JP2022185416A - 定着部材及び熱定着装置 - Google Patents

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康弘 宮原
Yasuhiro Miyahara
松崇 前田
Matsutaka Maeda
祐二 北野
Yuji Kitano
真琴 相馬
Makoto Soma
雄太郎 吉田
Yutaro Yoshida
茂夫 黒田
Shigeo Kuroda
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Abstract

【課題】通紙域での厚み方向への高い熱伝導性、ならびに、繰り返し圧縮などに対する高耐久性、さらには非通紙域では過度の昇温を抑制するために有効な熱定着装置用の定着部材が提供する。【解決手段】基体と該基体上の弾性層を有し、該弾性層はシリコーンゴムおよびフィラーを含み、該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλnd、長手方向の熱伝導率をλmd、該弾性層の長手方向の全長を1Lとしたとき、λnd/λmdが弾性層の両端から夫々0.12L以上の長手中央領域4cでは1.1以上、弾性層の両端から0.05L以下の端部領域4aでは0.9以下の関係を満たすことを特徴とする定着部材を用いる。【選択図】図2

Description

本開示は、複写機、プリンター等の電子写真画像形成装置の熱定着装置に用いられる定着部材に関する。また、本開示は該定着部材を用いた熱定着装置に関する。
複写機やレーザープリンタ等の電子写真方式に用いられる熱定着装置では、一対の加熱されたローラとローラ、フィルムとローラ、ベルトとローラ、ベルトとベルト、といった回転可能な部材同士が圧接されている。そして、これらの部材間に形成された圧接部位(以下、「定着ニップ部」ともいう)に、未定着トナーで形成された画像(以下、「未定着トナー画像」ともいう)を担持した記録媒体を導入し、該未定着トナーを加熱、溶融せしめて記録媒体に定着させる。
記録媒体上に保持された未定着トナー画像が接する熱定着装置における加熱用の回転可能な部材は、定着部材と称され、その形状に応じて定着ローラ、定着フィルムまたは定着ベルトなどと呼ばれる。
近年、有彩色の画像に対しても均一な光沢画像の出力が要求されるようになっている。均一な光沢画像の形成には、定着ニップ内で定着部材の表面を紙の凹凸形状に追従させ、未定着トナー像に均一に熱と圧力とを加えることが有効である。そのために、定着部材には、シリコーンゴムの如きゴムを含む弾性層を有するものがある。このような弾性層を備えた定着部材においては、プリントスピードのより一層の向上や省エネルギー性の向上の観点から弾性層の厚み方向の熱伝導率のさらなる向上が求められている。しかしながら、高い熱伝導性を持たせるために熱伝導性のフィラーを弾性層中に多く含有させた場合、弾性層の硬度が上昇し、弾性機能が損なわれることがある。そのため、熱伝導性のフィラーの配合量を増やすことなく、熱伝導性を高める工夫が必要となる。そして、特許文献1には、フィラーを電場の作用によって厚み方向に配向させて、厚み方向に高い熱伝導率を有し、かつ、低硬度な定着部材を得る方法が開示されている。
特開2019-215531号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献1に係る定着部材においては、弾性層中のフィラーの含有量を抑えつつ、弾性層の厚み方向の熱伝導率を向上させることができた。しかしながら、特許文献1に係る定着部材の弾性層の面内方向の熱伝導率が相対的に低下する場合があった。このような定着ベルトは、未定着トナーを紙に熱定着させる工程において、紙と接しない領域(以降、「非通紙領域」ともいう)の温度が高くなる場合があった。
本開示の一態様は、定着工程において紙と接する領域(以降、「通紙領域」ともいう)における厚み方向の熱伝導性が高く、非通紙領域においては過度の昇温を防止し得る定着部材の提供に向けたものである。また、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る熱定着装置の提供に向けたものである。
本開示の一態様によれば、基体と、該基体上の弾性層とを有し、
該弾性層はシリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散されたフィラーを含み、
該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλnd、長手方向の熱伝導率をλmd、弾性層の長手方向の全長をLとしたとき、
該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×L以上の中央領域におけるλnd/λmdが1.1以上であり、かつ、
該弾性層は、該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの間にλnd/λmdが0.9以下である端部領域を有する、熱定着装置用の定着部材が提供される。
また、本開示の他の態様によれば、加熱のための定着部材と、該定着部材に対向して配置されている加圧部材と、を有する熱定着装置であって、該定着部材が、上記の定着部材である熱定着装置が提供される。
本開示の一態様によれば、定着工程において通紙領域における厚み方向の熱伝導性が高く、非通紙領域においては過度の昇温を防止し得る定着部材を得ることができる。また、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る熱定着装置の提供に向けたものである。本開示の一態様によれば、通紙領域での厚み方向への高い熱伝導性、ならびに、繰り返し圧縮などに対する高耐久性を有し、さらには非通紙領域の過度の昇温を抑制するために有効な熱定着装置用の定着部材が提供される。
本開示の実施形態の定着部材の熱伝導方向を説明する概念図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA-A線での概略断面図である。 本開示の実施形態の定着部材における弾性層の長手方向の領域ごとの熱伝導率を説明するための概念図であり、(a)は両端から0.05Lと0.12Lの位置を示し、(b)は中間領域のない第一の形態、(c)は中間領域のある第二の形態の定着部材弾性層を示す概略図である。 本開示の弾性層中のフィラーの配向配列状態を説明するための概念図である。 本開示の実施形態の定着部材の弾性層を形成するためのコロナ帯電器の(a)俯瞰図と(b)断面図である。 (a)はベルト形態、(b)はローラ形態の、本開示の実施形態に係る定着部材の概略断面模式図である。 ベルト形態の定着部材の弾性層の第1断面と第2断面を示す図である。 弾性層中のフィラーの配列度及び配列角度の確認方法を示す模式図である。 表面層を積層する工程の一例の模式図である。 定着ベルト-加圧ベルト方式の熱定着装置の一例の断面模式図である。 定着ベルト-加圧ローラ方式の熱定着装置の一例の断面模式図である。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本開示の一態様に係るエンドレス形状を有する定着部材(以降、「定着ベルト」ともいう)100の熱伝導方向を説明するための概念図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA-A線における断面、すなわち、周方向に直交する方向の断面を示す図である。
定着ベルト100は、エンドレス形状を有する基体3の周面上に弾性層4を有する。ここで、弾性層4の厚み方向(nd)の熱伝導率をλnd、弾性層4の長手方向(md)の熱伝導率をλmdとする。定着ベルト100は図1(a)に示す通り、回転可能であり、回転する方向を定着ベルトの周方向(rd)という。また、弾性層の長手方向(md)とは、定着ベルトの周方向に直交する方向と定義される。
そして、定着ベルト100においては、弾性層における厚み方向と長手方向の熱伝導率の比(λnd/λmd、熱異方性ともいう)を、該長手方向の領域で制御することにより、未定着トナーに対する効率的な熱供給と、非通紙領域の過度の昇温の抑制とを達成している。具体的には、定着ベルト100の弾性層4は、シリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散されたフィラーを含む。
ここで、該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλnd、該弾性層の長手方向の熱伝導率をλmd、該弾性層の長手方向の全長をLとする。このとき、該弾性層は、その長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×L以上の中央領域においては、λnd/λmdが1.1以上である。また、該弾性層は、該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの間に、λnd/λmdが0.9以下である端部領域を有する。
図2は本開示の一態様に係る定着ベルト100の弾性層4の長手方向の領域ごとの熱異方性に係る説明図である。図2(a)に示すように、弾性層4の長手方向の全長をLとしたとき、図2(b)に示した通り、弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×L以上の中央領域4cは、定着工程において紙が高頻度で接触する領域(以降、「通紙領域」ともいう)に該当する。ここで、「0.12L以上」とは、例えば、定着部材の長手方向の全長Lを400mmとした場合における、紙の幅297mm(非通紙幅両側51.5mm、51.5/400≒0.12)に基づく値である。そして、この領域における熱伝導率比λnd/λmdは、1.1以上である。
また、本開示の一態様に係る定着ベルトの弾性層は、図2(c)に示すように、弾性層の長手方向の各々の端から弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの領域にλnd/λmdが0.9以下である端部領域4aが存在する。弾性層の長手方向両端から弾性層の長手方向中央に向かて0.12×Lまでの領域は、定着工程において紙が接しないことがある非通紙領域に該当する。中でも、弾性層の長手方向の端から長手方向中央に向かって、0.05×Lまでの領域は、定着工程において特に紙と接しない確率が高い領域である。ここで、「0.05×L」とは、定着部材の長手方向の全長Lを例えば330mmとした場合における紙サイズ幅297mm(非通紙幅両側16.5mm、16.5/330≒0.05)に基づく値である。従って、本開示に係る定着ベルトにおいては、弾性層の長手方向の両端から弾性層の長手方向中央に向かって0.05×Lまでの領域は、端部領域とすることが好ましい。本態様に係る定着ベルトにおいては、中央領域4cが弾性層の長手方向の両端から0.10×L以上の位置に存在する。また、端部領域4aは、弾性層の長手方向の両端から中央に向かって0.05×Lの領域を含み、中央領域4cに隣接して存在している。
