JP2023177685A - セレンの回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解澱物の湿式処理において、ケトン類の添加によって生じた、還元を受け難くなったセレン化合物(難還元性セレン化合物)からセレンを回収する方法を提供する。【解決手段】ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液を60℃以上に加熱して酸化剤を添加後、還元剤を投入して生じた沈殿を固液分離し、固液分離後の液中のセレンを回収する、セレンの回収方法。【選択図】図1

Description

本発明はセレンの回収方法に関し、特に、ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液からセレンを回収する方法に関する。
銅乾式製錬では銅精鉱を熔解し、転炉、精製炉で99%以上の粗銅とした後に電解精製工程において例えば純度99.99%以上の電気銅を生産する。銅以外の有価物は電解精製時にスライムとして沈殿する。
このスライムには貴金族類、希少金属、銅精鉱に含まれているセレンやテルルも同時に濃縮される。銅製錬副産物としてこれらの元素は個別に分離・回収される。
このスライムの処理には湿式製錬法が適用される場合が多い。例えば特許文献1においてはスライムを塩酸-過酸化水素により銀を回収し、溶解した金は溶媒抽出により回収した後に、その他の有価物を二酸化硫黄で順次還元回収する方法が開示されている。特許文献2には同様の方法で金銀を回収した後、二酸化硫黄で有価物を還元して沈殿せしめ、セレンのみを蒸留して除去して貴金属類を濃縮する方法が開示されている。
とりわけ特許文献1に示されている、二酸化硫黄により生じた沈殿を回収する方法はコストや製造規模の面で利点が多い。二酸化硫黄を使用する利点は金属製錬で副生する製錬ガスによるところが大きい。
ところが、金属製錬設備は定期的に改修や補修をする必要があり、その際は数週間から数か月運転を停止する。また、突発的な事故や故障で操業が停止することがある。この停止期間は、二酸化硫黄の供給は停止するため、別の還元剤を使用しなければならない。もしくは市販の工業ガスとして二酸化硫黄を購入して使用する場合もあるが、それではコストが上昇する。
製錬ガスを代替する還元剤としては、安価で毒性の低い化合物が好ましい。加えて安定的にその機能を発揮する事が望まれる。この条件を満たす物質としてはケトン類がある。ケトン類は亜セレン酸と反応して単体セレンを沈殿する。ケトン類の中でもアセトンは価格、毒性の低さとも申し分ない。
亜セレン酸とケトン類が反応した後、ケトン類はアルデヒド類となる。亜セレン酸はケトンとの反応により還元を受ける。さらに、ケトンが酸化されて生じる中間生成物のアルデヒドによっても還元され、二つの反応でセレンを沈殿する。また、アルデヒド類やケトン類は酸性条件下では同じ属であるカルコゲン化合物の亜テルル酸をほとんど還元しないという利点もある。
特開2001-316735号公報 特開2004-190134号公報 特開2019-077902号公報
アセトンを還元剤として亜セレン酸を還元する時、その必要添加量はセレンとして1kgに対してアセトン0.8L程度である。銅電解澱物処理ではセレンは30g/L以上の溶液であり、全てをアセトンで還元するならば一バッチあたりの液量は15~18m3でとなるため、アセトンは300~400L必要となる。
一般に、当該反応は液温70℃以上で行われるため、反応後のアセトンは二酸化炭素まで分解されるものもあれば、無害な揮発性有機物となり排ガス処理工程へ移るものもある。ところが、一部のアセトンは亜セレン酸と反応して難還元性物質(反応生成物)として液中に残留する。この液中に残留する反応生成物の形態は不明であるが、二酸化硫黄による還元を受け難い。
一方、セレンは厳しい排出基準が定められている。セレン還元後液は、さらに排水処理工程で凝集沈殿等の処理が施されて排出されるが、セレン濃度に係る負荷が大きくなる。特許文献3には、活性炭によるセレンの除去方法が開示されているが、これでも十分とは言えない。このように液中のセレン濃度を下げる必要があるにもかかわらず、ケトン類と反応した後のセレンに対する適当な処理方法は従来知られていない。
