JP2023180141A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

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Shintaro Azuma
寛教 柳沼
Hironori Yaginuma
貞裕 中西
Sadahiro Nakanishi
一平 長原
Ippei NAGAHARA
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Abstract

【課題】位相差フィルムの遅相軸方向を精密に制御でき、軸精度に優れた位相差フィルムを製造できる位相差フィルムの製造方法を提供すること。【解決手段】本発明の実施形態による位相差フィルムの製造方法は、正の複屈折を示す樹脂と負の複屈折を示す樹脂とを含有する樹脂フィルムを所定方向に延伸する第1延伸工程と;第1延伸工程後の樹脂フィルムを第1延伸工程と同じ方向に延伸する第2延伸工程と;を含んでいる。第1延伸倍率と第2延伸倍率との積が、4.5倍以上10倍以下であり、第1延伸温度および第2延伸温度が、下記式(I)を満足する。TgA+20℃<第1延伸温度≦第2延伸温度<TgB-20℃・・・(I)(式(I)において、TgAは正の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示し;TgBは負の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示す)。【選択図】なし

Description

本発明は、位相差フィルムの製造方法に関する。
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。有機EL表示装置では、λ/4板を含む円偏光板を有機ELセルの視認側に配置することにより、外光反射や背景の映り込み等の問題を防ぐことが知られている(例えば、特許文献1および2)。
上記円偏光板に用いるλ/4板に関しては、広い波長領域にわたって優れた反射防止特性を実現する観点から、長波長域ほど位相差が大きい、いわゆる逆波長分散特性を示す位相差フィルムが求められている。このような要望に対して、正の複屈折を示すセルロース系樹脂および負の複屈折を示すエステル系樹脂を含有し、面内位相差が逆波長分散特性を示す位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献3)。このような特許文献3に記載の位相差フィルムは、セルロース系樹脂およびエステル系樹脂が溶解された樹脂溶液を支持基材上に塗布した後、加熱により溶媒を蒸発させて樹脂フィルムを形成し、樹脂フィルムを延伸して製造される。しかし、このような製造方法では、樹脂フィルムの延伸時にボーイング現象が生じ、位相差フィルムにおいて遅相軸方向のバラつきが大きくなる場合がある。この場合、位相差フィルムを画像表示装置に適用した際の反射防止特性を十分に確保できないおそれがある。
特開2002-311239号公報 特開2002-372622号公報 特開2021-140095号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的とするところは、位相差フィルムの遅相軸方向を精密に制御でき、軸精度に優れた位相差フィルムを製造できる位相差フィルムの製造方法を提供することである。
[1]本発明の実施形態による位相差フィルムの製造方法は、正の複屈折を示す樹脂と負の複屈折を示す樹脂とを含有する樹脂フィルムを所定方向に延伸する第1延伸工程と;第1延伸工程後の樹脂フィルムを、第1延伸工程と同じ方向に延伸する第2延伸工程と;を含んでいる。該第1延伸工程における第1延伸倍率と該第2延伸工程における第2延伸倍率との積は4.5倍以上10倍以下である。該第1延伸工程における第1延伸温度および該第2延伸工程における第2延伸温度は、下記式(I)を満足する。
TgA+20℃<第1延伸温度≦第2延伸温度<TgB-20℃・・・(I)
(式(I)において、TgAは正の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示し;TgBは負の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示す)。
[2]1つの実施形態は、上記第1延伸倍率および上記第2延伸倍率が下記式(II)を満足する、上記項目[1]に記載の位相差フィルムの製造方法である。
1<第1延伸倍率/第2延伸倍率<5・・・(II)
[3]1つの実施形態は、上記樹脂フィルムが長尺状を有し、上記第1延伸工程および上記第2延伸工程のそれぞれにおいて、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に搬送しながら長手方向と直交する幅方向に延伸する、上記項目[1]または[2]に記載の位相差フィルムの製造方法である。
[4]1つの実施形態は、上記第1延伸工程後かつ上記第2延伸工程前に、上記第1延伸工程後の樹脂フィルムを長手方向に沿って裁断する裁断工程をさらに含み、上記第2延伸工程において、裁断後の樹脂フィルムを延伸する、上記項目[3]に記載の位相差フィルムの製造方法である。
[5]1つの実施形態は、位相差フィルムの幅方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度が、3°以下である位相差フィルムを製造する、上記項目[3]または[4]に記載の位相差フィルムの製造方法である。
[6]1つの実施形態は、Nz係数が1.0以上1.5以下である位相差フィルムを製造する、上記項目[1]から[5]のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法である。
[7]1つの実施形態は、面内複屈折Δn(550)が0.003以上であり、Re(450)/Re(550)が0.9以下である位相差フィルムを製造する、上記項目[1]から[6]のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法である。
本発明の実施形態によれば、位相差フィルムの遅相軸方向を精密に制御でき、軸精度に優れた位相差フィルムを製造できる位相差フィルムの製造方法を実現できる。
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)面内複屈折(Δn)
「Δn(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内複屈折である。例えば、「Δn(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内複屈折である。面内複屈折(Δn)は、式:Δn=nx-nyから求められる。
(4)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(5)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
A.位相差フィルムの製造方法の概要
本発明の実施形態による位相差フィルムの製造方法は、正の複屈折を示す樹脂(以下、正の複屈折樹脂と称する場合がある。)と負の複屈折を示す樹脂(以下、負の複屈折樹脂と称する場合がある。)とを含有する樹脂フィルムを所定方向に延伸する第1延伸工程と;第1延伸工程後の樹脂フィルムを、第1延伸工程と同じ方向に延伸する第2延伸工程と;を含んでいる。第1延伸工程における第1延伸倍率と第2延伸工程における第2延伸倍率との積は、4.5倍以上10倍以下である。第1延伸工程における第1延伸温度および第2延伸工程における第2延伸温度は、下記式(I)を満足している。
TgA+20℃<第1延伸温度≦第2延伸温度<TgB-20℃・・・(I)
