JP2023511391A - ケラチン繊維の連続的製造 - Google Patents

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Abstract

本開示は、ケラチン繊維の製造方法、例えば、連続的製造方法に関する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製造方法は、ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成することと、上記第1の繊維を延伸し、且つ上記第1の繊維を酸化して、処理された繊維を形成することと、1回以上、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化することと、上記処理された繊維を硬化させて、上記ケラチン繊維を形成することとを含んでいてもよい。かかる製造方法は、高延伸倍率のケラチン繊維の製造に有用である場合がある。

Description

連邦政府の助成による研究または開発の表示
この発明は、米国農務省、国立食糧農業研究所によって授与された助成金第2019-67021-29940号の下、政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月21日出願の米国仮出願第62/963,968号の優先権を主張し、上記出願の内容はその全体が本明細書に援用される。
本開示はケラチン繊維の連続的な製造方法に関する。かかる製造方法は、例えば、高い延伸倍率のケラチン繊維の製造に有用な場合がある。
グリーン合成技術による高品位材料の製造に関する研究はますます注目を集めている[1~3]。同時に、持続可能なポリエステルを製造するための再生可能なモノマーの使用などの、グリーン且つ持続可能な手法による日常使用向けの汎用製品の製造も普及しつつある[4、5]。しかしながら、これらの持続可能なポリマーの多くは分解性がほとんどない[6]。かかる材料の長期的な蓄積は必然的に環境及びヒトの健康に影響を与えることとなる。合成高分子がナノ粒子やミクロ粒子になった後に、大気及び海洋中を循環することが報告されている[7]。例えば、北極においてすら、多くの地域で降水にポリマー粒子が含まれることが判明している[8]。最近、北極において、プラスチック粒子が雪と共に空から落下してくることが明らかになっている。これらのプラスチック粒子は必然的に人体中に入り、蓄積する[9]。最近の研究により、合成ポリマー粒子が、がん、慢性疾患、及び生殖器系の損傷などの、ヒトの健康に対するさまざまな害の原因となる可能性があることが明らかになっている[10]。したがって、廃棄物を利用して、分解性が良好な高品質の製品を開発することも、将来的に同じように注目される必要があり[11]、特に環境汚染に悩まされる可能性のある繊維分野ではそうである。紡織繊維に関しては、全世界で毎年8,000万トンを超える合成繊維が製造されている[12]。ほとんどすべての合成繊維が石油系であり、環境中では分解性がほとんどない[13]。したがって、石油系繊維に代わる代替品を見出すことが望ましい[14、15]。代替品は持続可能であり、環境に対して責任を持ったものであり、且つ価格が手頃である必要がある。
ケラチン質廃棄物の利用に関する研究は数十年前に開始されたが、抽出の際の一次構造に対する損傷及びケラチン材料の再生における二次構造の回復に起因して、高品質の再生製品はほとんど開発されていない。再生ケラチン製品の中でも、繊維は、繰り返えされる洗濯に対する耐性及び高い靭性を含む、高品質の規格を有する。
本明細書ではケラチン繊維の製造方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成することと;上記第1の繊維を延伸し、且つ上記第1の繊維を酸化して、処理された繊維を形成することと;1回以上、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化することと;上記処理された繊維を硬化させて、上記ケラチン繊維を形成することとを含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の延伸倍率は少なくとも約500%である。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の延伸倍率は約800%~約1000%である。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の延伸倍率は約1500%である。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の径は約5マイクロメートル~約30マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の径は約15マイクロメートルである。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は少なくとも約70%のケラチンを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は少なくとも約85%のケラチンを含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の引張強さは約0.8g/デニールより大きい。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の引張強さは約1g/デニール~約2g/デニールである。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維のひずみは約5%より大きい。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維のひずみは約10%~約30%である。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維のひずみは約15%である。いくつかの実施形態において、上記ひずみを測定する前に上記ケラチン繊維は乾燥されている。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維の靭性は約15J/cmよりも高い。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液の稠度係数(consistency coefficient)(K)は約2Pa・s~約6Pa・sである、但し、上記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液の稠度係数(K)は約4.2Pa・sである、但し、上記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液の流動性指数は約0.9~約0.94である、但し、上記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液の流動性指数は約0.91である、但し、上記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は還元剤を含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は電解質を含む。いくつかの実施形態において、上記電解質は、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、クエン酸塩、炭酸塩、リン酸塩、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液はケラチン質材料から調製される。
いくつかの実施形態において、本製造方法は、上記ケラチン溶液を調製することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液を調製することは、ケラチン質材料からケラチンを抽出して、抽出ケラチンを形成することと;上記抽出ケラチンを、還元剤を含む水溶液に溶解して、上記ケラチン溶液を形成することとを含む。いくつかの実施形態において、上記水溶液はSDSをさらに含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン質材料は、動物の毛、角、及び羽毛の1種以上を含む。いくつかの実施形態において、上記毛は、羊毛、ラクダ毛、アルパカ毛、ウサギ毛、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、上記羽毛は、アヒルの羽毛、ガチョウの羽毛、ニワトリの羽毛、またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は、上記ケラチン質材料中のジスルフィド架橋の量と比較して、少なくとも70%のジスルフィド架橋を含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は、上記ケラチン質材料中のベータシート結晶化度の量と比較して、ベータシート結晶化度の少なくとも85%を含む。
いくつかの実施形態において、上記還元剤はチオール基を含む。いくつかの実施形態において、上記還元剤は、メルカプトエタノール、システイン、ジチオトレイトール、1,2-エタンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビスチオグリコラート、またはそれらの組み合わせを含む。
いくつかの実施形態において、ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出す上記ステップは、紡糸口金を使用して上記ケラチン溶液を押し出すことを含む。いくつかの実施形態において、上記紡糸口金は孔を備え、上記孔の径は約50マイクロメートルである。
いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、硫酸ナトリウム、硫酸亜鉛、及び酢酸緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液のpHは約2である。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、組成の約15% w/wの量の硫酸ナトリウム、組成の約5% w/wの量の硫酸亜鉛、及びpHが2の酢酸緩衝液を含む。
いくつかの実施形態において、酸化のステップは、過酸化物、ハロゲンオキソ酸またはその塩、高原子価金属塩、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される酸化剤を含む酸化性溶液に、上記繊維を曝露することを含む。いくつかの実施形態において、上記過酸化物は、アルカリ金属過酸化物、アルカリ土類金属過酸化物、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、上記酸化剤は過ヨウ素酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、上記酸化性溶液は緩衝液をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記酸化性溶液は酢酸緩衝液をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記酸化性溶液のpHは約2である。いくつかの実施形態において、上記酸化性溶液の温度は約35℃である。
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化するステップは2回繰り返される。いくつかの実施形態において、本製造方法は、上記処理された繊維を硬化させる前に、上記処理された繊維を延伸することをさらに含む。
