JP2023152528A - 重ね隅肉溶接継手、及び、重ね隅肉溶接継手の製造方法 - Google Patents

重ね隅肉溶接継手、及び、重ね隅肉溶接継手の製造方法 Download PDF

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Masahiro Matsuba
欽也 石田
Kinya Ishida
真二 児玉
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Abstract

Figure 2023152528000001
【課題】重ね隅肉溶接継手の溶接ビードにおける気孔欠陥率を低減する。
【解決手段】本開示の重ね隅肉溶接継手は、溶接ビードを介して第1鋼板と第2鋼板とを接合したもので、以下の要件(A)~(D)を満たすものである。
(A)鋼板間に存在するめっき層の合計の付着量が、10g/m以上120g/m以下であること。
(B)第1鋼板及び第2鋼板のうちの一方の板厚Tと、第1鋼板及び第2鋼板のうちの他方の板厚Tとが、下記関係(1)を満たすこと。
(C)鋼板間の隙間Gが、板厚T以下であること。
(D)溶接ビードの高さHと、板厚Tと、隙間Gとが、下記関係(2)を満たすこと。
≦T≦2mm …(1)
H≦T+G+5mm …(2)
【選択図】図1

Description

本願は、重ね隅肉溶接継手、及び、重ね隅肉溶接継手の製造方法を開示する。
鋼板同士を接合する技術としてアーク溶接が知られている。アーク溶接の課題としては溶接ビードにおいて強度が低下し易いことが挙げられる。溶接ビードにおける強度の低下は、めっき層を有する鋼板を溶接した場合に生じ易い。具体的には、鋼板同士をめっき層ごと溶接すると、溶接ビード内にめっき蒸気が閉じ込められて気孔欠陥となり、これが強度低下の原因の一つとなる。
めっき蒸気を原因とする溶接ビード内の気孔欠陥を低減する方法としては、主に、以下の2つの方法が挙げられる。
方法1:めっき層の目付量を少なくして、めっき蒸気そのものを低減する方法
方法2:溶接時に、鋼板間にめっき蒸気を排出するための経路(隙間)を形成して、溶接ビードとは反対側へとめっき蒸気を排出する方法
ここで、上記の方法1のようにめっき層の目付量を少なくすると、目的とする耐食性等が確保できなくなる虞がある。そのため、従来においては、鋼板同士をめっき層ごと溶接する場合、上記の方法2が有効と考えられてきた。例えば、特許文献1には鋼板の溶接予定箇所に、めっき蒸気を排出するための溝を設ける技術が開示されている。また、特許文献2には、鋼板を溶接する前に、鋼板に対して予め曲げ加工を施すことで、めっき蒸気を排出するための経路を確保する技術が開示されている。
特許第6965230号公報 特許第6278291号公報
以上の通り、従来においては、溶接ビード内の気孔欠陥を低減するためには、鋼板に対して溝を設けたり、曲げ加工を施すことによって、めっき蒸気を排出するための経路(隙間)を設けることが有効と考えられてきた。しかしながら、本発明者の新たな知見によると、鋼板に対してめっき蒸気を排出するための十分な隙間を設けたとしても、溶接ビード内の気孔欠陥が低減できない場合があり、むしろ気孔欠陥が増加する場合もある。この点、溶接ビード内の気孔欠陥を低減する新たな技術が必要である。
溶接対象である鋼板が薄い場合、鋼板同士が低入熱で溶接され、溶接によって生じる溶融池のサイズが小さくなり得る。この場合、溶融池の高さ(厚み)が低く(薄く)なり、溶融池表面からのめっき蒸気の排出がより支配的になる可能性がある。この観点から、本発明者は、2mm以下の板厚を有する薄鋼板にめっきを施し、重ね隅肉溶接を施して、溶接ビードに生じる気孔欠陥と溶接条件との関係を検討した。その結果、板厚2mm以下の薄鋼板を溶接する場合は、鋼板同士を密着させる(鋼板間の隙間を小さくして、溶接ビードとは反対側へのめっき蒸気の排出を抑える)ほうが、溶接ビード内の気孔欠陥を低減できることがわかった。さらに、鋼板同士を密着させるには、溶接時の鋼板の熱変形を抑制し、鋼板間の隙間を小さく維持することが効果的であることが判った。具体的には、本溶接の前に仮付け溶接を行い、且つ、当該仮付け溶接の施工間隔を所定以下の間隔とすることで、本溶接時に熱変形によって鋼板間の隙間が広がることを抑えることができ、溶接ビードにおける気孔欠陥の低減が可能となることが分かった。
以上の知見に基づき、本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
重ね隅肉溶接継手であって、第1鋼板と、第2鋼板と、溶接ビードとを有し、
前記第1鋼板が、前記第2鋼板側に面する第1面と、前記第1面とは反対側に面する第2面とを有し、
前記第2鋼板が、前記第1鋼板側に面する第3面と、前記第3面とは反対側に面する第4面とを有し、
前記第2鋼板の端部が、前記溶接ビードを介して、前記第1面に接合され、
前記第1面及び前記第3面のうちの一方又は両方に、めっき層が形成され、
前記第1面及び前記第3面に対する前記めっき層の合計の付着量が、10g/m以上120g/m以下であり、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの一方の板厚Tと、前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの他方の板厚Tとが、下記関係(1)を満たし、
前記第1面と前記第3面との間の隙間Gが、前記板厚T以下であり、
前記第1面から前記溶接ビードの頂点までの高さHと、前記板厚Tと、前記隙間Gとが、下記関係(2)を満たし、
前記溶接ビードが、7.0%以下の気孔欠陥率を有するもの、
を開示する。
≦T≦2mm …(1)
H≦T+G+5mm …(2)
本開示の重ね隅肉溶接継手においては、仮付け溶接痕が存在していてもよく、
前記仮付け溶接痕の間隔Iと、前記板厚Tとが、以下の関係(3)を満たしていてもよい。
I≦250×T …(3)
