JP2023511522A - Hmoの産生 - Google Patents
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Abstract
本発明は、宿主細胞における生物学的分子の組換え産生の分野に関する。より具体的には、本発明は、主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)のタンパク質を発現する遺伝子改変細胞を使用するヒト乳オリゴ糖(HMO)の組換え産生の方法に関する。【選択図】なし
Description
[技術分野]
本発明は、宿主細胞における生物学的分子の組換え産生の分野に関する。より具体的には、本発明は、主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)のタンパク質を発現する遺伝子改変細胞を使用するヒト乳オリゴ糖(HMO)の組換え産生の方法に関する。
本発明は、宿主細胞における生物学的分子の組換え産生の分野に関する。より具体的には、本発明は、主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)のタンパク質を発現する遺伝子改変細胞を使用するヒト乳オリゴ糖(HMO)の組換え産生の方法に関する。
[本発明の背景]
ヒト乳オリゴ糖(HMO)は、ヒト乳の3番目に大きな固形成分を構成し、酵素による加水分解に対して高い耐性がある。結果として、HMOのかなりの部分がほとんど消化されず、吸収されないままであり、結腸への通過を可能にする。結腸では、HMOは、特定の糖分解細菌の増殖を選択的に刺激することにより、腸内エコシステムを形成するための基質として機能し得る。ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種の菌株は、腸の健康にプラスの影響を与えると考えられているため、この選択性は、乳児及び成人の両方にとって有益であると見なされている(Chichlowski M.et al.,(2012)J.Pediatr.Gastroenterol.Nutr.5:251-258;Elison E.et al.,(2016) Brit J.Nutr,116:1356-1368)。
ヒト乳オリゴ糖(HMO)は、ヒト乳の3番目に大きな固形成分を構成し、酵素による加水分解に対して高い耐性がある。結果として、HMOのかなりの部分がほとんど消化されず、吸収されないままであり、結腸への通過を可能にする。結腸では、HMOは、特定の糖分解細菌の増殖を選択的に刺激することにより、腸内エコシステムを形成するための基質として機能し得る。ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種の菌株は、腸の健康にプラスの影響を与えると考えられているため、この選択性は、乳児及び成人の両方にとって有益であると見なされている(Chichlowski M.et al.,(2012)J.Pediatr.Gastroenterol.Nutr.5:251-258;Elison E.et al.,(2016) Brit J.Nutr,116:1356-1368)。
プレバイオティクス特性に加えて、HMOは、さらなる正の効果に関連し、これにより、その適用分野が拡大している(Kunz C.et al.,(2014)Food Oligosaccharides:Production,Analysis and Bioactivity,1st Edition,p 5-20,Eds.Moreno J.and Luz Sanz M.,John Wiley&Sons,Ltd)。
HMOの明らかな健康上の利点により、乳児用調製粉乳及び食品などの食品、並びに消費者向け健康製品での使用が承認された。HMOの生物工学的生産は、HMO製造の有益な費用効果の高い大規模な方法である。この方法は、所望のオリゴ糖の合成に必要なグリコシルトランスフェラーゼを発現するように作製された、遺伝子操作された細菌に依存し、HMO前駆体として細菌の生来のヌクレオチド糖のプールを利用する。HMOの生物工学的生産における最近の開発により、細菌発現系の特定の固有の制限を克服することが可能になった。例えば、HMO産生細菌細胞は、HMOの産生に関与する酵素の活性を改善するために(国際公開第2016040531号パンフレット)、又は合成されたHMOの細胞外培地への分泌を促進するために(国際公開第2010142305号パンフレット、同第2017042382号パンフレット)、細菌内のヌクレオチド糖の限られた細胞内プールを増加させるように遺伝子改変することができる(国際公開第2012112777号パンフレット)。さらに、組換え細胞における目的の遺伝子の発現は、例えば、国際公開第2019123324号パンフレットに最近記載されたもののように、特定のプロモーター又は他の遺伝子発現調節因子を使用することによって調節することができる。
国際公開第2010142305号パンフレット及び同第2017042382号パンフレットに記載のアプローチには、例えば、国際公開第2012112777号パンフレット、同第2016040531号パンフレット、又は同第2019123324号パンフレットの方法を使用して、高レベルの組換え遺伝子発現によって産生細胞にかかる代謝負荷を軽減できるという利点がある。このアプローチは、組換えHMO産生細胞のエンジニアリングにおいて益々注目を集めている。例えば、最近、ヒト乳の最も豊富なHMOである、組換え産生される2’-フコシルラクトース(2’-FL)(国際公開第2018077892号パンフレット、米国特許出願公開第201900323053号明細書、同第201900323052号明細書)の排出を促進できるタンパク質をコードするいくつかの新しい糖トランスポーター遺伝子及び発酵手順が報告されている。しかしながら、現時点では、複数のタンパク質データベース、例えばUniProtにおいて、予測されるトランスポーター機能を有する多数の細菌タンパク質の中で、組換えにより生成された様々なHMO構造を排出できる適切なトランスポータータンパク質を特定できるアルゴリズムは存在しない。なぜなら、糖トランスポーターの基質特異性を規定する構造/因子がまだ十分に研究されておらず、依然として全く予測不可能であるためである。
[本発明の要約]
異なる組換え産生されたHMOに特異性を有する新しい効率的な糖排出トランスポータータンパク質の同定及び前記タンパク質を発現する組換え細胞の開発は、大規模な産業的HMO製造に有利である。
異なる組換え産生されたHMOに特異性を有する新しい効率的な糖排出トランスポータータンパク質の同定及び前記タンパク質を発現する組換え細胞の開発は、大規模な産業的HMO製造に有利である。
本発明は、ヒト乳オリゴ糖(HMO)を産生することができる組換え細胞を提供し、この細胞は、細菌セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)に由来する推定MFS(主要ファシリテータースーパーファミリー)トランスポータータンパク質をコードする異種遺伝子を発現している。より具体的には、本発明は、配列番号1(図3)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列類似性を有するタンパク質をコードする組換え核酸を含む、オリゴ糖、特にHMOの産生のために最適化された遺伝子改変細胞に関する。本明細書で配列番号1として定義されたアミノ酸配列は、GenBankアクセッションID WP_060448169.1を有するアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列である。配列番号1のアミノ酸配列を有するMFSトランスポータータンパク質は、本明細書では、「Marcタンパク質」又は「Marcトランスポーター」又は「marc」として互換的に識別され;marcタンパク質をコードする核酸配列は、本明細書では「Marcコード核酸/DNA」又は「marc遺伝子」又は「marc」として識別される。
本発明は、Marcタンパク質を発現するHMO産生組換え細胞の使用が、HMOの発酵及び精製の両方に関連するHMO製造プロセスの非常に明確な改善をもたらすことを示す。本明細書に開示される組換え細胞及びHMO産生の方法は、全産生HMOのより高い収率、より低い副産物形成又は副産物対生成物比、より低い発酵あたりのバイオマス形成と、発酵ブロスの下流処理中のHMOの容易な回収との両方を提供する。
驚くべきことに、異なるHMO産生細胞におけるMarcをコードするDNA配列の発現は、細胞外培地におけるいくつかの特定のHMO及び産生細胞内の他のHMOの蓄積、並びにHMOの総産生の増加に関連することが見出されている。驚くべきことに、産生されたHMOの排出の増加が、単糖の三単位又は四単位のいずれかからなるHMO、即ち、三糖及び四糖であるHMO、例えば、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、ラクト-N-トリオース2、(LNT-2)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、及びラクト-N-テトラオース(LNT)であるHMOに特徴的であるが、生産細胞内に蓄積する五糖や六糖のようなより大きなオリゴ糖構造には特徴的ではないことが見出されている。驚くべきことに、marc遺伝子を発現する対応するHMO産生細胞において、主要なHMO、例えば、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3’-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-トリオース(LNT II)、及びラクト-N-テトラオース(LNT)の総生産量も増加するが、これらの細胞において、副産物、例えば、ジフコシルラクトース(DFL)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP V)、又はパラ-ラクト-ネオ-ヘキサオース-I(pLNH-I)の産生がそれに応じて減少することが多く、前記副産物オリゴ糖が、典型的には産生細胞内に蓄積することも見出されている。さらに、非常に意外なことに、HMO産生細胞におけるMarcタンパク質の発現は、発酵中のバイオマスの形成の減少と、発酵終了時の死細胞数の減少によって反映されるより正常な細胞培養につながり、これにより、バイオマス単位あたりの産生量が増えるため、製造プロセスがより効率的になる。
従って、本発明の第1の態様は、1つ又は複数のHMOを産生することができる遺伝子改変細胞に関し、前記細胞は、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む。
本発明の第2の態様は、MFSトランスポータータンパク質をコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する、核酸構築物に関し、この核酸構築物を含む、大腸菌(Escherichia coli)である遺伝子改変細胞にも関する。
一態様では、核酸構築物は、MFSトランスポータータンパク質をコードする核酸配列を含み、この核酸配列は、配列番号2と少なくとも70%同一である。
本発明の第3の態様は、1つ又は複数のオリゴ糖を産生させるための方法に関し、この方法は:
(i)HMOを産生することができる遺伝子改変細胞を提供するステップであって、前記細胞が、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む、ステップ;
(ii)(i)による細胞を適切な細胞培養培地で培養して、前記組換え核酸を発現させるステップ;
(iii)ステップ(ii)で産生された1つ又は複数のHMOを収集するステップを含む。
(i)HMOを産生することができる遺伝子改変細胞を提供するステップであって、前記細胞が、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む、ステップ;
(ii)(i)による細胞を適切な細胞培養培地で培養して、前記組換え核酸を発現させるステップ;
(iii)ステップ(ii)で産生された1つ又は複数のHMOを収集するステップを含む。
本発明はまた、主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)タンパク質をコードする異種核酸配列を含む遺伝子改変細胞又は核酸構築物の使用に関し、前記核酸配列は、1つ又は複数のヒト乳オリゴ糖(HMO)の産生のために配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有する。