(式(I)において、TgAは正の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示し;TgBは負の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示す)。
このような方法によれば、正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂を含有する樹脂フィルムを、上記式(I)を満足する第1延伸温度で延伸した後、上記式(I)を満足する第2延伸温度で同じ方向に延伸する。これによって、製造される位相差フィルムの全体にわたって遅相軸方向(分子配向方向)を精密に制御でき、軸精度に優れた位相差フィルムを製造できる。
第1延伸倍率は、第2延伸倍率よりも小さくてもよく、第2延伸倍率よりも大きくてもよい。第2延伸倍率に対する第1延伸倍率の比率(第1延伸倍率/第2延伸倍率)は、例えば0.3以上5.0未満である。
1つの実施形態では、第1延伸倍率は、第2延伸倍率よりも大きい。第1延伸倍率および第2延伸倍率は、好ましくは、下記式(II)を満足する。
1<第1延伸倍率/第2延伸倍率<5・・・(II)
第1延伸倍率および第2延伸倍率が上記式(II)を満足していると、位相差フィルムの光学特性(特に面内複屈折)の向上を図ることができる。
第2延伸倍率に対する第1延伸倍率の比率(第1延伸倍率/第2延伸倍率)は、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下、とりわけ好ましくは2.5以下である。第1延伸倍率/第2延伸倍率が上記上限以下であると、位相差フィルムの遅相軸方向をより精密に制御できる。第1延伸倍率/第2延伸倍率は、より好ましくは1.1以上である。
以下に、位相差フィルムの製造方法の各工程の詳細について説明する。
B.樹脂フィルム
1つの実施形態による位相差フィルムの製造方法では、まず、正の複屈折を示す樹脂(正の複屈折樹脂)と、負の複屈折を示す樹脂(負の複屈折樹脂)とを含有する樹脂フィルムを準備する。「正の複屈折を示す」とは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その延伸方向と直交する方向の屈折率が相対的に小さくなることをいう。換言すると、延伸方向の屈折率が大きくなることをいう。「負の複屈折を示す」とは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その延伸方向の屈折率が相対的に小さくなることをいう。換言すると、延伸方向と直交する方向の屈折率が大きくなることをいう。
B-1.正の複屈折を示す樹脂(正の複屈折樹脂)
正の複屈折樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されず、例えば、セルロース、セルロース誘導体等のセルロース系樹脂を用いることができる。セルロース誘導体としては、例えば、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部がエーテル化されたセルロースエーテル、同様に水酸基の少なくとも一部がエステル化されたセルロースエーテルエステルが挙げられる。正の複屈折樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セルロース系樹脂は、代表的には、β-グルコース単位が直鎖状に重合した高分子であって、下記式(1)に示す構成単位を有している。
Figure 2023180141000001
(式(1)中、R~Rのそれぞれは、水素原子または炭素数1~12の置換基を示す)。
上記式(1)においてR~Rで示される炭素数1~12の置換基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デカニル基、ドデカニル基、イソブチル基、t-ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;アセチル基、プロピオニル基などのアシル基;シアノエチル基などのシアノアルキル基;アミノエチル基などのアミノアルキル基;2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシアルキル基;が挙げられる。
上記式(1)においてR~Rは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
上記式(1)のR~Rのそれぞれとして、好ましくは、水素原子、および、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、水素原子、および、炭素数1~4のアルキル基が挙げられ、さらに好ましくは、水素原子、および、エチル基が挙げられる。
セルロース系樹脂の置換度(以下、DSという。)は、代表的には1.5以上2.95以下、好ましくは1.8以上2.8以下である。DSとは、セルロース系樹脂において水酸基が置換されている割合であって、100%置換している場合DSは3である。DSは、第十七改正日本薬局方に記載のように、ガスクロマトグラフィーのピーク面積から算出できる。
セルロース系樹脂の標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、例えば、1×10以上1×10以下、好ましくは、5×10以上2×10以下である。セルロース系樹脂のMnは、ゲル・パ-ミエイション・クロマトグラフィ-(GPC)により測定した溶出曲線より算出できる。セルロース系樹脂のMnが上記の範囲であれば、位相差層の機械特性および/または成形加工性の向上を図ることができる。
セルロース系樹脂は、相対的にガラス転移温度(Tg)が低く、エステル系樹脂は、相対的にTgが高い。セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば140℃以下、好ましくは135℃以下であり、例えば120℃以上、好ましくは125℃以上である。セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)等の熱分析装置によって測定できる。
セルロース系樹脂の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロースなどのアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ベンジルセルロースなどのアラルキルセルロース;シアノエチルセルロースなどのシアノアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースなどのカルボキシアルキルアルキルセルロース;アミノエチルセルロースなどのアミノアルキルセルロースが挙げられる。セルロース系樹脂は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
セルロース系樹脂のなかでは、好ましくは、アルキルセルロースが挙げられ、より好ましくはエチルセルロースが挙げられる。
正の複屈折樹脂の含有割合は、正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂の総和を100質量%としたときに、代表的には50質量%を超過し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。正の複屈折樹脂の含有割合が上記下限以上であれば、正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂から後述するナノ相分離構造を形成できる。なお、正の複屈折樹脂の含有割合の上限は、代表的には90質量%以下である。
B-2.負の複屈折を示す樹脂(負の複屈折樹脂)
負の複屈折樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されず、例えば、下記式(2)に示す構成単位と、下記式(3)に示す構成単位とを有するエステル系樹脂を用いることができる。負の複屈折樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2023180141000002
