背景技術から分かるように、現在の太陽電池は光電変換性能が良くない。
分析したところ、現在の太陽電池の光電変換性能が不良になる原因の一つとして、エミッタが一般的に金属電極に電気的に接続されているため、金属電極がエミッタ内のキャリアを収集できることにあることを見出した。金属電極とエミッタとの間のコンタクト抵抗を低減するために、エミッタのシート抵抗を小さくする必要があるが、従来、エミッタのシート抵抗を小さくするために、エミッタのドーピング濃度を増加させることが一般的であった。しかしながら、エミッタのドーピング濃度が増加すると、エミッタ内のドーピング元素が多すぎてしまい、エミッタ内のドーピング元素が強い再結合中心となり、オージェ再結合の増加を引き起こし、エミッタのパッシベーション性能を悪化させ、さらに太陽電池の光電変換性能を悪化させてしまう。
本願実施例によって提供される太陽電池では、N型ベースの第1面にP型エミッタが設けられ、第1部分のP型エミッタが第1ピラミッド構造を有し、かつ、第1ピラミッド構造の稜線の少なくとも一部に遷移面を有し、遷移面が第1ピラミッド構造の2つの斜面と接触し、かつ第1ピラミッド構造の中心に対して陥凹または突出し、第1ピラミッド構造の頂部にサブ構造を有する。すなわち、第1ピラミッド構造はミクロ欠陥を有し、このようなミクロ欠陥は、一定の結晶変化を形成して欠陥エネルギー準位を形成することができ、これにより、第1部分のP型エミッタのシート抵抗を大きく下げた場合に、第1部分のP型エミッタのドーピング濃度を低く保ち、オージェ再結合の発生を低減し、太陽電池の光電変換性能を向上させることができる。また、第2部分のP型エミッタでは、第2ピラミッド構造の稜線が直線的、すなわち正常なピラミッド構造であり、これにより、第2部分のP型エミッタのシート抵抗が高くなり、再結合中心の生成を減らすことができ、太陽電池の開放電圧および短絡電流を高めることができる。
以下、本願の各実施例について図面を結合して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をよりよく理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部がなくても、以下の各実施例に基づく種々の変更や修正によっても、本願が保護を要求している技術案を実現することができる。
図1は、本願の一実施例に係る太陽電池の構成を示す図であり、図2は、図1における1の部分拡大図であり、図3は、図1における1のもう一つの部分拡大図であり、図4は、図1における1のさらに他の部分拡大図であり、図5は、図1における2の部分拡大図である。
図1~図5を参照して、太陽電池は、N型ベース100と、N型ベース100の第1面に設けられたP型エミッタ10と、N型ベース100の第2面に位置しかつN型ベース100から離れる方向に順に設けられたトンネル層150およびドープ導電層160と、を備え、ここで、P型エミッタ10が第1部分11と第2部分12を有し、第1部分11の頂面が第1ピラミッド構造1を含み、第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部に、前記第1ピラミッド構造1の隣接する2つの斜面と接触し、第1ピラミッド構造1の中心に対して陥凹または突出した遷移面13を有し、第1ピラミッド構造1の少なくとも一部の頂面が、球体または球様体であるサブ構造14を含み、第2部分12の頂面が、稜線が直線的である第2ピラミッド構造2を含み、ここで、第1部分11のシート抵抗が10ohm/sq~500ohm/sqであり、第1部分11の頂面ドーピング濃度が1E17atom/cm3~8E19atom/cm3であり、第2部分12のシート抵抗が100ohm/sq~1000ohm/sqであり、第2部分12の頂面ドーピング濃度が1E16atom/cm3~5E19atom/cm3である。
N型ベース100は、入射光を受光して光生成キャリアを生成するためのものである。いくつかの実施例において、N型ベース100は、N型シリコンベース100であってもよく、N型シリコンベースの材料は、単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、または微結晶シリコンの少なくとも一種を含み得る。N型ベース100は、N型の半導体ベース100であり、すなわち、N型ベース100内にN型のドーピングイオンがドーピングされており、N型のドーピングイオンは、リンイオン、ヒ素イオン、またはアンチモンイオンのいずれかであってもよい。
いくつかの実施例において、太陽電池は、TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化層パッシベーシヨンコンタクト)セルであり、N型ベース100の第1面と第2面とが対向して設置され、N型ベース100の第1面および第2面は、いずれも入射光または反射光を受光することに使用できる。いくつかの実施例において、第1面は、N型ベース100の裏面であり、第2面は、N型ベース100の表面であってもよい。他の幾つかの実施例において、第1面はN型ベース100の表面であってもよく、これで、第2面はN型ベース100の裏面である。
いくつかの実施例において、N型ベース100の第2面は、入射光線に対する反射率が小さく、光の吸収利用率が大きくなるように、ピラミッドテクスチャ面としてもよい。N型ベース100の第1面は、例えば積層された段差形態ようなの非ピラミッドテクスチャ面とすることができ、これにより、N型ベース100の第1面に位置するトンネル酸化層110が高い緻密性及び均一性を有し、トンネル酸化層110がN型ベース100の第1面に対して良好なパッシベーション効果を有する。いくつかの実施例において、第1面は、N型ベース100の裏面であり、第2面は、N型ベース100の表面であってもよい。他の幾つかの実施例において、第1面はN型ベース100の表面であってもよく、これで、第2面はN型ベース100の裏面である。
図2~図4を参照して、第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部に遷移面13を有する。ここでの稜線とは、文字上の「線」の意味だけではなく、第1ピラミッド構造1の帯状の隆起部、即ち、第1ピラミッド構造1において隣接する斜面同士が接合している部分を指すものであることが理解できる。具体的には、第1ピラミッド構造1は、底面と、底面に接する複数の斜面と、を有し、隣接する2つの斜面同士が互いに接合し、隣接する2つの斜面の間に遷移面13が位置し、すなわち、隣接する2つの斜面の少なくとも一部は、遷移面13を介して接合することができる。具体的には、幾つかの実施例において、第1ピラミッド構造1の一本の稜線に遷移面13を有するが、遷移面13は、1本の稜線のうち一部の位置のみにあってもよいし、稜線全体において遷移面13を有する、すなわち、第1ピラミッド構造1における隣接する2つの斜面同士が遷移面13を介して接していてもよい。他の幾つかの実施例において、第1ピラミッド構造1の複数の稜線のいずれにおいても遷移面13を有してもよく、かつ遷移面13は稜線のうち一部の位置にあってもよいし、稜線全体において遷移面13を有してもよい。本願実施例は、遷移面13の稜線上における具体的な位置を制限するものではなく、遷移面13が稜線上に位置することを満たしていればよい。