本開示の重ね隅肉溶接継手において、前記溶接ビードが、0.5%以上7.0%以下の気孔欠陥率を有していてもよい。
本開示の重ね隅肉溶接継手において、前記めっき層が、質量%で、Znを40%以上100%以下含んでいてもよい。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
重ね隅肉溶接継手の製造方法であって、
第1鋼板と第2鋼板とを重ね合わせたうえで、溶接予定箇所に対して仮付け溶接を施すこと、及び、
前記仮付け溶接が施された前記溶接予定箇所に対して、アーク溶接を施し、前記第1鋼板と前記第2鋼板とを溶接ビードを介して接合すること、を含み、
前記第1鋼板が、前記第2鋼板側に面する第1面と、前記第1面とは反対側に面する第2面とを有し、
前記第2鋼板が、前記第1鋼板側に面する第3面と、前記第3面とは反対側に面する第4面とを有し、
前記第2鋼板の端部が、前記溶接ビードを介して、前記第1面に接合され、
前記第1面及び前記第3面のうちの一方又は両方に、めっき層が形成され、
前記第1面及び前記第3面に対する前記めっき層の合計の付着量が、10g/m以上120g/m以下であり、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの一方の板厚Tと、前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの他方の板厚Tとが、下記関係(1)を満たし、
前記第1面から前記溶接ビードの頂点までの高さHと、前記板厚Tと、前記第1面及び前記第3面の間の隙間Gとが、下記関係(2)を満たし、
前記仮付け溶接の間隔Iと、前記板厚Tとが、以下の関係(3)を満たすもの、
を開示する。
≦T≦2mm …(1)
H≦T+G+5mm …(2)
I≦250×T …(3)
本開示の溶接継手は、板厚2mm以下の薄鋼板同士をめっき層とともに重ね隅肉溶接によって接合したものであり、溶接ビードの高さが一定以下(すなわち、溶接時の溶融池の高さが一定以下)であり、且つ、鋼板間の隙間が一定以下である。この場合、溶接時に溶融池へとめっき蒸気が侵入したとしても、当該めっき蒸気が溶融池の表面から効率的に排出され、結果として溶接ビード内の気孔欠陥率が低減される。
重ね隅肉溶接継手の断面構成を概略的に示している。紙面奥手前方向に溶接ビードが延在している。 重ね隅肉溶接継手の平面構成を概略的に示している。 仮付け溶接後の状態を概略的に示している。 平面視における溶接ビードのX線透過写真の一例を示している。溶接ビードが左右方向に延在していること、及び、溶接ビード内に気孔欠陥(溶接ビードの内側において他の部分と比較して相対的に黒い部分)が存在することが分かる。
1.重ね隅肉溶接継手
以下、本開示の重ね隅肉溶接継手の一実施形態について説明するが、本開示の重ね隅肉溶接継手は、この形態に限定されるものではない。
図1及び2に示されるように、一実施形態に係る重ね隅肉溶接継手100は、第1鋼板10と、第2鋼板20と、溶接ビード30とを有する。
第1鋼板10は、第2鋼板20側に面する第1面11と、第1面11とは反対側に面する第2面12とを有する。
第2鋼板20は、第1鋼板10側に面する第3面23と、第3面23とは反対側に面する第4面24とを有する。
第2鋼板20の端部20xは、溶接ビード30を介して、第1面11に接合されている。
第1面11及び第3面23のうちの一方又は両方に、めっき層41、43が形成されている。
第1面11及び第3面23に対するめっき層41、43の合計の付着量は、10g/m以上120g/m以下である。
第1鋼板10及び第2鋼板20のうちの一方の板厚Tと、第1鋼板10及び第2鋼板20のうちの他方の板厚Tとは、下記関係(1)を満たす。
第1面11と第3面23との間の隙間Gは、上記の板厚T以下である。
第1面24から溶接ビード30の頂点Pまでの高さHと、上記の板厚Tと、上記の隙間Gとは、下記関係(2)を満たす。
溶接ビード30は、7.0%以下の気孔欠陥率を有する。
≦T≦2mm …(1)
H≦T+G+5mm …(2)
1.1 第1鋼板及び第2鋼板
重ね隅肉溶接継手100においては、第1鋼板10と第2鋼板20とが溶接されて、重ね隅肉溶接構造が形成される。図1及び2に示されるように、重ね隅肉溶接構造においては、第1鋼板10の第1面11と、第2鋼板20の端部20xの先端面との隅部に、溶接ビード30が形成されている。重ね隅肉溶接継手100において、第1鋼板10に対して溶接ビード30が形成される側(第1面11側)を上、溶接ビード30とは反対側(第2面12側)を下とみなした場合、第2鋼板20が上板であり、第1鋼板10が下板である。
1.1.1 第1面~第4面
第1鋼板10は、第2鋼板20側に面する第1面11と、第1面11とは反対側に面する第2面12とを有する。すなわち、第1面11を第1鋼板10の表側の面とみなした場合、第2面12は第1鋼板10の裏側の面である。また、第2鋼板20は、第1鋼板10側に面する第3面23と、第3面23とは反対側に面する第4面24とを有する。すなわち、第4面24を第2鋼板20の表側の面とみなした場合、第3面23は第2鋼板20の裏側の面である。第1鋼板10の板厚が一定である場合、第1面11と第2面12とは、互いに平行となり得る。第2鋼板20の板厚が一定である場合、第3面23と第4面24とは、互いに平行となり得る。第1鋼板10及び第2鋼板20の各々の平面形状は特に限定されるものではない。第1鋼板10及び第2鋼板20の各々の平面形状は矩形状であってもよいし、矩形状以外の平面形状であってもよい。
1.1.2 板厚
第1鋼板10及び第2鋼板20は、各々、2mm以下の板厚を有する。板厚とは、めっき層を除いた母材鋼板の板厚をいう。第1鋼板10の板厚と、第2鋼板20の板厚とは、互いに同じであっても異なっていてもよい。第1鋼板10の板厚は、上記の板厚Tであってもよいし、上記の板厚Tであってもよい。第1鋼板10の板厚がTである場合は第2鋼板20の板厚はTであり、第1鋼板10の板厚がTである場合は第2鋼板20の板厚はTである。ここで、上述の関係(1)として示されるように、板厚Tは板厚T以上の厚みである。このように、第1鋼板10及び第2鋼板20の各々の板厚が2mm以下である場合、アーク溶接時の入熱が小さくなり、これにより溶融池の高さが小さくなり、後述する溶接ビード30の高さが一定以下に低くなり易い。板厚の下限は特に限定されるものではなく、例えば、0.6mm以上、0.8mm以上、1.0mm以上、又は、1.2mm以上であってもよい。
