JP2024010990A - 圧電積層体及び圧電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い圧電特性を有し、かつ、長期安定性の高い圧電膜を備えた圧電積層体及び圧電素子を得る。【解決手段】圧電積層体及び圧電素子は、基板上に、下部電極層、及び圧電膜をこの順に備えた圧電積層体において、下部電極層と圧電膜との間に、導電性酸化物からなるシード層を備え、圧電膜は、下記一般式Iで表されるペロブスカイト型酸化物を含む。Pb1-y2+αAy2{(Ti,Zr)1-x-y1NbxB1y1}O3一般式Iここで、AはAサイト元素であって、少なくともLaを含む1つ以上の元素であり、B1はBサイト元素であって、2価もしくは3価の1つ以上の元素であり、Oは酸素元素であり、x、y1、y2、αは、0.05<x≦0.3、0.2x≦y1+y2≦0.5x、0≦y1≦0.15、0≦y2≦0.15、0≦α≦0.2を満たす。【選択図】図1

Description

本開示は、圧電積層体及び圧電素子に関する。
基板上に、下部電極、圧電膜、及び上部電極を備えた圧電素子における圧電膜として適用される。この圧電素子は、メモリ、インクジェットヘッド(アクチュエータ)、マイクロミラーデバイス、角速度センサ、ジャイロセンサ、超音波素子(PMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)及び振動発電デバイスなど様々なデバイスへと展開されている。
優れた圧電特性を有する材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、(以下においてPZTという。))系のペロブスカイト型酸化物が知られている。PZT系ペロブスカイト型酸化物圧電膜において、Zr:Tiが52:48近傍であるモルフォトロピック相境界(MPB:Morphotropic Phase Boundary)組成を有するときに、圧電定数が最も高く、アクチュエータ用途に好適であることが知られている。
従来から圧電素子においては、自発分極軸方向に電界を印加することで、自発分極軸に伸びる圧電歪(通常の電界誘起歪)が利用されている。さらに、大きな変位量を得るために、圧電体が自発分極方向とは異なる方向の電界印加の増減によって分極軸が可逆的に非180°回転することが可能なドメインを有する圧電素子も提案されている。圧電体中のドメインが90°ドメイン回転等の非180°ドメイン回転することにより圧電歪が生じる。可逆的非180°ドメイン回転を利用することで、圧電体の自発分極方向に電界を印加する際に分極軸方向に伸びる通常の電界誘起歪のみを利用するよりも、はるかに大きな圧電歪が得られる。
PZT系ペロブスカイト型酸化物においては、Bサイト元素としてNb(ニオブ)を添加することにより、ドメインの非180°ドメイン回転を生じさせることができ、非180°ドメイン回転を伴う大きな圧電歪が得られることが知られている。また、Nbの添加量が多いほど、非180°ドメイン回転に伴う圧電歪量も大きくなる傾向にあることも知られている。しかし、PZTへのNb添加量をある程度以上増やすと、パイロクロア相という圧電性が無い異相が生じたり、膜応力(膜の内部応力)が増加し、圧電膜にクラックが生じたりするために圧電素子として使用できないという問題があった。
これに対し、特許文献1あるいは特許文献2においては、PZTに対してNbを添加すると共に、Ni(ニッケル)あるいはSc(スカンジウム)を添加することが提案されている。特許文献1あるいは特許文献2には、NiあるいはScを添加することにより、Nb添加量を上昇させた場合に生じるパイロクロア相を抑制することができることが示されている。
一方、特許文献3では、Nb添加PZT(以下において、Nb-PZTという。)において、Nbのモル比率を10~20%の範囲とし、Zrの比率を調整し、膜応力を適正な範囲とすることにより、高い圧電特性の圧電膜を実現する方法が開示されている。すなわち、特許文献3では、Zrの比率を調整することで膜応力の増加を抑制することにより、Nbの添加量の増加を実現している。また、特許文献3では、基板と圧電膜との間にシード層を備えることにより、高い結晶性の圧電膜を得ることができ、高い圧電特性を得ることができる旨記載されている。
国際公開第2017/085924号 国際公開第2018/042946号 国際公開第2015/174265号
特許文献1及び特許文献2においては、NbとScあるいはNiとを添加したPZT膜について高い圧電定数が得られることが示されている一方で、耐電圧及び長期安定性については評価されていない。本発明者らの検討によれば、Nb及びSc又はNiを添加したPZT膜を備えた圧電素子については、長期安定性が十分でない場合があった。
特許文献3の実施例及び比較例の結果によれば高い圧電特性を有する圧電素子が得られている。一方で、特許文献3の実施例及び比較例についての耐電圧は十分とは言えない。また、長期安定性については検討されておらず、耐電圧が低いことから長期安定性が十分でない可能性が高いと推測される。
実際のデバイスに適用する場合には、圧電特性が高いだけでは十分でなく、長期安定性が高いことが求められる。
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い圧電特性を有し、かつ、長期安定性の高い圧電膜を備えた圧電積層体及び圧電素子を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
本開示の圧電積層体は、基板上に、下部電極層、及び圧電膜をこの順に備えた圧電積層体であって、
