モルに対して0.0001モル以上0.1モル以下の範囲内が好ましく、特に0.001モル以上0.05モル以下の範囲内が好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、アニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80℃以上400℃以下の範囲内の温度条件で1時間乃至24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
また、ポリアミド酸は、制限されないが、濃度や重量平均分子量Mwの調整により粘度が1,000~200,000cPの範囲とすることが好ましい。粘度が高い場合は、溶剤を加えて希釈すればよい。本発明で使用されるポリアミド酸の重量平均分子量Mwは、例えば10,000以上500,000以下の範囲内が好ましく、50,000以上500,000以下の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が500,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、フィラーの凝集、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
[フィラー含有ポリイミド層(樹脂フィルム)の特性]
このように形成される本発明のフィラー含有ポリイミド層又はこれを少なくとも1層有する樹脂フィルムは、前述のとおり、放熱性(厚み方向の高熱伝導性と低熱抵抗)と柔軟性・靭性に優れる。とくに、放熱性と端裂抵抗とを同時に満足することを特徴とする。さらには、ガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数、引き裂き伝播抵抗のうちの1又は2以上の特性も所定の範囲であることが好ましい。
本発明の樹脂フィルムは、放熱性としての1cm単位面積当たりの厚み方向熱抵抗率が0.2K/W以下である。好ましくは0.18K/W以下、より好ましくは0.15K/W以下、さらに好ましくは0.12K/W以下であることがよい。当該熱抵抗率が0.2K/Wよりも大きいと、フィラー含有ポリイミド層からなる樹脂フィルムの放熱用途への適用において、熱を十分に逃がせなく放熱効果が薄いため、目的を達することができないおそれがある。当該1cm単位面積当たりの厚み方向熱抵抗率は、実施例で記載のとおり、使用される樹脂フィルムの厚みdを、厚み方向の熱伝導率(λ)と1cm面積で除することにより算出することができる。なお、樹脂フィルムの厚み、厚み方向の熱伝導率(λ)については、実施例に記載の方法で測定することができる。また、非定常法で測定することもできる。
なお、熱伝導率としての厚み方向の熱伝導率(λ)については、0.3W/m・K以上であることが好ましく、より好ましくは0.5W/m・K以上、さらに好ましくは0.8W/m・K以上であることがよい。
また、本発明の樹脂フィルムは、前記の放熱特性(前記の熱抵抗率)を備えるとともに、20mm幅(JIS規格に準拠)で測定された端裂抵抗が.0.6N以上である。他方、上限値については特に制限されない。このような範囲であることで、加工時・使用時の破れなどの不具合を防止することができる。
また、本発明の樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)は210℃以上の耐熱性を有することが好ましい。より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは250℃以上である。
また、本発明の樹脂フィルムは、熱膨張係数(CTE)が好ましくは40ppm/K以下、より好ましくは1ppm/K以上35ppm/K以下の範囲内であることがよい。
また、本発明の樹脂フィルムは、引き裂き伝播抵抗が0.5kN/m以上であることが好ましい。より好ましくは0.7kN/m以上、さらに好ましくは1.0kN/m以上がよい。上限値は特に限定されないが、3.0kN/m以下であればよい。このような範囲であることで、加工時・使用時の破れなどの不具合を防止することができる。
また、本発明の樹脂フィルムは、熱分解試験において、1%重量減少温度が(Td1)は450℃以上であることが好ましく、より好ましくは470℃以上、さらに好ましくは490℃以上が好ましい。このような範囲に制御することで、FPCの主要構成成分などに適用しても十分な耐熱性を有する。
本発明の樹脂フィルム全体としての厚さは、例えば2~100μmの範囲内であることが好ましく、4~50μmの範囲内がより好ましい。厚みが2μmに満たないと、金属張積層板の製造時の搬送工程で金属箔にシワが入るなどの不具合が生じやすくなる。反対に、厚みが100μmを超えると高い放熱特性の発現、靭性・柔軟性・折り曲げ性等の点で不利になる傾向となる。複数層の樹脂フィルムの場合は、熱伝導性フィラーを含有しない層と熱伝導性フィラーを含有する層からなるものでもよい。熱伝導性フィラーを含有しない樹脂層は、フィラー含有ポリイミド層の樹脂組成と同じものでもよいし異なってもよい。
<金属張積層板>
[金属層]
金属層の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、銅、鉄又はニッケルの金属元素、または酸化インジウムスズ(ITO)が好ましく、銅(銅箔)であることがより好ましい。銅箔としては、電解銅箔及び圧延銅箔のいずれも使用することができる。なお、これら金属層の選定にあっては、金属層の導電性やポリイミド層の光透過性、ポリイミド層との接着性など使用目的で必要とされる特性を発現するように選択することになる。金属層の形状に特に制限はないが、用途に応じて適宜加工などが施されてよい。長尺状に形成されたロール状のものが好適に用いられる。
