JP2023159036A - 電子写真用部材及び熱定着装置 - Google Patents

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茂夫 黒田
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Yuji Kitano
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Abstract

【課題】プリントスピードの高速化や立上げ時間の短縮に求められる熱伝導性、低体積比熱、を満足し、また、剥離放電跡を抑制するために有効な高体積抵抗の弾性層を有する熱定着装置用の定着部材として使用する電子写真用部材を提供する。【解決手段】該電子写真用部材は、エンドレス形状を有する電子写真用部材であって、基体と、該基体の外周面上の弾性層と、を有し、該弾性層は、シリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散された金属ケイ素フィラーを含み、該弾性層の厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像、及び、該弾性層の厚み-軸方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像の各々における該フィラーが占める面積割合の平均値が42%以下であり、該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλ、体積抵抗率の常用対数値をρvとしたとき、λが1.30W/(m・K)以上、ρvが9.0LOGΩ・cm以上、である。【選択図】図1

Description

本開示は、複写機、プリンター等の電子写真画像形成装置に用いられる電子写真用部材及び熱定着装置に関するものである。
電子写真画像形成装置の熱定着装置においては、加熱及び定着のための部材と該部材(加熱部材又は定着部材と言うことがある)に対向配置された加圧部材とで圧接部が構成されている。未定着トナー像を保持した被記録材が、この圧接部に導入されると、未定着のトナーが加熱・加圧され、該トナーが溶融され、被記録材に当該画像が定着される。加熱部材は、被記録材上の未定着トナー像が接する部材であり、加圧部材は、加熱部材に対向配置される部材である。電子写真用部材の形状としては、ローラ形状やエンドレスベルト形状を有する回転可能なものがある。これらの電子写真用部材には、金属又は耐熱性樹脂等で形成された基体上に、例えば、架橋シリコーンゴムの如きゴムと、熱伝導性粒子とを含む弾性層を有するものが用いられている。
近年、プリントスピードの高速化や立上げ時間の短縮が増々進み、それに伴い加熱部材の弾性層には、その厚さ方向の熱伝導率のより一層の向上と、より一層の低熱容量化が求められてきている。特許文献1は、高熱伝導で低熱容量の弾性層として、熱伝導性粒子として金属ケイ素粉末を配合したシリコーンゴム組成物を使用した熱定着ロール及び定着ベルトを開示している。
しかしながら、弾性層の熱伝導率のより一層の向上のために弾性層中の金属ケイ素粉末の含有量を増やすほどに、弾性層の硬度が上昇し、弾性層の耐久性が低下していく。これは金属ケイ素粉末の含有量を増やすほどに、ゴム部の変形が大きくなり、熱伝導性粒子とゴムの界面でゴムが破壊され易くなるためであると考えられる。そこで、本発明者らは、特許文献2において、厚み方向に高い熱伝導率を有し、かつ、低硬度な定着部材を開示している。
特開2007-171946号公報 特開2019-215531号公報
IEEE Transactions on SYSTEMS, MAN AND CYBERNETICS, vol. SMC-9, No.1, Jan 1979, pp62-66)
本開示の少なくとも一つの態様は、厚さ方向の高い熱伝導率を有し、かつ、剥離放電に起因する画像欠陥の発生を防止し得る電子写真用部材の提供に向けたものである。また、本開示の少なくとも一つの態様は、高品位な電子写真画像を安定的に形成することのできる熱定着装置の提供に向けたものである。
本開示の少なくとも一つの態様によれば、エンドレス形状を有する電子写真用部材であって、基体と、該基体の外周面上の弾性層と、を有し、該弾性層は、シリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散された金属ケイ素フィラーを含み、該弾性層の厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像、及び、該弾性層の厚み-軸方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像の各々における該フィラーが占める面積割合の平均値が42%以下であり、該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλ、体積抵抗率の常用対数値をρvとしたとき、λが1.30W/(m・K)以上、ρvが9.0LOGΩ・cm以上、である電子写真用部材が提供される。
また、本開示の少なくとも一つの態様によれば、
加熱部材と、該加熱部材に対向して配置されている加圧部材とを有する熱定着装置であって、該加熱部材が、上記の電子写真用部材である熱定着装置が提供される。
本開示の一態様によれば、プリントスピードの高速化や立上げ時間の短縮に求められる熱伝導性、低体積比熱、を満足し、また、剥離放電跡を抑制するために有効な高体積抵抗の弾性層を有する電子写真用部材が提供される。また、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を形成することのできる熱定着装置を得ることができる。
本開示の2つの態様に係る電子写真用部材の構成を説明する概略断面図であり、(a)は定着ベルトの態様であり、(b)は定着ローラの態様を示す概略断面図である。 コロナ帯電器の俯瞰図と断面図である。 ベルト形態の電子写真用部材の弾性層の第1断面と第2断面を示す図である。 弾性層中のフィラーの配列度及び配列角度の確認方法を示す模式図である。 表層を積層する工程の一例の模式図である。 定着ベルト-加圧ベルト方式の熱定着装置の一例の断面模式図である。 定着ベルト-加圧ローラ方式の熱定着装置の一例の断面模式図である。
本明細書中、数値範囲を表す「XX以上YY以下」及び「XX~YY」との記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味している。また、数値範囲が段階的に記載されている場合においては、各数値範囲の上限及び下限の任意に組み合わせることを開示しているものである。
本発明者らは、特許文献2に係る定着部材について更なる検討を行ったところ、当該定着部材について新たな課題を見出すに至った。すなわち、当該定着部材は、弾性層中において、円相当径が5μm以上の大粒径の金属ケイ素フィラー(以降、「第1のフィラー」ともいう)の間において、円相当径が5μm未満の小粒径の金属ケイ素フィラー(以降、「第2のフィラー」ともいう)を厚み方向に配列させることで、弾性層中のフィラーの総量を抑えつつ、厚み方向の高い熱伝導率を発現させている。しかしながら、厚み方向に配列してなる金属ケイ素フィラーによって形成された伝熱パスが、導電パスとしても機能し、弾性層の体積抵抗率が低くなる傾向がみられた。そして、このような定着部材を、例えば低温低湿環境下において、電子写真画像の形成に供したところ、剥離放電に起因する画像欠陥が生じる場合があった。特許文献2に係る、小粒径フィラーを配列させた定着部材が、低温低湿環境下において、剥離放電に起因する画像欠陥を生じさせる場合がある理由は明らかでないが、以下のように推測される。すなわち、体積抵抗率が低い定着部材は、定着工程における摩擦によっても表面が帯電されにくい。すなわち、表面のネガ性が低い。このような表面に対して、剥離放電が発生した場合、体積抵抗が高い定着部材と比較して、当該表面の剥離放電が発生した部分のポジ性が強くなり、そこにネガに帯電したトナーが、より吸着されやすくなるためであると考えられる。
本発明者らは、弾性層の体積抵抗率を高めるために、金属ケイ素以外の体積抵抗率が高い絶縁性の粉体、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を更に追加して添加すること検討した。しかしながら、このような粉体の追加の添加により、弾性層中のフィラーの総量が多くなり、弾性層の柔軟性や耐久性が相対的に低下し、また、金属ケイ素フィラーを用いたことによる弾性層の低体積比熱性も損なう場合があった。
そこで、本発明者らは、低体積比熱である金属ケイ素フィラーを弾性層の厚み方向に配列させて弾性層の厚さ方向の熱伝導率を高めつつ、弾性層の体積抵抗率を低下させないようにするための検討を重ねた。その結果、表面に「バウンドラバー」や「酸化膜」を形成した金属ケイ素フィラーを用いることが、上記の弾性層の形成に資することを見出した。
本開示の一実施形態に係る電子写真用部材について、熱定着装置の定着部材としての具体的な構成に基づき以下に詳細に説明する。
本開示の少なくとも一つの態様に係る電子写真用部材は、エンドレス形状を有し、基体と、該基体の外周面上の弾性層と、を有する。
該弾性層は、シリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散された金属ケイ素フィラーを含み、該弾性層の厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像、及び、該弾性層の厚み-軸方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像の各々における該フィラーが占める面積割合の平均値が42%以下である。
そして、該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλ、体積抵抗率をρvとしたとき、
λが1.30W/(m・K)以上、ρvが9.0LOGΩ・cm以上、である。
(1)定着部材の構成概略
本実施形態の定着部材の詳細について図面を用いて説明する。
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態に係るエンドレス形状を有する定着部材を示す概略断面模式図である。具体的には、エンドレスベルト形状を有する定着部材の一例を図1(a)に示す。また、ローラ形状を有する定着部材の一例を図1(b)に表す。図1(a)及び図1(b)において、符号3は基体を示し、符号4は基体3の外周面を被覆しているシリコーンゴムを含む弾性層を示す。なお図1においては、半径方向が弾性層の厚み方向となる。
このように、本実施形態に係る定着部材は、基体3および基体3の上のシリコーンゴムを含む弾性層4を有する。なお、これらの図に示すように、定着部材はシリコーンゴムを含む弾性層4の上に表層6を有することができる。また、シリコーンゴムを含む弾性層4と表層6との間に、接着層5を有することもでき、この場合、表層6は、シリコーンゴムを含む弾性層4の外周面に接着層5により固定される。図1に示す定着部材はいずれもエンドレス形状を有する。エンドレス形状とは、周方向に回転移動することで、同じ部位が何度も(エンドレスに)定着ニップ部を通過できる形状である。
(2)定着部材の基体
定着部材が図1(a)に示すようなベルト形態である場合、基体3には、電鋳ニッケルスリーブやステンレススリーブなどの金属、ポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いることができる。特に熱定着装置が電磁誘導加熱方式の場合には、発熱効率の観点からニッケルや鉄を主成分とした合金が用いられる。基体3の外面(弾性層側の面)には、弾性層との接着性を向上させる機能を付与するための層を設けることができる。即ち、弾性層4は、基体3の外周面上に設けられればよく、弾性層4と基体3との間に他の層を設けることができる。また、基体3の内面(上記外面とは反対側の面)には、耐摩耗性や潤滑性などの機能を付与するための層をさらに設けることができる。なお、ベルト形態である場合は、以下の製造工程中、スリーブの内部に中子を挿入して取り扱う。
定着部材が図1(b)に示すようなローラ形態である場合、基体3には、アルミニウム、鉄などの金属や該金属を含む合金からなる芯金を用いることができ、熱定着装置での加熱・加圧に耐える強度を有していればよい。図1(b)では、基体3として中実の芯金を用いているが、基体3には中空の芯金を用いてもよく、内部にハロゲンランプなどの熱源を有していてもよい。
(3)弾性層
弾性層4は、熱定着装置において定着ニップを確保するために定着部材に柔軟性を付与するための層である。なお、定着部材を、紙上のトナーと接する加熱部材として用いる場合には、弾性層は、加熱部材の表面が、紙の凹凸に追従し得るような柔軟性を付与するための層としても機能する。
弾性層は、下記要件(i)及び(ii)を満たす。
要件(i)
厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像、及び厚み-軸方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像の各々における該金属ケイ素フィラーが占める面積割合の平均値が42%以下である。
要件(ii)
厚み方向の熱伝導率をλ、体積抵抗率の常用対数値をρvとしたとき、λが1.30W/(m・K)以上、ρvが9.0LOGΩ・cm以上、である。
弾性層は、マトリックスとしてのシリコーンゴムと、該シリコーンゴム中に分散された金属ケイ素フィラーとを含む。このような弾性層は、例えば、弾性層4は、液状シリコーンゴムと、該液状シリコーンゴム中に分散された金属ケイ素フィラーとを少なくとも含む液状シリコーンゴム組成物の硬化物であることができる。
弾性層が、金属ケイ素フィラーを含むことによって、弾性層の低熱容量を維持しながら熱伝導率を向上させることができる。
シリコーンゴムで構成されるマトリックスは、弾性層の弾性を発現する機能を担う。シリコーンゴムは、非通紙部領域で温度240℃程度の高温になる環境においても柔軟性を保持できる高い耐熱性を有する。当該シリコーンゴムとしては、例えば、後述する付加硬化型の液状シリコーンゴムの硬化物を用いることができる。
