JP2024021683A - ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents

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Kohei Kasaya
啓一郎 深澤
Keiichiro Fukazawa
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Abstract

【課題】他の材料との反応性を向上させ、かつ、結晶化温度をより低温に有するポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂を製造する方法を提供すること。【解決手段】有機極性溶媒中でポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、PAS樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程1、前記粗反応混合物に酸を添加する工程2、前記粗反応混合物をクウェンチ法により固液分離し、少なくともPAS樹脂及びアルカリ金属ハロゲン化物を含む固相成分(A)を得る工程3、前記固相成分(A)を洗浄し、アルカリ金属ハロゲン化物を除去して少なくともPAS樹脂を含む固相成分(B)を得る工程4、前記固相成分(B)に塩基を添加して熱水洗し、pH7.0~12.0の混合物(C)を得る工程5を有する、PAS樹脂の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すことがある)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略すことがある)樹脂は、耐熱性、耐薬品性等に優れ、電気電子部品、自動車部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途等に幅広く利用されている。
PPS樹脂は基本骨格に反応性部位をほぼ含まないため、耐薬品性等に優れる一方で、反応性官能基を有するエラストマーやシランカップリング剤等の他の材料と混合した際に、反応性に乏しい。樹脂組成物中でPPS樹脂をマトリックスとして用いる場合には、他の材料との界面強度が樹脂組成物の機械的性質に大きく影響するため、樹脂の反応性を調整することが不可欠である。
樹脂の反応性を向上させる方法としては、例えば、末端官能基として含まれるCOONa部位をCOOHに変換することが挙げられる(特許文献1等)。しかしながら、この方法では樹脂の結晶化特性も変化するため、好適に用いられる形状が限定され、押出成形品や大型成形品等の比較的時間をかけて成形する部品に利用するためには課題が残っていた。
特開2008-247955号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、他の材料との反応性を向上させ、かつ、結晶化温度をより低温に有するPAS樹脂を製造する方法を提供することにある。
発明者らは種々の検討を行った結果、PAS樹脂の粗反応混合物に酸を添加し、その後の特定の洗浄工程で塩基を添加して、得られる混合物のpHを調整することで、他の材料との反応性に優れ、かつ、結晶化温度をより低温に有するPAS樹脂を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本開示は、有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、PAS樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程(1)、
前記粗反応混合物に酸を添加する工程(2)、
前記粗反応混合物をクウェンチ法により固液分離し、少なくともPAS樹脂及びアルカリ金属ハロゲン化物を含む固相成分(A)を得る工程(3)、
前記固相成分(A)を洗浄し、アルカリ金属ハロゲン化物を除去して少なくともPAS樹脂を含む固相成分(B)を得る工程(4)、
前記固相成分(B)に塩基を添加して熱水洗し、pH7.0~12.0の混合物(C)を得る工程(5)を有するPAS樹脂の製造方法に関する。
本発明によれば、他の材料との反応性を向上させ、かつ、結晶化速度を調整したPAS樹脂を製造する方法を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
<PAS樹脂の製造方法>
本発明は、有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、PAS樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程(1)、
前記粗反応混合物に酸を添加する工程(2)、
前記粗反応混合物をクウェンチ法により固液分離し、少なくともPAS樹脂及びアルカリ金属ハロゲン化物を含む固相成分(A)を得る工程(3)、
前記固相成分(A)を洗浄し、アルカリ金属ハロゲン化物を除去して少なくともPAS樹脂を含む固相成分(B)を得る工程(4)、
前記固相成分(B)に塩基を添加して熱水洗し、pH7.0~12.0の混合物(C)を得る工程(5)を有すること、を特徴とする。以下、詳述する。
工程(1)
工程(1)は、有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、PAS樹脂、環状PASオリゴマー、鎖状PASオリゴマー、アルカリ金属ハロゲン化物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程である。
