JP2023152883A - オレフィン重合用触媒、及び、エチレン系重合体の製造方法 - Google Patents

オレフィン重合用触媒、及び、エチレン系重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分子量分布が広く、短鎖分岐が高分子量側に優先的に取り込まれ、流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体を製造可能なオレフィン重合用触媒を提供する。【解決手段】特定のメタロセン化合物である成分(A)、特定のメタロセン化合物である成分(B)、上記成分(A)及び上記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物である成分(C)、並びに微粒子担体である成分(D)を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒。好ましくは、成分(A)がビスインデニルジルコニウムジクロリド等であり、成分(B)が[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド等であり、成分(C)がメチルアルミノキサン等である。【選択図】なし

Description

本発明は、オレフィンの重合体及び共重合体の製造に有用なオレフィン重合用触媒、及び、当該オレフィン重合用触媒を用いたエチレン系重合体の製造方法に関する。
ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体は、プラスチック成形材料として広く用いられている。成形材料としてのオレフィン系重合体は、溶融状態での流動性、溶融張力、伸長粘度などの成形性、及び、成形後の硬度、剛性、耐衝撃強度、耐熱性、耐久性、透明性など成形体の用途に適した物性が求められる。
このような中で、オレフィン重合用メタロセン触媒で製造されるポリオレフィンは、分子量分布や共重合組成分布といったポリマー分子構造の均一性が高く、衝撃強度や長期寿命等、様々な機械的物性に優れることから、近年、その使用量が増加してきている。しかし、メタロセン触媒により得られるポリオレフィンは、機械的諸物性には優れているものの、狭い分子量分布故に、溶融張力や溶融流動性といったポリオレフィンの成形加工上重要な特性において劣り、成形加工面においては十分な性能を満たすものではなかった。
そのため、メタロセン触媒において、複数の錯体を使用して分子量分布を広げる試みがされてきている。特許文献1では、非架橋のメタロセンと架橋のメタロセンを組み合わせることで、共重合した時の活性が高く、分子量も高く、分子量分布も広くなることを目的として検討がされている。しかしながら、実際に得られたものでは分子量分布が十分に広がったとは言えない。
特許文献2では、スクリューキャップ(クロージャー)向けに、非架橋メタロセンと架橋メタロセンを組み合わせた触媒を用いることが開示されている。しかしながら、開示されている分子量分布Mw/Mnは3.9であり、分子量分布が十分広がったとは言えない。
特許文献3では非架橋の置換インデニル錯体と架橋の置換シクロペンタジエニルハフニウム錯体により得られる重合体の分子量分布Mw/Mnが8~10となることが開示されている。しかしながら、高分子量の重合体を生成するハフニウム錯体は活性が低いために使用比率が多い。よって、高分子量用の錯体の活性が高いことが求められる。また、より広い分子量分布Mw/Mnが求められている。
特許文献4では非架橋の無置換ビスインデニル錯体と、架橋のシクロペンタジエニル-フルオレニル錯体により得られる重合体の分子量分布Mw/Mnが9~18とより広くなることが開示されている。しかし、ここで得られている重合体の短鎖分岐分布において、高分子量成分と低分子量成分との短鎖分岐数の比は高くても3倍程度と見積もられ、高分子量側に優先的に短鎖分岐が導入されていないため、成形加工した際の物性バランスは充分とは言い難い。
特許文献5では非架橋のビスシクロペンタジエニル錯体と特定の架橋のビスインデニル錯体により得られる重合体の分子量分布Mw/Mnが20前後とより広くなることが開示されている。しかしながら、後述するように当該特定の架橋のビスインデニル錯体を用いた重合体は、分子量の割に流動性が低い。この特性により高分子量にすると流動性が悪くなって、押し出し機でのモーター負荷が大きくなり、一方で流動性を良好にするために分子量を下げると、強度が下がってしまうという課題が発生する。
特開平03-203904 特表2008-538791 特表2021-500462 特表2009-504901 特表2002-504958号公報
このように、多数のメタロセン触媒技術が開発されているが、従来のメタロセン触媒を用いて得られる重合体は、依然として成形性、強度及び耐久性のバランスが不十分であり、これを改良できる技術への要求がある。
複数の遷移金属化合物を用いて分子量分布やコモノマー組成分布を制御する技術により成形性、剛性と強度や耐久性バランスに優れたポリエチレンを製造するためには、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)がより高度に高分子量側に導入されるオレフィン重合用触媒が求められる。これに加え、さらに成形性と強度や耐久性バランスに優れたポリエチレンを製造するためには、高分子量であっても流動性が高い重合体を製造できるオレフィン重合用触媒が求められる。
本発明は、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体を製造可能なオレフィン重合用触媒を提供することを目的とする。
また本発明は、上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、分子量分布が広く、短鎖分岐が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の<1>~<7>に関する。
<1> 以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含む、オレフィン重合用触媒。
成分(A):下記一般式(1)で表されるメタロセン化合物
成分(B):下記一般式(2)で表されるメタロセン化合物
成分(C):前記成分(A)及び前記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物
成分(D):微粒子担体
[式中
は、チタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子を表し、
1AおよびX2Aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基、または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表し、
1A~R14Aは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数5~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のトリアルキルシリル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルコキシ基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、または少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基を表す。]
[式(2)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子を表し、
1BおよびX2Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基、または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表し、
Yは、炭素原子、ケイ素原子、またはゲルマニウム原子を表し、
31BおよびR32Bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、または少なくとも1つの置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を表し、
31BおよびR32Bは、Yを含んで4~7員環を形成していてもよく、R31BおよびR32Bの少なくとも一つが環状構造を有する場合、R31B、R32BおよびYにより構成される4~7員環は、R31BおよびR32Bが有する環状構造の構成原子の一部を共有する縮合環を形成してもよく、
12B~R19B、R22B~R29Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、または少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基を表し、R12B~R19BまでおよびR22B~R29Bまでのうち隣接する基同士がそれらに結合している原子を含んで結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
11BおよびR21Bは、下記一般式(3)で示される基を表す。
式(3)中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、
33BおよびR34Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つの炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~3のアルキル基、または少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基であり、R33B及びR34Bは互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。]
<2> 前記一般式(3)における、前記Zが酸素原子である、前記<1>に記載のオレフィン重合用触媒。
<3> 前記一般式(1)における、前記R1A~R14Aが水素原子である、前記<1>または<2>に記載のオレフィン重合用触媒。
<4> 前記一般式(1)における、前記R3AおよびR10Aが、炭素数1~3のアルキル基である、前記<1>または<2>に記載のオレフィン重合用触媒。
<5> 前記成分(C)が、メチルアルミノキサンである前記<1>~<4>のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
<6> 前記<1>~<5>のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、エチレン、又はエチレンおよび炭素数3~10のオレフィンから選ばれるモノマーを共重合する、エチレン系重合体の製造方法。
<7> スラリー重合法で行われる、前記<6>に記載のエチレン系重合体の製造方法。
本発明によれば、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体を製造可能なオレフィン重合用触媒を提供することができる。
また、本発明のオレフィン重合用触媒を用いることにより、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体の製造方法を提供することができる。
図1は、実施例1で得られたエチレン系重合体のGPC-IRチャートである。 図2は、実施例2で得られたエチレン系重合体のGPC-IRチャートである。 図3は、実施例3で得られたエチレン系重合体のGPC-IRチャートである。 図4は、実施例1~3、比較例4、参考例1、2、4、5及び8で得られたエチレン系重合体の重量平均分子量に対してHLMFRをプロットしたグラフである。
以下、本発明について説明する。
なお、本発明において「重合」とは、1種類のモノマーの単独重合と複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して単に「重合」と記載する。
また、本発明において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
I.オレフィン重合用触媒
本発明のオレフィン重合用触媒は、後述する一般式(1)で表されるメタロセン化合物(成分(A))、後述する一般式(2)で表されるメタロセン化合物(成分(B))、上記成分(A)及び上記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物(成分(C))、及び微粒子担体(成分(D))を含むことを特徴とする。
従来のメタロセン触媒を用いて得られる重合体は、依然として成形性、強度及び耐久性のバランスが不十分であった。
例えば特許文献4に開示されているオレフィン重合用触媒におけるメタロセン化合物の組み合わせでは、各メタロセン化合物による共重合性の差が不十分であり、得られている重合体の短鎖分岐分布において、高分子量側への優先的な短鎖分岐の導入が不十分なため、成形加工した際の物性バランスはまだ改善の余地がある。また、後述の参考例で示したように、特許文献4に開示されている高分子量側を重合するメタロセン化合物は、流動性が悪い高分子量成分を生成するため、流動性を良好にしようとすると低分子量成分を多く含むようになり、機械的強度や耐久性が劣りやすいという問題があった。
また、特許文献5に開示されているオレフィン重合用触媒におけるメタロセン化合物の組み合わせでは、低分子量成分側にもコモノマーが導入されやすく、各メタロセン化合物による共重合性の差が不十分であり、得られている重合体の短鎖分岐分布において、高分子量側に優先的に短鎖分岐が導入されていないため、成形加工した際の物性バランスは充分とは言い難かった。さらに特許文献5に開示されているオレフィン重合用触媒により分子量分布の広い重合体を製造する方法では、高分子量の長鎖分岐を過剰数含む共重合体が得られやすいため高粘度の重合体が得られやすかった。後述の参考例で示したように、特許文献5に開示されている高分子量側を重合するメタロセン化合物は、流動性が悪い高分子量成分を生成するため、流動性を良好にしようとすると低分子量成分を多く含むようになり、機械的強度や耐久性が劣りやすいという問題があった。
それに対して、本発明のオレフィン重合用触媒を用いて得られる重合体は、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高い。
これは、本発明のオレフィン重合用触媒が含有するメタロセン錯体である成分(A)及び成分(B)の構造の組み合わせに由来すると考えられる。本発明のオレフィン重合用触媒の存在下で行われる重合では、主に、成分(A)によって相対的に低分子量の重合体が生成され、同時に、成分(B)によって相対的に高分子量の共重合体が生成される。
成分(A)は、コモノマーの共重合性が低く、低分子量成分を生成し、生成した重合体の一部は、マクロモノマーとなっている。一方で成分(B)は、コモノマーの共重合性が高く、高分子量成分を生成する。この時、成分(B)が成分(A)から生成したマクロモノマーの一部を共重合することで、長鎖分岐を生成する。このようにして生成した分岐の枝の長さは元の成分(A)由来の低分子量のマクロモノマーの長さであり、比較的低分子量(短い枝)の長鎖分岐となる。一方で、成分(B)は、低頻度ではあるが相対的に高分子量のマクロモノマーを生成し、生成した高分子量のマクロモノマーを共重合することで高分子量(長い枝)の長鎖分岐を生成する可能性を持つ。このように触媒自身で発生したマクロモノマーを自身で共重合して長鎖分岐を生成することはメタロセン触媒においてしばしばみられる。このとき、高分子量のマクロモノマー由来で生成する高分子量の長鎖分岐が必要以上に存在すると過剰な粘度上昇を引き起こすと考えられる。ポリマーの成形性の指標として加熱溶融混錬した時のポリマーの流動性がある。この流動性が低すぎる、すなわち粘度が高すぎると、押し出し機でのモーター負荷が大きくなって成形しづらい。一方で流動性を高くするために分子量を下げる手法を取ることもあるが、分子量を低くすると一般に強度が低下する傾向があり、成形性(流動性)と強度はトレードオフの関係にある。
