JP2023161496A - ポリオレフィン微多孔膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、非水系二次電池の電池特性と安全性の両立を達成することができるポリオレフィン微多孔膜、並びにそれを含む非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池を提供することを目的とする。【解決手段】ポリオレフィン微多孔膜は、パームポロ平均流量径が、0.055μm以下であり、かつ、透気度が60sec/100cm3以下であり、かつ、シャットダウン温度が143℃以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン微多孔膜に関する。
ポリオレフィン微多孔膜は、優れた電気絶縁性及びイオン透過性を示すことから、電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ、燃料電池用材料、精密濾過膜等に使用されており、特にリチウムイオン二次電池用セパレータとして使用されている。
近年、リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン等の小型電子機器、及び電気自動車、小型電動バイク等の電動車両にも使用されている。リチウムイオン二次電池用セパレータには、機械的特性及びイオン透過性だけでなく、各種の安全試験における安全性も求められている。また、例えば、特殊な電極を備える電池内、高温、高圧、大寸法などの環境下で、機械特性、耐熱性、耐圧縮性、寸法安定性、安全性、電池特性などのバランスを取るという観点から、セパレータとして使用されるポリオレフィン微多孔膜が検討されている(特許文献1~2)。
特許文献1には、小孔径な細孔の体積割合が増えることで、イオン拡散性を高め、デンドライト抑制と高出力性能とサイクル特性を高度に両立できることが記述されている。しかしながら、強度と透過性のバランスと双方の向上を優先する結果、シャットダウン温度の上昇を抑える点で課題が残るものであった。
特許文献2には、SEM画像を二値化処理することで得られる孔径分布において、小孔径の割合が多いことで、従来よりも優れた出力特性と強度、収縮率を有することが記述されている。しかしながら、特許文献2は、二軸延伸工程における温度・風量・滞留時間や熱固定(HS)工程における歪速度が検討されておらず、小孔径化した際に透気度の上昇を抑えることが出来ないため、出力の観点において、改善の余地がある。
特開2021-123614号公報 特開2021-105166号公報
近年、脱炭素社会の実現に向けて、各国が取り組みを強化している。走行時に車から出る温室効果ガスの排出量を減らす燃費規制などにより、ハイブリッド自動車や電気自動車の普及が加速している。
屋外環境で使用される車載用リチウムイオン電池には、常温環境下だけでなく、雪国でも作動するように、低温環境下でのレート特性の改善が強く要求されている。低温環境下においては、セパレータ内のリチウムイオン拡散速度が低下することになり、急速に電池を充電および放電した場合に、十分な容量を得ることが出来ない。
セパレータのイオン透過性を向上させるために、セパレータの孔径を大きくすることで透気度を低下させることは可能であるが、孔径が大きくなりすぎると、単位体積当たりの孔数が減少することにより、イオンが透過する経路が少なくなり、出力特性が悪化する。また、セパレータのイオン透過性を向上させるために、薄膜化、または単位面積当たりの樹脂量を低下させる方法があるが、セパレータの突刺強度低下や耐電圧の悪化やシャットダウン温度の上昇を招き、電池の安全性が犠牲となる。
したがって、従来のポリエチレン微多孔膜をセパレータとして備える非水系二次電池は、室温・低温環境下での出力特性などの電池特性と安全性とを両立することが困難であった。
上記の事情に鑑みて、本発明は、非水系二次電池の電池特性と安全性の両立を達成することができるポリオレフィン微多孔膜、並びにそれを含む非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリオレフィン微多孔膜について、パームポロ平均流量径と透気度、およびシャットダウン温度を特定することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、発明を完成させた。本発明の一態様を以下に例示する。
[1] パームポロ平均流量径が、0.055μm以下であり、かつ、透気度が60sec/100cm以下であり、かつ、シャットダウン温度が143℃以下である、ポリオレフィン微多孔膜。
[2] 前記ポリオレフィン微多孔膜の粘度平均分子量(Mv)が、200,000以上500,000以下である、項目1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[3] 目付1g/mに換算した耐電圧が0.022kV/(g/m)以上である、項目1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[4] 気孔率が40%以上75%以下である、項目1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[5] 30℃、2.5MPaで10分間プレスした後の透気度が、20sec/100cm以上100sec/100cm以下である、項目1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[6] 膜厚に換算した透気度が、5.0(sec/100cm)/μm以下である、項目1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[7] パームポロ平均流量径(μm)と透気度(sec/100cm)の積が、3.0(sec/100cm)μm以下である、項目1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[8] 曲路率が1.1~1.8である、項目1~7のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[9] 目付に換算した突刺強度が、60.0gf/(g/m)以上110.0gf/(g/m)以下である、項目1~8のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[10] MD、TDともに、引張強度が1000kgf/cm以上である、項目1~9のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[11] バブルポイント最大孔径が0.060μm以下である、項目1~10のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜
[12] バブルポイント最大孔径とパームポロ平均流量径の差が0.007μm以下である、項目1~11のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[13] 項目1~12のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜と、
前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に配置される無機多孔層と、
を有するセパレータ
[14] 項目1~12のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜と、
前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に配置される熱可塑性樹脂層と、
を有するセパレータ
[15] 項目1~12のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜と、
前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に配置される、多機能層、無機多孔層および熱可塑性樹脂層から成る群から選択される少なくとも一層と、
を有するセパレータ。
また、本発明の別の態様としてポリオレフィン微多孔膜の製造方法を以下に示す。[16] 以下の工程:
(A)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材を含むポリオレフィン組成物を押し出して、ゲル状シートを形成する工程;
(B)ゲル状シートを二軸延伸して、延伸シートを形成する工程;
(C)延伸シートから孔形成材を抽出して、多孔膜を形成する工程;並びに
(D)多孔膜を熱固定する工程
を含み、次の構成:
(ア)工程(A)において、総ポリオレフィン樹脂に対して、粘度平均分子量Mvが500,000以上1,500,000以下のポリエチレンの割合が10質量%以上45質量%以下であり、
(イ)工程(A)において、総ポリオレフィン樹脂に対して粘度平均分子量Mvが500,000以下のポリエチレンの割合が55質量%以上90質量%以下の割合であり、
(ウ)工程(B)において、MDおよびTDの延伸倍率がともに5倍以上9倍以下であり、
(エ)工程(B)において、熱固定係数に対する延伸係数の比(延伸係数/熱固定係数)を3.5以下であり、
(オ)工程(D)において、緩和率が0.90以上であり、
(カ)工程(D)において、緩和時の歪速度%/secに対する延伸時の歪速度%/sec(延伸歪速度%/sec/緩和歪速度%/sec)が10以上であること、
の少なくとも1つを有することを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
本発明は、パームポロ平均流量径と透気度、およびシャットダウン温度を特定することによって、ポリオレフィン微多孔膜を含む非水系二次電池の室温・低温環境下での出力特性を改善することが出来、何らかの異常反応が起こり、電池内温度が上昇しても、速やかに、セパレータの孔を閉塞し、電極間のリチウムイオンの流れが停止するために、安全性を向上させることが出来る。また、本発明によれば、加圧後の透気度を特定することで、非水系二次電池内で膨張収縮し易い電極を用いたり、非水系二次電池のモジュール化時にセパレータが圧縮されたりする場合でさえも、ポリオレフィン微多孔膜の高気孔率・低透気度を維持できる。さらに、突刺強度や目付換算突刺強度や引張強度を特定することにより耐衝撃性等の安全性が高い膜を、そして、パームポロ平均流量径やバブルポイントを特定することにより、耐電圧特性に優れた膜を得ることが出来る。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書では、長手方向(MD)とは微多孔膜連続成形の機械方向を意味し、かつ幅方向(TD)とは微多孔膜のMDを90°の角度で横切る方向を意味する。
本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。また、或る部材が特定成分を主成分として含有することは、特定成分の含有量が部材の質量を基準として50質量%以上であることを意味する。特に言及しない限り、本明細書に記載の物性又は数値は、実施例において説明される方法により測定又は算出されるものである。