ここで、本発明においてポリハロ芳香族化合物としては、例えば、芳香族環に直接結合した2個以上のハロゲン原子を有するハロゲン化芳香族化合物であり、具体的には、p-ジクロルベンゼン、o-ジクロルベンゼン、m-ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、テトラクロルベンゼン、ジブロムベンゼン、ジヨードベンゼン、トリブロムベンゼン、ジブロムナフタレン、トリヨードベンゼン、ジクロルジフェニルベンゼン、ジブロムジフェニルベンゼン、ジクロルベンゾフェノン、ジブロムベンゾフェノン、ジクロルジフェニルエーテル、ジブロムジフェニルエーテル、ジクロルジフェニルスルフィド、ジブロムジフェニルスルフィド、ジクロルビフェニル、ジブロムビフェニル等のジハロ芳香族化合物及びこれらの混合物が挙げられ、これらの化合物をブロック共重合してもよい。これらの中でも好ましいのはジハロゲン化ベンゼン類であり、特に好ましいのはp-ジクロルベンゼンを80モル%以上含むものである。また、枝分かれ構造とすることによってPAS樹脂の粘度増大を図る目的で、1分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を分岐剤として所望に応じて用いてもよい。このようなポリハロ芳香族化合物としては、例えば、1,2,4-トリクロルベンゼン、1,3,5-トリクロルベンゼン、1,4,6-トリクロルナフタレン等が挙げられる。更に、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基等の活性水素を持つ官能基を有するポリハロ芳香族化合物を挙げることが出来、具体的には、2,6-ジクロルアニリン、2,5-ジクロルアニリン、2,4-ジクロルアニリン、2,3-ジクロルアニリン等のジハロアニリン類;2,3,4-トリクロルアニリン、2,3,5-トリクロルアニリン、2,4,6-トリクロルアニリン、3,4,5-トリクロルアニリン等のトリハロアニリン類;2,2’-ジアミノ-4,4’-ジクロルジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノ-2’,4-ジクロルジフェニルエーテル等のジハロアミノジフェニルエーテル類及びこれらの混合物においてアミノ基がチオール基やヒドロキシル基に置き換えられた化合物などが例示される。また、これらの活性水素含有ポリハロ芳香族化合物中の芳香族環を形成する炭素原子に結合した水素原子が他の不活性基、例えばアルキル基などの炭化水素基に置換している活性水素含有ポリハロ芳香族化合物も使用できる。
これらの各種活性水素含有ポリハロ芳香族化合物の中でも、好ましいのは活性水素含有ジハロ芳香族化合物であり、特に好ましいのはジクロルアニリンである。
ニトロ基を有するポリハロ芳香族化合物としては、例えば、2,4-ジニトロクロルベンゼン、2,5-ジクロルニトロベンゼン等のモノ又はジハロニトロベンゼン類;2-ニトロ-4,4’-ジクロルジフェニルエーテル等のジハロニトロジフェニルエーテル類;3,3’-ジニトロ-4,4’-ジクロルジフェニルスルホン等のジハロニトロジフェニルスルホン類;2,5-ジクロル-3-ニトロピリジン、2-クロル-3,5-ジニトロピリジン等のモノ又はジハロニトロピリジン類;あるいは各種ジハロニトロナフタレン類などが挙げられる。
また、本発明においては、アルカリ金属硫化物又はアルカリ水硫化物及びアルカリ金属水酸化物(以下、スルフィド化剤ということがある)を原料として用いる。
本発明において、前記アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物が含まれる。かかるアルカリ金属硫化物は、水和物あるいは水性混合物あるいは無水物として使用することができる。また、アルカリ金属硫化物はアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物との反応によっても導くことができる。尚、通常、アルカリ金属硫化物中に微量存在するアルカリ金属水硫化物、チオ硫酸アルカリ金属と反応させるために、少量のアルカリ金属水酸化物を加えても差し支えない。
また、前記アルカリ金属水硫化物としては、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素ルビジウム、硫化水素セシウム及びこれらの混合物が含まれる。かかるアルカリ金属水硫化物は、水和物あるいは水性混合物あるいは無水物として使用することができる。
また、前記アルカリ金属水硫化物はアルカリ金属水酸化物と伴に用いる。当該アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。これらの中でも、入手が容易なことから水酸化リチウムと水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
本発明のPAS樹脂の製造方法は、原料として含水スルフィド化剤を用いることもでき、その場合、少なくとも非プロトン性極性溶媒の存在下で、含水スルフィド化剤を脱水する工程を経て、PAS樹脂の重合反応に供することが好ましい。また、非プロトン性極性溶媒の仕込み量が少ない場合、例えば、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、1モル未満の場合、ポリハロ芳香族化合物の存在下で、含水スルフィド化剤と、非プロトン性極性溶媒とを、脱水させることが好ましい。
