JP2023182341A - 樹脂組成物および光学部材 - Google Patents

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泰典 川部
Yasunori Kawabe
嘉彦 安藤
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Abstract

【課題】密着性に優れる光学部材を形成することができる樹脂組成物を提供すること。【解決手段】酸基を有するシクロオレフィン系樹脂(A)、吸収極大波長を波長350~1200nmに有する化合物(B)、および、溶剤、を含む樹脂組成物、ならびに、光学部材。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物および光学部材に関する。詳しくは、特定の樹脂組成物を用いた光学部材に関する。
ビデオカメラ、デジタルカメラ、カメラ機能付き携帯電話等には、光学センサーである固体撮像素子が搭載されている。固体撮像素子としては、具体的にはCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサーやCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等が知られている。これらの固体撮像素子に備わるフォトダイオードの感度は、可視光領域から赤外線領域にわたる。このため、撮像したい波長に応じて固体撮像素子においては、特定波長を遮断するためのフィルターが設けられている。例えば可視光を撮像する場合は赤外線遮断フィルター、赤外光を撮像する場合は可視光遮蔽フィルターが設けられることがある。
上記光学フィルターには、可視域や赤外線を遮蔽するための色材(例えば、色素や顔料)や、樹脂が含有されている。一般的に色素を良く溶解させる樹脂としてはアクリルポリマーなどが使用されている。(例えば、特許文献1参照。)
特表2010-502563号公報
しかしながら、昨今の光学要求特性の高性能化に伴い、十分な特性を得ることが困難となってきており、更なる改良が望まれている。また、信頼性の観点から基板やその他の層との密着性(以下、単に「密着性に優れる」ともいう。)が良好であることが望まれている。以上の状況を鑑み、密着性に優れた光学センサー用組成物が求められていた。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、本発明に係る一実施形態が解決しようとする課題は、密着性に優れる光学部材を形成することができる樹脂組成物を提供することである。また、本発明に係る一実施形態が解決しようとする他の課題は、密着性に優れる光学部材を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、以下に記載の樹脂組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の一実施形態には、以下の態様が含まれる。
<1> 酸基を有するシクロオレフィン系樹脂(A)、
吸収極大波長を波長350~1200nmに有する化合物(B)、および、
溶剤、を含む樹脂組成物。
<2> 前記シクロオレフィン系樹脂(A)の酸価が、2~401mgKOH/gである<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記シクロオレフィン系樹脂(A)が、下記構造(a)から少なくとも1つの水素原子を除いた基を含む<1>に記載の樹脂組成物。
Figure 2023182341000001
構造(a)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、RAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、-S(=O)2OH、または下記(a1)~(a6)のいずれかの基を表す。
Figure 2023182341000002
式中、AAcはそれぞれ独立して-COOH、-OP(=O)(OH)2、または、-S(=O)2OHを表し、nは1~20の整数を表し、Raはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。
<4> 前記シクロオレフィン系樹脂(A)が、下記繰り返し単位(A-1)および繰り返し単位(A-2)の少なくとも一方を含む<1>に記載の樹脂組成物。
Figure 2023182341000003
繰り返し単位(A-1)および(A-2)中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、RAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、-S(=O)2OH、または下記(a1)~(a6)のを表し、mAは、1~4の整数を表し、mBは0~4の整数を表す。)
Figure 2023182341000004
式中、AAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、または、-S(=O)2OHを表し、nは1~20の整数を表し、Raはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。
<5> 前記化合物(B)が下記要件(1)~(3)いずれか1つを満たす<1>に記載の樹脂組成物。
要件(1):波長360~670nmの間に吸収極大波長を有する。
要件(2):波長670~800nmの間に吸収極大波長を有する。
要件(3):波長800~1100nmの間に吸収極大波長を有する。
<6> 前記化合物(B)が下記要件(1)~(3)いずれか1つを満たす<4>に記載の樹脂組成物。
要件(1):波長360~670nmの間に吸収極大波長を有する。
