JP2024021109A - 硬化性樹脂組成物、プリプレグシート、積層シート及び部材を補修又は補強する方法 - Google Patents

硬化性樹脂組成物、プリプレグシート、積層シート及び部材を補修又は補強する方法 Download PDF

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Pengfei Wang
哲治 諸岩
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Abstract

【課題】部材に対して高い密着性を発現することができる硬化性樹脂組成物等を提供すること。【解決手段】本発明の一態様によれば、硬化性樹脂組成物が提供される。この硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合成分を含有するベース樹脂(A)と、ラジカル発生剤(B)と、を含む。ベース樹脂(A)全体における、以下の化学式(1)で示される骨格の含有割合が1.8mol/kg以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性樹脂組成物、プリプレグシート、積層シート及び部材を補修又は補強する方法に関する。
従来、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)を成形した部材を補強等するために、他の樹脂材料を組み合わせる技術が知られている。たとえば、特許文献1には、塩化ビニル樹脂成形体を、接着、補強するのに好適な不飽和ポリエステル樹脂組成物が記載されている。
特開昭62-205154号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の樹脂組成物であっても依然としてポリ塩化ビニル等により構成される部材に対する密着性に改善の余地があることがわかってきた。
本発明では上記事情に鑑み、部材に対して高い密着性を発現することができる硬化性樹脂組成物等を提供することとした。
本発明の一態様によれば、硬化性樹脂組成物が提供される。この硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合成分を含有するベース樹脂(A)と、ラジカル発生剤(B)と、を含む。ベース樹脂(A)全体における、以下の化学式(1)で示される骨格の含有割合が1.8mol/kg以上である。
上記態様によれば、部材に対して高い密着性を発現することができる硬化性樹脂組成物等が提供される。
本実施形態にかかるプリプレグシートを備える積層シートの断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタアクリレート」の双方を包含する概念を表す。また、本明細書中の「~」はとくに断りがなければ以上から以下を表す。
[硬化性樹脂組成物]
まず、本実施形態の硬化性樹脂組成物について説明する。
本実施形態の硬化性樹脂組成物は以下に示されるものである。
硬化性樹脂組成物であって、
ラジカル重合成分を含有するベース樹脂(A)と、光ラジカル発生剤(B)と、を含み、
前記ベース樹脂(A)全体における、以下の化学式(1)で示される骨格の含有割合が1.8mol/kg以上である、硬化性樹脂組成物。
以下、本実施形態の硬化性樹脂組成物に必須又は任意に含まれる成分について説明する。
(ラジカル重合成分を含有するベース樹脂(A))
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合成分を含有するベース樹脂(A)(以下、単に「ベース樹脂(A)」とも称す。)を含む。
このベース樹脂(A)に含有される硬化成分は、典型的にはその化学構造の中にラジカル重合性基(典型的には炭素-炭素の不飽和結合)が含まれる化合物であり、公知の材料の中から適宜選択して用いればよい。
より具体的には、ベース樹脂(A)は、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂のような樹脂成分を含み得る。
なお、本明細書においてベース樹脂(A)は、硬化後(重合後)に樹脂マトリクスとして取り込まれる成分も包含される。すなわち、ベース樹脂(A)は、ラジカル重合性モノマーや、このラジカル重合性モノマーの多量体を含むことができる。
なお、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、前述の密着性に関する効果を発揮させやすい観点から、ベース樹脂(A)は、化学式(1)で示される骨格を含む樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂を含むことが好ましい。
同様に、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、前述の密着性に関する効果を発揮させやすい観点から、ベース樹脂(A)は、化学式(1)で示される骨格を含む重合性モノマーとして、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
以下、このベース樹脂(A)に含まれ得る各種成分について説明を続ける。
・不飽和ポリエステル樹脂
本実施形態における不飽和ポリエステル樹脂は、一例において、例えば、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸及びグリコール類を公知の脱水縮合反応により得ることができ、通常、2~40mg-KOH/gの酸価を有することができる。不飽和ポリエステル樹脂の製造において、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸の酸成分の選択や組合せ、及びグリコール類の選択や組合せ、それらの配合割合等を適宜選択することにより所望の不飽和ポリエステル樹脂とすることができる。
