JP2023149372A - 大梁・小梁接合構造 - Google Patents

大梁・小梁接合構造 Download PDF

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Masato Takeuchi
淳一 田村
Junichi Tamura
智裕 木下
Tomohiro Kinoshita
卓也 植木
Takuya Ueki
健太郎 鈴木
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Abstract

【課題】床スラブ打設時にも連続小梁となり、小梁中央部のモーメント及びたわみは低減され、床スラブ荷重や施工時荷重により梁断面が決定されることが無く、連続小梁としての効果が確実に得られる大梁・小梁接合構造を提供する。【解決手段】本発明に係る大梁・小梁接合構造1は、H形断面鉄骨からなる大梁3に直交する方向に大梁ウェブ3Wを挟んで両側にH形断面鉄骨からなる小梁5を接合するものであって、小梁ウェブ5Wは大梁ウェブ3Wに接合された鉛直プレート7とボルト接合され、小梁下フランジ5FBは、大梁下フランジ3FB又は大梁ウェブ3Wに接合された水平プレート8に、接触部材9を介してメタルタッチし、小梁上フランジ5FTは、大梁上フランジ3FTと接合されていることを特徴とするものである。【選択図】 図1

Description

本発明は、建築鉄骨造における大梁と小梁の接合構造に関するものである。
一般的な鉄骨造の大梁・小梁接合部は、大梁ウェブに設けられる取り合い部材に小梁ウェブがボルト接合され、小梁の上下フランジは接合しないピン接合として設計される。ここで、ピン接合とは、せん断力と軸力を伝達して、曲げモーメントを伝達しない接合構造をいう。
このように両端がピン接合となった梁は単純梁と呼ばれ、床を支える際に生じるモーメントは、端部では生じず、中央部で最大となる。
しかしながら、近年需要が増加している物流倉庫や、今後増加すると考えられているデータセンターなど、梁スパンが大きく、かつ積載荷重の大きい建築物では、小梁中央部と小梁端部でのモーメントの差が大きくなり、小梁を最大応力で設計することは不経済となる。
そこで、小梁接合部を剛接合化し、端部にもモーメントを発生させることで、小梁の端部と中央部に生じるモーメントの差を小さくすることができ、設計を合理化する技術が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1では、小梁の下フランジは、大梁に取付けられる取り合い部材との間に、小梁下フランジ幅方向全長にわたって介挿される接触部材により接合され、小梁上フランジは大梁には接合されず、小梁上方に打設される床スラブとの合成効果に期待する構造となっている。
特許第6631679号公報
しかしながら、特許文献1のように、供用時に小梁上フランジに作用する引張力を、床スラブ内の鉄筋に負担させる構造では、床スラブ打設時の荷重に対して小梁は単純梁となるため、大きなたわみが生じるという課題があった。
また、小梁中央部のたわみが大きい場合には、予め小梁に、むくりをつけるなどの対策が必要となり施工性が悪くなる。また、小梁下フランジを接合するための接触部材がうまく嵌らなくなる可能性も考えられる。
さらに、床スラブ施工時の衝撃力や振動によって、接触部材が小梁フランジ幅方向に動き、脱落する危険もある。
また、小梁の上フランジに作用する引張力をコンクリート内部の鉄筋が負担する構造とする場合、設計時には小梁を合成梁として設計することになる。この場合、小梁を純鉄骨として設計する場合と比較して、負曲げ時の中立軸上昇に応じて、下フランジの応力は大きくなり、接触部材の支圧応力度が許容支圧応力度以上になる可能性がある。さらに、小梁下フランジの接合のために、小梁ウェブに設けるスカラップ分の剛性の低下についての考慮も必要である。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、床スラブ打設時にも連続小梁となり、小梁中央部のモーメント及びたわみは低減され、床スラブ荷重や施工時荷重により梁断面が決定されることが無く、連続小梁としての効果が確実に得られる大梁・小梁接合構造を提供することを目的としている。