要件(2):波長670~800nmの間に吸収極大波長を有する。
要件(3):波長800~1100nmの間に吸収極大波長を有する。
<7> シランカップリング剤を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<8> シランカップリング剤を含む、<5>に記載の樹脂組成物。
<9> シランカップリング剤を含む、<6>に記載の樹脂組成物。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成される光学部材。
<11> 基材を備える<10>に記載の光学部材。
<12> 誘電体多層膜を有しない<10>に記載の光学部材。
本発明の一実施形態によれば、密着性に優れる光学部材を形成することができる樹脂組成物が提供される。また、本発明に係る一実施形態によれば、密着性に優れる光学部材が提供される。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の内容の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後いずれか一方に記載される単位は、特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
本発明の実施形態において「透過」とは、対象となる波長または波長領域において、透過率が、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であることを指す。「遮蔽」とは、対象となる波長または波長領域において、透過率が、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、さらに好ましくは1%未満であることを指す。また、「光線」とは、特段の規定が無い限り全光線を示す。
以下、本発明について具体的に説明する。
<組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、酸基を有するシクロオレフィン系樹脂(A)、吸収極大波長を波長350~1200nmに有する化合物(B)、および溶剤を含む。
樹脂組成物は、上記構成を有することで、当該樹脂組成物より形成された光学部材は、密着性に優れる。この理由は明らかではないが以下のとおり推定される。
本発明に係る樹脂組成物は、酸基を有するシクロオレフィン系樹脂(A)を含むので、例えば、ガラス基板の上に当該樹脂組成物を塗工して光学部材を形成した場合において、上記ガラス表面またはガラス表面に被覆されたシランカップリング剤の官能基と、シクロオレフィン系樹脂(A)に含まれる酸基とが共有結合またはイオン結合を形成するため、樹脂組成物と基材との密着性が向上すると推定している。
<<酸基を有するシクロオレフィン系樹脂>>
酸基を有するシクロオレフィン系樹脂(A)(以降、「樹脂(A)」ともいう。)の酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、フェノール性ヒドロキシ基、スルフィノ基などが挙げられる。
これらの中でも、酸基としては、好ましくはカルボキシ基、スルホ基、および、リン酸基であり、より好ましくはカルボキシ基である。
酸基の酸解離定数(pKa)としては、好ましくは10.5以下であり、より好ましくは9.5以下である。
シクロオレフィン系樹脂としては、酸基を有していれば特に制限はなく、例えば、環状オレフィンと非環状オレフィンとの付加共重合体、1種または2種以上の環状オレフィンの開環メタセシス重合体、前記開環メタセシス重合体を水素化して得られる重合体などが挙げられる。
上記環状オレフィン(シクロオレフィン)としては、例えば、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン、およびこれらの誘導体が挙げられる。
また、樹脂(A)は、エステル基を有するシクロオレフィン系樹脂を加水分解して得たものであってもよい。
密着性に優れる観点から、樹脂(A)は、下記構造(a)から少なくとも1つの水素原子が除去された基(以下、単に「構造(a)」ともいう。)を含むことが好ましい。
Figure 2023182341000005
構造(a)中、R1~R3は、それぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、RAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、-S(=O)2OH、または下記(a1)~(a6)のいずれかの基を表す。
Figure 2023182341000006
式中、AAcは-COOH、-O(=O)(OH)2、または-S(=O)2OHを表し、nは1~20の整数を表し、Raはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。
構造(a)から少なくとも1つの水素原子が除去された基は、構造(a)の炭素原子が樹脂の主鎖に含まれていてもよいし、他の構造または連結基を介して樹脂の主鎖を結合していてもよい。
構造(a)は、下記構造(a′)における4位と5位に該当する炭素原子が、樹脂の主鎖に含まれているか、または、4位と5位に該当する炭素原子に縮合環が結合し、その縮合環の環員である炭素原子が樹脂の主鎖に含まれていることが好ましい。
Figure 2023182341000007
上記縮合環としては、飽和脂肪族環構造が好ましい。飽和脂肪族環構造としては、好ましくは炭素数4~8の飽和脂肪族環構造であり、より好ましくは炭素数4~6の飽和脂肪族環構造である。
樹脂(A)は、繰り返し単位中に構造(a)を1つ含んでいてもよいし、複数含んでいてもよい。
