JP2024008451A - 荷電粒子線装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】荷電粒子線装置において、荷電粒子ビームのビーム径変動をより高周波まで計測できる技術を提供する。【解決手段】荷電粒子線装置は、荷電粒子ビームを発生させるための荷電粒子源と、前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向器と、前記荷電粒子ビームの照射に応じて照射対象物から放出される二次電子を検出する検出器と、プロセッサシステムと、を備える。前記プロセッサシステムは:(A)以下の(A1)および(A2)を繰り返し行うことで二次電子検出関連量の第1時系列変化を取得し、(A1)直接的又は間接的に、前記偏向器に与える制御量を第1制御量に維持又は変化させ、(A2)前記検出器からの出力に基づいて、前記二次電子検出関連量を取得し、(B)前記第1時系列変化に基づいて、前記荷電粒子ビームのビーム径変動の時系列変化を取得する。【選択図】図1

Description

本発明は、荷電粒子線装置に関し、特に、電子ビームのビーム径の変動を計測可能な荷電粒子線装置に関する。
近年、半導体デバイスなどの試料の構造を解析するために、荷電粒子線装置の1つである走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)が用いられている。SEM装置では、電子ビームが、試料上において照射および走査され、試料の表面から放出された二次電子または反射電子が、検出器において検出される。二次電子は、試料の表面の凹凸および材質の情報を含む。照射された領域ごとに、二次電子のエネルギーおよび数の変化を輝度値に変換することで、撮影像(SEM像)が形成される。
このようなSEM装置における電気ノイズ計測技術として、特許文献1に開示の技術がある。特許文献1には、試料の高地と試料の低地との境界で、電子ビームを連続的に照射することで、輝度の変動を計測し、計測された輝度の変動から電子ビームの揺れに変換することで、電気ノイズの計測に貢献する技術が開示されている。
特開2022-26395号公報 特開2012-26989号公報
発明者の分析によって得られた知見として、電気ノイズが電子ビームの揺れではなく、電子ビーム径の変動を発生させる場合があることが判明した。このような知見に基づいて特許文献1を見たとき、特許文献1の技術では、電子ビーム径の変動を取得できない。
なお、特許文献2に開示の技術は、当該文献の課題「ハードウェアの調整では機差をなくすことが困難な測長SEM群の機差補正方法を提供すること、及び、試料の経時変化に影響されない、測長SEMの経時変化のモニタ方法を提供する」のために、ビーム径の変動を計測する技術であるので、高周期(高周波)対応が困難である。
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
一実施の形態における荷電粒子線装置は、荷電粒子ビームを発生させるための荷電粒子源と、前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向器と、前記荷電粒子ビームの照射に応じて照射対象物から放出される二次電子を検出する検出器と、プロセッサシステムと、を備える。前記プロセッサシステムは:(A)以下の(A1)および(A2)を繰り返し行うことで二次電子検出関連量の第1時系列変化を取得し、(A1)直接的又は間接的に、前記偏向器に与える制御量を第1制御量に維持又は変化させ、(A2)前記検出器からの出力に基づいて、前記二次電子検出関連量を取得し、(B)前記第1時系列変化に基づいて、前記荷電粒子ビームのビーム径変動の時系列変化を取得する。
また、前記荷電粒子線装置において、前記二次電子検出関連量は、二次電子検出量であり、前記第1制御量は、前記照射対象物のラインプロファイルの最大値(局所最大値含む)の位置に対応した制御量である。
また、前記荷電粒子線装置において、前記照射対象物は、試料、又は前記試料とステージとの組み合わせであり、前記二次電子検出関連量は、前記検出器の出力の加工値であり、前記第1制御量は、前記照射対象物の境界に荷電粒子ビームを照射したときの制御量であり、前記境界は、前記照射対象物の第1領域と第2領域との間に位置し、前記第1領域は、前記試料の一部であり、前記第2領域は、前記試料のうち前記第1領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第1領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部である。
一実施の形態における荷電粒子線装置は、荷電粒子ビームを発生させるための荷電粒子源と、前記荷電粒子ビームを偏向させる走査コイルと、前記荷電粒子ビームの照射に応じて照射対象物を透過した透過電子を検出する検出器と、プロセッサシステムと、を備える。前記プロセッサシステムは:(A)以下の(A1)および(A2)を繰り返し行うことで透過電子検出関連量の第1時系列変化を取得し、(A1)直接的又は間接的に、前記走査コイルに与える制御量を第1制御量に維持又は変化させ、(A2)前記検出器からの出力に基づいて、前記透過電子検出関連量を取得し、(B)前記第1時系列変化に基づいて、前記荷電粒子ビームのビーム径変動の時系列変化を取得する。
また、前記荷電粒子線装置において、前記透過電子検出関連量は、透過電子検出量であり、前記第1制御量は、前記照射対象物のラインプロファイルの最大値(局所最大値含む)の位置に対応した制御量である。
また、前記荷電粒子線装置において、前記照射対象物は、試料、又は、前記試料とステージの組み合わせであり、前記透過電子検出関連量は、前記検出器の出力の加工値であり、前記第1制御量は、前記照射対象物の境界に荷電粒子ビームを照射したときの制御量であり、前記境界は、前記照射対象物の第1領域と第2領域との間に位置し、前記第1領域は、前記試料の一部であり、前記第2領域は、前記試料のうち前記第1領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第1領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部である。
一実施の形態によれば、荷電粒子線装置において、より高周波な電子ビームのビーム径変動を取得できる。
実施の形態1における荷電粒子線装置を示す模式図である。 実施の形態1における電子ビームのビーム径変動を示す模式図である。 実施の形態1における特定箇所を示す平面図である。 実施の形態1における特定箇所の一例を示すグラフである。 実施の形態1における特定箇所の撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイルである。 実施の形態1における特定箇所の撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイルである。 実施の形態1における特定箇所の撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイルである。 実施の形態1における輝度の時系列変化を示すグラフである。 実施の形態1における電子ビームのビーム径変動の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施の形態2における特定箇所の撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイル、輝度の時系列変化を示すグラフおよび輝度変動の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施の形態3における電子ビームのビーム径変動を示す平面図である。 実施の形態3における特定箇所を示す平面図である。 実施の形態3における特定箇所の撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイルである。 実施の形態3における特定箇所の撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイルである。 実施の形態4における環境変化および経年劣化による電子ビームのビーム径変動の増減のモニタリングを示す模式図である。 実施の形態4における電子ビームのビーム径変動の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施の形態4における電子ビームのビーム径変動の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施の形態4における電子ビームのビーム径変動の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施の形態4におけるGUIを示す模式図である。 実施の形態5における荷電粒子線装置を示す模式図である。 実施の形態5における荷電粒子線装置の一部を示す模式図である。
