JP2023147088A - ニッケル酸化鉱石の製錬方法 - Google Patents

ニッケル酸化鉱石の製錬方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2023147088000001
【課題】ニッケル酸化鉱石を含む混合物を還元することで有価メタルを製造する製錬方法において、高品質(高品位)の有価メタルを効率よく製造することができるニッケル酸化鉱石の製錬方法を提供する。
【解決手段】本発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石と、廃棄リチウム電池を処理して得た炭素を含む処理物と、炭素質還元剤と、を含有する混合物を調製する混合物調製工程と、混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、混合物成形工程で得られたペレットを加熱還元してニッケルを含有する有価メタルとスラグとを得る還元処理工程と、還元処理工程で得られる有価メタルとスラグとを分離し有価メタルを回収する回収工程と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法に関する。
リモナイトあるいはサプロライトと呼ばれるニッケル酸化鉱石の製錬方法には、熔錬炉を使用して硫黄と共に硫化焙焼してニッケルマットを製造する乾式製錬方法、ロータリーキルンあるいは移動炉床炉を使用し炭素質還元剤を用いて還元することによってニッケルを含有する合金を製造する乾式製錬方法、オートクレーブを使用して硫酸でニッケルやコバルトを浸出して得た浸出液に硫化剤を添加して混合硫化物(ミックスサルファイド)を製造する湿式製錬方法等が知られている。
上述した種々の製錬方法の中で、炭素源と共にキルンや炉に装入して還元処理することでニッケル酸化鉱石を製錬(乾式製錬方法)しようとする場合、還元で生成するニッケルメタルは粗大な方が生産性の観点から好ましい。これは、ニッケルメタルが、例えば数10μm程度の細かな大きさであった場合、同時に生成するスラグと分離することが困難となり、ニッケルの回収率(収率)が大きく低下するためである。
粗大なニッケルメタルを得るには、ニッケル品位の高い鉱石を処理することが最も簡単な方法ではある。しかし、近年は世界的に資源事情が厳しく、高ニッケル品位の鉱石を得ることは容易でない。
そこで、品位の低い鉱石(例えば、ニッケルの品位が1.0質量%以下の鉱石)から粗大なニッケルメタルを得るための研究が行われている。例えば、特許文献1には、金属酸化物と炭素質還元剤とを含むペレットを還元溶融炉で加熱して金属酸化物を還元溶融してニッケルメタル(粒状金属)を製造するにあたり、炉床上に供給するペレットの平均直径を19.5mm以上、32mm以下とし、炉床上でペレットを加熱するときのペレットの炉床への投影面積率から算出される敷密度を0.5以上、0.8以下に制御することにより、ニッケルメタルの生産性を向上させる方法が開示されている。
特開2011-256414号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、ペレットの作製にコストがかかったり、炉内におけるペレットの敷密度を所定の値に調整する必要があることなどから結果的に生産性が向上しないという問題や、近年の炭素質還元剤のコスト増加に伴いニッケルメタルの製造コストが高くなるという問題が生じている。
本発明は上記事情に鑑み、ニッケル酸化鉱石を含む混合物を還元することで有価メタルを製造する製錬方法において、高品質(高品位)の有価メタルを効率よく製造することができるニッケル酸化鉱石の製錬方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、原料の一部に廃棄リチウム電池を用いることにより、有価メタルを効率的に得られることを見出し、本発明の完成に至った。
第1発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石と、廃棄リチウム電池を処理して得た炭素を含む処理物と、炭素質還元剤と、を含有する混合物を調製する混合物調製工程と、該混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、該混合物成形工程で得られたペレットを加熱還元してニッケルを含有する有価メタルとスラグとを得る還元処理工程と、該還元処理工程で得られる有価メタルとスラグとを分離し有価メタルを回収する回収工程と、を含むことを特徴とする。