<ポリオレフィン微多孔膜>
本発明の一態様は、ポリオレフィン微多孔膜である。ポリオレフィン微多孔膜は、主成分としてポリオレフィン樹脂を含み、優れた電気絶縁性及びイオン透過性を示すことができるため、例えば非水系二次電池等において、具体的には非水系二次電池用セパレータとして、使用されることができる。
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、次の特徴を有する:
パームポロ平均流量径が、0.055μm以下であり、かつ、透気度が60sec/100cm以下であり、かつ、シャットダウン温度が143℃以下である。
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、パームポロ平均流量径と透気度とシャットダウン温度を上記のとおり特定することにより、例えばセパレータ等としてポリオレフィン微多孔膜を含む非水系二次電池について、レート特性等の電池特性、加熱試験安全性等の安全性と優れた耐電圧特性を両立することができる。また、ポリオレフィン微多孔膜の気孔率及びイオン透過性を向上させ、例えば非水系二次電池内で膨張収縮し易い電極を使用したり、非水系二次電池のモジュール化時にセパレータが圧縮されたりする場合にも、ポリオレフィン微多孔膜の高気孔率・低透気度を維持することもできる。
0.055μm以下のパームポロ平均流量径は、電池の出力特性を向上させる傾向にある。パームポロ平均流量径は、実施例に記載の方法によって測定される。パームポロ平均流量径が0.055μmよりも大きくなると、イオンが透過する経路が少なくなり、出力特性が悪化する。一方で、パームポロ平均流量径が小さくなると、透気度上昇を招き、リチウムイオンの拡散速度が低下することで、良好な出力特性が得られない。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜のパームポロ平均流量径は、0.020μm~0.055μmであることが好ましく、0.030μm~0.055μmであることがより好ましく、0.040μm~0.050μmであることが更に好ましく、0.040μm~0.045μmであることが最も好ましい。
60sec/100cm以下の透気度は、リチウムイオンの透過性が向上し、電池の出力特性を向上させる傾向にある。ポリオレフィン微多孔膜の透気度が60sec/100cmを超えるほどに高いと、リチウムイオンの拡散速度が低下することで、良好な出力特性が得られない。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜の透気度は、60sec/100cm以下が好ましく、55sec/100cm以下がより好ましく、50sec/100cm以下が更に好ましく、40sec/100cm以下が最も好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の透気度は、突刺強度を担保する観点から、10sec/100cm以上が好ましく、20sec/100cm以上がより好ましい。
143℃以下のシャットダウン温度は、何らかの異常反応が起こり、電池内温度が上昇するときに、143℃に達するまでにセパレータの孔が閉塞することを意味しており、電池の安全性が向上する傾向にある。一方で、100℃に近い高温に曝されても電池性能を低下させない観点で、ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度は125℃以上が好ましい。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度は、好ましくは、125℃~143℃であり、より好ましくは、125℃~142℃、更に好ましくは、125℃~141℃、より更に好ましくは、125℃~140℃、特に好ましくは、125℃~139℃、最も好ましくは125℃~138℃である。
ポリオレフィン微多孔膜の気孔率は、一定の膜強度と低透気度を達成するという観点から、40%以上75%以下の範囲内にあることが好ましく、45%以上70%以下であることがより好ましく、50%以上65%以下であることが更に好ましく、55%以上62%以下であることが特に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の30℃及び2.5MPaで10分間の加圧状態後の透気度(以下、加圧後透気度30℃,2.5MPaという)が、100sec/100cm以下であると、厚み方向への加圧状態においても高イオン透過性を確保できる傾向であるため好ましく、80sec/100cm以下であるとより好ましく、60sec/100cm以下であると更に好ましく、40sec/100cm以下であると最も好ましい。加圧後透気度30℃,2.5MPaは、突刺強度を担保する観点から、20sec/100cm以上が好ましい。
出力特性を良化させる観点から、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)に換算した透気度が、5.0(sec/100cm)/μm以下であることが好ましく、4.5(sec/100cm)/μm以下であることがより好ましく、4.0(sec/100cm)/μm以下であることが更に好ましく、3.0(sec/100cm)/μm以下であることが最も好ましい。
出力特性を良化させるためには、パームポロ平均流量径と透気度の両方を小さい値で制御することが重要である。このような観点から、パームポロ平均流量径(μm)と透気度(sec/100cm)の積が、3.0(sec/100cm)μm以下であることが好ましく、2.5(sec/100cm)μm以下であることがより好ましく、2.0(sec/100cm)μm以下であることが更に好ましく、1.5(sec/100cm)μm以下であることが最も好ましい。
出力特性を良化させるためには、後述する実施例に記載した気液法によって算出した曲路率(τ)が、1.8以下あることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.4以下であることが更に好ましく、1.3以下であることが最も好ましい。一方で、耐電圧の観点から、ポリオレフィン微多孔膜の曲路率は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。特に好ましくは、ポリオレフィン微多孔膜の曲路率は、1.2~1.4の範囲内にある。
ポリオレフィン微多孔膜の粘度平均分子量(Mv)が低いと、溶融開始時に樹脂が孔を閉塞する速度が速いために、シャットダウン温度が低い傾向にある。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜のMvは500,000以下あることが好ましく、450,000以下がより好ましく、430,000以下が更に好ましい。一方で、ポリオレフィン微多孔膜の強度を担保するという観点から、ポリオレフィン微多孔膜のMvは200,000以上であることが好ましく、250,000以上がより好ましく、300,000以上が更に好ましく、350,000以上が更に好ましく、380,000以上が更に好ましい。
上記と同様の観点、及び電池内部に意図せず混入する異物によってセパレータが破膜して発生する電極間短絡又は耐電圧不良を抑制するという観点から、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は、150gf以上であることが好ましく、180gf以上であることがより好ましく、200gf以上であることが更に好ましく、250gf以上であることが特に好ましく、300gf以上であることが最も好ましい。突刺強度の上限値は、特に限定されないが、膜の結晶性、及び抑制された電気抵抗に応じて決定されることができ、例えば、700gf以下でよい。
突刺強度(gf)を目付(g/m)で除した値を目付換算突刺強度(gf/(g/m))とした。目付換算突刺強度を高くすることにより、電池に衝突があったとしても、膜が破膜することなく絶縁性が保たれるため、電池が熱暴走すること無く、安全性を担保することが可能となる。このような観点から、目付換算突刺強度は、60.0gf/(g/m)以上であることが好ましく、70.0gf/(g/m)以上であることがより好ましく、75.0gf/(g/m)以上であることが更に好ましく、80.0gf/(g/m)以上であることが特に好ましく、85.0gf/(g/m)以上であることが最も好ましい。また、シャットダウン温度を低減する観点では、ポリオレフィン微多孔膜の目付換算突刺強度は、110.0gf/(g/m)以下が好ましく、100.0gf/(g/m)以下がより好ましく、95.0gf/(g/m)以下が更に好ましく、90.0gf/(g/m)以下が最も好ましい。
微多孔膜の引張(破断)強度は、高い機械的強度を有するために、MD、TDともに、1000kgf/cm以上であることが好ましく、1200kgf/cm以上であることがより好ましく、1400kgf/cm以上であることが更に好ましく、1500kgf/cm以上であることがより更に好ましく、1600kgf/cm以上であることが特に好ましく、1800kgf/cm以上であると最も好ましい。引張強度が1000kgf/cmよりも低いと、電極とポリオレフィン微多孔膜の捲回時に掛かる応力に膜が耐えられず、破膜する可能性があり、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮抑制の観点からは4000kgf/cmよりも低いことが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の耐電圧の絶対値は、電池の安全性および微短絡を抑制する観点から、0.5kV以上が好ましく、0.7kV以上がより好ましく、0.9kV以上が更に好ましく、1.0kV以上がより更に好ましく、1.1kV以上が特に好ましく、1.2kV以上が最も好ましい。
同様の観点から、ポリオレフィン微多孔膜の単位目付当たりの耐電圧は、0.22kV/(g/m)以上が好ましく、0.25kV/(g/m)以上がより好ましく、0.26kV/(g/m)以上が更に好ましく、0.27kV/(g/m)以上がより更に好ましく、0.28kV/(g/m)以上がなお更に好ましく、0.29kV/(g/m)以上が特に好ましく、0.30kV/(g/m)以上が最も好ましい。
出力特性の観点から、ポリオレフィン微多孔膜のバブルポイント最大孔径は、0.060μm以下であることが好ましく、0.055μm以下であることがより好ましく、0.050μm以下であることが更に好ましい。透気度の上昇を抑制する観点から、ポリオレフィン微多孔膜のバブルポイント最大孔径は、0.020μm以上が好ましく、0.030μm以上がより好ましく、0.040μm以上が更に好ましい。
耐電圧を向上させ、電池の安全性および微短絡を抑制する観点から、ポリオレフィン微多孔膜のバブルポイント最大孔径とパームポロ平均流量径の差(バブルポイント最大孔径-パームポロ平均流量径)が0.007μmで以下であることが好ましく、0.006μm以下であることがより好ましく、0.005μm以下であることが更に好ましく、0.004μm以下であることが特に好ましく、0.003μm以下であることが最も好ましい。