ここでの第1ピラミッド構造1及び第2ピラミッド構造2は、テクスチャー構造とは異なることが理解できる。本願実施例では、P型エミッタ10の表面に第1ピラミッド構造1及び第2ピラミッド構造2を設けることで、第1部分11のP型エミッタ10のシリコン結晶形態を変化させ、第1部分11のP型エミッタ10の性能を変化させている。
具体的には、第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部に遷移面13を有する、すなわち、第1ピラミッド構造1の稜線が不規則な変形を有し、第1ピラミッド構造1の頂面の少なくとも一部が、さらに球形または擬球形のサブ構造14を有することにより、第1ピラミッド構造1がミクロ欠陥を有するようになり、第1部分11のエミッタがシリコン結晶の変化を形成する。一方、第2ピラミッド構造2の稜線は直線的であり、つまり第2ピラミッド構造2の稜線には歪みが生じていない。第1ピラミッド構造1の稜線における歪み及び頂部の歪みに基づいて、第1部分11のシート抵抗が10ohm/sq~500ohm/sqであり、第1部分11の頂面ドーピング濃度が1E17atom/cm3~8E19atom/cm3であり、第2ピラミッド構造2の稜線に歪みが発生しないので、第2部分12のシート抵抗が100ohm/sq~1000ohm/sqであり、第2部分12の頂面ドーピング濃度が1E16atom/cm3~5E19atom/cm3である。第1部分11のシート抵抗は、第2部分12のシート抵抗よりもはるかに小さいが、第1部分11の頂面ドーピング濃度と第2部分12の頂面ドーピング濃度とが大きく異ならないことを見つけるのは難しいことではない。このことから、第1ピラミッド構造1のミクロ欠陥により、第1部分11のシート抵抗が第2部分12のシート抵抗よりも十分に低くされて、第1部分11のP型エミッタ10のオーミックコンタクトを大きく改善できると共に、第1部分11のP型エミッタ10のドーピング濃度を低く保って、第1部分11のP型エミッタ10の再結合中心の発生を減らすことができ、P型エミッタ10のパッシベーション効果を良く保って、オージェ再結合の発生を低減し、さらに太陽電池の光電変換性能を改善できることが分かる。幾つかの実施例において、第1ピラミッド構造1の高さは、0.1μm~5μmであり、第1ピラミッド構造1の底部の一次元寸法は、0.5μm~5μmである。第1部分11のP型エミッタ10における第1ピラミッド構造1の高さ及び底部の一次元寸法が大きいほど、第1ピラミッド構造1の全体サイズが大きくなり、これにより、単位面積あたりの第1部分11のP型エミッタ10における第1ピラミッド構造1の数が少なくなることが理解できる。第1ピラミッド構造1の数が少ないほど、つまりミクロ欠陥を有するピラミッド構造が少ないほど、第1部分11のP型エミッタ10に結晶歪みが生じる度合いは小さい。その分、第1ピラミッド構造1のサイズが小さいほど、単位面積あたりの第1部分11のP型エミッタ10における第1ピラミッド構造1の数が多くなり、これにより、第1部分11のP型エミッタ10に結晶歪みが生じる度合いが大きくなる。これを踏まえて、第1ピラミッド構造1の高さを0.1μm~5μmの範囲内とし、第1ピラミッド構造1の底部の一次元寸法を0.1μm~5μmの範囲内とすることで、第1ピラミッド構造1の数を多くして、第1部分11のP型エミッタ10に結晶歪みが生じる度合いを大きくし、大きな欠陥エネルギー準位を形成して、第1部分11のP型エミッタ10に小さなシート抵抗を持たせ、オーミックコンタクトを改善する。一方、この範囲内とすることで、第1部分11のP型エミッタ10における第1ピラミッド構造1の数を過多にせず、形成される欠陥エネルギー準位が過大となることによってP型エミッタ10に強い再結合中心が形成されるという問題を防止し、さらに第1部分11のP型エミッタ10のパッシベーション性能を向上することができる。
図2および図3を参照して、前記第1ピラミッド構造1の少なくとも一部は、サブ構造14をさらに含み、サブ構造14の存在により、第1ピラミッド構造1におけるミクロ欠陥の度合いが大きくなり、第1部分11のエミッタに形成される欠陥エネルギー準位が大きく、第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗がより小さくなる。
図1及び図5を参照して、第2部分12の頂面における第2ピラミッド構造2の稜線は直線状に設置されており、すなわち、第2ピラミッド構造2では、隣接する2つの斜面は直接接合されており、稜線には歪みが生じていない。すなわち、第2ピラミッド構造2は、規則的な四面体構造である。すなわち、第2部分12のP型エミッタ10では、結晶構造が変化しないため、第2部分12のP型エミッタ10に欠陥エネルギー準位が形成されることはなく、第2部分12のP型エミッタ10のシート抵抗が高くなるだけでなく、第2部分12のP型エミッタ10が多くの再結合中心を形成することを防止でき、これにより、第2部分12のP型エミッタ10のパッシベーション性能を高く保つことができ、太陽電池の開放電圧および短絡電流が大きくなり、太陽電池の光電変換性能が向上する。
図1を引き続き参照して、いくつかの実施例では、第1ピラミッド構造1と第2ピラミッド構造2との違いに基づいて、第1部分11のシート抵抗は第2部分12のシート抵抗よりも小さくてもよい。第1ピラミッド構造1における稜線に歪みが生じ、少なくとも一部の第1ピラミッド構造1がサブ構造14をさらに有するため、第1部分11のP型エミッタ10にエネルギー準位欠陥が形成され、第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗が小さくなる。一方、第2ピラミッド構造2の稜線に歪みが生じていないので、第2部分12のP型エミッタ10にエネルギー準位欠陥が発生しないため、第2部分12のP型エミッタ10は大きなシート抵抗を維持している。具体的には、いくつかの実施例において、第1部分11のシート抵抗は、100ohm/sq~50ohm/sq、50ohm/sq~75ohm/sq、75ohm/sq~100ohm/sq、100ohm/sq~150ohm/sq、150ohm/sq~200ohm/sq、200ohm/sq~300ohm/sq、300ohm/sq~400ohm/sq、または400ohm/sq~500ohm/sqであってもよい。第2部分12のシート抵抗は、100ohm/sq~200ohm/sq、200ohm/sq~300ohm/sq、300ohm/sq~400ohm/sq、400ohm/sq~500ohm/sq、500ohm/sq~700ohm/sq、700ohm/sq~850ohm/sq、850ohm/sq~1000ohm/sqであってもよい。