1.1.3 強度
第1鋼板10及び第2鋼板20は、その用途に応じて様々な強度を有し得る。第1鋼板10及び第2鋼板20は、その少なくとも一方がめっき層を有して、優れた耐食性を有する。また、重ね隅肉溶接継手100は、高強度であることが好ましい。例えば、第1鋼板10及び第2鋼板20のうちの一方又は両方が、400MPa以上、500MPa以上、700MPa以上、900MPa以上、1000MPa以上、1100MPa以上、1200MPa以上、又は、1500MPa以上の引張強さを有してもよい。すなわち、第1鋼板10の引張強さが400MPa以上、且つ、第2鋼板20の引張強さが400MPa未満であってもよく、第1鋼板10の引張強さが400MPa未満、且つ、第2鋼板20の引張強さが400MPa以上であってもよく、第1鋼板10及び第2鋼板20の双方の引張強さが400MPa以上であってもよい。第1鋼板10と第2鋼板20とは、互いに同程度の引張強さを有してもよいし、互いに異なる引張強さを有してもよい。引張強さの上限は特に限定されるものではないが、例えば、2500MPa以下、2200MPa以下又は2000MPa以下であってもよい。尚、本願にいう鋼板の「引張強さ」とは、JIS Z 2241:2011にしたがうものである。
1.1.4 化学組成及び金属組織
第1鋼板10及び第2鋼板20は、種々の化学組成や金属組織を有するものを採用し得る。第1鋼板10及び第2鋼板20は、各々、普通鋼板であっても、クロム等の添加元素を含む鋼板であってもよく、目的とする機械特性や成形性等を考慮して、化学組成や金属組織が調整されたものであってよい。第1鋼板10及び第2鋼板20の化学組成や金属組織によらず、重ね隅肉溶接継手100による効果が発揮される。第1鋼板10及び第2鋼板20のうちの一方又は両方が高強度鋼板である場合、当該高強度鋼板の化学組成は、例えば、質量%で、C:0.01~0.50%、Si:0.01~3.50%、Mn:0.10~5.00%、P:0.100%以下、S:0.0300%以下、N:0.0100%以下、O:0~0.020、Al:0~1.000%、B:0~0.010%、Nb:0~0.150%、Ti:0~0.20%、Mo:0~3.00%、Cr:0~2.00%、V:0~1.00%、Ni:0~2.00%、W:0~1.00%、Ta:0~0.10%、Co:0~3.00%、Sn:0~1.00%、Sb:0~0.50%、Cu:0~2.00%、As:0~0.050%、Mg:0~0.100%、Ca:0~0.100%、Zr:0~0.100%、Hf:0~0.100%、及び、REM:0~0.100%を含有するものであってもよい。上記化学組成において、任意添加元素の含有量の下限は0.0001%又は0.001%であってもよい。
1.2 めっき層
重ね隅肉溶接継手100においては、第1鋼板10の第1面11及び第2鋼板20の第3面23のうちの一方又は両方に、めっき層が形成されている。本発明者の知見によると、重ね隅肉溶接時、上板と下板との間に存在するめっき層の一部が蒸発してめっき蒸気となり、これが溶接ビード内の気孔欠陥の原因となり易い。より具体的には、図1に示されるような重ね隅肉溶接継手100においては、溶接時に、第2鋼板20側に面する第1面11及び第1鋼板10側に面する第3面23に形成されているめっき層41、43が蒸発して、溶融池の内部へと侵入し、溶接ビード30における気孔欠陥となり易い。図1に示されるように、第1鋼板10の第2面12に形成されためっき層42は、溶接ビード30と実質的に接触せず、仮に、溶融池が貫通して第2面12に至った場合でも、めっき層42のめっき蒸気は溶接ビード30の気孔欠陥量に実質的な影響を与えない。また、第2鋼板の第4面24に形成されためっき層44についても同様であり、めっき層44のめっき蒸気は溶接ビード30の気孔欠陥量に実質的な影響を与えない。
1.2.1 めっき層の付着量
重ね隅肉溶接継手100においては、第1鋼板10の第1面11に形成されためっき層41の付着量と、第2鋼板20の第3面23に形成されためっき層43の付着量との合計の付着量が、溶接ビード30内の気孔欠陥率に大きな影響を与え得る。この合計の付着量が少な過ぎると、溶接ビード30内において問題となる気孔欠陥がそもそも生じない。一方、この合計の付着量が多過ぎると、溶接時に溶融池へと侵入するめっき蒸気が過剰となり、本開示の技術によっても溶接ビード30内の気孔欠陥率を十分に低減することが難しくなる虞がある。この点、本開示の重ね隅肉溶接継手100においては、第1面11及び第3面23に対するめっき層41、43の合計の付着量が、10g/m以上120g/m以下であることが重要である。例えば、第1面11にめっき層が形成されない場合、第3面23に対して形成されるめっき層43の付着量が10g/m以上120g/m以下である。或いは、例えば、第1面11に対するめっき層41の付着量が5g/mである場合、第3面23に対するめっき層43の付着量は5g/m以上115g/m以下である。このように、第1面11及び第3面23に対するめっき層41、43の合計の付着量が10g/m以上120g/m以下であることで、溶接時に溶融池にめっき蒸気が侵入しつつも、溶融池の表面からめっき蒸気が効率的に排出され、溶接ビード30の気孔欠陥率を低減することができる。第1面11及び第3面23に対するめっき層41、43の合計の付着量は、20g/m以上、25g/m以上、30g/m以上、35g/m以上、又は、40g/m以上であってもよく、115g/m以下、110g/m以下、105g/m以下、100g/m以下、95g/m以下、又は、90g/m以下であってもよい。一方、図1に示されるように、第1鋼板10の第2面12に対してめっき層42が形成されていてもよく、第2鋼板の第4面24に対してめっき層44が形成されていてもよい。上述の通り、当該めっき層42やめっき層44は、溶接ビード30の気孔欠陥率に実質的な影響を与えないことから、めっき層42やめっき層44の付着量は特に限定されるものではない。