上述のように、Marcトランスポータータンパク質をコードする核酸を含む、1つ又は複数のHMOを産生することができる遺伝子改変細胞の培養中に、驚くべきことに、対応する1つ又は複数のHMOが高収率で産生される一方、副産物及びバイオマス形成が減少することが見出された。これにより、下流プロセス中のHMOの回収が容易になり、例えば、全体的な回収及び精製手順を、より少ないステップで構成することができ、精製の全体の時間を短縮することができる。
産物の収量の増加及び産物回収の促進のこれらの効果により、本発明は、先行技術の開示よりも優れている。
本発明の他の態様及び有利な特徴は、以下に、詳細に説明され、非限定的な実施例によって例示される。
[詳細な説明]
以下で、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。特徴のそれぞれの特定の変形例は、特に明記されていない限り、本発明の他の実施形態に適用することができる。
以下で、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。特徴のそれぞれの特定の変形例は、特に明記されていない限り、本発明の他の実施形態に適用することができる。
一般に、本明細書で使用されるすべての用語は、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきであり、明示的に定義されても、特に明記もされていない限り、本発明のすべての態様及び実施形態に適用可能である。「1つの(a)/1つの(an)/その(the)[細胞、配列、遺伝子、トランスポーター、ステップなど]」へのすべての言及は、特に明記されていない限り、前記細胞、配列、遺伝子、トランスポーター、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとして公然と解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、特に明記されていない限り、開示された正確な順序で実行する必要はない。
本発明は、一般に、オリゴ糖を効率的に産生させるための遺伝子改変細胞、及びオリゴ糖を産生させる方法における前記遺伝子改変細胞の使用に関する。特に、本発明は、オリゴ糖、好ましくは異種オリゴ糖、特にヒト乳オリゴ糖(HMO)を合成することを可能にする遺伝子改変細胞に関する。従って、本発明の細胞は、下記のグリコシルトランスフェラーゼ活性を有する1つ又は複数の酵素をコードする遺伝子などの、細胞による1つ又は複数のHMOの合成に必要な組換え核酸のセット(細胞が1つ又は複数のHMOを合成することを可能にする)を発現するように改変される。本発明のオリゴ糖産生組換え細胞は、細菌セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)に由来する推定MFS(主要ファシリテータースーパーファミリー)トランスポータータンパク質をコードする異種組換え核酸配列、好ましくはDNA配列を含むようにさらに改変される。より具体的には、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列(図3)に対して少なくとも80%の配列類似性、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するタンパク質をコードする組換え核酸を含む、1つ又は複数の特定のオリゴ糖、特に1つ又は複数の特定のHMOの産生のために最適化された遺伝子改変細胞に関する。本明細書で配列番号1として識別されたアミノ酸配列は、GenBankアクセッションID:WP_060448169.1を有するアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列である。
したがって、本発明の第1の態様は、1つ又は複数のHMOを産生することができる遺伝子改変細胞に関し、前記細胞は、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む。これに関連して「機能的相同体」という用語は、配列番号1と80%~99.9%同一であるアミノ酸配列を有し、且つ本発明の少なくとも1つの有利な効果、例えば、宿主細胞による総HMO産生の増加、産生されたHMOの回収の促進、HMO産生効率、及び/又はHMO産生細胞の生存率を達成するのに有益な機能を有するタンパク質を意味する。
配列番号1のアミノ酸配列を有するMFSトランスポータータンパク質は、本明細書では、「Marcタンパク質」又は「Marcトランスポーター」又は「Marc」として互換的に識別され;Marcタンパク質をコードする核酸配列は、本発明の目的のために、本明細書では「Marcコード核酸/DNA」又は「marc遺伝子」又は「marc」として識別される。
「主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)」という用語は、糖、薬物、疎水性分子、ペプチド、有機イオンなどを含む様々な異なる基質の輸送に関与する二次能動輸送体クラスの大きくて非常に多様なファミリーを意味する。糖トランスポータータンパク質の特異性は、全く予測不可能であり、例えばオリゴ糖に対する特異性を有する新規トランスポータータンパク質の同定には、負担のない実験室での実験が必要である(詳細については、Reddy V.S.et al.,(2012),FEBS J.279(11):2022-2035による概説を参照)。「MFSトランスポーター」という用語は、これに関連して、細胞膜を介したオリゴ糖、好ましくはHMOの輸送、好ましくは、宿主細胞によって合成されたHMO/オリゴ糖の細胞サイトゾルから細胞培地への輸送、好ましくは3つ又は4つの糖単位、例えば2’-FL、3-FL、LNT-2、LNT、LNnT、3’-SL、又は6’-SLを含むHMO/オリゴ糖の輸送を促進するタンパク質を意味する。加えて、又は代わりに、MFSトランスポーターはまた、ラクトース、グルコース、及び細胞代謝産物又は毒素などの、本発明によるHMOともオリゴ糖とも見なされない分子の排出を促進し得る。
2つ以上の核酸又はアミノ酸配列に関連して「[特定の]%の配列同一性」という用語は、2つ以上の配列が、核酸又はアミノ酸の比較枠又は指定された配列に対して最大限一致するように整列させて比較したときに、所与のパーセントで共通のヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する(即ち、配列が少なくとも90パーセント(%)同一性を有する)ことを意味する。核酸又はアミノ酸配列のパーセント同一性は、デフォルトのパラメーターを用いるBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動のアラインメントと目視検査によって測定することができる(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/を参照)。この定義は、試験配列の相補体、欠失及び/又は付加を有する配列、及び置換を有する配列にも適用される。パーセント同一性、配列類似性、及びアラインメントを決定するのに適したアルゴリズムの一例は、Altschul et al.Nucl.Acids Res.25,3389(1997)に記載のBLAST 2.2.20+アルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって公開されている。一般的に使用される配列アラインメントアルゴリズムの例としては、
CLUSTAL Omega(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)、
EMBOSS Needle(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/)、
MAFFT(http://mafft.cbrc.jp/alignment/server/)、又は
MUSCLE(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/muscle/)が挙げられる。
CLUSTAL Omega(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)、
EMBOSS Needle(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/)、
MAFFT(http://mafft.cbrc.jp/alignment/server/)、又は
MUSCLE(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/muscle/)が挙げられる。
本発明に関連して、「オリゴ糖」という用語は、いくつかの単糖単位を含む糖ポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、好ましいオリゴ糖は、3つ又は4つの単糖単位、即ち三糖又は四糖からなる糖ポリマーである。本発明の好ましいオリゴ糖は、ヒト乳オリゴ糖(HMO)である。
これに関連して「ヒト乳オリゴ糖」又は「HMO」という用語は、ヒト母乳に見られる複雑な炭水化物を意味する(例えば、Urashima et al.:Milk Oligosaccharides.Nova Science Publisher(2011);or Chen,Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.72,113(2015)を参照)。HMOは、1つ又は複数のβ-N-アセチル-ラクトサミニル及び/又は1つ又は複数のβ-ラクト-N-ビオシル単位によって伸長できる還元末端にラクトース単位を含むコア構造を有し、このコア構造は、α-L-フコピラノシル及び/又はα-N-アセチル-ノイラミニル(シアリル)部分で置換することができる。これに関連して、非酸性(又は中性)HMOにはシアリル残基がなく、酸性HMOは、その構造に少なくとも1つのシアリル残基がある。非酸性(又は中性)HMOは、フコシル化又は非フコシル化され得る。このような中性の非フコシル化HMOの例としては、ラクト-N-トリオース2(LNT-2)ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(pLNnH)、パラ-ラクト-N-ヘキサオース(pLNH)、及びラクト-N-ヘキサオース(LNH)が挙げられる。中性フコシル化HMOの例としては、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LNDFH-I)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ジフコシルラクトース(DFL)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFP-II)、ラクト-N-フコペンタオースIII(LNFP-III)、ラクト-N-ジフコヘキサオースIII(LNDFH-III)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースII(FLNH-II)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP-V)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LNDFH-II)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースI(FLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ヘキサオースI(FpLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ネオヘキサオースII(F-pLNnH II)、及びフコシル-ラクト-N-ネオヘキサオース(FLNnH)が挙げられる。酸性HMOの例としては、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、3-フコシル-3’-シアリルラクトース(FSL)、3’-O-シアリルラクト-N-テトラオースa(LST a)、フコシル-LST a(FLST a)、6’-O-シアリルラクト-N-テトラオースb(LST b)、フコシル-LST b(FLST b)、6’-O-シアリルラクト-N-ネオテトラオース(LST c)、フコシル-LST c(FLST c)、3’-O-シアリルラクト-N-ネオテトラオース(LST d)、フコシル-LST d(FLST d)、シアリル-ラクト-N-ヘキサオース(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI(SLNH-I)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースII(SLNH-II)、及びジシアリル-ラクト-N-テトラオース(DSLNT)が挙げられる。本発明に関連して、ラクトースは、HMO種とは見なされない。
