JP3176929U - 構造物の支承構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 地震や温度変化により発生する荷重が想定以上に達しても、容易には、屋根架構部材の損傷のみでなくアンカーボルト破断や躯体コンクリートの割れも起きにくくする構造物の支承構造であって、コンパクトで低コストに、かつ損傷部位は取替え容易であるような支承構造を提供するものである。
【解決手段】 鉛直荷重を支える鉛直支持部と水平荷重に抵抗するせん断抵抗部とを分離し、構造物の設計上想定した以上の水平荷重が作用した場合に、せん断抵抗部が支承部の他の部位に先行して降伏するようにし、それ以上の過大な力がアンカーボルトや躯体コンクリートに作用するのを防ぎ、かつ鉛直支持部の降伏は最小限に抑えて鉛直支持能力は保持することができ、更に、地震等により繰返し変形を受けて損傷したせん断抵抗部を容易に取替えられるようにする。
【選択図】図1

Description

体育館等の屋根架構等の上部構造物と下部構造物との間に設置して、上部構造物を支える支承部の支承構造に関する。
体育館等の構造物において、図9に図示の屋根架構等の上部構造物100を支える支承部A、A、・・・は、従来、図9のB部を拡大表示した図10、および図10のホ断面の平面図を示す図11のように、鉛直支持材1を介して上部構造物100と一体化したベースプレート2のアンカーボルト孔2a、2a・・・に貫通させたアンカーボルト20、20・・・により、地震や温度変化により発生する荷重を、上部構造物100から下部構造物200に伝達する役目を有している。
図11に図示のように、ベースプレート2のアンカーボルト孔2a、2a・・・を、矢印の外側および内側の方向に長孔とし、ベースプレート2と下部構造物200との間にスライディングパット201を挿入して、支承部Aが矢印の方向に滑動できるようにしている場合では、アンカーボルト20、20・・・には矢印で示す滑動方向と直交する方向に水平荷重が作用する。
地震や温度変化による水平荷重を伝達する支承部Aの部材は許容応力度(弾性)設計が一般的であるため、構造物の設計で想定した以上の力が作用すると、アンカーボルト20、20・・・が破断したり、下部構造物200の躯体コンクリートがひび割れたりすることがあった。そのような損傷が発生すると、支承部Aの回りは極めて狭い空間である上に、特にアンカーボルト20、20・・・が破断すると、実際上、復旧作業は極めて困難となり、過大な費用と手間がかかるという問題があった。
更には、地震の激しい振動が屋根架構等の上部構造物100に伝わるため、屋根架構等を構成する部材の損傷だけでなく、天井や設備などの脱落により、その建物利用者に被害が発生するなどの可能性も少なくない。実際、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、天井落下による建物利用者の被害が発生した。そのような被害を軽減する技術としては、特許文献1や特許文献2がある。
特許文献1では、屋根架構と下部構造物との間に免震支承とダンパーを設置する事により、屋根に作用する地震力を低減しようとしたものである。また、特許文献2は、上部構造物と下部構造物との間に挿入する制振装置に関するが、水平荷重に抵抗するエネルギー吸収板と上部構造物の自重等の鉛直荷重を支持する支柱とを分離し、かつ鉛直荷重がエネルギー吸収板に伝達されることによる悪影響を排除するために、支柱とエネルギー吸収板との間に隙間を設け、更にエネルギー吸収板の上端と上部構造体に取り合う上部ベースプレートとの間に隙間を設けたものである。
特許文献1の免震支承では、大幅な水平荷重低減効果を期待するため、大きな変位を許容する必要性から免震支承が大型化し、その設置場所の確保やコストの問題があり、中小規模の建物屋根には採用し難かった。