第2発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、第1発明において、前記処理物は、全有機炭素計を用いて測定した前記混合物中の全炭素量を100質量%としたとき、該処理物中に含まれる炭素含有量が0.5質量%以上であることを特徴とする。
第3発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、第1発明または第2発明において、前記処理物を調製するLIBスクラップ処理物調製工程を含み、該LIBスクラップ処理物調製工程は、廃棄リチウム電池を焙焼する第一焙焼工程と、該第一焙焼工程後の焙焼物を粉砕する破砕工程と、該破砕工程後の粉砕物を磁着物と非磁着物に分別する磁選工程と、該磁選工程後の非磁着物を篩分けする篩工程と、該篩工程後の篩下物を焙焼する第二焙焼工程と、を含み、前記第二焙焼工程において、酸素含有雰囲気下、焙焼温度が600℃以上700℃以下で酸化焙焼することを特徴とする。
第4発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、第1発明、第2発明または第3発明のいずれかの発明において、、前記混合物調製工程において、前記処理物と前記ニッケル酸化鉱石の合計を100質量%としたとき、前記処理物を0.01質量%以上10質量%以下となるように混合することを特徴とする。
本発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、原料に廃棄リチウム電池を用いて炭素が含有するように調製した処理物をペレットに含有させることにより、高品質(高品位)の有価メタルを効率よく製造することができる。
本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法の概略フロー図ある。 本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法における処理物を調製する工程の概略フロー図ある。
本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石からニッケルを含む有価メタルを得る乾式製錬方法であり、平均粒径が大きな有価メタルを製造できるようにしたことに特徴を有している。
以下、本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法を図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法(以下、本製錬方法という)の概略について説明する。
図1に示すように、本製錬方法は、混合物を調製する混合物調製工程S1と、ペレットを成形する混合物成形工程S2と、ペレットを加熱還元する還元処理工程S3と、還元処理工程後の還元物から有価メタルを回収する回収工程S4と、を含む。
具体的には、本製錬方法では、混合物調製工程S1において、ニッケル酸化鉱石と、廃棄リチウム電池を処理して得た炭素を含有する処理物と、炭素質還元剤と、を適量の水を添加しながら混合して調製した混合物を、混合物成形工程S2に供給してペレットを成形する。ついで、このペレットを加熱還元処理する還元処理工程S3に供給して有価メタルとスラグを生成させた後、回収工程S4において有価メタルとスラグを分離して有価メタルを製造するという方法である。つまり、本製錬方法は、ニッケル酸化鉱石を主として、これにニッケルを含む廃棄リチウム電池を炭素を含有するように調製して得た処理物とを、炭素質還元剤と共に混合してペレットを形成し、このペレットを還元処理することにより粗大な有価メタルとスラグを生成させる方法である。