鉄骨造における柱梁架構は、柱に接合される大梁に対して直交方向に小梁が配置される。ここで、小梁は床に作用する荷重を大梁に伝達できるよう設計され、地震による水平方向の荷重に対しては、柱と大梁により抵抗する機構となっている。したがって、小梁端を剛接合し、連続小梁とした場合、等分布荷重を想定した小梁のモーメント分布は図14のようになる。
図14に示すように、小梁端部(図14のB点)には常に負曲げモーメントが作用することになるため、大梁・小梁接合部において小梁上フランジには引張力が、小梁下フランジには圧縮力が作用することになる。
したがって、小梁の下フランジは圧縮力を伝達すればよいことになる。
本発明は係る知見に基づくものであり、具体的には以下の構成を備えてなるものである。
[1]本発明に係る大梁・小梁接合構造は、H形断面鉄骨からなる大梁に直交する方向に大梁ウェブを挟んで両側にH形断面鉄骨からなる小梁を接合するものであって、
小梁ウェブは前記大梁ウェブに接合された鉛直プレートとボルト接合され、小梁下フランジは、大梁下フランジ又は前記大梁ウェブに接合された水平プレートに、接触部材を介してメタルタッチし、小梁上フランジは、大梁上フランジと接合されていることを特徴とするものである。
[2]また、H形断面鉄骨大梁に直交する方向に大梁ウェブを挟んで両側にH形断面鉄骨小梁を接合する大梁・小梁接合構造であって、
小梁ウェブは大梁ウェブに接合される鉛直プレートとボルト接合され、小梁下フランジは、大梁下フランジ又は大梁ウェブに接合された水平プレートに、接触部材を介してメタルタッチし、
小梁上フランジは、大梁とは直接は接合されず、大梁を跨いで大梁の両側の小梁上フランジ上に配置されたフラットバー、または角棒を介して両側の小梁上フランジ同士が接合されていることを特徴とするものである。
[3]また、上記[1]又は[2]に記載のものにおいて、前記小梁下フランジの先端に下方に向かって傾斜する開先面が形成され、
前記接触部材における前記開先面と接触する面に、該開先面と同一の傾斜角の傾斜面を有し、かつ大梁下フランジ又は大梁ウェブに接合された水平プレートに接触する接触面の上下に落下防止として機能する突起を有することを特徴とするものである。
[4]また、上記[3]に記載のものにおいて、前記接触部材の傾斜面の傾斜角度をθ、前記接触部材と前記小梁フランジとの静止摩擦係数をμ、前記接触部材における上下の突起の内法寸法をhd、前記小梁の製造上の長さ寸法誤差をΔL、前記接触部材と接触する大梁下フランジ又は大梁ウェブに接合された水平プレートの厚みをtとしたときに、下式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするものである。
tanθ≦μ・・・(1)
d=t+Δltan(π/2-θ)・・・(2)
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のものにおいて、前記接触部材は、小梁ウェブの両側にそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のものにおいて、前記小梁に用いる鋼材は、降伏点が325N/mm2以上であることを特徴とするものである。
本発明によれば、従来よりも簡易な方法で小梁を大梁に剛接合することができ、床スラブ打設時にも連続小梁となり、小梁中央部のモーメント及びたわみは低減される。よって、床スラブ荷重や施工時荷重により梁断面が決定されることが無く、連続小梁としての効果が確実に得られる
