JP2024014611A - 抵抗溶接用高張力鋼材、接合構造体及び接合構造体の製造方法 - Google Patents

抵抗溶接用高張力鋼材、接合構造体及び接合構造体の製造方法 Download PDF

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純 芳賀
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Abstract

【課題】引張強さが1700MPa以上である高張力鋼材を含む被接合部材を抵抗溶接して接合構造体を製造する際に溶接条件の適正範囲を広げることができる抵抗溶接用高張力鋼材、並びにそれを用いた接合構造体、及び接合構造体の製造方法を提供する。【解決手段】鋼板又は鋼板を加工した部材であって、引張強さが1700MPa以上であり、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下である、抵抗溶接用高張力鋼材並びにそれを用いた接合構造体及び接合構造体の製造方法。【選択図】図7

Description

本開示は、抵抗溶接用高張力鋼材、接合構造体及び接合構造体の製造方法に関する。
自動車分野における更なるハイテン化へのニーズに対して、C量やその他合金添加量の高い材料の適用が進んでいる。
例えば、特許文献1では、亜鉛めっき層を有する鋼板を含む板組をスポット溶接する際の電極圧痕部等における割れが抑制される接合構造体として、少なくとも1枚の鋼板は、C+Si/24+Mn/6で定義される炭素当量Ceqが0.53%以上となる化学成分を有し、引張強度が590MPa以上である高張力鋼板であり、高張力鋼板は、重ね合わせ面側と溶接電極側の少なくとも一方の表面に形成される亜鉛系めっき層と母材との間、又は、重ね合される亜鉛系めっき鋼板の亜鉛系めっき層と隣り合う重ね合わせ面に5μm以上、200μm以下の厚さを有する脱炭層を有する接合構造体が開示されている。
国際公開第2020/105325号
特に高張力鋼板を複数枚重ねてスポット溶接した接合構造体の継手強度は低い傾向があり、ハイテン化における課題である。その解決策として、溶接部におけるナゲット径の拡大や溶接部の改質を狙った溶接方法が検討されている。
引張強さが1500MPa以上である超ハイテンでは鋼板強度が高く、超ハイテンを含む板組をスポット溶接で接合する場合、通常のハイテン材、例えば1500MPa未満のハイテン材の板組をスポット溶接する場合よりも電極の加圧力を高くする必要がある。
さらに、引張強さが2000MPa超のハイテンを用いてスポット溶接する場合においては、高加圧としても一定のナゲット径以上を確保できる適正電流範囲が狭くなってしまう。例えば、引張強さが2200MPaの超ハイテン材を用いたスポット溶接では、ナゲット径が4√t以上(t:板界面を構成する2枚の鋼板の各板厚のうち薄い方の板厚)の適正範囲を確保するために、電極の加圧力上昇に加え、通電条件の変更が必要である。
本開示は、引張強さが1700MPa以上である高張力鋼材を含む被接合部材を抵抗溶接して接合構造体を製造する際に溶接条件の適正範囲を広げることができる抵抗溶接用高張力鋼材、並びにそれを用いた接合構造体、及び接合構造体の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本開示の要旨は次の通りである。
<1> 鋼板又は鋼板を加工した部材であって、引張強さが1700MPa以上であり、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下である、抵抗溶接用高張力鋼材。
<2> 重ね合わされた複数の鋼材が抵抗溶接された接合部を含む接合構造体であって、前記複数の鋼材のうち少なくとも1つの鋼材が、鋼板又は鋼板を加工した部材であって、引張強さが1700MPa以上、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下の高張力鋼材である、接合構造体。
<3> 前記接合部にナゲットが形成されており、前記接合部における板界面を構成する2つの鋼材のうち厚みが薄い方の鋼材の厚みをtとした場合に、前記板界面における前記ナゲットのナゲット径が4√t以上である<2>に記載の接合構造体。
<4> <2>又は<3>に記載の接合構造体を製造する方法であって、
複数の前記高張力鋼材を重ね合わせた被接合部材、又は少なくとも1つの前記高張力鋼材と引張強さが1700MPa未満である少なくとも1つの鋼材とを重ね合わせた被接合部材を、抵抗溶接によって接合する抵抗溶接工程を含む接合構造体の製造方法。
本開示によれば、引張強さが1700MPa以上である高張力鋼材を含む被接合部材を抵抗溶接して接合構造体を製造する際に溶接条件の適正範囲を広げることができる抵抗溶接用高張力鋼材、並びにそれを用いた接合構造体、及び接合構造体の製造方法が提供される。