ここで、一般的にリチウムイオン電池は、アルミニウムや鉄等の金属製の外装缶内に、銅箔からなる負極集電体に黒鉛等の負極活物質を固着した負極材、アルミニウム箔からなる正極集電体にニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウム等の正極活物質を固着した正極材、ポリプロピレン等の多孔質樹脂フィルムからなるセパレータ、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等の電解質を含む電解液等を封入した構造である。つまり、このような使用済みのリチウムを含有する電池(以下、廃棄リチウム電池(LIBスクラップまたは廃LIBともいう)という)には、高品位のニッケルが含有している。このため、廃棄リチウム電池を処理して得た本製錬方法における処理物中には高品位のニッケルが含有した状態にできる。
以上のごとく、ニッケルを含有する廃棄リチウム電池をペレットに含有させることにより、ペレット内部のニッケル品位(質量%)を増加させることができる。このため、還元処理工程S3において、ペレット内部でニッケルが凝集しやすい状態にできるので、還元処理工程S3後にペレット内部において、平均粒径が大きな粗大な有価メタルを形成させることができる。具体的には、還元処理工程S3において、ペレットを構成するニッケル(酸化ニッケル)と鉄(酸化鉄)が還元し、主に鉄-ニッケル系合金である粗大なメタルとスラグを生成させることができる。そして、メタルが粗大化することにより、よりスラグとの分離性が向上するので、有価メタルの回収率を向上させることができる。
しかも、処理物が廃棄リチウム電池を理する際に炭素を残留させるように調製されているので、その炭素量に相当する炭素質還元剤の混合量を抑制することができる。つまり、本製錬方法では、還元処理工程S3においてペレット中の成分を還元処理する際に必要となる炭素質還元剤の一部として処理物の原料であるLIBスクラップ中の炭素を利用するというものである。
したがって、本製錬方法を用いれば、粗大な鉄-ニッケル系合金である有価メタルの生産性を向上させるとともに、使用する炭素質還元剤の量を抑制することができるので、有価メタルの製造コストを抑制することができる。
以下、本製錬方法の各工程について具体的に説明する。
(混合物調製工程S1)
本製錬方法の混合物調製工程S1は、ニッケル酸化鉱石と、廃棄リチウム電池を処理して得た炭素を含有する処理物と、炭素質還元剤と、を適量の水を添加しながら混合して混合物を調製する工程である。
ニッケル酸化鉱石等を混合する方法は、とくに限定されず、例えば、市販の混合機を用いることができる。
混合に際しては、混合性を高めるために混練を同時に行ってもよく、混合後に混練を行ってもよい。また、混練には、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸混練機、二軸混練機等を用いて行うことができる。混合物を混練することによって、その混合物にせん断力を加え、炭素質還元剤や粉状のニッケル酸化鉱石等の凝集を解いて均一に混合できるとともに、各々の粒子の密着性を向上させ、また空隙を減少させることができる。これにより、その混合物において還元反応が起りやすくなるとともに均一に反応させることができ、還元反応の反応時間を短縮することができる。また、品質のばらつきを抑えることができる。
表1には、混合物の調製に用いられるニッケル酸化鉱石、処理物、炭素質還元剤の組成(質量%)の一例を示す。ただし、ニッケル酸化鉱石等の組成は、これに限定されない。
Figure 2023147088000002
(ニッケル酸化鉱石)
ニッケル酸化鉱石は、ニッケルを酸化ニッケル(NiO)として含有する鉱石であれば、とくに限定されない。例えば、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱石は、代表的な構成成分として酸化鉄(Fe)を含有する。
(処理物)
処理物は、原料のLIBスクラップを処理して得られたものである。そして、原料となるLIBスクラップ中に含まれる炭素質を還元処理工程S3において還元処理の一部に利用することができるように調整されている。
具体的には、処理物中の炭素含有量は、混合物中の炭素の合計量(全炭素量)を100質量%としたときに0.5質量%以上となるように調整されている。なお、炭素含有量の測定は、実施例に記載の全有機炭素計を用いて測定することができる。つまり、処理物は、全有機炭素計を用いて測定した混合物中の全炭素量を100質量%としたとき、処理物中に含まれる炭素含有量が0.5質量%以上となるように調整されている。言い換えれば、LIBスクラップ由来の炭素の割合が、混合物中の炭素の合計量(全炭素量)を100質量%としたときに0.5質量%以上となるように調整されているのである。
