JP2023153059A - アミン修飾カーボンブラック及びその製造方法 - Google Patents

アミン修飾カーボンブラック及びその製造方法 Download PDF

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Tetsuharu Kadowaki
一誠 川端
Kazumasa Kawabata
藤本大介
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中野正典
Masanori Nakano
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Abstract

【課題】分散剤を添加しなくとも有機溶媒に容易に分散するカーボンブラックを得る。【解決手段】(i)カーボンブラック10重量部、(ii)25%アンモニア水10重量部及び(iii)イオン交換水80重量部を混合し、セプルビーズ230部とともに、ペイントシェーカーで30分間分散して得られた分散液を5分間静置した後に目視で液の分離が観察されないカーボンブラックと、アミン化合物とを水中で混合して、アミン化合物をカーボンブラックに結合することを特徴とする、アミン修飾カーボンブラックの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、アミン修飾カーボンブラック及びその製造方法に関する。
カーボンブラックなどの微粒子状の炭素材料は、黒さと導電性を有し、ゴム補強材、樹脂等の着色、印刷インキやインクジェットトナーの着色材、電子機器や導電性部材における導電材など、様々な用途で広く使用されているが、カーボンブラックは極微細な粒子で凝集しやすく、バインダー、溶媒、その他の成分との均一な混合が困難である。
そこで、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献1等に記載されるように、カーボンブラックは一般的にはいわゆる分散剤を添加して均一な分散状態とした分散液として使用されているが、分散剤は用途によっては他の成分の性能を阻害することがある。また、凝集をほぐすためには剪断力や衝撃力を加える必要があり、このためにビーズミル、ロールミルなどいわゆる分散装置が必要であるというデメリットもある。そこで、カーボンブラックの表面を改質することにより凝集を防ぎ、分散剤を必要とせずに分散媒に容易に分散させるための様々な方法が提案されてきた。
例えば、非特許文献2等にあるように、酸化反応によりカーボンブラック表面に親水官能基を増加させて水中に分散させる方法は古くから知られている。また、特許文献4、特許文献5には、カーボンブラックとジアゾニウム塩を反応させて、カーボンブラック表面に有機基を結合させることにより、水性媒体に容易に分散するカーボンブラックを生成することが記載されている。また、特許文献6、特許文献7には、顔料を樹脂で被覆、あるいはカプセル化することが記載されている。
特許4681710号 特許4416676号 特許4461222号 特表平10-510861号公報 特開2006-199968号公報 特開2003-253151号公報 特開2019-056090号公報 安井健悟「インクジェット用顔料インクにおける顔料分散」色材協會誌 78(9), 422-430 新井啓哲「水性自己分散型カーボンブラック」色材協会誌 77(9),417-424
しかし、これらの方法はいずれも煩雑である上、水性媒体への分散を目的としているため、有機溶媒への分散性は十分でないという問題があった。
そこで、本発明者は、有機溶媒に自己分散、すなわち分散剤を添加しなくとも有機溶媒に容易に分散するカーボンブラックを得るために鋭意検討した。
その結果、表面を特定の状態としたカーボンブラックが、分散剤や分散設備を要さず、簡易な混合で有機溶媒に容易に分散すること、及びこのようなカーボンブラックを得る簡便な方法を見出し本発明に到達した。
本発明は、
(1) (i) カーボンブラック10重量部、(ii) 25%アンモニア水10重量部及び(iii)イオン交換水80重量部を混合し、セプルビーズ230部とともに、ペイントシェーカーで30分間分散して得られた分散液を5分間静置した後に目視で液の分離が観察されないカーボンブラックと、アミン化合物とを水性媒体中で混合して、アミン化合物をカーボンブラックに結合することを特徴とする、アミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(2) アミン化合物が、1級アミン、2級アミン又は環状アミンであることを特徴とする、上記(1)記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(3) アミン化合物が、1級アミン、2級アミン又は環状アミンであり、アミン価10~120mgKOH/gであることを特徴とする上記(1)記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(4) アミン化合物が、1級アミン、2級アミン又は環状アミンであり、アミン価10~120mgKOH/gであり、かつ分子量が500~5万であることを特徴とする上記(1)記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(5) アミン化合物が、トルエン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、のいずれか1以上の有機溶媒に溶解するものであることを特徴とする、上記(1)記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(6) アミン化合物が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はベンジルアクリレートに溶解するものであることを特徴とする、上記(1)記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(7) アミン化合物とカーボンブラックとを、―SO2NH―、―SO2N―、-CONH-、―CON-のいずれか1以上を介して結合させることを特徴とする上記(1)記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(8) アミン化合物のアミン部分が、環状イミド、オキサゾリン又はイミダゾリジノンのいずれか1以上である、上記(1)記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法、
(9) カーボンブラックにアミン化合物が結合しているアミン修飾カーボンブラックであって、アミン化合物が、(i) ―SO2NH―、―SO2N―、-CONH-、―CON-のいずれか1以上を介してカーボンブラックと結合しており、(ii)カーボンブラックとの結合部分のアミン価換算値を含んだアミン価が10~120mgKOH/gであり、かつ(iii) 分子量500~5万 のアミン化合物であることを特徴とするアミン修飾カーボンブラック、
(10) アミン化合物が、トルエン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、のいずれか1以上の有機溶媒に溶解するものであることを特徴とする、上記(9)記載のアミン修飾カーボンブラック、
(11) アミン化合物が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はベンジルアクリレートに溶解するものであることを特徴とする、上記(9)記載のアミン修飾カーボンブラック、
及び、
(12) アミン化合物のアミン部分が、環状イミド、オキサゾリン又はイミダゾリジノンのいずれか1以上である、上記(9)記載のアミン修飾カーボンブラック、
に存する。
実施例中の「(4)カーボンブラックの水への親和性の評価」におけるカーボンブラック1を用いて分散液をガラス板に滴下した状態の写真を示す図 実施例中の「(4)カーボンブラックの水への親和性の評価」におけるカーボンブラック2を用いて分散液をガラス板に滴下した状態の写真を示す図 実施例中の「(4)カーボンブラックの水への親和性の評価」におけるカーボンブラック3を用いて分散液をガラス板に滴下した状態の写真を示す図 実施例中の「(4)カーボンブラックの水への親和性の評価」におけるスルホン化カーボンブラック1を用いて分散液をガラス板に滴下した状態の写真を示す図 水分散性カーボンブラック1とアミン化合物1の水中に投入した際の反応前後の状況を示すイメージ図
[カーボンブラック]
本発明のアミン修飾カーボンブラックは、カーボンブラックにアミン化合物が結合しているものである。
本発明では、カーボンブラックとして表面に十分な量の反応性官能基、より具体的には表面に十分な量の酸性官能基があるもの(以下、「水分散性カーボンブラック」という。)を用いる。十分な量の酸性官能基とは、カーボンブラックが水性媒体中に均一に分散するのに十分な量をいい、具体的には、以下の方法で確認することができる。ここで酸性官能基の種類は限定されず、カルボキシル基、スルホン基が代表的であるが、これらに限られることはなく、以下の確認方法により水に分散するものであれば本発明において十分な量の酸性官能基を有する水分散性カーボンブラックに該当する。
(1) 以下の各成分を以下の配合で混合する。
カーボンブラック 10重量部
25%アンモニア水 10重量部
イオン交換水 80重量部
(2) 250ccの広口ポリ瓶に、以上の混合物100gと、セプルビーズ(サンゴバン株式会社製。同等の分散能力があればこれに限らない)230gを仕込み、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で30分分散し、ナイロン110メッシュでビーズを分離して、カーボンブラックとアンモニア水と水の混合物(以下「カーボンブラック水分散液」という。)を回収する。
(3) このカーボンブラック水分散液を、5分間静置する。
(4) 5分間静置後のカーボンブラック水分散液0.1gをスポイトで取り、ガラス板に滴下する。
ガラス板に滴下したカーボンブラック水分散液の上から、さらにイオン交換水をスポイトで滴下し、液分離の有無を目視で確認する。
凝集して水と分離するものは、表面の酸性官能基の量が十分ではない。分散して水と均一になるものは、表面の酸性官能基の量が十分にあり、本発明で以下の工程に使用することができる(図2及び図3は水とカーボンブラックが分離しているのに対して図1と図4では均一に分散していることがわかる)、これが本発明において使用される「水分散性カーボンブラック」である。