中央領域4cではλndがλmdより高く、λnd/λmdが1.1以上であることにより、厚み方向への効率的な熱伝導が達成される。その結果、定着工程において、未定着トナーをより効率的に定着させることができる。また、中央領域4cにおいては、λndが1.3W/(m・K)以上であることが定着性の観点でより好ましい。端部領域4aではλmdがλndより高く、λnd/λmdを0.9以下とすることで、記録媒体が通過しない非通紙領域の昇温を抑制することができる。ここで端部領域4aのλmdが1.3W/(m・K)以上になると非通紙領域の昇温抑制の観点でより好ましい。
弾性層中に配合される熱伝導性のフィラーの量を増やすことなく、厚み方向の熱伝導率を高める方法として、力場や磁場、電場等の外場によってフィラーを配列させる技術がある。定着部材の弾性層に配合される熱伝導性フィラーに一般的に用いられるものとしては、アルミナやシリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の無機酸化物が多く、誘電分極を推進力とする電場による配列との親和性が高い。本発明者らは、特許文献1に係る、電場を用いたフィラーの配列技術を用いることによって、弾性層の通紙領域において、大粒径フィラーの厚み方向(nd)への配列を抑えつつ、大粒径フィラー間の小粒径フィラーを高度に配列させた。その結果、大粒径フィラーの間に小粒径フィラー群による熱伝導パスが形成され、厚み方向の熱伝導率を高めることができる。フィラー量を増やす必要がないため、硬度上昇を抑えつつ、より一層の高熱伝導化を達成することができる。
さらに本開示では弾性層の長手方向で領域をわけて、電場を付与して配向制御することで、記録媒体の通紙領域である中央領域では厚み方向の熱伝導率、非通紙領域に相当する両端側では長手方向の熱伝導率を高めた。この結果、未定着トナーに対して高い定着性を発現しながら、非通紙領域における昇温を抑制できることを見出した。
また、図2(c)は、本開示の他の態様に係る定着ベルトの弾性層の領域ごとの熱異方性に係る説明図である。本態様に係る弾性層においては、端部領域4aが、弾性層の長手方向両端から中央に向かって0.05×Lの領域に存在し、中央領域4cが弾性層の長手方向の両端から0.10×L以上の位置に存在する。そして、端部領域4aと中央領域4cとの間に、中間領域4bを有する。中間領域4bは、λnd/λmdが0.9より大きく1.1より小さい。すなわち、中間領域4bは、定着ベルトの厚み方向の熱伝導率に関して、中央領域4cから端部領域4aへの遷移領域として機能する。このような中間領域を存在させることで、中央領域4cと端部領域4aとでのフィラーの配向状態の差に起因する該弾性層の長手方向での熱伝導率、表面性状、および硬度の急峻な変化を抑えることができる。中間領域4bは、中央領域4cと端部領域4aとの各々に接して設けることが好ましい。
図3は、端部領域4a、中間領域4b、及び長手中央領域4cそれぞれのフィラー配向配列状態を説明するための概念図である。主に小粒径フィラーの配向配列状態が長手方向の領域によって変化することで熱伝導率の異方性が変化している。フィラー配向配列状態の定量手法については後述する。
該定着部材の弾性層は、例えば図4のような方法で製造することができる。具体的には、基体上に熱伝導性フィラーを含むシリコーンポリマーからなる弾性層をリングコートなどで形成する。その後、弾性層を加熱硬化する前に、通紙領域に相当する長手中央領域の弾性層表面を帯電した後、弾性層を加熱硬化してフィラーを固定する。弾性層に対して電場を付与することで、主にフィラーが電気泳動、並びに、誘電分極による双極子相互作用の力によって移動し、フィラーが図3(c)に示すように厚み方向に配向配列し伝熱パスを形成することで、厚み方向の熱伝導率を高めることができる。
電場付与した長手中央領域4cにおいては、該弾性層4の加熱硬化前の組成物層に含まれる熱伝導性フィラーのうちの、円相当径が5μm未満の小粒径フィラー8が該組成物層の厚み方向に配列する。一方、該組成物層に含まれる熱伝導性フィラーのうちの、円相当径が5μm以上の大粒径フィラー7は、殆ど配列しない。その後、該組成物層を加熱、硬化させることにより、本態様に係る弾性層が形成される。こうして得られる弾性層は、フィラー増量に伴う弾性層の硬度上昇を抑えつつ、弾性層の厚み方向の熱伝導率をより一層高めることができる。
該組成物層の外表面を帯電させた場合に、該組成物層中の大粒径フィラー7の配列が抑えられ、小粒径フィラー8が高度に配列する理由を以下に述べる。図4の方法においては、当該大粒径フィラー7を誘電泳動させる十分な力が作用しないと考えられる。しかしながら、組成物層の表面を帯電させることにより、大粒径フィラー7には誘電分極が生じており、大粒径フィラー7間には局所的な電場が形成されていると考えられる。その結果、大粒径フィラー間に存在する小粒径フィラー8は、局所的な電場により大粒径フィラー間で高度に配列し、弾性層の厚み方向に大粒径フィラー7同士を繋ぐ熱伝導パスを形成すると考えられる。
組成物層の外表面を帯電する方法としては、非接触方式が好ましく、図4に示したような、簡便かつ安価に略一様な帯電が可能なコロナ帯電器200を用いる方法がより好ましい。コロナ帯電器は最終的に製造される弾性層の長手方向の全長よりも短くかつ通紙領域をカバーすることで弾性層の長手中央領域のみを、選択的に帯電させることができる。また、電界印加中にコロナ帯電器を弾性層の長手方向に±1~10mm程度、1~10Hz程度の往復振動を行うレシプロ機構を設けてもよい。このような往復運動をとることで電場が付与された領域と付与されていない領域の境界部分での急峻な熱伝導率、表面性、硬度変化を抑える中間領域を形成することができる。
本開示の一実施形態に係る定着部材及び熱定着装置について、以下に具体的な構成を説明する。
(1)定着部材の構成の概略
本実施形態の定着部材の詳細について図面を用いて説明する。
図5(a)及び(b)は、本実施形態に係る定着部材を示す概略断面模式図である。図5(a)はベルト形態の、図5(b)はローラ形態の定着部材の一例を表す。図5(a)及び(b)において、符号3は基体を示し、符号4は基体3の外周面を被覆しているシリコーンゴムを含む弾性層を示す。なお図5においては、半径方向が弾性層の厚み方向、紙面の手前-奥方向が長手方向(幅方向)となる。
このように、本実施形態に係る定着部材は、基体3および基体3の上のシリコーンゴムを含む弾性層4を有する。なお、これらの図に示すように、定着部材はシリコーンゴムを含む弾性層4の外周上に表面層6を有することができる。また、シリコーンゴムを含む弾性層4と表面層6との間に、接着層5を有することもでき、この場合、表面層6は、シリコーンゴムを含む弾性層4の外周面に接着層5により固定される。図5に示す定着部材はいずれもエンドレス形状を有する。エンドレス形状とは、周方向に回転移動することで、同じ部位が何度も(エンドレスに)定着ニップ部を通過できる形状である。
(2)定着部材の基体
定着部材が図5(a)に示すようなベルト形態である場合、基体3には、電鋳ニッケルスリーブやステンレススリーブなどの金属、ポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いることができる。特に熱定着装置が電磁誘導加熱方式の場合には、誘導加熱により加熱可能な基体材料が選択され、発熱効率の観点からニッケルや鉄を主成分とした合金が用いられる。基体3の外面(弾性層側の面)には、弾性層との接着性を向上させる機能を付与するための層を設けることができる。すなわち、弾性層4は、基体3の外周面上に設けられればよく、弾性層4と基体3との間に他の層を設けることができる。また、基体3の内面(上記外面とは反対側の面)には、耐摩耗性や潤滑性などの機能を付与するための層をさらに設けることができる。なお、ベルト形態である場合は、以下の製造工程中、スリーブの内部に中子を挿入して取り扱う。
定着部材が図5(b)に示すようなローラ形態である場合、基体3には、アルミニウム、鉄などの金属や合金からなる芯金を用いることができ、熱定着装置での加熱・加圧に耐える強度を有していればよい。図5(b)では、基体3として中実の芯金を用いているが、基体3には中空の芯金を用いてもよく、内部にハロゲンランプなどの熱源を有していてもよい。
(3-1)定着部材のシリコーンゴムを含む弾性層
本実施形態の定着部材におけるシリコーンゴムを含む弾性層4は、定着時に紙などの記録媒体の凹凸に追従するための優れた柔軟性を付与する層として機能する。シリコーンゴムは、非通紙領域で240℃程度の高温になる環境においても柔軟性を保持できる高い耐熱性を有しているため好ましい。また、シリコーンゴムは後述の硬化前に表面を帯電させてフィラーを配向させるため、電気絶縁性もしくは半導電性であることが好ましく、熱伝導性フィラーとしても電気絶縁性もしくは半導電性が求められる。シリコーンゴムは、例えば後述のようにシリコーンポリマーを硬化させたものを用いることができる。
定着部材において、シリコーンゴムを含む弾性層4は、伝熱特性の向上のために熱伝導性のフィラーを含む。フィラーの種類については、フィラー自体の熱伝導率、比熱容量、密度、粒径、形状、比誘電率等を考慮して選択される。熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属ケイ素、炭化ケイ素、シリカ等の無機フィラーが挙げられる。これらのフィラーは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、金属フィラー、炭素繊維フィラー等は、電気抵抗値が低く、電場を印加した時に誘電分極を起こしにくいため、単独で使用するには不適である。ただし、酸化膜を形成するなどの表面処理を行うことで電気抵抗値を制御して誘電分極を起こしやすくできる場合はこの限りではない。
フィラーについては、シリコーンゴムへの親和性を高めたり、前述の電気抵抗値を制御したりする観点から、表面処理を行うことができる。具体的にはアルミナやシリカ、酸化マグネシウム等のフィラー表面に水酸基等の活性基を持つものはシランカップリング剤やヘキサメチルジシラザン等で表面処理することができる。
フィラーの平均粒径は、0.1μm以上100μm以下の範囲が好ましく、0.3μm以上30μm以下の範囲がより好ましい。ここでいう平均粒径とは、体積平均粒径を指す。