下部電極層と圧電膜との間に導電性酸化物からなるシード層を備え、
シード層が導電性酸化物からなり、
圧電膜は、下記一般式Iで表されるペロブスカイト型酸化物を含む。
Pb1-y2+αy2{(Ti,Zr)1-x-y1NbB1y1}O 一般式I
ここで、
AはAサイト元素であって、少なくともLaを含む1つ以上の元素であり、
B1はBサイト元素であって、2価もしくは3価の1つ以上の元素であり、
Oは酸素元素であり、
x、y1、y2、αは、
0.05<x≦0.3、0.2x≦y1+y2≦0.5x、0≦y1≦0.15、0≦y2≦0.15、0≦α≦0.2
を満たす。
B1は、Ni、Co及びScのうちの少なくとも1つであることが好ましい。
シード層は立方晶又は擬立方晶であり、格子定数が0.4nm以下であることが好ましい。
圧電膜は、膜厚方向に優先的に配向した結晶配向性を有することが好ましい。
圧電膜は、内部応力が50~250MPaの範囲の引張応力であることが好ましい。
圧電膜は、膜厚方向に0kV/cmから200kV/cmの電界が印加された場合における電界-歪特性において、傾きが変化する特性を有することが好ましい。
シード層は、LaNiO又はSrRuOであることが好ましい。
本開示の圧電素子は、本開示の圧電積層体と、圧電膜上に形成された上部電極層と、を備えている。
本開示によれば、高い圧電特性を有し、かつ、長期安定性の高い圧電膜を備えた圧電積層体及び圧電素子を得ることができる。
一実施形態の圧電積層体及び圧電素子の構成を示す断面図である。 (a)は通常の圧電歪の様子を示す図であり、(b)は可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪の様子を示す図である。 一例の圧電膜における非180°ドメイン回転の様子及び電界-歪特性の例を模式的に示す図である。 他の一例の圧電膜における非180°ドメイン回転の様子及び電界-歪特性の例を模式的に示す図である。 通常の圧電歪のみの場合の電界-歪特性の例を模式的に示す図である。 実施例4及び比較例6についての電界-歪(変位量)特性の測定値を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面においては、視認容易のため、各層の層厚及びそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の層厚及び比率を反映したものではない。本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「圧電積層体5及び圧電素子1」
図1は、第1実施形態の圧電積層体5及び圧電積層体5を備えた圧電素子1の層構成を示す断面模式図である。図1に示すように、圧電素子1は、圧電積層体5と上部電極層18とを備える。圧電積層体5は、基板10と、基板10上に積層された、下部電極層12、シード層14及び圧電膜15を備える。圧電素子1は、圧電膜15に対して、下部電極層12と上部電極層18とにより膜厚方向に電界が印加されるように構成されている。ここで、「下部」及び「上部」は鉛直方向における上下を意味するものではなく、圧電膜15を挟んで基板10側に配置される電極を下部電極層12及び圧電膜15に関して基板10と反対の側に配置される電極を上部電極層18と称しているに過ぎない。
基板10としては特に制限なく、シリコン、ガラス、ステンレス鋼、イットリウム安定化ジルコニア、アルミナ、サファイヤ、シリコンカーバイド等の基板が挙げられる。基板10としては、シリコン基板の表面にSiO2酸化膜が形成された熱酸化膜付きシリコン基板等の積層基板を用いてもよい。
下部電極層12は、圧電膜15に電圧を加えるための電極である。下部電極層12の主成分としては特に制限なく、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極層12としては、特に、Pt(白金)及びIr(イリジウム)等の白金族が好ましい。
下部電極層12と基板10との間には、図示しない、Ti(チタン)もしくはTiW(チタンタングステン)合金等を主成分とする密着層を備えることが好ましい。
上部電極層18は、上記下部電極層12と対をなし、圧電膜15に電圧を加えるための電極である。上部電極層18の主成分としては特に制限なく、下部電極層12で例示した材料の他、クロム(Cr)等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及び酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ルテニウム(RuO)、ニッケル酸ランタン(LaNiO)、及びルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)等の導電性酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。
下部電極層12と上部電極層18の厚みは特に制限なく、50nm~300nm程度であることが好ましく、100nm~300nmがより好ましい。
シード層14は、シード層14上に設けられる圧電膜15の結晶性を高めるために設けられる層である。シード層14は、導電性酸化物であり、上層に設けられる圧電膜15の結晶性を高める機能を有する材料であれば、制限なく用いることができる。シード層14は、立方晶又は擬立方晶であり、格子定数がNb-PZT系の格子定数と同等以下であることが好ましい。シード層14の格子定数としては、具体的には、0.4nm(=4.0Å)以下であることが好ましい。シード層14の材料としては、具体的には、LaNiO、SrRuO及びコバルト酸ランタン・ストロンチウム(La,Sr)CoOなどが挙げられる。なお、LaNiOの格子定数は3.84Å、SrRuOの格子定数は3.905Å、(La,Sr)CoOの格子定数は3.84である。シード層14としては、LaNiO、SrRuOが特に好ましい。