金属層の厚みは特に限定されるものではないが、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは0.1~70μmの範囲内、さらに好ましくは1~50μmの範囲内がよい。放熱用途では、車載関連など大電流を通すことが多いため、大電流に耐えられるために厚めの金属層(例えば、銅箔)が好ましい。一方、金属層が厚すぎると、積層基板としてのフレキシブル性と加工性が低下となる傾向があり、一方、重量が増えてしまう傾向となる。
[絶縁樹脂層]
本発明の金属張積層板は、単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の片側(片面)又は両側(両面)に積層された金属層とを備えており、絶縁樹脂層が前記の樹脂フィルム、すなわち、フィラー含有ポリイミド層を少なくとも1層有する樹脂フィルムによって構成されている。少なくとも1層がフィラー含有ポリイミド層からなる絶縁樹脂層であってよく、好ましい形態としては、フィラー含有ポリイミド層の厚みの割合が全体層の7割以上を占めることを挙げることができる。
例えば、絶縁樹脂層は単層のフィラー含有ポリイミド層であってもよい(例えば、下に例示される構成1)。また絶縁樹脂層が複数のポリイミドの層からなる場合は、前記の金属層に直接積層されるポリイミド層(P1)と、金属層と直接積層されないポリイミド層(P2)との二層構造でもよく、三層以上でもよい。この場合、下に例示される構成2~5のように特に制限はされないが、今般のフィラー含有ポリイミド層は、当該P1とP2のいずれかの層であってもよく、又は両方の層であってもよく、構成2~6におけるP1及び/又はP2がフィラー含有ポリイミド層であってもよい。放熱特性を上げるために、P1層はフィラーを含有させることが好ましい。また、フィラーがP1層から脱落させないように、P1層の上に更に、金属層と直接積層されないポリイミド層P2がフィラー含有しないポリイミド層として積層されることが好ましい。好ましくは二層であり、より好ましくは、フィラー含有ポリイミド層P1が(P1)/(P2)の順に積層していることが好ましい。このような構成では、フィラーの脱落を防ぐことができる。M1、M2は金属層を表し、M1とM2が同じであっても異なってもよい。金属層に直接積層されるポリイミド層(P1)と第三のポリイミド層(P3)は同一組成であってもよい。例えば、複数のポリイミド層をキャスト法によって形成する場合では、キャスト面側から金属層に直接積層されるポリイミド層(P1)だけを形成させてもよい。或いは、当該P1を形成した後に、金属層と直接積層されないポリイミド層(P2)がこの順序で積層された二層構造とすることでもよいし、キャスト面側から金属層に直接積層されるポリイミド層(P1)及び金属層と直接積層されないポリイミド層(P2)、第三のポリイミド層(P3)がこの順序で積層された三層構造とすることでもよい。ここで言う「キャスト面」とはポリイミドの層を形成する際における、支持体側の面のことを示す。支持体は、本発明の金属張積層板の金属層であってもよいし、ガラス等でもよいし、ゲルフィルム等を形成する際の支持体であってもよい。なお、複数のポリイミド層においてキャスト面と反対側の面は「ラミネート面」と記述するが、特に記述が無い場合、ラミネート面に金属層が積層されていてもされていなくてもよい。
構成1;M1/P1
構成2;M1/P1/P2
構成3;M1/P1/P2/P1(又はP3)
構成4;M1/P1/P2/P1(又はP3)/M2(又はM1)
構成5;M1/P1/P2/P1(又はP3)/P2/P1(又はP3)/M2(又はM1)
構成6;M1/P1/P2/M2(又はM1)
ここで、金属層と直接積層されるポリイミド層は熱可塑性ポリイミドとすることが好ましく、絶縁樹脂層としての接着性を向上させ、金属層との接着層としての適用が好適となる。
絶縁樹脂層の好ましい実施形態は、フィラーを含有する熱可塑性のポリイミド層(P1’)を有する。非熱可塑性ポリイミドから構成される非熱可塑性ポリイミド層(P2’)とを有する場合は、この非熱可塑性ポリイミド層(P2’)の少なくとも一方に熱可塑性ポリイミド層となるポリイミド層(P1’)を有するものがよい。すなわち、当該ポリイミド層(P1’)は、非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に設けるとよい。
また非熱可塑性ポリイミド層は低熱膨張性のポリイミド層を構成し、熱可塑性ポリイミド層は高熱膨張性のポリイミド層を構成する。ここで、低熱膨張性のポリイミド層は、熱膨張係数(CTE)が好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは3ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。また、高熱膨張性のポリイミド層は、CTEが好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上70ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。ポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEを有するポリイミド層とすることができる。
