JP2024011764A - エポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、接着構造体 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、接着構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、低温接着性の確保が難しいエポキシ樹脂組成物において、低温接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。【解決手段】(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤、(C)D単位を含む鎖状のシリコーンのいずれかの末端にエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン及び(D)ゴム状重合体粒子、を含有するエポキシ樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ変性シリコーンを含有するエポキシ樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物の硬化物、及び接着構造体に関する。
エポキシ樹脂は、他の有機あるいは無機充填物を共に含むエポキシ樹脂組成物を調整し、硬化することで、半導体封止、構造材料および各種接着、塗料など幅広い用途に使用されているが、近年、これら用途について、使用環境の観点から、耐寒性、耐熱性、耐湿熱性などの温度、湿度対応あるいはさらに耐光性を加えた耐候性に対する要望が高くなってきている。
特に、接着用途については、近年のマルチマテリアル化に伴う異種材料の接着において、異種材料を構成する各材料の熱特性の違いにより発生するひずみの緩和とともに、低温で満足できうる接着強度、すなわち低温接着性の付与が重要になってきている。しかしながら、一般的にエポキシ樹脂は実用時に硬化処理を行うが、その硬化物においては硬くて脆い性質を有するため、特に低温にて十分な接着強度の確保が難しい。そこで、一般的には、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリルエラストマーに代表される有機エラストマーやコアシェル構造を有するゴムなどを添加したエポキシ樹脂組成物にて接着力を付与している。
ここで、高分子設計の観点から考えると、低温接着性を担保すべく必要な構造としては、低温においても分子運動が凍結しないことがあげられ、その観点から、上記の有機エラストマーやゴムにおいては、低温の度合いによっては運動が凍結されることから低温接着性は十分とは言えない。そこで、ジメチルシロキサンに代表されるシリコーン化合物が着目されている(特許文献1参照)。
特開2017-008145号公報
特許文献1ではシルセスキオキサンなどの種々のシリコーン化合物を用いることで、耐熱性、接着性の確保を試みているが、低温での接着性については言及されていない。一般的にシリコーン化合物については、低温での運動性を確保する構造を取るほど、逆に表面エネルギーが低くなるため必要な接着力の確保が難しく、エポキシ樹脂組成物へのシリコーン化合物の導入による低温接着への適用は一般的にはほとんどなされていない。
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、低温接着性の確保が難しいエポキシ樹脂組成物において、低温接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、低温接着性の確保が難しいエポキシ樹脂組成物において、シリコーン化合物特有の優れた低温特性を利用するために、接着において必要な表面エネルギーを確保しつつ、エポキシ樹脂に取り込むことができ
るように、D単位を含む鎖状のシリコーン構造の末端にエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーンを用いることで、特異的に低温接着性が向上することを見出し、発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[16]に存する。
[1](A)エポキシ化合物、(B)接着助剤、(C)D単位を含む鎖状のシリコーンのいずれかの末端にエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン及び(D)ゴム状重合体粒子、を含有するエポキシ樹脂組成物。
[2]前記エポキシ基を含む有機基が、芳香族エポキシ基及び/又は脂肪族エポキシ基である、[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]前記(C)エポキシ変性シリコーンが、式(1)で表される、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
Figure 2024011764000001

(式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能に由来する連結基を表す。)
[4]前記R及びRは、メチル基である、[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]前記(B)接着助剤が、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上の末端基を有するブタジエンニトリルゴム及び/又はブタジエンゴムを含む、[1]~[4]のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]前記(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量が1500~5000g/当量の範囲である[1]~[5]のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(C)エポキシ変性シリコーンを2~20質量部含有する、[1]~[6]のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(D)ゴム状重合体粒子を1~60質量部含有する、[1]~[7]のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
[9]更に、カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応希釈剤、顔料、無機充填材、及び有機充填材からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有する、[1]~[8]のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
[10][1]~[9]のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物と(E)硬化剤を含有する、硬化性樹脂組成物。
[11]前記(E)硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、[10]に記載の硬化性樹脂組成物。
[12]前記エポキシ化合物100質量部に対し、前記(E)硬化剤0.1~1000質量部含有する、[10]又は[11]に記載の硬化性樹脂組成物。
[13]更に、硬化促進剤(但し、硬化剤に該当するものは除く)、を含有する、[10]~[12]のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
[14][10]~[13]のいずれか一に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