尚、めっき層の付着量は、溶接ビード30から十分に離れた、溶接による熱影響のない部分において特定されればよい。めっき層の付着量は、例えば、地鉄の腐食を抑制するインヒビターを加えた酸溶液にめっき層を溶解し、酸洗前後の重量変化から特定され得る。
1.2.2 めっき組成
めっき層は、当業者に公知の化学組成を有するものであってよい。鋼板の表裏にめっき層が形成されている場合、表裏の各々のめっき層は、互いに同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。各々のめっき層(特に、第1鋼板10の第1面11に形成されるめっき層41や第2鋼板20の第3面23に形成されるめっき層43)は、Znを含有するものであってもよい。めっき層がZnを含有するものである場合、溶接時のめっき蒸気の発生量が多くなり易く、溶接ビードにおける気孔欠陥の問題が生じ易い。例えば、各々のめっき層(特に、第1鋼板10の第1面11に形成されるめっき層41や第2鋼板20の第3面23に形成されるめっき層43)は、質量%で、Znを40%以上100%以下含むものであってもよい。めっき層におけるZn含有量は、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、又は、60質量%以上であってもよい。また、めっき層は、Zn以外にAl等の添加元素を含んでいてよく、また、合金化処理が施されてなる場合はFe等を含んでいてよい。一例として、めっき層は、少なくともZnとAlとMgとを含有するZn-Al-Mg合金めっき層であってもよく、さらにSiを含有するZn-Al-Mg-Si合金めっき層であってもよい。めっき層におけるZn以外の元素の含有量(濃度)は、質量%で、Al:0~60%、Mg:0~10%、Si:0~2%、Mn:0~1%、Ni:0~1%、Sb:0~1%、Fe:0~20%であってもよい。Zn含有めっき層は、合金化溶融亜鉛めっき層、溶融亜鉛めっき層又は電気亜鉛めっき層であってもよい。
1.2.3 めっき層の位置
上述の通り、重ね隅肉溶接継手100においては、第1鋼板10の第1面11及び第2鋼板20の第3面23のうちの一方又は両方に、めっき層が形成されている。めっき層は、第1鋼板10の第1面11及び第2面12、並びに、第2鋼板20の第3面23及び第4面24のうちの1つ、2つ、3つ、又は、すべての面に形成されていてもよい。図1においては、第1鋼板10の第1面にめっき層41が形成され、且つ、第2鋼板20の第3面23にめっき層43が形成された形態を示したが、めっき層41及びめっき層43のうちの一方が存在しなくてもよい。また、図1においては、第1鋼板10の第2面12にめっき層42が形成され、且つ、第2鋼板20の第4面24にめっき層44が形成された形態を示したが、めっき層42及びめっき層44のうちの一方又は双方が存在しなくてもよい。また、第1鋼板10と第2鋼板20とでは、めっき層が表側のみに形成されていてもよいし、裏側のみに形成されていてもよい。すなわち、第1鋼板10の第1面11及び第2鋼板20の第4面24に対して、各々、めっき層41及びめっき層44が形成されていてもよいし、第1鋼板10の第2面12及び第2鋼板20の第3面23に対して、各々、めっき層42及びめっき層43が形成されていてもよい。或いは、第1鋼板10の第1面11及び第2面12、並びに、第2鋼板20の第3面23及び第4面24のうちのすべての面に、めっき層41~44が形成されることで、重ね隅肉溶接継手100の表裏の耐食性が高められていてもよい。めっき層41~44は、第1鋼板10や第2鋼板20の各々の表側及び/又は裏側の面の一部にのみ設けられていてもよいし、全面に設けられていてもよい。尚、図1に示されるように、溶接ビード30及びその周辺部においては、溶接時の熱影響によってめっき層が蒸発し、めっき層が消失する。めっき層が消失した部分には、新たにめっき層が設けられていてもよく、すなわち、例えば、溶接ビード30及びその周辺の表面に対して、改めてめっき層が設けられていてもよい。
1.3 溶接ビード
図1及び2に示されるように、溶接ビード30は、第1鋼板10の第1面11と、第2鋼板20の先端面との隅に沿って形成され、第2鋼板20の端部と第1鋼板10の第1面11とを接合している。溶接ビード30は、後述の高さHを有するものであればよく、高さH以外は、重ね隅肉溶接によって形成される一般的な溶接ビードと同様の形態を採り得る。例えば、溶接ビードは、平面視において、所定の幅及び長さを有するものであってよく、長さ方向において始端部(アーク溶接を開始した部分)や終端部(アーク溶接を終了した部分)や定常部(始端部と終端部との間の部分)を備えるものであってよい。また、溶接ビードの幅方向端部である止端部のフランク角度も特に限定されるものではない。
1.3.1 ビード高さ
