JP2024004306A - 光電変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】画素間の特性の均一性の確保に有利な技術を提供する。【解決手段】複数の画素が配された光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1電位供給線と第2電位供給線との間に配されたアバランシェフォトダイオードと、前記第1電位供給線と前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように配された第1トランジスタと、前記アバランシェフォトダイオードがアバランシェ降伏した際に、前記アバランシェフォトダイオードの前記第1トランジスタに接続された電極の第1電位に応じた第2電位を保持する保持回路と、を含み、前記第1トランジスタのゲートに、前記保持回路から前記第2電位が供給される。【選択図】図4

Description

本発明は、光電変換装置に関する。
単一光子レベルの微弱光を検出可能な単一光子アバランシェフォトダイオード(SPAD)素子をそれぞれの画素に備える光電変換装置が知られている。特許文献1には、複数の画素のそれぞれにSPAD素子が配された受光装置が示されている。SPAD素子では、アバランシェフォトダイオード(APD)のブレークダウン電圧に、エクセス電圧を上乗せした電圧をAPDに印加する。画素間でAPDのブレークダウン電圧がばらついた場合、それぞれの画素のAPDに同じ電圧を印加すると、それぞれの画素間でAPDに供給されるエクセス電圧の値がばらつくことになる。エクセス電圧が画素間でばらついてしまうと、それぞれの画素における特性の均一性を保つことができなくなる。特許文献1では、APDから出力される信号を信号処理部で検出し、検出結果をバイアス調整部にフィードバックすることによってエクセス電圧の電圧値を調整することが示されている。
特開2021-089962号公報
特許文献1に示される構成は、信号処理部においてSPAD素子が光子に反応できないデッドタイムを検出するなど、回路規模が大きくなってしまう。
本発明は、画素間の特性の均一性の確保に有利な技術を提供することを目的とする。
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る光電変換装置は、複数の画素が配された光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1電位供給線と第2電位供給線との間に配されたアバランシェフォトダイオードと、前記第1電位供給線と前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように配された第1トランジスタと、前記アバランシェフォトダイオードがアバランシェ降伏した際に、前記アバランシェフォトダイオードの前記第1トランジスタに接続された電極の第1電位に応じた第2電位を保持する保持回路と、を含み、前記第1トランジスタのゲートに、前記保持回路から前記第2電位が供給されることを特徴とする。
本発明によれば、画素間の特性の均一性の確保に有利な技術を提供することができる。
本実施形態にかかる光電変換装置の構成例を示す図。 図1の光電変換装置に配される画素の構成例を説明する図。 図2の画素のノードAおよびノードBにおける信号波形を示す図。 図2の画素の構成例を示す等価回路図。 図4の画素の動作例を示すタイミング図。 図4の画素の変形例を示す等価回路図。 図6の画素の動作例を示すタイミング図。 図4の画素の変形例を示す等価回路図。 図4の画素の変形例を示す等価回路図。
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
図1~図9を参照して、本開示の実施形態による光電変換装置について説明する。以下の実施形態において、電子が信号担体であり、アバランシェフォトダイオード(以下、APDと示す場合がある。)がアバランシェ降伏した際のアバランシェ電流によるAPDのカソードの電位の変化を検知する単一光子アバランシェフォトダイオード(以下、SPADと示す場合がある。)素子について説明する。しかしながら、ホールが信号担体であってもよいし、APDのアノードの電位の変化を検知する構成をとってもよい。
本実施形態において、APDがアバランシェ降伏した際に流れるアバランシェ電流を検知後のAPDのカソードの電位に応じた電位を保持し、保持した電位に所定の電圧を加えた電位をAPDに供給する。アバランシェ電流を検知後のカソード電位は、アノード電位基準ではAPDのブレークダウン電圧Vbdに相当し、追加する所定の電圧は、エクセス電圧Vexに相当する。この場合のAPDのカソードの電位に応じた電位を保持する回路、および、APDへ電位を供給する回路は、基本的にはMOS(MIS)トランジスタを含むトランジスタ回路である。ここで、このトランジスタ回路を構成するトランジスタの閾値電圧Vthのばらつきは、APDのブレークダウン電圧Vbdのばらつきよりも十分に小さい(Vbd>Vth)とする。Vbd<Vthの場合、APDのブレークダウン電圧Vbdのばらつきに起因するエクセス電圧Vexのばらつきの問題が、トランジスタの閾値電圧Vthのばらつきの問題に置き換わるだけになるためである。しかしながら、トランジスタを形成する条件にもよるが、トランジスタの閾値電圧Vthのばらつきは、APDのブレークダウン電圧Vbdのばらつきの1/3~1/4程度にできる。つまり、以下の本開示の成立のための前提は、十分に現実的である。
第1実施形態
図1は、本開示の第1実施形態における光電変換装置100の構成例を示すブロック図である。光電変換装置100は、画素部101、制御パルス生成回路115、水平走査回路111、読出回路112、信号線113、垂直走査回路110を含む。画素部101には、複数の画素104が行列状に配されている。それぞれの画素104は、APDを含む光電変換部102および信号処理回路103を含む。光電変換部102は、画素104に入射する光を電気信号へ変換する。信号処理回路103は、入射した光に応じて光電変換部102で生成された電気信号を読出回路112に出力する。
垂直走査回路110は、制御パルス生成回路115から供給されるパルス信号に応じて、それぞれの画素104に制御パルスを供給する。垂直走査回路110には、シフトレジスタやアドレスデコーダなどの論理回路が用いられうる。
画素104の光電変換部102から出力された信号は、信号処理回路103によって処理される。信号処理回路103は、カウンタやメモリなどが配されていてもよく、メモリにはカウンタによってカウントされたデジタル値が保持されてもよい。