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を硬化させることは、上記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露することを含む。いくつかの実施形態において、上記界面活性剤は、ラウリル硫酸アンモニウム、SDS、ラウレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、パーフルオロノナン酸塩、パーフルオロオクタン酸塩、(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸塩)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルベタイン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液は酢酸緩衝液をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液のpHは約2である。いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液は約40℃の温度である。
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を硬化させることは、上記処理された繊維を巻取り、且つ上記処理された繊維を酸化することを含む。
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を巻取り、且つ上記処理された繊維を酸化する前に、上記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露することが行われる。いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を巻取ることは、約15メートル/分の速度で行われる。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は約85℃で約1時間乾燥される。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は約125℃で約1時間アニールされる。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は乾燥された後にアニールされる。
いくつかの実施形態において、本製造方法は連続的な製造方法である。
いくつかの実施形態において、本製造方法は、上記ケラチン繊維を酸化糖を含む溶液に曝露することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維は、酸化糖を含む上記溶液に約3~約25時間曝露される。いくつかの実施形態において、上記酸化糖はスクロースポリアルデヒドである。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維を酸化糖を含む溶液に曝露するステップは、上記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露する前に実施される。
本明細書には、本明細書に記載のいずれかの製造方法によって製造されたケラチン繊維も記載される。
いくつかの実施形態において、本明細書では、用語「約」は、おおよそ、~の辺り、大まかに、または概略を意味するために使用される。用語「約」が数値範囲と共に使用される場合、「約」は、記載された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般的には、本明細書では、用語「約」は、数値を、記載された値の上下に10%の偏差の幅で変更するために使用される。
別段の定義がなされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本発明で使用するための方法及び材料が本明細書に記載され;その他の、当技術分野で公知の好適な方法及び材料も使用することができる。上記材料、方法、及び実施例は単に例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、データベースエントリ、及び他の引用文献は、それらの全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含む本明細書が優先することとなる。
段階的な酸化及び延伸を使用する湿式紡糸ラインの図である。 レーン1:標準タンパク質マーカーを含む;レーン2:再生ケラチンを含む;レーン3:ニワトリの羽毛を含む、還元SDS-PAGEゲルである。 ラマンスペクトルを用いた、ニワトリの羽毛と紡糸ケラチン繊維とのケラチン中のジスルフィド結合の比較である。 HPLCによって測定した、種々の酸化段階における、制御されたジスルフィド結合の構築によるケラチン繊維中のジスルフィド結合の回復率を示す図である。 ケラチン繊維の紡糸性に対する制御されたジスルフィド結合の構築の効果を示す図である。連続紡糸ライン上での段階的な酸化及び延伸を用いて、ジスルフィド結合の構築の精密な制御が達成された。 繊維中のジスルフィド結合の回復率と最高延伸倍率との関係を示す図である。 最高延伸倍率での紡糸ケラチン繊維のモルフォロジーを示す(スケールバー=50μm)。 制御されたジスルフィド結合の構築を伴う連続紡糸ライン上でのケラチン繊維のモルフォロジーの変化を示す図である。 ケラチン繊維製造用の連続ラインを示す。 紡糸ケラチン繊維を示す。 羽枝及び連続紡糸ケラチン繊維の一般的な応力-ひずみ曲線を示すプロットである。 高度な撚糸に耐性を示したケラチン繊条である。 ニワトリの羽毛及びケラチン繊維のXRDスペクトルを示す図である。 ニワトリの羽毛及びケラチン繊維の13C NMRスペクトル(170ppm付近)のデコンボリューションを示す図である。
ケラチン質廃棄物、特に家禽の羽毛は、繊維を製造するために使用することができる、豊富に存在し、安全で、費用対効果が高く、且つ容易に入手可能な材料である[16]。すべての家禽の中で、ニワトリの消費量が全世界で最大である[17]。全世界の年間のニワトリの消費量は約6500万トン、その後に発生すニワトリの羽毛は500万トンで[18]、ニワトリの羽毛からのタンパク質繊維の潜在的な生産量は、羊毛及び絹の両方の現在の生産量を既に2.5倍上回っている。ニワトリの羽毛はまた、タンパク質(ケラチン)に富み、その含有量が90~92%と高い[19]。羽毛ケラチンは、直線的な高分子骨格を有し、平均分子量が10kDaを超えており[20]、繊維の紡糸向けの分子の規格を満たしている。羽毛ケラチンは、約7%のシステインが架橋部位として機能して、良好な引張特性及び水に対する安定性を有すると予想される[21]。羽毛ケラチンから製造される繊維は、羊毛及び絹の化学構造と類似した化学構造に起因して、滑らかな触感、水分透過性、及び断熱性を有する可能性が非常に高い[15]。
連続的な繊維の製造が成功しないのは、羽毛からのケラチン抽出が困難であること、ケラチンが完全には再溶解しないこと、タンパク質の分子鎖のアラインメントが制限されること、及びジスルフィド架橋の回復が非効率的であることに起因する可能性がある。長期にわたり、強アルカリ溶液を使用してケラチンを溶解及び抽出していた[22]。しかしながら、高いpHによって、タンパク質の骨格が加水分解されるのみならず、ケラチン上のスルフヒドリル基の量が減少する場合もある[23、24]。タンパク質骨格が損傷を受けること及び硫黄基が減少することにより、高品質の繊維を製造することが困難になる可能性がある。廃棄物からケラチンを抽出するためにイオン性液体が使用されてきた[25、26]。最近は、紡糸用のケラチンを溶解するためにイオン性液体が使用された。しかしながら、得られた繊維の特性は満足できるものではなかった[27]。このように機械的特性が低い理由の一つは、ケラチンが溶解性に乏しいことにある。液体がイオン性相互作用及び水素結合を遮断することが可能であるとしても、ケラチン分子間のジスルフィド結合及び疎水性相互作用を遮ることはできない。非破壊的な抽出システムが開発され、このシステムにより実験室規模でニワトリケラチン繊維が再生された[28]。但し、かかる繊維の紡糸には、ジスルフィド結合及び二次構造を効率的に再生させる技法が欠けていた。その結果、ケラチン繊維の紡糸性は良好ではなかった。また、上記再生繊維の延伸性も著しく制限されていた。上記再生繊維の直線性は低く、このことによってケラチン骨格間の距離が長くなり、分子間ジスルフィド架橋の形成の機会が低下した。得られた繊維は、径が大きく、強度が低く、且つ可撓性に乏しかった。上記再生繊維の引張強さは元のニワトリの羽毛のわずか50%であり、ひずみはわずか4%であった。さらに、上記再生ケラチン繊維は、ニワトリの羽毛の良好な湿潤特性を受け継がなかった。ケラチン質廃棄物からの繊維の製造に関する研究は1940年代に開始されたが[29]、高品質の純粋なケラチンの再生繊維を連続的に製造するために開発された有効な製造方法はほとんどなかった。繊維は、応力が100Mpaを超え、ひずみが10%を超えることが望ましい。これを達成するために、ほとんどの研究が、特性を改善するための、後架橋またはPVAやセルロースなどの高性能ポリマーのケラチン繊維中への添加のいずれかに焦点を当てている[27、30~33]。
したがって、本出願は、ケラチン繊維及び該ケラチン繊維の製造方法を提供する。かかる繊維としては、段階的な酸化及び延伸を経る連続的ライン上で製造されたケラチン繊維を挙げることができる。繊維の段階的な酸化及び延伸の結果、制御されたジスルフィド架橋の構築、二次構造の最適な回復、十分な機械的特性、及びケラチン繊維の大規模な製造が可能であることのうちの1つ以上が可能になる。例えば、本再生ケラチン繊維の特性は、ニワトリの羽毛の特性に近いものとすることができる。さらに、安全で安価な化学薬品の使用及びリサイクルを通じて、本明細書に開示の連続的なケラチン繊維の製造は、持続可能であり、環境に対して責任を持ったものであり、且つ価格が手頃である。二次構造及びジスルフィド結合の効率的な回復を経る連続的なケラチン繊維の製造は、本製造方法における有害物質の使用及び発生を最小限に抑えることができ、ケラチン質廃棄物の利用のための新たなウインドウを開くことが可能である。
本明細書では、「ケラチン繊維」とは、少なくとも約70%のケラチンを含む繊維である。本明細書では、用語「繊維」または「繊条繊維」とは、糸条に紡糸する、あるいは、接着によって、または製織、編成、紐組み、フェルティング、撚糸、もしくはウェビングを含むさまざまなプロセスで交絡させることによって織物にすることが可能であり、且つ繊維製品の基本的な構造要素である材料の単位を意味する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のケラチン繊維は、少なくとも約70%のケラチンを有する。例えば、本ケラチン繊維は、約70%~約99%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約85%、約70%~約80%、約70%~約75%、または約95%~約99%、約90%~約99%、約85%~約99%、約80%~約99%、約75%~約99%、または約75%~約95%のケラチンを有していてもよい。例えば、本ケラチン繊維は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%のケラチンを有していてもよい。
いくつかの実施形態において、ケラチン繊維の製造方法は、ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成することと;上記第1の繊維を延伸し、且つ上記第1の繊維を酸化して、処理された繊維を形成することと;1回以上、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化することと;上記処理された繊維を硬化させて、上記ケラチン繊維を形成することとを含む。いくつかの実施形態において、本製造方法は連続的な製造方法である。