また、特許文献2の制振装置では、鉛直荷重を支持する支柱と水平荷重に抵抗するエネルギー吸収板の左右との間、および同エネルギー吸収板の上端と上部ベースプレートとの間に隙間を設けているため、水平荷重により左右の隙間が無くなるまで支柱が変形しないと、エネルギー吸収板が水平抵抗力を発揮できないという問題があった。また、エネルギー吸収板が地震により損傷した場合は、エネルギー吸収板のみを取替える構造になっていないため、制振装置全体を取り替える必要があり、その場合には別途、その制振装置が支えている鉛直荷重を、一時的に支えるジャッキなどの装置が必要となるので、大掛かりな復旧工事となることが避けられないものであった。
特許第4188347号公報 特開2000−88048号公報
本考案は、屋根架構等の上部構造物を支える支承部に作用する、地震や温度変化により発生する荷重が想定以上に達しても、屋根架構部材の損傷のみでなく、アンカーボルト破断や躯体コンクリートの割れも起きにくくする構造物の支承構造であって、コンパクトで低コストに、かつ損傷部位は取り替え容易である支承構造を提供するものである。
上記課題を解決するための本考案の第1の手段は、屋根架構等の上部構造物と上部構造物を支える下部構造物との間に設置される支承部の支承構造において、鉛直荷重を支える鉛直支持部と水平荷重に抵抗するせん断抵抗部とを分離して構成し、構造物に設計上想定した以上の水平荷重が作用した場合に、せん断抵抗部が鉛直支持部より先行して降伏するように形成し、降伏して損傷したせん断抵抗部のせん断抵抗板を着脱可能に取付けたものであって、想定以上の過大な水平荷重がアンカーボルトや躯体コンクリートに作用するのを防止し、かつ鉛直支持部の降伏は最小限に抑えて鉛直荷重の支持能力を保持するものである。
更に、地震等により多数回の繰返し変形を受けて損傷したせん断抵抗部のせん断抵抗板の取替えは、ボルトやせん断ピン等を用いる機械的な接合により着脱を容易にしたものである。
本考案の第2の手段は、第1の手段に記載の構造物の支承構造において、鉛直支持部を、上部構造物と下部構造物の上に設置されるベースプレートとを繋ぐ2枚の鉛直支持板を所定の間隔を置いて配置して構成し、せん断抵抗部を前記2枚の鉛直支持板の間に、該鉛直支持板との間に所定の隙間を設け、かつ上部構造物に下向きに突設させた上部取付け板と、前記ベースプレートに上向きに突設させた下部取付け板とを所定の隙間を設けて対向させて、それぞれに取付け、これら上部取付け板と下部取付け板とにせん断抵抗板をボルト等により機械的に接合するように構成したものであって、2枚の鉛直支持板と上部取付け板および下部取付け板の左右との間には隙間を設けており、支承部に水平荷重が作用した時、鉛直支持板が曲げ変形しようとするのを上部取付け板と下部取付け板が拘束しないようにしている。その隙間以上に鉛直支持板が曲げ変形しようとすると、上部取付け板および下部取付け板に接触し、曲げ変形に抑制がかかることになる。
また、鉛直荷重に対しては、万が一鉛直支持板が座屈し、せん断抵抗板も面外に孕み出して鉛直支持力が低下しても、上部取付け板と下部取付け板との隙間が無くなって接触することで鉛直荷重の一部を支えることが出来る。
本考案の第3の手段は、第1の手段に記載の構造物の支持構造において、鉛直支持部を上部構造物の直下に設置されるトッププレートと下部構造物上に設置されるベースプレートとを繋ぐ2枚の鉛直支持板を所定の間隔を置いて配置して構成し、せん断抵抗部を前記2枚の鉛直支持板の間に、該鉛直支持板との間に所定の隙間を設け、かつ前記トッププレートに下向きに突設させた上部取付け板と、前記ベースプレートに上向きに突設させた下部取付け板とを上下に所定の隙間を設けて対向させて、それぞれに取付け、これら上部取付け板と下部取付け板とにせん断抵抗板をボルト等により機械的に接合するように構成したものである。
第2の手段における鉛直支持部の鉛直支持板が上部構造物に直接取付くのに対して、第3の手段では、上部構造物の直下に設置されるトッププレートを介して鉛直支持板が上部構造物に取付き、そのトッププレートは上部構造物にボルトにて接合されるものである。即ち、上部構造物と支承部が分離されているので、上部構造物の建設時に先行して据付けられる支承部の位置精度が出し易く、引き続き施工される上部構造物の据え付け工事が容易になる。