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、以下の実施の形態では主に以下の場合について説明するが、その他の場合についても適用可能である。「荷電粒子ビーム」の例としては、円状(楕円を含む)の照射形状を持つ電子ビームが挙げられる。「照射対象物」の例としては、試料、又は、試料およびステージが挙げられる。「二次電子検出関連量」の例としては、輝度が挙げられる。「ビーム径変動の時系列変化の取得」の例としては、ビーム径の増減の時間変化の取得が挙げられる。ただし、ビーム径およびビーム径変動の幾何学長の取得は省略する。
なお、ラインプロファイルは、照射対象物に定義された有限長線分上の二次電子検出関連量の変化を表す情報である。当該変化は、線分方向に沿った二次電子検出関連量の変化である。1ラインプロファイルでは、有限線分上の二次電子検出関連量の経時変化は示せない。有限長線分の定義は、ユーザ又はプログラムによって行われる。
そして、以下の実施の形態では、ラインプロファイルの具体例として、二次電子検出関連量を輝度とするラインプロファイルである「輝度プロファイル」を用いて説明する。また、有限長線分が直線の場合で説明する。なお、「輝度」は、ユーザにグラフまたは画像を表示するときの画素に関する値(例えば0~255の範囲の整数)である。なお、撮影像は、ユーザ視認性向上のためにコントラスト調整が行われることがあるので、撮影像、又は、撮影像から作製される輝度プロファイルに含まれる輝度も、他の画素の輝度に基づいて調整されることがある。
一方で、以下に示す実施の形態では、必ずしも輝度プロファイルが、表示装置を用いてGUIに表示されるわけではない。例えば、輝度以外の二次電子検出量が表示されてもよい。輝度以外の二次電子検出量とは、例えば、所定時間内に検出した二次電子の数、または、巨視的には検出器が検出した電流量である。また、それらのデータ形式として、整数型以外にも、浮動小数点または固定小数点形式で、二次電子検出量が表現されてもよい。
なお、本明細書における「取得」は、辞書的な意味の通りであるが、念のために述べると、対象物の作製でも取得が発生し、算出や変換した場合でもその結果の取得が発生する。また、行為主体(プロセッサシステムまたはプロセッサ)の外部からの対象物の受信(入力)も、その行為主体にとっては取得である。特に説明なく製作、算出または変換という単語を用いた場合でも、その抽象的な意味として取得することを意味する。
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する場合もある。本願で用いられる「平面視」という表現は、X方向およびY方向によって構成される面を、Z方向から見ることを意味する。
(実施の形態1)
<荷電粒子線装置の構成>
以下に図1を用いて、実施の形態1における荷電粒子線装置100について説明する。以下で説明する荷電粒子線装置100は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM装置)である。
また、近年、省電力化のために、SEM装置にスイッチング電源が搭載されている。スイッチング電源に起因して、SEM装置内では、100kHz以上の電気ノイズが増加している。それ故、電気ノイズによって引き起こされる電子ビームの揺れおよび電子ビームのビーム径変動も、100kHz以上に高周波化している。従って、ノイズ源の特定および対策による根本的な画質改善のために、これらを検出する技術にも、高周波への対応が求められている。荷電粒子線装置100には、100kHz以上のスイッチング電源が搭載されている。
図1に示されるように、荷電粒子線装置100は、試料室1、電子ビーム(荷電粒子ビーム)EB1を発生させるための電子源(荷電粒子源)2、偏向器3、レンズ4、試料10を設置するためのステージ5、検出器6およびプロセッサシステム7を備える。プロセッサシステム7は、プロセッサ7a、変換器7b、記録装置8および表示装置9を含む。プロセッサシステム7は、電子源2、偏向器3、ステージ5および検出器6に電気的に接続され、これらを制御可能である。なお、電子源2は例えば、電子銃である。また、偏向器3は、例えばコアを伴ったコイルのような磁界型の偏向器であるが、電極板を用いた電界型の偏向器であってもよい。
検査対象となる試料10を観察する場合、試料室1の内部は、高真空にされ、試料10が、ステージ5上に搭載される。電子源2から放出された電子ビーム(荷電粒子ビーム)EB1は、レンズ4によって収束され、試料10のうち所望の位置へ走査される。検出器6は、例えば二次電子検出器であり、電子ビームEB1が試料10に照射された際に、試料10から放出される二次電子EB2を検出する。なお、本明細書における二次電子は、反射電子も含めてもよい。また、検出器6は、例えば、SiPM、シンチレータ、ホトマル、または、これらの組み合わせであってもよい。なお、これら素子の出力は、プロセッサシステム7にて望まれる、二次電子検出量そのものを出力しない場合があったり、ノイズを含む場合もある。よって、検出器6の一部として、これら素子の制御回路を含んでもよい。また、検出器6の一部として変換器7bを含んでもよい。
検出器6で検出された二次電子EB2は、プロセッサシステム7において、サンプリングされ、信号処理される。プロセッサシステム7は、信号を解析し、検出器6で検出された二次電子EB2の量によって、撮影像(SEM像)と、撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイルとを作製できる。プロセッサシステム7で作製された各種のデータは、記録装置8に保存される。また、プロセッサシステム7は、必要に応じて記録装置8に保存された解析結果を表示装置9に表示できる。
記録装置8は、例えばRAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などのような、不揮発性または揮発性の記録媒体である。また、記録装置8は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)メモリまたはメモリカードなどのような、書き換え可能な記録媒体であってもよい。表示装置9は、例えばディスプレイである。
なお、記録装置8には、プロセッサシステム7で作製された各種のデータの他に、プロセッサ7aが実行するための分析プログラムを含む。プロセッサシステム7で行われる各処理は、プロセッサ7aが上記分析プログラムを記録装置8から読み出すことで、実現される。
プロセッサ7aは、記録装置8に格納されている各種プログラムを読み込んで、各プログラムに対応する処理を実行する演算装置である。なお、プロセッサ7aは、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、量子プロセッサ、または、演算処理を行うことができる半導体デバイスである。
変換器7bは、検出器6からのアナログ信号をデジタル信号へ変換する装置であり、例えばA/Dコンバータである。変換器7bには、アナログ信号をデジタル化した後、画像のコントラスト調整またはノイズ削除などの前処理を行う機能が備えられていてもよい。
<電子ビームのビーム径変動の計測>
実施の形態1におけるプロセッサシステムは、以下の動作(A)および動作(B)を行う。
(A)以下の(A1)および(A2)を繰り返し行うことで二次電子検出関連量の第1時系列変化を取得する。
(A1)直接的又は間接的に、偏向器3に与える制御量を第1制御量に維持又は変化させる。
(A2)検出器6からの出力に基づいて、上記二次電子検出関連量を取得する。
(B)上記第1時系列変化に基づいて、荷電粒子ビーム(電子ビームEB1)のビーム径変動の時系列変化を取得する。
