JP2023178892A - 陰極、高速原子ビーム線源、接合基板の製造方法、および、陰極の再生方法 - Google Patents

陰極、高速原子ビーム線源、接合基板の製造方法、および、陰極の再生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高速原子ビーム線源からのパーティクル堆積物の放出を抑制でき、高速原子ビーム線源内の真空度の低下を抑制する技術を提供する。【解決手段】高速原子ビーム線源500において、陰極100は、6つの内面を有する。内面は、6枚の平板状の陰極部材103から構成され、陰極内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入口102と、陰極の外部に高速原子ビームを放出する粒子線放出口101と、を有する。陰極部材の平面は、ブロック体300が貼り付けられているブロック体貼付領域を有する。ブロック体貼付領域は、高速原子ビーム線源の使用により発生するスパッタリングによる陰極部材の除去量よりも、スパッタリングにより発生したスパッタ塵の再付着量の方が大きい領域である。ブロック体の体積は、陰極の内部の体積に対して、体積割合1%~15%であり、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積が25%以上である。【選択図】図3

Description

本発明は、陰極、高速原子ビーム線源、接合基板の製造方法、および、陰極の再生方法に関する。
基板同士を接合する技術の一つに、高速原子ビーム照射を用いた常温接合技術がある。これは、接合対象の基板の接合対象面に原子ビームを照射して表面汚染や酸化膜を除去するとともに、結合手であるダングリングボンドを露出させて表面活性化したのち、基板の接合対象面同士を重ね合わせて、常温にて圧接することで基板同士を接合する技術である。
常温接合に用いられる原子ビーム線源としては、サドルフィールド型の高速原子ビーム線源が用いられている(例えば、特許文献1参照。)サドルフィールド型の高速原子ビーム線源は、内部に陽極を有する陰極筐体内にアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス(以下、アルゴンガスを例示して説明する。)を供給し、陽極‐陰極間の電圧印加により不活性ガス原子をイオン化し、陰極の一部に設けた開口部からAr原子ビームを取り出し、基板へ照射するものである。なお、Arイオンの大部分は陰極に向かう途中で電子と再結合して中性のAr原子ビームとなり照射されるため、Ar原子同士の静電反発が少なく、指向性の高い原子ビームとなって基板に照射される特徴を持つ。
国際公開第2017/038476号
上述の高速原子ビーム線源(FABガン、(Fast Atom Beam))を用いた基板接合技術において、Ar原子ビームとともに、高速原子ビーム線源内で生じたパーティクルの一部がガンから飛び出して基板に付着し、接合の阻害要因となることがある。すなわち、高速原子ビーム線源内において、Ar原子ビームの一部が陰極筐体に照射されてスパッタリング現象が生じた結果、陰極筐体の破片に起因する粒子が発生して、これがパーティクルとなる。さらに、高速原子ビーム線源の陰極の内面では、上述のスパッタリング現象とスパッタリングによって生じたパーティクルの再付着(以下、「リデポジション」と称することがある。)が同時に起こっている。パーティクルが陰極の角などで堆積した集合体となり、パーティクル堆積物を形成する。このパーティクル堆積物は、その厚みが増すほどに陰極の内面から剥離・落下しやすくなり、高速原子ビーム線源から飛び出して、基板同士を接合する際に接合阻害が発生する大きな要因となる。また、高速原子ビーム線源を用いて接合対象である基板の表面を処理する場合、高速原子ビーム線源内部の真空度が表面処理の効率に影響する。よって、パーティクルの放出を抑制するとともに、高速原子ビーム線源内部の真空度が低下することを抑制することが求められる。
よって、本発明は、高速原子ビーム線源からのパーティクル堆積物の放出を抑制することができ、かつ、高速原子ビーム線源内の真空度の低下を抑制することができる陰極、高速原子ビーム線源、接合基板の製造方法、および、陰極の再生方法を提供することを目的とする。
本発明の陰極は、高速原子ビーム線源の陰極であって、前記陰極は、6つの内面を有し、内部が中空の箱状であり、6つの前記内面として、底面と、前記底面と対向し、かつ、前記底面に平行な上面と、前記底面と前記上面とをつなぐ4つの側面と、を備えるとともに、6つの前記内面は、6枚の平板状の陰極部材から構成され、4つの前記側面は、対向する前記側面同士が互いに平行であり、4つの前記側面のうち、対向する2組の前記側面の1組において、一方には、前記陰極内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入口が設けられ、他方には、前記陰極の外部に高速原子ビームを放出する粒子線放出口が設けられており、前記陰極部材は、4つの隅角部と、前記隅角部をつなぐ4つの辺で輪郭が構成された形状であり、前記陰極の前記内面を構成する前記陰極部材の平面において、ブロック体が粘着材を介して貼り付けられたブロック体貼付領域を有し、前記ブロック体貼付領域は、前記高速原子ビーム線源の使用により発生するスパッタリングによる前記陰極部材の除去量よりも、前記スパッタリングにより発生したスパッタ塵の再付着量の方が大きい領域であり、前記ブロック体の体積は、前記陰極の前記内部の体積に対して、体積割合1%~15%であり、前記ブロック体の前記陰極の前記内部に対する接着面において、前記粘着材の貼付面積が25%以上である。
本発明の陰極において、前記ブロック体貼付領域が、前記隅角部を含んでもよい。
本発明の陰極において、前記ブロック体貼付領域が、前記辺をさらに含んでいてもよい。
本発明の陰極において、前記上面において、前記上面の2つの前記隅角部をつなぐ対角線である第1対角線の長さW0に対する、前記第1対角線でつながれる2つの前記隅角部に設けられた前記ブロック体同士の最短距離W1の比(W1/W0)が、0.4以上であってもよい。
本発明の陰極において、前記不活性ガス導入口および前記粒子線放出口が設けられていない前記側面において、当該側面の2つの前記隅角部をつなぐ対角線である第2対角線の長さL0に対する、前記第2対角線でつながれる2つの前記隅角部に設けられた前記ブロック体同士の最短距離L1の比(L1/L0)が、0.5以上であってもよい。
本発明の陰極において、前記不活性ガス導入口が設けられた前記側面において、当該側面の2つの前記隅角部をつなぐ対角線である第3対角線の長さH0に対する、前記第3対角線でつながれる2つの前記隅角部に設けられた前記ブロック体同士の最短距離H1の比(H1/H0)が、0.5以上であってもよい。
本発明の陰極において、前記隅角部に設けられる前記ブロック体の露出面は、当該隅角部に向かって略半球状に凹んだ面であってもよい。
本発明の陰極において、前記ブロック体が、グラファイト製、グラッシーカーボン製、シリコン製、炭化ケイ素製のいずれかであってもよい。
本発明の陰極において、前記陰極部材が、グラファイト製、グラッシーカーボン製、シリコン製、炭化ケイ素製のいずれかであってもよい。
本発明の高速原子ビーム線源は、本発明の陰極と、前記陰極の内部に設けられた陽極と、を備える。
本発明の接合基板の製造方法は、第1の半導体基板と、第2の半導体基板とが積層した接合基板を製造する方法であって、本発明の高速原子ビーム線源を用いて、前記第1の半導体基板の接合対象面と、前記第2の半導体基板の接合対象面に、高速原子ビームを真空中で照射する照射工程と、前記高速原子ビームが照射された、前記第1の半導体基板の接合対象面と前記第2の半導体基板の接合対象面とを接触させて、接合界面を有する積層体を得る接触工程と、を備える。
本発明の接合基板の製造方法において、前記接合工程で得られた前記積層体を熱処理して接合基板を得る熱処理工程をさらに備えていてもよい。
本発明の接合基板の製造方法において、前記第1の半導体基板および前記第2の半導体基板が、それぞれ、3C-SiC単結晶基板、4H-SiC単結晶基板、6H-SiC単結晶基板、SiC多結晶基板のうちのいずれかであってもよい。
本発明の接合基板の製造方法において、前記高速原子ビームが、アルゴン、ネオン、キセノンのいずれかを含んでもよい。