[15]被接着体と、他の被接着体とが、[14]に記載の硬化物を介して接着されている、接着構造体。
[16]T型剥離試験(-30℃)において、前記被接着体と、他の被接着体との間の平均剥離強度が270N以上、最大剥離強度が580N以上である[15]に記載の接着構造体。
本発明により、低温接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。また、当該エポキシ樹脂組成物を含む硬化物、該硬化物により接着された接着構造体、を提供することができる。
本発明の一形態は、(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤、(C)D単位を含む鎖状のシリコーンのいずれかの末端にエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン及び(D)ゴム状重合体粒子、を含有するエポキシ樹脂組成物である。(C)エポキシシリコーンは、D単位を含む鎖状のシリコーン構造を有することで低温においても分子運動が凍結することなく接着力を発揮することから、硬化物に対して優れた接着性を付与することができる。
[(A)エポキシ化合物]
(A)エポキシ化合物とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。分子内に2個のエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物であってもよく、分子内に3個のエポキシ基を有する3官能エポキシ化合物であってもよい。好ましくは、2官能エポキシ化合物である。
2官能エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類;ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール系ジグリシジルエーテル類;ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロアントラセンジグリシジルエーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテル等のベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類;ジヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等の芳香族系ジグリシジルエーテル類;前記ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類及び芳香族系ジグリシジルエーテル類から選ばれるジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物;アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸等の種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキ
シ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル等の鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル類;1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状構造を有するアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。
3官能以上のエポキシ化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下の例示において、「・・・型エポキシ樹脂」とは、水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたものをいう。即ち、例えば、「4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂」は、「4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン」の水酸基がグリシジルエーテルで置換されたものをさす。
α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ―α,α-ジメチルベンジル)-エチルベンゼン型エポキシ樹脂、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、4,4’,4”-エチリジントリス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、4,4’-(2-ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン型エポキシ樹脂、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン型エポキシ樹脂、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン型エポキシ樹脂、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,6-ビス(4-ヒドロキシ―3,5-ジメチルベンジル)-4-メチルフェノール型エポキシ樹脂等の3官能エポキシ樹脂類;2,2’-メチレンビス[6-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-p-クレゾール型エポキシ樹脂、4-[ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]ベンゼン-1,2-ジオール型エポキシ樹脂、1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、α,α,α’,α”-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-p-キシレン型エポキシ樹脂等の4官能エポキシ樹脂類;2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール型エポキシ樹脂等の5官能エポキシ樹脂類;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ化合物;脂肪族ポリオールと、エピハロヒドリンから製造されるエポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン型エポキシ樹脂や、これら種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール系化合物等を使用したエポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂類が挙げられる。
エポキシ化合物については、これらのうち、好ましくはビスフェノール系ジグリシジルエーテル類であり、中でもビスフェノールAジグリシジルエーテルがより好ましい。
また2官能エポキシ化合物および3官能以上のエポキシ化合物を1種または複数種を組み合わせて使用することもできる。
[(B)接着助剤]
(B)接着助剤は、エポキシ樹脂組成物の接着性を向上させるために配合する化合物である。エポキシ樹脂組成物に配合して、その接着性を向上させることができれば特に限定されないが、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上の末端基を有するブタジエンニトリルゴム及び/又はブタジエンゴムであることが、低温接着性の観点から好ましい。