水平走査回路111は、デジタル信号が保持された画素104のメモリから信号を読み出すために、画素104を列ごとに順次選択する制御パルスを信号処理回路103に入力する。信号線113には、垂直走査回路110によって選択された画素104の信号処理回路103から信号が出力される。信号線113に出力された信号は、出力回路114を介して、光電変換装置100の外部に配された信号処理装置などに出力され、例えば、表示装置に撮像画像として表示されうる。
図1に示されるように、画素104は、アレイ状に配されていてもよいが、これに限られることはない。例えば、画素104は、1次元状(線状)に配されていてもよい。また、信号処理回路103の機能は、必ずしも全ての画素104に1つずつ設けられる必要はなく、例えば、複数の画素104によって1つの信号処理回路103が共有され、順次信号処理が行われてもよい。
図2は、光電変換装置100に配される画素104の構成例を説明するブロック図である。画素104には、電位供給線251と電位供給線252との間に配されたアバランシェフォトダイオード(APD)201が配されている。APD201は、光電変換によって入射光に応じた電荷対を生成する。APD201のアノードには、電位供給線252から電圧VLが供給される。APD201のカソードには、アノードに供給される電圧VLよりも高い電圧VHが電位供給線251から供給される。アノードとカソードとの間には、APD201がアバランシェ降伏動作をするような逆バイアス電圧が供給される。このような電圧を供給した状態にすることで、入射光によって生じた電荷がアバランシェ増倍を起こし、アバランシェ電流が発生する。
APD201の動作において、アノードとカソードとの電位差(電圧)がブレークダウン電圧Vbdよりも大きい電圧で動作させるガイガーモードと、アノードとカソードとの電圧が降伏電圧近傍または降伏電圧以下の電圧で動作させるリニアモードと、がある。ガイガーモードで動作させるAPDをSPAD素子と呼ぶ。APD201のブレークダウン電圧Vbdが30Vの場合、例えば、電圧VLは-30Vに設定され、電圧VHは3Vに設定される。
信号処理回路103は、波形整形回路210、カウント回路211、選択回路212を含みうる。また、信号処理回路103は、クエンチ素子202を備えていてもよい。クエンチ素子202は、電圧VHを供給する電位供給線251とAPD201との間に配される。クエンチ素子202は、APD201で生じたアバランシェ電流の変化を電圧信号に置き換える機能を有する。クエンチ素子202は、アバランシェ降伏による信号増倍時に負荷回路(クエンチ回路)として機能し、APD201に供給する電圧を抑制して、アバランシェ降伏を抑制する働きを持つ(クエンチ動作)。クエンチ素子202は、例えば、抵抗素子であってもよいし、トランジスタなどが負荷として機能してもよい。
波形整形回路210は、APD201のカソードまたはアノードに接続されたノードに接続され、APD201の電極(カソードまたはアノード)の電位に基づいて信号を出力する。本実施形態において、波形整形回路210は、図3(a)~3(c)を用いて後述するが、フォトンがAPD201に入射した際に得られるAPD201のカソードの電位変化を整形し、パルス信号を出力する。波形整形回路210としては、例えば、インバータ回路が用いられる。図2に示される構成では、波形整形回路210としてインバータを1つ用いる例が示されているが、例えば、複数のインバータを直列接続した回路が用いられてもよい。APD201の電位変化を所望の波形に整形可能であれば、波形整形回路210として、いかなる回路が用いられてもよい。
カウント回路211は、波形整形回路210がパルス信号を出力した回数をカウントするカウンタと、カウント値(回数)を保持するメモリと、を含みうる。垂直走査回路110から駆動線213を介して制御パルスが供給された際に、カウント回路211に保持されたカウント値はリセットされる。
選択回路212には、垂直走査回路110から駆動線214を介して制御パルスが供給され、カウント回路211と信号線113との電気的な接続、非接続を切り替える。カウント回路211と信号線113とが電気的に接続された際に、カウント回路211から信号線113にカウント値が出力される。選択回路212は、例えば、信号を出力するためのバッファ回路などを含んでいてもよい。
クエンチ素子202とAPD201との間や、光電変換部102と信号処理回路103との間にトランジスタなどのスイッチ素子を配して、電気的な接続が切り替えられてもよい。同様に、光電変換部102に供給される電圧VHまたは電圧VLの供給が、トランジスタなどのスイッチ回路を用いて電気的に切り替えられてもよい。
本実施形態では、信号処理回路103にカウント回路211が配される構成を示した。しかしながら、これに限られることはない。カウント回路211の代わりに、時間・デジタル変換回路(Time to Digital Converter:TDC)およびメモリが用いられ、パルス検出タイミングを取得する光電変換装置100としてもよい。この場合、波形整形回路210から出力されたパルス信号の発生タイミングは、TDCによってデジタル信号に変換される。TDCには、パルス信号のタイミングの測定のために、垂直走査回路110から駆動線を介して制御パルス(参照信号)が供給されうる。TDCは、制御パルスを基準として、波形整形回路210を介してAPD201から出力された信号の入力タイミングを相対的な時間としたときの信号を、デジタル信号として取得する。
図3(a)~3(c)は、APD201の動作と波形整形回路210の出力信号との関係を模式的に示した図である。図3(a)に示されるように、APD201が有する電極のうちカソードの電位を表すノードをノードAとする。また、波形整形回路210の出力の電位を表すノードをノードBとする。図3(b)、3(c)は、それぞれノードAおよびノードBの波形変化を示している。
時刻t0から時刻t1の間において、APD201には、電圧(VH-VL)が印加されている。図3(b)に示されるように、時刻t1においてAPD201にフォトンが入射すると、クエンチ素子202にアバランシェ電流が流れ、ノードAの電位は降下する。ノードAの電位の降下量がさらに大きくなり、APD201に印加される電圧が小さくなると、APD201のアバランシェ降伏は停止し、ノードAの電位レベルは所定の値以上に降下しなくなる(時刻t2)。その後、ノードAには電位供給線251から電位の降下分を補う電流が流れ、時刻t3において、ノードAは、元の電位レベルに静定する。図3(c)に示されるように、APD201がアバランシェ降伏した場合に、ノードAにおいて出力波形が所定の閾値を越えると、波形整形回路210は、ノードAの出力波形を整形し、ノードBに信号(パルス信号)を出力する。
