JP2023543439A - NF-κB媒介疾患の処置 - Google Patents

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Abstract

本開示は、それを必要とするヒト患者に治療有効量のバモロロン及び/又はその塩を投与することを含む、1日齢~18歳のヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法を提供する。

Description

本願は、2020年9月21日出願の米国仮特許出願第63/081,073号、2021年6月1日出願の米国仮特許出願第63/195,473号、及び2021年6月25日出願の米国仮特許出願第63/214,908号(それらの開示は、あらゆる目的でその全体が参照により組み込まれる)に基づく優先権の利益を主張する。
本発明は、国立衛生研究所の国立神経学的障害及び脳卒中研究所により授与された2R44NS095423-03に基づいて政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に関する一定の権利を有する。
バモロロンは、VB-15、VBP-15、16α-メチル-9,11-デヒドロプレドニソロン、又は17α,21-ジヒドロキシ-16α-メチルプレグナ-1,4,9(11)-トリエン-3,20-ジオン:
Figure 2023543439000002
としても知られる合成グルココルチコイドコルチコステロイドである。
バモロロンは、グルココルチコイドレセプターに強力に結合するとともにプレドニゾンやデフラザコルトなどの伝統的グルココルチコイド薬剤に類似した抗炎症作用を有する抗炎症性薬剤である。しかしながら、バモロロンは、グルココルチコイドレセプターとの5つの分子接触部位の1つである11-炭素の酸素基(ヒドロキシル又はカルボニル)を欠如していることによりコルチコステロイドクラスの33種すべての薬剤と異なる。in-vitro薬理学及び前臨床in vivo試験では、バモロロンは、ステロイド薬剤の抗炎症活性を保有するとともに、これらのモデルで成長の妨げ、骨の病的状態、及び筋萎縮をはじめとするこれらの薬剤の有害作用(AE)を欠如していることが示されている。プレドニゾン及びデフラザコルトをはじめとする多くのコルチコステロイドは、ミネラロコルチコイドレセプターのアゴニストであり、レニン-アンジオテンシン経路を介して血量及び血圧の増加をもたらす。これとは対照的に、バモロロンは、ミネラロコルチコイドレセプターの効力のあるアンタゴニストであり、エプレレノン及びスピロノラクトンに活性が類似する。伝統的コルチコステロイド抗炎症性薬剤と比較したバモロロンのディファレンシャル作用機序は、グルココルチコイド反応エレメント結合及び活性化に対する遺伝子転写活性の損失、ミネラロコルチコイドレセプターに対する効力のあるアンタゴニスト活性、優れた膜安定化性、並びに識別可能なNF-κB阻害(抗炎症)活性の保有に帰属される。
NF-κB活性化は、骨格筋損失、炎症促進性サイトカイン、腫瘍由来因子、及びNF-κBの活性化を介する筋萎縮機能の他のメディエーターをもたらす。NF-κB関連細胞損傷経路の活性化は、デュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)患者におけるジストロフィン欠損筋の最初期分子病理の1つとして認識される。NF-κB活性の阻害は、DMD及び他の疾患を有する患者において骨格筋損失を予防可能である。
バモロロン及び他のコルチコステロイドは、NF-κB経路を阻害する。デフラザコルトやプレドニゾンなどの伝統的コルチコステロイドによる長期処置は、患者の生活の質を損ねる広範囲にわたる安全性の懸念がある。子供では、線形成長の減速-通常は「成長の妨げ」といわれる-は、慢性コルチコステロイド処置の帰趨である。それゆえ、ヒトにおいてNF-κB媒介疾患の処置、とくに慢性的に投与され成長を妨げない処置のニーズが当技術分野に依然として存在する。
本明細書には、それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000003
を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、ヒト患者において脊椎骨折の発生率を増加させることなく1日齢~18歳のヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法が提供される。
また、それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000004
を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、ヒト患者において行動有害イベントの発生率を増加させることなく1日齢~18歳のヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法も提供される。
それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000005
を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、ヒト患者において除脂肪身体組成量及び骨密度を減少させることなく1日齢~18歳のヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法が提供される。
それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000006
を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、1日齢~18歳のヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法であって、ヒト患者は低減された正の転写活性を実証する、方法が提供される。
また、本明細書に開示される本発明の他の態様は、本特許開示が進むにつれてより詳細に示されるであろう。
実施例3に記載のバモロロン形Iを含む水性経口医薬サスペンジョン組成物を作製するために使用される製造プロセスのフロー図を示す。 実施例4に記載のバモロロン形Iを含む水性経口医薬サスペンジョン組成物を作製するために使用される製造プロセスのフロー図を示す。 バモロロン関連効能を国際神経筋共同研究グループ(CINRG)デュシェンヌ自然歴研究(DNHS)外部コンパレーターと比較する参加者-レベル縦断データ(18ヵ月間処置期間後のベースラインからの変化)を示す。バモロロン群Aは、18ヵ月間の最後の3~9ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置され、群Bは、最後の9~11ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置され、且つ群C及びDは、全18ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置された。18ヵ月間の期間の終了時の各参加者の特定用量が示される(赤=2.0mg/kg/日、青=6.0mg/kg/日)。用量群B、C、及びDは、CINRG DNHSからのマッチするコルチコステロイドナイーブ参加者と比較してベースラインを上回る平均改善を示す(n=19)。 バモロロン関連効能をCINRG DNHS外部コンパレーターと比較する平均群横断データを示す(5.5~8.5歳の年齢で分析)。バモロロン群Aは、18ヵ月間の最後の3~9ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置され(青丸)、群Bは、最後の9~11ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置され(赤四角)、且つ群C(緑三角)及びD(紫三角)は、全18ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置された。ベースライン平均は、各バモロロン処置群別に示される(黒線)。コルチコステロイド処置自然歴群(n=68)は、コルチコステロイド開始時の年齢が可変であるのでベースラインが示されていない。このパネルは、バモロロン処置群B、C、及びDでベースラインを上回る改善を示す。横断データは、CINRG DNHSでの年齢群マッチコルチコステロイド処置参加者に類似した効果サイズを示唆する。 国立慢性疾患予防及び健康増進センターと共同で国立健康統計センターにより明らかにされた2~20歳の年齢の少年での年齢別身長及び年齢別体重パーセンタイルを示す(2000年)(www.cdc.gov/growthchartsで入手可能)。 個別トラジェクトリーでバモロロンLTE対CINRG DNHSコホートのBMI zスコア比較を示す。 個別トラジェクトリーでバモロロンLTE対CINRG DNHSコホートの身長パーセンタイル比較を示す。
定義
本明細書で用いられる場合、下記語句は、文脈上他の意味で用いられる場合を除き、以下に示される意味を有することが一般に意図される。
本明細書で用いられる場合、「バモロロン」は、17α,21-ジヒドロキシ-16α-メチルプレグナ-1,4,9(11)-トリエン-3,20-ジオン(VBP15又はVB-15としても知られる)を意味し、構造:
Figure 2023543439000007
を有する。
バモロロンは、各種多形形として存在可能である。本明細書で用いられる場合、「多形」及び「多形形」という用語並びに本明細書の関連用語は、同一分子の結晶形を意味する。異なる多形は、結晶格子中の分子の配置又は配座が原因で、異なる物理的性質、たとえば、融解温度、融解熱、溶解度、溶解速度、及び/又は振動スペクトルなどを有しうる。多形が呈する物理的性質の差は、貯蔵安定性、圧縮性及び密度(製剤及び製品の製造に重要)、溶解速度(生物学的利用能の重要因子)などの医薬パラメーターに影響を及ぼす。安定性の差はまた、化学反応性の変化(たとえば、製剤がある多形で構成されるときに別の多形で構成されるときよりも迅速に変色するようなディファレンシャル酸化)、又は機械的性質の変化(たとえば、速度論的に有利な多形が熱力学的により安定な多形に変換されるにつれて貯蔵時に錠剤が崩壊する)、又はその両方(たとえば、ある多形の錠剤は高湿度で分解をより受けやすい)から生じる可能性がある。溶解度/溶解の差の結果として、いくつかの多形遷移は、極端な場合には効力の欠如をもたらしうるか、又は他の極端な場合には毒性をもたらしうる。そのほか、結晶の物理的性質は、処理に重要なこともあり、たとえば、ある多形は、溶媒和物をより形成しやすい可能性があるか、又は濾過及び洗浄により不純物フリーにすることが困難な可能性がある(すなわち、粒子の形状及びサイズ分布は多形間で異なりうる)。
分子の多形は、当技術分野で公知のように、いくつかの方法により得ることが可能である。かかる方法としては、限定されるものではないが、溶融再結晶化、溶融冷却、溶媒再結晶化、脱溶媒和、迅速蒸発、迅速冷却、緩徐冷却、蒸気拡散、及び昇華が挙げられる。
多形を特徴付けるための技術としては、限定されるものではないが、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折測定法(XRPD)、単結晶X線回折測定法、振動分光法、たとえば、IR及びラマン分光法、固体NMR、ホットステージ光学顕微鏡法、走査電子顕微鏡法(SEM)、電子結晶解析及び定量分析、粒子サイズ分析(PSA)表面積分析、溶解度試験、並びに溶解試験が挙げられる。
化合物の固形形を「特徴付ける」ために、たとえば、化合物の固形形のXRPDデータを収集し、その形のXRPDピークを比較しうる。たとえば、3つの固形形のとき、たとえば、形X及びY並びに材料Nが比較される。形Xのパターンが、形Yのパターンにも材料Nのパターンにもピークが現れない角度にピークを示す場合、その化合物のそのピークは、形Y及び材料Nから形Xを区別するとともに、形Xを特徴付けるようにさらに機能する。たとえば、形Xを他の既知の形から区別する一群のピークは、形Xを特徴付けるために使用されうる。多くの場合、同一分析技術を用いることを含めて、固形形を特徴付ける複数の方法が存在することは、当業者であれば分かるであろう。追加のピークを使用することも可能であるが、全回折パターンを含むまでその形を特徴付ける必要はない。全XRPDパターン内のすべてのピークを用いてかかる形を特徴付けうるが、その形を特徴付けるためにそのデータのサブセットが使用されうるとともに、典型的には、そのサブセットが使用される。
XRPDパターンは、x軸上に回折角(典型的には°2θ)及びy軸上に強度を有するx-yグラフである。このパターン内のピークは、結晶性固形形を特徴付けるために使用されうる。いずれのデータ測定を用いた場合でも、XRPDデータには変動性が存在する。ピーク強度は、サンプル調製にとくに敏感でありうるので(たとえば、粒子サイズ、含湿率、溶媒含有率、及び優先配向効果は、感度に影響を及ぼす)、したがって、異なる条件下で調製された同一材料のサンプルは、わずかに異なるパターンを生成しうるとともに、この変動性は、通常、回折角の変動性よりも大きいので、データは、多くの場合、ピークの強度を含めることなくピークの回折角のみにより表される。回折角の変動性もまた、サンプル調製に敏感でありうる。変動性の他の源は、装置パラメーター及び生のX線データの処理に由来する。すなわち、異なるX線装置は、異なるパラメーターを用いて動作する。こうしたことから、同一固形形からわずかに異なるXRPDパターンがもたらされうるとともに、同様に、異なるソフトウェアパッケージでは、X線データに異なる処理が行われる。これもまた変動性をもたらす。変動性のこれらの及び他の源は、医薬技術分野の当業者に公知である。変動性のかかる源に起因して、XRPDパターン中の回折角に±0.2°2θの変動性を帰属するのが通常である。