本明細書に記載されるケラチン溶液は、ケラチン、例えば、抽出ケラチンを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、及び/または還元剤をさらに含む。本明細書に記載される還元剤は、チオール系の基、例えば、モノチオール及びジチオールを含んでいてもよい。かかる還元剤の非限定的な例としては、メルカプトエタノール、システイン、ジチオトレイトール、1,2-エタンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、及びエチレングリコールビスチオグリコラートが挙げられる。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、上記ケラチンの約0.5%~約3% w/w、例えば、上記ケラチンの約0.5%~約2.5% w/w、約0.5%~約2% w/w、約0.5%~約1.5% w/w、約0.5%~約1% w/w、約2.5%~約3% w/w、約2%~約3% w/w、約1.5%~約3% w/w、約1%~約3% w/w、約1.5%~約2.5% w/w、または約1.75%~約2.25% w/wの濃度の還元剤を含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、上記ケラチンの約1.4% w/w、約1.6% w/w、約1.8% w/w、約2% w/w、約2.2% w/w、約2.4% w/w、約2.6% w/w、または約2.8% w/wの濃度の還元剤を含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、該溶液の約20%~約35% w/w、例えば、該溶液の約20%~約25% w/w、約20%~約30% w/w、約30%~約35% w/w、または約25%~約35% w/wの抽出ケラチンを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、該溶液の約25%~約30% w/w、または約26%~約28% w/wの抽出ケラチンを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、該溶液の約24% w/w、約25% w/w、約26% w/w、約27% w/w、約28% w/w、約29% w/w、または約30% w/wの抽出ケラチンを含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液はSDSを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、該溶液の約5%~約15% w/w、例えば、該溶液の約5%~約8% w/w、約5%~約10% w/w、約5%~約12% w/w、約12%~約15% w/w、約10%~約15% w/w、約8%~約15% w/w、または約8%~約12% w/wのSDSを含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、該溶液の約5% w/w、約6% w/w、約7% w/w、約8% w/w、約9% w/w、約10% w/w、約11% w/w、約12% w/w、約13% w/w、約14% w/w、または約15% w/wのSDSを含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液のpHは、約7~約10、例えば、約7~約8、約7.5~約8.5、約8~約9、約8.5~約9.5、または約9~約10となるように調整される。所望のpHを維持するのに適した任意の緩衝液を使用することができる。かかる緩衝液の非限定的な例としては、炭酸塩-重炭酸塩緩衝液、グリシン-水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸ナトリウム緩衝液、TRIZMA(登録商標)緩衝液(例えば、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール緩衝液)、及びジエタノールアミン緩衝液が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は、約0.1M~約0.3M、例えば、約0.1M~約0.15M、約0.1M~約0.2M、約0.1M~約0.25M、約0.25M~約0.3M、約0.2M~約0.3M、約0.15M~約0.3M、約0.15M~約0.2M、約0.18M~約0.22M、または約0.2M~約0.25Mの緩衝液を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のケラチン溶液中の還元剤の量は、該ケラチンが完全に溶解し、且つ/または分子の絡み合いが低下するように最適化される。いくつかの実施形態において、分子の絡み合いの程度は、流動性指数(n)によって示され、nは、回転レオメータを用いて剪断応力を測定することによって求めることができる(式1を参照のこと)。上記ケラチン溶液の稠度係数(K)は、溶液中のポリマー粘度に正比例するが、これも回転レオメータを用いて剪断応力を測定することによって求めることができる。
式1:τ=Kγ
(式中、γは0~1000s-1の範囲で測定したせん断速度(s-1)である)
いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液の流動性指数は、約0.8~約0.95、例えば、約0.8~約0.82、約0.8~約0.84、約0.8~約0.86、約0.8~約0.88、約0.8~約0.9、約0.8~約0.92、約0.8~約0.94、約0.92~約0.95、約0.9~約0.95、約0.88~約0.95、約0.86~約0.95、約0.84~約0.95、約0.82~約0.95、約0.88~約0.92、または約0.90~約0.94である。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液の流動性指数は、約0.88、約0.89、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、または約0.95である。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は約25℃であり、剪断応力の測定の際には、約18% w/wの抽出ケラチンを含む。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液の稠度係数(K)は、約2Pa・s~約6Pa・s、例えば、約2Pa・s~約6Pa・s、約3Pa・s~約6Pa・s、約4Pa・s~約6Pa・s、約5Pa・s~約6Pa・s、約4Pa・s~約6Pa・s、約3Pa・s~約6Pa・s、約3Pa・s~約5Pa・s、約3.5Pa・s~約5.5Pa・s、約3.5Pa・s~約4.5Pa・s、または約4Pa・s~約4.5Pa・sである。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液は約25℃であり、剪断応力の測定の際には、約18% w/wの抽出ケラチンを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製造方法は、上記ケラチン溶液、例えば、本明細書に記載されるケラチン溶液のいずれかを調製することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン溶液を調製することは、ケラチン質材料からケラチンを抽出して、抽出ケラチンを形成することと;上記抽出ケラチンを、還元剤、例えば、本明細書に記載の還元剤のいずれかを含む水溶液に溶解して、上記ケラチン溶液を形成することとを含む。
いくつかの実施形態において、ケラチンは、任意のケラチン質材料、例えば、ケラチンを含む材料から抽出することができる。ケラチン質材料の非限定的な例としては、毛、角、及び羽毛が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記ケラチン質材料としては、羊毛、ラクダ毛、アルパカ毛、ウサギ毛、アヒルの羽毛、ガチョウの羽毛、ニワトリの羽毛、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、ケラチン質材料からケラチンを抽出し、抽出ケラチンを形成するステップは、ケラチン質材料を抽出溶液に曝露することを含む。上記抽出溶液は、SDS、尿素、及び還元剤のうちの1種以上を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、上記抽出溶液はSDSを含む。いくつかの実施形態において、上記抽出溶液は、該溶液の約5%~約15% w/w、例えば、該溶液の約5%~約8% w/w、約5%~約10% w/w、約5%~約12% w/w、約12%~約15% w/w、約10%~約15% w/w、約8%~約15% w/w、または約8%~約12% w/wのSDSを含む。いくつかの実施形態において、上記抽出溶液は、該溶液の約5% w/w、約6% w/w、約7% w/w、約8% w/w、約9% w/w、約10% w/w、約11% w/w、約12% w/w、約13% w/w、約14% w/w、または約15% w/wのSDSを含む。
いくつかの実施形態において、上記抽出溶液は、約1M~約3M、例えば、約1M~約1.5M、約1M~約2M、約1M~約2.5M、約2.5M~約3M、約2M~約3M、約1.5M~約3M、約1.5M~約2M、約1.8M~約2.2M、または約2M~約2.5Mの尿素を含む。
いくつかの実施形態において、上記抽出溶液は、還元剤、例えば、本明細書に記載の還元剤のいずれかを含む。いくつかの実施形態において、上記抽出溶液は、該溶液の約5%~約15% w/w、例えば、該溶液の約5%~約8% w/w、約5%~約10% w/w、約5%~約12% w/w、約12%~約15% w/w、約10%~約15% w/w、約8%~約15% w/w、または約8%~約12% w/wの還元剤を含む。いくつかの実施形態において、上記抽出溶液は、該溶液の約5% w/w、約6% w/w、約7% w/w、約8% w/w、約9% w/w、約10% w/w、約11% w/w、約12% w/w、約13% w/w、約14% w/w、または約15% w/wの還元剤を含む。いくつかの実施形態において、上記還元剤はシステインである。
いくつかの実施形態において、上記抽出溶液のpHは、約9~約11.5、例えば、約9~約11、約9~約10.5、約9~約10、約11~約11.5、約10.5~約11.5、約10~約11.5、約9.5~約11.5、または約10~約11となるように調整される。いくつかの実施形態において、上記抽出溶液のpHは、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、または約11.5となるように調整される。
いくつかの実施形態において、ケラチン質材料からケラチンを抽出して、抽出ケラチンを形成する上記ステップは、ケラチン質材料を抽出溶液に一定期間曝露することを含む。いくつかの実施形態において、上記期間は、約8時間~約15時間、例えば、約8時間~約9時間、約8時間~約10時間、約8時間~約11時間、約8時間~約12時間、約8時間~約13時間、約8時間~約14時間、約14時間~約15時間、約13時間~約15時間、約12時間~約15時間、約11時間~約15時間、約10時間~約15時間、約9時間~約15時間、約10時間~約14時間、または約11時間~約13時間である。いくつかの実施形態において、上記期間は、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、または約15時間である。
いくつかの実施形態において、上記抽出溶液の温度は、約60℃~約80℃、例えば、約60℃~約65℃、約60℃~約70℃、約60℃~約75℃、約75℃~約80℃、約70℃~約80℃、約65℃~約80℃に保持される。いくつかの実施形態において、上記抽出溶液の温度は、約65℃、約66℃、約67℃、約68℃、約70℃、約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、または約75℃に保持される。