極力配列させない大粒径フィラーの粒径は5μm以上である。そして、弾性層の厚み方向と周方向(厚み-周方向)の断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの二値化像と、厚み方向と長手方向(厚み-長手方向)の断面の任意の5か所における同サイズの二値化像を得たと仮定する。このとき、計10個の二値化像の各々に占める該大粒径フィラーの面積割合(%)の平均値(以降、「大粒径フィラーの占める平均面積割合」ともいう)が20%以上、40%以下であることが好ましい。ここで、大粒径フィラーの面積割合は、[(二値化像における大粒径フィラーの面積の総和×100)/(二値化像の面積)]をいう。大粒径フィラーの占める平均面積割合が20%以上の場合には、大粒径フィラー間の距離が長くなり過ぎることがなく、電界を付与した時に十分大きな局所電場を発生させることができる。このため、大粒径フィラー間に存在する小粒径フィラーを十分に配列させることができる。また、大粒径フィラーの平均面積割合が40%以下の場合には、弾性層を十分に低硬度化することができる。
配列させる小粒径フィラーの粒径は5μm未満である。そして、該二値化像の各々に占める該小粒径フィラーの面積割合の平均値(以降、「小粒径フィラーの占める平均面積割合」ともいう)が10%以上、20%以下であることが好ましい。ここで、小粒径フィラーの面積割合は、[(二値化像における小粒径フィラーの面積の総和×100)/(二値化像の面積)]をいう。小粒径フィラーの占める平均面積割合が10%以上の場合には、小粒径フィラーを配列させて十分に高熱伝導化することが容易となる。また、小粒径フィラーの占める平均面積割合が20%以下の場合には、材料の粘度の上昇が抑制され、弾性層の加工性や平滑性の確保が容易となる。
大粒径フィラーの占める平均面積割合と、小粒径フィラーの占める平均面積割合の和は、30%以上、60%以下、特には、30%以上、50%以下とすることが好ましい。大粒径フィラーの占める平均面積割合と、小粒径フィラーの占める平均面積割合の和は、弾性層における全フィラーが占める体積の割合と密接に関係している値である。大粒径フィラーの占める平均面積割合と、小粒径フィラーの占める平均面積割合の和を上記範囲内とすることで、弾性層の高熱伝導化と、高硬度化の抑制とをより良く両立し得る。
大粒径フィラーと小粒径フィラーの配合は、粒度分布の広いフィラーを配合してもよいし、平均粒径が大きいフィラーと平均粒径が小さいフィラーを混合して配合してもよい。大粒径フィラーと小粒径フィラーの占める平均面積割合を上記範囲に調整し易い点では、後者の平均粒径の異なるフィラーを混合して配合することが好ましい。
シリコーンゴムを含む弾性層は、フィラーと例えば液状付加硬化型シリコーンゴム成分とを少なくとも含む液状付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化せしめて形成することができる。
液状付加硬化型シリコーンゴムは、(a)不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン、(b)ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン、および(c)触媒(例えば白金化合物)、(d)硬化遅延剤を含むことができる。(a)は硬化反応時に架橋点として機能する。(b)は架橋剤である。(c)は硬化反応を促進するための触媒である。(d)は反応開始時間を制御するための硬化遅延剤(インヒビター)である。さらに、これらに加え、耐熱性、補強性等を付与するために、それぞれの目的にあった充填剤を混練・分散することもできる。以下に(a)~(d)について説明する。
(a)不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン(以降、a成分と称することがある)は、ビニル基等の不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンであればいずれのものも用いることができる。例えば、下記式1と式2に示すものをa成分として用いることができる。
・RSiOで表される中間単位およびRSiOで表される中間単位からなる群から選択されるいずれか一方または両方の中間単位と、RSiO1/2で表される分子末端とを有する直鎖状オルガノポリシロキサン(下記式1参照)。
Figure 2022185416000002
・RSiOで表される中間単位およびRSiOで表される中間単位からなる群から選択されるいずれか一方または両方の中間単位と、RSiO1/2で表される分子末端とを有する直鎖状オルガノポリシロキサン(下記式2参照)。
Figure 2022185416000003
(式1と式2において、Rはそれぞれ独立に不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立に不飽和脂肪族基を表し、mおよびnは各々独立して0以上の整数を表す。)
なお、式1と式2においてRで表される、不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基としては、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)を例示することができる。特に、メチル基であることが好ましい。
また、式1と式2において、Rで表される不飽和脂肪族基としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基等を例示することができるが、ビニル基であることが好ましい。
式1においてn=0の直鎖状オルガノシロキサンは、両末端にのみ不飽和脂肪族基を有するものであり、n=1以上の直鎖状オルガノシロキサンは、両末端と側鎖に不飽和脂肪族基を有するものである。また、式2の直鎖状オルガノシロキサンは、側鎖にのみ不飽和脂肪族基を有するものである。a成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、a成分を定着部材の弾性層に用いる場合、成形性の観点から、粘度は100mm/s以上、50000mm/s以下であることが好ましい。粘度(動粘度)は、JIS Z 8803:2011に基づき、毛管粘度計や回転粘度計等を用いて測定することができる。また、市販のa成分を使用する場合、カタログ値を参照することができる。
(b)ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン(架橋剤)
ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン(以降、b成分と称することがある)は、白金化合物の触媒作用により、a成分中の不飽和脂肪族基との反応によって架橋構造を形成する架橋剤である。
b成分は、Si-H結合を有するオルガノポリシロキサンであれば、いずれのものも用いることができるが、例えば、以下の要件に適合するものを好適に用いることができる。なお、b成分は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
・不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンとの反応による架橋構造形成の観点から、ケイ素原子に結合した水素原子の数が1分子中に平均3個以上のもの(Si-H結合は、分子中のどのシロキサン単位に存在してもよい。)。
・ケイ素原子に結合した有機基が、例えば上述したような非置換炭化水素基であるもの(非置換炭化水素基としては、メチル基であることが好ましい。)。
・シロキサン骨格(-Si-O-Si-)は、直鎖状、分岐状および環状のいずれかである。
たとえば、下記式3と式4に示す直鎖状のオルガノポリシロキサンをb成分として用いることができる。
Figure 2022185416000004
Figure 2022185416000005
(式3と式4において、Rはそれぞれ独立に不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基を表し、pは0以上の整数を表し、qは1以上の整数を表す。)
なお、Rは式1と式2で説明したとおり、不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基であり、メチル基であることが好ましい。
(c)触媒
ヒドロシリル化(付加硬化)触媒としては、例えば、白金化合物を用いることができる。具体的には、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体等を挙げることができる。以下、これをc成分と称することがある。
(d)硬化遅延剤
ヒドロシリル化(付加硬化)の硬化反応速度を調整するために、硬化遅延剤と呼ばれるものを配合することができる。具体的には、2-メチル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等を挙げることができる。以下、この硬化遅延剤をd成分と称することがある。
シリコーンゴムを含む弾性層の弾性率は、a~d成分の種類や配合量によって、ある程度調整することができる。シリコーンゴムを含む弾性層は、0.20MPa以上、1.20MPa以下の(引張り)弾性率を有することがより好ましい。弾性層の弾性率がこの範囲内であれば、低硬度(柔軟)な弾性層となり、高画質な画像を得ることができる。
なお、弾性層における、含有されるシリコーンゴムの組成は赤外分光分析装置(FT-IR)(例えば、商品名:Frontier FT IR,PerkinElmer社製)を用いた全反射(ATR)測定を行うことにより確認可能である。シリコーンの主鎖構造であるケイ素-酸素結合(Si-O)は、伸縮振動に伴い波数1020cm-1付近に強い赤外吸収を示す。さらに、ケイ素原子に結合したメチル基(Si-CH)は、その構造に起因する変角振動に伴い、波数1260cm-1付近に強い赤外吸収を示すことから、その存在を確認することが可能である。
弾性層における硬化シリコーンゴム及びフィラーの含有量は、熱重量測定装置(TGA)(例えば、商品名:TGA851,Mettler-Toledo社製)を用いることにより確認可能である。弾性層を剃刀等で切り出し、20mg程度を正確に秤量して、装置で使用するアルミナパンに入れる。試料の入ったアルミナパンを装置にセットし、窒素雰囲気のもと、室温から800℃まで20℃毎分の昇温速度で加熱し、更に800℃で1時間定温する。窒素雰囲気中では、昇温に伴い、硬化シリコーンゴム成分は酸化されずにクラッキングにより分解・除去されるため、試料の重量が減少する。こうして測定前後の重量を比較することにより、弾性層に含まれていた硬化シリコーンゴム成分の含有量、およびフィラーの含有量を確認することができる。
