JP2023157199A - ブレーキシステム - Google Patents

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【課題】 ABS動作を実行するブレーキシステムの実用性を向上させる。【解決手段】 車輪にブレーキ力を付与するブレーキ装置と、車輪のスリップ率が閾値を超えたときに、ブレーキ力を減少させる減少モードとその減少モードの後にブレーキ力を回復させるために増加させる増加モードとを含むABS動作を、ブレーキ装置に行わせるコントローラとを備えたブレーキシステムにおいて、ABS動作の終了時tAEに回復させるべきブレーキ力PWである到達目標ブレーキ力PW*を、ABS動作の開始時tASのブレーキ力に基づいて決定するとともに、ABS動作を行わせる時間である動作周期TCYCを、車両が走行する路面の状態に基づいて決定する。増加モードにおけるブレーキ力の増加勾配を車両重量等の他のファクタにも基づいて決定するといった複雑な処理を行うことなく、比較的簡単な処理によって、適切なABS動作を実現させることが可能となる。【選択図】 図3

Description

本発明は、ABS動作を実行するブレーキシステムに関する。
ブレーキシステムでは、車輪のロックを回避するために、ABS(アンチロック若しくはアンチスキッド)制御を行うことが一般的であり、このABS制御では、車輪のスリップ率が設定スリップ率を超えたときに、ブレーキ装置が、減圧モードと増圧モードとを含むABS動作を行うようにされている。ABS制御に関して、これまでに、数々の技術が開発されている。例えば、液圧ブレーキシステムについて記載されている下記特許文献の技術では、左右の車輪の一方が減圧モードとされている場合に、他方の増圧モードにおける増圧勾配を調整するようにされている。
特開2008-110716号公報
上記特許文献の技術では、増圧勾配を一定にすることが行われるが、増圧勾配を一定にすることが、路面の摩擦係数の如何によっては、必ずしも適切なABS動作に繋がるとは言い難い。また、一方で、ABS動作を適切なものとするためには、路面の摩擦係数を始めとする走行環境、自車両の重量等、多くのファクタを考慮することが望ましいが、ファクタが多くなると、ABS動作のためにコントローラが実行する演算処理が多くなり、ブレーキシステムの過大な負荷になりかねない。このように、ABS制御に関しては、未だ、多分に改良の余地が残されており、改良を加えることで、ABS動作を実行するブレーキシステムの実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いブレーキシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のブレーキシステムは、
車両に搭載されるブレーキシステムであって、
車輪にブレーキ力を付与するブレーキ装置と、
車輪のスリップ率が閾値を超えたときに、ブレーキ力を減少させる減少モードとその減少モードの後にブレーキ力を回復させるために増加させる増加モードとを含むABS動作を、前記ブレーキ装置に行わせるコントローラと
を備え、
前記コントローラが、前記ABS動作の終了時に回復させるべきブレーキ力である到達目標ブレーキ力を、前記ABS動作の開始時のブレーキ力に基づいて決定するとともに、前記ABS動作を行わせる時間である動作周期を、車両が走行する路面の状態に基づいて決定するように構成される。
本発明のブレーキシステムによれば、上記到達目標ブレーキ力をABS動作の開始時のブレーキ力に基づいて決定するとともに、動作周期、すなわち、1回のABS動作の開始から終了までの時間を、車両が走行する路面の状態に基づいて決定する。そのため、例えば、増加モードにおけるブレーキ力の増加勾配を車両重量等の他のファクタにも基づいて決定するといった複雑な処理を行うことなく、比較的簡単な処理によって、適切なABS動作を実現させることが可能となる。
発明の態様
本発明のブレーキシステムにおけるブレーキ装置として、いわゆる液圧ブレーキ装置、詳しくは、車輪とともに回転する回転体と、その回転体に押し付けられる摩擦部材と、その摩擦部材を回転体に押し付けるために作動する液圧シリンダと、その液圧シリンダに作動液を供給する作動液供給装置とを備えたブレーキ装置を採用可能である。また、液圧ブレーキ装置に限定されず、駆動源としての電動モータによってピストンを動作させるアクチュエータを有するブレーキ装置、すなわち、いわゆる電動ブレーキ装置を採用することも可能である。
上記液圧ブレーキ装置を採用する場合、上記液圧シリンダ内の作動液の圧力がブレーキ力を指標するものとなるため、コントローラを、ブレーキ力に代えて、液圧シリンダ内の作動液の圧力に基づいて、ABS動作をブレーキ装置に行わせるように構成すればよい。なお、そのように構成した場合、上記「減少モード」は、「減圧モード」と、「増加モード」は、「増圧モード」と呼ぶことができ、また、後に説明する「保持モード」は、「液圧保持モード」と、「急増加モード」は、「急増圧モード」と、「緩増加モード」は、「緩増圧モード」と、それぞれ呼ぶことができる。
上記「コントローラ」は、例えば、CPU,ROM,RAM等を含んで構成されるコンピュータを主体として構成すればよく、さらに、ブレーキ装置を構成する動作部品のドライバ(駆動回路)等を含んで構成すればよい。ドライバは、ブレーキ装置が液圧ブレーキ装置の場合、液圧を制御するための弁を駆動するためのもの等が含まれ、ブレーキ装置が電動ブレーキ装置の場合、駆動源となる電動モータの駆動回路等が含まれる。
上記「車両が走行する路面の状態」は、「路面摩擦係数(以下、「路面ミュー」という場合ある)」で指標することが最も一般的であり、ABS動作は、その路面ミューに基づいて、ブレーキ装置に行わせればよい。