いくつかの実施形態において、ケラチン質材料からケラチンを抽出して、抽出ケラチンを形成する上記ステップは、上記ケラチン質材料を含む抽出溶液を遠心分離して、ケラチン質材料を含む遠心分離抽出溶液を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記ケラチン質材料を含む遠心分離抽出溶液の上清を、任意且つ適宜の酸(例えば塩酸)を用いて等電点に調整する。いくつかの実施形態において、上記ケラチン質材料を含む遠心分離抽出溶液の上清に硫酸ナトリウムを添加して、抽出ケラチンを沈殿させる。いくつかの実施形態において、上記抽出ケラチンを洗浄して、不純物を除去する。いくつかの実施形態において、上記抽出ケラチンを真空乾燥する。
本明細書に記載されるケラチン溶液は、該ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成するステップの前に紡糸ライン上に設置することができる。上記紡糸ラインは、任意且つ適宜の紡糸ライン、例えば湿式紡糸ラインであってよい。いくつかの実施形態において、ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出す上記ステップは、紡糸口金を使用して上記ケラチン溶液を押し出すことを含む。例えば、上記ケラチン溶液は、紡糸口金を使用して上記第1の溶液中に押し出される。いくつかの実施形態において、上記紡糸口金は1つ以上の孔を備え、上記孔の径は約50マイクロメートルである。
いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は電解質を含む。好適な電解質の非限定的な例としては、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、クエン酸塩、炭酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。上記電解質は、任意且つ適宜のカチオンと対合させることができる。かかるカチオンの非限定的な例としては、アルカリ金属及び遷移金属、例えばリチウム、ナトリウム、マグネシウム、及び亜鉛が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸亜鉛、またはこれらの組み合わせを含む。
いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、組成の約10%~約30% w/w、例えば、組成の約10%~約15% w/w、約10%~約20% w/w、約10%~約25% w/w、約25%~約30% w/w、約20%~約30% w/w、約15%~約30% w/w、約15%~約20% w/w、または約18%~約22% w/wの量の電解質を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、第1溶液は、組成の約10% w/w、約12% w/w、約14% w/w、約16% w/w、約18% w/w、約20% w/w、約22% w/w、約24% w/w、約26% w/w、約28% w/w、または約30% w/wの量の電解質を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、組成の15% w/wの硫酸ナトリウム、組成の5% w/wの硫酸亜鉛を含む。
いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は緩衝液をさらに含む。所望のpHを維持するのに適した任意の緩衝液を使用することができる。かかる緩衝液の非限定的な例としては、塩酸(HCl)-塩化カリウム緩衝液、グリシン-HCl緩衝液、及び酢酸緩衝液が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、約0.1M~約0.3M、例えば、約0.1M~約0.15M、約0.1M~約0.2M、約0.1M~約0.25M、約0.25M~約0.3M、約0.2M~約0.3M、約0.15M~約0.3M、約0.15M~約0.2M、約0.18M~約0.22M、または約0.2M~約0.25Mの濃度の緩衝液を含む。
いくつかの実施形態において、上記第1の溶液のpHは、約1~約4、例えば、約1~約1.5、約1~約2、約1~約2.5、約1~約3、約1~約3.5、約3.5~約4、約3~約4、約2.5~約4、約2~約4、約2~約4、約1.5~約4、または約1.5~約2.5となるように調整される。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液のpHは、約1、約1.4、約1.6、約1.8、約2、約2.2、約2.4、約2.6、約3、約3.5、または約4となるように調整される。
いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、硫酸ナトリウム、硫酸亜鉛、及び酢酸緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、組成の15% w/wの硫酸ナトリウム、組成の5% w/wの硫酸亜鉛、及び酢酸緩衝液を含む。
ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成することの後に、段階的に延伸し、且つ酸化することにより、第1の繊維中にジスルフィド結合及び規則的な構造を確立するのを支援することができる。いくつかの実施形態において、酸化する上記ステップは、上記第1の繊維を、過酸化物、ハロゲンオキソ酸もしくはその塩、高原子価金属塩、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される酸化剤を含む酸化性溶液に曝露することを含む。過酸化物の非限定的な例としては、過ヨウ素酸ナトリウム、過酸化水素、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、及び鉄酸ナトリウム(VI)などのアルカリ金属過酸化物及びアルカリ土類金属過酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記酸化剤は、約2g/L~約6g/L、例えば、約2g/L~約2.5g/L、約2g/L~約3g/L、約2g/L~約3.5g/L、約2g/L~約4g/L、約2g/L~約4.5g/L、約2g/L~約5g/L、約2g/L~約5.5g/L、約5.5g/L~約6g/L、約5g/L~約6g/L、約4.5g/L~約6g/L、約4g/L~約6g/L、約3.5g/L~約6g/L、約3g/L~約6g/L、約2.5g/L~約6g/L、約3g/L~約5g/L、または約3.5g/L~約4.5g/Lの量で存在する。いくつかの実施形態において、上記酸化剤は、約2g/L、約2.5g/L、約3g/L、約3.5g/L、約4g/L、約4.5g/L、約5g/L、約5.5g/L、約6g/Lの量で存在する。
いくつかの実施形態において、上記酸化性溶液は緩衝液をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は緩衝液をさらに含む。所望のpHを維持するのに適した任意の緩衝液を使用することができる。かかる緩衝液の非限定的な例としては、HCl-塩化カリウム緩衝液、グリシン-HCl緩衝液、クエン酸緩衝液、及び酢酸緩衝液が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液は、約0.1M~約0.3M、例えば、約0.1M~約0.15M、約0.1M~約0.2M、約0.1M~約0.25M、約0.25M~約0.3M、約0.2M~約0.3M、約0.15M~約0.3M、約0.15M~約0.2M、約0.18M~約0.22M、または約0.2M~約0.25Mの濃度の緩衝液を含む。
いくつかの実施形態において、上記第1の溶液のpHは、約1~約4、例えば、約1~約1.5、約1~約2、約1~約2.5、約1~約3、約1~約3.5、約3.5~約4、約3~約4、約2.5~約4、約2~約4、約1.5~約4、または約1.5~約2.5となるように調整される。いくつかの実施形態において、上記第1の溶液のpHは、約1、約1.4、約1.6、約1.8、約2、約2.2、約2.4、約2.6、約3、約3.5、または約4となるように調整される。
いくつかの実施形態において、上記酸化性溶液の温度は、約30~約40、例えば、約30℃~約35℃、約35℃~約40℃、または約33℃~約38℃である。いくつかの実施形態において、上記酸化性溶液の温度は、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約35℃、約36℃、約37℃、約238℃、約39℃、または約40℃である。
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化する上記ステップが2回以上繰り返される。例えば、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化するステップが2回、3回、4回、または5回繰り返される。いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化する上記ステップが2回繰り返される。いくつかの実施形態において、本製造方法は、上記処理された繊維を硬化させることの前に、上記処理された繊維を延伸することをさらに含む。
繊維の硬化及び強化
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を硬化させることは、上記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露することを含む。好適な界面活性剤の非限定的な例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、SDS、ラウレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、パーフルオロノナン酸塩、パーフルオロオクタン酸塩、(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸塩)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルベタイン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、及び臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記界面活性剤は、約0.2~約2g/L、例えば、約0.2g/L~約0.6g/L、約0.2g/L~約lg/L、約0.2g/L~約1.4g/L、約0.2g/L~約1.8g/L、約1.6g/L~約2g/L、約1.2g/L~約2g/L、約0.8g/L~約2g/L、約0.4g/L~約2g/L、約0.5g/L~約1.5g/L、または約0.8g/L~約1.2g/Lの量で存在する。
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液は緩衝液をさらに含む。所望のpHを維持するのに適した任意の緩衝液を使用することができる。かかる緩衝液の非限定的な例としては、HCl-塩化カリウム緩衝液、グリシン-HCl緩衝液、クエン酸緩衝液、及び酢酸緩衝液が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液は、約0.05M~約0.3M、例えば、約0.05M~約0.1M、約0.05M~約0.15M、約0.05M~約0.2M、約0.05M~約0.25M、約0.25M~約0.3M、約0.2M~約0.3M、約0.15M~約0.3M、約0.1M~約0.3M、約0.15M~約0.2M、約0.18M~約0.22M、または約0.2M~約0.25Mの濃度の緩衝液を含む。