(3-2)弾性層への電場付与工程
以下、一実施形態としてコロナ帯電器200とそれを用いた弾性層への電場付与工程について説明する。コロナ帯電方式にはコロナワイヤーと被帯電体の間にグリッド電極を持つスコロトロン方式と、グリッド電極を持たないコロトロン方式があるが、被帯電体の表面電位の制御性の観点から、スコロトロン方式が好ましい。
図4(a)、(b)に示すように、コロナ帯電器200は、前ブロック201、奥ブロック202、シールド203、204を備える。また、前ブロック201と奥ブロック202の間に放電ワイヤ205が張架され、高圧電源により帯電バイアスが印加されると、放電して被帯電体としての基体上の硬化前の弾性層4の表面を帯電する。
一般的なコロナ帯電器の構成と同様に、放電部材としての放電ワイヤ205に対して高電圧を印加する。そしてシールド203、204への放電によって得られるイオン流をグリッド206に高電圧を印加することによって制御して、弾性層4の表面を所望の帯電電位に制御する。この時、基体3もしくは基体3を保持する中子1が接地されているため(図示しない)、弾性層4の表面の表面電位を制御することで、弾性層4に所望の電場を発生させることが可能となる。
上記実施形態の定着部材の製造方法を詳述すると、まず基体上に熱伝導性フィラーを含むシリコーンゴムを有する未硬化の弾性層を形成する。次にコロナ帯電器200を図4(a)に示すように、定着部材100の未硬化の弾性層4の幅方向に沿って近接して対向させて配置する。そしてコロナ帯電器200のグリッド206に電圧を印加し、放電させた状態で定着部材100を回転させることによって、弾性層4の表面を帯電させる。このようにして弾性層4の表面を帯電させることにより弾性層内に電場が生じ、熱伝導性フィラーを配向させる。その後、弾性層を加熱等により硬化させて、フィラーの配向を固定する。
グリッド206に印加する電圧は、フィラーに有効な静電的相互作用を発生させる観点から、絶対値として0.1kV~3kV(AC印加の場合、Vp-pで0.2~6kV)の範囲で行うことが好ましい。電場を用いて弾性層の厚み方向のフィラーの配向を形成する場合においては、弾性層4の厚み方向に電界を発生させることが重要である。印加する電圧の符号はワイヤに印加する電圧の符号と等しくすれば、マイナスでもプラスでも電界の方向は逆になるものの、得られる効果は同じである。また、後述の液面流動を抑えるためにAC帯電させる場合はワイヤとグリッドの波形の位相を一致させることが望ましい。熱伝導性のフィラーの種類によっては、不定形フィラーの配向が形成されにくい場合があり、この場合はグリッド206に印加する電圧を大きくすることが望ましい。これはシリコーンゴム成分と熱伝導性のフィラーの誘電率が関係していると推測される。シリコーンゴムとフィラーの誘電率差が大きい場合は比較的小さな印加電圧で不定形フィラーの配向を形成することが可能である。一方、グリッド206に印加する電圧が大きすぎる場合、弾性層の表面電荷による静電反発力が大きくなることで液面流動が起こり、弾性層4の表面性が悪化する場合がある。従って、グリッド206に印加する電圧は、絶対値として0.1kV~1.5kV(AC印加の場合、Vp-pで0.2~3kV)の範囲がさらに好ましい範囲である。この液面流動については、AC帯電させることによって緩和させることができる。
弾性層表面の長手方向における電位制御の構成としては、例えば、図4(a)に示される構成を用いることができ、グリッド206に電圧を印加している間は、定着部材100に挿入した中子1の中心軸を回転軸として回転させながら行う。こうすることで弾性層4の周方向全周を略均一に帯電させることが可能である。尚、定着部材の回転数としては10rpm~500rpm、処理時間としてはフィラーの配向を安定的に形成させる観点から20秒以上の処理時間を設けることが好ましい。以上より、表面電位と電場を付与する時間を制御することで、不定形フィラーの配向の形成を制御することができる。
中間領域4bは、未処理の弾性層の中間領域に対応する位置における帯電量を、中央領域に対応する領域と端部領域に対応する領域の帯電量の中間とすることで形成し得る。具体的には、例えば、図4(a)に示すように、コロナ帯電器の放電幅を、被処理対象の弾性層の長手方向の長さLよりも短くする。このコロナ帯電器を、不図示のレシプロ機構を用いて、被処理対象物である未処理の弾性層の長手方向に、例えば、±1~10mm程度、周波数1~10Hz程度で往復振動させる。これにより、未処理の弾性層の表面の帯電量を中央領域に対応する領域>中間領域に対応する領域>端部領域に対応する領域とすることができる。
放電ワイヤ205として、ステンレススチール、ニッケル、モリブデン、タングステンなどを用いてもよいが、金属の中で非常に安定性の高いタングステンを用いるのが好ましい。なお、シールドの内側に張架される放電ワイヤは円断面形状でもノコギリ歯のような形状であっても良い。
また、放電ワイヤ205の直径としては、40μm~100μmが好ましい。放電ワイヤの直径をこのような範囲内にすることで、放電の際のイオンによる放電ワイヤの切断を防止することができ、また、コロナ放電を生じさせるために必要な電圧を過度に高くする必要がないためである。放電ワイヤ205に印加する電圧は、直流電圧および交流電圧のいずれでも用いることができる。交流電圧の場合は周波数として0.01Hz~1000Hz程度で行うことが好ましい。電圧は矩形波や正弦波などを任意波形発生器で出力させることで行うことができる。
メッシュ状にグリッドを貫通する複数の開孔(貫通孔)の幅は、弾性層表面の帯電電位をより均一にする観点から、1.0mm以下を含む形状パターンをエッチング処理することが好ましい。また、貫通孔部に対するメッシュ部の面積比が高いほど、帯電電位を均一にしやすい。平板状のグリッド206は放電ワイヤ205と弾性層表面との間に配置することができ、弾性層表面の帯電電位を均一にする観点から、弾性層表面とグリッド206の距離は1mm~10mmの範囲とすることが好ましい。
(3-3)弾性層中の熱伝導性フィラーの配列状態の確認
熱伝導性フィラーの配列状態は、弾性層の断面画像から得られる二値化像を用いて、二次元フーリエ変換を行うことで確認できる。
まず、測定用サンプルを作製する。例えば、定着部材が、図6(a)に示すような定着ベルト400である場合、図6(b)に示すように、例えば、縦5mm、横5mm、厚みが定着ベルトの全厚みである試料401を、定着ベルトの長手中央領域と端部領域、また中間領域がある場合は中間領域のそれぞれ任意の10箇所から10個採取する。図6(a)には、端部領域から試料401aを、長手中央領域から試料401cを採取する形態を示している。得られた各10個の試料のうち、各5個の試料については、定着ベルトの周方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-周方向の第一断面401-1を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工する。また、残りの各5個の試料については、定着ベルトの周方向に直交する方向の断面、すなわち、弾性層の厚み-長手方向の第2断面401-2を含む断面を、イオンビームを用いて研磨加工する。イオンビームによる断面の研磨加工には、例えば、クロスセクションポリッシャを用いることができる。イオンビームによる断面の研磨加工では、試料からのフィラーの脱落や研磨剤の混入を防ぐことができ、また、研磨痕の少ない断面を形成することができる。
続いて、弾性層の第1断面及び第2断面の研磨加工されたそれぞれ5個の試料について、レーザー顕微鏡や走査型電子顕微鏡観察(SEM)等で観察し、150μm×100μm領域の断面画像を取得する(図7(a))。
次に、得られた画像を市販の画像ソフトにより、フィラー部分を白く、シリコーンゴム部分を黒くなるように、白黒二値化処理を行う(図7(b))。二値化の手法としては、例えば大津法を用いることができる。
次に、得られた二値化像の各フィラーについて、円相当径を算出し、円相当径が5μm以上の大粒径フィラー7のみを残した画像(図7(c))と円相当径が5μm未満の小粒径フィラー8のみを残した画像(図7(d))に分割する。そして、各々の画像から大粒径フィラー7と小粒径フィラー8の面積割合(画像の全面積に対して各フィラー7、8の総面積が占める割合)を算出する。なお、各フィラーの円相当径とは、当該フィラーの面積と同じ面積を有する円の直径をいう。
さらに、この大粒径フィラー画像、小粒径フィラー画像に対して二次元フーリエ変換解析を行うことで、フィラー配列の方向と程度を表す楕円プロット図が得られる(それぞれ図7(e)、図7(f))。二次元フーリエ変換自体は、二値化像の周期性に対して直交方向にピークを持つため、楕円プロット図は、二次元フーリエ変換の結果を90°位相をずらした結果となっている。この楕円プロット図の楕円長半径が成す角度から配列角度Φが、長半径をx、短半径をyとした時のf=1-(y/x)と定義するフィラー配列度fが、それぞれ求められる。
配列角度Φがフィラーの配列方向を表し、図7(e)、図7(f)で90°-270°方向が弾性層の厚み方向を示し、0°-180°方向が弾性層の周方向又は軸方向を示す。したがって、配列角度Φが90°に近い程、厚み方向にフィラーが配列していることを示す。
また、配列度fは楕円の扁平率を表し、0以上1未満の値となる。fが0の時に円となり、配列をしていない完全ランダムな状態を表し、fが1に近づくにつれ、楕円の扁平が大きくなり、フィラーの配列度も大きいということになる。
フィラーの、配列角度Φ、配列度fは、弾性層の厚み-周方向の第1断面と、厚み-長手方向の第2断面の各々で5箇所、計10箇所の数値の平均値で算出する。
大粒径フィラーの平均配列度をfとした場合、fは、0.00以上、0.15以下であることが好ましい。fが0.15以下であることにより、弾性層の低硬度化を達成することができる。
大粒径フィラーの平均配列角度をΦとした場合、Φは、0°以上、180°以下のどの値でも構わない。
小粒径フィラーの平均配列角度をΦとした場合、長手中央領域でのΦは、60°以上、120°以下であることが好ましい。Φが90°となる方向が弾性層の厚み方向になるため、Φが90°に近いほど、厚み方向に配列していることになる。そのため、Φが上記範囲であることにより、厚み方向の熱伝導性を高めることができる。一方、端部領域ではΦは30°以下、もしくは、150°以上であることが好ましい。ここで30°と150°は90°を境界とした鏡像の関係にあるため、厚み方向の伝熱機能としては同義である。