本考案の第4の手段は、第2または第3の手段に記載の構造物の支承構造において、鉛直支持部を構成する2枚の鉛直支持板の中間に、上部取付け板および下部取付け板との間に隙間を設けて跨ぐように一対の中間鉛直支持板を対向させ、該中間鉛直支持板を少なくとも一対以上取付けるように構成したものである。それら上部取付け板および下部取付け板と中間鉛直支持板との隙間は、支承部に水平荷重が作用した時、両側の鉛直支持板と同様、中間鉛直支持板が曲げ変形するのを上部取付け板と下部取付け板が拘束しないようにするためである。
また、鉛直荷重に対して2枚の鉛直支持材もしくは中間鉛直支持板が万が一座屈した場合、上部取付け板と下部取付け板との上下方向の隙間が無くなって接触することにより、鉛直荷重の一部を支えることができる。
本考案の第5の手段は、第2から第4の手段に記載の構造物の支承構造において、せん断抵抗部を構成する上部取付け板と下部取付け板の上下に対向する端面の、いずれか一方を凸状に他方を凹状に形成して嵌合させ、かつ嵌合部に隙間を形成したものである。嵌合部の役割は、支承部に水平荷重が作用し支承部が嵌合部の凹凸部の水平方向の隙間分だけ水平変位を起こした場合、上部取付け板と下部取付け板の凹凸部の端面同士が接触することで、それ以上の大きな水平変位を抑制すると同時に、鉛直支持板の曲げ変形も抑えて、鉛直支持板の鉛直支持能力を損ねる座屈を避けるためのものである。また、鉛直荷重に対しては、万が一鉛直支持材が座屈し、せん断抵抗板も面外に孕み出して鉛直支持力が低下しても、嵌合部の上部取付け板と下部取付け板との上下方向の隙間が無くなって接触することにより、鉛直荷重の一部を支えることが出来る。
以上を課題解決の手段とするものである。
本考案は、以上のような手段によるので、次のような効果がある。
(1)屋根架構等の上部構造物を支える支承部の支承構造において、鉛直荷重を支える鉛直支持部と水平荷重に抵抗するせん断抵抗部を分離して構成したことにより、構造物の設計上想定した以上の水平荷重が作用した場合に、せん断抵抗部のせん断抵抗板が支承部の他の部位に先行して降伏するので、それ以上の過大な力がアンカーボルトや躯体コンクリートに作用するのを防ぎ、損傷を最小限に抑えることが可能となる。
(2)支承部のせん断抵抗板が先行して降伏することで地震エネルギーを吸収するため、屋根架構等の上部構造物の振動が抑制されるので、上部構造物を構成する部材のみでなく、上部構造物に取り付けられる天井や設備等の落下などの被害も低減される。
(3)せん断抵抗部に鋼板を用い、ボルトやせん断ピン等による機械的方法による接合とすることにより、せん断抵抗板の着脱が可能となり、取替えが容易である。
(4)支承構造がコンパクトなので、中小規模の建物の屋根架構等の上部構造物と下部構造物との間にも設置が容易である。
(5)支承構造のせん断耐力の設定は、鉛直支持板もしくは中間鉛直支持板およびせん断抵抗板の板厚や板の寸法を変える方法、あるいはせん断抵抗板に孔を開ける方法や材質を変える方法などにより、自由に設定可能である。
(6)支承構造が単純であり、せん断抵抗板に普通鋼材(SS400)を使用すれば安価である。
(7)せん断抵抗板にステンレス材を使用すれば防錆塗装が不要なので、普通鋼材の場合には取り替えるまでもない程度の少変形であっても必要となる補修塗装を省くことができる。
(8)上部取付け板と下部取付け板の一方を凹状に、他方を凸状に形成して嵌合させることにより、支承構造の過大な水平変形と鉛直支持板の過度な曲げ降伏および座屈を防ぎ、所謂フェールセーフを確保できる。
(9)支承部にトッププレートを設けて上部構造物にボルトにて取り付ける方法とすれば、先行して支承部の据え付け工事ができるので、支承部の据え付け精度の確保がし易くなり、かつそれに続く上部構造物の据え付けも施工が容易になる。