上記「到達目標ブレーキ力」は、ABS動作の開始時のブレーキ力と同じ値に決定してもよく、また、例えば、ABS動作の開始時のブレーキ力と路面ミューとに基づいて、ABS動作の開始時のブレーキ力よりも路面ミューが小さい程小さい値に決定してもよい。上記「動作周期」は、1回のABS動作の開始から終了までの時間を意味し、具体的には、減少モードの開始時点から増加モードの終了時点までの時間を意味する。動作周期は、ABS動作のサイクルタイムと呼ぶこともできる。
効率的なABS動作を行うために、上記増加モードは、ブレーキ力を急増加勾配で増加させる急増加モードと、その急増加モードに続けて実施され、ブレーキ力を、急増加勾配よりも緩やかな緩増加勾配で増加させる緩増加モードとを含むようにすればよい。その場合、急増加モードを実施する時間である急増加時間を、車両が走行する路面の状態に基づいて決定するようにすることが望ましい。そして、急増加モードから緩増加モードに移行させるときのブレーキ力である移行ブレーキ力を、前記到達目標ブレーキ力に対する設定比率のブレーキ力に決定し、急増加勾配を、急増加時間と、当該急増加モード開始時のブレーキ力と移行ブレーキ力との差分とに基づいて決定するようにすればよい。
さらに、緩増加モードの開始時から、動作周期に基づいて定まるABS動作の終了予定時までの時間と、緩増加モード開始時のブレーキ力と到達目標ブレーキ力との差分とに基づいて、緩増加勾配の基準となる基準緩増加勾配を決定し、その基準緩増加勾配に基づいて、緩増加モードにおいてブレーキ力を増加させるようにすればよい。緩増加モードにおいて、車輪のスリップ率が比較的大きく改善されることに考慮すれば、例えば、緩増加勾配を、基準緩増加勾配に、車輪のスリップ率に基づく補正を行うことで、決定するようにしてもよく、そのようにして緩増加勾配を決定する場合、ABS動作を早期に終了させるべく、緩増加モードにおいて、ブレーキ力が到達目標ブレーキ力に到達したときには、決定されている動作周期に至らずとも、当該緩増加モードを終了させるようにしてもよい。
また、ABS動作を、減少モードと増加モードとの間に、ブレーキ力を保持する保持モードを含むようにしてもよい。その場合、車輪の回転についての減速度が設定減速度以下となったときに、減少モードから保持モードに移行させ、車輪の回転についての加速度が設定加速度以上となったときに、前記保持モードから前記増加モードに移行させるようにすればよい。ここでいう「車輪の回転についての減速度」,「車輪の回転についての加速度」は、「車輪の回転についての加減速度(以下、「車輪加減速度」という場合がある)」という統一した概念として捉えることが可能である。車輪加減速度は、車輪の回転速度が増加しているときに正の値となり、車輪の回転速度が減少しているときに負の値となる。車輪加減速度を採用する場合、上記「設定減速度」は、0に近い負の値の車輪加減速度(以下、「保持モード移行設定車輪加減速度」という場合がある)として設定するのが望ましく、車輪加減速度がその保持モード移行設定車輪加減速度以上となったときに、減少モードから保持モードに移行させればよい。同様に、上記「設定加速度」も、0に近い正の値の車輪加減速度(以下、「増加モード移行設定車輪加減速度」という場合がある)として設定するのが望ましい。
実施例のブレーキシステムのハード構成を示す図である。 車両に対してブレーキ力を付与した場合の車輪の回転速度の変化と、その変化に応じてその車輪に対して行われるABS動作の概要を示すグラフである。 ABS動作中の時間の経過に伴うブレーキ力の変化を示すグラフである。 ABS動作におけるいくつかのパラメータを決定するためのマップである。 実施例のブレーキシステムにおいて実行されるABS制御プログラムのフローチャートである。 ABS制御プログラムを構成する減圧モードサブルーチンのフローチャートである。 ABS制御プログラムを構成する液圧保持モードサブルーチンのフローチャートである。 ABS制御プログラムを構成する急増圧モードサブルーチンおよび緩増圧モードサブルーチンのフローチャートである。
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例であるブレーキシステムを、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
[A]ブレーキシステムのハード構成
図1に液圧回路図を示すように、本ブレーキシステムは、液圧ブレーキ装置1(以下、単に、「ブレーキ装置1」という場合がある)を中心的構成要素として構成されており、このブレーキ装置1は、当該ブレーキ装置1がABS動作を行うことを可能とすべく、ABSアクチュエータ2(以下、単に「アクチュエータ2」という場合あある)を備えている。このアクチュエータ2の作動は、当該ブレーキシステムのコントローラであるABS電子制御ユニット3(以下、「ABS-ECU3」という場合がある)によって制御される。
ブレーキ装置1は、アクチュエータ2の他に、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11,倍力手段である負圧ブースタ12,マスタシリンダ13,4つの車輪(詳しくは、左前輪FL,右後輪RR,右前輪FR,左後輪RL)にそれぞれ設けられた4つの車輪制動器14,15,34,35を備えている。車輪制動器14,15,34,35の各々は、いわゆるディスクブレーキであり、車輪とともに回転する回転体であるディスクロータ,摩擦部材としてのブレーキパッド,ブレーキパッドをディスクロータに押し付けるために作動液が供給される液圧シリンダとしてのホイールシリンダを含んで構成された一般的なものである。ABSアクチュエータ2,ブレーキペダル11,負圧ブースタ12,マスタシリンダ13は、ホイールシリンダに作動液を供給する作動液供給装置として機能する。