含水スルフィド化剤の脱水工程は、少なくとも非プロトン性極性溶媒と、含水スルフィド化剤として含水アルカリ金属硫化物又は含水アルカリ水硫化物及びアルカリ金属水酸化物を、蒸留装置が設けられた反応容器に仕込み、水が共沸により除去される温度、具体的には、300℃以下の範囲、好ましくは80~220℃の範囲、より好ましくは100~200℃の範囲にまで加熱して、蒸留により水を系外に排出することにより行う。脱水工程では、重合反応を行う系内の水分量が、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、5モル以下、より好ましくは、0.01~2.0モルの範囲となるまで脱水することが好ましい。
また、本発明において有機極性溶媒としては、ホルムアミド、アセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ε-カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、N-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン酸などのアミド、尿素及びラクタム類;スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類;ベンゾニトリル等のニトリル類;メチルフェニルケトン等のケトン類及びこれらの混合物を挙げることができ、これらの中でもN-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ε-カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、N-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン酸の脂肪族系環状構造を有するアミドが好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがさらに好ましい。
PAS重合工程におけるPAS樹脂の重合反応は、これらの有機極性溶媒の存在下、スルフィド化剤として上記アルカリ金属硫化物と、ポリハロ芳香族化合物とを反応させる。又は、PAS樹脂の重合反応は、これらの有機極性溶媒の存在下、スルフィド化剤として上記アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、ポリハロ芳香族化合物とを反応させる。重合条件は一般に、温度200~330℃の範囲であり、圧力は重合溶媒及び重合モノマーであるポリハロ芳香族化合物を実質的に液相に保持するような範囲であるべきであり、一般には0.1~20MPaの範囲、好ましくは0.1~2MPaの範囲より選択される。ポリハロ芳香族化合物の仕込量は、前記スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、0.2モル~5.0モルの範囲、好ましくは0.8~1.3モルの範囲、さらに好ましくは0.9~1.1モルの範囲となるよう調製する。また、非プロトン性極性溶媒の仕込量は、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、1.0~6.0モルの範囲、好ましくは2.5~4.5モルの範囲となるよう調整する。なお、重合反応は少量の水の存在下に行うことが好ましく、その割合は、重合方法や得られるポリマーの分子量や生産性との兼ね合いで適宜調整することが好ましい。具体的には、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して2.0モル以下、好ましくは1.6モル以下の範囲となるよう脱水操作を行うが、さらにポリハロ芳香族化合物の存在下で脱水操作を行う場合(例えば、下記具体的態様における「5)」の方法)においては0.9モル以下、好ましくは0.05~0.3モル、より好ましくは0.01~0.02モル以下の範囲となるよう脱水操作を行えばよい。
上記した有機極性溶媒の存在下、スルフィド化剤とポリハロ芳香族化合物とを重合させる具体的態様としては、例えば、
1)アルカリ金属カルボン酸塩又はハロゲン化リチウム等の重合助剤を使用する方法、
2)芳香族ポリハロゲン化合物等の分岐剤を使用する方法、
3)少量の水の存在下に重合反応を行い次いで水を追加してさらに重合する方法、
4)アルカリ金属硫化物と芳香族ジハロゲン化合物との反応中に、反応釜の気相部分を冷却して反応釜内の気相の一部を凝縮させ液相に還流させる方法、
5)ポリハロ芳香族化合物の存在下、アルカリ金属硫化物、又は、含水アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、脂肪族環状構造を有するアミド、尿素又はラクタムとを、脱水させながら反応させて固形のアルカリ金属硫化物を含むスラリーを製造する工程、該スラリーを製造した後、更にNMPなどの極性有機溶媒を加え、水を留去して脱水を行う工程、次いで、脱水工程を経て得られたスラリー中で、ポリハロ芳香族化合物と、アルカリ金属水硫化物と、前記脂肪族環状構造を有するアミド、尿素又はラクタムの加水分解物のアルカリ金属塩とを、NMPなどの極性有機溶媒1モルに対して反応系内に現存する水分量が0.02モル以下で反応させて重合を行う工程を必須の製造工程として有するPAS樹脂の製造方法、が挙げられる。
このように、有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを重合反応させることにより、生成物として、PAS樹脂が得られるが、それ以外に、PASオリゴマーも副生される。反応後に含まれる物質としては、その他に、例えば、アルカリ金属含有無機塩、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物、末端SH基含有化合物などの副生成物や未反応原料、水が含まれていても良い。
工程(2)