本発明はこのような従来の事情を鑑み、電解澱物の湿式処理において、ケトン類の添加によって生じた、還元を受け難くなったセレン化合物(以下、難還元性セレン化合物とも記述する)からセレンを回収する方法を提供する。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、難還元性セレン化合物に対しては、酸化剤を添加して所定温度に加熱した後に、再度還元することで、セレンを沈殿させて回収することができることを見出した。本発明はかかる知見により完成されたものである。
すなわち本発明は以下の発明を包含する。
(1)ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液を60℃以上に加熱して酸化剤を添加後、還元剤を投入して生じた沈殿を固液分離し、前記固液分離後の液中のセレンを回収する、セレンの回収方法。
(2)前記ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液を65~80℃に加熱して前記酸化剤を添加する、(1)に記載のセレンの回収方法。
(3)前記酸化剤を添加後、前記酸性溶液の温度を50~80℃に維持して前記還元剤を投入する、(1)または(2)に記載のセレンの回収方法。
(4)前記酸化剤は、前記酸性溶液中で単体セレンを亜セレン酸まで酸化できる酸化剤である、(1)~(3)のいずれかに記載のセレンの回収方法。
(5)前記酸化剤は、過酸化水素、次亜塩素酸類、及び、硝酸のいずれか一種以上である、(1)~(4)のいずれかに記載のセレンの回収方法。
(6)前記ケトン類はアセトンである、(1)~(5)のいずれかに記載のセレンの回収方法。
(7)前記還元剤は、二酸化硫黄、亜硫酸塩、及び、セレンより卑な金属のいずれか一種以上である、(1)~(6)のいずれかに記載のセレンの回収方法。
(8)前記セレンより卑な金属は、鉄、銅、及び、銅被覆鉄のいずれか一種以上である、(7)に記載のセレンの回収方法。
(9)前記還元剤は、前記酸性溶液に対して5g/L以上になるように添加する、(7)に記載のセレンの回収方法。
(10)前記酸化剤は、銀-塩化銀を参照電極とした時の前記酸性溶液の酸化還元電位が450mV以上に達するまで添加する、(1)~(9)のいずれかに記載のセレンの回収方法。
(11)前記酸化剤は、銀-塩化銀を参照電極とした時の前記酸性溶液の酸化還元電位が550~850mVに達するまで添加する、(10)に記載のセレンの回収方法。
(12)前記還元剤は、前記酸化剤の添加により上昇した前記酸性溶液の酸化還元電位が下降に転じた後に投入する、(1)~(11)のいずれかに記載のセレンの回収方法。
(13)前記酸化剤の添加、及び、前記酸化剤の添加後の前記還元剤の添加を、前記固液分離後の液中のセレン濃度が所定値以下になるまで繰り返す、(1)~(12)のいずれかに記載のセレンの回収方法。
(14)前記酸化剤を添加した後に前記還元剤として二酸化硫黄を添加した後、再度前記酸化剤を添加した後に前記還元剤としてセレンより卑な金属を添加する、(13)に記載のセレンの回収方法。
本発明によれば、電解澱物の湿式処理において、ケトン類の添加によって生じた、還元を受け難くなったセレン化合物(難還元性セレン化合物)からセレンを回収する方法を提供することができる。
実験例1と実験例2からORPを計測した条件を抽出し、これを用いてORPと過酸化水素添加量との関係を表したグラフである。
次に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
非鉄金属製錬、とりわけ銅製錬の電解精製工程で生じる電解スライムはカルコゲン元素と貴金属を多く含む。一例を示すと金を10~30kg/ton、銀を100~250kg/ton、パラジウムを1~3kg/ton、白金を200~500g/ton、セレンを5~15質量%程度含有する。白金族元素ならびにカルコゲン元素は単独で製錬されることはなく、他金属の副産物として回収される。特に銅製錬と鉛精錬の電解澱物から回収される事が多い。
