JP2024019906A - γ-アミノ酪酸の製造方法 - Google Patents

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Yoshikazu Isono
久子 渡辺
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Abstract

【課題】本発明の目的は、植物素材からGABAを効率よく富化できる技術を提供することである。【解決手段】植物の破砕物、搾汁、水抽出物及びそれらの濃縮物からなる群より選択される植物加工物中で、グルタミン酸脱炭酸酵素を産生する乳酸菌と酵母とを培養する工程を含むγ-アミノ酪酸の製造方法によれば、植物素材からGABAを効率よく富化できる。【選択図】なし

Description

本発明は、γ-アミノ酪酸の製造方法に関する。具体的には、本発明は、植物から得られる加工物を材料としてγ-アミノ酪酸を製造する方法に関する。
γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid,以下「GABA」とも記載する。)は、L-グルタミン酸からグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamate decarboxylase)による脱炭酸反応で生成する非タンパク性アミノ酸であり、生物界に微量ながら広く存在している。具体的には、GABAは、野菜、果実等の食品素材に含まれており、食生活の中で摂取されている成分の一つである。
GABAは、高等動物では、抑制系の神経伝達物質として働くことが判っている。また、GABAは、その生理的作用に関して、血管拡張による血圧低下(上昇抑制)作用(非特許文献1参照)をはじめとして、動脈硬化予防、肝機能改善、腎機能向上、精神安定などの作用を有することが報告されている(非特許文献2参照)。更に、GABAは、中性脂肪増加抑制作用(肥満防止作用);更年期障害症状緩和;記憶改善、学習能力増強などの脳機能改善作用;アルコール代謝促進などの様々な生理機能を有することも知られている(非特許文献3-5参照)。
このように有用な生理作用からGABAは機能性食品素材として注目されているが、食品素材中に含まれるGABAは非常に少なく、上記生理活性を果たすための有効量を食品から摂取することは従来困難であった。
そこで、食品素材中のGABA含有量を増加させる方法が検討されてきた。ラクトバシラス・ブレビス(レヴィラクトバシラス・ブレビス)、ラクトバシラス・プランタルム(ラクチプランチバシラス・プランタルム)などの乳酸菌が、グルタミン酸脱炭酸酵素を有し、食品素材中のグルタミン酸からGABAを生成する能力を有するものが報告されており(非特許文献6-8)、食品素材中のGABA含有量を増加させる方法においては、通常、乳酸菌が用いられ、さらに、培地にグルタミン酸や酵母エキスが添加される場合もある(特許文献1-5及び非特許文献9-11)。
食品素材中のGABA含量を増加させるために、発酵材料として、グルタミン酸含量が多い食品素材を用いることが、一見合理的である。中でもトマトに多くのグルタミン酸が含まれていることから、上記の発酵材料として選択されることがある。しかしながら、このようなトマトを用いた検討において、乳酸発酵においてBrix3%における濾液着色度が0.2より高いトマト処理物を発酵原料とする場合にGABAへの変換率が著しく低下すること(特許文献6)が示されているように、トマトを発酵材料として用いる場合には着色度が十分に低いものを用いる必要があるため、一般的に食品加工に用いるトマトピューレや濃縮トマトペーストを利用できず、グルタミン酸含量が多いというトマトの特性を有効利用できていない。
特開2000-210075号公報 特開2004-215529号公報 特開2003-333990号公報 特開2006-314207号公報 特開2007-289008号公報 特開2007-060990号公報
日本食品科学工学会誌、49、409-415、2002 大阪生物環境科学研究所レポート「GABA高濃度発酵エキス」(2002);上野義栄他、京都M&T総合センター情報、2001.6、研究報告) Psychopharmacology, 56, 127-132 (1978) 日本食品科学工学会誌、vol.47, 596-603 (2000) 食品と開発、63, 4-6 (2001) 生物工学会誌、vol.75, 239-244 (1997) Food Microbiology, vol.22 497-504 (2003) 生物工学会誌、vol.85, 109-114 (2007) J. Brew. Soc. Japan, Vol.98, No.3, p.221-224 (2003) Food Style, 21, 2003.3 (Vol.7, No.3), p.64-68 Food Style, 21, 2004.3 (Vol.8, No.3), p.64-68