長鎖分岐は溶融張力を改善することに有効でもあるが、過剰な高分子量の長鎖分岐は粘度を上げるデメリットの方が大きく、好ましいものではない。
このように、過剰な高分子量の長鎖分岐は成形性に悪影響する。しかし、成分(B)においては、特許文献4や特許文献5と異なり、インデン骨格の2位置換基に含まれるフリル基又はチエニル基中のヘテロ原子と重合活性種である中心金属とが相互作用し、中心金属へのマクロモノマーの配位が適度に妨げられるため、相対的に高分子量のマクロモノマーとの共重合頻度が適度に低下し、過剰な高分子量の長鎖分岐を持つポリマーの生成が抑制される。
また、コモノマーの共重合しやすさはメタロセン錯体における中心金属へのモノマーやコモノマーの配位のしやすさと関係があると考えられており、成分(B)のように配位子を1つの原子で架橋したような構造は、共重合性が高い錯体として好ましく用いられる。
これは、2つの配位子が1つの原子で架橋されることで2つの配位子から生成される平面角が広がることに由来する。平面角が大きいことで、モノマーやコモノマーが中心金属に近づく際の立体障害が小さくなる。一方で低分子量成分を生成する成分(A)は共重合性が低いことが求められる。このようなメタロセン錯体は一般的に中心金属への立体障害があり、モノマーは配位できるがコモノマーは配位が難しい構造であることが必要となる。
1原子架橋したメタロセンと比較して共重合性が低いメタロセン錯体として、十分に共重合性が低い成分(A)を選択したことにより、成分(B)との共重合性の差を十分に大きくすることができる。本発明に用いられる成分(A)は、あまり複雑な構造ではなく十分に共重合性が低いため、経済的にも有用である。
本発明のオレフィン重合用触媒の存在下で行われる重合では、前記のような成分(A)と成分(B)を用い、成分(A)と成分(B)とのコモノマーの共重合性の差が大きい組み合わせであることから、過剰な高分子量の長鎖分岐を持つポリマーの生成が抑制されるため流動性見合いの重量平均分子量が高く、分子量分布が広く、短鎖分岐が高分子量側に優先的に取り込まれるエチレン系重合体を製造可能と考えられる。このようなエチレン系重合体は、成形性と強度や耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体として好適に用いられると期待できる。
以下、本発明のオレフィン重合用触媒が含有する各成分、及び本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法について説明する。
1.成分(A)
本発明で用いられる成分(A)は、下記一般式(1)で表されるメタロセン化合物である。
[式中
は、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子を表し、
1AおよびX2Aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表し、
1A~R14Aは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数5~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のトリアルキルシリル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルコキシ基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、または少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基を表す。]
は、チタン原子(Ti)、ジルコニウム原子(Zr)又はハフニウム原子(Hf)であり、中でも、分子量および活性の点から、ジルコニウム原子が好ましい。
1AおよびX2Aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基、または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表す。
ハロゲン原子の具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子を挙げることができる。
炭素数1~20の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基またはシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;シクロペンチルメチル基、2-シクロヘキシルエチル基等の脂環式置換基を有するアルキル基;フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、3,5-ジ-t-ブチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-(3-ブテニル)フェニル基、ナフチル基等の飽和又は不飽和の炭化水素基が置換していてもよい単環又は縮合環のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基等の芳香族置換基を有するアルキル基などを挙げることができる。
炭素数1~20のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基の具体例としては、例えば次のものがある。酸素を含むものとして、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、i-プロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、i-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、4-メトキシブチル基、3-エトキシブチル基、6-メトキシヘキシル基等のアルコキシアルキル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基等のアルコキシ芳香族基、アセチル基、1-オキソプロピル基、1-オキソ-n-ブチル基、2-メチル-1-オキソプロピル基、2,2-ジメチル-1-オキソ-プロピル基、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、ベンゾイル基等のオキソ基含有炭化水素基、2-フリル基、2-テトラヒドロフリル基、2-メチルフリル基等の環状エーテル基など;及び、窒素原子を含むものとして、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジi-プロピルアミノメチル基、ビス(ジメチルアミノ)メチル基、ビス(ジi-プロピルアミノ)メチル基、(ジメチルアミノ)(フェニル)メチル基、アミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、1-(メチルイミノ)エチル基、1-(フェニルイミノ)エチル基、1-[(フェニルメチル)イミノ]エチル基、ジメチルアミノヘキシル基等のアミノ置換アルキル基、4-アミノフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基等のアミノ置換芳香族基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジi-ブチルアミノ基、ジt-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などを挙げることができる。
1A~R14Aは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数5~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のトリアルキルシリル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルコキシ基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基を表す。
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、
炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などを挙げることができる。
炭素数3~6のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
炭素数5~6のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などを挙げることができる。
炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
炭素数1~6のトリアルキルシリル基としては、3つの炭素数1~4のアルキル基で置換されているシリル基が挙げられ、例えば、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、i-プロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、i-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、4-メトキシブチル基、3-エトキシブチル基、t-ブトキシブチル基、t-ブトキシヘキシル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、メトキシビニル基、エトキシビニル基、n-プロポキシビニル基、i-プロポキシビニル基、n-ブトキシビニル基、i-ブトキシビニル基、t-ブトキシビニル基、メトキシプロペニル基、エトキシプロペニル基、4-メトキシブテニル基、3-エトキシブテニル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基としては、例えば、メトキシシクロペンチル基、エトキシシクロペンチル基、メトキシシクロヘキシル基、エトキシシクロヘキシル基、t-ブトキシシクロヘキシル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基としては、例えば、メトキシシクロペンテニル基、エトキシシクロペンテニル基、メトキシシクロヘキセニル基、エトキシシクロヘキセニル基、t-ブトキシシクロヘキセニル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、i-プロポキシメトキシ基、n-ブトキシメトキシ基、i-ブトキシメトキシ基、t-ブトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、4-メトキシブトキシ基、3-エトキシブトキシ基、t-ブトキシブトキシ基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、ビス(トリメチルシリル)メチル基、ビス(t-ブチルジメチルシリル)メチル基、トリメチルシリルエチル基、トリエチルシリルエチル基、2-トリメチルシリルプロピル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、トリメチルシリルビニル基、トリメチルシリルプロぺニル基、トリメチルシリルブテニル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基としては、例えば、トリメチルシリルシクロペンチル基、トリメチルシリルシクロヘキシル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基としては、例えば、トリメチルシリルシクロペンテニル基、トリメチルシリルシクロヘキセニル基などを挙げることができる。
分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体が得られやすい点から、前記R3AおよびR10Aが、炭素数1~3のアルキル基であってよい。中でも、前記R3AおよびR10Aが、炭素数1~3のアルキル基であり、前記R1A、R2A、R4A、R5A、R6A、R7A、R8A、R9A、R11A、R12A、R13A、R14Aが水素原子であってよい。
あるいは、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体が得られやすい点から、中でも、R1A~R14Aが水素原子であってよい。
前記式(1)で表されるメタロセン化合物の具体例としては、例えば、
ビスインデニルジルコニウムジクロリド
ビス(1-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-i-プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-t-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-(3-ブテニル)-インデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-シクロヘキシルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(4,7-ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(5,6-ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1,3-ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-メトキシインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-t-ブトキシブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド
ビス(1-トリメチルシリルエチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなどを挙げることができる。
これらの中でも、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれるエチレン系重合体が得られやすい点から、ビスインデニルジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、及び、ビス(1-プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、前記式(1)で表されるメタロセン化合物としては、従来公知の製法で適宜製造することができ、市販されているものを用いることもできる。
2.成分(B)
本発明で用いられる成分(B)は、下記一般式(2)で表されるメタロセン化合物である。
[式(2)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を表し、
1BおよびX2Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基、または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表し、
Yは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を表し、
31BおよびR32Bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、または少なくとも1つの置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を表し、