不飽和多塩基酸類は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、グルタコン酸等を挙げることができる。
飽和多塩基酸類は、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等を挙げることができる。
グリコール類は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、シクロヘキサンジメタノール、ジブロムネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
ただし、前述の化学式(1)で示される骨格を当該不飽和ポリエステル樹脂に包含させる観点からは、このグリコール類として、ネオペンチルグリコールを含むことが望ましい。
本実施形態においては、不飽和ポリエステル樹脂の中でも、不飽和多塩基酸としてフマル酸や無水マレイン酸、飽和多塩基酸としてイソフタル酸やテレフタル酸が使用され、グリコールとして主成分にネオペンチルグリコールを使用した不飽和ポリエステル樹脂が好適である。
・ウレタン(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールとジイソシアネートとを反応させた分子末端のイソシアネート、および/または一分子中に1個以上のイソシアネートに、アルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物を反応させることで得ることができる樹脂である。
または、まずアルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物とジイソシアネートとをイソシアネート基が残るように反応させ、残ったイソシアネート基と一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールとを反応させて得ることができる樹脂である。
ウレタン(メタ)アクリレートの製造において、イソシアネートと、ポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールの組み合わせ、及びアルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物を適宜選択する事により、樹脂の物性を調整することができる。
上記アルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
また、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールには、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等を用いることができる。
また、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールには、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等のポリアルコールと、アジピン酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多塩基酸との脱水縮合反応から得られる分子量1000~2000の飽和ポリエステルポリオールを用いることができる。
また、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールには、エチレンオキシド或いはプロピレンオキシドの開環反応により得られる分子量300~2000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール類又は、カプロラクトンの開環反応で得られるポリカプロラクトン等を用いることができる。
これらは、単独または2種類以上を併用して使用することができる。
上記一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、芳香族及び/又は脂肪族ポリイソシアネート化合物が用いられ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2官能イソシアネート化合物が3量化されたイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート、市販されているポリオールで変性されたイソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。
これらは単独または2種類以上を混合して用いることができる。
ただし、前述の化学式(1)で示される骨格を当該ウレタン(メタ)アクリレート樹脂に包含させる観点からは、ポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールの組み合わせとして、ネオペンチルグリコール又はその誘導体を含むことが望ましい。
・エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、公知の方法で製造することができる。たとえば、公知の禁止剤、公知のエステル化触媒の存在下又は非存在下、不活性ガス気流中又は空気雰囲気下にてエポキシ樹脂、及び不飽和一塩基酸を適宜選択することにより所望のエポキシ(メタ)エポキシアクリレート樹脂とすることができる。必要に応じて反応系の溶融粘度を下げる目的で他のラジカル重合性モノマーや有機溶剤を入れて反応させることができる。なお、本エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は「ビニルエステル樹脂」と称することもできる。