本発明の陰極の再生方法は、高速原子ビーム線源に使用後の陰極を構成する陰極部材の前記ブロック体貼付領域から、ブロック体を除去するブロック体除去工程と、前記ブロック体を除去した前記陰極部材の前記ブロック体貼付領域に新しいブロック体を貼り付ける貼付工程と、を含む。
本発明の陰極であれば、本発明の陰極を高速原子ビーム線源に用いることにより、高速原子ビーム線源からのパーティクル堆積物の放出を抑制することができる。また、高速原子ビーム線源内部の真空度の低下が抑制される。これにより、パーティクルが半導体基板の接合対象面に付着することが抑制され、半導体基板同士を接合するときに接合阻害が発生することを抑制するとともに、高速原子ビーム線源内部の真空度が低下して表面処理の効率が低下することを抑制することができることから、接合基板の製造効率を高めることができる。
本発明の高速原子ビーム線源であれば、本発明の陰極を備えることから、高速原子ビーム線源からのパーティクル堆積物の放出を抑制できる。また、高速原子ビーム線源内部の真空度の低下を抑制できる。これにより、パーティクルが半導体基板の接合対象面に付着することを抑制でき、半導体基板同士を接合するときに接合阻害が発生することを抑制するとともに、高速原子ビーム線源内部の真空度が低下して表面処理の効率が低下することを抑制することができることから、接合基板の製造効率を高めることができる。
本発明の接合基板の製造方法であれば、本発明の陰極を備える高速原子ビーム線源を用いて基板の接合対象面を照射することから、高速原子ビーム線源からのパーティクル堆積物の放出が抑制され、接合対象面にパーティクルが付着することを抑制することができる。また、高速原子ビーム線源内部の真空度の低下を制できる。これにより、基板同士を接合するときに接合阻害が発生することを抑制して歩留まりを改善するとともに、半導体基板の表面処理の効率が低下することを抑制することにより、接合基板の製造効率を高めることができる。
本発明の陰極の再生方法であれば、一定時間使用後の陰極を、簡便な工程によって再度パーティクル堆積物の放出を抑制し、かつ、高速原子ビーム線源内部の真空度の低下を抑制することができる状態に再生することができる。よって、高速原子ビーム線源からのパーティクル堆積物の放出、高速原子ビーム線源内部の真空度の低下を抑制して接合基板の製造効率を高めるとともに、陰極の高寿命化を図ることができる。
従来の高速原子ビーム線源を模式的に示す斜視図である。 従来の高速原子ビーム線源を使用後の陰極を構成する陰極部材の内面の状態を模式的に示す平面図である。 本実施形態の高速原子ビーム線源であって、実施例1、実施例5、実施例9、実施例13、比較例4において用いる高速原子ビーム線源と、陰極の内部に貼り付けられるブロック体を模式的に示す斜視図である。 (A)は、本実施形態の陰極における上面を示す平面図であり、(B)は本実施形態における陰極のXY平面に平行な断面の断面図であり、(C),(D)はブロック体の変形例を示す図である。 (A)は、本実施形態の陰極における側面150を示す平面図であり、(B)は本実施形態における陰極のYZ平面に平行な断面の断面図であり、(C)は変形例における陰極のYZ平面の断面図である。 (A)は、本実施形態の陰極における側面140を示す平面図であり、(B)は本実施形態における陰極のXZ平面に平行な断面の断面図であり、(C)は変形例における陰極のXZ平面の断面図である。 実施例2、実施例6、実施例10、実施例14において用いる高速原子ビーム線源と、陰極の内部に貼り付けられるブロック体を模式的に示す斜視図である。 実施例3、実施例7、実施例11、実施例15において用いる高速原子ビーム線源と、陰極の内部に貼り付けられるブロック体を模式的に示す斜視図である。 実施例4、実施例8、実施例12、実施例16において用いる高速原子ビーム線源と、陰極の内部に貼り付けられるブロック体を模式的に示す斜視図である。 比較例2において用いる高速原子ビーム線源と、陰極の内部に貼り付けられるブロック体を模式的に示す斜視図である。 比較例3において用いる高速原子ビーム線源と、陰極の内部に貼り付けられるブロック体を模式的に示す斜視図である。 本発明の一実施形態にかかる接合基板の製造方法を説明する図である。 本発明の一実施形態にかかる陰極の再生方法を説明する図である。
[高速原子ビーム線源、陰極、および、陰極部材]
本発明の一実施形態にかかる高速原子ビーム線源、陰極、および、陰極部材について図面を参照して説明する。
本実施形態の高速原子ビーム線源は、サドルフィールド型の高速原子ビーム線源であり、内部に不活性ガスを供給して、イオン化された不活性ガスの高速原子ビームを粒子線放出口から外部に放出するものである。また、本実施形態の高速原子ビーム線源は、例えば、2枚の半導体基板を貼り合わせた接合基板を製造するときに、接合工程の前に基板の接合対象面の表面処理を行うために用いられる。すなわち、高速原子ビーム線源から放出された高速原子ビームを基板の接合対象面に照射して、接合対象面の表面を活性化する表面処理を行う目的で用いられる。
図1には、従来の高速原子ビーム線源の一例である、高速原子ビーム線源800が示されている。従来の高速原子ビーム線源800は、陰極900と、陰極900の内部に設けられた陽極200と、を備える。なお、本実施形態の高速原子ビーム線源800、陰極900、陽極200において、図1における矢印X方向、矢印Y方向、矢印Z方向を、それぞれ、幅方向、奥行き方向、高さ方向とする。また、高速原子ビーム線源800は、6枚の板状の陰極部材903からなる箱状であり、底面910と、底面910と対向する上面920と、底面910と上面920とをつなぐ4つの側面930,940,950,960と、を備える。また、底面910と上面920、側面930と側面940、側面950と側面960は互いに平行である。また、側面930には高速原子ビームを放出する、粒子線放出口901が形成され、側面940には陰極900の内部に不活性ガスを導入するための不活性ガス導入口902が設けられている。
図3には、本発明の一実施形態にかかる高速原子ビーム線源500が示されている。図1に示した従来の高速原子ビーム線源800とは、陰極100の内部にブロック体300が貼り付けられている点で異なる。
図3に示す、本実施形態の高速原子ビーム線源500は、陰極100と、陰極100の内部に設けられた陽極200と、を備える。なお、本実施形態の高速原子ビーム線源500、陰極100、陽極200において、図3における矢印X方向、矢印Y方向、矢印Z方向を、それぞれ、幅方向、奥行き方向、高さ方向とする。
本実施形態の陰極100は、6つの内面を有する、内部が中空の箱状である。例えば、陰極100は、内寸が幅(図3のw)56mm、奥行き(図3のd)が64mm、高さ(図3のh)が102mmの直方体状である。また、6つの内面として、底面110と、底面110と対向する上面120と、底面110と上面120とをつなぐ4つの側面130,140,150,160と、を備える。
また、底面110と上面120は、XY平面に平行であり、側面130、140は対向しているとともにXZ平面に平行であり、側面150、160は対向しているとともにYZ平面に平行である。また、これらの6つの内面は、6枚の平板状の陰極部材から構成されている。本実施形態においては、6枚の陰極部材を箱状に組み立てることで陰極100が形成されている。
対向する2組の側面(側面130,140と側面150,160)のうち、側面130,140には、粒子線放出口101、不活性ガス導入口102が設けられている。すなわち、側面130には、陰極100の内部でイオン化された不活性ガスの高速原子ビームが放出される粒子線放出口101が設けられている。また、側面130と矢印Y方向に対向する側面140には、陰極100内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入口102が設けられている。本実施形態において、粒子線放出口101は、側面130の中央付近に、直径2mmの円形状の貫通孔が高さ方向に8列、幅方向に8列に、等間隔に並んで合計64個設けられている。また、不活性ガス導入口102は、側面140の中央付近に、直径3mmの円形状の貫通孔が1つ設けられている。粒子線放出口や不活性ガス導入口の形状、個数、場所は本実施形態に限定されず、他の形態でもよい。