31BおよびR32Bは、Yを含んで4~7員環を形成していてもよく、R31BおよびR32Bの少なくとも一つが環状構造を有する場合、R31B、R32BおよびYにより構成される4~7員環は、R31BおよびR32Bが有する環状構造の構成原子の一部を共有する縮合環を形成してもよく、
12B~R19B、R22B~R29Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、または少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基を表し、R12B~R19BまでおよびR22B~R29Bまでのうち隣接する基同士がそれらに結合している原子を含んで結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
11BおよびR21Bは、下記一般式(3)で示される基を表す。
式(3)中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、
33BおよびR34Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つの炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~3のアルキル基、または少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基であり、R33B及びR34Bは互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。]
は、チタン原子(Ti)、ジルコニウム原子(Zr)又はハフニウム原子(Hf)であり、中でも、触媒の高活性化の点から、ジルコニウム原子が好ましい。
1BおよびX2Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基、または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表す。
1BおよびX2Bの具体例としては、前記式(1)のX1AおよびX2Aについて説明した具体例を、X1BおよびX2Bについても挙げることができる。
Yは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子であり、中でも、錯体合成の点から、ケイ素原子が好ましい。
31BおよびR32Bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、または少なくとも1つの置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を表す。
このうち、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基については、前記式(1)のR1A~R14Aについて説明した具体例を、R31BおよびR32Bについても挙げることができる。
少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、ブロモメチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-ブロモプロピル基、3-ブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4-クロロブチル基、3-フルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基などを挙げることができる。
炭素数6~18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などを挙げることができる。
少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基としては、例えば、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基などを挙げることができる。
少なくとも1つの置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基としては、例えば、ピロール基、ピリジン基等の含窒素複素環基、フラン基、ピラン基などの含酸素複素環基、チオフェン基などの含硫黄複素環基、及びこれらの複素環基に炭素数1~30のアルキル基又はアルコキシ基などの置換基が置換した基などを挙げることができる。
31BおよびR32Bは、Yを含んで4~7員環を形成していてもよく、R31BおよびR32Bの少なくとも一つが環状構造を有する場合、R31B、R32BおよびYにより構成される4~7員環は、R31BおよびR32Bが有する環状構造の構成原子の一部を共有する縮合環を形成してもよい。
環構造を形成する場合、4~7員環である、シラシクロブタン、シラシクロペンタン、2,5-ジメチルシラシクロペンタン、シラシクロヘキサン、シラフルオレンなどの構造を有する2価の基を挙げることができる。
12B~R19B、R22B~R29Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基を表し、R12B~R19BまでおよびR22B~R29Bまでのうち隣接する基同士がそれらに結合している原子を含んで結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
このうち、ハロゲン原子は、前記式(1)のX1AおよびX2Aについて説明した具体例をR12B~R19B、R22B~R29Bについても挙げることができる。
また、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基は、前記式(1)のR1A~R14Aについて説明した具体例を、R12B~R19B、R22B~R29Bについても挙げることができる。
また、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基は、前記R31BおよびR32Bについて説明した具体例を、R12B~R19B、R22B~R29Bについても挙げることができる。
11BおよびR21Bは、前記一般式(3)で示される基を表し、前記特定の置換基を有していてもよいフリル基又は置換基を有していてもよいチエニル基を表す。
Zは、酸素原子または硫黄原子であり、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体が得られやすい点から、酸素原子であることが好ましい。
33BおよびR34Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つの炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~3のアルキル基、または少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基であり、R33B及びR34Bは互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
ハロゲン原子の具体例としては、前記式(1)のX1AおよびX2Aについて説明した具体例をR33BおよびR34Bについても挙げることができる。
炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基の具体例としては、前記式(1)のR1A~R14Aについて説明した具体例を、R33BおよびR34Bについても挙げることができる。
少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基としては、前記R31BおよびR32Bについて説明した具体例を、R33BおよびR34Bについても挙げることができる。
また、少なくとも1つの炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~3のアルキル基としては、前記式(1)のR1A~R14Aについて説明した中の炭素数が相当する具体例を、R33BおよびR34Bについても挙げることができる。
分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体が得られやすい点から、R33Bは、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、又は少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基であり、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、又は少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基である。R34Bは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基であり、より好ましくは水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基である。
置換されていてもよいフリル基の具体例としては、2-フリル基、2-(5-メチルフリル)基、2-(5-エチルフリル)基、2-(5-n-プロピルフリル)基、2-(5-i-プロピルフリル)基、2-(5-t-ブチルフリル)基、2-(5-トリメチルシリルフリル)基、2-(5-トリエチルシリルフリル)基、2-(5-フェニルフリル)基、2-(5-トリルフリル)基、2-(5-フルオロフェニルフリル)基、2-(5-クロロフェニルフリル)基、2-(4,5-ジメチルフリル)基、2-(3,5-ジメチルフリル)基、2-ベンゾフリル基、3-フリル基、3-(5-メチルフリル)基、3-(5-エチルフリル)基、3-(5-n-プロピルフリル)基、3-(5-i-プロピルフリル)基、3-(5-t-ブチルフリル)基、3-(5-トリメチルシリルフリル)基、3-(5-トリエチルシリルフリル)基、3-(5-フェニルフリル)基、3-(5-トリルフリル)基、3-(5-フルオロフェニルフリル)基、3-(5-クロロフェニルフリル)基、3-(4,5-ジメチルフリル)基、3-ベンゾフリル基などが挙げられる。
置換されていてもよいチエニル基の具体例としては、2-チエニル基、2-(5-メチルチエニル)基、2-(5-エチルチエニル)基、2-(5-n-プロピルチエニル)基、2-(5-i-プロピルチエニル)基、2-(5-t-ブチルチエニル)基、2-(5-トリメチルシリルチエニル)基、2-(5-トリエチルシリルチエニル)基、2-(5-フェニルチエニル)基、2-(5-トリルチエニル)基、2-(5-フルオロフェニルチエニル)基、2-(5-クロロフェニルチエニル)基、2-(4,5-ジメチルチエニル)基、2-(3,5-ジメチルチエニル)基、2-ベンゾチエニル基、3-チエニル基、3-(5-メチルチエニル)基、3-(5-エチルチエニル)基、3-(5-n-プロピルチエニル)基、3-(5-i-プロピルチエニル)基、3-(5-t-ブチルチエニル)基、3-(5-トリメチルシリルチエニル)基、3-(5-トリエチルシリルチエニル)基、3-(5-フェニルチエニル)基、3-(5-トリルチエニル)基、3-(5-フルオロフェニルチエニル)基、3-(5-クロロフェニルチエニル)基、3-(4,5-ジメチルチエニル)基、3-ベンゾチエニル基、などを挙げることができる。
上記式(2)で表されるメタロセン化合物の具体例としては、例えば、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-チエニル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジフェニルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルゲルミレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルゲルミレンビス{2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-トリメチルシリル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロライドジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-ベンゾフリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フルフリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-トリフルオロメチルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-トリメチルシリルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、などを挙げることができる。
これらの中でも、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体が得られやすい点から、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-トリメチルシリル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
及び[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
式(2)で表されるメタロセン化合物を合成する際には、例えば、特開2012-149160号公報の合成例1を参考にすることができる。
3.成分(C)
本発明で用いられる成分(C)は、上述した成分(A)及び成分(B)をカチオン性化合物にする化合物であり、すなわち助触媒である。本発明のオレフィン重合用触媒に含まれる成分(A)及び成分(B)は、成分(C)と反応してカチオン性化合物となったものであってもよい。
成分(C)としては、例えば、有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物、後述する層状珪酸塩等を用いることができる。これらのうち、微粒子担体への固定化が容易であるという点から、有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく用いられる。
(1)有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中にAl-O-Al結合を有する化合物であり、Al-O-Al結合の結合数は通常1~100、好ましくは1~50個の範囲にある。
典型的には、下記式(4)又は式(5)で表されるような、-(O-Al)-単位の連鎖構造を含む有機アルミニウムオキシ化合物が用いられる。
Figure 2023152883000007
Figure 2023152883000008
[上記の各式中、R41は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~18、さらに好ましくは炭素数1~12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基であり、R41の少なくとも一部は炭化水素基である。pは0~40、好ましくは2~30の整数を示す。]
このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる。
有機アルミニウム化合物と水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
原料の有機アルミニウム化合物としては、下記式(6)で表される化合物を使用できるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