本実施形態におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、一例として、例えば、1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂にアクリル酸またはメタクリル酸を付加反応させて得られる分子末端にアクリレートまたはメタクリレートの二重結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂とすることができる。
上記1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等、あるいはこれらの誘導体からのビスフェノール型エポキシ樹脂;ビキシレノールおよびその誘導体からのビキシレノール型エポキシ樹脂;ビフェノールおよびその誘導体からのビフェノール型エポキシ樹脂;あるいはナフタレンおよびその誘導体からのナフタレン型エポキシ樹脂;さらにはノボラック型エポキシ樹脂などの芳香環を含むエポキシ樹脂であってよい。
また、1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等の脂肪鎖又は脂環を構造中に有するポリオールのグリシジルエーテル体であってもよい。
これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。エポキシ樹脂の分子量の目安になるエポキシ当量は80~2000eq/gのものが好ましい。
また、前述の化学式(1)で示される骨格を当該エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に包含させる観点からは、このエポキシ樹脂として、ネオペンチルグリコールのグリシジルエーテル体を含むことが望ましい。
・ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、ポリエステルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸とのエステル化によって得られる樹脂である。
あるいは、酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの反応により得られる樹脂であってもよい。
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の製造において、ポリエステルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸、あるいは酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートを適宜選択する事によりポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の特性を調整することができる。
・ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、ポリエーテルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸とのエステル化によって得られる樹脂である。
あるいは、酸末端ポリエーテルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの反応により得られる樹脂であってもよい。
ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂の製造において、ポリエーテルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸、あるいは酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートを適宜選択する事によりポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の特性を調整とすることができる。
・ラジカル重合性モノマー等
本実施形態におけるラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、ラジカル重合性モノマーは、常温(25℃)で固体のモノマー、常温(25℃)で液体のモノマーのいずれであってもよい。
また、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、上述したラジカル重合性モノマーの多量体をベース樹脂(A)として含んでもよい。この例としては、ジアリルフタレートプレポリマー、タイクプレポリマー、エポキシプレポリマー、ウレタンプレポリマー、アクリレートプレポリマー等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物全体におけるベース樹脂(A)の含有割合は、たとえば70質量%以上99.9質量%以下であり、好ましくは80質量%以上99.7質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上99.5質量%以下である。
このような範囲に設定することにより、樹脂の硬化性と、硬化後の機械特性とのバランスを取りやすくなる。
なお、ベース樹脂(A)が樹脂成分を含む場合、その含有量は、ベース樹脂(A)全体を100質量部としたときに、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。樹脂成分の含有量についてこのような範囲に設定することでプリプレグシートを整形した場合の成形性が向上する。
なお、ベース樹脂(A)全体を樹脂成分とすることもできるが、樹脂成分の含有量は、ベース樹脂(A)全体を100質量部としたときに、95質量部以下や90質量部以下とすることもできる。