(式(2)中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示し;R5aは、炭素数1~12のアルキル基、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、または、チオール基から選択される1種を示し;R5bは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示し;Rは、水素原子、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、フェニル基、チオール基、アミド基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、または、炭素数1~12のアルキル基から選択される種を示す。)
Figure 2023180141000003
(式(3)中、Rは、ヘテロ原子として窒素原子もしくは酸素原子を1つ以上含む5員環複素環残基または6員環複素環残基(前記5員環複素環残基および前記6員環複素環残基は他の環状構造と縮合環構造を形成してもよい)を示す。)
上記式(2)に示す構成単位は、ケイ皮酸エステル残基単位である。上記式(2)においてRで示される炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、エチルヘキシル基が挙げられる。上記式(2)のRのなかでは、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、エチル基、イソブチル基が挙げられる。
上記式(2)のR5aのなかでは、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基が挙げられ、さらに好ましくはシアノ基が挙げられる。
上記式(2)のR5bのなかでは、好ましくは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。
上記式(2)のRは、ベンゼン環に1つのみ結合してもよく、ベンゼン環に2つ以上結合してもよい。上記式(2)のRのなかでは、好ましくは、カルボン酸基、ヒドロキシ基が挙げられる。
上記式(2)に示す構成単位(ケイ皮酸エステル残基単位)の具体例としては、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸n-プロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸n-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸s-ブチル残基単位、α-シアノ-2,4-ジヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位などのα-シアノ-ヒドロキシケイ皮酸エステル残基単位;α-シアノ-4-カルボキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-カルボキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-2,3-ジカルボキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2,3-ジカルボキシケイ皮酸エチル残基単位などのα-シアノ-カルボキシケイ皮酸エステル残基単位;α-シアノ-2-カルボキシ-3-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2-カルボキシ-3-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位などのα-シアノ-カルボキシ-ヒドロキシケイ皮酸エステル残基単位;3-メチル-3-(ヒドロキシフェニル)-プロパ-2-エン酸メチル残基単位、3-エチル-3-(ヒドロキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エチル残基単位などの3-アルキル-3-(ヒドロキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エステル残基単位;3-メチル-3-(カルボキシフェニル)-プロパ-2-エン酸メチル残基単位、3-エチル-3-(カルボキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エチル残基単位などの3-アルキル-3-(カルボキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エステル残基単位;2-シアノ-3-メチル-3-(ヒドロキシフェニル)-プロパ-2-エン酸メチル残基単位、2-シアノ-3-エチル-3-(ヒドロキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エチル残基単位などの2-シアノ-3-アルキル-3-(ヒドロキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エステル残基単位;2-シアノ-3-メチル-3-(カルボキシフェニル)-プロパ-2-エン酸メチル残基単位、2-シアノ-3-エチル-3-(カルボキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エチル残基単位などの2-シアノ-3-アルキル-3-(カルボキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エステル残基単位が挙げられる。
エステル系樹脂は、上記式(2)に示す構成単位を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。上記式(2)に示す構成単位のなかでは、好ましくは、α-シアノ-ヒドロキシケイ皮酸エステル残基単位、α-シアノ-カルボキシケイ皮酸エステル残基単位、3-アルキル-3-(ヒドロキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エステル残基単位、3-アルキル-3-(カルボキシフェニル)-プロパ-2-エン酸エステル残基単位が挙げられる。
エステル系樹脂における上記式(2)の構成単位の含有割合は、例えば21モル%以上であり、例えば70モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは49モル%以下である。エステル系樹脂における各構成単位の含有割合は、例えば、H-NMRにより測定できる。
上記式(3)においてRで示される環構造の具体例としては、1-ビニルピロール残基単位、2-ビニルピロール残基単位、1-ビニルインドール残基単位、9-ビニルカルバゾール残基単位、2-ビニルキノリン残基単位、4-ビニルキノリン残基単位、N-ビニルフタルイミド残基単位、N-ビニルスクシンイミド残基単位、2-ビニルフラン残基単位、2-ビニルベンゾフラン残基単位が挙げられ、好ましくは、9-ビニルカルバゾール残基単位、N-ビニルフタルイミド残基単位が挙げられる。
エステル系樹脂は、上記式(3)に示す構成単位を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
エステル系樹脂における上記式(3)の構成単位の含有割合は、例えば21モル%以上、好ましくは35モル%以上であり、例えば70モル%以下、好ましくは60モル%以下である。
エステル系樹脂は、好ましくは、上記(2)および(3)に示す構成単位に加えて、下記式(4)に示す構成単位をさらに有する。
Figure 2023180141000004