重ね隅肉溶接継手100においては、溶接ビード30の高さHが一定以下である必要がある。溶接ビード30の高さHが低いことで、以下のメカニズムによって、溶接ビード30の気孔欠陥率が低減され易くなる。すなわち、上述したように、重ね隅肉溶接時、第1面11や第3面23に設けられためっき層41、43が蒸発し、鋼板間から溶融池の内部へとめっき蒸気が侵入する。ここで、溶融池の高さが低い(薄い)場合、めっき蒸気の侵入源から溶融池の表面(溶接ビード30の頂点Pとなり得る側の表面)までの距離が短く、溶融池の内部に侵入しためっき蒸気が浮上して溶融池の表面から排出・除去され易い。そのため、溶接ビード30の内部に気孔が残り難く、気孔欠陥率が小さくなる。本発明者の知見によれば、第1鋼板10の第1面11から溶接ビード30の頂点Pまでの高さHと、上記の板厚Tと、後述する隙間Gとが、上記の関係(2)を満たすことにより、溶接ビード30における気孔欠陥率が顕著に低下する。すなわち、重ね隅肉溶接継手100においては、溶接ビード30の高さHが、第1鋼板10及び第2鋼板20のうち厚い方の板厚T(第1鋼板10及び第2鋼板20が同じ板厚を有する場合は、当該同じ板厚)と、後述する隙間Gとを基準として、T+G+5mmまでの高さ(H≦T+G+5mm)に抑えられている。溶接ビード30の高さHは、第1鋼板10及び第2鋼板20のうち、薄い方の板厚T(第1鋼板10及び第2鋼板20が同じ板厚を有する場合は、当該同じ板厚)を基準として、T+G+5mmまでの高さ(H≦T+G+5mm)に抑えられていてもよい。或いは、溶接ビード30の高さHは、H≦T+5mm、又は、H≦T+5mmなる関係を満たしていてもよい。溶接ビード30の高さHの下限は特に限定されず、第1鋼板10と第2鋼板20とを重ね隅肉溶接によって適切に接合可能な高さであればよい。例えば、溶接ビード30の高さHは、板厚Tよりも大きくてもよく、T+Gよりも大きくてもよい。
1.3.2 ビード幅
図2に示されるように、溶接ビード30は幅Wを有していてもよい。溶接ビード30の幅Wは、溶接ビード30における気孔欠陥率に実質的な影響を与えるものではなく、特に限定されるものではない。幅Wは、例えば、3mm以上、又は、5mm以上であってもよく、15mm以下、又は、20mm以下であってもよい。
1.3.3 ビード長さ
図1及び2に示されるように、溶接ビード30は、第2鋼板20の端面と第1鋼板10の第1面11とによって形成される隅に沿って、一定の長さを有して連続的に形成され得る。溶接ビード30の長さは、例えば、20mm以上、又は、30mm以上であってもよく、2000mm以下、又は、3000mm以下であってもよい。尚、溶接ビード30の長さが長い場合、後述する仮付け溶接を一定以下の間隔で行っておくとよい。これにより、鋼板間の隙間Gを一定以下に制御できる。
1.3.4 溶接ビードの構成成分
溶接ビード30は、アーク溶接に用いられるワイヤの成分、めっき層の成分、及び、鋼板(母材)の成分が混合した溶接金属によって構成され得る。当該溶接金属を構成するためのワイヤの種類に特に制限はなく、公知のソリッドワイヤやフラックス入りワイヤをいずれも採用可能である。溶接ビード30においては、めっき層に由来する成分が酸化物等の形態で存在していてもよい。例えば、溶接ビード30の内部、溶接ビード30の表面、及び、溶接ビード30の周辺のうちの少なくとも一部に、亜鉛含有酸化物、アルミニウム含有酸化物、マグネシウム含有酸化物、及び、シリコン含有酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物が存在していてもよい。
1.4 鋼板間の隙間
従来においては、めっき蒸気を排出するための経路として活用すべく、鋼板間の隙間Gを大きくすることが好ましいものとされてきた。例えば、鋼板間に溝等を形成したり、板に対して曲げ加工を施すことにより、鋼板間に大きな隙間Gを設けることが検討されてきた。これに対し、本発明者が新たに知見したところによれば、板厚2mm以下の薄鋼板同士を重ね隅肉溶接によって接合する場合は、鋼板間(第1鋼板10の第1面11と第2鋼板20の第3面23との間)の隙間Gが大きいと、溶融池の高さが高くなり、めっき蒸気の排出に時間がかかるようになるため、溶接ビードにおける気孔欠陥率が増大してしまう。板厚2mm以下の鋼板同士を重ね隅肉溶接によって接合する場合は、上述したように、溶融池の高さを低くしたうえで、溶融池の表面からめっき蒸気の排出を促すために隙間Gを敢えて小さくするとよい。本発明者の知見によれば、重ね隅肉溶接継手100において、第1鋼板10の第1面11と第2鋼板20の第3面23との間の隙間Gが、上記の板厚T以下である場合、めっき蒸気を溶融池の表面から効率的に排出することが可能となり、溶接ビード30における気孔欠陥率を顕著に低減することができる。当該隙間Gは、上記の板厚Tの75%以下、又は、上記の板厚Tの半分以下であってもよい。或いは、当該隙間Gは、上記の板厚T以下、上記板厚Tの75%以下、又は、上記板厚Tの半分以下であってもよい。
尚、隙間Gは、溶接ビード30の近傍の、第1鋼板10の第1面11と、第2鋼板20の第3面23とが向かい合う部分であって、第1面11と第3面23とが互いに平行となっている部分における、第1面11と第3面23との間の間隔I’から、第1面11と第3面23との間に存在するめっき層の合計厚みT’を引いたもの(G=I’-T’)として特定され得る。
1.5 仮付け溶接痕
板厚が2mm以下の薄板同士を重ね隅肉溶接によって接合した場合、溶接時の入熱量によらず、熱変形等によって隙間Gが極端に大きくなり易い。すなわち、重ね隅肉溶接継手100において隙間Gを板厚T以下とするためには、溶接時に隙間Gが大きくならないような工夫が必要となる。例えば、本溶接の前に一定以下の間隔で仮付け溶接を施しておくことで、本溶接時に隙間Gが大きくなり難く、隙間Gの小さな重ね隅肉溶接継手100が得られる。或いは、本溶接時に万力等によって鋼板を押さえ付けることによって、隙間Gが小さくなるようにしてもよい。特に、仮付け溶接によるものが好ましい。ここで、本開示の重ね隅肉溶接継手100が仮付け溶接を経て製造されたものである場合、仮付け溶接の痕は、本溶接の後にも残る。すなわち、本開示の重ね隅肉溶接継手100は、溶接ビード30とともに仮付け溶接痕を有するものであってもよい。具体的には、本開示の重ね隅肉溶接継手100においては、図2に示されるように、仮付け溶接痕35が存在していてもよく、仮付け溶接痕35の間隔Iと、上記の板厚Tとが、以下の関係(3)を満たしていてもよい。仮付け溶接の詳細については、後述する。
I≦250×T …(3)
1.6 溶接ビードにおける気孔欠陥率