本実施の形態に係る大梁・小梁接合構造の説明図である。 図1の矢視A-A断面図である。 本実施の形態で示した接触部材の説明図である。 図3に示した接触部材に圧縮力が作用したときに接触部材がずれないための条件を説明する説明図である。 本実施の形態で示した接触部材が小梁の製造誤差に追従することを説明する説明図である(その1)。 本実施の形態で示した接触部材が小梁の製造誤差に追従することを説明する説明図である(その2)。 本実施の形態に係る大梁・小梁接合構造の他の態様の説明図である(その1)。 本実施の形態に係る大梁・小梁接合構造の他の態様の説明図である(その2)。 本実施の形態に係る大梁・小梁接合構造の他の態様の説明図である(その3)。 図1に示した大梁・小梁接合構造において小梁を床スラブと一体化して合成梁とする方法の説明図である。 実施例における実験装置の説明図である。 実施例における荷重履歴の説明図である。 実施例における実験結果を示すグラフである。 小梁端を剛接合し、連続小梁とし、等分布荷重が作用したときの小梁のモーメント分布を示す図である。
[実施の形態1]
本実施の形態に係る大梁・小梁接合構造1は、図1~図3に示すように、H形断面鉄骨からなる大梁3に直交する方向に大梁ウェブ3Wを挟んで両側にH形断面鉄骨からなる小梁5を接合するものであって、
小梁ウェブ5Wは大梁ウェブ3Wに接合された鉛直プレート7とボルト接合され、小梁下フランジ5FBは大梁ウェブ3Wに接合された水平プレート8に接触部材9を介してメタルタッチし(図3参照)、小梁上フランジ5FTは、大梁上フランジ3FTと完全溶け込み溶接10により接合されている。
小梁ウェブ5Wと鉛直プレート7の接合は、小梁ウェブ5Wと鉛直プレート7に跨る添板11とボルトやナット等からなる締結部材13によって接合されている。
小梁下フランジ5FBは圧縮方向の応力に対して接触部材9を介して水平プレート8にメタルタッチすることで圧縮方向の力を伝達する。また、小梁上フランジ5FTは、大梁上フランジ3FTと溶接接合されることで、剛接合とみなすことが出来る。
接触部材9は、小梁下フランジ5FBの約半分の長さを有する棒状の部材であり(図2参照)、図1に示すように、大梁ウェブ3Wを挟んで左右に設けられている。そして、右側又は左側に設けられた接触部材9は、小梁ウェブ5Wを挟んで両側にそれぞれ1本ずつ設けられている。したがって、本実施の形態の接触部材9は、4本で構成されている。
接触部材9をこのように配置することで、小梁ウェブ5Wにはスカラップを設ける必要が無く、ウェブの断面欠損が無くなるため、高い剛性を得ることが出来る。
ただし、小梁ウェブ5Wの下フランジ側にスニップカットを設け、接触部材9を小梁下フランジ5FB全幅に渡って介入してもよい。
また、接触部材9の断面形状は図3に示すように、水平プレート8接触する面が垂直面で、小梁下フランジ5FBと接触する面は下方に向かって幅狭となる傾斜面となっている。傾斜面の傾斜角度θは、小梁下フランジ5FBの先端面の傾斜角度と同一である。
また、垂直面の上端及び下端には、水平プレート8側に突出する突起部9aが設けられている。突起部9aは、接触部材9が脱落して落下するのを防止するフェイルセーフとしての機能を有している。
接触部材9における小梁下フランジ5FBと接触する傾斜面の傾斜角度θの決定方法について、図4に基づいて説明する。
接触部材9は小梁下フランジ5FBから斜面に直交方向の圧縮力Fを受けるとすれば、この圧縮力Fは水平方向の力Fcosθと鉛直上方に向かう力Fsinθに分解することができる。
したがって、接触部材9が小梁下フランジ5FBに押されて鉛直方向に浮き上がる力はF×sinθとなる。
一方、接触部材9は、水平方向の力Fcosθで水平プレート8を押すため、接触部材9はその反力として水平プレート8から同じ大きさで向きが反対の力Fcosθを受けることになる。
そして、接触部材9が小梁下フランジ5FBに押されて鉛直方向に浮き上がろうとする力に対して、接触部材9の垂直面と水平プレート8との接触面の静止摩擦力のみにより抵抗すると考えた場合、接触面の静止摩擦係数をμとすると、接触部材が動き出さないための条件は、μFcosθ≧Fsinθとなる。