このうち、カルボキシル末端ブタジエンニトリルゴムが、より好ましい。カルボキシル末端ブタジエンニトリルゴムは下記式(2)で表されるように、ポリブタジエンユニットとポリアクリロニトリルユニットの共重合ポリマーであって、両末端にカルボキシル構造を有するエラストマーである。カルボキシル末端については、さらにエポキシ基などの反応性基を有するユニットを付加したものであってもよい。
Figure 2024011764000002

式(2)中、pは1以上の整数を表し、qは1以上の整数を表す。RおよびRは独立してカルボキシル基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基などの水酸基含有基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる1種または2種のエポキシ反応性官能基を有する1価の有機基を表す。
(B)接着助剤の配合量は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂組成物を用いた接着用途により適宜設定されるが、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、通常5質量部以上であり、10質量部以上であることが好ましく、また通常95質量部以下であり、80質量部以下であることが好ましい。
[(C)エポキシ変性シリコーン]
(C)エポキシ変性シリコーンは、D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかに、エポキシ基を含む有機基が結合した化合物である。D単位を含む鎖状のシリコーンユニットを有することで、低温においても分子運動が凍結することなく接着力を発揮することから、硬化物に対して優れた接着性を付与することができる。
(C)エポキシ変性シリコーン中、鎖状のシリコーンユニットはD単位のシリコーンを含んでいればよいが、低温接着性の観点から、全シリコーンユニット中においてD単位が50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることがより好ましい。また、鎖状のシリコーンユニットは、直鎖であってもよく、分岐があってもよいが、直鎖のシリコーンであることが好ましい。
(C)エポキシ変性シリコーン中、エポキシ基を含む有機基は、エポキシ基を含む有機基であればよいが、芳香族エポキシ基及び/又は脂肪族エポキシ基であることが、低温の接着強度の向上の観点から好ましい。
(C)エポキシ変性シリコーンは、以下の式(1)で表されることが好ましい。
Figure 2024011764000003
式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表し、複数のnは同じであってもよく、異なってもよい。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、または、芳香族性基を表す。このうち、R及びRのうち少なくとも1つがアルキル基であることが好ましく、アルキル基の中でも、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更により好ましい。また、RとRが共にアルキル基であることがより好ましい。
また、RおよびRは独立してヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能基に由来する連結基を表す。
式(1)において、mは、平均として、通常3以上、好ましくは10以上であり、また、通常100以下、好ましくは50以下である。mがこの範囲内にあることで、エポキシ樹脂組成物への相溶性が良好であり、充分な低温接着性が得られる。
式(1)中、nはそれぞれ0以上の整数を表す。nは平均として好ましくは0以上であり、また、好ましくは50以下である。nがこの範囲内にあることで、エポキシ変性シリコーン自体の流動性が良好となり、エポキシ樹脂組成物の作製が容易になる。
[エポキシ当量]
(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量は、JIS K7236により測定された値で、500~10,000g/eqであることが好ましく、1500~5,000g/eqであることがより好ましく、1500~4500g/eqであることが特に好ましい。(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量が上記範囲内であることによって、これを含むエポキシ樹脂組成物の作製の容易性、およびエポキシ樹脂組成物のハンドリングに優れ、また硬化処理後の硬化物は、低温接着性に優れたモルフォロジーをとることができる。
(C)エポキシ変性シリコーンの配合量は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂組成物を用いた接着用途により適宜設定されるが、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、通常2質量部以上であり、5質量部以上であることが好ましく、また通常20質量部以下であり、15質量部以下であることが好ましい。
[(C)エポキシ変性シリコーンの製造方法]
(C)エポキシ変性シリコーンの製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。
[(D)ゴム状重合体粒子]
(D)ゴム状重合体粒子は、使用時の外力に対する衝撃吸収という目的のために配合する化合物である。(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤、(C)D単位を含む鎖状のシリコーンのいずれかの末端にエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーンに、(D)ゴム状重合体粒子を配合することで、剥離強度の向上という優れた効果を得ることができる。
ゴム状重合体粒子として、例えば、ジエン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体50質量%以上、および他の共重合可能なビニル単量体50質量%未満から構成されるゴム弾性体、ポリシロキサンゴム系弾性体、またはそれらの混合物からなるゴム粒子コア50~95質量%に対して、(メタ)アクリルアミド誘導体およびマレイミド誘導体からなる群から選ばれる1種以上の単量体からなるシェル層5~50質量%をグラフト重合して得られるものが挙げられる。
それらのゴム状重合体粒子の中では、エラストマーまたはゴム状のポリマーを主成分とするポリマーからなるコア部とこれにグラフト重合されたポリマー成分からなるシェル層より構成されるポリマーゴム状重合体粒子であることが好ましい。シェル層は、グラフト成分を構成するモノマーをコア成分にグラフト重合することでコア部の表面の一部もしくは全体を覆うことができる。
前記コア部を構成するポリマーは架橋されており、コア部を構成するポリマーの良溶媒に対して膨潤しうるが実質的には溶解せず、エポキシ樹脂に不溶であることが好ましい。前記コア部のゲル含量は60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。前記コア部を構成するポリマーは、ゴムとしての性質を有することが好ましいことから、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下、好ましくは-10℃以下であることが好ましい。
