JP2024009583A - 材質予測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱間圧延プロセスにおいて製造される鋼板の機械特性を簡便に予測することが可能な材質予測方法を提供する。【解決手段】熱間圧延プロセスにおいて製造される高強度鋼の鋼板の機械特性を予測する材質予測方法であって、予め鋼種毎に、複数の鋼板について、コイル巻き取り完了以降の所定の時刻から所定の時間が経過した時刻までの温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を温度履歴として取得して、製造したコイルの複数の位置において測定した機械特性と、取得した温度履歴から得られる位置での板温度に基づくパラメータとに基づいて、機械特性とパラメータとの相関式を求めておき、圧延対象の鋼板について、温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を取得して、コイルの任意の位置でのパラメータを算出し、対応する鋼種の相関式から機械特性を求める。【選択図】図1

Description

本発明は、熱間圧延プロセスにおいて製造される鋼板の機械特性を予測する材質予測方法に関する。
熱間圧延プロセスにて製造された鋼板は、通常、コイル状に巻き取られた後、冷却される。コイルの冷却過程においては、コイルの外周面、側面及び内周面がコイル内部よりも冷却されやすく、鋼板の長手方向に温度分布が生じる。この鋼板の長手方向の温度分布は、冷却後のコイルの引張強度(TS)やr値、降伏強度(YS)、一様伸び、破断伸び等の機械特性にバラツキに影響を与える。特に、高強度鋼の鋼板では、巻き取り後も変態が継続するため、コイルの冷却過程で生じる温度分布が材質に与える影響は大きい。機械特性のバラツキは製品としての品質に影響することから、製造した鋼板が全長全幅にわたって所望の機械特性を有するかを予測できることが望まれている。
ここで、温度変化により相変態をする材料の組織を定量的に予測する技術として、例えば特許文献1には、材料に温度変化を与えるための温度条件に基づいて材料の計算対象領域内の複数の計算点の温度を計算し、複数の計算点の温度に基づいて計算対象領域内の核生成回数を計算し、核生成回数に基づいて複数の計算点から析出相の核を生成する析出相生成点を決定し、析出相生成点について析出相の粒成長を計算し、計算された析出相の粒成長に基づいて材料の組織を予測する材料組織予測装置が開示されている。
特許第5919384号公報
しかし、上記特許文献1では、金属材サンプルから得られる母相の材料組織に関する情報から、メタラジーに基づき材料の組織を予測する。このため、材料の組織の予測に手間がかかる。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、熱間圧延プロセスにおいて製造される鋼板の機械特性を簡便に予測することが可能な、材質予測方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、熱間圧延プロセスにおいて製造される高強度鋼の鋼板の機械特性を予測する材質予測方法であって、予め鋼種毎に、複数の鋼板について、コイル巻き取り完了以降の所定の時刻から所定の時間が経過した時刻までの温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を温度履歴として取得して、製造したコイルの複数の位置において測定した機械特性と、取得した温度履歴から得られる位置での板温度に基づくパラメータとに基づいて、機械特性とパラメータとの相関式を求めておき、圧延対象の鋼板について、温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を取得して、コイルの任意の位置でのパラメータを算出し、対応する鋼種の相関式から機械特性を求める、材質予測方法が提供される。
パラメータは、温度取得期間内の、コイル巻き取り完了から所定の時間が経過した時点での板温度であってもよい。
また、パラメータは、予め設定された積算開始温度から積算終了温度までの積算期間において、積算開始温度からの板温度の変化量の時間についての積分値である積算温度であってもよい。
もしくは、パラメータは、予め設定された積算開始温度から積算終了温度までの積算期間において、積算開始温度からの板温度の変化量に累積時間を乗じた積算値である累積積算温度であってもよい。
温度履歴は、解析モデルを用いて計算により取得してもよい。