植物素材は天然素材であり、発酵材料として用いられる態様のものは多種多様の成分を含む複雑な組成を構築しているため、単純にグルタミン酸が含まれているといっても、酵素が効率的に反応することは困難である。トマトの場合に至っては着色度の高い材料を用いて酵素反応させることができないため、酵素反応の効率性の悪さが顕著な植物素材といえる。このように、トマトをはじめとする植物素材からGABAを効率よく富化することは困難であった。
そこで本発明は、植物素材からGABAを効率よく富化できる技術を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、植物素材の乳酸菌発酵において、酵母を共培養することによって、GABAを効率よく富化できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 植物の破砕物、搾汁、水抽出物及びそれらの濃縮物からなる群より選択される植物加工物中で、グルタミン酸脱炭酸酵素を産生する乳酸菌と酵母とを培養する工程を含む、γ-アミノ酪酸の製造方法。
項2. 前記植物がトマトである、項1に記載の製造方法。
項3. 前記植物加工物のBrix3%の場合の着色度が0.2超である、項2に記載の製造方法。
項4. 前記乳酸菌がレヴィラクトバシラス(Levilactobacillus)属乳酸菌、ラクチプランチバシラス(Lactiplantibacillus)属乳酸菌、及びラクトコッカス(Lactococcus)属乳酸菌からなる群より選択される、項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項5. 前記乳酸菌が、レヴィラクトバシラス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)、ラクチプランチバシラス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)、及びラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からなる群より選択される、項1~4のいずれかに記載の製造方法。
項6. 前記酵母が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属酵母及びウィッカーハモマイセス(Wickerhamomyces)属酵母からなる群より選択される、項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項7. 前記酵母が、サッカロマイセス・シェルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、及びウィッカーハーモマイセス・アノマラ(Wickerhamomyces anomalus)からなる群より選択される、項1~6のいずれかに記載の製造方法。
項8. 項1~7のいずれかに記載の製造方法によって、γ-アミノ酪酸が富化された植物加工物を得る工程と、
前記γ-アミノ酪酸が富化された植物加工物を用いて飲食品を調理する工程と、を含む、飲食品の製造方法。
本発明によれば、植物素材からGABAを効率よく富化できる技術が提供される。
L.brevis SP48株単独培養の場合及びパン酵母共培養の場合の、濃縮トマトペーストを用いたGABA産生の経時変化を示す。 L.brevis SP48株単独培養の場合及び酵母共培養の場合の、濃縮トマトペーストを用いたGABA産生量を示す。 濃縮トマトペーストを用いたGABA産生における、SP48株以外のL.brevis株による酵母共培養効果を示す。 濃縮トマトペーストを用いたGABA産生における、L.brevis以外の乳酸菌種による酵母共培養効果を示す。 濃縮トマトペーストを用いたGABA産生における、グルタミン酸又は酵母エキスの有無による効果を示す。
1.γ-アミノ酪酸の製造方法
本発明のγ-アミノ酪酸の製造方法は、植物の破砕物、搾汁、水抽出物及びそれらの濃縮物からなる群より選択される植物加工物中で、グルタミン酸脱炭酸酵素を産生する乳酸菌と酵母とを培養する工程を含むことを特徴とする。以下、本発明のγ-アミノ酪酸の製造方法について詳述する。