圧電膜15は、下記一般式Iで表されるペロブスカイト型酸化物を含む。
Pb1-y2+αy2{(Ti,Zr)1-x-y1NbB1y1}O 一般式I
ここで、AはAサイト元素であって、少なくともLaを含む1つ以上の元素であり、
B1はTi,Zr及びNbを除くBサイト元素であって、2価もしくは3価の1つ以上の元素であり、
Oは酸素元素であり、
x、y1、y2、αは、
0.05<x≦0.3、0.2x≦y1+y2≦0.5x、0≦y1≦0.15、0≦y2≦0.15、0≦α≦0.2
を満たす。
xはBサイトにおけるNbの添加量を示し、0.05<x≦0.3であることは、BサイトにおけるNbのモル比が5%以上、30%以下であることを意味する。なお、xは、0.1≦x≦0.2であることが好ましく、0.15≦x≦0.2であることがより好ましい。
y1はBサイトにおけるB1元素の添加量を示し、y2はAサイトにおけるA元素の添加量を示す。0.2x≦y1+y2≦0.5xであることは、Nbの添加量xに対して、0.2x~0.5xの範囲でAサイト及び/又はBサイトにA元素及び/又はB1元素を添加することを意味する。0.2x≦y1+y2≦0.4x、0≦y1≦0.12、0≦y2≦0.12であることが好ましい。なお、A元素のみが添加されてもよいし、B1元素のみが添加されていてもよい。AサイトへのA元素の添加のみであってもよいし、BサイトへのB1元素の添加のみであってもよい。
一般式Iにおいて、Pb1-y2+αy2:(Ti,Zr)1-x-y1NbB1y1:Oは、1:1:3が基準であるが、ペロブスカイト型構造を取りえる範囲でずれていてもよい。
Pb1-y2+αy2:(Ti,Zr)1-x-y1NbB1y1:Oが、1:1:3である場合、α=0である。Pbは逆スパッタされやすい元素であり、成膜された圧電膜からPbが抜けると、結晶成長に悪影響を及ぼすことから、ターゲットのPb量を、化学量論組成よりも大きくして成膜を実施することが多い。その場合、Pbの逆スパッタ率によっては、成膜された膜もPbリッチ(すなわち、α>0)となることがある。圧電膜15におけるPbのモル比が化学量論組成以上であることが、良質なペロブスカイト型酸化物膜を得る観点から好ましい。
一般に、ABOで表されるペロブスカイト型酸化物における、Bサイト元素としては、Sc(スカンジウム)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、V(バナジウム),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Ru(ルテニウム)、Co(コバルト)、Ir(イリジウム)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Sn(すず)、Sb(アンチモン)などが挙げられる。
B1は、Ti,Zr及びNbを除くBサイト元素のうちの2価もしくは3価の1つ以上の元素を含む。B1としては、特には、Sc、Co及びNiのうちの1つ以上であることが好ましい。
PZT系のペロブスカイト型酸化物においては、モルフォトロピック相境界(MPB)及びその近傍で高い圧電特性を示すといわれている。PZT系では、Zr/Tiモル比=55/45近傍がMPBとなっている。上記一般式では、MPB組成又はその近傍であることが好ましい。「MPB又はその近傍」とは、圧電膜に電界を印加した際に相転移を生じる領域のことである。具体的には、Zr:Ti(モル比)は45:55~55:45の範囲内であることが好ましい。
ABOで表されるペロブスカイト型酸化物における、Aサイト元素としては、Pb(鉛)、Ba(バリウム)、Sr(ストロンチウム)、Bi(ビスマス)、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Cd(カドミウム)、Mg(マグネシウム)、K(カリウム)、及びランタノイドなどが挙げられる。
一般式I中のAは、Pbを除くAサイト元素のうちの少なくともLa(ランタン)を含む1つ以上の元素である。
特には、AがLaであり、B1がSc、Co、Niのうちの1つ以上であることが好ましい。La、Sc、Co及びNiのうちのいずれか1つのみが添加されてもよいし、2以上の組み合わせが添加されてもよい。La、Sc、Co及びNiのうち、例えば、Scのみを添加する場合、B1がSc元素であって、y2=0、0.2x≦y1≦0.5xを満たせばよい。
このように、圧電膜15に含まれるペロブスカイト型酸化物は、Nbが添加されたPZT(以下においてNb-PZT)において、所定の添加量のA元素及び/又はB1元素を追加元素として添加してなるPZT系ペロブスカイト型酸化物である。
なお、圧電膜15における上記一般式Iを満たすペロブスカイト型酸化物の含有率は、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい。さらには、圧電膜15は、不可避な不純物を除き、上記一般式Iを満たすペロブスカイト型酸化物であることが特に好ましい。
圧電膜15の厚みは、通常200nm以上であり、例えば0.2μm~5μmであるが、1μm以上が好ましい。
