JP2023149882A - 多層ポリイミドフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ロールツーロール式のフレキシブ ル金属積層板製造工程中のアルカリ環境下において、フィルムに発生するクラックや割れ ・裂けを抑制できるポリイミドフィルム、ポリイミド積層フィルム、並びに金属張積層体を提供することにある。【解決手段】非熱可塑性ポリイミド層と少なくとも1層以上接着層とを有する多層ポリイミドフィルムであって、前記接着層にポリイミドを含有し、接着層の25μm厚み時の水蒸気透過率が40g/m2・24h以下であり、かつ、接着層の弾性率が4GPa以上であることを特徴とする多層ポリイミドフィルムにより上記課題を解決することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に接着層を有する多層ポリイミドフィルムに関するものである。
ポリイミドフィルムは、機械強度、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れているため、電子基板材料用途で多く利用されている。例えば、ポリイミドフィルムを基板材料とし、少なくとも片面に銅箔を積層したフレキシブル銅張積層板(以下、FCCLともいう)や、さらに回路を作成したフレキシブルプリント基板(以下、FPCともいう)などが製造され、各種電子機器に使用されている。近年では、非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含む接着層を形成した多層ポリイミドフィルムに代表されるような多層ポリイミドフィルム上に直接金属層を設けて形成される二層FCCLや二層FPCが開発され、その需要が伸びている。
近年の電子機器の高速信号伝送に伴う回路を伝播する電気信号の高周波化において、電子基板材料の低誘電率、低誘電正接化の要求が高まっている。電気信号の伝送損失を抑制するには、誘電率と誘電正接を低くすることが有効な為である。IoT社会の黎明期である近年、高周波化の傾向は進んでおり、例えば10GHz以上の領域においても伝送損失を抑制できるような基板材料が求められている。
また、これまで以上に電子機器の軽量化、小型化、薄膜化の要求が進んでおり、市場からはこれを達成するために、実装するFPCも薄膜化することが望まれている。また、生 産性向上(コストダウン化)に伴うフレキシブル銅張積層板の製造工程の変更に伴い、ポリ イミドフィルムなどの材料にかかる負荷、特に機械強度の向上などの要求も増している。 FPCの従来の製造方法は、現像工程、エッチング処理工程、レジスト剥離工程などから なる製造工程がバッチ式(非連続工程)で行われていた。現像・エッチング処理・レジス ト剥離工程で使用するアルカリ溶液に対するポリイミドの耐性を制御した報告はなされて いる。(例えば、特許文献1)また、ポリイミドフィルムの粘弾性の制御に関しても 開示されている(例えば、特許文献2)。
特開2012-186377号公報 特開2017-177602号公報
本発明者らが鋭意検討した結果、FPCに加工する際には、アルカリ水溶液に接触する工程があり、耐アルカリ性も求められている。連続式の一例であるロールツーロール式に おいては、従来のバッチ式よりも強い荷重がポリイミド積層フィルムにかかった状態でア ルカリ水溶液と接触することとなる。その結果として、特許文献1に開示されたような、 従来のバッチ式におけるアルカリ処理では認められていなかったポリイミド積層フィルム におけるクラックや割れ・裂けといった現象が発生するという課題が顕在化した。
また、特許文献2に開示された材料では、汎用FPCに用いることは可能であるが、誘電特性に関する記載がなく、実施例に樹脂組成から推測するに、高周波用途の基板材料への適応は不可能である。高周波用途の適応可能であり、かつ、上記のようなロールツーロール式により連続的にFPCを製造する工程を経てもクラックが発生しないようなポリイミド材料は、これまで提供されていなかった。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであって、ロールツーロール式のフレキシブ ル金属積層板製造工程中のアルカリ環境下において、フィルムに発生するクラックや割れ ・裂けを抑制できるポリイミドフィルム、ポリイミド積層フィルム、並びに金属張積層体 を提供することにある。
上記の課題に鑑み鋭意検討した以下の方法によって課題を解決に至った。
1).非熱可塑性ポリイミド層と少なくとも1層以上接着層とを有する多層ポリイミドフィルムであって、前記接着層にポリイミドを含有し、接着層の25μm厚み時の水蒸気透過率が40g/m・24h以下であり、かつ、接着層の弾性率が4GPa以上であることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。
2).前記多層ポリイミドフィルムの50μm厚みの時水蒸気透過率が50g/m・24h以下であることを特徴とする1)に記載の多層ポリイミドフィルム。
3).周波数10GHz、温度22°C~24°C、湿度45%~55%における誘電正接が0.0040以下であることを特徴とする、1)または2)に記載の多層ポリイミドフィルム。
4).前記接着層に含まれるポリイミド樹脂は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4'-オキシジフタル酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種の酸二無水物成分と、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルからなる群より選択される少なくとも一種のジアミン成分を重合して得られることを特徴とする1)~3)のいずれか一項に記載の多層ポリイミドフィルム。