なお、ベース樹脂(A)がラジカル重合性モノマーを含む場合、その含有量は、ベース樹脂(A)全体を100質量部としたときに、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。ラジカル重合性モノマーの含有量についてこのような範囲に設定することで施工の際の作業性が向上する。
なお、ベース樹脂(A)全体をラジカル重合性モノマーとすることもできるが、ラジカル重合性モノマーの含有量は、ベース樹脂(A)全体を100質量部としたときに、95質量部以下や90質量部以下とすることもできる。
本実施形態の硬化性樹脂組成物においては、ベース樹脂(A)全体における、前述の化学式(1)で示される骨格の含有割合が1.8mol/kg以上であるという特徴を有する。
本発明者らの検討によれば、このように化学式(1)で示される骨格の含有割合を向上させることにより、部材(とくにポリ塩化ビニル樹脂で構成される部材)に対しての密着性が飛躍的に向上することを見出している。
ここで、化学式(1)で示される骨格の含有割合の数値は以下のように求めることができる。
すなわち、ベース樹脂(A)を合成するにあたって用いられる各種原料に基づいて、得られるベース樹脂(A)の総重量を算出する。この算出した重量によって、化学式(1)を構成しうる原料(典型的にはネオペンチルグリコール)の使用モル数を除することで上述の含有割合を計算することができる。
なお、ベース樹脂(A)として上述のような不飽和ポリエステル樹脂を用いる場合は、エステル化反応の際に生じる水の量を、ベース樹脂(A)の重量から控除することで、この骨格の含有割合を計算することができる。
前述の特許文献1の実施例に開示される組成(特許文献1実施例1等)について同様の計算を行っても、この骨格の含有割合は1.6程度に留まり、本願で特定する値には及ばないものである。
このような化学式(1)で示される骨格の含有割合の数値を満たすためには、前述の樹脂としてネオペンチルグリコールに由来する樹脂を用い、合成時のネオペンチルグリコールの量を増加させる等の対応を取ればよい。または、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の、構造中に化学式(1)で示される骨格を有する重合性モノマーを所定量用いることで上記の数値を満たすことも可能である。
化学式(1)で示される骨格の含有割合は1.85mol/kg以上であることが好ましく、1.9mol/kg以上であることがより好ましく、1.95mol/kg以上であることがさらに好ましく、2mol/kg以上であることがいっそう好ましい。
上限値はとくに制限されるものではないが、一例としては、5mol/kg以下であってもよい。
(ラジカル発生剤(B))
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、ラジカル発生剤(B)を含む。
すなわち、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、ラジカル発生剤(B)がラジカルを発生させ、前述したベース樹脂(A)を重合させることで硬化することとなる。なお、このラジカル発生剤(B)としては、光ラジカル発生剤(B1)や熱ラジカル発生剤(B2)、レドックス開始剤(B3)等が例示される。
この光ラジカル発生剤(B1)は公知の材料の中から適宜選択して用いればよい。なお、露光の際の波長も任意であるが、光源となる装置が廉価となり、材料の取り扱い性も容易になることから、光ラジカル発生剤(B1)は、紫外線領域に吸収ピークがある化合物を含むことが好ましい。
この光ラジカル発生剤(B1)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等が挙げられる。
熱ラジカル発生剤(B2)としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート等の有機過酸化物;2,2'-アゾビス-イソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
レドックス開始剤(B3)は、低温でラジカルを発生させることができる剤の組み合わせを指す。
レドックス開始剤(B3)としては、パーメックN〔商品名、メチルエチルケトンパーオキサイド、日油(株)〕と、ナフテン酸コバルトやオクテン酸コバルト等のコバルト化合物と、の組み合わせ;パークミルH〔商品名、クメンヒドロパーオキサイド、日油(株)〕と、五酸化バナジウム等のバナジウム化合物と、の組み合わせ;ナイパーBMT〔商品名、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド+ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド+ジベンゾイルパーオキサイド、日油(株)〕と、ジメチルアニリンとの組み合わせ;ナイパーPMB〔商品名、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、日油(株)〕と、ジメチルアニリンと、の組み合わせ;ナイパーBW〔商品名、ジベンゾイルパーオキサイド、日油(株)〕と、ジメチルアニリンと、の組み合わせ等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物における光ラジカル発生剤(B)の含有量は、ベース樹脂(A)の含有量を100質量部としたときに0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上8質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