処理物中の炭素の割合(炭素含有量)は、上記のように0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは0.8質量%以上であり、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、さらにより好ましくは1.2質量%以上である。
仮に、処理物中の炭素量が調整されていない場合、還元処理工程S3において還元加熱処理に必要な炭素量のばらつきの原因となる。そして、かかる工程において炭素量がばらつけば、有価メタルを安定して得ることも難しくなる。
しかしながら、本製錬方法では、処理物中に含まれるLIBスクラップ由来の炭素量が上記のごとく調整されているので、還元処理工程S3における還元処理に必要な炭素量を適正に制御することが可能となる。このため、有価メタルを安定して得ることができるという利点もある。
なお、LIBスクラップの処理方法の詳細は後述する。
処理物中に含まれる炭素量が上記値となるように調整されていれば、LIBスクラップを処理したもの全部を処理物の原料に用いてもよいし、一部に用いてもよい。以下では、LIBスクラップを処理したものを処理物の原料の全部に用いる場合を代表として説明する。
混合物調製工程S1において、処理物を混合する割合は、上述したように、混合物中の炭素の合計量に対する炭素量に応じ適宜調整することができる。
例えば、混合物調製工程S1において、処理物とニッケル酸化鉱石の合計を100質量%としたとき、処理物が0.01質量%以上の割合となるように混合する。処理物の混合割合が0.01質量%よりも低くなると、ニッケル品位(質量%)の増加が十分でなくなり、有価メタルの粗大化に対する効果が小さくなる傾向にある。一方、処理物の混合割合の上限はとくに限定されない。例えば、処理物の混合割合の上限は、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下とする。処理物の混合割合が20質量%を超えると、LIBスクラップに残留するリンなどの不純物の総量が多すぎて、有価メタル中に許容値以上分配される可能性がある。
したがって、混合物を調製する際の処理物の混合割合は、0.01質量%以上20質量%以下となるように混合するのが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上12質量%以下であり、さらにより好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
(炭素質還元剤)
炭素質還元剤としては、例えば、石炭粉、コークス粉等が挙げられる。なお、その一部または全てを植物由来成分、例えば澱粉等で構成してもよい。
この炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石の粒度や粒度分布と同等の大きさのものを用いるのが好ましい。このような大きさであると、混合する際に均一に混合し易く、還元反応も均一に進みやすくなる。
混合物調製工程S1における炭素質還元剤の混合割合は、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケル、酸化コバルト、及び酸化鉄と、を過不足なく還元するのに必要な炭素質還元剤の量を100%としたとき、50%以下となるように混合する。好ましくは40%以下である。一方、炭素質還元剤の混合量の下限値は、とくに限定されないが、例えば、以下に説明する化学当量の合計値を100%としたときに、20%以上とすることが好ましく、より好ましくは23%以上とする。
したがって、混合物調製工程S1において、炭素質還元剤を混合する割合(混合割合)は、ペレットに含まれる炭素質還元剤の混合割合(炭素質還元剤の混合量)を、化学当量の合計値を100%としたとき、20%以上50%以下とすれば、後述する還元処理工程S3における還元反応を効率的に進行させることができるので、ニッケル品位(質量%)の高い有価メタルを効率的に製造することができる。
なお、炭素質還元剤の混合割合(%)の単位は、モル比であっても質量比であってもよい。つまり、炭素質還元剤の混合割合(%)は、モル比または質量比において、上記範囲内であればよい。