本実施形態において、陽極200は、陰極100の内部に2本設けられており、陰極100の内部には絶縁部材(不図示)を介して固定されている。また、陽極200の形状は、断面の直径が10mm、高さ寸法は陰極100の高さとほぼ同じ円柱状である。陽極200は、円形の断面がXY平面に平行であり、かつ、円柱の中心軸がZ方向と平行である。また、図4(A)に示すように、2本の陽極200は、陰極100の奥行き方向の真ん中の位置(側面130,140からそれぞれ32mmの位置)において、2本の陽極200の中心軸間距離が36mmとなるように、互いに離隔して設けられている。
また、陽極の材質は、グラファイト、グラッシーカーボン、シリコン、炭化ケイ素などを用いることができる。また、その他にも、タングステン、モリブデン、チタン、ニッケルやそれらの合金、化合物を用いることができる。
また、陰極100には直流電流の負極が接続され、陽極200には直流電流の正極が接続されており、例えば、0.5kV~5kV程度の高電圧が印加される。これにより電界が生じて、不活性ガス導入口102から陰極100内部に導入された不活性ガスが電離して2本の陽極200間にプラズマが発生する。さらに、不活性ガスの陽イオンが、陰極100から電子を受け取るともに、粒子線放出口101より高速原子ビーム線源500の外部に高速原子ビーム510(図12)として放出される。このとき、照射電流は、例えば、10mA~100mA程度となるように、不活性ガスのフローを調整する。
次に、陰極部材について、図3に示された高速原子ビーム線源500を参照して説明する。
陰極部材103は、板状であり、4つの隅角部103aと、隅角部103aをつなぐ4つの辺103bで輪郭が構成された形状である。厚さは、例えば、1mm~5mm程度とすることができる。また、陰極100の内面を構成する陰極部材の平面において、ブロック体300が粘着材400を介して貼り付けられたブロック体貼付領域を有している。本実施形態の陰極100においては、図3に示すように、ブロック体300として、陰極の頂点(陰極部材103の隅角部103aにより構成された部分)の内側に三角錐状の第1ブロック体301、辺の内側に三角柱状の第2ブロック体302、第3ブロック体303、第4ブロック体304、が貼り付けられている。なお、側面130,140に設けられた粒子線放出口101、不活性ガス導入口102の貫通孔は、ブロック体300や粘着材400により塞がないようにする。
また、本実施形態の陰極部材としては、例えば、グラファイト製、グラッシーカーボン製、シリコン製、炭化ケイ素製のいずれかとすることができる。また、その他にも、タングステン、モリブデン、チタン、ニッケルやそれらの合金、化合物を用いることができる。
一般的に、図1に示した従来の高速原子ビーム線源800の使用において、陰極900の内面(陰極部材の表面)に高速原子ビームが照射されることによりスパッタリング現象の結果、陰極900筐体の破片に起因する粒子が発生して、これがパーティクルとなる。さらに、このパーティクルは、粒子線放出口901から放出されたり、陰極部材の表面に再度付着して堆積したりすることがある。すなわち、陰極900を構成する陰極部材においては、スパッタリング現象とスパッタリング現象により生じたパーティクルの陰極部材表面への再付着が同時に起こっている。このようにスパッタリング現象によるパーティクルが堆積した堆積層は、その厚みが増すほどに陰極900の内面から剥離・落下しやすくなり、より大きなパーティクルとして高速原子ビーム線源800から放出され、基板同士を接合するときに接合阻害が発生する大きな要因となる。
本実施形態の陰極部材において、ブロック体貼付領域は、高速原子ビーム線源500の使用により発生するスパッタリングによる陰極部材の除去量よりも、スパッタリングにより発生したスパッタ塵の再付着量の方が大きい(すなわち、スパッタリングよりもリデポジションしやすい)領域である。また、ブロック体300の体積は、陰極100の内部の体積(すなわち、図3の陰極100では、w×h×d=352512(mm))に対して、体積割合1%~15%である。また、ブロック体の体積割合(%)は、「ブロック体の体積/陰極内部の体積×100(%)」の式により算出することができる。なお、ブロック体の体積割合の算出において、側面130,140に設けられた粒子線放出口101および不活性ガス導入口102は穴が開いておらず、面一であるものとする。ブロック体の体積割合が小さすぎる場合には、パーティクル堆積物の放出を十分に抑制することが難しくなる。また、ブロック体の体積割合を大きくすると、パーティクルの堆積が抑制されて、高速原子ビーム線源500外部へのパーティクル堆積物の放出が抑制される傾向にある。一方で、ブロック体の体積割合が大きくなると、高速原子ビームの放出効率が低下する傾向にあり、半導体基板の接合対象面の表面処理を十分に行うために、処理時間が長くなる傾向にある。すなわち、ブロック体の体積割合が大きすぎる場合には、陰極100内部の電界への影響が大きくなって高速原子ビームの放出効率が低下することで、半導体基板の接合対象面の表面汚染や酸化膜の除去効率が著しく低下し、その結果、製造効率が悪くなりうる。
また、図4(A)は、上面120を陰極100の内部から見た平面図である。図4(A)においてW0,W1は、図示するうえで少しずれて示されているが、どちらも対角線上にある。なお、図4(B),図5(A)(B),図6(A)(B)における、W0,W2,L0,L1,L2,H0,H1,H2も同様に、対角線上にある。
前述したブロック体300の体積割合を考慮すると、上面120において、上面120の2つの隅角部103aをつなぐ対角線である第1対角線121の長さW0に対する、第1対角線121でつながれる2つの隅角部103aに設けられた第1ブロック体301同士の最短距離(第1対角線121における、第1ブロック体301の露出面301a同士の距離)W1の比(W1/W0)が、0.4以上であってもよく、0.5以上であることがより好ましい。W1/W0を適切な範囲とすることにより、パーティクル堆積物の放出を十分に抑制することができる。
また、図4(B)は、XY平面に平行な陰極100の切断面の一例である、陰極の中心Pを通る切断面170を示す断面図である。XY平面に平行であって陰極の中心Pを通る、陰極100の切断面170を示す断面図である。前述したブロック体300の体積割合を考慮すると、切断面170において、辺103bをつなぐ対角線171の長さW0に対する、対角線171でつながれる辺103bに設けられた第2ブロック体302同士の最短距離(対角線171における、第2ブロック体302の露出面302a同士の距離)W2の比(W2/W0)が、0.4以上であってもよく、0.5以上であることがより好ましい。W2/W0を適切な範囲とすることにより、パーティクル堆積物の放出を十分に抑制することができる。なお、本明細書において、XY平面に平行な陰極100の切断面において辺103bにブロック体が設けられていない場合には、W2/W0を1.0とみなすものとする。
図5(A)は、側面150を陰極100の内部から見た平面図である。前述したブロック体300の体積割合を考慮すると、不活性ガス導入口102および粒子線放出口101が設けられていない側面150において、当該側面150の2つの隅角部103aをつなぐ対角線である第2対角線151の長さL0に対する、第2対角線151でつながれる2つの隅角部103aに設けられた第1ブロック体301同士の最短距離(第2対角線151における、第1ブロック体301の露出面301a同士の距離)L1の比(L1/L0)が、0.5以上であってもよく、0.6以上であることがより好ましい。L1/L0を適切な範囲とすることにより、パーティクル堆積物の放出を十分に抑制することができる。
図5(B)は、YZ平面に平行な陰極100の切断面の一例である、陰極の中心Pを通る切断面180を示す断面図である。前述したブロック体300の体積割合を考慮すると、切断面180において、辺103bをつなぐ対角線181の長さL0に対する、対角線181でつながれる辺103bに設けられた第3ブロック体303同士の最短距離離(対角線181における、第3ブロック体303の露出面303a同士の距離)L2の比(L2/L0)が、0.5以上であってもよく、0.6以上であることがより好ましい。L2/L0を適切な範囲とすることにより、パーティクル堆積物の放出を十分に抑制することができる。なお、本明細書において、YZ平面に平行な陰極100の切断面において辺103bにブロック体が設けられていない場合には、L2/L0を1.0とみなすものとする。