5).前記接着層に含まれるポリイミド樹脂は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の酸二無水物成分と、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルからなる群より選択される少なくとも1種のジアミン成分とを重合して得られるポリイミド樹脂あることを特徴とする4)記載の多層ポリイミドフィルム。
6).前記非熱可塑性ポリイミド層は、1,4-ジアミノベンゼンと1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを少なくとも含むジアミン成分と、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4'-オキシジフタル酸二無水物を少なくとも含む酸二無水物モノマー成分を原料とするポリイミドを有することを特徴とする1)~5)いずれか一項に記載の多層ポリイミドフィルム。
7).1)~6)のいずれか一項に記載の多層ポリイミドフィルムに金属層を設けたフレキシブル金属張積層体。
8).7)記載のフレキシブル金属張積層体の金属層に回路を形成してなるフレキシブルプリント基板
本発明の多層ポリイミドフィルムは、低い誘電特性を発現するとともに、接着層の回路埋め込み性、金属層を形成した場合の密着性にも優れるので、FPCの高速伝送路基板に好適に用いることができ、さらに、ロールツーロール式の連続的なFPCの製造工程においてもポリイミドフィルムに発生するクラックを抑制することができる。
本発明の実施の形態について以下詳細な説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明者らは、非熱可塑性ポリイミド層と少なくとも1層以上接着層とを有する多層ポリイミドフィルムにおいて、前記接着層にポリイミドを含有し、かつ当該接着層の水蒸気透過率が低く、かつ、接着層の弾性率を高くすることで、アルカリ環境下での強靭性に有効であることを見出した。つまり、水蒸気透過率を40g/m・24h以下にし、かつ弾性率を4GPa以上とすることが、耐アルカリ性(デスミア耐性)に良好であることを見出した。このような分子設計をすることによって、アルカリ環境下での強靭性が改良されるという知見は、本発明によって初めて明らかにされたものである。
(接着層)
本発明の接着層の一例について詳述する。本発明における接着層は、ポリイミド樹脂を含むとともに、当該ポリイミドの25μm厚みのときの水蒸気透過率が40g/m・24h以下であり、かつ当該ポリポリイミドの弾性率が4GPa以上であれば特に限定されるものではない。本発明において水蒸気透過率は、接着層に含有されるポリイミドの単層フィルムを作成し、JIS Z0208に準拠し、温度40℃、相対湿度90%の条件にて測定して求めたものをいう。特に記載のない場合は、厚み25μmでの測定値を示すこととする。また、弾性率は、接着層に含有されるポリイミドの単層フィルムを作成し、ASTM D882に準じて行った。測定には島津製作所製のAUTOG RAPH AGS-Jを使用した。以下の条件にて測定したものを示す。
(測定条件)
サンプル測定範囲;幅15mm
つかみ具間距離10 0mm
引張速度;200mm/min
測定温度;23℃
接着層に含まれるポリイミドの水蒸気透過率は、小さいほど好ましく、40g/m・24h以下であると、上述したフレキシブルプリント基板の製造工程においてアルカリ処理を行っても、クラックや割れ、裂けが発生せずに、十分な耐性を示すことができる。よりどのような工程であっても耐性を示すという観点で、30g/m・24h以下であることが好ましく、25g/m・24h以下であることがより好ましい。
また本発明の技術思想は、上述のとおり、ロールツーロール式の連続的なFPCの製造工程において、クラックや割れ裂けなく製造することであり、上記特性に加えて、接着層に含まれるポリイミドの弾性率が4.0MPa以上であることが好ましい。弾性率が上記範囲にあると、工程中で荷重がかかっても変形を抑制することができ、FPCの製造工程において、クラックや割れ裂けの発生を抑制できる。変形を抑制できるという観点から、好ましくは、弾性率は4.0MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以上であるとより耐性を高くできるという観点でさらに好ましい。
ここまで詳述した特性を有する接着層を得る具体的な方法は、下記に示すポリイミド樹脂の製造方法において、原料となるジアミンや酸二無水物を適宜選択することによって実現できる。しかし、本発明の接着層に用いられるポリイミド樹脂は、その特定の構造を導入することにより低誘電正接化を狙う従来の方法とは異なり、多層ポリイミドフィルムの製造工程における高温での加熱に耐えうる接着層を用いるという技術思想に基づくため、特に使用するジアミンや酸二無水物において制限はない。また、水蒸気透過率や弾性率といった特性は、容易に測定が可能であるため、これらの特性が目的とする範囲となるかを確認しながら適宜原料の選定を行えばよいが、以下では、これらの特性を調整するための一例を示す。