また、温度履歴は、製造したコイルの温度を実測することにより取得してもよい。
機械特性は、例えば引張強度であってもよい。
以上説明したように本発明によれば、熱間圧延プロセスにおいて製造される鋼板の機械特性を簡便に予測することができる。
本発明の一実施形態に係る熱間圧延設備の一例を示す説明図であって、仕上圧延機以降の設備を示す。 コイルの温度履歴を求める解析モデルの一例を示す説明図である。 コイルの温度履歴の解析結果の一例を示すグラフである。 図2に示した9点のコイル位置でのコイル巻き取り直後から始まるコイル冷却から30分後の板温度と引張強度の測定値との一関係例を示すグラフである。 図2に示した9点のコイル位置での30分冷却後の板温度と引張強度とを整理した結果を示すグラフである。 温度履歴から求める積算温度を説明するための説明図である。 図2に示した9点のコイル位置での積算温度と引張強度との一関係例を示すグラフである。 図2に示した9点のコイル位置での累積積算温度と引張強度との一関係例を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[1.設備構成]
まず、図1に基づいて、熱間圧延プロセスの設備構成を説明する。図1は、本実施形態に係る熱間圧延設備1の一例を示す説明図であって、仕上圧延機30以降の設備を示している。
熱間圧延プロセスでは、熱間圧延設備1により、加熱したスラブを所定の板厚に圧延して、コイル状に巻き取る。加熱炉(図示せず。)にて加熱されたスラブは、粗圧延機(図示せず。)により圧延された後、仕上圧延機30により所定の板厚にまで圧延される。その後、鋼板は、冷却設備40を経て、ピンチロール70によってコイラー80に誘導され、所定の巻き取り温度でマンドレル85によりコイル状に巻き取られる。
熱間圧延プロセスにおける鋼板の全長全幅にわたる温度制御は、予め、所定の材質、例えば引張強度(TS)やr値、降伏強度(YS)、一様伸び、破断伸び等の機械特性が目標値以内となる巻き取り温度を求めておき、予め求めた巻き取り温度となるように熱間圧延設備1を制御することにより行われる。具体的には、鋼板長手方向(通板方向)の温度は、仕上圧延機30の入側に設置されたバーヒータ10による加熱と、仕上圧延機30とコイラー80との間に設置された冷却装置40による冷却とによって制御される。板幅方向の温度は、仕上圧延機30の入側に設置されたエッジヒータ20による加熱と、仕上圧延機30からコイラー80までの間のランアウトテーブル50に、冷却装置40に対応して設置されたエッジマスク55による冷却調整とにより制御される。
図1に示す熱間圧延設備1には、仕上圧延機30の出側に、鋼板の仕上出側温度を測定する仕上出側温度計61が設置され、冷却装置40の出側に、コイラー80による巻き取り前の鋼板の温度を測定する巻取前温度計63が設置されている。仕上出側温度計61及び巻取前温度計63により測定された鋼板の温度に基づき、制御装置(図示せず。)は、鋼板の巻き取り温度が予め求めた巻き取り温度となるように、バーヒータ10やエッジヒータ20、冷却装置40、エッジマスク55を制御する。
熱間圧延設備1にて製造されたコイルCは、コイルヤードに搬送され、保管される。
[2.コイルの機械特性の予測]
熱間圧延プロセスにて製造された鋼板は、コイル状に巻き取られた後、コイルヤードへの搬送中及びコイルヤードにて冷却(空冷)される。鋼板の長手方向における板温度は、巻き取り直後はほぼ均一であるが、冷却時間が長くなるにつれてバラツキが生じる。この鋼板の長手方向の温度分布は、冷却後のコイルの機械特性にバラツキに影響を与える。特に、巻き取り後も変態が継続する高強度鋼の鋼板では、コイルの冷却過程で生じる温度分布が材質に与える影響は大きい。そこで、本願発明者は、コイルの冷却過程における鋼板の温度変化と、冷却後の機械特性との関係を調べるべく、数値解析を実施した。なお、製造されたコイルに求められる機械特性としては引張強度(TS)やr値、降伏強度(YS)、一様伸び、破断伸び等があるが、以下では、機械特性の一例として引張強度を取り上げ、説明する。
数値解析は、図2に示す解析モデルを用いて有限要素解析を実施した。解析モデルとして、1/4周、板幅1/2の軸対称コイルを設定した。コイル仕様は、板幅1000mm、板厚2.5mm、板長1000mとした。外気温度は15℃とし、熱伝達率については、自然対流20W・m-2-1、ステファンボルツマン定数σ(=5.67×10-8W・m-2-4)、輻射率0.6とした。なお、板厚は板幅、板長に比べて十分に小さいため、板厚方向の温度分布はないものとみなした。