工程(2)は、前記粗反応混合物に酸を添加する工程である。本工程で酸を添加してから後続の工程を経ることによって、得られるPAS樹脂の反応性や結晶化温度、アルカリ金属含有量等を制御することができる。ここで用いられる酸は、例えば、塩酸、硫酸、炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸等が挙げられ、これらの中でも酢酸、シュウ酸等が好ましい。
本工程における酸の添加量は、特に限定されないが、例えば、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、好ましくは0.2モル%、特に好ましくは0.5モル%から、好ましくは10.0モル%以下、特に好ましくは6.0モル%以下の範囲である。
本工程において粗反応混合物に酸を添加する方法は、特に限定されないが、酸が液体であるときは、そのまま又は他の溶媒、好ましくは工程(1)で使用した有機極性溶媒で希釈して添加することが好ましく、酸が固体であるときは、適切な媒体例えば水、上記有機極性溶媒等に酸を溶解して添加することが好ましい。
酸処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは常温からPAS樹脂の重合反応温度までの任意の温度を採ることができ、特に好ましくは常温~250℃である。処理温度が、上記下限未満では、本発明の効果を十分に達成できない。酸処理の時間は、処理温度及び処理されるPAS樹脂の性質等により異なるが、好ましくは5分間~24時間、特に好ましくは20分間~3時間である。処理時間が、上記下限未満では、上記と同様に本発明の効果を十分に達成できない。また、圧力については特に制限はなく、該処理は、好ましくは、反応終了後の反応缶中に酸を圧入することにより行われる。
工程(3)
工程(3)は、酸を添加した粗反応混合物から、クウェンチ法により固液分離により液相成分を除去して、少なくともPAS樹脂及びアルカリ金属ハロゲン化物を含む固相成分(A)を得る工程である。固液分離法は大きく分けて、後述するフラッシュ法とクウェンチ法の2種類があるが、本発明ではクウェンチ法を用いることが好ましい。
フラッシュ法は、粗反応混合物中の溶媒を蒸発させて溶媒回収し、同時に固形物を回収する方法であり、一般的に、粗反応混合物を高温高圧の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ溶媒を留去及び回収すると同時にPAS樹脂を含む固形物を粉粒状にして回収する方法である。
一方、クウェンチ法は、粗反応混合物を除冷して粒子状のPAS樹脂を回収する方法であり、一般的に、粗反応混合物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS樹脂を晶析させた後に、濾別等により固液分離することでPAS樹脂を含む固形分を顆粒として回収する方法である。冷却時間には特に制限は無いが、通常0.1℃/分~3℃/分が好ましい範囲である。また、徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、PAS樹脂の顆粒状物が晶析するまでは0.1℃/分~1℃/分の範囲とし、その後は1℃/分以上の速度で冷却する方法なども好ましい。最終的には70℃以上、好ましくは100℃以上かつ、200℃以下まで冷却し、その後、固液分離することでポリアリーレンスルフィ樹脂を含む固形分を回収することが好ましい。クウェンチ法における固液分離は、濾過やスクリューデカンター等の遠心分離機を用いて分離した後、得られた濾過残渣に直接水を加えスラリー化したのち、固液分離を繰り返し行う方法や、得られた濾過残渣を非酸化性雰囲気下で加熱して、残存する溶媒を除去する方法などが挙げられる。クウェンチ法は、晶析時にポリマー粒子中に前記副生成物や未反応原料等の不純物を取り込みにくく、PASオリゴマーをより多く回収できるため、本工程においてはクウェンチ法がより好ましい。
工程(4)
工程(4)は、前記固相成分(A)を洗浄し、アルカリ金属ハロゲン化物を除去して少なくともPAS樹脂を含む固相成分(B)を得る工程である。
本工程において、前記固相成分(A)は、水洗により洗浄される。水洗後、PAS樹脂を濾別することにより固液分離する方法としては、例えば、後述するPAS製造工程で得られた粗反応混合物から非プロトン性極性溶媒を固液分離させて得られた反応スラリーに水を加えて撹拌した後にろ過装置を用いてろ過する方法、前記したろ過によって得られた水分を含有するろ過残渣(以下「含水ケーキ」と略記する。)に再度水を加えてスラリーとした後にろ過する方法、又は前記含水ケーキがろ過器に保持された状態で再度水を加えろ過する方法等が挙げられる。
前記水洗の際、前記固相成分(A)に加える水の量は最終的に得られるPAS樹脂の理論収量に対して2倍~10倍の範囲にあることが好ましく洗浄効率の点から好ましく、上記の量の水を2~10回、好ましくは2~4回に分割して水洗に供することが好ましい。前記水洗は、窒素ないし空気雰囲気下、水温20℃~100℃の範囲で行うことが好ましく、洗浄効率が良好となる点から、なかでも、50℃~100℃の範囲で行うことがより好ましく、さらに70℃~90℃の範囲で行うことが最も好ましい。前記水洗は、一回又は複数回繰り返し行うことができる。複数回繰り返し水洗浄する場合、前記雰囲気・温度条件は同一でも異なっていても良い。
工程(5)
工程(5)は前記固相成分(B)に塩基を添加して熱水洗し、pH7.0~12.0の混合物(C)を得る工程である。
本工程で用いる塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄等の金属水酸化物、又は炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、酢酸ナトリウム等が挙げられ、これらの中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