接着層に含まれるポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、少なくとも一種のジアミンと少なくとも1種の酸二無水物を有機溶媒中で実質的に略等モルになるように混合、反応することにより得られる。水蒸気透過率が40g/m・24h以下であり、かつ弾性率が4.0MPa以上を示す樹脂とするためには、ポリイミドが凝集構造を示すことが必要である。本発明の凝集構造とは、局所的な秩序性有する分子鎖のパッキングを意味する。ポリイミドは芳香環あるいは芳香族複素環などの剛直な構成単位からなるため絡み合いが少なく、一般的な高分子のような折りたたみ鎖を形成しにくい。一方で、イミド環を有する分子鎖に特有な分子鎖のパッキングが起こり、その局所的な秩序性をもった分子鎖のパッキングが起こる。凝集構造はポリイミドの一次構造とポリイミドフィルムの製膜条件により、制御することが可能である。一次構造による凝集構造を実現する手段としては種々の方法があるが、比較的剛直な構造を持つジアミンや酸二無水物と柔軟な構造を持つジアミンや酸二無水物を適度に含有させることによって制御が可能である。また、発明の多層ポリイミドフィルムは高周波用途への適応を想定しており、誘電正接を小さくするという観点からジアミンや酸二無水物を選定することも必要である。
本発明のポリアミド酸に使用されるジアミンについては特に限定されるものではないが、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ヒドロキシビフェニル、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
この中でも、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルからなる群より選択される少なくとも一種のジアミン成分を用いると接着層の水蒸気透過率弾性率を調整することが容易になることから好ましい。
さらに、低誘電正接を発現させる観点から、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルからなる群より選択される少なくとも1種のジアミン成分を含むことが好ましい。1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンの使用量は、ジアミン成分100モル%に対して50モル%以上が好ましく、60モル%~80モル%の範囲で用いることがより好ましい。更に、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンの使用に加えて2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルを使用するとより一層の低誘電正接化を図ることができる。具体的には、ジアミン成分100モル%に対して10モル%以上使用することが好ましく、20モル%~40モル%の範囲で用いることがより好ましい。
酸二無水物についても特に限定されるものではないが、具体的には、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4'-オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。
この中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4'-オキシジフタル酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種の酸二無水物成分を用いると接着層に含まれるポリイミドの水蒸気透過率と弾性率調整することが容易になることから好ましい。
さらに、低誘電正接を発現させる観点から、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種の酸二無水物成分を含むことが好ましい。ピロメリット酸二無水物の使用量は、酸二無水物成分100モル%に対して30モル%以上が好ましく、35モル%~60モル%の範囲で用いることがより好ましい。更に、ピロメリット酸二無水物の使用に加えて3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用するとより一層の低誘電正接化を図ることができる。具体的には、酸二無水物成分100モル%に対して30モル%以上使用することが好ましく、40モル%~65モル%の範囲で用いることがより好ましい。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、50μm厚みの時水蒸気透過率が50g/m・24h以下であることが好ましい。上述の通り、接着層に含まれるポリイミドの水蒸気透過率を小さくすることで、多層ポリイミドフィルムの水蒸気透過率を抑制することもできる。
本発明の非熱可塑性ポリイミド層は、誘電正接を小さくするという観点からジアミンや酸二無水物を選定するとともに、フィルムの製造工程でより高い温度でイミド化することで上述の誘電性正接を実現することが可能である。より高い温度でのイミド化については、後の多層ポリイミドフィルムの製造方法で詳述するが、ここでは主に、ジアミンや酸二無水物の選定という観点から説明する。
本発明の非熱可塑性ポリイミド樹脂層の製造方法の一例について詳述する。本発明に用いられるポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、少なくとも一種のジアミンと少なくとも1種の酸二無水物を有機溶媒中で実質的に略等モルになるように混合、反応することにより得られる。
本発明のポリアミド酸に使用されるジアミンについては特に限定されるものではないが、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ヒドロキシビフェニル、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