圧電膜15において、ペロブスカイト型酸化物の結晶が膜厚方向に優先的に配向した結晶配向性を有することが好ましい。正方晶c軸が膜厚方向に沿った(001)面配向、正方晶a軸が膜厚方向に沿った(100)面配向、もしくは菱面体晶の(111)面配向していることが好ましく、これらの混合であってもよい。
なお、結晶配向性の有無は、通常のθ-2θ法によるX線回折によって確認することができる。一方で、通常のθ-2θ法によるX線回折では、モルフォトロピック組成のNb-PZT系のペロブスカイト型酸化物の場合、正方晶(001)面、正方晶(100)面、及び菱面体晶の(111)面の反射ピーク位置が重なっておりほとんど区別ができない。本明細書において、「膜厚方向に結晶配向性を有する」とは、θ-2θ法によるX線回折によって取得される、全ての反射面からのピークに対する正方晶(001)面ピーク、正方晶(100)面ピーク及び菱面体晶(111)面ピークの総和の比を配向度とした場合に、配向度が80%以上であることを意味する。なお、配向度は90%以上であることが好ましい。
また、圧電膜15は、内部応力が50MPa~250MPaの範囲の引張応力であることが好ましく、110MPa~220MPaであることがより好ましい。内部応力がこの範囲であれば、圧電膜15にクラックが生じるのを効果的に抑制できる。
圧電膜15では、自発分極の分極方向と電界印加方向とが一致したときに、電界印加強度の増減によって電界印加方向に伸縮する通常の圧電歪と、可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪の双方の効果が得られる。可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪では、結晶格子が回転して大きな歪が得られるので、通常の圧電歪と可逆的非180ドメイン回転による圧電歪とが組み合わさることで、通常の圧電歪のみよりも大きな圧電歪が得られる。そのため、圧電素子1は、高い圧電特性(高い圧電定数)を有する。
ここで、図2を参照して、本圧電膜15において生じる非180°ドメイン回転に伴う圧電歪について説明する。図2の(a)は通常の圧電歪の様子を示した図である。図2中、矢印Eは電界印加方向を示し、矢印P0は電界無印加時の分極方向、矢印PEは電界印加時の分極方向を示している。
c軸が電界印加方向(すなわち圧電膜の膜厚方向)に配向した、すなわち(001)面配向したcドメインに対して、その分極方向に電界を印加すると(E>0)、電界印加方向に結晶格子が延びる。これが通常の圧電歪である。
これに対し、非180°ドメイン回転による圧電歪の様子を示したのが図2(b)である。図2(b)に示すように、a軸が電界印加方向に配向した、すなわち(100)配向したaドメインが、電界印加によって(E>0)、c軸が電界印加方向に配向したcドメインに90°ドメイン回転すると、結晶格子の長軸方向が90°回転して、図2(a)の圧電歪よりも大きな圧電歪が得られる。
既述の通り、本例の圧電膜15は、膜厚方向に電界が印加された場合に、非180°ドメイン回転による圧電歪と通常の圧電歪とを組み合わせた圧電歪を示す。そのため、本例の圧電膜15は、膜厚方向に電界が印加された場合に、図3あるいは図4に示すように、電界-歪特性において、傾きが変化する特性を有する。
図3は、圧電膜15の電界-歪特性の一例を模式的に示すグラフと、ドメインの非180°ドメイン回転を模式的に示した図である。また、図4は、圧電膜15の電界-歪特性の他の一例を模式的に示すグラフと、ドメインの非180°ドメイン回転を模式的に示した図である。なお、図5には比較のために非180°ドメイン回転による圧電歪を生じない圧電膜における電界-歪特性を模式的に示す図である。図3~図5中において、矢印Eは電界印加方向を示し、矢印Pは各ドメイン中における分極方向を示している。
図5に示すように、圧電膜が、一様にc軸が電界印加方向に配向したcドメインDcで構成されている場合、cドメインDcに対して、その分極方向Pに電界Eを印加するため、通常の圧電歪のみが生じる(図2(a)参照)。図5中のグラフに示すように、通常の圧電歪は電界に比例し、その傾きは一定である。
本例の圧電膜15は、PZTに対してNbに加え、A元素及び/又はB1元素が添加されているために、(001)面配向の結晶性に乱れが生じて、cドメインDcに加え、aドメインDaを含むものとなっている。この場合、電界と歪量との関係は、無電界からE1までの傾きと、E1からE2までの傾きと、E2以降の傾きというように傾きが3段階に変化する。
圧電膜15が、cドメインDcと共にaドメインDaを含む場合、厚み方向に電界Eが印加されると、cドメインDcに生じる通常の圧電歪に加え、aドメインDaの非180°ドメイン回転による圧電歪が生じる。具体的には、aドメインDa中の分極方向に対して垂直な方向に電界Eが印加されることにより、aドメインDaが90°ドメイン回転し、非180°ドメイン回転に伴う圧電歪が生じる。また、電界印加によりaドメインDaがcドメインDcとなるまで回転した後は、分極方向に電界が印加されることになるので、通常の圧電歪が生じる。なお、aドメインDaが90°ドメイン回転する際には、菱面体ドメインDbを経てcドメインDcへと回転する。菱面体ドメインDbまで回転するまでの変化量と、菱面体ドメインDbからcドメインDcまで回転するまでの変化量が異なるため、図3では、電界に対する歪量の変化量(傾き)が、3段階に変化する。E1において菱面体ドメインDbへのドメイン回転が生じ、その後、E2までcドメインDcへのドメイン回転が生じる。E2は圧電膜15内における回転可能なドメインの回転が完了する電界強度である。