図6(A)は、側面140を陰極100の内部から見た平面図である。前述したブロック体300の体積割合を考慮すると、前記不活性ガス導入口が設けられた側面140において、当該側面140の2つの隅角部103aをつなぐ対角線である第3対角線141の長さH0に対する、第3対角線141でつながれる2つの隅角部103aに設けられた第1ブロック体301同士の最短距離(第3対角線141における、第1ブロック体301の露出面301a同士の距離)H1の比(H1/H0)が、0.5以上であってもよく、0.6以上であることがより好ましい。H1/H0を適切な範囲とすることにより、パーティクル堆積物の放出を十分に抑制することができる。
図6(B)は、XZ平面に平行な陰極100の切断面の一例である、陰極の中心Pを通る切断面190を示す断面図である。前述したブロック体300の体積割合を考慮すると、切断面190において、辺103bをつなぐ対角線191の長さL0に対する、対角線191でつながれる辺103bに設けられた第4ブロック体304同士の最短距離離(対角線191における、第4ブロック体304の露出面304a同士の距離)H2の比(H2/H0)が、0.5以上であってもよく、0.6以上であることがより好ましい。H2/H0を適切な範囲とすることにより、パーティクル堆積物の放出を十分に抑制することができる。なお、本明細書において、YZ平面に平行な陰極100の切断面において辺103bにブロック体が設けられていない場合には、H2/H0を1.0とみなすものとする。
また、本実施形態のブロック体300としては、陰極部材と同様に、例えば、グラファイト製、グラッシーカーボン製、シリコン製、炭化ケイ素製のいずれかとすることができる。また、その他にも、タングステン、モリブデン、チタン、ニッケルやそれらの合金、化合物を用いることができる。
また、ブロック体300の陰極100の内部に対する接着面において、粘着材400の貼付面積は25%以上である。貼付面積は、接着面の面積に対する粘着材を貼り付けた面積の割合である。これにより、高速原子ビーム線源内部の真空度の低下が抑制して、表面処理の効率が低下することを抑制することができる。なお、ブロック体300の陰極100の内部に対する接着面とは、陰極100の内部に対して粘着材400を介してブロック体300を接着する面である。例えば、4面を備える第1ブロック体301Aの場合(図4(c))、露出面301A1を除く残りの3面が粘着材400を介して陰極100の内部に貼り付けられることから、かかる残りの3面が接着面に相当する。この接着面の全面に粘着材400を貼り付けると、上記貼付面積は100%となる。ただし、ブロック体300が陰極100の内部から剥がれない程度に粘着材400を貼り付ければよく、粘着材400の貼付面積が25%以上となるように、この接着面の全面ではなく一部分に粘着材400を貼り付ければよい。接着面の一部分に粘着材を貼り付ける態様としては、上記残りの3面のうち、1面は全面に粘着材を貼り付けて2面は粘着材を全く貼らない態様や、3面とも粘着材を部分的に貼り付ける態様が挙げられる。また、粘着材400の粘着力は、陰極部材に貼り付けられたブロック体が陰極100の内部に落下しない程度であることが必要である。すなわち、粘着材400において、ブロック体300側の表面および陰極部材の平面側の表面の粘着力は、例えば、5N/25mm~15N/25mmとすることができる。
また、粘着材400の厚さは特に限定されないが、例えば、50μm~300μm程度とすることができる。
高速原子ビーム線源500の陰極100において、高速原子ビーム線源500の使用により発生するスパッタリングによる陰極部材の除去量よりも、スパッタリングにより発生したパーティクルの再付着(リデポジション)量の方が大きい領域は、高速原子ビームが照射されにくい領域である。このことから、ブロック体300を貼り付けることにより、高速原子ビームの照射されにくさが解消され、陰極100の内面の形状が、パーティクルが堆積しづらい形状となり、スパッタリングによる陰極部材の除去量とリデポジションによる陰極部材への堆積量との差を少なくすることができる。すなわち、ブロック体を貼り付けることにより、陰極の内部において、パーティクルが堆積しやすい形状を無くすことができる。このことにより、本実施形態の陰極部材により構成された陰極100を高速原子ビーム線源500に用いて、接合する半導体基板の接合対象面を活性化することにより、高速原子ビーム線源からの大きなパーティクル堆積物の放出を抑制することができる。以上により、基板同士を接合するときに接合阻害が発生することを抑制するとともに、前述のように、高速原子ビーム線源内部の真空度が低下して表面処理の効率が低下することを抑制することができることから、接合基板の製造効率を高めることができる。
ここで、図2は、従来の高速原子ビーム線源を使用後の陰極を構成する陰極部材の一例である側面930の状態を模式的に示す平面図である。図2においては、陰極の内面側に位置する面が見えるように置かれている。図2に示す陰極部材(側面930)を用いた高速原子ビーム線源800(図1)は、陰極部材にブロック体貼付領域がないこと以外は、本実施形態の高速原子ビーム線源と500同じ構成である。従来の高速原子ビーム線源800を使用すると、陰極の頂点の内側の部分(陰極部材の隅角部903aにより構成された部分)や陰極の辺の内側の部分(陰極部材の辺903bにより構成された部分)は、陰極部材に周りを囲まれていて高速原子ビームが他の部分よりも照射されにくいことから、スパッタリングによる陰極部材の除去量よりもリデポジションによる陰極部材への堆積量が大きく、リデポジションによる堆積層が生じやすい。すなわち、図2に示すように、陰極部材の4点の隅角部903aと辺903bを含む陰極部材の輪郭に近い領域Sにスパッタリング現象により生じたパーティクルが再付着して堆積しやすい。
このことから、図3に示すように、陰極部材のブロック体貼付領域(ブロック体300が貼り付けられた領域)は、陰極部材の隅角部103aを含むことが好ましい。また、ブロック体貼付領域は、陰極部材の辺103bをさらに含むことが好ましい。ブロック体貼付領域に隅角部103aや辺103bを含むことにより、特に高速原子ビームが照射されにくい、スパッタリングによる除去量よりもリデポジションによる堆積量が大きい領域を少なくすることができ、パーティクルの堆積をより抑制して、より効果的にパーティクル堆積物の放出を抑制することができる。
また、ブロック体300の形状としては、図3~図11に示したように、陰極100の内部の空間において、陰極100の頂点や辺の内側の部分に沿う形状であることが好ましい。このようなブロック体300の形状として、三角錐、三角柱、立方体、直方体、その他の形状を用いることができ、また、複数の異なる形状、大きさのブロック体を組み合わせてもよい。
例えば、図3に示す本実施形態の陰極100においては、ブロック体300として、三角錐状の第1ブロック体301、三角柱状の第2ブロック体302、三角柱状の第3ブロック体303、三角柱状の第4ブロック体304が貼り付けられている。第1ブロック体301は、陰極部材の隅角部で構成された陰極の角の内面に沿う形状であり、4つの面うち3面が貼り付けられている。第2ブロック体302、第3ブロック体303、第4ブロック体304は、それぞれ、辺の内側に沿う形状であり、5つの面のうち長方形状の2つの面が貼り付けられている。
また、図4(C)は、上面120を陰極100の内部から見た平面図であり、ブロック体300の変形例であるブロック体300Aが貼り付けられた陰極100を有する、高速原子ビーム線源500Aを示す図である。図4(C)における破線は、後述するように、ブロック体の露出面が隅角部103aや辺103bに向かって凹んでいることを示している。図4(C)に示すように、隅角部103aに設けられるブロック体(第1ブロック体301A)の露出面301A1は、破線で示されたように当該隅角部103aに向かって略半球状に凹んだ面を有している。このように、第1ブロック体301Aの露出面301A1が隅角部103aに向かって略半球状に凹んだ面を有することにより、凹んだ面を有しない第1ブロック体301を貼り付ける場合と比べて、第1ブロック体301Aと陰極部材との境界部分がなだらかになり、高速原子ビームが照射されにくい部分を少なくすることができる。これにより、スパッタリングによる陰極部材の除去量とリデポジションによる陰極部材への堆積量の差を少なくして、スパッタリングに由来するパーティクルの堆積を抑制することができ、大きなパーティクル堆積物の放出をより抑制することができる。