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液のpHは、約1~約4、例えば、約1~約1.5、約1~約2、約1~約2.5、約1~約3、約1~約3.5、約3.5~約4、約3~約4、約2.5~約4、約2~約4、約1.5~約4、または約1.5~約2.5となるように調整される。いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液のpHは、約1、約1.4、約1.6、約1.8、約2、約2.2、約2.4、約2.6、約3、約3.5、または約4となるように調整される。
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液は、約35℃~約45℃、例えば、約35℃~約40℃、約40℃~約45℃、または約38℃~約42℃の温度である。いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液は、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、または約45℃の温度である。
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を硬化させることは、上記処理された繊維を巻取り、且つ上記処理された繊維を酸化することを含む。
いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露することは、上記処理された繊維を巻取り、且つ上記処理された繊維を酸化することの前に行われる。いくつかの実施形態において、上記処理された繊維を巻取ることは、約15メートル/分の速度で行われる。
いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は約85℃で約1時間乾燥される。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は約125℃で約1時間アニールされる。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は乾燥された後にアニールされる。
いくつかの実施形態において、本製造方法は、本ケラチン繊維を酸化糖を含む溶液に曝露することをさらに含む。好適な糖類の非限定的な例としては、グルコース、スクロース、ラフィノース、セロビオース、デキストラン、及びアルギン酸塩が挙げられる。糖は、本明細書に記載の酸化剤のいずれかを用いて酸化することができる。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は、酸化糖を含む上記溶液に、約3~約25時間、例えば、約3~約5、約3~約10、約3~約15、約3~約25、約20~約25、約15~約25、約10~約25、約5~約25曝露される。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は、酸化糖を含む上記溶液に、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約15時間、または約20時間曝露される。いくつかの実施形態において、上記酸化糖はスクロースポリアルデヒドである。
いくつかの実施形態において、上記ケラチン繊維を、酸化糖を含む溶液に曝露する上記ステップは、上記処理された繊維を、界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露する前に行われる。
本明細書に記載の製造方法を使用して製造されたケラチン繊維は、延伸倍率を高くすることができる。延伸倍率とは、引取速度と押出速度の比である。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維の延伸倍率は、少なくとも約500%、例えば、少なくとも約600%、約700%、約800%、約900%、約1000%、約1100%、約1200%、約1300%、約1400%、約1500%、約1600%、約1700%、約1800%、約1900%、または約2000%とすることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製造方法を使用して製造されたケラチン繊維の延伸倍率は、約500%~約2500%、例えば、約500%~約2300%、約500%~約2100%、約500%~約1900%、約500%~約1700%、約500%~約1500%、約500%~約1300%、約500%~約1100%、約500%~約900%、約500%~約700%、約2300%~約2500%、約2100%~約2500%、約1900%~約2500%、約1700%~約2500%、約1500%~約2500%、約1300%~約2500%、約1100%~約2500%、約900%~約2500%、または約700%~約2500%とすることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製造方法を使用して製造されたケラチン繊維の延伸倍率は、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%、約1000%、約1100%、約1200%、約1300%、約1500%、約1600%、約17000%、約1800%、約1900%、約2000%、約2100%、約2200%、約2300%、約2400%、または約2500%とすることができる。
いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製造方法を使用して製造されたケラチン繊維の径は、約5マイクロメートル~約30マイクロメートル、例えば、約5マイクロメートル~約25マイクロメートル、約5マイクロメートル~約20マイクロメートル、約5マイクロメートル~約15マイクロメートル、約5マイクロメートル~約10マイクロメートル、約25マイクロメートル~約30マイクロメートル、約20マイクロメートル~約30マイクロメートル、約15マイクロメートル~約30マイクロメートル、または約10マイクロメートル~約30マイクロメートルとすることができる。
いくつかの方法を使用して、本明細書に記載の繊維の引張強さ及びひずみを評価することができる。かかる方法の非限定的な例としては、ASTM規格D-3822及びISO 5079:1995が挙げられる。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は、上記試験の前に、21℃及び65%の相対湿度で24時間平衡化される。いくつかの実施形態において、標点間距離及び引張速度は、それぞれ1インチ及び18mm/分である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製造方法を使用して製造されたケラチン繊維の引張強さは、少なくとも約0.8g/デニール、例えば、少なくとも約1g/デニール、約1.2g/デニール、または約1.4g/デニールとすることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるようにして製造されたケラチン繊維の引張強さは、約0.8g/デニール~約2.5g/デニール、例えば、約0.8g/デニール~約2.4g/デニール、約0.8g/デニール~約2.2g/デニール、約0.8g/デニール~約2.0g/デニール、約0.8g/デニール~約1.8g/デニール、約0.8g/デニール~約1.6g/デニール、約0.8g/デニール~約1.4g/デニール、約0.8g/デニール~約1.2g/デニール、約0.8g/デニール~約1g/デニール、約2.4g/デニール~約2.5g/デニール、約2.2g/デニール~約2.5g/デニール、約2g/デニール~約2.5g/デニール、約1.8g/デニール~約2.5g/デニール、約1.6g/デニール~約2.5g/デニール、約1.4g/デニール~約2.5g/デニール、約1.2g/デニール~約2.5g/デニール、または約1g/デニール~約2.5g/デニールとすることができる。
いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維のひずみは、少なくとも約5%、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、または少なくとも約8%である。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維のひずみは、約10%~約30%、例えば、約10%~約15%、約10%~約20%、約10%~約25%、約25%~約30%、約20%~約30%、または約15%~約30%である。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維のひずみは、10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%である。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は、ひずみを測定する前に乾燥されている。
本明細書に記載のケラチン繊維の靭性は、ケラチン繊維の応力-ひずみ曲線下総面積を測定することによって求めることができる。応力-ひずみ曲線を得ることができる任意の方法を使用することができる。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は、上記試験の前に、21℃及び65%の相対湿度で24時間平衡化される。いくつかの実施形態において、標点間距離及び引張速度は、それぞれ1インチ及び18mm/分である。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維の靭性は、少なくとも約15J/cm、例えば、少なくとも約20J/cm、または少なくとも約25J/cmである。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維の靭性は約15J/cm~約30J/cmである。
ケラチン繊維及び/またはケラチン質材料のベータシート結晶化度は、例えば、X線回折を使用して測定することができる。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は、上記ケラチン質材料中のベータシート結晶化度の量と比較して、ベータシート結晶化度の少なくとも85%を含む。
ケラチン繊維及び/またはケラチン質材料中のジスルフィド結合は、例えばラマン分光法を用いて測定することができる。いくつかの実施形態において、本ケラチン繊維は、上記ケラチン質材料中のジスルフィド架橋の量と比較して、少なくとも70%のジスルフィド架橋を含む。
本明細書では、本明細書に記載の製造方法のいずれかによって製造されたケラチン繊維も提供される。例えば、本明細書では、ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成することと;上記第1の繊維を延伸し、且つ上記第1の繊維を酸化して、処理された繊維を形成することと;1回以上、上記処理された繊維を延伸し、且つ上記処理された繊維を酸化することと;上記処理された繊維を硬化させて、上記ケラチン繊維を形成することとによって製造されたケラチン繊維が提供される。いくつかの実施形態において、上記製造方法は連続的な製造方法である。いくつかの実施形態において、本明細書では、ケラチン質材料からケラチンを抽出して、抽出ケラチンを形成することと;上記抽出ケラチンを、還元剤を含む水溶液に溶解して、上記ケラチン溶液を形成することと;ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成することと;上記第1の繊維を延伸し、且つ上記第1の繊維を酸化して、処理された繊維を形成することと;上記処理された繊維を硬化させて、上記ケラチン繊維を形成することとによって製造されたケラチン繊維が提供される。
本明細書で提供される実施形態のさらなる詳細は、例えば、引用文献39及び40に記載されており、これら両文献は、それらの全体が本明細書に援用される。
例1 ニワトリの羽毛からのケラチン繊維の連続的製造
材料