また、本例の圧電膜15は、他の一例として、図4に示すように、cドメインDcに加え、菱面体ドメインDbを含む。この場合、電界と歪量との関係は、無電界からE3までの傾きと、E3以降の傾きというように傾きが2段階に変化する。
圧電膜15が、cドメインDcと共に菱面体ドメインDbを含む場合、厚み方向に電界Eが印加されると、cドメインDcに生じる通常の圧電歪に加え、菱面体ドメインDbの非180°ドメイン回転による圧電歪が生じる。具体的には、菱面体ドメインDb中の分極方向Pに対して交差する方向に電界が印加されることにより、菱面体ドメインDbがcドメインDcへと非180°ドメイン回転し、非180°ドメイン回転に伴う圧電歪が生じる。また、電界印加により菱面体ドメインDbがcドメインDcとなるまで回転した後は、分極方向に沿った方向に電界が印加されることになるので、通常の圧電歪が生じる。これにより、図3に示す例では、電界に対する歪量の変化量(傾き)が、2段階に変化する。無電界から電界を増加させると菱面体ドメインDbからcドメインDcへのドメイン回転が生じる。この場合、E3が圧電膜15内における回転可能なドメインの回転が完了する電界強度であり、E3を超えた領域においては通常の圧電歪に伴う歪変位が生じている。
なお、図3及び図4において、変化は全て直線で示しているが、実際の圧電素子を測定した場合には、傾きは徐々に変化し、電界と歪量との関係は電界-歪曲線(図6の実施例4参照)となる。そのため、傾きは近似線で示される。なお、電界と歪変位量との測定方法については実施例に詳細を説明する。
なお、圧電膜15は、実用的な電界範囲において大きな圧電歪を得るという観点から、膜厚方向に0kV/cmから200kV/cmの電界が印加された場合における電界と歪量の関係を示す電界-歪曲線において、傾きが変化する特性を有することが好ましい。
既述の通り、本例の圧電素子1及び圧電積層体5は、基板10上に、下部電極層12、シード層14、及び圧電膜15をこの順に備えている。シード層14が導電性酸化物からなり、圧電膜15は、既述の一般式Iで表されるペロブスカイト型酸化物を含む。本例においては、一般式Iを満たすペロブスカイト型酸化物において、Aサイトに添加するA元素、Bサイトに添加するB1元素の添加量の和y1+y2のNbの添加量xの0.2倍~0.5倍としている。これにより、Nb-PZTにおけるNb添加量を増加させた場合に生じる膜応力の増加を抑制することができるので、A元素及び/又はB1元素を添加しない場合と比較してNb添加量を増加させることができ、高い圧電特性を有する圧電膜を実現できる。
また、本例においては、下部電極層12と圧電膜15との間にシード層14を備え、シード層14上に圧電膜15を形成するので、圧電膜形成初期に生じ易いパイロクロア相の発生を効果的に抑制することができる。「背景技術」の項で述べた通り、特許文献1等において、Nb-PZTにNiあるいはScを添加することによりパイロクロア相が抑制できることが開示されている。しかし、「発明が解決しようとする課題」の項で述べた通り、本発明者らの検討によれば、Nb-PZTにNiあるいはScを添加した圧電素子について、長期信頼性が十分でない場合があった。本発明者らは、長期信頼性が十分でない原因が、圧電膜形成時に下部電極との界面に形成されるパイロクロア相にあることを見出した。特許文献1あるいは2に記載されている通り、NiあるいはScを添加することで、X線回折では、ほとんど観察されない程度にパイロクロア相は抑制されている。しかしながら、本発明者らは、圧電膜の断面TEM像を観察した場合に、成膜界面にパイロクロア相が形成されていること、及び、長期駆動を実施した場合にパイロクロア相を基点として絶縁破壊が生じることを見出した。シード層14を備えることにより、圧電膜15をシード層14に対してエピタキシャルライクに成長させることができるため、パイロクロア相の発生を抑制することができる。
「背景技術」の項で述べた通り、Nb-PZTは、PZTにNbを添加することにより非180°ドメイン回転に伴う大きな圧電歪を生じさせることにより圧電定数の向上を図った構成である。Nb-PZTにおいて、Nbを添加して圧電特性が高まるのは、Nbの添加により圧電膜15中におけるaドメインDaもしくは菱面体ドメインDbを相対的に増加させ、可逆的な非180°ドメイン回転を生じやすく、かつ小さな電界強度で非180°ドメイン回転を生じやすくするためである。これに対し、シード層14は、圧電膜15の結晶性を高め、(001)面配向したcドメインが相対的に増加する。そのため、シード層14を備えることで、パイロクロア相の発生を抑制できる一方で、非180°ドメイン回転が抑制されて非180°ドメイン回転による圧電歪が抑制されてしまう可能性が考えられる。これに対し、本発明者らはNb添加量xに対して0.2倍~0.5倍の添加量でA元素及び/又はB1元素を添加することにより、シード層14を備えてもなお、Nb添加による非180°ドメイン回転を抑制させず、高い圧電特性を得ることができることを見出した(後記実施例参照)。本例の圧電素子1及び圧電積層体5は、一般式Iを満たし、かつ、シード層14を備えた構成により、圧電膜15のaドメインDaもしくは菱面体ドメインDbを増加させることによる可逆的な非180°ドメイン回転に伴う圧電歪の増加と、結晶性を向上させることによるパイロクロア相の抑制を両立できる。したがって、圧電素子1及び圧電積層体5は、高い圧電特性を有し、かつ、高い長期安定性を有する。
なお、圧電膜15の結晶性を向上させるシード層14が、圧電膜15よりも圧電特性の低い誘電体あるいは絶縁体である場合、シード層14を備えない場合と比較して圧電素子の圧電特性が低下する。しかし、本例では、シード層14が導電性酸化物であるから、圧電素子において、シード層14は下部電極層12と共に圧電膜15に電界を印加する際の電極として機能するため、圧電特性の低下を抑制できる。