本発明のいくつかの実施形態では、トリ-HMO及びテトラ-HMO、例えば、三糖2’-FL、3-FL、LNT-2、3’-SL、6’-SL、及び四糖DFL、LNT、LNnT、FSLが好ましい場合がある。
1つ又は複数のHMOを合成できるようにするために、本発明の組換え細胞は、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する機能酵素をコードする少なくとも1つの組換え核酸を含む。ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子は、宿主細胞のゲノムに(染色体組み込みによって)組み込まれ得るか、或いは、プラスミドDNAに含まれ、プラスミド由来として発現され得る。2つ以上のグリコシルトランスフェラーゼが、HMO、例えば、LNT又はLNnTの産生に必要な場合、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する異なる酵素、例えば、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(第2のグリコシルトランスフェラーゼをコードする第2の組換え核酸)と組み合わせられるβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(第1のグリコシルトランスフェラーゼをコードする第1の組換え核酸)をコードする2つ以上の組換え核酸を、LNTの産生のためにゲノムに組み込んでもよいし、且つ/又はプラスミドから発現させてもよく、第1及び第2の組換え核酸は、互いに独立して染色体上又はプラスミド上に組み込まれ得る。好ましい一実施形態では、第1及び第2の組換え核酸の両方が、産生細胞の染色体に安定して組み込まれ;別の実施形態では、第1及び第2のグリコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つは、プラスミド由来である。グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質/酵素(グリコシルトランスフェラーゼ)は、異なる実施形態では、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,3/4-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,4-フコシルトランスフェラーゼα-2,3-シアリルトランスフェラーゼ、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの活性を有する酵素から選択することができる。例えば、2’-FLの産生では、改変細胞が、活性なα-1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素を発現することを必要とし;3-FLの産生では、改変細胞が、活性なα-1,3-フコシルトランスフェラーゼ酵素の発現を必要とし;LNTの産生では、改変細胞が、少なくとも2つのグリコシルトランスフェラーゼ、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、及びβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する必要があり;6’-SLの産生では、改変細胞が、活性なα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ酵素を発現する必要がある。産生細胞に含まれる組換え遺伝子によってコードされ得る、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質のいくつかの非限定的な実施形態は、表1の非限定的な例から選択することができる。
本発明の一態様は、配列番号1に示される主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)タンパク質である糖輸送が可能なタンパク質をコードする異種核酸配列を含む核酸構築物、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一であるその機能的相同体の提供であり、MFSタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有する。
「異種核酸配列」、「組換え遺伝子/核酸/DNAコード化」、又は「コード核酸配列」という用語は、適切な制御配列、即ちプロモーターの制御下に置かれると、mRNAに転写され、ポリペプチドに翻訳される、連続する重複しないトリプレット(コドン)のセットを含む人工核酸配列(即ち、核酸配列を作製するための標準的な実験方法を使用してインビトロで作製される)を意味する。コード配列の境界は、一般に、mRNAの5’末端のオープンリーディングフレームのすぐ上流に位置するリボソーム結合部位、転写開始コドン(AUG、GUG、又はUUG)、及び翻訳停止コドン(UAA、UGA、又はUAG)によって決定される。コード配列は、限定されるものではないが、ゲノムDNA、cDNA、合成、及び組換え核酸配列を含み得る。「核酸」という用語は、RNA、DNA、及びcDNA分子を含む。遺伝暗号の縮重の結果として、所与のタンパク質をコードする多数のヌクレオチド配列が生成され得ることを理解されたい。核酸という用語は、「ポリヌクレオチド」という用語と互換的に使用される。「オリゴヌクレオチド」は、短鎖核酸分子である。「プライマー」は、精製された制限消化物のように天然に存在するか、又は合成的に生成されるかを問わず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(即ち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼなどの誘導剤の存在下、適切な温度及びpHで)に置かれたときに合成の開始点として機能し得るオリゴヌクレオチドである。プライマーは、増幅の効率を最大にするために一本鎖であることが好ましいが、代わりに二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは、伸長産物の調製に使用される前に、まずその鎖を分離するために処理される。好ましくは、プライマーは、デオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、及び方法の使用を含む多くの要因に依存する。プライマーは、伸長産物の調製に使用される前に、最初にその鎖を分離するために処理される。好ましくは、プライマーは、デオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、及び方法の使用を含む多くの因子に依存する。
本発明の組換え核酸配列は、コードDNA配列、例えば遺伝子、又は非コードDNA配列、例えばプロモーター配列などの調節DNAであり得る。本発明の一態様は、1つ又は複数のHMOの産生に必要な酵素をコードする組換えDNA配列及びMarcタンパク質をコードするDNA配列を含む組換え細胞を提供することに関する。したがって、一実施形態では、本発明は、コード核酸配列、即ち、目的の遺伝子、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子又はmarc遺伝子の組換えDNA配列、及び非コードDNA配列、例えば、プロモーターDNA配列、例えば、lacオペロン又はglpオペロンのプロモーターに由来する組換えプロモーター配列、又は別のゲノムプロモーターDNA配列に由来するプロモーター配列、又は合成プロモーター配列を含み、コード配列とプロモーター配列が作動可能に連結されている核酸構築物に関する。「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上の核酸(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、この用語は、転写調節配列と転写配列との機能的関係を指す。例えば、プロモーター配列は、適切な宿主細胞又は他の発現系におけるコード配列の転写を刺激又は調節する場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写配列に作動可能に連結されているプロモーター転写調節配列は、転写配列に物理的に隣接する、即ち、これらはシス作用性である。
一実施形態では、本発明の核酸構築物は、ベクターDNAの一部であり得、別の実施形態では、本構築物は、宿主細胞のゲノムに組み込まれる発現カセット/カートリッジである。従って、「核酸構築物」という用語は、人工的に構築された核酸のセグメント、特に、標的細胞、例えば細菌細胞に「移植」されてゲノムの遺伝子の発現を改変すること、又は構築物に含まれ得る遺伝子/コードDNA配列を発現することを目的とするDNAセグメントを意味する。本発明に関連して、核酸構築物は、2つ以上の組換えDNA配列を含む組換えDNA配列:本質的に、プロモーターDNA配列を含む非コードDNA配列、及び目的の遺伝子、例えば、Marcタンパク質、グリコシルトランスフェラーゼ、又は宿主細胞でのHMOの産生に有用な別の遺伝子をコードするコードDNA配列を含む。好ましくは、構築物は、その構築物のコードDNAの転写又は翻訳のいずれかを調節するさらなる非コードDNA配列、例えば、転写物へのリボソームの結合を促進するDNA配列、転写物を安定させるリーディングDNA(leading DNA)配列を含む。
構築物(発現カセット)に含まれる目的の組換え核酸の細菌ゲノムへの組み込みは、従来の方法、例えば、attTn7サイト(Waddell C.S.and Craig N.L.,Genes Dev.(1988) Feb;2(2):137-49.)に記載のように、染色体上の特定の部位に相同な隣接配列を含む線形カートリッジを使用すること;組換えがファージλのRedリコンビナーゼ機能又はRacプロファージのRecE/RecTリコンビナーゼ機能によって媒介される核酸配列のゲノム組み込みのための方法(Murphy,J Bacteriol.(1998);180(8):2063-7; Zhang et al.,Nature Genetics(1998) 20:123-128 Muyrers et al.,EMBO Rep.(2000) 1(3):239-243);Red/ET組換えに基づく方法(Wenzel et al.,Chem Biol.(2005),12(3):349-56.; Vetcher et al.,Appl Environ Microbiol.(2005);71(4):1829-35);又は陽性クローン、即ち、例えばマーカー遺伝子、若しくは遺伝子機能の喪失若しくは獲得によって選択することができる発現カセットを保有するクローンによって達成することができる。
目的の遺伝子を含む発現カセットの単一のコピーは、所望のHMOの産生を確実にし、本発明による所望の効果を達成するのに十分であり得る。従って、いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、細胞のゲノムDNAに組み込まれた目的の遺伝子の1つ、2つ、又は3つのコピーを含む組換えHMO産生細胞に関する。いくつかの実施形態では、遺伝子の単一コピーが好ましい。
好ましい一実施形態では、本発明の核酸構築物の組換えコード核酸配列は、プロモーターに対して異種であり、これは、由来する種のゲノムにおける同等の天然コード配列が、別のプロモーター配列(即ち、構築物のプロモーター配列ではない)の制御下で転写されることを意味する。それでも、宿主細胞に関して、コードDNAは、例えば大腸菌(Escherichia coli)宿主細胞で発現されるMarcタンパク質をコードするDNA配列などの異種(即ち、別の生物種又は属に由来する)、又は、例えば結腸酸オペロンの遺伝子、wca遺伝子などの同種(即ち、宿主細胞に由来する)のいずれかであり得る。