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、それが修飾する数値をかかる値が誤差マージン内の変数として表されるものと認定することが意図される。データのチャート又は表に与えられた平均値に対する標準偏差などの特定誤差マージンが列挙されていない場合、「約」という用語は、列挙された値を包含しうる範囲及び同様にその数字に対して有効数字を考慮に入れて切上げ又は切下げを行うことにより含まれうる範囲を意味するものと理解されるべきである。
本明細書で用いられる場合、「投与すること」は、個体が化合物を内在化するように化合物又は他の療法剤、治療剤、若しくは処置剤を提供することを意味する。
本明細書で用いられる場合、「疾患」という用語は、一般的には、「障害」及び「病態」(医学的病態と同様)という用語と同義的であり、それらはすべて、正常機能を損ない、典型的には徴候及び症状の区別により顕在化され、且つヒト又は動物の寿命又は生活の質を低下させる、人体又は動物体又はそれらの一部の異常病態を反映するという点で、互換的に用いられる。
本明細書で用いられる場合、「処置を必要とする」及び処置が参照されるときの「必要とする」は、個体又は動物が必要とすると又は処置が奏効するであろうとケア提供者(たとえば、ヒトの場合には医師、看護師、ナースプラクティショナーなど、非ヒト哺乳動物を含む動物の場合には獣医)により下される判断を意味するために互換的に用いられる。この判断は、ケア提供者の専門知識の領域のさまざまな因子に基づいて下されるが、本発明の化合物により処置可能な疾患、病態、又は障害の結果として、個体又は動物が病気である又は病気になるであろうという知見を含む。それゆえ、本発明の化合物は、保護的若しくは予防的に使用可能であるか、又は本発明の化合物は、疾患、病態、若しくは障害を和らげる、阻害する、若しくは回復させるために使用可能である。
本明細書で用いられる場合、「NF-κB媒介疾患」という用語は、NF-κBの阻害により対処可能である有意な病理学的炎症性成分を有する疾患を意味する。疾患は、NF-κBの活性又は量をモジュレートすることにより完全に又は部分的に媒介されうる。特定的には、疾患は、NF-κBのモジュレーションが基礎疾患になんらかの影響をもたらすもの、たとえば、NF-κBモジュレーターの投与が処置される患者の少なくとも一部になんらかの改善をもたらすものである。「NF-κB媒介疾患」という用語はまた、たとえ本明細書に開示される化合物がNF-κB以外の生物学的経路及び/又はプロセスを介してその影響を及ぼすとしても、下記疾患:筋ジストロフィー、関節炎、外傷性脳傷害、脊髄傷害、敗血症、リウマチ性疾患、癌、アテローム硬化症、1型糖尿病、2型糖尿病、レプトスピラ症腎疾患、緑内障、網膜疾患、老化、頭痛、疼痛、複合性局所疼痛症候群、心肥大、筋消耗、異化障害、肥満、胎児成長遅延、高コレステロール血症、心疾患、慢性心不全、虚血/再灌流、脳卒中、脳動脈瘤、狭心症、肺疾患、嚢胞性線維化、酸誘発肺傷害、肺高血圧、喘息、慢性閉塞性肺疾患、シェーグレン症候群、ヒアリン膜疾患、腎疾患、糸球体疾患、アルコール性肝疾患、消化管疾患、腹膜子宮内膜症、皮膚疾患、鼻副鼻腔炎、中皮腫、無汗性外胚葉性異形成-ID、ベーチェット病、色素失調症、結核、喘息、クローン病、結腸炎、眼アレルギー、虫垂炎、パジェット病、膵炎、歯周炎、子宮内膜症、炎症性腸疾患、炎症性肺疾患、シリカ誘発疾患、睡眠時無呼吸、AIDS、HIV-1、自己免疫性疾患、抗リン脂質症候群、狼瘡、ループス腎炎、家族性地中海熱、遺伝性周期熱症候群、心理社会的ストレス疾患、神経病理学的疾患、家族性アミロイド性多発ニューロパチー、炎症性ニューロパチー、パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、白内障、及び聴力損失を意味する。
本明細書で用いられる場合、「医薬組成物」は、バモロロンやその多形形などの少なくとも1つの活性成分を含む組成物を意味し、その場合、組成物は、哺乳動物(たとえば、限定されるものではないがヒト)において特定の効能アウトカムのために治験に適用可能である。当業者のニーズに基づいて活性成分が所望の効能アウトカムを有するかを決定するのに適切な技術は、当業者であれば理解及び認識されよう。
本明細書で用いられる場合、「純粋」という用語は、約90~100%、好ましくは95~100%、より好ましくは98~100%(wt/wt)、又は99~100%(wt/wt)純粋な化合物を意味し、たとえば、約10%未満、約5%未満、約2%未満、又は約1%未満の不純物が存在する。かかる不純物としては、たとえば、分解生成物、酸化生成物、エピマー、溶媒、及び/又は他の望ましくない不純物が挙げられる。
値の範囲が開示されるとき及び「n~n」という表記が用されるとき、n及びnが数であれば、とくに明記されていない限り、この表記は、それらの数自体及びそれらの間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、端値を含めてそれらの間の整数であってもそれらの間で連続したものであってもよい。そのため、例として、「2~6個の炭素」という範囲は、炭素が整数単位で現れるので、2、3、4、5、及び6個の炭素を含むことが意図される。対照的に、例として、「1~3μM(マイクロモル)」という範囲は、1μM、3μMを含むとともに、いずれかの有効桁数までそれらの間のすべてを含むことが意図される(たとえば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)。
本明細書で用いられる場合、(「室温」)という用語は、68~86Fの温度を意味する。
本明細書で用いられる場合、「安定」という用語は、化学的安定性(貯蔵寿命)及び物理的安定性(サスペンジョン一様性)の両方を意味する。一様性の改善は、製品中の薬剤が沈降及びコンパクト化しなくなるだろうから、投与前にサスペンジョンの振盪をそれほど必要とせず、製品のより長い貯蔵(すなわち、より長い貯蔵寿命)を可能にするので、製品の改善をもたらす。
本明細書で用いられる場合、「サスペンジョン」は、液体中の固体の混合物を意味する。これとは対照的に、「エマルジョン」は、2種の非混和性液体の混合物を意味する。
本明細書で用いられる場合、「治療上許容可能」という用語は、過度の毒性、刺激性、及びアレルギー反応を伴うことなく患者の組織に接触させて使用するのに好適であり、合理的な便益/リスク比に対応し、且つそれらの意図された使用に有効である、化合物(又は塩、プロドラッグ、互変異性形、双性イオン形など)を意味する。
本明細書で用いられる場合、「治療有効」という語句は、疾患又は障害を処置するために使用される活性成分の量を認定することが意図される。この量は、疾患又は障害を低減又は排除するという目標を達成するものとする。
本明細書で用いられる場合、「処置すること」、「処置」などは、被験者において疾患を回復させてその原因、その進行、その重症度、又は1つ以上のその症状を低減又は排除するか、さもなければ疾患を有益に改変することを意味する。
本明細書で用いられる場合、「予防」は、病原体の感染の予防の場合などでの疾患からの完全な保護を意味するか、又は前糖尿病から糖尿病などへの疾患進行の予防を含みうる。たとえば、疾患の予防は、いずれかのレベルの疾患に関連するいずれかの影響の完全な排除を意味しないこともありうる。その代わりに、それは、臨床的に有意又は検出可能レベルまで疾患の症状を予防することを意味しうる。疾患の予防はまた、疾患のより後期のステージへの疾患の進行の予防を意味しうる。予防は、先制的でありうる。すなわち、それは、疾患のリスクに晒される又はそのリスクのある被験者における疾患の予防を含みうる。
本明細書で用いられる場合、成長の妨げは、ヒト患者での年齢別身長パーセンタイルの負の変化を意味する。成長の妨げは、子供における年齢規格化集団ベース規範曲線(たとえば、図5並びに年齢及び性別に基づく他の臨床成長チャートを参照されたい)に対して測定され、パーセンタイルとして集団平均に対して定量される。成長の妨げはまた、成長減速(たとえば、線形成長減速)を有する又は示すとしても参照されうる。これとは対照的に、成長の妨げを有していない又は示さないヒト患者は、成長速度又はトラジェクトリーを維持するとして記述されうる。
本明細書で用いられる略号は、以下:
・ DMD、デュシェンヌ筋ジストロフィー
・ CINRG、国際神経筋共同研究グループ、
・ DNHS、デュシェンヌ自然歴研究、
・ SD、標準偏差、
・ SE、標準誤差、
・ SEM、平均の標準誤差、
・ TTCLIMB、4段階段昇り時間、
・ TTRW、10メートル走行/歩行時間、
・ TTSTAND、仰臥位からの立上り時間、
・ 6MWT、6分間歩行試験、
・ CI、信頼区間、
・ BMI、身体マス指数、
・ LS、最小二乗、
・ NA、利用不可、
・ NR、報告なし、及び
・ NSAA、ノーススター歩行アセスメント
を含む。
本明細書で用いられる場合、「用量」は、患者により一度に摂取される活性剤の測定量を意味する。
本明細書で用いられる場合、「投与量」は、特定の時間にわたる特定の量、回数、及び投与頻度の処方された投与である。
本明細書で用いられる場合、「リスク」は、有害反応、傷害、又は医学的処置から生じる他の望ましくないアウトカムの確率又は可能性を意味する。「許容可能リスク」は、個体又は群が耐容する医学的処置から生じる損害、傷害、又は疾患のリスクを測定することを意味する。リスクが「許容可能」であるかは、リスクの大きさ並びに政治的及び社会的の両方の数多くの他の因子に関して提供されるどんな科学的及び他のアドバイスを受け入れるかにかかわらず、個体又は群がリスクを冒す見返りとして得られうると知覚する利点に依存するであろう。有害反応の「許容可能リスク」は、有害反応がその発生確率の小さなもの若しくはその帰趨がごくわずかなものであるか又は活性剤の利益(知覚される又は現実の)がかなり大きいことから、社会の個体又は群が有害反応の発生するおそれのあるリスクを冒す又はリスクに晒されることをいとわないことを意味する。有害反応の「許容不能リスク」は、有害反応の発生確率、有害反応の帰趨、及び活性剤の利益(知覚される又は現実の)を重視して、社会の個体又は群が有害反応の発生するおそれのあるリスクを冒す又はリスクに晒されることを嫌がることを意味する。「リスクがある」は、高レベルのリスク又は感受性により特徴付けられる状態又は病態であることを意味する。リスクアセスメントは、製品の使用に関連するリスクの性質、頻度、及び重症度を同定すること及び特徴付けることからなる。
本明細書で用いられる場合、「安全性」は、患者関連因子(たとえば、年齢、性別、民族性、人種、標的の病気、腎又は肝機能の異常、併存の病気、代謝ステータスなどのジェネティック特性、又は環境)及び活性剤関連因子(たとえば、用量、血漿中レベル、暴露持続期間、又は併用医薬)に関連する有害作用を含めて、活性剤の投与に関連する有害イベントの発生率又は重症度を意味する。
本明細書で用いられる場合、化合物の「漸減」又は「用量漸減」は、化合物の投与を終了する前に存在する治療効果を達成するように化合物の量を減少させることを意味する。漸減は、同一であっても異なっていてもよい1つ以上の用量刻み値で達成可能である。
本明細書で用いられる場合、化合物の「漸増」又は「用量漸増」は、患者に対する用量制限不耐容性前に存在する治療効果を達成するように化合物の量を増加させることを意味する。漸増は、同一であっても異なっていてもよい1つ以上の用量刻み値で達成可能である。
本明細書で用いられる場合、「最大推奨合計1日用量」又は「最大推奨1日投与量」又は「最大合計1日用量」又は「最大1日投与量」又は「合計1日投与量」は、投与量漸増減に続いて1日基準で投与される薬剤の最高安全投与量を意味する。すなわち、漸増減スキームにより決定される維持用量は、最大推奨合計1日用量を超えるべきでない。
本明細書全体を通して、とくに文脈上必要とされない限り、「comprise(~を含む)」という単語又は「comprises(~を含む)」や「comprising(~を含む)」などの変化形は、明記されたステップ若しくは要素若しくは整数又は一群の要素若しくは整数を包含するが、いずれの他のステップ若しくは要素若しくは整数又は一群の要素若しくは整数も除外しないことを意味すると理解されるものとする。
本明細書全体を通して、とくに明記されていない限り又はとくに文脈上必要とされない限り、単一ステップ、物質組成物、ステップ群、又は物質組成物群への参照は、それらのステップ、物質組成物、ステップ群、又は物質組成物群の1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含するとみなされるものとする。
本明細書に記載の各実施形態は、とくに明記されていない限り、必要な変更を加えて各他の実施形態に適用されるべきである。
本明細書に記載の発明は、具体的に記載されたもの以外の変更形態及び修正形態が許容されることが、当業者であれば分かるであろう。本発明は、すべてのかかる変更形態及び修正形態を含むものと理解されるべきである。本発明はまた、とくに明記されていない限り、個別に又はまとめて本明細書で参照又は指示されるすべてのステップ、特徴、組成物、及び化合物、並びにすべての組合せ又はいずれか2つ以上のステップ又は特徴を含む。
本発明は、例証のみが意図される本明細書に記載の具体的実施形態により範囲が限定されるものではない。機能的に均等な製品、組成物、及び方法は、明らかに本明細書に記載の本発明の範囲内である。
明確さを期して別々の実施形態との関連で記載される本発明のある特定の特徴はまた、組み合わせて単一実施形態でも提供可能であることが分かる。反対に、簡潔さを期して単一実施形態との関連で記載される本発明の各種特徴はまた、別々でも又はいずれかの好適な部分的組合せでも提供可能である。
それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000008
を有する化合物又はその塩若しくは多形を投与することを含む、ヒト患者の成長を妨げることなく1日齢~18歳のヒト患者においてNF-κB媒介疾患の症状を処置又は低減する方法が提供される。
また、それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000009
を有する化合物又はその塩若しくは多形を投与することによりデュシェンヌ筋ジストロフィーの1つ以上の徴候又は症状の処置又は予防をもたらすことを含む、ヒト患者においてデュシェンヌ筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法も提供される。
いくつかの実施形態では、デュシェンヌ筋ジストロフィーの徴候又は症状は、脚及び骨盤で発症する進行性近位脱力、開脚歩行を伴う脊柱前弯過度、衰弱筋肥大、偽性肥大(脂肪及び線維性組織を伴う腓筋及び三角筋の拡大)、疾患の進行したステージでの電気刺激時の筋収縮性の低下、遅延運動マイルストーン、進行性歩行不能、踵骨腱拘縮、麻痺、疲労、側弯症を含む骨格変形、筋線維変形、心筋症、鬱血性心不全又は不整脈、筋萎縮、及び呼吸器障害の1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、NF-κB媒介疾患は、通常はコルチコステロイドの慢性投与により処置されるものである。
いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、グルココルチコイドレセプターに結合し、ミネラロコルチコイドレセプターのアンタゴニストである。
いくつかの実施形態では、処置は、デフラザコルト、プレドニゾン、又はプレドニソロンで処置されたヒト患者よりも少ないコルチコステロイド関連の安全性の懸念により特徴付けられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の有害イベントは、から選ばれる
いくつかの実施形態では、コルチコステロイド関連の安全性の懸念は、骨脆弱性及び骨折(たとえば、脊椎骨折)、成長低下又は遅延(成長の妨げ)、性腺機能低下症、体重増加、行動的影響(たとえば、気分障害、被刺激性、又は人格変化)、糖尿病、高血圧、クッシング様外観、睡眠障害、多毛症、及び食欲亢進から選ばれる。
いくつかの実施形態では、成長は、年齢別平均身長パーセンタイルの変化により測定される。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、正の成長トラジェクトリーを有する。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、少なくとも6の身長パーセンタイルの増加を有する。
いくつかの実施形態では、NF-κB媒介疾患は慢性疾患である。
いくつかの実施形態では、慢性疾患は炎症性疾患である。
いくつかの実施形態では、慢性疾患は筋消耗性疾患である。
いくつかの実施形態では、筋消耗性疾患は筋ジストロフィーである。
いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ筋ジストロフィー、ベッカー筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、遠位筋ジストロフィー、及びエメリー・ドレイフス筋ジストロフィーから選ばれる。
いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ筋ジストロフィー及びベッカー筋ジストロフィーから選ばれる。いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーはデュシェンヌ筋ジストロフィーである。いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーはベッカー筋ジストロフィーである。
いくつかの実施形態では、投与は少なくとも6ヵ月間にわたる。いくつかの実施形態では、投与は少なくとも12ヵ月間にわたる。いくつかの実施形態では、投与は少なくとも18ヵ月間にわたる。いくつかの実施形態では、投与は少なくとも24ヵ月間にわたる。いくつかの実施形態では、投与は少なくとも30ヵ月間にわたる。
いくつかの実施形態では、月数は連続である。
いくつかの実施形態では、月数は累積である。
いくつかの実施形態では、約1mg/kg/日~約12mg/kg/日の化合物が投与される。
いくつかの実施形態では、約2mg/kg/日~約6mg/kg/日の化合物が投与される。
いくつかの実施形態では、バモロロン又はその塩若しくは多形は、漸増減スキームを介して投与される。いくつかの実施形態では、漸増減スキームの目標は、漸増の場合に最大許容用量に達するまでに又は漸減の場合にバモロロン又はその塩若しくは多形の投与を終了するまでに、患者が処置レジメンに耐容している又は満足な処置を達成した最適レベルの疾患制御を達成することである。
いくつかの実施形態では、バモロロン又はその塩若しくは多形は、維持用量が投与されるまでバモロロン又はその塩若しくは多形の漸減を含む漸増減スキームを介して投与される。
いくつかの実施形態では、漸減スキームは、
初回用量のバモロロン又はその塩若しくは多形を投与することと、
NF-κB媒介疾患の症状の低減及び処置に対する患者の耐容性をモニターすることと、
低減用量のバモロロン又はその塩若しくは多形を投与することと、
を含む。
いくつかの実施形態では、モニタリング及び投与用量低減のサイクルは、維持用量が投与されるまで繰り返される。
いくつかの実施形態では、漸減スキームの初回用量は約6mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、初回用量は約5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、初回用量は約4mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、初回用量は約3mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、低減の各サイクルでは、用量は、約0.5、約1.0、約1.5、約2.5、約3、約3.5、又は約4mg/kg/日の刻み値で低減される。いくつかの実施形態では、刻み値は約0.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約1mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約1.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約2mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約2.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約3mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約3.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約4mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、初回用量は約6mg/kg/日であり、且つ低減用量は約2mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、バモロロン又はその塩若しくは多形は、維持用量が投与されるまでバモロロン又はその塩若しくは多形の漸増を含む漸増減スキームを介して投与される。
いくつかの実施形態では、漸増スキームは、
初回用量のバモロロン又はその塩若しくは多形を投与することと、
NF-κB媒介疾患の症状の低減及び処置に対する患者の耐容性をモニターすることと、
増加用量のバモロロン又はその塩若しくは多形を投与することと、
を含む。
いくつかの実施形態では、モニタリング及び投与用量増加のサイクルは、維持用量が投与されるまで繰り返される。
いくつかの実施形態では、漸増スキームの初回用量は約2mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、初回用量は約2.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、初回用量は約3mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、初回用量は約3.5mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、各サイクルでは、用量は、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、又は約4mg/kg/日の刻み値で増加される。いくつかの実施形態では、刻み値は約0.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約1.0mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約1.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約2mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約2.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約3mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約3.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、刻み値は約4mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、初回用量は約2mg/kg/日であり、且つ増加用量は約6mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、維持用量は約6mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約5.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約4.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約4mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約3.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約3mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約2.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約2mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約1.5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、維持用量は約1mg/kg/日である。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は子供である。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は2~18歳である。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は4~12歳である。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は4~7歳である。
いくつかの実施形態では、デュシェンヌ筋ジストロフィーは、典型的には年少の子供で診断されるが、遺伝子試験及び確認胎児筋生検により子宮で診断可能であるとともに、子宮で診断されてきたり、診断されたりしている。それゆえ、患者は、出生後に医師が適切であるとみなしたらすぐに処置されうる。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は男性である。
いくつかの実施形態では、ヒト患者は女性である。
いくつかの実施形態では、化合物は経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物は、溶液又はサスペンジョンとして投与される。
いくつかの実施形態では、溶液又はサスペンジョンは、約4wt.%の化合物を含む。
いくつかの実施形態では、溶液又はサスペンジョンは、風味剤をさらに含む。
いくつかの実施形態では、処置は、10メートル走行/歩行時間(TTRW)での速度増加により特徴付けられる。
いくつかの実施形態では、TTRW速度は、少なくとも0.3メートル/秒(たとえば、0.3~1メートル/秒)増加した。
いくつかの実施形態では、処置は、4段階段昇り時間(TTCLIMB)での速度増加により特徴付けられる。
いくつかの実施形態では、TTCLIMB速度は、少なくとも0.05段/秒(たとえば、0.05~1.5段/秒)増加した。
デュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)の徴候及び症状としては、限定されるものではないが、頻繁な転倒、臥位又は座位からの起上り困難、走行及び跳躍困難、動揺歩行、爪先歩行、大腓筋、筋肉痛、及び硬直、学習障害、成長遅延が挙げられる。他の症状は、現在の標準ケアであるコルチコステロイドによるDMD処置に関連する。