カーボンブラックには一般的に、元々表面にカルボキシル基、水酸基、キノン、ラクトン等の酸性の官能基が存在しているが、量は少なく、そのままでは疎水性であるため、上記の方法では凝集を生じる。そこで、本発明で水分散性カーボンブラックとして用いることのできるカーボンブラックとしては、(i) 一般的な市販品に酸性官能基を導入する等により親水性を付与して使用するか、または、(ii) 酸性官能基等の導入により既に親水性が付与された市販品を使用すればよい。ただし、一般的には水酸基は水への分散性が十分でなく、後述するアミン化合物とも結合反応しにくい。従来より一般的に酸性カーボンブラックと呼ばれている比較的低pHのものであっても、官能基の多くが水酸基で、親水性の程度が本発明の水分散性カーボンブラックとしては十分でなく、上記の基準を満たさず使用できないものもあるため注意が必要である。
(i) 市販の一般的なカーボンブラックに親水性を付与する方法は限定されず、公知の酸化方法で酸化処理することにより酸性官能基を増加させる方法として、非特許文献2にあるように、例えば、オゾン、NOxなどの気相酸化、硝酸、過酸化水素、オゾン水、ヨウ素水、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、ペルオキソニ硫酸塩などの液相酸化による方法がある。特にオゾンによる酸化は、カルボキシル基を多く結合させることができる。
また、特許文献4、特許文献5にあるように、アミノ基と酸性官能基(スルホン基、カルボキシル基等)とを有する化合物を用い、亜硝酸によりアミノ基をジアゾ化させて生じたジアゾニウム塩をカーボンブラック表面に結合(ジアゾカップリング)させることにより、カーボンブラック表面に親水性官能基を導入することもできる。
スルホン基を導入する場合、スルファニル酸などのスルホン基を持つ芳香族アミンのジアゾ化合物を用いる方法が代表的である。スルファニル酸は常温で水に対して2重量%以下であれば溶け、2重量%を超えると水に溶けないが、2重量%を超えても塩基成分を入れて溶解させることができる。スルファニル酸が水に溶けた状態でジアゾ化反応させた後、カーボンブラックと接触させればカーボン表面にスルホン基を導入することができる。
スルホン基の導入には、スルファニル酸以外にも各種のスルホン酸化合物、例えば5-アミノ-2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンー4’スルホン酸、5-アミノ-2-ナフタレンスルホン酸、4-アミノ-5-ヒドロキシ2,7ナフタレンジスルホン酸、7-アミノ-1,3ナフタレンジスルホン酸、4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸等を使用することもできるが、いずれもスルファニル酸同様に水に溶けた状態で使用するのが好ましい。
スルホン基の導入量によりカーボンブラックの水への分散性が左右されるが、カーボンブラックの種類(粒子径、ストラクチャーなど)が違えば分散のために必要なこれらのスルホン化剤の量も変わってくる。
例えば、「#45L」(商品名、三菱ケミカル株式会社製)の場合はカーボンブラック100重量部に対してスルファニル酸5重量部以上用いてスルホン基の導入を行えば十分に水への分散性を付与できる。
他方、過度に酸化やスルホン化を行っても特にメリットはなく、反応時に添加される亜硝酸ナトリウム、塩酸等無機材料由来の対イオンから無機塩が生成することがあり、有機溶媒に分散する際に、分散不良や異物の原因となりうる。このため、一般にはカーボン100重量部に対して、スルホン化剤及び/又はカルボキシル化剤1~30重量部、好ましくは3~20重量部、さらに好ましくは5~20重量部から選択すればよい。
カルボキシル基を導入する場合、代表的には4-アミノ安息香酸やエチル4-アミノ安息香酸のジアゾ化合物を用いることができる。4-アミノ安息香酸はそのまま水に溶けるので、水に溶かした状態で、ジアゾ化反応させた後、カーボンブラックと接触させればカーボンブラック表面にカルボキシル基を導入できる。
(ii) 酸性官能基を多く有する市販品としては、いわゆる酸性カーボンブラックや自己分散カーボンブラックとして市販されている、表面にカルボキシル基、スルホン基などの酸性官能基が導入されたカーボンブラックが挙げられ、具体的には、NEROX305、NEROX3500(いずれも商品名。オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社製)、MA-8、MA-11、MA-14(いずれも商品名。三菱ケミカル株式会社製)、キャボジェット200、キャボジェット300(いずれも商品名。キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製)、アクアブラック001、アクアブラック162(いずれも商品名。東海カーボン株式会社)等が挙げられる。
[アミン化合物]
以上説明した水分散性カーボンブラックを、アミン化合物と反応させる。特に好ましいアミン化合物は、1級アミン、2級アミン又は環状アミンである。これらのアミン化合物は、上述した水分散性カーボンブラック表面の官能基に結合して、特に有機溶媒に容易に分散するアミン修飾カーボンブラックを形成する。
特に、アミン化合物が、1級アミン、2級アミン又は環状アミンであり、アミン価10~120mgKOH/gであり、かつ分子量が500~5万であるものが極めて好ましい。このようなアミン化合物が、上述した水分散性カーボンブラック表面の官能基と特に反応しやすく、有機溶媒に特に容易に分散するアミン修飾カーボンブラックを容易に形成する。
(アミン種)
上記のように、アミン化合物として、環状アミン以外の1級アミン若しくは2級アミン、又は環状アミンが好ましく、環状アミンは1級又は2級に限られない。1級アミン、2級アミンの有する水素原子、又は環状アミンが開環して生じた水素原子が、水分散性カーボンブラックのスルホン基、カルボキシル基などの酸性官能基と置換して結合することによると考えられる。したがって環状アミンとしては開環して水分散性カーボンブラック表面の酸性官能基と反応しうるものが好ましく、具体的には環状イミド、オキサゾリン、イミダゾリジノンなどが挙げられる。オキサゾリンの事例として、エポクロスシリーズ(製品名。(株)日本触媒株式会社製)が挙げられる。これらのアミンはいずれも、有機酸又は無機酸との塩を構成したアミン塩の状態であってもよい。
(アミン価)
アミン化合物のアミン価は、10~120mgKOH/gが好ましく、特に20~110mgKOH/gが好ましい。アミン価の測定はJIS K 7237による。尚、本発明の場合、アミン塩を含むアミン化合物のアミン価は、加水分解により中和前のアミンに戻してから、測定した値である。
アミン量が少なすぎると、水分散性カーボンブラックと結合するアミンが不足して、カーボンブラック表面を十分に修飾できないことがあり、有機溶媒への分散性が低下することがある。アミン量が多すぎると、アミン自体の高い極性のためにアミン化合物全体の極性が高くなり、有機溶媒に溶解しにくくなることがある。
(分子量)
アミン化合物の分子量は、重量平均分子量が500以上5万以下の範囲にあるものが好ましく、特に好ましくは500以上3万以下、さらに好ましくは500以上2万以下、特に好ましくは1,000以上2万以下である。この範囲の分子量のアミン化合物を用いることにより、得られるアミン修飾カーボンブラックは有機溶媒中に容易に分散する。
分子量が小さすぎると、カーボンブラックが凝集しやすくなる。表面修飾するアミン化合物のサイズが小さいため立体障害の効果が小さく、カーボンブラックの粒子間距離が小さくなるためと推測される。逆に、分子量が大きすぎると、有機溶媒の浸透力が低下し濡れにくくなるため、分散しにくくなるためと推測される。
ここでの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されるものである。測定条件は、アミン化合物種ごとに標準的な条件で測定すればよい。
(有機溶媒との親和性)
水分散性カーボンブラックとアミン化合物とを反応させて得られるアミン修飾カーボンブラックが分散剤や分散装置を要さずに有機溶媒に容易に分散するものであるためには、目的とする有機溶媒とアミン化合物との親和性が高いものとするのが好ましい。後述する実施例でも示すように、ある有機溶媒に親和性のあるアミン化合物をカーボンブラックに結合させれば、そのアミン化合物が結合したカーボンブラックはその有機溶媒に容易に分散することが本発明者らにより確認されている。これは、ある有機溶媒に親和性が高いアミンが結合していると、そのアミンの分子鎖が有機溶媒中に広がりやすく、カーボンブラック粒子間の立体障害として働くため粒子同士の距離が大きくなり、有機溶媒中での凝集を防ぐことができ、分散状態が安定化していると推測される。本発明では、以下に説明するように、カーボンブラックに結合させるアミン化合物を幅広く選択できるので、目的とする有機溶媒に合わせたアミン化合物を選択することにより、アミン修飾カーボンブラックを有機溶媒に分散することができる。
より具体的には、有機溶媒として、トルエン、酢酸ブチル、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、MEK(メチルエチルケトン)、IPA(イソプロピルアルコール)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、及びモノマーとしてBZA(ベンジルアクリレート、アクリルモノマー)などの有機溶媒に容易に分散するアミン修飾カーボンブラックを得ることができる。これらの有機溶媒に容易に分散するアミン修飾カーボンブラックを得るための修飾に用いるアミン化合物を選択するには、これらの有機溶媒に溶解するアミン化合物を選択し、それを本発明の方法でカーボンブラックに結合させればよい。
特に、後述する実施例でも示すように、アミン化合物によっては幅広い種類の有機溶媒に溶解性があるものがあるので、このようなアミン化合物を選択することにより、幅広い種類の有機溶媒に容易に分散するカーボンブラックを得ることができる。有機溶媒と同時に水に溶解するアミン化合物を選択すれば、有機溶媒と水の両方に容易に分散するカーボンブラックを得ることもできる。逆に、ある有機溶媒Aに溶解し、別の有機溶媒Bには溶解しないアミン化合物を選択すれば、有機溶媒Aには容易に分散するが、有機溶媒Bには分散しないという、作り分けができる。例えば、分散後塗膜化した際に、有機溶媒Bに対しては、カーボンブラックが溶出しないという耐性を付与することが可能となる。