付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物は、少なくとも下記成分(a)~(d)を含む:
成分(a):不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン;
成分(b):ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン;
成分(c):触媒;
成分(d):金属ケイ素フィラー
以下、各成分について説明する。
成分(a)
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンは、ビニル基の如き不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンであり、例えば、下記構造式(1)及び構造式(2)に示すものが挙げられる。
Figure 2023159036000002
構造式(1)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示す。また、構造式(1)中、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表し、ただし、Rのうちの少なくとも1つはメチル基を表し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を表す。
Figure 2023159036000003
構造式(2)中、nは正の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表し、ただし、Rのうちの少なくとも1つはメチル基を表し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を表す。
構造式(1)及び構造式(2)において、R及びRが表すことのできる、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基としては、例えば、以下の基を挙げることができる。・非置換炭化水素基
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)。
アリール基(例えば、フェニル基)。
・置換炭化水素基
置換アルキル基(例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-シアノプロピル基、3-メトキシプロピル基)。
構造式(1)及び構造式(2)で示されるオルガノポリシロキサンは、鎖構造を形成するケイ素原子に、直接結合したメチル基を少なくとも1つ有する。しかしながら、合成や取扱いが容易であることから、R及びRそれぞれの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR及びRがメチル基であることがより好ましい。
また、構造式(1)及び構造式(2)中の、R及びRが表すことのできる不飽和脂肪族基としては、例えば、以下の基を挙げることができる。すなわち、不飽和脂肪族基としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等を挙げることができる。これらの基の中でも、合成や取扱いが容易かつ安価で、架橋反応も容易に行われることから、R及びRはいずれもビニル基であることが好ましい。
成分(a)としては、成形性の観点から、粘度は1000mm/s以上50000mm/s以下であることが好ましい。1000mm/sより低いと弾性層に必要な硬度に調整するのが難しくなり、50000mm/sより高いと組成物の粘度が高くなりすぎて塗工が難しくなる。粘度(動粘度)は、JIS Z 8803:2011に基づき、毛管粘度計や回転粘度計等を用いて測定することができる。
成分(a)の配合量は、弾性層の形成に用いる液状シリコーンゴム組成物を基準として、耐久性の観点から55体積%以上、伝熱性の観点から65体積%以下とすることが好ましい。
成分(b)
ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンは、触媒の作用により、成分(a)の不飽和脂肪族基と反応し、硬化シリコーンゴムを形成する架橋剤として機能する。
成分(b)としては、Si-H結合を有するオルガノポリシロキサンであれば、いずれのものも用いることができる。特に、成分(a)の不飽和脂肪族基との反応性の観点から、1分子中における、ケイ素原子に結合した水素原子の数が平均3個以上のものが好適に用いられる。
成分(b)の具体例としては、例えば、下記構造式(3)に示す直鎖状のオルガノポリシロキサン及び下記構造式(4)に示す環状オルガノポリシロキサンを挙げることができる。
Figure 2023159036000004
構造式(3)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表す。
Figure 2023159036000005
構造式(4)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表す。
構造式(3)及び構造式(4)中のR及びRが表すことのできる不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基としては、例えば、上述した構造式(1)中のRと同様の基を挙げることができる。これらの中でも、合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が容易に得られることから、R及びRそれぞれの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR及びRがメチル基であることがより好ましい。
成分(c)
シリコーンゴムの形成に用いる触媒としては、例えば、硬化反応を促進するためのヒドロシリル化触媒を挙げることができる。ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金化合物やロジウム化合物などの公知の物質を用いることができる。触媒の配合量は適宜設定することができ、特に限定されない。
成分(d)
金属ケイ素フィラーは、例えば珪石を還元し、粉砕、分級することにより製造することができる。金属ケイ素フィラーは、単位体積あたりの熱容量が約1.7MJ/m・K程度であり、シリコーンゴム含有弾性層の熱物性向上のために多用されているアルミナの単位体積あたりの熱容量約3.0MJ/m・Kよりも小さい。また、金属ケイ素の熱伝導率は150W/(m・K)程度と高い。
金属ケイ素フィラーの粒径は体積平均粒径で1μm~20μmの範囲であることが好ましい。粒径が1μm以上であれば、製造が容易である上にシリコーンへの高充填がし易くなる。粒径20μm以下であれば、定着部材に加工した際に粗大な粒子の凹凸により画質が悪化することを抑制である。金属ケイ素フィラーの粒径は、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めることができる。
弾性層中における全フィラーの体積配合割合は、30~50体積%であることが好ましく、特には、35~42体積%であることが好ましい。弾性層中の全フィラーの体積配合割合がこの範囲であることによって、弾性層の引っ張り弾性率を1.20MPa以下に調整することが容易となる。なお、弾性層の引っ張り弾性率の好ましい範囲としては、0.20~1.20MPaである。
本開示に係る弾性層においては、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、金属ケイ素フィラー以外のフィラーを弾性層に含有させることができる。しかしながら、弾性層の厚さ方向の高い熱伝導率と、弾性層の高い柔軟性の維持と、弾性層の高い体積抵抗率と、を高いレベルで満たすようにするためには、全フィラーにおける金属ケイ素フィラーの割合を質量基準で90%以上、特には、95%以上、さらには、100%とすることが好ましい。すなわち、金属ケイ素フィラーを唯一のフィラーとして弾性層中に含有させることが特に好ましい。
前記したとおり、本開示の一態様に係る弾性層は、要件(i)は、及び(ii)を満たす。ここで、要件(i)は、弾性層中の金属ケイ素フィラーの含有量を規定している。この要件を満たすことで、弾性層は、高い弾性性を有し得る。一方、要件(i)の規定に係る金属ケイ素フィラーの含有量では、要件(ii)に係る弾性層の厚さ方向の熱伝導率(1.30W/(m・K)以上)を達成するが困難である。しかしながら、金属ケイ素フィラーの含有量を増やすことは、弾性層の弾性率(硬度)の上昇を招来する。そこで、金属ケイ素フィラーの含有量を増やすことなく、弾性層の厚さ方向の熱伝導性を高めるために、特許文献2に開示した技術を用いることが好ましい。金属ケイ素は高熱伝導、低体積比熱のフィラーであり、誘電率も高い。そのため、特開2019-215531号広報に記載の、大粒径のフィラーの弾性層の厚さ方向への配列を抑えつつ、小粒径フィラーを弾性層の厚さ方向に配列させる当該技術との親和性が高い。
具体的には、本開示の一態様に係る弾性層は、弾性層の厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像、及び、該弾性層の厚み-軸方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像の各々において、円相当径が5μm以上の金属ケイ素フィラー(以降、「第1のフィラー」ともいう)と、円相当径が5μm未満の金属ケイ素フィラー(以降、「第2のフィラー」ともいう)が観察されるものとすることが好ましい。すなわち、弾性層中に含有させる金属ケイ素フィラーは、円相当径が5μm以上の第1のフィラーと、円相当径が5μm未満である第2のフィラーと、を含む金属ケイ素フィラーであることが好ましい。
第1のフィラーについては、5つの第1の二値化像及び5つの第2の二値化像の各々において観察される第1のフィラーが占める面積割合の平均値が21~33%であることが好ましく、22~32%であることが特に好ましい。ここで、第1のフィラーの面積割合は、[(二値化像における第1のフィラーの面積の総和×100)/(二値化像の面積=150μm×100μm)]をいう。第1のフィラーの占める平均面積割合が21%以上、特には、22%以上であれば、弾性層の形成過程において、第1のフィラー間の距離が、電界を付与した時に第1のフィラー間に十分大きな局所電場を発生させることができる距離となりやすい。その結果、第1のフィラー間に存在する第2のフィラーをよりよく配列させることができる。また、第1のフィラーの平均面積割合が33%以下、特には、32%以下であれば、金属ケイ素フィラーの含有に伴う弾性層の弾性率の向上の抑制がより容易となる。
第2のフィラーについては、5つの第1の二値化像及び5つの第2の二値化像の各々において観察される第2のフィラーが占める面積割合の平均値が7~21%であることが好ましく、10~20%であることが特に好ましい。ここで、第2のフィラーの面積割合は、[(二値化像における第2のフィラーの面積の総和×100)/(二値化像の面積=150μm×100μm)]をいう。第2のフィラーの占める平均面積割合が7%以上、特には、10%以上であれば、第2のフィラーを第1のフィラー間に配列させることによる弾性層の厚さ方向の高熱伝導化をより容易に達成することができる。また、第2のフィラーの占める平均面積割合が21%以下、特には、20%以下であれば、金属ケイ素フィラーの含有に伴う弾性層の弾性率の向上の抑制がより容易となる。また、弾性層の形成に用いることができる液状シリコーンゴム組成物の粘度上昇をより容易に抑制することができる。
二値化像における第1のフィラーが占める平均面積割合と、二値化像における第2のフィラーの占める平均面積割合の和は、32%以上、42%以下とすることが好ましい。第1のフィラーの占める平均面積割合と、第2のフィラーの占める平均面積割合の和は、弾性層における全フィラーが占める体積の割合と密接に関係している値である。第1のフィラーの占める平均面積割合と、第2のフィラーの占める平均面積割合の和を上記範囲内とすることで、弾性層の高熱伝導化と、高硬度化の抑制とをより良く両立し得る。
弾性層における硬化シリコーンゴム及び金属ケイ素フィラーの含有量は、熱重量測定装置(TGA)(例えば、商品名:TGA/DSC 3+、メトラートレド社製)を用いることにより確認可能である。弾性層を剃刀等で切り出し、20mg程度を正確に秤量して、装置で使用するアルミナパンに入れる。試料の入ったアルミナパンを装置にセットし、窒素雰囲気下、室温から800℃まで20℃毎分の昇温速度で加熱し、さらに800℃で1時間定温する。こうして測定前後の重量を比較することにより、弾性層に含まれていた硬化シリコーンゴム成分の含有量、及び金属ケイ素フィラーの含有量を確認することができる。
また、弾性層の断面をエネルギー分散型X線分析(EDS)(例えば、商品名:X-MAXN80、OXFORD社製)を行うことでも、金属ケイ素フィラーの含有量を確認することができる。
金属ケイ素の体積基準の含有量(体積%)は、弾性層を30mm×30mm×膜厚に切り出した時の密度測定値と金属ケイ素フィラー比重、フィラー無しのシリコーンゴム比重の割合計算から算出することができる。
第1のフィラーの弾性層の厚さ方向への平均配列度fL(以降、単に「fL」ともいう)は、0.00以上0.17以下が好ましく、特には、0.00以上0.15以下が好ましい。fLを上記の範囲内であることは、第1のフィラーの配列の程度が弱い、又は配列していないことを意味する。このことにより、第1のフィラーが弾性層の厚さ方向に配列することによる弾性層の弾性率の上昇を有効に抑制することができる。
第2のフィラーの弾性層の厚さ方向への平均配列度fS(以降、単に「fS」ともいう)は、0.19以上、0.51以下が好ましく、特には、0.20以上、0.50以下が好ましく、さらには、0.20以上0.36以下が好ましい。また、第2のフィラーの該弾性層の厚さ方向への平均配列角度ΦS(以降、単に「ΦS」ともいう)は、59°以上、120°以下が好ましく、特には、60°以上、120°以下が好ましく、さらには、60°以上103°以下が好ましい。fS及びΦSが上記の範囲内であることは、第2のフィラーが弾性層の厚さ方向に高度に配列していることを意味する。このことにより弾性層の厚さ方向の熱伝導率をより容易に高めることが可能となる。