低い誘電正接を示す非熱可塑性ポリイミド樹脂層を製造するには、上記の中でも、1,4-ジアミノベンゼンを使用することが好ましい。1,4-ジアミノベンゼンの使用量は、ジアミン成分100モル%に対して70モル%以上が好ましく、80モル%~90モル%の範囲で用いることがより好ましい。更に、1,4-ジアミノベンゼンの使用に加えて1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを使用するとより一層の低誘電正接化を図ることができる。具体的には、ジアミン成分100モル%に対して5モル%以上使用することが好ましく、10モル%~30モル%の範囲で用いることがより好ましい。
酸二無水物についても特に限定されるものではないが、具体的には、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、3,4'-オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。
低い誘電正接を示す非熱可塑性ポリイミド樹脂層を製造するには、上記の中でも、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用量は、酸二無水物成分100モル%に対して40モル%以上が好ましく、50モル%~70モル%の範囲で用いることがより好ましい。更に、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用に加えて4,4'-オキシジフタル酸二無水物を使用するとより一層の低誘電正接化を図ることができる。具体的には、酸二無水物成分100モル%に対して20モル%以上使用することが好ましく、30モル%~50モル%の範囲で用いることがより好ましい。
非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、上記ジアミンと酸二無水物を有機溶媒中で実質的に略等モルになるように混合、反応することにより得られる。使用する有機溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒すなわちN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。ポリアミド酸の固形分濃度は特に限定されず、5重量%~35重量%の範囲内であればポリイミドとした際に十分な機械強度を有するポリアミド酸が得られる。
非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に接着層を有する多層ポリイミドフィルムの製造方法として、非熱可塑性ポリイミドフィルムを得た後、接着層に用いられるポリイミドの前駆体となるポリアミド酸を含む液を塗布・乾燥した後、イミド化して製造するいわゆる塗工法と呼ばれる方法、金属箔上に複数のポリアミド酸溶液を順次キャストし、次いでイミド化することにより金属箔上に多層ポリイミドフィルムに相当する層を直接形成するキャスト法、そして、非熱可塑性ポリイミドフィルム非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液と、前記接着層を形成するためのポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液とを、共押出法により支持体上に流延および/または塗布して乾燥し、自己支持性を有する多層ゲルフィルムを得、これをさらに加熱・イミド化して多層ポリイミドフィルムを得る共押出流延・塗布方法などがある。このうち、特に塗工法や共押出流延・塗布方法によって多層ポリイミドフィルムを製造する場合には、多層フィルムの層間の剥離、白濁などが発生することがある。また共押出流延・塗布法は、その製造工程に多層ゲルフィルムを支持体から引きはがす工程が含まれるが、この際、支持体からの剥離性に問題があると、多層フィルムを製造できない、あるいは最終的な多層フィルムの品質が低下することがある。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、各層が同時に形成され、乾燥・加熱する、あるいは逐次形成後、同時に加熱する製造方法で得られるフィルムである場合に、より優れた効果を発現するが、例としては、金属箔上に複数のポリアミド酸溶液を順次キャストし、次いでイミド化することにより金属箔上に多層ポリイミドフィルムに相当する層を直接形成するキャスト法、あるいは、非熱可塑性ポリイミドフィルム非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液と、前記接着層を形成するためのポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液とを、共押出法により支持体上に流延および/または塗布して乾燥し、自己支持性を有する多層ゲルフィルムを得、これをさらに加熱・イミド化して多層ポリイミドフィルムを得る共押出流延・塗布方法による製造が挙げられる。その中でも、共押出流延・塗布法によりフィルムを成膜する場合は、その製造工程で支持体上からの多層のゲルフィルムの剥離工程が含まれることから、より優れた効果を発現するので、以下、共押出流延・塗布法により多層ポリイミドフィルムの製造方法について詳述する。
共押出流延・塗布法では、少なくとも2種以上のポリイミド前駆体溶液を支持体上に流延・塗布する。そこでまず、各層を形成するためのポリイミド前駆体溶液の製造について説明する。