ある特定の実施形態では、症状は、とくに注目すべき有害イベント(AESI)でありうる。これとの関連では、AESIは、コルチコステロイドクラスの11のAESIカテゴリーに対してあらかじめ定義されたMedDRA検索基準に基づいてあらかじめ特定され、少なくとも中度重症度のAESIにさらに層別化される。コルチコステロイドでDMDを処置するための症状としては、限定されるものではないが、行動有害イベント、血中グルコース関連問題、胃腸症状、動脈血圧上昇、免疫抑制/感染、皮膚/毛髪変化、白内障/緑内障、クッシング様特徴、体重増加、骨折、緩徐成長が挙げられる。
ある特定の実施形態では、行動有害イベントは、異常行動、攻撃性、激越、怒り、不安、情動障害、被刺激性、気分変化、気分変動、睡眠障害、初期不眠症、人格変化、睡眠の質の不良、精神運動亢進、及び皮膚裂傷から選ばれる。ある特定の実施形態では、行動有害イベントは、攻撃性、激越、怒り、情動障害、被刺激性、気分変動、睡眠障害、初期不眠症、及び人格変化の1つ以上から選ばれる。ある特定の実施形態では、行動有害イベントは、怒り、気分変動、及び人格変化の1つ以上から選ばれる。
ある特定の実施形態では、患者は、小児不安等級スケール(PARS)IIIアンケートでアセスされる。PARSは、処置効能の次元尺度である。PARSは、全般性不安障害(GAD)、社会恐怖症(SoP)、及び分離不安障害(SAD)を標的とする症状重症度及び関連障害の臨床医等級付け尺度である。PARSは、子供及び親への投与を一緒にして50の不安症状(SAD、SoP、及びGADを包含する)並びに7つのグローバルアイテムのチェックリストからなる。グローバルアイテムは、各々、存在する症状の数、それらの頻度、不安感の重症度、不安の身体的症状の重症度、不安誘発状況の全般的回避、並びに家庭及び家庭外での役割への不安関連干渉を反映する6点(0~5)スケールで等級付けされる。
PARSは、許容可能精神測定性を有し、認知行動療法(CBT)及び薬理学的処置の変化に敏感である。PARSの包括性は、不安障害全体にわたる症状オーバーラップ及び高い併存症率に照らして魅力的である。PARSは、時間効率的であり、完了までおおよそ20~30分かかる。そのため、PARSは、子供の鬱等級スケール-改訂版及び子供のエール・ブラウン強迫スケール(CY-BOCS)など、重症度及び処置反応をアセスするための他のインタビューベース等級スケールと同様にルーチン臨床ケアで実現可能である。
「処置反応」は、個体がもはや十分に症状を示さない程度に十分な大きさの改善であるが、継続して最小症状を上回る症状を示すものであってもよい。処置反応は、多くの場合、症状重症度及び/又は機能障害の有意な低減として表される。「寛解」は、発生時の残留症状により影響を受けた小児期障害の処置などの処置の後の症状の不在又はほぼ不在である。処置反応と比べて、寛解はより保存的規範である。寛解は、「障害フリー」の若者に対応する、診断ステータスのバイナリー尺度又はグローバル機能の次元尺度の二分等級を用いて表されてきた。処置反応及び寛解は両方とも、アプリオリに定義され、複数の情報源を用いて測定される。
本開示はまた、それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000010
を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、ヒト患者において除脂肪身体組成量及び骨密度を減少させることなく1日齢~18歳のヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法を提供する。
ある特定の実施形態では、身体組成量及び骨密度は、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)を介して測定される。DXAは、スペクトルイメージングを用いて骨ミネラル濃度(BMD)を測定する。異なるエネルギーレベルの2つのX線ビームを患者の骨に向ける。軟組織吸収が減算除去されたとき、BMDは、骨による各ビームの吸収から決定可能である。
ある特定の実施形態では、ヒト患者の身体組成量は、筋ジストロフィーを処置するために治療有効量のプレドニゾン又はデフラザコルトを摂取したヒト患者よりも除脂肪される。ある特定の実施形態では、ヒト患者の骨密度は、筋ジストロフィーを処置するために治療有効量のプレドニゾン又はデフラザコルトを摂取したヒト患者よりも大きい。ある特定の実施形態では、骨密度の正の変化は、少なくとも1%、たとえば、少なくとも5%又は少なくとも10%である。ある特定の実施形態では、ヒト患者の身体組成量は、筋ジストロフィーを処置するために治療有効量のプレドニゾン又はデフラザコルトを摂取したヒト患者よりも除脂肪され、且つ骨密度はより大きい。
ある特定の実施形態では、ヒト患者の合計身体除脂肪マス指数は、筋ジストロフィーを処置するために治療有効量のプレドニゾンを摂取したヒト患者よりも大きな正の変化を示した。脂肪フリーマスと共に1つにまとめられることもある除脂肪身体マス(LBM)は、身体組成量の成分である。脂肪フリーマス(FFM)は、合計体重から身体脂肪重量を減算することにより計算され、合計体重は、除脂肪+脂肪である。LBMは、DXAにより測定可能であり、数学的に、たとえば、当業者が利用可能なボーア式又はヒューム式及び他の方法で推定可能である。LBMに対する正の変化は、バモロロンで処置されたヒト患者のLBMとプレドニゾンを摂取している類似のヒト患者とを比較することにより定量される。ある特定の実施形態では、合計身体除脂肪マス指数の正の変化は、少なくとも1%、たとえば、少なくとも5%又は少なくとも10%である。
ある特定の実施形態では、ヒト患者における骨粗鬆症率は、筋ジストロフィーに対して治療有効量のプレドニゾン又はデフラザコルトを摂取したヒト患者よりも小さい。
DMDに対するコルチコステロイドの推奨用量は、プレドニゾン(0.75mg/kg/日)及びデフラザコルト(0.9mg/kg/日)である。しかしながら、340名のDMD少年の試験では、両方の薬剤が毎日プレドニゾン0.56mg/kg/日(推奨の75%)及び毎日Emflaza(商標)0.75mg/kg/d(推奨の83%)の平均代表用量で過少投与されて安全性の懸念を軽減すると理解されることが示された(Bello et al.,“(Prednisone/prednisolone and deflazacort regimens in the CINRG Duchenne Natural History Study.”Neurology.2015 85(12):1048-55)。同一試験では、Emflaza(商標)は、プレドニゾンよりも高い頻度の成長遅延、クッシング様外観、及び白内障を示した。上掲文献参照。DMDに対する他の承認処置剤(ビルトラルセン、エテプリルセン(etiplersen)、ゴロディルセン、カシメルセン)は、変異特異的でDMD患者の小部分集団を標的とし、コルチコステロイドへのアドオンとして使用される。それらはサロゲートエンドポイントに基づいて加速承認が許可されたものなので、これらは利用可能な療法とはみなされない。
ある特定の実施形態では、ヒト患者の暦年齢とヒト患者の骨年齢との差が低減される。子供の骨年齢(骨格年齢とも呼ばれる)は、環椎の標準的X線画像のどれがX線での子供の骨の外観にマッチするかを決定することにより帰属される。子供の骨年齢と暦年齢との差は、成長問題を示唆しうる。ヒト患者の骨年齢とその暦年齢との差が大きいほど、成長問題又は疾患症状が大きくなる。暦年齢と骨年齢とのこの差が低減されるとき、成長問題又は疾患症状の重症度もまた低減される。
本開示はさらに、それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
Figure 2023543439000011
を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、1日齢~18歳のヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法であって、ヒト患者は低減された正の転写活性を実証する、方法を提供する。
「正の転写活性」は、転写を始めるために特異的タンパク質(アクチベーター)に結合することを意味する。DNA結合アクチベーターは、発火を支援することにより転写をレギュレート可能である。これを行うために、それは、RNAポリメラーゼをプロモーターにテザー連結する。本開示の方法のように正の転写活性が低減されるとき、特異的タンパク質の結合は緩徐化又は阻害されて、転写の開始を緩徐化又は遅延する。ある特定の実施形態では、正の移行活性の低減は、少なくとも1%、たとえば、少なくとも5%又は少なくとも10%である。
ある特定の実施形態では、投与は少なくとも6ヵ月間にわたる。ある特定の実施形態では、2mg/kg/日の化合物の投与は、ヒト患者に対して体重増加リスクの減少を有する。ある特定の実施形態では、約6mg/kg/日の化合物が投与される。
下記実施例は、本開示のいくつかの実施形態を実証するために含まれる。実施例に開示された技術は、本開示の実用時に十分に機能するように本発明者らにより発見された技術を代表するものであることが、当業者により認識されるべきである。しかしながら、本開示に照らして、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えても、依然として本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果が得られうることを当業者は認識すべきであり、したがって、示された物質はすべて、限定的な意味ではなく、例示的なものと解釈されるべきである。
Figure 2023543439000012
実施例1:バモロロンの調製
ステップ1-化合物2の調製
2-((10S,13S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-6,7,8,10,12,13,14,15-オクタヒドロ-3H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-オキソエチルアセテート(3-TR、100g、273mmol)、ジクロロメタン(DCM、500mL)、及びテトラヒドロフラン(THF、400mL)を窒素下で反応フラスコに仕込んだ。これにトリメチルシリルイミダゾール(TMS-イミダゾール、65.3g、466mmol、1.7eq)を仕込んだ。得られた混合物を室温で3時間撹拌した。
別のフラスコ中で、酢酸銅一水和物(5.4g、27mmol)、テトラヒドロフラン(400ml)、及び(1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU、53.3g、416mmol)を組み合わせて、室温でおおよそ3時間撹拌した。続いて、青色混合物を-50℃に冷却し、これにメチルマグネシウムクロリド溶液(27ml、THF中3.0M、82mmol)を滴下した。30分後、混合物は、濃青色スティッキー「ボール」を形成した。
3-TR/TMS-イミダゾール混合物を-50℃に冷却し、これにカニューレを介して以上の酢酸銅/DMPU溶液を仕込んだ。DCM(50mL)を用いて酢酸銅/DMPU混合物からの残留スティッキーマスを溶解して移した。
合わせた反応混合物にメチルマグネシウムクロリド(123.2mL、THF中3.0M溶液、368mmol)を45分間にわたり滴下し、次いで、これを-50℃で2時間撹拌させた。後続のHPLC分析では出発材料の完全消費が示された。撹拌しながら混合物を室温に一晩加温させた。
トルエン(800mL)を混合物に添加し、続いて5%酢酸溶液(600mL)を添加した。水性層を除去し廃棄した。酢酸洗浄を繰り返した。その次に、ブライン(400mL)、5%重炭酸ナトリウム溶液(400mL×2)、続いてブライン洗浄液(400mL)で有機層を洗浄した。有機溶液を硫酸ナトリウムで脱水し、次いで、減圧下で濃縮乾固させた。生成物を粘性軽質金色油として回収した。マス回収は、146グラム(理論値の119%)であった。
ステップ2-化合物3の調製
化合物2(92g、202mmol)及びトルエン(1000mL、10.9vol)を窒素下で反応フラスコに仕込み、溶液を-10℃に冷却した。温度を-10℃に維持しながら酢酸中の過酢酸の32wt%溶液(60mL、283mmol、1.4eq)を約30min滴下した。反応をおおよそ20h保持した(HPLCは、75%化合物3、1.5%化合物2、6%ジアステレオマー、5%エポキシドを示した)。-10℃から始めて、温度を10℃未満に保ちながら、添加漏斗を介して重亜硫酸ナトリウム(920mL、10vol)の20%水性溶液を注意深く添加した。トリフルオロ酢酸(16mL、202mmol、1eq)を添加し、混合物を0~5℃に3h保って、脱シリル化を完了した(HPLCによる終点)。下側水性層を排出し、有機層を重炭酸ナトリウムの飽和溶液(3×250mL)、続いて水(1×250mL)及びブライン(1×150mL)で洗浄した。次いで、有機層をNaSOで脱水し、濾過し、ペースト状固体(89g)に濃縮した。残渣を1.5volのEtOAc中に取り込み、ニートヘプタン(19vol)に移して灰白色固体として粗化合物3を沈殿させた(50g、収率62.5%、HPLC79%化合物3、5.6%エポキシド、1.7%ジアステレオマー)。粗化合物3(48.5g)を熱アセトニトリル(2vol)中60℃で4hトリチュレートし、次いで、徐々に周囲温度に一晩冷却した。リサイクル濾液を用いて混合物を濾過し、ウェットケークを濯ぎ洗浄した。乾燥後、回収率は64.3%であった(31.2g、HPLC93.5%化合物3、3.3%エポキシド)。エポキシド不純度を除去するために、31の化合物3をDCM(250mL、8vol)中に溶解し、水中48%HBrの溶液を添加した(7.5mL)。混合物を40℃で1h加熱した(HPLC<0.3%エポキシド)。混合物を冷却し、分液漏斗に移した。下側水性層(褐色)を除去し、上側有機層を水(200mL)、飽和NaHCO(150mL)、及びブライン(100mL)で洗浄した。有機層をNaSOで脱水し、濾過し、黄褐色フォームに濃縮した(32g、回収率約100%)。32gのフォームにメタノール(64mL、2vol)を添加してスラリーを形成した。これにMeOH:水の1:1溶液(60mL、2vol)を滴下した。周囲温度よりもわずかに低くなるようにスラリーを冷却し、リサイクル濾液を用いて濾過し、ウェットケークを濯ぎ洗浄した。固体を一定重量になるまで乾燥し、26.1gの化合物3を与えた(回収率81%、HPLC97.8%)。ステップ2の全収率は、32.5%であった。