上記各実施形態の圧電素子1あるいは圧電積層体5は、超音波デバイス、ミラーデバイス、センサ及びメモリなどに適用可能である。
以下、本開示の圧電素子の具体的な実施例及び比較例について説明する。最初に、各例の圧電素子の作製方法について説明する。各層の成膜には、RF(Radio frequency)スパッタ装置を用いた。
(密着層成膜)
基板として、熱酸化膜付きシリコン基板を用いた。基板上に密着層として50nm厚みのTiW層を下記成膜条件にて成膜した。基板及び密着層についてはすべての実施例及び比較例において共通とした。
-TiW層スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:100mm
ターゲット投入電力:600W
Arガス圧:0.5Pa
基板設定温度:350℃
(下部電極層成膜)
TiW層上に下部電極層として、150nm厚みのIr層もしくはPt層を下記スパッタ条件にて成膜した。各実施例及び比較例における下部電極層の構成は、後記表1に示す通りとした。
-Ir層、Pt層のスパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:100mm
ターゲット投入電力:600W
Arガス圧:0.1Pa
基板設定温度:350℃
(シード層成膜)
下部電極層の上に連続してシード層として、200nm厚みのSrRuO3(SRO)層もしくはLaNiO3(LNO)層を成膜した。SRO層の成膜にはSROターゲットを用い、LNO層の成膜にはLNOターゲットを用い、いずれも下記スパッタ条件にて成膜した。各実施例及び比較例におけるシード層は、後記表1に示す通りとした。なお、比較例1~5については、シード層を形成しなかった。
-SRO層、LNO層スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:100nm
ターゲット投入電力:200W
真空度:0.3Pa、Ar/O混合雰囲気(O体積分率10%)
基板設定温度:450℃
(圧電膜成膜)
RFスパッタリング装置内に上記下部電極層及びシード層付きの基板、もしくは下部電極層付き基板を載置し、2μm厚みの圧電膜を下記スパッタ条件にて成膜した。圧電膜について、PZTへのNb添加量、Ni、Sc、Co及びLaのいずれを追加元素として添加したか、及びその添加量は後記表1に示す通りとした。表1中の各実施例及び比較例に示すNb添加量及び追加元素の添加量の圧電膜を形成するためのPZT焼結体ターゲットをそれぞれ用意した。ターゲット中のPb量は化学量論組成よりも多く設定し、Ti/Zrモル比はMPB組成(Ti/Zr=52/48)とした。表1中のNb添加量と追加元素の添加量は、ターゲット中における含有量と略同等であった。
-圧電膜スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:60mm
ターゲット投入電力:500W
真空度:0.3Pa、Ar/O混合雰囲気(O体積分率10.0%)
基板設定温度:700℃
(上部電極層成膜)
次に、RFスパッタリング装置の成膜チャンバ内に圧電膜15成膜後の基板10を載置し、ITO(Indium Tin Oxide)ターゲットを用い、厚み200nmのITO層を上部電極層18として成膜した。なお、上部電極層18の成膜前に、圧電膜15上に評価サンプル用のリフトオフパターンを作製し、上部電極層18はリフトオフパターン上に形成した。上部電極層18の成膜条件は、以下の通りとした。
-上部電極層スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:100mm
ターゲット投入電力:200W
真空度:0.3Pa、Ar/O混合ガス(O体積分率5%)
基板設定温度:RT(室温)
(評価用電極パターンの形成)
上部電極層18の形成後、リフトオフ法により、リフトオフパターンに沿って上部電極層をリフトオフして、上部電極層18をパターニングした。
以上の工程により、基板上に下部電極層、圧電膜及びパターニングされた上部電極層を備えた、各例の圧電積層基板を作製した。
(評価用サンプルの準備)
-評価用サンプル1-
圧電積層基板から、2mm×25mmの短冊状部分を切り出して、評価用サンプル1としてカンチレバーを作製した。
-評価用サンプル2-
圧電積層基板から、圧電膜の表面中心に直径400μmの円形にパターニングされた上部電極層を有する10mm×25mmの部分を切り出して、評価用サンプル2とした。
<圧電特性の評価>
各実施例及び比較例の圧電特性の評価として、圧電定数d31を測定した。
圧電定数d31の測定は、評価用サンプル1のカンチレバーを用い、I.Kanno et. al. Sensor and Actuator A 107(2003)68.に記載の方法に従い、下部電極層を接地し、上部電極層に-10V±10Vの正弦波の印加電圧で行った。各実施例及び比較例についての測定結果を表2に示す。
<電界-歪特性の測定>
各実施例及び比較例について、電界-歪特性を測定した。圧電特性の評価と同様の方法で、下部電極層と上部電極層間に電圧を印加し、印加電圧に対するカンチレバーの変位量を測定した。電界(=電圧/圧電膜の膜厚)とカンチレバーの変位量との関係を電界-歪特性としてグラフ化した。
取得した電界-変位量のグラフから傾きの変化の有無を確認した。評価結果は表2に示す。