中間領域では、長手中央領域と端部領域との間の値を取ることから、小粒径フィラーの平均配列角度Φが、30°より大きく60°未満、または、120°より大きく150°未満であることが好ましい。
(4)定着部材の接着層
図5に示すように、接着層5は、例えば付加硬化型シリコーンゴム接着剤によって弾性層4と表層(離型層)6を接着せしめることで生じる層である。接着剤としては、自己接着成分が配合された付加硬化型シリコーンゴムを用いることが好ましい。具体的には、ビニル基に代表される不飽和脂肪族基を分子鎖中に複数有するオルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンおよび架橋触媒としての白金化合物を含有する。そして、付加反応により硬化する。このような接着剤としては、既知のものを使用することができる。
自己接着成分の例は、以下のものを含む。
・ビニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)、エポキシ基、アルコキシシリル基、カルボニル基、およびフェニル基からなる群から選択される少なくとも1種、好ましくは2種以上の官能基を有するシラン、
・ケイ素原子数が2個以上30個以下、好ましくは4個以上20個以下の、環状または直鎖状のシロキサン等の有機ケイ素化合物、
・分子中に酸素原子を含んでもよい、非ケイ素系(即ち、分子中にケイ素原子を含有しない)有機化合物。ただし、1価以上4価以下、好ましくは2価以上4価以下のフェニレン構造等の芳香環を1分子中に1個以上4個以下、好ましくは1個以上2個以下含有する。かつ、ヒドロシリル化付加反応に寄与しうる官能基(例えば、アルケニル基、(メタ)アクリロキシ基)を1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上4個以下含有する。
上記の自己接着成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
接着剤中には粘度調整や耐熱性確保の観点から、本発明の趣旨に沿う範囲内においてフィラー成分を添加することができる。当該フィラー成分の例は、以下のものを含む。
・シリカ、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム、水酸化セリウム、カーボンブラック等。
このような付加硬化型シリコーンゴム接着剤は市販もされており、容易に入手することができる。
接着層の厚みは20μm以下であることが好ましい。20μm以下とすることで定着部材の熱抵抗を小さく設定でき、内面側(基体側)からの熱を効率的に被記録材(記録媒体)に伝えることができる。
(5)定着部材の表面層
表面層6は、フッ素樹脂からなり、成形方法としてはチューブ法やコート法が用いられる。以下に例示する樹脂をチューブ状に成形したものを被覆する、チューブ法について例示する。
・テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等。上記例示列挙した樹脂材料中、成形性やトナー離型性の観点からPFAが好ましい。
フッ素樹脂層(表面層)の厚みは、10μm以上50μm以下とするのが好ましい。積層した際に下層の弾性層の弾性を維持し、定着部材としての表面硬度が高くなりすぎることを抑制しつつ、耐摩耗性を確保できるからである。
フッ素樹脂チューブの内面は、予め、ナトリウム処理やエキシマレーザ処理、アンモニア処理等を施すことで、接着性を向上させることが出来る。
図8は、シリコーンゴムを含む弾性層4上に、付加硬化型シリコーンゴム接着剤を介して表面層6を積層する工程の一例の模式図である。基体3の外周面に形成された弾性層4の表面に、付加硬化型シリコーンゴム接着剤5を塗布する。更にその外面に、表面層6としてのフッ素樹脂チューブを被覆し、積層させる。
フッ素樹脂チューブの被覆方法は特に限定されないが、付加硬化型シリコーンゴム接着剤を潤滑材として被覆する方法や、フッ素樹脂チューブを外側から拡張し、被覆する方法などを用いることが出来る。
不図示の手段を用いて、弾性層4とフッ素樹脂チューブからなる表面層6との間に残った、余剰の付加硬化型シリコーンゴム接着剤5を、扱き出すことで除去する。扱き出した後の接着層5の厚みは、伝熱性の観点から20μm以下とすることが好ましい。
次に、電気炉などの加熱手段にて所定の時間加熱することで、付加硬化型シリコーンゴム接着剤5を硬化・接着させ、長手方向(幅方向)の両端部を所望の長さに切断することで、定着部材を得ることができる。
(6)熱定着装置
本実施形態に係る熱定着装置は、一対の加熱されたローラとローラ、ベルトとローラ、ベルトとベルト、といった回転体が互いに圧接されるように構成されている。熱定着装置の種類は、熱定着装置が搭載される画像形成装置全体としてのプロセス速度、大きさ等の条件を勘案して適宜選択される。
熱定着装置においては、加熱された定着部材と加圧部材を圧接することで定着ニップNを形成し、この定着ニップNに未定着トナーによって画像が形成された、被加熱体となる記録媒体Sを挟持搬送させる。未定着トナーによって形成された画像をトナー像tと称する。これにより、トナー像tを加熱、加圧する。その結果、トナー像tは溶融・混色され、その後、冷却されることによって記録媒体上に画像が定着される。
以下、熱定着装置の具体例を挙げて、その構成を説明するが、本発明の範囲並びに用途はこれに限定されるものではない。
(6-1)定着ベルト-加圧ベルト方式の熱定着装置
図9は一対の定着ベルト11と加圧ベルト12といった回転体が圧接されている、いわゆるツインベルト方式の熱定着装置であり、定着部材として定着ベルトを備えた熱定着装置の一例の断面模式図である。
なお、ここで、熱定着装置またはこれを構成している部材について長手方向(幅)とは図9の紙面に垂直の方向である。熱定着装置について正面とは記録媒体Sの導入側の面である。左右とは装置を正面から見て左または右である。ベルトの幅とは装置を正面から見たときの左右方向のベルト寸法である。また記録媒体Sの幅とは搬送方向に直交する方向の記録媒体寸法である。また上流または下流とは記録媒体の搬送方向に関して上流または下流である。
この熱定着装置は、定着部材としての定着ベルト11と、加圧ベルト12とを備えている。定着ベルト11と加圧ベルト12は、図5(a)に示すようなニッケルを主成分とした金属製の可撓性を有する基体を含む定着ベルトを2つのローラに張架したものである。
定着ベルト11の加熱手段として、エネルギー効率の高い電磁誘導加熱により加熱可能な加熱源(誘導加熱部材、励磁コイル)を採用している。誘導加熱部材13は、誘導コイル13aと、励磁コア13bと、それらを保持するコイルホルダー13cと、から構成される。誘導コイル13aは、長円状に扁平巻きされたリッツ線を用い、誘導コイルの中心と両脇に突起した横E型の励磁コア13bの中に配置されている。励磁コア13bはフェライト、パーマロイといった高透磁率で残留磁速密度の低いものを用いるので、誘導コイル13aや励磁コア13bでの損失を抑えられ、効率的に定着ベルト11を加熱する事ができる。
励磁回路14から誘導加熱部材13の誘導コイル13aに高周波電流が流されると、定着ベルト11の基体が誘導発熱して基体側から定着ベルト11が加熱される。定着ベルト11の表面温度がサーミスタ等の温度検知素子15により検知される。この温度検知素子15で検知される定着ベルト11の温度に関する信号が制御回路部16に送られる。制御回路部16は温度検知素子15から受信した温度情報が所定の定着温度に維持されるように、励磁回路14から誘導コイル13aに対する供給電力を制御して、定着ベルト11の温度を所定の定着温度に調節する。
定着ベルト11は、ベルト回転部材としてのローラ17並びに加熱側ローラ18によって張架されている。ローラ17と加熱側ローラ18はそれぞれ装置の不図示の左右の側板間に回転自由に軸受されて支持されている。
ローラ17は、例えば、外径が20mmで、内径が18mmである厚さ1mmの鉄製の中空ローラであり、定着ベルト11に張りを与えるテンションローラとして機能している。加熱側ローラ18は、例えば、外径が20mmで、内径が18mmである鉄合金製の芯金に、弾性層としてのシリコーンゴム層が設けられた高摺動性の弾性ローラである。
この加熱側ローラ18は駆動ローラとして駆動源(モータ)Mから不図示の駆動ギア列を介して駆動力が入力されて、矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。この加熱側ローラ18に上記のように弾性層を設けることで、加熱側ローラ18に入力された駆動力を定着ベルト11へ良好に伝達することができるとともに、定着ベルト11からの記録媒体の分離性を確保するための定着ニップを形成できる。加熱側ローラ18が弾性層を有することによって、加熱側ローラへの熱伝導も少なくなるためウォームアップタイムの短縮にも効果がある。
定着ベルト11は、加熱側ローラ18が回転駆動されると、加熱側ローラ18のシリコーンゴム表面と定着ベルト11の内面との摩擦によってローラ17と共に回転する。ローラ17および加熱側ローラ18の配置や大きさは、定着ベルト11の大きさに合わせて選択される。例えば上記ローラ17および加熱側ローラ18の寸法は、未装着時の内径が55mmの定着ベルト11を張架できるように選択されたものである。
加圧ベルト12は、ベルト回転部材としてのテンションローラ19と加圧側ローラ20によって張架されている。加圧ベルトの未装着時の内径は例えば55mmである。テンションローラ19と加圧側ローラ20はそれぞれ装置の不図示の左右の側板間に回転自由に軸受させて支持させている。
テンションローラ19は、例えば、外径が20mmで、内径が16mmである鉄合金製の芯金に、熱伝導率を小さくして加圧ベルト12からの熱伝導を少なくするためにシリコーンスポンジ層を設けてある。
加圧側ローラ20は、例えば、外径が20mmで、内径が16mmである厚さ2mmの鉄合金製とされた低摺動性の剛性ローラである。テンションローラ19、加圧側ローラ20の寸法も同様に、加圧ベルト12の寸法に合わせて選択されたものである。
ここで、定着ベルト11と加圧ベルト12との間にニップ部Nを形成するために、加圧側ローラ20は、回転軸の左右両端側が不図示の加圧機構により矢印Fの方向に所定の加圧力にて加熱側ローラ18に向けて加圧されている。