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜のパームポロ平均流量径、バブルポイント最大孔径、透気度、気孔率、シャットダウン温度、Mv、耐電圧、曲路率、突刺強度、目付換算突刺強度、引張強度などは、例えば、ポリオレフィン微多孔膜の製造プロセスにおいて、ポリオレフィン等の高分子原料の分子量及び配合割合、二軸延伸工程時の延伸倍率、二軸延伸工程時の延伸温度、二軸延伸、熱固定(HS)倍率などを制御することによって、上記で説明された数値範囲内に調整されることができる。
本実施形態において好ましい構成要素、又は他の構成要素を以下に説明する。
(構成要素)
ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含む多孔膜;ポリオレフィン樹脂に加えて、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂も含む多孔膜;ポリオレフィン系の繊維を織ったもの(織布);ポリオレフィン系の繊維の不織布などが挙げられる。これらの中でも、膜の低抵抗化、膜の耐圧縮性及び構造均一性などの観点から、ポリオレフィン樹脂を含む微多孔膜(以下、ポリオレフィン樹脂多孔膜)が好ましく、主成分としてポリエチレンを含む微多孔膜がより好ましい。
ポリオレフィン樹脂多孔膜について説明する。ポリオレフィン樹脂多孔膜は、非水系二次電池用ポリオレフィン微多孔膜を形成した時のシャットダウン性能等を向上させる観点から、多孔膜を構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物により形成される多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂が占める割合は、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
ポリオレフィン樹脂組成物に含有されるポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等をモノマーとして用いて得られるホモ重合体、共重合体、又は多段重合体等が挙げられる。また、これらのポリオレフィン樹脂は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、膜の低抵抗化、膜の耐圧縮性及び構造均一性などの観点から、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-それら以外のモノマーの共重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等、ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等、共重合体の具体例としては、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂多孔膜は、非水系二次電池用ポリオレフィン微多孔膜を形成した時の結晶性、高強度、耐圧縮性、シャットダウン特性などの観点から、微多孔膜を構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリエチレンが占めるポリエチレン組成物により形成される多孔膜であることが好ましい。多孔膜を構成する樹脂成分におけるポリエチレンが占める割合は、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
非水系二次電池用セパレータとしてポリオレフィン微多孔膜を形成した時の高強度、耐圧縮性、低抵抗化などの観点から、ポリオレフィン樹脂におけるポリエチレンの割合は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体;無機フィラー;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量%に対して、20質量%以下であることがシャットダウン性能等を向上させる観点から好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
微多孔膜がポリオレフィン樹脂多孔膜である場合、原料として用いるポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、30,000以上6,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以上3,000,000以下、さらに好ましくは150,000以上、1,500,000以下である。粘度平均分子量が30,000以上であると、重合体同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が6,000,000以下であると、押出および延伸工程での成形性を向上させる観点で好ましい。
ポリオレフィン樹脂多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂の種類、分子量、及び組成は、例えば、ポリオレフィン微多孔膜の製造プロセスにおいて、ポリオレフィン等の高分子原料の種類、分子量及び配合割合などを制御することによって、上記のとおりに調整されることができる。また、同種もしくは異種のポリオレフィン樹脂微多孔膜を2層以上積層した構造を有する多層ポリオレフィン樹脂微多孔膜も、上記のとおりに調整される。
(微多孔膜の詳細)
ポリオレフィン微多孔膜は、非常に小さな孔が多数集まって緻密な連通孔を形成した多孔構造を有しているため、電解液を含んだ状態においてイオン透過性に非常に優れると同時に高強度であるという特徴を有する。
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、高イオン透過性と良好なレート特性の観点、及び高容量電池のために用いられるに際し、セパレータの占有体積を低減して電池容量の向上に資するという観点から、2μm~15μmであることが好ましく、3μm~13μmであることがより好ましく、4μm~12μmであることが更に好ましく、5μm~12μmであることが最も好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の平均膜厚は、キャストロールのロール間距離、キャストクリアランス、二軸延伸時工程時の延伸倍率、HS倍率、HS温度等を制御することにより上記の数値範囲内に調整することができる。
ポリオレフィン微多孔膜のMDとTDの引張破断強度の値が近いほど、非水系二次電池の釘刺試験時に膜が均等に破れることにより短絡面積を最小化し、ひいては衝突安全性が良好になる。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜の長手方向(MD)の引張破断強度とTDの引張破断強度の比(MD/TD引張破断強度比)としては、0.80~1.20が好ましく、より好ましくは0.85~1.15の範囲であり、更に好ましくは0.90~1.10の範囲であり、最も好ましくは0.95~1.05の範囲である。ポリオレフィン微多孔膜のMD/TD引張破断強度比は、例えば、二軸延伸工程時の延伸倍率、HS倍率などを制御することによって、上記で説明された数値範囲内に調整されることができる。
ポリオレフィン微多孔膜の目付は、突刺強度および耐電圧の観点から、0.1g/m~10g/mの範囲内にあることが好ましい。
(多層多孔膜)
本実施形態では、上記で説明されたポリオレフィン微多孔膜と、その少なくとも片面に配置される少なくとも1つの層とを有する多層多孔膜も提供される。多層多孔膜は、少なくとも1つの層の性質に応じて、ポリオレフィン微多孔膜に単数又は複数の機能を付与することができ、非水系二次電池用セパレータとして使用されることもできる。
具体的には、多層多孔膜は、下記1~3のいずれかの層構成を有することができる:
層構成1:ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に配置される無機多孔層とを含む;
層構成2:ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に配置される熱可塑性樹脂層とを含む;及び
層構成3:ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に配置される、多機能層、無機多孔層および熱可塑性樹脂層から成る群から選択される少なくとも一層とを含む。
(無機多孔層)
無機多孔層は、無機粒子及びバインダ高分子を含む。無機多孔層を含む多層多孔膜は、無機多孔層の孔構造を有するため、イオン透過性を維持しながら、薄膜でも熱収縮抑制能に優れたものとなる。
無機粒子としては、特に限定されないが、耐熱性及び電気絶縁性が高く、かつ非水系二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機粒子の材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、及び酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、及び窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム又はベーマイト、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、及びケイ砂等のセラミックス;並びにガラス繊維などが挙げられる。これらの中でも、アルミナ、ベーマイト、及び硫酸バリウムから成る群から選ばれる少なくとも1つが、非水系二次電池内での安定性の観点から好ましい。また、ベーマイトとしては、電気化学素子の特性に悪影響を与えるイオン性の不純物を低減できる合成ベーマイトが好ましい。無機粒子は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
無機粒子の形状としては、例えば、板状、鱗片状、多面体、針状、柱状、粒状、球状、紡錘状、ブロック状等が挙げられ、上記形状を有する無機粒子を複数種組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、透過性と耐熱性のバランスの観点からは、ブロック状が好ましい。
無機粒子のアスペクト比としては、1.0以上3.0以下であることが好ましく、より好ましくは、1.1以上2.5以下である。アスペクト比が3.0以下であることで、多層多孔膜の水分吸着量を抑制し、サイクルを重ねた時の容量劣化を抑制する観点、及びPO微多孔膜の融点を超えた温度における変形を抑制する観点から好ましい。