「調節エレメント」又は「プロモーター」又は「プロモーター領域」又は「プロモーターエレメント」という用語は、転写の開始の際にDNA依存性RNAポリメラーゼによって認識及び結合される核酸配列である。プロモーターは、他の転写及び翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも呼ばれる)とともに、所与の遺伝子又は遺伝子群(オペロン)を発現するために必要である。一般に、転写及び翻訳調節配列には、限定されるものではないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列が含まれる。「転写開始部位」は、転写される最初のヌクレオチドを意味し、+1で示される。開始部位の下流のヌクレオチドには、+2、+3、+4などが付番され、5’反対(上流)方向のヌクレオチドには-1、-2、-3などが付番される。構築物のプロモーターDNA配列は、選択された種のゲノムの任意の遺伝子のプロモーター領域、好ましくは、大腸菌(E.coli)のゲノムDNAのプロモーター領域に由来し得る。従って、RNAポリメラーゼに結合して転写を開始することができる任意のプロモーターDNA配列は、本発明を実施するのに適している。原則として、任意のプロモーターDNA配列を使用して、構築物の目的の組換え遺伝子の転写を調節することができ、異なる又は同じプロモーター配列を使用して、宿主細胞のゲノム又は発現ベクターDNAに組み込まれた目的の異なる遺伝子の転写を駆動することができる。構築物に含まれる組換え遺伝子の最適な発現を得るために、構築物は、さらなる調節配列、例えば、リボソーム結合のための配列である、大腸菌(E.coli)のglp遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)に由来するDNA配列などのリーディングDNA配列を含み得る。後の配列の例は、国際公開第2019123324号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載され、本明細書の非限定的な実施例に例示される。
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の構築物に含まれる組換え遺伝子の発現を調節するための調節エレメントは、glpFKXオペロンプロモーター、PglpFであり、他の好ましい実施形態では、プロモーターは、lacオペロンプロモーター、Placである。
さらなる態様では、本発明の構築物に含まれる組換え遺伝子の発現の調節のための調節エレメントは、mgIBAC;ガラクトース/メチル-ガラクトシダーゼ(methyl-galactosidade)トランスポータープロモーターPmgIB又はその変異体、例えば、限定されるものではないが、配列番号12のPmglB_70UTR又は配列番号13のPmglB_70UTR_SD4である。
さらなる態様では、本発明の構築物に含まれる組換え遺伝子の発現の調節のための調節エレメントは、gatYZABCD;タガトース-1,6-bisPアルドラーゼプロモーターPgatY又はその変異体、例えば、限定されるものではないが、配列番号14のPgatY_U70UTRである。
本発明の遺伝子改変細胞又は核酸構築物に存在する好ましい調節エレメントは、PgatY_70UTR、PglpF、PglpF_SD1、PglpF_SD10、PglpF_SD2、PglpF_SD3、PglpF_SD4、PglpF_SD5、PglpF_SD6、PglpF_SD7、PglpF_SD8、PglpF_SD9、Plac_16UTR、Plac、PmglB_70UTR、及びPmglB_70UTR_SD4からなる群から選択される。
本発明の遺伝子改変細胞又は核酸構築物に存在する特に好ましい調節エレメントは、PglpF及びPlacからなる群から選択される。
本発明の遺伝子改変細胞又は核酸構築物に存在する特に好ましい調節エレメントは、PglpF及びPlacからなる群から選択される。
本発明の遺伝子改変細胞又は核酸構築物に存在する特に好ましい調節エレメントは、PglpF及びPlacからなる群から選択される。
しかしながら、宿主細胞における1つ又は複数のHMOの最適レベルの生合成産生を達成するために必要又は有益である1つ又は複数のタンパク質(又は1つ又は複数の調節核酸)、例えば、HMO又はHMO前駆体の膜貫通輸送、HMO産生の副産物の分解、遺伝子発現調節タンパク質などに関与し、本発明による所望の効果の達成を可能にするタンパク質をコードする1つ又は複数の組換え核酸の転写及び/又は転写レベルの調節を可能にする任意のプロモーターが、本発明を実施するのに適している。
好ましくは、宿主細胞で発現されるHMO、プロモーターDNA配列、及び他の調節配列、例えば、リボソーム結合部位配列(例えば、Shine-Dalgarno配列)の生合成産生に関連する遺伝子を含む本発明の構築物は、宿主細胞の懸濁液を含む1リットルの発酵培地の少なくとも0.03g/OD(光学密度)のレベル、例えば、約0.05g/l/OD~約0.1g/l/ODのレベルでのHMOの産生を可能にする。本発明の目的のために、後のHMO産生レベルは、「十分」であると見なされ、このレベルの所望のHMOを産生することができる宿主細胞は、「適切な宿主細胞」と見なされる、即ち、この細胞は、HMO産生に有利な本明細書に記載の少なくとも1つの効果を達成するために、HMOトランスポータータンパク質、例えばMarcを発現するようにさらに改変することができる。
本発明の遺伝子改変細胞又は核酸構築物は、推定MFS(主要ファシリテータースーパーファミリー)トランスポータータンパク質をコードする異種遺伝子などの核酸配列を含む。
本発明において特に関心のあるMFS輸送タンパク質はMarcタンパク質である。従って、本発明の核酸構築物は、遺伝子marc、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
遺伝子改変細胞又は核酸構築物に含まれる核酸配列は、配列番号1のタンパク質、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一であるその機能的相同体をコードする。
配列番号1のタンパク質の機能的相同体は、突然変異誘発によって得ることができる。機能的相同体は、配列番号1のアミノ酸配列の機能と比較して、少なくとも50%、例えば、60%、70%、80%、90%、又は100%の機能を残しているべきである。この機能的相同体は、配列番号1のアミノ酸配列の機能性と比較してより高い機能性を有し得る。配列番号1の機能的相同体は、本発明による遺伝子改変細胞のHMO産生を促進できるはずである。
遺伝子改変細胞(宿主細胞又は組換え細胞)は、例えば、細菌又は酵母細胞であり得る。好ましい一実施形態では、遺伝子改変細菌細胞。細菌宿主細胞に関しては、原則として制限はなく;細菌宿主細胞は、目的の遺伝子を挿入するための遺伝子操作を可能にし、製造規模で培養できる限り、真正細菌(グラム陽性又はグラム陰性)又は古細菌であり得る。好ましくは、宿主細胞は、高い細胞密度までの培養を可能にする特性を有する。本発明によるHMOの組換え工業産生に適した細菌宿主細胞の非限定的な例は、エルイウニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)(パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans))、シトロバクター・フロインディイ(Citrobacter freundii)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)、ペクトバクテリウム・カロトボラム(Pectobacterium carotovorum)、又はキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)であり得る。バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーモフィラス(Bacillus thermophilus)、バチルス・ラテロスポラス(Bacillus laterosporus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・マイコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、及びバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)を含むバチルス属の細菌も使用することができる。同様に、限定されるものではないが、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・ラクチス(Lactococcus lactis)を含むラクトバチルス(Lactobacillus)属及びラクトコッカス(Lactococcus)属の細菌は、本発明の方法を使用して改変することができる。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)及びプロプリオニバクテリウム・フロイデンライシイ(Proprionibacterium freudenreichii)も、本明細書に記載の本発明に適した細菌種である。本発明の一部として、本明細書に記載のように、エンテロコッカス(Enterococcus)属(例えば、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)及びエンテロコッカス・サーモフィレス(Enterococcus thermophiles))、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属(例えば、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、及びビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum))、スポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)属、ミクロモノスポラ(Micromomospora)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、及びシュードモナス(Pseudomonas)属(例えば、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)及びシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa))から改変された菌株も含まれる。本明細書に記載の特徴を含む細菌は、ラクトースの存在下で培養され、細胞によって産生されるHMOなどのオリゴ糖は、細菌自体又は細菌の培養上清のいずれかから回収される。好ましい一実施形態では、本発明の遺伝子改変細胞は、大腸菌(Escherichia coli)細胞である。
別の好ましい実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluveromyces lactis)、クルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluveromyces marxianus)などである。
本発明の組換え細胞によって産生されるHMOは、当技術分野で利用可能な適切な手順(例えば、国際公開第2015188834号パンフレット、同第2017182965号パンフレット、又は同第2017152918号パンフレットに記載のものなど)を使用して精製することができる。
本発明の遺伝子改変細胞は、当技術分野の標準的な方法、例えば、Sambrook et al.,Wilson&Walker,“Maniatise et al.,及びAusubel et al.によるマニュアルに記載の方法を使用して提供することができる。
HMOの産生に適した宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)は、内因性β-ガラクトシダーゼ遺伝子又は外因性β-ガラクトシダーゼ遺伝子を含み得、例えば、大腸菌(E.coli)は、内因性lacZ遺伝子(例えば、GenBankアクセッション番号V00296(GI:41901))を含む。本発明の目的のために、HMO産生細胞は、任意のβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を含むか、又は不活性化された遺伝子を含むように遺伝子操作される。遺伝子は、細菌ゲノムからの対応する核酸配列の完全又は部分的な欠失によって不活性化され得るか、又は遺伝子配列が、転写されるように、若しくは転写される場合、転写物が翻訳されないように、若しくはタンパク質(即ち、β-ガラクトシダーゼ)に翻訳される場合、そのタンパク質が対応する酵素活性を有さないように変異される。このようにして、HMO産生細菌は、HMOの産生に有益な増大した細胞内ラクトースプールを蓄積する。