図1に示される構成では、信号処理回路103および画素部101周辺の走査回路などは、APD201と同じ半導体基板に形成されるように描かれている。しかしながら、これに限られることはなく、信号処理回路103および画素部101周辺の走査回路などは、APD201が配された画素部101とは別の半導体基板に形成してもよい。その場合、APD201を含む画素104が配された画素部101を備える基板と、信号処理回路103などが配された基板とが、積層されていてもよい。
図4は、本実施形態による画素104の等価回路図である。図4では、信号処理回路103のうち波形整形回路210の出力(ノードB)までが示されている。図4に示されるように、画素104は、電位供給線251とAPD201との間に電流経路を構成するように配されたトランジスタ311と、APD201がアバランシェ降伏した際に、APD201のトランジスタ311に接続された電極であるカソード(ノードA)の電位に応じた電位を保持する保持回路300と、を含む。ここで、「A」と「B」との間に電流経路を構成するようにトランジスタが配されると表現する場合、当該トランジスタのソースまたはドレインとして機能する一方の主電極に「A」が接続され、他方の主電極に「B」が接続されていることを表す。また、当該トランジスタのゲートには、「A」および「B」は接続されない。
図4に示されるように、保持回路300は、ノードAの電位に応じた電位を保持し、トランジスタ311のゲートに接続される保持ノードであるノードCと、ノードCの電位をリセットするためのトランジスタ304と、ノードCと電位供給線351との間に電流経路を構成するように配され、ゲートがノードAに接続されたトランジスタ301と、を含む。トランジスタ311のゲートに、保持回路300からノードAの電位に応じた電位が供給される。
図4に示される構成において、トランジスタ301は、P型MOSトランジスタであり、トランジスタ301のゲートはノードA、つまり、APD201のカソードに接続されている。電位供給線351には、グランド電位が供給される。トランジスタ301の閾値電圧Vtpは負である。トランジスタ311は、N型MOSトランジスタである。トランジスタ311の閾値電圧Vtnは正である。トランジスタ304は、P型MOSトランジスタである。トランジスタ304は、電位供給線251と保持ノードであるノードCとの間に電流経路を構成するように配される。トランジスタ304は、ゲートに入力される制御パルス305に従って動作する。制御パルス305は、垂直走査回路110から供給されてもよいし、制御パルス305を供給する制御回路が、光電変換装置100に配されていてもよい。ホールド容量306は、ノードCに接続されている。ホールド容量306は、ノードAの電位に応じた電位を保持する。ホールド容量306は、容量素子などを意図的に配してもよいが、配線パターンやトランジスタ301、304などの寄生容量であってもよい。また、図4に示される構成において、トランジスタ311とAPD201との間に、クエンチ素子202が配されている。
図5は、図4に示される画素104の動作を説明するタイミング図である。図5には、トランジスタ304のゲートに入力される制御パルス305、ノードA、および、ノードCのそれぞれ波形変化が示されている。図5において、APD201にフォトンが入射するタイミングが、「↓」で示されている。
画素104の動作説明にあたり、まず、画素104のそれぞれの構成の電圧(電位)の関係について述べる。APD201のブレークダウン電圧Vbdは、30Vであり、±0.5Vの範囲でばらついているとする。エクセス電圧Vexは、2.0Vとする。この場合、例えば、電位供給線252、251にそれぞれ供給される電圧VLは-30V、電圧VHは3Vに設定する。また、トランジスタ311の閾値電圧Vtnは0.2V、トランジスタ301の閾値電圧Vtpは-2.2Vに設定する。つまり、トランジスタ301の閾値電圧Vtpの絶対値とトランジスタ311の閾値電圧Vtnとの差分が、エクセス電圧Vexになるように閾値電圧Vtn、Vtpを設定する(Vex=|Vtp|-Vtn)。
トランジスタ304には、例えば、1フィールドごとに1回の制御パルス305が入力(図5において、制御パルス305がLになる。)され、ノードCが電圧VHにリセットされる。換言すると、制御パルス305が供給される間隔が、1フィールドの期間を決定するともいえる。制御パルス305が入力されている間、保持ノードであるノードCがトランジスタ304によって電圧VHにリセットされるリセット動作が行われる。ノードCがリセットされるとトランジスタ311のゲートの電位は電圧VHになるため、トランジスタ311にドレイン電流がわずかに流れていれば、トランジスタ311のソース電位、すなわちノードAは、電位(VH-Vtn)になる。上述の電圧(電位)の関係の例では、ノードAの電位は2.8Vになる。APD201に光が照射されていない場合であっても、APD201内において、アバランシェ降伏を引き起こさない経路でわずかに逆バイアス電流が流れる。したがって、ノードAの電位は、2.8Vであると考えられる。この場合、トランジスタ301のソース-ゲート間電圧は0.2Vである。このトランジスタ301のソース-ゲート間電圧は、トランジスタ301をよりオフにさせる正の電圧のため、トランジスタ301は完全にオフ状態である。
ノードCのリセット動作の後、最初のフォトンがAPD201に入射すると、APD201はアバランシェ降伏を起こし、アバランシェ電流によってAPD201に印加されていた逆バイアス電圧は、ブレークダウン電圧Vbdまで下がる。このときのノードAの電位を、図4に示されるように電位Vbとする。APD201のブレークダウン電圧Vbdが30Vであれば、電位Vb=0Vである。このとき、トランジスタ301はオン状態になり、ノードCの電位は下がるが、トランジスタ301のソース-ゲート間電圧が、トランジスタ301の閾値電圧Vtpになるとオフ状態になるため、ノードCは、電位(Vb+Vtp)になる。上述の電圧(電位)の関係の例では、ノードCの電位は2.2Vになる。アバランシェ電流がほぼ止まった状態では、トランジスタ302によってノードAは、電位(Vb+|Vtp|-Vtn)になる。上述の電圧(電位)の関係の例では、ノードAの電位は2.0Vである。
この場合、APD201には、(Vbd+|Vtp|―Vtn)で示される電圧が、逆バイアス電圧として印加されることになる。ここで、上述のように(|Vtp|-Vtn)=Vexであるから、APD201には、(Vbd+Vex)で示される電圧が、逆バイアス電圧として印加される。つまり、APD201ごとにブレークダウン電圧Vbdがばらついてしまった場合であっても、エクセス電圧Vexは一定の電圧、上述の電圧(電位)の関係の場合、所望の2.0Vがエクセス電圧Vexとして印加できる。つまり、それぞれの画素104が保持回路300を備えることによって、それぞれの画素104のAPD201に同じエクセス電圧Vexを印加することが可能になる。