ブレーキペダル11は、運転者によって踏み込まれると、その踏み込みの力である踏力が、負圧ブースタ12によって倍力され、マスタシリンダ13内に配設された加圧ピストン13a,13bを押圧する。この押圧により、マスタシリンダ13内に区画形成された加圧室13c,13dに、互いに同じ高さの液圧(以下、「マスタ圧PM」という)が発生させられる。マスタシリンダ13には、加圧室13c,13dと連通するリザーバ13eが付設されており、そのリザーバ13eは、マスタシリンダ13に作動液を供給したり、マスタシリンダ13内の余剰の作動液を貯留する機能を有している。
マスタシリンダ13において発生させられたマスタ圧PMは、ABSアクチュエータ2を介して、各車輪制動器14,15,34,35が有するホイールシリンダに導入される。このABSアクチュエータ2は、左前輪FLと右後輪RRとに対してブレーキ力を発生させるための第1系統と、右前輪FRと左後輪RLとに対してブレーキ力を発生させるための第2系統とを有しており、それら2つの系統は互いに同じ構成とされている。
ABSアクチュエータ2の第1系統は、マスタ圧PMを、左前輪FLに設けられた車輪制動器14のホイールシリンダと、右後輪RRに設けられた車輪制動器15のホイールシリンダとに導入するための主液通路Aを有しており、その主液通路Aを介して、それらホイールシリンダの各々に、液圧(以下、「ホイールシリンダ圧PW」という場合がある)が発生させられる。詳しく言えば、主液通路Aは、2つの液通路A1,A2に分岐させられており、液通路A1が、車輪制動器14のホイールシリンダに、液通路A2が、車輪制動器15のホイールシリンダに接続されている。
液通路A1,A2には、それぞれ、対応するホイルシリンダ圧PWを増加させるための増圧弁16,17が設けられている。増圧弁16,17は、非励磁状態で開弁状態となり励磁状態で閉弁状態となるいわゆる常開型の開閉弁であり、PWM(pulse width modulation)方式による作動が可能とされている。詳しく言えば、励磁時間と非励磁時間との比率であるデューティ比が変更させられることにより、すなわち、いわゆるデューティ作動させられることにより、通過する作動液の単位時間あたりの量(通過速度)を変更することが可能となっている。言い換えれば、増圧弁16,17は、対応するホイールシリンダ圧PWの増加勾配、すなわち、増圧勾配を変更可能とされているのである。
ちなみに、増圧弁16,17には、それぞれ、チェック弁16a,17aが併設されている。それらチェック弁16a,17aは、後に説明する当該ブレーキ装置1のABS動作において、増圧弁16,17が閉弁されている状態で、運転者によってブレーキペダル11が戻し操作されたときに、その操作に応じて、車輪制動器14,15のホイールシリンダ圧PWを減少させるために設けられている。
また、第1系統には、リザーバ20が設けられている。このリザーバ20と、液通路A1,A2の各々における増圧弁16,17と車輪制動器14,15との間とを結ぶ排出路Bには、減圧弁21,22が設けられている。減圧弁21,22は、非励磁状態で閉弁状態となるいわゆる常閉型の開閉弁であり、増圧弁16,17と同様に、PWM方式による作動が可能とされている。減圧弁21,22が、いわゆるデューティ作動させられることにより、通過する作動液の単位時間あたりの量(通過速度)を変更することが可能となっている。つまり、減圧弁21,22は、対応するホイールシリンダ圧PWの減少勾配、すなわち、減圧勾配を変更可能とされているのである。
さらに、第1系統には、リザーバ20と、主液通路Aとを結ぶように、還流路Cが設けられている。この還流路Cには、主液通路Aにおける増圧弁16,17よりも上流側(マスタシリンダ13側)の部分にリザーバ20から作動液を汲み上げるためのポンプ24が配設されている。ポンプ24は、第1系統,第2系統に共通のモータ23によって駆動される。なお、ポンプ24の吐出側には、作動液のポンプ24を介した逆流を防止するためのチェック弁24aが配設されている。なお、後に説明するABS動作が開始されたタイミングで、ポンプ24を駆動すべく、モータ23が作動させられ、そのABS動作の終了のタイミングで、ポンプ24の駆動を停止すべく、モータ23の作動が停止される。
ちなみに、リザーバ20は、リザーバ室20aと、このリザーバ室20aを区画するピストン20bと、そのピストン20bを付勢するスプリング20cとを有しており、車輪制動器14,15のホイールシリンダから排出された作動液を、リザーバ室20a内に、所定量まで受け入れるように構成されている。
以上が、ABSアクチュエータ2の第1系統についての説明であるが、第2系統にも、第1系統と同様に、主液通路D,排出路E,還流路Fが設けられ、右前輪FR,左後輪RLに対して設けられた車輪制動器34,35のホイールシリンダ圧PWを制御するための増圧弁36,37、チェック弁36a,37a、リザーバ40およびそれの構成要素40a~40c、減圧弁41,42、ポンプ44、チェック弁44aが設けられている。
なお、ABSアクチュエータ2には、マスタ圧PMを検出するためのマスタ圧センサ50も設けられている。また、各車輪FL,RR,FR,RLには、自身の回転速度(以下、「車輪速vW」という場合がある)を検出するための車輪速センサ4,5,6,7が設けられている。