いくつかの実施形態では、エンジニアリングされた細胞、例えば、細菌は、不十分なシアル酸異化経路を含む。「シアル酸異化経路」は、通常は酵素によって制御及び触媒され、シアル酸の分解をもたらす一連の反応を意味する。本明細書に記載の例示的なシアル酸異化経路は、大腸菌(E.coli)経路である。この経路では、シアル酸(Neu5Ac;N-アセチルノイラミン酸)は、酵素NanA(N-アセチルノイラミン酸リアーゼ)及びNanK(N-アセチルマンノサミンキナーゼ)及びNanE(N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ)によって分解され、これらはすべて、nanA TEK-yhcHオペロンからコードされ、NanR(http://ecocyc.org/ECOLI)によって抑制される。不十分なシアル酸異化経路は、内因性nanA(N-アセチルノイラミン酸リアーゼ)(例えば、GenBankアクセッション番号D00067.1(GL216588))、及び/又はnanK(N-アセチルマンノサミンキナーゼ)遺伝子(例えば、GenBankアクセッション番号(アミノ酸)BAE77265.1(GL85676015))、及び/又はnanE(参照により本明細書に組み込まれる、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ、G1:947745)に変異を導入することによって大腸菌(E.coli)宿主にもたらされる。任意選択により、nanT(N-アセチルノイラミン酸トランスポーター)遺伝子も不活性化又は変異される。シアル酸代謝の他の中間体には:(ManNAc-6-P)N-アセチルマンノサミン-6-リン酸;(GlcNAc-6-P)N-アセチルグルコサミン-6-リン酸;(GlcN-6-P)グルコサミン-6-リン酸、及び(Fruc-6-P)フルクトース-6-リン酸が含まれる。いくつかの好ましい実施形態では、nanAは変異している。他の好ましい実施形態では、nanA及びnanKは変異しているが、nanEは、機能を維持する。別の好ましい実施形態では、nanA及びnanEは変異しているが、nanKは変異も、不活性化も、欠失もしていない。変異は、nanA、nanK、nanE、及び/又はnanTの遺伝子産物をコードする核酸配列の1つ又は複数の変化である。例えば、変異は、核酸配列の1つ、2つ、最大5つ、最大10、最大25、最大50、又は最大100の変化であり得る。例えば、nanA、nanK、nanE、及び/又はnanT遺伝子は、ヌル変異によって変異する。本明細書に記載のヌル変異は、アミノ酸の置換、付加、欠失、又は挿入を包含し、これは、酵素の機能の喪失(即ち、活性の低下若しくは欠如)又は酵素の喪失(即ち、遺伝子産物の欠如)のいずれかを引き起こす。「欠失された」は、(機能的な)遺伝子産物が産生されないようにコード領域が完全に又は部分的に除去されていることを意味する。不活性化は、得られた遺伝子産物が機能的に不活性であるか、又は天然に存在する天然の内因性遺伝子産物の100%未満、例えば、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、若しくは20%の活性である遺伝子産物をコードするようにコード配列が変更されていることを意味する。「変異していない」遺伝子又はタンパク質は、天然に存在する天然のコード配列又は内因性のコード配列と、1つ、2つ、最大5つ、最大10、最大20、最大50、最大100、最大200、又は最大500以上異ならない、又は対応するコードされたアミノ酸配列と異ならない。
さらに、細菌(例えば、大腸菌(E.coli))はまた、シアル酸合成能力を含む。例えば、細菌は、外因性UDP-GIcNAc 2-エピメラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)のneuC(GenBank AAK91727.1;GL15193223)又は同等物(例えば、大腸菌(E.coli)S88のneuC(GenBank YP_002392936.1;GI:218560023)、Neu5Acシンターゼ(例えば、C.ジェジュニ(C.jejuni)のneuB(GenBank AAK91726.1;GI:15193222)又は同等物(例えば、フラボバクテリウム・リムノセジミニス(Flavobacterium limnosediminis)シアル酸シンターゼ、GenBank GL559220424)、及び/又はCMP-Neu5Acシンテターゼ(例えば、C.ジェジュニ(C.jejuni)のneuA)(GenBank AAK91728.1;GI:15193224)又は同等物(例えば、ビブリオ・ブラジリエンシス(Vibrio brasiliensis)CMP-シアル酸シンターゼ、GenBank GI:493937153)の提供によるシアル酸合成能力を有する。
エンジニアリングされた酵母におけるフコシル化HMOの産生も当技術分野で公知である(例えば、Yu et al.,(2018) Microb Cell Fact 17:101; Hollands et al.,(2019) Methabolic Eng 52:232-242)を参照)。
ラクト-N-トリオース2(LNT-2)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFP-II)、ラクト-N-フコペンタオースIII(LNFP-III)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP-V)、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LDFH-I)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LDFH-II)、及びラクト-N-ネオジフコヘキサオースII(LNDFH-III)などのN-アセチルグルコサミン含有HMOの産生では、細菌は、上記のように機能的lacY及び機能不全lacZ遺伝子を含み、この細菌は、外因性UDP-GlcNAc:Galα/β-R-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子(GlcNAcT)、又はその機能的変異体又は断片を含むようにエンジニアリングされている。この外因性UDP-GlcNAc:Galα/β-Rβ-3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子は、いくつかの供給源のいずれか1つから得ることができ(表1を参照)、例えば、髄膜炎菌(N.meningitidis)(Genbankタンパク質アクセッションAAF42258.1)又は淋菌(N.gonorrhoeae)(Genbankタンパク質アクセッションACF31229.1)から記載のIgtA遺伝子を得ることができる。任意選択により、追加の外因性グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を、外因性UDP-GlcNAc:Galα/β-R-3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼを含む細菌で共発現させることができる。例えば、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子(Gal4T)は、UDP-GlcNAc:Galα/β-R-3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子と共発現される。この外因性β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子は、いくつかの供給源のいずれか1つから得ることができ、例えば、髄膜炎菌(N.meningitidis)から記載の1つ、IgtB遺伝子(Genbankタンパク質アクセッションAAF42257.1)を、又はH.ピロリ(H.pylori)からHP0826/galT遺伝子(Genbankタンパク質アクセッションNP_207619.1)を得ることができる。任意選択により、外因性UDP-GlcNAc:Galα/β-R-3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子を含む細菌で共発現される追加の外因性グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子は、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子(Gal3T)、例えば、大腸菌(E.coli)055:H7由来の記載のもの、wbgO遺伝子(Genbankタンパク質アクセッションWP_000582563)、又はH.ピロリ(H.pylori)由来のjhp0563遺伝子(Genbankタンパク質アクセッションAEZ55696.1)、又はB群β溶血連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)タイプIb OI2由来のcpsIBJ遺伝子Genbankタンパク質アクセッションAB050723)である。上記の酵素のいずれかの機能的変異体及び断片もまた、開示される発明に包含される。
N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子及び/又はガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子はまた、Pglpに作動可能に連結して、対応するゲノム組み込みカセットから発現させることができる。一実施形態では、ゲノムに組み込まれる遺伝子は、ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、例えば、H.ピロリ(H.pylori)からのGalT酵素をコードするHP0826(Genbankタンパク質アクセッションNP_207619.1)遺伝子であり;別の実施形態では、ゲノムに組み込まれる遺伝子は、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、例えば、髄膜炎菌(N.meningitidis)由来のIgtA遺伝子(Genbankタンパク質アクセッションAAF42258.1)である。これらの実施形態では、第2の遺伝子、即ち、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ又はガラクトシルトランスフェラーゼを相応にコードする遺伝子は、ゲノム組み込み又はプラスミド由来のカセットのいずれかから発現され得る。第2の遺伝子は、任意選択により、glpプロモーターの制御下で、又は発現系に適した他の任意のプロモーター、例えば、Placの制御下で発現され得る。
特に明記されていない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の一般的な技術者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。Singleton et al.(1994)Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,second edition,John Wiley and Sons(New York)は、本発明で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。本出願で必要な命名法と一般的な実験手順のほとんどは、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York(2012);Wilson K.and Walker J.,Principles and Techniques of Biochemistry and Molecular Biology(2010),Cambridge University Press;又はManiatise et al.,Molecular Cloning A laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(2012);又はAusubel et al.,Current protocols in molecular biology,John Wiley and Sohns(2010)で確認することができる。マニュアルは、以降、それぞれ「Sambrookら」、「Wilson&Walker」、「Maniatiseら」、「Ausubelら」と呼ばれる。
本発明の第2の態様は、1つ又は複数のHMOの産生のための方法に関連し、この方法は:
(i)HMOを産生することができる遺伝子改変細胞を提供するステップであって、前記細胞が、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む、ステップ;
(ii)HMOの産生及びDNA配列の発現を可能にする適切な細胞培養培地で(i)の細胞を培養して、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質;又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を産生させるステップ;
(iii)ステップ(ii)で産生されたHMOを収集するステップを含む。
(i)HMOを産生することができる遺伝子改変細胞を提供するステップであって、前記細胞が、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む、ステップ;
(ii)HMOの産生及びDNA配列の発現を可能にする適切な細胞培養培地で(i)の細胞を培養して、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質;又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を産生させるステップ;
(iii)ステップ(ii)で産生されたHMOを収集するステップを含む。
本発明によると、「培養(culturing)」(又は「培養(cultivating)」又は「培養(cultivation)」、「発酵」とも呼ばれる)という用語は、業界で公知である方法による制御されたバイオリアクターにおける細菌発現細胞の増殖に関連する。
1つ又は複数のHMOを産生させるために、本明細書に記載のHMO産生細菌が、適切な炭素源、例えば、グルコース、グリセロール、ラクトースなどの存在下で当技術分野で公知の手順に従って培養され、産生されたHMOが、培養培地及び培養プロセス中に形成された微生物バイオマスから収集される。その後、HMOは、例えば、国際公開第2015188834号パンフレット、同第2017182965号パンフレット、又は同第2017152918号パンフレットなどに記載のように当技術分野で公知である手順に従って精製され、精製されたHMOが、栄養補助食品、医薬品、又は研究などの他の目的で使用される。HMOの製造は、典型的には、大量の培養を行うことによって達成される。本発明の意味での「製造」及び「製造規模」という用語は、最小容量5Lの培養ブロスでの発酵を定義する。通常、「製造規模」プロセスは、目的の1つ又は複数のHMOを含む大量の調製物を処理し、例えば治療用化合物又は組成物の場合に、臨床試験及び市場供給の需要を満たす量の目的のタンパク質を産生できることによって定義される。大量産生に加えて、製造規模の方法は、振とうフラスコ培養のような単純な実験室規模の方法とは対照的に、攪拌、曝気、栄養素の供給、プロセスパラメータ(pH、温度、溶存酸素圧、背圧など)のモニタリング及び制御のための装置を装備したバイオリアクター(発酵槽)の技術システムの使用によって特徴付けられる。大体において、振とうフラスコ、ベンチトップバイオリアクター、又は本開示の実施例に記載のディープウェルフォーマットなどの実験室規模の方法における発現系の挙動は、バイオリアクターの複雑な環境におけるそのシステムの挙動を予測することを可能にする。
発酵プロセスで使用される適切な細胞培養培地に関しては制限がない。培養培地は、半定義される、即ち、複雑な培地化合物(例えば、酵母エキス、大豆ペプトン、カザミノ酸など)を含み得る、又は複雑な化合物なしで化学的に定義され得る。
「1つ又は複数のHMO」という用語は、HMO産生細胞が、単一のHMO構造(第1のHMO)又は複数のHMO構造(第2、第3のHMOなど)を産生可能性であり得ることを意味する。いくつかの実施形態では、単一のHMOを産生する宿主細胞が好ましい場合があり、他の好ましい実施形態では、複数のHMO構造を産生する宿主細胞が好ましい場合がある。単一のHMO構造を産生する宿主細胞の非限定的な例としては、2’-FL、3-FL、3’-SL、6’-SL、又はLNT-2産生細胞が挙げられる。複数のHMO構造を産生できる宿主細胞の非限定的な例としては、DFL、FSL、LNT、LNnT、LNFP I、LNFP II、LNFP III、LNFP IV、LNFP V、pLNnH産生細胞を挙げることができる。
本発明に関連して「収集」という用語は、発酵の終了後に、産生されたHMOを収集することに関連する。異なる実施形態では、収集は、バイオマス(即ち、宿主細胞)及び培養培地の両方に含まれる、即ち、発酵ブロスをバイオマスから分離する前に/分離せずにHMOを収集することを含み得る。他の実施形態では、産生されたHMOは、バイオマス及び発酵ブロスとは別に、即ち、バイオマスを培養培地(即ち、発酵ブロス)から分離した後に/次に収集され得る。培地からの細胞の分離は、任意の適切なタイプの遠心分離又は濾過などの当業者に周知の任意の方法で行うことができる。培地からの細胞の分離は、発酵ブロスを収集した直後に行ってもよいし、又は発酵ブロスを適切な条件で保存した後の後期に行ってもよい。残りのバイオマス(又は全発酵)からの産生されたHMOの回収には、バイオマス(即ち、産生細胞)からのその抽出が含まれる。この抽出は、当技術分野の任意の適切な方法によって、例えば、超音波処理、煮沸、均質化、リゾチームを使用する酵素溶解、又は凍結及び粉砕によって行うことができる。
発酵からの回収後、HMOは、さらなる処理及び精製が可能である。
発酵によって産生されたHMOの精製は、国際公開第2016095924号パンフレット、同第2015188834号パンフレット、同第2017152918号パンフレット、同第2017182965号パンフレット、米国特許出願公開第20190119314号明細書(すべて参照により組み込まれる)に記載の適切な手順を使用して行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態では、宿主細胞は、いくつかのHMOを産生することができ、1つのHMOは、「産物」HMOであり、他のいくつか/すべてのHMOは、「副産物」HMOである。典型的には、副産物HMOは、主要なHMO前駆体、又は主要なHMOをさらに改変した産物のいずれかである。いくつかの実施形態では、豊富な量の産物HMOを産生し、少量の副産物HMOを産生することが望ましいであろう。本明細書に記載のHMO産生のための細胞及び方法は、定義されたHMOプロファイルを有するHMO産物の制御された産生を可能にし、例えば、一実施形態では、産生されたHMO混合物では、産物HMOがこの混合物の他のHMO(即ち、副産物HMO)と比較してHMOが優勢である、即ち、産物HMOが、他の副産物HMOよりも大量に産生され;他の実施形態では、同じHMO混合物を産生する細胞を、産物HMOよりも大量に1つ又は複数の副産物HMOを産生するように調整することができる。例えば、3-FL、産物HMOの産生中に、多くの場合、かなりの量のDFL、副産物HMOが産生される。本発明の遺伝子改変細胞を用いて、3-FL産物中のDFLのレベルを著しく低下させることができる。
有利なことに、本発明は、産物に対する副産物の比率の減少と、産物(及び/又は全体としてのHMO)の全体的な収率の増加の両方を可能にする。これにより、産物形成に対して副産物形成が少なくなり、産物産生の向上が促進され、産生プロセスと産物回収プロセスの両方の効率が向上し、HMOの優れた製造手順が提供される。
異なる好ましい実施形態では、産物又は副産物HMOとして2’-FL、3-FL、3’-SL、6’-SL、LNT-2、DFL、FSL、LNT、LNnT、DFL、FSL、LNT、LNnT、LNFP I、LNFP II、LNFP III、LNFP IV、LNFP V、pLNnHのいずれか/両方を産生する異なる宿主細胞を選択することができる。好ましい一実施形態では、産物は3-FLであり、副産物はDFLである。別の好ましい実施形態では、産物は2’-FLであり、副産物はDFLである。別の好ましい実施形態では、産物はLNT-2であり、副産物はLNT及びLNFP Iである。
本発明はまた、1つ又は複数のオリゴ糖、好ましくは1つ又は複数のヒト乳オリゴ糖の産生のための、本発明による遺伝子改変細胞又は核酸構築物の使用に関する。一実施形態では、本発明による遺伝子改変細胞又は核酸構築物は、2’-FL、3-FL、DLF、LNT、LNT-II、LNnT、pLNnH、及びpLNH-IIからなる群から選択される特定のHMOの産生に使用される。
特に好ましい実施形態では、本発明による遺伝子改変細胞及び/又は核酸構築物は、2’-FL及び3-FLからなる群から選択される特定のHMOの産生に使用される。
本発明は、以下の非限定的な実施例及び実施形態によってさらに例示される。
[材料及び方法]
特に明記されていない限り、分子生物学の分野で公知である標準的な技術、ベクター、制御配列エレメント、及び他の発現系エレメントが、核酸の操作、形質転換、及び発現に使用される。このような標準的な技術、ベクター、及びエレメントは、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology(1995)(John Wiley&Sons);Sambrook, Fritsch,&Maniatis(eds.),Molecula Cloning(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Berger&Kimmel,Methods in Enzymology 152:Guide to Molecular Cloning Techniques(1987)(Academic Press);Bukhari et al.(eds.),DNA Insertion Elements,Plasmids and Episomes(1977)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Miller,J.H.Experiments in molecular genetics(1972.)(Cold spring Harbor Laboratory Press,NY)で確認することができる。
特に明記されていない限り、分子生物学の分野で公知である標準的な技術、ベクター、制御配列エレメント、及び他の発現系エレメントが、核酸の操作、形質転換、及び発現に使用される。このような標準的な技術、ベクター、及びエレメントは、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology(1995)(John Wiley&Sons);Sambrook, Fritsch,&Maniatis(eds.),Molecula Cloning(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Berger&Kimmel,Methods in Enzymology 152:Guide to Molecular Cloning Techniques(1987)(Academic Press);Bukhari et al.(eds.),DNA Insertion Elements,Plasmids and Episomes(1977)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Miller,J.H.Experiments in molecular genetics(1972.)(Cold spring Harbor Laboratory Press,NY)で確認することができる。
以下に記載される実施形態は、本発明を例示するために選択されたものであり、決して本発明を限定するものではない。
[菌株]
使用した細菌株MDOは、大腸菌(Escherichia coli)K12DH1から構築した。大腸菌(E.coli)K12DH1の遺伝子型は:F-、λ-、gyrA96、recA1、relA1、endA1、thi-1、hsdR17、supE44である。本実施例で利用される菌株を表2に記載する。
使用した細菌株MDOは、大腸菌(Escherichia coli)K12DH1から構築した。大腸菌(E.coli)K12DH1の遺伝子型は:F-、λ-、gyrA96、recA1、relA1、endA1、thi-1、hsdR17、supE44である。本実施例で利用される菌株を表2に記載する。
[培地]
ルリアブロス(LB)培地を、LBブロス粉末、Millers(Fisher Scientific)を使用して調製し、LB寒天プレートを、LB寒天粉末、Millers(Fisher Scientific)を使用して調製した。必要に応じて、アンピシリン((100μg/mL)又は適切な抗生物質)及び/又はクロラムフェニコール(20μg/mL)を加えた。