Featherfiber Corporation, Nixa, MOからニワトリの羽枝の提供を受けた。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、システイン、メルカプトエタノール、及び尿素などの、ACS試薬グレードの他の化学薬品はVWR International (Radnor, PA)から購入した。LDSサンプルバッファー(4×)、NuPAGE MESランニングバッファー(20×)、及びNuPAGE 4~12% Bis-Trisゲルを含むSDS-PAGE分析に使用した化学試薬は、Invitrogen ,Inc., Grand Island, NYから購入した。
ニワトリの羽毛からのケラチンの抽出
ニワトリの羽毛からのケラチンの抽出を、種々の量の尿素及びSDSを含む水溶液を使用して実施した。最適なレシピを決定するために、抽出液の上清の粘度及びケラチン収率を測定した。詳細な結果を表S1に示す。2Mの尿素及び羽毛の重量を基準として10%のSDSを選択した。最適なケラチンの溶解を目的として、羽毛中のジスルフィド結合を完全に開裂させるために、10%のシステインを使用した。以前の検討に従って、15重量%のNaOH溶液を用いて、抽出溶液のpHを10.5に調整した。この抽出液を70℃で12時間保持した。抽出後に、この分散液を9800 rcf(相対遠心力)で20分間遠心分離して上清を得て、これを硫酸ナトリウムを伴う塩酸を用いて等電点に調整し、内部のケラチンを沈殿させた。沈殿したケラチンをさらに洗浄して他の不純物を除去し、その後真空乾燥した。
Figure 2023511391000001
ケラチン紡糸原液の調製
連続的なパイロットスケールでの紡糸用の紡糸原液を、27%の抽出ケラチン及びケラチンの重量を基準として10%のSDSを、pHが8の0.2M 炭酸塩-重炭酸塩緩衝液に溶解することによって調製した。ケラチンを完全に溶解し、且つ溶液中で最適な分子の絡み合いを得るために、ケラチン分子中のジスルフィド結合の制御された開裂を目的として、種々の量の還元剤(メルカプトエタノール)を添加した。
ケラチン繊維中のジスルフィド結合を制御された形で構築するために、段階的な酸化及び延伸を連続的湿式紡糸ライン(ALEX JAMES AND ASSOC, US)に適用した。段階的な酸化及び延伸は、紡糸性、ケラチン分子の配向、架橋度、及び繊維特性を改善することを支援することができる。詳細設計を図1に示す。調製したケラチン紡糸原液を遠心分離した後に紡糸ライン上に設置した。ケラチン溶液を、複数の50μm径の孔を有する紡糸口金を介して、15重量%の硫酸ナトリウム、5重量%の硫酸亜鉛、及びpH2の酢酸緩衝液が入った凝固浴槽に押し出した。凝固浴槽を出た繊維に1回目の延伸を行い、その後繊維を第1の酸化浴槽に送った。この酸化浴槽には、酸化剤として4g/Lの過ヨウ素酸ナトリウム及びpH2の酢酸緩衝液が入っていた。酸化温度は、迅速なジスルフィド結合の構築と微細な繊維の延伸性を確保するために35℃とした。次いで繊維を複数の延伸及び酸化ステップに通し、その後洗浄浴槽に入れた。複数の延伸及び酸化ステップは、規則的な構造を確立するのを支援することができる。洗浄浴槽には1g/Lの濃度の界面活性剤とpH2の酢酸緩衝液が入っていた。温度は、高い洗浄効率を確保するために40℃とした。最終の巻取ローラーに到達すると、繊維を、ケラチン繊維中の規則的な分子構造の固定化のために、再度酸化浴槽を通過させた。繊維回収の最終的な速度は15メートル/分であった。得られた乾燥繊維を8℃のオーブン中で1時間乾燥し、その後125℃で約1時間アニールした。アニーリングは、繊維の力学特性を改善するために行った。
特性
紡糸原液のレオロジー特性
種々の濃度の還元剤を含むケラチン紡糸原液のせん断応力(τ(Pa))を、回転レオメータ、R/S Plus(Brookfield, U.S.A)を用いて測定し、式1に基づいて稠度係数(K(Pa・s)及び流動性指数(n)を求めた。Kは溶液中のポリマー粘度に正比例し、nは溶液中の分子の絡み合いの程度を示す。nの値が小さいほど、分子の絡み合いがより良好である。レオロジー特性を正確に測定するために、18重量%のケラチン溶液を使用した。
τ=Kγ 式1
(式中、γは0~1000s-1の範囲で測定したせん断速度(s-1)である)
ケラチン骨格の分子量
約1mgの羽毛及びケラチン繊維を、過剰のメルカプトエタノールを含む100μLのNuPAGE LDSサンプルバッファー(1×)に溶解し、70℃で5時間加熱した。この溶液を遠心分離し、その後ロードした。10μLの各試料をゲルの個々のスロットにロードした。Spectra Multicolor Low Range Protein Ladderの分子マーカーを使用した。タンパク質標準混合物の分子量は、4.6~42kDaの範囲であった。
機械的特性
ケラチン繊維は、試験前に21℃及び65%の相対湿度で24時間調質した。ケラチン繊維の引張特性は、Instron (Norwood, MA)引張試験機を使用し、ASTM規格D-3822に準拠して得た。試験に関して設定した標点間距離は1インチであり、クロスヘッド速度は18mm/分であった。ケラチン繊維の繊度を記述するために、繊維のデニールを用いた。各試験について、少なくとも20本の試験片を使用した。
ラマン分光法を使用したケラチン中のジスルフィド結合の定性的測定
羽毛及びケラチン繊維をラマン分光計(DXRラマン顕微鏡, Thermo, USA)でキャラクタライズした。レーザー波長は532nmに設定し、出力は10mWであった。試料収集露光時間(sample collect exposure time)は、試料当たり15秒で15サイクルの露光であった。ケラチン中のジスルフィド結合を比較するためには、500cm-1(S-S)と1450cm-1(C-H)付近のピーク面積の比を使用した。
繊維中のシスチンの定量
連続紡糸ラインの各ステップから採取した繊維を蒸留水中で洗浄した直後に凍結し、次いで凍結乾燥した。繊維中のシスチン含量を、Campanella et al[34]によって開発された方法に基づいて測定した。詳細には、乾燥した繊維を、110℃下で24時間、6N HC1を用いて加水分解してアミノ酸を得た。フェニルイソチオシアネートを、C-18カラム(Acclaim 120、120Å、4.6×250mm、5μm)及び波長を254nmに設定したUV検出器を備えたHPLC、UltiMate 3000シリーズ、USAによる、アミノ酸の定量的プレカラム誘導体化法に使用した。流速は1mL/分であり、pH 6.4の0.7M 酢酸ナトリウム(相A)、水(相B)、及び体積比8:2のアセトニトリル/水(相C)を用いた三元勾配を使用した。上記勾配を表1に示す。総保持時間は30分であり、これにカラムの再平衡化のための10分が更に加わった。
Figure 2023511391000002
本発明者らは、上記紡糸原液中の還元剤としてメルカプトエタノールを使用し、そのため、再生繊維上に新たに形成されたシスチンは、分子内または分子間架橋と見なすことができた。加えて、繊維の延伸中にシスチンが形成された。延伸によって分子鎖の直線性の度合いを高めることができる。したがって、シスチンの大部分は分子間架橋に由来していた。
二次構造の分析
X線回折及び固体13C NMRによる検討を、羽毛及びケラチン繊維の二次構造の分析のために実施した。X線回折は、ブラッグ・ブレンダーノ集中法光学系、回折ビームモノクロメータ、及び26℃で40kV及び30mAに設定された従来の銅ターゲットX線管(λ=1.54Å)を備える、Rigaku D/Max-B X線回折計を使用して得た。回折強度は、毎秒0.05°の走査速度で3°~40°の範囲の2θで記録した。結晶化度は、Jade 6.0ソフトウェア(Materials Data Incorporated: Livermore, CA, USA)を使用し、ガウスピーク近似で計算した。13C固体NMRスペクトルは、NMR分光計(Bruker, Avance 600, USA)に備えられた三重共鳴(1H/13C/15N)マジックアングルスピニングプローブ(3.2mm)を使用して得た。
統計的解析
信頼区間95%のScheffe検定を用いた一元配置分散分析を、得られたすべてのデータについて使用した。統計的解析は、SAS 9.4ソフトウェア(Cary, North Carolina)及びPROC GLIMMIXの調査手順で実施した。
結果と考察
図2は、再生ケラチン及びニワトリの羽毛由来のタンパク質骨格の分子量を比較している。これらの結果は、再生ケラチンの骨格への損傷が最小限に抑えられることを示している。ニワトリの羽毛と比較して、再生ケラチンの21kDaのタンパク質の含有量はニワトリの羽毛のそれよりわずかに低かったが、分子量8kDa及び12kDaのタンパク質の含有量はニワトリの羽毛のそれよりも高かった。図2の結果はまた、再生ケラチンが、分子量が11kDaであり[35]、硫黄含有量の高いγ-ケラチンを多量に含有することも示している。γ-ケラチンは繊維再生の過程におけるジスルフィド結合の形成を促進することになろう。上記の結果は、ケラチン繊維中の分子構造を、連続製造ライン上のジスルフィド結合の制御された開裂及び構築を介して最適化することができることを示している。結果として、ケラチン繊維の最終的な特性が向上した。
Figure 2023511391000003
表2は、ケラチン紡糸原液のレオロジー特性に対する還元剤の種々の濃度の効果を示す。この結果は、上記紡糸溶液中のジスルフィド結合の開裂の程度が、該溶液中のケラチン分子の粘度及び絡み合いに直接影響することを示している。詳細には、紡糸原液中の還元剤の濃度が増加するにつれて溶液の粘度は徐々に低下したが、分子の絡み合いの程度は最初増加し、次いで低下した。還元剤の濃度の増加によって、ジスルフィド結合が開裂した。その結果、ケラチンの分子量が徐々に低下するにつれて、粘度も低下した。分子の絡み合いの程度に関しては、還元剤の量が0.5%から2%に増加すると、ジスルフィド結合が開裂するに連れ、ほとんどの規則的な構造がほぐれた状態となり、ケラチン分子の溶解性が向上する。そのため、分子の絡み合いが増大した。還元剤の濃度が上昇し続けると、ケラチンの溶解度は変化しないまま分子量がさらに低下した。その結果、分子の絡み合いの程度が低下した。
連続紡糸ライン上でのケラチン繊維のより良好な紡糸性を確保するためには、以下の3つの利点を理由に、ケラチン中のジスルフィド結合は部分的に保持されることが必要である。上記3つの利点とは、1)タンパク質が依然として良好な溶解性を有することを確保する、2)タンパク質分子の絡み合いが最高の状態であることを確保する、及び3)タンパク質の分子量を、紡糸原液を凝固浴槽中で迅速に固化させるのに十分な程度に高く維持するである。したがって、紡糸原液中のジスルフィド結合を部分的に開裂させるように、2%の還元剤を選択した。
図3A~図3Cは、連続紡糸ライン上の制御されたジスルフィド結合の構築によるケラチン繊維中のジスルフィド結合の効率的な回復と、その結果生じるケラチン繊維の紡糸性を示す。これらの結果は、連続紡糸におけるジスルフィド架橋の迅速な確立が、ケラチン繊維の良好な紡糸性を確保する重要な因子であることを示している。図3Aは、ケラチン繊維とニワトリの羽毛中のジスルフィド結合を定性的に比較している。これらの結果は、ケラチン繊維が高い程度のジスルフィド架橋を回復したことを示している。約500cm-1及び1450cm-1のピークは、それぞれS-S結合及びC-H結合であると考えられた。ラマンスペクトルは、ピーク面積が比較的大きく、化学処理の影響を受けないC-Hバンドによって正規化した。ケラチン繊維のS-Sバンドの強度はニワトリの羽毛よりもわずかに低いのみであり、ジスルフィド架橋が高率で回復したことを示した。HPLCを用いてジスルフィド結合を定量化した。図3Bは、凝固浴槽中での延伸によって回復した繊維中の架橋結合は10%未満であったことをとを示している。最初の延伸及び最初の酸化浴槽の導入後は、繊維中のジスルフィド結合のほぼ20%が回復した。一定の繊維の延伸を伴う酸化浴槽をさらに導入したところ、ジスルフィド結合の回復度がさらに増加させることができた。繊維が紡糸ライン上の最終の回収ローラーに到達すると、ジスルフィド結合のほぼ70%が回復し、架橋度は約5%であった。本連続紡糸プロセスにおいてジスルフィド結合の程度が迅速に且つ高いレベルで回復したことにより、良好な繊維の紡糸性が確保された。図3Cに示すように、本繊維の紡糸性は、ジスルフィド結合の構築の精密な制御によって、ジスルフィド結合の構築の無制御及び単純な制御による紡糸性よりも、実質的に高かった。ジスルフィド結合の構築を制御しない場合の唯一の酸化プロセスは空気酸化である。単純な制御の場合は、単一のステップの酸化のみを含んでいた。制御されたジスルフィド結合の構築により、本繊維の最終的な回収速度は15m/分に達することができ、これは、ジスルフィド結合の構築の単純な制御を使用した紡糸の160%、空気酸化による紡糸の300%である。