このような範囲に設定することにより、組成物の硬化性と、硬化後の機械特性とのバランスを取りやすくなる。
(その他の成分)
なお、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の樹脂;揺変剤;揺変助剤;シリカ等のフィラー;ジブチルスズラウレート等の各種触媒(スズ触媒等);シランカップリング剤;増感剤;緑、赤、青、黄、および黒等の染料、黒色顔料等の顔料、色素からなる群から選択される一種以上を含む着色剤;低応力剤;消泡剤;レベリング剤;発泡剤、;酸化防止剤;イオン捕捉剤;ゴム成分等の上記の成分以外の添加剤を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、配合量も任意である。
なお、上述の揺変剤としては、有機系揺変剤と無機系揺変剤のいずれも用いることができる。有機系揺変剤としては、植物油脂肪酸とアミンより合成される脂肪酸アミド類(アマイドワックス系);水素添加ひまし油系;酸化ポリエチレン系;重合油系;界面活性剤系;尿素変性化合物が含まれ得る。無機系揺変剤としては、ベントナイト類、タルク、マイカ等の粘土鉱物等が含まれ得る。これらの揺変剤の配合量は目的に合わせて適宜設定される。
揺変助剤は、たとえばポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体、ポリカルボン酸アマイド誘導体、ポリエーテルリン酸エステル誘導体であってよい。
ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体としては、たとえば、BYK-R 606(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)等を使用することができる。ポリカルボン酸アマイド誘導体としては、たとえば、BYK-405、及びBYK-R 605等(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)等を使用することができる。ポリエーテルリン酸エステル誘導体としては、たとえば、ディスパロン3500(楠本化成株式会社製、商品名)等を使用することができる。
その他、揺変助剤の具体的な例としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、ベタイン型界面活性剤のほか、ポリエチレングリコールが挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等を使用することができる。カチオン界面活性剤としては、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩等を使用することができる。ノニオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等を使用することができる。ベタイン型界面活性剤としては、アミノ酸等を使用することができる。
なお、揺変助剤としてポリエチレングリコールを用いる際の平均分子量は任意であるが、一例としては200以上1500以下に設定することができ、250以上1000以下と設定することもできる。
また、上述のフィラーとしては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が含まれ得る。これらフィラーは単独で用いても複数種を組み合わせて用いてもよく、その粒径や配合量は任意で設定することができる。
(硬化性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、上述した各材料を混合することによって製造することができる。
たとえば、各材料について、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて混合することによって、所定の硬化性樹脂組成物が得られる。
混合の際の温度条件や、撹拌条件等は使用する材料に応じて適宜設定すればよい。
(硬化性樹脂組成物の用途)
本実施形態の硬化性樹脂組成物は種々の用途に用いることができるが、たとえば後述するプリプレグシートを得ることによって部材の補修又は補強に用いられる。この部材の種類は、とくに制限されるものでなく、たとえば、金属、セラミック、樹脂、鉱物等種々の材料により構成される部材であってよいが、典型的には、硬化性樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルにより構成される部材の補修又は補強に用いられる。
[プリプレグシート]
続いて、本実施形態のプリプレグシート及びその製造方法について説明する。
本実施形態のプリプレグシートは、繊維基材に、硬化性樹脂組成物を含浸させてなるものである。典型的には、本実施形態のプリプレグシートは、以下の工程によって製造される。
(Sa1)繊維基材と、硬化性樹脂組成物とを準備する
(Sa2)繊維基材に硬化性樹脂組成物を含浸させる
すなわち、前述した繊維基材と、硬化性樹脂組成物を工程(Sa1)にて準備した上で、工程(Sa2)において硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させることでプリプレグシートが得られる。
必ずしもこのような態様に限定されないが、この含浸を行うに際しては、典型的には硬化性樹脂組成物を無溶媒にて繊維基材に含浸させる。なお、硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸をさせるにあたっては、ローラーを用いて硬化性樹脂組成物の粘度を下げたり、硬化性樹脂組成物を加熱することでその粘度を下げたりする手法を採用することもできる。
<繊維基材>