塩酸と過酸化水素を添加してこの電解スライムを溶解することで、銅電解澱物の溶解液が生成されるが、銀は溶解直後に塩化物イオンと不溶性の塩化銀沈殿を形成する。酸化剤と塩素を含む溶液、例えば王水や塩素水であれば貴金属類は溶解して銀を塩化銀として分離できる。塩化物浴であるため浸出貴液(PLS)には貴金属元素、希少金属元素、セレン、テルルが分配される。セレンは、当該酸性溶液中にセレンオキソニウムとして含まれるが大部分は亜セレン酸である。
特に酸化剤としては過酸化水素が好適であり、塩素を含む溶液は塩酸が好適である。過酸化水素は分解後に水と酸素になるので回収物の汚染が無い事が理由である。塩酸と過酸化水素を添加して電解スライムを溶解した後は、溶媒抽出や還元することにより金、白金、または、パラジウム等を回収することができる。回収後の液(白金族回収後液)は、例えば、セレンを30~40g/L、テルルを0.3~1.5g/L含有する。
次に、ケトン類を添加して上述の白金族回収後液からセレンを還元分離する。使用するケトン類は、アセトン、ブタノン、または、メチルイソブチルケトン等が汎用品として販売されているため好ましく、特に、価格、毒性の低さ、取り扱いやすさからアセトンが最も好ましい。また、当該セレンの還元分離の際の液温は65℃以上とすることが好ましい。65℃未満ではセレンは赤色セレンもしくは不定形セレンとして沈殿するおそれがある。赤色セレンは含水率が高く、次工程で蒸留精製するのに不向きである。不定形セレンは粘着性が高く反応槽内や配管内に強固に付着し閉塞や動作不良を引き起こすおそれがある。
セレン回収後液にはテルルが含まれている。テルルは80℃以上に加温して二酸化硫黄を吹き込んで沈殿させて回収する。このテルルを回収した後の液にはセレンが含まれる。二酸化硫黄を吹き込んでもこのセレンを含有する化合物(難還元性セレン化合物)は除くことができない。当該難還元性セレン化合物は、投入アセトン量にもよるが、およそ1.5~3質量%の投入原料中のセレンに相当する量が生じる。
難還元性セレン化合物は、セレン酸化反応を参考にして副反応を推定すると炭素-セレン結合もしくは炭素-セレン二重結合をもつ物質が生成すると予想される。一般には炭素とセレンとの二重結合はセレン原子上でソフトな不対電子が酸化を受けやすい。本発明の実施形態では、この性質を利用して、酸化剤により難還元性セレン化合物のセレンを再度亜セレン酸に酸化分解する。
すなわち、本発明の実施形態では、金、白金、またはパラジウム等の回収後の液に、ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液を60℃以上に加熱して酸化剤を添加後、還元剤を投入して生じた沈殿を固液分離し、固液分離後の液中のセレンを回収する。
ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液に酸化剤を添加する際に、炭素とセレンとの結合が酸化されてセレンの酸化数が(-II)から(0)となることで単体セレンが析出することがある。そのため予め酸性溶液の液温を60℃以上に加熱しておき、セレンが固着することを防止する。当該酸性溶液の加熱温度の上限値は加熱効率の観点から100℃以下であるのが好ましい。また、当該酸性溶液の加熱温度は65~80℃であるのが好ましい。
ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液を60℃以上に加熱したものに添加する上述の酸化剤としては、酸性溶液中で単体セレンを亜セレン酸まで酸化できる酸化剤であることが好ましく、過酸化水素、次亜塩素酸類、及び、硝酸のいずれか一種以上が挙げられる。とりわけ過酸化水素は設備に対する負荷、価格、排水基準の観点から最も好適である。
過酸化水素等の酸化剤添加前には、なるべく亜セレン酸濃度を下げておくことが好ましい。亜セレン酸が過多に残留していると酸化剤によりセレン酸が生じ、再還元の時に過剰な還元剤が必要となるおそれがある。具体的には、酸化剤添加前に、亜セレン酸濃度を少なくとも3g/L以下に調整しておくことが好ましい。