より具体的には、プロセッサシステム7は、輝度プロファイルのうち最大輝度の時系列変化を算出でき、その時系列変化に基づいて、最大輝度の変動に関する周波数スペクトルを算出できる。そして、最大輝度の変動に関する周波数スペクトルは、電子ビームEB1のビーム径変動に関する周波数スペクトルであると見做せる。従って、この周波数スペクトルに含まれる周波数から、ビーム径変動の原因となっている周波数を特定できる。このような機能について、以下に図2~図9を用いて説明する。
図2は、電子ビームEB1のビーム径が、試料10上で変動していることを示す模式図である。
試料10上のビーム径が小さい程、細かな構造を撮像できるので、分解能が向上する。そのためには、電子ビームEB1の焦点位置は、試料10の表面でちょうど一致していることが好ましい。しかし、電子ビームEB1を収束させるためのレンズ4の制御が上手くいかない等の理由で、焦点位置が試料10よりも下方または上方になると、試料10上のビーム径が大きくなり、分解能が低下する。
特に、近年では、省電力化のために、荷電粒子線装置100に100kHz以上のスイッチング電源を搭載することが行われている。100kHz以上の高周波の電気ノイズがレンズ4に重畳すると、制御不能な高周波のビーム径変動が発生し、分解能が低下する虞がある。
なお、電子ビームEB1の焦点位置が試料10から上下に変動することをデフォーカスと呼ぶが、一般には、ビーム径変動は、デフォーカス以外にも起因する。本願の手法は、デフォーカスによるビーム径変動に限定されず、一般的なビーム径変動を計測可能である。
図3は、撮像対象を示す平面図である。図3のうち特定箇所11が、実際に撮像が行われる箇所となる。特定箇所11は、領域1A、領域1Aに隣接する領域2A、および、領域1Aと領域2Aとの境界BRを含んでいる。領域1Aは、試料10の一部である。領域2Aは、試料10のうち領域1Aと高低差が発生している領域である。
図4は、そのような特定箇所11の高低差を示している。図5は、特定箇所11に対して電子源2から電子ビームEB1が照射された場合の輝度プロファイルである。高低差が存在している場合、電子ビームEB1の走査によって撮像された撮影像の輝度が、境界BRにおいて極端に大きくなることが知られている。電子ビームEB1により発生する二次電子EB2は、試料10の上面に加えて、試料10の側面からも放出されるからである。
すなわち、境界BRが、図5に示される輝度プロファイルにおける最大輝度(又は最大輝度を持つX座標上の位置)に対応している。実施の形態1では、ビーム径変動の原因を特定するために、この最大輝度を利用する。なお、輝度プロファイルは、指定した領域(典型的にはユーザが指定した有限長の直線)上の輝度変化を示す情報であり、二次元グラフである。典型的には、横軸は、有限長直線上の座標(位置)であり、縦軸は、その位置における輝度である。なお、以後の説明では、最大輝度は、輝度値そのものを指している場合もあれば、最大輝度を持つX座標上の位置を示している場合もある。なお、グラフとしての輝度プロファイル上で、最大値を持つ領域を最大値領域と呼ぶことがある。
なお、輝度プロファイル作成時の横軸の座標を得るために、実際の試料10上の幾何学的距離または長さを参照することはない。その代わりとして、SEM装置の電子ビームEB1が生成され、試料10に至るまでに関係する部品の制御量を基として、横軸の座標を得る。当該制御量の一例が、プロセッサシステムが偏向器3に指示した偏向量に関連する制御量である。なお、当該制御量と電子ビームEB1の実際の偏向量との関係は、線形である必要は無い。なお、以後の実施の形態2で対象とするビーム揺れは、制御量には成分として乗ることはない。そのため、ビーム揺れの影響で試料上の過去の照射位置からずれた位置に、電子ビームEB1が照射されることがある。それ故、異なる時点での輝度プロファイルの同じ座標上の輝度が変化することになる。
なお、偏向器3が磁界型の偏向器の場合、制御量は、偏向器に与える電流量、又は、偏向器の前段に位置する電流供給回路(入力信号に応じた電流を出力する)に与える入力信号値である。偏向器3が電界型の偏向器の場合、制御量は、偏向器に与える電圧量、または、偏向器の前段に位置する電圧供給回路(入力信号に応じた電圧を出力する)に与える入力信号値である。何れにせよ、プロセッサシステム7が直接的又は間接的に偏向器に制御量を与えることで、プロセッサシステム7は、偏向器による電子ビームEB1の偏向量を制御する。
なお、領域2Aは、高低差のある領域に限られず、境界BRにおいて十分に大きな輝度が得られる構成であればよい。例えば、領域2Aは、試料10のうち領域1Aと異なる材質からなる領域であってもよいし、ステージ5の一部のように、試料10の外部の領域であってもよい。
図6は、ビーム径変動の計測原理を説明するための輝度プロファイルである。図6には、ビーム径が大きい場合およびビーム径が小さい場合の各々の輝度プロファイルが示されている。ビーム径が小さい場合には、輝度プロファイルはシャープになるが、ビーム径が大きい場合には、輝度プロファイルはなだらかになる。
ここで、輝度プロファイルのうち最大輝度に着目すると、ビーム径変動が、輝度の差になって表れていることが判る。図4で例示すると、ビーム径が大きくなると、境界BRに照射される電子ビームEB1の量が、ビーム径が小さいときと比較して、薄まるからである。すなわち、輝度変動を計測することで、ビーム径変動を計測することができる。
なお、最大輝度は、ビーム揺れの影響が少ない。図4を例として理由を説明する。一次ビームEB1は円状に照射されるので、最大輝度を得ているときの一次ビームEB1は、その中心が境界BRに位置する。その状態の後、一次ビームEB1がX方向に微小に揺れたとする。しかし、揺れ量が微小であれば、円状のビームEB1に照射される境界BR1の長さ(物理現象としては、面積がより正確である)の関係は、揺れ量よりも小さなオーダーの変化となる。よって、輝度プロファイルの減少量も、揺れ量よりも小さなオーダーとなる。このことは、例え電子ビームEB1の強度分布が、円中心(照射中心)を最大値とするガウシアン分布またはポアソン分布であったとしても、円中心付近が近似的に等分布と見做せるので、円中心付近は、同様な影響関係となる。従って、輝度プロファイルの最大輝度の変動に注目することで、ビーム径変動をビーム揺れから分離して計測することが可能になる。
以下に図7~図9を用いて、ビーム径変動を計測するための手法について具体的に説明する。なお、以下の説明において、特に明記がない場合、その手法の実行主体は、プロセッサシステム7である。
まず、ステージ5上に試料10を設置する。次に、ステージ5上の特定箇所11に対して電子源2から電子ビームEB1を連続的又は繰り返しに照射する。ここで、プロセッサシステム7は、図7に示される輝度プロファイルを繰り返し作製し、輝度プロファイルのうち最大輝度の変動を逐一計測する。これにより、プロセッサシステム7は、図8に示される最大輝度の時系列変化を算出する。この最大輝度の時系列変化は、電子ビームEB1のビーム径の時系列変化であると見做せる。
なお、本明細書では、電子ビームEB1の走査パターンを有限長の直線とすることで、撮影像を作製せずに、輝度プロファイルを作製する場合について説明する。しかし、撮影像を作製し、撮影像から輝度プロファイルを作製してもよい。後者の場合、特定箇所11は撮影像の一部となるので、特定箇所11への電子ビームEB1の照射は、連続的ではなく、連続的又は繰り返しとなる。なお、前者の場合、特定箇所11は、有限長直線(より正確には有限長直線に、電子ビームEB1のビーム径相当の幅)となる。
なお、前者(撮影像作製を省略した輝度プロファイル製作)の場合、プロセッサシステム7による輝度プロファイルの作製処理は、有限長直線の始端から終端に沿うように、偏向器3に与える制御量を変化させつつ、その時々で以下(1)(2)を行う。
(1)偏向器3に与えている制御量から、輝度プロファイルのX座標の位置を決定する。
(2)上記(1)の制御量の時に得られた輝度を取得する。
輝度プロファイルを繰り返し取得する場合、制御量が終端に相当した後に、再び始端相当の制御量に戻せばよい。
なお、ここの輝度プロファイルから最大輝度の位置を特定する処理は、以下の「位置決定方法1」および「位置決定方法2」である。