したがって、fL、fS及びΦSを上記範囲内とすることで、弾性層の弾性率の上昇を抑えつつ、厚さ方向の熱伝導率が高い弾性層をより容易に得ることができる。
上記の通り、fLは弾性層中の第1のフィラーの弾性層中における配列の程度を表すパラメータである。又、fSは、弾性層中の第2のフィラーの弾性層中における配列の程度を表し、ΦSは、第2のフィラーの配列の程度を表すパラメータである。以下にfL、fS及びΦSの算出方法並びに技術的意味を詳細に説明する。
fL、fS及びΦSは、弾性層の断面画像から得られる二値化像を二次元フーリエ変換して得られる楕円プロットから求めることができる。
まず、測定用サンプルを作製する。例えば、定着部材が、図3(a)に示すような定着ベルト400である場合、図3(b)に示すように、例えば、縦5mm、横5mm、厚みが定着ベルトの全厚みである試料401を、定着ベルトの任意の10箇所から10個採取する。得られた10個の試料のうち、5個の試料については、定着ベルトの周方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-周方向の第一断面401-1を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工する。また、残りの5個の試料については、定着ベルトの周方向に直交する方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-軸方向の第2断面401-2を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工する。イオンビームによる断面の研磨加工には、例えば、クロスセクションポリッシャを用いることができる。イオンビームによる断面の研磨加工では、試料からのフィラーの脱落や研磨剤の混入を防ぐことができ、また、研磨痕の少ない断面を形成することができる。
続いて、研磨加工された第1断面を有する5個の試料の各々について、第1断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、150μm×100μm領域の断面画像(SEM画像)を取得する。また、研磨加工された第2断面を有する5個の試料の各々について、第2断面をSEMで観察し、150μm×100μm領域の断面画像(SEM画像)を取得する。このとき、SEM画像の縦方向が、弾性層の厚さ方向と平行となり、SEM画像の横方向が弾性層の周方向または軸方向と平行となるように調整する。解像度は、SEM画像中の第2のフィラーを解析するに十分な解像度、例えば、縦768ピクセル×横1024ピクセルとする。SEMとしては、例えば、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いることができる。FE-SEMとしては、例えば、「SIGMA500VP」(商品名、ZEISS社製)が挙げられる。また、観察条件としては、例えば、倍率2000倍の反射電子像モード、加速電圧:8.0kV、ワーキングディスタンス:4mmとすることができる。図4(a)にSEM画像(反射電子像)の一例を示す。
次に、得られたSEM画像について、金属ケイ素フィラーの部分が白く、シリコーンゴムの部分が黒くなるように二値化処理を行う。図4(b)に、図4(a)に示すSEM画像の二値化像を示す。図4(b)中、白色の部分が金属ケイ素フィラーの部分であり、黒い部分がシリコーンゴムの部分である。なお、図4(a)及び(b)において、左右方向が弾性層の周方向又は軸方向であり、上下方向が弾性層の厚さ方向である。このような二値化像を得るための二値化処理には、例えば、非特許文献1に記載の大津法を用いることができる。また、そのような二値化処理には、例えば、市販の画像処理ソフトウェアである「ImageJ」(商品名、アメリカ国立衛生研究所製)を用いることができる。
次に、得られた二値化像の各フィラー7、8について、円相当径を算出し、円相当径が5μm以上の第1のフィラー7のみを残した画像(以降、「第1フィラー画像」ともいう、図4(c))と円相当径が5μm未満の第2のフィラー8のみを残した画像(以降、「第2フィラー画像、図4(d))に分割する。こうして得られた第1フィラー画像及び第2フィラー画像の各々から第1のフィラー7と第2のフィラー8の面積割合(画像の全面積に対する第1のフィラー7又は第2のフィラー8の総面積が占める割合)を算出する。なお、フィラーの円相当径とは、当該フィラーの面積と同じ面積を有する円の直径をいう。
次いで、第1フィラー画像及び第2フィラー画像に対して二次元フーリエ変換を行って、弾性層の厚さ方向についてパワースペクトルを積分して、第1のフィラーと第2のフィラーの弾性層中における配列の方向及び配列の程度を表す楕円プロットを得る。図4(e)が、第1のフィラーの楕円プロットであり、図4(f)が、第2のフィラーの楕円プロットである。なお、二次元フーリエ変換では、二値化像の周期性に対して直交方向にピークが出現する。そこで、図4(e)及び(f)に示す楕円プロットにおいては、二次元フーリエ変換の結果を、90°位相をずらして表示している。したがって、図4(e)及び(f)に示す楕円プロットにおける90°-270°方向が弾性層の厚み方向を示し、0°-180°方向が弾性層の周方向又は軸方向を示す。そして、図4(e)及び(f)に示す、楕円プロットの長半径xが0°-180°方向(横軸方向)に対してなす角度Φ(配列角度)が、第1のフィラー及び第2のフィラーの弾性層の厚さ方向への配列の方向を示すパラメータとなる。すなわち、配列角度Φが90°に近い程、厚み方向にフィラーが配列していることを示す。
また、楕円プロットにおいて、長半径xの長さをx1、短半径yの長さをy1としたとき、下記計算式(1)で求まる楕円プロットの扁平率を配列度fする。
f=1-(y1/x1) (1)
配列度fは、0以上1未満の値となる。fが0の時に円となり、配列をしていない完全ランダムな状態を表す。そして、fが1に近づくにつれ、楕円の扁平が大きくなり、弾性層中におけるフィラーの一定の方向への配列度が大きくなることを意味する。
なお、本開示におけるfL、fS及びΦSは、弾性層の厚み-周方向の第1断面と、厚み-軸方向の第2断面の各々の任意の位置における150μm×100μmのサイズの二値化像から求まる配列度及び配列角度の値の平均値である。
弾性層の厚み方向の熱伝導率をλとすると、λは1.30W/(m・K)以上である。
λを1.30W/(m・K)以上とすることで良好な定着を行うことができる。さらに、λが1.50W/(m・K)以上であれば、より良好な定着を行うことができる。
弾性層の厚み方向の熱伝導率λは、以下の式から算出することができる。
λ=α×C×ρ
ここで、λは弾性層の厚み方向の熱伝導率(W/(m・K))、αは厚み方向の熱拡散率(m/s)、Cは定圧比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m)である。なお、各パラメータの測定方法は実施例において詳述する。
弾性層の体積抵抗率をρvとすると、ρvは9.0LOGΩ・cm以上である。ρvが9.0LOGΩ・cm以上であると、剥離放電跡を抑制できる。ρvが10.0LOGΩ・cm以上であると、剥離放電跡をより抑制できる。
弾性層の体積抵抗率ρvは、抵抗率計を用いて測定することができる。なお、具体的な測定方法は実施例において詳述する。
本開示に係る弾性層では、剥離放電跡を抑制するために、体積抵抗率ρvを9.0LOGΩ・cm以上の高い範囲とする。
前記の通り、弾性層中の金属ケイ素フィラーの含有量を抑えつつ、厚さ方向の熱伝導率を高めるためには、第2のフィラーを弾性層の厚さ方向に配列させることが有効である。しかしながら、第2のフィラーを弾性層の厚さ方向に配列させることで、弾性層の体積抵抗率が低下する場合がある。そこで、第2のフィラーを弾性層の厚さ方向に配列させた場合であっても、弾性層の体積抵抗率の上昇を抑制し、ρvを9.0LogΩ・cm以上とすることができる一つの方法としては、表面にバウンドラバー又は酸化膜を有する金属ケイ素フィラーを用いる方法が挙げられる。以降、表面にバウンドラバーや酸化膜を有さない金属ケイ素フィラーを便宜上、「無処理の金属ケイ素フィラー」という場合がある。
表面にバウンドラバーや酸化膜を有する金属ケイ素フィラーを用いることで、弾性層の体積抵抗率の低下を抑えつつ、弾性層の厚み方向の熱伝導率を高めることが可能である。その理由としては、無処理の金属ケイ素フィラーは、表面に微量に存在する水酸基や吸着水が電荷移動を促進する。これに対し、表面にバウンドラバーや酸化膜を有する金属ケイ素において、当該バウンドラバーや酸化膜が絶縁層として機能しているためであると考えられる。
なお、熱伝導性フィラーの表面処理方法として、シランカップリング剤などによる表面処理が知られているが、金属ケイ素粉体は表面官能基が少なく、表面処理が困難である。
バウンドラバーとは主にタイヤ業界で知られている、カーボンブラックを配合したゴム組成物において生じている現象である。具体的には、カーボンブラック等の如き充填剤を含む未加硫ゴム組成物から、当該未加硫ゴム組成物が可溶な溶剤を用いて抽出した際、充填剤と結合し、溶出されないゴムが「バウンドラバー」と称されている(特許文献3)。
本発明者らは、本開示に係る弾性層から抽出した金属ケイ素フィラーについて、熱重量分析によって金属ケイ素フィラーと結合したままのシリコーンゴムの量をバウンドラバー量として測定した。その結果、バウンドラバー量が多いほど、弾性層の体積抵抗率が高くなっていることがわかった。
また、本開示における「酸化膜」とは、金属ケイ素フィラーの表面に自然酸化膜として発生する1nm前後の酸化ケイ素膜ではなく、強制的に金属ケイ素フィラーの表面の酸化を促進することによって形成される、3nm以上の厚みを有する酸化ケイ素膜を意味する。酸化膜に十分な厚みを付けることにより、酸化膜部分が絶縁層としての働きが発揮され、弾性層の体積抵抗率の常用対数値(ρv)を、9.0LOGΩ・cm以上とすることができる。以下、詳細に説明する。
(d-1)金属ケイ素フィラーへのバウンドラバー形成方法
金属ケイ素粉体へのバウンドラバー形成方法としては以下の方法が挙げられる。
(i)オルガノポリシロキサンと金属ケイ素フィラーを混合した後、長期間静置する方法。
(ii)オルガノポリシロキサンと金属ケイ素フィラーを混合する際の条件を低せん断、長時間とする方法。
以下に詳細を記載する。
(i)オルガノポリシロキサンと金属ケイ素フィラーを混合した後、長期間静置する方法 オルガノポリシロキサンと金属ケイ素フィラーを混合した液状シリコーンゴム組成物を静置しておくと経時でバウンドラバー量が増加していく。30日以上静置することでバウンドラバーが十分に形成され、硬化後の強度が向上する。混合方法としてはプラネタリーミキサーや自公転式ミキサー、ニーダーなどの機器が用いられる。混合時の温度は常温(25℃)でもよいし、100~200℃の高温でもよい。また静置時も常温でもよいし、高温としてもよい。高温で混合を行う場合は成分(a)と成分(d)を予め混合し、ベースコンパウンドを調製した後にその他の成分を混合してもよい。
タイヤ業界で用いられるゴムによって形成されるバウンドラバーは通常数時間~数日で形成される。それに対して本開示に係る組成物では、前述の如く、バウンドラバーの形成に長期間要する。その理由としては、タイヤ業界で用いられるゴムに配合される充填剤であるカーボンブラックは粒径が数十nmと小さく、また二次構造を構築しやすく表面積も非常に大きい。そのため、比較的短期間で、カーボンブラックには、バウンドラバーが形成される。しかしながら、本開示に係る金属ケイ素フィラーは、粒径がカーボンブラックに比べ大きく、表面積も小さい。そのために、金属ケイ素フィラーに対して十分な量のバウンドラバーを形成させるためには、より長い時間がかかるものと考えられる。
(ii)オルガノポリシロキサンと金属ケイ素フィラーを混合する際の条件を低せん断、長時間とする方法
オルガノポリシロキサンと金属ケイ素フィラーを混合する機器してはプラネタリーミキサーがよく用いられる。ここで言うプラネタリーミキサーは攪拌羽根を一つ若しくは複数持ち、その攪拌羽根が自転、公転して材料を混合する機器のことである。
通常プラネタリーミキサーで液状シリコーンゴム組成物を混合する場合、公転速度は40~200rpm、自転速度はその2倍程度に設定され、混合時間は5~40分程度とされることが多い。それに対し、本発明者らの検討によると、公転速度を10rpmと極めて低速とすることが好ましい。また混合時間を100~300分とすることが好ましい。
こうして、均一な液状シリコーンゴム組成物を調製した後、好ましくは5日程度静置する。このような工程を経て、金属ケイ素フィラーには、十分な量のバウンドラバーが形成され、硬化ゴムの強度も大きくなる。この理由については定かではないが、金属ケイ素フィラー表面の微小な間隙や欠陥にシリコーンポリマーが毛細管現象等で浸透して十分な量のバウンドラバーが形成されていると予想される。せん断速度が速くなると、金属ケイ素フィラー表面へのシリコーンポリマーの濡れが促進されず、毛細管現象が少なくなり、バウンドラバー量の減少を来すものと考えられる。
このバウンドラバー量は、以下の方法によって求まる、液状シリコーンゴム組成物から特定の方法により抽出した金属ケイ素フィラーの熱重量分析における特定の温度範囲の質量減少率で規定することもできる。
(i) 弾性層から、金属ケイ素フィラーを含む2gのサンプルを採取する。
(ii)採取した当該サンプルを、ドデシルベンゼン硫酸を濃度10wt%で含む温度40℃のノルマルプロピルブロマイド液体50mlに浸漬し、浸漬したサンプルに、40kHzの超音波を60分印加して、当該サンプル中のシリコーンゴムを溶解する。
(iii)当該サンプル中の金属ケイ素フィラーを抽出し、温度25℃のトルエン10mlで減圧濾過洗浄を3回行う。
(iv)工程(iii)で得られた金属ケイ素フィラーの熱重量分析における温度300℃~500℃の間における質量の減少率を測定する。
本開示において、温度300℃~500℃の範囲の間における質量の減少率が0.05%以上であることが好ましい。金属ケイ素フィラーの質量減少率が0.05%以上であることにより、本開示に係る液状シリコーンゴム組成物においては、バウンドラバーとしてのシリコーンゴムが金属ケイ素フィラーに一定量以上結合していると考えられる。その結果として、本開示に係る液状シリコーンゴム組成物は、表面平滑性に優れた弾性層を与えることができる。