1~R3はそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表す。上記炭素数1~20の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、または、環状であってもよいし、飽和または不飽和の炭化水素基であってもよい。
上記炭素数1~20の炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数1~12であり、より好ましくは炭素数1~10であり、さらに好ましくは炭素数1~5である。
密着性に優れる観点から、炭素数1~20の炭化水素基は、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基がより好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基がさらに好ましい。
1およびR2は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭素数1~12(より好ましくは炭素数1~10であり、さらに好ましくは炭素数1~5である)の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(より好ましくは直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは直鎖状の飽和炭化水素基である)であり、より好ましくは水素原子である。
3は、水素原子または炭素数1~12の炭化水素基が好ましく、水素原子または直鎖状の炭素数1~10の飽和炭化水素基がより好ましく、水素原子または直鎖状の炭素数1~5の飽和炭化水素基がさらに好ましく、水素原子、メチル基、またはエチル基が特に好ましい。
構造(a)中、RAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、-S(=O)2OH、または上記(a1)~(a6)のいずれかの基を表す。
-COOH、-OP(=O)(OH)2、および、-S(=O)2OHの中でも、RAcおよびAAcとしては、それぞれ独立に、好ましくは-COOH、または-OP(=O)(OH)2であり、より好ましくは-COOHである。
(a1)~(a6)としては、好ましくは(a3)、または(a5)であり、より好ましくは、(a3)である。
構造単位(a)の具体例として以下が挙げられるが、本発明に用いられ得る構造単位(a)がこれらに限定されることはない。なお、下記具体例は、構造式から少なくとも1つの水素原子が除去された基を表す。
Figure 2023182341000008
密着性に優れる観点から、樹脂(A)は、下記繰り返し単位(A-1)および繰り返し単位(A-2)の少なくとも一方を有することがより好ましい。
Figure 2023182341000009
繰り返し単位(A-1)および(A-2)中、R1~R3、およびRAcは上述の構造(a)と同義であり、好ましい態様も同様である。繰り返し単位(A-1)中、mAは1~4の整数を表し、繰り返し単位(A-2)中、mBは、0~4の整数を表す。
<<その他の樹脂>>
本発明の組成物は、上記樹脂(A)以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、酸基を持たないシクロオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、密着性に優れる光学部材を形成することができる樹脂組成物が得られやすく、かつ、上記樹脂(A)との相溶性に優れるという観点から、その他の樹脂としては、好ましくは酸基を持たないシクロオレフィン系樹脂である。
酸基を持たないシクロオレフィン系樹脂としては、下記構造(b)から少なくとも1つの水素原子が除去された基(以下、単に「構造(b)」ともいう。)を含むことが好ましく、下記繰り返し単位(B-1)を含むことがより好ましい。
構造(b)は、構造(b)の炭素原子が樹脂の主鎖に含まれていることが好ましく、構造(b)の環構造の環員である炭素原子が樹脂の主鎖に含まれていることがより好ましい。
Figure 2023182341000010
構造(b)中、R1~R3は、それぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、REsは-COOR4、-OP(=O)(OH)(OR4)、若しくは-S(=O)2OR4、または、下記(b1)~(b6)のいずれかの基を表す。
Figure 2023182341000011
構造(b)中、REsにおけるR4は、炭素数1~5のアルキル基を表し、Rbはそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。
構造(b)中、R1~R3は、上記構造(a)中のR1~R3と同義であり、好ましい態様も同様である。
構造(b)中、REsにおけるR4は、炭素数1~5のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1~3のアルキル基を表す。
構造(b)中、REsは好ましくは-COOR4(R4は、炭素数1~5のアルキル基を表し、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基を表す)である。
その他の樹脂は、下記繰り返し単位(B-1)および繰り返し単位(B-2)の少なくとも一方を有することがより好ましい。
Figure 2023182341000012
繰り返し単位(B-1)および(B-2)中、R1~R3、およびREsは上述の構造(b)と同義であり、好ましい態様も同様である。繰り返し単位(B-1)中、mCは1~4の整数を表し、繰り返し単位(B-2)中、mCは、0~4の整数を表す。
<<酸価>>