有機溶媒との溶解性は、有機溶媒と化合物との極性の関係で左右される。具体的には、極性の近い化合物同士は親和性が良い。化合物の極性は、一般的に知られているように官能基の極性に影響され、また高分子の場合は、主鎖、側鎖、官能基の極性に影響されるため、これらを適宜選択して所望の極性を得ればよい。
極性の高い化学構造としては、アミンの他、エーテル基、エステル基、水酸基、カルボキシル基などの酸素原子を含む構造が知られ、エーテル基の中でも特にポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)が極性を高くする効果が大きい。極性の低い化学構造としてはアルキル基、ベンゼン環など、C、Hのみからなる構造が代表的である。
本発明で用いることのできるアミン化合物としてはいわゆる分散剤として知られているものも含まれるが、それらに限られない。
アミン化合物の構造は制限されないが、いわゆる高分子が好ましく、主鎖として、(1)ポリエーテル、(2) ポリアクリル(メタクリル)、(3)ポリウレタン、(4)ポリアルキル、(5)ポリエステル、(6)ポリシロキサン、(7)その他のポリアミンなどが挙げられるが、これらに限られない。
アミンの位置も限定されず、アミンが主鎖を構成していてもよいし、側鎖を構成していてもよく、アミンの窒素原子が鎖を構成していてもよいし、官能基として結合していてもよい。例えば前者としてイミド環が主鎖又は側鎖の一部を構成するもの(アクリル系主鎖環重合体など)、後者として懸吊アミン官能基を有するものなどが挙げられる。
また、これら複数の種類の鎖がブロック、グラフト等で組合さったものでもよい。複数の鎖又は官能基の組み合わせにより、異なる機能を付与することができ、極性等、材料、媒体への親和性をコントロールすべく構造が制御されたものもある。例えば、分子中でのアミンの部位をコントロールすることにより、カーボンブラック等の粒子への親和性をコントロールし、より吸着しやすくしたものもある。側鎖に主鎖と異なる極性の構造を導入し、かつ適切な側鎖を選ぶことにより、高分子の極性を調節し、各種溶媒への溶解性を調整することができる。例えば、主鎖に対して極性の高い側鎖を導入することにより、アミン化合物全体の極性を高くしたり、逆に極性の低い側鎖を導入してアミン化合物全体の極性を低くすることにより、主鎖と側鎖の組合せで化合物の極性をコントロールできる。例えば、主鎖がアクリル(メタクリル)、ウレタン、の場合に、側鎖として、主鎖よりも極性の高い、ポリエーテル、を導入すると極性を高くしたものがある。また各種のエステルにより粒子への親和性や有機溶媒への親和性をコントロールしたものもある。各種のエステル、例えばリン酸エステル、炭酸エステル、酢酸エステル等を導入したものが挙げられ、特にリン酸エステル化することにより粒子への親和性を向上させることが知られている。
高分子の形状も特に制限されず、直鎖、くし形、球状、星形であると、その他であるとを問わない。
このような高分子アミン化合物として、さらに具体的には、以下のものが挙げられる。
1. ポリエーテルアミン
ポリエーテルアミンは、少なくともポリエーテル部分とアミン部分とを有する高分子である。アミン部分はポリエーテル主鎖の末端にアミンが結合していてもよいし、側鎖として結合していてもよい。ポリエーテル主鎖は直鎖でもよいし、分岐していてもよい。
代表的には、直鎖状のポリエーテル主鎖の末端にアミンが結合した高分子であって、重量分子量が500から数千の比較的低分子のアミン化合物が挙げられる。
ポリエーテル部分は、代表的には(i)エチレンオキサイド及び/又は(ii)プロピレンオキサイドの付加重合体)があり、特にエチレンオキサイドの付加重合体(ポリエチレングリコール)は、大きく極性を高くすることができる。
アミン部分は、1級アミンが、塩基性が高いため、カーボンブラックの酸性基との反応性が高くなり、好ましい。アミン部分は主鎖の両方の末端でも片方の末端でもよい。片方の末端のみにアミンがある方が、アミン部分がカーボンブラックと結合し、ポリエーテル部分が有機溶媒と相溶するため、好ましい。
これらの化合物は比較的低分子であるため、有機溶媒へ速やかに溶ける。このような化合物と反応させて得られる表面修飾したカーボンブラックも、比較的少量のアミン化合物で、有機溶媒に速やかに分散しやすい。いわゆるプルロニック系界面活性剤として知られるポリアルキレンオキシドのアミン誘導体であるポリオキシアルキレンアミンやポリオキシアルキレンアルキルアミンもこのような化合物に該当する。このような化合物としては、代表例としては、以下の分子式で示されるものがある。
〔化学式1〕
Figure 2023153059000001
〔化学式1〕 R=CH3の場合、xはポリエチレンオキシド部分の量、yはポリプロピレンオキシド部分の量を表している。ポリエチレンオキシドは親水性、ポリプロピレンオキシドは疎水性であるので、xとyの比率調整により、極性を調整できる。
例えば、x/y=19/3 (分子量1000)のポリエーテルアミンでは、PMA、MEKなどの有機溶媒へ分散し、エチレングリコールの比率が高いので水にも溶解する。
また、ポリエーテル部分とアミン部分の他に、脂肪族官能基及び芳香族官能基などのアルキル部分を持つ化合物もあり、アルキル部分として、フェノール、t-ブチルフェノール、クレゾール、ノニルフェノール等が挙げられ、これらの官能基のうちでも特にt-ブチルフェノール、ノニルフェノール等、脂肪族官能基及び芳香族官能基を有する構造を持つものが、得られるアミン修飾カーボンブラックの有機溶媒への親和性の点から好ましい。このような官能基を有する化合物としては、ポリオキシメチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテルが代表的であり、特に以下の化学式で示される、ノニルフェノール部及びプロピレングリコール部を有する化合物がある。芳香環及び長鎖アルキル基を有するノニルフェノール部分は極性が低く、またプロピレングリコール部分も極性が比較的低いため水に不溶であるが、後述するように酸で中和して水に溶解して使用可能であり、得られるアミン修飾カーボンブラックは有機溶媒に強い親和性を示し有機溶媒に容易に分散する。
このような化合物としては、代表例としては、以下の分子式で示されるものがある。
〔化学式2〕
Figure 2023153059000002
これらの市販品としては、Jeffamine M1000(Byk Chemie社製)、Solsperse 20000(Lubrisol社製)、Genamin M41/2000(Clariant社製)が挙げられる。
2.アクリル系アミン
ポリアクリレート主鎖を持ち、アミンを有する分子量数千から数万の高分子である。一部のモノマーとしてアミンを有するモノマーを使用することによりアミンが導入される。
ブロック重合体とランダム重合体があり、ブロック重合体にはリビングラジカル重合のビニル高分子アミン、アクリル高分子アミンがあり、ランダム重合体にはフリーラジカル重合のビニル高分子アミン、アクリル高分子アミンなどがあるが、特に制限なく使用できる。
ポリアクリレート主鎖は、1種又は2種以上の(メタ)アクリルモノマーを重合させてできる。(メタ)アクリルモノマーとしては、(i) アミン含有(メタ)アクリルモノマーと、(ii) アミンを含有しない(メタ)アクリルモノマーとがあるが、少なくとも一部のモノマーとしてアミンを有するモノマーを使用することによりアミンが導入される。
(i) アミン含有(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、アミノエチル( メタ) アクリレート、アミノプロピル( メタ) アクリレート、アミノブチル( メタ) アクリレート等が挙げられる。
この他、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルアンモニウム塩又はアリールアンモニウム塩が挙げられる。
また、アミノ基の導入は、アミン含有(メタ)アクリルモノマー以外のアミン含有モノマーによることもできる。このようなモノマーとしては、ビニル基又は開環重合可能な窒素含有官能基を有するアミン化合物が代表的である。開環重合可能な窒素含有官能基として代表的にはイミン化合物が挙げられ、より具体的には、エチレンイミン、プロピレンイミン、トリメチレンイミンが挙げられる。ビニル重合を有するアミン化合物としては、代表的には、アリルアミン、ビニルアミン等のアルキレンアミン、アミノスチレン等のアミノ基含有スチレンの他、少なくともビニル基と窒素複素環とを有する各種の化合物が挙げられる。このようなビニル基と窒素複素環とを有する化合物としては、窒素複素環部分が5員又は6員であるものがより好ましく、窒素複素環部分は4級化されていてもよい。
少なくともビニル基と5員又は6員の窒素複素環とを有する化合物の具体例としては、例えば、 2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、1-ビニル-1H-ピラゾール、1-ビニル-2-イミダゾリン、2-ビニル-2-イミダゾリン、2-ビニルピラジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン等の他、各種の付加重合性オキサゾリン化合物として、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなど、環化重合可能な窒素含有(メタ)アクリル系モノマーとして、アミン含有官能基を置換基として有するN-置換マレイミドが挙げられる。これらの中でも、1-ビニル-1H-ピラゾール、1-ビニル-2-イミダゾリン、2-ビニル-2-イミダゾリン等の他、上記各種の付加重合性オキサゾリン化合物が好ましい。これらの付加重合性オキサゾリン化合物は、オキサゾリン基以外の付加重合可能な官能基により付加重合するため、オキサゾリン基が懸吊した高分子が形成され、当該部分がアミンとしてカーボンブラックと反応するのに好適な立体構造を形成しうるという利点がある。また、N-置換マレイミドは他の環化重合可能なモノマーとの共重合により主鎖に窒素含有複素環構造を導入し、かつ置換基により所望のアミンを導入できる利点がある。
以上各種の重合可能なアミン化合物を1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、特に少なくともビニル基と5員又は6員の窒素複素環とを有する化合物を1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
(ii)アミンを含有しない(メタ)アクリルモノマーとしては、極性の低いモノマーと極性の高いモノマーがある。