無機粒子が無機多孔層中に占める割合において、90質量%以上99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは91質量%以上98質量%以下であり、更に好ましくは92質量%以上98質量%以下である。無機粒子の割合が90質量%以上であることで、イオン透過性の観点、及びポリオレフィン微多孔膜の融点を超えた温度での変形を抑制する観点から好ましい。また、この割合が99質量%以下であることで、無機粒子同士の結着力又は無機粒子とポリオレフィン微多孔膜との界面結着力を維持する観点で好ましい。
バインダ高分子は、無機多孔層において複数の無機粒子同士を結び付けたり、無機多孔層とポリオレフィン微多孔膜を結び付けたりする材料である。バインダ高分子の種類としては、多層多孔膜がセパレータとして使用される際、非水系二次電池の電解液に対して不溶であり、且つ非水系二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
バインダ高分子の具体例としては、以下の1)~7)が挙げられる。
1)ポリオレフィン:例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンラバー、及びこれらの変性体;
2)共役ジエン系重合体:例えば、スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物;
3)アクリル系重合体:例えば、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体;
4)ポリビニルアルコール系樹脂:例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;
5)含フッ素樹脂:例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体;
6)セルロース誘導体:例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;
7)融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマー:例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル。
短絡時の安全性の観点からは、3)アクリル系重合体、5)含フッ素樹脂、及び7)ポリマーとしてのポリアミドが好ましい。ポリアミドとしては、耐久性の観点から全芳香族ポリアミド、中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好適である。
バインダ高分子と電極との適合性の観点からは上記2)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記3)アクリル系重合体及び5)含フッ素樹脂が好ましい。
上記2)共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を単量体単位として含む重合体である。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、特に1,3-ブタジエンが好ましい。
上記3)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として含む重合体である。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルから成る群から選ばれる少なくとも一つを示す。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸を挙げることができる。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアメタクリレート;エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、ブチルアクリレート(BA)が好ましい。
アクリル系重合体は、非水系二次電池の安全性の観点から、EHA又はBAを主な構成単位として含むポリマーであることが好ましい。主な構成単位とは、ポリマーを形成するための全原料に対して40モル%以上を占めるモノマーと対応するポリマー部分をいう。
上記2)共役ジエン系重合体および3)アクリル系重合体は、これらと共重合可能な他の単量体をも共重合させて得られるものであってもよい。用いられる共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマール酸、イタコン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、上記2)共役ジエン系重合体は、他の単量体として上記(メタ)アクリル系化合物を共重合させて得られるものであってもよい。
バインダ高分子は、常温を超えるような高温時でさえも複数の無機粒子間の結着力が強く、熱収縮を抑制するという観点から、ラテックスの形態であることが好ましく、アクリル系重合体のラテックスであることがより好ましい。
無機多孔層を形成するための塗工液には、分散安定化又は塗工性の向上のために、界面活性剤等の分散剤を加えてもよい。分散剤は、スラリー中で無機粒子表面に吸着し、静電反発などにより無機粒子を安定化させるものであり、例えば、ポリカルボン酸塩、スルホン酸塩、ポリオキシエーテルなどである。分散剤の添加量としては固形分換算で0.2重量部以上5.0重量部以下が好ましく、より好ましくは0.3重量部以上1.0重量部以下が好ましい。
無機多孔層の総厚みは、0.1μm~10μmであることが好ましく、より好ましくは0.2μm~7μm、更に好ましくは0.3μm~4μmである。無機多孔層の総厚みとは、ポリオレフィン微多孔膜の片面に形成された場合は無機多孔層の厚みを、PO微多孔膜の両面に形成された場合は両方の無機多孔層の厚みの合計を示す。無機多孔層の総厚みが0.1μm以上であることで、ポリオレフィン微多孔膜の融点を超えた温度での変形を抑制する観点で好ましく、総厚みが10μm以下であることで、電池容量の向上の観点で好ましい。
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を主成分として含む層であり、所望により他の成分を含んでよい。高接着性の観点から、熱可塑性樹脂層とポリオレフィン微多孔膜が直接接触していることが好ましい。
熱可塑性樹脂層中に占める熱可塑性樹脂の割合は、電極に対する接着性の観点から、3質量%超が好ましく、10質量%以上がより好ましく、更に好ましくは、20質量%以上、40質量%以上、60質量%以上、又は80質量%以上であり、90質量%以上が特に好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、上記の無機多孔層に含まれるバインダ高分子の具体例などが挙げられ、中でも、接着性の観点、及び非水系二次電池の釘刺試験又は短絡時の安全性の観点からは、2)共役ジエン系重合体、3)アクリル系重合体、5)含フッ素樹脂、及び7)ポリマーとしてのポリアミドが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の表面の全面積に対する熱可塑性樹脂層の面積割合は、100%以下、95%以下、80%以下、75%以下、又は70%以下であることが好ましく、また、この面積割合は、5%以上、10%以上、又は15%以上であることが好ましい。この面積割合を100%以下とすることは、熱可塑性樹脂によるポリオレフィン微多孔膜の孔の閉塞を抑制し、セパレータの透過性を一層向上する観点から好ましい。この面積割合を5%以上とすることは、電極との接着性を一層向上する観点から好ましい。
熱可塑性樹脂層をポリオレフィン微多孔膜又は無機多孔層の面の一部分に配置する場合、熱可塑性樹脂層の配置パターンとしては、例えば、ドット状、斜線状、ストライプ状、格子状、縞状、亀甲状、ランダム状等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂層の厚みは、ポリオレフィン微多孔膜の片面当たり、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることが更に好ましく、また10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、4μm以下であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂層の厚みを0.1μm以上とすることは、電極と多層多孔膜の間の接着力を均一に発現する観点で好ましく、その結果、電池特性を向上させることができる。熱可塑性樹脂層の厚みを10μm以下とすることは、イオン透過性の低下を抑制する観点で好ましい。
(多機能層)
多機能層は、ポリオレフィン微多孔膜又はセパレータに多数の機能を付与する層であり、例えば、上記の無機多孔層と熱可塑性樹脂層の両方の機能を有することができる。より詳細には、多機能層は、上記で説明された、バインダ高分子又は熱可塑性樹脂と、無機粒子とを含み、所望により分散剤などの追加の成分を含んでよい。多機能層の厚みは、限定されるものではないが、ポリオレフィン微多孔膜に付与する機能、及び塗工条件に応じて決定されることができる。
<ポリオレフィン微多孔膜の製造方法>
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、特に限定されないが、一例として以下の工程を含む方法が挙げられる:
(A)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材を含むポリオレフィン組成物を押し出して、ゲル状シートを形成する工程;
(B)ゲル状シートを二軸延伸して、延伸シートを形成する工程;
(C)延伸シートから孔形成材を抽出して、多孔膜を形成する工程;並びに
(D)多孔膜を熱固定する工程。
また、本発明の別の態様では、上記工程(A)~(D)を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、次の構成:
(ア)工程(A)において、総ポリオレフィン樹脂に対して、粘度平均分子量Mvが500,000以上1,500,000以下のポリエチレンの割合が10質量%以上45質量%以下であり、
(イ)工程(A)において、総ポリオレフィン樹脂に対して粘度平均分子量Mvが500,000以下のポリエチレンの割合が55質量%以上90質量%以下の割合であり、
(ウ)工程(B)において、MDおよびTDの延伸倍率がともに5倍以上9倍以下であり、
(エ)工程(B)において、熱固定係数に対する延伸係数の比(延伸係数/熱固定係数)を3.5以下であり、
(オ)工程(D)において、緩和率が0.90以上であり、
(カ)工程(D)において、緩和時の歪速度%/secに対する延伸時の歪速度%/sec(延伸歪速度%/sec/緩和歪速度%/sec)が10以上であること、
の少なくとも1つを有することを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法が提供される。
上述のポリオレフィン微多孔膜の製造方法では、上記構成(ア)~(カ)の全てを有することが好ましく、そして構成(ア)~(カ)に加えて下記の構成の何れか又は両方を有することがより好ましい:
(キ)工程(D)において、延伸倍率が1.7倍以上である;