以下、金属ケイ素フィラーに結合しているバウンドラバーの量を測定する方法についてより具体的に説明する。
弾性層中の金属ケイ素フィラーのバウンドラバー量の測定は、熱重量分析(TGA)装置を用いて行う。弾性層から2gのサンプルを採取し、ドデシルベンゼン硫酸を濃度10wt%で含む温度40℃のノルマルプロピルブロマイド液体(カネコ化学社製:eソルブ21RS)50mlに浸漬し、40kHzの超音波を60分印加する。そうすることで硬化したシリコーンゴムを溶解させ金属ケイ素フィラーを抽出し、次いでΦ40mmの桐山ロートと桐山ロート用ろ紙No.5C(保留粒子1μm)を用い、25℃のトルエン10mlで三回減圧濾過して金属ケイ素フィラーを得る。シリコーンゴムはトルエンに可溶なため、金属ケイ素フィラーに強固に吸着していないシリコーンゴムは除去される。得られた金属ケイ素フィラーを120℃で1時間乾燥させ、50mg秤量してTGA測定を行う。具体的には、乾燥空気80ml/分下、50℃から500℃まで5℃/分で昇温させ、その時の質量変化を測定する。得られた質量変化のデータから300℃から500℃の質量変化を算出し、TGA減少率(%)とする。300℃未満の質量変化のデータは残存した水分やトルエンの影響があるため、温度300℃から500℃の範囲の質量変化を金属ケイ素フィラーに強固に吸着したバウンドラバー量とする。温度300℃から500℃の範囲では金属ケイ素フィラーのみではほとんど質量変化しないか、やや酸化され質量が増加する。それに対し、シリコーンゴムが強固に吸着した金属ケイ素フィラーは、シリコーンゴムが300℃程度から分解するため質量減少が観測される。なお、TGA測定に用いる装置としては、例えば、示差熱 熱重量 同時測定装置(商品名:TGA/DSC 3+、メトラートレド社製)を用いることができる。
(d-2)金属ケイ素フィラーへの酸化膜形成方法
金属ケイ素フィラーへの酸化膜を形成する方法としては、高速気流中に金属ケイ素フィラーを分散し、衝撃力を加えた時に発生する反応熱を利用して活性化した金属ケイ素フィラー表面と大気中の酸素と反応させる方法、等が使用できる。酸化膜の厚みは粉砕加工時のローターやステーターの回転速度や処理時間、また、暴露する酸素雰囲気濃度によって調整できる。また、酸化膜形成処理後は、分級することによって所望の粒径分布に調整することができる。酸化膜形成加工処理はハイブリダイザー(例えば、商品名:ハイブリダイゼーションシステムHMS-1-2L、奈良機械製作所製)を用いることにより実施することが可能である。
また、酸化膜の厚みの測定についてはFIB-TEM法にて実施し、5か所測定の平均値を酸化膜厚みとする。前処理条件および測定条件としては、コーティング:日立製E-1030(Pt-Pd膜、15mA、60秒×2回)、FIB-SEM:FEI製Helio600(μサンプリング、FIB:30kVGa+)、TEM:FEI製TecnaiF30(300kV)とする。
このように形成した酸化膜は3nm以上の厚みを有する。また、酸化膜厚みの上限は、金属ケイ素フィラーとしての機能を損なわない範囲であればよく、20nm以下であることが好ましい。
(4)定着部材の接着層
図1に示すように、接着層5は、弾性層4と表層(離型層)6とを接着させるための層である。接着剤としては、自己接着成分が配合された付加硬化型シリコーンゴムを用いることが好ましい。具体的には、ビニル基に代表される不飽和脂肪族基を分子鎖中に複数有するオルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンおよび架橋触媒としての白金化合物を含有する。そして、付加反応により硬化する。このような接着剤としては、既知のものを使用することができる。
自己接着成分の例は、以下のものを含む。
・ビニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)、エポキシ基、アルコキシシリル基、カルボニル基、およびフェニル基からなる群から選択される少なくとも1種、好ましくは2種以上の官能基を有するシラン、
・ケイ素原子数が2個以上30個以下、好ましくは4個以上20個以下の、環状または直鎖状のシロキサン等の有機ケイ素化合物、
・分子中に酸素原子を含んでもよい、非ケイ素系(即ち、分子中にケイ素原子を含有しない)有機化合物。ただし、1価以上4価以下、好ましくは2価以上4価以下のフェニレン構造等の芳香環を1分子中に1個以上4個以下、好ましくは1個以上2個以下含有する。
かつ、ヒドロシリル化付加反応に寄与しうる官能基(例えば、アルケニル基、(メタ)アクリロキシ基)を1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上4個以下含有する。
上記の自己接着成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
接着剤中には粘度調整や耐熱性確保の観点から、本開示の趣旨に沿う範囲内においてフィラー成分を添加することができる。当該フィラー成分の例は、以下のものを含む。
・シリカ、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム、水酸化セリウム、カーボンブラック等。
このような付加硬化型シリコーンゴム接着剤は市販もされており、容易に入手することができる。
接着層の厚みは20μm以下であることが好ましい。20μm以下とすることで定着部材の熱抵抗を小さく設定でき、内面側(基体側)からの熱を効率的に被記録材(記録媒体)に伝えることができる。
(5)定着部材の表層
本開示に係る電子写真用部材を熱定着装置の定着部材として用いる場合、離型層としての表層を設けることが好ましい。表層6は、定着部材の外表面へのトナーの付着を防止する離型層としての機能を発現させるうえで、フッ素樹脂を含有させることが好ましく、成形方法としてはチューブ法やコート法が用いられる。例えば、以下に例示する樹脂をチューブ状に成形したものを被覆したものを用いることができる。・テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等。
上記例示列挙した樹脂材料中、成形性やトナー離型性の観点からPFAが好ましい。
フッ素樹脂層(表層)の厚みは、10μm以上50μm以下とするのが好ましい。表層の厚みをこの範囲内とすることで、積層した際に下層の弾性層の弾性を維持し、定着部材としての表面硬度が高くなりすぎることを抑制しつつ、耐摩耗性を確保できる。
(6)定着部材の製造方法
本開示に係る電子写真用部材は、例えば、以下の工程を含む製造方法によって製造することができる。
(e)基体を用意する工程。
(f)シリコーンゴムと金属ケイ素フィラーを含む液状シリコーンゴム組成物を用いて、基体上に弾性層を形成する工程。
(g)弾性層上に接着層を形成する工程。
(h)弾性層上に表層を形成する工程。
上記工程(f)は、以下の工程を有することができる。
(f-1)シリコーンゴムと金属ケイ素フィラーを含む液状シリコーンゴム組成物を調製する工程(弾性層用の組成物の調製工程)。
(f-2)基体上に該液状シリコーンゴム組成物を含む層を形成する工程(組成物層の形成工程)。
(f-3)該液状シリコーンゴム組成物を含む層中の金属ケイ素フィラーを所定の配列状態とする工程(金属ケイ素フィラーの配列工程)。
(f-4)金属ケイ素フィラーを所定の配列状態とした組成物層を硬化させて、弾性層を形成する工程(硬化工程)。
なお、上記工程(f-2)~(f-4)は、順次行ってもよいし、並行して行ってもよい。以下に、各工程を詳しく説明する。
(e)基体を用意する工程
上記基体を用意して、必要に応じて形状を保持する治具等に固定する。
基体の弾性層と対向する側の表面は、弾性層との接着性等の機能を付与するために表面処理を施してもよい。表面処理の例としては、例えば、ブラスト処理、ラップ処理、研磨の如き物理的処理や、酸化処理、カップリング剤処理、プライマー処理の如き化学的処理が挙げられる。また、物理的処理及び化学的処理を併用してもよい。
特に、架橋シリコーンゴムを含む弾性層を用いることから、基体と弾性層の密着性向上のために、基体の外表面をプライマーで処理することが好ましい。プライマーとしては、例えば、有機溶剤中に添加剤を適宜配合し分散された塗料状態のものを用いることができる。このようなプライマーは市販されている。上記添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリコーンポリマー、水素化メチルシロキサン、アルコキシシラン、加水分解・縮合・付加などの反応促進触媒、酸化鉄等の着色剤等を挙げることができる。このプライマーを基体の外表面に塗布し、乾燥や焼成のプロセスを経てプライマー処理が施される。
プライマーは、例えば、基体の材質、弾性層の種類や架橋時の反応形態などによって適宜選択可能である。例えば、弾性層を構成する材料が不飽和脂肪族基を多く含む場合には、該不飽和脂肪族基との反応によって接着性を付与するため、プライマーとしてはヒドロシリル基を含有する材料が好んで用いられる。また、弾性層を構成する材料がヒドロシリル基を多く含む場合には、反対にプライマーとしては不飽和脂肪族基を含有する材料が好んで用いられる。そのほかにも、プライマーとしては、アルコキシ基を含有する材料など、被着体である基体及び弾性層の種類に応じて適宜選択可能である。
(f)弾性層形成工程
(f-1)液状シリコーンゴム組成物の調製工程
金属ケイ素フィラー、及びシリコーンゴムを含む、弾性層形成用の液状シリコーンゴム組成物を調製する。
体積抵抗率ρvを高くする方法として、金属ケイ素フィラーの表面にバウンドラバーを形成する方法を採用する場合は、組成物の調製の際に、上記(d-1)の方法により、金属ケイ素フィラーの表面にバウンドラバーを形成する。金属ケイ素フィラーの表面に酸化膜を形成する方法を採用する場合は、金属ケイ素フィラーとして、上記(d-2)の方法により得られた表面に酸化膜が形成された金属ケイ素フィラーを使用する。
(f-2)液状シリコーンゴム組成物の層の形成工程
該液状シリコーンゴム組成物を、金型成形法、ブレードコート法、ノズルコート法、リングコート法の如き方法で、基体上に適用し、該液状シリコーンゴム組成物の層(以降、「組成物層」ともいう)を形成する。
(f-3)金属ケイ素フィラー(第2のフィラー)の配列工程
工程(f-2)で形成した組成物層中の金属ケイ素フィラーを厚み方向に配列させる一実施形態として、コロナ帯電器を用いる方法を説明する。なお、コロナ帯電方式には、コロナワイヤーと被帯電体の間にグリッド電極を持つスコロトロン方式と、グリッド電極を持たないコロトロン方式があるが、被帯電体の表面電位の制御性の観点から、スコロトロン方式が好ましい。
図2(a)、(b)に示すように、コロナ帯電器2は、前ブロック201、奥ブロック202、シールド203及び204を備える。また、前ブロック201と奥ブロック202の間に放電ワイヤ205が張架されている。不図示の高圧電源により、放電ワイヤ205に高電圧を印加して、シールド203及び204への放電によって得られるイオン流を、グリッド206に高電圧を印加することによって制御して、組成物層41の表面を帯電させる。
この時、基体3もしくは基体3を保持する中子1が接地されているため(不図示)、組成物層41の表面の表面電位を制御することで、組成物層41に所望の電場を発生させることが可能となる。
コロナ帯電器2を図2(a)に示すように、組成物層41の幅方向に沿って近接して対向させて配置する。そしてコロナ帯電器2のグリッド206に電圧を印加し、放電させた状態で、外周面に組成物層41を有する基体3を、例えば141rpmで160秒間回転させることによって、組成物層41の外表面を帯電させる。組成物層41の外表面とグリッド206の距離は1mm~10mmとすることができる。このようにして組成物層41の表面を帯電させることにより、組成物層内に電場を生じさせる。その結果、円相当径が5μm未満の第2のフィラーを、組成物層の厚さ方向に配列させることができる。一方、円相当径が5μm以上の第1のフィラーは、組成物層中における位置は殆ど変化せず、分極し、第1のフィラー間で局所的な電場を生じさせる。かかる電場によって、第1のフィラー間に位置する第2のフィラーを配列させることができる。
グリッド206に印加する電圧は、金属ケイ素フィラーに有効な静電的相互作用を発生させる観点から、絶対値として0.1kV~3kV(AC印加の場合、Vp-pで0.2~6kV)の範囲が好ましい。電場を用いて組成物層41の厚み方向の金属ケイ素フィラーの配向を形成する場合においては、組成物層41の厚み方向に電界を発生させることが重要である。印加する電圧の符号はワイヤに印加する電圧の符号と等しくすれば、マイナスでもプラスでも電界の方向は逆になるものの、得られる効果は同じである。
また、後述の液面流動を抑えるためにAC帯電させる場合はワイヤとグリッドの波形の位相を一致させることが望ましい。一方、グリッド206に印加する電圧が大きすぎる場合、弾性層の表面電荷による静電反発力が大きくなることで液面流動が起こり、組成物層41の表面性が悪化する場合がある。従って、グリッド206に印加する電圧は、絶対値として0.1kV~1.5kV(AC印加の場合、Vp-pで1.2~3kV)の範囲がさらに好ましい範囲である。この液面流動については、AC帯電させることによって緩和させることができる。
組成物層41表面の長手方向における電位制御の構成としては、例えば、図2(a)に示される構成を用いることができる。グリッド206に電圧を印加している間は、定着ベルト11の中心軸を回転軸として回転させながら行うことで組成物層41の全体を帯電させることが可能である。尚、定着ベルトの回転数としては10rpm~500rpm、処理時間としては金属ケイ素フィラーの配向を安定的に形成させる観点から20秒以上の処理時間を設けることが好ましい。以上より、表面電位と電場を付与する時間を制御することで、不定形フィラーの配向の形成を制御することができる。
コロナ帯電器はレシプロ機構により、定着部材の長手方向に±1~10mm程度1~10Hz程度の往復振動を行うことで電場が付与された領域と付与されていない領域の境界部分での急峻な熱伝導率、表面性、硬度変化を抑えることができる。