高炭素焼入れ材の高張力鋼板の2枚板組にスポット溶接を行った通電パターンを示す模式図である。 高炭素焼入れ材の高張力鋼板の2枚板組に設定電流値を変更してスポット溶接を行った場合の設定電流値とナゲット径との関係を示すグラフである。 高炭素焼入れ材の高張力鋼板の2枚板組にアップスロープ又は前通電を付加し、設定電流値を変更してスポット溶接を行った場合の本通電における設定電流値とナゲット径との関係を示すグラフである。 接合構造体の表層部におけるナノ硬さの測定位置を説明する概略図である。 2枚の鋼板を重ね合わせた板組に対して抵抗スポット溶接を行った場合に形成されるナゲット及び熱影響部(HAZ)の一例を概略的に示す図である。 シーム溶接の一例を示す概略図である。 脱炭により表層軟化を行わなかった高張力鋼板の2枚板組に設定電流値を変更してスポット溶接を行った場合の設定電流値とナゲット径との関係を示すグラフである。 脱炭により表層軟化を行って表層部のナノ硬さを5.0GPa以下にした高張力鋼板の2枚板組に設定電流値を変更してスポット溶接を行った場合の設定電流値とナゲット径との関係を示すグラフである。
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。
なお、本開示において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。また、本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値、あるいは、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値、あるいは、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示に係る抵抗溶接用高張力鋼板の発明の完成に先立ち、高張力鋼板の板組をスポット溶接する場合の溶接条件と形成されるナゲットのナゲット径との関係について調査を行った。具体的には、表1に示す化学組成(単位:質量%、残部はFe及び不純物、CeqはC+Si/30+Mn/20+2P+4Sを使用)を有し、金属組織がマルテンサイト組織である高炭素焼入れ材の高張力鋼板(板厚1.6mm)を準備した。この高張力鋼板をガス炉(空燃費:0.85,還元雰囲気)にて900℃で4分間加熱し、平板プレスした。その後、ショットブラストによりスケールを落としたサンプルを作製した。表層の元素分布を高周波グロー放電発光分光分析(GDS)にて測定し、表層が脱炭されていることを確認した。
上記サンプルを用い、同種の2枚重ねの板組としてスポット溶接を行った。溶接には単相交流サーボ加圧式スポット溶接機(50Hz)を用い、加圧力は500~800kgf、使用電極はCr-Cu製の先端径が6mmの呼び径16mmDRドームラジアス形(本明細書において「40R-16mm」と称する場合がある。)の電極を使用した。その他の溶接条件は、スクイズ30cyc、通電時間18cyc、ホールド時間8cycを基本条件とし、さらにアップスロープ5cycを付与した条件、又は前通電5cyc、クール2cycを付与した条件を用いた。各条件を下記表2及び図1に示す。
電流値は5kAからチリ発生まで0.5kAピッチとし、ナゲット径の測定は断面観察によって行った。
図2A及び図2Bに各条件での設定電流値とナゲット径の関係を示す。図2Aは条件A又はBの単通電を行った場合、図2Bは単通電の前にアップスロープ(条件C)又は前通電(条件D)を行った場合である。各図において白抜きのプロットはチリが発生したことを示している。
図2Aに示されるように、単通電条件A又はBでは、ナゲット径が5√tを上回ることなく、チリ発生していることがわかる。一方、図2Bに示されるように、アップスロープ(条件C)又は前通電(条件D)を加えた場合、チリ発生前にナゲット径が5√tを上回る場合があったが、電極先端径8mm、加圧力800kgfという通常の条件(例えば、電極先端径6mm、加圧力400kgf)に比べて特殊な条件が必要であった。
また、条件A、Bではチリ発生前の最も大きいナゲットを含む溶接部について、条件C、Dではチリ発生の電流値-0.5kAとナゲット径が5√t付近のナゲットを含む溶接部について、それぞれ断面を観察した。また、併せて、1.5GPa級の冷間ハイテン材(板厚1.6mm)の2枚板組及び1.2GPa級の冷間ハイテン材(板厚1.6mm)をそれぞれ加圧400kgf、電極先端径6mmでスポット溶接した場合の接合部の断面についても観察した。
1.5GPa級の冷間ハイテン材の2枚板組では、ナゲット径が6.9mmを超える場合にチリが発生した。一方、高炭素焼入れ材の高張力鋼板の2枚板組では、チリ発生が早く、ナゲット径が6mm程度でチリが発生した。
チリ発生は、電極による圧接部を溶融境界が超すことによって生じるが、高炭素焼入れ材の高張力鋼板では、鋼板強度が高いために変形しづらく、圧接部の形成がされにくいことに由来するものと考えられる。
なお、図2Bに示すように、板隙やその他外乱がある場合に使用するアップスロープや前通電による板のなじませを狙った通電条件とし、かつ加圧を上昇させることによってチリ発生が抑制され、5√tを超すナゲット径が得られている。