プリプレグシート中の繊維基材は公知のものを採用することができ、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ボロン繊維、バサルト繊維、セルロース等を用いることができる。また、強化繊維の表面処理剤、形状(一方向、クロス、NCF、不織布等)についても適宜設定の上、使用することができる。
この繊維基材の中でも、本実施形態のプリプレグシートにおいては、繊維基材が、ガラス繊維である場合が好ましい。このような態様を採用することにより、硬化後のプリプレグシートの強度や透明性等を高い水準とすることができる。
本実施形態のプリプレグシート全体における繊維基材の含有割合は、たとえば10質量%~90質量%とすることができ、機械特性と成形性の面から、好ましくは20質量%~80重量%とすることができる。
一方、本実施形態のプリプレグシート全体における硬化性樹脂組成物の含有割合は、たとえば10質量~90質量%とすることができ、機械特性と成形性の面から、好ましくは20質量~80重量%とすることができる。
[積層シート]
続いて、プリプレグシートのより具体的な用途について説明する。
本実施形態のプリプレグシートは、一態様において積層シートとして取引され、部材の補修や補強を行うに際して用いられる。この部材として用いることのできる材料は前述した通りである。
図1は、本実施形態にかかるプリプレグシートを備える積層シートの断面図である。本実施形態の積層シートは、例示的にはプリプレグシートと、プリプレグシートの少なくとも一方の面に配された、透光性を有するシートと、を備える。
詳述すると、図1に示された積層シート10は、プリプレグシート11を中央に備え、一方の面には第1のシート12、他方の面には第2のシート13を備える。図1の積層シート10においては、第1のシート12および第2のシート13のうち少なくとも一方が透光性を有するシートである。
なお、図1に示された積層シート10は、各々のシートが面一となっている形状であるが、必ずしもこのような形状である必要はなく、第1のシート12及び/又は第2のシート13が、プリプレグシート11の縁部よりも外方向に突出していても構わない。
このような積層シート10を用いた部材を補修又は補強する方法について、一例として、硬化性樹脂組成物が光により硬化する組成物であり(典型的には、ラジカル発生剤(B)として光ラジカル発生剤(B1)を含んでおり)、かつ、第1のシート12が透光性を有するシートであるものとして説明をする。
すなわち、本実施形態の部材を補修又は補強する方法は、以下の工程に沿って行われる。
(Sb1)積層シート10を準備する
(Sb2)第2のシート13を剥離する
(Sb3)補修又は補強する部材の面に対して、積層シート10に備えられるプリプレグシート11を対向するように配置し、部材の面にプリプレグシート11をラミネートする
(Sb4)第1のシート12(透光性を有するシート)を介して、プリプレグシート11に露光する
(Sb5)露光後に第1のシート12を剥離する
まず、工程(Sb1)の積層シート10の準備について説明する。
本実施形態の部材を補修又は補強する方法において、積層シート10のうち第1のシート12は透光性を有するシートである。この透光性を有するシートは公知の材料の中から設定することができるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(PET等)で構成されるシートやフィルムであってよい。
なお、本明細書において「シート」という用語は、「フィルム」という用語とともに、とくに厚さなどを制限せず、膜状ないし薄い板状となっている材を包括的に指すものとする。以下の範囲に制限されるものではないが、プリプレグシート11、第1のシート12および第2のシート13は、それぞれ厚さ10μm以上1mm以下の範囲である態様が例示される。
また積層シート10のうち第2のシート13は、透光性を有していても有していなくてもよい(すなわち、遮光性を有するシートやフィルムであってもよい)。なお、本実施形態のプリプレグシート11が光硬化性樹脂組成物を含んでいる場合は、この硬化を妨げるために光を透過させない材料を用いることも取り得る態様である。また、一態様においては、積層シート10に、この第2のシート13を設けず、後述する工程(Sb2)を実施しないことプロセスを構築することもできる。
なお、積層シート10における第1のシート12および第2のシート13は、その剥離性を向上させるために表面処理が行われていても構わない。また、積層シート10を得るにあたっては、前述したプリプレグシート11を準備の上、公知の手法により各々のフィルムを積層させればよい。
続く工程(Sb2)においては、上述した積層シート10から、第2のシート13を剥離する。
工程(Sb3)においては、補修又は補強する部材の面に対して、積層シート10に備えられるプリプレグシート11を対向するように配置し、部材の面にプリプレグシート11をラミネートする。
この工程のラミネート方法は公知の手法を採用すればよいが、典型的には、外力(脱泡ローラーでの貼り付けや脱泡操作)をかけることで行われる。
続いて、工程(Sb4)にて、第1のシート12を介して、プリプレグシート11に露光する。なお、この露光に用いる光の波長は光ラジカル発生剤(B1)の種類に応じて適宜選択すればよい。
最後に、工程(Sb5)にて、第1のシート12を剥離し、補修又は補強された部材を得ることができる。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
(1)硬化性樹脂組成物であって、ラジカル重合成分を含有するベース樹脂(A)と、ラジカル発生剤(B)と、を含み、前記ベース樹脂(A)全体における、以下の化学式(1)で示される骨格の含有割合が1.8mol/kg以上である、硬化性樹脂組成物。