樹脂(A)の酸価は、樹脂組成物と基材との密着性がより向上しやすいという観点から、2~401mgKOH/gであることが好ましく、2~310mgKOH/gであることがより好ましく、2~150mgKOH/gであることがさらに好ましい。
酸価は、後述に記載の実施例に記載の方法で求められる。
樹脂(A)の具体例を以下に示すが、本発明において用いられる樹脂(A)はこれに限定されるものではない。
Figure 2023182341000013
<<変性率>>
樹脂(A)は、酸基による変性率(以下、単に「変性率」ともいう場合がある。)が、好ましくは1%以上であり、より好ましくは1%~50%である。酸基による変性率が1%以上であると密着性に優れる。
酸基による変性率は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は好ましくは1万以上30万未満であり、より好ましくは2万以上18万以下である。
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は実施例に記載の方法で求められる。
<化合物(B)>
本発明の樹脂組成物は波長350~1200nmの領域に吸収極大を有する化合物(B)(以下「化合物(B)」ともいう。)を含む。
化合物(B)は、波長350~1200nmの領域に吸収極大を有すれば特に制限されないが、溶剤可溶型の化合物であることが好ましい。溶剤可溶型の化合物は、好ましくはジクロロメタン、シクロペンタノン、メタノール、トルエン、ジエチルエーテル、または、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100mLに対して10mg以上溶解する化合物である。
化合物(B)としては、例えば、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ピロロピロール系化合物、クロコニウム系化合物、ヘキサフィリン系化合物、ポリメチン系化合物(ただし、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、およびクロコニウム系化合物を除く)、金属ジチオラート系化合物、および環拡張BODIPY(ボロンジピロメテン)系化合物、ならびに、銅錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物(ただし、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、およびクロコニウム系化合物を除く)クロコニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、およびピロロピロール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
樹脂組成物が上記のような化合物(B)を含むことにより、吸収極大波長付近での効率的な光線カット特性、および、急峻なスペクトル形状を同時に達成することができる光学部材が得られやすい。
銅錯体としては、例えば、特開2014-41318号公報の段落[0022]~[0042]に記載されたリン酸エステル銅錯体、特開2015-43063号公報の段落[0021]~[0039]に記載されたスルホン酸銅錯体、特開2021-76638の段落[0040]に記載されたリン酸エステルと銅からなる化合物、特開2019-081896の段落[0016]に記載されたホスホン酸と銅からなる化合物などが挙げられる。
化合物(B)は、下記要件(1)~(3)のいずれかを満たすことが好ましい。
要件(1):波長360~670nmの間に極大吸収波長を有する。
要件(2):波長670~800nmの間に極大吸収波長を有する。
要件(3):波長800~1100nmの間に極大吸収波長を有する。
化合物(B)が要件(1)を満たすと、可視域を遮蔽しながら赤外域を透過させることが可能となる為、上記化合物(B)を含む樹脂組成物より形成されたフィルターを赤外線カメラに導入した場合、良好な画質を得ることが可能となる。
化合物(B)が要件(2)を満たすと、赤外線を遮蔽しながら可視域を透過させることが可能となる為、上記化合物(B)を含む樹脂組成物より形成されたフィルターを可視光撮像カメラに導入した場合、良好な画質を得ることが可能となる。
化合物(B)が要件(3)を満たすと、赤外線領域に於いて、特定の波長のみを選択的に透過させることが可能となるため、上記化合物(B)を含む樹脂組成物より形成されたフィルターを可視域、赤外域それぞれの波長域で撮像するカメラに用いた場合、良好な画質を得ることが可能となる。
化合物(B)の合成方法は特に制限はなく、一般的に知られている方法で合成すればよい。化合物(B)は、例えば、特開平1-228960号公報、特開2001-40234号公報、特許第3094037号公報、特許第3196383号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
化合物(B)の含有量は、例えば、化合物(B)を含有する樹脂製基板である場合には、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~2.0質量部、より好ましくは0.02~1.5質量部、さらに好ましくは0.03~1.0質量部である。
化合物(B)は、上記樹脂組成物中に1種単独で含有されていてもよいし、複数が含有されていてもよい。
<<シランカップリング剤>>
本発明の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。
樹脂組成物がシランカップリング剤を含有すると、ガラス基板と樹脂間とを繋ぐ役割を果たすことからガラス基板と樹脂との間の密着性を向上することができる。
シランカップリング剤としては、上記樹脂(A)が有する酸基と反応する官能基を有するシランカップリング剤(以下、「官能性シランカップリング剤」ともいう。)が好ましい。