(式(4)中、RおよびRのそれぞれは、水素原子、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、または、炭素数3~6の環状アルキル基から選択される1種を示す)。
上記式(4)において、RおよびRで示される炭素数1~12の直鎖状アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
上記式(4)において、RおよびRで示される炭素数3~12の分岐状アルキル基として、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
上記式(4)において、RおよびRで示される炭素数3~6の環状アルキル基として、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
上記式(4)においてRおよびRは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
上記式(4)におけるRのなかでは、好ましくは、水素原子、炭素数1~12の直鎖状アルキル基が挙げられ、より好ましくは、水素原子、メチル基が挙げられる。
上記式(4)におけるRのなかでは、好ましくは、炭素数3~12の分岐状アルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数3~8の分岐状アルキル基が挙げられる。
上記式(4)に示す構成単位は、代表的にはアクリル樹脂残基単位である。上記式(4)に示す構成単位の具体例として、アクリル酸残基単位、メタクリル酸残基単位、2-エチルアクリル酸残基単位、2-プロピルアクリル酸残基単位、2-イソプロピルアクリル酸残基単位、2-ペンチルアクリル酸残基単位、2-ヘキシルアクリル酸残基単位、アクリル酸メチル残基単位、アクリル酸エチル残基単位、アクリル酸n-プロピル残基単位、アクリル酸イソプロピル残基単位、アクリル酸n-ブチル残基単位、アクリル酸イソブチル残基単位、アクリル酸sec-ブチル残基単位、アクリル酸n-ペンチル残基単位、アクリル酸イソペンチル残基単位、アクリル酸sec-ペンチル残基単位、アクリル酸3-ペンチル残基単位、アクリル酸ネオペンチル残基単位、アクリル酸n-へキシル残基単位、アクリル酸イソへキシル残基単位、アクリル酸ネオへキシル残基単位、メタクリル酸メチル残基単位、メタクリル酸エチル残基単位、メタクリル酸n-プロピル残基単位、メタクリル酸イソプロピル残基単位、メタクリル酸n-ブチル残基単位、メタクリル酸イソブチル残基単位、メタクリル酸sec-ブチル残基単位、メタクリル酸n-ペンチル残基単位、メタクリル酸イソペンチル残基単位、メタクリル酸sec-ペンチル残基単位、メタクリル酸3-ペンチル残基単位、メタクリル酸ネオペンチル残基単位、メタクリル酸n-へキシル残基単位、メタクリル酸イソへキシル残基単位、メタクリル酸ネオへキシル残基単位、2-エチルアクリル酸メチル残基単位、2-エチルアクリル酸エチル残基単位、2-エチルアクリル酸n-プロピル残基単位、2-エチルアクリル酸イソプロピル残基単位、2-エチルアクリル酸n-ブチル残基単位、2-エチルアクリル酸イソブチル残基単位、2-エチルアクリル酸sec-ブチル残基単位などが挙げられ、好ましくはアクリル酸イソブチル残基単位が挙げられる。
エステル系樹脂は、上記式(4)に示す構成単位を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
エステル系樹脂における上記式(4)の構成単位の含有割合は、例えば0モル%以上、好ましくは1モル%以上であり、例えば30モル%以下である。
エステル系樹脂は、上記式(2)から(4)以外の単量体残基単位を含有してもよい。そのような単量体残基単位としては、例えば、スチレン残基、α-メチルスチレン残基などのスチレン類残基;ビニルナフタレン残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基などのビニルエステル類残基;メチルビニルエーテル残基、エチルビニルエーテル残基、ブチルビニルエーテル残基などのビニルエーテル残基;N-メチルマレイミド残基、N-シクロヘキシルマレイミド残基、N-フェニルマレイミド残基などのN-置換マレイミド残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;フマル酸エステル残基;フマル酸残基;エチレン残基、プロピレン残基などのオレフィン類残基が挙げられる。
エステル系樹脂の標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、例えば、1×10以上5×10以下、好ましく、5×10以上3×10以下である。エステル系樹脂のMnは、ゲル・パ-ミエイション・クロマトグラフィ-(GPC)により測定した溶出曲線より算出できる。エステル系樹脂のMnが上記の範囲であれば、位相差層の機械特性および/または成形加工性の向上を図ることができる。
エステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば220℃以下、好ましくは210℃以下であり、例えば180℃以上、好ましくは190℃以上である。エステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)等の熱分析装置によって測定できる。
このようなエステル系樹脂の具体例としては、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-スチレン-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-2-ビニルナフタレン-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-1-ビニルインドール-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-9-ビニルカルバゾール-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-スチレン-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-2-ビニルナフタレン-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-1-ビニルインドール-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-9-ビニルカルバゾール-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-スチレン-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-2-ビニルナフタレン-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-1-ビニルインドール-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-9-ビニルカルバゾール-アクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-2-ビニルナフタレン-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-1-ビニルインドール-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エステル-9-ビニルカルバゾール-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-2-ビニルナフタレン-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-1-ビニルインドール-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エステル-9-ビニルカルバゾール-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-2-ビニルナフタレン-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-1-ビニルインドール-メタクリル酸エステル共重合体、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エステル-9-ビニルカルバゾール-メタクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