ルリアブロス(LB)培地を、LBブロス粉末、Millers(Fisher Scientific)を使用して調製し、LB寒天プレートを、LB寒天粉末、Millers(Fisher Scientific)を使用して調製した。必要に応じて、アンピシリン((100μg/mL)又は適切な抗生物質)及び/又はクロラムフェニコール(20μg/mL)を加えた。
最小基礎培地は、組成:NaOH(1g/L)、KOH(2.5g/L)、KH2PO4(7g/L)、NH4H2PO4(7g/L)、クエン酸(0.5g/l)、微量ミネラル溶液(5mL/L)とした。微量ミネラルストック溶液は、ZnSO4
*7H2O 0.82g/L、クエン酸20g/L、MnSO4
*H2O 0.98g/L、FeSO4
*7H2O 3.925g/L、CuSO4
*5H2O 0.2g/Lを有していた。最小基礎培地のpHを5N NaOHで7.0に調整し、オートクレーブにかけた。接種前に、最小基礎培地に1mM MgSO4、4μg/mLチアミン、0.5%の所与の炭素源(グリセロール(Carbosynth))を加えた。チアミン及び抗生物質をろ過滅菌した。すべてのパーセンテージ濃度を、グリセロールの場合はv/vとして表し、グルコースの場合はw/vとして表す。
2-デオキシ-ガラクトースを含むM9プレートは、組成:15g/L寒天(Fisher Scientific)、2.26g/L 5×M9最小塩(Sigma-Aldrich)、2mM MgSO4、4μg/mLチアミン、0.2%グリセロール、及び0.2% 2-デオキシ-D-ガラクトース(Carbosynth)を有していた。
マッコンキーインジケータープレートは、組成:40g/L マッコンキー寒天基礎培地(BD Difco(商標))及び最終濃度1%の炭素源を有していた。
[培養]
特に明記されていない限り、大腸菌(E.coli)株を、0.2%グルコースを含むルリア-ベルターニ(LB)培地で、37℃で攪拌しながら増殖させた。寒天プレートを37℃で一晩インキュベートした。
特に明記されていない限り、大腸菌(E.coli)株を、0.2%グルコースを含むルリア-ベルターニ(LB)培地で、37℃で攪拌しながら増殖させた。寒天プレートを37℃で一晩インキュベートした。
[化学的コンピテント細胞と形質転換]
大腸菌(E.coli)を、LBプレートから0.2%グルコースを含む5mL LBに入れ、OD600が約0.4になるまで37℃で振とうしながら接種した。13.000gで25秒間遠心分離することにより、2mLの培養物を収集した。上清を除去し、細胞ペレットを、600μLの冷TB溶液(10mM PIPES、15mM CaCl2、250mM KCI)に再懸濁した。細胞を氷上で20分間インキュベートした後、13.000gで15秒間ペレット化した。上清を除去し、細胞ペレットを100μLの冷TB溶液に再懸濁した。100μLのコンピテント細胞及び1~10ngのプラスミドDNAを使用してプラスミドの形質転換を行った。細胞及びDNAを、氷上で20分間インキュベートした後、42℃で45秒間熱ショックを与えた。氷上で2分間インキュベートした後、400μL SOC(20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、0.5g/L NaCl、0.186g/L KCI、10mM MgCl2、10mM MgSO4、及び20mMグルコース)を添加し、細胞培養物を、37℃で1時間振とうしながらインキュベートした後、選択プレートにプレーティングした。
大腸菌(E.coli)を、LBプレートから0.2%グルコースを含む5mL LBに入れ、OD600が約0.4になるまで37℃で振とうしながら接種した。13.000gで25秒間遠心分離することにより、2mLの培養物を収集した。上清を除去し、細胞ペレットを、600μLの冷TB溶液(10mM PIPES、15mM CaCl2、250mM KCI)に再懸濁した。細胞を氷上で20分間インキュベートした後、13.000gで15秒間ペレット化した。上清を除去し、細胞ペレットを100μLの冷TB溶液に再懸濁した。100μLのコンピテント細胞及び1~10ngのプラスミドDNAを使用してプラスミドの形質転換を行った。細胞及びDNAを、氷上で20分間インキュベートした後、42℃で45秒間熱ショックを与えた。氷上で2分間インキュベートした後、400μL SOC(20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、0.5g/L NaCl、0.186g/L KCI、10mM MgCl2、10mM MgSO4、及び20mMグルコース)を添加し、細胞培養物を、37℃で1時間振とうしながらインキュベートした後、選択プレートにプレーティングした。
供給業者(ThermoFisher Scientific)が推奨する条件で、プラスミドをTOP10化学コンピテント細胞に形質転換した。
[DNA技術]
QIAprep Spinミニプレップキット(Qiagen)を使用して、プラスミドDNAを大腸菌(E.coli)から単離した。QIAmp DNAミニキット(Qiagen)を使用して、染色体DNAを大腸菌(E.coli)から単離した。PCR産物を、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して精製した。Dream Taq PCRマスターミックス(Thermofisher)、Phusion UホットスタートPCRマスターミックス(Thermofisher)、USER Enzym(New England Biolab)を、供給業者によって推奨されるように使用した。プライマーは、Eurofins Genomics,Germanyから提供された。PCR断片及びプラスミドを、Eurofins Genomicsによって配列決定した。コロニーPCRを、T100(商標)サーマルサイクラー(Bio-Rad)でDream Taq PCRマスターミックスを使用して行った。
QIAprep Spinミニプレップキット(Qiagen)を使用して、プラスミドDNAを大腸菌(E.coli)から単離した。QIAmp DNAミニキット(Qiagen)を使用して、染色体DNAを大腸菌(E.coli)から単離した。PCR産物を、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して精製した。Dream Taq PCRマスターミックス(Thermofisher)、Phusion UホットスタートPCRマスターミックス(Thermofisher)、USER Enzym(New England Biolab)を、供給業者によって推奨されるように使用した。プライマーは、Eurofins Genomics,Germanyから提供された。PCR断片及びプラスミドを、Eurofins Genomicsによって配列決定した。コロニーPCRを、T100(商標)サーマルサイクラー(Bio-Rad)でDream Taq PCRマスターミックスを使用して行った。
[プラスミドの構築]
大腸菌(E.coli)ゲノムへの相同組換えに適した2つのDNA断片及びT1転写ターミネーター配列によって分離された2つのI-SceIエンドヌクレアーゼ部位を含むプラスミドバックボーンを合成した。例えば、1つのプラスミドバックボーンでは、galオペロン(galKでの相同組換えに必要)及びT1転写ターミネーター配列(pUC57::gal)を合成した(GeneScript)。galオペロンの相同組換えに使用するDNA配列は、大腸菌(Escherichia coli)K-12 MG155完全ゲノムGenBank:ID:CP014225.1の配列における塩基対3.628.621~3.628.720及び3.627.572~3.627.671をカバーしていた。相同組換えによる挿入は、galKの949塩基対及びgalK-表現型の欠失をもたらすことになる。同様の方法で、pUC57(GeneScript)、又は2つのI-SceIエンドヌクレアーゼ部位を含み、大腸菌(E.coli)ゲノムへの相同組換えに適した2つのDNA断片とT1転写ターミネーター配列によって分離されたその他の適切なベクターに基づくバックボーンを合成することができる。分子生物学の分野で周知の標準的な技術を、プライマーの設計及び大腸菌(Escherichia coli)K-12 DH1染色体DNAの特定のDNA配列の増幅に使用した。このような標準的な技術、ベクター、及びエレメントは、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology(1995)(John Wiley&Sons);Sambrook,Fritsch,&Maniatis(eds.),Molecular Cloning(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Berger&Kimmel,Methods in Enzymology 152:Guide to Molecular Cloning Techniques(1987)(Academic Press);Bukhari et al.(eds.)で確認することができる。
大腸菌(E.coli)ゲノムへの相同組換えに適した2つのDNA断片及びT1転写ターミネーター配列によって分離された2つのI-SceIエンドヌクレアーゼ部位を含むプラスミドバックボーンを合成した。例えば、1つのプラスミドバックボーンでは、galオペロン(galKでの相同組換えに必要)及びT1転写ターミネーター配列(pUC57::gal)を合成した(GeneScript)。galオペロンの相同組換えに使用するDNA配列は、大腸菌(Escherichia coli)K-12 MG155完全ゲノムGenBank:ID:CP014225.1の配列における塩基対3.628.621~3.628.720及び3.627.572~3.627.671をカバーしていた。相同組換えによる挿入は、galKの949塩基対及びgalK-表現型の欠失をもたらすことになる。同様の方法で、pUC57(GeneScript)、又は2つのI-SceIエンドヌクレアーゼ部位を含み、大腸菌(E.coli)ゲノムへの相同組換えに適した2つのDNA断片とT1転写ターミネーター配列によって分離されたその他の適切なベクターに基づくバックボーンを合成することができる。分子生物学の分野で周知の標準的な技術を、プライマーの設計及び大腸菌(Escherichia coli)K-12 DH1染色体DNAの特定のDNA配列の増幅に使用した。このような標準的な技術、ベクター、及びエレメントは、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology(1995)(John Wiley&Sons);Sambrook,Fritsch,&Maniatis(eds.),Molecular Cloning(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Berger&Kimmel,Methods in Enzymology 152:Guide to Molecular Cloning Techniques(1987)(Academic Press);Bukhari et al.(eds.)で確認することができる。
大腸菌(E.coli)DH1から得られた染色体DNAを用いて、オリゴO261及びO262(表3)を使用してプロモーターPglpFを含む300bpのDNA断片を増幅した。
セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)に由来するmarc遺伝子のコドン最適化バージョンを含む1.197bpのDNA断片を、GeneScriptによって合成した(表5)。marc遺伝子を、オリゴO737及びO738(表3)を使用するPCRによって増幅した。
すべてのPCR断片(プラスミドバックボーン、エレメントを含むプロモーター、及びmarc遺伝子)を精製し、プラスミドバックボーン、プロモーターエレメント()、及びmarc含有DNA断片を構築した。プラスミドを、標準的なUSERクローニングによってクローニングした。任意の適切なプラスミドのクローニングは、任意の標準的なDNAクローニング技術を使用して行うことができる。プラスミドをTOP10細胞に形質転換し、100μg/mLアンピシリン(又は適切な抗生物質)及び0.2%グルコースを含むLBプレートで選択した。構築されたプラスミドを精製し、プロモーター配列及びmarc遺伝子の5’末端を、DNAシークエンシング(MWG Eurofins Genomics)によって検証した。このようにして、marc遺伝子に連結された目的の任意のプロモーターを含む遺伝子カセットを構築した。