第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗が第2部分12のシート抵抗よりも十分に小さいことで、第1部分11のP型エミッタ10のオーミックコンタクトを改善することができ、第1部分11のP型エミッタ10に金属電極を電気的に接触させる場合、第1部分11のP型エミッタ10と金属電極との接触抵抗を小さくして、第1部分11のP型エミッタ10及び第2部分12のP型エミッタ10におけるキャリアの輸送効率を改善することができる。また、第2部分12のP型エミッタ10の抵抗を100ohm/sq~1000ohm/sqとすることにより、第2部分12のP型エミッタ10におけるキャリア再結合を抑制することができる。幾つかの実施例において、第2部分12のP型エミッタ10の再結合電流が20fA/cm2未満であり、低い再結合電流は、キャリア再結合を小さくしてエミッタのパッシベーション効果を高め、さらに太陽電池の開放電圧および短絡電流を改善して太陽電池の光電変換効率を向上させるのに有利である。
幾つかの実施例において、第1部分11の接合深さは、第2部分12の接合深さよりも小さくない。つまり、第1部分11の厚さが大きいため、金属電極を第1部分11のP型エミッタ10に電気的に接続することができ、これにより、金属電極を形成するためのペーストを焼結する際に、P型エミッタ10を貫通して初期N型ベース100に直接接触することを防止することができる。また、第2部分12の接合深さが浅く設置される、すなわち、第2部分12のP型エミッタ10の厚さが小さいことで、第2部分12のドーピング元素の数が第1部分11のドーピング元素の数よりも少なく、つまり、第2部分12のP型エミッタ10のドーピング濃度が小さいため、第1部分11のP型エミッタ10よりも第2部分12のP型エミッタ10の方が良いパッシベーション効果を有し、キャリア再結合を低減し、太陽電池の開放電圧および短絡電流を向上させるのに有利である。
幾つかの実施例において、第1部分11の接合深さと第2部分12の接合深さとの比は、2よりも小さくない。第1部分11の接合深さと第2部分12の接合深さとの比は、2~5の間であることが好ましく、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5であってもよい。第1部分11の接合深さは、第2部分12の接合深さよりもはるかに大きく、これにより、第1部分11のP型エミッタ10の接合深さが大きく、金属電極を第1部分11のP型エミッタ10に電気的に接続させるように設置する場合、焼結過程においてペーストが第1部分11のP型エミッタ10を焼失しないように確保でき、金属電極とN型ベース100との接触によるp-n接合の破壊を防ぎ、太陽電池の良好な光電変換性能を確保することができる。
具体的には、幾つかの実施例において、第1部分11の接合深さは、0.2μm~10μmであり、第2部分12の接合深さは、0.05μm~5μmである。この範囲では、第1部分11の接合深さが大きくなり過ぎないため、第1部分11の厚さが大き過ぎることに起因して、第1部分11のP型エミッタ10におけるドーピング元素の含有量が高くなり過ぎて、強い再結合中心が発生してしまうという問題を回避できる。また、この範囲では、第2部分12の接合深さが小さいため、第2部分12のP型エミッタ10におけるドーピング元素が少なくなり、P型エミッタ10のパッシベーション効果が良好に保たれる。
幾つかの実施例において、第1部分11のP型エミッタ10のドーピング元素と第2部分12のP型エミッタ10のドーピング元素は、同じ導電型であり、かつ、第1部分11と第2部分12のドーピング元素は、三価元素の一つである。つまり、第1部分11のP型エミッタ10と第2部分12のP型エミッタ10には、三価元素のうち一種のみが含まれ、すなわち、第1部分11と第2部分12は単一の元素でドープされている。このため、第1部分11と第2部分12のP型エミッタ10には不純物元素が含まれず、不純物元素が再結合中心となることによるキャリア再結合の問題を防止することができる。
具体的には、幾つかの実施例において、第1部分11と第2部分12のドーピング元素は、ホウ素元素またはガリウム元素のいずれかを含む。第1部分11と第2部分12のp型エミッタ10が高効率ドーピング層となるように、第1部分11と第2部分12には1種類のドーピング元素のみが含まれるように設けられることにより、第1部分11と第2部分12のP型エミッタ10に不純物元素が存在しないか、または不純物元素の量が極めて少なく、不純物元素が再結合中心となる問題を回避し、さらにキャリア再結合を抑制し、キャリアの数を向上することができる。
幾つかの実施例において、第1部分11の頂面ドーピング濃度は、第2部分12の頂面ドーピング濃度よりも小さくない。第1部分11の接合深さは、第2部分12の接合深さよりも大きいため、第1部分11のP型エミッタ10では、ドーピング元素の含有量がより多くなっている。具体的には、幾つかの実施例において、第1部分11の頂面ドーピング濃度は、1E17atom/cm3~7E17atom/cm3、7E17atom/cm3~1E18atom/cm3、1E18atom/cm3~6E18atom/cm3、6E18atom/cm3~1E19atom/cm3、または、1E19atom/cm3~8E19atom/cm3であってもよく、第2部分12の頂面ドーピング濃度は、1E16atom/cm3~1E17atom/cm3、1E17atom/cm3~1E18atom/cm3、1E18atom/cm3~1E19atom/cm3、または、1E19a~5E19atom/cm3であってもよい。第1部分11の頂面ドーピング濃度を大きく設定することにより、第1部分11のシート抵抗を小さく保つことができる。第2部分12の頂面ドーピング濃度を小さく設定することにより、第2部分12におけるドーピング元素が多すぎることによる、過剰なドーピング元素が再結合中心となるのを回避することができ、キャリアの再結合が抑制され、太陽電池の短絡電流および開放電圧を向上させることができる。第1部分11の頂面ドーピング濃度と第2部分12の頂面ドーピング濃度とは比較的近いことを見つけることは難しくなく、幾つかの実施例において、第1部分11の頂面ドーピング濃度は、第2部分12の頂面ドーピング濃度と等しくてもよく、このように、第1部分11の頂面ドーピング濃度は小さいが、第1部分11のシート抵抗は、第2部分12のシート抵抗よりもはるかに小さい。つまり、第1部分11の頂面ドーピング濃度が小さい場合、第1部分11のシート抵抗を小さくして、P型エミッタ10のオーミックコンタクトを改善するだけでなく、P型エミッタ10のパッシベーション効果を良好に保つことができる。