本開示の重ね隅肉溶接継手100においては、溶接ビード30が7.0%以下の気孔欠陥率を有する。このように、溶接ビード30における気孔欠陥率が低いことで、気孔欠陥に起因する強度低下の問題が生じ難い。ただし、溶接時に溶融池に侵入しためっき蒸気を完全に除去することは難しい場合もあり、すなわち、気孔欠陥率を完全に0%とすることは難しい場合もある。この点、本開示の重ね隅肉溶接継手100においては、溶接ビード30における気孔欠陥率が0.5%以上7.0%以下であってもよい。溶接ビード30における気孔欠陥率は、6.8%以下、6.4%以下、6.0%以下、5.8%以下、5.4%以下、5.0%以下、4.8%以下、4.4%以下、4.0%以下、3.8%以下、3.4%以下、3.0%以下、2.8%以下、2.4%以下、又は、2.0%以下であってもよい。
尚、溶接ビードにおける気孔欠陥率は、平面視(図2)における溶接ビードの投影面積に対する気孔欠陥の面積の割合(気孔欠陥の面積/溶接ビードの投影面積)として特定されるものである。溶接ビードにおける気孔欠陥の面積は、例えば、X線透過試験によって求められる。すなわち、溶接ビードに対してX線透過試験を行い、X線透過写真を得る。X線透過写真においては、例えば、溶接ビードの溶接金属部分に対して、気孔部分が相対的に黒く写され、気孔欠陥の面積を容易に特定することができる。
2.重ね隅肉溶接継手の製造方法
以下、本開示の重ね隅肉溶接継手の製造方法の一例について説明する。
図2及び3に示されるように、一実施形態に係る重ね隅肉溶接継手100の製造方法は、
第1鋼板10と第2鋼板20とを重ね合わせたうえで、溶接予定箇所Xに対して仮付け溶接Yを施すこと(図3)、及び、
仮付け溶接Yが施された溶接予定箇所Xに対して、アーク溶接を施し、第1鋼板10と第2鋼板20とを溶接ビード30を介して接合すること(図2)、を含む。
ここで、上述したように、
第1鋼板10は、第2鋼板20側に面する第1面11と、第1面11とは反対側に面する第2面12とを有する。
第2鋼板20は、第1鋼板10側に面する第3面23と、第3面23とは反対側に面する第4面24とを有する。
第2鋼板20の端部は、溶接ビード30を介して、第1面11に接合される。
第1面11及び第3面23のうちの一方又は両方に、めっき層41、43が形成される。
第1面11及び第3面23に対するめっき層41、43の合計の付着量は、10g/m以上120g/m以下である。
第1鋼板10及び第2鋼板20のうちの一方の板厚Tと、第1鋼板10及び第2鋼板20のうちの他方の板厚Tとが、下記関係(1)を満たす。
第1面11から溶接ビード30の頂点Pまでの高さHと、板厚Tと、第1面11及び第3面23の間の隙間Gとが、下記関係(2)を満たす。
本開示の製造方法においては、仮付け溶接の間隔Iと、板厚Tとが、以下の関係(3)を満たすことが重要である。
≦T≦2mm …(1)
H≦T+G+5mm …(2)
I≦250×T …(3)
2.1 仮付け溶接
図3に示されるように、本開示の製造方法においては、本溶接を行う前に、第1鋼板10と第2鋼板20とを重ね合わせたうえで、溶接予定箇所Xに対して仮付け溶接Yを施す。仮付け溶接Yは、アーク溶接によって行われてもよいし、アーク溶接以外の溶接方法によって行われてもよい。アーク溶接によって仮付け溶接を行う場合、アーク溶接の条件(電流値、溶接速度、シールドガス等)は特に限定されるものではなく、例えば、本溶接におけるアーク溶接の条件と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、アーク溶接以外の溶接方法としては、例えば、レーザー溶接、抵抗スポット溶接等が挙げられる。
本開示の製造方法においては、仮付け溶接の間隔Iを鋼板の板厚に応じて設定する。具体的には、上記関係(3)として示される通り、仮付け溶接の間隔Iは、第1鋼板10及び第2鋼板20のうちの薄い方の板厚T(第1鋼板10及び第2鋼板20が同じ板厚を有する場合は、当該同じ板厚)を基準として、250×T(mm)以下の間隔とされる。すなわち、板厚が薄いほど、溶接時の熱変形等によって隙間Gが大きくなり易いことから、仮付け溶接の間隔Iを小さくして、本溶接の前に鋼板同士をできるだけ密着させるものとする。
アーク溶接にて仮付け溶接を行う場合、仮付け溶接によるビード高さ、ビード長さ、及び、ビード幅に特に制限はない。仮付け溶接のビードは本溶接で再溶融されることから、仮付け溶接のビードの高さや、当該ビードにおける気孔欠陥等は、本溶接において問題とならない。仮付け溶接のビード長さは、例えば、3mm以上、又は、5mm以上であってもよく、10mm以下、又は、20mm以下であってもよい。仮付け溶接のビード幅は、例えば、3mm以上、又は、5mm以上であってもよく、10mm以下、又は、20mm以下であってもよい。尚、溶接予定箇所Xの長さが250×Tに満たない場合も、仮付け溶接を1か所以上行うとよい。
2.2 本溶接
図2に示されるように、本開示の製造方法においては、仮付け溶接Yが施された溶接予定箇所Xに対して、アーク溶接を施し、第1鋼板10と第2鋼板20とを溶接ビード30を介して接合する。本溶接におけるアーク溶接の条件(電流値、溶接速度、シールドガス等)は、特に限定されるものではなく、板厚2mm以下の鋼板を溶接するに適した条件で、且つ、溶接ビード30の高さHが上記関係(2)を満たすように適宜調整され得る。例えば、アーク溶接による溶け込み深さが、板厚Tの5%以上70%以下となるような溶接条件が採用されてもよい。具体的には、アーク溶接の電流値は、例えば、80A以上250A以下であってもよい。また、溶接速度は、例えば、30m/min以上150m/min以下であってもよい。また、シールドガスは、例えば、アルゴンと二酸化炭素との混合ガスであってよく、この場合、混合ガスに占める二酸化炭素の割合は5体積%以上30体積%以下であってもよい。アーク溶接に用いられるワイヤについても、特に限定されるものではなく、公知のソリッドワイヤやフラックス入りワイヤをいずれも採用可能である。溶接狙い位置についても、重ね隅肉溶接において一般的な位置であってよい。
2.3 補足