本工程における塩基の添加量は、前記混合物(C)のpHが7.0以上となるように調節することが好ましく10.0以上となるように調節することがより好ましく10.5以上となるように調節することがさらに好ましい。また、12.0以下となるように調節することが好ましく、12.0未満となるように調節することがより好ましく、11.5未満となるように調節することがさらに好ましい。また、塩基を添加する方法や順序については特に限定されず、固相成分(B)に添加してから熱水を接触させてもよく、熱水にあらかじめ添加してから固相成分(B)に接触させてもよい。
熱水洗の温度は、例えば、100~280℃の範囲が好ましく、さらに120~275℃の範囲であることが、樹脂中に残留するアルカリ金属ハロゲン化物やスルフィド化剤の抽出効率が良好となる点から好ましい。更に具体的には、反応器内の気相の圧力を加圧下、より好ましくは0.2~4.6MPa(ゲージ圧)なる条件下、140~260℃の熱水で抽出処理を行うことが好ましい。
このような熱水洗を行う具体的方法は、前記の水洗後に濾別されたPAS樹脂を圧力容器中において所定の圧力条件及び温度条件下に水で攪拌下に洗浄する方法が挙げられる。熱水洗時の水量はPAS樹脂の質量に対して1.5倍~10倍であることが、前記アルカリ金属ハロゲン化物やスルフィド化剤の抽出効率が良好となる点から好ましく、この量の熱水を2回以上に分けて熱水洗を行ってもよい。例えば、熱水洗を2回繰り返す場合、1回目の熱水洗と2回目の熱水洗の間にはろ過を行い、1回目の熱水洗で抽出したアルカリ金属ハロゲン化物及びスルフィド化剤とPAS樹脂とを濾別することが好ましい。また、熱水洗を一回実施した後に濾過を行い、前記した水洗を実施しても良い。この操作によってもアルカリ金属ハロゲン化物及びスルフィド化剤と、PAS樹脂との分離、除去がより促進されうる。また1回目の熱水洗工程と2回目の熱水洗工程の条件は前記の条件より任意に選ぶことができるものの、1回目の熱水洗工程の温度は例えば120℃~200℃の範囲にある温度に設定して、まず高アルカリ性の濾液を濾別して除去した後に、2回目の熱水洗工程の温度を1回目の熱水洗工程の温度より高い温度、例えば150℃~275℃の範囲にある温度に設定して実施することが前記熱水洗で用いられる装置の耐薬品性の観点から好ましい。
本工程においては、撹拌機を有する水洗槽及び固液分離するための遠心分離機を用いることも可能であるが、容器内部に撹拌翼を有し、且つ、底部に濾過用フィルターが配設された混合機能を有す容器内で行うこともできる。また、100℃を超える熱水洗でも、熱水洗を行う撹拌機を有する水洗槽、及び、その後の20~100℃でろ過するため、遠心分離機を用いることも可能であるが、容器内部に撹拌翼を有し、且つ、底部に濾過用フィルターが配設された密閉型あるいは密閉可能な混合機能を有す容器内で行うことも可能である。本発明において、水洗ないし熱水洗は連続的に行っても良いし、バッチ式に行ってもいずれでも良い。
濾別されたPAS樹脂は回収され、その後、そのまま乾燥してPAS樹脂粉末として用いても良いし、更に洗浄処理した後、固液分離し、乾燥を行って粉末状ないし顆粒状のPAS樹脂として調製することもできる。さらに、得られた粉末状ないし顆粒状のPAS樹脂に熱処理を行い、架橋PAS樹脂とすることもできる。
上記の工程(1)~(5)を経た混合物(C)に含まれるPAS樹脂中の末端カルボキシ基の具体的な数値について特に限定する必要はないが、当該樹脂中に10~100〔μmol/g〕以下の範囲とすることが好ましく、20~50〔μmol/g〕の範囲とすることがより好ましくは、20~40〔μmol/g〕の範囲とすることがさらに好ましい。なお、0〔μmol/g〕は好ましくは末端カルボキシ基を含有しないことを意味するが、通常は、検出限界以下であることを意味する。かかる範囲において、得られるPAS樹脂が反応性に優れるため好ましい。
さらに、上記の工程(1)~(5)を経た混合物(C)に含まれるPAS樹脂中の末端金属塩の具体的な数値について特に限定する必要はないが、当該樹脂中に5~30〔μmol/g〕の範囲とすることが好ましく、10~30〔μmol/g〕の範囲とすることがより好ましい。かかる範囲において、得られるPAS樹脂の結晶化温度が低くなり、優れた厚肉成形性を呈するため好ましい。
上述した本発明の製造方法を経て得られたPAS樹脂は以下の特徴を有する。
上記の製造方法により得られたPAS樹脂は、再結晶化温度(Tc)が低い傾向を有する。Tcの値については特に限定されるものではないが、好ましくは230℃以下であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下の範囲である。かかる範囲において、樹脂及び樹脂組成物が優れた厚肉成形性を呈するため好ましい。
上記の製造方法により得られたPAS樹脂は、反応性に優れる傾向を有する。具体的な反応性については特に限定されるものではないが、例えば、同一粘度のPAS樹脂において、実施例の方法で評価した混練トルクがより大きい値を示すとき、より高い反応性を有すると判断することができる。その他の方法としては、例えば、実施例の方法を用いて測定した混練トルクの値と、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加せずに測定した混練トルクの値の変化率によっても、反応性を評価することができる。