41 AlX 3-t 式(6)
[式(6)中、R41は、上記式(4)及び式(5)と同じであり、Xは、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。]
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1~1.2/1、特に、0.5/1~1/1であることが好ましく、反応温度は、通常-70℃~100℃、好ましくは-20℃~20℃の範囲である。反応時間は、通常5分~24時間、好ましくは10分~5時間の範囲で選ばれる。
反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することができる。
原料の有機アルミニウム化合物としてトリメチルアルミニウムを用いた有機アルミニウムオキシ化合物をメチルアルミノキサン(MAO)と呼ぶ。メチルアルミノキサン(MAO)は、工業的入手や重合体粒子性状制御の点から、成分(C)として特に好ましく使われる。MAOは未反応のトリメチルアルミニウムを含んだ形で成分(C)として使うこともできる。この未反応のトリメチルアルミニウムは、トリメチルアルミニウムとメチルアルミノキサンの合計のアルミニウム原子に対して、1mol%~30mol%で存在するものであってよく、この範囲であればMAOが溶液中に析出しにくく、取り扱い時の危険性が低下して扱いやすい。好ましくは10mol%~15mol%のトリメチルアルミニウムを含むMAO溶液がよい。また、MAOの濃度はこの範囲にあると取り扱い時の危険性が低下し、保存安定性も良好で、取り扱いの点からも適している。MAOの濃度は好ましくは10質量%~20質量%のものが用いられる。さらにMAO溶液は常温で析出しやすいということもあり、-10℃を下回る低温保管が好ましい。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液または分散させた溶液としたものを用いても良い。
(2)ボラン化合物
ボラン化合物としては、例えば、次の化合物が挙げられる:トリフェニルボラン、トリ(o-トリル)ボラン、トリ(p-トリル)ボラン、トリ(m-トリル)ボラン、トリ(o-フルオロフェニル)ボラン、トリス(p-フルオロフェニル)ボラン、トリス(m-フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボラン。
これらの中でも、次の化合物が好ましい:トリス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボラン。
これらの中でも、次の化合物がさらに好ましい:トリス(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン。
(3)ボレート化合物
ボレート化合物の第1の例としては、例えば次の式(7)で表される化合物が挙げられる。
[L-H][BR42437’ 式(7)
式(7)中、Lは、中性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、[L-H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスホニウム等のブレンステッド酸である。
アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n-ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n-プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
また、アニリニウムとしては、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムなどのN,N-ジアルキルアニリニウムが例示できる。
さらに、ホスホニウムとしては、トリフェニルホスホニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムなどのトリアリールホスホニウム、トリアルキルホスホニウムが挙げられる。
また、式(7)中、R42およびR43は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~16の芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。
さらに、X及びX7’は、それぞれ独立して、ハイドライド基、ハライド基、炭素数1~20の炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された炭素数1~20の炭化水素基である。
上記一般式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、次の化合物が挙げられる:トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレート。
これらの中でも、次の化合物が好ましい:トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート。
ボレート化合物の第2の例としては、例えば次の式(8)で表される化合物が挙げられる。
[L[BR42437’7’ 式(8)
式(8)中、Lは、メチルカチオン、エチルカチオン、n-プロピルカチオン、i-プロピルカチオン、n-ブチルカチオン、i-ブチルカチオン、t-ブチルカチオン、n-ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。また、R42、R43、X及びX7’は、前記式(7)における定義と同じである。
上記式(8)で表される化合物の具体例としては、例えば、次の化合物が挙げられる:トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o-トリル)ボレート、トリチルテトラ(p-トリル)ボレート、トリチルテトラ(m-トリル)ボレート、トリチルテトラ(o-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o-CH-Ph)、NaB(p-CH-Ph)、NaB(m-CH-Ph)、NaB(o-F-Ph)、NaB(p-F-Ph)、NaB(m-F-Ph)、NaB(3,5-F-Ph)、NaB(C、NaB(2,6-(CF-Ph)、NaB(3,5-(CF-Ph)、NaB(C10、HBPh・(EtO)、HB(3,5-F-Ph)・(EtO)、HB(C・(EtO)、HB(2,6-(CF-Ph)・(EtO)、HB(3,5-(CF-Ph)・(EtO)、HB(C10・(EtO)
なお、本明細書においてEtはエチル、Phはフェニルを表す。
これらの中でも、次の化合物が好ましい:トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6-(CF-Ph)、NaB(3,5-(CF-Ph)、NaB(C10、HB(C・(EtO)、HB(2,6-(CF-Ph)・(EtO)、HB(3,5-(CF-Ph)・(EtO)、HB(C10・(EtO)
これらの中でも、次の化合物がさらに好ましい:トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル) ボレート、トロピニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6-(CF-Ph)、HB(C・(EtO)、HB(2,6-(CF-Ph)・(EtO)、HB(3,5-(CF-Ph)・(EtO)、HB(C10・(EtO)
なお、成分(C)として、前記の有機アルミニウムオキシ化合物と、上記ボラン化合物やボレート化合物との混合物を用いることもできる。さらに、上記ボラン化合物やボレート化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
4.成分(D)
成分(D)、すなわち微粒子担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体またはこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、またはこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
また、金属酸化物としては、周期表1~14族の元素の単独酸化物または複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然または合成の各種単独酸化物または複合酸化物を例示することができる。ここで、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造および成分比率は特に限定されるものではない。また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、金属酸化物、シリカ、アルミナを用いることが好ましく、シリカを用いることがさらに好ましい。シリカとしては、平均粒径が10μm~150μm程度の小粒径シリカを用いることが好ましい。ここで、平均粒径は一般的に用いられるレーザー回折を用いた測定方法で、体積基準により表されたデータより、メジアン径として示される値である。
これら無機物担体は、通常、200℃~800℃、好ましくは400℃~600℃で空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8mmol/g~1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。これら無機物担体の性状としては、特に制限はないが、通常、平均粒径は5μm~200μm、好ましくは10μm~150μm、平均細孔径は20Å~1000Å、好ましくは50Å~500Å、比表面積は150m/g~1000m/g、好ましくは200m/g~700m/g、細孔容積は0.3m/g~2.5cm/g、好ましくは0.5m/g~2.0cm/g、見掛比重は0.20g/cm~0.50g/cm、好ましくは0.25g/cm~0.45g/cmを有する無機物担体を用いるのが好ましい。
上記した無機物担体は、もちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、トリn-デシルアルミニウム、ジi-ブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物や、Al-O-Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
5.オレフィン重合用触媒の製造方法
本発明のオレフィン重合用触媒は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を混合乃至接触させて製造することができる。
本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法としては、特に限定はされないが、例えば以下の方法を任意に採用可能である。
方法(1):
成分(A)及び成分(B)を、最初に成分(C)と接触させた後、成分(D)と接触させる。より詳しくは、成分(A)と成分(B)を一つの成分(C)と接触させた後、または、成分(A)及び成分(B)それぞれを、別個に分けた成分(C)と接触させた後、得られた接触処理物を成分(D)とを接触させる。
成分(A)と成分(B)を一つの成分(C)と接触させる場合、成分(A)と成分(B)の混合物を成分(C)と接触させてもよいし、成分(A)と成分(B)を成分(C)に対し同時に又は順次接触させてもよい。
成分(A)及び成分(B)を、それぞれ別個に分けた成分(C)と接触させる場合、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物を一つの成分(D)と接触させてもよいし、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物それぞれを、別個に分けた成分(C)と接触させた後、得られた2つの接触処理物を混合してもよい。
方法(2):
成分(A)及び成分(B)を、最初に成分(D)と接触させた後、成分(C)と接触させる。より詳しくは、成分(A)と成分(B)を一つの成分(D)と接触させた後、または、成分(A)及び成分(B)それぞれを、別個に分けた成分(D)と接触させた後、得られた接触処理物を成分(C)とを接触させる。
成分(A)と成分(B)を一つの成分(D)と接触させる場合、成分(A)と成分(B)の混合物を成分(D)と接触させてもよいし、成分(A)と成分(B)を成分(D)に対し同時に又は順次接触させてもよい。
成分(A)及び成分(B)を、それぞれ別個に分けた成分(D)と接触させる場合、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物を一つの成分(C)と接触させてもよいし、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物それぞれを、別個に分けた成分(C)と接触させた後、得られた2つの接触処理物を混合してもよい。
方法(3):
成分(C)と成分(D)を最初に接触させて接触処理物を得た後、成分(A)及び成分(B)を接触処理物と接触させる。より詳しくは、成分(C)と成分(D)を接触させて接触処理物を得た後、成分(A)と成分(B)を一つの接触処理物と接触させるか、または、成分(A)及び成分(B)それぞれを、別個に分けた接触処理物と接触させ、得られた2つの接触処理物を混合する。
成分(A)と成分(B)を一つの接触処理物と接触させる場合、成分(A)と成分(B)の混合物を接触処理物と接触させてもよいし、成分(A)と成分(B)を接触処理物に対し同時に又は順次接触させてもよい。
これらの接触方法の中で、成分(A)及び成分(B)を最初に成分(C)と接触させる(1)の方法と、成分(A)及び成分(B)を成分(C)と成分(D)の接触処理物と接触させる(3)の方法が好ましく、さらに(1)の方法が最も好ましい。さらに、成分(A)と成分(B)の混合物を、成分(C)、成分(D)または成分(C)と成分(D)の接触処理物と接触させることが好ましい。
いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6~12)、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5~12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
この接触は、通常-100℃~200℃、好ましくは-50℃~100℃、さらに好ましくは0℃~50℃の温度にて、5分~50時間、好ましくは30分~24時間、さらに好ましくは30分~12時間で行うことが望ましい。
接触方法の具体例としては、成分(A)と成分(B)の混合物、または成分(A)と成分(B)を上記したような不活性溶剤に溶解または分散させた液と、成分(C)を不活性溶剤に溶解または分散させた液とを混合し、得られた混合液を、成分(D)のスラリーと混合する方法が挙げられる。
また、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の接触に際しては、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族または脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
本発明において、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
成分(A)と成分(B)のモル比(成分(A):成分(B))は、得られる重合体の分子量分布の形を決めるために任意に調整され、通常1:500~500:1、好ましくは1:100~100:1、さらに好ましくは、1:10~10:1の範囲が望ましい。