(2)上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物において、前記ベース樹脂(A)は、前記化学式(1)で示される骨格を含む樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂を含む、硬化性樹脂組成物。
(3)上記(1)又は(2)に記載の硬化性樹脂組成物において、前記ベース樹脂(A)は、前記化学式(1)で示される骨格を含む重合性モノマーとして、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを含む、硬化性樹脂組成物。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物において、ポリ塩化ビニルにより構成される部材の補修又は補強に用いられる、硬化性樹脂組成物。
(5)プリプレグシートであって、繊維基材に、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含浸させてなる、プリプレグシート。
(6)積層シートであって、上記(5)に記載のプリプレグシートと、前記プリプレグシートの少なくとも一方の面に配された、透光性を有するシートと、を備え、前記硬化性樹脂組成物は、前記ラジカル発生剤(B)として、光ラジカル発生剤(B1)を含む、積層シート。
(7)部材を補修又は補強する方法であって、上記(6)に記載の積層シートを準備することと、補修又は補強する前記部材の面に対して、前記積層シートに備えられる前記プリプレグシートを対向するように配置し、前記部材の面に前記プリプレグシートをラミネートすることと、透光性を有する前記シートを介して、前記プリプレグシートに露光することと、を備える、部材を補修又は補強する方法。
もちろん、この限りではない。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
[合成例1]
攪拌機、分留装置、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、プロピレングリコール90質量部、ネオペンチルグリコール234質量部、イソフタル酸213質量部を添加し、攪拌しながら215℃まで昇温した。215℃で内容物の酸価が20mgKOH/g以下になったら、100℃まで冷却し、無水マレイン酸189質量部を添加し215℃まで昇温した。215℃で8時間反応させ、酸価が10mgKOH/gの不飽和ポリエステル樹脂を得た。なお、本実施例項において、得られた樹脂を「樹脂(A-1)」と略記する。
[実施例1:硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、加熱装置を備えた遮光容器に、合成例1で得た樹脂(A-1)63質量部、反応性モノマーとしてスチレンモノマー37質量部、12%オクテン酸コバルト溶液0.25質量部、パーメックN〔商品名、メチルエチルケトンパーオキサイド、日油(株)〕1質量部を添加し、撹拌することにより硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は2.22[mol/kg]である。
[比較例1:硬化性樹脂組成物の調製]
実施例1の樹脂成分(樹脂(A-1)63質量部、スチレンモノマー37質量部)について、樹脂(A-1)45.8質量部、スチレンモノマー54.2質量部とする以外は実施例1と同様の手法で硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は1.60[mol/kg]である。
[評価]
実施例1および比較例1で得られた各組成物については以下に沿って評価を行った。
すなわち、市販の灰色塩ビ板(3mm厚)をアセトンで脱脂した後、#200ガラスマットを塩ビ板の表面に置き、実施例1および比較例1の各組成物を含浸させ、24時間養生させた。硬化した樹脂とガラスマットの複合層を塩ビ板から剥離し、状態を観察することで接着状態を評価した。
結果、実施例1の場合は、塩ビ板の接着面にほぼ全面的に樹脂が残っているのに対し、比較例1の場合は塩ビ板の接着面には殆ど樹脂が残っていなかった。このことから、実施例1の組成物について、ポリ塩化ビニルに対しての接着性の高さが裏付けられるといえる。
[合成例2]
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(エポキシ当量188g/eq)342.3g、メタクリル酸156.7g、重合禁止剤トルハイドロキノン0.1g、エステル化触媒トリフェニルホスフィン1.0gを仕込み、反応温度110℃で酸価が2mgKOH/gになるまで付加反応させ、ビニルエステルを得た。なお、本実施例項において、得られた樹脂を「樹脂(A-2)」と略記する。
[実施例2:光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、加熱装置を備えた遮光容器に、合成例2で得た樹脂(A-2)60質量部、反応性モノマーとしてネオペンチルグリコールジアクリレート40質量部、光ラジカル発生剤としてIGM Resins B.V.製Omnirad 184(以下「O-184」と略記する。)0.4質量部を添加し、撹拌することにより光硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は1.88[mol/kg]である。
[実施例3:光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、加熱装置を備えた遮光容器に、ネオペンチルグリコールジアクリレート100質量部と、O-184 0.4質量部とを添加し、撹拌することにより光硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は4.71[mol/kg]である。