幾つかの実施例において、P型エミッタ10の頂面に沿ってP型エミッタ10の底面に向かう方向において、第1部分11のP型エミッタ10の内部のドーピング濃度が徐々に減少し、第2部分12のP型エミッタ10の内部のドーピング濃度が徐々に減少する。つまり、第1部分11のP型エミッタ10及び第2部分12のP型エミッタ10の内部に共に高い方から低い方へのドーピング濃度差が存在し、このように、第1部分11のP型エミッタ10及び第2部分12のP型エミッタ10におけるキャリアが、濃度の高い領域から相対的に濃度の低い領域まで輸送してN型ベース100内に輸送するのに有利であり、キャリア輸送レートを速めて太陽電池の開放電圧を向上させることができる。
幾つかの実施例において、第1部分11の頂面ドーピング濃度と第1部分11の底面ドーピング濃度との差は、8E19atom/cm3~1E17atom/cm3である。この範囲では、第1部分11のP型エミッタ10内部のドーピング濃度差が大きくなり、キャリアの輸送に有利となる。また、第1部分11のP型エミッタ10内のドーピング濃度差が小さすぎることにより、第1部分11におけるドーピング濃度と頂面ドーピング濃度とが大きく異ならず、第1部分11の全体のドーピング濃度が大きくなり過ぎるといった問題も防止できる。
幾つかの実施例において、第2部分12の頂面ドーピング濃度と第2部分12の底面ドーピング濃度との差は、5E19atom/cm3~1E16atom/cm3である。この範囲では、第2部分12のP型エミッタ10内部のドーピング濃度が小さくなりすぎず、第2部分12のP型エミッタ10内部のキヤリァの正常な輸送を確保することができる。また、この範囲では、第2部分12のP型エミッタ10の全体の濃度を小さく保ち、第2部分12のP型エミッタ10のオージェ再結合を防ぐことができる。
幾つかの実施例において、第1ピラミッド構造1の少なくとも1つの斜面における少なくとも一部の表面は、第1ピラミッド構造1の中心に対して陥凹または突出している。つまり、第1ピラミッド構造1における少なくとも1つの斜面は不規則な変形を有し、この不規則な変形により、第1部分11のP型エミッタ10に転位およびダングリングボンドが形成され、その結果、第1部分11のP型エミッタ10内部に深いエネルギー準位を形成し、第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗をより一層低減させる。
幾つかの実施例において、第2部分12の幅と第1部分11の幅との比は、5.6より大きく、すなわち、相対的にシート抵抗が大きい第2部分12のP型エミッタ10が大きな割合を占めており、第2部分12のP型エミッタ10はパッシベーション性能が良いので、キャリアの再結合が抑えられるため、P型エミッタ10全体のパッシベーション性能が良い。第1部分11のP型エミッタ10は、金属電極と電気的に接続するだけで金属電極とのオーミックコンタクトを改善するため、第1部分11のP型エミッタ10の幅を小さく設けることができ、オーミックコンタクトの改善を図りつつ、エミッタの良好なパッシベーシヨン性能を保つことができる。
幾つかの実施例において、前記N型ベース100の第1面に設けられ、第1部分11のP型エミッタ10に電気的に接続された第1金属電極140をさらに備える。P型エミッタ10におけるキャリアは、第1部分11のP型エミッタ10に電気的に接続された第1金属電極140に輸送され、かつ第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗が小さいので、第1部分11のP型エミッタ10と第1金属電極140との間の接触抵抗が小さく、具体的には、幾つかの実施例において、第1部分11のP型エミッタ10の金属再結合電流を700fA/cm2まで高くすることができ、P型エミッタ10におけるキャリアが第1金属電極140へ輸送する輸送レートを高くすることができる。また、第1部分11におけるP型エミッタ10が大きな接合深さを有するので、実際に第1金属電極140を作製する過程において、導電ペーストが第1部分11におけるP型エミッタ10を突き抜けにくくなり、p-n接合構造が破壊されることを回避して、太陽電池の良好な光電変換性能を維持するのに有利となる。
幾つかの実施例において、第1金属電極140の幅は、第1部分11のP型エミッタ10の幅以下である。このように、第1金属電極140が第1部分11のP型エミッタ10により被覆されていること、即ち、第1金属電極140の側面及び底面のいずれもが第1部分11のP型エミッタ10に接触していることを確保できる。第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗が小さいため、第1金属電極140が第1部分11のP型エミッタ10に被覆されるように設置することにより、第1金属電極140とP型エミッタ10との間の接触抵抗をさらに改善でき、第1金属電極140によるキャリアの収集効率を向上させる。
幾つかの実施例において、P型エミッタ10の頂面に位置する反射防止層130をさらに備え、第1金属電極140は、反射防止層130を貫通してP型エミッタ10に電気的に接続されている。反射防止層130は、入射光線に対するベースの反射を低減するためのものであり、いくつかの実施例において、反射防止層130は、単層または多層構造であってもよく、反射防止層130の材料は、フッ化マグネシウム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化チタンのうちの少なくとも1つであってもよい。
トンネル層150は、ベースの第2面における界面パッシベーシヨンを実現するためのものである。具体的には、いくつかの実施例において、トンネル層150の材料は誘電体材料であってもよく、たとえば、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化シリコン、アモルファスシリコン、ポリシリコン、炭化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタンのいずれか一つである。
ドープ導電層160は、フィールドパッシベーションを形成するためのものであり、幾つかの実施例において、ドープ導電層160の材料は、ドーピングシリコンであってもよく、具体的には、ドープ導電層160は、ベースと同じ導電型のドーピング元素を有し、ドーピングシリコンは、N型のドーピングポリシリコン、N型のドーピング微結晶シリコン、N型のドーピングアモルファスシリコン、または、炭化シリコンのうちの一種または複数種を含んでもよい。
幾つかの実施例において、ドープ導電層160のベースから離れる面に位置する第1パッシベーション層170をさらに備える。いくつかの実施例において、第1パッシベーション層170の材料は、フッ化マグネシウム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化チタンのうちの一種または複数種であってもよい。具体的には、幾つかの実施例において、第1パッシベーション層170は、単層構造であってもよい。他の幾つかの実施例において、第1パッシベーション層170は、多層構造であってもよい。