ステップ3-VBP15の調製
化合物3(26g、65mmol)及びMeOH(156mL、6vol)を反応フラスコ中で混合し、0~5℃に冷却した。水(65mL)中のK2CO3(9.9g、72mmol、1.1eq)の溶液を滴下し、一晩にわたり混合物を徐々に周囲温度に加温させた。HPLCによる分析では2.5%SMが示された。また、さらに5mol%K2CO3を添加し、混合物をさらに1日撹拌した(HPLC終点1.1%化合物3)。混合物を1.5M HCl(53mL)でpH7に中和し、回収率を最大化するために真空下で約25%のMeOH(30g)を除去した。2日間撹拌した後、リサイクル濾液を用いて濾過により生成物を単離し、ウェットケークを漏斗に移した。ウェットケークを真空下で乾燥し、灰白色粉末として19.3gのVBP15(収率83%)を与えた。HPLCによる固体の分析では、唯一のメジャー不純物として0.6%の化合物3を有して98.8%の純度が示された。
実施例2-バモロロンを含む水性経口医薬サスペンジョン組成物の調製
経口医薬組成物は、以下の表1に列挙された量で成分をブレンドしてサスペンジョンを形成することによりサスペンジョンとして調製された。図1は、このサスペンジョンの調製に使用された製造プロセスのフロー図を示す。
Figure 2023543439000013
以下の表2に列挙された量で成分をブレンドしてサスペンジョンを形成することにより、別の経口医薬組成物をサスペンジョンとして調製した。図2は、このサスペンジョンの調製に使用された製造プロセスのフロー図を示す。
Figure 2023543439000014
以下の表3に列挙された量で成分をブレンドしてサスペンジョンを形成することにより、別の経口医薬組成物をサスペンジョンとして調製した。
Figure 2023543439000015
実施例3:DMDでの第2相臨床トライアル
バモロロン臨床試験は、骨格筋が慢性炎症性状態である障害DMDを有する成人男性志願者及び少年において行われた。48名の4~<7歳のDMD患者(コルチコステロイドナイーブ)において2つの連続したオープンラベル用量範囲探索試験を行った(第IIa相VBP15-002、第IIa相VBP15-003)。12名の参加者/群で24倍用量範囲(0.25、0.75、2.0、及び6.0mg/kg/日)にわたり用量を試験した。第1の複数漸増用量(MAD)コホートでは、2週間の薬剤投与それに続く2週間のウォッシュアウトで薬動学(PK)及び安全性のトライアル試験を行った(VBP15-002)。バモロロン処置は、用量制限毒性を示さなかった。PKでは、コルチコステロイドに類似した短い半減期(約2時間)、薬剤蓄積なし、健常成人男性志願者のものに類似したPKで1日目及び14日目に類似のPKが実証された(VBP15-001)。DMD参加者はすべて、MAD試験を完了し、次いで、24週間の用量探索(効能及び安全性)延長試験のために同一用量を継続した(VBP15-003)。バモロロンの経口投与はすべての試験用量で、24週間の処置期間にわたり安全且つ良好な耐容性であった。2つのより高用量の群(2.0及び6.0mg/kg/日)の参加者は、一般に運動アウトカムの臨床改善を示されたことから、試験されたすべての運動アウトカムで用量関連改善が示唆される。
24週間の用量探索試験(VBP15-003)の完了後、参加者は、用量漸増及び漸減が許された24ヵ月間長期延長試験(VBP15-LTE)に登録する機会を得た。すべてのトライアル参加者の親及び医師は、標準ケア(プレドニゾン又はデフラザコルト)への移行ではなくバモロロンへの継続アクセスが要求された。24週間のVBP15-003トライアルからの初期経験及び24ヵ月間のVBP15-LTEトライアルの最初の12ヵ月間(合計18ヵ月間の処置)を以下に報告する。そのほか、運動機能及び安全性アウトカムの変化を、国際神経筋共同研究グループ(CINRG)デュシェンヌ自然歴研究(DNHS)に登録された群マッチのコルチコステロイド処置及びコルチコステロイドナイーブの参加者からのデータと、比較する。また、安全性エンドポイント(線形成長、身体マス指数)を、DMDを有する類似年齢の少年において毎日プレドニゾン(0.75mg/kg群)の12ヵ月間トライアルからのデータと比較する。
方法
CINRG(VBP15-002[NCT02760264]、VBP15-003[NCT02760277]、VBP15-LTE[NCT03038399])により、DMDのバモロロン処置の3つの連続臨床トライアルを行った。合計48名の参加者(4~<7歳)を初期にVBP15-002に登録するとともに、トライアル参加者は、24ヵ月間のVBP15-LTE試験の12ヵ月間を完了した。
VBP15-002(第IIa相、薬剤オンで2週間、薬剤オフで2週間)には、48名のDMDを有するコルチコステロイドナイーブ参加者が登録し、48名の参加者はすべて、その試験を完了して、VBP15-003(第IIa相延長、24週間の処置)に登録した。48名の参加者のうち46名は、VBP15-003試験を完了した(2名の参加者は、試験薬剤に関連しない理由でVBP15-003から離脱した)。そのほか、参加者はすべて(46/46)、24ヵ月間の長期延長試験VBP15-LTEに登録することを選んだ。
連続バモロロントライアル(VBP15-002、VBP15-003、VBP15-LTE)は、プラセボコンパレーターなしのオープンラベルであった。コルチコステロイドナイーブ及びコルチコステロイド処置のDMD参加者コンパレーターは、CINRG DNHS(NCT00468832)からの群マッチ参加者であった。CINRG DNHSは、551名の参加者(440名のDMDを有する者、111名の健常同等者)の観察プロスペクティブケース-コントロール試験であった。バモロロン処置参加者とCINRG DNHS参加者との群マッチングのために、中間統計解析計画(iSAP)内であらかじめ特定されたマッチング基準を定義した。年齢マッチCINRG DNHS参加者には、18ヵ月間にわたる連続的コルチコステロイドナイーブ者(n=19)又は18ヵ月間にわたる連続的コルチコステロイド処置者(n=68)が含まれていた。68名のコルチコステロイド処置参加者に対しては、これが観察コホートであったため、臨床医自由裁量に基づいてコルチコステロイド用量及びレジメンを変更した。68名の参加者はすべて18ヵ月間にわたり連続的に処置されたが、コルチコステロイドの開始年齢はさまざまであった。そのため、コルチコステロイド処置の合計持続期間は、ほとんどの参加者で18ヵ月間よりも長かった。
バモロロン処置及びコルチコステロイド処置の参加者の成長トラジェクトリーの比較のために、CINRG 12ヵ月間プレドニゾン臨床トライアルの第3の外部コンパレーターを使用した(毎日処置アーム、0.75mg/kg/日)。CINRG DNHSコンパレーターと同様に、iSAPで群マッチング基準をあらかじめ特定し、2名の独立した統計学者により参加者マッチングを行った。CINRG 12ヵ月間プレドニゾントライアルからの効能データは、バモロロン処置参加者のものと比較しなかった。バモロロン処置参加者には、対応する12ヵ月間アセスメントが存在しなかった。(バモロロン処置トライアル参加者のアセスメントは、0、3、6、及び18ヵ月間であった)。
測定
効能のアセスメントは、運動アウトカムであった(一次アウトカム:仰臥位からの立上り時間[TTSTAND]、二次アウトカム:10メートル走行/歩行時間[TTRW]、4段階段昇り時間[TTCLIMB]、6分間歩行試験でカバーされた距離[6MWT]、及びノーススター歩行アセスメント[NSAA])。6MWT及びNSAAは、ほとんどのCINRG DNHS参加者でアセスされず、バモロロン処置参加者と比較されなかった。標準操作手順に従って、臨床評価者は、CINRGバモロロン、CINRG DNHS、及びCINRGプレドニゾンの試験を調和するようにトレーニングされた。これらのアウトカムの信頼性(パーセント変動係数)は、VBP15-002/VBP15-003試験で報告されている。ベースライン(VBP15-002エントリー)、24週間(VBP15-003最終診察)、及び18ヵ月間(12ヵ月間のVBP15-LTE中間点アセスメント)で、アセスメントを行った。
身長及び体重は、各試験診察でアセスされた。身長zスコア、身体マス指数(BMI、kg/m)、及びBMI zスコアは、センターで計算された。AE報告は、バモロロントライアルでプロトコルに従って行われた。
試験設計
VBP15-002及びVBP15-003を完了した参加者だけが、VBP15-LTEへの登録に適格であった。参加者は、4つの用量レベル(0.25、0.75、2.0、又は6.0mg/kg/日)の1つで、並びに4週間のVBP15-002トライアル及び24週間のVBP15-003トライアルの両方で同一用量レベルで、バモロロンを摂取した。参加者、その家族、及びその医師が、VBP15-003トライアル終了の際にバモロロン処置の継続を望んだ場合、24ヵ月間長期延長(VBP15-LTE)への参加の申込みがされた。VBP15-003トライアルの最終診察は、VBP15-LTEトライアルの初診に対応する。すべての試験で、試験医薬は、4%風味付き液状サスペンジョンとして提供され、体重に応じて投与され、且つ食品と共に朝に1日1回が与えられた。
試験診察は、臨床検査結果、生命徴候、及びAEのアセスメントを含めて、毎年4回行われた。AEはすべて、(優先用語及び器官別大分類)を報告するために規制活動のための医学辞典(Medical Dictionary for Regulatory Activities)(MedDRA第19.0版)システムを用いてコードされた。臨床効能アセスメントは、VBP15-002試験のベースライン、6ヵ月間(VBP15-003試験の終了時)、及びVBP15-LTE試験の12ヵ月中間点診察で実施された。
VBP15-LTEプロトコルでは、参加者の家族及び医師の自由裁量で最高用量(6.0mg/kg/日)まで複数回漸増が許され、且つ漸減が許された。参加者がVBP15-LTEで少なくとも1ヵ月間にわたりその初回用量であり、その次に高い用量がVBP15-002第IIa相試験で安全であると判定され、その用量を用いてVBP15-003第IIa相試験で安全性の問題が現れなかったら、現場の治験医は、VBP15-LTE時、より高い用量レベル(6.0mg/kg/日)まで参加者の用量を漸増することが許された。
バモロロン処置参加者は、初期に4つの用量群(0.25、0.75、2.0、及び6.0mg/kg/日、群A~D)でVBP15-002及びVBP15-003に登録された。VBP15-LTEに入る際、バモロロン群A参加者は、2又は3回の逐次用量漸増を有し、18ヵ月間の最後の3~9ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置され、群B参加者は、1又は2回の用量漸増を有し、最後の9~11ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置された。群C及びDは、18ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日(S1 Fig)で処置された。
本試験は、初めてDMDでのバモロロンのより長期の耐容性、効能、及び安全性を評価する。VBP15-003用量探索試験では、2.0及び6.0mg/kg/日のバモロロン用量がより低用量よりも良好な効能及び類似の安全性プロファイルを示すことが示唆された。用量漸増のタイミングが可変であることを考慮して、薬剤関連効能及び安全性の初期解析は、2.0mg/kg/日以上のバモロロンで18ヵ月間の処置を受けた参加者に限定されることが、あらかじめ特定された(用量群C+用量群D、n=23)。これらの参加者のアウトカムは、18ヵ月間(コルチコステロイドナイーブ、n=19、コルチコステロイド処置、n=68)にわたりCINRG DNHSからの群マッチコホートと比較された。参加者は、年齢及び処置期間(±1月)がマッチされ、マッチング基準は、統計解析計画であらかじめ特定された。2名の独立した統計学者がマッチングを行った。
薬剤処置の前/後の成長トラジェクトリー及びBMIは、18ヵ月間にわたりこれらのCINRG DNHS群間で比較されるとともに、トライアルの12ヵ月間の処置期間にわたり毎日プレドニゾンで処置されたCINRGプレドニゾン臨床トライアル参加者のコホート(n=12)とも比較された。コルチコステロイド処置CINRG DNHS群の参加者は、少なくとも18ヵ月間の処置を受けたが、合計持続期間、用量、及びレジメンはさまざまであった。
統計解析
中間統計解析計画を書面で作成した(VBP15-LTE iSAP)(S1 iSAP)。VBP15-LTE iSAPでは、VBP15-LTE中間点(12ヵ月)アセスメント及び外部コンパレーター(CINRG DNHSからのコルチコステロイド処置及びコルチコステロイドナイーブ参加者)との比較の解析をあらかじめ特定した。VBP15-LTE iSAPには、24ヵ月間のVBP15-LTE試験のすべての12ヵ月目のアセスメントが含まれていた。使用されたソフトウェアはSASであった。