官能性シランカップリング剤としては、エポキシ基を含有するシランカップリング剤、アミノ基を含有するシランカップリング剤などが挙げられる。エポキシ基またはアミノ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのなかでも、官能性シランカップリング剤としては、好ましくはエポキシ基を含有するシランカップリング剤であり、特に好ましくは、エポキシ基を持つ3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、または、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
シランカップリング剤は、組成物中に1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。シランカップリング剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部であり、より好ましくは0.5~3質量部である。
<<溶剤>>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含む。
溶剤としては、特に制限はなく、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;
乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル;
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール等の(シクロ)アルキルアルコール;
ジアセトンアルコール等のケトアルコール;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のグリコールエーテル;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン;
プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等のジアセテート;
3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート等のアルコキシカルボン酸エステル;
酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ぎ酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の脂肪酸アルキルエステル;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド、又はラクタム等を挙げられる。
特に、用いる色素の溶解性の観点で、溶剤としてはケトン系溶剤が好ましい。
溶剤の含有量としては、上記樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは100~2,000質量部であり、より好ましくは300~500質量部である。
溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<<その他成分>>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光消光剤、密着助剤等のその他の成分(添加剤)を含有してもよい。また、後述するキャスト成形により光学部材を製造する場合には、樹脂組成物は、レベリング剤や消泡剤を含有していてもよい。レベリング剤や消泡剤を組成物に添加することで光学部材の製造を容易にすることができる。
これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-ジオキシ-3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アントラセン系化合物、シアノアクリレート系化合物、特開2019-014707号公報等に記載の化合物が挙げられる。これらの中でも、紫外線吸収剤としては、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物が吸収波長と化合物の安定性の観点で特に好ましい。
紫外線吸収剤を含有することで、近紫外波長領域においても入射角度依存性が少ない光学部材を容易に得ることができ、光学部材をセンサーモジュールに使用した場合、得られる画質がより良好となる。
<<樹脂組成物の製造方法>>
樹脂(A)の製造としては、エステル基を持つシクロオレフィンポリマーを加水分解する方法、あらかじめ酸基を持つモノマーを共重合する方法などが挙げられる。
<光学部材>
本発明に係る光学部材は、上記樹脂組成物から形成される光学部材であり、好ましくは基材を備える光学部材である。
また、本発明に係る光学部材は、光学フィルターとして好適に用いることができる。光学フィルターは、上記光学部材のみから構成されていてもよく、また、耐UV性および赤外線遮蔽性の観点から、上記光学部材と誘電体多層膜とを有していてもよい。
光学部材は、該光学部材のみで光学フィルターとして使用が可能であるが、樹脂製支持体やガラス製支持体などの基材に該光学部材を積層させてもよく、必要に応じて、さらに誘電体多層膜、反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜などの機能膜を、公知の方法で適宜設けてもよい。
光学部材は、誘電体多層膜を有さないことが好ましい。
<<基材>>
本発明に係る光学部材で用いる基材としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、具体的には樹脂基板、ガラス基板などが挙げられる。基材は、特に制限はなく、透明基材であってもよいし、色素が含まれた基材であってもよい。