しかし、1.2GPa級鋼板(板厚1.6mm)の2枚板組に対して、加圧5.9kN、電極先端径8mmで溶接した場合には、7.6mmのナゲット径が得られた。これと比較すると、図2Bに示すように、高炭素焼入れ材の2枚板組に対しアップスロープ又は前通電を行った場合でも、最も大きなナゲット径は7.05mmであり、小さい。
上記の実験、検討結果から、1700MPaを超える高張力鋼板の板組をスポット溶接する場合、それ以下の引張強度をもつ冷間ハイテン材よりもスポット溶接の適正範囲が狭く、特殊な条件が必要である。
そこで、本開示の発明者らは、高張力鋼板を重ね合わせた板組をスポット溶接等により抵抗溶接する際、適性範囲を広げることができる手法について鋭意検討を行った。その結果、1700MPa以上の高張力鋼板であっても表面から特定の深さまでの表層部を軟化させた高張力鋼板を用いれば、圧接部が形成され易くなり、抵抗溶接時の適正範囲を有意に広げることができることを見出した。
[抵抗接合用高張力鋼材]
本開示に係る抵抗溶接用高張力鋼材(本明細書において「高張力鋼材」又は単に「鋼材」と称する場合がある。)は、鋼板又は鋼板を加工した部材であって、引張強さが1700MPa以上であり、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下である。
本開示に係る抵抗接合用高張力鋼材は、鋼板でもよいし、鋼板を加工した部材でもよく、他の鋼材とを重ね合わせた被接合部材を一対の電極で挟み込んで加圧しながら通電して抵抗加熱溶接するスポット溶接、シーム溶接などにより接合することができれば高張力鋼材の形状は限定されない。例えば、引張強さが1700MPa以上である鋼板、あるいは、鋼板をホットスタンプによって自動車等の部品の形状に成形されるとともに接合する部分が1700MPa以上に高張力化されたホットスタンプ部材(本開示において鋼板以外の形状の抵抗接合用高張力鋼材を「高張力部材」と称する場合がある。)が挙げられる。
以下、本開示に係る抵抗接合用高張力鋼材の代表例として、引張強さが1700MPa以上であり、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下である抵抗接合用高張力鋼板(本明細書において「高張力鋼板」又は単に「鋼板」と称する場合がある。)について主に説明する。
<引張強さ>
本開示に係る高張力鋼板は、引張強さが1700MPa以上である。これにより、本開示に係る高張力鋼板を用いてスポット溶接によって接合構造体を製造した場合に継手強度が高く、高強度の接合構造体を得ることができる。
本開示に係る高張力鋼板の引張強さは、好ましくは1900MPa以上であり、より好ましくは2000MPa以上であり、さらに好ましくは2200MPa以上である。
なお、本開示に係る高張力鋼板の引張強さは、JIS5号の引張試験片を作製してJIS Z 2241:2011に準拠して引張試験を行い、引張強さを測定した値である。
<表層部硬さ>
本開示に係る高張力鋼板は、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下である。
表層部におけるナノ硬さは、ナノインデンテーションを用い、荷重は10000μNとする。図3は、鋼板の表層部におけるナノ硬さの測定方法を説明する図である。図3に示すように、鋼板の厚さ方向の断面において、鋼板表面から厚さ方向に10μmピッチ、かつ、面方向に20μmずらして打点してナノ硬さ測定を行う。本開示に係る高張力鋼板は、このように鋼板表面から深さ100μmまで測定した10点におけるナノ硬さがいずれも5.0GPa以下である。
本開示に係る高張力鋼板は、少なくとも一方の表面(片面)から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下であればよいが、抵抗溶接における電極先端径、加圧力、電流値の適正範囲の拡大のため、鋼板両面の表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下であることが好ましい。
抵抗溶接を行う際の電極による加圧力を抑制する観点から、表層部におけるナノ硬さは4.5GPa以下であることが好ましく、4.0GPa以下であることがより好ましい。
なお、表層部におけるナノ硬さの下限値は特に限定されないが、鋼板のTS低下を避ける観点から、1.0GPa以上であってもよいし、2.0GPa以上であってもよい。
本開示に係る高張力鋼板は、引張強さが1700MPa以上であり、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下であれば、化学組成、金属組織は限定されないが、以下、好ましい化学組成及び金属組織について説明する。
<化学組成>
本開示に係る高張力鋼板の化学組成は特に限定されないが、1700MPa以上の引張強さとする観点から、下記式で表される炭素当量(Ceq)が0.38以上であることが好ましい。
Ceq=C+Si/30+Mn/20+2P+4S