成分(C)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウム原子のモル比(Al/M)は、通常、1~100,000、好ましくは5~1000、さらに好ましくは50~200の範囲が望ましい。また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対する、ホウ素原子のモル比(B/M)は、通常、0.01~100、好ましくは0.1~50、さらに好ましくは0.2~10の範囲で選択することが望ましい。
さらに、成分(C)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
成分(D)の使用量は、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属の合計量が成分(D)1g当たり、0.0001mmol~5mmolが挙げられ、好ましくは0.001mmol~0.5mmol、さらに好ましくは0.01mmol~0.1mmolである。
成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を前記接触方法(1)~(3)のいずれかで相互に接触させることでオレフィン重合用触媒が得られるが、接触工程に続き、未反応物や不要な生成物を除去するための洗浄工程を実施した後に、溶媒を除去してもよい。
洗浄工程においては、オレフィン重合用触媒を沈降させ、その後に不要な上澄み液を抜き出してから新たな溶媒を追加し攪拌均一化させる方法、前記の攪拌均一化を繰り返す方法、フィルター装置を使って洗浄する方法などが用いられる。洗浄工程で使用される溶媒は、成分(A)~(D)の接触で用いることができる溶媒が用いられる。また、洗浄工程の途中で溶媒を変更することもできる。
溶媒を除去する工程としては、溶媒の沸点に応じた圧力において溶媒を蒸発させる留去方法や、乾燥した不活性ガスの気流によって溶媒を気化させる方法などを用いることができる。溶媒の除去は、常圧下または減圧下、0℃~200℃、好ましくは20℃~150℃で1分~50時間、好ましくは10分~10時間で行うことが望ましい。
洗浄工程後に得られたオレフィン重合用触媒はスラリー状態で取り扱いまたは保管することができ、溶媒を除去する工程で得られたオレフィン重合用触媒は、粉末状固体触媒として取り扱いまたは保管することができる。
なお、本発明のオレフィン重合用触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
方法(4):
成分(A)及び成分(B)と微粒子担体である成分(D)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で助触媒である成分(C)と接触させる。
方法(5):
助触媒である成分(C)と微粒子担体である成分(D)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で触媒活性成分である成分(A)及び成分(B)と接触させる。
上記方法(4)及び上記方法(5)の場合も、成分比、接触条件および溶媒除去条件は、前記と同様の条件を採用できる。
また、助触媒である成分(C)と微粒子担体である成分(D)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いることもできる。層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては、次のような化学処理が挙げられる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
具体的には、(イ)塩酸、硫酸等を用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、N H等を用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期表第2族から第14族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子または無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリン等の有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
前記層状珪酸塩は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって粒子性状を制御することができる。その方法は、合目的的な任意のものであり得る。特に、造粒法について示せば、例えば、噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法および液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法および圧縮造粒法である。
上記した層状珪酸塩は、もちろんそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、トリn-デシルアルミニウム、ジi-ブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl-O-Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
触媒活性成分である成分(A)及び成分(B)を、層状珪酸塩に担持するには、成分(A)及び成分(B)と層状珪酸塩を相互に接触させる、あるいは成分(A)及び成分(B)、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物、及び、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。
各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
方法(6):
成分(A)及び成分(B)と有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物を接触させた後、層状珪酸塩担体と接触させる。
方法(7):
成分(A)及び成分(B)と層状珪酸塩担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物と接触させる。
方法(8):
有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物と層状珪酸塩担体を接触させた後、成分(A)及び成分(B)と接触させる。
これらの接触方法の中で方法(6)と方法(8)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数6~12)、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5~12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
成分(A)及び成分(B)を層状珪酸塩に担持する場合の担持、溶媒洗浄および溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件を採用できる。
触媒活性成分である成分(A)及び成分(B)と、有機アルミニウム化合物または有機アルミニウムオキシ化合物、層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
成分(A)及び成分(B)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量が、0.0001mmol~5mmol、好ましくは0.001mmol~0.5mmol、さらに好ましくは0.01mmol~0.1mmolである。
また、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対する、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物に含まれるアルミニウム原子のモル比(Al/M)は、0.01~100、好ましくは0.1~50、さらに好ましくは0.2~10の範囲であることが望ましい。
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、重合槽内で、または重合槽外で、オレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチルブテン-1、スチレン、ジビニルベンゼン等が例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくはエチレン、プロピレンである。さらに好ましくはエチレンである。
予備重合を行う際のオレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合時間は、特に限定されないが、5分~24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、予備重合ポリマー量がポリオレフィン重合用触媒の1重量部に対し、好ましくは0.01重量部~100重量部、さらに好ましくは0.1重量部~50重量部である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
予備重合温度は、特に制限は無いが、0℃~100℃が好ましく、より好ましくは10℃~70℃、特に好ましくは20℃~60℃、さらに好ましくは30℃~50℃である。
この範囲とすることで、反応速度の低下を起こさず、活性化反応は促進されると考えられる。また、予備重合ポリマーの溶解や予備重合速度が速すぎて生じる粒子形状の悪化や、副反応のための活性点の失活も抑制できると考えられる。
予備重合は有機溶媒等の液体中で実施することも出来、かつこれが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度には特に制限は無いが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方が成分(A)及び成分(B)の活性化が進行し、高活性触媒となる。
さらに、オレフィン重合用触媒とオレフィンの接触の際、もしくは接触の後の接触混合物中に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いても良いし2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし静置させてもよい。
本発明のオレフィン重合用触媒は、このように予備重合を行った後のものであってもよいし、予備重合を行う前のものであってもよい。
II.エチレン系重合体の製造方法
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、上述した本発明のオレフィン重合用触媒の存在下、エチレン、又はエチレン及び炭素数3~10のオレフィンを重合することを特徴とする。
本発明のエチレン系重合体の製造方法においては、上述した本発明のオレフィン重合用触媒を用いることにより、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、さらに流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体を得ることができる。
本発明のエチレン系重合体の製造方法において、使用するモノマーは、エチレンのみであってもよいし、エチレンと炭素数3~10のオレフィンとの組み合わせであってもよい。
炭素数3~10のオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7-メチル-1,7-オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられ、好ましくは炭素数3~8のオレフィン、より好ましくは炭素数4~6のα-オレフィンである。
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー重合法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク重合方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。これらの中では、重合体粒子性状の制御の点から、スラリー重合法が好ましい。
また、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合行う方法も適用される。
スラリー重合法の場合は、重合溶媒として、イソブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。重合温度は0℃~150℃であり、また分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。重合圧力は0MPa~200MPa、好ましくは0MPa~6MPaが適当である。
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
一般的にエチレン系重合体を重合する際には、重合反応器へのポリマーの静電気付着を抑制するため、例えば、Innospec社製(代理店丸和物産)の製品名Stadisや製品名STATSAFE等の静電気防止剤を使用することも可能である。StadisやSTATSAFE等の静電気防止剤は、不活性炭化水素媒体に希釈したものをポンプ等により重合反応器に添加することもできる。
添加方法には、オレフィン重合用触媒に事前に添加する方法や、重合反応器に添加する方法などがあるが、添加量としては、スラリー重合法の場合には、溶媒に対して0.1ppm以上500ppm以下が好ましく、1ppm以上50ppm以下がより好ましい。また、気相法の場合には、単位時間当たりのエチレン系重合体の生産量に対して、1ppm以上500ppm以下が好ましく、10ppm以上100ppm以下がより好ましい。
生成する重合体の分子量は、重合温度を変えることや、重合反応器内に水素を添加することなどで調節することができるが、水素の添加で調節する方法が好ましく用いられる。
水素が遷移金属とポリマー鎖との結合に挿入されて連鎖移動反応が起き、ポリマー鎖は遷移金属から脱離することで、生長反応が停止し、それ以上分子量が高くならなくなる。したがって、水素添加量を多くして、反応器内の水素濃度を高くすると分子量が小さくなり、添加量を少なくして水素濃度を低くすると分子量が高くなる。
この水素による連鎖移動反応の起きやすさは、オレフィン重合用触媒が含む遷移金属化合物の種類及び含有比率等により変化する。
分子量分布の形、すなわち低分子量のポリマー成分が多いのか、高分子量のポリマーが多いのかを制御するには、成分(A)及び成分(B)の量を変えることで制御できる。
また、高分子量側に取り込まれる短鎖分岐量を制御するには、重合反応器に供給するコモノマー量を増やす以外にも、錯体の置換基を変えて、配位子間の平面角を変えたり、立体障害を変えることで制御できる。さらに成分(B)由来の重合活性種の共重合性が重合温度で変わる場合、重合温度を変えて成分(B)由来の高分子量成分に含まれるコモノマー含量を調節することもできる。
重合においては、1つの反応器を使う以外に複数の反応器を用いる多段階の重合方法も用いられる。これは反応条件の同じまたは異なる反応器を接続し、1つ目の反応器で製造したポリマーを溶媒とともに、または溶媒を含まず、連続または間欠的に2つ目の反応器に供給し、2つ目の反応条件下においてポリマーの製造を継続するものである。反応器の数に制約はないが、好ましくは2または3段階の反応器が用いられる。1つ目の反応条件と2つ目以降の反応条件との間で、重合温度、重合圧力、モノマー濃度、コモノマー濃度、水素濃度など多様な条件を変更することで、それぞれの反応器で製造されるポリマーの混合物が得られる。水素濃度を変えることで分子量分布を広げることが可能となり、水素濃度に加え、コモノマー濃度を変えることを併用すれば、分子量ごとにコモノマー含量の異なるポリマーを製造することが可能になる。さらにモノマー濃度や重合温度を変えて反応器ごとのポリマー生成量を変えることで、反応器ごとに生成されるポリマーの量比を制御することも可能である。