また、装置を大型化することなく幅広いニップ部Nを得るために、加圧パッドを採用している。すなわち、定着ベルト11を加圧ベルト12に向けて加圧する第1の加圧パッドとしての定着パッド21と、加圧ベルト12を定着ベルト11に向けて加圧する第2の加圧パッドとしての加圧パッド22である。定着パッド21及び加圧パッド22は装置の不図示の左右の側板間に支持させて配設してある。加圧パッド22は、不図示の加圧機構により矢印Gの方向に所定の加圧力にて定着パッド21に向けて加圧されている。第1の加圧パッドである定着パッド21はパッド基体とベルトに接する摺動シート(低摩擦シート)23を有する。第2の加圧パッドである加圧パッド22もパッド基体とベルトに接する摺動シート24を有する。これはパッドのベルト内周面と摺擦する部分の削れが大きくなるという問題があるためである。ベルトとパッド基体の間に、摺動シート23と24を介在させることで、パッドの削れを防止し、摺動抵抗も低減できるので、良好なベルト走行性、ベルト耐久性を確保できる。
なお、定着ベルトには非接触の除電ブラシ(不図示)、加圧ベルトには接触の除電ブラシ(不図示)を各々設けている。
制御回路部16は、少なくとも画像形成実行時にはモータMを駆動する。これにより加熱側ローラ18が回転駆動され、定着ベルト11が同じ方向に回転駆動される。加圧ベルト12は、定着ベルト11に従動して回転する。ここで、定着ニップ最下流の部分をローラ対18、20により定着ベルト11と加圧ベルト12を挟んで搬送する構成としたことで、ベルトのスリップを防止することができる。定着ニップ最下流の部分は定着ニップでの圧分布(記録媒体搬送方向)が最大となる部分である。
定着ベルト11が所定の定着温度に立ち上がって維持(温調という)された状態において、定着ベルト11と加圧ベルト12間のニップ部Nに、未定着トナー画像tを有する記録媒体Sが搬送される。記録媒体Sは、未定着トナー画像tを担持した面を、定着ベルト11側に向けて導入される。そして、記録媒体Sの未定着トナー画像tが定着ベルト11の外周面に密着したまま挟持搬送されていくことにより、定着ベルト11から熱が付与され、また加圧力を受けて記録媒体Sの表面に定着される。この際、定着ベルト11の加熱された基体からの熱は、厚み方向の熱伝導性を高めた弾性層を通じて記録媒体Sに向けて効率よく輸送される。その後、記録媒体Sは、分離部材25によって、定着ベルトと分離して、搬送される。
(6-2)定着ベルト-加圧ローラ方式の熱定着装置
図10は加熱体としてセラミックヒータを用いた定着ベルト-加圧ローラ方式の熱定着装置の例を示す模式図である。図10において、11は円筒状もしくはエンドレス状の定着ベルトであり、上述のようなものが用いられる。この定着ベルト11を保持するための耐熱性・断熱性のベルトガイド30がある。また、その定着ベルト11と接触する位置(ベルトガイド30の下面のほぼ中央部)に定着ベルト11を加熱するセラミックヒータ31が、ガイド長手に沿って形成具備させた溝部に嵌入して固定支持させている。そして、定着ベルト11はベルトガイド30にルーズに外嵌されている。また、加圧用剛性ステイ32はベルトガイド30の内側に挿通してある。
一方、定着ベルト11に対向する加圧ローラ33が配設されている。なお加圧ローラは、本例では弾性加圧ローラ、すなわち、芯金33aにシリコーンゴムの弾性層33bを設けて硬度を下げたものであり、芯金33aの両端部を装置の不図示の手前側と奥側のシャーシ側板との間に回転自由に軸受け保持させて配設されている。なお、弾性加圧ローラには、表面性を向上させるために、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)チューブを被覆している。
加圧用剛性ステイ32の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材(不図示)との間にそれぞれ加圧バネ(不図示)を縮設することで、加圧用剛性ステイ32に押し下げ力を作用させている。これにより、耐熱樹脂製ベルトガイド部材30の下面に配設したセラミックヒータ31の下面と加圧ローラ33の上面とが定着ベルト11を挟んで圧接して定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ33は不図示の駆動手段により矢示のように反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ33の回転駆動による加圧ローラ33と定着ベルト11との外面との摩擦力で定着ベルト11に回転力が作用する。そして、定着ベルト11はその内面が定着ニップ部Nにおいてセラミックヒータ31の下面に密着して摺動しながら、矢示のように時計方向に加圧ローラ33の回転周速度にほぼ対応した周速度でベルトガイド30の外回りに回転する(加圧ローラ駆動方式)。
プリントスタート信号に基づいて加圧ローラ33の回転が開始され、またセラミックヒータ31のヒートアップが開始される。加圧ローラ33の回転による定着ベルト11の回転周速度が定常化する。その後、セラミックヒータの上面に設けた温度検知素子34の温度が所定温度、例えば180℃に立ち上がる。その瞬間に、定着ニップ部Nの定着ベルト11と加圧ローラ33との間に被加熱材としての未定着トナー画像tを担持した記録媒体Sがトナー像担持面側を定着ベルト11側にして導入される。そして、記録媒体Sは定着ニップ部Nにおいて定着ベルト11を介してセラミックヒータ31の下面に密着し、定着ベルト11と一緒に定着ニップ部Nを移動通過していく。その移動通過過程において、定着ベルト11の熱が記録媒体Sに付与され、トナー画像tが記録媒体S面に加熱定着される。定着ニップ部Nを通過した記録媒体Sは定着ベルト11の外面から分離して搬送される。
加熱体としてのセラミックヒータ31は、定着ベルト11、記録媒体Sの移動方向に直交する方向を長手とする低熱容量の横長の線状加熱体である。チッ化アルミニウム等でできたヒータ基板31aと、このヒータ基板31aの表面にその長手に沿って設けた発熱層31b、さらにその上に設けたガラスやフッ素樹脂等の保護層31cを基本構成とするものが好ましい。発熱層31bは、例えばAg/Pd(銀/パラジウム)等の電気抵抗材料を約10μm、幅1~5mmにスクリーン印刷等により塗工して設けることができる。なお、用いるセラミックヒータはこのようなものに限定されるわけではない。
そして、セラミックヒータ31の発熱層31bの両端間に通電されることで発熱層31bは発熱し、セラミックヒータ31が急速に昇温する。
セラミックヒータ31は、ベルトガイド30の下面のほぼ中央部にガイド長手に沿って形成具備させた溝部に、保護層31c側を上向きに嵌入して固定支持させてある。定着ベルト11と接触する定着ニップ部Nには、このセラミックヒータ31の摺動部材31dの面と定着ベルト11の内面が相互接触摺動する。このように、ヒータは定着部材の基体を加熱し、さらに基体上の弾性層を介して熱を記録媒体Sに付与している。
以上のように、定着ベルト11は、シリコーンゴムを含む弾性層の厚み方向の熱伝導率を高めるとともに硬度も低く抑えている。このような構成により、定着ベルト11は未定着トナー像を効率的に加熱でき、かつ低硬度であるため、定着ニップ時において記録媒体Sに高画質な画像を定着させることができる。
以上のように、本開示の一態様によれば、定着部材が配置された熱定着装置が提供される。したがって定着性能と画質に優れた定着部材を配置した熱定着装置を提供することができる。
以下に、実施例を用いて本開示に係る発明を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(1)液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の調製
まず、a成分として分子鎖両末端にのみ不飽和脂肪族基であるビニル基を有し、その他不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基としてメチル基を有するシリコーンポリマーを98.6質量部準備した。このシリコーンポリマー(商品名:DMS-V35、Gelest社製、粘度5000mm/s)を以降「Vi」と称する。
次いで、このViに熱伝導性フィラーとして、金属ケイ素(商品名:#350、キンセイマテック株式会社製)を170質量部添加し、十分に混合して混合物1を得た。
次いで、d成分として硬化遅延剤である1-エチニル-1-シクロヘキサノール(東京化成工業株式会社製)0.2質量部を同重量のトルエンに溶解したものを、混合物1中に添加して混合物2を得た。
次いで、c成分としてヒドロシリル化触媒(白金触媒:1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、および2-プロパノールの混合物)0.1質量部を、混合物2中に添加して混合物3を得た。
さらに、b成分としてシロキサン骨格が直鎖状で、ケイ素に結合した活性水素基を側鎖にのみ有するシリコーンポリマー(商品名:HMS-301、Gelest社製、粘度30mm/s、以降「SiH」と称する)を、1.5質量部計量した。これを、混合物3に添加し、十分に混合することで、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物を得た。
(2)定着ベルトの作製
基体として、内径55mm、幅420mm、厚さ65μmのSUSエンドレスベルトを用意した。尚、一連の製造工程中、エンドレスベルトは、その内部に中子を挿入して取り扱った。
基体の外周面に、プライマー(商品名:DY39-051A/B;東レ・ダウコーニング株式会社製)を乾燥重量が20mgとなるように略均一に塗布し、溶媒を乾燥させた後160℃設定の電気炉で30分間の焼付け処理を行った。
このプライマー処理された基体上に、リングコート法で上記シリコーンゴム組成物を厚さ250μmにて塗布した。これを未硬化エンドレスベルトと称する。
次に、帯電領域幅が295mmのコロナ帯電器を、未硬化エンドレスベルトの母線に沿って対向配置し、未硬化エンドレスベルトを100rpmで回転させながら、硬化前の弾性層表面にAC電界を印加した。条件は、コロナ帯電器の放電ワイヤへの供給電流が±150μA、グリッド電極電位が±300V(Vp-p:600V)、周波数0.025Hz、帯電時間160秒、グリッド電極とベルトの距離が3mmで行った。
この帯電させた未硬化エンドレスベルトを160℃の電気炉で1分間加熱した(一次硬化)後、200℃の電気炉で30分間加熱して(二次硬化)、シリコーンゴム組成物を硬化させることにより硬化した弾性層を備えたエンドレスベルトを得た。
次に、硬化したエンドレスベルトの弾性層の表面に、接着層として付加硬化型シリコーンゴム接着剤(商品名:SE1819CV A/B;東レ・ダウコーニング株式会社製)を厚さがおよそ20μm程度になるように略均一に塗布した。これに、離型層として内径53mm、厚み40μmのフッ素樹脂チューブ(商品名:NSE;グンゼ株式会社製)を拡径しつつ積層した。その後、フッ素樹脂チューブの上からベルト表面を均一に扱くことにより、過剰の接着剤を弾性層とフッ素樹脂チューブの間から、5μm程度まで薄くなるように扱き出した。