本発明により得られたPAS樹脂は、従来と同様、充填剤や他の樹脂と配合して溶融混練後、直接または一旦ペレットに成形した後、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形のごとき各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形物にすることができる。しかしながら強度、耐熱性、寸法安定性等の性能をさらに改善するために、本発明の目的を損なわない範囲で各種充填材と組み合わせて使用することも可能である。充填材としては、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。また、成形加工の際に添加剤として本発明の目的を逸脱しない範囲で少量の、離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤、カップリング剤を含有せしめることができる。更に、同様に下記のごとき合成樹脂及びエラストマーを混合して使用できる。これら合成樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、エラストマーとしては、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
本発明のPAS樹脂またはそれを含む樹脂組成物を溶融成形してなる成形品は、従来の方法で得られるPAS樹脂同様耐熱性、寸法安定性等が優れるので、例えば、コネクタ・プリント基板・封止成形品などの電気・電子部品、ランプリフレクター・各種電装部品などの自動車部品、各種建築物や航空機・自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品・カメラ部品・時計部品などの精密部品等の射出成形・圧縮成形品、あるいは繊維・フィルム・シート・パイプなどの押出成形・引抜成形品等として幅広く利用可能である。さらに、結晶化速度が従来の方法で得られるPPSよりも遅いことから、射出成型時にゲート部の固化を遅め肉厚部まで圧力を加えることができ、これによりこれまでの充填不足を解消し、強度低下を防止することができる。このことから、特に、大型ないし肉厚の成形品、好ましくは射出成形品に適しており、例えば、4mm以上の肉厚部を有する射出成形品、一辺が200mm以上の大型の射出成形品として特に好ましく利用可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。なお、以下、特に断りが無い場合「%」や「部」は質量基準とする。
<評価>
(1)再結晶化温度の測定
実施例1~7および比較例1~5で得られたPPS樹脂の再結晶化温度(Tc2)を測定する試験片として、樹脂を350℃にて溶融させた後、急冷させて非晶性フィルムを作製した。この試験片からおよそ4mg分取し、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製『DSC8500』)を用いて測定した。結果を表1~3に示す。
(2)反応性の評価
実施例1~7および比較例1~5で得られたPPS樹脂にγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.8%(対PPS樹脂固形分質量比)を添加したものを試料とし、溶融混練時のトルク変化から、樹脂の反応性を評価した。溶融混練は、ラボプラストミル(20-200C、R-60タイプミキサー使用、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、305℃、40rpm、8分間行い、8分時のトルク〔kgf・m〕を測定した。結果を表1~3に示す。
(3)金属末端塩の定量
実施例1~7および比較例1~5で得られたPPS樹脂を白金るつぼに秤取り、そこに濃硫酸(原子吸光グレード)を浸る程度に加えて、TOSHIBA製コンロHP-103Kで加熱した。大半が灰化して残差から煙が出なくったことを確認してから取り出し、さらにマッフル炉にて700℃5時間加熱することで、完全に灰化させた。室温まで冷却後、得られた灰分を1%塩酸水溶液に溶解させ、原子吸光光度計で水溶液中の金属量を測定した。得られた値から、PAS樹脂中の金属量を算出した。なお、本操作で使用する水は導電度18.2MΩ・cmのものを使用した。
(4)末端カルボキシ基の定量
実施例1~7および比較例1~5で得られたPPS樹脂を350℃でプレスしたのち、急冷することによって非晶性を示すフィルムを作製し、フーリエ変換赤外分光装置(以下「FT-IR装置」と略記する。)で測定した。赤外吸収スペクトルのうち630.6cm-1の吸光度に対する1705cm-1の吸光度の相対強度を求め、別途後述する方法により作成した検量線を用いて測定サンプル中のカルボキシ基の含有量を求めた。なお、カルボキシ基の含有量は樹脂混合物1g中のモル数で示され、その単位は〔μmol/g〕で表される。検量線は以下の方法で作成した。まず、酸処理を行わずカルボン酸塩を分子末端に含有するように作製したPAS樹脂に、所定量の4-クロロフェニル酢酸を加え良く混合したのち、前記と同様のフィルムを作製し、FT-IR装置で測定を行った。4-クロロフェニル酢酸の添加量から算出したカルボキシ基含有量に対する、前記2つの波長の吸光度の相対強度比をプロットした検量線を作成した。結果を表1~3に示す。
(5)溶融粘度(V6)の測定
実施例1~7および比較例1~5で得られたPPS樹脂の溶融粘度(V6)は、島津製作所製のフローテスター(CFT-500C型)を用いて、温度300℃、荷重1.96MPa、オリフィス長とオリフィス径との、前者/後者の比が10/1であるオリフィスを使用して6分間保持した後に測定した。結果を表1~3に示す。
<実施例1>
工程(1)