また、酸化ニッケル、酸化コバルト、及び酸化鉄と、を過不足なく還元するのに必要な炭素質還元剤の量とは、還元処理工程S3において、混合物を成形して得られたペレットに含まれる酸化ニッケルの全量をニッケルメタルに還元するのに必要な化学当量と、ペレットに含まれる酸化鉄を鉄メタルに還元するのに必要な化学当量との合計値(以下、「化学当量の合計値」ともいう)と定義する。
なお、混合物には、鉄鉱石や、フラックス成分、バインダー、適量の水を含有させてもよい。
鉄鉱石としては、例えば、鉄品位が50.0質量%程度以上の鉄鉱石、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。
フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。
バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。
また、混合物に含有させるニッケル酸化鉱石、処理物、鉄鉱石、フラックス成分などの大きさは、混合物の成形に影響を与えない程度の大きさであれば、とくに限定されない。例えば、粒径が0.01mm~20mmのものが好ましく、より好ましくは0.01mm~10mmであり、さらに好ましくは0.02mm~5mmである。
なお、「~」の表記は、「以上以下」を意味し、例えば、0.1mm~20mmは、0.1mm以上20mm以下を意味する。
ニッケル酸化鉱石等の粒径は、単一粒子の粒子径であってもよいし、単一粒子が凝集した凝集粒子の粒子径であってもよい。例えば、ニッケル酸化鉱石を粉砕したものを篩(目開き0.1mm)にかければ、篩を通過した粉状のニッケル酸化鉱石(粒子の長径がおおよそ0.03mm~0.3mm)を得ることができる。
(混合物成形工程S2)
混合物調製工程S1で調製した混合物は、次工程の混合物成形工程S2に供される。
本製錬方法の混合物成形工程S2は、供給された混合物を成形してペレットを形成する工程である。
ペレットの形状としては、還元炉の炉床に積層できる形状であれば、とくに限定されない。
例えば、楕円状、立方体状、直方体状、円柱状、又は球状等とすることができる。このような形状は、簡易な形状であって複雑なものではないため、成形コストを抑制することができる。しかも、不良品の発生を抑制することができ、得られる成形物の品質も均一にできるので、歩留り低下を抑制することができる。さらに、強度も維持し易くなる。
とくに、ペレットの形状としは、球状が好ましい。ペレットが球状であることにより還元処理が均一に施され、ばらつきが少なく、かつ生産性の高い製錬を行うことができる。ペレットの形状を球状とする場合には、直径が10mm以上30mm以下程度となるように成形することができる。また、直方体状、立方体状、円柱状等とする場合には、概ね、縦、横の内寸が500mm以下程度となるように成形することができる。
ペレットの大きさとしては、とくに限定されない。例えば、ペレットの体積が8000mm以上であることが好ましい。ペレットの体積が8000mm以上であることにより、成形コストが抑制され、さらに、ペレット全体に占める表面積の割合が低くなるため、加熱還元処理が均一に施され、ばらつきが少なく、かつ生産性の高い製錬を行うことができる。
混合物成形工程S2において、混合物からペレットを成形することができれば、手段はとくに限定されない。例えば、ブリケット装置、ペレタイザーや押出機などの成形装置を用いて混合物から成形物を成形することができる。成形装置としては、例えば、高圧、高せん断力で混合物を混練して成形できる装置が好ましい。高圧、高せん断で混合物を混練することにより、混合物の凝集を解くことができ、また効果的に混練することができるうえ、得られる成形物の強度を高めることができる。
また、ブリケットプレスを用いて成形することも可能である。設備や成形物強度、収率等を考慮して適宜、装置選定を行えばよい。
なお、混合物成形工程S2は、成形したペレットを乾燥する乾燥工程を含んでもよい。