ブレーキ装置1のABS動作のためのコントローラであるABS-ECU3は、CPU,ROM,RAM,入出力インタフェース,それらを繋ぐバス等を含んで構成されるコンピュータと、そのコンピュータからの指令に基づいて作動しブレーキ装置1の構成要素を駆動するドライバ(駆動回路)とを備えている。具体的には、ポンプ24,44を駆動するためのモータ23のドライバ、および、増圧弁16,17,36,37,減圧弁21,22,41,42の各々を開閉およびデューティ作動させるためのドライバを備えている。マスタ圧センサ50からのマスタ圧PMについての信号、車輪速センサ4,5,6,7からの各車輪の車輪速vWについての信号は、コンピュータが、入出力インタフェースを介して受け取るようにされている。
[B]ABS制御の説明
i)ABS制御の概要
ABS制御は、ブレーキ力を車輪に付与した場合における車輪のロックを防止するための制御である。ABS制御を実行する前提として、コンピュータは、各車輪の車輪速vWに基づいて、当該車両の走行速度(以下、「車速」という場合がある。車体速と呼ぶこともできる。)vを検知する機能を有している。また、コンピュータは、次式で示す各車輪のスリップ率SLPを検知する機能を有している。
SLP=(v-r・vW)/v r:車輪有効半径
スリップ率SLP=1は、車輪が完全にロックしていることを示している。さらに、コンピュータは、各車輪のスリップ率SLPと、マスタ圧PMから導き出した車輪を制動するブレーキ力とに基づいて、当該車両が走行している路面の状態として、その路面の摩擦係数(いわゆる「路面ミュー」である)μを推定する機能を有している。車速v,スリップ率SLPの検知、路面摩擦係数μの推定の手法については、既に公知の技術であるためここでの説明は省略する。
また、ABS制御は、4つの車輪の各々に対して、個別的に行われるため、ここでは、特定されない1つの車輪についてのみのABS制御の説明を行うこととし、当該ブレーキシステムのハード構成の上記説明において使用した各構成要素の符号については、省略することとする。
図2には、ブレーキ力を車輪に付与した場合における当該車両の車速vの変化,1つの車輪の車輪速vWの変化,その車輪に対して配設されている車輪制動器のホイールシリンダ圧PWの変化を、グラフとして示している。ちなみに、グラフでは、車輪速vWが、車速vと同じ次元で、つまり、車輪有効半径rを乗じた値として示されている。また、本ブレーキシステムは、液圧ブレーキ装置1を含んで構成されるシステムであるため、ホイールシリンダ圧PWは、車輪に付与されるブレーキ力を指標するものとなる。そのことを考慮して、以下、ブレーキ力に代えて、ホイールシリンダ圧PWを用いて説明することがあることとする。
図2のグラフを参照しつつ説明すれば、ある車速vで車両が走行しているときに、時点tBSにおいて、ブレーキペダルへのブレーキを開始した場合、つまり、ある大きさのブレーキ力の付与を開始した場合に、その時点tBSから、車速vは低下する。車輪がスリップしていない場合には、車輪速vWは、車速vの減少に沿って低下していくのであるが、スリップする場合、図2のグラフから解るように、車輪速vWは、大きく低下する。つまり、スリップ率SLPが上昇するのである。
ABS制御では、図2のグラフに示すように、コントローラは、車輪のスリップ率SLPが閾値(以下、「ABS動作開始閾スリップ率」という場合がある)SLPSを超えたときに、すなわち、ABS動作開始時点tASから、ブレーキ力を減少させる減少モードと、減少させたブレーキ力を回復させるために増加させる増加モードとを含むABS動作を、ブレーキ装置に行わせる。言い換えれば、ホイールシリンダ圧PWを減少させる減圧モードと、ホイールシリンダ圧PWを増加させる増圧モードとを含むABS動作を行わせる。なお、本ブレーキシステムにおけるABS動作は、減圧モードと増圧モードとの間に、ブレーキ力を保持するための保持モードとして、ホイールシリンダ圧PWを保持する液圧保持モードが含まれている。
ABS制御では、スリップ率SLPがABS動作開始閾スリップ率SLPSを超えている限り、1回のブレーキ操作の中で、上記ABS動作が、繰り返し行われる。そして、1回のブレーキ操作の中で、車輪のスリップ率SLPは、グラフにおいてハッチングによって示す目標スリップ率領域に収まるようにされ、車輪のロックが防止される。
ii)ABS動作の詳細
以下に、図3のグラフを参照して、ABS動作の詳細な説明をする。図3は、ABS動作中の時間の経過に伴うブレーキ力の変化、具体的には、ホイールシリンダ圧PWの変化を示すグラフである。先に説明したように、ABS動作は、車輪のスリップ率SLPがABS動作開始閾スリップ率SLPSを超えたときに、すなわち、グラフにおけるABS動作開始時点tASから、開始される。
ABS動作を開始するにあたって、ABS-ECUは、ABS動作を行わせる時間、すなわち、ABS動作開始時点tASからABS動作終了予定時点tAEまでの時間として、動作周期TCYCを決定する。この決定は、図4(a)に示す動作周期決定マップを参照して行われる。このマップは、車両が走行する路面の状態である路面摩擦係数μと、動作周期TCYCとの関係を示しており、このマップに従うことで、滑りやすい路面ほどより短い時間のABS動作をより回数多く実行させるために、動作周期TCYCは、路面摩擦係数μが小さい程、短い時間に決定される。
また、本ブレーキシステムは、ホイールシリンダ圧PWを検出するためのホイールシリンダ圧センサを有していない。ABS動作を行っていないときには、ホイールシリンダ圧PWは、マスタ圧PMと等しいと考えることができる。そこで、ABS-ECUは、ABS動作開始時点tASでのホイールシリンダ圧PWを、その時点でのマスタ圧PMと認定する。そして、ABS-ECUは、ABS動作を終了させるときのブレーキ力である到達予定ブレーキ力、すなわち、このABS動作を終了させるときのホイールシリンダ圧PWであるABS動作終了時目標圧PW *を、ABS動作開始時点tASでのブレーキ力、すなわち、ホイールシリンダ圧PWに基づいて決定する。具体的には、本ブレーキシステムにおいては、ABS動作終了時目標圧PW *は、ABS動作開始時点tASでのホイールシリンダ圧PWに等しく設定される。