また、図4(D),図5(C)、図6(C)は、XY平面,YZ平面,XZ平面に平行な陰極100の断面図であり、ブロック体300の変形例を示す図である。図4(C),図4(D),図5(C)、図6(C)に示されるように、辺103bに設けられるブロック体(第2ブロック体302A、第3ブロック体303A、第4ブロック体304A)の露出面302A1,303A1,304A1は、当該辺103bに向かって略半円柱状に凹んだ面を有している。このように、ブロック体の露出面が辺103bに向かって略半円柱状に凹んだ面を有することにより、凹んだ面を有しないブロック体を貼り付ける場合と比べて、ブロック体と陰極部材との境界部分がなだらかになり、高速原子ビームが照射されにくい部分を少なくすることができる。これにより、スパッタリングによる陰極部材の除去量とリデポジションによる陰極部材への堆積量の差を少なくして、スパッタリングに由来するパーティクルの堆積を抑制することができ、大きなパーティクル堆積物の放出をより抑制することができる。
[接合基板の製造方法]
次に、本発明の一実施形態にかかる接合基板の製造方法について図12を参照して説明する。図12(A)は、第1の半導体基板710、第2の半導体基板720の接合対象面711,721に高速原子ビーム510を照射する接合装置600の様子を示す模式図である。また、図12(B)は、照射工程後の、第1の半導体基板710’および第2の半導体基板720’を模式的に示す断面図である。また、図12(C)は、接触工程後に得られた積層体700を模式的に示す断面図である。
本実施形態の接合基板の製造方法は、第1の半導体基板710と、第2の半導体基板720とが積層した接合基板を製造する方法であって、前述した実施形態の高速原子ビーム線源500を用いて、第1の半導体基板710の接合対象面711と、第2の半導体基板720の接合対象面721に、高速原子ビーム510を真空中で照射する照射工程と、高速原子ビーム510が照射された、第1の半導体基板710’の接合対象面711と第2の半導体基板720’の接合対象面721とを接触させて、接合界面730を有する積層体700を得る接触工程と、を備える。また、本実施形態の接合基板の製造方法は、接合工程で得られた積層体700を熱処理して接合基板を得る熱処理工程をさらに備えていてもよい。
接合装置600は、筐体と、2つの高速原子ビーム線源500と、筐体内を真空にする真空ポンプ(不図示)と、第1の半導体基板710と第2の半導体基板720を保持するとともに、製造の各工程において第1の半導体基板710と第2の半導体基板720を所定の位置に移動させる保持手段(不図示)と、を備える。2つの高速原子ビーム線源500は、図12に示すように、第1の半導体基板710の接合対象面711、第2の半導体基板720の接合対象面721に高速原子ビーム510を照射するように設置されている。なお、本実施形態においては、第1の半導体基板710、第2の半導体基板720それぞれに高速原子ビーム510を照射する実施形態を示したが、高速原子ビーム510の照射は第1の半導体基板710、第2の半導体基板720の少なくとも一方に照射すればよい。
具体的な手順について、図12を参照して説明する。第1の半導体基板710の接合対象面711と、第2の半導体基板720の接合対象面721とが相対するように、第1の半導体基板710と第2の半導体基板720を接合装置600内に設置し、筐体の内部を真空引きして、例えば10-4Pa以下程度の真空状態にしておく。
まず、照射工程を行う。照射工程は、図12(A)に示すように、高速原子ビーム線源500から高速原子ビーム510を第1の半導体基板710の接合対象面711と、第2の半導体基板720の接合対象面721とに照射する工程である。これにより、接合対象面711,721が活性化された、第1の半導体基板710’と第2の半導体基板720’が得られる。
接合対象面711,721の活性化とは、第1の半導体基板710、第2の半導体基板720の接合対象面711,721にある酸素、水素、ヒドロキシル基(OH基)等の界面終端成分、酸化膜を除去して、ダングリングボンドを形成することを指す。
次に、接触工程を行う。図12(B)に示すように、接合対象面711,721が近づく方向(図12(B)の矢印方向)に、接合対象面711,721が接するまで、第1の半導体基板710’、第2の半導体基板720’を移動させる。筐体600内部を所定圧力(例えば、100kgf(0.98kN))、に加圧する。所定時間(例えば、3分間)保持して、第1の半導体基板710’と第2の半導体基板720’とを接合させる。以上により接触工程が終了し、接合界面730を有する、積層体700(図12(C))が得られる。
次に、熱処理工程を行う。接合装置600の筐体内部を例えば、300℃程度として、得られた積層体700を熱処理することにより、第1の半導体基板710と第2の半導体基板720との接合基板が得られる。
本実施形態の接合基板の製造方法において、第1の半導体基板710および第2の半導体基板720は、それぞれ、3C-SiC単結晶基板、4H-SiC単結晶基板、6H-SiC単結晶基板、SiC多結晶基板のうちのいずれかとすることができる。
また、高速原子ビーム510は、アルゴン、ネオン、キセノンのいずれかを含むものとすることができる。
本実施形態の接合基板の製造方法によれば、陰極100を備える高速原子ビーム線源500を用いて第1の半導体基板710、第2の半導体基板720の接合対象面711,721を照射することから、高速原子ビーム線源500からのパーティクル堆積物の放出が抑制され、接合対象面711,721にパーティクルが付着することを抑制することができる。また、高速原子ビーム線源500内部の真空度の低下が抑制される。これにより、第1の半導体基板710、第2の半導体基板720同士を接合するときに接合阻害が発生することを抑制して歩留まりを改善するとともに、半導体基板の表面処理の効率が低下することを抑制することにより、接合基板の製造効率を高めることができる。
[陰極の再生方法]
次に、本発明の一実施形態にかかる陰極の再生方法について図13を参照して説明する。図13においては、高速原子ビーム線源500の陰極100を例示して説明する。
本実施形態の陰極の再生方法は、前述した実施形態の陰極100を再生する目的に適用されるものである。本実施形態の陰極の再生方法は、高速原子ビーム線源500に使用後の陰極100’を構成する陰極部材のブロック体貼付領域から、ブロック体300’を除去するブロック体除去工程(S1)と、ブロック体300’を除去した陰極部材のブロック体貼付領域に新しいブロック体300を貼り付ける貼付工程(S2)と、を含む。
具体的な手順について、図13を参照して説明する。はじめに、一定時間使用後の高速原子ビーム線源500から陽極200を取り外しておく。まず、粘着材除去工程(S1)において、陰極100’から、ブロック体300’(本実施形態においては、第1ブロック体301’,第2ブロック体302’,第3ブロック体303’,第4ブロック体304’)を除去して、粘着材が除去された陰極部材を得る。次に、貼付工程(S2)において、所定の形状の新しいブロック体300(本実施形態においては、第1ブロック体301,第2ブロック体302,第3ブロック体303,第4ブロック体304)を陰極部材のブロック体貼付領域に再度貼り付ける。なお、ブロック体300’を除去することにより粘着材400の粘着力が低下するため、粘着材400も除去して、新しいブロック体300を貼り付けるときには、粘着材400も新しいものを用いることが好ましい。
以上のようにして、一定時間使用後の陰極を再生して、再生された陰極100を得ることができる。