放電ワイヤ205として、ステンレススチール、ニッケル、モリブデン、タングステンなどを用いてもよいが、金属の中で非常に安定性の高いタングステンを用いるのが好ましい。なお、シールド203及び204の内側に張架される放電ワイヤ205は特に限定されず、円断面形状でもノコギリ歯のような形状であっても良い。
また、放電ワイヤ205の直径(ワイヤに対して垂直に切断した際の切断面における)としては、40μm~100μmが好ましい。放電ワイヤの直径をこのような範囲内にすることで、放電の際のイオンによる放電ワイヤの切断を防止することができ、また、コロナ放電を生じさせるために必要な電圧を過度に高くする必要がなくなる。放電ワイヤ205に印加する電圧は、直流電圧および交流電圧のいずれでも用いることができる。交流電圧の場合は周波数として0.01Hz~1000Hz程度で行うことが好ましい。電圧は矩形波や正弦波などを任意波形発生器で出力させることで行うことができる。
(f-4)硬化工程
組成物層を加熱等により硬化させて、組成物層内の金属ケイ素フィラーの位置が固定された弾性層を形成する。
(g)弾性層上に接着層を形成する工程
(h)弾性層上に表層を形成する工程
図5は、シリコーンゴムを含む弾性層4上に、付加硬化型シリコーンゴム接着剤を介して表層6を積層する工程の一例の模式図である。基体3の外周面に形成された弾性層4の表面に、付加硬化型シリコーンゴム接着剤5を塗布する。更にその外表面に、表層6としてのフッ素樹脂チューブ6を被覆し、積層させる。
なお、フッ素樹脂チューブの内面は、予め、ナトリウム処理やエキシマレーザ処理、アンモニア処理等を施すことで、接着性を向上させることが出来る。
フッ素樹脂チューブの被覆方法は特に限定されないが、付加硬化型シリコーンゴム接着剤を潤滑材として被覆する方法や、フッ素樹脂チューブを外側から拡張し、被覆する方法などを用いることが出来る。
また不図示の手段を用いて、弾性層と4フッ素樹脂からなる表層6との間に残った、余剰の付加硬化型シリコーンゴム接着剤を、扱き出すことで除去することもできる。扱き出した後の接着層5の厚みは、伝熱性の観点から20μm以下とすることが好ましい。
次に、電気炉などの加熱手段にて所定の時間加熱することで、付加硬化型シリコーンゴム接着剤を硬化・接着させ、幅方向の両端部を所望の長さに切断することで、定着部材を得ることができる。
(7)弾性層中の金属ケイ素フィラーの配列状態の確認
金属ケイ素フィラーの配列状態は、弾性層の断面画像から得られる二値化像を用いて、二次元フーリエ変換を行うことで確認できる。
まず、測定用サンプルを作製する。例えば、定着部材が、図3(a)に示すような定着ベルト400である場合、図3(b)に示すように、例えば、縦5mm、横5mm、厚みが定着ベルトの全厚みである試料401を、定着ベルトの任意の10箇所から10個採取する。得られた10個の試料のうち、5個の試料については、定着ベルトの周方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-周方向の第一断面401-1を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工する。また、残りの5個の試料については、定着ベルトの周方向に直交する方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-軸方向の第2断面401-2を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工する。イオンビームによる断面の研磨加工には、例えば、クロスセクションポリッシャを用いることができる。イオンビームによる断面の研磨加工では、試料からのフィラーの脱落や研磨剤の混入を防ぐことができ、また、研磨痕の少ない断面を形成することができる。
続いて、弾性層の第1断面が研磨加工された5個の試料について、弾性層の第1断面をレーザー顕微鏡や走査型電子顕微鏡観察(SEM)等で観察し、150μm×100μm領域の断面画像を取得する。あるいは、弾性層の第2断面が研磨加工された5個の試料について弾性層の第2断面をレーザー顕微鏡や走査型電子顕微鏡観察(SEM)等で観察し、150μm×100μm領域の断面画像を取得する(図4(a))。
次に、得られた画像を市販の画像ソフトにより、フィラー部分を白く、シリコーンゴム部分を黒くなるように、白黒二値化処理を行う(図4(b))。二値化の手法としては、例えば大津法を用いることができる。
次に、得られた二値化像の各フィラー7、8について、円相当径を算出し、円相当径が5μm以上の第1のフィラー7のみを残した画像(図4(c))と円相当径が5μm未満の第2のフィラー8のみを残した画像(図4(d))に分割する。そして、各々の画像から第1のフィラー7と第2のフィラー8の面積割合(画像の全面積に対して各フィラー7、8の総面積が占める割合)を算出する。なお、各フィラーの円相当径とは、当該フィラーの面積と同じ面積を有する円の直径をいう。
さらに、この第1のフィラー画像、第2のフィラー画像に対して二次元フーリエ変換解析を行うことで、フィラー配列の方向と程度を表す楕円プロット図が得られる(それぞれ図4(e)、図4(f))。二次元フーリエ変換自体は、二値化像の周期性に対して直交方向にピークを持つため、楕円プロット図は、二次元フーリエ変換の結果を90°位相をずらした結果となっている。この楕円プロット図の楕円長半径が成す角度から配列角度Φが、長半径をx、短半径をyとした時のf=1-(y/x)と定義するフィラー配列度fが、それぞれ求められる。
配列角度Φがフィラーの配列方向を表し、図4(e)、図4(f)で90°-270°方向が弾性層の厚み方向を示し、0°-180°方向が弾性層の周方向又は軸方向を示す。したがって、配列角度Φが90°に近い程、厚み方向にフィラーが配列していることを示す。
また、配列度fは楕円の扁平率を表し、0以上1未満の値となる。fが0の時に円となり、配列をしていない完全ランダムな状態を表し、fが1に近づくにつれ、楕円の扁平が大きくなり、フィラーの配列度も大きいということになる。
フィラーの、配列角度Φ、配列度fは、弾性層の厚み-周方向の第1断面と、厚み-軸方向の第2断面の各々で5箇所、計10箇所の数値の平均値で算出する。
本開示において、フィラーの粒径(円相当径)が5μm以上の第1のフィラーの平均面積割合は22%以上、32%以下であることが好ましい。第1のフィラーの平均面積割合が22%以上であれば、第1のフィラー間の距離が該第1のフィラー間の局所的な電場の発生に適しているように該第1のフィラーを配置することがより容易となるその結果、第1のフィラー間に存する第2のフィラーをより確実に配列させることができ、高熱伝導性をより良く達成することができる。また、第1のフィラーの平均面積割合を32%以下とすることで、弾性層の硬度を低く維持することをより容易とすることができる。
第1のフィラーの平均配列度をfLとした場合、fLは、0.00以上、0.15以下であることが好ましい。fLが0.15以下であることにより、弾性層の低硬度化を達成することができる。
第1のフィラーの平均配列角度をΦLとした場合、ΦLは、0°以上、180°以下のどの値でも構わない。
フィラーの粒径が5μm未満の第2のフィラーの平均面積割合は10%以上、20%以下である。第2のフィラーの平均面積割合が10%以上である場合には、十分な高熱伝導性を達成することができる。また、第2のフィラーの平均面積割合が20%、未満である場合には、材料の粘度の上昇に起因する加工性や平滑性の問題が生じることを防ぐことができる。
第2のフィラーの平均配列度をfSとした場合、fSは、0.20以上、0.50以下であることが好ましい。fSがこの範囲にあることで、厚み方向の熱伝導性を高めることができる。
第2のフィラーの平均配列角度をΦSとした場合、長手中央域でのΦSは、60°以上、120°以下である。ΦSが90°となる方向が弾性層の厚み方向になるため、ΦSが90°に近いほど、厚み方向に配列していることになる。そのため、ΦSが上記範囲であることにより、厚み方向の熱伝導性を高めることができる。また、長手両端部ではΦSは30°以下、もしくは、150°以上である。ここで30°と150°は90°を境界とした鏡像の関係にあるため、厚み方向の伝熱機能としては同義である。
(8)熱定着装置
本実施形態に係る熱定着装置は、一対の加熱されたローラとローラ、ベルトとローラ、ベルトとベルト、といった回転体が互いに圧接されるように構成されている。熱定着装置の種類は、熱定着装置が搭載される画像形成装置全体としてのプロセス速度、大きさ等の条件を勘案して適宜選択される。
熱定着装置においては、加熱された定着部材と加圧部材を圧接することで定着ニップNを形成し、この定着ニップNに未定着トナーによって画像が形成された、被加熱体となる記録媒体Sを挟持搬送させる。未定着トナーによって形成された画像をトナー像tと称する。これにより、トナー像tを加熱、加圧する。その結果、トナー像tは溶融・混色され、その後、冷却されることによって記録媒体上に画像が定着される。
以下、熱定着装置の具体例を挙げて、その構成を説明するが、本開示の範囲並びに用途はこれに限定されるものではない。
(8-1)定着ベルト-加圧ベルト方式の熱定着装置
図6は一対の定着ベルト11と加圧ベルト12といった回転体が圧接されている、いわゆるツインベルト方式の熱定着装置であり、定着部材として定着ベルトを備えた熱定着装置の一例の断面模式図である。
ここで、熱定着装置またはこれを構成している部材について、幅方向とは、図6の紙面に垂直の方向である。熱定着装置について、正面とは、記録媒体Sの導入側の面である。
左右とは、装置を正面から見て左または右である。ベルトの幅とは装置を正面から見たときの左右方向のベルト寸法である。記録媒体Sの幅とは搬送方向に直交する方向の記録媒体寸法である。さらに、上流または下流とは、記録媒体の搬送方向に関して上流または下流である。
この熱定着装置は、定着部材としての定着ベルト11と、加圧ベルト12とを備えている。定着ベルト11と加圧ベルト12は、図1(a)に示すようなニッケルを主成分とした金属製の可撓性を有する基体を含む定着ベルトを2つのローラに張架したものである。
定着ベルト11の加熱手段として、エネルギー効率の高い電磁誘導加熱により可能な加熱源(誘導加熱部材、励磁コイル)を採用している。誘導加熱部材13は、誘導コイル13aと、励磁コア13bと、それらを保持するコイルホルダー13cと、から構成される。誘導コイル13aは、長円状に扁平巻きされたリッツ線を用い、誘導コイルの中心と両脇に突起した横E型の励磁コア13bの中に配置されている。励磁コア13bはフェライト、パーマロイといった高透磁率で残留磁速密度の低いものを用いるので、誘導コイル13aや励磁コア13bでの損失を抑えられ、効率的に定着ベルト11を加熱する事ができる。
励磁回路14から誘導加熱部材13の誘導コイル13aに高周波電流が流されると、定着ベルト11の基体が誘導発熱して基体側から定着ベルト11が加熱される。定着ベルト11の表面温度がサーミスタ等の温度検知素子15により検知される。この温度検知素子15で検知される定着ベルト11の温度に関する信号が制御回路部16に送られる。制御回路部16は温度検知素子15から受信した温度情報が所定の定着温度に維持されるように、励磁回路14から誘導コイル13aに対する供給電力を制御して、定着ベルト11の温度を所定の定着温度に調節する。
定着ベルト11は、ベルト回転部材としてのローラ17及び加熱側ローラ18によって張架されている。ローラ17と加熱側ローラ18はそれぞれ装置の不図示の左右の側板間に回転自由に軸受されて支持されている。
ローラ17は、例えば、外径が20mmで、内径が18mmである厚さ1mmの鉄製の中空ローラであり、定着ベルト11に張りを与えるテンションローラとして機能している。加熱側ローラ18は、例えば、外径が20mmで、径が18mmである鉄合金製の芯金に、弾性層としてのシリコーンゴム層が設けられた高摺動性の弾性ローラである。
この加熱側ローラ18は、駆動ローラとして駆動源(モータ)Mから不図示の駆動ギア列を介して駆動力が入力されて、矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。この加熱側ローラ18に上記のように弾性層を設けることで、加熱側ローラ18に入力された駆動力を定着ベルト11へ良好に伝達することができるとともに、定着ベルト11からの記録媒体の分離性を確保するための定着ニップを形成できる。加熱側ローラ18が弾性層を有することによって、加熱側ローラへの熱伝導も少なくなるためウォームアップタイムの短縮にも効果がある。
定着ベルト11は、加熱側ローラ18が回転駆動されると、加熱側ローラ18のシリコーンゴム表面と定着ベルト11の内面との摩擦によってローラ17と共に回転する。ローラ17および加熱側ローラ18の配置や大きさは、定着ベルト11の大きさに合わせて選択される。例えば上記ローラ17および加熱側ローラ18の寸法は、未装着時の内径が55mmの定着ベルト11を張架できるように選択されたものである。
加圧ベルト12は、ベルト回転部材としてのテンションローラ19と加圧側ローラ20によって張架されている。加圧ベルトの未装着時の内径は例えば55mmである。テンションローラ19と加圧側ローラ20はそれぞれ装置の不図示の左右の側板間に回転自由に軸受させて支持させている。
テンションローラ19は、例えば、外径が20mmで、径が16mmである鉄合金製の芯金に、熱伝導率を小さくして加圧ベルト12からの熱伝導を少なくするためにシリコーンスポンジ層を設けてある。
加圧側ローラ20は、例えば、外径が20mmで、内径が16mmである厚さ2mmの鉄合金製とされた低摺動性の剛性ローラである。テンションローラ19、加圧側ローラ20の寸法も同様に、加圧ベルト12の寸法に合わせて選択されたものである。
ここで、定着ベルト11と加圧ベルト12との間にニップ部Nを形成するために、加圧側ローラ20は、回転軸の左右両端側が不図示の加圧機構により矢印Fの方向に所定の加圧力にて加熱側ローラ18に向けて加圧されている。