本考案の第1実施例を示す正面図 図1のイ断面の平面図 図1のロ断面の側面図 図1のロ断面に対応した本考案の第2実施例を示す説明図 本考案の第3実施例を示す正面図 図4のハ断面の平面図 図4のニ断面の側面図 図4のニ断面に対応した本考案の第4実施例を示す説明図 本考案の第5実施例を示す正面図 第5実施例の変形状態を示した図 屋根架構の支承部位置を示した建物の立面図 図9のB部の支承部拡大説明図(従来例) 図10のホ断面の平面図(従来例)
本考案の第1実施例を図1に、図1のイ断面の平面図を図2に、図1のロ断面の側面図を図3に示す。屋根架構等の上部構造物100と上部構造物100を支える下部構造物200との間に設置される支承部Aの支承構造において、上部構造物100の梁等と下部構造物200の上に設置されるベースプレート2とを繋ぐ、2枚の鉛直支持板3、3を所定の間隔を設けて配置して構成し、水平荷重に抵抗するせん断抵抗部を、前記2枚の鉛直支持板3、3の間に、該鉛直支持板3、3との間に所定の間隔7,7を設け、かつ上部構造物100の梁等に下向きに突設した上部取付け板4aと、下部構造物200の上に設置されたベースプレート2に上向きに突設した下部取付け板4bとを、上下に所定の隙間8を設けて対向させ、それぞれに取付け、それら上部取付け板4aと下部取付け板4bとを2枚のせん断抵抗板6、6(一部省略して表示)で挟み込み、ボルト5、5・・・やせん断ピン(図示せず)等により機械的に接合したものである。せん断抵抗板6、6は、構造物に設計上想定した以上の水平荷重が作用した場合に、鉛直支持部より先行して降伏するように形成する。
また、2枚の鉛直支持板3、3と、上部取付け板4aおよび下部取付け板4bの左右との間には隙間7、7を設けることにより、支承部に水平荷重が作用した時、鉛直支持板3,3が曲げ変形しようとするのを上部取付け板4aと下部取付け板4bが拘束しないようにしている。その隙間7、7以上に鉛直支持板3,3が曲げ変形しようとすると、上部取付け板4aおよび下部取付け板4bとの隙間7、7が無くなって接触し、鉛直支持板3,3の曲げ変形に抑制がかかることになる。もし、万が一鉛直支持板3、3が鉛直荷重により座屈し、せん断抵抗板6、6も面外に孕み出して鉛直支持力が低下しても、上部取付け板4aと下部取付け板4bとの隙間8が無くなって接触することで鉛直荷重の一部を支えることが出来る。
また、2枚のせん断抵抗板6、6の両端近傍には、せん断抵抗板6、6が水平方向に力を受けた場合に生じる板面内の曲げ応力に抵抗する添え板6a、6aを添設して、せん断抵抗板6、6の両端での引張破断が起きないように補強してもよい。
2枚のせん断抵抗板6、6と上部取付け板4aおよび下部取付け板4bとを接合するボルト5、5・・・は、建物の内側からナット締めできる向きに挿通されている。
なお、せん断抵抗板6は片側1枚でもよいが、その場合は、せん断抵抗板6の板厚芯と上部取付け板4aおよび下部取付け板4bとの板厚芯との不一致から、水平に力が作用した場合に偏心モーメントが発生し、せん断抵抗板6がねじられる点に注意が必要である。
図3aは本考案の第2実施例であり、第1実施例の図1のロ断面に対応した説明図である。実施例1の支承部Aでは、上部構造物100の梁等に鉛直支持板3、3を直接取付けているのに対して、第2実施例では、上部構造物100の梁等と鉛直支持板3、3との間にトッププレート10を設け、上部構造物100の梁等との接合をボルト5a、5a・・・にて行うものであり、その他の構成は、第1実施例と同じである。
第2実施例によれば、万が一、支承部A全体が想定以上に著しく損傷した場合には、やや大掛かりになるが、トッププレート10と上部構造物100の梁等とを接合するボルト5a、5a・・・を抜き取り、上部構造物100全体をジャッキアップすることにより、支承部Aの取替えが可能となる。なお、上部構造物100と支承部Aが分離されているので、構造物の建設時に先行して据付けられる支承部の位置精度が出し易く、引き続き施工される上部構造物の据え付け工事が容易になる。