ABS動作では、ABS-ECUは、まず、減圧モードを実行する。減圧モードでは、ABS-ECUは、ABSアクチュエータの増圧弁を閉弁し、減圧弁をデューティ作動させる。減圧モードにおけるブレーキ力の減少勾配、すなわち、ホイールシリンダ圧PWの減圧勾配dPDは、ABS-ECUが図4(b)に示す減圧勾配決定マップを参照することによって決定される。具体的に説明すれば、ABS-ECUは、スリップ率SLPの変化速度であるスリップ率変化速度dSLPを認定しており、このスリップ率変化速度dSLPが0に近い程、減圧勾配dPDを緩く決定する。ABS-ECUは、このようにして決定した減圧勾配dPDに基づいて、減圧弁をデューティ作動させる。ちなみに、減圧勾配dPD,スリップ率変化速度dSLPは、減圧モードにおいては、ともに、負の値となる。なお、ABS-ECUは、ABS動作開始時点tASでのホイールシリンダ圧PWと、その時点からの時間の経過と、決定した減圧勾配dPDとに基づいて、減圧モードにおいて、随時、ホイールシリンダ圧PWを推定する。
一方で、ABS-ECUは、車輪速センサによって検出された車輪速vWに基づいて、車輪速vWの変化速度である車輪加減速度dvWを認定している。ちなみに、車輪加減速度dvWは、正の値となる場合には、車輪加速度となり、負の値となる場合には、車輪減速度となる。減圧モード中は、車輪速vWは低下するものの、ある程度低下した場合に、その低下の速度は相当に低くなる。そこで、ABS-ECUは、車輪の減速が収まったとみなせるとき、すなわち、車輪加減速度dvWが、0に近い負の値に設定された液圧保持モード移行設定減速度dvWMに達したときに、減圧モードを終了し、液圧保持モードに移行させる。
液圧保持モードに移行させたときに、ABS-ECUは、ABSアクチュエータの減圧弁をも閉弁させる。その結果、その時点でのホイールシリンダ圧PWが維持される。この液圧保持モードにおいて、車輪の減速は停止し、増速し始める。そこで、ABS-ECUは、車輪が増速し始めたとみなせるとき、すなわち、車輪加減速度dvWが、0に近い正の値に設定された増圧モード移行設定加速度dvWに到達したときに、液圧保持モードを終了させ、増圧モードに移行する。
増圧モードでは、ABSアクチュエータの減圧弁が閉弁された状態で、増圧弁をデューティ作動させる。本ブレーキシステムでは、ホイールシリンダ圧PWの効率的かつ適切な回復を実現すべく、増圧モードとして、ホイールシリンダ圧PWの増圧勾配が比較的急な急増圧勾配dPISとされた急増圧モードと、その急増圧モードに続いて行われてホイールシリンダ圧PWの増圧勾配が比較的緩やかな緩増圧勾配dPIGとされた緩増圧モードとが設定されている。言い換えれば、ブレーキ力の増加勾配が比較的急な急増加勾配とされた急増加モードと、ブレーキ力の増加勾配が比較的緩やかな緩増加勾配とされた緩増加モードとが設定されている。
本ブレーキシステムにおいては、ABS-ECUは、急増圧モードの実行に先だって、急増圧モードを実行する時間である急増圧時間TISを、図4(c)に示す急増圧時間決定マップを参照して決定する。このマップは、車両が走行する路面の状態としての路面摩擦係数μと、急増圧時間TISとの関係を示しており、このマップに従うことにより、動作周期TCYCの決定と同様、滑りやすい路面ほど、より短い時間のABS動作をより回数多く実行するために、急増圧時間TISが、路面摩擦係数μが小さい程短い時間に決定される。一方で、ABS-ECUは、ABS動作が開始されてからの時間を計測しており、現時点を、急増圧開始時点tISSに特定し、その急増圧開始時点tISSに急増圧時間TISを加算することで、急増圧モードを終了させるべき時点である急増圧終了予定時点tISEを決定する。
また、ABS-ECUは、急増圧モードの終了時点で到達すべきホイールシリンダ圧PWである急増圧終了液圧PISEを決定する。具体的には、急増圧終了液圧PISEは、ABS動作終了時目標圧PW *に、急増圧終了液圧決定係数αを乗じることによって決定する。ちなみに、本ブレーキシステムでは、急増圧終了液圧決定係数αは、例えば、0.6程度に設定されている。そして、ABS-ECUは、急増圧終了液圧PISEと、急増圧モードの開始時点、すなわち、液圧保持モードの終了時点で推定されているホイールシリンダ圧PWとの差分を、急増圧時間TISで除することによって、急増圧モードで実現すべきホイールシリンダ圧PWの増圧勾配である急増圧勾配dPISを決定する。ブレーキ力に関して言い換えれば、ABS-ECUは、急増加モードから緩増加モードに移行させるときのブレーキ力である移行ブレーキ力を、到達目標ブレーキ力に対する設定比率のブレーキ力に決定し、急増加勾配を、急増加時間と、急増加モード開始時のブレーキ力と移行ブレーキ力との差分とに基づいて決定するのである。
ABS-ECUは、急増圧モードにおいて、増圧弁を、上記のようにして決定された急増圧勾配dPISに基づいてデューティ作動させる。また、ABS-ECUは、減圧モードと同様に、急増圧モードが開始されてからの時間の経過と、決定した急増圧勾配dPISとに基づいて、急増圧モードにおいても、随時、ホイールシリンダ圧PWを推定する。そして、ABS動作が開始されてからの時間が、上記急増圧終了予定時点tISEに達したときに、急増圧モードを終了させて、緩増圧モードに移行させる。