B-3.樹脂フィルム
このような樹脂フィルムは、代表的には、下記の製造方法により製造される。
1つの実施形態において、樹脂フィルムの製造方法は、正の複屈折樹脂と負の複屈折樹脂とを溶媒に溶解して樹脂溶液を調製する工程(溶液調製工程)と;樹脂溶液を支持基材上に塗布して支持基材上に塗膜を形成する工程(塗布工程)と;塗膜を加熱して乾燥させてドライ膜を形成する工程(乾燥工程)と;乾燥工程の最高温度よりも高いアニール温度で加熱する工程(アニール工程)と;を含んでいる。
具体的には、正の複屈折樹脂と負の複屈折樹脂とを、上記含有割合となるように溶媒に溶解する(溶液調製工程)。
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、メシチレン、ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン(CPN)、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ブタノール、t-ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールなどのアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル系溶媒;1,3-ジオキソラン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;二硫化炭素、エチルセロソルブ、ブチルセルソルブ、および、これらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒のなかでは、好ましくは混合溶媒が挙げられる。混合溶媒の組み合わせとしては、エステル系溶媒/芳香族炭化水素類、エーテル系溶媒/芳香族炭化水素類、エステル系溶媒/エーテル系溶媒、エステル系溶媒/アルコール系溶媒、エステル系溶媒/ケトン系溶媒、2種のエーテル系溶媒、2種のエステル系溶媒が挙げられる。
正の複屈折樹脂と溶媒とのハンセン溶解度パラメータ距離(以下、HSP距離*正の複屈折樹脂と称する場合がある。)は、例えば12.00以下、好ましくは11.30以下、より好ましくは11.20以下である。HSP距離*正の複屈折樹脂が上記上限以下であれば、樹脂フィルムにおける延伸配向性の向上を図ることができる。HSP距離*正の複屈折樹脂は、例えば、下記式(III)により算出できる。なお、HSP距離*正の複屈折樹脂の下限は、代表的には、6.0以上である。
式(III):
HSP距離*正の複屈折樹脂=[4(δd2-δd1+(δp2-δp1+(δh2-δh10.5
(式(III)中、δd1は溶媒の分子間の分散力エネルギーを示し;δd2は正の複屈折樹脂の分子間の分散力エネルギーを示し;δp1は溶媒の分子間の双極子相互作用エネルギーを示し;δp2は正の複屈折樹脂の分子間の双極子相互作用エネルギーを示し;δh1は溶媒の分子間の水素結合エネルギーを示し;δh2は正の複屈折樹脂の分子間の水素結合エネルギーを示す。)
負の複屈折樹脂と溶媒とのHSP距離(以下、HSP距離*負の複屈折樹脂と称する場合がある。)は、例えば6.5以下、好ましくは6.0以下であり、例えば2.0以上である。HSP距離*負の複屈折樹脂は、例えば、下記式(IV)により算出できる。
式(IV):
HSP距離*負の複屈折樹脂=[4(δd3-δd1+(δp3-δp1+(δh3-δh10.5
(式(IV)中、δd3は負の複屈折樹脂の分子間の分散力エネルギーを示し;δp3は負の複屈折樹脂の分子間の双極子相互作用エネルギーを示し;δh3は負の複屈折樹脂の分子間の水素結合エネルギーを示し;δd1、δp1およびδh1のそれぞれは、上記式(III)と同様の溶媒の分子間のエネルギーを示す。)
{HSP距離*正の複屈折樹脂-HSP距離*負の複屈折樹脂は、例えば60以下、好ましくは55以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは45以下、とりわけ好ましくは30以下である。このような構成によれば、正の複屈折樹脂と負の複屈折樹脂とを含有する樹脂フィルムの延伸により、位相差フィルムに逆分散特性(位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性)を十分に発現することができる。{HSP距離*正の複屈折樹脂-HSP距離*負の複屈折樹脂の下限は、代表的には10以上である。
混合溶媒として、より好ましくは、エステル系溶媒/芳香族炭化水素類が挙げられ、さらに好ましくは、酢酸エチル/トルエンが挙げられ、とりわけ好ましくは、酢酸エチル60質量%/トルエン40質量%が挙げられる。溶媒がこのような混合溶媒であると、樹脂フィルムにおいてより安定してナノ相分離構造を形成できる。
上記した正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂を上記した溶媒に溶解するには、代表的には、正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂を溶媒に添加して所定時間撹拌した後、静置して脱泡する。
撹拌時間としては、例えば5分以上、好ましくは10分以上であり、例えば3時間以下、好ましくは1時間以下である。
脱泡時間(静置時間)としては、例えば30分以上、好ましくは1時間以上であり、例えば5時間以下、好ましくは3時間以下である。
これによって、正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂が溶解した樹脂溶液が調製される。樹脂溶液における固形分濃度は、例えば1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
樹脂溶液には、上記した樹脂成分に加えて、添加剤を任意の適切な割合で添加してもよい。添加剤として、例えば、ヒンダ-ドフェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤などの酸化防止剤;ヒンダ-ドアミン系光安定剤;ベンゾトリアゾ-ル、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエ-トなどの紫外線吸収剤;界面活性剤;高分子電解質;導電性錯体;顔料;染料;帯電防止剤;アンチブロッキング剤;滑剤が挙げられる。
次いで、樹脂溶液を支持基材上に塗布して塗膜を形成する(塗布工程)。
塗布方法は、特に制限されず、任意の適切な法を採用できる。塗布方法としては、例えば、ドクタ-ブレ-ド法、バ-コ-タ-法、スリップコ-タ-法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法が挙げられる。塗布方法は、使用される樹脂溶液の組成や種類、樹脂フィルムに所望される特性等に応じて適宜設定され得る。
支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ系樹脂などの高分子基材、ガラス板、石英基板などのガラス基材、アルミ、ステンレス、フェロタイプなどの金属基材、セラミックス基板などの無機基材が挙げられ、好ましくは、高分子基材、金属基材が挙げられ、より好ましくはPET基材が挙げられる。