本考案の第3実施例を図4に、図4のハ断面の平面図を図5に、図4のニ断面の側面図を図6に示す。上部構造物100の梁等と下部のベースプレート2との間に2枚の鉛直支持板3、3を所定の間隔を置いて設け、それらの間に、上部構造物100の梁等から下向きに突設した上部取付け板4aと、下部構造物200の上に設置されるベースプレート2から上向きに突設した下部取付け板4bとを挟む2枚のせん断抵抗板6、6(一部省略して表示)をボルト5、5・・・にて接合したものである。ここまでは第1実施例と共通だが、異なる点は、上記2枚の鉛直支持板3、3の中間に、一対の中間鉛直支持板3a、3aを、上部取付け板4aおよび下部取付け板4bを跨いで対向させて設け、かつ、上部取付け板4aおよび下部取付け板4bとの間には隙間7を設けている。せん断抵抗板6、6は2枚一対として、中間鉛直支持板3a、3aの両側に、それぞれ一対取り付ける。
なお、一対の中間鉛直支持板3a、3aは、支承部Aの大きさに合わせて、二対以上として鉛直支持板3、3の間に均等に配置して取り付けてもよい。
第3実施例では、第1および第2実施例に比べ中間鉛直支持板3a、3aが増えるため、両端部の鉛直支持板3、3の断面積は少なくすることができるので、第1および第2実施例に比べて両端部の鉛直支持板3、3の板幅を狭くできる。そのため、図6に図示のように、下部構造物200の立ち上り壁200aと鉛直支持板3、3との隙間Wが、図3および図3aに図示の第1および第2実施例の場合よりも広くとれるので、損傷したせん断抵抗板6、6を取り替える際に、建物の内側から支承部Aの外側に手を入れて作業することが容易になる。
また、第1実施例と同様であるが、鉛直支持板3、3と中間鉛直支持板3a、3aが、水平変形と鉛直荷重により万が一座屈し、せん断抵抗板も面外に孕み出して鉛直支持力が低下しても、上部取付け板4aと下部取付け板4bとの隙間8が無くなって接触することで鉛直荷重の一部を支えることが出来る。
図6aは本考案の第4実施例であり、第3実施例の図4のニ断面に対応した説明図である。上部構造物100の梁等と鉛直支持板3、3との間にトッププレート10を設け、上部構造物100の梁等との接合をボルト5a、5a・・・にて行うものであり、その他の構成は、第3実施例と同じである。
第4実施例によれば、万が一、支承部A全体が想定以上に著しく損傷した場合には、やや大掛かりになるが、トッププレート10と上部構造物100の梁等とを接合するボルト5a、5a・・・を抜き取り、上部構造物100全体をジャッキアップすることにより、支承部Aの取替えが可能となる。なお、上部構造物100と支承部Aが分離されているので、構造物の建設時に先行して据付けられる支承部の位置精度が出し易く、引き続き施工される上部構造物の据え付け工事が容易になる。
本考案の第5実施例を図7〜図8に示す。両図は説明のために、第1実施例との対応において、せん断抵抗板6、6の表示を省略している。第5実施例では、第1実施例の図1に示す上部取付け板4aと下部取付け板4bの形状を、図7に示すように、上部取付け板4aの下端面を凸状、下部取付け板4bの上端面を凹状に形成して、両端面を対向させて上下に若干の隙間8を設けて嵌合させ、かつ嵌合部の左右両端にも所定の隙間9、9を確保したものである。
なお、図7で示す上部取付け板4aの下端面を凹状に、下部取付け板4bの上端面を凸状に形成してもよい。
図8のように、支承部Aに水平荷重Pが作用すると、鉛直支持板3、3はS字状に変形し、上部取付け板4aと下部取付け板4bは水平方向の左右の隙間9、9の範囲での移動が可能である。即ち、鉛直支持板3、3は、水平方向の隙間9、9の範囲までは柔軟に水平に変形できるが、それ以上の過大な水平変形は抑制されるので、鉛直支持板3、3の鉛直荷重を支持する能力は保たれる。万が一、水平変形と鉛直荷重のために鉛直支持板3、3が座屈し、せん断抵抗板6、6も面外に孕み出して鉛直支持力が低下しても、上部取付け板4aと下部取付け板4bとの嵌合部の上下の隙間8が無くなって接触することで、鉛直荷重の一部を支えることが出来る。