ペレットに含まれる水分は、例えば50質量%程度と過剰に含まれることがある。このようにペレットが過剰の水分を含む場合、急激に加熱すると、内部の水分が一気に気化し、膨張して破壊することがある。そこで、成形したペレットを乾燥工程に供給して乾燥処理を施す。乾燥工程では、固形分が60質量%程度、水分が40質量%程度以下となるようにペレットを乾燥処理する。より好ましくは、水分が30質量%程度もしくはそれ以下となるように乾燥する。
ペレットの水分含有量を低減することにより、次工程の還元処理工程S3における還元加熱処理においてペレットが崩壊することを抑制することができるので、還元炉から取り出し易くなる。
また、ペレットは、過剰な水分によりベタベタした状態となっていることが多いため、乾燥処理を施すことで、取り扱いを容易にできる。
さらに、次工程の還元処理工程S3において、還元炉内におけるペレットに起因する水分混入を抑制することができる。これにより、還元炉内の雰囲気気体に含まれる水分量をより効果的に減らすことができ、還元物に含まれるメタルの酸化をより効果的に抑制することができる。
乾燥工程における乾燥処理は、ペレットの水分含有量が30質量%程度以下となるように処理できれば、とく限定されない。例えば、70℃~400℃の熱風をペレットに対して吹き付けて乾燥させることができる。
とくに、乾燥処理を行う際のペレットの温度を100℃未満に維持すれば、乾燥処理中のペレットの破壊を抑制することができる。
また、体積の大きなペレットを乾燥させる場合には、乾燥前や乾燥後にひびや割れが入っていてもよい。ペレットの体積が大きい場合には、還元時に溶融して収縮するため、ひびや割れが生じることが多いが、ひびや割れによって生じる表面積の増加等の影響は僅かであるため大きな問題は生じ難い。一方、ペレットに破壊が生じない態様となっていれば、乾燥処理を省略してもよいのはいうまでもない。
乾燥処理は連続して一度に行ってもよいし複数回に分けて行ってもよい。乾燥処理を複数回に分けて行うことによりペレットの破裂をより効果的に抑制することができる。なお、乾燥処理を複数回に分けて行った場合において、2回目以降の乾燥温度としては、150℃以上400℃以下が好ましい。この範囲で乾燥することにより、還元反応が進むことなく乾燥することが可能となる。
下記表2には、乾燥処理後のペレットにおける固形分中組成(質量部)の一例を示す。なお、ペレット中の組成は、表2に示す値に限定されない。
Figure 2023147088000003
(還元処理工程S3)
本製錬方法の還元処理工程S3は、混合物成形工程S2で得られたペレットを還元炉(精錬炉)に装入し、所定の温度まで昇温することによって加熱して還元処理(還元加熱処理)する工程である。この還元加熱処理により、ニッケルを含有するニッケル系合金である有価メタルとスラグとを含む還元物を得る。
還元処理工程S3において、還元炉に装入したペレットを加熱する方法はとくに限定されない。例えば、ニッケル酸化鉱石などを含むペレットを還元炉の床敷材を敷いた炉床上に積層し、そのペレットの積層体を加熱する。なお、ペレットと炉床との反応を抑制するために炉床にアルミナ粒等を敷いた上にペレットを配置するようにしてもよい。
加熱温度は、とくに限定されない。例えば、1250℃~1450℃の温度、より好ましくは1300℃~1400℃程度とする。
還元加熱処理の時間(処理時間)は、とくに限定されない。
例えば、還元炉の温度に応じて設定することができる。例えば、10分以上が好ましく、より好ましくは15分以上とする。一方で、処理時間の上限としては、製造コストの上昇を抑える観点から、50分以下が好ましく、より好ましくは40分以下である。
なお、還元処理工程S3において、還元加熱処理が施されたペレット積層体は、大きな塊のメタルとスラグとの混成物(還元物)になる。見かけ上の体積の大きなペレットに対して還元加熱処理を行うことで、大きな塊のメタルが形成され易くなる。このため、還元炉から回収する際における回収の手間を低減させることができるので、メタル回収率の低下を有効に抑えることができる。なお、得られる混成物の体積は、装入するペレット積層体と比較すると、50体積%~60体積%程度に収縮する。
また、還元処理工程S3において、還元剤である炭素質還元剤を追加的に添加してもよい。還元反応がある程度進むと炉内に不可避的に持ち込まれる酸素や燃料の燃焼によって発生する水分によって、生成したメタルの酸化が起きることがある。このとき、還元反応の途中で還元剤を追加添加することで、メタルの再酸化を防ぐことができる。還元剤の添加は、ペレットの上部から行われることが好ましい。生成したメタルの酸化がガスと接する頻度の高いペレット上部から添加することによって効率的に再酸化を防ぐことができる。