また、装置を大型化することなく幅広いニップ部Nを得るために、加圧パッドを採用している。すなわち、定着ベルト11を加圧ベルト12に向けて加圧する第1の加圧パッドとしての定着パッド21と、加圧ベルト12を定着ベルト11に向けて加圧する第2の加圧パッドとしての加圧パッド22である。定着パッド21及び加圧パッド22は装置の不図示の左右の側板間に支持させて配設してある。加圧パッド22は、不図示の加圧機構により矢印Gの方向に所定の加圧力にて定着パッド21に向けて加圧されている。第1の加圧パッドである定着パッド21は、パッド基体とベルトに接する摺動シート(低摩擦シート)23を有する。第2の加圧パッドである加圧パッド22もパッド基体とベルトに接する摺動シート24を有する。これはパッドのベルト内周面と摺擦する部分の削れが大きくなるという問題があるためである。ベルトとパッド基体の間に、摺動シート23と24を介在させることで、パッドの削れを防止し、摺動抵抗も低減できるので、良好なベルト走行性、ベルト耐久性を確保できる。
なお、定着ベルトには非接触の除電ブラシ(不図示)、加圧ベルトには接触の除電ブラシ(不図示)を各々設けている。
制御回路部16は、少なくとも画像形成実行時にはモータMを駆動する。これにより加熱側ローラ18が回転駆動され、定着ベルト11が同じ方向に回転駆動される。加圧ベルト12は、定着ベルト11に従動して回転する。ここで、定着ニップ最下流の部分をローラ対18、20により定着ベルト11と加圧ベルト12を挟んで搬送する構成としたことで、ベルトのスリップを防止することができる。定着ニップ最下流の部分は定着ニップでの圧分布(記録媒体搬送方向)が最大となる部分である。
定着ベルト11が所定の定着温度に立ち上がって維持(温調という)された状態において、定着ベルト11と加圧ベルト12間のニップ部Nに、未定着トナー画像tを有する記録媒体Sが搬送される。記録媒体Sは、未定着トナー画像tを担持した面を、定着ベルト11側に向けて導入される。そして、記録媒体Sの未定着トナー画像tが定着ベルト11の外周面に密着したまま挟持搬送されていくことにより、定着ベルト11から熱が付与され、また加圧力を受けて記録媒体Sの表面に定着される。この際、定着ベルト11の加熱された基体からの熱は、厚み方向の熱伝導性を高めた弾性層を通じて記録媒体Sに向けて効率よく輸送される。その後、記録媒体Sは、分離部材25によって、定着ベルトと分離して、搬送される。
(8-2)定着ベルト-加圧ローラ方式の熱定着装置
図7は加熱体としてセラミックヒータを用いた定着ベルト-加圧ローラ方式の熱定着装置の例を示す模式図である。図7において、11は円筒状もしくはエンドレス状の定着ベルトであり、上述のようなものが用いられる。この定着ベルト11を保持するための耐熱性・断熱性のベルトガイド30がある。その定着ベルト11と接触する位置(ベルトガイド30の下面のほぼ中央部)に定着ベルト11を加熱するセラミックヒータ31が、ガイド長手に沿って形成具備させた溝部に嵌入して固定支持させている。そして、定着ベルト11はベルトガイド30にルーズに外嵌されている。また、加圧用剛性ステイ32はベルトガイド30の内側に挿通してある。
一方、定着ベルト11に対抗する加圧ローラ33が配設されている。なお加圧ローラは、本例では弾性加圧ローラ、すなわち、芯金33aにシリコーンゴムの弾性層33bを設けて硬度を下げたものであり、芯金33aの両端部を装置の不図示の手前側と奥側のシャーシ側板との間に回転自由に軸受け保持させて配設されている。なお、弾性加圧ローラには、表面性を向上させるために、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)チューブを被覆している。
加圧用剛性ステイ32の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材(不図示)との間にそれぞれ加圧バネ(不図示)を縮設することで、加圧用剛性ステイ32に押し下げ力を作用させている。これにより、耐熱樹脂製ベルトガイド部材30の下面に配設したセラミックヒータ31の下面と加圧ローラ33の上面とが定着ベルト11を挟んで圧接して定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ33は不図示の駆動手段により矢示のように反時計方向に回転駆動される。
この加圧ローラ33の回転駆動による加圧ローラ33と定着ベルト11との外面との摩擦力で定着ベルト11に回転力が作用する。その作用により、定着ベルト11はその内面が定着ニップ部Nにおいてセラミックヒータ31の下面に密着して摺動しながら、矢示のように時計方向に加圧ローラ33の回転周速度にほぼ対応した周速度でベルトガイド30の外回りに回転する
(加圧ローラ駆動方式)。
プリントスタート信号に基づいて加圧ローラ33の回転が開始され、またセラミックヒータ31のヒートアップが開始される。加圧ローラ33の回転による定着ベルト11の回転周速度が定常化し、セラミックヒータの上面に設けた温度検知素子34の温度が所定温度、例えば180℃に立ち上がる。その瞬間に、定着ニップ部Nの定着ベルト11と加圧ローラ33との間に被加熱材としての未定着トナー画像tを担持した記録媒体Sがトナー像担持面側を定着ベルト11側にして導入される。そして、記録媒体Sは定着ニップ部Nにおいて定着ベルト11を介してセラミックヒータ31の下面に密着し、定着ベルト11と一緒に定着ニップ部Nを移動通過していく。その移動通過過程において、定着ベルト11の熱が記録媒体Sに付与され、トナー画像tが記録媒体S面に加熱定着される。定着ニップ部Nを通過した記録媒体Sは定着ベルト11の外面から分離して搬送される。
加熱体としてのセラミックヒータ31は、定着ベルト11及び記録媒体Sの移動方向に直交する方向を長手とする低熱容量の横長の線状加熱体である。セラミックヒータ31は、ヒータ基板31aと、該ヒータ基板31aの表面に、その長手に沿って設けた発熱層31bと、さらにその上に設けた保護層31cと、摺動部材31dと、を基本構成とするものが好ましい。ここで、ヒータ基板31aは、チッ化アルミニウム等により構成することができる。発熱層31bは、例えばAg/Pd(銀/パラジウム)等の電気抵抗材料を約10μm、幅1~5mmにスクリーン印刷等により塗工することで形成することができる。なお、熱定着装置に用いるセラミックヒータはこのようなものに限定されるわけではない。
そして、セラミックヒータ31の発熱層31bの両端間に通電されることで、発熱層31bは発熱し、ヒータ31が急速に昇温する。
セラミックヒータ31は、ベルトガイド30の下面のほぼ中央部にガイド長手に沿って形成具備させた溝部に、保護層31c側を上向きに嵌入して固定支持させてある。定着ベルト11と接触する定着ニップ部Nには、このセラミックヒータ31の摺動部材31dの面と定着ベルト11の内面が相互接触摺動する。
以上のように、定着ベルト11は、シリコーンゴムを含む弾性層の厚み方向の熱伝導率を高めるとともに硬度も低く抑えている。このような構成により、定着ベルト11は未定着トナー像を効率的に加熱でき、かつ低硬度であるため、定着ニップ時において記録媒体Sに高画質な画像を定着させることができる。
以上のように、本開示の一態様によれば、本開示に係る電子写真用部材が定着部材が配置された熱定着装置が提供される。したがって定着性能と画質に優れた定着部材を配置した熱定着装置を提供することができる。
以下に、実施例を用いて本開示をより詳細に説明する。
[実施例1]
(1)液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の調製
まず、成分(a)として分子鎖両末端にのみ不飽和脂肪族基であるビニル基を有し、その他不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基としてメチル基を有するシリコーンポリマーを100質量部準備した。このシリコーンポリマー(商品名:DMS-V35、Gelest社製、粘度5000mm/s)を以降「Vi」と称する。
次いで、このViに成分(d)のフィラーとして、大径金属ケイ素(商品名:#350、キンセイマテック株式会社製、体積平均粒径10μm)(以下、「第1のフィラー」ともいう)をシリコーン成分に対して30面積%となるように、148質量部添加し、小径金属ケイ素(商品名:FINE、キンセイマテック株式会社製、体積平均粒径3μm)(以下、「第2のフィラー」とも記載)をシリコーン成分に対して10面積%となるように17質量部添加し、総フィラー量40面積%として、添加し、自公転ミキサー(商品名:ARV-310、シンキー社製)にセットし、2000rpmで4分攪拌混合して混合物1-1を得た。その後、混合物1-1を常温(25℃)下で40日間静置保管した。
次いで、硬化遅延剤である1-エチニル-1-シクロヘキサノール(東京化成工業株式会社製)0.2質量部を同質量のトルエンに溶解したものを、混合物1-1中に添加して混合物1-2を得た。
次いで、成分(c)としてヒドロシリル化触媒(白金触媒:1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、および2-プロパノールの混合物)0.1質量部を、混合物1-2中に添加して混合物1-3を得た。
さらに、成分(b)としてシロキサン骨格が直鎖状で、ケイ素に結合した活性水素基を側鎖にのみ有するシリコーンポリマー(商品名:HMS-301、Gelest社製、粘度30mm/s、以降「SiH」と称する)を、1.5質量部計量した。これを、混合物1-3に添加し、十分に混合することで、弾性層形成用の付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物を得た。
(2)定着ベルトの作製
基体として、内径55mm、幅420mm、厚さ65μmのSUSエンドレスベルトを用意した。尚、一連の製造工程中、エンドレスベルトは、その内部に中子を挿入して取り扱った。
基体の外周面に、プライマー(商品名:DY39-051A/B;東レ・ダウコーニング株式会社製)を乾燥重量が20mgとなるように略均一に塗布し、溶媒を乾燥させた後160℃設定の電気炉で30分間の焼付け処理を行った。
このプライマー処理された基体上に、リングコート法で上記シリコーンゴム組成物を塗布し厚さ250μmのシリコーンゴム組成物層を形成した。これを未硬化エンドレスベルトと称する。
次に、帯電領域幅が295mmのコロナ帯電器を、未硬化エンドレスベルトの母線に沿って対向配置し、未硬化エンドレスベルトを100rpmで回転させながら、硬化前の弾性層表面にAC電界を印加した。条件は、コロナ帯電器の放電ワイヤへの供給電流が±150μA、グリッド電極電位が±300V(Vp-p:600V)、周波数0.025Hz、帯電時間100秒、グリッド電極とベルトの距離が3mmで行った。
この帯電させた未硬化エンドレスベルトを160℃の電気炉で1分間加熱した(一次硬化)後、200℃の電気炉で30分間加熱して(二次硬化)、シリコーンゴム組成物を硬化させることにより硬化した弾性層を備えたエンドレスベルトを得た。
次に、硬化したエンドレスベルトの弾性層の表面に、接着層として付加硬化型シリコーンゴム接着剤(商品名:SE1819CV A/B;東レ・ダウコーニング株式会社製)を厚さがおよそ20μm程度になるように略均一に塗布した。これに、離型層として内径53mm、厚み40μmのフッ素樹脂チューブ(商品名:NSE;グンゼ株式会社製)を拡径しつつ積層した。その後、フッ素樹脂チューブの上からベルト表面を均一に扱くことにより、過剰の接着剤を弾性層とフッ素樹脂チューブの間から、5μm程度まで薄くなるように扱き出した。
このエンドレスベルトを200℃に設定した電気炉にて1時間加熱することで接着剤を硬化させて当該フッ素樹脂チューブを弾性層上に固定した。得られたエンドレスベルトの両端部を切断し、幅が368mmの定着ベルトを得た。
(3)定着ベルト弾性層の特性評価
(3-1)弾性層の厚み方向の熱伝導率
弾性層の厚み方向の熱伝導率λは、以下の式から算出した。
λ=α×C×ρ
式中、λは弾性層の厚み方向の熱伝導率(W/(m・K))、αは厚み方向の熱拡散率(m/s)、Cは定圧比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m)である。
ここで、厚み方向の熱拡散率αと定圧比熱Cと密度ρの値は以下の方法により求めた。
・熱拡散率α
弾性層の厚み方向の熱拡散率αは、周期加熱法熱物性測定装置(商品名:FTC-1、アドバンス理工株式会社製)を用いて、室温(25℃)で測定した。弾性層から面積が8×12mmの試料片にカッターで切り取り、計5個の試料片を作製し、それぞれの試料片の厚みをデジタル測長器(商品名:DIGIMICRO(登録商標) MF-501 フラット測定子φ4mm;ニコン社製)を用いて測定した。次に、それぞれの試料片に対し、計5回測定し、その平均値(m/s)を求めた。尚、測定は1kgの重りを使用して試料片を加圧しながら行った。
その結果、シリコーンゴム弾性層の厚み方向の熱拡散率αは9.33×10-7/s、であった。
・定圧比熱C
弾性層の定圧比熱は、示差走査熱量測定装置(商品名:DSC823e、メトラー・トレド株式会社製)を用いて測定した。
具体的には、試料用のパン及び参照用のパンとして、アルミニウム製のパンを用いた。
まず、ブランク測定として、両方のパンが空の状態で、10分間、15℃の定温に保った後、215℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、さらに10分間、215℃の定温で保つプログラムで測定を実施した。次に、低圧比熱が既知である10mgの合成サファイアを基準物質に用い、同じプログラムで測定を行った。次いで、基準物質の合成サファイアと同量の10mgの測定試料を弾性層から切り出した後、試料パンにセットし、同じプログラムで測定を実施した。これらの測定結果を上記示差走査熱量測定装置に付属の比熱解析ソフトウェアを用いて解析し、5回の測定結果の平均値から、25℃における定圧比熱Cを算出した。
その結果、シリコーンゴム弾性層の定圧比熱は、1.05J/(g・K)であった。
・密度ρ
弾性層の密度は、乾式自動密度計(商品名:アキュピック1330-01、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、10cmの試料セルを用い、セル容積のおおよそ8割程度を満たすように試料片を弾性層から切り出し、この試料片の質量を測定した後、試料セルに入れた。この試料セルを装置内の測定部にセットし、測定用のガスとしてヘリウムを用い、ガス置換の後、容積測定を10回実施した。各回について試料片の質量と測定された容積から、弾性層の密度を算出し、その平均値を求めた。