酸化剤は、銀-塩化銀を参照電極とした時の酸性溶液の酸化還元電位が450mV以上に達するまで添加することが好ましい。当該酸化還元電位が450mV未満であると、難還元性セレン化合物の分解が不十分となるおそれがある。銀-塩化銀を参照電極とした時の酸性溶液の酸化還元電位は、550~850mVに達するまで添加することが更に好ましい。当該酸化還元電位が850mVを超えると再還元する時に還元剤の使用量が増加するおそれがある。当該酸化還元電位は、700~800mVであるのが更により好ましい。
酸化剤の添加後は、しばらく撹拌して十分に反応させることが好ましい。過酸化水素や次亜塩素酸類を酸化剤として使用した場合、添加してしばらくは気泡が生じるため、この気泡の発生が目視で収まったら酸化は収まったと考えてよい。
酸化後は、再度還元剤を投入してセレンを沈殿させる(セメンテーション)。還元剤は亜セレン酸をセレンに還元できる試薬ならば特に限定されないが、二酸化硫黄、亜硫酸塩、及び、セレンより卑な金属のいずれか一種以上が挙げられる。なかでもセレンより卑な金属によるセメンテーションは反応効率の面で最も好ましい。セレンより卑な金属は、鉄、銅、及び、銅被覆鉄のいずれか一種以上が挙げられる。
本発明の実施形態のように、金属の電解澱物溶解液を処理対象にする場合は、ヒ素等の元素を含む。ヒ化水素の発生を防止するためには、上述のセメンテーションは鉄、銅、銅で表面被覆した鉄のいずれかを還元剤として行い、その時の反応温度は50℃以上であることが好ましい。すなわち、上述のように酸化剤を添加した後、酸性溶液の温度を50℃以上に維持して還元剤を投入するのが好ましい。特に鉄粉を使用する場合は投入時に反応して水素を発出するため、当該酸性溶液の温度は50~80℃に維持することが好ましい。二酸化硫黄で還元した後に卑金属でセメンテーションしてもよい。酸化剤添加量が過剰になった時には安価な二酸化硫黄で還元することで、セメンテーションに使用する金属を節減できる。
当該セレンより卑な金属(還元剤)は、酸性溶液に対して5g/L以上になるように添加することが好ましい。当該還元剤が酸性溶液に対して5g/L未満であると除去が不十分になるおそれがある。また、当該還元剤が多すぎると試薬コストが増加するため、当該還元剤が酸性溶液に対して5~15g/Lになるように添加することがより好ましい。
還元剤は、酸化剤の添加により上昇した酸性溶液の酸化還元電位が下降に転じた後に投入することが好ましい。このような構成によれば、酸化剤の添加により上昇した酸性溶液の酸化還元電位が下降に転じた後という十分酸化が行われた後に、還元剤を投入することとなり、より還元効率が向上する。
酸化剤の添加、及び、酸化剤の添加後の還元剤の添加を、固液分離後の液中のセレン濃度が所定値以下になるまで繰り返すことが好ましい。当該「所定値以下」は、特に限定されないが、例えば100mg/L以下とすることができる。また、このとき、酸化剤を添加した後に初めに還元剤として二酸化硫黄を添加した後、再度酸化剤を添加した後に還元剤としてセレンより卑な金属を添加することが好ましい。このような構成によれば、初めにより安価な二酸化硫黄で還元した後、再び還元する際に、より高価であるが還元効率が高い還元剤を使用することができるため、コストの観点から好ましい。
還元処理後に沈殿したセレン含有物をフィルタープレス等により固液分離する。対象液の組成によるが、回収したセレン含有物はルテニウムやイリジウム等の有価金属も含まれる場合は製錬原料として利用される。また、回収された後のセレンは、さらに蒸留することで純度を上げることができる。
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<処理対象液(ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液)の調製>
銅製錬から回収された電解スライムを硫酸で処理することで銅を除いた後、濃塩酸と60%過酸化水素水を添加して溶解し、固液分離して浸出貴液(PLS)を得た。
次に、PLSを6℃まで冷却して卑金属分を沈殿除去した後、DBC(ジブチルカルビトール)とPLSを混合して金を抽出した。