このエンドレスベルトを200℃に設定した電気炉にて1時間加熱することで接着剤を硬化させて当該フッ素樹脂チューブを弾性層上に固定した。得られたエンドレスベルトの両端部を切断し、幅が368mmの定着ベルトを得た。この結果、弾性層の長手方向(幅方向)の両端部から約0.1L以上中央側の領域が、帯電処理された長手中央領域、その両側に端部領域を有する定着ベルトとなった。
(3)定着ベルト弾性層の特性評価
(3-1)弾性層の厚み方向の熱伝導率
弾性層の厚み方向の熱伝導率λndは、以下の式から算出した。
λnd=α×C×ρ
式中、λndは弾性層の厚み方向の熱伝導率(W/(m・K))、αは厚み方向の熱拡散率(m/s)、Cは定圧比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m)である。
ここで、厚み方向の熱拡散率αと定圧比熱Cと密度ρの値は以下の方法により求めた。
・熱拡散率α
弾性層の厚み方向の熱拡散率αは、周期加熱法熱物性測定装置(商品名:FTC-1、アドバンス理工株式会社製)を用いて、室温(25℃)で測定した。弾性層から面積が8×12mmの試料片にカッターナイフで切り取り、計5個の試料片を作製し、それぞれの試料片の厚みをデジタル測長器(商品名:DIGIMICRO(登録商標) MF-501 フラット測定子φ4mm;ニコン社製)を用いて測定した。次に、それぞれの試料片に対し、計5回測定し、その平均値(m/s)を求めた。尚、測定は1kgの重りを使用して試料片を加圧しながら行った。
その結果、弾性層の長手中央領域の厚み方向の熱拡散率αは9.31×10-7/s、端部領域の熱拡散率は4.97×10-7/sであった。
・定圧比熱C
弾性層の定圧比熱は、示差走査熱量測定装置(商品名:DSC823e、メトラー・トレド株式会社製)を用いて測定した。
具体的には、試料用のパン及び参照用のパンとして、アルミニウム製のパンを用いた。まず、ブランク測定として、両方のパンが空の状態で、10分間、15℃の定温に保った後、215℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、さらに10分間、215℃の定温で保つプログラムで測定を実施した。次に、低圧比熱が既知である10mgの合成サファイアを基準物質に用い、同じプログラムで測定を行った。次いで、基準物質の合成サファイアと同量の10mgの測定試料を弾性層から切り出した後、試料パンにセットし、同じプログラムで測定を実施した。これらの測定結果を上記示差走査熱量測定装置に付属の比熱解析ソフトウェアを用いて解析し、5回の測定結果の平均値から、25℃における定圧比熱Cを算出した。
その結果、弾性層の定圧比熱は、1.05J/(g・K)であった。
・密度ρ
弾性層の密度は、乾式自動密度計(商品名:アキュピック1330-01、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、10cmの試料セルを用い、セル容積のおおよそ8割程度を満たすように試料片を弾性層から切り出し、この試料片の質量を測定した後、試料セルに入れた。この試料セルを装置内の測定部にセットし、測定用のガスとしてヘリウムを用い、ガス置換の後、容積測定を10回実施した。各回について試料片の質量と測定された容積から、弾性層の密度を算出し、その平均値を求めた。
その結果、弾性層の密度は1.53g/cmであった。
以上より、単位換算した弾性層の定圧比熱C(J/(kg・K))と密度ρ(kg/m)、および測定した熱拡散率α(m/s)から、弾性層の厚み方向の熱伝導率λndを長手方向の領域ごとに算出した。その結果、長手中央領域では1.50W/(m・K)、端部領域では0.80W/(m・K)であった。
(3-2)弾性層の長手方向の熱伝導率
弾性層の長手方向の熱伝導率λmdは、以下の式から算出した。
λmd=αmd×Cp×ρ
式中、αmdは長手方向の熱拡散率(m/s)、Cpは定圧比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m)である。
ここで、定圧比熱Cpと密度ρは、上述の方法で求めた値を用い、長手方向の熱拡散率αmdと周方向の熱拡散率αtdは、以下の方法により求めた。
光交流法熱拡散率測定装置(商品名:LaserPIT、アドバンス理工社製)を用いて、室温(25℃)で測定した。まず、弾性層サンプルの長手方向あるいは周方向が30mmになるように、5×30mmの試料片にカッターナイフで切り取った。次に、試料片の表面に黒体塗料(商品名:JSC-3号、ジャパンセンサー社製)を塗布し、150℃設定の電気炉で20分間焼き付けした試料を作製した。それぞれの試料に対し、以下の条件で2回測定し、その平均値を求めた。測定条件は、室温、真空中、Total Time(全測定時間)1500sec、Sampling 2、Period(1/周波数)5、Rate(試料取り付け台の移動速度)10μm/s、Level(試料取り付け台の移動距離)3000μmとした。また、本発明者らは事前検討において、等方的な熱伝導率を発現するバルク体から切り取ったサンプルでの検討により、装置間でのバラツキがほぼなく、一つの装置での測定値をそのまま比較しても問題がないことを確認している。すなわち、前記の周期加熱法熱物性測定装置(商品名:FTC-1、アドバンス理工株式会社製)で測定した熱伝導率と光交流法熱拡散率測定装置(商品名:LaserPIT、アドバンス理工社製)で測定した熱伝導率はほぼ等しかった。
弾性層の定圧比熱Cp(J/(kg・K))と密度ρ(kg/m)、および測定した熱拡散率αmd(m/s)とαtd(m/s)から、弾性層の長手方向の熱伝導率λmdを領域ごとに算出した。その結果、長手中央領域では1.29W/(m・K)、端部領域ではλmd=2.01W/(m・K)、であった。
(3-3)平均配列度f、平均配列角度Φs
弾性層の長手方向の各領域の大粒径フィラーの配列度、及び小粒径フィラーの配列角度は、製造した定着ベルトの各領域から縦5mm、横5mm、厚みが定着ベルトの全厚みである試料をそれぞれ10個採取し、厚み-周方向の第1断面と、厚み-長手方向の第2断面を5個ずつイオンビームを用いて研磨加工した。弾性層の第1断面及び弾性層の第2断面をレーザー顕微鏡で観察し、150μm×100μm領域の断面画像を取得した(図8(a))。
得られた断面画像を大津法により二値化し、第1弾面から第1の二値化像、第2断面から第2の二値化像を取得した(図8(b))。得られた第1及び第2の二値化像の各フィラーについて円相当径を算出し、円相当径が5μm以上の大粒径フィラー7のみを残した画像(図8(c))と円相当径が5μm未満の小粒径フィラー8のみを残した画像(図8(d))に分割した。この大粒径フィラー画像、小粒径フィラー画像に対して二次元フーリエ変換解析を行うことで、フィラー配列の方向と程度を表す楕円プロット図を得た(図8(e)、図8(f))。得られた楕円プロット図から大粒径配列度、小粒径配列角度をそれぞれ求め、領域ごとに10サンプルの大粒径フィラーの平均配列度f及び小粒径フィラーの平均配列角度Φを求めた。
(4)実機評価(定着性、画質、耐久性)
<定着性評価>
こうして得られた定着ベルトを、電子写真方式の複写機(商品名:imagePRESS C850、キヤノン社製)の熱定着装置に組み込んだ。そして、この熱定着装置を、上記複写機に装着した。この複写機を用いて、定着温度を標準の定着温度よりも低く設定して、坪量300g/mの厚紙(商品名:UPM Finesse gloss 300g/m、UPM社製)にシアンのベタ画像の形成を行った。
具体的には、熱定着装置の定着温度を、上記複写機における標準の定着温度である195℃から175℃に調整して、シアンのベタ画像を5枚連続して形成し、5枚目のベタ画像について画像濃度を測定した。次いで、当該ベタ画像のトナー面を、4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけたシルボン紙でトナー面を同一方向に3回摺擦し、摺擦後の画像濃度を測定した。そして、摺擦前後での画像濃度の低下率(=[摺擦前後での画像濃度差/摺擦前の画像濃度]×100)が、5%未満である場合に、トナーが厚紙に定着したものと判断した。その結果を下記の基準で評価した。画像濃度は、反射濃度計(マクベス社製)を用いた。
ランクA:定着温度175℃にて、トナーが厚紙に定着した。
ランクB:定着温度180℃にて、トナーが厚紙に定着した。
ランクC:定着温度185℃にて、トナーが厚紙に定着した。
ランクD:定着温度185℃にて、トナーが厚紙に定着しなかった。
<非通紙領域昇温評価>
非通紙領域昇温の評価は、低温度(15℃程度)かつ低湿度(10%程度)の環境下で、A4サイズ紙(商品名「CS-680」、キヤノン株式会社製)を90枚/分で10分間連続プリントした後に測定した定着ベルト3の非通紙領域の表面温度に基づき行った。具体的には、定着ニップ部Nから記録媒体の搬送方向上流側90°に位置する定着ベルト3の表面温度が195℃を維持するように、誘導加熱部材13による加熱温度を調整しながら300枚連続プリントを行う。そして、300枚連続プリントが終了してから、定着部材11の非通紙領域(A4横サイズ紙が通過しない領域)の表面温度を放射型温度計で測定し、初期温度(通紙1枚目)からの温度変化で以下の判定基準に基づき行った。
ランクA:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が30℃以下
ランクB:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が30℃より大きく40℃以下
ランクC:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が40℃より大きく50℃以下
ランクD:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が50℃より大きい
<耐久性評価>
定着温度を標準の定着温度(195℃)とした状態で、A4サイズの普通紙へのシアンのベタ画像の連続形成を行い、定着ベルトの弾性層の破壊や塑性変形が生じた時点における枚数を記録し、以下の基準で評価した。なお、画像の枚数が74万枚に至ってもなお定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が生じなかった場合には、74万枚で画像形成を中止した。
ランクA:74万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が認められない。