これによって、塗膜が形成される。塗膜は、ドライ膜の所望の厚みに応じて、任意の適切なウェット厚みを採用できる。塗膜のウェット厚みは、例えば200μm以上2000μm以下、好ましくは500μm以上1500μm以下である。
次いで、支持基材上の塗膜を加熱してドライ膜を形成する(乾燥工程)。乾燥温度は、例えば35℃以上165℃以下であり、乾燥時間は1分以上30分以下である。乾燥工程は、1段階で実施されてもよく、多段階で実施されてもよい。乾燥工程は、好ましくは多段階で実施される。乾燥工程が多段階で実施される場合、1段目の乾燥温度を、例えば35℃以上65℃以下、好ましくは45℃以上65℃以下に設定し、1段目の乾燥時間を、例えば1分以上30分以下、好ましくは1分以上8分以下に設定する。その後、乾燥工程の段数が増える毎に、乾燥温度を、例えば10℃~130℃、好ましくは10℃~40℃上昇させる。2段目以降の各段の乾燥時間は、代表的には、1段目の乾燥時間よりも短く、好ましくは20秒以上20分以下、より好ましくは30秒以上5分以下である。乾燥工程の段数は、好ましくは2段以上4段以下であり、より好ましくは3段以下である。乾燥工程における最高温度(最高乾燥温度)は、例えば165℃以下、好ましくは130℃未満、より好ましくは120℃未満、さらに好ましくは115℃以下である。
これによって、支持基材上にドライ膜が形成される。ドライ膜の厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下であり、例えば50μm以上である。
次いで、ドライ膜を、最高乾燥温度よりも高いアニール温度で加熱する(アニール工程)。アニール温度は、例えば110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、例えば180℃以下、好ましくは165℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。アニール時間は、例えば1分以上、好ましくは5分以上、さらに好ましくは15分以上であり、例えば60分以下、好ましくは45分以下である。
以上によって、樹脂フィルムが製造される。1つの実施形態では、樹脂フィルムにおいてナノ相分離構造が形成されている。このような構成によれば、樹脂フィルムを延伸して製造される位相差フィルムに、逆分散特性を安定して付与できる。本明細書において、「ナノ相分離構造」とは、電子密度の異なる2成分がナノオーダー(代表的には数十nmレベル)のドメインサイズで相分離した構造を意味する。正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂は、海島構造であってもよく、共連続構造であってもよい。ナノ相分離構造の確認手段としては、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)および、X線小角散乱(SAXS)が挙げられ、好ましくは、樹脂フィルムの断面のTEM観察が挙げられる。樹脂フィルムにナノ相分離構造が形成されている場合、樹脂フィルムの断面のTEM観察において、電子密度の異なる2種のドメインを確認でき、すべてのドメインのサイズ(最大長さ)が100nm未満であることを確認できる。より具体的には、樹脂フィルムの厚み方向の中央付近(樹脂フィルムの厚みを100%としたときに、樹脂フィルムの厚み方向の中央から±20%の領域)をサンプリングし、重金属染色を含む超薄切片法により、樹脂フィルムの断面をTEM(例えば、HT7820,日立社製)により観察する(断面TEM観察)。これによって、ナノ相分離構造を確認できる。
このような樹脂フィルムの厚みは、例えば300μm以下、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下であり、例えば50μm以上、好ましくは100μm以上である。
樹脂フィルムは、好ましくは長尺状を有する。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。樹脂フィルムの幅方向(長手方向と直交する方向)の寸法は、例えば500mm以上、好ましくは1000mm以上であり、例えば2500mm以下、好ましくは2000mm以下である。長尺状の樹脂フィルムは、ロール状に巻回可能である。
C.第1延伸工程
第1延伸工程では、上記のように製造された樹脂フィルムを所定方向に延伸する。延伸方法は、任意の適切な方法が採用され得る。自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、長さ方向、幅方向、厚さ方向、斜め方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。延伸方法の具体例としては、固定端一軸延伸、自由端一軸延伸、および斜め延伸が挙げられる。
このような延伸方法のなかでは、好ましくは固定端一軸延伸が挙げられる。固定端一軸延伸は、例えばテンター式延伸装置を用いて、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に搬送しながら、長手方向と直交する方向(幅方向)に延伸することによって行われ得る。
1つの実施形態において、樹脂フィルムは、延伸前に予熱される。予熱温度は、樹脂フィルムに含まれる材料のTgに関連して変動し、例えば、正の複屈折樹脂のTgAに着目して設定される。予熱温度は、例えばTgA-20℃以上、好ましくはTgA-10℃以上であり、例えばTgA+50℃以下、好ましくはTgA+40℃以下である。
第1延伸工程における延伸温度(第1延伸温度)は、予熱温度と同様に、正の複屈折樹脂のTgAに着目して設定され得る。第1延伸温度は、TgA+20℃を超過し、好ましくはTgA+25℃以上であり、例えばTgA+50℃以下、好ましくはTgA+40℃以下、より好ましくはTgA+35℃以下である。第1延伸温度が上記下限以上であると、延伸時に樹脂フィルムが破断することを抑制できる。第1延伸温度が上記上限以下であると、位相差フィルムにおける軸精度のさらなる向上を図ることができる。
第1延伸工程における延伸速度(第1延伸速度)は、例えば、1mm/秒以上、好ましくは2mm/秒以上であり、例えば200mm/秒以下、好ましくは100mm/秒以下である。第1延伸工程における延伸倍率(第1延伸倍率)は、例えば1.5倍以上、好ましくは2.0倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、例えば8.0倍以下、好ましくは7.5倍以下、より好ましくは5.0倍以下である。
第1延伸工程後の樹脂フィルムは、そのまま第2延伸工程に供されてもよく、所定のサイズに裁断して第2延伸工程に供されてもよい。例えば、第1延伸工程後かつ第2延伸工程前に樹脂フィルムを裁断する場合、第1延伸工程後の樹脂フィルムを長手方向に沿って裁断し(裁断工程)、第2延伸工程において裁断後の樹脂フィルムを延伸する。裁断後の樹脂フィルムは、一旦ロール状に巻回した後、第2延伸工程に供してもよい。第1延伸工程後の樹脂フィルムを裁断すると、第2延伸工程に供する樹脂フィルムの幅を所望の範囲に調整でき、樹脂フィルムの取扱性の向上を図ることができる。これによって、位相差フィルムの製造効率を向上し得る。
D.第2延伸工程
第2延伸工程では、第1延伸工程後の樹脂フィルムを、第1延伸工程と同じ方向に延伸する。延伸方法としては、上記C項で説明した任意の適切な方法が挙げられ、好ましくは、第1延伸工程と同様に、固定端一軸延伸が挙げられる。固定端一軸延伸では、テンター式延伸装置を用いて、第1延伸工程後の樹脂フィルムを長手方向に搬送しながら、長手方向と直交する方向(幅方向)に延伸することによって行われ得る。