したがって、接触部材9が動き出さないためには、傾斜角θはtanθ≦μの条件を満たせばよい。
μの値は小梁下フランジ5FBの開先面と接触部材9の傾斜面の状態により決定される。小梁下フランジ5FBの開先面及び接触部材9の傾斜面ともに黒皮の場合μ=0.2、赤錆が発生している場合μ=0.45となる。したがって、黒皮の場合にはθ=11.3°以下、赤錆が発生している場合にはθ=24.2°以下とすればよい。
なお、上記は接触部材9が静止摩擦力のみで浮き上がりに抵抗すると考えたものであるが、実際には、接触部材9の垂直面や傾斜面において接触部材9が浮き上がる方向に対して抵抗する力が作用するので、上記の条件は十分に安全側の値となっている。
次に接触部材9の高さの決定方法について図5、図6に基づいて説明する。
本実施の形態の接触部材9は、小梁下フランジ5FBとの接触面が傾斜面となっていることで、小梁5の製造誤差に追従して常に一定の接触面積を確保することができる。小梁5の製造誤差が+(プラス)側の場合には、図5に示すように、接触部材9は所定の位置よりも上側に嵌り、接触部材9における厚みの大きい部分が小梁下フランジ5FB及び水平プレート8と接触する。逆に、小梁5の製造誤差が-(マイナス)側の場合には、図6に示すように、接触部材9が所定の位置よりも下側に嵌り、接触部材9における厚みの小さい部分が小梁下フランジ5FB及び水平プレート8と接触する。
このように、小梁下フランジ5FB及び水平プレート8と接触する位置を上下にずらすことで接触部材9は小梁製造誤差に追従できるようになっている。
JASS6の鉄骨制度検査基準によると、小梁5の限界許容差は±5mmであるため、小梁5の両端を本工法による接合方法を用いる場合、接合部における限界誤差は2.5mmとなる。設計値からΔLの誤差が生じた場合、接触部材9はΔL×tan(π/2-θ)の長さ分だけ誤差のない位置より上下方向に移動する。
以上を踏まえて、接触部材9の突起間の内法高さhd(図5、図6参照)は大梁3側の水平プレート8の厚さをtとすると、hd=t+ΔL×tan(π/2-θ)として決定でき、限界許容誤差に対応するためには、hd=t+2.5×tan(π/2-θ)とすればよい。
なお、小梁5の高さ方向の製造誤差の吸収方法については、大梁3に接合する水平プレート8位置を調節することにより対応可能であるため、接触部材9の突起間の内法高さhdでの対応は不要である。
鋼構造設計基準によると、小梁断面は長期の許容応力度により設計でき、小梁5の長期許容曲げ応力度fbは、材料強度をFとしてfb=F/1.5で設計されるのに対して、許容支圧応力度fp1=F/1.1(ピンなど)とされており、接触部材9の小梁フランジ幅方向の長さは、小梁下フランジ5FBの幅のfb÷fp1≒0.73倍以上の長さとすることが出来る。
なお、接触部材9は、熱間押出法、または鋳造により製造することができる。
上記のように構成された本実施の形態によれば、小梁上フランジ5FTと大梁上フランジ3FTは溶接接合され、小梁下フランジ5FBと大梁ウェブ3Wに接合された水平プレート8とは、小梁下フランジ5FBの幅方向の両側から水平に介入される接触部材9により接合されるため、小梁ウェブ5Wにスカラップを設ける必要はない。
また、大梁・小梁接合部は、上フランジとウェブの2箇所で剛に接合されているため、床スラブ施工時の衝撃力や振動により、小梁下フランジ5FBの接合に用いる接触部材9が脱落することを完全に防ぐことが出来る。
また、床スラブ打設時にも連続小梁となり、小梁中央部のモーメント、及びたわみは低減されるため、床スラブ荷重や施工時荷重により梁断面が決定されることは無く、連続小梁としての効果が確実に得られる。
また、小梁単体で大梁3と剛接合することによるメリットとして、床スラブ打設時のコンクリート荷重による大梁3の横座屈を小梁5で拘束できるといったことも考えられる.