まず、非熱可塑性ポリイミド層を形成するためのポリイミド前駆体溶液について説明する。ポリイミド前駆体のポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、実質的等モル量の芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶媒中に溶解させた溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。ポリアミド酸溶液は通常5~35重量%、好ましくは10~30重量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を有する。
重合方法としてはあらゆる公知の方法及びそれらを組み合わせた方法を用いることができる。代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法、
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法、
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
使用する有機溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒すなわちN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。ポリアミド酸の固形分濃度は特に限定されず、5重量%~35重量%の範囲内であればポリイミドとした際に十分な機械強度を有するポリアミド酸が得られる。また、原料であるジアミンと酸二無水物の添加順序についても特に限定されない。
上記ポリアミド酸には、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
このようにして得られた、非熱可塑性ポリイミド層および接着層を形成するためのポリイミド前駆体溶液を、二層以上の多層ダイへ同時に供給して、多層ダイの吐出口から溶液を二層以上の薄膜状体として押出すことで2種以上のポリイミド前駆体から構成された複数層が得られる。一般的に、二層以上の多層ダイから押出された溶液を、支持体上に連続的に押し出し、次いで、支持体上の多層ゲルフィルムの溶媒の少なくとも一部を揮散させ、さらに高温で充分に加熱処理して溶媒を実質的に除去すると共にイミド化を進行させることで、目的の多層ポリイミドフィルムが得られる。支持体の形状は特に問わないが、多層ポリイミドフィルムの生産性を考慮すると、ドラム状またはベルト状であることが好ましい。また、支持体の材質も特に問わず、金属、プラスチック、ガラス、磁器などが挙げられ、好ましくは金属であり、耐腐食性に優れるSUS材であることがより好ましい。また、Cr、Ni、Snなどの金属メッキをしても良い。
多層ダイから押出された少なくとも三層、または少なくとも二層の薄膜状体中の溶媒の揮散方法に関しては特に限定されないが、加熱かつ/または送風による方法が最も簡易な方法である。上記加熱の際の温度は、高すぎると溶媒が急激に揮散し、当該揮散の痕が最終的に得られる接着フィルム中に微小欠陥を形成せしめる要因となるため、用いる溶媒の沸点+50℃未満であることが好ましい。 イミド化時間に関しては、実質的にイミド化および乾燥が完結するに十分な時間を取ればよく、一義的に限定されるものではないが、一般的には、化学キュア法を採用する場合、1~600秒程度、熱キュア法を採用する場合、60~1800秒の範囲で適宜設定される。 イミド化する際にかける張力としては、1kg/m~15kg/mの範囲内とすることが好ましく、5kg/m~10kg/mの範囲内とすることが特に好ましい。張力が上記範囲より小さい場合、フィルム搬送時にたるみや蛇行が生じ、巻取り時にシワが入ったり、均一に巻き取れない等の問題が生じる可能性がある。
一般的にポリイミドは、ポリイミドの前駆体、即ちポリアミド酸からの脱水転化反応により得られる。当該転化反応を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法と、化学硬化剤を使用する化学キュア法の2法が最も広く知られている。中でも、化学硬化剤を使用する化学キュア法は生産性が向上し、フィルムの機械的強度が確保できる。本発明では、化学キュア法が採用され、2種以上のポリイミド前駆体溶液の中の少なくとも一つのポリイミド前駆体溶液に、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有させる。
ここで、化学硬化剤とは、脱水剤及びイミド化触媒を含むものである。ここでいう脱水剤とは、ポリアミド酸に対する脱水閉環剤であり、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N′-ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物を好ましく用いることができる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。化学脱水剤の好適な導入量は、化学脱水剤を含有させる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.5~4.0モル、好ましくは0.7~4.0モル、特に好ましくは1.0~4.0モルである。前記範囲を超えると、導体が腐食することがある。また、前記範囲を下回ると、硬化速度が充分でなく、本発明の効果を発揮できないことがある。