<<ガラス基板>>
ガラス基板としては、例えば、ケイ酸ガラス、石英、アルミナガラス、サファイアガラス、リン酸塩ガラス、フツリン酸塩ガラス等が好ましく、単層でも多層でもよく、複数の材料を組み合わせてもよい。前記リン酸塩ガラスおよびフツリン酸塩ガラスとしては、CuO含有リン酸塩ガラスおよびCuO含有フツリン酸塩ガラスが好ましい。
<<樹脂基板>>
本発明で用いる樹脂基板としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度での高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、さらに好ましくは120~360℃である樹脂を用いることができる。
また、樹脂基板のガラス転移温度が、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上である場合には、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られる。
このような樹脂基板としては、例えば、上記樹脂(A)以外のノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリサルホン系樹脂(PSF)、ポリエーテルサルホン系樹脂(PES)、ポリパラフェニレン系樹脂(PPP)、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂(PEPO)、ポリイミド樹脂(PPI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、(変性)アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、有機-無機ナノハイブリッド材料が挙げられる。
<光学部材の製造方法>
光学部材は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができる。
(溶融成形)
溶融成形としては、具体的には、樹脂(A)と化合物(B)とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法、樹脂(A)と化合物(B)とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法、または、樹脂(A)および溶剤と、化合物(B)とを含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などが挙げられる。
(キャスト成形)
キャスト成形としては、樹脂(A)および溶剤と、(B)とを含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法により製造することができる。
[光学部材の用途]
本発明の光学部材は、例えば、スマートフォン用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、暗視カメラ、モーションキャプチャー、レーザー距離計、バーチャル試着、ナンバープレート認識装置、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、虹彩認証システム、指紋認証システム、静脈認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、植生センサー、血中酸素濃度計、睡眠モニター等に搭載されるセンサーモジュールにおいて、好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
化合物の略号は以下の通りである。なお、以下では、式(X)で表される化合物を単に「化合物(X)」と示すことがある。
スクアリリウム1:下記式で表される化合物(吸収極大波長:882nm)
スクアリリウム2:下記式で表される化合物(吸収極大波長:696nm)
Figure 2023182341000015
スクアリリウム3:下記式で表される化合物(吸収極大波長:712nm)
Figure 2023182341000016
ポリメチン1:下記式で表される化合物(吸収極大波長:825nm)
Figure 2023182341000017
ポリメチン2:下記式で表される化合物(吸収極大波長:739nm)
Figure 2023182341000018
ポリメチン3:下記式で表される化合物(吸収極大波長:981nm)
Figure 2023182341000019
ポリメチン4:下記式で表される化合物(吸収極大波長:934nm)
銅錯体1:
酢酸銅1水和物(東京化成工業(株)製)5質量部、および、りん酸ジブチル(東京化成工業(株)製)10.5質量部をジクロロメタン20mL中で混合し、室温で4時間撹拌しながら反応を進行させた。得られた反応生成物を、ヘキサン溶剤中に滴下し、沈殿物を濾過により抽出、乾燥することで銅錯体1を得た。
紫外線吸収剤1:下記式で表される化合物
Figure 2023182341000021
紫外線吸収剤2:下記式で表される化合物
Figure 2023182341000022
・界面活性剤;
界面活性剤1:信越化学工業(株)製、製品名:KF-643(シリコーン系界面活性剤)
界面活性剤2:DIC(株)製、製品名:メガファックF-474(フッ素系界面活性剤)
・シランカップリング剤;
密着促進剤1:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
密着促進剤2:3-アミノプロピルトリエトキシシラン
・酸化防止剤
酸化防止剤1:BASF社製、製品名:Irganox1010
・溶媒;
溶媒1:シクロペンタノン
溶媒2:ジクロロメタン