極性の低いモノマーとしては、アルキル基、アリール基、スチレンなどの官能基を含むものがある。例えば、鎖状アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、スチレン系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
極性の高いモノマーとしては、グリコール基を含むものがある。より具体的にはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の、アルキレン鎖の炭素数が2~4であるポリアルキレングリコールが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキレン鎖の炭素数が2~4であるポリアルキレングリコールとアクリル酸又はメタクリル酸との単官能又は多官能のエステルが挙げられ、より具体的には、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
これら各種のモノマーを重合させてアクリル系高分子アミンを作製する方法は限定されない。アミンを有する(メタ)アクリレートモノマーとアミンを有さない(メタ)アクリレートモノマーとを重合して主鎖を形成することもでき、また(メタ)アクリレート以外のアミンとアミンを有さない(メタ)アクリレートモノマーとを重合して主鎖を形成することもできる。アミンとしてイミン系モノマーを使えばアミンを主鎖に入れることもできる。これらの主鎖にさらに側鎖としてアミンを導入してもよい。
また、アミンを有さない(メタ)アクリレートモノマーのみを重合して主鎖を形成した後に、側鎖としてアミンを導入してもよい。
より具体的には、少なくとも各種のスチレン系化合物と付加重合性オキサゾリン化合物との共重合体であるオキサゾリン基含有ポリマーなどが挙げられる他、置換基としてアミン含有官能基を有するN-置換マレイミド等の環化重合可能なモノマーとスチレン系モノマー等他の重合可能なとの共重合体が挙げられる。これらの市販品としては、エポクロス(登録商標)シリーズ(日本触媒株式会社製)などが挙げられる。その他ポリアクリル系化合物の市販品として、DISPERBYK-2012、BYK-2150(いずれも商品名、Byk Chemie社製)が挙げられる。
3.ウレタン系アミン
ポリウレタン主鎖を有し、アミンを有する、分子量が数千から数万程度の高分子である。アミンを含有するモノマーを用いることにより、高分子中にアミンを導入することができる。
ポリウレタン主鎖を有し、かつ通常は複数のアミンを有するものであり、重量平均分子量が数千から十万程度が主体である。
ポリウレタンは一般に、ポリイソシアネートと水酸基を有する化合物とを付加重合することにより得られるが、特に水酸基を有する化合物として、-NH2基および/または―NHR基(Rは炭素数1~4個のアルキル基)を用いることにより、主鎖にアミンを導入することができる。すなわち、本発明におけるウレタン系高分子アミンとしては、主鎖にアミンを有するものだけでなく、側鎖としてアミンを導入することも差し支えないが、ポリウレタン主鎖生成時に用いるモノマーの選択によりアミンを導入できる。
具体的には、モノマーとして、(i) ポリイソシアネートと、(ii) ―OH基、-NH2基および/または―NHR基(Rは炭素数1~4個のアルキル基)または-SH基などのイソシアネートと反応する官能基を2個以上有する化合物とを重合させてでき、さらに、(iii) ―OH基、-NH2基および/または―NHR基(Rは炭素数1~4個のアルキル基)または-SH基などのイソシアネートと反応する官能基を1個有する化合物を加えて重合してもよい。
(i)(ii)(iii)は、それぞれ複数種の化合物を組み合わせても構わない。
(i)(ii)(iii)の割合、特に(ii)(iii)の割合により、得られるポリウレタンの構造を調整できる。また、(ii)及び/又は(iii)として、少なくとも-NH2基および/または―NHR基を有する化合物を用い、かつイソシアネート量に対してアミン量が過剰になるように量比を調整することにより、アミンを有するポリウレタンが合成できる。
イソシアネートと反応する官能基を有する(ii)(iii)の化合物については、極性の低いモノマーと極性の高いモノマーの組成比を調整して、各種有機溶媒への分散性と水への溶解性とを制御することができる。
(i)ポリイソシアネートとしては、平均2.5~6のイソシアネート官能性を有するポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートがある。
芳香族イソシアネートとしては、「デスモジュールL」(登録商標、住化バイエルウレタン株式会社製)、「デスモジュールN」(登録商標、住化バイエルウレタン株式会社製)、「デスモジュールHL」(登録商標、住化バイエルウレタン株式会社製)、「デスモジュールIL」(登録商標、住化バイエルウレタン株式会社製)等の商品が代表的である他、「ポルレンKC」、「ポルレンHR」(いずれも商品名、エッセアピイチイ社製)等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)やイソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメリックイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
―OH基、-NH2基および/または-NHR基(Rは炭素数1~4個のアルキル基)または-SH基などのイソシアネートと反応する官能基を有する(ii)又は(iii)の化合物としては、炭素数2~12個のジオール、トリオール、ジアミン、ジアルカノールアミンおよびモノアルカノールアミン;ジヒドロキシジアルキルスルフイドおよびジヒドロキシスルホンであり、たとえばブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、アルキル基で置換されたジアルカノールアミン、グリセロール、トリメチロールプロパン、脂肪酸のジアルカノールアミド、チオジグリコールおよびジ-(4-ヒドロキシフエニル)-スルホンなどがある。高極性の化合物としては、炭素数2~4個、好ましくは2個のアルキレン基を有し、好ましくは分子量400~2000、さらに好ましくは600~1500のポリオキシアルキレングリコールである。
水酸基を2個または3個有する化合物を出発構成成分として用いたラクトンの重合によって得られる化合物でもよい。これらのポリエステルポリオールは、平均分子量が800~2000であり適している。
アミンは窒素を含む複素環でもよい。複素環基では、トリアゾル基、ピリミジン基、イミダゾル基、ピリジン基、モルホリン基、ピロリジン基、ピペラジン基、ベンゾイミダゾル基、ベンゾチアゾル基および/またはトリアジン基であることが好ましい。これらの複素環基の中でも特に、ピロリジン基、ピペラジン基、ベンゾイミダゾル基が好ましい。

特に、他の種類の主鎖とのブロックポリマーが好適である。具体的には、例えば特表2011-516644記載のような、ウレタン鎖とアクリル鎖のブロックポリマーが挙げられる。さらに、特表2014-524944記載のような、リン酸エステル等のエステル誘導体としたものが好適である。
市販品としてはBYK-2150、BYK167、BYK164(商品名。ビックケミー社製)、EFKA4046、EFKA4047(BASF社製)などがある。
4.ポリアミン
ポリアミンとは一般に、分子内に複数のアミンを有する化合物を指すが、ここでは前述した各種のポリマーに該当するか否かを問わず、主にNを主鎖に含むものを指すがそれに限定されない。代表的には以下の化学式で表される構成部分を含む化合物がある。
Figure 2023153059000003
このような化合物は、重合可能なアミン化合物、代表的にはビニル基又は開環重合可能な窒素含有官能基を有するアミン化合物を重合させることにより得られる。開環重合可能な窒素含有官能基として代表的にはイミン系化合物及びオキサゾリン系化合物が挙げられ、より具体的には、各種のアルキルイミン及び各種の2-置換又は3-置換オキサゾリン又はオキサゾリジンが挙げられるが、R1部分の極性が高すぎると水に溶けやすく有機溶媒への親和性が低い。したがって、Rとしては炭素数4以上のアルキル基が好適であり、例えば炭素数4~6のアルキル基、さらに好ましくは炭素数4又は5のアルキル基が挙げられる。
また、Rは水素又はアミン含有官能基が好ましい。
さらに、このようなポリアミン鎖の各種のエステルが挙げられる。エステル部分によりカーボンブラックとの親和性が向上し望ましい立体配置を形成しうると推測される。エステル部分は限定されないが、好ましい具体例として、酸性リン酸鎖状エステル及び酸性亜リン酸鎖状エステルの少なくとも一方と、ポリアミンとの塩が挙げられる。ここで「酸性(亜)リン酸鎖状エステルとポリアミンとの塩」とは、酸性(亜)リン酸鎖状エステルのポリアミン塩を意味し、酸である酸性(亜)リン酸鎖状エステルのP-OH基の一部又は全部が脱プロトン化したP-O基を有するアニオンと、塩基であるポリアミンのアミノ基の一部又は全部がプロトン化したアンモニウム基を有するカチオンとを含む塩をいい、例えば特開2022-7782に分散剤(C)として記載されたものが挙げられる。
このような化合物としては市販品Dysperbyk-145(Byk Chemie社製)が知られている。
前述したように、得られるアミン修飾カーボンブラックを有機溶媒に自己分散しうるものとするためには、アミン化合物は、使用する対象溶媒に溶解するものであることが好ましい。後述する実施例で示すように、本発明者の検討により、アミン化合物がその溶媒に溶解すれば、それを修飾したカーボンブラックはその溶媒に自己分散することが判明しているためである。
対象溶媒は制限されず、使用目的に応じて選択すればよい。
具体的には、黒色塗料、黒色インキ、導電性組成物、カラーフィルター用ブラックマトリックス形成用組成物、タイヤ等、カーボンブラックが用いられる広範な用途で使用される溶媒として、アセテート系溶媒(PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ブチルアセテートなど)、ケトン系溶媒(MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロヘキサノンなど)、アルコール系(IPA(イソプロピルアルコール)、メトキシプロパノールなど)、エーテル系(1,3ジオキソランなど)、エステル系(酢酸ブチル、酢酸エチルなど)、グリコール系(ジエチルジグリコールなど)、アミン系(NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、DMFなど)が挙げられるが、これらに限られない。