当該培養する工程においては、典型的には、植物加工物、乳酸菌、及び酵母を水中に含む植物加工物混合物を、乳酸菌及び酵母の培養条件に供する。
1-1.植物加工物
本発明で用いられる植物加工物は、植物の破砕物、搾汁、水抽出物及びそれらの濃縮物からなる群より選択される。
植物としては、グルタミン酸を含むものであることを限度として特に限定されず、例えば、大豆、えだまめ、そらまめ、緑豆、小豆、かんぴょう、ニンニク、グリーンピース、ブロッコリー、からしな、トウモロコシ、ほうれんそう、カリフラワー、キャベツ、オクラ、グリーンアスパラガス、だいずもやし、ほうれんそう、だいこん、サラダナ、たけのこ、しゅんぎく、たまねぎ、かぼちゃ、にら、きゅうり、トマト、セロリ、こまつな、さやえんどう、いんげんまめ、はくさい、れんこん、なす、青ピーマン、かぶ、にんじん、レタス、ネギ、もやし、ごぼう、ながいも、じゃがいも、さといも、さつまいも、アボカド、メロン、キウイフルーツ、いちご、バナナ、スイカ、みかん、パイナップル、いちじく、ネーブル、グレープフルーツ、ぶどう、柿、すもも、うめ、もも、りんご、なし、しいたけ、マッシュルーム、えのきたけ、なめこ等が挙げられる。これらの植物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの植物の中でも、特に好ましくはトマトが挙げられる。
植物加工物の具体的形態である、破砕物、搾汁、水抽出物及びそれらの濃縮物は、食品加工分野における通常の加工処理により得られるものであればよい。破砕物又はその濃縮物の具体例としては、スラリー、ピューレ、及びペースト等が挙げられる。搾汁又はその濃縮物の具体例としては、果汁及び野菜汁の、ストレート汁、濃縮汁、及び濃縮還元汁等が挙げられる。水抽出物としては、非加熱水により抽出されたもの、及び加熱水(熱水等)により抽出されたものが挙げられる。さらに、濃縮物としては、少なくとも部分的に水分が除去されている物であればよく、上述のものの他にも、乾燥物(凍結乾燥品、スプレードライ品)も挙げられる。
本発明のγ-アミノ酪酸の製造方法は、本来的にGABA富化が困難な着色度が高い植物加工物であっても効果的にGABAを富化することができる。従って、本発明における植物加工物の好適な例として、着色度が高い植物加工物が挙げられる。このような植物加工物の具体的な着色度としては、Brix3%の場合の着色度が0.2超であるものが挙げられる。なお、Brix3%の場合の着色度は、具体的には、植物加工物が、Brix3%、且つ孔径0.45μmのメンブレンフィルターを通過できる水性液体として調製された場合、当該水性液体の450nmの吸光度として得られる値を指す。また、Brix値は、JAS規格に基づく、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度を指す。Brix3%の場合の着色度の下限は、0.201以上、0.3以上、又は0.35以上であってもよい。一方、Brix3%の場合の着色度の上限としては特に限定されないが、好ましくは3.0以下、好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下が挙げられる。
本発明における植物加工物の特に好適な例として、Brix3%の場合の着色度が0.2超であるトマトの加工物(好ましくはピューレ又はペースト、より好ましくはペーストが挙げられる)が挙げられる。
植物加工物混合物中における植物加工物の含有量としては特に限定されないが、Brix値で、例えば5%以上、好ましくは7%以上、より好ましくは8%以上、より好ましくは9%以上、さらに好ましくは9.2%以上が挙げられる。植物加工物混合物中における植物加工物の含有量の上限としては特に限定されないが、Brix値で、例えば20%以下、好ましくは17%以下、より好ましくは16%以下が挙げられる。
植物加工物は、培養条件に供される前に予め加熱殺菌されたものであることが好ましい。
1-2.乳酸菌
本発明で用いられる乳酸菌としては、グルタミン酸脱炭酸酵素を産生する乳酸菌であることを限度として特に限定されない。本発明で用いられる乳酸菌の具体例としては、例えば、レヴィラクトバシラス(Levilactobacillus)属乳酸菌、ラクチプランチバシラス(Lactiplantibacillus)属乳酸菌、及びラクトコッカス(Lactococcus)属乳酸菌等が挙げられる。レヴィラクトバシラス属乳酸菌としては、例えば、レヴィラクトバシラス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)、レヴィラクトバシラス・パラブレビス(Levilactobacillus parabrevis)等が挙げられる。ラクチプランチバシラス属乳酸菌としては、例えば、ラクチプランチバシラス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)、ラクチプランチバシラス・ペントサス(Lactiplantibacillus pentousus)等が挙げられる。ラクトコッカス菌としては、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)等が挙げられる。