「位置決定方法1」最初の輝度プロファイルで決定した最大輝度のX座標上の位置を、次以降の輝度プロファイルの各々の位置として使う。なお、最初の輝度プロファイルでの位置決定は、ユーザによって指定されてもよく、プロセッサシステム7が所定の基準に基づいて決定してもよい。例えば、最初の輝度プロファイルでの位置決定は、最大値または微分値に基づいて決定される。
「位置決定方法2」最初の輝度プロファイルに対して説明した「位置決定方法1」を、次以降の輝度プロファイルでの位置決定にも使う。
次に、高速フーリエ変換(FFT)などの周波数解析を用いることで、プロセッサシステム7は、最大輝度の時系列変化に基づいて、図9に示される最大輝度の変動に関する周波数スペクトルを算出する。この周波数スペクトルは、電子ビームEB1のビーム径変動に関する周波数スペクトルであると見做せる。
図9の周波数スペクトルを参照することで、ビーム径変動が、主にどのような周波数で発生しているのかが分かる。ここでは、周波数fおよび周波数fがビーム径変動の原因であると特定できる。
一般的に、ビーム揺れおよびビーム径変動の周波数と、それらの原因になっているノイズの周波数とは一致する。従って、ビーム径変動に関する周波数スペクトルに含まれる大きなピークの周波数を記録しておけば、それと一致する周波数を発するノイズ源を探し、そのノイズ源に対策を施すことで、ビーム径変動の根本的な解決が可能となる。
また、特許文献2のようなSEMシミュレーションのような処理は不要であるので、より高周波なスペクトルまで対応できる。特に、撮影像を作製せずに輝度プロファイル又はラインプロファイルを作製する場合、電子ビームEB1の走査範囲を大幅に少なくすることができるので、より高周波対応が可能となる。なお、この高周波対応に対するメリットについては、以後で説明する実施の形態でも言えることである。
以上のように、実施の形態1によれば、荷電粒子線装置100に100kHz以上のスイッチング電源が搭載されている場合でも、荷電粒子線装置100において、最大輝度の変動から電子ビームEB1のビーム径変動を計測でき、ビーム径変動の原因になっているノイズ源を特定できる。
(実施の形態2)
以下に図10を用いて、実施の形態2における荷電粒子線装置100について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
実施の形態2では、ビーム揺れと、ビーム径変動と、検出系ノイズとが同時に存在する場合に、これらを分離して計測する方法について説明する。
なお、検出系ノイズとは、検出器6乃至プロセッサシステム7のいずれかの部品に影響するノイズであり、電子ビームEB1を照射していない場合でも検出されるノイズである。
実施の形態2では、図10に示される輝度プロファイルのうち、最大輝度以外の位置についての輝度変動を算出する。図10に示されるように、輝度プロファイルは、最大輝度と、一定の輝度を示す平坦箇所と、最大輝度と平坦箇所との間に位置し、且つ、輝度が連続的に変化している勾配箇所とを有している。
図3を参照すると、平坦箇所は、領域1Aまたは領域2Aのうち一定の範囲で輝度の変化がほぼ無い箇所であり、ステージ5の表面、または、試料10のうち構造パターンの変化が無い箇所などに対応している。図4を例とすると、平坦箇所が現れる場合、電子ビームEB1が境界BRを照射しないほどに、電子ビームEB1が境界BRから離れた場合である。勾配箇所は、領域1Aまたは領域2Aのうち輝度が連続的に変化している箇所であり、試料10のうち構造パターンの変化がある箇所などに対応している。
図4を例とすると、勾配箇所が現れる場合、電子ビームEB1の円中心と、境界BRとの距離が、ビーム半径に近い場合である。当該距離がビーム半径と等しい場合から、少しずつ距離を近づけると、境界BRの長さの増分は、円中心と境界BRとの距離の増分量よりも大きなオーダーで増える。電子ビームEB1の強度分布が前述のガウシアン分布またはポアソン分布の場合、この関係は穏やかとなるが、同様である。よって、電子ビームEB1がX方向に揺れた場合に輝度が変化しやすい。なお、勾配箇所は、境界BRと電子ビームEB1との位置関係に感度が高い場合に発生するとも言える。
なお、最大輝度の位置を決定するプロセッサシステム7による処理の例は、実施の形態1で示した通りであるが、同様の処理を勾配箇所および平坦箇所のX座標上の位置決定に用いる。なお、最大輝度、勾配箇所および平坦箇所では、前述の「位置決定方法1」又は「位置決定方法2」が統一して適用される必要はなく、これらが使い分けられてもよい。例えば、最大輝度では位置決定方法2を行い、勾配箇所では位置決定方法1を行い、平坦箇所では位置決定方法2を行う、という使い分けが行われてもよい。
図10を用いた説明に戻る。まず、実施の形態1と同様に、プロセッサシステム7は、最大輝度における第1時系列変化を算出し、高速フーリエ変換(FFT)などを用いて、その第1時系列変化に基づいて、最大輝度の変動に関する第1周波数スペクトルを算出する。ここで、ビーム揺れは最大輝度の変動に全く寄与しないので、最大輝度の変動は、ビーム径変動および検出系ノイズに起因するものとなる。
次に、プロセッサシステム7は、平坦箇所における輝度の第2時系列変化を算出し、高速フーリエ変換(FFT)などを用いて、その第2時系列変化に基づいて、平坦箇所における輝度変動に関する第2周波数スペクトルを算出する。平坦箇所では、ビーム揺れおよびビーム径変動は輝度変動に全く寄与しないが、検出系ノイズは試料10に関わらず検出されるので、輝度変動は、検出系ノイズのみに起因するものとなる。
次に、プロセッサシステム7は、勾配箇所における輝度の第3時系列変化を算出し、高速フーリエ変換(FFT)などを用いて、第3時系列変化に基づいて、勾配箇所における輝度変動に関する第3周波数スペクトルを算出する。勾配箇所における輝度変動は、ビーム揺れと、ビーム径変動と、検出系ノイズとの全てに起因するものとなる。
これら第1、第2および第3周波数スペクトルを比較することで、ビーム揺れの原因になっている周波数と、ビーム径変動の原因になっている周波数と、検出系ノイズに起因する周波数とを特定することができる。
すなわち、第1、第2および第3周波数スペクトルで共通している周波数は、検出系ノイズに起因する周波数を含んでいるということになる。また、第1および第3周波数スペクトルで共通している周波数は、電子ビームEB1のビーム径変動の原因になっている周波数を含んでいるということになる。また、第3周波数スペクトルのみに存在する周波数は、電子ビームEB1のビーム揺れの原因になっている周波数を含んでいるということになる。その後、実施の形態1と同様に、これらと一致する周波数を発するノイズ源を探し、そのノイズ源に対策を施せばよい。
以上のように、実施の形態2によれば、ビーム揺れと、ビーム径変動と、検出系ノイズとが同時に存在する場合でも、それぞれの原因になっているノイズ源を特定できる。なお、共通の周波数特定については、プロセッサシステム7が行ってもよいし、各スペクトルの表示を確認したユーザが行ってもよい。
(実施の形態3)
以下に図11~図14を用いて、実施の形態3における荷電粒子線装置100について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
実施の形態3では、1つの方向におけるビーム径変動だけでなく、他の方向におけるビーム径変動を計測する方法について説明する。ノイズが伝搬する光学部品によっては、ビーム径変動の量が方向によって異なるという場合があると考えられる。そこで、図11に示されるように、例えば、X方向のビーム径は変動せず、Y方向のビーム径のみが、ノイズによって変動するという場合について考察する。
図12に示されるように、境界BRは、Y方向に延在する境界BRaと、Y方向と異なる方向(ここではX方向)に延在する境界BRbとを含む。実施の形態1では、境界BRaを含むように、X方向の特定箇所11aについて計測を行っていた。実施の形態3では、境界BRbを含むように、Y方向の特定箇所11bについても計測を行う。すなわち、実施の形態3では実施の形態1と同様の手法を用いて、プロセッサシステム7は、境界BRaの周波数スペクトルを算出した後、境界BRbの周波数スペクトルを算出する。
図13に示されるように、X方向の特定箇所11aでの計測を行った際に、最大輝度の変動が無い場合には、ビーム径変動も無いと判断できる。一方で、図14に示されるように、Y方向の特定箇所11bでの計測を行った際に、最大輝度の変動が起こった場合には、ビーム径変動があると判断できる。