また、イミド化触媒とは硬化剤のポリアミド酸に対する脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であるが、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。そのうち、イミダゾ-ル、ベンズイミダゾ-ル、イソキノリン、キノリン、またはβ-ピコリンなどの含窒素複素環化合物であることが好ましい。さらに、脱水剤及びイミド化触媒からなる溶液中に、有機極性溶媒を導入することも適宜選択されうる。イミド化触媒の好適な導入量は、イミド化触媒を含有させる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.05~2.0モル、好ましくは0.1~2.0モル、特に好ましくは0.2~2.0モルである。前記範囲を超えると、ポリイミド層にイミド化触媒が残存し、長期耐熱性に劣る場合がある。また、前記範囲を下回ると、硬化速度が充分でなく、本発明の効果を発揮できないことがある。
上記の二層以上の多層ダイとしては各種構造のものが使用できるが、例えば複数層用フィルム作成用のTダイス等が使用できる。また、従来既知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であるが、特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックTダイやマルチマニホールドTダイが例示される。
このようにして得られた多層ポリイミドフィルムに金属層を設けて金属張積層板を製造するには、接着層側に金属箔を配して加熱加圧により金属箔を貼り合わせれば良い。
あるいは金属箔上に、複数のポリイミド前駆体溶液を用意して逐次キャストし、加熱により溶剤除去、イミド化を行ってフレキシブル金属箔積層体を得る方法もある。
本発明において用いることができる金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器・電気機器用途に本発明のフレキシブル金属張積層板を用いる場合には、例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる箔を挙げることができる。一般的なフレキシブル積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着層が塗布されていてもよい。また、上記金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。
このようにして得られたフレキシブル金属張積層板の金属層を公知の方法によりエッチングすることによりフレキシブルプリント基板が得られる。
本発明によって得られるポリイミド積層フィルムは、ロールツーロール式で連続的にフ レキシブルプリント配線板を製造する際に、デスミアクラックの発生を抑制できる。これ を調べる方法として、本発明ではフレキシブル金属箔積層体のデスミア液浸漬時のクラッ ク耐性を評価した。この方法で膨潤液に15分以上浸漬させてもクラックが確認されなか ったものはアルカリ環境下に起因するクラックの発生を抑制できるという点で好適であり 、45分以上浸漬させてもクラックが確認されなかったものが特に好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<フレキシブル金属箔積層体のデスミア液浸漬時のクラック耐性>
実施例ならびに比較例で得られたフレキシブル金属箔積層体から長手方向に10cm、幅5cmの大きさに切り取り、切り取った積層体の片側の金属箔層をエッチング処理した 。このテストピースをクッション材に挟み、180℃、17.23kgf/cm2の条件 で90分間熱プレスを行った。その後、50℃に保った膨潤液に90秒、70℃に保った。デスミア液に600秒、室温に保った中和液に40秒、順次浸漬した。浸漬後、水で洗浄した後に60℃で10分間乾燥させた。その後、上記のテストピースを以下のようにプレ ス処理した。まず、テストピースをクッション材に挟み、180℃、17.23kgf/ cm2の条件で90分間熱プレスを行った。この時、FR4基板は1.0cm×2.5c m×8箇所の穴がくり抜かれているものを使用した。以上のテストピースを膨潤液に90 秒浸漬後、FR4基板の穴ごとに2.2cm×5.0cmのサイズに切り落とし測定用の 試験片とした。上記の測定用試験片を70℃に保ったデスミア液に所定の時間(15、3 0、45、60分間)浸漬させ、室温に保った中和液に40秒、順次浸漬させた。浸漬後、水で洗浄・60℃で10分間乾燥させた試験片におけるFR4の空洞部分を観察に使用 した。観察は光学顕微鏡を用い、50~200倍でクラックの発生有無を判定した。膨潤液に45分以上浸漬させてもクラックが確認されなかったものを◎、15分以上浸漬させてもクラックが確認されなかったものを〇、15分浸漬させた際にクラックが確認されたものを×とした。
<水蒸気透過率>
水蒸気透過率は、JIS Z0208に準拠し、温度40℃、相対湿度90%の条件にて測定した。
<弾性率>
引張弾性率はASTM D882に準じて行った。測定には島津製作所製のAUTOGRAPH AGS-Jを使用した(サンプル測定範囲;幅15mm、つかみ具間距離10 0mm、引張速度;200mm/min、測定温度;23℃)。
<誘電率及び誘電正接(Df)の測定>
誘電率及び誘電正接は、HEWLETTPACKARD社製のネットワークアナライザ8719Cと株式会社関東電子応用開発製の空洞共振器振動法誘電率測定装置CP511とを用いて測定した。サンプルを2mm×100mmに切り出し、23℃/50%R.H.環境下で24時間調湿後に測定を行った。測定は10GHzで行った。
<非熱可塑性ポリイミド前駆体の合成>
(合成例1)