緩増圧モードに移行させるにあたって、ABS-ECUは、当該モードにおける増圧勾配の基準となる基準緩増圧勾配dPIG0を決定する。具体的に言えば、上記ABS動作終了時目標圧PW *から緩増圧モードの開始時点のホイールシリンダ圧PWを減じたものを、ABS動作を介してから緩増圧モードの開始時点までの時間を動作周期TCYCから減じたもので除することによって、基準緩増圧勾配dPIG0を決定する。ブレーキ力に関して言えば、緩増加モードの開始時から、動作周期TCYCに基づいて定まるABS動作の終了予定時点までの時間と、緩増加モード開始時のブレーキ力と到達目標ブレーキ力との差分と基づいて、緩増加勾配の基準となる基準緩増加勾配を決定するのである。
緩増圧モードでは、ABS-ECUは、基準緩増圧勾配dPIG0に対して補正を行って、当該モードにおける増圧勾配である緩増圧勾配dPIGを決定する。詳しく言えば、基準緩増圧勾配dPIG0に緩増圧勾配補正係数βを乗ずることによって決定する。緩増圧勾配補正係数βは、図4(d)に示す緩増圧勾配補正係数決定マップを参照して決定される。このマップは、スリップ率SLPに対する緩増圧勾配補正係数βを示すものであり、このマップに従えば、スリップ率SLPがある程度高い場合には、緩増圧勾配補正係数βは1に決定され、スリップ率SLPがある程度低くなったときには、徐々に1より大きくなるように決定される。
緩増圧モードでは、ABS-ECUは、上記のように決定された緩増圧勾配dPIGに基づいて、増圧弁をデューティ作動させる。スリップ率SLPがある程度高い場合には、基準緩増圧勾配dPIG0に沿ってホイールシリンダ圧PWが増圧させられるが、緩増圧モードの途中で、スリップ率SLPがある程度低くなった場合には、例えば、図3の破線で示すように、基準緩増圧勾配dPIG0より急な勾配に沿ってホイールシリンダ圧PWが増圧させられることになる。
ABS-ECUは、急増圧モードと同様に、緩増圧モードが開始されてからの時間の経過と、決定した緩増圧勾配dPIGとに基づいて、急増圧モードにおいても、随時、ホイールシリンダ圧PWを推定する。ABS-ECUは、ABS動作開始時点tASからの経過時間が動作周期TCYCに至ったとき、若しくは、推定されているホイールシリンダ圧PWがABS動作終了時目標圧PW *に到達したときに、当該緩増圧モードを終了させる。したがって、スリップ率SLPがある程度高いままである場合には、ABS動作開始時点tASからの経過時間が動作周期TCYCに至ったときに、緩増圧モードが終了するが、緩増圧モードの最中にスリップ率SLPがある程度低くなったときには、動作周期TCYCに至る前に、緩増圧モードが終了することになる。緩増圧モードの終了により、増圧弁は閉弁させられる。
ABS動作は、以上説明したようなものであるが、本ブレーキシステムにおいては、ABS動作終了時目標圧PW *が、ABS動作開始時点tASでのホイールシリンダ圧PWに基づいて決定されるとともに、動作周期TCYCが、車両が走行する路面の状態である路面摩擦係数μに基づいて決定される。そのため、本ブレーキシステムでは、比較的簡単な処理によって、適切なABS動作を実現させることが可能となる。また、急増圧モードにおける急増圧勾配dPISも、路面摩擦係数μに基づいて決定される。このことも、比較的簡単な処理による適切なABS動作の実現に寄与している。
iii)ABS制御のフロー
上述したABS制御は、ABS-ECUのコンピュータが、図5にフローチャートを示すABS制御プログラムを、各車輪ごとに、短い時間ピッチ(例えば、数msec)Δtで、繰り返し実行することによって、実行される。以下に、そのフローチャートに沿って、ABS制御における処理の流れを説明する。
ABS制御プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様である。)において、車輪のスリップ率SLP、スリップ率変化速度dSLPが認定され、S2において、車輪速センサの検出に基づいて、車輪加減速度dvWが認定される。続く、S3において、時間の計測のためのタイムカウンタtが、当該プログラムの実行ピッチΔtだけ、カウントアップされる。
ABS制御に関しては、先に説明した各種のモードのうち、どのモードを実施すべきであるか、若しくは、実施しているかを示すモードインジケータMIngが設定されている。このモードインジケータMIngは、ABS動作を実行していないとき、すなわち、通常モードのときには、“Norm”とされ、減圧モード,液圧保持モード,急増圧モード,緩増圧モードのときには、それぞれ、“Dec”,“Maint”,“IncS”,“IncG”とされる。S4~S7において、モードインジケータMIngが判断され、それぞれ、“Dec”,“Maint”,“IncS”,“IncG”と判断されたときには、後に説明するS8~S11の減圧モードサブルーチン,液圧保持モードサブルーチン,急増圧モードサブルーチン,緩増圧モードサブルーチンの処理が実行される。
ABS動作を実行していないときには、S12において、スリップ率SLPがABS動作開始閾スリップ率SLPSを超えているか否かが判定される。スリップ率SLPがABS動作開始閾スリップ率SLPSを超えていない場合には、S13において、車両が走行している路面の摩擦係数μが取得され、S14,S15において、それぞれ、増圧弁の開弁が維持され、減圧弁の閉弁が維持される。
S12においてスリップ率SLPがABS動作開始閾スリップ率SLPSを超えていると判定された場合には、ABS動作を開始すべく、S16以降の処理が実行される。詳しく言えば、S16において、マスタ圧センサの検出に基づいてマスタ圧PMが取得され、S17において、現時点のホイールシリンダ圧PWがマスタ圧PMと擬制されるとともに、S18において、ABS動作終了時目標圧PW *が、現時点のホイールシリンダ圧PWに設定される。続くS19において、取得されている路面摩擦係数μに基づいて、図4(a)のマップに従って、これから行われるABS動作の動作周期TCYCが決定される。そして、S20において、タイムカウンタtがリセットされ、S21において、減圧モードを実施させるべく、モードインジケータMIngが、“Dec”にセットされる。