2つの逐次ステップで統計解析を行った。最初に、VBP15-LTE iSAPの群及び比較をあらかじめ特定した。このiSAPには、用量群A及びBでの複数回の用量漸増の交絡変数を回避するために、全18ヵ月間の処置期間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日が与えられたバモロロン処置参加者(用量群C+D)のみが含まれていた(S1 Fig)。第2の分析は、VBP15-002の初期用量群(0.25[群A]、0.75[群B]、2.0[群C]、及び6.0[D群]mg/kg/日)に基づいて用量層別化を行って、VBP15-LTE iSAP解析の完了後、事後に行われた。
統計解析は、ベースライン(VBP15-002)から18ヵ月(VBP15-LTEの中間点)までの変化により、共分散分析(ANCOVA)アプローチを用いて、対応のある縦断アウトカムデータで行われた。ベースラインの反応及び年齢を共変量として含めた。バモロロン処置参加者では、(インフォームドコンセント日-生年月日)/365.25として年齢を計算した。DNHS参加者では、(ベースライン診察日-生年月日)/365.25として年齢を計算した。DNHS参加者のベースライン診察は、初診であった。そのため、参加者は、マッチングのための比較適格性基準満たし、少なくとも1つの対象エンドポイントでは欠失反応を有していなかった。試験を実施できなかった参加者の影響を制限するために、時間機能試験を速度スコアとして解析した(速度=0)。速度尺度は、秒単位の生の値からの極端な生の外れ値を抑制する変動安定化変換であり、使用された統計モデル/試験の分布の仮定の助けとなる。生のデータ(秒)もまた報告される。TTSTAND(イベント/秒)、TTRW(メートル/秒)、及びTTCLIMB(イベント/秒)の速度スコアは、試験実施不能のため欠失した最初の反応では0として入力された。他のデータはすべて、インピュテーションを伴わない観測値のみであった。推測統計での多重性の調整は、iSAPでは特定しなかった。
群内解析のために、対応のあるt検定を用いてベースラインから18ヵ月までの縦断変化を解析した。コルチコステロイド処置CINRG DNHS試験の参加者では、ベースライン(コルチコステロイド前)効能アセスメントが存在しなかったので、効能に関して縦断解析を行わなかった。
結果
バモロロン処置群及びコンパレーター群のデモグラフィック及びベースライン特性は、表4に提供される。
Figure 2023543439000016
Figure 2023543439000017
48名のDMD参加者をVBP15-002に登録し、4つのバモロロン処置群(用量群A、0.25mg/kg/日、用量群B、0.75mg/kg/日、用量群C、2.0mg/kg/日、用量群D、6.0mg/kg/日)に入れた。48名の参加者はすべて、4週間のVBP15-002トライアルを完了し、46名は、同一用量で24週間のVBP15-003トライアルを完了した。次いで、24週間のVBP15-003試験を完了した46名の参加者はすべて、24ヵ月間の長期延長試験(VBP15-LTE)に登録することを選んだ。本試験は、初めてDMDでのバモロロンのより長期の耐容性、効能、及び安全性を評価する。VBP15-003用量探索試験では、2つのより高いバモロロン用量は、2つのより低い用量よりも大きな効能を示すことが示唆された。
1名の参加者は、12ヵ月アセスメントの1ヵ月前に試験を中止した(S1 Fig、参加者233504)。この参加者の11ヵ月早期離脱診察データは、あらかじめ特定されたiSAPに従って、この解析のために12ヵ月試験データとしてカウントした。VBP15-003の0.25及び0.75mg/kg/日の群の参加者はすべて、2.0又は6.0mg/kg/日のどちらかに用量を漸増させた。用量漸増のタイミングは、参加者間でさまざまであった。0.75mg/kg/日のVBP15-003用量群の2名の参加者は、6.0mg/kg/日まで漸増させ、その後、12ヵ月中間時期内での体重増加に起因して2.0mg/kg/日に漸減させた。
用量漸増の耐容性
VBP15-LTE試験内では、各参加者は、臨床上必要であれば、現場の治験医によりバモロロンの用量をより高用量に増加させたり、より低用量に減少させたりすることが可能であった。VBP15-LTEへのエントリー時の0.25mg/kg/日の用量群の11名の参加者のうち、3名の参加者では12ヵ月中間アセスメント前にバモロロン用量を2.0mg/kg/日に、8名の参加者では6.0mg/kg/日に増加させた。元々は0.25mg/kg/日の用量群の者での高用量バモロロン(2.0又は6.0mg/kg/日)への累積暴露は、(18ヵ月間の試験期間のうち)3~9ヵ月間の範囲内であった。VBP15-LTEへのエントリー時の0.75mg/kg/日の用量群の12名の参加者のうち、6名の参加者ではバモロロン用量を2.0mg/kg/日に、6名の参加者では6.0mg/kg/日に増加させた。元々は0.75mg/kg/日の用量群の者での高用量バモロロンへの累積暴露は、9~11ヵ月間の範囲内であった。VBP15-LTEへのエントリー時の2.0mg/kg/日の用量群の12名の参加者のうち、3名の参加者では用量を2.0mg/kg/日に維持し、9名の参加者では6.0mg/kg/日に増加させた。続いて、2名の参加者では、体重増加に起因してバモロロン用量を6.0から2.0mg/kg/日に減少させた。VBP15-LTEへのエントリー時の6.0mg/kg/日/日の11名の参加者はすべて、試験全体を通してこの用量に維持した。
コルチコステロイドナイーブ参加者と対比したバモロロン処置参加者の効能評価
バモロロン(2.0又は6.0mg/kg/日)で18ヵ月間にわたり処置された参加者は、効能のすべての尺度で有意な改善を示した(表5)。対応のあるt検定は、ベースラインからのすべてのアウトカムで縦断改善に関して有意であった(TTSTAND速度、p=0.012[95%CI0.010、0.068イベント/秒]、TTRW速度、p<0.001[95%CI0.220、0.491メートル/秒]、TTCLIMB速度、p=0.005[95%CI0.034、0.105イベント/秒]、6MWT、p=0.001[95%CI31.14、93.38メートル]、NSAA合計スコア、p<0.001[95%CI2.702、6.662点])。CINRG DNHSからの群マッチコルチコステロイドナイーブ参加者は、この同一時間フレームにわたりTTRW速度、TTCLIMB速度、及びTTSTAND速度に関して変化を示さなかったか又はわずかな改善を示した(6MWT及びNSAAアウトカムは、CINRG DNHSでは利用できなかった)。バモロロン処置参加者とコルチコステロイドナイーブ参加者とのANCOVA比較は、TTSTANDに関して有意差を示さなかったが(最小二乗[LS]平均0.042[95%CI-0.007、0.091]、p=0.088)、TTRW速度(LS平均0.286[95%CI0.104、0.469]、p=0.003)、及びTTCLIMB速度(LS平均0.059[95%CI0.007、0.111]、p=0.027)に関してバモロロンに有利な有意差を示した。
Figure 2023543439000018
Figure 2023543439000019
Figure 2023543439000020
秒単位での尺度の解析からの結果は、TTRW(p<0.001[95%CI-1.53、-0.59秒])に関してバモロロン処置参加者において18ヵ月改善の有意性を示したが、分散を増加させる極端な外れ値に起因してTTSTAND(p=0.48[95%CI-1.90、0.93秒])やTTCLIMB(p=0.62[95%CI-2.67、1.62秒])に関して有意性を示さなかった。バモロロン処置参加者とコルチコステロイドナイーブ参加者とのANCOVA比較は、TTRW(LS平均-0.84[95%CI-1.54、-0.14秒]、p=0.02)に関してバモロロンに有利な有意差を示したが、TTSTAND(LS平均-1.15[95%CI-2.87、0.57秒]、p=0.18)やTTCLIMB(LS平均-0.34[95%CI-3.28、2.59秒]、p=0.81)に関して有意性を示さなかった。
参加者-レベルデータは、DNHSコルチコステロイドナイーブ参加者と比べて4つのバモロロン処置群についてグラフで解析された(図3及び4)。グループB、C、及びDは、各々、CINRG DNHSからのコルチコステロイドナイーブ参加者と比較して18ヵ月間の治療後にベースラインからの改善を示した。これとは対照的に、群Aアウトカムは、コルチコステロイドナイーブ参加者のものに類似していた。注目に値することとして、群Aは、3~9ヵ月間のみにわたり高用量バモロロンで処置され、また、試験エントリー時に他の群のものよりも0.4歳高い平均年齢を有していた(群A、5.2±1.0歳、群B、C、及びD、4.8±0.8歳)。横断比較は、4つのバモロロン群並びにDNHSコルチコステロイドナイーブ(n=19)及びDNHSコルチコステロイド処置コンパレーター(n=68)の各々の平均ベースラインを可視化して、5.5~8.5歳の年齢で行われた(18ヵ月間の処置期間の終わり)(図4)。バモロロン用量群B、C、及びDは、コルチコステロイド処置DNHS参加者のものに類似した運動機能アウトカムを示した。コルチコステロイドナイーブ参加者は、バモロロン群Aと同様に、より不十分な性能を示した。これらのデータから、2.0又は6.0mg/kg/日のバモロロンに基づく利益は、18ヵ月間の処置でコルチコステロイドのものに大きさが類似したものでありうることが示唆される。
バモロロン用量群の比較効能
図3は、18ヵ月間の処置期間後のベースラインからの参加者-レベル変化を示す。バモロロン群Aは、18ヵ月間の最後の3~9ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置され、群Bは、最後の9~11ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置され、且つ群C及びDは、全18ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日で処置された。18ヵ月間の期間の終了時の各参加者の特定用量が示される(赤=2.0mg/kg/日、青=6.0mg/kg/日)。用量群B、C、及びDは、CINRG DNHSからのマッチするコルチコステロイドナイーブ参加者と比較してベースラインを上回る平均改善を示す(n=19)。図4は、5.5~8.5歳の平均群横断解析を示す。ベースライン平均は、各バモロロン処置群別に示される(黒線)。コルチコステロイド処置自然歴群(n=68)は、コルチコステロイド開始時の年齢が可変であるのでベースラインが示されていない。このパネルは、バモロロン処置群B、C、及びDでベースラインを上回る改善を示す。横断データは、CINRG DNHSでの年齢群マッチコルチコステロイド処置参加者に類似した効果サイズを示唆する。
あらかじめ特定された安全性評価
コルチコステロイド関連の安全性の懸念の2つの尺度は、iSAP:成長減速(年齢別平均身長パーセンタイルの変化により測定される成長の妨げ)及び身体マス指数(BMI)zスコアであらかじめ特定された。
成長の妨げ
ベースラインで、3つの群(バモロロン、DNHSコルチコステロイド処置、及びDNHSコルチコステロイドナイーブ)は、年齢別で一般に低身長であった(年齢別平均20~29身長パーセンタイル)。そのほか、DNHSコルチコステロイドナイーブ参加者は、18ヵ月間にわたり成長トラジェクトリーの変化を示さなかった。これとは対照的に、コルチコステロイド処置参加者は、コルチコステロイドによる慢性処置で見られる予想された成長減速を示した(-5.63の身長パーセンタイル平均変化)(表6及び7◆以下)。
Figure 2023543439000021
バモロロン処置参加者は、正の成長トラジェクトリーを示した(+6.92の身長パーセンタイル平均変化)。これは、DNHSコルチコステロイドナイーブ参加者のトラジェクトリーと有意に異なっていた。しかしながら、18ヵ月間にわたるバモロロン処置参加者とDNHSコルチコステロイド処置参加者との成長速度の比較は、有意差を示した(LS平均15.86[95%CI8.51、23.22]p<0.001)。また、バモロロン18ヵ月間処置とプレドニゾントライアル12ヵ月間処置とを比較したときも、有意差が見られた(LS平均10.37[95%CI2.49、18.25]p=0.012)。バモロロン処置は成長を妨げないが、コルチコステロイド関連の成長の妨げは、十分に認識される安全性の懸念であることが、このことから示唆される。
身体マス指数Zスコア
BMI zスコアでは、バモロロン処置群は、ベースラインで正常平均BMIを有していた(zスコア=1.03)。これとは対照的に、DNHSコルチコステロイドナイーブ及びCINRGプレドニゾントライアル参加者は、ベースラインでより低い平均BMIを有していた(それぞれ、zスコア=0.70及び0.61)。CINRGコルチコステロイドナイーブ参加者は、18ヵ月間にわたり平均BMIの減少を示した(zスコアの変化=-0.34)。CINRGプレドニゾン臨床トライアルの参加者は、12ヵ月間の処置にわたり0.46の平均zスコアの増加を示し、バモロロン群は、18ヵ月間の処置にわたり0.41の平均zスコアの増加を示した。18ヵ月間にわたりコルチコステロイドで処置されたCINRG DNHS参加者は、0.15の平均zスコアの増加を示したが、この群は、コルチコステロイドの開始前の尺度を有していなかった。BMIの変化は、バモロロン処置群とコルチコステロイド処置群との間で有意には異なっていなかったが、薬剤処置群とコルチコステロイドナイーブ参加者との比較は有意差を示した(表4、図6)。元の用量群による層別化は、バモロロン用量の増加に伴ってBMIが増加する一般的用量-反応を示すが(ベースラインから18ヵ月間の処置までの変化[kg/m2]:群B、0.5、群C、1.11、D群、2.55)、これはすべての群内できわめて変動可能であった。患者は、コルチコステロイドを摂取する患者のようにバモロロンを摂取すると体重が増加しうることが、このことから示唆される。