反応系内を20℃に保った状態で、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)を1477.48kg、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPE-Rともいう)を27.28kgと1,4-ジアミノベンゼン(以下、PDAともいう)を57.24kg添加し、更に3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう)を109.93kg添加後、窒素雰囲気下で攪拌した。BPDAの溶解を確認後、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPAともいう)を71.48kg添加し、30分間攪拌した。最後に、4.08kgのピロメリット酸二無水物(以下、PMDAともいう)を固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
(合成例2)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを1404.80kg、TPE-Rを27.87kgとPDAを58.48kg添加し、更にBPDAを112.31kg添加後、窒素雰囲気下で攪拌した。BPDAの溶解を確認後、ODPAを65.13kg添加し、30分間攪拌した。最後に、9.71kgのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
(合成例3)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを1480.09kg、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下、4,4’-ODAともいう)を23.70kgと2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン(以下、BAPPともいう)を72.89kg添加し、窒素雰囲気下で攪拌した。溶解したことを目視確認した後、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAともいう)を38.14kgとPMDAを32.27kg添加後、30分間攪拌した。PMDAの溶解を確認後、PDAを32.00kg添加後、PMDAを67.13kg添加し、30分間攪拌した。最後に、3.87kgのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
<接着層に使用するポリイミド前駆体の合成>
(合成例4)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを1507.46kg、TPE-Rを98.25kgとBPDAを70.71kg添加後、窒素雰囲気下で30分間攪拌した。次に、PMDAを15.73kg添加し、30分間攪拌した。続いて、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(以下、m-TBともいう)を30.61kg、PMDAを33.55kg添加し、30分間攪拌した。最後に、3.15kgのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が1000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
(合成例5)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを1508.32kg、TPE-Rを96.16kgとBPDAを89.97kg添加後、窒素雰囲気下で30分間攪拌した。続いて、m-TBを29.96kg、PMDAを32.84kg添加し、30分間攪拌した。最後に、3.08kgのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が1000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
(合成例6)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを1506.86kg、TPE-Rを99.70kgとBPDAを57.40kg添加後、窒素雰囲気下で30分間攪拌した。次に、PMDAを26.60kg添加し、30分間攪拌した。続いて、m-TBを31.06kg、PMDAを34.04kg添加し、30分間攪拌した。最後に、3.19kgのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が1000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
(実施例1)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液に、DMF144kg、イソキノリン153kg、無水酢酸303kgの割合で混合して調製した硬化剤を、上記ポリアミド酸溶液に対して重量比40%で連続的に添加し、ミキサーにより攪拌した後、得られた樹脂液を三層共押出ダイの中央層に供給した。一方、合成例4で得られたポリアミド酸溶液を三層共押出ダイの中央層の両面に供給した。
次いで、三層共押出ダイの厚さ1.3mmに調節されたリップ開口部(すなわち、短手方向の長さが1.3mmのリップ開口部)から上記両樹脂液を押出し、この樹脂液膜を100℃のステンレス製エンドレスベルト上にて380秒間、乾燥させることにより、自己支持性のあるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムを、エンドレスベルトから引き剥がした後、両端をピンにより固定し、300℃×110秒間、380℃×97秒間の加熱条件で乾燥およびイミド化させることにより、接着層/非熱可塑ポリイミド層/接着層の厚みが、8μm/34μm/8μmの三層構造の多層ポリイミドフィルムを得た。