本溶接においては、溶接の熱影響によってめっき層がめっき蒸気となって消失する。めっき蒸気は溶融池の内部に侵入する。このとき、仮付け溶接によって鋼板間の隙間Gが小さく維持されることで、めっき蒸気が溶融池の表面から効率的に排出され、本溶接後の溶接ビード30における気孔欠陥率を低減することができる。例えば、本開示の製造方法によって得られる重ね隅肉溶接継手100においては、上述の通り、溶接ビード30における気孔欠陥率が7.0%以下となり得る。
3.用途
本開示の重ね隅肉溶接継手は、めっき層を有し、耐食性に優れる。本開示の重ね隅肉溶接継手は、例えば、自動車のシャシー部材として好適に用いられる。或いは、本開示の重ね隅肉溶接継手は、例えば、各種の建材部品としても好適に用いられる。
以下、実施例を示しつつ、本開示の技術についてさらに詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。
1.めっき鋼板の準備
溶接対象である鋼板として、下記表1に示される板厚と、片面あたりのめっき付着量と、めっき種(めっきに含まれるZn含有量)とを有するものを用意した。尚、各々の鋼板の強度はいずれも440MPa以上である。また、各々の鋼板のサイズは、いずれも、幅500mm×長さ3000mmである。また、表1に示される鋼板のうち、めっき層を有するものは、鋼板の表側及び裏側の両面にめっき層を有するものであり、表1には、片面あたりのめっき付着量が示されている。
2.仮付け溶接
下記表1に示されるような鋼板の組み合わせに対して、アーク溶接にて仮付け溶接を施し、第1鋼板(下板)の表面に対して、第2鋼板(上板)の端部を仮付けした。仮付け溶接の間隔Iは、下記表1に示される通りとした。仮付け溶接におけるアーク溶接条件は、本溶接におけるものと同様である。
3.本溶接
下記表1に示されるような鋼板の組み合わせに対して、アーク溶接にて重ね隅肉溶接を施し、第1鋼板(下板)の表面に対して、溶接ビードを介して、第2鋼板(上板)の端部を接合した。ここで、各例に共通する溶接条件は以下の通りである。
(各例に共通するアーク溶接条件)
溶接電流:溶け込み深さが下板の板厚の20%に到達する条件
溶接速度:0.8m/min
シールドガス:Ar+20%CO
流量:20L/min
溶接ワイヤ:YGW16
溶接トーチの傾斜角:60°
重ね代:10mm
4.本溶接後の隙間G、及び、溶接ビードの高さHの測定
本溶接後の重ね隅肉溶接継手において、鋼板間の隙間G、及び、溶接ビードの高さHを測定した。隙間Gや高さHの位置は、図1に示される通りである。結果を下記表1に示す。
5.溶接ビードにおける気孔欠陥率の測定
アーク溶接後の重ね隅肉溶接継手に対して、X線透過試験を行ってX線透過写真を得て、溶接ビードにおける気孔欠陥率を測定した。結果を下記表1に示す。
尚、図4に、平面視における溶接ビードのX線透過写真の一例を示す。図4に示されるように、溶接ビードにおいて、他の部分よりも黒く写っている部分に気孔が存在するものといえる。本実施例では、溶接ビードにおける気孔欠陥率は、X線透過写真に基づいて、溶接ビードの投影面積に対する気孔欠陥の面積の割合(気孔欠陥の面積/溶接ビードの投影面積)として特定した。
6.評価結果
下記表1に評価条件及び評価結果を示す。
Figure 2023152528000002
表1に示される結果をまとめると、以下の通りである。
比較例1は、上板である第2鋼板の板厚が2.0mmを超え、溶接ビード高さHが高くなった例である。この場合、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくなった。比較例1においては、本溶接時の溶接池の高さが高く、溶融池の内部に侵入しためっき蒸気が、溶融池の表面から排出されるまでの距離が長くなり、めっき蒸気が溶融池の表面から排出されることなく、溶融池の内側に気泡として多量に残ったものと考えられる。
比較例2は、鋼板間の隙間Gが板厚よりも大きくなった例である。この場合、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくなった。板厚2mm以下の薄鋼板同士を重ね隅肉溶接によって接合する場合は、鋼板間の隙間Gが大きいと、めっき蒸気が溶接池の表面から排出され難くなり、これにより、溶接ビードにおける気孔欠陥率が増大したものと考えられる。
比較例3は、溶接ビードの高さHが高くなった例である。この場合、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくなった。比較例3においては、比較例1と同様に、本溶接時の溶接池の高さが高く、溶融池の内部に侵入しためっき蒸気が、溶融池の表面から排出されるまでの距離が長くなり、めっき蒸気が溶融池の表面から排出されることなく、溶融池の内側に気泡として多量に残ったものと考えられる。
比較例4は、鋼板間の隙間Gが板厚よりも大きくなった例である。この場合、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくなった。比較例2と同様に、鋼板間の隙間Gが大きいと、めっき蒸気が溶接池の表面から排出され難くなり、これにより、溶接ビードにおける気孔欠陥率が増大したものと考えられる。
比較例5、6は、めっき層の付着量が過剰に多い例である。この場合、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくなった。比較例5、6のようにめっき層の付着量が過剰である場合、溶接時の溶融池にめっき蒸気が多量に侵入することから、鋼板間の隙間Gや溶接ビードの高さHを制御したとしても、溶融池の内部にめっき蒸気が多量に残ったため、溶接ビードにおける気孔欠陥率が増大したものと考えられる。
比較例7は、鋼板間の隙間Gが板厚よりも大きくなった例である。この場合、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくなった。比較例2及び4と同様に、鋼板間の隙間Gが大きいと、めっき蒸気が溶接池の表面から排出され難くなり、これにより、溶接ビードにおける気孔欠陥率が増大したものと考えられる。