次に、金抽出後のPLSを70℃に加温し、二酸化硫黄と空気の混合ガス(二酸化硫黄濃度5~20%)を吹き込んで貴金属を還元し固液分離した。さらに原液300mLに対してアセトンを3mL添加して2時間撹拌した。さらに再度二酸化硫黄と空気の混合ガスを1時間吹き込んで沈殿したセレンを濾別した。これを処理対象液と称する。対象液はセレン0.45g/L、ヒ素1.9g/L、銅1.2g/Lを含んでいた。酸化還元電位(ORP)は433mVであった。
(試験例1)
上記処理対象液を200mL分取し、70℃に加熱して、次亜塩素酸ナトリウム液(有効塩素5質量%以上)、硝酸(60質量%)、または、過酸化水素水(30質量%)を所定量添加し30分撹拌した。このうち、過酸化水素水を添加した系では酸化還元電位(ORP、参照電極:銀-塩化銀)も測定した。
次に、処理対象液に二酸化硫黄と空気の混合ガスを吹き込み、60分後に当該混合ガスの吹き込みを停止した。
次に、処理対象液を2mL分取し、希塩酸で50mLに規正してICP-OES(セイコーインスツル株式会社製SPS3100)によりセレン濃度を定量した。結果を表1に示す。
酸化剤を添加せずに二酸化硫黄のみ吹き込んでも、セレンはほとんど沈殿除去されなかった。一方、酸化剤を添加した後に二酸化硫黄で再還元すると効果が高いことが分かった。過酸化水素水を酸化剤とした時の結果を見ると、0.2mL添加した系から効果は現れ、2mL以上添加したものは最終セレン濃度に大きな変化はなかった。
過酸化水素の必要量はセレン濃度や他の鉄(II)等の還元物質濃度により変化する。ORPとして液中の酸化度を見ると450mV以上になるまで過酸化水素を添加すると効果を示した。ORPが700mVを超えると一層効果は高くなった。
(試験例2)
試験例1と同じ処理対象液を200mL分取し、60~65℃に加熱し所定量の過酸化水素水(30質量%)を添加した後、30分撹拌し、ORPを測定した。
次に、銅粉、鉄粉、表面を銅で被覆した鉄粉(銅含有率は30質量%と60質量%)を所定量添加し、さらに撹拌して還元した。銅粉を使用した場合は80℃、鉄粉を使用した場合は50℃で還元した。
銅で被覆した鉄粉は希硫酸に硫酸銅(II)5水和物を溶解して銅10g/Lを調製し、市販鉄粉(平均粒径P80=200μm)を投入して撹拌した。ここで、「P80」とは、篩にかけた時に80%が通過する粒径を示す。反応時間を操作して各種銅含有率の銅被覆鉄粉を調製し、固液分離した後、風乾して実験に供した。
次に、還元反応を1時間後に停止し固液分離し、液中の各種元素を定量した。定量方法は試験例1に準じる。結果を表2に示す。
試験例1と試験例2を比較すると、再還元は金属によるセメンテーションの方が、効率が良いことが分かる。金属は鉄もしくは銅被覆鉄粉のいずれでもよいが、鉄の場合は酸性溶液に添加すると水素が発生するため吹きこぼれるおそれがある。また金属として比較的貴な銅によるセレンのセメンテーションも可能であった。セメンテーションに必要な金属は1g以上であった。これは5g/Lに相当する。
試験例1と試験例2からORPを計測した条件を抽出し、ORPと過酸化水素添加量をグラフにすると図1となる。図1によれば、ORPは550mVを境に急上昇しているが、これは過酸化水素が液中で即時還元を受けなくなったことを示し、一定量存在し始めたことがわかる。このORP550mV以上になるよう酸化剤を添加すれば難還元性セレン化合物は分解を受けたものと考えられる。
試験例2ではORP未計測の実験があるが、過酸化水素2mL添加したものはORPは710~770mV程度に達するものと考えられる。
(試験例3)
試験例1と同じ処理対象液を200mL分取し、表3に示す所定温度に加熱して過酸化水素水(30質量%)を所定量添加した後、30分撹拌し、ORPを測定した。
次に、表面を銅で被覆した鉄粉(銅含有率60%)を2g添加し所定の温度に調整した後、さらに撹拌して還元した。
次に、還元反応を1時間後に停止し、固液分離した後、液中の各種元素を定量した。定量方法は試験例1に準じる。結果を表3に示す。