幾つかの実施例において、第1パッシベーション層170を貫通してドープ導電層160と電気的に接続される第2金属電極180をさらに備える。
上記実施例によって提供される太陽電池では、N型ベース100の第1面にP型エミッタ10が設けられ、第1部分11のP型エミッタ10が第1ピラミッド構造1を有し、かつ、第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部に遷移面13を有し、遷移面13が第1ピラミッド構造1の2つの斜面と接触し、かつ第1ピラミッド構造1の中心に対して陥凹または突出し、第1ピラミッド構造1の頂部にサブ構造14を有する。すなわち、第1ピラミッド構造1はミクロ欠陥を有し、このようなミクロ欠陥は、一定の結晶変化を形成して欠陥エネルギー準位を形成することができ、これにより、第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗を大きく下げた場合に、第1部分11のP型エミッタ10のドーピング濃度を低く保ち、オージェ再結合の発生を低減し、太陽電池の光電変換性能を向上させることができる。また、第2部分12のP型エミッタ10では、第2ピラミッド構造2の稜線が直線的、すなわち正常なピラミッド構造であり、これにより、第2部分12のP型エミッタ10のシート抵抗が高くなり、再結合中心の生成を減らすことができ、太陽電池の開放電圧および短絡電流を高めることができる。
これに応じて、本願実施例は、光起電力モジュールをさらに提供する。図6を参照して、光起電力モジュールは、上記実施例によって提供される太陽電池101を複数接続してなるセルストリングと、セルストリングの表面を覆うための封止層102と、封止層102のセルストリングから離れた面を覆うためのカバープレート103と、を備える。太陽電池101は、フルシートまたは複数枚の形で電気的に接続されてセルストリングを複数形成し、複数のセルストリングは、直列および/または並列に接続されて電気的に接続される。
具体的には、いくつかの実施例において、複数のセルストリング間は、伝導バンド104によって電気的に接続されてもよい。封止層102は、太陽電池101の表面および裏面を覆っており、具体的には、封止層102は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着フィルム、ポリエチレンオクテン-エラストマー(POE)接着フィルム、またはポリエチレンテレフタレート(PET)接着フィルム等の有機封止フィルムであってもよい。いくつかの実施例において、カバープレート103は、ガラスプレート、プラスチックカバープレートなど、光透過機能を有するカバープレート103であってもよい。具体的には、カバープレート103の封止層102に向かう面が凹凸表面であることにより、入射光の利用率を高めることができる。
これに応じて、本願の別の実施例は、上記実施例によって提供される太陽電池を形成できる太陽電池の製造方法をさらに提供する。以下、本願の別の実施例によって提供される太陽電池の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図7~図13は、本願の別の実施例に係る太陽電池の製造方法における各ステップに対応する概略構成図である。
N型ベース100が提供される。
N型ベース100は、入射光を受光して光生成キャリアを生成するためのものである。いくつかの実施例において、N型ベース100は、N型シリコンベース100であってもよく、N型シリコンベースの材料は、単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、または微結晶シリコンの少なくとも一種を含み得る。N型ベース100は、N型の半導体ベース100であり、すなわち、N型ベース100内にN型のドーピングイオンがドーピングされており、N型のドーピングイオンは、リンイオン、ヒ素イオン、またはアンチモンイオンのいずれかであってもよい。
図7~図11を参照して、N型ベース100の第1面にP型エミッタ10が形成されており、P型エミッタ10が第1部分11と第2部分12を有し、第1部分11の頂面が第1ピラミッド構造1を含み、第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部に、第1ピラミッド構造1の隣接する2つの斜面と接触し、第1ピラミッド構造1の中心に対して陥凹または突出した遷移面13を有し、第1ピラミッド構造1の少なくとも一部の頂面が、球体または球様体であるサブ構造14を含み、第2部分12の頂面が、稜線が直線的である第2ピラミッド構造2を含み、ここで、第1部分11のシート抵抗が10ohm/sq~500ohm/sqであり、第1部分11の頂面ドーピング濃度が1E17atom/cm3~8E19atom/cm3であり、第2部分12のシート抵抗が100ohm/sq~1000ohm/sqであり、第2部分12の頂面ドーピング濃度が1E16atom/cm3~5E19atom/cm3である。
形成された第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部に遷移面13を有する、すなわち、第1ピラミッド構造1の稜線が不規則な変形を有し、第1ピラミッド構造1の頂面の少なくとも一部が、さらに球形または擬球形のサブ構造14を有することにより、第1ピラミッド構造1がミクロ欠陥を有するようになり、第1部分11のエミッタがシリコン結晶の変化を形成する。一方、第2ピラミッド構造2の稜線は直線的であり、つまり第2ピラミッド構造2の稜線には歪みが生じていない。第1ピラミッド構造1の稜線における歪み及び頂部の歪みに基づいて、第1部分11のシート抵抗が10ohm/sq~500ohm/sqであり、第1部分11の頂面ドーピング濃度が1E17atom/cm3~1E19atom/cm3であり、第2ピラミッド構造2の稜線に歪みが発生しないので、第2部分12のシート抵抗が100ohm/sq~1000ohm/sqであり、第2部分12の頂面ドーピング濃度が1E16atom/cm3~1E19atom/cm3である。第1部分11のシート抵抗は、第2部分12のシート抵抗よりもはるかに小さいが、第1部分11の頂面ドーピング濃度と第2部分12の頂面ドーピング濃度とが大きく異ならないことを見つけるのは難しいことではない。このことから、第1ピラミッド構造1のミクロ欠陥により、第1部分11のシート抵抗が第2部分12のシート抵抗よりも十分に低くされて、第1部分11のP型エミッタ10のオーミックコンタクトを大きく改善できると共に、第1部分11のP型エミッタ10のドーピング濃度を低く保って、第1部分11のP型エミッタ10の再結合中心の発生を減らすことができ、P型エミッタ10のパッシベーション効果を良く保って、オージェ再結合の発生を低減し、さらに太陽電池の光電変換性能を改善できることが分かる。
具体的には、幾つかの実施例において、P型エミッタ10を形成する方法は、以下を含む。