実施例4及び比較例6についての測定データを図6に示す。実施例4の電界と変位量の関係は、低電界側で傾きa1で表され、高電界側で傾きa2で表される。すなわち、電界-歪(変位量)特性において、傾きが変化する特性を有する。このように、0kV/cm~200kV/cmの電界範囲において、電界-歪特性の傾きが変化する場合、変化「有」として評価した。比較例6の電界と変位量との関係は、0kV/cm~200kV/cmの電界範囲に亘って1つの傾きaで示されている。この場合、電界-歪特性における傾きの変化の有無は「無」と評価した。
<耐電圧の評価>
各実施例及び比較例の耐電圧(絶縁破壊電圧)を測定した。評価用サンプル2を用い、下部電極層を接地し、上部電極層にマイナスの電圧を-1V/秒の変化速度で電圧印加し、1mA以上の電流が流れた電圧を耐電圧とみなした。各例について10個のサンプルを作製し、合計10回の測定を行い、その平均値(絶対値)を耐電圧[V]として表2に示す。
<駆動安定性(長期信頼性)の評価>
各実施例及び比較例の駆動安定性の評価として経時的絶縁破壊(TDDB:Time Dependent Dielectric Breakdown)試験を行った。評価用サンプル2を用い、120℃の環境下にて、下部電極層を接地し、上部電極層に-40Vの電圧を印加して、電圧印加開始から絶縁破壊が生じるまでの時間(hr)を測定した。測定結果は表2に示す。なお、TDDB試験は1000時間行い、1000時間まで絶縁破壊が生じなかったものは、表2中において1000と記載した。
<パイロクロア相厚み評価>
実施例及び比較例について、TEM(Transmission Electron Microscope)像を撮影し、TEM像からパイロクロア相の厚みを決定した。圧電膜において、パイロクロア相とペロブスカイト相とでTEM像中におけるコントラストが異なるため、パイロクロア相の領域を特定し、厚みを算出することができる。なお、圧電膜のパイロクロア相以外の部分にはペロブスカイト型酸化物の柱状結晶体が形成されている様子が観察された。パイロクロア相の厚みは、パイロクロア相が下部電極層の表面に均一に形成されるわけではない為、平均厚みとして計算した。
具体的には、画像処理ソフトのコントラスト調整機能を利用して、所定のしきい値で原画像を2値化し、画像処理ソフトのエッジ抽出機能を用いてパイロクロア相を抽出する。この場合のしきい値は、できるだけノイズを除去すると共に明らかにパイロクロア相と判別できるものだけが抽出されるようにする。2値化画像においてパイロクロア型酸化物層の輪郭が不鮮明な場合、2値化画像を見ながら経験的に輪郭線を引き、その内部を塗りつぶす。抽出したパイロクロア相の面積を画像処理ソフトのピクセル数から算出しTEM像の視野幅で除して平均層厚とする。画像処理ソフトとしては、ここでは、Photoshop(登録商標)を利用した。上記のようにして求めたパイロクロア相の厚みを表1に示す。
<基板応力評価>
東朋テクノロジー社製薄膜ストレス測定装置FLXを用いて膜応力測定を行った。圧電膜成膜前後の積層体の反り量を測定し、反り量の変化から圧電膜の膜応力を算出した。
各実施例及び比較例の圧電素子の層構成を表1に示し、各実施例及び比較例の圧電素子についての評価結果を表2に示す。
表1に示す通り、実施例1~24は、基板上に、下部電極層、導電性酸化物のシード層及び圧電膜をこの順に備えた圧電素子であり、圧電膜は、一般式Iで表されるペロブスカイト型酸化物から構成されている。これに対し、比較例1~12は、シード層を備えていない、PZTに対してNb以外の追加元素の添加がない、Nbの添加量あるいは追加元素の添加量が規定範囲外であるなど、本開示の圧電積層体における圧電膜の条件を満たしていない。
実用化に当たって、目標値として、圧電定数が200pm/V以上、長期信頼性を示すTDDB試験結果が600h以上、耐電圧80V以上と設定した。実施例1~24はいずれも目標値をクリアし、比較例1~12は少なくともいずれかの評価において目標値をクリアしていなかった。本開示の圧電積層体の条件を満たすことにより、実用化に耐えうる高い圧電定数及び高い長期信頼性を備えた圧電素子が得られた。
表1及び表2に示すように、比較例1~4は、圧電膜がNb-PZTであり、追加元素の添加はなく、シード層を備えていない。比較例1~3は、Nbが添加されているので、電界-歪特性における傾きの変化が有りドメインの非180°ドメイン回転に伴う圧電歪が生じていると考えられる。また、比較例1~3によれば、Nb添加量が多いほど、圧電定数が高くなる傾向にあることが明らかである。比較例4のNb添加量が20mol%である場合には、Nb添加量が多すぎると圧電膜にクラック等が形成されてしまい圧電素子として機能しなかった。表2中の評価の項目において「-」とされているのは評価不能であったことを意味する。
比較例4と比較例5とでは、Nb-PZTにScを添加の有無のみが異なる。両者の比較から、高濃度のNb添加を実施した場合に、Scを添加することで圧電素子として機能する圧電膜が得られていることがわかる。比較例5では比較的高い圧電定数が得られた。一方で、比較例5は、耐電圧及び長期信頼性が低かった。
比較例6は、圧電膜がNb-PZTであり、かつシード層を備えた構成である。比較例1と比較例6はシード層の有無のみが異なる。比較例6は比較例1よりも圧電定数が低く、電界-歪特性における傾きの変化がなかった。比較例6の結果から、シード層を設けることにより、ドメインの非180°ドメイン反転が抑制されたと推察される。
比較例7~10は比較例6に対し、それぞれ、Sc、Ni、又はLaを添加している。いずれの圧電定数も比較例6と同様であり、ドメインの非180°ドメイン反転による圧電歪が得られなかった。Sc等の添加の効果もみられなかった。