これらのうち、アセテート系溶媒、ケトン系溶媒に対しては、アミン化合物としては前述したポリエーテルアミン、アクリル系アミン、ウレタン系アミン、ポリアミンのリン酸エステル塩を用いると相溶性に優れる。
アルコール系溶媒(IPA(イソプロピルアルコール)、メトキシプロパノールなど)に対しては、ポリエーテルアミンが特に好適である。
また、例えば、カーボンブラックをPMAに分散してカラーフィルター用レジスト樹脂等と配合してカラーフィルターのブラックマトリックスに用いる場合は、PMAに溶解または分散しうる高分子アミン化合物としてアクリル系アミン、ウレタン系アミン、ポリエーテルアミンなどが好ましい。
また、カーボンブラックをアクリレートモノマーに分散してアクリル樹脂、アルキッド樹脂等と配合してUV硬化塗料に用いることを予定する場合は、アクリレートモノマーに溶解または分散しうるアミン化合物としてアクリル系アミンが好ましい。
その他、塗料ではアクリル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシア―ネート樹脂、エポキシ樹脂などのバインダーや使用方法に合わせて溶媒が選定されるが、それぞれの溶媒に溶解または分散しうる高分子アミン化合物を適宜選択すればよい。
以上説明したように、カーボンブラックを混合したい対象溶媒への溶解性を考慮して選択すればよい。すなわち、対象溶媒に溶解するアミン化合物を選択し、これをカーボンブラックと反応させればよい。
複数の溶媒に溶解するアミン化合物を選択することもできる。
また、本発明のアミン化合物で修飾されたカーボンブラックは、有機溶媒以外にも、塗料、樹脂組成物等において重合可能なモノマーに配合するにも好適である。重合可能なモノマーにカーボンブラックを分散してモノマーを重合することにより、着色、導電性付与等された高分子を得るものである。バルク成型の他、インク状態で塗布等してUV硬化する等、様々な形態がある。このようなモノマーを含有する組成物であって有機溶媒を含有しないか極少量含む(いわゆる有機溶媒フリー)ものは、有機溶媒による環境への負担がなく近年広く開発、提案が行われており、このような有機溶媒フリーのモノマー組成物は、ディスプレイ形成組成物、インクジェット等のインク組成物等において提案されているが、本発明では対象となるモノマーとの相溶性を考慮してアミン化合物を選択することができるので好適であり、有機溶媒フリーで使用できる用途が広がる。
このような重合可能なモノマーとして、例えばアクリルモノマー(BZA(ベンジルアクリレート)、PEA(フェノキシエチルアクリレート)、1,6ヘキサンジオールアクリレートなど)が挙げられる。これらのモノマーに対しては、アクリル系アミン、ポリエーテルアミンが相溶性に優れている。
アミン化合物の市販品としては、上記の各箇所で記載したもののほか、例えば、JEFFAMINEM-600、M1000、M-2005、M-2070、M-3085、FL-1000(商品名。ハンツマン社製。)、Genamin M41/2000(商品名。クラリアントスペシャリティケミカルズ社製)、Solsperse 20000 (分子量1000~3000)(商品名。ループリゾール社製。)、BYKLPN-21324、BYKLPN-22329、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-167、DISPERBYK-145(商品名。ビックケミー社製。)、等も挙げられる。
[配合比率]
カーボンブラックとアミン化合物の配合比率は、カーボンブラック100重量部に対して、アミン化合物の固形分換算で1重量部から500重量部が好ましい。さらに好ましくは10重量部から400重量部、最も好ましくは50重量部から200重量部である。
アミン化合物の量が少なすぎると、カーボンブラックへの表面修飾が十分でなく、カーボンブラックの対象溶媒への分散性が十分でない場合がある。アミン化合物の量が多すぎると、色相、導電性などのカーボンブラックの性能が十分に引き出せないことがある。
[カーボンブラックとアミン化合物の反応]
以上説明した水分散性カーボンブラックと、アミン化合物とを、水性媒体中で混合することにより、カーボンブラックの表面の官能基とアミン化合物とが反応して結合する。すなわち、カーボンブラック表面に元々存在した又は酸化処理、スルホン化処理等によって導入されたカルボキシル基及び/又はスルホン基とアミンとが反応し、―SO2NH―、―SO2N―、-CONH-、及び―CON-のいずれか1以上の結合が生成する。したがって、カーボンブラックとアミン化合物とがこれらを介して結合していることになる。
この反応によるカーボンブラックとアミン化合物との結合は強固なものであると考えられる。さらに、カーボンブラックとアミンの混合系から水を除去することによって脱水が進み、より反応が進行すると推測される。また、後述する実施例、比較例で示すように、1級アミン、2級アミンでは、有機溶媒に分散するのに対し、3級アミン、4級アンモニウム塩では、有機溶媒に分散しない。このことも、1級アミン、2級アミンは、水素原子が酸性官能基と置換反応するが、3級アミン、4級アンモニウム塩は、水素原子を持たないため、反応しないことを示していると考えられる。
本発明では、カーボンブラックとして、前述した水分散性カーボンブラックを用いており、表面に十分な量の反応性官能基、より具体的には表面に十分な量の酸性官能基があり、このため水性媒体中に均一に分散し、またこれらの官能基がアミン化合物と反応し結合することにより、有機溶媒への自己分散性を発現していると考えられる。
[アミン化合物の溶解・分散]
水分散性カーボンブラックとアミン化合物との反応は、これらを水性媒体中で混合すれば足りる。混合方法は限定されないが、アミン化合物をあらかじめ水性媒体に溶解または分散させてから、前記のカーボンブラック分散液と混合してもよい。なおここで水性媒体とは水を主体とするものであればよく、水のみでも問題はなく、水溶性溶媒を加えてもよい。通常、50重量%以上の水を含むものが好ましい。
アミン化合物は水溶性または水性媒体に分散するものであればそのまま用いてもよい。それ以外の場合はあらかじめ水性媒体に溶解または分散させておくのが好ましい。
アミン化合物は、水への溶解性の観点からは、(a) 水に不溶なアミン化合物と、(b) 水に可溶なアミン化合物とに大別される。
(a)の場合は、アミンを酸で中和することにより水に可溶化して用いればよい。用いることのできる酸は特に限定されないが、有機溶媒に分散するためには、残存する酸成分ができるだけ少ない方が好ましい。余剰の酸成分は、有機溶媒中の分散の阻害や不溶物の要因になるためである。そのため、酢酸など、沸点が低く、乾燥工程で余剰分を除去できるものが好ましい。また、ベンジルクロライド、リン酸など有機溶媒に溶解しやすいものでも好適である。この場合、中和塩の市販品を用いてもよいし、アミン化合物を自分で中和して用いてもよい。
中和する酸の量は、当量でもいいし多くても少なくてもよいが、少なすぎると水に溶解しないので好ましくないが、多すぎると前述のように残存して有機溶媒に分散しなくなるので、アミン化合物が水に溶解する程度の量で中和すればよい。
(a)のタイプとしては、JEFFAMINE FL-1000(商品名。ハンツマン社製)、DIPERBYK-167(商品名。ビックケミー社製)など、(b)のタイプとしては、ポリエーテルアミン(JEFFAMINE M-600、M-1000、M-2005、M-2070、M-3085(商品名。ハンツマン社製)、GenaminM41/2000(商品名。クラリアントスペシャリティケミカルズ社製)、Solsperse 20000(商品名。ループリゾール社製))、BYKLPN-21324、BYKLPN-22329、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-145(商品名。ビックケミー社製)、などが挙げられる。
〔水性媒体〕
カーボンブラックとアミン化合物を反応させる媒体は、水性媒体であればよい。
ここで水性媒体とは、水を主体とするものであればよく、水のみでも問題はなく、水溶性溶媒を加えてもよい。
水溶性溶媒とは、水と相溶性のある溶媒であり、代表的には、アルコール系(IPA(イソプロピルアルコール)、メトキシプロパノールなど)、グリコール系(ジエチルジグリコールなど)、アミン系(NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、DMFなど)などが挙げられる。これらの水溶性溶媒を水100重量部に対して1~50重量部、好ましくは1~30重量部、さらに好ましくは5~20重量部配合するのが好ましい。
カーボンブラックとアミン化合物の水性媒体に対する濃度は、水が少なすぎると成分が均一に混合されず、反応が均一にならない。そこで、カーボンブラック及びアミン化合物の濃度は、選択した撹拌機、ビーズミルなど各分散装置で、均一に液混合が混合し、分散できる粘度状態であれば特に制限されない。カーボンブラックは粒子径、ストラクチャー、表面の酸化状態により分散液の粘性が変化し、アミン化合物の水溶液は、分子量等により粘性が変化するので、これらに応じて適切な濃度も変わってくるが、通常は、混合物全体におけるカーボンブラックの含有量は、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは20重量%以上である。
[反応手段]
カーボンブラックとアミン化合物との反応は、これらを水性媒体中で混合すればよい。
カーボンブラックとアミン化合物の混合の具体的な方法は限定されないが、例えば以下の方法を適宜選択できる。
1.カーボンブラックを水性媒体に分散して分散液としておき、ここにアミン化合物液を攪拌しながら滴下する
2.アミン化合物の溶液又は分散液に、カーボンブラックを水性媒体に分散した分散液を攪拌しながら滴下する
3.水性媒体を撹拌しながら、あらかじめカーボンブラックを水性媒体に分散して得た分散液とアミン化合物の分散液又は溶液とを同時に滴下し反応させる
4.カーボンブラックとアミン化合物とを同時に水性媒体に入れて混合、分散して反応させる
水分散性カーボンブラックとアミン化合物とを水性媒体中で混合すれば反応するが、好ましくは攪拌する。また、ビーズミルや超音波分散機、ジェットミルなどの分散機を用いて分散あるいは攪拌してもよい。
反応は、常温でも十分に進行するが、水性媒体が沸騰しない程度の温度で加熱して、反応を促進することも可能である。
[水性媒体からの分離]