上記式中の各元素記号は、鋼板に含まれる各元素の質量%での含有量を意味する。ただし、鋼板の表層が脱炭されている場合は、Ceqを表す式中のCは、表面から100μmまでの表層部を除く部分のC含有量とする。
本開示に係る高張力鋼板は、例えば、質量%で、
C: 0.24~0.70%、
Si:3.50%以下、
Mn:5.00%以下、
P:0.030%以下、
S:0.050%以下、
Al:3.000%以下、
N:0.010%以下、
Ti:0.300%以下、
Nb:0.300%以下、
V:0.30%以下、
Cr:5.0%以下、
Mo:2.00%以下、
Cu:2.00%以下、
Ni:10.0%以下、
B:0.020%以下、
Ca:0.003%以下、
REM:0.05%以下、
Mg:0.05%以下、及び
Zr:0.05%以下
を含み、残部がFe及び不純物である。
なお、上記各元素のうち、前記Ceqに係る元素(C、Si、Mn、P、S)以外は任意元素である。
C:0.24~0.70%
Cは、鋼の焼入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。C含有量が0.24%未満であると、高い引張強さが得られ難いので、1700MPa以上となるよう下限を0.24%とすることが好ましい。一方、C含有量が0.70%を超えると、強度が向上しすぎて加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、上限を0.70%とする。
強度と加工性をバランスよく確保するには、C含有量は0.26~0.55%がより好ましい。
Si:3.50%以下
Siは、固溶強化及び組織強化により、鋼の強度を高める元素である。一方、Si含有量が3.50%を超えると、加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、上限を3.50%とすることが好ましい。Si含有量の上限は2.50%でもよいし、2.00%でもよい。
Si含有量の下限は特に限定されないが、引張強さを高める観点から、0.10%以上とすることが好ましい。強度と加工性をバランスよく確保する観点から、Si含有量は0.50~2.00%がより好ましい。
Mn:5.00%
Mnは、鋼の強度を高める元素である。一方、Mn含有量が5.00%を超えると、加工性が劣化するとともに継手強度も低下するので、上限を5.00%とすることが好ましい。
Mn含有量の下限は特に限定されないが、引張強さを高める観点から、0.50%以上とすることが好ましい。強度と加工性をバランスよく確保する観点から、Mn含有量は1.00~3.50%がより好ましい。さらに好ましくは、1.50~3.00%である。
P:0.030%以下
Pは、不純物であり、脆化を起こす元素である。P含有量が0.030%を超えると、継手強度を得ることが難しいので、上限を0.030%とすることが好ましい。
S:0.050%以下
Sは、Pと同様に、不純物であり脆化をおこす元素である。また、Sは、鋼中で粗大なMnSを形成し、鋼の加工性を低下させるとともに継手強度も低下させる元素である。S含有量が0.050%を超えると、所要の継手強度を得ることが難しく、また、鋼の加工性が低下するので、上限を0.050%とすることが好ましい。
Al:3.000%以下
Alは、脱酸作用をなす元素であり、また、フェライトを安定化し、セメンタイトの析出を抑制する元素である。Alは、脱酸、及び鋼組織の制御のため含有させるが、Alは酸化し易く、Al含有量が3.000%を超えると、介在物が増加して加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、上限を3.000%とすることが好ましい。加工性を確保する点で、より好ましい上限は1.200%である。脱酸、及び鋼組織の制御のため、Al含有量の好ましい下限値は、0.001%である。
N:0.010%以下
Nは、鋼板の強度を高める元素であるが、鋼中で粗大な窒化物を形成し、鋼の成形性を劣化させる作用をなす元素である。N含有量が0.010%を超えると、鋼の成形性の劣化、継手強度の低下が顕著となるので、上限を0.010%とすることが好ましい。
Ti:0.300%以下
Tiは、析出物を形成し、鋼板組織を細粒とする元素である。Ti含有量の下限は特に限定されないが、含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.01%以上である。
ただし、Tiを過剰に含有すると、製造性が低下し、加工時に割れが生じるだけでなく継手強度の低下も起こすので、Tiを含有する場合、上限は0.300%とすることが好ましく、より好ましくは0.20%以下である。
Nb:0.300%以下
Nbは、微細な炭窒化物を形成し結晶粒の粗大化を抑制する元素である。Nb含有量の下限は特に限定されないが、含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.01%以上である。
ただし、Nbを過剰に含有すると、靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度低下を引き起こすため、Nbを含有する場合、上限は0.300%とすることが好ましく、より好ましくは0.20%以下である。