本実施形態の陰極100においては、従来の陰極に比べてパーティクルの堆積が抑制されるが、一定時間以上使用した後の陰極100には、ブロック体貼付領域にパーティクルが堆積していることが考えられ、堆積したパーティクルが脱落して高速原子ビーム線源500の外に放出される可能性がある。そこで、本実施形態の陰極の再生方法であれば、一定時間使用後の陰極100にパーティクルが堆積していたとしても、陰極100を簡便な工程によって、再度パーティクル堆積物の放出、高速原子ビーム線源内部の真空度の低下を十分に抑制することができる状態に再生することができる。よって、高速原子ビーム線源500からのパーティクル堆積物の放出を抑制して接合基板の製造効率を高めるとともに、パーティクルの堆積にともなって陰極部材を丸ごと交換しなくてもよくなり、陰極の高寿命化を図ることができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の工程等を含み、前述した実施形態の変形等も本発明に含まれる。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
以下、本発明の実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されることはない。
[実施例1]
陰極として、前述した実施形態の陰極100(図3)を用いた。すなわち、陰極は、幅56mm、高さ102mm、奥行き64mm、とし、陰極部材の厚さは3.2mmとした。また、陰極部材およびブロック体は、グラファイト製とし、図3に記載の寸法のブロック体300を貼り付けた。粘着材は、粘着力が、陰極部材に貼り付ける面、陰極内部に露出する面ともに10N/25mmで、厚さが100μmのものを用いて、ブロック体300と陰極部材の接触面全体に粘着材を貼り付けた。このとき、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は100%であり、ブロック体の接着面全体に粘着材を貼り付けた。実施例1の陰極100においては、ブロック体の体積割合(%)(ブロック体の体積/陰極内部の体積×100(%))は3.3%であった。また、図4(A),図4(B)に示した対角線の長さW0に対するブロック体300同士(第1ブロック体301同士または第2ブロック体302同士)の最短距離W(W1またはW2)の比(W/W0)は、0.73~0.92であった。また、また、図5(A),図5(B)に示した対角線の長さL0に対するブロック体300同士(第1ブロック体301同士または第3ブロック体303の同士)の最短距離L(L1またはL2)の比(L/L0)は、0.81~0.94であった。また、また、図6(A),図6(B)に示した対角線の長さH0に対するブロック体300同士(第1ブロック体301同士または第4ブロック体304同士)の最短距離H(H1またはH2)の比(H/H0)は、0.79~0.94であった。各実施例、比較例におけるW/W0、L/L0、H/H0を表2に示した。
また、陽極200として、直径10mm、長さ100mmの円柱状でグラファイト製の陽極を2本用いた。図3、4に示すように、2本の陽極200は、絶縁部材を介して、陰極100の奥行き方向の真ん中の位置(側面130,140からそれぞれ32mmの位置)において、2本の陽極200の中心軸間距離が36mmとなるように、互いに離隔して底面110と上面120に固定した。
不活性ガスは、アルゴン(Ar)ガスを不活性ガス導入口から陰極100内に導入した。高速原子ビーム線源500からの高速原子ビーム照射の加速電圧は1kVとし、照射電流が30mAになるようにArガスフローを調整して、照射を実施した。第1の半導体基板、第2の半導体基板は、直径152mm(6インチ)、厚さ625μmのシリコン基板を用いた。
上記照射条件にて、まず高速原子ビーム線源500の設置初期状態にて、シリコン基板上に300秒ビーム照射した後、シリコン基板上のパーティクル数を計測した。このパーティクル数を「初期パーティクル数」とした。なお、パーティクル数はパーティクルカウンタ(型式WM-7S、TOPCON社製)を使用し、エッジエクスクルージョン5mm、最小パーティクル検出サイズ0.15μmの条件にて実施した。
また、ブロック体を陰極に貼り付けることにより、高速原子ビームの放出効率が低下して、半導体基板の接合対象面における表面汚染や酸化膜の除去効率が低下することが予想された。そのため、接合対象面における表面汚染や酸化膜の除去効率を評価するために、接合基板の製造に用いる半導体基板に替えて、膜厚既知のシリコン熱酸化膜を用いて、高速原子ビームを照射前後の膜厚を計測した。高速原子ビームを照射後にシリコン熱酸化膜の膜厚が小さくなっていれば、その高速原子ビーム線源を用いて半導体基板の接合対象面の表面処理を行った場合に、表面汚染や酸化膜を除去することが可能であるとみなすことができる。なお、膜厚測定は大日本スクリーン社製の光干渉式膜厚測定装置(ラムダエース)を用いて実施した。
除去効率の評価は、ブロック体を用いない高速原子ビーム線源(後述の比較例1)と比較して評価し、評価基準は以下の通りとした。A、B、Cの評価結果であれば、高速原子ビーム線源を接合基板の製造に適用できるものと評価した。
A:ブロック体を用いない場合と、照射前後の膜厚変化が同等であり、除去効率は同等である。
B:ブロック体を用いない場合に比べて照射後における膜厚の減少がやや少なく、除去効率の若干の低下が見られるが、製造効率への影響はほぼない程度である。
C:ブロック体を用いない場合に比べて照射後における膜厚の減少が少なく、除去効率の低下が見られるが、表面処理時間の増加による製造効率への影響は少ないと見なせる程度である。
D:除去効率の低下が大きく、表面処理時間が長くなりすぎて、製造効率への影響は許容できない程度である。
次に、30分ずつ断続的に照射と休止を繰り返して、積算使用時間(照射時間のみの積算値)が20時間になるまで照射を実施した後、未使用の第1の半導体基板および第2の半導体基板を設置して、高速原子ビームを300秒間照射した。300秒照射後の第1の半導体基板上のパーティクル数を計測し、これを「20時間使用後におけるパーティクル数」とした。そして、初期状態からのパーティクル数の増加比率(初期パーティクル数/20時間使用後におけるパーティクル数)を算出した。この増加比率が10倍以下であった場合に、パーティクル堆積物の放出が十分抑制され、接合に大きな不具合の発生が極めて低くなると評価した。実施例1の照射試験の結果、パーティクル数の増加比率は2倍であった。また、300秒照射前後の膜厚を計測して、除去効率を評価したところ、ブロック体を用いない場合と同等(評価A)であった。
また、パーティクル数の計測とともに、高速原子ビーム線源内部の真空度への影響を評価した。評価は、粘着材を貼り付けた高速原子ビーム線源と貼り付けしていない高速原子ビーム線源(比較例1)の真空度を比較して行った。真空度への影響の評価基準は以下のように設定し、A~Cの場合、真空度の低下が抑制されたと判断した。評価の結果、実施例1において、真空度への影響は評価Bであった。
A ブロック体を貼り付けしない場合と同等であり、真空度の低下がない。
B ブロック体を貼り付けしない場合と比較すると真空度が若干低下したが、製造には影響がない。
C ブロック体を貼り付けしない場合と比較すると真空度が低下したが、真空引きの時間を長くすれば所定の真空度に到達した。
D ブロック体を貼り付けしない場合と比較すると真空度が低下し、真空引きの時間を長くしても所定の真空度に到達することが難しく、製品は得られるものの表面処理の効率が著しく悪く生産性に難があった。
以上の結果を表1に示した。
さらに、20時間使用後の高速原子ビーム線源を用いて照射工程を行った第1の半導体基板、第2の半導体基板を用いて、接触工程、熱処理工程を行い、接合基板を製造した。その結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
[実施例2]
次に、実施例2を行った。高速原子ビーム線源として、陰極の角に、三角錐状のブロック体305を有するブロック体300Bを貼り付けた高速原子ビーム線源500B(図7)を用いた。また、ブロック体の体積割合は1.0%、W/W0は、0.76~1.0、L/L0は、0.83~1.0、H/H0は、0.82~1.0であった。陰極以外は実施例1と同様にして照射試験を行った。初期状態からのパーティクル数の増加比率を算出した結果、増加比率は8.9倍であった。除去効率を評価したところ、ブロック体を用いない場合と同等(評価A)であった。また、真空度への影響は、評価Bであった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