このように、互いに異なる方向に延在する境界BRを順次計測することで、どの方向のビーム径がノイズによる影響を受けているのかを特定できる。また、実施の形態3では、X方向およびY方向を一例として説明したが、他の方向においても同様の効果を得ることができる。例えば、円形パターンの試料10を用いて、360度の全ての方向に対して計測を行うこともできる。
なお、実施の形態3で開示した技術を、実施の形態2で開示した技術に組み合わせて実施することもできる。
(実施の形態4)
以下に図15A~図15Dを用いて、実施の形態4における荷電粒子線装置100について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
実施の形態4では、一定期間毎に電子ビームEB1のビーム径変動の算出を行い、装置内外の環境変化および経年劣化をモニタする方法について説明する。
なお、図15Aに示される計測のタイミングB~Dにおける周波数スペクトルは、それぞれ、図15B~図15Dに対応している。
まず、荷電粒子線装置100を出荷する前に、ビーム径変動を計測し、その周波数スペクトルを記録しておく。分解能は、ビーム径変動が大きいほど劣化すると考えられる。そこで、分解能劣化の指標として、例えばビーム径変動に関する周波数スペクトル中の全てのピーク値に対して、二乗和平方根などを用いることで、総合的なビーム径変動の強度を定義する。出荷前における総合的なビーム径変動の強度を計算し、記録装置8に記録する。
次に、荷電粒子線装置100の設置後、例えば1カ月毎にビーム径変動の計測を実行し、その都度、ビーム径変動の強度を計算し、それらを周波数スペクトルと共に記録装置8に保存する。
各計測のタイミングに対するビーム径変動の強度をプロットすることによって、装置内外の環境変化または経年劣化によるビーム径変動が分解能の劣化にもたらす影響を、定量的に把握することができる。
図15Aに示される破線は、各計測のタイミングにおけるビーム径変動の強度を表している。また、ハッチングされた領域は、出荷前のビーム径変動の強度を表している。この例では、荷電粒子線装置100の設置後、1カ月目と2カ月目との間に大きな周辺環境変化が起こり、ビーム径変動が、極端に増加し、事前に設定されていた異常検出レベルを超えている。
その後、ノイズ対応を行い、ビーム径変動は、3カ月目には元の水準に落ち着いている。その後も毎月、ノイズの計測を行い、12カ月目の計測を終えた後にメンテナンスが行われ、それまで経年劣化によって増大したビーム径変動が、13カ月目には設置直後の水準に落ち着いている。
図15B~図15Dは、それぞれ荷電粒子線装置100の設置の直後、装置設置後2カ月目および装置設置後12カ月目における電気ノイズの計測結果を表しており、周波数スペクトルのうち太線は、ノイズピークを表している。
図15Aのビーム径変動の強度は、これらの周波数スペクトルのピーク値を用いて計算されている。図15Bでは、ほとんどノイズピークが見当たらなかったのに対して、図15Cおよび図15Dでは、ノイズピークの数および値が増えている。顧客は、図15Aを見ることによって、試料10を撮影する前に、分解能が劣化していることが予想できるので、迅速にノイズ対応を行うことができる。
また、メンテナンス担当者は、図15B~図15Dのビーム径変動を見て、どの位置にピークが出ているかを記録し、環境ノイズおよび周波数の対応を確認することによって、即座にノイズ源を特定することが出来る。
図16は、定期的なビーム径変動の計測結果を表示するGUIの例である。図15A~図15Dを用いて説明したように、ビーム径変動(周波数スペクトル)の算出が一定期間毎に実施され、それらの結果は、記録装置8に保存される。プロセッサシステム7は、記録装置8に保存されている一定期間毎の周波数スペクトルを、図16のように、表示装置9のウィンドウWD3に表示できる。
ウィンドウWD1内には、様々な項目が表示される。ウィンドウWD1の左上では、時間軸データのインターバルを月1回、週1回、毎日および任意(ユーザー定義)に設定するためのチェックボックスが表示されている。ユーザが何れかのチェックボックスにチェックを入れると、ウィンドウWD1の右上に、計測タイミング毎のビーム径変動の強度を示すウィンドウWD2が表示される。
計測タイミング、サンプリング速度および取得データ点数は、ウィンドウWD1内に設けられた設定ボタンBT1をユーザが押すことで、変更できる。ウィンドウWD2内に表示されているビーム径変動の強度のうち何れかをユーザが選択すると、ウィンドウWD3のように、その時の周波数スペクトルが表示される。
また、即座にノイズの計測を行いたい場合は、サンプリング速度およびデータ取得点数をユーザが設定し、ウィンドウWD1内に設けられた即時計測用の実行ボタンBT2をユーザが押すことで、ビーム径変動の算出が実行され、ウィンドウWD3に周波数スペクトルが表示される。
なお、実施の形態4で開示した技術を、実施の形態2および実施の形態3で開示した技術に組み合わせて実施することもできる。
(実施の形態5)
以下に図17および図18を用いて、実施の形態5における荷電粒子線装置200について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
実施の形態1では、荷電粒子線装置100としてSEM装置を使用したが、実施の形態5における荷電粒子線装置200は、透過型電子顕微鏡(TEM装置)である。また、荷電粒子線装置200にも、100kHz以上のスイッチング電源が搭載されている。
図17に示されるように、荷電粒子線装置200は、試料室20、電子ビームを照射するための電子源21、照射レンズ22、走査コイル23、ステージ24、二次電子用の検出器25、レンズ26、円環状検出器27、検出器28、カメラ29およびプロセッサシステム30を備える。プロセッサシステム30は、プロセッサ30a、変換器30b、記録装置31および表示装置32を含む。なお、電子源21は例えば、電子銃である。また、走査コイル23は、例えばコアを伴ったコイルのような磁界型の偏向器であるが、電極板を用いた電界型の偏向器であってもよい。
プロセッサシステム30は、電子源21、照射レンズ22、走査コイル23、ステージ24、検出器25、レンズ26、円環状検出器27、検出器28およびカメラ29に電気的に接続され、これらの動作を制御する。プロセッサ30a、変換器30b、記録装置31および表示装置32は、荷電粒子線装置100のプロセッサシステム7に含まれるプロセッサ7a、変換器7b、記録装置8および表示装置9と同様のものである。
電子源21は、電子ビームEB1を照射可能である。試料10は、ステージ24の先端に取り付けられた試料ホルダ上に設置される。照射レンズ22とレンズ26の間には走査コイル23が設けられ、走査コイル23の下方に試料10が挿入される。
電子源21から放出された電子ビームEB1は、照射レンズ22により試料10上でスポット収束され、走査コイル23によって偏向されて試料10上を走査する。検出器25は、電子ビームEB1の照射によって試料10から発生する二次電子EB2を検出する。プロセッサシステム7は、検出された二次電子EB2から撮影像を作製できる。
レンズ26の下方には、暗視野像観察用の円環状検出器27が配置されている。円環状検出器27の下方には、電子ビーム軸からの出し入れが可能な明視野像観察用の検出器28が備えられている。検出器28の下方には、透過像観察用のカメラ29が配置されている。
照射レンズ22の条件を変えることによって、試料10上に、ある広がりを持った電子ビームEB1が照射され、試料10を透過した透過電子EB3はレンズ26によって結像および拡大され、カメラ29に表示される。
円環状検出器27は、電子ビームEB1の照射によって試料10から高角度に散乱した電子(散乱電子)を検出する。プロセッサシステム30は、円環状検出器27で検出された電子から暗視野透過電子像を作製できる。検出器28は、透過電子EB3を検出する。プロセッサシステム30は、検出器28で検出された透過電子EB3から明視野透過電子像を作製できる。
電子ビームEB1の光軸上で試料10の傾斜角度を変えることで、様々な角度から試料10の透過電子像(撮影像)を観察することができる。プロセッサシステム30で作製された各種のデータは、記録装置31に保存される。また、プロセッサシステム30は、必要に応じて記録装置31に保存された解析結果を表示装置32に表示できる。