このように、保持ノードであるノードCがトランジスタ304によってリセットされるリセット動作の後に最初にAPD201がアバランシェ降伏した際に、保持回路300がノードAの電位に応じた電位(Vb+Vtp)を保持する。また、1つのフィールドの期間に2番目以降のフォトンが入射すると、ノードAの電位は、電位Vbまで下がるが、トランジスタ301はオフ状態であるため、ノードCにはリセット動作後に最初のフォトン入射時に保持された電位(Vb+Vtp)が維持される。すなわち、ノードCのリセット後の最初のフォトン入射時にホールドされた電位(Vb+Vtp)が維持されるため、次のノードCのリセットまで、APD201には、一定のエクセス電圧Vexが印加されることになる。このように、トランジスタ301の閾値電圧の絶対値とトランジスタ311の閾値電圧との差分に応じたエクセス電圧Vexが、APD201に供給される。
ただし、正確に述べると2番目以降のフォトンが入射するとトランジスタ301には、わずかなサブスレシュホールド電流が流れるため、ノードCに保持される電位は、最初のフォトン入射時の電位よりわずかに低くなる。しかしながら、ノードCの電位が低くなると、よりトランジスタ301はオン動作し難くなるため、多数のフォトンが入射すると、ノードCは事実上ある一定値に収束する。この収束値を電位(Vb+|Vtp|-ΔV)とすると、電位(|Vtp|-ΔV-Vtn)が所望のエクセス電圧Vexとなるように、トランジスタ301、311の閾値電圧Vtp、Vtnを設定してもよい。ΔV=0.1Vである場合、例えば、Vtp=2.3V、Vtn=0.2Vに設定する。
この場合、Vbd=30VのAPD201には、ノードCのリセット後、最初のフォトン入射時に32.8Vの逆バイアスが掛かるため、エクセス電圧Vexは2.8Vである。2番目のフォトン入射時には32.1Vの逆バイアスが掛かり、エクセス電圧Vexは2.1V、以降、フォトンが入射するごとにエクセス電圧Vexは2.1Vから少しずつ下がり2.0Vに近づく。いずれにせよ、トランジスタ301の閾値電圧の絶対値とトランジスタ311の閾値電圧の絶対値との差分に応じたエクセス電圧Vexが、APD201に供給される。以降の説明において、簡略化のためにΔVは無視できるとして説明する。
それぞれの画素104において、APD201のブレークダウン電圧Vbdがばらついている場合、ノードCのリセット後の最初のフォトン入射時のエクセス電圧Vexは、ブレークダウン電圧Vbdの値に依存する。例えば、Vbd=29.5VのAPD201には、最初のフォトン入射時に3.3Vのエクセス電圧Vexが印加される。同様に、Vbd=30.5VのAPD201には、最初のフォトン入射時に2.3Vのエクセス電圧Vexが印加される。しかしながら、1つのフィールド期間において、2番目以降のフォトン入射時のエクセス電圧Vexの値は、どの画素104のAPD201に対しても、上述の電圧(電位)の関係の場合、2.0Vで同じになる。
それぞれの画素104におけるフォトン入射時のノードAの変動電位は、それぞれの画素104に配されたAPD201のブレークダウン電圧Vbdに依存する。ブレークダウン電圧Vbdが29.5Vの場合、ノードAの光入射時の最低電位は-0.5V、光非入射時の最低電位は1.5V、ブレークダウン電圧Vbdが30.5Vの場合、ノードAの光入射時の最低電位は0.5V、光非入射時の最低電位は2.5Vである。したがって、波形整形回路210がフォトン入射に起因するアバランシェ電流を検知するためには、波形整形回路210の閾値電圧を0.5Vから1.5Vの間に設定すればよい。上述の電圧関係の場合、画素104にフォトンが入射したことを検知するための波形整形回路210の閾値電圧は、例えば、1.0Vであってもよい。
上述のように、トランジスタ304には、1フィールドごとに1回の制御パルス305が入力され、ノードCがリセットされる。ノードCに接続されるトランジスタ301およびトランジスタ304のソースまたはドレインとウエルとの間にリーク電流が生じると、ノードCに保持した電位が変化してしまう。したがって、このリーク電流の影響が表れる前に、再びノードCをリセットする必要がある。通常の半導体素子において、このリセット周期は数10ms程度あればよいが、トランジスタ301、304の特性に応じて、適宜、制御パルス305を供給する周期を決めればよい。
光電変換装置100を動作させる際に、全ての画素104に配されたAPD201がフォトンの入射に応じてアバランシェ降伏を起こすようにエクセス電圧Vexを設定する必要がある。この場合、APD201のブレークダウン電圧Vbdのばらつきによって、ブレークダウン電圧Vbdが小さいAPD201に対して、過剰なエクセス電圧Vexが印加されてしまう。過剰なエクセス電圧Vexが印加されると、信号検知に要するエネルギが大きくなるため、光電変換装置100全体として消費電力が大きくなる。また、過剰なエクセス電圧Vexが印加されると、アバランシェ降伏した際の発光量が多くなり、クロストークが大きくなる。さらに、過剰なエクセス電圧Vexが印加されると、APD201の特性劣化が速くなることによって信頼性が低下し、また、APD201の暗電流が大きくなることによってノイズが大きくなってしまう可能性がある。また、それぞれの画素104のAPD201に印加されるエクセス電圧Vexがばらつくと、フォトンが入射したことによるアバランシェ降伏の発生確率がばらつき、画素104ごとに感度がばらついてしまう。
一方、上述したように、本実施形態の光電変換装置100の画素104には、簡単な回路構成を備える保持回路300が配されている。保持回路300は、ホールド容量306に上述のように寄生容量を用いた場合、2つのトランジスタ301、304だけで構成される。これは、特許文献1に示される信号処理部およびバイアス調整部と比較して、はるかに回路規模が小さい。この保持回路300によって、ノードCのリセット後の最初のフォトン入射時のみエクセス電圧Vexはばらつくが、2番目以降に入射するフォトンを検知する際には、所望のエクセス電圧Vexがそれぞれの画素104のAPD201に印加される。つまり、本実施形態の保持回路300によって、電力消費が抑制され、クロストークが小さく、信頼性が高く、暗電流が小さく、感度ばらつきが小さい、特性が優れたSPAD素子を備える光電変換装置100を実現することができる。
第2実施形態