また、接触部材9は、全断面において形状が同一であるため、熱間押出法による製造が可能である。したがって、大量生産できるとともに、接触部材9表面は黒皮の状態となるため、摩擦面処理をしなくとも、ある程度の摩擦係数を確保することが出来る。
なお、小梁下フランジ5FBの開先と接触部材9との接触面は、開先加工後に発錆剤などによる摩擦面処理を行うようにしてもよい。
また、本発明を適応するにあたっては、小梁5に用いる鋼材は高強度鋼、例えば降伏強度が355N/mm2~440N/mm2程度であることが望ましい。
上記の理由は、小梁端部を剛接合とした場合には小梁中央のたわみが低減されるため、小梁5の断面はたわみ制限ではなく、許容応力度により決定され、小梁5の断面の削減が可能となるためである。
上記の説明では、小梁ウェブ5Wと鉛直プレート7との接合に添板11を用いた例を示したが、図7に示すように、添板11を用いずに、大梁3に接合される鉛直プレート7を小梁材軸方向に張り出し、小梁ウェブ5Wと1面摩擦接合としてもよい。
また、上記の説明では、大梁3よりも小梁5の梁せいが小さいため水平プレート8を用いていたが、大梁3と小梁5の梁せいが同じ場合、水平プレート8を用いる必要はなく、小梁下フランジ5FBは大梁下フランジ3FBと接触部材9を介して接合される構成となる。
また、上記の説明では、小梁上フランジ5FTと大梁上フランジ3FTとを溶接接合したものであったが、本発明はこれに限定されずボルト接合であってもよい。
また、図8に示すように、小梁上フランジ5FTは、大梁3とは直接は接合されず、大梁3を跨いで大梁3の両側の小梁上フランジ5FT上に配置されたフラットバー15(または角棒)を介して両側の小梁上フランジ5FT同士が接合されるようにしてもよい。フラットバー15(または角棒)は、小梁上フランジ5FTに隅肉溶接17により接合される。
フラットバー15、または角棒の長さ、及び本数は必要隅肉溶接17長さにより選定することができる。
また、図9に示すように、小梁上フランジ5FTと大梁上フランジ3FTとの溶接を部分溶け込み溶接19とするとともに、フラットバー15(または角棒)を、大梁3を跨いで小梁材軸方向にかけ渡し、小梁上フランジ5FTに、フラットバー15(または角棒)を隅肉溶接17する接合方法としてもよい。この形式で小梁上フランジ5FTを大梁上フランジ3FTと接合する場合、小梁上フランジ5FTと大梁上フランジ3FTを完全溶け込み溶接10と同等とするために必要な、不溶着部分の降伏耐力を、隅肉溶接17によるせん断力として伝達できるように隅肉溶接17のサイズを決定する。
次に、図10に基づいて、図1に示した工法により大梁3に接合された小梁5を床スラブ21と一体化して合成梁とする場合の方法について説明する。
床スラブ21に作用するせん断力を、係止部材23により小梁上フランジ5FTに伝達する。コンクリートは圧縮に強く、正曲げ区間ではコンクリートとの合成効果により、小梁5のたわみを抑えることが出来る。
一方で、コンクリートによる拘束効果により小梁5の中立軸が上方向に移動し、接合部の設計が煩雑となる。そこで、本工法では、図8に示すように、負曲げが作用するためにコンクリートによる拘束効果が期待できない大梁3と小梁5の接合部近傍においては係止部材23を設けないようにすることで、スタッド溶接の省略、及び接合部の設計を簡易にすることが可能となる。
本発明の大梁・小梁接合構造1の試験体について3点曲げ試験を実施したので以下説明する。なお、試験装置を示した図11において、図1と同一又は対応する部分には同一の符号を付してある。
試験方法は、図11に示すように、中央の大梁3の両側に小梁5が取り付いた試験体25の両端をピンローラー支持し、中央の大梁3を油圧ジャッキ25により繰返し載荷するというものである。スパンは支点間で3mである。変位計は載荷点に設置し、鉛直変位を計測する。
上記試験により連続小梁端部の曲げモーメント分布を再現する。
図12は載荷履歴を示す。載荷は正負交番の繰返し載荷で、載荷方向は上方向(小梁5に負曲げが作用)を正側、下方向(小梁5に正曲げが作用)を負側とする。小梁5は長期荷重のみ負担するため、接合部には常に負曲げモーメントが作用する。
本実験では、メタルタッチ部材が振動等で一度非接触となり、再び圧縮された場合でも圧縮力を伝達できるかを確認するため、正曲げモーメントも作用させた。
試験体25の仕様及び降伏耐力(計算値)は表1に示す通りである。なお、試験体25の鋼種は全てSN490材を用いた。
Figure 2023149372000002
試験体25は実大の1/2スケールを想定し、小梁5の上下フランジ接合方法をパラメータとした3体である。試験体No.1は上下フランジを完全溶込み溶接により接合した従来例に相当するものであり、試験体No.2、No.3は下フランジをメタルタッチとした発明例に相当するものである。
試験体No.2は図1に示した接合形式の試験体25であり、試験体No.3は、図9の接合形式の試験体である。接触部材9の長さは80mmであり、小梁下フランジ幅200mmに対して両方向から2本挿し込み、ウェブボルト締結後にハンマーで上から叩き込み嵌合させた。
図13は実験結果のグラフであり、図13(a)は試験体No.2を試験体No.1と比較したものであり、図13(b)は試験体No.3を試験体No.1と比較したものである。
グラフの縦軸は載荷荷重、横軸は鉛直変位であり、ここでは負曲げ部分のみに関して示している。
小梁5が長期許容応力度に達する時の荷重を必要耐力とした。いずれの試験体25も荷重が低下する前に変位計の計測限界を迎えたため載荷を終了した。試験体No.2、試験体No.3の降伏耐力は接触部材9の間の40mmを断面欠損とみなして算出した値である.