(ク)工程(D)において、緩和温度が115℃以上130℃以下である。
ポリオレフィン微多孔膜の製造工程及び好ましい実施形態について、以下に説明する。
[押出工程(A)]
工程(A)では、ポリオレフィン組成物を押し出して、ゲル状シートを形成する。ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン樹脂、孔形成剤等を含んでよい。ポリオレフィン組成物に含まれる樹脂は、微粒子等の非樹脂成分、又は融点の大きく異なる高耐熱性樹脂を含まずに、ポリオレフィンのみから成ることが、延伸応力の均一化、及び得られる膜の透気度と透気度分布を良好にする観点から好ましい。ゲル状シートは、ポリオレフィン樹脂と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形することにより得ることができる。
先ず、ポリオレフィン樹脂と孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入することで、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。
ポリオレフィン組成物に含有されるポリオレフィン樹脂は、得られるポリオレフィン微多孔膜の所定の樹脂原料に応じて決定されることができる。具体的には、押出工程(A)で使用されるポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン微多孔膜の構成要素として上記で説明されたポリオレフィン樹脂でよい。
樹脂組成物のPCは、分子量の高い樹脂を均一に分散させることで延伸応力を均一に付加して、得られる膜のイオン透過性と透気度分布を良好にするという観点から、好ましくは20質量%~40質量%であり、より好ましくは22質量%~37質量%であり、更に好ましくは24質量%~33質量%である。ここで、PCとは「押出成分中のポリマー成分の割合」を指す。
ポリオレフィン樹脂多孔膜がポリエチレンを含む場合、少なくとも1種類のポリエチレンのMvは、膜の配向と剛性の観点から、500,000以上であることが好ましく、600,000以上であることがより好ましく、700,000以上であることが更に好ましく、800,000以上であることが最も好ましい。そして、パームポロ平均流量径と透気度を上記の範囲に抑え、シャットダウン温度を低減させるという観点から、ポリエチレンのMvは、1,500,000以下が好ましく、1,200,000以下がより好ましく、1,000,000以下が更に好ましく、900,000以下が特に好ましい。衝突試験時の短絡耐性の観点から、ポリオレフィン樹脂多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂のうちMv500,000以上のポリエチレンが占める割合は、総ポリオレフィン樹脂に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が最も好ましい。一方で、速やかにシャットダウンすることで電池の安全性を担保する観点では、ポリオレフィン樹脂多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂のうちMv500,000以上のポリエチレンが占める割合は、総ポリオレフィン樹脂に対して、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が最も好ましい。
ポリオレフィン樹脂多孔膜がポリエチレンを含む場合、少なくとも1種類のポリエチレンのMvは、良好なシャットダウン特性の観点から、500,000未満であることが好ましく、450,000以下であることがより好ましく、400,000以下であることが更に好ましく、350,000以下であることがより更に好ましく、300,000以下であることが最も好ましい。そしてポリエチレンのMv下限値は、例えば、50,000以上でよい。速やかにシャットダウンすることで電池の安全性を担保する観点では、ポリオレフィン樹脂多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂のうちMv500,000未満のポリエチレンが占める割合は、総ポリオレフィン樹脂に対して、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が最も好ましい。一方で、衝突試験時の短絡耐性の観点から、ポリオレフィン樹脂多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂のうちMv500,000未満のポリエチレンが占める割合は、総ポリオレフィン樹脂に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが最も好ましい。
また、微多孔膜の耐熱性を向上させる観点や成形性を向上させるから、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン及びポリプロピレンの混合物を用いてもよい。シャットダウン温度を悪化させない観点から、ポリオレフィン樹脂組成物中の、総ポリオレフィン樹脂に対するポリプロピレンの割合は、0質量%以上10質量%以下が好ましく、0質量%以上7質量%以下がより好ましく、0質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
孔形成材としては、可塑剤、無機材又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒を用いることが好ましい。不揮発性溶媒の具体例としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。なお、これらの可塑剤は、抽出後、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
可塑剤の中でも、流動パラフィンは、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン又はポリプロピレンの場合に、これらとの相溶性が高く、溶融混練物を延伸しても樹脂と可塑剤の界面剥離が起こり難く、均一な延伸が実施し易くなる傾向にあるため好ましい。
無機材としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、抽出が容易である点から、シリカが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と無機材との比率は、良好な隔離性を得る観点から、これらの合計質量に対して無機材が3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、高い強度を確保する観点から、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
次に、溶融混練物をシート状に成形してゲル状シートを得る。押出機により溶融混練を行う場合には、ポリオレフィン組成物の押出速度(すなわち、押出機の吐出量Q:kg/時間)と押出機のスクリュー回転数N(rpm)との比(Q/N、単位:kg/(h・rpm))が、好ましくは0.1以上7.0以下、より好ましくは0.5以上6.0以下、さらに好ましくは1.0以上5.0以下である。0.1以上7.0未満のQ/Nの条件下で溶融混練を行うと、樹脂と相分離した流動パラフィンがより分散し易くなるために、孔構造が緻密になり、高強度化できる傾向にある。
シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導の効率が高いため、金属製のロールを用いることが好ましい。また、押出したゲル状シートを金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むことは、熱伝導の効率がさらに高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるためより好ましい。
溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のキャストクリアランスを制御して、得られる微多孔膜の(圧縮前の)平均膜厚を上記で説明された数値範囲内に調整するという観点から、ロール間距離は200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。また、薄膜を得て、かつ面配向及び結晶性を高めて圧縮性を改善するのに必要な延伸倍率を達成するという観点から、キャスト厚みは、500μm~2200μmであることが好ましく、700μm~2000μmであることが好ましい。
また、押し出されたシート状成形体又はゲル状シートを圧延してもよい。圧延は、例えば、ロール等を使用した方法にて実施することができる。圧延を施すことにより、特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は1倍を超えて3倍以下であることが好ましく、1倍を超えて2倍以下であることがより好ましい。圧延倍率が1倍を超えると、面配向が増加し、最終的に得られる膜強度が増加する傾向にある。圧延倍率が3倍以下であると、表層部分と中心内部の配向差が小さく、膜の厚さ方向に均一な多孔構造を形成することができる傾向にある。
[二軸延伸工程(B)]
工程(B)では、工程(A)で得られたゲル状シートを延伸する。工程(B)は、シートから孔形成材を抽出する工程(C)の前に行う。工程(B)では、ゲル状シートの延伸処理は、ポリオレフィン微多孔膜の強度をコントロールする観点から、MDとTDに少なくとも1回ずつ(すなわち、二軸延伸により)行い、延伸後に延伸時の応力を緩和する目的で、熱固定を行う。
延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。中でも、幹構造が面内で等方性になり易く、衝突試験時に応力が等方分散されることにより衝突安全性が良好になるという観点から、同時二軸延伸が好ましい。同時二軸延伸とは、MD延伸とTD延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、MD及びTDの延伸が独立して施される延伸方法をいい、MD又はTDに延伸が為されているときは、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。
工程(B)のMD延伸では、延伸配向により膜を高強度化することに加えて、結晶性を高めることで圧縮性を向上させることができるという観点および微多孔膜の孔径と透気度の両立の観点から、MD延伸倍率は、5倍以上であることが好ましく、6倍以上であることがより好ましい。一方で、延伸倍率を高くすることで結晶融点が上昇し、シャットダウン温度が上昇するのを抑制するという観点では、MD延伸倍率は9倍以下であることが好ましく、8倍以下であることがより好ましく、7倍以下であることが最も好ましい。また、高分子量の樹脂でさえも均一に応力を付加して、得られる膜の透過性と透気度分布を良好にするという観点から、MD延伸温度は、115℃以上140℃以下であることが好ましく、120℃以上130℃以下であることがより好ましい。