図6は、本開示の第2実施形態における光電変換装置100の画素104の構成例を示す等価回路図である。図4に示される画素104の構成と比較して、トランジスタ311とAPD201との間に電流経路を構成するように、トランジスタ321が配されている。トランジスタ321は、N型のMOSトランジスタである。トランジスタ321は、ゲートに入力される制御パルス322に従って動作する。制御パルス322は、垂直走査回路110から供給されてもよいし、制御パルス322を供給する制御回路が、光電変換装置100に配されていてもよい。図6には示されていないが、上述の第1実施形態と同様にクエンチ素子202が、トランジスタ321とAPD201との間などに配されていてもよい。
図7は、図6に示される画素104の動作を説明するタイミング図である。図7には、トランジスタ304のゲートに入力される制御パルス305、トランジスタ321のゲートに入力される制御パルス322、および、ノードAのそれぞれ波形変化が示されている。図7において、APD201にフォトンが入射するタイミングが、図5と同様に「↓」で示されている。
図7に示される動作では、フォトンのカウントは、制御パルス322によって制御される。制御パルス322が入力(図7において、制御パルス322がHになる。)されると、トランジスタ321がオン状態になる。したがって、制御パルス322がHのときにノードAは初期状態にセットされ、制御パルス322がLになると、トランジスタ321はオフ状態になり、ノードAは浮遊状態となる。ノードAが浮遊状態のときにフォトンがAPD201に入射すると、APD201はアバランシェ降伏を起こし、ノードAの電位は電位Vbまで降下する。この状態で、制御パルス322が入力されると、ノードAの電位は、再び初期状態にセットされる。トランジスタ304に制御パルス305が入力される1つのフィールドの期間の間に、複数の制御パルス322がトランジスタ321のゲートに印加される。つまり、図7に示されるように、トランジスタ321は、断続的にオン動作を繰り返し、トランジスタ304がオン動作し保持ノードであるノードCをリセットする間隔よりも、トランジスタ321がオン動作を繰り返す間隔の方が短い。
トランジスタ304のゲートに制御パルス305が入力され、保持回路300のノードCをリセットした直後のノードCの電位は、上述のように電圧VHである。フォトンの入射がない場合、保持回路300のノードCのリセット後、最初の制御パルス322によってノードAの電位は、電位(VH+Vtn)にセットされる。次いで、ノードAを電位(VH+Vtn)にセットした後に最初のフォトンが入射すると、ノードAは電位Vbまで下がり、このとき、ノードCには電位(Vb+Vtp)が保持される。以降、上述のようにノードCの電位は、次の制御パルス305が入力されるまで電位(Vb+Vtp)である。したがって、2番目以降のフォトン入射において、APD201にかかるエクセス電圧Vexは、例えば上述のように2.0Vなど、所望の電圧になる。
図7に示される動作において、2つの制御パルス322の間にAPD201にフォトンが1つだけ入射した場合でも複数のフォトンが入射した場合でも、フォトンが入射したとカウントされる回数は1になる。そのため、検知される入射フォトン数は制御パルス322の数以下になる。しかしながら、非常に強い光、換言すると短時間に多数のフォトンが入射するような場合を考える。この場合、図5に示される第1実施形態の動作では、ノードAの電位が電位Vbに張り付いてしまいカウントが進まない状況、すなわち、パイルアップが生じ、APD201に入射したフォトンの数をカウントできなくなる可能性がある。一方、図7に示される本実施形態の動作では、短時間に多数のフォトンが入射した場合でも、少なくとも制御パルス322が入力された回数分、フォトン数がカウントできる。また、第1実施形態の動作では、ノードAの電位は、パイルアップ状態になってしまう場合を除き、図5に示されるように瞬間的に電位Vbになる。そのため、電位Vbを反映した電位(Vb+Vtp)までノードCの電位を下げることは、時間的に難しい場合がある。一方、本実施形態の動作では、フォトンの入射後に制御パルス322が入力されるまでノードAの電位は電位Vbであり、ノードAが電位Vbとなる時間が長くなるため、ノードCの電位を十分に電位(Vb+Vtp)まで下げることができる。
本実施形態においても、第1実施形態と同じく、ノードCのリセット後の最初のフォトン入射時のみエクセス電圧Vexはばらつくが、2番目以降に入射するフォトンを検知する際には、所望のエクセス電圧Vexがそれぞれの画素104のAPD201に印加される。したがって、本実施形態の画素104を備える光電変換装置100は、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、上述の第1実施形態と比較して、パイルアップが生じにくい特性の優れたSPAD素子を備える光電変換装置100を実現することができる。
第3実施形態
図8は、本開示の第3実施形態における光電変換装置100の画素104の構成例を示す等価回路図である。上述の第1、第2実施形態では、保持回路300のそれぞれの構成が、複数の画素104のそれぞれに配されている場合を示した。一方、図8に示される画素では、トランジスタ311、トランジスタ304が、2つの画素104a、104bによって共有されている。ノードCおよびホールド容量306も、同様に、画素104aと画素104bとで共有されることになる。一方、保持回路300のうちトランジスタ301は、それぞれの画素104a、104bにそれぞれ配されている(トランジスタ301a、301b)。また、APD201、クエンチ素子202、波形整形回路210は、それぞれの画素104に配される。ここでは、2つの画素104a、104bでトランジスタ311、304などを共有することを説明するが、3つ以上の画素104で、トランジスタ311、304などが共有されていてもよい。例えば、4つの画素104が、トランジスタ311、304などを共有していてもよい。2つ以上の画素104でトランジスタ304、311などが共有されるため、画素104(画素部101)に必要な部品が少なくなり、画素サイズが比較的小さい場合などあっても、上述の保持回路300の効果を実現できる。また、図8には示されていないが、上述のように、信号処理回路103のうちカウント回路211などが、2つ以上の画素104によって共有されていてもよい。
図8に示される構成において、ノードCに保持される電位は、2つの画素104a、104bのうちブレークダウン電圧Vbdが小さい画素の電位(Vb+Vtp)が反映される。2つの画素104a、104bのうちブレークダウン電圧Vbdが大きい画素には、所望のエクセス電圧Vexよりも小さいエクセス電圧Vexが掛かることになる。しかしながら、APD201のブレークダウン電圧Vbdのばらつきは、物理的に位置が近いAPD201同士で小さく、位置が遠いAPD201同士で大きくなる場合がある。したがって、ノードCを共有する2つ以上の画素104は、隣接する(例えば、互いに隣り合う)画素104とすれば、それぞれの画素104のAPD201に、所望のエクセス電圧Vexが掛かることになる。