[実施例4:光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、加熱装置を備えた遮光容器に、樹脂(A-2)55質量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート45質量部、O-184 0.4質量部を添加し、撹拌することにより光硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は1.87[mol/kg]である。
[実施例5:光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、加熱装置を備えた遮光容器に、ネオペンチルグリコールジメタクリレート100質量部、O-184 0.4質量部を添加し、撹拌することにより光硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は4.16[mol/kg]である。
[比較例2:光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、加熱装置を備えた遮光容器に、樹脂(A-2)70質量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート30質量部、O-184 0.4質量部を添加し、撹拌することにより光硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は1.41[mol/kg]である。
[比較例3:光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、加熱装置を備えた遮光容器に、樹脂(A-2)70質量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート30質量部、O-184 0.4質量部を添加し、撹拌することにより光硬化性樹脂組成物を得た。このとき、ベース樹脂(A)中における化学式(1)で示される骨格の濃度は1.25[mol/kg]である。
[評価]
実施例2~5および比較例2、3で得られた各組成物については以下に沿って評価を行った。
すなわち、市販の灰色塩ビ板(3mm厚)をアセトンで脱脂した後、#200ガラスマットを塩ビ板の表面に置き、実施例2~5および比較例2、3の各組成物を含浸させ、その後、透明ポリプロピレンフィルムを被せた。次いで、透明ポリプロピレンフィルムを介して、UV露光し、樹脂を硬化させた。硬化した樹脂とガラスマットの複合層を塩ビ板から剥離し、状態を観察することで接着状態を評価した。
結果、実施例2~5の場合は、塩ビ板の接着面にほぼ全面的に樹脂が残っているのに対し、比較例2、3の場合は塩ビ板の接着面には殆ど樹脂が残っていなかった。このことから、実施例2~5の組成物について、ポリ塩化ビニルに対しての接着性の高さが裏付けられるといえる。
以上の実施例の結果から、化学式(1)で示される骨格濃度を所定の数値に設定することで、部材に対して高い密着性を発現することができる硬化性樹脂組成物等が提供されることがいえる。
10 :積層シート
11 :プリプレグシート
12 :第1のシート
13 :第2のシート

Claims (7)

  1. 硬化性樹脂組成物であって、
    ラジカル重合成分を含有するベース樹脂(A)と、ラジカル発生剤(B)と、を含み、
    前記ベース樹脂(A)全体における、以下の化学式(1)で示される骨格の含有割合が1.8mol/kg以上である、硬化性樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の硬化性樹脂組成物において、
    前記ベース樹脂(A)は、前記化学式(1)で示される骨格を含む樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂を含む、硬化性樹脂組成物。
  3. 請求項1に記載の硬化性樹脂組成物において、
    前記ベース樹脂(A)は、前記化学式(1)で示される骨格を含む重合性モノマーとして、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを含む、硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1に記載の硬化性樹脂組成物において、
    ポリ塩化ビニルにより構成される部材の補修又は補強に用いられる、硬化性樹脂組成物。
  5. プリプレグシートであって、
    繊維基材に、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含浸させてなる、プリプレグシート。
  6. 積層シートであって、
    請求項5に記載のプリプレグシートと、
    前記プリプレグシートの少なくとも一方の面に配された、透光性を有するシートと、
    を備え、
    前記硬化性樹脂組成物は、前記ラジカル発生剤(B)として、光ラジカル発生剤(B1)を含む、積層シート。
  7. 部材を補修又は補強する方法であって、
    請求項6に記載の積層シートを準備することと、
    補修又は補強する前記部材の面に対して、前記積層シートに備えられる前記プリプレグシートを対向するように配置し、前記部材の面に前記プリプレグシートをラミネートすることと、
    透光性を有する前記シートを介して、前記プリプレグシートに露光することと、
    を備える、部材を補修又は補強する方法。
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