絶縁樹脂層全体の熱膨張係数(CTE)としては、10~30ppm/Kの範囲内であることが好ましい。このような範囲に制御することで、カール等の変形を抑制でき、また高い寸法安定性を担保できる。ここで、CTEは、絶縁樹脂層のMD方向及びTD方向の熱膨張係数の平均値である。
ここで、非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明においては、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、350℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。また、熱可塑性ポリイミド(「TPI」ともいう。)とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本実施の形態では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。
ここで、「主たる」とは、絶縁樹脂層を構成する複数のポリイミド層において最も大きな厚みを有することを意味し、好ましくは、絶縁樹脂層の厚みに対して60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の厚みを有することをいう。主たるポリイミド層は、非熱可塑性ポリイミドで構成することが好ましい。絶縁樹脂層が単層のポリイミド層の場合は、非熱可塑性ポリイミドからなるフィラー含有ポリイミド層を用いることが好ましい。
絶縁樹脂層が複数層のポリイミド層の場合は、例えば、フィラー含有ポリイミド層(P1)の厚みをT1、フィラーを含有しないポリイミド層(P2)の厚みをT2とした際に、T2の厚みは1μm以上4μm以下の範囲内が好ましく、T1の厚みは4μm以上30μm以下の範囲内が好ましい。放熱性の観点から、T2の厚みは、絶縁樹脂層の厚みに対して20%以下とすることが好ましい。
なお、絶縁樹脂層全体としても、前述のフィラー含有ポリイミド層又はこれを少なくとも1層有する樹脂フィルムの特性値を全て満足するものであることがより好ましい。
<金属張積層板の製造方法>
本発明の金属張積層板は、前述のとおり、支持基材としての金属層に対して、キャスト法又は逐次塗工法で、単層又は複数層であってフィラー含有ポリイミド層を少なくとも有する樹脂フィルムからなる絶縁樹脂層を形成することが、寸法安定性などの観点から好適であるが、特に限定されない。例えば、本発明のフィラー含有ポリイミド層を含む樹脂フィルムからなる絶縁樹脂層を用意し、これに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えばメッキによって金属層を形成することによって調製してもよい。
また、本発明のフィラー含有ポリイミド層を含む樹脂フィルムからなる絶縁樹脂層を用意し、これに金属箔を熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。
それらの場合、絶縁樹脂層と金属層との接着性を高めるために、絶縁樹脂層の表面を例えばプラズマ処理などの改質処理を施してもよい。
また、両面に金属層を有する金属張積層板を製造する場合は、例えば前記方法により得られた片面金属張積層板の絶縁樹脂層の上に、直接、あるいは必要に応じて透明性などの特性を阻害しない接着層を形成した後、金属層を加熱圧着等の手段で積層することにより得ることができる。金属層を加熱圧着の場合の熱プレス温度については、特に限定されるものではないが、使用される金属層に隣接する層のガラス転移温度以上であることが望ましい。また、熱プレス圧力については、使用するプレス機器の種類にもよるが、1~500kg/mの範囲であることが望ましい。
<回路基板>
本発明の金属張積層板は、主にFPCなどの回路基板材料として有用である。金属張積層板の金属層を常法によってパターン状に加工して導体回路層(配線層)を形成することによって、本発明の回路基板を製造できる。すなわち、本発明の回路基板は、前記絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層のうちの少なくとも一方の面に設けられている導体回路層(配線層)とを備えており、前記絶縁樹脂層の一部分又は全部が、前記のフィラー含有ポリイミド層であることがよい。また、前記絶縁樹脂層と導体回路層(配線層)との接着性を高めるために、該絶縁樹脂層における導体回路層(配線層)に接する層は、熱可塑性ポリイミドの層であることがよい。
以下、実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
本実施例に用いた略号は以下の化合物を示す。
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
DAPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
BAPP:2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン
m-TB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
DABA:4,4’-ジアミノベンズアニリド
MABA:4,4’-ジアミノ-2’-メトキシベンズアニリド
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