図4Aは、ケラチン繊維中の架橋度の回復率が、本連続紡糸ライン上での最大延伸倍率を決定したことを示している。これらの結果は、高いジスルフィド結合の回復率が、繊維の延伸倍率が高くなることの鍵であったことを示している。高い延伸倍率は、高品質の繊維を製造するために有用である。図4Aに示すように、ジスルフィド結合の回復度が10%未満であった場合、本繊維の延伸倍率は2倍に過ぎなかった。ジスルフィド結合の回復度が増加するにつれて、本繊維の最大延伸倍率が10倍に増加させることができる。図4Aはまた、連続紡糸ライン上での繊維の延伸倍率が、ジスルフィド結合の回復度と直線関係を有していたことも示している。詳細には、R(相関係数)0.98で、最大延伸倍率=0.2×ジスルフィド結合回復率+0.5である。延伸倍率の増加によって、紡糸繊維の径が実質的に低下した。図4Bに示すように、10回の延伸後の繊維の径はわずか15μmであり、これはほとんどの天然羊毛繊維(30μm)よりも低く、絹繊維(10μm)よりわずかに大きいのみである。微細な繊維により、良好な手触り、通気性、及び染色性が確保される。上記結果はさらに、高品質のケラチン繊維の連続的製造が、制御されたジスルフィド結合の構築による迅速な架橋の形成に大きく依存していたことを示している。制御されたジスルフィド結合の構築なくしては、ジスルフィド結合の回復度は20%以下であり、その結果、繊維の延伸倍率が制限され、且つその後の繊維特性が不十分であった。
図5は、外部ストレッチ力下、制御されたジスルフィド結合の構築によって、ケラチン繊維中に高い程度の規則的なタンパク質の構造が如何にして形成されたかの説明である。新たに固化した繊維中のタンパク質骨格間の距離は、内部の限定されたジスルフィド結合が存在するために、ある程度短縮することができる。上記タンパク質骨格間の距離が短縮されることにより、第1の酸化プロセス中の分子間ジスルフィド結合の形成を促進することができる。次いで、上記酸化浴槽中で形成された架橋は、繊維の延伸性及び延伸倍率の向上を支援することができる。高い延伸倍率は、ケラチン繊維中の分子鎖の直線性及びタンパク質骨格間の距離の短縮に寄与する可能性がある。今度は、分子間ジスルフィド結合の形成がさらに促進された。上記制御されたジスルフィド結合の開裂及び構築によって、分子間ジスルフィド架橋が徐々に増加し、ケラチン繊維中に二次構造が徐々に回復した。連続紡糸の最後のステップである回収ステップにおいて、繊維を再度酸化して、ケラチンの規則的な構造を固定化した。
ケラチン繊維中の回復した二次構造
Figure 2023511391000004
XRD及び13C固体NMRから得られたデータ。これらのスペクトルをそれぞれ図8A及び図8Bに示す。XRDでは、9°付近の副次的なピークと19°付近の主要なピークの2つのピークを使用して二次構造を解析する。NMRにおいて、ニワトリの羽毛とケラチン繊維の結晶構造を、カルボニル基の化学シフトを用いて解析した。通常カルボニル基のデコンボリューションによって、α-ヘリックスに帰属される176ppmと、ランダムコイルとβ-シート立体構造の両方に帰属される172ppmの2つのピークが生じる。
表3では、ケラチン繊維の二次構造をニワトリの羽毛と比較している。これらの結果は、回復したベータ-シート二次構造及びケラチン繊維の全結晶化度はそれぞれ95%及び80%であったことを示した。ケラチン繊維における上記の高い結晶性は、迅速且つ制御されたジスルフィド結合の開裂及び構築に由来する高度の規則的な構造に起因する。ベータ-シートの回復率が高い理由は以下の通りである。すなわち、制御されたジスルフィドの構築が、繊維の高い延伸性と繊維の延伸倍率の向上に貢献し、その結果、繊維中のアルファ-ヘリックス構造の一部がベータ-シート構造に変換された。ケラチン繊維の結晶化度が元のニワトリの羽毛の結晶化度よりも低かった理由は、主としてニワトリの羽毛中のジスルフィド結合が完全には回復することができず、ケラチン繊維中の規則的な構造がニワトリの羽毛の規則的な構造よりも少なかったことにある。さらに、ケラチン骨格に対するわずかな損傷も、ケラチン繊維における結晶化度がより低いことに寄与した。
図6Aは、ケラチン繊維の連続的製造が、ジスルフィド結合の制御された開裂及び構築によって達成されたことを示す。図6Bは、連続的に紡糸したケラチン繊維の見本を示す。図7Aは、元の羽毛と連続紡糸由来のケラチン繊維の応力ひずみ曲線を比較している。これらの結果は、羽枝のひずみは約10%ではあったが、該羽枝は脆弱なパターンの曲線を示したことを明らかにした。ところが、ケラチン繊維は破断の前に「ひずみ硬化」段階を経た。その理由は、ニワトリの羽毛は高い程度の架橋及び規則的な分子構造を有し、これによって分子間鎖間に強い相互作用が与えられたことによる。したがって、外力下では、分子セグメントが転位を有する可能性は低かった。その結果、降伏点の前に繊維が破断した。ケラチン繊維では、分子鎖間の相互作用は比較的弱かったが、タンパク質骨格の大部分はジスルフィド架橋の制御された回復により連結されていた。相互作用が弱いことにより、タンパク質鎖の移動が助長される可能性がある一方、長い分子鎖によって、2つの分子鎖間の滑り距離が長くなることを助長する可能性がある。外力下では、分子セグメント間で転位が起こる可能性が高く、その結果ひずみ硬化が生じた。加えて、上記ケラチン繊維は高い延伸倍率を経ており、それによって分子鎖が延伸状態へと導かれた。そのため、分子の絡み合いの程度は高かった。外力下では、繊維中の分子セグメントの全体的な配向が増加し、これがひずみ硬化に寄与したのであろう。
ケラチン繊維はひずみ硬化プロセスに起因して高い延性を有していた。図7Bは、ケラチン繊維が高度の撚糸に耐えることができることを示している。他の2つの補助的ビデオはケラチン繊維の高い延性をさらに実証している。繊維の延性は、連続紡糸プロセスにおける制御されたジスルフィド結合の開裂及び構築による二次タンパク質構造の実質的な回復に由来する、繊維の高い靭性のために高かった。
Figure 2023511391000005
表4は、連続的製造プロセスにおけるジスルフィド結合の制御された開裂及び構築により回復したタンパク質の二次構造を有する繊維の機械的特性を示し、他の一般的な繊維と特性を比較している。これらの結果は、ケラチン繊維が、元のニワトリの羽毛の乾燥状態での応力特性の86%、湿潤応力の64%、乾燥靭性の89%、及び湿潤靭性の91.55%を回復したことを示している。羽毛の良好な特性は維持されていた。回復した二次構造を有するケラチン繊維は、タンパク質骨格の損傷及びジスルフィド架橋度の低下のために、羽枝よりもわずかに強さが低下していた。ケラチン繊維のひずみは、タンパク質セグメントの転位がより容易になったために、元の羽毛よりもわずかに高かった。他の一般的に使用される繊維と比較して、ケラチン繊維にはメリットがあった。例えば、ケラチンのひずみ及び靭性は、綿及びリネンよりも実質的に高かった。靭性はビスコース繊維に近かった。以上の結果は、連続的製造由来の二次構造の回復を伴うケラチン繊維が、実用のための規格を満たすことを示している。
Figure 2023511391000006
表5はさまざまな再生手法由来のケラチン繊維の特性を比較している。本検討を除くすべてのケラチン繊維は実験室スケールで再生された。これらの結果は、二次構造の回復率が低いことに起因して、引張強さの回復が低く、最も高いものでも50%未満であったことを示している。二次構造の回復率が不十分であることにより、再生繊維のひずみもいっそう不十分であった。ひずみを向上させるために、ケラチン中への可塑剤または他のポリマーの配合が開発された。その結果、ひずみは向上するが繊維の引張強さが犠牲になる。例えば、グリセリンの配合後には、再生ケラチン繊維の引張強さは原料繊維のわずか4%であった。
環境への影響を最小限に抑えた費用対効果の高い製造
制御されたジスルフィド結合の開裂及び構築による連続的な繊維の製造では無毒な化学薬品を使用した。さらに、紡糸ライン上の凝固や酸化などの浴槽を再利用することができた。したがって、連続紡糸の排出物は最小限の排出物である。連続紡糸繊維中のケラチン含有量は98%より高く、これは繊維の完全な分解性を示す。ニワトリの羽毛からケラチン繊維を製造する本発明者らの製造方法には、環境に悪影響を及ぼす有毒な化学薬品は含まれていない。本再生ケラチン繊維の潜在需要を見積るために、表S2に示すように、本発明者らの製造方法における材料消費量及びコストを評価する。
Figure 2023511391000007
表S2に示すように、1kgの純粋なケラチン繊維を製造するための総材料コストは約$0.83である。本発明者が市販のタンパク質繊維の材料コストを入手し、再生ケラチン繊維の材料コストと比較することはできないため、羊毛や絹などの市販のタンパク質の小売価格を用いている。約$7~30/kgの羊毛及び約$45~80/kgの絹のバルク価格(メートルトンスケール)と比較して、ニワトリの羽毛由来のケラチン繊維のコストは、販売価格よりも少なくとも91%及び99%低い。大規模生産における他のコストを考慮すると、ニワトリの羽毛由来のケラチン繊維の最終価格は競争力を有することとなる。家禽の羽毛由来のケラチン繊維が1kg当り約$4で販売されとする場合、これはリネンのようないくつかの天然セルロース繊維に近い価格であるが、1トンの家禽の羽毛から、少なくとも$3,000相当の繊維が製造されることとなる。全世界で500万トンの家禽の羽毛を完全に活用することができるとすれば、再生ケラチン繊維の市場価値は$150億を超えることとなる。
例2 酸化糖類を使用した化学架橋
スクロースの5%水溶液を、室温で5時間過ヨウ素酸ナトリウムと反応させた。スクロースと過ヨウ素酸塩のモル比は1:3であった。反応媒体のpHを5.5±0.1に維持した。反応後に、わずかに過剰な二塩化バリウムを添加し、酸化剤を完全に沈殿させた。この混合物をろ過し、スクロースのポリアルデヒド誘導体を得た。ニワトリの羽毛由来の紡糸繊維を、上記洗浄プロセスの前に室温で5時間、スクロースポリアルデヒドを含む溶液に浸漬した。洗浄後に、繊維を85℃のオーブン中で1時間乾燥し、その後125℃で約1時間アニールした。得られた繊維の応力及びひずみは、それぞれ1.5±0.2g/デニール及び16±2.1%であった。
引用文献
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その他の実施形態
本発明をその詳細な説明と共に説明してきたが、上述の説明は例示を意図しており、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び改変は、添付の特許請求の範囲に包含される。

Claims (65)

  1. ケラチン繊維の製造方法であって、
    (i)ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出して、第1の繊維を形成することと、
    (ii)前記第1の繊維を延伸し、且つ前記第1の繊維を酸化して、処理された繊維を形成することと、
    (iii)1回以上、前記処理された繊維を延伸し、且つ前記処理された繊維を酸化することと、
    (iv)前記処理された繊維を硬化させて、前記ケラチン繊維を形成することと