これらの乳酸菌は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの乳酸菌の中でも、好ましくは、レヴィラクトバシラス・ブレビス、ラクチプランチバシラス・プランタラム、ラクトコッカス・ラクティスが挙げられる。
乳酸菌の形態は特に限定されず、液状、スラリー状、乾燥状等の形態のものを用いることができる。また、乳酸菌は、乾燥状のものを水中に分散させて用いてもよいし、前培養させたものを用いてもよい。
乳酸菌の使用量としては特に限定されないが、例えば、植物加工物混合物中に0.005~10重量%、好ましくは0.008~3重量%となる量で用いることができる。
1-3.酵母
本発明で用いられる酵母としては特に限定されないが、サッカロマイセス(Saccharomyces)属酵母、ウィッカーハモマイセス(Wickerhamomyces)属酵母等が挙げられる。サッカロマイセス属酵母としては、サッカロマイセス・シェルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)等が挙げられる。ウィッカーハモマイセス属酵母としては、ウィッカーハーモマイセス・アノマラ(Wickerhamomyces anomalus)等が挙げられる。
これらの酵母は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの酵母の中でも、好ましくは、サッカロマイセス・シェルビッシェ、サッカロマイセス・バヤヌス、ウィッカーハーモマイセス・アノマラが挙げられる。
酵母の形態は特に限定されず、液状、スラリー状、乾燥状等の形態のものを用いることができる。また、酵母は、乾燥状のものを水中に分散させて用いてもよいし、前培養させたものを用いてもよい。
酵母の使用量としては特に限定されないが、例えば、植物加工物混合物中に0.005~10重量%、好ましくは0.008~3重量%となる量で用いることができる。
1-4.培養条件
植物加工物混合物を乳酸菌及び酵母の培養条件に供することにより、培養中の酵母が、乳酸菌が産生するグルタミン酸脱炭酸酵素による植物加工物中のグルタミン酸からGABAへの変換反応を促進する。これによって、植物加工物混合物でGABAが製造される。つまり、GABAが富化された植物加工物が得られる。
植物加工物混合物を供する培養条件としては、用いた乳酸菌及び酵母が産生可能な条件等に基づいて、適宜設定することができる。例えば、培養のための温度としては、例えば20~40℃、好ましくは25~35℃が挙げられる。また、培養にかかる時間としては、例えば20~100時間、好ましくは24~72時間が挙げられる。
1-5.他の工程
本発明の製造方法は、上記培養する工程の他に、任意の他の工程を含むことができる。
他の工程の具体例としては、上記培養する工程の前に行う工程として、植物加工物、又は植物加工物の水希釈物を、加熱殺菌する工程が挙げられる。加熱殺菌の条件としては特に限定されず、食品の加熱殺菌において通常用いられる条件に基づいて適宜決定することができる。加熱殺菌の具体的な条件としては、例えば88~100℃で、10秒~35分が挙げられる。
他の工程の具体例としては、上記培養する工程の後に行う工程として、GABAが富化された植物加工物を、濃縮する工程、培養処理前の植物加工物で希釈する工程、冷凍する工程、及び/又は容器詰加熱殺菌する工程等が挙げられる。
2.飲食品の製造方法
上述の通り、γ-アミノ酪酸の製造方法によって、GABAが富化された植物加工物が得られる。このようにして得られた、GABAが富化された植物加工物は、様々な飲食品を製造するための機能性材料として用いることができる。従って、本発明は、上記の製造方法によって、γ-アミノ酪酸が富化された植物加工物を得る工程と、前記γ-アミノ酪酸が富化された植物加工物を用いて飲食品を調理する工程と、を含む、飲食品の製造方法も提供する。