図7を参照して、初期N型ベース20が提供され、初期N型ベース100は、N型ベース100およびP型エミッタ10を形成するための基礎となるので、初期N型ベース100とN型ベース100の材料が同一とすることができる。
いくつかの実施例において、初期N型ベース20の第1面は、入射光線に対する反射率が小さく、光の吸収利用率が大きくなるように、ピラミッドテクスチャ面としてもよい。いくつかの実施例において、初期N型ベース20は、N型の初期半導体ベースであり、すなわち、初期N型ベース20内にN型のドーピングイオンがドーピングされており、N型のドーピングイオンは、リンイオン、ヒ素イオン、またはアンチモンイオンのいずれかであってもよい。
具体的には、P型エミッタ10が形成される方法は、図8~図9を参照して、初期N型ベース20の頂面に、含まれる元素が三価元素のうちの一つである三価ドーピング源を堆積させることを含む。初期N型ベース20の頂面に位置する三価ドーピング源は、初期N型ベース20に後に拡散してP型エミッタ10を形成するためのものである。三価ドーピング源が三価元素のうちの一つを含むように設置し、すなわち初期N型ベース20に対して単一の元素がドーピングされることにより、形成されたP型エミッタ10のうち元素種が単一となり、高効率ドーピング層が形成され、第1部分11のP型エミッタ10と第2部分12のP型エミッタ10に不純物元素が存在しないか、または不純物元素の量が極めて少なく、これにより、不純物元素が再結合中心を形成することによるキャリア再結合の問題を回避できる。いくつかの実施例において、三価ドーピング源は、ホウ素源であってもよく、具体的には、三塩化ホウ素または三臭化ホウ素のいずれであってもよい。
図8を参照して、いくつかの実施例において、初期N型ベース20の頂面に三価ドーピング源を堆積させる工程の実行中に、第1薄膜層110を形成してもよく、第1薄膜層110は、三価ドーピング源を含み、ホウ素、酸素、シリコン、塩素のうち少なくとも1つをさらに含み、ここで、堆積時間を20s~800s、温度を600℃~900℃としてもよい。具体的には、いくつかの実施例において、三価ドーピング源がホウ素源である場合、第1薄膜層110の主成分は、酸化ケイ素および酸化ホウ素を含んでもよく、ここで、三価ドーピング源は酸化ホウ素として第1薄膜層110に貯蔵されてもよい。酸化ケイ素は、より大きい硬度を有するため、ドーピング工程で初期N型ベース20の保護を図ることができる。
また、第1薄膜層110の厚さが薄いため、薄い第1薄膜層110に三価ドーピング源を多く蓄積すると、第1薄膜層110における三価ドーピング源が集まって三価ドーピング源の濃度が高まるので、後からドーピングプロセスによって初期N型ベース20内に三価ドーピング源を拡散する際、ドーピングプロセスの進みに有利となり、ドーピング濃度の大きい第1部分11のP型エミッタ10をより形成し易くなり、第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗を小さくする。また、第1薄膜層110の厚さが小さいため、第1薄膜層110に蓄積可能な三価ドーピング源が過多にならないようにすることができ、これにより、過多な三価ドーピング源元素が初期N型ベース20内部にドープされることを防ぐことができ、初期N型ベース20の内部において三価ドーピング源元素が過多になることにより多くの三価ドーピング源元素が強い再結合中心となり、形成される第1部分11のP型エミッタ10のパッシベーシヨン能力が不良になるのを防ぐことができる。
いくつかの実施例において、第1薄膜層110の形成方法は、初期N型ベース20の第1面に三価ドーピング源を堆積させることを含んでもよい。いくつかの実施例において、初期N型ベース20の第1面に、三価ドーピング源として三塩化ホウ素を化学気相成長法又はスピンコート法により堆積させてもよい。
具体的には、第1薄膜層110の形成方法は、初期N型ベース20に対してボート工程が実行され、初期N型ベース20がボートされた後、第1プリセット温度まで昇温され、初期N型ベース20第1面に三価ドーピング源を堆積させ、第1プリセット温度を500℃~900℃としてもよく、その後、第1プリセット温度より大きく、例えば900℃~1300℃であり得る第2プリセット温度まで昇温すると共に、窒素雰囲気下で圧密するすることであってもよく、このステップにより、形成された第1薄膜層110の緻密性及び均一性を向上させることができる。幾つかの実施例では、三価ドーピング源を堆積させると共に、例えば100sccm~2000sccmといった少量の酸素ガスを導入してもよく、緻密性の高い第1薄膜層110をさらに形成するのに有利である。
図9を参照して、三価ドーピング源を堆積させた後、プリセット領域の初期N型ベース20の頂面を外部エネルギー源処理プロセスによって処理し、外部エネルギー源処理プロセスによって処理された三価ドーピング源を初期N型ベース20内に拡散させて、プリセット領域の初期N型ベース20内に第1部分11のP型エミッタ10を形成し、初期N型ベース20が第1部分11のP型エミッタ10の頂面を露出させる。プリセット領域に対して外部エネルギー源処理を行うことにより、プリセット領域の第1薄膜層110における三価ドーピング源が初期N型ベース20の内部に拡散される。同時に、外部エネルギー源処理プロセスの下で、プリセット領域の初期N型ベース20の頂面の構造が変化して第1ピラミッド構造1が形成される。なお、初期N型ベース20の構造は、外部エネルギー源処理プロセスによって処理される前、規則的な四面体構造となっている。外部エネルギー源処理プロセスを経た後、第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部を変形させて遷移面13を形成し、かつ、第1ピラミッド構造1の頂面の少なくとも一部がサブ構造14を形成する。プリセット領域の初期N型ベース20内に三価ドーピング源をドーピングした後、形成された第1部分11のP型エミッタ10の頂面は、第1ピラミッド構造1を有するようになり、これにより、第1部分11のP型エミッタ10に深いエネルギー準位を生じさせ、さらに第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗を低減させることができる。
幾つかの実施例において、外部エネルギー源処理プロセスは、レーザードーピング工程を含み、レーザードーピング工程では、レーザーの波長が300nm~1000nmであり、例えば、300nm~500nm、500nm~750nm、750nm~900nm、又は、900nm~1000nmであってもよい。レーザーパラメーターのフォーカス位置、レーザ波長を制御することにより、第1ピラミッド構造1の異なる位置における構造形態を変化させることができる。また、レーザープロセスの操作が簡単であるため、レーザーパラメーターの制御が容易であり、形成された第1ピラミッド構造1の形態は予想通りとなる。レーザーの波長およびエネルギー密度をこの範囲にすることで、第1ピラミッド構造1の稜線に歪みを生じさせ、第1ピラミッド構造1の頂部に球体または球様体のサブ構造14を生じさせることができる。形成された第1ピラミッド構造1のミクロ欠陥により、第1部分11のP型エミッタ10に結晶変化を生じさせて欠陥エネルギー準位を生じさせ、第1部分11のP型エミッタ10のドーピング濃度を低く保ったまま、第1部分11のシート抵抗を大きく下げることを実現し、オーミックコンタクトを大きく改善できるだけでなく、第1部分11のP型エミッタ10の良好なパッシベーション効果を維持し、太陽電池の短絡電圧及び開回路電流を向上させることもできる。