多段重合においては、2段目以降に1段目とは異なるまたは同じオレフィン重合用触媒を追加してもよく、反応器を接続する間に未反応のガスを除去する装置を付与してもよい。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えてもよい。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらの中では、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
III.得られるエチレン系重合体の物性
本発明のオレフィン重合用触媒の存在下で、エチレン、又はエチレン及び炭素数3~10のα-オレフィンを重合させることにより得られるエチレン系重合体は、分子量分布が広くなる。また、共重合体の場合には、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれる。さらに過剰な長鎖分岐の生成が抑制され流動性見合いの重量平均分子量が高くなるために、このようなエチレン系重合体は、流動性が高く成形性に優れているだけでなく、強度及び耐久性が高いため、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れやすい。
本発明のオレフィン重合用触媒を用いて得られるエチレン系重合体は、プラスチック成形材料として好適に用いられ、特に、中空容器用プラスチック成形材料として好適に用いられる。
なお、本発明のオレフィン重合用触媒を用いて製造されるエチレン系重合体は、別の重合体と混合して使用してもよい。また当該エチレン系重合体は、重合体以外にも各種添加剤を混合したのち、溶融混錬されてから使うこともできる。
本発明においては、以下の物性を有し、中空容器に適したエチレン系共重合体が得られる。
(1)HLMFR(190℃、21.6kg荷重)
本発明において得られるエチレン系重合体のハイロードメルトフローレート、すなわち、HLMFR(190℃、21.6kg荷重)は、好ましくは0.01g/10分~1000g/10分であり、より好ましくは0.1g/10分~500g/10分であり、更に好ましくは1.0g/10分~300g/10分、特に好ましくは2.0g/10分~200g/10分である。
HLMFRは上記範囲にあることで,成形時における押出機モーター負荷の軽減やせん断による樹脂発熱量の増大抑制しやすいためシャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象の発生を抑制でき、成形品の外観を良好に保てる。また、良好な成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性となる。
HLMFRは、主にエチレン系重合体の重合時の水素量及び重合温度により調整することができる。加えて、オレフィン重合用触媒を製造する際の成分(A)と成分(B)の比率によっても変化させることができると考える。
(2)密度
本発明において得られるエチレン系重合体の密度は、好ましくは0.850g/cm~0.980g/cmであり、より好ましくは0.935g/cm~0.970g/cmであり、更に好ましくは0.945g/cm~0.965g/cmである。
密度は上記範囲にあると、耐環境応力亀裂性能および剛性が良好となる。
密度は、従来から良く知られている主にオレフィン重合用触媒を用いて重合するときのα-オレフィンの量により制御することができる。加えて、オレフィン重合用触媒を製造する際の成分(A)と成分(B)の比率によっても変化させることができると考える。
(3)分子量分布(Mw/Mn)
本発明において得られるエチレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは6.0~60であり、より好ましくは8.0~50、更に好ましくは10~40、特に好ましくは13~30である。
分子量分布は上記範囲にあると、シャークスキンなどの流動不安定現象が発生しにくくさらに溶融張力が良好で,相溶性や耐衝撃性も良好となる。
本発明において、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から計算される。
分子量分布は、主に成分(A)および(B)の比率、多段重合においては重合条件が異なる各段で反応させることにより調整することができる。
(4)短鎖分岐量
本発明において得られるエチレン系重合体の短鎖分岐数の分子量依存性は、GPC-IR測定によって得られ、分子量ごとのコモノマー由来の短鎖分岐数の推移を示す。本発明で得られるエチレン系重合体は分子量分布において複数のピークを持つマルチモーダルであり、GPC-IR測定で低分子量と高分子量のピークにおける短鎖分岐(SCB)の数をそれぞれ、SCB(L)とSCB(H)とすると、SCB(H)/SCB(L)の値は、その値が大きければ大きいほど高分子量側に短鎖分岐が多いことを示す。
本発明において得られるエチレン系重合体の短鎖分岐数の比、SCB(H)/SCB(L)は、好ましくは4以上であり、より好ましくは4.5以上、さらに好ましくは5以上である。
なお、GPC-IRの測定において、低分子量側の短鎖分岐数が少ないために検出が難しい場合、以下(4-2)の方法で短鎖分岐比SCB(H)/SCB(L)を求めることもできる。
(4-2)重合体のコモノマー含量の測定(NMR分析)
成分(A)を含むが成分(B)を含まない触媒、または成分(B)を含むが成分(A)を含まない触媒を用いて、少なくとも同じ重合温度、同じコモノマー/エチレン比の条件下で製造したエチレン系重合体の13C-NMR測定結果からエチレン系重合体のコモノマー含量(ブチル分岐数として求める)をそれぞれ求める。
短鎖分岐比SCB(H)/SCB(L)は、成分(B)のみの触媒で製造した時のコモノマー含量/成分(A)のみの触媒で製造した時のコモノマー含量で計算される。
(5)溶融張力(MT)
本発明において得られるエチレン系重合体の溶融張力(MT)は、測定温度190℃において、好ましくは50mN以上であり、より好ましくは60mN以上であり、更に好ましくは70mN以上である。
溶融張力は、MFRやHLMFRで制御することができる。また、分子量分布によっても溶融張力を調節できる。MFRやHLMFRを小さくすると溶融張力は大きくなり、分子量分布を広げても溶融張力は大きくなる。さらに、溶融張力は長鎖分岐の影響も受け、長鎖分岐の量が多いほど溶融張力は大きい。溶融張力は上記範囲にあると、耐ドローダウンが良好で成形が容易になる。
(6)引張衝撃強度(TIS)
本発明において得られるエチレン系重合体の引張衝撃強度(TIS)は、好ましくは100kJ/m以上であり、より好ましくは150kJ/m以上であり、更に好ましくは200kJ/m以上である。
本発明において、引張衝撃強度(TIS)は、ASTM D1822 Type-Sの形状の試験片を用いて、JIS K 7160-1996のB法に準拠して測定される。
引張衝撃強度(TIS)は重量平均分子量や分子量分布、および密度により制御できる。分子量を大きくすることや分子量分布を狭くすること、および密度を下げることが衝撃強度を高くすることにつながるが、反面成形性とトレードオフの関係にある。
(7)耐環境応力亀裂性
本発明において得られるエチレン系重合体は、ISO 16770に準拠して行う全周囲ノッチ式クリープ試験(FNCT)の破断時間が、好ましくは20時間以上であり、より好ましくは180時間以上であり、更に好ましくは600時間以上である。
耐環境応力亀裂性(FNCT)は重量平均分子量や分子量分布、および密度により制御できる。分子量を大きくすること、および密度を下げることが耐環境応力亀裂性(FNCT)を高くすることにつながるが、反面成形性とトレードオフの関係にある。従って、成形性と両立させてFNCTの破断時間を長くするためには、高粘度化につながる高分子量の長鎖分岐が過剰数生成されることを抑制しながら、分子量分布が適度に広がった高分子量の重合体となるように制御することが挙げられる。
以下の実施例および比較例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例においては、下記の評価方法を実施し、触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で実施し、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4A(商品名、ユニオン昭和株式会社製)で脱水精製したものを用いた。
1.評価方法
(1)MFR(190℃、2.16kg荷重)
MFRは、JIS K6760に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(2)HLMFR(190℃、21.6kg荷重)
HLMFRは、JIS K6922-2:1997に準拠し、温度190℃、荷重21.6kgの条件で測定した。
(3)密度
密度は、JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定した。
(4)かさ密度
JIS K6730に記載の方法に準拠し、得られたエチレン系重合体を、漏斗を使用して自由落下させ、容積がわかっている容器に回収し、次いで容器中のポリマー重量を測定し、1mlあたりのエチレン系重合体の重量(g)をかさ密度とした。
(5)分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を以下に示す条件で実施し、保持容量から分子量へ換算することにより数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を計算した。
[GPC装置、測定条件]
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:Polymer Char社製IR検出器(IR-4)
カラム:昭和電工社製AT806MS(3本)
移動相溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.3ml
[試料の調製]
試料を、140℃で約1時間を要してODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)中に溶解させ、濃度1mg/mLの試料溶液を調製した。
[保持容量から分子量への換算]
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々の標準ポリスチレンが0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10-4、α=0.7
PE:K=3.92×10-4、α=0.733
PP:K=1.03×10-4、α=0.78
(6)重合体のコモノマー含量の分子量依存性(GPC-IR分析)
成分(A)及び成分(B)を含む触媒を用いて製造したエチレン系重合体についてGPC-IR測定を実施し、分子量の推移とコモノマー由来の短鎖分岐数の相関関係を観察した。GPC-IRは以下の装置と条件は次の通りである。
[装置]
装置:Ploymer Char社製GPC-IR 検出器:IR-6
カラム:昭和電工社製HT-806M(2本)
移動相溶媒:o-ジクロロベンゼン(酸化防止剤としてトリメチルフェノール3.6g/18L添加)
測定温度:145℃ 流速:1.0ml/分 注入量:20μL
[試料の調製]
試料はバイアル瓶に約1mg/ml濃度で溶解して測定に用いた。
検量線は、標準ポリスチレンにより作成し、Qファクターを用いてポリエチレンに換算した。QファクターはPloymer Char社のソフトにデフォルトで入っていた値で-0.3649を使った。使用した標準ポリスチレンはShowdex Standard SM-105(商品名、昭和電工社製)のサンプルセット、およびn-エイコサン、n-テトラコンタンを用いた。なおn-エイコサン、n-テトラコンタンの分子量はQファクターを用いてポリスチレンに換算した。
分岐数はあらかじめNMR測定により炭素数1000個あたりのメチル(CH)基数が既知のサンプル数点を測定しておき、装置の赤外線検出器のメチル由来の信号強度をメチレン(CH)由来の信号強度で割った値とNMRから求めた炭素数1000個あたりのメチル基数から、IRによるメチル基数測定の検量線を作成した。次に未知試料を測定し、各分子量成分のメチル由来とメチレン由来の信号強度比を得た。この信号強度比と前記検量線から各分子量成分のメチル基数(CH/炭素数1000個(i))を求めた。
次に、前記メチル基数から分子鎖の両末端を引くことで、各分子量成分の分岐数(SCB(i))を求めた。
以下の式の(i)はGPCにより得られる各分子量成分の意味である。
M(i)は当該分子量を意味する。
SCB(i)=CH/炭素数1000個(i)-Chain ends(i)
Chain ends(i)=14000×(2/M(i))
(7)エチレン系重合体のコモノマー含量(炭素数1000個当たりのブチル分岐数)の測定
エチレン系重合体のコモノマー含量(炭素数1000個当たりのブチル分岐数)は、13C-核磁気共鳴法(13C-NMR)で測定されたスペクトルより算出した。
[試料の調製]
エチレン系重合体を80℃で2時間の真空乾燥した後、190℃でプレスし、プレスフィルムを作成した。そのプレスフィルム約200mgとオルトジクロロベンゼン(ODCB)系混合溶媒をNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解し、試料溶液を調製した。この試料溶液を用い、13C-NMRおよびH-NMRを実施し、測定結果からエチレン系重合体のコモノマー含量(ブチル分岐数として求めた)と末端ビニル基含量を特定した。
[装置]
装置:ブルカー・ジャパン社製 AVANCE400
プローブ:10mmφクライオプローブ(Type:CP2.1 DUL 400S1 C-H-D-10 Z XT)
測定温度:120℃
13C-NMR条件]
1H完全デカップル、45°パルス、取り込み時間5秒、待ち時間22.5秒、積
算768回とした。
[ブチル分岐数]
上記によって得られる23.3ppmのブチル分岐のピーク面積を30ppmの-CH2-主鎖の面積で割った値から、炭素数1000個当たりのブチル分岐数(炭素数1000個当たりのブチル分岐数)を求めた。
H-NMR条件]
溶媒事前飽和、4.5°パルス、取り込み時間1.8秒、待ち時間0.2秒、積算2048~1024回によって得られる4.8~6ppmの末端H2C=C(H)-R由来のピーク面積と1.3ppmの-CH-主鎖由来のピーク面積から、炭素数1000個当たりの末端ビニル数(炭素数1000個当たりの末端ビニル数)を求めた。
2.メタロセン錯体の準備
(1)成分(A)
ビスインデニルジルコニウムジクロリド(メタロセンA-1)は、富士フィルム和光純薬(株)より入手した。
[合成例1]
ビス(1-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(以下メタロセンA-2)は、非特許文献 Journal of Organometallic Chemistry 616 (2000) p.112-127における化合物2bの合成法に従って製造した。製造の結果、前記文献のTable1にあるIsomer1とIsomer2の量比は45:55モル比であった。
(2)成分(B)
[合成例2]
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンB-1)の合成:
特開2012-149160号公報の合成例1に記載された手順に従って、配位子を合成し、四塩化ハフニウム(13mmol)の代わりに四塩化ジルコニウム(13mmol)を用いて錯化した以外は同様の操作にて錯体を合成し、メタロセンB-1を得た。
[合成例3]
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニルインデニル}]ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンB-2)の合成:
特開2002-194016号公報の実施例5に記載された手順に従って錯体を合成し、メタロセンB-2を得た。
(3)その他のメタロセン化合物
[合成例4]
[1,1’-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル}]ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンC-1)の合成:
メタロセンC-1は、Organometallics、1994、vol.13、pp.954-963に記載の手順に従って合成した。
[合成例5]
{ジフェニルメチレン(3-メチル-1-シクロペンタジエニル)(2,7-ジt-ブチル-9-フルオレニル)}ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンC-2)の合成: メタロセンC-2はUS2015/0299352A1のManufacturing Example-2に記載の手順に従って合成した。
また、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(以下メタロセンC-3)は、富士フィルム和光純薬(株)より入手した。
3.触媒調製及びエチレン系重合体の製造
[実施例1]
(1)固体触媒の調製
グレース社のsylopol2212の未焼成品を400℃で7時間焼成したシリカゲル3.8gに、トルエン38mlを添加して40℃でスラリー化し、成分(D)のトルエンスラリーをあらかじめ調製した。
上記工程とは別に、成分(A)としてメタロセンA-1を22mg(56μmol)と成分(B)としてメタロセンB-1を32mg(38μmol)計量した容器に、トルエンを25ml、成分(C)としてメチルアルミノキサントルエン溶液(アルベマール社より購入;MAO濃度20wt%品)を10ml(アルミニウムとして30mmol)添加して室温で1時間攪拌した。メタロセンA-1とメタロセンB-1との合計量のシリカゲル1g当たりの量は、25μmol/gである。
この溶液を、成分(D)であるシリカゲルの前記トルエンスラリーに添加した。その後、40℃で1時間攪拌後、減圧にて溶媒を留去し、ピンク色のさらさらとした固体触媒(MIX-1)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
攪拌および温度制御装置を有する内容積2リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、窒素下で、トリイソブチルアルミニウムを1.0mmol、1-ヘキセンを2ml、反応器の汚れ防止剤としてイノスペック社の製品名Statsafe6000をヘキサンで2vol%に希釈したもの1ml、精製イソブタンを800ml投入し、撹拌しながら70℃へ昇温した。次いで、水素を15ml(0.67mmol)導入後、エチレンを分圧が1MPaになるまで導入した。このとき,オートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比(H2/C2)は、0.11mol%であった。その後、上記固体触媒(MIX-1)53mgを窒素ガスで圧入して60分間重合を行った。重合中は70℃を維持するように温度制御を実施し、また、全圧が一定になるようにエチレンを継続的に供給し、エチレン消費速度に比例して1-ヘキセン、および水素を供給した。
重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.1mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは3mlであった。
重合の結果、163gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表2にまとめた。また、得られたエチレン系重合体のGPC―IRチャートを図1に示した。なお、表2におけるSCB(H)/SCB(L)は、上記(4-2)法から求めた。
[比較例1-1]
実施例1の固体触媒の調製において、メタロセンA-1とメタロセンB-1を使う代わりに、メタロセンA-1をシリカゲル1gに対して25μmol/g用いた以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(SA-1)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(MIX-1)の代わりに、上記固体触媒(SA-1)を使用した以外は、実施例1と同様にエチレン/1-ヘキセンの共重合を行った。実施例1と同様にエチレン/ヘキセン共重合を行った。結果を表2にまとめた。
[比較例1-2]
(1)固体触媒の調製
実施例1の固体触媒の調製において、メタロセンA-1とメタロセンB-1を使う代わりに、メタロセンB-1をシリカゲル1gに対して25μmol/g用いた以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(SB-1)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(MIX-1)の代わりに、上記固体触媒(SB-1)を使用した以外は、実施例1と同様にエチレン/1-ヘキセンの共重合を行った。結果を表2にまとめた。
[実施例2]
(1)固体触媒の調製
実施例1の固体触媒の調製において、成分(B)としてメタロセンB-1の代わりに、メタロセンB-2を29mg(38μmol)使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ピンク色のさらさらとした固体触媒(MIX-2)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(MIX-1)の代わりに、固体触媒(MIX-2)51mgを使用した以外は、実施例1と同様にエチレン/1-ヘキセンの共重合を行った。
重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.1mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは3mlであった。
重合の結果、143gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表2にまとめた。また、得られたエチレン系重合体のGPC-IRチャートを図2に示した。なお、表2におけるSCB(H)/SCB(L)は、上記(4-2)法から求めた。
[比較例2-1]
(1)固体触媒の調製
実施例2の固体触媒の調製において、メタロセンA-1とメタロセンB-2を使う代わりに、メタロセンB-2をシリカゲル1gに対して25μmol/g用いた以外は、実施例2と同様に操作して、固体触媒(SB-2)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(MIX-1)の代わりに、上記固体触媒(SB-2)を使用した以外は、実施例1と同様にエチレン/1-ヘキセンの共重合を行った。結果を表2にまとめた。
[実施例3]
(1)固体触媒の調製
実施例1の固体触媒の調製において、メタロセンA-1とメタロセンB-1を使う代わりに、メタロセンA-2を33.4mg(80μmol)とメタロセンB-1を12.8mg(15μmol)使用した以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(MIX-3)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(MIX-1)の代わりに、上記固体触媒(MIX-3)を使用した以外は、実施例1と同様にエチレン/1-ヘキセンの共重合を行った。結果を表2にまとめた。
[比較例3-1]
(1)固体触媒の調製
実施例1の固体触媒の調製において、メタロセンA-1とメタロセンB-1を使う代わりに、メタロセンA-2をシリカゲル1gに対して25μmol/g用いた以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(SA-2)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(MIX-1)の代わりに、上記固体触媒(SA-2)を使用した以外は、実施例1と同様にエチレン/1-ヘキセンの共重合を行った。結果を表2にまとめた。
[比較例4]
(1)固体触媒の調製
実施例1の固体触媒の調製において、メタロセンA-1とメタロセンB-1を使う代わりに、メタロセンC-3とメタロセンC-1をそれぞれシリカゲル1gに対して15μmol/g、10μmol/g用いた以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(MIX-C1)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒として、固体触媒(MIX-1)の代わりに、上記固体触媒(MIX-C1)の53mgを使用し、水素を38ml(1.7mmol)、1-ヘキセンを1ml用いた以外は、実施例1と同様にエチレン/1-ヘキセンの共重合を行った。結果を表2にまとめた。なお、表2におけるSCB(H)/SCB(L)は、上記(4-2)法から求めた。
Figure 2023152883000009
Figure 2023152883000010
N.M.は未測定を表す
4.考察
実施例1、実施例2および実施例3は、成分(A)および成分(B)を単一で用いた触媒から得られる重合体(比較例1-1、比較例1-2、比較例2-1、比較例3-1)と比較して、充分に広い分子量分布(Mw/Mn)を示す。
また、図1、図2および図3に示した実施例1、実施例2および実施例3の重合体のGPC-IR測定結果は、高分子量側に優先的に短鎖分岐(SCB)が存在していることを示している。
図4には重合体の重量平均分子量(Mw)と流動性(HLMFR)の関係を示した。重量平均分子量と流動性の関係は、重量平均分子量が大きくなればHLMFRは小さくなり、つまり流動性が悪くなるため、図4は右下がりの傾きになる(参考例1、4、8)。この図4で示される重量平均分子量と流動性との相関において、実施例1、実施例2および実施例3に比較して、比較例4は左下に位置していることが分かる。すなわち、本発明の触媒、成分(A)と成分(B)の組み合わせを用いることで、高分子量であっても流動性が高い重合体、流動性見合いで分子量が高い重合体を得ることができるとわかる。なお、参考例2および5は他の参考例と比較して下に大きく外れており、これは他の触媒から得られる重合体よりも重量平均分子量に対して流動性が悪いことを表している。
すなわち、本発明の触媒により製造されたエチレン系重合体は分子量分布が広く、高分子量側により多くの短鎖分岐を持っており、流動性見合いの重量平均分子量が高いことから強度と成形性に優れた重合体であることが示される。
以下の参考例1~5は、本発明の組み合わせに適した成分(B)の一つであるメタロセンB-1と、類似した構造で、特許文献5で用いられている[1,1’-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンC-1)との違いを示すための例である。また、本発明の組み合わせに適した成分(B)の一つであるメタロセンB-2と、特許文献4で用いられている{ジフェニルメチレン(3-メチル-1-シクロペンタジエニル)(2,7-ジt-ブチル-9-フルオレニル)}ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンC-2)との違いを示すための例である。
以下の参考例6~9は、本発明の組み合わせに適した成分(A)であるメタロセン化合物A-1およびメタロセン化合物A-2と、類似した構造で、特許文献4で用いられているビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(以下メタロセンC-3)との違いを示すための例である。
参考例8は、本発明で製造される重合体の評価を示すためのMwとHLMFRの相関図(図4)を作成するための例である。
[参考例1]
(1)固体触媒の調製
比較例1-1で製造された触媒SB-1を使った。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
攪拌および温度制御装置を有する内容積2リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、窒素下で、トリイソブチルアルミニウムを1.0mmol、1-ヘキセンを6ml、反応器の汚れ防止剤としてイノスペック社の製品名Statsafe6000をヘキサンで2vol%に希釈したもの1ml、精製イソブタンを800ml投入し、撹拌しながら70℃へ昇温した。次いで、水素を25ml(1.1mmol)導入後、エチレンを分圧が1MPaになるまで導入した。このとき,オートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.14mol%であった。その後、上記固体触媒(SB-1)25mgを窒素ガスで圧入して60分間重合を行った。重合中は70℃を維持するように温度制御を実施し、また、全圧が一定になるようにエチレンを継続的に供給し、エチレン消費速度に比例して1-ヘキセン、および水素を供給した。
重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.16mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは7mlであった。
重合の結果、176gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例2]
(1)固体触媒の調製
メタロセンA-1とメタロセンB-1に替えて、メタロセンC-1をシリカゲル1gに対して25μmol/g用いた以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(SC-1)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒として、上記固体触媒(SC-1)33mgを用いた以外は、参考例1と同様にエチレン/1-ヘキセン共重合を行った。
重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.21mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは7mlであった。
重合の結果、176gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例3]
(1)固体触媒の調製
参考例2で調製された触媒SC-1を使った。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒(SC-1)33mgを用い、水素を75mlに増やした以外は参考例1と同様にして60分間重合を行った。
重合前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は0.47mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.42mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは6mlであった。