飲食品としては、一般飲食品及び保健機能食品が挙げられる。保健機能食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等が挙げられる。本発明の製造方法により、GABAが豊富な飲食品を得ることが可能になるため、得られる飲食品には、GABAの機能性に基づく食品機能性表示を行うことができる。このような機能性表示としては、事務的な作業に伴う一時的な精神的ストレスを緩和する作用がある旨、血圧が高めの人に適した作用がある旨、さらに睡眠の質の向上に役立つ旨、加齢によって低下する認知機能の一部である記憶力の向上に役立つ旨等の機能的表示が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
[使用材料]
植物性加工物として、以下のトマトペーストを使用した。なお、トマトペーストの「Brix3%における着色度」は、トマトペーストをBrix3%となるように水で希釈した後、遠心分離(3000rpm×10分)、上清をハイフロスパーセルで濾過、及び孔径0.45μmのメンブレンフィルターろ過を行い、ろ液の450nmの吸光度として得られる測定値である。
Figure 2024019906000001
Figure 2024019906000002
Figure 2024019906000003
[グルタミン酸及びGABAの測定法]
サンプル中のグルタミン酸、GABAの測定は、LC-MS/MSを用い以下のように行った。
サンプル処理:サンプルは0.1%ギ酸(v/v)で希釈し、超音波による分散後、0.45μmのフィルターでろ過し、試料とした。
標準品:東京化成工業株式会社製のGABAおよびナカライテスク社株式会社製のグルタミン酸を用いた。
LC-MS/MS:Waters製AQUITY UPLC H-Class PLUSシステムおよびXevo TQ-S microシステムを用いた。
測定条件:Intrade Amino Acid 150×2 mm カラム(インタクト製)を用い、アセトニトリル/ギ酸(100/0.3(v/v))とアセトニトリル/ギ酸アンモニウム(20/80(v/v))のグラジエントで溶出させ、イオン化モードはESIポジティブで行った。
[グルタミン酸からGABAへの変換率]
グルタミン酸からGABAへの変換率(以下において、GABA変換率とも記載する。)は以下の式によって算出した。
Figure 2024019906000004
式中、[GABA]0は培養開始時のGABA濃度(mM)、[GABA]tは培養開始後t時点でのGABA濃度を表す。[Glu]0は培養開始時のグルタミン酸濃度(mM)を表す。
[GABA富化倍率]
酵母を用いずに乳酸菌のみを用いてトマト液を処理した場合に得られるGABA変換率を1とした場合の、GABA富化の評価対象となる実施例又は比較例において得られるGABA変換率の相対値を、GABA富化倍率として導出した。GABA富化倍率が1を超える場合にGABA富化効果が得られていると評価でき、GABA富化倍率が大きい程GABA富化効果に優れていると評価できる。
[試験例1]
ポルトガル産コールドブレークトマトペーストを水でBrix10%に希釈したトマト液を調製し、2本の1000ml容メディウム瓶にそれぞれ800g入れ、90℃、30分間殺菌した。殺菌済みトマト液2本のうち、一方には、200mgの乳酸菌レヴィラクトバシラス・ブレビスSP48を10mlの滅菌水に懸濁したもの4mlと、100mgのパン酵母を10mlの滅菌水に懸濁したもの4mlとを摂取し、30℃で72時間培養を行った(実施例1)。殺菌済みトマト液2本のうち、他方には、パン酵母を接種しなかったことを除いて同様の操作を行った(比較例1)。
Figure 2024019906000005
培養開始後0、16、24、39、48、63、及び72時間後に得られたトマト液のサンプリングを行い、グルタミン酸量、GABAの測定を行った。その結果を図1に示す。図1に示される通り、SP48株を単独で用いた場合(比較例1)は72時間後も多くのグルタミン酸が残存し、GABA産生量も40mg/100g程度であったのに対し、SP48株と酵母を併用した場合(実施例1)は、48時間でほぼグルタミン酸が270mg/100g程度から5mg/100g以下のレベルに顕著に減少し、GABA産生量が140mg/100gと顕著に増加し、高いGABA富化効果が確認できた。
[試験例2]