カーボンブラックとアミン化合物の反応後に、水性媒体を除去することにより、アミン修飾されたカーボンブラックを取得することができる。反応後に水性媒体から分離するタイプと分離しないタイプがあるが、各々に適した水性媒体の除去方法を採用することができる。アミン化合物がアミノ基以外に親水性基又は親水性となりうる基を有さない場合は、生成物が水から分離したことが目視で確認できる。(後述する実施例1等)このタイプは、ろ過により簡単に水性媒体と分離できる。さらに乾燥して乾燥物を得ることもできる。
これに対し、アミン化合物がアミノ基以外に親水性基又は親水性となりうる基を有する場合は、生成物が水から分離しない。このタイプの場合、スプレードライなどで乾燥することにより、乾燥物を得ることができる。
水性媒体から分離しないタイプでも、アミン化合物の水溶解特性によっては、濃度などの溶解条件を調整することにより、水から分離することも可能である。濃度によって水への溶解度が変わるアミン化合物については、反応後に加熱などにより水分を減らすと高濃度となり水から分離する。溶媒置換で高濃度の分散液を得ることも可能である。
カーボンブラックには元々無機塩などの無機物が含まれていることがあり、これに加えてさらに、スルホン基、カルボキシル基などの酸性官能基を付与する反応する際にもカーボンブラック中に無機物が持ち込まれ残存することがある。このような無機物は有機溶媒には不溶であり、また有機溶媒への自己分散の阻害物になりうるため、できるだけ除去する方が好ましいが、水性媒体と分離する場合は、ろ過時に水洗浄すれば、容易に除去ができる。水性媒体と分離しない場合は限外ろ過を行ってもよい。
[反応の確認]
反応したことは、アミン化合物がアミノ基以外に親水性基又は親水性となりうる基を有さない場合は、生成物が水から分離したことで分かる。
これは、反応前の水分散性カーボンブラック及びアミン化合物がそれぞれ水に溶解または分散していたのに対し、水分散性カーボンブラック表面の酸性官能基とアミン化合物のアミノ基とが反応して結合することにより、水分散性カーボンブラックの水中での分散に寄与していた酸性官能基による水への分散性が失われたことによると推測される。アミン化合物として前記の〔化学式2〕のような疎水性の高い官能基を有するものを用いた場合について図示した図5に示すとおりである。
これに対し、アミン化合物がアミノ基以外に親水性基又は親水性となりうる基を有する場合、水分散性カーボンブラック表面の酸性官能基による水への分散性は失われるものの、これと結合したアミン化合物にアミノ基以外の親水性基があるため、この親水基により水に分散し、水から分離しない。この場合でも、後述するように水性媒体から分離したカーボンブラックを有機溶媒に投入すると速やかに分散することから、いずれもアミン化合物が反応して結合したことが確認できる。
以上のようにして本発明のアミン修飾カーボンブラックを得ることができる。
本発明のアミン修飾カーボンブラックは以上の説明からも分かるように、水に分散した状態で存在することができる他、水から分離したケーキ状でも存在できる。
また、乾燥すれば、粒子形態で存在することもできる。乾燥方法としては、乾燥機で乾燥後に粉砕機で粉砕してもよいし、スプレードライで乾燥してもよい。
いずれの場合もカーボンブラックの表面にアミン化合物が結合しており、このアミン化合物が所望の有機溶媒に溶解するものであるため、このカーボンブラックを有機溶媒に投入すれば、分散剤等を添加しなくても極めて容易に均一に分散する。
アミン化合物のアミン又はイオン化したアンモニウムイオンがカーボンブラック表面のスルホン基、カルボキシル基等の酸性官能基と静電相互作用により接近して吸着すること、さらに水の除去により結合を形成しうることが推測される。ある程度継続的な結合状態を形成していることは、上記のように水を除去した後のカーボンブラックを有機溶媒へ添加すると簡単に分散することによって確認できる。
仮に何らの結合も生じていないのであれば、水を除去する際に、アミン化合物は水と共に除去されてしまうことが考えられる。このため、水除去後のカーボンブラックを有機溶媒へ添加しても分散せず凝集してしまうはずである。これに対し、本発明によりカーボンブラックとして水分散性カーボンブラックを使用し、所望の有機溶媒に親和性のあるアミン化合物と水性媒体中で混合した場合、水性媒体を除去した後のカーボンブラックは、分散剤等を添加しなくとも有機溶媒に容易に分散する。このことからは、有機溶媒に親和性のあるアミン化合物がカーボンブラックの表面に結合していることが確認できる。
以上のように、本発明ではアミン化合物の選択により、様々な有機溶媒に容易に分散する表面修飾カーボンブラックを得ることができる。前述の(a)タイプであれば、表面に結合する部位は疎水性のため、水からの分離性が良く、有機溶媒に対しては分散剤がなくとも容易に分散し、水性媒体には分散しない(図5)。このため、耐水性の高い表面修飾カーボンブラックを得ることができる。
濃度によって水への溶解度が変わるアミン化合物の場合も、比較的水への溶解性が低いため、水へ自己分散しくい傾向があり、耐水性が高い傾向にある。
他方、水性媒体と有機溶媒の両方に親和性のあるアミン化合物を選択すれば、有機溶媒及び水性媒体の両方に自己分散するカーボンブラックを得ることができる。
従来のカーボンブラックの粉体は、有機溶媒と簡易的に混合するだけでは凝集するため、有機溶媒の液系で使用するためには、分散装置を使い、分散剤を加えて有機溶媒にあらかじめ分散する必要があったが、本発明のアミン修飾カーボンブラックを用いれば、有機溶媒に自己分散するため、有機溶媒と簡易的に混合するだけで使用することができる。
水と簡易的に混合するだけで分散する、水系の自己分散カーボンブラックは、これまでに存在していたが、有機溶媒系の自己分散カーボンブラックについては、本発明が初めてである。
有機溶媒に自己分散する、本発明のアミン修飾カーボンブラックは、有機溶媒を含まない粉体、ペーストの形状で販売できるため、従来の有機溶媒を含むカーボンブラック分散液製品と比較して、(1)有機溶媒を含むことによる、輸送、保管のコストが低減できる、(2)有機溶媒の法令に基づく管理が不要になる、などの利点がある。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
(1)スルホン化カーボンブラックの作製
1. スルホン化カーボンブラック1(スルホン化10%)
4-アミノベンゼンスルホン酸、アンモニア水、イオン交換水を以下の配合で混合して溶解させ、4-アミノベンゼンスルホン酸溶液を作製した。
4-アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸) 2部
アンモニア水(25%) 1.5部
イオン交換水 30部
亜硝酸ナトリウムを以下の配合でイオン交換水と混合して溶解し、亜硝酸ナトリウム溶液を作製した。
亜硝酸ナトリウム 1部
イオン交換水 4部
上記の4-アミノベンゼンスルホン酸溶液33.5部を、5℃以下に冷却し、上記の亜硝酸ナトリウム溶液5部を添加して混合し、さらに塩酸(35%)3.12部を添加して、4-アミノベンゼンスルホン酸のアミノ基をジアゾ化したジアゾ液を作製した。
カーボンブラック(#45L、三菱ケミカル(株)製)20部とアンモニア水(25%)4部、及び水150部を混合してカーボンブラック懸濁液を作製した。
カーボンブラック懸濁液174部をスターラーで攪拌しながら、ジアゾ液41.62部を滴下し、攪拌を続けると、目視でカーボンブラック凝集が解れて凝集物がなくなり、粒子全体が濡れた状態になり、またカーボンブラック懸濁液の粘度が低下し流動性が上がり、スルホン化処理されたカーボンブラック(スルホン化カーボンブラック1)を含有するスルホン化カーボンブラック分散液1を得た。さらに、110℃で乾燥して、水分を除去することにより、スルホン化カーボンブラック1を得た。
2. スルホン化カーボンブラック2~5(スルホン化5、8、10、20%)
成分及び配合量を、表1の通りとした以外は、スルホン化カーボンブラック分散液1と同様の工程を行い、スルホン化カーボンブラック分散液2、3を得た。さらに、各々を110℃で乾燥して水分を除去することにより、スルホン化カーボンブラック2、3を得た。
Figure 2023153059000004
成分及び配合量を、表2の通りとした以外は、スルホン化カーボンブラック分散液1と同様の工程を行い、スルホン化カーボンブラック分散液4、5を得た。さらに、各々を110℃で乾燥して水分を除去することにより、スルホン化カーボンブラック4,5を得た。
Figure 2023153059000005
(2)カルボキシル化カーボンブラックの作製
4-アミノ安息香酸、塩酸(35%)、イオン交換水を以下の配合で混合して溶解させ、4-アミノ安息香酸溶液を作製した。
4-アミノ安息香酸 1部
塩酸(35%) 0.76部
イオン交換水 14.6部
上記の4-アミノ安息香酸溶液16.36部を、5℃以下に冷却し、亜硝酸ナトリウム0.53部を添加して混合し、4-アミノ安息香酸のアミノ基をジアゾ化したジアゾ液を作製した。
カーボンブラック(#45L,三菱ケミカル(株)製)10部と水酸化ナトリウム0.4部、及びイオン交換水90部を混合してカーボンブラック懸濁液を作製した。
カーボンブラック懸濁液100.4部をスターラーで攪拌しながら、ジアゾ液16.89部を滴下し、攪拌を続けると、目視でカーボンブラック凝集が解れて凝集物がなくなり、粒子全体が濡れた状態になり、またカーボンブラック懸濁液の粘度が低下し流動性が上がり、カルボキシル化されたカーボンブラック(カルボキシル化カーボンブラック)を含有するカルボキシル化カーボンブラック分散液1を得た。さらに、110℃で乾燥して水分を除去することにより、カルボキシル化カーボンブラック1を得た。
(3)カーボンブラック評価液の作製
(3)―1 カーボンブラック1~4評価液の作製
250ccの広口ポリ瓶に、表3に示す各カーボンブラックを10g、アンモニア水(25%)を10g、イオン交換水を80gの配合で仕込み、セプルビーズ(サンゴバン株式会社製)230gを加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で30分分散し、ナイロン110メッシュでビーズを分離して回収し、カーボンブラック1~4評価液を得た。
(3)―2 スルホン化カーボンブラック1~5評価液の作製
カーボンブラックを、スルホン化カーボンブラック1~5にした以外は、カーボンブラック1~4評価液作製と同様の工程を行い、スルホン化カーボンブラック1~5評価液を得た。
(3)―3 カルボキシル化カーボンブラック1評価液の作製