かかる数値解析では、図2に示す解析モデルの計算領域Scの9点(Pe1~Pe3、Pq1~Pq3、Pc1~Pc3)での板温度を計算した。点Pe1~Pe3は、コイル側面において、コイル径方向の最外周部、ミドル部、最内周部の位置を示す。点Pq1~Pq3は、コイル側面から板幅1/4だけ中央側(クォーター部ともいう。)において、コイル径方向の最外周部、ミドル部、最内周部の位置を示す。点Pc1~Pc3は、コイル板幅中央において、コイル径方向の最外周部、ミドル部、最内周部の位置を示す。
なお、コイル径方向の最外周部、ミドル部、最内周部は、適宜設定されるが、例えば全長が1000mの鋼板を巻き取ったコイルにおいて、鋼板の先端から5mの位置を最内周部、鋼板の先端から500mの位置をミドル部、鋼板の先端から1000mの位置(すなわち尾端の位置)を最外周部としてもよい。
解析結果を図3に示す。図3では、計算領域Scの9点のうち、コイル側面、クォーター部、板幅中央それぞれのミドル部(Pe2、Pq2、Pc2)での板温度、コイル側面の最外周部(Pe1)での板温度、及び、コイル板幅中央の最内周部(Pc3)での板温度の時間変化(温度履歴)を示している。また、各時間において、計算領域Scの9点の板温度のうち最大板温度と最小板温度との差をバラツキ(max-min)として示している。
図3より、冷却開始時の板温度はコイルのいずれの位置においてもほぼ同じであるが、外気に触れるコイル側面の最外周部(Pe1)は急速に温度が低下する。一方で、コイルのミドル部のクォーター部(Pq2)及び板幅中央(Pc2)での板温度の低下は緩やかである。板温度のバラツキは、冷却開始から約100分までは増加し、その後減少する。このように、コイル冷却過程ではコイル位置によって板温度にバラツキが生じていることがわかる。
次に、コイルの冷却開始から30分経過後の各コイル位置での板温度と、熱間圧延設備にて実際に製造したこれらのコイルの引張強度(TS)の測定値との関係を調べた。図4に、各コイル位置でのコイル巻き取り直後から始まるコイル冷却から30分後の板温度と製造された鋼板の引張強度の測定値とを示す。図4には、コイル板幅中央の径方向位置での比較結果(a)、コイルミドル部の板幅方向位置での比較結果(b)、コイル最内周部の板幅方向位置での比較結果(c)、コイル最外周部の板幅方向位置での比較結果(d)を示している。なお、コイルミドル部はコイル全長の半分の位置とした。
(a)に示すように、コイル板幅中央の径方向位置で板温度を比較すると、ミドル部が最も高く、最外周が最も低い。測定した引張強度も、ミドル部、最内周、最外周に低くなっている。また、(b)~(d)に示すように、板幅方向位置で板温度を比較すると、板幅中央、クォーター部、コイル側面の順に低くなる。測定した引張強度も、板幅中央、クォーター部、コイル側面に低くなっている。図4の各グラフが示す結果に多少のバラツキはあるが、いずれの結果からも板温度が低くなると引張強度(TS)が高くなることが確認された。
そして、9点のコイル位置における30分冷却後の板温度と引張強度(TS)とを整理すると、図5に示すように、一次関数の相関式(y=-0.6137x+1049.7)で表すことができ、自由度決定係数(R)が0.91の相関があることが確認された。これは、コイル冷却過程で生じた板温度分布と最終的な鋼板の引張強度(TS)とに相関があることを意味する。かかる結果から、本願発明者は、コイル冷却過程における板温度に基づくパラメータと、常温となったコイルの引張強度との関係を相関式として予め求めておけば、圧延対象の鋼板について、所定の熱間圧延条件を設定し、解析モデル用いてコイル冷却過程における板温度を求めることで、上記相関式から製造される鋼板の引張強度を予測できることを想到した。
ここで、コイル冷却過程における板温度に基づくパラメータとは、コイルの材質に影響するコイル冷却過程での板温度に関する情報をいう。かかるパラメータは、例えば、コイルの冷却開始から所定時間経過後の板温度そのものであってもよく、コイル冷却過程での板温度の変化量の時間についての積分値であってもよい。このようなパラメータを用いれば、コイルの機械特性(例えば引張強度(TS))との関係を表す適切な相関式を得ることができる。以下、鋼板の引張強度の予測に関し、コイルの板温度に基づくパラメータとして、コイルの板温度を用いる場合(手法A)、コイルの板温度の変化量の時間についての積分値(以下、「積算温度」とも称する。)を用いる場合(手法B)、及び、コイルの板温度の変化量に累積時間を乗じた積算値(以下、「累積積算温度」とも称する。)を用いる場合(手法C)について説明する。