V:0.30%以下
Vは、微細な炭窒化物を形成し結晶粒の粗大化を抑制する元素である。Vを含有する場合、含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.03%以上である。
ただし、Vを過剰に含有すると、靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度低下を引き起こすため、上限を0.30%とすることが好ましく、より好ましくは0.25%以下である。
Cr:5.0%以下
Crは、鋼の強度の向上に寄与する元素である。Crを添加する場合は含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.05%以上である。
ただし、5.0%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく、継手強度の低下を招く。そのため、Cr含有量の上限は5.0%とすることが好ましく、より好ましくは3.0%以下である。
Mo:2.00%以下
Moは、鋼の強度の向上に寄与する元素である。Moを含有する場合、含有効果を得るため、0.01%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.05%以上である。
ただし、Mo含有量が2.00%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく、継手強度の低下を招く。そのため、Mo含有量の上限は2.00%とすることが好ましく、より好ましくは1.00%である。
Cu:2.00%以下
Cuは、鋼の強度の向上に寄与する元素である。Cuを含有する場合、含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.10%以上である。
ただし、Cu含有量が2.00%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく継手強度の低下を招くことがある。そのため、Cu含有量の上限は2.00%とすることが好ましく、より好ましくは1.50%以下である。
Ni:10.0%以下
Niは、鋼の強度の向上に寄与する元素である。Niを含有する場合、含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.10%以上である。
ただし、Ni含有量が10.0%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく継手強度の低下を招くことがある。そのため、Ni含有量の上限は10.0%とすることが好ましく、より好ましくは7.0%以下である。
Ca:0.003%以下
REM0.05%以下
Mg:0.05%以下
Zr:0.05%以下
Ca、REM(rare earth metal)、Mg、及びZrは、脱酸後の酸化物や、熱間圧延鋼板中に存在する硫化物を微細化し、成形性の向上に寄与する元素である。ただし、Caの含有量が0.003%を超え、REMの含有量が0.05%を超え、Mg、又はZrの各含有量が0.05%を超えると、鋼の加工性が低下する。そのため、Ca含有量の上限を0.003%とし、REM含有量の上限を0.05%とし、Mg、及びZrの各含有量の上限を0.05%とすることが好ましい。
Ca、REM、Mg、及びZrを含有する場合、含有効果を得るため、Caは0.0005%以上、REMは0.001%以上、Mgは0.001%以上、Zrは0.001%以上とすることが好ましい。
なお、「REM」とはSc、Y、及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種又は2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、REMは、REM含有量が上記の範囲となるように、ミッシュメタルの形で含有させてもよい。
B:0.020%以下
Bは、粒界に偏析して粒界強度を高める元素である。Bを含有する場合、含有効果を得るため、0.0001%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.0008%以上である。一方、Bを過剰に含有すると靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手の強度低下を引き起こすため、上限を0.020%とすることが好ましく、より好ましくは0.010%以下である。
なお、本開示に係る高張力鋼材は、任意元素として、下記A群~C群からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む化学組成であってもよい。
A群:Ti、Nb、及びVのうち1種又は2種以上
B群:Cu及びNiのうち1種又は2種
C群:B、Ca、REM、Mg、及びZrのうち1種又は2種以上
<金属組織>