バモロロン処置参加者とコルチコステロイド処置DNHS参加者との比較は、身長パーセンタイルの平均変化で有意差(p=8.94×10-07)を示し、バモロロン処置群では成長の妨げの証拠はなかった(図7)。そのほか、39/41名のLTE参加者は、24ヵ月で手首X線が施され、平均骨年齢と暦年齢との差は-1.1(p<0.001、CI-1.5、-0.7)であったことから、骨格成熟遅延の可能性が示唆される(表7)。
Figure 2023543439000022
PODCIは、小児アウトカムデータ収集インストルメント(Pediatrics Outcomes Data Collection Instrument)(筋骨格障害)である。PODCIは、子供における全般的健康並びに骨及び筋肉の病態に関連する問題を測定するために米国整形外科医アカデミー(American Academy of Orthopedic Surgeons)により開発された疾患特異的アンケートである。2.0及び6.0mg/kg/日の初期用量群の組合せ、LTEベースラインから24ヵ月まで、平均PODCI上肢及び身体機能標準化スコアの有意な増加が観測された(7.95±12.54、CI1.003、14.897、p=0.0278、n=15)。同時に、平均PODCI移動及び基本モビリティー標準化スコアの非有意な減少が観察された(-4.38±22.68、CI-16.471、7.703、p=0.451、n=16)(表7)。
医師報告AE
処置下発現AE(TEAE)は、2週間の処置MAD試験(VBP15-002)[11]及び24週間の用量探索延長試験(VBP15-003)[14]のために公開されている。TEAEは、4つすべてのバモロロン群の参加者により類似した発生率で報告された。慢性コルチコステロイド療法で通常観測されるいくつかのTEAEは、2.0mg/kg/日群(異常行動、1名の参加者)及び6.0mg/kg/日群(ハイパートリコーシス[2名の参加者]並びに不安、異常血中コルチゾールレベル、クッシング様体型、及び人格変化[各1名の参加者])でのみ観測された。他の報告されたTEAEは、用量関連発生率を呈しなかった。
VBP15-LTE試験に登録されたすべての参加者をカバーするVBP15-LTE試験に関するデータ及び安全性モニタリング委員会報告(12ヵ月中間点アセスメント以降を含む)は、すべて試験薬剤に関連しないとみなされた3つの重篤AE(2つのミオグロビン尿症イベント[同一参加者]及びの1つの肺炎)を含んでいた。すべての報告されたTEAEに関して、402件は、バモロロンに関連しないとみなされ、37件は、関連性が低いとみなされ、29件は、関連する可能性があるとみなされ、11件は、おそらく関連するとみなされ、且つ3件は、明確に関連するとみなされた。バモロロンにおそらく及び明確に関連する14件のAEのうち、10件は体重増加、2件は食欲亢進、1件はクッシング様特徴、及び1件は被刺激性であった。
コルチコステロイド処置に典型的な医師報告AEの発生率は、2019年3月治験安全性最新報告(Data Safety Update Report)(DSUR)(医薬品安全性監視報告)から採取されて、バモロロン6.0mg/kg/日(いずれの持続期間に対しても)で処置された参加者で決定された。クッシング様特徴、体重増加、ハースーティズム、及び行動変化の発生率が試験された(表8)。これらの率は、プレドニゾン及びデフラザコルトのCINRG DNHS試験及び12ヵ月間臨床トライアルでの医師報告AE発生率と比較された。この比較は、バモロロントライアルで、DMDを有する少年における既報のプレドニゾン及びデフラザコルトトライアルよりも低い率の医師報告クッシング様特徴、体重増加、ハースーティズム、及び行動変化を示した。
Figure 2023543439000023
考察
DMDを有する4~7歳の少年におけるバモロロン処置の用量範囲探索24週間(6ヵ月間)試験は、運動機能試験で用量反応性改善を示した。この試験の完了後、参加者は、2年間長期延長試験(VBP15-LTE)への登録又はコルチコステロイド標準ケア(デフラザコルト若しくはプレドニゾン)への移行の申込みを行った。VBP15-LTE(18ヵ月間のバモロロン処置)での中間知見が本明細書に報告される。参加者はすべて(46名中46名)、バモロロン長期延長への登録を選んだことから、バモロロン処置に対する高い満足感が示唆される。バモロロン処置参加者は、18ヵ月間の処置期間にわたり5つすべての運動アセスメント(TTSTAND、TTRW、TTCLIMB、NSAA、及び6MWT)でベースラインからの改善を示した(表5)。これとは対照的に、CINRG DNHS試験での群マッチステロイドナイーブ(未処置)DMD参加者は、類似の18ヵ月間にわたり安定疾患を示した。バモロロン処置参加者とCINRG DNHS未処置参加者との比較では、TTSTANDに関する差は有意でないが、TTRW速度(p=0.003)及びTTCLIMB速度(p=0.027)に関して有意なバモロロン関連改善が観察されることが示された。NSAA及び6WMTのデータは、CINRG DNHSコンパレーター群で利用可能でなかった。
バモロロンは、マウス疾患モデルでコルチコステロイドよりも少ない病的状態を示したが、バモロロン対コルチコステロイドの比較安全性プロファイルは、以前に報告されていない。CINRG DNHSでの群マッチステロイド処置参加者は、子供の慢性デフラザコルト及びプレドニゾン処置で周知の安全性の懸念である顕著な成長の妨げを示した。これとは対照的に、バモロロン処置参加者は、成長の妨げのいかなる証拠も示さなかった。そのほか、医師は、バモロロン処置参加者において、クッシング様外観、行動変化(気分障害)、ハースーティズム、及び体重増加を含めて、デフラザコルト処置及びプレドニゾン処置DMD患者の公開された試験よりも少ない他のコルチコステロイド関連の安全性の懸念を報告した。
VBP15-LTE試験に参加している間、参加者は、家族及びその医師の自由裁量に委ねて、用量漸増及び漸減が許された。ほとんど(74%、34/46)は、許された最高用量(6.0mg/kg/日)での処置を選び、26%は、2.0mg/kg/日での処置を選んだ。体重増加に起因してバモロロン用量を6.0から2.0mg/kg/日に減少させた2名の参加者が存在した。全18ヵ月間にわたり2.0又は6.0mg/kg/日バモロロンで処置されたDMDトライアル参加者(n=23)は、ベースラインから18ヵ月まですべての運動アウトカムの臨床改善を示した(TTSTAND、p=0.012、TTRW、p<0.001、TTCLIMB、p=0.001、6MWT、p=0.001、NSAA、p<0.001)。しかしながら、この低齢範囲のDMD患者は、平均では安定又は改善である。これらの結果を解釈するために、臨床改善は、未処置参加者のコントロールと比較されるべきである。
バモロロン臨床トライアルは、アカデミック臨床トライアルネットワークCINRGにより行われた。CINRGネットワークでは、バモロロントライアルで使用された類似の臨床評価者法及びエンドポイントを用いて、551名のDMD参加者及び健常同等者の縦断自然歴研究が以前に行われた(CINRG DNHS)。CINRG DNHSから選択されたコルチコステロイドナイーブ及びコルチコステロイド処置コホートの群マッチングを提供して18ヵ月間にわたりバモロロン処置参加者と比較するために、あらかじめ特定されたマッチング基準を定義した。コンパレーター群は、ベースラインでバモロロン処置群に類似していたが、CINRG DNHS試験群はわずかに高い年齢であった。これらの比較では、コルチコステロイドナイーブ参加者と比較して18ヵ月間にわたりバモロロン(2.0又は6.0mg/kg/日)で処置されたDMD参加者は、TTSTAND速度に関して有意差を示さなかったが(p = 0.088)、TTRW速度(p=0.003)及びTTCLIMB速度(p=0.027)(表5)に関して有意な改善を示した。バモロロン処置は、6MWT(平均で+62.2メートル)及びNSAA(平均で+4.7点)で改善をもたらした。依然として、これらのアウトカムは、CINRG DNHSで18ヵ月間インターバルにわたり測定されなかったので、これらのアウトカムに関して群マッチコンパレーターは存在しなかった。
18ヵ月間の処置期間の終了時の運動アウトカムの横断グラフ比較(参加者5.5~8.5歳)は、図1に示される。バモロロン処置コホート(2.0又は6.0mg/kg/日で1年以上処置:群B、C、及びD)並びにCINRG DNHSコルチコステロイド処置コホートは両方とも、CINRG DNHSコルチコステロイドナイーブコホートと比べて類似の薬剤関連利益を有することが、これらのアウトカムから示唆される。バモロロンによる運動改善と、特定のコルチコステロイドレジメン(たとえば、毎日プレドニゾン及び毎日デフラザコルト)で見られる自然歴運動アウトカムと、を比較するのに十分なデータは、利用できなかった。
コルチコステロイド(デフラザコルト及びプレドニゾン)による長期処置は、患者の生活の質を損ねる広範囲にわたる安全性の懸念がある。子供において、線形成長の減速は、慢性コルチコステロイド処置で頻繁に見られる。18ヵ月間にわたる平均身長パーセンタイル変化の比較では、CINRG DNHS参加者でのコルチコステロイド処置は、成長の妨げ(-5.63パーセンタイル)をもたらすことが示された。バモロロン処置は示さなかった(+6.92パーセンタイル)(p<0.001)(表5)。
また、DMDでのプレドニゾン対デフラザコルトの二重盲検臨床トライアルでは、すべての被験者において12ヵ月間の処置期間にわたり顕著な成長の妨げが見られた(デフラザコルトでは-11.43パーセンタイル、プレドニゾンでは-7.04パーセンタイル)。Griggs RC et al.,“Efficacy and safety of deflazacort vs.prednisone and placebo for Duchenne muscular dystrophy,”Neurology 87:2123-31(2016)を参照されたい。成長に及ぼすEmflazaの有害作用に一致して、Emflazaのラベルには、「5.10 成長及び発達に及ぼす影響。EMFLAZAを含めてコルチコステロイドの長期使用は、子供において成長及び発達に悪影響を及ぼすこと可能性がある」と明記されている。これとは対照的に、18ヵ月間のバモロロン処置は、すべての被験者において年齢別身長パーセンタイルの増加もたらした。
バモロロンは、安全性の懸念として成長の妨げをコルチコステロイドと共有しないことが、これらのデータから示唆され、このことは、慢性コルチコステロイド処置を必要とする子供にとって顕著な利点でありうる。
2つの試験でのDMD被験者の年齢範囲及び治療持続期間は、異なっていた(バモロロン4~8.5年間、18ヵ月間処置、Emflaza5~16年間、12ヵ月間処置)。しかしながら、年齢調整身長パーセンタイルの経時変化は、両方の試験でDMDの子供の年齢範囲にわたり線形の子供の成長の客観的アウトカム尺度である。
バモロロントライアルと、CINRG DNHSでのコルチコステロイド処置群と、プレドニゾン対デフラザコルトトライアルと、の間で、有害イベントの医師報告発生率を比較した(表6)。この比較では、コルチコステロイド処置の少年と比較して、バモロロン処置のDMD患者において、クッシング様外観、体重増加、ハースーティズム/ハイパートリコーシス、及び行動変化のより低い発生率が示唆された。まとめると、DMD患者のバモロロン処置は、運動機能アウトカムによりアセスしたとき、コルチコステロイド処置と類似の効能を提供することが、データから示唆される。さらに、この予備的アセスメントでは、バモロロン処置は、コルチコステロイド処置に典型的な安全性の懸念をもたらしにくいことが示唆される。CINRGからの自然歴データと比較した18ヵ月間延長からのBMIデータでは、バモロロン処置参加者は、体重増加の副作用を完全になしですますことが示唆されず、6.0mg/kg/日の2名の参加者は、その用量を2.0mg/kg/日に漸減しなければならなかった。
結論として、DMDを有する少年では、18ヵ月間のバモロロン処置は、コルチコステロイドナイーブ患者の自然歴コホートと比較して効能がある。それは、耐容性が良好であり、長期標準ケアのコルチコステロイド処置で典型的に見られる安全性の懸念が少なく、他の承認されたコルチコステロイドが引き起こす成長の妨げを欠如していると思われる。さらなる試験では、バモロロンとプレドニゾンとを直接比較する。これは、本明細書に提示されるものに一致した結果を与えることが予想される。
実施例4:DMDでの第2b相臨床トライアル
VISION-DMDは、DMDを処置するためにプラセボ及びプレドニゾン(活性コントロール)と比較してバモロロンの効能及び安全性を実証するために設計されたピボタル第2b相試験(VBP15-004)である。第1の24週間の二重盲検期間では、121名のDMDを有する4~<7歳の歩行可能な少年をランダム化して、バモロロン(低用量2mg/kg/日若しくは高用量6mg/kg/日)又はプレドニゾン(0.75mg/kg/日)又はプラセボを摂取するようにした。24週間の第2の期間では、参加者はすべて、2つの用量レベルのどちらかでバモロロン処置を受け、追加のより長期の安全性及び耐容性データを継続して受け取る。