第2延伸工程における延伸温度(第2延伸温度)は、第1延伸温度以上であり、好ましくは第1延伸温度よりも高い。第2延伸温度と第1延伸温度との差(第2延伸温度-第1延伸温度)は、例えば0℃以上、好ましくは1℃以上、より好ましくは3℃以上であり、例えば20℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは12℃以下である。延伸温度差が上記の範囲であると、樹脂フィルムに生じる応力を抑制できる。
第2延伸温度は、負の複屈折樹脂のTgBに着目して設定され得る。第2延伸温度は、TgB-20℃未満、好ましくはTgB-25℃以下、より好ましくはTgB-30℃以下であり、例えばTgB-50℃以上、好ましくはTgB-40℃以上である。第2延伸温度が上記範囲であると、上記式(I)を満足するように安定して調整でき、位相差フィルムにおける軸精度をより一層向上できる。
第2延伸工程における延伸速度(第2延伸速度)の範囲は、上記した第1延伸速度の範囲と同様である。第2延伸工程における延伸倍率(第2延伸倍率)は、例えば1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上であり、例えば6.0倍以下、好ましくは4.0倍以下、より好ましくは2.5倍以下である。第2延伸倍率が上記範囲であれば、上記式(II)を安定して満足させ得る。
第1延伸倍率と第2延伸倍率との積(延伸前の樹脂フィルムの元長に対する総延伸倍率)は、上記したとおり4.5倍以上10倍以下であり、好ましくは4.5倍以上9.5倍以下、より好ましくは5.0倍以上9.5倍以下である。樹脂フィルムが正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂を含有しており、とりわけ樹脂フィルムにおいてナノ相分離構造が形成されているので、樹脂フィルムを上記総延伸倍率で延伸しても、フィルムが破断することなく、位相差フィルムに優れた光学特性を発現し得る。
E.熱収縮工程
1つの実施形態において、位相差フィルムの製造方法は、第2延伸工程後の樹脂フィルムを延伸方向に熱収縮させる熱収縮工程をさらに含んでいる。
熱収縮工程では、第2延伸工程後の樹脂フィルムを延伸方向に熱収縮させる。熱収縮温度は、第1延伸温度と同様に、正の複屈折樹脂のTgAに関して設定され、例えばTgA-20℃以上、好ましくはTgA-15℃以上であり、例えばTgA+45℃以下、好ましくはTgA+35℃以下である。熱収縮温度は、より好ましくは第1延伸温度以下である。収縮率は、代表的には1%以上5%以下である。
F.位相差フィルム
以上によって、位相差フィルムが製造される。なお、熱収縮工程を実施せずに、第2延伸工程後の樹脂フィルムを位相差フィルムとすることもできる。位相差フィルムは、正の複屈折樹脂(上記セルロース系樹脂)および負の複屈折樹脂(上記エステル系樹脂)を含んでいる。代表的には、位相差フィルムにおいて、樹脂フィルムと同様のナノ相分離構造が維持されている。位相差フィルムにおける正の複屈折樹脂(セルロース系樹脂)の含有割合の範囲は、上記した樹脂フィルムにおける正の複屈折樹脂(セルロース系樹脂)の含有割合の範囲と同様である。位相差フィルムの厚み方向の位相差の波長分散特性は、正の複屈折樹脂および負の複屈折樹脂の各々の厚み方向の位相差の波長分散特性を合成したものとして把握され得る。よって、厚み方向の位相差に関してフラットな波長分散特性を有し、かつ、nx>nzの屈折率特性を示す上記セルロース系樹脂と、正の波長分散特性を有し、かつ、nx<nzの屈折率特性を示す上記エステル系樹脂とを、上記含有割合で含むことにより、厚み方向の位相差に関して逆波長分散特性を有し、かつ、nx>nzの屈折率特性を示す樹脂フィルムが好適に得られ得る。
位相差フィルムは、代表的には、nx>ny≧nzの屈折率特性を示す。「ny=nz」とは、nyとnzとが完全に同一である場合だけでなく、nyとnzとが実質的に同一である場合も包含する。屈折率特性がnx>ny=nzである位相差フィルムは、「ポジティブAプレート」等と称される場合がある。屈折率特性がnx>ny>nzである位相差フィルムは、「ネガティブBプレート」等と称される場合がある。
位相差フィルムは、代表的には長尺状を有している。長尺状の位相差フィルムは、ロール状に巻回可能である。位相差フィルムにおいて、位相差フィルムの幅方向(すなわち延伸方向)と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度は、例えば3.0°以下、好ましくは2.0°以下、より好ましくは1.5°以下、とりわけ好ましくは1.0°以下であり、例えば0°以上である。位相差フィルムの幅方向の全体にわたって、幅方向と遅相軸方向とのなす角度は上記範囲内である。
位相差フィルムの面内複屈折Δn(550)は、例えば0.0020以上、好ましくは0.0030以上、より好ましくは0.0040以上であり、例えば0.0070以下、好ましくは0.0060以下、より好ましくは0.0055以下である。
位相差フィルムは、代表的にはλ/4板として機能する。位相差フィルムのRe(550)は、例えば100nm~200nmであり、また例えば120nm~160nmであり、また例えば130nm~150nmである。
位相差フィルムのNz係数は、例えば0.9以上3以下であり、好ましくは1.0以上1.5以下である。このような関係を満たすことにより、偏光子と組み合わせて画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
位相差フィルムのRe(450)/Re(550)は、例えば0.90以下、好ましくは0.88以下であり、例えば0.65以上、好ましくは0.70以上である。
位相差フィルムの厚みは、例えば10μm以上、好ましくは20μm以上であり、例えば80μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)厚みの測定
リニアゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG-205 type pds-2」)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
(2)位相差値の測定
実施例および比較例で得られた位相差フィルムの位相差値について、Axoscan(Axometrics社製)を用いて自動計測した。測定波長は、450nmまたは550nmであり、測定温度は23℃であった。面内複屈折Δn(550)、Re(450)/Re(550)、および、Nz係数を表1に示す。
(3)軸バラツキの測定
実施例および比較例で得られた位相差フィルムにおける延伸方向と遅相軸方向とのなす角度を、幅方向位相差測定器Axoscan(Axometrics社製)によって測定した。より詳しくは、位相差フィルムの幅方向に1mm間隔で位相差フィルムにおける延伸方向と遅相軸方向とのなす角度を測定した。この角度の最大値から最小値を差し引いた値を軸バラツキとした。その結果を表1に示す。
<<製造例1;負の複屈折性を示すエステル系樹脂(9-ビニルカルバゾール/α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル/アクリル酸イソブチル)の合成>>
容量50mLのガラスアンプルに9-ビニルカルバゾール12.20g、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル7.74g、アクリル酸イソブチル4.05g、重合開始剤である2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン0.453gおよびメチルエチルケトン36.00gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを54℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロフラン100gを加え、このポリマー溶液を800gのメタノール/水混合溶剤(質量比80/20)中に滴下して析出させ、ろ過した後、ろ過物を110gのメタノール/水混合溶剤(質量比90/10)で5回洗浄、ろ過した。得られた樹脂を80℃で10時間真空乾燥することにより、負の複屈折性を示すケイ皮酸エステル共重合体22.3gを得た。得られた重合体の数平均分子量は50,000であり、残基単位の比率は、9-ビニルカルバゾール残基単位50モル%、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位25モル%、アクリル酸イソブチル残基単位25モル%であった。