工程(B)のTD延伸では、延伸配向により膜を高強度化することに加えて、結晶性を高めることで圧縮性を向上させることができるという観点および膜の孔径またはパームポロ平均流量径を低くする観点から、TD延伸倍率は、5倍以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。一方で、延伸倍率を高くすることで結晶融点が上昇し、シャットダウン温度が上昇するのを抑制するという観点では、TD延伸倍率は9倍以下であることが好ましく、8倍以下であることがより好ましく、7倍以下であることが最も好ましい。また、高分子量の樹脂でさえも均一に応力を付加して、得られる膜の透過性と透気度分布を良好にするという観点から、TD延伸温度は、115℃以上140℃以下であることが好ましく、120℃以上130℃以下であることがより好ましい。
工程(B)では、得られる微多孔膜の収縮を抑制して均一な孔径分布を可能にし、孔径、パームポロ平均流量径、透気度などを上記で説明された範囲内に調整するという観点から、理論に拘束されることを望まないが、熱固定係数に対する延伸係数の比(延伸係数/熱固定係数)を3.5以下にすることが好ましく、3.0以下にすることがより好ましい。延伸係数は、延伸温度に延伸風速、延伸工程での膜の滞留時間を乗じることにより得られる値であり、20000℃・m~50000℃・mの範囲内にあることが好ましく、30000℃・m~50000℃・mの範囲内にあることがより好ましい。熱固定係数は、熱固定温度に熱固定風速、熱固定工程での膜の滞留時間を乗じることにより得られる値であり、5000℃・m~14000℃・mの範囲内にあることが好ましく、6000℃・m~14000℃・mの範囲内にあることがより好ましい。
[抽出工程(C)]
工程(C)では、シート状成形体から孔形成材を除去して多孔膜を得る。孔形成材を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。孔形成材を抽出する方法は、バッチ式と連続式のいずれであってもよい。多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬及び乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、多孔膜中の孔形成材残存量は、多孔膜全体の質量に対して1質量%未満であることが好ましい。
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒であり、孔形成材に対して良溶媒であり、かつ沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。また、孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を抽出溶剤として用いることができる。
[熱固定工程(D)]
熱固定工程(D)では、ポリオレフィン微多孔膜の収縮を抑制するために、工程(C)の可塑剤抽出後に、熱固定(HS)を目的として微多孔膜の熱処理を行う。多孔膜の熱処理としては、物性の調整を目的として、所定の温度の雰囲気及び所定の延伸倍率で行う延伸操作、並びに/又は、延伸応力の低減を目的として、所定の温度の雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作が挙げられる。これらの熱処理は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。なお、可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作などを含む熱固定は、TDに行うことが好ましい。
工程(D)の延伸倍率は、さらなる高強度かつ高気孔率または低透気度な微多孔膜が得られる観点で、1.7倍以上であることが好ましく、1.8倍以上がより好ましく、2.0倍以上が最も好ましい。なお、本明細書でいう延伸倍率とは、熱固定工程における延伸時の最大寸法(mm)を、延伸機入口での膜の幅方向の寸法(mm)で除した値のことを言う。
工程(D)の熱固定温度は、得られる微多孔膜の気孔率、パームポロ平均流量径、および透気度を上記で説明された数値範囲内に調整するという観点、ならびに微多孔膜の孔径と透気度の両立の観点から、115℃以上130℃以下であることが好ましく、118℃以上127℃以下であることがより好ましく、120℃以上125℃以下であることが更に好ましい。
工程(D)のTD延伸操作は、さらなる高強度かつ高気孔率または低透気度な微多孔膜が得られる観点で、TD延伸温度が、好ましくは110℃以上150℃以下、より好ましくは115℃以上140℃以下、更に好ましくは120℃以上135℃以下になるように行われる。
工程(D)の緩和操作は、延伸操作後の膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和操作は、長手方向と幅方向の両方向、又は長手方向と幅方向の片方だけで行ってよい。
パームポロ平均流量径と透気度のバランスを良化させる観点、および曲路率と透気度とを上記で説明された数値範囲内に調整するという観点では、緩和率は0.90以上であることが好ましく、0.92以上であることがより好ましく、0.95以上であることが更に好ましい。なお、緩和率の上限は1.00で良い。なお、本明細書でいう緩和率とは、熱固定工程の延伸出口での幅方向の寸法(mm)を熱固定工程における延伸時の最大寸法(mm)で除した値のことを言う。
工程(D)の緩和温度は、得られる微多孔膜のパームポロ平均流量径と透気度のバランスを良化させる観点、およびTD熱収縮低減の観点から、115℃以上130℃以下であることが好ましく、118℃以上127℃以下であることがより好ましく、120℃以上125℃以下であることが更に好ましい。
工程(D)の緩和時の歪速度%/secに対する延伸時の歪速度%/sec(延伸歪速度%/sec/緩和歪速度%/sec)が10以上であると、理論に拘束されることを望まないが、比較的小孔径と低透気度を両立することが出来る。したがって、出力特性を良化させる観点で、緩和時の歪速度%/secに対する延伸時の歪速度%/sec(延伸歪速度%/sec/緩和歪速度%/sec)が10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、15以上であることが最も好ましい。なお、歪速度とは、特定の処理に供される前後における物体の単位時間当たりの変化率を意味する。
<多層多孔膜の製造方法>
本実施形態に係る多層多孔膜の製造方法は、特に限定されないが、一例として、上記で製造されたポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、多機能層、無機多孔層、及び熱可塑性樹脂層から成る群から選択される少なくとも一層を配置する工程を含むことができる。多機能層、無機多孔層又は熱可塑性樹脂層の配置方法は、特に限定されず、例えば、これらのいずれかの層の構成成分を含む塗工液を、ポリオレフィン微多孔膜の片面若しくは両面に、又はポリオレフィン微多孔膜上に形成された層上に、塗工する方法が挙げられる。塗工層の厚みは、0.1~10μmであることが好ましく、0.2~7μmであることがより好ましく、0.3~4μmであることが更に好ましい。また、塗工層の数は、0~5層であることが好ましく、0~3層であることがより好ましい。塗工層の厚みを適正に制御することで、電池容量を高めることが出来る。無機塗工は、基材の収縮を抑制して電池の安全性を高める効果があり、有機塗工は、電極との密着性を高め加工性を高める効果がある。無機成分と有機ポリマー成分を混合する事で、両方の特徴をバランスよく達成する事が出来る。
塗工方法については、所望の塗工パターン、塗工膜厚、及び塗工面積を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、インクジェット塗布法等が挙げられる。
塗工液の媒体としては、水、又は水と水溶性有機媒体の混合溶媒が好ましい。水溶性有機媒体としては、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノール等を挙げることができる。
塗工に先立ち、ポリオレフィン微多孔膜に表面処理を施しておくと、塗工液を塗工し易くなると共に、ポリオレフィン微多孔膜と塗工層の接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗工後に、ポリオレフィン微多孔膜の融点以下の温度での乾燥、減圧乾燥、溶媒抽出などにより、塗工膜から溶媒を除去してよい。
代替的には、ポリオレフィン微多孔膜と、多機能層、無機多孔層、及び熱可塑性樹脂層から成る群から選択される少なくとも一層とを、別々に製造しておいて、貼付、積層、接着、融着などにより両者を統合してよい。
<非水系二次電池用セパレータ、及び非水系二次電池>
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜と多層多孔膜は、例えば非水系二次電池等において、具体的には非水系二次電池用セパレータとして、使用されることができる。非水系二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、リチウムイオン二次電池に組み込まれることによって、リチウムイオン二次電池の熱暴走を抑制するだけでなく、易収縮性電極、高容量電極、又はSi含有負極を備える場合でさえも、高出力特性及び高サイクル特性などの電池特性と安全性とを両立することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。特に断りがない限り、各測定は室温23℃±2℃、湿度40%±5%の環境下で行なった。
[粘度平均分子量]
ASTM-D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η](dl/g)を求めた。
ポリオレフィン微多孔膜およびポリエチレンについては、次式により算出した。
[η]=6.77×10-4Mv0.67
ポリプロピレンについては、次式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10-4Mv0.80
[重量平均分子量と数平均分子量]
Waters社製 ALC/GPC 150C型(商標)を用い、標準ポリスチレンを以下の条件で測定して較正曲線を作成した。また、下記各ポリマーについても同様の条件でクロマトグラムを測定し、較正曲線に基づいて、下記方法により各ポリマーの重量平均分子量を算出した。
カラム :東ソー製 GMH-HT(商標)2本+GMH-HTL(商標)2本
移動相 :o-ジクロロベンゼン
検出器 :示差屈折計
流速 :1.0ml/min
カラム温度:140℃
試料濃度 :0.1wt%
(ポリエチレン及びポリプロピレンの重量平均分子量と数平均分子量)