また、上述の第1、第2実施形態に示される動作において、ノードCのリセット動作の後の最初のフォトンの入射時において、全ての画素104に所望とは異なるエクセス電圧Vexが掛かることを説明した。一方、本実施形態において、ノードCのリセット動作後に、トランジスタ304、311などを共有する複数の画素104(以下、共有画素と示す場合がある。)のうち最初にフォトンが入射した画素では、所望とは異なるエクセス電圧Vexが掛かる。しかし、このときに共有画素で共有するノードCが電位(Vb+Vtp)になる。したがって、共有画素のうち最初にフォトンが入射した画素以外の画素では、当該画素の最初のフォトン入射時から所望のエクセス電圧Vexが印加され動作することになる。
本実施形態において、トランジスタ304、311などを複数の画素104(共有画素)で共有する。共有画素のうちノードCのリセット後の最初にフォトンが入射した画素104のみエクセス電圧Vexが所望の値にならないが、それ以降に入射するフォトンを検知する際には、全ての共有画素のAPD201に所望のエクセス電圧Vexが供給される。したがって、本実施形態の光電変換装置100は、上述の第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、共有画素は、トランジスタ304、311などを共有するため、画素104のサイズが小さい場合であっても画素104に保持回路300を組み込むことが可能である。このように、本実施形態においても、特性の優れたSPAD素子を備える光電変換装置100を実現することができる。
第4実施形態
図9は、本開示の第4実施形態における光電変換装置100の画素104の構成例を示す等価回路図である。上述の第1~第3実施形態では、波形整形回路210としてインバータを用いることを説明したが、ここでは、波形整形回路210の詳細について、以下に説明する。
図9に示されるように、本実施形態の波形整形回路210は、N型MOSトランジスタであるトランジスタ401、P型MOSトランジスタであるトランジスタ402、N型MOSトランジスタであるトランジスタ403を含む。トランジスタ401とトランジスタ402とは、APD201のカソードに接続されたノードAの電位が入力され、ノードAの電位に基づいた信号をノードBに出力するインバータ411を構成する。トランジスタ403は、インバータ411と電位供給線251との間に電流経路を構成するように配される。より具体的には、インバータ411を構成するトランジスタ402のソースと電圧VHを供給する電位供給線251とが、トランジスタ403を介して接続されている。トランジスタ403のゲートは、ノードCに接続され、保持回路300からノードAの電位に応じた上述の電位が供給される。トランジスタ401のソースは、電位供給線351に接続されている。
上述の第1~3実施形態において、ノードAの電位変動域は、それぞれのAPD201のブレークダウン電圧Vbdに依存する。上述の電圧(電位)の関係では、Vbd=30Vの場合、ノードAの電位変動域は、最初のフォトン入射時には2.8V~0.0V、2番目以降のフォトン入射時には2.0V~0.0Vである。Vbd=30.5Vの場合、ノードAの電位変動域は、最初のフォトン入射時には2.8V~0.5V、2番目以降のフォトン入射時には2.5V~0.5Vである。Vbd=29.5Vの場合、ノードAの電位変動域は、最初のフォトン入射時には2.8V~-0.5V、2番目以降のフォトン入射時には1.5V~-0.5Vである。したがって、波形整形回路210がインバータであり、APD201にフォトンが入射したことを検知するための波形整形回路210がノードBに信号を出力する閾値電圧を1.0Vに設定することを説明した。
しかしながら、信号検知回路として使用される波形整形回路210において、2つの問題が発生する可能性がある。ひとつは、ノードCのリセット動作後の2番目以降のフォトンの入射において、インバータの閾値電圧に対して電位変動域のマージンが0.5Vと狭いことである。上述の電位変動域において、何れの電位変動域に1.0Vは含まれているため、波形整形回路210によってアバランシェ電流の検知は行われる。しかしながら、APD201のブレークダウン電圧Vbdのばらつきが±0.5Vよりも大きくばらつく場合や、インバータの閾値電圧自体がばらつく場合、、温度によってインバータの閾値電圧の変動が生じる場合が考えられる。それらを考慮すると、インバータの閾値電圧に対する電位変動域のマージンが0.5Vでは不足する可能性がある。
次に考えられる問題は貫通電流である。一般的なインバータは、図9に示される波形整形回路210に対して、トランジスタ401とトランジスタ402とによって構成され(インバータ411)、トランジスタ403は配されない。インバータ411を構成するトランジスタ401、402の閾値電圧は、電源電圧が3V程度の場合、0.6V程度に設定されうる。P型MOSトランジスタの閾電圧値は一般に負であるが、ここでは絶対値で記している。実際はトランジスタ402の閾電圧は-0.6Vである。ノードAの電位変動域は、2番目以降のフォトン入射時にはVbd=30VのAPD201を備える画素104(平均的な画素104)では2.0V~0.0V、Vbd=29.5VのAPD201を備える画素104では1.5~-0.5Vである。その場合、2番目以降のフォトンの入射を待つ間のノードAの電位は、平均2.0V、最小で1.5Vであるから、インバータ411に貫通電流が流れてしまう。一般的なインバータ411を構成するN型MOSトランジスタであるトランジスタ401は、ゲート電位が0.6V以上でON状態になる。また、上述のように、VH=3.0Vとすると、P型MOSトランジスタであるトランジスタ402は、ゲート電位が2.4V以下でON状態になる。そのため、N型、P型、両方のトランジスタ401、402がON状態となるためである。このような貫通電流を防止するには、P型MOSトランジスタであるトランジスタ402の閾値電圧を1.5V以上にする必要がある。しかしながら、トランジスタ402の閾値電圧を大きくした場合、インバータ411の駆動力や応答速度が損なわれてしまう。
このような問題の可能性に対して、図9に示されるように、トランジスタ403を含む波形整形回路210が配される。以下、トランジスタ403を含む波形整形回路210の動作を説明する。