多層ポリイミドフィルムの両面に厚さが12μmの電解銅箔(CF-T49A-HD2;福田金属箔粉工業株式会社製)、さらにその両側に保護材料(アピカル125NPI;カネカ製)を配して、熱ロールラミネート機を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力0.8トン(0.03トン/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、両面FCCLを作製した。
(実施例2)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液に、DMF144kg、イソキノリン153kg、無水酢酸303kgの割合で混合して調製した硬化剤を、上記ポリアミド酸溶液に対して重量比40%で連続的に添加し、ミキサーにより攪拌した後、得られた樹脂液を三層共押出ダイの中央層に供給した。一方、合成例4で得られたポリアミド酸溶液を三層共押出ダイの中央層の両面に供給した。次いで、実施例1と同様の操作にて、多層ポリイミドフィルムおよび両面FCCLを作製した。
(実施例3)
合成例5で得られたポリアミド酸溶液を三層共押出ダイの中央層の両面に供給した以外は、実施例1と同様の操作にて、多層ポリイミドフィルムおよび両面FCCLを作製した。
(実施例4)
合成例6で得られたポリアミド酸溶液を三層共押出ダイの中央層の両面に供給した以外は、実施例1と同様の操作にて、多層ポリイミドフィルムおよび両面FCCLを作製した。
(比較例1)
合成例3で得られたポリアミド酸溶液に、DMF144kg、イソキノリン153kg、無水酢酸303kgの割合で混合して調製した硬化剤を、上記ポリアミド酸溶液に対して重量比40%で連続的に添加し、ミキサーにより攪拌した後、得られた樹脂液を三層共押出ダイの中央層に供給した。一方、合成例4で得られたポリアミド酸溶液を三層共押出ダイの中央層の両面に供給した。次いで、実施例1と同様の操作にて、多層ポリイミドフィルムおよび両面FCCLを作製した。
実施例1~4、比較例1で使用した接着層の製膜性、融解温度、融解熱、360℃における貯蔵弾性率、400℃における貯蔵弾性率、損失弾性率を表1に示す。また、実施例1~4、比較例1で得られた多層ポリイミドフィルムの誘電正接、多層ポリイミドフィルムから得られた両面FCCLのクラック耐性、多層ポリイミドフィルムの接着層に含まれるポリイミドの水蒸気透過率、弾性率を表1に示す。

Claims (8)

  1. 非熱可塑性ポリイミド層と少なくとも1層以上接着層とを有する多層ポリイミドフィルムであって、前記接着層にポリイミドを含有し、接着層の25μm厚み時の水蒸気透過率が40g/m・24h以下であり、かつ、接着層の弾性率が4GPa以上であることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。
  2. 前記多層ポリイミドフィルムの50μm厚みの時水蒸気透過率が50g/m・24h以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
  3. 周波数10GHz、温度22°C~24°C、湿度45%~55%における誘電正接が0.0040以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多層ポリイミドフィルム。
  4. 前記接着層に含まれるポリイミド樹脂は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4'-オキシジフタル酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種の酸二無水物成分と、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルからなる群より選択される少なくとも一種のジアミン成分を重合して得られることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の多層ポリイミドフィルム。
  5. 前記接着層に含まれるポリイミド樹脂は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の酸二無水物成分と、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルからなる群より選択される少なくとも1種のジアミン成分とを重合して得られるポリイミド樹脂あることを特徴とする請求項4記載の多層ポリイミドフィルム。
  6. 前記非熱可塑性ポリイミド層は、1,4-ジアミノベンゼンと1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを少なくとも含むジアミン成分と、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4'-オキシジフタル酸二無水物を少なくとも含む酸二無水物モノマー成分を原料とするポリイミドを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の多層ポリイミドフィルム。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の多層ポリイミドフィルムに金属層を設けたフレキシブル金属張積層体。
  8. 請求項7記載のフレキシブル金属張積層体の金属層に回路を形成してなるフレキシブルプリント基板。




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