カーボンブラックを、カルボキシル化カーボンブラック1にした以外は、カーボンブラック1~4評価液作製と同様の工程を行い、カルボキシル化カーボンブラック1評価液を得た。
Figure 2023153059000006
(4)カーボンブラックのpH確認と水への親和性の評価
(4)-1 pH確認
表3で示すカーボンブラック粉のpHは以下の通りである。
カーボンブラック1 2.5
カーボンブラック2 9.0
カーボンブラック3 3.5
カーボンブラック4 8.0
(4)-2 水への親和性の評価
(3)―1~3で得られたスルホン化カーボンブラック1~5評価液、カルボキシル化カーボンブラック1評価液、及びカーボンブラック1~4評価液を用い、以下の方法でスルホン化カーボンブラック1~5、カルボキシル化カーボンブラック1、及びカーボンブラック1~4の水への親和性を評価した。結果を表-4に示す。
各カーボンブラック評価液を、ペイントシェーカー分散終了から5分後、 0.2gをスポイトでガラス板に滴下する。その上から、さらにイオン交換水をスポイトで滴下し、液分離の有無を目視で確認する。
凝集して水と分離するものは、評価を×で示す。
分散して水と均一になるものは、評価を〇で示す。
評価時の液分離の有無は目視以外に写真撮影を行った。これらの写真を図1~図4に示す。図1はカーボンブラック1評価液、図2はカーボンブラック2評価液、図3はカーボンブラック3評価液、図4はスルホン化カーボンブラック1評価液を各々用いてガラス板に滴下した状態の写真を示す図である。各々、写真の向かって右側がイオン交換水を滴下した箇所である。カーボンブラック2評価液及びカーボンブラック3評価液では、イオン交換水を滴下した箇所はカーボンブラックが凝集して水と分離する様子が見られ、水との親和性が十分でないことがわかる。他方、カーボンブラック1評価液及びスルホン化カーボンブラック1評価液は、イオン交換水を滴下してもカーボンブラックは水と分離せずに分散状態を保っており、水との親和性が十分であることがわかる。
Figure 2023153059000007
実施例及び比較例で使用したアミン化合物1~14、化合物1~2は以下の表5のとおりである。
表中のアミン化合物1~14及び化合物1、2の物性及び/又は商品名は以下のとおりである。なお化合物1及び化合物2はアミンを含まない物質である。
アミン化合物1:アミン価 56mgKOH/g、1級アミン、分子量1000
アミン化合物2:アミン価 56mgKOH/g、1級アミン、分子量1000
アミン化合物3:アミン価 28mgKOH/g、1級アミン、分子量 2000
アミン化合物4:アミン価 32mgKOH/g、1級アミン、分子量 1000~3000
アミン化合物5:アミン価 71mgKOH/g、1級アミン、分子量 1700
アミン化合物6:アミン価 94mgKOH/g、1級アミン、分子量 600
アミン化合物7:ポリメントNK-100PM(製品名。(株)日本触媒製 。)
アミン価 123~163mgKOH/g、1級アミン、分子量1~3万
アミン化合物8:ポリメントNK-200PM(製品名。(株)日本触媒製。)
アミン価 123~163mgKOH/g、1級アミン、分子量1~3万
アミン化合物9:PAA-01(製品名。ニットーボーメディカル(株)製。)
アミン価 980mgKOH/g、1級アミン、分子量1600
アミン化合物10:PAA-03E(分子量3000、製品名。ニットーボーメディカル(株)製。)
アミン価 980mgKOH/g、1級アミン、分子量 3000
化合物1:DISPERBYK-111(商品名。ビックケミー社製 。)
エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステ
ル化合物。アミンを含まない
化合物2:DISPERBYK-190(商品名。ビックケミー社製。)アクリル系高分子。ア
ミンを含まない
アミン化合物11:BYK-LPN6919(商品名。ビックケミー社製。)
アミン価 120mgKOH/g、3級アミン、
アミン化合物12:DISPERBYK-2000(商品名。ビックケミー社製。)
アクリル系ブロックコポリマー4級アンモニウム塩
アミン化合物13:ポリメントNK-350(製品名。(株)日本触媒製。)
アミン価 34~56mgKOH/g、1級アミン、分子量10万
アミン化合物14:ポリメントNK-380(製品名。(株)日本触媒製。)
アミン価 39~73mgKOH/g、1級アミン、分子量10万
アミン化合物15:ポリエチレンイミン600
アミン価 1300mgKOH/g、2級アミン、分子量600
アミン化合物16:ポリエチレンイミン1800
アミン価 1300mgKOH/g、2級アミン、分子量1800
(5)PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶解評価
各アミン化合物、化合物のPMAへの溶解性を以下の方法で評価した。結果を表5に示す。
各アミン化合物、化合物 20部を、PMA 80部と混合し、溶解の有無を目視で確認する。
PMAと分離するものは、評価を×で示す。
PMAと均一になるものは、評価を〇で示す。
Figure 2023153059000008
(6)アミン修飾カーボンブラックの作製
各実施例及び比較例におけるアミン化合物、化合物とカーボンブラックとの組み合わせは以下の表6のとおりである。
Figure 2023153059000009
実施例1
アミン化合物1 3部(固形3部)に90%酢酸2部を加えて、液が透明になるまでスターラーで混合して、アミン化合物1を溶解した。
ここへ、スルホン化カーボンブラック分散液1 53.8部(カーボンブラック5部)を混合して、室温にてスターラーで、カーボンが分離し、上澄みが淡色になるまで攪拌した。
その後、ナイロン110メッシュでろ過し、イオン交換水で洗浄後、ろ過物を回収した。
得られたろ過物を、乾燥機で水分が除去され重量が一定になるまで、110℃で乾燥したところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
実施例2
アミン化合物2 2.5部(固形2.5部)と、スルホン化カーボンブラック分散液2 48.1部(カーボンブラック5部)とを、混合して、室温にてスターラーで、外観上液色が均一になるまで攪拌した。
以上の処理をした後、乾燥機で、水分が除去され重量が一定になるまで、110℃で乾燥したところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
実施例3~7
各成分及びその配合量を表6に従った以外は、実施例2と同様の操作を行ったところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
実施例8~9
各成分及びその配合量を表6に従い、90%酢酸を3.3部にした以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
実施例10~11
各成分及びその配合量を表6に従った以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
実施例12
各成分及びその配合量を表6に従った以外は、実施例2と同様の操作を行ったところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
実施例13
250ccの広口ポリ瓶に、カーボンブラック1を10g、アミン化合物1を6g(固形6g)、イオン交換水を84gの配合で仕込み、セプルビーズ(サンゴバン株式会社製)230gを加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で3時間分散したところ、黒色のカーボンブラックとアミン化合物の層と上澄みの水層に分離した。
90%酢酸水を9g添加後、攪拌混合すると分離がなくなり均一な液になった。ナイロン110メッシュでビーズを分離して液を回収し、乾燥機で、水分が除去され重量が一定になるまで、110℃で乾燥したところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
実施例14
250ccの広口ポリ瓶に、カーボンブラック1を10g、アミン化合物2を8g、イオン交換水を82gの配合で仕込み、セプルビーズ(サンゴバン株式会社製)230gを加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で3時間分散し、ナイロン110メッシュでビーズを分離して液を回収し、乾燥機で、水分が除去され重量が一定になるまで、110℃で乾燥したところ、アミン修飾カーボンブラックの固形物が得られた。
比較例1~3
各成分及びその配合量を表6に従った以外は、実施例2と同様の操作を行ったところ、固形物が得られた。
比較例4
スルホン化カーボンブラック分散液1を、乾燥機で、水分が除去され重量が一定になるまで110℃で乾燥して、スルホン化カーボンブラック1を回収した。スルホン化カーボンブラック1は外観上粉体であった。
比較例5~7
比較例4と同様にして、スルホン化カーボンブラック分散液2、カルボキシル化カーボンブラック分散液1、及びカーボンブラック1評価液から、スルホン化カーボンブラック2及びカルボキシル化カーボンブラック1,及びカーボンブラック1を回収した。これらも外観上粉体であった。
比較例8~20
各成分及びその配合量を表6に従った以外は、実施例2と同様の操作を行ったところ、固形物が得られた。
(7)評価方法と評価結果
各実施例及び比較例で得られたアミン修飾カーボンブラック又は修飾されていないカーボンブラックを、以下の方法で評価した。
1.PMAへの自己分散性評価
有機溶媒としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を用い、以下の方法で分散性を評価した。
各実施例及び比較例で乾燥工程後に得られた固形物(比較例4~7では粉体)を濃度1重量%(固形分換算)になるように有機溶媒と混合し、この混合物をガラス板に1g滴下し、凝集するか均一であるかを目視で確認した。
・外観上均一に分散して溶媒と均一:〇
・外観上カーボンブラックの凝集物が見られる:×
結果を表7及び表8に示す。
上記の分散性評価において、〇となったものについて、粒度分布測定装置(マイクロトラック社製 UPA)で、測定装置が必要とする反射光強度の範囲になるようPMAで希釈して、粒子径D50を測定した。
結果を表7及び表8に示す。
実施例1~14では、いずれもPMAに自己分散するアミン修飾カーボンブラックを得ることができた。それに対して、比較例1~20では、PMAに対して分散不良であった。
Figure 2023153059000010