ここで、トランジスタ401の閾値電圧は、一般的な値である0.6Vとする。同様に、トランジスタ402の閾値電圧も0.6Vとする。トランジスタ403の閾値電圧は、同じN型MOSトランジスタであるトランジスタ311の閾値電圧と同じ0.2Vとする。上述の各実施形態と同様に、電位供給線251に供給される電圧VHは、3.0Vとする。トランジスタ403のソース電位は、トランジスタ401とトランジスタ402とで構成されるインバータ411の電源電位になるが、ノードCの電位から0.2V下がった値になる。
トランジスタ401とトランジスタ402とで構成されるインバータ411の閾値電圧は、電源電位の1/2とする。したがって、波形整形回路210の閾値電圧は、Vbd=30VのAPD201が配された画素104については次のように変化する。
(1)ノードCのリセット動作後、最初のフォトンが入射するまで
閾値電圧=2.8V/2=1.4V
(2)最初のフォトンが入射して以降
閾値電圧=2.0V/2=1.0V
最初のフォトン入射時のノードAの電位変動域は2.8~0Vであるから、波形整形回路210(インバータ411)の閾値電圧に対するマージンは1.4Vと十分にある。また、2番目以降のフォトン入射時のノードAの電位変動域は2.0~0Vであるから、波形整形回路210の閾値電圧に対するマージンは1.0Vある。
次に、Vbd=30.5VのAPD201が配された画素104の波形整形回路210の閾値電圧は、次のように変化する。
(1)ノードCがリセットされてから、最初のフォトンが入射するまで
閾値電圧=2.8V/2=1.4V
(2)最初のフォトンが入射して以降
閾値電圧=2.5V/2=1.25V
2番目以降のフォトン入射時のノードAの電位変動域は2.5~0、5Vであるから、波形整形回路210の閾値電圧に対するマージンは0.75Vである。同様に、Vbd=29.5VのAPD201が配された画素104の波形整形回路210の閾値電圧に対するマージンは0.75Vとなる。
以上のように、ノードAの電位変動域の波形整形回路210の閾値電圧に対する最小マージンは0.75Vになり、上述のように波形整形回路210の閾値電圧を1.0Vに固定した場合のマージン0.5V比べて、マージンが1.5倍に拡大する。また、貫通電流の懸念もないことが、上述の例からわかる。
このように、ノードCに保持したそれぞれの画素104のAPD201のブレークダウン電圧Vbdを反映する電位によって、波形整形回路210(例えば、インバータ411)の特性(回路パラメータ)が変化する。この波形整形回路210の特性は、APD201のカソードに接続されたノードAの電位に対して波形整形回路210が信号を出力する閾値電圧である。それによって、波形整形回路210の動作マージンを確保することができる。
本実施形態の波形整形回路210は、図9に示される構成では、上述の第1実施形態の図4に示される構成を備える画素104に追加されている。しかしながら、これに限られることはなく、本実施形態の波形整形回路210は、上述の第2、第3実施形態において説明した図6、8に示される構成を備える画素104にも適用できる。
本実施形態によれば、上述の第1~第3実施形態の効果を得られるだけでなく、APD201にフォトンが入射したことを検知する信号検知回路として機能する波形整形回路210の動作マージンが広くなり、また、貫通電流の懸念も抑制される。つまり、安定して使用ができる信号検知回路を伴ったSPAD素子が実現できる。結果として、光電変換装置100の信頼性が向上する。
本明細書の開示は、以下の光電変換装置を含む。
(項目1)
複数の画素が配された光電変換装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、
第1電位供給線と第2電位供給線との間に配されたアバランシェフォトダイオードと、
前記第1電位供給線と前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように配された第1トランジスタと、
前記アバランシェフォトダイオードがアバランシェ降伏した際に、前記アバランシェフォトダイオードの前記第1トランジスタに接続された電極の第1電位に応じた第2電位を保持する保持回路と、を含み、
前記第1トランジスタのゲートに、前記保持回路から前記第2電位が供給されることを特徴とする光電変換装置。
(項目2)
前記保持回路が、前記第2電位を保持し、前記第1トランジスタのゲートに接続される保持ノードと、前記保持ノードをリセットするための第2トランジスタと、前記保持ノードと第3電位供給線との間に電流経路を構成するように配され、ゲートが前記電極に接続された第3トランジスタと、を含むことを特徴とする項目1に記載の光電変換装置。
(項目3)
前記保持ノードが前記第2トランジスタによってリセットされるリセット動作の後に最初に前記アバランシェフォトダイオードがアバランシェ降伏した際に、前記保持回路が前記第2電位を保持することを特徴とする項目2に記載の光電変換装置。
(項目4)
前記第2トランジスタが、前記第1電位供給線と前記保持ノードとの間に電流経路を構成するように配されることを特徴とする項目2または3に記載の光電変換装置。
(項目5)
前記第1トランジスタの閾値電圧と前記第3トランジスタの閾値電圧の絶対値との差分に応じたエクセス電圧が、前記アバランシェフォトダイオードに供給されることを特徴とする項目2乃至4の何れか1項目に記載の光電変換装置。
(項目6)
前記第1トランジスタがN型MOSトランジスタであり、前記第3トランジスタがP型MOSトランジスタであることを特徴とする項目5に記載の光電変換装置。
(項目7)
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタが、前記複数の画素のうち2つ以上の画素によって共有され、
前記第3トランジスタが、前記複数の画素のそれぞれに配されていることを特徴とする項目2乃至6の何れか1項目に記載の光電変換装置。
(項目8)
前記第1トランジスタと前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように、第4トランジスタが配されることを特徴とする項目1乃至7の何れか1項目に記載の光電変換装置。
(項目19)
前記第1トランジスタと前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように、第4トランジスタが配され、
前記第4トランジスタは、断続的にオン動作を繰り返し、
前記第2トランジスタがオン動作し前記保持ノードをリセットする間隔よりも、前記第4トランジスタがオン動作を繰り返す間隔の方が短いことを特徴とする項目2乃至7の何れか1項目に記載の光電変換装置。
(項目10)
前記第1トランジスタと前記アバランシェフォトダイオードとの間に、クエンチ素子が配されることを特徴とする項目1乃至9の何れか1項目に記載の光電変換装置。
(項目11)