得られた較正曲線における各分子量成分に、0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)又は0.64(ポリプロピレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=26.4/41.3)を乗じることにより、ポリエチレン換算又はポリプロピレン換算の分子量分布曲線を得て、重量平均分子量と数平均分子量を算出した。
(樹脂組成物又は樹脂微多孔膜の重量平均分子量と数平均分子量)
最も質量分率の大きいポリオレフィンのQファクター値を用い、その他はポリエチレンの場合と同様にして重量平均分子量と数平均分子量を算出した。
[密度(g/cm)]
JIS K7112:1999に従い、密度勾配管法(23℃)により、試料の密度を測定した。
[目付(g/m)]
目付は、単位面積(1m)当たりのポリオレフィン微多孔膜の重量(g)である。1m×1mにサンプリング後、島津製作所製の電子天秤(AUW120D)にて重量を測定した。なお、1m×1mにサンプリングできない場合は、適当な面積に切り出して重量を測定した後、単位面積(1m)当たりの重量(g)に換算した。
[微多孔膜の平均膜厚(μm)]
東洋精機製の微少測厚器(タイプKBN、端子径Φ5mm)を用いて、雰囲気温度23±2℃で厚みを測定した。なお、厚みを測定する際には微多孔膜を10cm×10cmにサンプリング後、重ねて15μm以上になるように複数枚微多孔膜を重ねて、9か所を測定して平均を取り、その平均値を重ねた枚数で割った値を1枚の厚みとする。
[気孔率(%)]
5cm×5cm四方、または10cm×10cm四方の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、前記膜厚の測定結果より、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積-質量/混合組成物の密度)/体積×100
なお、混合組成物の密度は、用いたポリオレフィン樹脂と他の成分の各々の密度と混合比より計算して求められる値を用いた。
[透気度(秒/100cm)]
旭精工株式会社の王研式透気度測定機「EGO2」で透気度を測定した。
透気度の測定値は、膜の幅方向(TD)に沿って両端から中央に向かって全幅の10%内側の地点2点と中央1点との計3点の透気度を測定し、それらの平均値を算出した値である。
[圧縮プレス試験]
厚さ0.8mmのゴム製の緩衝材、厚さ0.1mmのPETフィルム、微多孔膜2枚、上記PETフィルム、上記緩衝材の順序で積層し、得られた積層体を静置し、積層体の片側の緩衝材面に対して圧力を掛けることにより圧縮試験を行なった。圧縮試験は、プレス機を用いて、温度30℃及び圧縮時間10分間の条件下、2.5MPaの圧力で行われた。また、除荷してから1時間後に積層体から微多孔膜を取り外し、圧縮後の透気度を測定した。
[パームポロ平均流量径(μm)]
ハーフドライ法に準拠し、パームポロメータ(Porous Materials,Inc.社:CFP-1500AE)を用い、パームポロ平均流量径(μm)を測定した。浸液には同社製のパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」、表面張力15.6dyn/cm)を用いた。乾燥曲線、及び湿潤曲線について、印加圧力、及び空気透過量の測定を行い、得られた乾燥曲線の1/2の曲線と湿潤曲線とが交わる圧力PHD(Pa)から、次式により平均孔径dHD(μm)を求め、パームポロ平均流量径(μm)とした。
dHD=2860×γ/PHD
<バブルポイント最大孔径(μm)>
バブルポイント法に準拠し、パームポロメータ(Porous Materials,Inc.社:CFP-1500AE)を用い、最大孔径(μm)を測定した。浸液には同社製のパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」、表面張力15.6dyn/cm)を用いた。湿潤曲線について、印可圧力、及び空気透過量の測定を昇圧モードで行い、得られた湿潤曲線における最初のバブルが発生した圧力PBP(Pa)から、次式により最大孔径dBP(μm)を求め、バブルポイント最大孔径とした。
dBP=2860×γ/PBP
[気液法から求めた多孔膜の曲路率]
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さいときはポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。この場合、多孔膜の平均孔径d(μm)と曲路率τ(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力P(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3P)×10
τ=(d×(ε/100)×ν/(3L×P×Rgas))1/2
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求めた。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10-4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm/(cm・sec・Pa))から次式を用いて求めた。
liq=透水度/100
なお、透水度は次のように求めた。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめエタノールに浸しておいた多孔膜をセットし、該膜のエタノールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10-2kg/mol)から次式を用いて求めた。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
[シャットダウン温度]
厚さ10μmのNi箔を2枚(A,B)用意し、一方のNi箔Aを縦15mm、横10mmの長方形部分を残してテフロン(登録商標)テープでマスキングするとともに他方のNi箔Bには測定試料のセパレータを置き、セパレータの両端をテフロン(登録商標)テープで固定した。このNi箔Bを電解液1mol/Lのホウフッ化リチウム溶液(溶媒:プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート/γ-ブチルラクトン=体積比1/1/2の混合溶媒)に浸漬してセパレータに電解液を含浸させた後、Ni箔(A,B)を貼り合わせ、2枚のガラス板で両側をクリップで押さえた。このようにして作製したNi箔電極を25℃のオーブンに入れ、200℃まで2℃/minで昇温した。この際のインピーダンス変化を電気抵抗測定装置「AG-4311」(安藤電気社製)を用いて、1V、1kHzの条件下で測定した。この測定においてインピーダンス値が1000Ωに達した温度をシャットダウン温度(℃)とした。
[耐電圧測定]
ポリオレフィン微多孔膜の幅方向の中央1点について、MD10cm×TD10cmに切り出し、直径5mmのアルミニウム板で挟み、菊水電子工業製の耐電圧測定機(TOS9201)でこれの測定を実施した。測定条件については、直流電圧を初電圧0Vからスタートし、100V/secの昇圧速度で電圧を掛け、電流値が0.2mA流れた時の電圧値を微多孔膜の耐電圧測定値とした。なお、15mm間隔にMD5点×TD5点の合計25点測定し、その平均値を耐電圧測定値とした。
また、単位目付当たりの耐電圧は以下のように計算した。単位膜厚当たりの耐電圧[V/(g/m)]=耐電圧[V]/目付[g/m
[突刺強度および目付換算突刺強度]
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES-G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで微多孔膜を固定した。次に固定された微多孔膜の中央部を、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、室温23℃及び湿度40%の雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(gf)を測定した。突刺試験の測定値は、膜のTDに沿って、両端から中央に向かって全幅の10%内側の地点2点と中央1点との計3点を測定し、それらの平均値を算出した値である。
目付換算突刺強度は以下の式で求める。
目付換算突刺強度[gf/(g/m)]=突刺強度[gf]/目付[g/m
ここで、ポリオレフィン微多孔膜基材に少なくとも1つ以上の層を設けた多層多孔膜の突刺強度および目付換算突刺強度に関しては、樹脂の強度および目付当たりの強度を評価する観点から、ポリオレフィン微多孔膜基材の突刺強度および目付換算突刺強度をもって特性を評価した。
[引張破断強度(MPa)とMD/TD引張破断強度比]
JIS K7127に準拠し、島津製作所製の引張試験機、オートグラフAG-A型(商標)を用いて、MD及びTDサンプル(形状;幅10mm×長さ100mm)について測定した。引張試験機のチャック間を50mmとし、サンプルの両端部(各25mm)の片面にセロハン(登録商標)テープ(日東電工包装システム(株)製、商品名:N.29)を貼ったものを用いた。更に、試験中のサンプル滑りを防止するために、引張試験機のチャック内側に、厚み1mmのフッ素ゴムを貼り付けた。
なお、測定は、温度23±2℃、チャック圧0.40MPa、及び引張速度100mm/minの条件下で行った。
引張破断強度(MPa)は、ポリオレフィン微多孔膜の破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除することで求めた。
引張破断強度をMDとTDのそれぞれについて求めて、MD引張破断強度とTD引張破断強度の比(MD/TD引張破断強度比)も算出した。
[電池試験]
a.正極の作製
正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM111)、並びに導電材としてカーボンブラックを、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN-メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。得られた成形体を57.0mm幅にスリットして正極を得た。
b.負極の作製
負極活物質として人造グラファイト、及びバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩とスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスとを、精製水に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる銅箔にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。得られた成形体を58.5mm幅にスリットして負極を得た。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1mol/Lとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。