表3の結果から過酸化水素添加量が増えると最終的なセレン濃度は減ることが分かる。特に酸化時のORPは550mVを超えるとセレンは効率よく還元除去された。しかしながら、一定価以上のORPでは効果はほとんど変わらなかった。難還元性セレン化合物の他にも亜ヒ酸等の被還元物質が含まれており、過酸化水素の消費につながったものと考えられる。
酸化時の温度と還元時の温度は、高い方が効果があった。60℃以上であれば酸化時、還元時いずれも問題なかった。
試験例2と試験例3の結果から考察すると、過酸化水素を2mL投入して液温が60℃以上であれば、一旦は最高のORPは800mVを超えるものと予想される。反応の進行に従って液中の過酸化水素の消失により徐々にORPは低下すると考えられる。そうであれば、一旦上昇したORPが下降に転じた時には難還元性セレン化合物の酸化はある程度以上進行していると考えてよい。
いずれの条件でも大きく液中のセレン濃度は低下したが、これらの値を更に向上させるためには、酸化と還元を繰り返すことで、更にセレンの濃度は低下する。なお、酸化した後に一般的な排水中のセレン処理方法である凝集沈殿法で処理することも可能である。

Claims (14)

  1. ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液を60℃以上に加熱して酸化剤を添加後、還元剤を投入して生じた沈殿を固液分離し、前記固液分離後の液中のセレンを回収する、セレンの回収方法。
  2. 前記ケトン類を添加した亜セレン酸を含む酸性溶液を65~80℃に加熱して前記酸化剤を添加する、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  3. 前記酸化剤を添加後、前記酸性溶液の温度を50~80℃に維持して前記還元剤を投入する、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  4. 前記酸化剤は、前記酸性溶液中で単体セレンを亜セレン酸まで酸化できる酸化剤である、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  5. 前記酸化剤は、過酸化水素、次亜塩素酸類、及び、硝酸のいずれか一種以上である、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  6. 前記ケトン類はアセトンである、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  7. 前記還元剤は、二酸化硫黄、亜硫酸塩、及び、セレンより卑な金属のいずれか一種以上である、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  8. 前記セレンより卑な金属は、鉄、銅、及び、銅被覆鉄のいずれか一種以上である、請求項7に記載のセレンの回収方法。
  9. 前記還元剤は、前記酸性溶液に対して5g/L以上になるように添加する、請求項7に記載のセレンの回収方法。
  10. 前記酸化剤は、銀-塩化銀を参照電極とした時の前記酸性溶液の酸化還元電位が450mV以上に達するまで添加する、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  11. 前記酸化剤は、銀-塩化銀を参照電極とした時の前記酸性溶液の酸化還元電位が550~850mVに達するまで添加する、請求項10に記載のセレンの回収方法。
  12. 前記還元剤は、前記酸化剤の添加により上昇した前記酸性溶液の酸化還元電位が下降に転じた後に投入する、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  13. 前記酸化剤の添加、及び、前記酸化剤の添加後の前記還元剤の添加を、前記固液分離後の液中のセレン濃度が所定値以下になるまで繰り返す、請求項1に記載のセレンの回収方法。
  14. 前記酸化剤を添加した後に前記還元剤として二酸化硫黄を添加した後、再度前記酸化剤を添加した後に前記還元剤としてセレンより卑な金属を添加する、請求項13に記載のセレンの回収方法。
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