本開示に係る高張力鋼板の金属組織は特に限定されないが、引張強さを1700MPa以上とする観点から、マルテンサイト単相もしくは、焼戻しマルテンサイトやベイナイト、フェライト、オーステナイト等を含む組織が好ましい。
なお、表層100μm以下の領域も同様に金属組織は特に限定されない。表層100μm以下の領域と表層100μmよりも深い領域での成分に差がない場合には、マルテンサイトではナノ硬さ5.0GPa以下を満たすことが難しいため、焼戻しマルテンサイトや、その他複相組織とすることが好ましい。表面から100μm以内の表層領域と100μmより深い領域で成分(化学組成)に差がある場合は、マルテンサイトであってもナノ硬さが5.0GPa以下を満たせばよい。
本開示に係る高張力鋼板は、冷延鋼板、熱延鋼板、及びホットスタンプ(熱間プレス)後のホットスタンプ鋼板(ホットスタンプ部材)が挙げられる。
また、本開示に係る高張力鋼板は、めっきが施されためっき鋼板でもよいし、めっきが施されていない非めっき鋼板でもよい。
めっきが施されている場合のめっき組成も特に限定されず、例えばAlめっき、Al-Siめっき、Niめっき、Zn系めっき等が挙げられる。
また、めっきは、溶融めっき又は電気めっきのいずれでもよく、合金化熱処理が施されていてもよい。
<板厚>
本開示に係る高張力鋼板の板厚は特に限定されず、抵抗溶接した後の接合構造体の用途にもよるが、例えば、0.5~3.5mmである。
[抵抗接合用高張力鋼材の製造方法]
本開示に係る高張力鋼材を製造する方法は、引張強さが1700MPa以上であり、表面から深さ100μmの表層部のナノ硬さを5.0GPa以下にすることができれば特に限定されない。引張強さが1700MPa以上の高張力鋼材の表面から深さ100μmの表層部におけるナノ硬さを5.0GPa以下にする方法としては、例えば、脱炭、焼き戻し、貼り合わせ、又はこれらの組合せが挙げられる。
まず、転炉で所定の成分に調整された鋼を溶製して連続鋳造法によりスラブとし、スラブを高温状態のまま圧延し、あるいは、室温まで冷却した後、加熱炉に挿入し、1100~1300℃の温度範囲で加熱して圧延し、その後、800~950℃の温度範囲で仕上圧延を行う。仕上げ圧延温度から200~700℃まで水冷し、その後空冷する。
次いで、冷間圧延によって所望の厚み、例えば、0.5~3.5mmの厚みを有する鋼板にする。その後、焼鈍もしくは、ホットプレスを施すことによって引張強さが1700MPa以上の高張力鋼板もしくは高張力部材を得る。
<脱炭>
冷間圧延後、表層を脱炭処理する。表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さを5.0GPa以下にすることができれば脱炭処理の条件は特に限定されない。例えば、露点5℃、及び温度800℃の環境で鋼板を3分間保持後、これを空冷する脱炭処理条件とすることが好ましい。
また、接合構造体の用途に応じて、高張力鋼板内部の組織制御が必要な場合、脱炭処理後に熱処理等による組織制御を行えば、表層のC含有量が低い状態で、所望の内部組織を得ることができる。また、脱炭が生じる温度域や雰囲気で組織制御することにより、所望の内部組織制御と脱炭を同時に行ってもよい。
なお、本開示に係る高張力鋼板の製造方法は限定されず、上述の製造方法は一例に過ぎない。例えば、冷間圧延まで実施せず、熱間圧延した鋼板の表層を脱炭処理してもよいし、熱間圧延において脱炭を同時に進めてもよい。
<焼き戻し>
焼き戻しによって表層部におけるナノ硬さを5.0GPa以下にしてもよい。表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さを5.0GPa以下にすることができれば条件は特に限定されない。例えば、高周波加熱装置を用いて表層のみ焼き戻しをすることなどがあげられる。
<クラッド鋼>
1700MPa以上の高張力鋼板の片面又は両面に低炭素鋼板を貼り合わせて熱間圧延したクラッド鋼とし、冷間圧延した後、焼鈍することによって本開示に係る高張力鋼板を製造してもよい。このとき、両者を貼り合わせて圧延した後に表層部を構成する低炭素鋼板の厚みを100μm以上とする。
[接合構造体の製造方法]
本開示に係る接合構造体の製造方法は、複数の本開示に係る高張力鋼材を重ね合わせた被接合部材、又は少なくとも1つの本開示に係る高張力鋼材と引張強さが1700MPa未満である少なくとも1つの鋼材とを重ね合わせた被接合部材を、抵抗溶接によって接合する抵抗溶接工程を含む。
抵抗溶接としては、スポット溶接及びシーム溶接のいずれも適用することができる。
<スポット溶接>
本開示に係る接合構造体をスポット溶接によって製造する場合の通電条件は特に限定されないが、高い継手強度を得る観点から、板組の板界面におけるナゲット径を、その板界面を構成する2枚の鋼板のうち厚みが薄い方の板厚をtとした場合に、その板界面において好ましくは4√t以上、より好ましくは5√t以上のナゲット径を有するナゲットが形成される条件でスポット溶接を行うことが好ましい。2枚以上の板組の溶接においては、それぞれの板界面におけるナゲット径が上記を満たすような条件が好ましい。