前記コア部を構成するポリマーは共役ジエン系モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーより選ばれる一種以上のモノマーを50質量%以上含有する単量体より構成されるか、またはポリシロキサンゴム、或いはこれらを併用することが好ましい、なお、本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタアクリルを意味する。
前記コア部を構成する共役ジエン系モノマーとして、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができるが、安価に入手でき、得られる重合体のゴムとしての性質が良好であり、重合が容易である点から、ブタジエンが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられるが、得られる重合体のゴムとしての性質が良好であり、重合が容易である点から、ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。これらは1種或いは2種以上を組み合わせて使用できる。共役ジエン系モノマー若しくは(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの使用量は、コア部全体の重量に対して好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。50質量%未満の場合にはエポキシ樹脂に対して靭性を付与する能力が低下する場合がある。
さらに、前記コア部を構成するポリマーは、前述の共役ジエン系モノマー或いは(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主成分として使用する場合には、これらと共重合可能な1種以上のビニルモノマーとの共重合体であってもよい。そのようなモノマーとしては、上述のアルキル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族系モノマーとしては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルシアン系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロニトリル、置換アクリロニトリルを例示することができる。これらは1種或いは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの使用量は、コア部全体の重量に対して好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%未満である。
また、前記のコア部を構成する成分として、架橋度を調整するために、多官能性モノマーを使用しても良い。多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ブタンジ
オールジ(メタ)アクリレート、(イソ)シアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリル、フタル酸ジアリル等を例示できる。これらの使用量はコア部の全重量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。10質量%を越えて使用するとコア部のエラストマーとしての性質が損なわれるため好ましくない。
さらに、前記コア部として、上述のようなビニル重合性ポリマーに替えて、或いはこれらと併用して、ポリシロキサンゴムを使用することも可能である。コア部としてポリシロキサンゴムを使用する場合には、例えば、ジメチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ等のアルキル或いはアリル2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサンゴムを使用することができる。また、このようなポリシロキサンゴムを使用する場合には、必要に応じて、重合時に多官能性のアルコキシシラン化合物を一部併用するか、ビニル反応性基を持ったシラン化合物をラジカル反応させること等により、予め架橋構造を導入しておくことがより好ましい。
また、前記シェル部は、ゴム状重合体粒子がエポキシ樹脂中で安定に一次粒子の状態で分散するための、エポキシ樹脂に対する親和性を与える機能を有する。前記シェル部を構成するポリマーはコア部を構成するポリマーにグラフト重合されており、実質的にコア部を構成するポリマーと結合していることが好ましい。具体的には、シェル部を構成するポリマーは、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上がコア部に結合していることが望ましい。シェル部は、後述する有機溶媒及びエポキ化合物(A)に対して膨潤性、相溶性もしくは親和性を有するものが好ましい。またシェル部は、使用時の必要性に応じて、エポキシ化合物(A)もしくは使用時に配合される硬化剤との反応性を有し、エポキシ化合物(A)が硬化剤と反応して硬化する条件下においてこれらと化学反応し結合を生成できる機能を有するものであっても良い。
シェル部を構成するポリマーは、安価に入手でき、また、良好なグラフト重合性と、エポキシ樹脂に対する親和性の双方を可能にできるという点から、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物より選ばれる1種以上の成分を重合若しくは共重合して得られる重合体若しくは共重合体であることが好ましい。更に、特にシェル部のエポキシ樹脂硬化時における化学反応性を求める場合には、上記のモノマーに加えて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、等の反応性側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類、エポキシアルキルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド(N-置換物を含む)、α,β-不飽和酸、α,β-不飽和酸無水物、及びマレイン酸誘導体からなるモノマー群より選ばれる1種以上の成分を共重合して得られる共重合体がより好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、α―メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸無水物、マレイン酸イミド等をそれぞれ例示することができるが、これらに限定されるものではない。これらの1種或いは2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
エポキシ樹脂組成物で用いる(D)ゴム状重合体粒子の粒子径には特に制限はなく、ゴム状粒子を水性ラテックスの状態で安定的に得ることができるものであれば問題なく使用できる。なお、工業生産性の面からは、体積平均粒子径が0.03~1μm程度のものが、製造が容易であるという点で好ましい。なお、(体積)平均粒子径は、マイクロトラックUPA(日機装(株)製)を用いて測定することができる。
(D)ゴム状重合体粒子は、前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して1~60
質量部含有することが好ましい。1質量部以下では効果発現が難しく、60質量部以上では、粒子の分散や粘度が高くなるなどの取り扱い性が著しく損なわれる。
このようなゴム状重合体粒子の製造については、特に制限なく、周知の方法、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などで製造することができる。この中でも特に乳化重合による製造方法が好適である。