(手法A:コイルの板温度と引張強度との相関式に基づく引張強度の予測)
図5に示したように、コイルの冷却開始から30分経過後の9点のコイル位置での板温度と鋼板の引張強度(TS)の測定値との間には、例えば一次関数で表される相関があることがわかる。したがって、コイルの板温度に基づくパラメータとして、コイル巻き取り完了から所定の時間が経過した時点での、コイルの複数位置における板温度を用いて、冷却後に常温となったコイルの機械特性との関係を表すことができる。パラメータとコイルの材質との相関式は、鋼種毎に求める。
具体的は、まず、相関式を求めるため、1つの鋼種について、コイルの冷却開始時の板温度の異なる複数のコイルの冷却過程の板温度の変化を取得する。板温度は、コンピュータを用いた数値解析により求めてもよく、実測して取得してもよい。例えば、数値解析により求める場合、入力値を鋼板の巻き取り温度として、実機におけるコイルの冷却を模擬した解析を、図2に示した解析モデルを用いた有限要素解析、または、差分法を用いた解析を行う。これにより、コイル巻き取り完了からの冷却完了までの、少なくとも所定の時間が経過するまでの、冷却過程でのコイルの全長及び全幅にわたる板温度の変化(温度履歴)を求めることができる。また、コイルの冷却過程における板温度変化を実測する場合には、例えば熱電対等を用いて鋼板の温度を測定すればよい。
ここで、温度履歴を取得する温度取得期間は、コイル巻き取り完了以降の所定の時刻から所定の時間が経過した時刻までの所定の時間であって、鋼種に応じて適宜設定される。温度取得期間の長さは、コイルの冷却過程において変態が生じ得る時間に対応しており、通常5~60分程度、例えば30分程度に設定される。
また、これらの冷却開始時の板温度の異なる複数のコイルについて、実際に冷却を行い、冷却後に常温となったコイルの引張強度を測定する。引張強度は、コイルの複数の位置で測定される。例えば、図2に示した解析モデルのように、コイルの側面、クォーター部、板幅中央で、最外周部、ミドル部、最内周部それぞれの位置で引張強度を測定すればよい。引張強度の測定位置の数を増やすことで、求める相関式の精度を高めることができる。また、相関式の精度を高めるため、冷却過程における板温度の変化の大きいコイルの最外周部、最内周部の位置での引張強度を求めるとよい。
次いで、数値解析または実測することにより取得されたコイル巻き取り完了から所定の時間が経過した時点でのコイルの板温度と、測定したコイルの引張強度との関係を求める。すなわち、引張強度の測定位置それぞれについて、数値解析または実測することにより取得された冷却開始から所定の時間経過時点での板温度を対応づける。そして、複数位置での板温度と引張強度とに基づき、これらの関係を表す相関式を求める。相関式は、近似式として表され、例えば図5に示したような一次関数であってもよく、二次以上の高次関数、指数関数、対数関数、累乗関数であってもよく、回帰式の形は限定されない。このような近似式を鋼種毎に予め求めておく。
圧延対象の鋼板の引張強度を予測する際は、圧延対象の鋼板について、まず、コンピュータを用いた数値解析または実測により、温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を取得する。板温度の取得は、相関式を求めるために予め実施した数値解析または実測と同様に行えばよい。そして、予め求めた当該鋼種の相関式を用いて、数値解析または実測により得られた、任意の位置における、前記温度取得期間内のコイル巻き取り完了から所定の時間が経過した時点での板温度に対応する引張強度を求める。このように、鋼板の全長及び全幅にわたって板温度を求めれば、コイル全体の各位置における引張強度が求まり、圧延対象の鋼板の引張強度を予測することができる。
(手法B:コイルの板温度の変化量の積算温度と引張強度との相関式に基づく引張強度の予測)
コイルの板温度に基づくパラメータとして、コイル冷却過程での板温度の変化量の時間についての積分値(積算温度)を用いる場合も、上述の手法Aと同様に、圧延対象の鋼板の引張強度の予測に用いる相関式を求めればよい。
具体的は、まず、相関式を求めるため、1つの鋼種について、コイルの冷却開始時の板温度の異なる複数のコイルの冷却過程の板温度の変化(温度履歴)を、コンピュータを用いた数値解析または実測により取得する。また、これらの冷却開始時の板温度の異なる複数のコイルについて、実際に冷却を行い、冷却後に常温となったコイルの引張強度を測定する。これらの処理は、上述の手法Aと同様に行えばよい。