図4は、2枚の鋼板を重ねた板組に対してスポット溶接を行った場合の溶接部(接合部)の断面の一例を概略的に示している。図4に示すように、鋼板1A,1Bを重ね合わせた板組を板厚方向に挟み込むように電極2A、2Bを押し当てて板厚方向に加圧しながら電極2Aと電極2Bの間で通電を行う。これにより鋼板1Aと鋼板1Bとの通電部にはナゲット13及び熱影響部(いわゆるHAZ)14が形成され、両鋼板が接合される。
板組に対する電極2A、2Bの加圧力は、チリ発生を抑え、かつ安定してナゲットが得られるように、例えば200~800kgfが挙げられる。加圧力は溶接中に一定であっても、変化させてもよい。
本開示に係るに高張力鋼板は、1700MPa以上の引張強さを有する一方、表面から100μmまでの表層部のナノ硬さが5.0GPa以下であることで、ハイテン材の板組をスポット溶接する場合の一般的な通電条件、例えば、電極先端径6mm、加圧力400kgfの単通電によるスポット溶接により、チリを発生させずに、板界面において4√t以上、5√t以上、さらには6√t以上のナゲット径を有するナゲットも形成することができる。
なお、ナゲットを形成する本通電工程における電流値Iは、板組の総厚t等も考慮して所望のナゲット径が得られる電流値を用い、板組のうち最も薄い鋼板tmin(mm)とした場合、通電時間tは10tmin-5から10tmin+50cycle(本開示において時間の単位は50Hzにおけるcycle数とする)などとすればよい。
圧接部の形成を促進する予熱工程にあたるアップスロープ及び/又は前通電を行ってもよい。例えば、ナゲットを形成する本通電の前に1cycle~80cycleのアップスロープを設定してもよい。また、本通電の前に、本通電より低い電流値で2~80cycleの前通電を行ってもよい。
なお、本開示に係る高強度鋼板の片面のみ表層部のナノ硬さが5.0GPa以下である場合は、ナノ硬さが5.0GPa以下である表層部は、電極側に位置してもよいし、重ね合わせ面側に位置してもよいが、より大きなナゲット径を有するナゲットを形成する観点から、重ね合わせ面側に位置することが好ましい。
また、スポット溶接よって接合する鋼板は、2枚の板組でもよいし、3枚以上の板組としてもよい。例えば、t<tとし、板厚t、t、tの順に3枚の鋼板を重ね合わせた板組をスポット溶接により接合する場合、板厚がtとtの2枚の鋼板の板界面におけるナゲット径は4√t以上であり、板厚がいずれもtである2枚の鋼板の板界面におけるナゲット径は4√t以上であるナゲットを形成することが好ましい。
<シーム溶接>
図5は、抵抗溶接としてシーム溶接により接合構造体を製造する工程の一例を示す概略図である。図5に示すように、鋼板10,20を2枚重ねた板組をローラ電極50,60で挟み、板組に圧力を加えてローラ電極50,60を方向Rに回転させながら通電することで、電気抵抗による加熱により板組が連続的に接合される。本開示に係る高張力鋼板を含む板組に対してシーム溶接を行えば、高張力鋼板の表層部のナノ硬さが5.0GPa超である場合に比べ、ローラ電極の加圧によって圧接部が形成され易く、通電条件の適正範囲を広げることができる。
以下、実施例によって本開示に係る高張力鋼材、接合構造体、接合構造体の製造方法について説明する。なお、本開示に係る高張力鋼材等はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<高張力鋼板の製造>
前述した表1に示す化学組成を有するスラブを準備し、下記条件により高張力鋼板(板厚1.6mm)を製造した。
スラブを再加熱し1250℃に1時間保持したのちに圧延を行い、圧延終了温度を900℃として板厚を3.5mmとし、その後冷却し巻き取り温度は650℃である熱延工程と、その後、冷間圧延によって板厚を1.6mmとした。
製造した高張力鋼板からサンプルを切り出し、一部のサンプルに対し脱炭を行い、表層を軟化させた。脱炭の方法は、焼鈍において700℃以上900℃の温度域の露点を0℃として、150s保持した。また比較として、同温度域に露点を-30℃として150s保持したサンプルを作製した。
脱炭前後の高張力鋼板の引張強さ、表層部のナノ硬さを前述した方法により測定した。結果を表3に示す。

<接合構造体の製造>
下記表4に示す鋼板サンプルと条件A~Eの組合せによりスポット溶接を行った。
単相交流サーボ加圧式スポット溶接機(50Hz)を用い、使用電極はCr-Cu製の先端径6mmおよび8mmの40R-16mmの電極を使用した。単通電(本通電)の電流値は5kAから0.5kAピッチとした。その他の溶接条件は、スクイズ30cyc、通電時間18cyc、ホールド時間8cycを基本条件とした。なお、条件Cでは、アップスロープ5cycを付与し、前通電5cyc(電流値:本通電の電流値の70%)、クール2cycを付与した後、本通電を行った。
スポット溶接後の各接合構造体について接合部の中心を通るように板厚方向に切断し、断面を観察し、ナゲット径(板界面におけるナゲット長さ)を測定した。各条件での設定電流値とナゲット径の関係を図6及び図7に示す。白抜きのプロットはチリ発生したことを示す。