S4においてモードインジケータMIngが“Dec”であると判定された場合には、図6にフローチャートを示す減圧モードサブルーチンが実行される。このサブルーチンに従う処理では、まず、S31において、増圧弁が閉弁させられる。そして、S32において、スリップ率変化速度dSLPに基づいて、図4(b)のマップに従って、減圧モードにおけるホイールシリンダ圧PWの減圧勾配dPDが決定され、S33において、その決定された減圧勾配dPDに基づいて、減圧弁がデューティ作動させられる。そして、S34において、減圧勾配dPDに基づいて、現時点でのホイールシリンダ圧PWが推定される。次のS35において、車輪加減速度dvWが、液圧保持モード移行設定減速度dvWMに到達しているか否かが判定される。車輪加減速度dvWが液圧保持モード移行設定減速度dvWMに到達していない場合には、当該サブルーチンの処理が終了させられ、車輪加減速度dvWが液圧保持モード移行設定減速度dvWMに到達している場合には、S36において、液圧保持モードを実施させるべく、モードインジケータMIngが、“Maint”にセットされる。
S5において、モードインジケータMIngが“Maint”であると判定された場合には、図7にフローチャートを示す液圧保持モードサブルーチンが実行される。このサブルーチンに従う処理では、まず、S41において、減圧弁が閉弁され、S42において、ホイールシリンダ圧PWが維持されると推定される。そして、S43,S44において、それぞれ、車輪加減速度dvWが、増圧モード移行設定加速度dvWIに達したか否か、スリップ率SLPが、増圧モード移行閾スリップ率SLPIを下回ったか否かが判定される。車輪加減速度dvWが増圧モード移行設定加速度dvWIに達しておらず、かつ、スリップ率SLPが増圧モード移行閾スリップ率SLPI以上である場合には、当該サブルーチンの実行は終了させられる。車輪加減速度dvWが増圧モード移行設定加速度dvWIに達している、若しくは、スリップ率SLPが増圧モード移行閾スリップ率SLPIを下回っている場合には、急増圧モードに移行させるべく、S45以降の処理が実行される。
詳しく言えば、S45において、モードインジケータMIngが、“IncS”にセットされる。そして、S46において、路面摩擦係数μに基づいて、図4(c)のマップに従って、急増圧時間TISが決定されるとともに、S47において、現時点を急増圧開始時点tISSとして特定し、S48において、それら急増圧時間TIS,急増圧開始時点tISSに基づいて、急増圧終了予定時点tISEを決定する。さらに、S49において、決定されているABS動作終了時目標圧PW *に、上述の急増圧終了液圧決定係数αを乗ずることによって、急増圧終了液圧PISEを決定し、S50において、急増圧終了液圧PISEと、現時点でのホイールシリンダ圧PWと、急増圧時間TISとに基づいて、急増圧モードにおいて実現されるべき急増圧勾配dPISが決定される。
S6において、モードインジケータMIngが“IncS”であると判定された場合には、図8にフローチャートを示す急増圧モードサブルーチンが実行される。このサブルーチンに従う処理では、まず、決定されている急増圧勾配dPISに基づいて、S61において、増圧弁がデューティ作動させられ、S62において、現時点のホイールシリンダ圧PWが推定される。次いで、S63において、ABS動作を開始してからの時間tが、急増圧終了予定時点tISEに至ったか否かが判定される。急増圧終了予定時点tISEに至っていない場合には、当該サブルーチンに従う処理は終了させられ、急増圧終了予定時点tISEに至った場合には、緩増圧モードに移行させるべく、S64において、モードインジケータMIngが、“IncG”にセットされ、S65において、ABS動作終了時目標圧PW *,現時点のホイールシリンダ圧PW,動作周期TCYC,ABS動作を開始してからの時間tに基づいて、緩増圧モードにおいて実現されるべき緩増圧勾配dPIGの基準となる基準緩増圧勾配dPIG0が決定される。
S7において、モードインジケータMIngが“IncG”であると判定された場合には、図8にフローチャートを示す緩増圧モードサブルーチンが実行される。このサブルーチンに従う処理では、まず、S71において、緩増圧勾配dPIGが決定される。具体的には、基準緩増圧勾配dPIGに対して、図4(d)のマップに従った緩増圧勾配補正係数βに基づく補正を行うことで、緩増圧勾配dPIGが決定される。そして、決定された緩増圧勾配dPIGに基づいて、S72において、増圧弁がデューティ作動させられ、S73において、ホイールシリンダ圧PWが推定される。
次いで、S74,S75において、それぞれ、ABS動作の開始からの時間が動作周期TCYCに達したか否か、推定されたホイールシリンダ圧PWがABS動作終了時目標圧PW *に達したか否かが判定される。ABS動作の開始からの時間が動作周期TCYCに達しておらず、かつ、ホイールシリンダ圧PWがABS動作終了時目標圧PW *に達していない場合には、当該サブルーチンによる処理は終了させられる。ABS動作の開始からの時間が動作周期TCYCに達している、若しくは、ホイールシリンダ圧PWがABS動作終了時目標圧PW *に達している場合には、S76において、ABS動作を終了させるべく、モードインジケータMIngが、“Norm”にセットされ、S77において、増圧弁が開弁させられる。