追加的に添加する炭素質還元剤の割合は、とくに限定されない。
例えば、加熱還元処理に供するペレットに含まれる炭素質還元剤を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下程度の範囲とすることが好ましい。このような範囲で追加添加することで、効率的に酸化の抑制をできるとともに過還元となることも防ぐことができる。
また、還元処理工程S3に用いられる還元炉は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。例えば、回転炉床炉や移動炉床炉などを還元炉として用いることができる。
(回収工程S4)
本製錬方法の回収工程S4は、還元処理工程S3にて生成した有価メタルとスラグとを分離して有価メタルを回収する工程である。具体的には、ペレットに対する還元加熱処理によって得られた、有価メタル相(有価メタル固相)とスラグ相(スラグ固相)とを含む混在物(還元物)から、有価メタル相を分離して回収する。
回収工程S4において、還元物から有価メタルを分離し回収することができれば、その回収方法は、とくに限定されない。
例えば、固体として得られた有価メタル相とスラグ相との混在物から有価メタル相とスラグ相とを分離する方法としては、篩い分けによる不要物の除去に加えて、比重による分離や、磁力による分離等の方法を利用することができる。とくに、本製錬方法では、平均粒径が大きな有価メタルを得ることができるので、還元物に対して、衝撃を付与することにより、有価メタル相とスラグ相とを容易に分離することができる。しかも、得られる有価メタル相とスラグ相は、濡れ性が悪いことから両者を容易に分離することができる。このような振動付与方法としては、例えば、所定の落差を設けて還元物を落下させたり、篩い分けの際に所定の振動を与える等の方法を採用することができる。
ここで、一般的な乾式製錬方法を用いたニッケル酸化鉱石の製錬方法において、ニッケルメタルとスラグとの融点差はそれほど大きくない。このため、従来の技術では、ニッケルメタルの平均粒径もある程度の大きさ以上(例えば、50μm以上)にすることはできないとされている。しかしながら、本製錬方法を用いれば、上述したようにペレット中のニッケル品位を向上させることができるので、平均粒径が50μm以上の有価メタルを適切に製造することができる。なお、有価メタルの平均粒径は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本製錬方法における粗大な有価メタルの生成メカニズムの概略を説明する。
本製錬方法の還元加熱処理工程S3において還元加熱処理を行った際、ペレットの表層部では、ニッケル酸化物(酸化ニッケル)の還元反応とともに鉄酸化物(酸化鉄)の還元反応が進行していく。そして、反応開始から僅か1分~数分程度の処理時間で、ペレット表層部において、ペレットに含まれる酸化ニッケル及び一部の酸化鉄が還元されメタル化が進んでニッケルメタルあるいは鉄とニッケルの合金であるシェル(以下、「殻」ともいう)が形成される。このペレットには、上述したようにニッケルスクラップが含有されているので、ニッケルが高品位(質量%)の状態で存在する。
このため、ペレット内部(つまり、殻の中)では、その殻の形成に伴って、鉄とニッケルと有価メタル(例えば、鉄-ニッケルなどの合金)を形成し、温度上昇に伴い溶融状態となりスラグの隙間を流れて伝わって凝集し、粒径の大きな有価メタルを形成する。一方、処置時間が進むにつれて、スラグ成分も徐々に熔融して液相のスラグが生成する。そして、例えば、反応開始から10分程度を経過すると、ペレットの殻の中では、液相の鉄-ニッケルなどの有価メタルと液相のスラグが存在する状態になる。
つまり、本製錬方法では、還元加熱処理工程S3における還元加熱処理により、ペレット中において鉄-ニッケルなどの合金の凝集させることができるので、一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法と比べて、より大きな粒径を有するフェロニッケルなどの有価メタルを形成し回収することができる。