熱伝導性フィラー1:アルミナ(住友化学社製、商品名:AA-3、多面体球状αアルミナ単結晶粒子、真比重:3.98、平均粒子径D50:3.6μm、粒子径D10:2.8μm、D90:4.8μm、最小粒子径:1μm、最大粒子径:10μm)
熱伝導性フィラー2:アルミナ(住友化学社製、商品名:AA-1.5、多面体球状αアルミナ単結晶粒子、真比重:3.98、平均粒子径D50:1.6μm、最大粒子径;5μm)
また、実施例において評価した各特性については、下記評価方法に従った。
[粘度の測定]
ポリアミド酸溶液の粘度は、恒温水槽付のコーンプレート式粘度計(トキメック社製)
にて、25℃で測定した。
[重量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名;HLC-8220GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にはN,N-ジメチルアセトアミドを用いた。
[厚み方向の熱伝導率]
樹脂フィルムを20mm×20mmのサイズに切り出し、レーザーフラッシュ法による厚み方向の熱拡散率α(NETZSCH社製、商品名;キセノンフラッシュアナライザーLFA447 Nanoflash装置)、示差走査熱量測定(DSC)による比熱、水中置換法による密度をそれぞれ測定し、これらの結果をもとに熱伝導率(W/m・K)を算出した。
[1cm単位面積値における厚み方向の熱抵抗率]
(樹脂フィルムの厚み)/[(厚み方向の熱伝導率)×面積(1cm×1cm)]
から、1cm単位面積値における厚み方向の熱抵抗率を算出した。単位:K/W。
[引き裂き伝播抵抗]
63.5mm×50mmの樹脂フィルムを試験片とし、試験片に長さ12.7mmの切り込みを入れ、(株)東洋精機製の軽荷重引裂き試験機を用いて引裂き伝播抵抗を測定した。
[端裂抵抗]
JIS C2151(2019)のB法に従い、幅20mm×長さ200mmの樹脂フィルムを試験片として、東洋精機社製、商品名;ストログラフR1を用いて端裂抵抗を測定した。
[熱膨張係数(CTE)]
樹脂フィルム(3mm×15mm)を、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら10℃/minの昇温速度で30℃から280℃まで昇温し、次いで、250℃から100℃までの降温し、降温時における樹脂フィルムの伸び量(線膨張)から熱膨張係数を測定した。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
樹脂フィルム(10mm×22.6mm)を動的熱機械分析装置(DMA)にて20℃から400℃まで5℃/分で昇温させたときの動的粘弾性を測定し、ガラス転移温度(Tanδ極大値:℃)を求めた。
[熱伝導性フィラーの粒度分布(粒子径)の測定]
粒子径が0.4μm未満の熱伝導性フィラーに対してはBET換算粒子径を適用した。
また、粒子径が0.4μm以上の熱伝導性フィラーに対しては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、商品名;MT-3300)を用いた。前処理として、熱伝導性フィラー量:0.3g、分散媒として0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液180mLを用いて、25~30Wの超音波分散装置(ホモジナイザー)で7分間分散させた試料を準備した。そして、この試料の適量を、0.01%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒とする条件で粒子径の測定を行って、中心粒径を求めた。頻度分布曲線における累積値が50%となる値を平均粒子径D50とした。同様に、累積値が10%、90%となる値をそれぞれ粒子径D10、D90とした。
[カールの測定方法]
金属張積層板を50mm×50mmのサイズに切り出し、恒温恒湿環境下(23±3℃、50±5%RH)で24時間放置後に、ノギスを用いて4隅の反り量の測定を実施した。この際、樹脂面側もしくは金属側へ反っている場合は、最も反り量の大きいところをCCLカールとした。
合成例1~13
ポリアミド酸溶液A~Mを合成するため、窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコの中に、表1で示した固形分濃度となるように溶剤のDMAcを加え、表1に示した酸無水物及びジアミン化合物(モル部)を添加し、室温で36時間攪拌し、重合反応を行い、ポリアミド酸の粘稠な溶液A~Mを調製した。
[実施例1]
合成例1で得られたポリアミド酸Aの溶液をDMAcで粘度を10000cPに希釈・調整してから、その中に前記熱伝導性フィラー1を添加し、均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラー1を40体積%含有するフィラー含有ポリアミド酸溶液Aとした。
次に、銅箔1(電解銅箔、福田金属箔粉工業社製、商品名;CF-T4M-DS-HD-35、厚み;35μm、Rz;1.7μm)上に、合成例1で得たフィラー含有ポリアミド酸溶液Aを硬化後の厚みが約23μmとなるように塗布し、90~140℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。その後、130~360℃の温度範囲で、段階的に30分かけて昇温加熱して、銅箔1上にフィラー含有ポリイミド層からなる絶縁樹脂層を積層した金属張積層板(CCL)1Aを作製した。CCLの1Aを用いてカールを測定した。