他の幾つかの実施例において、外部エネルギー源処理プロセスは、プラズマ照射または配向イオン注入プロセスのいずれかを含んでもよい。
幾つかの実施例において、第1部分11のP型エミッタ10を形成した後に、さらに、初期N型ベース20の第1面に対して洗浄工程を行って、第1薄膜層110を除去することを含む。このように、第1薄膜層110に残った三価ドーピング源を同時に除去すると共に、初期N型ベース20の表面に吸着された不純物を除去することができ、漏電の低減に有利である。また、第1薄膜層110には多数の三価ドーピング源が含まれているため、その後に高温プロセスを行って第2薄膜層を形成するプロセスにおいては、これらの三価ドーピング源は、例えば不活性ホウ素などの不活性化三価ドーピング源に変換される。不活性化三価ドーピング源の存在は、初期N型ベース20の表面でのキャリアの再結合を増加させ、太陽電池の光電変換効率に影響を及ぼす。従って、第2薄膜層を形成する工程に先立って第1薄膜層110を除去することは、その後の第2薄膜層を形成した後の初期N型ベース20の表面における不活性化三価ドーピング源の含有量を低減することもでき、初期N型ベース20の表面におけるキャリア再結合を低減し、太陽電池の光電変換効率を向上させる。具体的には、洗浄工程は、初期N型ベース20の表面をアルカリ溶液または酸性溶液で洗浄することを含み、ここで、アルカリ溶液は、KOH又はH2O2水溶液の少なくともいずれかであってもよく、酸性溶液は、HF又はHCl水溶液の少なくともいずれかであってもよい。
第1部分11のP型エミッタ10を形成した後、図10~図11を参照して、初期N型ベース20を高温処理して初期N型ベース20内にP型エミッタ10を形成し、初期N型ベース20がP型エミッタ10の頂面を露出させ、具体的には、初期N型ベース20においてP型エミッタ10以外の領域がN型ベース100を形成し、プリセット領域以外の初期N型ベース20内に第2部分12のP型エミッタ10を形成する。プリセット領域の初期N型ベース20の表面のみに対して外部エネルギー源処理を行うことにより、プリセット領域に対応する第1薄膜層110における三価ドーピング源が初期N型ベース20の内部に拡散されるので、形成された第1部分11のP型エミッタ10の接合深さが第2部分12のP型エミッタ10の接合深さよりも大きくなる。このため、金属電極を第1部分11のP型エミッタ10に電気的に接続させるように設置することができ、これにより、金属電極を形成するためのペーストを焼結する過程で、P型エミッタ10を貫通して初期N型ベース20に直接接触することを防止することができる。また、第2部分12の接合深さが浅く設置される、すなわち、第2部分12のP型エミッタ10の厚さが小さいことで、第2部分12のドーピング元素の数が第1部分11のドーピング元素の数よりも少なく、つまり、第2部分12のP型エミッタ10のドーピング濃度が小さいため、第1部分11のP型エミッタ10よりも第2部分12のP型エミッタ10の方が良いパッシベーション効果を有し、キャリア再結合を低減し、太陽電池の開放電圧および短絡電流を向上させるのに有利である。
初期N型ベース20を高温処理した後に、三価ドーピング源の一部が初期N型ベース20の内部にドーピングされ、その結果、初期N型ベース20の一部が第2部分12のP型エミッタ10に変換される。つまり、初期N型ベース20における、第1部分11のP型エミッタ10及び第2部分12のP型エミッタ10以外の部分は、N型ベース100である。
具体的には、図10を参照して、幾つかの実施例では、初期N型ベース20を高温処理する工程の実行中に、酸素ガスを導入し、酸素ガスの流量を500sccm~50000sccm、時間を5min~300min、温度を800℃~1200℃として第2薄膜層120を形成し、第2薄膜層120の厚さを第1薄膜層110の厚さよりも大きくする。第2薄膜層120を形成する工程において導入される酸素ガス量が比較的多くなるように設置することにより、酸素ガスはより多くの三価ドーピング源と反応することができ、形成される第2薄膜層120の厚さは、第1薄膜層110の厚さよりも大きくなる。このように、薄い第1薄膜層110に多くの三価ドーピング源が貯蔵されると、第1薄膜層110における三価ドーピング源が集まるため、三価ドーピング源の濃度を高くしてレーザードーピングに有利となるとともに、第1薄膜層110が薄いため、レーザーを初期N型ベース20に打ち込み易くなる。一方、第2薄膜層120を厚く設けることにより、第2薄膜層120がプリセット領域以外の初期N型ベース20の第1面において吸収する三価ドーピング源の量は大きくなることを確保することができ、第1部分11におけるP型エミッタ10の頂面ドーピング濃度および第2部分12におけるP型エミッタ10の頂面ドーピング濃度を小さくすることができ、パッシベーシヨン性能を改善することができる。
図11を参照して、いくつかの実施例では、初期N型ベース20を洗浄して第2薄膜層120を除去することと、初期N型ベース20の第1面に反射防止層130が形成されることをさらに含み、反射防止層130がP型エミッタ10の頂面に位置するが、幾つかの実施例において、反射防止層130は、単層または多層構造であってもよく、反射防止層130の材料は、フッ化マグネシウム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化シリコン、窒化ケイ素、酸化チタンのうちの少なくとも一つであってもよい。具体的には、いくつかの実施例において、反射防止層130は、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、プラズマ化学気相成長)法を用いて形成することができる。
図12を参照して、いくつかの実施例では、第1部分11のP型エミッタ10に電気的に接続された第1金属電極140を形成することをさらに含む。第1金属電極140は、初期N型ベース20の第1面に位置しており、第1部分11のP型エミッタ10のシート抵抗が小さいため、第1金属電極140が第1部分11のP型エミッタ10に電気的に接続されるように設置することにより、第1金属電極140と第1部分11のP型エミッタ10との接触抵抗を小さくすることができ、反射防止層130における第1金属電極140によるキャリアの輸送に有利である。これは、第1部分11のP型エミッタ10および第2部分12のP型エミッタ10におけるキャリアが、第1部分11のP型エミッタ10に接触する第1金属電極140中に移動し、第1金属電極140で収集されるためである。つまり、第1部分11と第2部分12における電子は、第1部分11のP型エミッタ10に接触する第1金属電極140まで輸送する必要があるため、第1部分11のP型エミッタ10と第1金属電極140との接触抵抗が改善され、キャリアの輸送を大きく改善することができる。