比較例8は、めっき層の付着量が過剰に少ない例である。この場合、溶接時に溶融池に侵入するめっき蒸気がそもそも少なく、隙間Gや溶接ビードの高さを工夫せずとも、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくならない。
比較例9は、下板である第1鋼板の板厚が2.0mmを超え、溶接ビード高さHが高くなった例である。この場合、溶接ビードにおける気孔欠陥率が大きくなった。比較例9においては、本溶接時の溶接池の高さが高く、溶融池の内部に侵入しためっき蒸気が、溶融池の表面から排出されるまでの距離が長くなり、めっき蒸気が溶融池の表面から排出されることなく、溶融池の内側に気泡として多量に残ったものと考えられる。
これに対し、実施例1~15のように、以下の要件(A)~(D)を満たす重ね隅肉溶接継手は、溶接ビードにおける気孔欠陥率が7.0%以下と小さくなることが分かる。
(A)鋼板間に存在するめっき層の合計の付着量が、10g/m以上120g/m以下であること。
(B)第1鋼板及び第2鋼板のうちの一方の板厚Tと、第1鋼板及び第2鋼板のうちの他方の板厚Tとが、下記関係(1)を満たすこと。
(C)鋼板間の隙間Gが、板厚T以下であること。
(D)溶接ビードの高さHと、板厚Tと、隙間Gとが、下記関係(2)を満たすこと。
≦T≦2mm …(1)
H≦T+G+5mm …(2)
7.補足
尚、溶接ビードの気孔欠陥率は、溶接ビードのブローホールの存在量と対応する。一方で、溶接ビードにはブローホールのほか、溶接ビードの表面にピットが存在する場合がある。ここで、ピットは溶接ビードの強度に与える影響が小さい。そのため、本実施例においては、溶接ビードにおける気孔欠陥率を、溶接ビードの強度の指標とした。
一方で、外観性や耐食性等を考慮すると、溶接ビードがピットを有しないほうが好ましい。本発明者が確認した限りでは、溶接ビードにおけるピットの量は、溶接ビードにおける気孔欠陥率と相関する。すなわち、溶接ビードにおける気孔欠陥率が小さければ、ピットの存在量も小さくなる。本発明者が目視で確認した限りでは、上記実施例1~15のいずれについても、溶接ビードの表面にピットは存在しなかった。
10 第1鋼板
11 第1面
12 第2面
20 第2鋼板
23 第3面
24 第4面
30 溶接ビード
35 仮付け溶接痕
41、42、43、44 めっき層
100 重ね隅肉溶接継手

Claims (5)

  1. 重ね隅肉溶接継手であって、第1鋼板と、第2鋼板と、溶接ビードとを有し、
    前記第1鋼板が、前記第2鋼板側に面する第1面と、前記第1面とは反対側に面する第2面とを有し、
    前記第2鋼板が、前記第1鋼板側に面する第3面と、前記第3面とは反対側に面する第4面とを有し、
    前記第2鋼板の端部が、前記溶接ビードを介して、前記第1面に接合され、
    前記第1面及び前記第3面のうちの一方又は両方に、めっき層が形成され、
    前記第1面及び前記第3面に対する前記めっき層の合計の付着量が、10g/m以上120g/m以下であり、
    前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの一方の板厚Tと、前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの他方の板厚Tとが、下記関係(1)を満たし、
    前記第1面と前記第3面との間の隙間Gが、前記板厚T以下であり、
    前記第1面から前記溶接ビードの頂点までの高さHと、前記板厚Tと、前記隙間Gとが、下記関係(2)を満たし、
    前記溶接ビードが、7.0%以下の気孔欠陥率を有する、
    重ね隅肉溶接継手。
    ≦T≦2mm …(1)
    H≦T+G+5mm …(2)
  2. 仮付け溶接痕が存在し、
    前記仮付け溶接痕の間隔Iと、前記板厚Tとが、以下の関係(3)を満たす、
    請求項1に記載の重ね隅肉溶接継手。
    I≦250×T …(3)
  3. 前記溶接ビードが、0.5%以上7.0%以下の気孔欠陥率を有する、
    請求項1又は2に記載の重ね隅肉溶接継手。
  4. 前記めっき層が、質量%で、Znを40%以上100%以下含む、
    請求項1又は2に記載の重ね隅肉溶接継手。
  5. 重ね隅肉溶接継手の製造方法であって、
    第1鋼板と第2鋼板とを重ね合わせたうえで、溶接予定箇所に対して仮付け溶接を施すこと、及び、
    前記仮付け溶接が施された前記溶接予定箇所に対して、アーク溶接を施し、前記第1鋼板と前記第2鋼板とを溶接ビードを介して接合すること、を含み、
    前記第1鋼板が、前記第2鋼板側に面する第1面と、前記第1面とは反対側に面する第2面とを有し、
    前記第2鋼板が、前記第1鋼板側に面する第3面と、前記第3面とは反対側に面する第4面とを有し、
    前記第2鋼板の端部が、前記溶接ビードを介して、前記第1面に接合され、
    前記第1面及び前記第3面のうちの一方又は両方に、めっき層が形成され、
    前記第1面及び前記第3面に対する前記めっき層の合計の付着量が、10g/m以上120g/m以下であり、
    前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの一方の板厚Tと、前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうちの他方の板厚Tとが、下記関係(1)を満たし、
    前記第1面から前記溶接ビードの頂点までの高さHと、前記板厚Tと、前記第1面及び前記第3面の間の隙間Gとが、下記関係(2)を満たし、
    前記仮付け溶接の間隔Iと、前記板厚Tとが、以下の関係(3)を満たす、
    製造方法。
    ≦T≦2mm …(1)
    H≦T+G+5mm …(2)
    I≦250×T …(3)
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