重合の結果、146gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例4]
(1)固体触媒の調製
比較例2-1で製造された触媒SB-2を使った。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒(SB-2)33mgを用い、水素を75mlに増やした以外は参考例1と同様にして60分間重合を行った。
重合前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は0.47mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.42mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは6mlであった。
重合の結果、146gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例5]
(1)固体触媒の調製
メタロセンA-1とメタロセンB-1に替えて、メタロセンC-2をシリカゲル1gに対して25μmol/g用いた以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(SC-2)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒(SC-2)33mgを用い、水素を75mlに増やした以外は参考例1と同様にして60分間重合を行った。
重合前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は0.47mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.42mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは6mlであった。
重合の結果、146gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例6]
(1)固体触媒の調製
比較例1-1にて調製した固体触媒(SA-1)を用いた。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒(SA-1)41mgを用いた以外は参考例1と同様にして60分間重合を行った。
重合前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は0.17mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.08mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは2mlであった。
重合の結果、133gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例7]
(1)固体触媒の調製
メタロセンA-1とメタロセンB-1に替えて、メタロセンC-3をシリカゲル1gに対して25μmol/g用いた以外は、実施例1と同様に操作して、固体触媒(SC-4)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒(SC-4)50mgを用い、水素を18mlにした以外は参考例1と同様にして60分間重合を行った。
重合前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は0.11mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.13mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは7mlであった。
重合の結果、180gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例8]
(1)固体触媒の調製
参考例7にて調製した固体触媒(SC-4)を用いた。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒(SC-4)30mgを用い、水素を15mlにした以外は参考例1と同様にして60分間重合を行った。
重合前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は0.07mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.04mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは8mlであった。
重合の結果、209gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
[参考例9]
(1)固体触媒の調製
比較例3-1にて調製した固体触媒(SA-2)を用いた。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
固体触媒(SA-2)32mgを用いた以外は参考例1と同様にして60分間重合を行った。
重合前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は0.12mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.03mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは0.15mlであった。
重合の結果、66gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表3にまとめた。
Figure 2023152883000011
N.M.は未測定を表す
表3は、本発明の成分(B)および成分(A)の性能を示す結果である。
表3の参考例1と参考例2を比較すると、同じ重合条件において、本発明の成分(B)である参考例1(B-1)の重合体の重量平均分子量Mwの方が、参考例2(C-1)の重合体よりも大きく、参考例1(B-1)の方がより高分子量成分を製造できることを示している。しかしながら、参考例1(B-1)の重合体はMwが高いにも拘わらず、HLMFRは、参考例2(C-1)の重合体よりも大きい。すなわち、メタロセン錯体としてB-1を使うことにより、分子量が大きく、かつ流動性に優れた高分子量ポリマーを製造することができることを表している。前述のように、図4においても、メタロセンC-1を用いた参考例2は、参考例1、4および8が示す相関(実線)に対して大きく下に位置している。これは、本発明の成分(B)とメタロセンC-1との違いを表しており、メタロセンC-1から得られる重合体は分子量見合いの流動性が低いことを示す。
表3の参考例3は、メタロセンC-1を用いて参考例1で得られる重合体とHLMFRが同程度となるように水素の導入量を調整し、エチレン系重合体を製造した例であるが、表3に示されるように分子量が低くなってしまい、強度が下がってしまうという課題が発生する。なお、参考例3は、分子量分布が他の参考例よりも広いため、図4上での評価には適していない。
表3の参考例4と参考例2を比較すると、本発明の成分(B)である参考例4(B-2)の重量平均分子量Mwの方が、参考例2(C-1)よりも大きく、参考例4(B-2)の方がより高分子量成分を製造できることを示している。しかも、参考例4(B-2)はMwが高いにも拘わらず、HLMFRは、参考例2(C-1)よりも大きい。
また、表3の本発明の成分(B)である参考例4と特許文献4の成分を用いた参考例5を比較すると、本発明の成分(B)である参考例4(B-2)の重量平均分子量Mwは、参考例5(C-2)と同様であるにもかかわらず、HLMFRは、参考例5(C-2)よりも大きい、すなわち流動性に優れている。前述のように、図4においても、メタロセンC-2を用いた参考例5は、参考例1、4および8が示す相関(実線)に対して大きく下に位置している。これは、本発明の成分(B)とメタロセンC-2との違いを表しており、メタロセンC-2から得られる重合体は分子量見合いの流動性が低いことを示す。
また、本発明の成分(B)である参考例4(B-2)の方が、特許文献4の成分を用いた参考例5(C-2)よりもブチル分岐数も多い。
すなわち、本発明の成分(B)は、インデニル基の2位に特定の置換基を有するため、流動性が高く、より多くの短鎖分岐を有する分子量も高い重合体を得ることができる。
これに加え、参考例6および参考例9に示すように、本発明の成分(A)である非架橋ビスインデニル錯体(メタロセンA-1およびメタロセンA-2)を用いる方が、特許文献5で用いられている非架橋ビスシクロペンタジエニル錯体(メタロセンC-3)を用いた参考例7よりもブチル分岐数が少なく、共重合性が低い。低分子量側においてはこのような違いがある。以上の関係にあり、本発明の成分(A)を用いることで、同じ密度の重合体を製造した時、低分子量側の共重合性が低いために、高分子量側に優先的にコモノマーが共重合される確率が高くなると考えている。その結果、重合体の剛性と強度耐久性のバランス向上につながる。
このように、流動性見合いでより高分子量な成分が重合体中に存在すること、分子量分布が広く、かつ高分子量側に優先的にコモノマーを含むことによって、成形性と強度耐久性のバランスをさらに改善できると考えられる。これは成分(A)と成分(B)との組み合わせによってなすことが可能となり、重合体の特性を大きく向上できると考えている。
本発明のオレフィン重合用触媒は、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体を製造することができる。このようなエチレン系重合体は、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体として利用することが期待できる。
本発明のオレフィン重合用触媒により得られる、分子量分布が広く、短鎖分岐(コモノマー)が高分子量側に優先的に取り込まれ、流動性見合いの重量平均分子量が高いエチレン系重合体は、プラスチック成形材料として広く用いることができる。

Claims (7)

  1. 以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含む、オレフィン重合用触媒。
    成分(A):下記一般式(1)で表される遷移金属化合物
    成分(B):下記一般式(2)で表される遷移金属化合物
    成分(C):前記成分(A)および前記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物
    成分(D):微粒子担体
    [式中
    は、チタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子を表し、
    1AおよびX2Aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基、または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表し、
    1A~R14Aは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数5~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のトリアルキルシリル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルコキシ基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数3~6のシクロアルキル基、または少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数5~6のシクロアルケニル基を表す。]
    [式(2)中、
    は、チタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子を表し、
    1BおよびX2Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基、または少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換されているアミノ基を表し、
    Yは、炭素原子、ケイ素原子、またはゲルマニウム原子を表し、
    31BおよびR32Bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、または少なくとも1つの置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を表し、
    31BおよびR32Bは、Yを含んで4~7員環を形成していてもよく、R31BおよびR32Bの少なくとも一つが環状構造を有する場合、R31B、R32BおよびYにより構成される4~7員環は、R31BおよびR32Bが有する環状構造の構成原子の一部を共有する縮合環を形成してもよく、
    12B~R19B、R22B~R29Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基、炭素数6~18のアリール基、または少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基を表し、R12B~R19BまでおよびR22B~R29Bまでのうち隣接する基同士がそれらに結合している原子を含んで結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
    11BおよびR21Bは、下記一般式(3)で示される基を表す。
    式(3)中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、
    33BおよびR34Bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数6~18のアリール基、少なくとも1つの炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換されている炭素数1~3のアルキル基、または少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されているシリル基であり、R33B及びR34Bは互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。]
  2. 前記一般式(3)における、前記Zが酸素原子である、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
  3. 前記一般式(1)における、前記R1A~R14Aが水素原子である、請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
  4. 前記一般式(1)における、前記R3AおよびR10Aが、炭素数1~3のアルキル基である請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
  5. 前記成分(C)が、メチルアルミノキサンである請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
  6. 請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、エチレン、又はエチレンおよび炭素数3~10のオレフィンから選ばれるモノマーを共重合する、エチレン系重合体の製造方法。
  7. スラリー重合法で行われる、請求項6に記載のエチレン系重合体の製造方法。
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