前記複数の画素のそれぞれは、前記電極に接続され、前記電極の電位に基づいて信号を出力する波形整形回路をさらに含むことを特徴とする項目1乃至10の何れか1項目に記載の光電変換装置。
(項目12)
前記波形整形回路の特性が、前記第2電位に応じて変化することを特徴とする項目11に記載の光電変換装置。
(項目13)
前記特性が、前記電極の電位に対して前記波形整形回路が信号を出力する閾値電圧であることを特徴とする項目12に記載の光電変換装置。
(項目14)
前記波形整形回路が、前記電極の電位が入力され、前記電極の電位に基づいた信号を出力するインバータと、前記インバータと前記第1電位供給線との間に電流経路を構成するように配された第5トランジスタと、を含み、
前記第5トランジスタのゲートに、前記第2電位が供給されることを特徴とする項目11乃至13の何れか1項目に記載の光電変換装置。
(項目15)
前記複数の画素のそれぞれは、前記波形整形回路が信号を出力した回数をカウントするカウント回路をさらに含むことを特徴とする項目11乃至14の何れか1項目に記載の光電変換装置。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神および範囲から離脱することなく、様々な変更および変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
100:光電変換装置、104:画素、201:アバランシェフォトダイオード、251,252:電位供給線、300:保持回路、311:トランジスタ

Claims (15)

  1. 複数の画素が配された光電変換装置であって、
    前記複数の画素のそれぞれは、
    第1電位供給線と第2電位供給線との間に配されたアバランシェフォトダイオードと、
    前記第1電位供給線と前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように配された第1トランジスタと、
    前記アバランシェフォトダイオードがアバランシェ降伏した際に、前記アバランシェフォトダイオードの前記第1トランジスタに接続された電極の第1電位に応じた第2電位を保持する保持回路と、を含み、
    前記第1トランジスタのゲートに、前記保持回路から前記第2電位が供給されることを特徴とする光電変換装置。
  2. 前記保持回路が、前記第2電位を保持し、前記第1トランジスタのゲートに接続される保持ノードと、前記保持ノードをリセットするための第2トランジスタと、前記保持ノードと第3電位供給線との間に電流経路を構成するように配され、ゲートが前記電極に接続された第3トランジスタと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
  3. 前記保持ノードが前記第2トランジスタによってリセットされるリセット動作の後に最初に前記アバランシェフォトダイオードがアバランシェ降伏した際に、前記保持回路が前記第2電位を保持することを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
  4. 前記第2トランジスタが、前記第1電位供給線と前記保持ノードとの間に電流経路を構成するように配されることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
  5. 前記第1トランジスタの閾値電圧と前記第3トランジスタの閾値電圧の絶対値との差分に応じたエクセス電圧が、前記アバランシェフォトダイオードに供給されることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
  6. 前記第1トランジスタがN型MOSトランジスタであり、前記第3トランジスタがP型MOSトランジスタであることを特徴とする請求項5に記載の光電変換装置。
  7. 前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタが、前記複数の画素のうち2つ以上の画素によって共有され、
    前記第3トランジスタが、前記複数の画素のそれぞれに配されていることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
  8. 前記第1トランジスタと前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように、第4トランジスタが配されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
  9. 前記第1トランジスタと前記アバランシェフォトダイオードとの間に電流経路を構成するように、第4トランジスタが配され、
    前記第4トランジスタは、断続的にオン動作を繰り返し、
    前記第2トランジスタがオン動作し前記保持ノードをリセットする間隔よりも、前記第4トランジスタがオン動作を繰り返す間隔の方が短いことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
  10. 前記第1トランジスタと前記アバランシェフォトダイオードとの間に、クエンチ素子が配されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
  11. 前記複数の画素のそれぞれは、前記電極に接続され、前記電極の電位に基づいて信号を出力する波形整形回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
  12. 前記波形整形回路の特性が、前記第2電位に応じて変化することを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
  13. 前記特性が、前記電極の電位に対して前記波形整形回路が信号を出力する閾値電圧であることを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置。
  14. 前記波形整形回路が、前記電極の電位が入力され、前記電極の電位に基づいた信号を出力するインバータと、前記インバータと前記第1電位供給線との間に電流経路を構成するように配された第5トランジスタと、を含み、
    前記第5トランジスタのゲートに、前記第2電位が供給されることを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
  15. 前記複数の画素のそれぞれは、前記波形整形回路が信号を出力した回数をカウントするカウント回路をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
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