次に、コイルの板温度に基づくパラメータであるコイルの板温度の変化量の時間についての積分値(積算温度)を求める。
まず、積算温度を求めるための積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eを一旦設定する。積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eは、引張強度の測定位置それぞれにおける温度履歴に対し、共通に用いられる。積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eの設定は、積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eを任意に設定し、積算開始温度Tsum_sから積算終了温度Tsum_eまでの板温度の変化量の時間についての積分値(積算温度)を、引張強度の測定位置それぞれでの温度履歴に対して求める。そして、一旦設定して求めた積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eでの複数点の積算温度と引張強度の測定値との自由度決定係数を求め、線形計画法や非線形計画法等の数理最適化手法を用いて自由度決定係数が最も高くなるように積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eを変更し、自由度決定係数が最大値となる共通の積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eを決定する。
共通の積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eを設定すると、次いで、引張強度の測定位置それぞれでの温度履歴について積算温度を求める。積算温度は、温度履歴が積算開始温度Tsum_sから積算終了温度Tsum_eまでの積算期間における、時間tにおけるコイルの板温度T(t)と積算開始温度Tsum_sとの差ΔT(t)(=Tsum-s-T(t))を積算した値である。具体的には下記式(1)で表すことができる。なお、式(1)において、Δtは板温度の取得時間間隔(板温度取得周期)である。
Figure 2024009583000002
図6に、コイルの異なる位置において得られた温度履歴A、B、Cを示す。各温度履歴A、B、Cのグラフにおいて横軸は冷却開始(すなわち、コイル巻き取り完了時点)からの時間を示し、縦軸はコイルの板温度を示す。温度履歴Aが得られたコイルの位置に比べて、温度履歴Bが得られたコイルの位置の冷却は緩やかであり、温度履歴Cが得られたコイルの位置の冷却は速い。これらの温度履歴A、B、Cに対して共通の積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eを設定して算出された、コイルの板温度の変化量ΔT(t)の時間についての積分値が、積算温度TTである。温度履歴Aの積算温度TTに比べて、温度履歴Bの積算温度TTは大きく、温度履歴Cの積算温度TTは小さくなる。
このように引張強度の測定位置それぞれでのコイルの積算温度を算出すると、コイルの積算温度と、測定した鋼板の引張強度との関係を求める。すなわち、引張強度の測定位置それぞれについて、数値解析または実測により得られた温度履歴から算出した積算温度を対応づける。そして、複数位置での積算温度と引張強度とに基づき、これらの関係を表す相関式を求める。相関式は、近似式として表され、例えば図7に示したような一次関数として表すことができる。図7の相関式(y=-0.0016x+804.1)には、自由度決定係数(R)が0.88の相関がある。なお、相関式は、二次以上の高次関数、指数関数、対数関数、累乗関数であってもよく、回帰式の形は限定されない。このような近似式を鋼種毎に予め求めておく。