<実施の形態5における電子ビームのビーム径変動の計測>
実施の形態5では、二次電子EB2の代わりに、照射対象物を透過した透過電子EB3を用いて、ビーム径変動の原因になっているノイズ源を特定する。そのため、実施の形態1において説明された二次電子検出関連量、直接的又は間接的に偏向器3に与える制御量、二次電子検出関連量は、実施の形態5では、それぞれ、透過電子検出関連量、直接的又は間接的に走査コイル23に与える制御量、透過電子検出関連量に置き換えて説明できる。
実施の形態5におけるプロセッサシステム30は、以下の動作(A)および動作(B)を行う。
(A)以下の(A1)および(A2)を繰り返し行うことで透過電子検出関連量の第1時系列変化を取得する。
(A1)直接的又は間接的に、走査コイル23に与える制御量を第1制御量に維持又は変化させる。
(A2)検出器28からの出力に基づいて、上記透過電子検出関連量を取得する。
(B)上記第1時系列変化に基づいて、荷電粒子ビーム(電子ビームEB1)のビーム径変動の時系列変化を取得する。
また、実施の形態1では、二次電子検出関連量は二次電子検出量であったが、実施の形態5では、透過電子検出関連量は、透過電子検出量である。上記第1制御量は、照射対象物のラインプロファイルの最大値(局所最大値含む)の位置に対応した制御量である。
より具体的には、プロセッサシステム30は、検出器28で検出される透過電子EB3の量によって、撮影像と、撮影像の各座標に対する輝度の大きさを示す輝度プロファイルとを作製できる。実施の形態5では、透過電子EB3に基づく輝度プロファイルから、ビーム径変動の原因になっているノイズ源を特定する。
図18は、図17の要部を拡大して示した模式図である。荷電粒子線装置200では、試料10に対してほぼ平行に電子ビームEB1が入射するので、試料10上では、局所的なビーム径を定義することが出来ない。しかし、試料10の鮮明な画像を得るためには、試料10上の1点から後方へ放出される透過電子EB3が、検出器28上の1点に収束される必要がある。そのため、検出器28およびその近傍で考えれば、実施の形態1と同様に、ビーム径とその変動とを定義することが出来る。
まず、ステージ24上に試料10を設置する。より具体的には、ステージ24に搭載されている試料ホルダに試料10を保持させる。次に、試料10上の特定箇所11に対して電子源21から電子ビームEB1を連続的に照射する。ここで、プロセッサシステム30は、図7に類似するような輝度プロファイルを作製し、輝度プロファイルのうち最大輝度の変動を逐一計測する。これにより、プロセッサシステム30は、図8に類似するような最大輝度の時系列変化を算出する。この最大輝度の時系列変化は、電子ビームEB1のビーム径の時系列変化であると見做せる。
次に、高速フーリエ変換(FFT)などの周波数解析を用いることで、プロセッサシステム30は、最大輝度の時系列変化に基づいて、図9に類似するような最大輝度の変動に関する周波数スペクトルを算出する。この周波数スペクトルは、電子ビームEB1のビーム径変動に関する周波数スペクトルであると見做せる。ビーム径変動に関する周波数スペクトルに含まれる大きなピークの周波数から、ノイズ源を特定し、そのノイズ源に対策を施す。
以上のように荷電粒子線装置200においても、最大輝度の変動から電子ビームEB1のビーム径変動を計測でき、ビーム径変動の原因になっているノイズ源を特定できる。
なお、実施の形態5で開示した技術を、実施の形態2の図10で開示した技術と同じ要領で実施することもできる。すなわち、プロセッサシステム30は、平坦箇所における輝度の時系列変化を算出し、高速フーリエ変換(FFT)などを用いて、その時系列変化に基づいて、平坦箇所における輝度変動に関する周波数スペクトルを算出する。また、プロセッサシステム30は、勾配箇所における輝度の時系列変化を算出し、高速フーリエ変換(FFT)などを用いて、その時系列変化に基づいて、勾配箇所における輝度変動に関する周波数スペクトルを算出する。
最大輝度、平坦箇所および勾配箇所の各々の周波数スペクトルを比較することで、ビーム揺れの原因になっている周波数と、ビーム径変動の原因になっている周波数と、検出系ノイズに起因する周波数とを特定することができる。なお、実施の形態5における検出系ノイズは、検出器28乃至プロセッサシステム30のいずれかの部品に影響するノイズであり、電子ビームEB1を照射していない場合でも検出されるノイズである。
また、実施の形態5で開示した技術を、実施の形態3の図11~図14で開示した技術と同じ要領で実施することもできる。
すなわち、図12に示されるように、境界BRが、Y方向に延在する境界BRaと、Y方向と異なる方向(ここではX方向)に延在する境界BRbとを含む場合、プロセッサシステム30は、境界BRaの周波数スペクトルを算出した後、境界BRbの周波数スペクトルを算出する。互いに異なる方向に延在する境界BRを順次計測することで、どの方向のビーム径がノイズによる影響を受けているのかを特定できる。なお、領域2Aは、試料10のうち領域1Aと高低差が発生している領域、または、試料10のうち領域1Aと異なる材質からなる領域である。
また、実施の形態5で開示した技術を、実施の形態4の図15A~図15Dおよび図16で開示した技術と同じ要領で実施することもできる。
すなわち、最大輝度から算出したビーム径変動(周波数スペクトル)の算出は一定期間毎に実施され、それらの結果は、記録装置8に保存される。プロセッサシステム30は、記録装置8に保存されている一定期間毎の周波数スペクトルを、図16のように、表示装置9のウィンドウWD3に表示できる。
また、ここでは荷電粒子線装置200がTEM装置である場合を例示したが、荷電粒子線装置200は、低エネルギー電子顕微鏡(LEEM装置)または高電子顕微鏡(PEEM装置)であってもよい。
<バリエーション>
以上、上記実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に、他の実施例の構成を加えることも可能である。また、上記の各構成、機能、処理部および処理手段等は、それらの一部または全部を例えば集積回路で設計することで、ハードウェアで実現されてもよい。また、上記の各構成および機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより、ソフトウェアで実現されていてもよい。各機能を実現するプログラム、テーブルおよびファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク若しくはSSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード若しくはDVD等の記録媒体に保存されていてもよい。
なお、上記実施の形態では、ビーム径が時間軸でどのように変動しているかを知ることができる。更に、X方向のみまたはY方向のみというような、特定方向のみにおいて、ビーム径が変動していることも、算出することができる。例えば、ビームが真円から楕円に延びた場合の変動も知ることができるし、真円が拡大または縮小した場合の変動も知ることができる。
また、プロセッサシステムが、少なくとも輝度または検出器の出力からビーム径の幾何学長又は変動幅の幾何学長を算出できるモデル式を有することで、プロセッサシステムは、ビーム径自体又は変動量の幾何学長を算出してもよい。
また、ビーム揺れについても、全ての方向の揺れを検知できてもよく、特定方向に関するビーム揺れだけを検知できてもよい。更に、プロセッサシステムが、輝度または検出器の出力からビームの揺れの絶対量または変動幅を算出できるモデル式を有することで、プロセッサシステムは、ビーム揺れの時間変化に加えて、ビーム揺れの揺れ幅も算出できる。
また、荷電粒子ビームは、前述の電子ビーム以外に、イオンビームを用いてもよい。この場合は、荷電粒子源として、電子源の代わりとしてイオン源(より具体的にはイオン銃)が、荷電粒子源として荷電粒子線装置に含まれることになる。また、荷電粒子ビームの照射形状は、円状以外の形状であってもよく、例えば多角形であってもよい。