この結果から、試験体No.2、試験体No.3のいずれも、図13に示されるように、剛性、耐力、繰返し性能において試験体No.1と同等の結果が得られており、本発明の接合部が剛接合同等に見なせることが確認できた。
1 大梁・小梁接合構造
3 大梁
3W 大梁ウェブ
3FT 大梁上フランジ
3FB 大梁下フランジ
5 小梁
5W 小梁ウェブ
5FT 小梁上フランジ
5FB 小梁下フランジ
7 鉛直プレート
8 水平プレート
9 接触部材
9a 突起部
10 完全溶け込み溶接
11 添板
13 締結部材
15 フラットバー
17 隅肉溶接
19 部分溶け込み溶接
21 床スラブ
23 係止部材
25 試験体
27 油圧ジャッキ
[4]また、上記[3]に記載のものにおいて、前記接触部材の傾斜面の傾斜角度をθ、前記接触部材と前記小梁フランジとの静止摩擦係数をμ、前記接触部材における上下の突起の内法寸法をhd、前記小梁の製造上の長さ寸法誤差をΔL、前記接触部材と接触する大梁下フランジ又は大梁ウェブに接合された水平プレートの厚みをtとしたときに、下式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするものである。
tanθ≦μ・・・(1)
d=t+Δtan(π/2-θ)・・・(2)

Claims (6)

  1. H形断面鉄骨からなる大梁に直交する方向に大梁ウェブを挟んで両側にH形断面鉄骨からなる小梁を接合する大梁・小梁接合構造であって、
    小梁ウェブは前記大梁ウェブに接合された鉛直プレートとボルト接合され、小梁下フランジは、大梁下フランジ又は前記大梁ウェブに接合された水平プレートに、接触部材を介してメタルタッチし、小梁上フランジは、大梁上フランジと接合されていることを特徴とする大梁・小梁接合構造。
  2. H形断面鉄骨大梁に直交する方向に大梁ウェブを挟んで両側にH形断面鉄骨小梁を接合する大梁・小梁接合構造であって、
    小梁ウェブは大梁ウェブに接合される鉛直プレートとボルト接合され、小梁下フランジは、大梁下フランジ又は大梁ウェブに接合された水平プレートに、接触部材を介してメタルタッチし、
    小梁上フランジは、大梁とは直接は接合されず、大梁を跨いで大梁の両側の小梁上フランジ上に配置されたフラットバー、または角棒を介して両側の小梁上フランジ同士が接合されていることを特徴とする大梁・小梁接合構造。
  3. 前記小梁下フランジの先端に下方に向かって傾斜する開先面が形成され、
    前記接触部材における前記開先面と接触する面に、該開先面と同一の傾斜角の傾斜面を有し、かつ大梁下フランジ又は大梁ウェブに接合された水平プレートに接触する接触面の上下に落下防止として機能する突起を有することを特徴とする、請求項1または2に記載に記載の大梁・小梁接合構造。
  4. 前記接触部材の傾斜面の傾斜角度をθ、前記接触部材と前記小梁フランジとの静止摩擦係数をμ、前記接触部材における上下の突起の内法寸法をhd、前記小梁の製造上の長さ寸法誤差をΔL、前記接触部材と接触する大梁下フランジ又は大梁ウェブに接合された水平プレートの厚みをtとしたときに、下式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする請求項3に記載の大梁・小梁接合構造。
    tanθ≦μ・・・(1)
    d=t+Δltan(π/2-θ)・・・(2)
  5. 前記接触部材は、小梁ウェブの両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の大梁・小梁接合構造。
  6. 前記小梁に用いる鋼材は、降伏点が325N/mm2以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の大梁・小梁接合構造。
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