なお、第5実施例は、図1の第1実施例に対応させたが、勿論、第2〜第4実施例にも対応可能である。
前記、第1〜第5実施例において、せん断抵抗板6、6の取付けボルト5、5・・・用の孔において、上側または下側のどちらか一方のボルト孔を上下方向に長孔にしたものを第6実施例とする(図示せず)。そのようにすることにより、支承部Aが水平荷重を受けた場合にアンカーボルト20、20に作用する引張力が、せん断抵抗板6、6に伝達されることを防止でき、水平抵抗要素としてのせん断抵抗板6、6の役割が明快となる。また、図1に図示した添え板6a、6aのボルト孔も同様に、上側または下側のどちらかの一方のボルト孔を上下方向に長孔に形成する(図示せず)。
本考案の実施例は以上の通りであるが、支承部Aの水平耐力の設定は、鉛直支持板3、3もしくは中間鉛直支持板3a、3aおよびせん断抵抗板6、6の、板厚や板の寸法を変える方法、あるいはせん断抵抗板6、6に孔を開ける方法や材質を変える方法などにより、自由に設定可能である。
1:鉛直支持材
2:ベースプレート
2a:アンカーボルト孔
3:鉛直支持板
3a:中間鉛直支持板
4a:上部取付け板
4b:下部取付け板
5、5a:ボルト等
6:せん断抵抗板
6a:添え板
7、8、9:隙間
10:トッププレート
20:アンカーボルト
100:上部構造物
200:下部構造物
200a:立ち上り壁
201:スライディングパット
A:支承部
B:建物における支承部位置
P:水平荷重
W:立ち上り壁と鉛直支持板との隙間

Claims (5)

  1. 屋根架構等の上部構造物と上部構造物を支える下部構造物との間に設置される支承部の支承構造において、鉛直荷重を支える鉛直支持部と水平荷重に抵抗するせん断抵抗部とを分離して構成し、構造物に設計上想定した以上の水平荷重が作用した場合に、せん断抵抗部が鉛直支持部より先行して降伏するように形成し、降伏して損傷したせん断抵抗部のせん断抵抗板を着脱可能に取付けたことを特徴とする、構造物の支承構造。
  2. 請求項1に記載の構造物の支持構造において、鉛直支持部を上部構造物と下部構造物上に設置されるベースプレートとを繋ぐ2枚の鉛直支持板を所定の間隔を置いて配置して構成し、せん断抵抗部を前記2枚の鉛直支持板の間に、該鉛直支持板との間に所定の隙間を設け、かつ上部構造物に下向きに突設させた上部取付け板と、前記ベースプレートに上向きに突設させた下部取付け板とを上下に所定の隙間を設けて対向させ、それぞれに取付け、これら上部取付け板と下部取付け板とにせん断抵抗板をボルト等により機械的に接合するように構成したこと特徴とする、構造物の支承構造。
  3. 請求項1に記載の構造物の支持構造において、鉛直支持部を上部構造物の直下に設置されるトッププレートと下部構造物上に設置されるベースプレートとを繋ぐ2枚の鉛直支持板を所定の間隔を置いて配置して構成し、せん断抵抗部を前記2枚の鉛直支持板の間に、該鉛直支持板との間に所定の隙間を設け、かつ前記トッププレートに下向きに突設させた上部取付け板と、前記ベースプレートに上向きに突設させた下部取付け板とを上下に所定の隙間を設けて対向させ、それぞれに取付け、これら上部取付け板と下部取付け板とにせん断抵抗板をボルト等により機械的に接合するように構成したこと特徴とする、構造物の支承構造。
  4. 請求項2または請求項3のいずれかに記載の構造物の支承構造において、鉛直支持部を構成する2枚の鉛直支持板の中間に、上部取付け板および下部取付け板との間に隙間を設けて跨ぐように一対の中間鉛直支持板を対向させ、該中間鉛直支持板を少なくとも一対以上取付けるように構成したこと特徴とする、構造物の支承構造。
  5. 請求項2から請求項4のいずれかに記載の構造物の支承構造において、せん断抵抗部を構成する上部取付け板と下部取付け板の上下に対向する端面の、いずれかの一方を凸状に他方を凹状に形成して嵌合させ、かつ嵌合部に所定の隙間を形成したことを特徴とする、構造物の支承構造。
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