[実施例3]
次に、実施例3を行った。高速原子ビーム線源として、陰極の角と辺に、ブロック体300Cを貼り付けた高速原子ビーム線源500C(図8)を用いた。ブロック体300Cは、辺に貼り付けられた三角柱状のブロック体307,308,309と、ブロック体307,308,309の三角形の面に合うように、三角錐の4つの頂点を切断したブロック体306とを有する。また、ブロック体の体積割合は9.6%、W/W0は、0.58~0.86、L/L0は、0.70~0.90、H/H0は、0.68~0.90であった。陰極以外は実施例1と同様にして照射試験を行った。初期状態からのパーティクル数の増加比率を算出した結果、増加比率は2.9倍であった。除去効率を評価したところ、除去効率の若干の低下が見られるが、製造効率への影響はほぼない程度(評価B)であった。また、真空度への影響は、評価Bであった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
[実施例4]
次に、実施例4を行った。高速原子ビーム線源として、陰極の角と辺に、ブロック体300Dを貼り付けた高速原子ビーム線源500D(図9)を用いた。ブロック体300Dは、辺に貼り付けられた三角柱状のブロック体311,312,313と、ブロック体311,312,313の三角形の面に合うように、三角錐の4つの頂点を切断したブロック体310とを有する。また、ブロック体の体積割合は14.6%、W/W0は、0.46~0.86、L/L0は、0.61~0.90、H/H0は、0.59~0.90であった。陰極以外は実施例1と同様にして照射試験を行った。初期状態からのパーティクル数の増加比率を算出した結果、増加比率は1.9倍であった。除去効率を評価したところ、除去効率の低下が見られるが、表面処理時間の増加による製造効率への影響は少ないと見なせる程度(評価C)であった。また、真空度への影響は、評価Bであった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例5を行った。実施例5は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は75%としたこと以外は実施例1と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は4.7%、除去効率はA評価、真空度への影響はA評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例6を行った。実施例6は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は75%としたこと以外は実施例2と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は8.9%、除去効率はA評価、真空度への影響はB評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例7を行った。実施例7は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は75%としたこと以外は実施例3と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は2.9%、除去効率はB評価、真空度への影響はB評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例8を行った。実施例8は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は75%としたこと以外は実施例4と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は1.9%、除去効率はC評価、真空度への影響はB評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例9を行った。実施例9は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は50%としたこと以外は実施例1と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は4.7%、除去効率はA評価、真空度への影響はA評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例10を行った。実施例10は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は50%としたこと以外は実施例2と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は8.9%、除去効率はA評価、真空度への影響はA評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例11を行った。実施例11は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は50%としたこと以外は実施例3と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は2.9%、除去効率はB評価、真空度への影響はB評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例12を行った。実施例12は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は50%としたこと以外は実施例4と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は1.9%、除去効率はC評価、真空度への影響はB評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例13を行った。実施例13は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は25%としたこと以外は実施例1と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は4.7%、除去効率はA評価、真空度への影響はA評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例14を行った。実施例14は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は25%としたこと以外は実施例2と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は8.9%、除去効率はA評価、真空度への影響はA評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例15を行った。実施例15は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は25%としたこと以外は実施例3と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は2.9%、除去効率はB評価、真空度への影響はA評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
次に、実施例16を行った。実施例16は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は25%としたこと以外は実施例4と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は1.9%、除去効率はC評価、真空度への影響はA評価であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなく、また、接合基板における接合阻害は発生せず、正常に接合した接合基板が得られた。
[比較例1]
次に、比較例1を行った。高速原子ビーム線源として、陰極にブロック体を貼り付けない高速原子ビーム線源を用いたこと以外は、実施例1と同様にして照射試験を行った。初期状態からのパーティクル数の増加比率を算出した結果、増加比率は20倍であった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなかったものの、基板において接合阻害が発生し、得られた接合基板において破折箇所が確認された。