また、試料10は、荷電粒子線装置のユーザが有する物品でもよく、荷電粒子線装置の保守員が持参する物品でもよく、ステージに固定された物品でもよい。また、当該物品はビーム径変動またはビーム揺れ変動の時系列変化取得のための専用品であってもよいが、そうでなくてもよい。また、境界BRは完全な直線である必要はなく、垂直な側面を持つ必要もない。既知とする電子ビームEB1の照射形状と強度分布に従って、すり鉢状または山状のような形状といった、X方向およびY方向の両方に高さが変化する部位を設けた試料を用いてもよい。
また、上述に開示の技術は、電気ノイズの計測以外の用途に用いてもよい。例えば、上述に開示の技術は、機械的ノイズ、プロセッサシステムで動作するプログラムの動作確認またはステージ等の部品の動作確認などに用いられてもよい。
また、電子ビームの径変動を取得するための輝度プロファイル上の「最大輝度」は局所最大の輝度であってもよい。ただし、輝度の変化がより大きく得られる視点では、局所ではない最大輝度がより好適である。局所最大輝度とした場合、局所最大輝度は、最大輝度も含むものとする。なお、輝度プロファイルは、試料10の断面形状推定または材質推定にも用いられる荷電粒子線装置のユーザにとっては、親しまれた情報である。それ故、輝度プロファイルは、親和性の点では好適である。
なお、以上の説明では輝度プロファイル(およびラインプロファイル)を変動取得の前提としてきたが、最大輝度を持つ輝度プロファイルの箇所と、勾配箇所と、平坦箇所と、に関する輝度に絞って、これらを繰り返し取得してもよい。必要な箇所のみ電子ビームEB1を照射するので、より細かい時間粒度で、変動が得られる。
更に、ラインプロファイルを用いずに、これまで説明した変動又は揺れを取得してもよい。ビーム径変動の時系列変化取得に絞って述べると、電子ビームEB1は、図4または図12の境界BRに照射するような制御量(偏向器3に対する)の付与を維持し続ければよい。試料10の特定箇所11の位置、形状又は材質が既知の場合には好適である。
つまり、以下としてもよいということである。偏向器3に与える第1制御量は、照射対象物の境界BRに電子ビームEB1を照射したときの制御量である。境界BRは、照射対象物の領域1Aと領域2Aとの間に位置する。領域1Aは、試料10の一部であり、領域2Aは、試料10のうち領域1Aと高低差が発生している領域、試料10のうち領域1Aと異なる材質からなる領域、または、ステージ5の一部である。
これまで輝度を二次電子検出関連量の例として説明してきたが、二次電子検出関連量は、検出した二次電子検出量と単調増加関係にあれば、輝度以外の検出器の出力の加工値を用いてもよい。
1 試料室
2 電子源
3 偏向器
4 レンズ
5 ステージ
6 検出器
7 プロセッサシステム
7a プロセッサ
7b 変換器
8 記録装置
9 表示装置
10 試料
11、11a、11b 特定箇所
20 試料室
21 電子源
22 照射レンズ
23 走査コイル
24 ステージ
25 検出器
26 レンズ
27 円環状検出器
28 検出器
29 カメラ
30 プロセッサシステム
30a プロセッサ
30b 変換器
31 記録装置
32 表示装置
100、200 荷電粒子線装置
1A、2A 領域
BR、BRa、BRb 境界
BT1 設定ボタン
BT2 実行ボタン
EB1 電子ビーム
EB2 二次電子
EB3 透過電子
WD1~WD3 ウィンドウ

Claims (20)

  1. 荷電粒子ビームを発生させるための荷電粒子源と、
    前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向器と、
    前記荷電粒子ビームの照射に応じて照射対象物から放出される二次電子を検出する検出器と、
    プロセッサシステムと、
    を備え、
    前記プロセッサシステムは:
    (A)以下の(A1)および(A2)を繰り返し行うことで二次電子検出関連量の第1時系列変化を取得し、
    (A1)直接的又は間接的に、前記偏向器に与える制御量を第1制御量に維持又は変化させ、
    (A2)前記検出器からの出力に基づいて、前記二次電子検出関連量を取得し、
    (B)前記第1時系列変化に基づいて、前記荷電粒子ビームのビーム径変動の時系列変化を取得する、荷電粒子線装置。
  2. 請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
    前記二次電子検出関連量は、二次電子検出量であり、
    前記第1制御量は、前記照射対象物のラインプロファイルの最大値(局所最大値含む)の位置に対応した制御量である、荷電粒子線装置。
  3. 請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
    (B)の取得として、前記プロセッサシステムは、前記第1時系列変化に基づいて、前記最大値の変動に関する第1周波数スペクトルを算出し、
    ここで、前記第1周波数スペクトルは、前記荷電粒子ビームのビーム径変動に関する周波数スペクトルであると見做せる、荷電粒子線装置。
  4. 請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
    前記ラインプロファイルは、
    前記最大値の位置である最大値箇所と、
    一定の輝度を示す平坦箇所と、
    前記最大値箇所と前記平坦箇所との間に位置し、且つ、二次電子検出量が連続的に増加又は減少している勾配箇所と、
    を有し、
    前記プロセッサシステムは:
    (C1)前記平坦箇所における二次電子検出量の第2時系列変化を取得し、
    (C2)前記第2時系列変化に基づいて、前記平坦箇所における二次電子検出量の変動に関する第2周波数スペクトルを算出する、荷電粒子線装置。
  5. 請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
    前記プロセッサシステムは:
    (D1)前記勾配箇所における二次電子検出量の第3時系列変化を算出し、
    (D2)前記第3時系列変化に基づいて、前記勾配箇所における二次電子検出量の変動に関する第3周波数スペクトルを算出する、荷電粒子線装置。
  6. 請求項5に記載の荷電粒子線装置において、
    前記第1周波数スペクトル、前記第2周波数スペクトルおよび前記第3周波数スペクトルで共通している周波数は、前記検出器乃至前記プロセッサシステムのいずれかの部品に影響するノイズに起因する周波数を含み、
    前記第1周波数スペクトルおよび前記第3周波数スペクトルで共通している周波数は、前記荷電粒子ビームのビーム径変動の原因になっている周波数を含み、
    前記第3周波数スペクトルのみに存在する周波数は、前記荷電粒子ビームの揺れの原因になっている周波数を含む、荷電粒子線装置。
  7. 請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
    前記照射対象物は、試料、又は、前記試料とステージとの組み合わせであり、
    前記ラインプロファイルは、前記照射対象物の第1特定箇所に関するデータを含み、
    前記第1特定箇所は、第1領域、前記第1領域に隣接する第2領域、および、前記第1領域と前記第2領域との第1境界を含み、
    前記第1領域は、前記試料の一部であり、
    前記第2領域は、前記試料のうち前記第1領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第1領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部であり、
    前記第1境界が、前記ラインプロファイルにおける前記最大値の位置に対応している、荷電粒子線装置。
  8. 請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
    前記照射対象物は、第3領域、第4領域および第2境界を含む第2特定箇所を含み、
    前記第3領域は、前記試料の一部であり、
    前記第4領域は、前記試料のうち前記第3領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第3領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部であり、
    平面視において、前記第2境界は、前記第1境界の第1延在方向とは異なる第2延在方向に延在する境界であり、
    前記第1周波数スペクトルは、前記第1延在方向と直行する方向に関するビーム径変動を示し、