圧力計、温度計、コンデンサ-を連結した撹拌翼および底弁付き150Lオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.3質量%NaS)19.413kgと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)45.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら209℃まで昇温して、水4.644kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.13モル)。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、パラジクロロベンゼン22.185kg及びNMP18.0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いてゲージ圧で0.1MPaに加圧して昇温を開始した。液温260℃で3時間攪拌しつつ反応を進め、オートクレーブ上部を散水することにより冷却した。次に降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保持した。反応中の最高圧力は、0.85MPaであった。
工程(2)
反応後、冷却し、温度170℃の時点でシュウ酸2水和物0.471kg(スルフィド化剤に対して2.5モル%、3.7モル)をNMP1.099kgに含む溶液を加圧注入した。30分間撹拌後、100℃に冷却した。
工程(3)
100℃に冷却した反応スラリーを150L平板ろ過機に移送し120℃で加圧ろ過したのち、NMP16kgを加え、加圧ろ過した。ろ過後、撹拌翼付き150L真空乾燥機を用いて、減圧下150℃で2時間撹拌してNMPを除去し、粉末状のPAS樹脂と塩類の混合物(B-1)を得た。
工程(4)
PPS樹脂と塩類の混合物(B-1)417gに70℃のイオン交換水1000gを加え、20分間撹拌したのちろ過した。同様の操作を2回繰り返した。
工程(5)
得られた含水ケーキとイオン交換水600g、水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)10g(スルフィド化剤に対して0.080モル%、119ミリモル)を撹拌機付き1Lオートクレーブに仕込み160℃で3時間撹拌を行った。室温にまで冷却後、ろ過して、ろ液のpHが7.6であることを確認した。得られた含水ケーキに70℃のイオン交換水800gを加え、ろ過した。得られた含水ケーキを120℃の熱風循環乾燥機で6時間乾燥して白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<実施例2>
工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を30g(スルフィド化剤に対して0.246モル%、364ミリモル)、ろ液のpHが10.7であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<実施例3>
工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を67g(スルフィド化剤に対して0.547モル%、809ミリモル)、ろ液のpHが11.2であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<実施例4>
工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を133g(スルフィド化剤に対して1.082モル%、1601ミリモル)、ろ液のpHが11.5であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<実施例5>
工程(5)の塩基として水酸化カルシウム水溶液(0.17質量%Ca(OH)2)を用い、9.07kg(スルフィド化剤に対して0.141モル%、208ミリモル)、ろ液のpHが10.4であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂組成物を得た。
<実施例6>
工程(2)の酸として酢酸を用い、0.858kg(スルフィド化剤に対して9.5モル%、14.3モル)を加圧注入し、工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を17g(スルフィド化剤に対して0.138モル%、205ミリモル)、ろ液のpHが9.8であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂組成物を得た。
<実施例7>
工程(2)の酸としてクエン酸1水和物を用い、0.473kg(スルフィド化剤に対して1.5モル%、2.3モル)をNMP0.663kgに含む溶液を加圧注入し、工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を10g(スルフィド化剤に対して0.080モル%、119ミリモル)、ろ液のpHが7.6であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂組成物を得た。
<比較例1>
工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を1g(スルフィド化剤に対して0.008モル%、11ミリモル)、ろ液のpHが6.4であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<比較例2>