その結果、シリコーンゴム弾性層の密度は1.53g/cmであった。
以上より、単位換算した弾性層の定圧比熱C(J/(kg・K))と密度ρ(kg/m)、および測定した熱拡散率α(m/s)から、弾性層の厚み方向の熱伝導率λを算出した結果、1.50W/(m・K)であった。
(3-2)弾性層の体積抵抗率
弾性層の体積抵抗率は、抵抗率計(商品名:ハイレスタUP(MCP-HT450型)、三菱化学アナリテック社製)を用いて測定した。具体的には弾性層から試験片をカッターで切り取り、切り取った試験片の面積を50×50mmとした後、URSプローブを使用してDC250V印加で10秒間測定した。測定環境は、23±3℃、50±5%RHである。なお、測定は5回実施し、その平均値を求めた。
(3-3)第1及び第2のフィラーの平均面積割合、fL、fS及びΦSの評価
作製した定着ベルトの任意の10箇所から、縦5mm、横5mm、厚みが定着ベルトの全厚みである試料を、10個採取した。得られた10個の試料のうち、5個の試料については、定着ベルトの周方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-周方向の第一断面401-1を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工した。また、残りの5個の試料については、定着ベルトの周方向に直交する方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-軸方向の第2断面401-2を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工した。断面の研磨加工には、クロスセクションポリッシャ(商品名:SM09010、日本電子社製)を用いた。研磨加工は、アルゴンガス雰囲気下で印加電圧を4.5Vに設定し、11時間各断面にイオンビームを照射した。
続いて、研磨加工された第1断面を有する5個の試料の各々について、第1断面を電界放出型の走査型電子顕微鏡観察((商品名:FE-SEM SIGMA500 VP、Z
EISS社製)で観察し、縦150μm×横100μmの断面画像(SEM画像)を取得した。観察条件は2000倍の反射電子像モードとし、加速電圧は8.0kV、ワーキングディスタンスは4mmとした。また、解像度は、SEM画像中の第2のフィラーを解析するに十分な解像度、例えば、縦768ピクセル×横1024ピクセル、とした。
また、研磨加工された第2断面を有する5個の試料の各々について、第2断面を上記と同様にしてSEMで観察し、縦150μm×横100μmの断面画像(SEM画像)を取得した。
なお、第1断面及び第2断面からのSEM画像の取得に際し、SEM画像の縦方向が、弾性層の厚さ方向と平行となり、SEM画像の横方向が弾性層の周方向または軸方向と平行となるように調整した。
次に、取得した10個のSEM画像の各々について、SEM画像中の金属ケイ素フィラーの部分が白く、シリコーンゴムの部分が黒くなるように二値化処理を行って二値化像を得た。二値化処理は、非特許文献1に記載の大津法に従って、画像処理ソフトウェア(商品名:「ImageJ」、アメリカ国立衛生研究所製)を用いて行った。
得られた10個の二値化像の各々について、金属ケイ素フィラーの円相当径を算出し、円相当径が5μm以上の第1のフィラーのみを残した画像(「第1フィラー画像」)、及び円相当径が5μm未満の第2のフィラーのみを残した画像(「第2フィラー画像」に分割した。こうして得られた第1フィラー画像から、第1のフィラーの総面積を求め、二値化像の面積(150μm×100μm)に対する比率(面積比率)を求めた。同様に、第2フィラー画像から、第2のフィラーの総面積を求め、二値化像の面積に対する比率を求めた。そして、10個の二値化像の各々から算出した第1のフィラーの面積割合の平均値、及び10個の二値化像の各々から算出した第2のフィラーの面積割合の平均値を求めた。
次に、第1フィラー画像及び第2フィラー画像に対して二次元フーリエ変換を行って、弾性層の厚さ方向についてパワースペクトルを積分して、第1のフィラーと第2のフィラーの弾性層中における配列の方向及び配列の程度を表す楕円プロットを得た。なお、二次元フーリエ変換では、二値化像の周期性に対して直交方向にピークが出現するため、二次元フーリエ変換の結果を、90°位相をずらして表示した楕円プロットを作成した。したがって、得られた楕円プロットにおいては、90°-270°方向が弾性層の厚み方向を示し、0°-180°方向が弾性層の周方向又は軸方向を示す。こうして得た楕円プロットにおいて、長半径xの長さをx1、短半径yの長さをy1としたとき、前記計算式(1)を用いて楕円プロットの扁平率である配列度fを求めた。また、第2フィラー画像から作成した楕円プロットについては、楕円プロットの長半径xが0°-180°方向(横軸方向)に対してなす角度Φ(配列角度)を求めた。
そして、10枚の第1フィラー画像から作成した楕円プロットから求めた配列度fの平均値fLを求めた。また、10枚の第2フィラー画像から作成した楕円プロットから求めた配列度fの平均値fS、及び配列角度Φの平均値ΦSを求めた。
(3-4)質量減少率の測定
(3-4-1)サンプルシートの作製
厚さ50μmのステンレス鋼(SUS)製のフィルム上にフィルムアプリケーター(オールグッド社製)を用いて、弾性層形成用の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を膜厚が250μmとなるように10mm/secの速度でコートした。その後160℃で1分間加熱して、該液状シリコーンゴム組成物を一次硬化させた後、温度200℃で30分間加熱して該シリコーンゴム組成物層を二次硬化させて弾性層サンプルシートを作製した。
(3-4-2)質量減少率の測定
上記弾性層サンプルシートから、2gのサンプルを採取し、ドデシルベンゼン硫酸を濃度10wt%で含む温度40℃のノルマルプロピルブロマイド液体(商品名:eソルブ21RS、カネコ化学社製)50mlに浸漬した。そして、浸漬したサンプルを40kHzの超音波印加下で60分洗浄した。これにより硬化したシリコーンゴムを溶解させ、金属ケイ素フィラーを抽出した。次いで、得られた金属ケイ素フィラーを直径40mmの桐山ロートと桐山ロート用ろ紙No.5C(保留粒子1μm)を用いて、温度25℃のトルエン10mlで減圧濾過洗浄を3回行った。こうして洗浄した金属ケイ素フィラーを温度120℃で1時間乾燥させた。乾燥させた金属ケイ素フィラーを50mg秤量してTGA測定に供した。TGA装置は、「TGA/DSC 3+」(商品名、メトラートレド社製)を用い、乾燥空気80ml/分下、温度50℃から温度500℃まで5℃/分で昇温させ、その時の質量変化を測定した。得られた質量変化のデータから300~500℃の間における質量の減少率(%)を算出した。
(3-5)酸化膜の厚さの測定
(3-4-2)に記載した方法と同様にして弾性層サンプルシートから乾燥させた金属ケイ素フィラーを得た。得られた金属酸化フィラーの表面の酸化膜の厚さを、をFIB-TEM法を用いて測定した。金属ケイ素フィラーを集束イオンビーム加工(FIB加工)により掘削加工し、面積1μm×1μm、厚み100nmの薄片を切り出した。得られた薄片を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、500nm×500nmの視野で観察を行った。測定は、1個の金属ケイ素フィラーの5か所を測定し、その平均値を酸化膜の厚みとした。なお、測定の前処理条件および測定条件としては以下の通りとした。
コーティング:日立製E-1030(Pt-Pd膜、15mA、60秒×2回)、
FIB-SEM:FEI製Helio600(μサンプリング、FIB:30kVGa+)、
TEM:FEI製TecnaiF30(300kV)。
(4)実機評価(定着性、耐久性、剥離放電跡)
<定着性評価>
定着ベルトを、電子写真方式の複写機(商品名:imagePRESS C850、キヤノン社製)の熱定着装置に組み込んだ。そして、この熱定着装置を、上記複写機に装着した。この複写機を用いて、定着温度を標準の定着温度よりも低く設定して、坪量300g/mの厚紙(商品名:UPM Finesse gloss 300g/m、UPM社製)にシアンのベタ画像の形成を行った。
具体的には、熱定着装置の定着温度を、上記複写機における標準の定着温度である195℃から175℃に調整して、シアンのベタ画像を5枚連続して形成し、5枚目のベタ画像について画像濃度を測定した。次いで、当該ベタ画像のトナー面を、4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけたシルボン紙でトナー面を同一方向に3回摺擦し、摺擦後の画像濃度を測定した。そして、摺擦前後での画像濃度の低下率(=[摺擦前後での画像濃度差/摺擦前の画像濃度]×100)が、5%未満である場合に、トナーが厚紙に定着したものと判断した。その結果を下記の基準で評価した。画像濃度は、反射濃度計(マクベス社製)を用いた。
A:定着温度175℃以上180℃未満にて、トナーが厚紙に定着した。
B:定着温度180℃以上190℃未満にて、トナーが厚紙に定着した。
C:定着温度190℃以上195℃未満にて、トナーが厚紙に定着した。
<耐久性評価>
定着温度を標準の定着温度(195℃)とした状態で、A4サイズの普通紙へのシアンのベタ画像の連続形成を行い、定着ベルトの弾性層の破壊や塑性変形が生じた時点における枚数を記録し、以下の基準で評価した。なお、画像の枚数が74万枚に至ってもなお定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が生じなかった場合には、74万枚で画像形成を中止した。
A:74万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が認められない。
B:60万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じなかったが、74万枚の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じた。
C:60万枚未満の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が生じた。
<画像評価>
上記(2)で得られた定着ベルトを、定着評価と同様、電子写真方式の複写機(商品名:imagePRESS C850、キヤノン社製)の熱定着装置に組み込んだ。そして、この熱定着装置を、上記複写機に装着した。この複写機を用いて、定着温度を標準の定着温度に設定して、坪量300g/mの厚紙(商品名:UPM Finesse gloss 300g/m2、UPM社製)にシアンのベタ画像の形成を行った。通紙5枚目のベタ画像を目視で観察し、光沢ムラの有無及びその程度を下記の基準で評価した。
A:光沢ムラがなく極めて優れていた。
B:光沢ムラがなく優れていた。
C:やや光沢ムラがあった。
<剥離放電跡評価>
定着温度を標準の定着温度(195℃)とした状態で、速度を246mm/secとなるように調整した。
用紙として、坪量が209g/m2のA4横サイズ(用紙の長辺が用紙搬送方向Qに対して垂直に位置している状態)のカット紙と、坪量が220g/m2のLTR横サイズのカット紙を用いた。
試験環境は、室温23℃湿度15%で行った。画像形成装置と用紙を低湿環境に十分に放置後に、まずA4用紙を100枚連続で通紙した(定着フィルムの通紙領域の電位を一定にさせた)。その後、ハーフトーン画像でLTR用紙を5枚連続通紙した。5枚目の画像上での、スジ、グロスムラ等の画像不良の有無を目視で確認し、以下の基準で評価した。
A:5枚通紙中で画像不良が発生する用紙がない。
B:5枚通紙中剥離放電跡による画像不良が軽微に確認されたが、実使用上問題ないレベルだった。
C:5枚通紙中で画像不良が発生する用紙があった。
[実施例2~3]
実施例1において、第1のフィラー及び第2のフィラーの配合量を、第1のフィラーの面積割合の平均値及び第2のフィラーの面積割合の平均値が表1に示す値となるように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして、この液状シリコーンゴム組成物を用い、また、電場付与時間を20秒に変更した。それら以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例4~6]
実施例1において、第1のフィラー及び第2のフィラーの配合量を、第1のフィラーの面積割合の平均値及び第2のフィラーの面積割合の平均値が表1に示す値となるように変更した。それ以外は実施例1と同様にして付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして、この液状シリコーンゴム組成物を用い、また、電場付与時間を300秒に変更した以外は実施例1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例7]
実施例1において、第1のフィラー及び第2のフィラーの配合量を、第1のフィラーの面積割合の平均値及び第2のフィラーの面積割合の平均値が表1に示す値となるように変更した。それ以外は実施例1と同様にして付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして、この液状シリコーンゴム組成物を用い、また、電場付与時間を200秒に変更した以外は実施例1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例8]
電場付与時間を60秒に変更した以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例9]
実施例1における混合物1-1の調製において用いた自転公転ミキサーに代えてプラネタリーミキサー(商品名:ハイビスミックス2P-01型、プライミクス社製)を用いて、10rpmで160分攪拌混合して混合物9-1を得た。得られた混合物9-1を、常温で5日間静置保管した。混合物1-1に代えて、静置保管後の混合物9-1を用いた以外は、実施例1と同様にして付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして、この液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は実施例1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例10]