ポルトガル産コールドブレークトマトペーストを水で3倍希釈してトマト液(Brix9.27%)を調製し、90℃、30分間殺菌した。これにレヴィラクトバシラス・ブレビスSP48株を2×107CFU/mlとなるように摂取した。さらに、サッカロマイセス・シェルビッシェNBRC0210、NBRC1046、及びNBRC2347、サッカロマイセス・バヤヌスNBRC11022並びにウィッカーハーモマイセス・アノマラNBRC0146株をそれぞれぶどう糖ペプトン液体培地(日水製薬(株)製)で前培養したものを2重量%ずつとなるように、又はパン酵母を0.01g/100gになるよう接種し、30℃で72時間培養した。72時間後に得られたトマト液のGABA産生量及びGABA変換率、並びにGABA富化倍率を表5及び図2に示す。表5及び図2に示される通り、レヴィラクトバシラス・ブレビスSP48株を単独で用いた場合(比較例2)にはGABA産生量が21.7%であったことと比較して、酵母を併用した場合(実施例2~7)にはGABA変換率はいずれも70%を超え、顕著にGABA産生量が増加し、高いGABA富化効果が確認できた。
Figure 2024019906000006
[試験例3]
試験例2と同様に、ポルトガル産コールドブレークトマトペーストを水で希釈し、Brix9.26%のトマト液を調製し、90℃、30分間殺菌した。これにレヴィラクトバシラス・ブレビスmh4219、JCM1059、及びNBRC12520をそれぞれMRS broth (BIOKAR Diagnostics 製(仏))で前培養し、殺菌したトマト液に2重量%となるように接種した。さらに、パン酵母を0.01g/100gとなるように接種し、30℃で72時間培養を行った(実施例8~10)。また、パン酵母を接種しなかったことを除いて同様の操作を行った(比較例3~5)。得られたトマト液のGABA産生量及び及びGABA変換率並びにGABA富化倍率を表6及び図3に示す。表6及び図3に示される通り、SP48株以外のレヴィラクトバシラス・ブレビス株を用いた場合でも、酵母を用いなかった場合(比較例3~5)と比べ、酵母を用いた場合(実施例8~10)にGABA変換率及びGABA産生量が顕著に増加し、高いGABA富化効果が確認できた。
Figure 2024019906000007
[試験例4]
グルタミン酸からGABA産生する能力はレヴィラクトバシラス・ブレビスに属する乳酸菌株以外にも存在する。試験例3と同様にして、殺菌トマト液に、MRS brothで前培養を行ったラクチプランチバシラス・プランタラムOFC413(NITE P-03660)、ラクチプランチバシラス・プランタラムNBRC12006、ラクトコッカス・ラクティスNBRC12007、及びラクトコッカス・ラクティスMOS-11(NITE P-03661)をそれぞれ2重量%となるように接種した。さらに、パン酵母(0.01g/100g)を接種し、30℃、72時間培養を行った(実施例11~14)また、パン酵母を接種しなかったことを除いて同様の操作を行った(比較例6~9)。得られたトマト液のGABA産生量及びGABA変換率、並びにGABA富化倍率を表8及び図4に示す。表8及び図4に示される通り、レヴィラクトバシラス・ブレビス以外の乳酸菌種を用いた場合においても酵母を用いなかった場合(比較例6~9)と比べ、酵母を用いた場合(実施例11~14)にGABA変換率及びGABA産生量が顕著に増加し、高いGABA富化効果が確認できた。
Figure 2024019906000008
[試験例5]
食品素材中のGABA富化方法として知られている、酵母エキスを用いる方法又はグルタミン酸を用いる方法による効果を、表1の着色度を持つトマトペーストを用いて確認した。具体的には、ポルトガル産コールドブレークトマトペーストを水で希釈し、Brix9.27%のトマト液を調製し、これに、0.5重量%酵母エキス又は5重量%グルタミン酸を添加した後、90℃、30分間殺菌した。これに、あらかじめMRS培地で前培養を行ったレヴィラクトバシラス・ブレビスmh4219株を2重量%又はレヴィラクトバシラス・ブレビスSP48株を2×107CFU/mlとなるように接種し、30℃で72時間培養した。得られたトマト液のGABA産生量及びGABA変換率、並びにGABA富化倍率を、図5及び表8に示す。表8においては、試験例3で得られた比較例3及び実施例8の結果も再掲した。図5及び表8に示される通り、表1の着色度を持つトマトペーストに対して、乳酸菌及びグルタミン酸又は酵母エキスを併用しても、GABA富化効果はほとんど又は全く認められなかった。
Figure 2024019906000009
(実施例15)