〔エポキシ樹脂組成物の製造方法〕
エポキシ樹脂組成物の製造方法は、上記(A)エポキシ化合物、(B)接着助剤、(C)D単位を含む鎖状のシリコーンの末端のいずれかにエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン、(D)ゴム状重合体粒子を混錬することで、得ることができる。
また、この際に、通常は後述する(E)硬化剤を配合させることで、硬化性樹脂組成物とすることができる。
[(E)硬化剤]
硬化性樹脂組成物に含有させる(E)硬化剤は、エポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質である。なお、本明細書においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
(E)硬化剤としては、例えば、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン類;及びこれらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素等のヘテロ元素を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの等が挙げられる。
更に、これらのフェノール類やフェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。
ポリイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。更に、これらのポリイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、又は前記のポリイソシアネート化合物の3~5量体等を挙げることができる。
アミン系化合物の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレ
ンジアミン、ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物等が挙げられる。
イミダゾール系化合物の例としては、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本明細書においては硬化剤に分類するものとする。
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的には、SbF 、BF 、AsF 、PF 、CFSO 2-、B(C 等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物等が挙げられる。
有機ホスフィン類の例としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が挙げられる。
有機ホスホニウム塩の例としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が挙げられる。
テトラフェニルボロン塩の例としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が挙げられる。
以上に挙げた硬化剤の他、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等も硬化剤として用いることができる。
上記の硬化剤のうち、潜在性を有するジシアンジアミドが好適に用いられるが、各々1種を用いてもよく、同種又は異種のものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
(E)硬化剤の配合量は特に限定されるものではなく、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、通常0.1質量部以上であり、0.5質量部以上であることが好ましく、また通常1000質量部以下であり、500質量部以下であることが好ましい。
硬化剤として多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ基に対する硬化剤中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基又は酸無水物系化合物の酸無水物基)の当量比で0.8~1.5の範囲となるように用いることが好ましい。ポリイソシアネート系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の水酸基数に対してポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基数が、当量比で1:0.01~1:1.5の範囲で用いることが好ましい。イミダゾール系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.5~10質量部の範囲で用いることが好ましい。アミド系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキ
シ樹脂成分100質量部に対し、0.01~15質量部の範囲で用いることが好ましい。有機ホスフィン類を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分と有機ホスフィン類との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物には、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分は硬化性樹脂組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
その他の成分については、本発明の硬化を阻害しない範囲で含有させることができるが、その含有量は、(A)エポキシ化合物100質量部に対し、通常10質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましい。
[硬化物〕
硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ化合物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。
硬化物とする際の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物中の配合成分や配合量、配合物の形状によっても異なるが、通常、50~200℃で5秒~180分の加熱条件が挙げられる。
[用途]
エポキシ樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物は、特に低温で優れた接着性を有することから、自動車、船舶、航空、宇宙、土木、建築分野等の広範な分野において、各種金属部材、炭素繊維あるいはガラス繊維強化樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂の同種あるいは異種を接合するのに用いられる構造用接着剤として好適に使用することができ、とりわけ自動車構造用接着剤として好適に使用することができる。また、硬化性樹脂組成物は各種塗料、各種接着剤、各種成形品等の用途にも用いることができる。
[接着構造体]
上記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いることで、被接着体と、他の被接着体とが、上記硬化性樹脂組成物の硬化物を介して接着されている、接着構造体を得ることができる。
上記硬化性樹脂組成物により接着された接着構造体は、被接着体と、他の被接着体との間の平均剥離強度が270N以上であることが好ましく、最大剥離強度が580N以上であることが好ましい。