表層軟化(脱炭)を行わず、表層部のナノ硬さが5.0GPaを超える高張力鋼板の板組では、図6に示されるように、条件A~Cのいずれでも設定電流値が7.5kAを超えるとチリが発生した。また、電極先端径を8mmとし、アップスロープと前通電を付加した条件Cでも5√t以上のナゲット径を有するナゲットを形成するための適正電流値は7.0~7.5kAの間の0.5kAの範囲であった。
一方、表層軟化(脱炭)を行い、表層部のナノ硬さを5.0GPa以下とした高張力鋼板の板組では、図7に示されるように、条件D、Eのいずれにおいても設定電流値が8.5kA以下であればチリが発生せず、5√t以上のナゲット径を有するナゲットを形成するための適正電流値は条件Dでは2.0kAの範囲、条件Eでは2.5kAの範囲であった。
(実施例2)
<高強度鋼板の製造>
下記表5に示す化学組成(残部:Fe及び不純物)を有するスラブを準備し、下記表6に示す条件により高強度鋼板(板厚1.6mm)を製造した。

鋼種Aに対しては、スラブを再加熱し1250℃に1時間保持したのちに圧延を行い、圧延終了温度を900℃として板厚を3.5mmとし、その後冷却し巻き取り温度は650℃である熱延工程と、その後、冷間圧延によって板厚を1.6mmとした。その後、表6に示す処理を行った。
鋼種Bに対しては、スラブを再加熱し1250℃に1時間保持したのちに圧延を行い、圧延終了温度を950℃として板厚を2.3mmとし、水冷して巻き取った。その後、表6に示す処理を行った。
これらの方法によって表6のサンプルを得た。表6に記載の処理後の高張力鋼板又はホットスタンプ部材の引張強さ(TS)、表層部のナノ硬さを前述した方法により測定し、ナノ硬さが5.0GPa以内である表層からの深さを表6に記した。
<接合構造体の製造>
表6に記した鋼板又はホットスタンプ部材を同種の2枚重ねとして溶接した。
単相交流サーボ加圧式スポット溶接機(50Hz)を用い、使用電極はCr-Cu製の先端径6mmおよび8mmの40R-16mmの電極を使用した。単通電(本通電)の電流値は溶接部ができ始めてから0.3kAピッチとした。その他の溶接条件は、1.6mmの鋼板に対してはスクイズ30cyc、通電時間18cyc、ホールド時間8cycを基本条件とした。板厚2.3mmの鋼板に対しては、スクイズ30cyc、通電時間25cyc、ホールド時間8cycを基本条件とした。
スポット溶接後の各接合構造体について接合部の中心を通るように板厚方向に切断し、断面を観察し、ナゲット径(板界面におけるナゲット長さ)を測定し、4√t以上のナゲット径を得られ、かつチリ発生のない電流範囲の幅を求めた。
引張強さが1700MPa以上であって、表層軟化を行わず、表層部のナノ硬さが5.0GPa以内である表層深さが100μm未満である高張力鋼板の板組(比較例:試験番号1、5)では、4√t以上のナゲット径をチリ発生なく得られる電流範囲が0.5kA以内となっていた。
対して、引張強さが1700MPa以上であって、表層部のナノ硬さが5.0GPa以内である表層深さが100μmを超える高強度鋼板の組合せ(実施例:試験番号2、3、6-8)では、4√t以上のナゲット径をチリ発生なく得られる電流範囲が1.5kA以上となっている。
なお、試験番号4は、4√t以上のナゲット径をチリ発生なく得られる電流範囲が2.5kAであったが、引張強さが本開示の対象外である1700MPa未満の鋼板の板組であるため、参考例。
1A、1B 鋼板
2A、2B 電極
13 ナゲット
14 熱影響部(HAZ)

Claims (4)

  1. 鋼板又は鋼板を加工した部材であって、引張強さが1700MPa以上であり、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下である、抵抗溶接用高張力鋼材。
  2. 重ね合わされた複数の鋼材が抵抗溶接された接合部を含む接合構造体であって、前記複数の鋼材のうち少なくとも1つの鋼材が、鋼板又は鋼板を加工した部材であって、引張強さが1700MPa以上、かつ、少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの表層部におけるナノ硬さが5.0GPa以下の高張力鋼材である、接合構造体。
  3. 前記接合部にナゲットが形成されており、前記接合部における板界面を構成する2つの鋼材のうち厚みが薄い方の鋼材の厚みをtとした場合に、前記板界面における前記ナゲットのナゲット径が4√t以上である請求項2に記載の接合構造体。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の接合構造体を製造する方法であって、
    複数の前記高張力鋼材を重ね合わせた被接合部材、又は少なくとも1つの前記高張力鋼材と引張強さが1700MPa未満である少なくとも1つの鋼材とを重ね合わせた被接合部材を、抵抗溶接によって接合する抵抗溶接工程を含む接合構造体の製造方法。

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