d.電池組立
正極、実施例又は比較例で得られた多孔膜及び負極を捲回した後、常法により捲回電極体を作製し、外装缶に入るようにプレス機にてプレスした。なお、捲回数はポリオレフィン微多孔膜の厚み及びスプリングバックの程度によって調整した。得られた巻回電極体の最外周端部を絶縁テープの貼付により固定した。負極リードを電池缶に、正極リードを安全弁にそれぞれ溶接して、巻回電極体を電池缶の内部に挿入した。その後、非水電解液を電池缶内に5g注入し、ガスケットを介して蓋を電池缶にかしめることにより、幅42.0mm、高さ63.0mm、厚さ10.5mmの角型二次電池を得た。この角型二次電池を25℃の雰囲気下、0.2C(定格電気容量の1時間率(1C)の0.2倍の電流)の電流値で電池電圧4.0Vまで充電し、到達後4.0Vを保持するようにして電流値を絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。続いて0.2Cの電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。
[常温でのレート特性試験(25℃)]
上記d.と同様にして組み立てて評価のために選定された角型二次電池について、30℃・3MPa加圧の環境下で、1Cの定電流で充電し、4.0Vに到達した後、4.0Vの定電圧で合計3時間充電した。充電後の電池を、25℃の雰囲気下の恒温状態で放電終止電圧3Vまでの1C放電容量と20C放電容量を測定し、20C容量/1C容量の割合を出力特性値とした。なお、下記基準に即してレート特性を評価した。
A:出力特性値が50%以上。
B:出力特性値が45%以上50%未満。
C:出力特性値が40%以上45%未満。
D:出力特性値が35%以上40%未満。
E:出力特性値が35%未満。
[低温でのレート特性(-20℃)]
上記d.と同様にして組み立てて評価のために選定された角型二次電池について、30℃・3MPa加圧の環境下で、1Cの定電流で充電し、4.0Vに到達した後、4.0Vの定電圧で合計3時間充電した。充電後の電池を-20℃の雰囲気下の恒温状態で放電終止電圧3Vまでの1C放電容量と20C放電容量を測定し、20C容量/1C容量の割合を出力特性値とした。なお、下記基準に即してレート特性を評価した。
A:出力特性値が45%以上。
B:出力特性値が40%以上45%未満。
C:出力特性値が35%以上40%未満。
D:出力特性値が30%以上35%未満。
E:出力特性値が30%未満。
[加熱試験]
後述される衝突試験と同様にして組み立てて評価のために選定された電池を用いて、25℃の環境下で、角型二次電池を1Cの定電流で充電し、4.0Vに到達した後、4.0Vの定電圧で合計3時間充電した。充電後の電池を室温から所定の温度まで5℃/分で昇温し、所定の温度で60分間放置し、発火状況を確認した。なお、電池を3個作製し、下記基準に即して結果を評価した。
A:136℃にて、いずれの電池も発火しなかったもの。
B:134℃にて、いずれの電池も発火しなかったもの。
C:132℃にて、いずれの電池も発火しなかったもの。
D:130℃にて、いずれの電池も発火しなかったもの。
E:130℃にて、少なくとも1つの電池が発火したもの。
[衝突試験]
衝突試験では、試験台上に配置された角型電池サンプルの上に、サンプルと丸棒(φ=15.8mm)が概ね直交するように、丸棒を置いて、丸棒から61cmの高さの位置から、丸棒の上面へ18.2kgの錘を落すことにより、サンプルに対する衝撃の影響を観察する。
25℃の環境下で、上記項目d.と同様の方法で得た角型二次電池を1Cの定電流で充電し、4.0Vに到達した後、4.0Vの定電圧で合計3時間充電した。次に、25℃の環境下で、二次電池を平坦な面に横向きに置き、二次電池の中央部を横切るように、直径15.8mmのステンレスの丸棒を配置した。丸棒は、その長軸がセパレータの長手方向(MD)と平行となるように配置した。二次電池の中央部に配置した丸棒から二次電池の縦軸方向に対して、直角に衝撃が加わるように、18.2kgの錘を61cmの高さから落下させた。衝突後、3秒後と3分後に二次電池の表面温度を測定した。5セルずつ試験を行い、下記基準に即して評価した。本評価項目については、AとBとCを合格の基準とした。なお、二次電池の表面温度とは、二次電池の外装体の底側から1cmの位置を熱電対(K型シールタイプ)で測定した温度である。
A:全てのセルにおいて、表面温度が30℃以下。
B:全てのセルにおいて、表面温度が50℃以下。
C:全てのセルにおいて、表面温度が70℃以下。
D:全てのセルにおいて表面温度が100℃以下。
E:1個以上のセルで表面温度が100℃を超過、又は発火。
[微短絡試験]
衝突試験と同様にして組み立てて評価のために選定された電池を用いて、25℃の環境下で、終止電池電圧4.0Vの条件下で3時間定電流定電圧(CCCV)充電した後、4.0V定電圧充電を2時間継続する手法により、電池電圧を4.0Vに調整する。続いて25℃に設定した恒温槽内で、電池を10kPaの圧力で加圧した状態で1時間静置し、電圧が3.7V以下に低下したものを微短絡とする。電池を10個作製し、微短絡した電池の個数で下記基準に即して4.0V微短絡検査試験の結果を評価した。
A:微短絡した電池の個数が0個
B:微短絡した電池の個数が1個
C:微短絡した電池の個数が2~4個。
D:微短絡した電池の個数が5~7個。
E:微短絡した電池の個数が8個以上。
[実施例1]
<ポリオレフィン微多孔膜の製造>
ポリオレフィン微多孔膜を、以下の手順で作製した。
(A)表1に示すように、Mv90万のポリエチレン25質量部と、Mv30万のポリエチレン75質量部をドライブレンドし、さらに酸化防止剤として0.3質量部のテトラキス-(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンとを配合して原料組成物を得た。次に、得られた組成物を、二軸押出機にフィーダーを介して投入した。次に、孔形成材として流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.90cSt)を、樹脂原料+流動パラフィンの合計を100質量部として、表1に示される「押出成分中のポリマー成分の割合(PC)」が31%となるように、サイドフィードで押出機に注入し、混錬温度が200℃で混練した後押出機先端に設置したTダイから押出した。
(B)押出後、キャストロールで冷却固化させ、シートを成形した。このシートを同時二軸延伸機で、MD7倍×TD6倍に延伸し、延伸係数/熱固定係数の比率を3.0とした。
(C)延伸後、塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。
(D)その後、シートを乾燥し、テンター延伸機により幅方向(TD)に1.8倍延伸した。その後、この延伸シートを124℃の条件で緩和率が0.96になるように、幅方向(TD)に緩和する熱処理を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。なお、緩和時の歪速度%/secに対する延伸時の歪速度%/sec(延伸歪速度%/sec/緩和歪速度%/sec)は15となるようにした。
(E)得られたポリオレフィン微多孔膜を上記方法に従って評価し、さらにポリオレフィン微多孔膜を備える電池も評価した。
[実施例2~22、及び比較例1~12]
表1及び2に示される樹脂原料と製造条件と塗工条件を使用したこと以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン微多孔膜及びその塗工膜を得て、評価した。評価結果を表3及び4に示す。
実施例20-22においては、得られたポリオレフィン微多孔膜について、更に、表1に示される塗工厚になるように、第1層及び/又は第2層をそれぞれポリオレフィン微多孔膜に塗工した。
なお、実施例20-22では、無機塗工には無機フィラーとしてベーマイト、バインダとしてアクリルラテックスおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムとを用い、有機塗工にはアクリルラテックスを用い、有機無機混合塗工には無機フィラーとしてアルミナ、バインダとしてPVdFを用いた。基材への塗工においては、コロナ放電処理後の基材表面にグラビアコーターを用いて塗工液を塗工した後、塗布液を乾燥し、塗工層を有する実施例20-22のセパレータを得た。実施例20-22の評価結果を表3に示す。

Claims (12)

  1. パームポロ平均流量径が、0.055μm以下であり、かつ、透気度が60sec/100cm以下であり、かつ、シャットダウン温度が143℃以下である、ポリオレフィン微多孔膜。
  2. 前記ポリオレフィン微多孔膜の粘度平均分子量(Mv)が、200,000以上500,000以下である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  3. 目付1g/mに換算した耐電圧が0.22kV/(g/m)以上である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. 気孔率が、40%以上75%以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. 30℃、2.5MPaで10分間プレスした後の透気度が、20sec/100cm以上100sec/100cm以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  6. 膜厚に換算した透気度が、5.0(sec/100cm)/μm以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  7. パームポロ平均流量径(μm)と透気度(sec/100cm)の積が、3.0(sec/100cm)μm以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  8. 曲路率が1.1~1.8である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  9. 目付に換算した突刺強度が、60.0gf/(g/m)以上110.0gf/(g/m)以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  10. MD、TDともに、引張強度が1000kgf/cm以上である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  11. バブルポイント最大孔径が0.060μm以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  12. バブルポイント最大孔径とパームポロ平均流量径の差が0.007μm以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
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