溶媒3:テトラヒドロフラン
(重合体1の合成)
冷却管と撹拌機を備えたフラスコに、環状ポリオレフィン(JSR株式会社製、製品名:ARTON F4520)5質量部およびトルエン20質量部を仕込み、10時間撹拌を行った。その後、水酸化カリウム0.1質量部および1-ブタノール12.8質量部を混合した液を加え、55℃で8時間混合した。そののち、リンゴ酸3.4質量部とメタノール7質量部を混合した液を加えた後、40℃で1時間撹拌を行った。次いで、テトラヒドロフラン40質量部を加えたのち、フィルターろ過を行い、固体を濾別した。その後、撹拌機を備えたフラスコにメタノールを400質量部添加し、先ほど習得したろ液を2時間かけ滴下し、精製した白色固体をろ取、70℃で8時間真空乾燥することにより、下記スキームに示される重合体1を4g得た。
Figure 2023182341000023
なお、変性率は以下の方法により求めた。得られた重合体を重クロロホルム溶液に溶解させた後、1H-NMR測定を実施した。測定結果において、0.5ppm~3ppmの積分比を1000としたときの3.65ppm付近の積分比α求め、以下式に代入して変性率を算出した。
変性率(%)=(1-α/158)×100
(重合体2~重合体4の合成)
合成例1において、水酸化カリウムの添加量を0.2、0.6、または、1.2質量部とした他は、合成例1と同様にして重合体2、重合体3、および重合体4を得た。
得られた重合体2~重合体4の変性率は、上記重合体1と同様の方法で算出したところ、それぞれ3%、5%、および20%であった。
(重合体5の合成)
合成例1において、水酸化カリウムの添加量を1.2質量部、および水酸化カリウム、1-ブタノールを添加後の加熱温度を90℃とした他は、合成例1と同様にして重合体5を得た。
得られた重合体5の変性率は、上記重合体1と同様の方法で算出したところ、45%であった。
(重合体6の合成)
国際公開第2015/085428号のExample3に従って合成を行い、下記構造からなる重合体6を得た。
Figure 2023182341000024
重合体7:酸基を持たないシクロオレフィン系樹脂(JSR(株)製、製品名:ARTON F4520)
[実施例1]
上記重合体1を100質量部、スクアリリウム1を0.7質量部、ポリメチン1を1.5質量部、紫外線吸収剤1を0.7質量部、密着促進剤1を1.8質量部、酸化防止剤1を1.1質量部、及び溶媒としてシクロペンタノン354質量部を容器に量り取り、撹拌機で混合した。この混合物を0.5μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルターを用いて0.05MPaの一定加圧条件で加圧ろ過することにより、実施例1の組成物を得た。
上記で得られた組成物をガラス基板上に表1に記載の膜厚になるようにスピンコート法にて塗布した。その後、塗膜を表2に記載の成膜条件で成膜することで、ガラス基板上に表1に記載の平均膜厚の赤外線遮蔽膜を作製した。なお、膜厚は触針式段差計(ヤマト科学(株)製、製品名:「アルファステップIQ」)にて測定した。
[実施例2~6、および、8、ならびに、比較例1~2]
重合体、色素、各種添加剤及び溶媒の種類及び配合部数(質量部)を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6および8ならびに比較例1~2の各組成物を得たのち、ガラス基板上に表1に記載の平均膜厚の赤外線遮蔽膜を作製した。
[実施例7]
重合体、色素、各種添加剤及び溶媒の種類及び配合部数(質量部)を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の組成物を得た。
得られた組成物を用い、ガラス基板上に表1に記載の膜厚になるように溶液キャスト法にて塗布した。その後、表2に記載の成膜条件で成膜し、ガラス基板から剥離することで、平均膜厚200μmの赤外線遮蔽膜を作製した。
[比較例3]
特許第6646179号公報の段落[0073]~[0077]に記載の実施例1に従い、光学フィルターを得た。
<評価>
(酸価)
上記重合体1~7の酸価は以下の手順で測定した。その結果を表1に示す。
撹拌子を入れたフラスコにトルエン80mL、エタノール4mL、上記で合成または用意した重合体(樹脂)10mg、および、フェノールフタレイン2mgを添加し、オイルバスを70℃に加熱しながらマグネチックスターラーにて撹拌を行った。
樹脂が溶解した後、0.01mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液を少しずつ加え、赤紫色が30秒持続するまでの水酸化カリウム・エタノール溶液の添加量(mL)から酸価を算出した。
酸価(KOH(mg)/樹脂(g))=56.11×水酸化カリウム・エタノール溶液の添加量
(密着性)
上記ガラス基板上に作成した赤外線遮蔽膜(塗布膜)について、JIS規格K5600-5-6(ISO2409)に記載のクロスカット試験により、ガラスに対する塗布膜の基板密着性を評価した。
塗膜のカットは、直角の格子パターンを計100マス塗膜に切り込み、その切り込みが支持体の表面まで達した状態になるようにカットした。カットされた塗膜について塗膜側にテープを張り付けたのち、テープを剥離し、塗布膜がガラスから剥離しているかどうかを目視で判断した。
具体的には、試験結果を下記4分類のうちいずれに該当するかによって評価を行った。このとき、分類0又は1の場合に密着性「良好」、分類2の場合に密着性「可」、分類3の場合に密着性「不良」であると判断した。分類0~2の場合、密着性に優れるといえる。本実施例ではいずれも分類0~2であり、密着性は「良好」または「可」であった。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも塗布膜のはがれがない状態。