1:液圧ブレーキ装置 2:ABSアクチュエータ〔作動液供給装置〕 3:ABS電子制御ユニット〔コントローラ〕 11:ブレーキペダル〔作動液供給装置〕 12:負圧ブースタ〔作動液供給装置〕 13:マスタシリンダ〔作動液供給装置〕 14,15:車輪制動器〔回転体〕,〔摩擦部材〕,〔液圧シリンダ〕 16,17:増圧弁 21,22:減圧弁 34,35:車輪制動器〔回転体〕,〔摩擦部材〕,〔液圧シリンダ〕 36,37:増圧弁 41,42:減圧弁 SLP:スリップ率 SLPS:ABS動作開始閾スリップ率〔閾値〕 SLPI:増圧モード移行閾スリップ率 dSLP:スリップ率変化速度 μ:路面摩擦係数〔路面の状態〕 v:車両走行速度(車速) vW:車輪回転速度(車輪速) dvW:車輪加減速度 dvWM:液圧保持モード移行設定減速度 dvWI:増圧モード移行設定加速度 tISS:急増圧開始時点 tISE:急増圧終了予定時点 tAS:ABS動作開始時点 tAE:ABS動作終了予定時点〔ABS動作の終了予定時点〕 TCYC:動作周期 TIS:急増圧時間〔急増加時間〕 PW:ホイールシリンダ圧〔ブレーキ力〕 PW *:ABS動作終了時目標圧〔到達目標ブレーキ力〕 PISE:急増圧終了液圧〔移行ブレーキ力〕 dPD:減圧勾配 dPIS:急増圧勾配〔急増加勾配〕 dPIG:緩増圧勾配〔緩増加勾配〕 dPIG0:基準緩増圧勾配〔基準緩増加勾配〕 α:急増圧終了液圧決定係数〔設定比率〕 β:緩増圧勾配補正係数 MIng:モードインジケータ Norm:非ABS動作状態 Dec:減圧モード〔減少モード〕 Maint:液圧保持モード〔保持モード〕 IncS:急増圧モード〔急増加モード〕 IncG:緩増圧モード〔緩増加モード〕

Claims (10)

  1. 車両に搭載されるブレーキシステムであって、
    車輪にブレーキ力を付与するブレーキ装置と、
    車輪のスリップ率が閾値を超えたときに、ブレーキ力を減少させる減少モードとその減少モードの後にブレーキ力を回復させるために増加させる増加モードとを含むABS動作を、前記ブレーキ装置に行わせるコントローラと
    を備え、
    前記コントローラが、前記ABS動作の終了時に回復させるべきブレーキ力である到達目標ブレーキ力を、前記ABS動作の開始時のブレーキ力に基づいて決定するとともに、前記ABS動作を行わせる時間である動作周期を、車両が走行する路面の状態に基づいて決定するように構成されたブレーキシステム。
  2. 前記増加モードが、ブレーキ力を急増加勾配で増加させる急増加モードと、その急増加モードに続けて実施され、ブレーキ力を、前記急増加勾配よりも緩やかな緩増加勾配で増加させる緩増加モードとを含む請求項1に記載のブレーキシステム。
  3. 前記コントローラが、前記急増加モードを実施する時間である急増加時間を、車両が走行する路面の状態に基づいて決定するように構成された請求項2に記載のブレーキシステム。
  4. 前記コントローラが、前記急増加モードから前記緩増加モードに移行させるときのブレーキ力である移行ブレーキ力を、前記到達目標ブレーキ力に対する設定比率のブレーキ力に決定し、前記急増加勾配を、前記急増加時間と、当該急増加モード開始時のブレーキ力と前記移行ブレーキ力との差分とに基づいて決定するように構成された請求項3に記載のブレーキシステム。
  5. 前記コントローラが、前記緩増加モードの開始時から、前記動作周期に基づいて定まる前記ABS動作の終了予定時点までの時間と、前記緩増加モード開始時のブレーキ力と前記到達目標ブレーキ力との差分とに基づいて、前記緩増加勾配の基準となる基準緩増加勾配を決定し、その基準緩増加勾配に基づいて、前記緩増加モードにおいて、ブレーキ力を増加させるように構成された請求項2に記載のブレーキシステム。
  6. 前記コントローラが、前記基準緩増加勾配に、車輪のスリップ率に基づく補正を行うことで、前記緩増加勾配を決定するように構成された請求項5に記載のブレーキシステム。
  7. 前記コントローラが、前記緩増加モードにおいて、ブレーキ力が前記到達目標ブレーキ力に到達したときには、前記動作周期に至らずとも、当該緩増加モードを終了させるように構成された請求項6に記載のブレーキシステム。
  8. 前記ABS動作が、前記減少モードと前記増加モードとの間に、ブレーキ力を保持する保持モードを含み、
    前記コントローラが、車輪の回転についての減速度が設定減速度以下となったときに、前記減少モードから前記保持モードに移行させ、車輪の回転についての加速度が設定加速度以上となったときに、前記保持モードから前記増加モードに移行させるように構成された請求項1に記載のブレーキシステム。
  9. 前記コントローラが、車両が走行する路面の状態としての路面摩擦係数に基づいて、前記ABS動作を前記ブレーキ装置に行わせる請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
  10. 前記ブレーキ装置が、
    車輪とともに回転する回転体と、その回転体に押し付けられる摩擦部材と、その摩擦部材を前記回転体に押し付けるために作動する液圧シリンダと、その液圧シリンダに作動液を供給する作動液供給装置とを備え、
    前記液圧シリンダ内の作動液の圧力が、ブレーキ力を指標し、前記コントローラが、ブレーキ力に代えて、前記液圧シリンダ内の作動液の圧力に基づいて、前記ABS動作を前記ブレーキ装置に行わせるように構成された請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
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