工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を667g(スルフィド化剤に対して5.411モル%、8008ミリモル)、ろ液のpHが12.6であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<比較例3>
工程(1)
圧力計、温度計、コンデンサ-を連結した撹拌翼および底弁付き150Lオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.3質量%NaS)19.413kgと、NMP45.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら209℃まで昇温して、水4.644kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.13モル)。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、パラジクロロベンゼン22.185kg及びNMP18.0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いてゲージ圧で0.1MPaに加圧して昇温を開始した。液温260℃で3時間攪拌しつつ反応を進め、オートクレーブ上部を散水することにより冷却した。反応中の最高圧力は、0.85MPaであった。
工程(2)
反応後、冷却し、温度170℃の時点でシュウ酸2水和物0.471kg(スルフィド化剤に対して2.5モル%、3.7モル)をNMP1.099kgに含む溶液を加圧注入した。30分間撹拌後、100℃に冷却した。
工程(3)
100℃に冷却後、オートクレーブの底弁を開いて、減圧状態のまま撹拌翼付き150L真空撹拌乾燥機に反応スラリーを抜き取り、続いて、減圧下150℃で2時間撹拌してNMPを十分除去し、粉末状のPPS樹脂と塩類との混合物を得た。
工程(4)
該混合物417gに70℃のイオン交換水1000gを加え、20分間撹拌したのちろ過する工程を2回繰り返した。
工程(5)
得られた含水ケーキと、イオン交換水600g、水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)133g(スルフィド化剤に対して1.082モル%、1601ミリモル)を撹拌機付き1Lオートクレーブに供給し、160℃で30分間撹拌した。室温にまで冷却後、ろ過して、ろ液のpHが11.5となることを確認した。得られた含水ケーキに70℃のイオン交換水800gを加え、ろ過した。得られた含水ケーキを120℃の熱風循環乾燥機で6時間乾燥して白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<比較例4>
工程(2)においてシュウ酸2水和物を添加せず、工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を3g(スルフィド化剤に対して0.022モル%、32ミリモル)、ろ液のpHが11.0であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂を得た。
<比較例5>
工程(2)のシュウ酸2水和物2.269kg(スルフィド化剤に対して12.0モル%、18.0モル)をNMP5.297kgに含む溶液を加圧注入し、工程(5)の水酸化ナトリウム水溶液(48質量%NaOH)を67g(スルフィド化剤に対して0.541モル%、801ミリモル)、ろ液のpHが10.5であること以外は実施例1と同様に行い、白色粉末状のPPS樹脂を得た。
Figure 2024021683000001

Figure 2024021683000002


Figure 2024021683000003

表1~3の結果から、実施例で得られた樹脂は比較例により得られた樹脂と対比して、低い再結晶化温度と高い反応性を両立して有することが認められた。

Claims (3)

  1. 有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、ポリアリーレンスルフィド樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程(1)、
    前記粗反応混合物に酸を添加する工程(2)、
    前記粗反応混合物をクウェンチ法により固液分離し、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂及びアルカリ金属ハロゲン化物を含む固相成分(A)を得る工程(3)、
    前記固相成分(A)を洗浄し、アルカリ金属ハロゲン化物を除去して少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂を含む固相成分(B)を得る工程(4)、
    前記固相成分(B)に塩基を添加して熱水洗し、pH7.0~12.0の混合物(C)を得る工程(5)を有する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  2. 前記混合物(C)に含まれるポリアリーレンスルフィド樹脂の末端カルボキシ基が10~100〔μmol/g〕の範囲である、請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  3. 前記混合物(C)に含まれるポリアリーレンスルフィド樹脂の末端金属塩が5~30〔μmol/g〕の範囲である、請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
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