ランクB:60万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じなかったが、74万枚の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じた。
ランクC:10万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じなかったが、60万枚の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じた。
ランクD:10万枚の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が生じた。
[実施例2]
フィラーの金属ケイ素の体積比率を38vol%にすること以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例3]
フィラーとして、大粒径アルミナ(商品名:AO-509、アドマテック社製、平均粒径10μm)を44vol%、小粒径アルミナ(商品名:AO-502、アドマテック社製、平均粒径0.7μm)を3vol%で総フィラー量47vol%にすること以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[実施例4]
電場付与時にコロナ帯電器をレシプロ機構により、長手方向に±5mm、3Hzで往復振動させながら電場を付与したこと以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。これにより、実施例1の長手中央領域の両側に5mm幅の中間領域が形成された。
[実施例5]
電場付与時にコロナ帯電器をレシプロ機構により、長手方向に±5mm、3Hzで往復振動させながら電場を付与したこと以外は実施例3と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。これにより、実施例3の長手中央領域の両側に5mm幅の中間領域が形成された。
[比較例1]
電場付与を行わなかった以外は実施例3と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例2]
フィラーとして、大粒径アルミナ(商品名:AO-509、アドマテック社製、平均粒径10μm)を50vol%、小粒径アルミナ(商品名:AO-502、アドマテック社製、平均粒径0.7μm)を3vol%で総フィラー量53vol%にし、電場付与も行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例3]
フィラーの金属ケイ素の体積比率を38vol%にし、電場付与も行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例4]
フィラーの金属ケイ素の体積比率を38vol%にし、電場付与を長手全域に渡って行った。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
[比較例5]
フィラーの金属ケイ素の体積比率を49vol%にし、電場付与も行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
以上の結果を表1(実施例)及び表2(比較例)に示す。
Figure 2022185416000006
Figure 2022185416000007
すべての実施例において、弾性層の両端から0.12L以上の長手中央領域ではλnd/λmdが1.1以上であり、また弾性層の両端から0.05L以下を含む端部領域ではλnd/λmdが0.9以下であった。そして、いずれの実施例も、定着性、非通紙領域昇温、耐久性でAランクまたはBランクとなる良好な結果が得られた。特に帯電器レシプロ機構により弾性層に中間領域4bを設けた実施例4、5においては耐久性が極めてよく、いずれの耐久性もAランクとなった。これは通紙領域と非通紙領域の境界部分で、紙搬送によって生じる搬送方向のせん断力によるゴムへの負荷が中間領域を形成したことで軽減されたためと考えられる。また、実施例1、2、4においては長手中央領域のλndが1.3W/(m・K)以上、端部領域のλmdが1.3W/(m・K)以上である。これらは、長手中央領域のλndが1.3W/(m・K)未満、端部領域のλmdが1.3W/(m・K)未満の実施例3と比較して、定着性と非通紙領域の昇温の評価においてより高い性能が得られた。なお、λnd及びλmdが1.3W/(m・K)以上が好ましいことは、比較例2において、λndが1.30、λmdが1.35W/(m・K)において、非通紙領域の昇温の評価において良好であることから明らかである。
一方、比較例では、長手領域ごとの熱伝導率の熱異方性を制御していないため、いずれかの項目でCランクまたはDランクの結果となった。
以上の実施例および比較例は定着ベルトについて説明したが、定着ローラの場合にも同様の傾向にあることは容易に理解できるものである。
以上説明したように、本開示によれば、通紙領域での厚み方向への高い熱伝導性、ならびに、繰り返し圧縮などに対する高耐久性、さらには非通紙領域の過度の昇温を抑制するために有効な熱定着装置用の定着部材及び熱定着装置に利用可能である。また、該熱定着装置は、これを搭載した電子写真画像形成装置において、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に安定して固定(定着)させることができ、端部冷却ファンの設置やダウンタイムを設ける必要がない電子写真画像形成装置を提供できる。
3 基体
4 弾性層
4a 端部領域
4b 中間領域
4c 長手中央領域
401-1 第1断面
401-2 第2断面
7 大粒径フィラー
8 小粒径フィラー
100 定着部材
11 定着ベルト
12 加圧ベルト
13 誘導加熱部材
18 加熱側ローラ
20 加圧側ローラ
31 セラミックヒータ
33 加圧ローラ

Claims (14)

  1. 基体と、該基体上の弾性層とを有する熱定着装置用の定着部材であって、
    該弾性層はシリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散されたフィラーを含み、
    該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλnd、長手方向の熱伝導率をλmd、弾性層の長手方向の全長をLとしたとき、
    該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×L以上の中央領域におけるλnd/λmdが1.1以上であり、かつ、
    該弾性層は、該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの間にλnd/λmdが0.9以下である端部領域を有する、ことを特徴とする定着部材。
  2. 前記中央領域のλndが1.3W/(m・K)以上であり、前記端部領域のλmdが1.3W/(m・K)以上である、請求項1に記載の定着部材。
  3. 前記中央領域における厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像と、厚み-長手方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像を取得し、
    該二値化像の各々における円相当径が5μm以上の大粒径フィラーの平均配列度fが、0.00以上、0.15以下であり、
    該二値化像の各々における円相当径が5μm未満の小粒径フィラーの平均配列角度Φが、60°以上、120°以下である、請求項1又は2に記載の定着部材。
  4. 前記端部領域における厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像と、厚み-長手方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像を取得し、
    該二値化像の各々における円相当径が5μm以上の大粒径フィラーの平均配列度fが、0.00以上、0.15以下であり、
    該二値化像の各々における円相当径が5μm未満の小粒径フィラーの平均配列角度Φが、30°以下、または、150°以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の定着部材。
  5. 前記弾性層が、前記中央領域と前記端部領域との間に、λnd/λmdが0.9より大きく1.1より小さい中間領域を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の定着部材。
  6. 前記弾性層の前記中間領域における厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像と、厚み-長手方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像を取得し、
    該二値化像の各々における円相当径が5μm以上の大粒径フィラーの平均配列度fが、0.00以上、0.15以下であり、
    該二値化像の各々における円相当径が5μm未満の小粒径フィラーの平均配列角度Φが、30°より大きく60°未満、または、120°より大きく150°未満である、請求項5に記載の定着部材。
  7. 前記定着部材が、エンドレス状の定着ベルトである請求項1~6のいずれか1項に記載の定着部材。
  8. 前記定着部材は、前記弾性層の外周上に表面層をさらに有する、請求項7に記載の定着部材。
  9. 前記基体が、ニッケル、銅、鉄、及び、アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の定着部材。
  10. 加熱のための定着部材と、該定着部材に対向して配置されている加圧部材とを有する熱定着装置であって、該定着部材が、請求項1~9のいずれか1項に記載の定着部材であることを特徴とする熱定着装置。
  11. 前記定着部材の基体を加熱する加熱手段を有する請求項10に記載の熱定着装置。
  12. 前記加熱手段が誘導加熱手段であり、前記定着部材の基体が誘導加熱により加熱可能な基体である請求項11に記載の熱定着装置。
  13. 前記加熱手段が、前記基体を加熱するヒータである請求項11に記載の熱定着装置。
  14. 前記ヒータが、該定着部材の内周面に接して配置されている請求項13に記載の熱定着装置。
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