大径金属ケイ素(商品名:#350、キンセイマテック株式会社製、体積平均粒径10μm)及び小径金属ケイ素(商品名:FINE、キンセイマテック株式会社製、体積平均粒径3μm)を各々ハイブリダイザー(商品名:ハイブリダイゼーションシステムHMS-1-2L、奈良機械製作所製)に投入し、回転速度6600min-1、処理時間10分で処理し、表面に厚さ5nmの酸化膜を形成した。こうして表面に酸化膜を形成した大径金属ケイ素及び小径金属ケイ素を用いた以外は、実施例1における混合物1-1と同様にして混合物10-1を調製した。得られた混合物10-1を常温下に6日間静置保管した。静置保管後の混合物10-1を用いた以外は、実施例1と同様にして液状シリコーンゴム組成物を調製した。なお、混合物10-1は、1日以上静置保管することなしに液状シリコーンゴム組成物の調製に用いた。そして得られた液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例11]
大径金属ケイ素及び小径金属ケイ素の処理時間を5分として、表面の酸化膜の厚さを3nmとした。得られた大径金属ケイ素及び小径金属ケイ素を用いた以外は、実施例10と同様にして液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして得られた液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は、実施例10と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例12]
大径金属ケイ素及び小径金属ケイ素の処理時間を20分として、表面の酸化膜の厚さを20nmとした。得られた大径金属ケイ素及び小径金属ケイ素を用いた以外は、実施例10と同様にして液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして得られた液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は、実施例10と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例1]
実施例1において、第1のフィラー及び第2のフィラーの配合量を、第1のフィラーの面積割合の平均値及び第2のフィラーの面積割合の平均値が表1に示す値となるように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして得られた液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例2]
混合物1-1の静置保管期間を6日間とした以外は実施例1と同様にして液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして、得られた液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は、実施例1と同様いして定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例3]
電場配向処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例4]
大径金属ケイ素及び小径金属ケイ素の処理時間を30分、回転速度を8300min-1として、表面の酸化膜の厚さを23nmとした。得られた大径金属ケイ素及び小径金属ケイ素を用いた以外は、実施例10と同様にして液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして得られた液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は、実施例10と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例5]
実施例1において、第1のフィラー及び第2のフィラーの配合量を、第1のフィラーの面積割合の平均値及び第2のフィラーの面積割合の平均値が表1に示す値となるように変更した。それ以外は実施例1と同様にして付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物を調製した。そして、この液状シリコーンゴム組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
以上の結果を表1及び表2に示す。
Figure 2023159036000006
Figure 2023159036000007
実施例1~9は、弾性層の熱伝導率が1.30W/(m・K)以上と高かったにもかかわらず、体積抵抗率ρvは、9.0LOGΩ・cm以上であった。これは、第2のフィラーが弾性層の厚さ方向に配列していたこと、及び、金属ケイ素フィラーがその表面に多くのバウンドラバーを有していたことによるものと考えられる。
また、実施例6~9では、以下の結果が得られた。円相当径が5μm未満の第2のフィラーが占める面積割合の平均値が10%以上、20%以下である。また5μm以上の第1のフィラーの面積割合の平均値が22%以上32%以下となっている。そして、熱伝導率が1.50W/(m・K)と高くなっている。これらのことから、実施例6~9では、特に良好な定着性が確認された。更に実施例7~9は、平均配列度fが0.15以下、fが0.20以上0.50以下、平均配列角度Φが60°以上120°以下に調整されているため、高熱伝導を維持しつつ、画像性も良好だった。
実施例10~12については、金属ケイ素フィラーが、その表面に厚さ3~20nmの酸化膜を有していた。このことにより、第2のフィラーが弾性層の厚さ方向に配列して形成された伝熱パスが、導電パスとしては十分に機能しなかったと考えられる。その結果として、実施例10~12に係る弾性層は厚さ方向の熱伝導率は高いものの、体積抵抗率の低下は抑制されていた。このことにより、定着性評価の結果はランクAであり、また、剥離放電跡の評価結果もランクBであった。
比較例1については、弾性層中の金属ケイ素フィラーの含有量が多かった(第1のフィラーと第2のフィラーの平均面積割合の和が43%)。そのため、弾性層の厚さ方向の熱伝導率は高かった。金属ケイ素フィラーの表面には多くのバウンドラバーが存在していたため、弾性層の体積抵抗率も高く保たれていた。しかしながら、金属ケイ素フィラーの含有量が多かったことにより、定着ベルトの耐久性評価においてランクCとなった。
比較例2については、第2のフィラーは弾性層の厚さ方向に高度に配列していた。そのため、弾性層の厚さ方向の熱伝導率は高かった(λ=1.50W/(m・K))。しかしながら、金属ケイ素フィラーの表面にバウンドラバーが十分に存在していなかったため、弾性層中に金属ケイ素フィラーによって形成された伝熱パスが導電パスとしても機能し、弾性層の体積抵抗率が低下した(ρv=7.0LogΩ・cm)。このことにより、剥離放電跡の評価結果がランクCであった。
比較例3については、弾性層の形成工程において電場付与を行わなかった。そのため、第2のフィラーは、弾性層の厚さ方向に配列していなかった(fS=0.12)。その結果、弾性層の厚さ方向の熱伝導率が低く(λ=0.98W/(m・K))、定着性評価の評価結果がランクCとなった。
比較例4については、第2のフィラーは弾性層の厚さ方向に配列していたが、弾性層の厚さ方向の熱伝導率が低かった(λ=1.20W/(m・K))。その結果、定着性評価の結果がランクCであった。このような結果は、弾性層中の金属ケイ素フィラーが表面に厚さ23nmの酸化膜を有していたため、金属ケイ素フィラー間の伝熱が厚い酸化膜によって妨げられたことによると考えられる。
比較例5では、第2のフィラーの平均面積割合が30%とするために、弾性層形成用の液状シリコーンゴム組成物中の第2のフィラーの配合量を増加させた。このことにより、液状シリコーンゴム組成物の粘度が上昇した。そのため、この液状シリコーンゴム組成物の層を形成した後の当該層への電場付与によっても第2のフィラーが当該層中を移動し難かったと考えられる。その結果、第2のフィラーの弾性層の厚み方向への配列が不十分となったと考えられる(φS=55°)。また、このことにより、比較例5に係る定着ベルトの弾性層の厚み方向の熱伝導率も、1.02W/(m・K)と低い値となり、その結果として、定着性評価の評価結果は、ランクCとなった。
以上の実施例及び比較例は定着ベルトについて説明したが、加熱ローラの場合にも同様の傾向にあることは容易に理解できるものである。
以上説明したように、本開示の電子写真用部材は、プリントスピードの高速化や立上げ時間の短縮に求められる熱伝導性、低体積比熱、を満足し、また、剥離放電跡を抑制するために有効な高体積抵抗の弾性層を有する熱定着装置用の定着部材として利用可能である。
3 基体
4 弾性層
401-1 第1断面
401-2 第2断面
7 大粒径フィラー
8 小粒径フィラー
100 定着部材(電子写真用部材)

Claims (13)

  1. エンドレス形状を有する電子写真用部材であって、基体と、該基体の外周面上の弾性層と、を有し、
    該弾性層は、シリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散された金属ケイ素フィラーを含み、
    該弾性層の厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像、及び、該弾性層の厚み-軸方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像の各々における該金属ケイ素フィラーが占める面積割合の平均値が42%以下であり、
    該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλ、体積抵抗率の常用対数値をρvとしたとき、λが1.30W/(m・K)以上、ρvが9.0LOGΩ・cm以上、であることを特徴とする電子写真用部材。
  2. 前記金属ケイ素フィラーが、円相当径が5μm以上の第1のフィラーと、円相当径が5μm未満の第2のフィラーと、を含み、
    前記第1の二値化像及び前記第2の二値化像の各々における該第1のフィラーが占める面積割合の平均値が21~33%であり、
    該第1の二値化像及び該第2の二値化像の各々における該第2のフィラーが占める面積割合の平均値が7~21%である、請求項1に記載の電子写真用部材。
  3. 前記金属ケイ素フィラーが、円相当径が5μm以上の第1のフィラーと、円相当径が5μm未満の第2のフィラーと、を含み、
    前記第1の二値化像及び前記第2の二値化像の各々における該第1のフィラーが占める面積割合の平均値が22~32%であり、
    該第1の二値化像及び該第2の二値化像の各々における該第2のフィラーが占める面積割合の平均値が10~20%である、請求項1に記載の電子写真用部材。
  4. 前記第1のフィラーの前記弾性層の厚さ方向への平均配列度fLが、0.00以上、0.17以下であり、
    前記第2のフィラーの該弾性層の厚さ方向への平均配列度fSが、0.19以上、0.51以下であり、
    該第2のフィラーの該弾性層の厚さ方向への平均配列角度ΦSが、59°以上、120°以下である、請求項2に記載の電子写真用部材。
  5. 前記第1のフィラーの前記弾性層の厚さ方向への平均配列度fLが、0.00以上、0.15以下であり、
    前記第2のフィラーの該弾性層の厚さ方向への平均配列度fSが、0.20以上、0.50以下であり、
    該第2のフィラーの該弾性層の厚さ方向への平均配列角度ΦSが、60°以上、120°以下である、請求項1に記載の電子写真用部材。
  6. 前記弾性層から2gのサンプルを採取し、
    該サンプルを、ドデシルベンゼン硫酸を濃度10wt%で含む温度40℃のノルマルプロピルブロマイド液体50mlに浸漬し、40kHzの超音波印加下で60分洗浄し、次いで、25℃のトルエン10mlで減圧濾過洗浄を3回行って得た前記金属ケイ素フィラーの熱重量分析における300℃~500℃の間における質量の減少率が0.05%以上である、請求項1に記載の電子写真用部材。
  7. 前記金属ケイ素フィラーが、表面に厚さが3nm以上20nm以下の酸化膜を有する金属ケイ素フィラーを含む、請求項1に記載の電子写真用部材。
  8. 前記電子写真用部材が、熱定着装置用の定着部材である請求項1に記載の電子写真用部材。
  9. 加熱部材と、該加熱部材に対向して配置されている加圧部材とを有する熱定着装置であって、該加熱部材が、電子写真用部材であり、
    該電子写真用部材は、
    エンドレス形状を有し、
    基体と、該基体の外周面上の弾性層と、を有し、
    該弾性層は、シリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散された金属ケイ素フィラーを含み、
    該弾性層の厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像、及び、該弾性層の厚み-軸方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像の各々における該フィラーが占める面積割合の平均値が42%以下であり、
    該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλ、体積抵抗率の常用対数値をρvとしたとき、λが1.30W/(m・K)以上、ρvが9.0LOGΩ・cm以上である、ことを特徴とする熱定着装置。
  10. 前記電子写真用部材の基体を加熱する加熱手段を有する請求項9に記載の熱定着装置。
  11. 前記加熱手段が誘導加熱手段である請求項10に記載の熱定着装置。
  12. 前記加熱手段が、前記基体を加熱するヒータである請求項9に記載の熱定着装置。
  13. 前記ヒータが、前記基材の内周面に接して配置されている請求項12に記載の熱定着装置。
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