ギリシア産トマトペーストを水で希釈し、Brix9.5%としたものを99℃で、18秒間二重管式殺菌機を用いて殺菌し、2tを容量3tのアセプティックタンクに入れた。次いで、レヴィラクトバシラス・ブレビスSP48株200gとパン酵母200gとを滅菌水5Lに分散後、タンクに投入し、30℃で48時間発酵させた。その後、99℃、18秒間殺菌し、15kgずつバックインボックスに充填した。発酵したトマト液のGABA含有量は257mg/100g(発酵前112mg/100g)、グルタミン酸含有量は3.1mg/100g、pH4.2(25℃)であった。発酵したトマト液は風味良好で、ミネストローネ、カレー、ミートソースなどの原料として用いることができた。この発酵トマト液を使用したミネストローネを表9に示す処方により調製し、アルミパウチに充填し、レトルト殺菌を行った。このミネストローネ(150g/食)は1食あたりGABA41mg含有し、事務的な作業に伴う一時的な精神的ストレスを緩和する作用がある旨、および血圧が高めの方に適した作用がある旨の機能性表示が可能な量を含有していた。
Figure 2024019906000010
(実施例16)
トルコ酸コールドブレークトマトペーストを水で希釈しBrix15%とし、99℃で、18秒間殺菌した。ぶどう糖ペプトン液体培地で前培養したサッカロマイセス・シェルビッシェNBRC2347、及びBrix7%のニンジン汁で前培養したレヴィラクトバシラス・ブレビスmh4219をそれぞれ2%接種し、30℃で72時間発酵させた。発酵後、未処理のトマトペースト1に対し発酵トマト液1の割合で混合し、さらに水を加えて、Brix5%に調整した。160ml容缶容器に充填し、湯浴中で85℃、30分間殺菌を行った。その結果、GABA117mg/缶を含むトマト飲料を得た。本品は実施例15の機能的表示に加えて、さらに睡眠の質の向上に役立つ、および加齢によって低下する認知機能の一部である、記憶力の向上に役立つ旨の機能的表示が可能な量のGABAを含有していた。
Lactiplantibacillus plantarum OFC413、受託番号:NITE P-03660、寄託日:2022年6月3日、寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
Lactococcus lactis MOS-11、受託番号:NITE P-03661、寄託日:2022年6月3日、寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター

Claims (8)

  1. 植物の破砕物、搾汁、水抽出物及びそれらの濃縮物からなる群より選択される植物加工物中で、グルタミン酸脱炭酸酵素を産生する乳酸菌と酵母とを培養する工程を含む、γ-アミノ酪酸の製造方法。
  2. 前記植物がトマトである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記植物加工物のBrix3%の場合の着色度が0.2超である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記乳酸菌が、レヴィラクトバシラス(Levilactobacillus)属乳酸菌、ラクチプランチバシラス(Lactiplantibacillus)属乳酸菌、及びラクトコッカス(Lactococcus)属乳酸菌からなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記乳酸菌が、レヴィラクトバシラス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)、ラクチプランチバシラス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)、及びラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記酵母が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属酵母及びウィッカーハモマイセス(Wickerhamomyces)属酵母からなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
  7. 前記酵母が、サッカロマイセス・シェルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、及びウィッカーハーモマイセス・アノマラ(Wickerhamomyces anomalus)からなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
  8. 請求項1に記載の製造方法によって、γ-アミノ酪酸が富化された植物加工物を得る工程と、
    前記γ-アミノ酪酸が富化された植物加工物を用いて飲食品を調理する工程と、を含む、飲食品の製造方法。
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