[菌株の構築]
使用する細菌株MDOを、大腸菌(Escherichia coli)K-12DH1から構築した。大腸菌(E.coli)K-12DH1遺伝子型は、F-、λ-、gyrA96、recA1、relA1、endA1、thi-1、hsdR17、supE44である。大腸菌(E.coli)K-12DH1遺伝子型に加えて、MDOに次の改変を行った:lacZ:1.5kbpの欠失、lacA:0.5kbpの欠失、nanKETA:3.3kbpの欠失、melA:0.9kbpの欠失、wcaJ:0.5kbpの欠失、mdoH:0.5kbpの欠失、及びgmd遺伝子の上流へのPlacプロモーターの挿入。
使用する細菌株MDOを、大腸菌(Escherichia coli)K-12DH1から構築した。大腸菌(E.coli)K-12DH1遺伝子型は、F-、λ-、gyrA96、recA1、relA1、endA1、thi-1、hsdR17、supE44である。大腸菌(E.coli)K-12DH1遺伝子型に加えて、MDOに次の改変を行った:lacZ:1.5kbpの欠失、lacA:0.5kbpの欠失、nanKETA:3.3kbpの欠失、melA:0.9kbpの欠失、wcaJ:0.5kbpの欠失、mdoH:0.5kbpの欠失、及びgmd遺伝子の上流へのPlacプロモーターの挿入。
marc遺伝子及びT1転写ターミネーター配列に連結されたプロモーターを含む発現カセットの挿入を、Herring et al.(Herring,C.D.,Glasner,J.D.and Blattner,F.R. (2003).Gene(311).153-163)に記載のように、本質的にGene Gorgingによって行った。簡単に説明すると、ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを、MDOに同時形質転換し、0.2%グルコース、アンピシリン(100μg/mL)、又はカナマイシン(50mg/mL)及びクロラムフェニコール(20μg/mL)を含むLBプレートで選択した。単一コロニーを、クロラムフェニコール(20μg/mL)及び10μLの20%L-アラビノースを含む1mLのLBに接種し、37℃で7~8時間振とうしながらインキュベートした。次に、大腸菌(E.coli)のgalK遺伝子座に組み込むために、細胞をM9-DOGプレートにプレーティングし、37℃で48時間インキュベートした。MM-DOGプレート上に形成された単一コロニーを、0.2%グルコースを含むLBプレート上に筋を付け直して、37℃で24時間インキュベートした。マッコンキー-ガラクトース寒天プレート上で白く見え、アンピシリン及びクロラムフェニコールの両方に感受性のあるコロニーは、ドナー及びヘルパープラスミドを喪失し、galK遺伝子座への挿入を含むと予想した。galK部位への挿入を、プライマーO48及びO49(表3)を使用してコロニーPCRによって同定し、挿入されたDNAを、シークエンシング(Eurofins Genomics,Germany)によって検証した。
大腸菌(E.coli)染色体DNAの他の遺伝子座への遺伝子カセットの挿入は、異なる選択マーカー遺伝子を使用して同様の方法で行った。
[ディープウェルアッセイ(DWA)]
DWAを、Lv et al(Bioprocess Biosyst Eng(2016)39:1737-1747)に元々記載されているように行い、本発明の目的のために最適化した。
DWAを、Lv et al(Bioprocess Biosyst Eng(2016)39:1737-1747)に元々記載されているように行い、本発明の目的のために最適化した。
より具体的には、実施例に開示される菌株を、4日間のプロトコルを使用して24のディープウェルプレートでスクリーニングした。最初の24時間の間に、細胞を高密度に増殖させ、次の72時間で、細胞を、遺伝子発現及び産物形成の誘導を可能にする培地に移した。具体的には、1日目に、硫酸マグネシウム、チアミン、及びグルコースを添加した基礎最小培地を使用して、新鮮な接種材料を調製した。調製した培養物を34℃、700rpmで振とうしながら24時間インキュベートした後、細胞を、硫酸マグネシウム及びチアミンを添加した新しい基礎最小培地(2ml)に移し、20%グルコース溶液(1μl)及び10%ラクトース溶液(0.1ml)の最初のボーラスを加え、次に炭素源として50%スクロース溶液を細胞に供給した。新しい培地の接種後、細胞を28℃、700rpmで72時間振とうした。変性及びその後の遠心分離の後、上清をHPLCによって分析した。
全サンプルの分析のために、煮沸によって調製された細胞溶解物を、4,700rpmでの10分間の遠心分離によってペレット化した。上清中のHMO濃度を、HPLC又はHPAC法によって決定した。
[結果]
[実施例1.marc遺伝子を発現する3-FL生産のための大腸菌(Escherichia coli)のエンジニアリング]
大腸菌(Escherichia coli)K-12(DH1)MDO株を操作して、目的の異種遺伝子を発現させることができる。例えば、MPA5株は、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、futA、及び結腸酸遺伝子(gmd-fcl-gmm-wcal-cpsB-cpsG)を過剰発現する3-FL産生株である。単一コピーにおけるmarc遺伝子に連結されたプロモーターエレメント(PglpF)を含む発現カセットをMPA5バックグラウンド株に挿入すると、MPA6株が得られ、(i)3-FLが培地画分に比較的多く、且つ(ii)3-FLが細胞内に比較的少なかった(図1)。
[実施例1.marc遺伝子を発現する3-FL生産のための大腸菌(Escherichia coli)のエンジニアリング]
大腸菌(Escherichia coli)K-12(DH1)MDO株を操作して、目的の異種遺伝子を発現させることができる。例えば、MPA5株は、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、futA、及び結腸酸遺伝子(gmd-fcl-gmm-wcal-cpsB-cpsG)を過剰発現する3-FL産生株である。単一コピーにおけるmarc遺伝子に連結されたプロモーターエレメント(PglpF)を含む発現カセットをMPA5バックグラウンド株に挿入すると、MPA6株が得られ、(i)3-FLが培地画分に比較的多く、且つ(ii)3-FLが細胞内に比較的少なかった(図1)。
[実施例2.marc遺伝子を発現する2’-FL産生のための大腸菌(Escherichia coli)のエンジニアリング]
大腸菌(Escherichia coli)K-12(DH1)MDO株を操作して、目的の異種遺伝子を発現させることができる。例えば、MPA1株は、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、futC、及び結腸酸遺伝子(gmd-fcl-gmm-wcal-cpsB-cpsG)を過剰発現する2’-FL産生株である。marc遺伝子に連結されたプロモーターエレメント(PglpF)を含む発現カセットをMPA1染色体DNAに挿入すると、MPA7株が得られ、(i)2’-FLの量が培地画分に比較的多く、(ii)2’-FLの量が細胞内に比較的少なく(図2A)、且つ(iii)光学密度が600nmで比較的低かった(図2B)。
大腸菌(Escherichia coli)K-12(DH1)MDO株を操作して、目的の異種遺伝子を発現させることができる。例えば、MPA1株は、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、futC、及び結腸酸遺伝子(gmd-fcl-gmm-wcal-cpsB-cpsG)を過剰発現する2’-FL産生株である。marc遺伝子に連結されたプロモーターエレメント(PglpF)を含む発現カセットをMPA1染色体DNAに挿入すると、MPA7株が得られ、(i)2’-FLの量が培地画分に比較的多く、(ii)2’-FLの量が細胞内に比較的少なく(図2A)、且つ(iii)光学密度が600nmで比較的低かった(図2B)。
Claims (13)
- 1つ又は複数のヒト乳オリゴ糖(HMO)を産生することができる遺伝子改変細胞であって、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む、遺伝子改変細胞。
- 前記オリゴ糖が、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ジフコシルラクトース(DFL)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、ラクト-N-トリオース-2(LNT-2)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP I)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFP II)、ラクト-N-フコペンタオースIII(LNFP III)、ラクト-N-フコペンタオースIV(LNFP IV)、及びラクト-N-フコペンタオースV(LNFP V)、及び/又はパラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(pLNnH)のリストから選択される、請求項1に記載の遺伝子改変細胞。
- 大腸菌(Escherichia coli)である、請求項1又は2に記載の遺伝子改変細胞。
- 前記組換え核酸の発現を調節するための核酸配列を含む組換え調節エレメントをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞。
- 前記組換え核酸の発現を調節するための前記調節エレメントが、lacプロモーター、Plac又はglpプロモーター、PglpFなどのプロモーター配列を含む、請求項4に記載の遺伝子改変細胞。
- 配列番号1のタンパク質をコードする核酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有するその機能的相同体を含む核酸構築物であって、配列番号1のタンパク質をコードする前記核酸配列が、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有する、核酸構築物。
- 調節エレメントを含む核酸配列をさらに含む、請求項6に記載の核酸構築物。
- 前記調節エレメントが、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列の発現を調節する、請求項7に記載の核酸構築物。
- 前記組換え核酸の発現を調節するための前記調節エレメントが、lacプロモーター、Plac又はglpプロモーター、PglpFなどの発現エレメントである、請求項7又は8に記載の核酸構築物。
- 1つ又は複数のオリゴ糖の産生のための方法であって:
(i)HMOを産生することができる遺伝子改変細胞を提供するステップであって、前記細胞が、配列番号1のタンパク質をコードする組換え核酸、又はアミノ酸配列が配列番号1と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一であるその機能的相同体を含む、ステップ;
(ii)(i)による細胞を適切な細胞培養培地で培養して、前記組換え核酸又は前記その機能的相同体を発現させるステップ;
(iii)ステップ(ii)で産生された1つ又は複数のHMOを収集するステップを含む、方法。 - 1つ又は複数のオリゴ糖、好ましくは1つ又は複数のヒト乳オリゴ糖の産生のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞又は請求項6~8のいずれか一項に記載の核酸構築物の使用。
- 2’-FL、3-FL、DLF、LNT、LNT-II、LNnT、pLNnH、及びpLNH-IIからなる群から選択されるHMOの産生のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞又は請求項6~9のいずれか一項に記載の核酸構築物の使用。
- 2’-FL及び3-FLからなる群から選択されるHMOの産生のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞又は請求項6~9のいずれか一項に記載の核酸構築物の使用。
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