幾つかの実施例において、第1金属電極140を形成する方法は、プリセット領域の反射防止層130の頂面に導電ペーストを印刷し、導電ペーストにおける導電材料は、銀、アルミニウム、銅、錫、金、鉛またはニッケルの少なくとも1つであってもよく、導電ペーストを焼結処理し、例えば、750℃~850℃のピーク温度で焼結処理して第1金属電極140を形成することを含む。
図13を参照して、N型ベース100の第2面に、N型ベース100から離れる方向においてトンネル層150およびドープ導電層160が順次に形成される。
トンネル層150は、N型ベース100の第2面の界面パッシベーシヨンを実現するためのものである。いくつかの実施例において、トンネル層150は、例えば化学気相成長法などの堆積プロセスを用いて形成することができる。他の幾つかの実施例において、トンネル層150は、in‐situ生成プロセスによって形成されてもよい。具体的には、幾つかの実施例において、トンネル層150の材料は、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化シリコン、アモルファスシリコン、ポリシリコン、炭化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタンのいずれか一つであってもよい。
ドープ導電層160は、フィールドパッシベーションを形成するためのものであり、いくつかの実施例において、ドープ導電層160の材料は、ドーピングシリコンであってもよく、具体的には、いくつかの実施例において、ドープ導電層160は、N型ベース100と同じ導電型のドーピング元素を有し、ドーピングシリコンは、N型のドーピングポリシリコン、N型のドーピング微結晶シリコン、N型のドーピングアモルファスシリコン、または、炭化シリコンのうちの一種または複数種を含んでもよい。幾つかの実施例において、ドープ導電層160は、堆積プロセスによって形成されてもよい。具体的には、トンネル層150のN型ベース100から離れた面に真性ポリシリコンを堆積させてポリシリコン層を形成し、イオン注入およびソース拡散によってリンイオンをドーピングして、ドープ導電層160としてのN型のドーピングポリシリコン層を形成してもよい。
幾つかの実施例において、ドープ導電層160のN型ベース100から離れた面に第1パッシベーション層170を形成することをさらに含む。いくつかの実施例において、第1パッシベーション層170の材料は、フッ化マグネシウム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化チタンのうちの一種または複数種であってもよい。具体的には、幾つかの実施例において、第1パッシベーション層170は、単層構造であってもよい。他の幾つかの実施例において、第1パッシベーション層170は、多層構造であってもよい。具体的には、いくつかの実施例において、第1パッシベーション層170をPECVD法によって形成してもよい。
幾つかの実施例において、第1パッシベーション層170を貫通してドープ導電層160と電気的に接続される第2金属電極180を形成することをさらに含む。具体的には、第2金属電極180を形成する方法は、第1金属電極140を形成する方法と同じであってもよく、第1金属電極140の材料は、第2金属電極180の材料と同じであってもよい。
上記実施例によって提供される太陽電池の製造方法では、形成された第1ピラミッド構造1の稜線の少なくとも一部に不規則な変形を有し、かつ、第1ピラミッド構造1の頂面の少なくとも一部に球形又は擬球形のサブ構造14を有することにより、第1ピラミッド構造1にミクロ欠陥を持たせ、第1部分11のエミッタに結晶変化を形成する。一方、第2ピラミッド構造2の稜線は直線的であり、つまり第2ピラミッド構造2の稜線には歪みが生じていない。第1ピラミッド構造1のミクロ欠陥により、第1部分11のシート抵抗が第2部分12のシート抵抗よりも十分に低くされて、第1部分11のP型エミッタ10のオーミックコンタクトを大きく改善できると共に、第1部分11のP型エミッタ10のドーピング濃度を低く保って、第1部分11のP型エミッタ10の再結合中心の発生を減らすことができ、P型エミッタ10のパッシベーション効果を良く保って、オージェ再結合の発生を低減し、さらに太陽電池の光電変換性能を改善することができる。
比較例
比較例によって提供される太陽電池は、ベースと、ベースの第1面に位置するエミッタとを備え、エミッタは、第1部分11(図1を参照)と第2部分12(図1を参照)とを含み、第1部分11の頂面が第3ピラミッド構造を有し、第3ピラミッド構造の稜線が直線的であり、第2部分12の頂面が第4ピラミッド構造を有し、第4ピラミッド構造の稜線が直線的である。ここで、第1部分11のドーピング濃度は、第2部分12のドーピング濃度よりも大きく、第1部分11のシート抵抗は、第2部分12のシート抵抗よりも小さい。
図1に示した本願実施例の太陽電池構造を参照して、比較例と本願実施例との違いは、比較例では、第1部分の頂面の第3ピラミッド構造の稜線が直線的である点である。対比実験を通じて、本願実施例と比較例とのパラメーター対比が表1に示す通りであることが分かる。
表1から分かるように、比較例に比べて、本願実施例における太陽電池は、開放電圧、短絡電流密度、曲線因子、変換効率が大きく、光電変換性能が優れている。このことから、第1ピラミッド構造1のミクロ欠陥により、第1部分11(図1を参照)のシート抵抗を大きく低下させ、第1部分11のP型エミッタ10(図1を参照)のオーミックコンタクトを大きく改善できることが分かる。同時に、第1部分11のP型エミッタ10のドーピング濃度を低く保つことで、第1部分11のP型エミッタ10の再結合中心の発生を減らすことができ、P型エミッタ10のパッシベーション効果を良く保って、オージェ再結合の発生を低減し、さらに太陽電池の光電変換性能を改善できる。
本願は、好ましい実施例で上記のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本願の着想から逸脱することなく、若干の可能な変動および修正を加えることができるため、本願の保護範囲は、本願の請求項によって規定される範囲に従うべきである。
当業者であれば、前記の各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者は、本願の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。