Figure 2023153059000011
2.各種有機溶媒及びモノマーへの溶解性評価及び自己分散性評価
上記「アミン化合物のPMA溶解評価」と同様の方法で、アミン化合物1について、PMAの代わりに、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、酢酸ブチルを用いて溶解評価を行ったところ、いずれの溶媒に対しても溶解評価は良好であった。
有機溶媒として、トルエン、MEK、酢酸ブチルを用い、実施例11で得られたアミン化合物1のアミン修飾カーボンブラックについて上記「1,PMAへの自己分散性評価」と同様にして分散性を評価した。その結果いずれの有機溶媒に対しても分散性が良好であった。
また、実施例11で得られたアミン修飾カーボンブラックについてこれらの各有機溶媒中での分散粒子径を上記「2.分散粒子径の測定」と同様の方法で測定したところ、トルエン中では 129nm、MEK中では 132nm、酢酸ブチル中では 121nm のD50粒子径であった。
上記「アミン化合物のPMA溶解評価」の方法で、アミン化合物4について、PMAの代わりに、MEK(メチルエチルケトン)、IPA(イソプロピルアルコール)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、及びモノマーとしてBZA(ベンジルアクリレート、アクリルモノマー、大阪有機化学工業社製、ビスコート#160)、及び水を用いたところ、いずれの溶媒に対しても溶解評価は良好であった。
有機溶媒としてMEK、IPA、NMP、及びモノマーとしてベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製 ビスコート#160)、及び水、を用い、実施例4で得られたアミン化合物4のアミン修飾カーボンブラックについて上記「1,PMAへの自己分散性評価」と同様にして分散性を評価した。その結果いずれの有機溶媒に対しても分散性が良好であった。
また、実施例4で得られたアミン修飾カーボンブラックについてこれらの各有機溶媒中での分散粒子径を上記「2.分散粒子径の測定」と同様の方法で測定したところ、MEK中では 83nm、IPA中では 79nm、NMP中では90nm、ベンジルアクリレート中では84nm、水中では 83nm のD50粒子径であった。
(8)考察
実施例13、14、比較例1~3からわかるように、カーボンブラック3のように単にpHが低く一般に酸性カーボンブラックと呼ばれているものであっても、水への親和性評価で本発明の水分散性カーボンブラックに該当しないものでは、有機溶媒に容易に分散するアミン修飾カーボンブラックを得ることができないことがわかる。
これに対して、水分散性カーボンブラックを用いた実施例1~14では、有機溶媒への自己分散性が発現しており、アミンで修飾されていることがわかる。
表7及び表8に示すように、アミン化合物を用いない比較例4~7ではカーボンブラックの凝集物が見られ、有機溶媒への自己分散性が得られていないのに対して、アミン化合物を用いた実施例1~14で、有機溶媒への自己分散性が発現していることが分かる。
表7及び表8に示すように、アミン価が大きくPMAに溶解しないアミン化合物を用いた、比較例8~11ではカーボンブラックの凝集物が見られ、有機溶媒への自己分散性が得られていないのに対して、適度なアミン価を持ちPMAに溶解するアミン化合物を用いた実施例1~14で、有機溶媒への自己分散性が発現していることが分かる。
表7及び表8に示すように、アミンを含まない化合物を用いた、比較例12、13ではカーボンブラックの凝集物が見られ、有機溶媒への自己分散性が得られていないのに対して、アミン化合物を用いた実施例1~14で、有機溶媒への自己分散性が発現していることが分かる。
表7及び表8に示すように、3級アミンのアミン化合物を用いた比較例14、4級アンモニウム塩のアミン化合物を用いた比較例15では、カーボンブラックの凝集物が見られ、有機溶媒への自己分散性が得られていないのに対して、1級アミン、2級アミンのアミン化合物を用いた実施例1~14で、有機溶媒への自己分散性が発現していることが分かる。
比較例16、17で使用したアミン化合物13、アミン化合物14は分子量10万である。表7及び表8に示すように、このアミン化合物を用いた比較例16、17では、カーボンブラックの凝集物が見られ、有機溶媒への自己分散性が得られていないのに対して、分子量600~3000のアミン化合物を用いた実施例1~14で、有機溶媒への自己分散性が発現していることが分かる。
カーボンブラックを固形物の状態で有機溶媒またはモノマーに1%濃度で添加し、スターラーで攪拌して評価しているが、本発明のアミン修飾カーボンブラックは、このようなプロセスだけで均一になり、しかも分散粒子径D50が200nm以下にまで、小さくそろっていることが分かる。
特に、アミン化合物としてポリエーテルアミンを用いた実施例4では、PMA、MEK、IPA、NMP、水、BZAなど、多種の溶媒及びモノマーに対する自己分散性が得られることが分かる。
したがって、カーボンブラックを分散する溶媒との親和性を考慮してアミン化合物を選択すれば、所望の有機溶媒に対して有効な分散性を得ることができることが分かる。
これに対し、比較例のカーボンブラックは、この条件では凝集していることが目視でも観察できる。これらの比較例のカーボンブラックのような従来から存在するカーボンブラックの場合は同等の分粒子径レベルにするには、分散剤を添加し、さらにビーズミル、ロールミル等の分散設備で分散する必要があることは前述したとおりである。
本発明の製造方法により、以上の実施例からも分かるように、水性媒体中での簡単な反応で広範な種類のアミン化合物をカーボンブラックに結合させることができ、得られたアミン修飾カーボンブラックは、様々な有機溶媒やモノマーに対して自己分散できることが分かる。
図5に、カーボンブラック1とアミン化合物1の組合せの反応を示した。このように、水分散性カーボンブラックの酸性官能基とアミン化合物のアミンとが、水の分離乾燥過程では外れない程度に強固に結合して、有機溶媒への親和性が付与され、有機溶媒に対する自己分散性が得られたと考えられる。
また、前述したように、3級アミン、4級アンモニウム塩のアミン化合物を用いた場合では、有機溶媒への自己分散性が得られていないのに対して、1級アミン、2級アミンのアミン化合物を用いた場合で、有機溶媒への自己分散性が発現している。
このことからも、結合手を持つ1級アミン2級アミンは、カーボンブラックの酸性官能基と化学結合することにより、カーボンブラックにアミン化合物の有機溶媒親和性が付与されたと考えられる。
本発明により、分散剤を添加しなくとも有機溶媒に自己分散するカーボンブラックを得ることができる。

Claims (12)

  1. (i) カーボンブラック10重量部、(ii) 25%アンモニア水10重量部及び(iii)イオン交換水80重量部を混合し、セプルビーズ230部とともに、ペイントシェーカーで30分間分散して得られた分散液を5分間静置した後に目視で液の分離が観察されないカーボンブラックと、アミン化合物とを水性媒体中で混合して、アミン化合物をカーボンブラックに結合することを特徴とする、アミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  2. アミン化合物が、1級アミン、2級アミン又は環状アミンであることを特徴とする、請求項1記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  3. アミン化合物が、1級アミン、2級アミン又は環状アミンであり、アミン価10~120mgKOH/gであることを特徴とする請求項1記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  4. アミン化合物が、1級アミン、2級アミン又は環状アミンであり、アミン価10~120mgKOH/gであり、かつ分子量が500~5万であることを特徴とする請求項1記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  5. アミン化合物が、トルエン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、のいずれか1以上の有機溶媒に溶解するものであることを特徴とする、請求項1記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  6. アミン化合物が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はベンジルアクリレートに溶解するものであることを特徴とする、請求項1記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  7. アミン化合物とカーボンブラックとを、―SO2NH―、―SO2N―、-CONH-、―CON-のいずれか1以上を介して結合させることを特徴とする請求項1記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  8. アミン化合物のアミン部分が、環状イミド、オキサゾリン又はイミダゾリジノンのいずれか1以上である、請求項1記載のアミン修飾カーボンブラックの製造方法。
  9. カーボンブラックにアミン化合物が結合しているアミン修飾カーボンブラックであって、アミン化合物が、(i) ―SO2NH―、―SO2N―、-CONH-、―CON-のいずれか1以上を介してカーボンブラックと結合しており、(ii)カーボンブラックとの結合部分のアミン価換算値を含んだアミン価が10~120mgKOH/gであり、かつ(iii) 分子量500~5万 のアミン化合物であることを特徴とするアミン修飾カーボンブラック。
  10. アミン化合物が、トルエン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、のいずれか1以上の有機溶媒に溶解するものであることを特徴とする、請求項9記載のアミン修飾カーボンブラック。
  11. アミン化合物が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はベンジルアクリレートに溶解するものであることを特徴とする、請求項9記載のアミン修飾カーボンブラック。
  12. アミン化合物のアミン部分が、環状イミド、オキサゾリン又はイミダゾリジノンのいずれか1以上である、請求項9記載のアミン修飾カーボンブラック。
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