平均剥離強度及び最大剥離強度は、引張試験機によるT型剥離試験(-30℃)により測定した剥離強度であり、その方法は、JIS K 6854に準じて行われる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔(C)エポキシ変性シリコーンの製造〕
(製造例1)
温度計、滴下漏斗、撹拌機、窒素導入管、冷却管を有するセパラブルフラスコ反応器に、信越化学工業(株)製フェノール末端ポリジメチルシロキサンKF2201(水酸基当量) 40.0gおよび三菱ケミカル(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER828US 9.6gを仕込み撹拌、120℃まで加温後、テトラメチルアンモニウムクロ
リド0.60gを添加して1.5時間加熱撹拌を行った。得られたエポキシ変性シリコーン(C-1)は、エポキシ当量1979g/eqであった。
〔エポキシ変性シリコーンを含む硬化性樹脂組成物の作製および評価〕
(実施例、比較例)
(A)エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製
jER828)、(B)接着助剤として、カルボキシル基ブタジエンニトリルゴム((株)ADEKA 社製 EPR1630、HUNTSMAN社製 Hypro1300×13)、(D)ゴム状重合体粒子として、(株)カネカ社製 MX-154、(E)硬化剤として、ジシアンジアミド(三菱ケミカル(株)製 DICY15)、硬化促進剤として、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(東京化成工業(株)製)、ギャップ材として、100μmシリカビーズ、および製造例1で製造した(C-1)エポキシ変性シリコーン樹脂を使用して、表1記載の組成にて70℃の湯浴中で混合して硬化性樹脂組成物を作製した。
なお、ジシアンジアミド、および、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレアは、それぞれビスフェノールA型エポキシ樹脂とともに、3本ロールミル(アイメックス(株)社製 BR-100V)にて、事前混錬したものを使用した。
得られた硬化性樹脂組成物は、JIS K 6854に準拠して、被接着材として25mm幅のステンレス鋼板を使用して、それぞれ片面に硬化性樹脂組成物を塗布し、塗布面どうしを貼合した後、180℃×20分加熱硬化させたあと、23℃×50%RHにて12時間以上、状態調節を行ってT型剥離用試験片を作製した。
上記のT型剥離用試験片を使用して引張試験機によるT型剥離試験を23℃、-30℃各n=3にてそれぞれ実施した。はく離速度は毎分200mmとして、被着材をはく離するのに要した平均剥離力を測定した。
Figure 2024011764000004
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に低温で優れた接着性を有することから、自動車、船舶、航空、宇宙、土木、建築分野等の広範な分野において、各種金属部材、炭素繊維あるいはガラス繊維強化樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂の同種あるいは異種を接合するのに用いられる構造用接着剤として好適に使用することができ、とりわけ自動車構造用接着剤として好適に使用することができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は各種塗料、各種接着剤、各種成形品等の用途にも用いることができる。

Claims (16)

  1. (A)エポキシ化合物、(B)接着助剤、(C)D単位を含む鎖状のシリコーンのいずれかの末端にエポキシ基を含む有機基が結合したエポキシ変性シリコーン及び(D)ゴム状重合体粒子、を含有するエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記エポキシ基を含む有機基が、芳香族エポキシ基及び/又は脂肪族エポキシ基である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記(C)エポキシ変性シリコーンが、式(1)で表される、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2024011764000005
    (式(1)中、mは1以上の整数を表す。nはそれぞれ1以上の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基又は芳香族基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選ばれるエポキシ反応性官能に由来する連結基を表す。)
  4. 前記R及びRは、メチル基である、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記(B)接着助剤が、カルボキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルビノール基、アミノ基及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上の末端基を有するブタジエンニトリルゴム及び/又はブタジエンゴムを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記(C)エポキシ変性シリコーンのエポキシ当量が1500~5000g/当量の範囲である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(C)エポキシ変性シリコーンを2~20質量部含有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 前記(A)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(D)ゴム状重合体粒子を1~60質量部含有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 更に、カップリング剤、難燃性剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応希釈剤、顔料、無機充填材、及び有機充填材からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物と(E)硬化剤を含有する、硬化性樹脂組成物。
  11. 前記(E)硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、有機ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項10に記載の硬化性樹脂組成物。
  12. 前記エポキシ化合物100質量部に対し、前記(E)硬化剤0.1~1000質量部含有する、請求項10に記載の硬化性樹脂組成物。
  13. 更に、硬化促進剤(但し、硬化剤に該当するものは除く)、を含有する、請求項10に記載の硬化性樹脂組成物。
  14. 請求項10に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
  15. 被接着体と、他の被接着体とが、請求項14に記載の硬化物を介して接着されている、接着構造体。
  16. T型剥離試験(-30℃)において、前記被接着体と、他の被接着体との間の平均剥離強度が270N以上、最大剥離強度が580N以上である請求項15に記載の接着構造体。
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