    前記プロセッサシステムは:
    (E)前記第2特定箇所に関する追加ラインプロファイルを繰り返し取得し、
    (F)前記追加ラインプロファイルから、最大値(局所最大値含む)の第4時系列変化を取得し、
    (G)前記第4時系列変化に基づいて、前記最大値の変動に関する第4周波数スペクトルを算出し、
    ここで、前記第4周波数スペクトルは、前記第2延在方向と直行する方向に関するビーム径変動を示す、荷電粒子線装置。
  9. 請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
    前記プロセッサシステムは、記録装置および表示装置を含み、
    算出された前記第1周波数スペクトルは、前記記録装置に保存され、
    前記プロセッサシステムは、一定期間毎に前記第1周波数スペクトルを算出し、前記記録装置に保存されている一定期間毎の前記第1周波数スペクトルを前記表示装置に表示できる、荷電粒子線装置。
  10. 請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
    前記照射対象物は、試料、又は、前記試料とステージの組み合わせであり、
    前記二次電子検出関連量は、前記検出器の出力の加工値であり、
    前記第1制御量は、前記照射対象物の境界に前記荷電粒子ビームを照射したときの制御量であり、
    前記境界は、前記照射対象物の第1領域と第2領域との間に位置し、
    前記第1領域は、前記試料の一部であり、
    前記第2領域は、前記試料のうち前記第1領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第1領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部である、
    荷電粒子線装置。
  11. 荷電粒子ビームを発生させるための荷電粒子源と、
    前記荷電粒子ビームを偏向させる走査コイルと、
    前記荷電粒子ビームの照射に応じて照射対象物を透過した透過電子を検出する検出器と、
    プロセッサシステムと、
    を備え、
    前記プロセッサシステムは:
    (A)以下の(A1)および(A2)を繰り返し行うことで透過電子検出関連量の第1時系列変化を取得し、
    (A1)直接的又は間接的に、前記走査コイルに与える制御量を第1制御量に維持又は変化させ、
    (A2)前記検出器からの出力に基づいて、前記透過電子検出関連量を取得し、
    (B)前記第1時系列変化に基づいて、前記荷電粒子ビームのビーム径変動の時系列変化を取得する、荷電粒子線装置。
  12. 請求項11に記載の荷電粒子線装置において、
    前記透過電子検出関連量は、透過電子検出量であり、
    前記第1制御量は、前記照射対象物のラインプロファイルの最大値(局所最大値含む)の位置に対応した制御量である、荷電粒子線装置。
  13. 請求項12に記載の荷電粒子線装置において、
    (B)の取得として、前記プロセッサシステムは、前記第1時系列変化に基づいて、前記最大値の変動に関する第1周波数スペクトルを算出し、
    ここで、前記第1周波数スペクトルは、前記荷電粒子ビームのビーム径変動に関する周波数スペクトルであると見做せる、荷電粒子線装置。
  14. 請求項13に記載の荷電粒子線装置において、
    前記ラインプロファイルは、
    前記最大値の位置である最大値箇所と、
    一定の輝度を示す平坦箇所と、
    前記最大値箇所と前記平坦箇所との間に位置し、且つ、透過電子検出量が連続的に増加又は減少している勾配箇所と、
    を有し、
    前記プロセッサシステムは:
    (C1)前記平坦箇所における透過電子検出量の第2時系列変化を取得し、
    (C2)前記第2時系列変化に基づいて、前記平坦箇所における透過電子検出量の変動に関する第2周波数スペクトルを算出する、荷電粒子線装置。
  15. 請求項14に記載の荷電粒子線装置において、
    前記プロセッサシステムは:
    (D1)前記勾配箇所における透過電子検出量の第3時系列変化を算出し、
    (D2)前記第3時系列変化に基づいて、前記勾配箇所における透過電子検出量の変動に関する第3周波数スペクトルを算出する、荷電粒子線装置。
  16. 請求項15に記載の荷電粒子線装置において、
    前記第1周波数スペクトル、前記第2周波数スペクトルおよび前記第3周波数スペクトルで共通している周波数は、前記検出器乃至前記プロセッサシステムのいずれかの部品に影響するノイズに起因する周波数を含み、
    前記第1周波数スペクトルおよび前記第3周波数スペクトルで共通している周波数は、前記荷電粒子ビームのビーム径変動の原因になっている周波数を含み、
    前記第3周波数スペクトルのみに存在する周波数は、前記荷電粒子ビームの揺れの原因になっている周波数を含む、荷電粒子線装置。
  17. 請求項13に記載の荷電粒子線装置において、
    前記照射対象物は、試料、又は、前記試料とステージとの組み合わせであり、
    前記ラインプロファイルは、前記照射対象物の第1特定箇所に関するデータを含み、
    前記第1特定箇所は、第1領域、前記第1領域に隣接する第2領域、および、前記第1領域と前記第2領域との第1境界を含み、
    前記第1領域は、前記試料の一部であり、
    前記第2領域は、前記試料のうち前記第1領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第1領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部であり、
    前記第1境界が、前記ラインプロファイルにおける前記最大値の位置に対応している、荷電粒子線装置。
  18. 請求項17に記載の荷電粒子線装置において、
    前記照射対象物は、第3領域、第4領域および第2境界を含む第2特定箇所を含み、
    前記第3領域は、前記試料の一部であり、
    前記第4領域は、前記試料のうち前記第3領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第3領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部であり、
    平面視において、前記第2境界は、前記第1境界の第1延在方向とは異なる第2延在方向に延在する境界であり、
    前記第1周波数スペクトルは、前記第1延在方向と直行する方向に関するビーム径変動を示し、
    前記プロセッサシステムは:
    (E)前記第2特定箇所に関する追加ラインプロファイルを繰り返し取得し、
    (F)前記追加ラインプロファイルから、最大値(局所最大値含む)の第4時系列変化を取得し、
    (G)前記第4時系列変化に基づいて、前記最大値の変動に関する第4周波数スペクトルを算出し、
    ここで、前記第4周波数スペクトルは、前記第2延在方向と直行する方向に関するビーム径変動を示す、荷電粒子線装置。
  19. 請求項13に記載の荷電粒子線装置において、
    前記プロセッサシステムは、記録装置および表示装置を含み、
    算出された前記第1周波数スペクトルは、前記記録装置に保存され、
    前記プロセッサシステムは、一定期間毎に前記第1周波数スペクトルを算出し、前記記録装置に保存されている一定期間毎の前記第1周波数スペクトルを前記表示装置に表示できる、荷電粒子線装置。
  20. 請求項11に記載の荷電粒子線装置において、
    前記照射対象物は、試料、又は、前記試料とステージの組み合わせであり、
    前記透過電子検出関連量は、前記検出器の出力の加工値であり、
    前記第1制御量は、前記照射対象物の境界に前記荷電粒子ビームを照射したときの制御量であり、
    前記境界は、前記照射対象物の第1領域と第2領域との間に位置し、
    前記第1領域は、前記試料の一部であり、
    前記第2領域は、前記試料のうち前記第1領域と高低差が発生している領域、前記試料のうち前記第1領域と異なる材質からなる領域、または、前記ステージの一部である、
    荷電粒子線装置。
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