[比較例2]
次に、比較例2を行った。高速原子ビーム線源として、陰極の角にブロック体300Eを貼り付けた高速原子ビーム線源500E(図10)を用いた。ブロック体300Eは、三角錐状のブロック体314を有する。また、ブロック体の体積割合は0.4%、W/W0は、0.83~1.0、L/L0は、0.88~1.0、H/H0は、0.87~1.0であった。陰極以外は実施例1と同様にして照射試験を行った。初期状態からのパーティクル数の増加比率を算出した結果、増加比率は12倍であった。除去効率を評価したところ、ブロック体を用いない場合と同等(評価A)であった。また、真空度への影響は、評価Aであった。また、接合基板を製造した結果、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損はなかったものの、基板において接合阻害が発生し、得られた接合基板において破折箇所が確認された。
[比較例3]
次に、比較例3を行った。高速原子ビーム線源として、陰極にブロック体300Fを貼り付けた高速原子ビーム線源500F(図11)を用いた。ブロック体300Fは、三角錐状のブロックの頂点のうち2つの頂点を切断したブロック体315を有する。また、ブロック体の体積割合は23.2%、W/W0は、0.32~1.0、L/L0は、0.54~0.84、H/H0は、0.49~0.90であった。陰極以外は実施例1と同様にして照射試験を行った。真空度への影響は、評価Dであり、所定の真空度に到達することが難しい状態であったため、初期状態からのパーティクル数の増加比率の算出、および除去効率の評価は行わなかった。
次に、比較例4を行った。比較例4は、ブロック体の陰極の内部に対する接着面において、粘着材の貼付面積は15%としたこと以外は実施例1と同様にして行った。その結果、パーティクル数の増加比率は4.7%、除去効率はA評価、真空度への影響はA評価であった。しかしながら、接合基板を製造した結果、正常に接合した接合基板が得られたものの、高速原子ビーム線源を構成する陰極部材等の部材に破損がみられた。
本発明の例示的態様である実施例1~実施例16において、陰極部材における、スパッタリング現象により生じたパーティクルが堆積しやすい領域にブロック体を貼り付けることにより、パーティクル堆積物の放出が抑制され、高速原子ビームが照射された半導体基板の接合対象面上にパーティクルが付着することが抑制されたことが示された。また、パーティクル数の増加比率が10倍以下となり、パーティクル堆積物の放出が十分に抑制され、半導体基板同士を接合するときに接合阻害が発生することを抑制して、接合基板の製造効率を高めることができることが示された。さらに、陰極部材の内面への粘着材の貼付面積を25%以上とすることにより、真空度が低下して表面処理の効率低下を抑制すること、また、陰極部材の破損を抑制することができ、接合基板の製造効率を高めることができる。
100 陰極
101 粒子線放出口
102 不活性ガス導入口
103 陰極部材
103a 隅角部
103b 辺
110 底面
120 上面
130 側面
140 側面
150 側面
160 側面
200 陽極
300 ブロック体
301A1 露出面
400 粘着材
500 高速原子ビーム線源
700 接合基板
710 第1の半導体基板
720 第2の半導体基板
711,721 接合対象面

Claims (15)

  1. 高速原子ビーム線源の陰極であって、
    前記陰極は、6つの内面を有し、内部が中空の箱状であり、
    6つの前記内面として、底面と、前記底面と対向し、かつ、前記底面に平行な上面と、前記底面と前記上面とをつなぐ4つの側面と、を備えるとともに、6つの前記内面は、6枚の平板状の陰極部材から構成され、
    4つの前記側面は、対向する前記側面同士が互いに平行であり、
    4つの前記側面のうち、対向する2組の前記側面の1組において、一方には、前記陰極内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入口が設けられ、他方には、前記陰極の外部に高速原子ビームを放出する粒子線放出口が設けられており、
    前記陰極部材は、4つの隅角部と、前記隅角部をつなぐ4つの辺で輪郭が構成された形状であり、
    前記陰極の前記内面を構成する前記陰極部材の平面において、ブロック体が粘着材を介して貼り付けられたブロック体貼付領域を有し、
    前記ブロック体貼付領域は、前記高速原子ビーム線源の使用により発生するスパッタリングによる前記陰極部材の除去量よりも、前記スパッタリングにより発生したスパッタ塵の再付着量の方が大きい領域であり、
    前記ブロック体の体積は、前記陰極の前記内部の体積に対して、体積割合1%~15%であり、
    前記ブロック体の前記陰極の前記内部に対する接着面において、前記粘着材の貼付面積が25%以上である、陰極。
  2. 前記ブロック体貼付領域が、前記隅角部を含む、請求項1に記載の陰極。
  3. 前記ブロック体貼付領域が、前記辺をさらに含む、請求項2に記載の陰極。
  4. 前記上面において、
    前記上面の2つの前記隅角部をつなぐ対角線である第1対角線の長さW0に対する、前記第1対角線でつながれる2つの前記隅角部に設けられた前記ブロック体同士の最短距離W1の比(W1/W0)が、0.4以上である、請求項2に記載の陰極。
  5. 前記不活性ガス導入口および前記粒子線放出口が設けられていない前記側面において、
    当該側面の2つの前記隅角部をつなぐ対角線である第2対角線の長さL0に対する、前記第2対角線でつながれる2つの前記隅角部に設けられた前記ブロック体同士の最短距離L1の比(L1/L0)が、0.5以上である、請求項2に記載の陰極。
  6. 前記不活性ガス導入口が設けられた前記側面において、
    当該側面の2つの前記隅角部をつなぐ対角線である第3対角線の長さH0に対する、前記第3対角線でつながれる2つの前記隅角部に設けられた前記ブロック体同士の最短距離H1の比(H1/H0)が、0.5以上である、請求項2に記載の陰極。
  7. 前記隅角部に設けられる前記ブロック体の露出面は、当該隅角部に向かって略半球状に凹んだ面である、請求項2に記載の陰極。
  8. 前記ブロック体が、グラファイト製、グラッシーカーボン製、シリコン製、炭化ケイ素製のいずれかである、請求項1に記載の陰極。
  9. 前記陰極部材が、グラファイト製、グラッシーカーボン製、シリコン製、炭化ケイ素製のいずれかである、請求項1に記載の陰極。
  10. 請求項1に記載の陰極と、
    前記陰極の内部に設けられた陽極と、を備える、高速原子ビーム線源。
  11. 第1の半導体基板と、第2の半導体基板とが積層した接合基板を製造する方法であって、
    請求項10に記載の高速原子ビーム線源を用いて、前記第1の半導体基板の接合対象面と、前記第2の半導体基板の接合対象面に、高速原子ビームを真空中で照射する照射工程と、
    前記高速原子ビームが照射された、前記第1の半導体基板の接合対象面と前記第2の半導体基板の接合対象面とを接触させて、接合界面を有する積層体を得る接触工程と、
    を備える、接合基板の製造方法。
  12. 前記接合工程で得られた前記積層体を熱処理して接合基板を得る熱処理工程をさらに備える、請求項11に記載の接合基板の製造方法。
  13. 前記第1の半導体基板および前記第2の半導体基板が、それぞれ、3C-SiC単結晶基板、4H-SiC単結晶基板、6H-SiC単結晶基板、SiC多結晶基板のうちのいずれかである、請求項11に記載の接合基板の製造方法。
  14. 前記高速原子ビームが、アルゴン、ネオン、キセノンのいずれかを含む、請求項11に記載の接合基板の製造方法。
  15. 請求項1に記載の陰極を再生する方法であって、
    高速原子ビーム線源に使用後の陰極を構成する陰極部材の前記ブロック体貼付領域から、ブロック体を除去するブロック体除去工程と、
    前記ブロック体を除去した前記陰極部材の前記ブロック体貼付領域に新しいブロック体を貼り付ける貼付工程と、を含む、陰極の再生方法。
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