次いで、金属張積層板1Aにおけるポリイミド層の特性を評価するために銅箔1をエッチング除去して樹脂フィルム1aを作製し、厚み方向の熱拡散率(α)及び熱伝導率(λ)、1cm単位面積当たりの熱抵抗率、引き裂き伝播抵抗、端裂抵抗、ガラス転移温度(Tg)、CTE、CCLカールをそれぞれ評価した。樹脂フィルムの硬化後の厚みは約13~33μmであり、ダイヤルゲージを用いて測定した。
なお、厚み方向の熱拡散率(α)と熱伝導率(λ)の測定は硬化後80μmの厚みに調整して作製したサンプルを用いて測定した。
(実施例2~21、比較例1~12)
使用するフィラー含有ポリアミド酸溶液の種類、フィラーの種類若しくは含有量、又はポリアミド酸溶液の硬化後の厚みをそれぞれ変更し、実施例1と同様にして、各フィラー含有ポリアミド酸溶液を用いた実施例2~21にかかる金属張積層板2B~21G及び樹脂フィルム2b~21g、並びにポリアミド酸溶液H、I、J、L又はMを用いた比較例1~12にかかる金属張積層板1H~12M及びフィルム1h~12mを得て、同様に評価した。
なお、熱伝導性フィラーを含有しない場合についても、使用するポリアミド酸溶液の種類又はポリアミド酸溶液の硬化後の厚みをそれぞれ変更し、実施例1と同様にして、各ポリアミド酸溶液を用いた参考例1~9にかかる金属張積層板1L~9H及び樹脂フィルム1l~9hを得て、同様に評価した。
評価結果を表2~4に示す。
Figure 2024022280000008
Figure 2024022280000009
Figure 2024022280000010
Figure 2024022280000011
Figure 2024022280000012
Figure 2024022280000013

Claims (9)

  1. ポリイミド及び熱伝導性フィラーを含有するフィラー含有ポリイミド層を、少なくとも1層有する樹脂フィルムであって、
    前記ポリイミドは、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物から誘導される酸無水物残基を全酸無水物残基に対して50モル%以上含有し、また、下記一般式(2)で表わされるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を全ジアミン残基に対して30モル%以上含有し、
    前記樹脂フィルムは、1cm単位面積当たりの厚み方向熱抵抗率が0.2K/W以下であるとともに、20mm幅で測定した端裂抵抗が0.6N以上であることを特徴とする樹脂フィルム。
    Figure 2024022280000014
    Figure 2024022280000015
    [式(2)中、Zは-O-を示す。Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。nは置換数を示し、0~4の整数である。nは0~3の整数を示す。]
  2. 前記ポリイミドが、下記一般式(3)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を全ジアミン残基に対して30モル%~70モル%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
    Figure 2024022280000016
    [式(3)中、連結基Xは単結合、-COO-、若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、Yは独立にハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示し、nは1又は2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。]
  3. フィラー含有ポリイミド層の該熱伝導性フィラーの含有割合が、10~60体積%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
  4. 熱伝導性フィラーが、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
  5. ガラス転移温度が210℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
  6. 熱膨張係数が40ppm/K以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
  7. 引き裂き伝播抵抗が0.5kN/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
  8. 単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている金属層とを備えた金属張積層板であって、
    前記絶縁樹脂層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
  9. 単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている導体回路層と、を備えた回路基板であって、
    前記絶縁樹脂層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする回路基板。
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