試験は、バモロロン6mg/kg/日対プラセボで(p=0.002)、ベースラインからの0.06[95%CI:0.02~0.10]起上り/秒の処置差を有して、仰臥位から立位への立上り時間(TTSTAND)速度の変化の優位性のあるその一次エンドポイントを満たした。この結果は、バモロロン6mg/kg/日群での6.0から4.6秒へのTTSTANDの臨床関連改善及びプラセボ群での5.4から5.5秒への対応する劣化に対応する。試験はまた、2mg/kg/日でのTTSTAND速度(p=0.02)、6mg/kg/日(p=0.003)及び2mg/kg/日(p=0.009)での6MWT、6mg/kg/日でのTTRW(p=0.002)を含めて(あらかじめ定義された階層の順序で)、その二次エンドポイントの4つ全体にわたりプラセボと対比してバモロロンの優位性を実証した。いずれの数p<0.05も、有意であるとみなされる。以上のエンドポイント全体にわたり、バモロロン6mg/kg/日とプレドニゾンとの統計的有意差は存在しなかった。
24週間の試験完了率は94%であった(又は121名中114名の参加者)。2及び6mg/kg/日の両方の用量でバモロロンは、良好な安全性及び耐容性プロファイルを示した。バモロロン群では、試験中止をもたらすグレード3以上治療下発現有害イベント(TEAE)又は有害イベントは、観測値ではなかった。TEAEの合計数は、バモロロン2mg/kg/日(イベントn=96)及び6mg/kg/日(n=91)群ではプレドニゾン(n=120)よりも少なかった。臨床関連有害イベント(中程度、重篤、重篤、又は安全性に起因して中止をもたらす)のあらかじめ特定された解析では、バモロロン6mg/kg/日は、プレドニゾン(n=6対n=19、p=0.02)よりも有意に優れていた。
バモロロンはまた、従来のコルチコステロイドで報告された成長の妨げを示さなかった。このことはこの試験で検証された。バモロロン6mg/kg/日対プレドニゾン0.75mg/kg/日は、成長速度の有意差を示した(p=0.02)。ベースラインから24週目までの身長zスコアの変化は、プレドニゾン群での成長減速を示したが、6.0mg/kg/日バモロロン群では成長速度の増加を示した(p=0.02)。バモロロン2.0mg/kg/日群は、全体的安定身長変化zスコアを示したが、プレドニゾンで見られた成長減速と比べて有意性に達しなかった。これらの24週間のデータは、実施例3でのプレドニゾン及びデフラザコルトの成長の妨げの安全性の懸念の不在と一致していた。
骨代謝回転バイオマーカーは、プレドニゾンが24週目にすべての骨バイオマーカー(オステオカルシン、P1NP、及びCTX)を強く低減することを示した。これとは対照的に、バモロロンは、骨バイオマーカーを減少させなかった(3すべてのバイオマーカーに関してバモロロン2.0mg/kg及び6.0mg/kgの両方対プレドニゾンでp<0.001)(表9)。
Figure 2023543439000024
コルチコステロイドに典型的なあらかじめ特定されたAESIは、24週間の処置後、プレドニゾン処置被験者ではバモロロン処置被験者よりも高かった(表10)。この差は、バモロロン処置被験者と比較してプレドニゾン処置被験者では行動問題の発生率がより高い(32.3%)ことにより駆動された(2.0及び6.0mg/kg用量群でそれぞれ16.7%及び21.4%)(表11)。そのほか、中程度/重篤行動問題は、バモロロン処置被験者の1.7%と比較して、プレドニゾン群では被験者の22.6%と報告された。バモロロンはまた、少なくとも中度重症度のTEAE、重篤AE、又は処置中止をもたらすTEAEとしてプロスペクティブに定義される臨床関連TEAEに関して、プレドニゾンと比較して優れた安全性プロファイルを示した(表10)。これはまた、行動関連AEでのバモロロンとプレドニゾンとの差を反映し、プレドニゾン処置被験者の19.4%で臨床関連精神医学的イベントが報告されたのに対して、バモロロン処置被験者では誰もいなかった。注目に値するのは、処置のわずか24週間後に現れられたバモロロンとプレドニゾンとの差のこうした明確な点であり、この短期間内の他のAESIに見られたトレンドに基づいて、FOR-DMD試験でのコルチコステロイド処置コホートと比較したとき、この試験でのより長いバモロロン処置期間後、そのほかの臨床安全性の差が見られうると予想できる。
Figure 2023543439000025
Figure 2023543439000026
まとめると、効能に関して、バモロロンは、一次アウトカム及び二次アウトカムの4つでプラセボと比較して有意に優れていた。コルチコステロイドクラスにより引き起こされる骨損失は、椎骨及び長骨骨折、成長の妨げ、骨脆弱性、並びに骨減少症に対するDMD小児患者の素因となりうる。こうした作用は、生活の質に影響を与えるとともに、疾患進行を生じてコルチコステロイド処置の中止の原因となるおそれがある。また、バモロロンは、コルチコステロイドと比べて行動有害イベントに対して改善された安全性プロファイルを有することが、予備的証拠から示唆される。
また、バモロロンは、2mg/kg/日~6mg/kg/日の3倍用量範囲にわたり有効であることが、これらのデータから示された。この範囲であれば、医師は、たとえば、6mg/kg/日の初回用量を処方して、6mg/kg/日未満及び2mg/kg/日まで用量を漸減することが許される。安全性の懸念もまた、コルチコステロイドと比較して改善された。そのため、バモロロンは、コルチコステロイドによる処置を制限する重篤な骨の病的状態を伴うことなく、プレドニゾンに匹敵する効能で、プラセボと対比して運動アウトカムに関して統計的に有意な及び臨床的に意味のある効能を提供するので、DMDを処置するために医療上満たされないニーズを満たす。バモロロンは、DMDの少年から骨の病的状態及びコルチコステロイドクラスに潜む行動上の問題を取り去る。
他の実施形態
以上に示される詳細な説明は、本開示を実施する際に当業者の助けとなるように提供されている。しかしながら、本明細書で説明及び特許請求された本開示は、本明細書に開示された特定の実施形態により範囲が限定されるものではない。なぜなら、これらの実施形態は、本開示のいくつかの態様を例示することが意図されるからである。いずれの等価な実施形態も、本発明の範囲内にあることが意図される。実際に、以上の説明から当業者であれば本明細書に示された及び説明されたもの以外に本開示の種々の変更形態が明らかになるであろう。かかる変更形態は、本発明の発見の趣旨及び範囲から逸脱しない。かかる修正形態もまた、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

Claims (39)

  1. それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
    Figure 2023543439000027
    を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、前記ヒト患者において脊椎骨折の発生率を増加させることなく1日齢~18歳の前記ヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法。
  2. それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
    Figure 2023543439000028
    を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、前記ヒト患者において行動有害イベントの発生率を増加させることなく1日齢~18歳の前記ヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法。
  3. 前記行動有害イベントが、攻撃性、激越、怒り、情動障害、被刺激性、気分変動、睡眠障害、初期不眠症、及び人格変化の1つ以上から選ばれる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記行動有害イベントが、怒り、気分変動、及び人格変化の1つ以上から選ばれる、請求項3に記載の方法。
  5. 前記患者が、小児不安等級スケール(PARS)IIIアンケートでアセスされる、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
    Figure 2023543439000029
    を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、前記ヒト患者において除脂肪身体組成量及び骨密度を減少させることなく1日齢~18歳の前記ヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法。
  7. 前記身体組成量及び骨密度が、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)を介して測定される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記ヒト患者の身体組成量が、筋ジストロフィーを処置するために治療有効量のプレドニゾン又はデフラザコルトを摂取した前記ヒト患者よりも除脂肪される、請求項6~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記ヒト患者の骨密度が、筋ジストロフィーを処置するために治療有効量のプレドニゾン又はデフラザコルトを摂取した前記ヒト患者よりも大きい、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記ヒト患者の合計身体除脂肪マス指数が、筋ジストロフィーを処置するために治療有効量のプレドニゾンを摂取した前記ヒト患者よりも大きな正の変化を示す、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ヒト患者における骨粗鬆症率が、筋ジストロフィーに対して治療有効量のプレドニゾン又はデフラザコルトを摂取した前記ヒト患者よりも小さい、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記ヒト患者の暦年齢と前記ヒト患者の骨年齢との差が低減される、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. それを必要とするヒト患者に治療有効量の構造式
    Figure 2023543439000030
    を有する化合物及び/又はその塩を投与することを含む、1日齢~18歳の前記ヒト患者において筋ジストロフィーの症状を処置又は低減する方法であって、前記ヒト患者は低減された正の転写活性を実証する、方法。
  14. 前記筋ジストロフィーが、デュシェンヌ筋ジストロフィー及びベッカー筋ジストロフィーから選ばれる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記筋ジストロフィーがデュシェンヌ筋ジストロフィーである、請求項14に記載の方法。
  16. 前記投与が少なくとも6ヵ月間にわたる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記投与が少なくとも12ヵ月間にわたる、請求項16に記載の方法。
  18. 前記投与が少なくとも18ヵ月間にわたる、請求項17に記載の方法。
  19. 前記投与が少なくとも24ヵ月間にわたる、請求項18に記載の方法。
  20. 前記投与が少なくとも30ヵ月間にわたる、請求項19に記載の方法。
  21. 前記月が連続である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記月が累積である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
  23. 約1mg/kg/日~約12mg/kg/日の前記化合物が投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 約2mg/kg/日~約6mg/kg/日の前記化合物が投与される、請求項23に記載の方法。
  25. 約2mg/kg/日の前記化合物が投与される、請求項24に記載の方法。
  26. 2mg/kg/日の前記化合物の投与が、前記ヒト患者に対して体重増加リスクの減少を有する、請求項25に記載の方法。
  27. 約6mg/kg/日の前記化合物が投与される、請求項25に記載の方法。
  28. 前記ヒト患者が2~18歳である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記ヒト患者が4~12歳である、請求項28に記載の方法。
  30. 前記ヒト患者が4~7歳である、請求項29に記載の方法。
  31. 前記ヒト患者が男性である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
  32. 前記化合物が経口投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
  33. 前記化合物が、溶液又はサスペンジョンとして投与される、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記溶液又はサスペンジョンが、約4wt.%の前記化合物を含む、請求項33に記載の方法。
  35. 前記溶液又はサスペンジョンが、風味剤ををさらに含む、請求項33又は34に記載の方法。
  36. 前記処置が、10メートル走行/歩行時間(TTRW)の速度増加により特徴付けられる、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
  37. 前記TTRW速度が、少なくとも0.3メートル/秒増加した、請求項36に記載の方法。
  38. 前記処置が、4段階段昇り時間(TTCLIMB)の速度増加により特徴付けられる、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
  39. 前記TTCLIMB速度が、少なくとも0.05段/秒増加した、請求項38に記載の方法。
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