圧延対象の鋼板の引張強度を予測する際は、圧延対象の鋼板について、まず、コンピュータを用いた数値解析または実測により、温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる温度履歴を取得する。板温度の取得は、相関式を求めるために予め実施した数値解析または実測と同様に行えばよい。そして、取得された任意の位置における温度履歴から、共通の積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eの区間におけるコイルの板温度の変化量ΔT(t)の時間についての積分値を積算温度として算出する。その後、予め求めた当該鋼種の相関式を用いて、算出した積算温度に対応する引張強度を求める。このように、鋼板の全長及び全幅にわたって積算温度を求めれば、コイル全体の各位置における引張強度が求まり、圧延対象の鋼板の引張強度を予測することができる。
(手法C:コイルの板温度の変化量に累積時間を乗じた累積積算温度と引張強度との相関式に基づく引張強度の予測)
手法Cは、手法Bの変形例であり、コイルの板温度に基づくパラメータとして、コイル冷却過程での板温度の変化量に累積時間を乗じた積算値(累積積算温度)を用いて、圧延対象の鋼板の引張強度を予測する。
累積積算温度の算出処理では、まず、手法Bと同様、温度履歴に対して共通に用いられる積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eを設定する。そして、設定した共通の積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eに基づき、引張強度の測定位置それぞれでの温度履歴について累積積算温度を求める。累積積算温度は、時間tでのコイルの板温度T(t)と積算開始温度Tsum_sとの差ΔT(t)に、積算開始温度Tsum_sとなった積算開始時間tから時間tまでの累積時間t(=t-t)を乗じて、温度履歴が積算開始温度Tsum_sから積算終了温度Tsum_eまでの積算期間において積算した値である。具体的には下記式(2)で表すことができる。
Figure 2024009583000003
上記式(2)に基づき、引張強度の測定位置それぞれでのコイルの累積積算温度を算出し、コイルの累積積算温度と測定した鋼板の引張強度との関係を求めることで、手法Bと同様、圧延対象の鋼鈑の温度履歴を取得すれば、当該鋼板の引張強度を予測することができる。図8に、コイルの累積積算温度と引張強度との関係を示す。手法Cで取得する相関式も、近似式として表され、例えば図8に示したような一次関数として表すことができる。図8の相関式(y=-0.000005x+781.99)には、自由度決定係数(R)が0.95の相関がある。なお、相関式は、二次以上の高次関数、指数関数、対数関数、累乗関数であってもよく、回帰式の形は限定されない。
以上説明したように、コイル冷却過程における板温度に基づくパラメータと引張強度との相関式を予め求めておくことにより、圧延対象の鋼板の引張強度を予測することができる。かかる手法によれば、製造された鋼板の材料組織を解析することなく、簡便に圧延対象の鋼板の引張強度を予測することが可能となる。
なお、コイルの板温度に基づくパラメータとして、コイルの積算温度または累積積算温度を用いた場合、設定した積算開始温度Tsum_s及び積算終了温度Tsum_eは、コイル冷却時に生じる変態の開始及び終了に対応するものと考えられる。このため、コイルの積算温度または累積積算温度はメタラジーの概念を考慮したパラメータともいえる。一方で、コイルの板温度をパラメータとして用いる場合には、コイルの板温度の積分値(積算温度)をパラメータとして用いる場合よりも簡便に実施でき、計算負荷を軽減することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、鋼板の温度が仕上圧延機の入側に設置されたバーヒータ及びエッジヒータによる加熱と、仕上圧延機とコイラーとの間のランアウトテーブルに設置された冷却装置及びエッジマスクによる冷却とによって制御される場合を例に説明したが、加熱装置及び冷却装置の設置位置はかかる例に限定されない。
また、上記実施形態では、機械特性として引張強度を取り上げ説明したが、r値、降伏強度(YS)、一様伸び、破断伸び等の、他の機械特性についても同様に予測することができる。一例として、図7のように積算温度を横軸、機械特性を縦軸にとり、相関式として一次関数の近似式を求めたとき、相関式の自由度決定係数(R)は、r値では0.70、降伏強度(YS)では0.90、一様伸びでは0.92、破断伸びでは0.87となった。このように、いずれの機械特性についてもコイルの板温度に基づくパラメータと高い相関があることから、上述した引張強度の予測の場合と同様に、本発明によってこれらの機械特性を予測することが可能である。
なお、以下の構成も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)