    を含む、前記ケラチン繊維の製造方法。
  2. 前記ケラチン繊維の延伸倍率が少なくとも約500%である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ケラチン繊維の延伸倍率が約800%~約2000%である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記ケラチン繊維の延伸倍率が約1500%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記ケラチン繊維の径が約5マイクロメートル~約30マイクロメートルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記ケラチン繊維の径が約15マイクロメートルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記ケラチン繊維が少なくとも約70%のケラチンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記ケラチン繊維が少なくとも約85%のケラチンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記ケラチン繊維の引張強さが少なくとも約0.8g/デニールである、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記ケラチン繊維の引張強さが約1g/デニール~約2g/デニールである、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記ケラチン繊維のひずみが少なくとも約5%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 前記ケラチン繊維のひずみが約5%~約30%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記ケラチン繊維のひずみが約15%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. 前記ひずみを測定する前に前記ケラチン繊維が乾燥されている、請求項13に記載の製造方法。
  15. 前記ケラチン繊維の靭性が約15J/cmよりも高い、請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 前記ケラチン溶液の稠度係数(K)が約2Pa・s~約6Pa・sである、但し、前記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 前記ケラチン溶液の稠度係数(K)が約4.2Pa・sである、但し、前記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 前記ケラチン溶液の流動性指数が約0.8~約0.95である、但し、前記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の製造方法。
  19. 前記ケラチン溶液の流動性指数が約0.91である、但し、前記ケラチン溶液は約25℃であり、組成の約18% w/wのケラチンを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の製造方法。
  20. 前記ケラチン溶液が還元剤を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の製造方法。
  21. 前記ケラチン溶液がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の製造方法。
  22. 前記ケラチン溶液がケラチン質材料から調製される、請求項1~21のいずれか1項に記載の製造方法。
  23. 前記ケラチン溶液を調製することをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  24. 前記ケラチン溶液を調製することが、
    i.ケラチン質材料からケラチンを抽出して、抽出ケラチンを形成することと、
    ii.前記抽出ケラチンを、還元剤を含む水溶液に溶解して、前記ケラチン溶液を形成することと
    を含む、請求項23に記載の製造方法。
  25. 前記水溶液がSDSをさらに含む、請求項24に記載の製造方法。
  26. 前記ケラチン質材料が、羊毛、ラクダ毛、アルパカ毛、及びウサギ毛を含む、但しこれらに限定されない動物の毛、角、及び羽毛の1種以上を含む、請求項22、24、及び25のいずれか1項に記載の製造方法。
  27. 前記羽毛が、アヒルの羽毛、ガチョウの羽毛、ニワトリの羽毛、またはそれらの組み合わせである、請求項26に記載の製造方法。
  28. 前記毛が羊毛、ラクダ毛、アルパカ毛、ウサギ毛、またはそれらの組み合わせである、請求項26に記載の製造方法。
  29. 前記ケラチン繊維が、前記ケラチン質材料中のジスルフィド架橋の量と比較して、少なくとも70%のジスルフィド架橋を含む、請求項23~28のいずれか1項に記載の製造方法。
  30. 前記ケラチン繊維が、前記ケラチン質材料中のベータシート結晶化度の量と比較して、ベータシート結晶化度の少なくとも85%を含む、請求項23~29のいずれか1項に記載の製造方法。
  31. 前記還元剤がチオール基を含む、請求項18及び24~30のいずれか1項に記載の製造方法。
  32. 前記還元剤が、メルカプトエタノール、システイン、ジチオトレイトール、1,2-エタンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビスチオグリコラート、またはそれらの組み合わせを含む、請求項31に記載の製造方法。
  33. 前記ケラチン溶液を第1の溶液中に押し出すステップが、紡糸口金を使用して前記ケラチン溶液を押し出すことを含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の製造方法。
  34. 前記紡糸口金が孔を備え、前記孔の径が約50マイクロメートルである、請求項33に記載の製造方法。
  35. 前記第1の溶液が電解質を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の製造方法。
  36. 前記電解質が、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、クエン酸塩、炭酸塩、リン酸塩、またはそれらの組み合わせである、請求項35に記載の製造方法。
  37. 前記第1の溶液が、硫酸ナトリウム、硫酸亜鉛、及び酢酸緩衝液を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の製造方法。
  38. 前記第1の溶液のpHが約2である、請求項1~37のいずれか1項に記載の製造方法。
  39. 前記第1の溶液が、組成の約15% w/wの量の硫酸ナトリウム、組成の約5% w/wの量の硫酸亜鉛、及びpHが2の酢酸緩衝液を含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の製造方法。
  40. 前記酸化のステップが、過酸化物、ハロゲンオキソ酸またはその塩、高原子価金属塩、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される酸化剤を含む酸化性溶液に、前記繊維を曝露することを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の製造方法。
  41. 前記過酸化物が、アルカリ金属過酸化物、アルカリ土類金属過酸化物、またはそれらの組み合わせである、請求項40に記載の製造方法。
  42. 前記酸化剤が過ヨウ素酸ナトリウムである、請求項41に記載の製造方法。
  43. 前記酸化性溶液が緩衝液をさらに含む、請求項40~42のいずれか1項に記載の製造方法。
  44. 前記酸化性溶液が酢酸緩衝液をさらに含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の製造方法。
  45. 前記酸化性溶液のpHが約2である、請求項40~44のいずれか1項に記載の製造方法。
  46. 前記酸化性溶液の温度が約35℃である、請求項40~45のいずれか1項に記載の製造方法。
  47. 前記処理された繊維を延伸し、且つ前記処理された繊維を酸化するステップが2回繰り返される、請求項1~46のいずれか1項に記載の製造方法。
  48. 前記処理された繊維を硬化させる前に、前記処理された繊維を延伸することをさらに含む、請求項1~47のいずれか1項に記載の製造方法。
  49. 前記処理された繊維を硬化させることが、前記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露することを含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の製造方法。
  50. 前記界面活性剤が、ラウリル硫酸アンモニウム、SDS、ラウレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、パーフルオロノナン酸塩、パーフルオロオクタン酸塩、(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸塩)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルベタイン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項49に記載の製造方法。
  51. 前記洗浄溶液が酢酸緩衝液をさらに含む、請求項49または50に記載の製造方法。
  52. 前記洗浄溶液のpHが約2である、請求項49~51のいずれか1項に記載の製造方法。
  53. 前記洗浄溶液が約40℃の温度である、請求項49~52のいずれか1項に記載の製造方法。
  54. 前記処理された繊維を硬化させることが、前記処理された繊維を巻取り、且つ前記処理された繊維を酸化することを含む、請求項1~53のいずれか1項に記載の製造方法。
  55. 前記処理された繊維を巻取り、且つ前記処理された繊維を酸化する前に、前記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露することが行われる、請求項54に記載の製造方法。
  56. 前記処理された繊維を巻取ることが、約15メートル/分の速度で行われる、請求項1~55のいずれか1項に記載の製造方法。
  57. 前記ケラチン繊維が約85℃で約1時間乾燥される、請求項1~56のいずれか1項に記載の製造方法。
  58. 前記ケラチン繊維が約125℃で約1時間アニールされる、請求項1~57のいずれか1項に記載の製造方法。
  59. 前記ケラチン繊維が乾燥された後にアニールされる、請求項58に記載の製造方法。
  60. 連続的な製造方法である、請求項1~59のいずれか1項に記載の製造方法。
  61. 前記ケラチン繊維を酸化糖を含む溶液に曝露することをさらに含む、請求項1~60のいずれか1項に記載の製造方法。
  62. 前記ケラチン繊維が、酸化糖を含む前記溶液に約3~約25時間曝露される、請求項61に記載の製造方法。
  63. 前記酸化糖がスクロースポリアルデヒドである、請求項61または62に記載の製造方法。
  64. 前記ケラチン繊維を酸化糖を含む溶液に曝露するステップが、前記処理された繊維を界面活性剤を含む洗浄溶液に曝露する前に実施される、請求項61~63のいずれか1項に記載の製造方法。
  65. 請求項1~64のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたケラチン繊維。
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