分類1:塗布膜の剥がれが0マスを超え5マス以内である状態。
分類2:塗布膜の剥がれが5マスを超え20マス以内である状態。
分類3:塗布膜の剥がれが21マス以上、またはマス目以外の部分も大きく剥離している状態。
(量産性)
成膜時間が短いほど、量産性に優れるといえる。
Figure 2023182341000025
Figure 2023182341000026
表1中、「-」は該当する成分を含まないか、または、測定ができなかった、もしくは評価を行っていないことを意味している。表2中、例えば、「rt 30min→70℃ 1h→150℃ 1h」とは、室温で30分処理したのち、70℃で1時間処理し、その後、150℃で1時間処理を行ったことを意味している。
上記表1に示されるように、実施例1~6で作製した赤外線遮蔽膜は、いずれも、比較例1に比べてガラス基板に対する密着性が良好であった。また、実施例7、および、8は化合物(B)として銅錯体を用いた場合であっても銅錯体は溶媒に可溶であり、且つ製膜時間が短かかった。一方、比較例2は、組成物の調製において化合物(B)が不溶であり、赤外線遮蔽膜の作成ができなかった。また、比較例3は、成膜に12時間以上かかり、量産性に劣っていることがわかる。
本発明の樹脂組成物より形成される光学部材は、スマートフォン用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、暗視カメラ、モーションキャプチャー、レーザー距離計、バーチャル試着、ナンバープレート認識装置、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に好適に用いることができる。

Claims (12)

  1. 酸基を有するシクロオレフィン系樹脂(A)、
    吸収極大波長を波長350~1200nmに有する化合物(B)、および、
    溶剤、を含む樹脂組成物。
  2. 前記シクロオレフィン系樹脂(A)の酸価が、2~401mgKOH/gである請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記シクロオレフィン系樹脂(A)が、下記構造(a)から少なくとも1つの水素原子を除いた基を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
    Figure 2023182341000027
    (構造(a)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、RAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、-S(=O)2OH、または下記(a1)~(a6)のいずれかの基を表す。)
    Figure 2023182341000028
    (式中、AAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、または、-S(=O)2OHを表し、nは1~20の整数を表し、Raはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。)
  4. 前記シクロオレフィン系樹脂(A)が、下記繰り返し単位(A-1)および繰り返し単位(A-2)の少なくとも一方を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
    Figure 2023182341000029
    繰り返し単位(A-1)および(A-2)中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、RAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、-S(=O)2OH、または下記(a1)~(a6)のを表し、mAは、1~4の整数を表し、mBは0~4の整数を表す。)
    Figure 2023182341000030
    (式中、AAcは-COOH、-OP(=O)(OH)2、または、-S(=O)2OHを表し、nは1~20の整数を表し、Raはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。)
  5. 前記化合物(B)が下記要件(1)~(3)いずれか1つを満たす請求項1に記載の樹脂組成物。
    要件(1):波長360~670nmの間に吸収極大波長を有する。
    要件(2):波長670~800nmの間に吸収極大波長を有する。
    要件(3):波長800~1100nmの間に吸収極大波長を有する。
  6. 前記化合物(B)が下記要件(1)~(3)いずれか1つを満たす請求項4に記載の樹脂組成物。
    要件(1):波長360~670nmの間に吸収極大波長を有する。
    要件(2):波長670~800nmの間に吸収極大波長を有する。
    要件(3):波長800~1100nmの間に吸収極大波長を有する。
  7. シランカップリング剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  8. シランカップリング剤を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
  9. シランカップリング剤を含む、請求項6に記載の樹脂組成物。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される光学部材。
  11. 基材を備える請求項10に記載の光学部材。
  12. 誘電体多層膜を有しない請求項11に記載の光学部材。
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