[実施例1~6および比較例1、5]
エチルセルロース(正の複屈折樹脂、ダウ・ケミカル社製、エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、数平均分子量Mn=58,000、重量平均分子量Mw=180,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.51、ガラス転移温度TgA=130℃)と、製造例1で得られたエステル系樹脂(負の複屈折樹脂、ガラス転移温度TgB=198℃)とを、エチルセルロース:エステル系樹脂=80:20(質量比)となるように、酢酸エチル/トルエン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解して、固形分濃度16質量%の樹脂溶液を得た。
次いで、樹脂溶液を、ディスパーミキサーによって30分間撹拌した後、2時間静置して脱泡した。脱泡後の樹脂溶液を、アプリケータにより、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(支持基材、東洋紡社製、コスモシャインA4610)上に塗布して、塗膜を形成した。
次いで、塗膜を、オーブンにて65℃/6分間、85℃/1分間、110℃/2分間の条件で3段乾燥した後、室温(23℃)において30分間静置した。これによって、支持基材上に樹脂フィルムを形成した。樹脂フィルムは、長尺状を有していた。長尺状の樹脂フィルムの幅方向の寸法は、600mmであった。
次いで、長尺状の樹脂フィルムを、再度オーブンにて、130℃/30分間アニールした。その後、樹脂フィルムを、160℃/1分間の条件で予熱した後、長手方向に搬送しながら、表1に示す第1延伸温度および第1延伸倍率で、延伸速度5mm/秒で固定端横延伸(搬送方向と直交する幅方向に延伸)した。次いで、第1延伸工程後の樹脂フィルムを、幅方向中央で長手方向に沿って裁断した。その後、裁断した樹脂フィルム(幅方向の寸法150mm)を、長手方向に搬送しながら、表1に示す第2延伸温度および第2延伸倍率で、延伸速度5mm/秒で固定端横延伸(搬送方向と直交する幅方向に延伸)した。なお、比較例5では、第2延伸工程においてフィルムが破断した。
これによって、位相差フィルムを得た。位相差フィルムの屈折率特性は、nx>ny>nzを示していた。
[比較例2~4]
上記エチルセルロース(正の複屈折樹脂)と、製造例1で得られたエステル系樹脂(負の複屈折樹脂)とを、エチルセルロース:エステル系樹脂=80:20(質量比)となるように、酢酸エチル/トルエン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解して、固形分濃度16質量%の樹脂溶液を得た。
次いで、樹脂溶液を、ディスパーミキサーによって30分間撹拌した後、2時間静置して脱泡した。脱泡後の樹脂溶液を、アプリケータにより、上記PETフィルム(支持基材)上に塗膜を形成した。
次いで、塗膜を、オーブンにて、65℃/6分間、85℃/1分間、110℃/2分間の条件で3段乾燥した後、室温(23℃)において30分間静置した。これによって、支持基材上に樹脂フィルムを形成した。樹脂フィルムは、長尺状を有していた。長尺状の樹脂フィルムの幅方向の寸法は、600mmであった。
次いで、長尺状の樹脂フィルムを、再度オーブンにて、130℃/1分間アニールした。その後、樹脂フィルムを、155℃/1分間の条件で予熱した後、長手方向に搬送しながら、表1に示す第1延伸温度および第1延伸倍率で、延伸速度5mm/秒で固定端横延伸(搬送方向と直交する幅方向に延伸)した。なお、比較例3では、第1延伸工程においてフィルムが破断した。
これによって、第2延伸工程を実施せずに、位相差フィルムを得た。位相差フィルムの屈折率特性は、nx>ny>nzを示していた。
Figure 2023180141000005
[評価]
表1から明らかなように、第1延伸温度および第2延伸温度が上記式(I)を満足すると、位相差フィルムの幅方向における遅相軸方向のバラツキを抑制でき、位相差フィルムの幅方向の全体にわたって、幅方向と遅相軸方向とのなす角度を3°以下できることがわかる。また、第1延伸倍率および第2延伸倍率が上記式(II)を満足すると、位相差フィルムの光学特性(特に面内複屈折)を向上できることがわかる。
本発明の実施形態による位相差フィルムの製造方法によって製造される位相差フィルムは、液晶表示装置およびEL表示装置等の画像表示装置、特に有機EL表示装置において好適に用いられ得る。

Claims (7)

  1. 正の複屈折を示す樹脂と負の複屈折を示す樹脂とを含有する樹脂フィルムを所定方向に延伸する第1延伸工程と、
    前記第1延伸工程後の樹脂フィルムを、前記第1延伸工程と同じ方向に延伸する第2延伸工程と、を含み、
    前記第1延伸工程における第1延伸倍率と、前記第2延伸工程における第2延伸倍率との積が、4.5倍以上10倍以下であり、
    前記第1延伸工程における第1延伸温度および前記第2延伸工程における第2延伸温度が、下記式(I)を満足する、位相差フィルムの製造方法:
    TgA+20℃<第1延伸温度≦第2延伸温度<TgB-20℃・・・(I)
    (式(I)において、TgAは正の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示し;TgBは負の複屈折を示す樹脂のガラス転移温度を示す)。
  2. 前記第1延伸倍率および前記第2延伸倍率が、下記式(II)を満足する、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法:
    1<第1延伸倍率/第2延伸倍率<5・・・(II)。
  3. 前記樹脂フィルムは、長尺状を有し、
    前記第1延伸工程および前記第2延伸工程のそれぞれにおいて、前記長尺状の樹脂フィルムを長手方向に搬送しながら前記長手方向と直交する幅方向に延伸する、請求項1または2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 前記第1延伸工程後かつ前記第2延伸工程前に、前記第1延伸工程後の樹脂フィルムを前記長手方向に沿って裁断する裁断工程をさらに含み、
    前記第2延伸工程において、裁断後の樹脂フィルムを延伸する、請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記位相差フィルムの幅方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度が、3°以下である位相差フィルムを製造する、請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法。
  6. Nz係数が1.0以上1.5以下である位相差フィルムを製造する、請求項1または2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  7. 面内複屈折Δn(550)が0.003以上であり、Re(450)/Re(550)が0.9以下である位相差フィルムを製造する、請求項1または2に記載の位相差フィルムの製造方法。
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