熱間圧延プロセスにおいて製造される高強度鋼の鋼板の機械特性を予測する材質予測方法であって、
予め鋼種毎に、複数の鋼板について、
コイル巻き取り完了以降の所定の時刻から所定の時間が経過した時刻までの温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を温度履歴として取得して、
製造したコイルの複数の位置において測定した機械特性と、取得した前記温度履歴から得られる前記位置での板温度に基づくパラメータとに基づいて、機械特性とパラメータとの相関式を求めておき、
圧延対象の鋼板について、前記温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を取得して、前記コイルの任意の位置での前記パラメータを算出し、対応する鋼種の前記相関式から機械特性を求める、材質予測方法。
(2)
前記パラメータは、前記温度取得期間内の、コイル巻き取り完了から所定の時間が経過した時点での板温度である、上記(1)に記載の材質予測方法。
(3)
前記パラメータは、予め設定された積算開始温度から積算終了温度までの積算期間において、前記積算開始温度からの板温度の変化量の時間についての積分値である積算温度である、上記(1)に記載の材質予測方法。
(4)
前記パラメータは、予め設定された積算開始温度から積算終了温度までの積算期間において、前記積算開始温度からの板温度の変化量に累積時間を乗じた積算値である累積積算温度である、上記(1)に記載の材質予測方法。
(5)
前記温度履歴は、解析モデルを用いて計算により取得する、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の材質予測方法。
(6)
前記温度履歴は、製造したコイルの温度を実測することにより取得する、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の材質予測方法。
(7)
前記機械特性は、引張強度である、上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の材質予測方法。
1 熱間圧延設備
10 バーヒータ
20 エッジヒータ
30 仕上圧延機
40 冷却装置
50 ランアウトテーブル
61 仕上出側温度計
63 巻取前温度計
70 ピンチロール
80 コイラー
85 マンドレル
C コイル

Claims (7)

  1. 熱間圧延プロセスにおいて製造される高強度鋼の鋼板の機械特性を予測する材質予測方法であって、
    予め鋼種毎に、複数の鋼板について、
    コイル巻き取り完了以降の所定の時刻から所定の時間が経過した時刻までの温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を温度履歴として取得して、
    製造したコイルの複数の位置において測定した機械特性と、取得した前記温度履歴から得られる前記位置での板温度に基づくパラメータとに基づいて、機械特性とパラメータとの相関式を求めておき、
    圧延対象の鋼板について、前記温度取得期間におけるコイルの全長及び全幅にわたる板温度を取得して、前記コイルの任意の位置での前記パラメータを算出し、対応する鋼種の前記相関式から機械特性を求める、材質予測方法。
  2. 前記パラメータは、前記温度取得期間内の、コイル巻き取り完了から所定の時間が経過した時点での板温度である、請求項1に記載の材質予測方法。
  3. 前記パラメータは、予め設定された積算開始温度から積算終了温度までの積算期間において、前記積算開始温度からの板温度の変化量の時間についての積分値である積算温度である、請求項1に記載の材質予測方法。
  4. 前記パラメータは、予め設定された積算開始温度から積算終了温度までの積算期間において、前記積算開始温度からの板温度の変化量に累積時間を乗じた積算値である累積積算温度である、請求項1に記載の材質予測方法。
  5. 前記温度履歴は、解析モデルを用いて計算により取得する、請求項1~4のいずれか1項に記載の材質予測方法。
  6. 前記温度履歴は、製造したコイルの温度を実測することにより取得する、請求項1~4のいずれか1項に記載の材質予測方法。
  7. 前記機械特性は、引張強度である、請求項1~4のいずれか1項に記載の材質予測方法。
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