比較例11では、Nb添加量を20mol%とし、Sc添加量を2mol%としたところ、圧電定数及び長期信頼性共に低かった。
比較例12では、Nb添加量を20mol%とし、Sc添加量を15mol%としたところ、非常に高い圧電定数の圧電膜を得ることができた。一方で、比較例12は、耐電圧が低く、かつ長期信頼性も低かった。Scの添加量が多くなりすぎると、価数のバランスが崩れるために耐電圧及び耐久性が低下すると考えられる。
実施例1~8は、Nb添加量を6~30mol%とし、Scを2xmolT以上添加した例である。Nb添加量が10~30mol%である実施例1~5、7及び8では、200pm/Vを超える圧電定数が得られた。Nb添加量が15~30mol%である実施例2~5、7及び8では、250pm/V以上の圧電定数が得られた。また、Nb添加量が10~20mol%であり、かつSc添加量が0.2x~0.3xである実施例2~4では、非常に高い圧電定数及び長期信頼性が得られた。実施例3~5は、Nb添加量xに対し、Sc添加量を0.2x~0.5xに変化させている。これらのうち、実施例5では最も高い圧電定数が得られたが、一方で、長期信頼性が他の実施例と比較すると低かった。Nb添加量が6mol%の実施例6では、実施例1~5、7及び8と比較すると圧電定数が低かった。Nb添加量が25mol%以上の実施例7、8では、非常に高い圧電定数が得られたが、耐電圧及び長期信頼性が実施例1~4及び6と比較して低かった。
実施例9は、実施例4に対し、Scに変えてCoを用いた。実施例4と略同等の評価結果が得られた。CoについてもScの場合と同様の添加量範囲で同様の効果を得られると考えられる。
実施例10~12は、実施例1、2及び4において、シード層をSROからLNOに変えた例である。実施例1、2、及び4とほぼ同等の評価結果が得られた。すなわち、シード層がSROでも、LNOでも略同様の効果が得られた。
実施例13~15は、実施例1、2及び4において、追加元素をScからNiに変えた例である。実施例1、2、及び4とほぼ同等の評価結果が得られた。
実施例16~18は、実施例1、2及び4において、追加元素をScからLaに変えた例である。実施例1、2、及び4とほぼ同等の評価結果が得られた。
追加元素がScである実施例1、2及び4、追加元素がCoである実施例9、追加元素がNiである実施例13~15、追加元素がLaである実施例16~18において、追加元素の添加量に応じて略同様の評価結果が得られた。このことから、実施例では、追加元素を単一の元素としているが、Sc、Ni,Co及びLaのうちの2以上を組み合わせても同様の結果が得られると考えられる。例えば、Scを6mol%添加するのに変えて、Sc2%、Ni2%及びCo2%として、計6%とすることで、Scを6mol%添加した場合と同様の効果が得られると考えられる。
実施例19~21は、実施例1、2及4において、下部電極層をIrからPtに変えた例である。この場合も実施例1、2、及び4と略同等の評価結果が得られた。すなわち、下部電極層がIrであってもPtであっても略同様の効果が得られた。
実施例22~24は、実施例19~21において、シード層をSROからLNOに変えた例である。この場合も実施例1、2、及び4と略同様の評価結果が得られた。
上記実施例では、追加元素として、Sc、Ni、Co又はLaを用いたが、これらと同様の振る舞いをする元素であれば、同様の評価結果が期待できる。
1 圧電素子
5 圧電積層体
10 基板
12 下部電極層
14 シード層
15 圧電膜
18 上部電極層

Claims (8)

  1. 基板上に、下部電極層、及び圧電膜をこの順に備えた圧電積層体であって、
    前記下部電極層と前記圧電膜との間に導電性酸化物からなるシード層を備え、
    前記圧電膜は、下記一般式Iで表されるペロブスカイト型酸化物を含む、圧電積層体。
    Pb1-y2+αy2{(Ti,Zr)1-x-y1NbB1y1}O 一般式I
    ここで、
    AはAサイト元素であって、少なくともLaを含む1つ以上の元素であり、
    B1はBサイト元素であって、2価もしくは3価の1つ以上の元素であり、
    Oは酸素元素であり、
    x、y1、y2、αは、
    0.05<x≦0.3、0.2x≦y1+y2≦0.5x、0≦y1≦0.15、0≦y2≦0.15、0≦α≦0.2
    を満たす。
  2. 前記B1は、Ni、Co及びScのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の圧電積層体。
  3. 前記シード層は立方晶もしくは擬立方晶であり、格子定数が0.4nm以下である、請求項1に記載の圧電積層体。
  4. 前記圧電膜は、膜厚方向に優先的に配向した結晶配向性を有する、請求項1に記載の圧電積層体。
  5. 前記圧電膜は、内部応力が50~250MPaの範囲の引張応力である、請求項1に記載の圧電積層体。
  6. 前記圧電膜は、膜厚方向に0kV/cmから200kV/cmの電界が印加された場合における電界-歪特性において、傾きが変化する特性を有する、請求項1に記載の圧電積層体。
  7. 前記シード層は、LaNiO又はSrRuOである、請求項1に記載の圧電積層体。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の圧電積層体と、
    前記圧電膜上に形成された上部電極層と、を備えた圧電素子。
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