なお、コバルトは、上記還元反応条件下でニッケルと同じ挙動をとる。
また、本製錬方法では、処理物の原料としてLIBスクラップを用いているので、得られる有価メタルは、純度の高い鉄-ニッケル-コバルトの合金となる。このため、かかる合金を酸等で溶解して溶媒抽出等の公知の湿式処理に付すれば、ニッケルやコバルトをそれぞれ効率よく回収し、新たなリチウムイオン電池の原料として利用することも可能となる。また、コバルトの品位(質量%)が低い場合には、そのままフェロニッケルの原料として利用することもできる。
(処理物調製工程PS)
次に、処理物の原料である廃棄リチウム電池(LIBスクラップ)を調整する方法について説明する。
LIBスクラップは、ニッケル酸化鉱石と混合してペレット化するのに先立って、乾式工程で前処理することが望ましい。LIBスクラップそのままではサイズ的にペレット化することが困難であり、同時にLIBスクラップに含まれるリンやフッ素などの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
具体的には、LIBスクラップは、上述したように有価金属の他にも、炭素、アルミニウム、フッ素、リンなどの不純物も多量に含まれる。そして、これらの不純物は、有価メタルの製造においても不純物となる。このため、処理物の原料にLIBスクラップを用いる場合には、以下の工程により、このような不純物をあらかじめ除去しておくことが望ましい。とくに、リンやフッ素を除去することにより、還元処理工程S3において、処理物とニッケル酸化鉱石との反応を適切に進行させ易くなる。
なお、ニッケル水素電池のスクラップを原料とする場合もLIBスクラップと同様の処理を行うことができる。
図2に示すように、処理物の調製工程(処理物調製工程PS)は、第一焙焼工程PS1と、破砕工程PS2と、磁選工程PS3と、篩工程PS4と、第二焙焼工程PS5と、を含む。
(第一焙焼工程PS1)
第一焙焼工程PS1は、LIBスクラップに残留する電荷を解消し、同時にリンやフッ素などの電解液成分を除去する無害化や次工程で破砕しやすく処理することを主な目的とする。焙焼時の加熱方式は、とくに限定されない。例えば、電熱式でもバーナー式でもよい。
焙焼条件は、電解液成分を除去できれば、とくに限定されない。例えば、酸素を含有する大気を供給しながら、焙焼温度500℃以上で酸化焙焼する。つまり、酸素含有雰囲気下において、上記温度以上で焙焼する。焙焼温度は、より好ましくは600℃以上であり、さらに好ましくは700℃以上である。500℃以上で加熱すれば、確実に無害化することができる。しかも焙焼後のLIBスクラップを脆くできるので、次工程で破砕しやすくすることができる。
焙焼時間は、焙焼対象のLIBスクラップの量に応じ適宜調整することができる。例えば、焙焼時間は、1時間以上が好ましく、より好ましくは2時間以上である。
なお、LIBスクラップを積み重ねすぎると内部まで十分に焙焼できず焼きムラが生じることがあるので、均一に焙焼できるように処理量や炉の加熱能力に応じて適宜調整する。
また、第一焙焼工程PS1に用いられる炉は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。例えば、箱形炉や移動炉床炉などを用いることができ、またロータリーキルや流動焙焼炉などのように試料が動いて混ざりあうような炉であってよい。
(破砕工程PS2)
第一焙焼工程PS1で得られた焙焼物は、次工程の破砕工程PS2に供される。
破砕工程PS2は、第一焙焼工程PS1で焙焼された焙焼物を細かく破砕してLIBスクラップ内の各部材を分離する工程である。
破砕工程PS2で用いられる破砕機はとくに限定されない。例えば、ロッドミルや振動ミル、チェーンミルなど公知の破砕機を用いることができる。
(磁選工程PS3)
破砕工程PS2で処理された破砕物は、次工程の磁選工程PS3に供される。
磁選工程PS3は、破砕物に含まれる磁着物と非磁着物とに磁選により選別する工程である。磁選工程PS3により処理物から磁着物として鉄を除去することにより、スラグの融点や粘性等の設計が簡単になる。
破砕工程PS2で用いられる磁選機は、とくに限定されない。例えば、公知の吊下げ磁選機を用いることができる。
なお、この磁選工程PS3は、破砕工程PS2の後の工程に限定されず、後述する篩工程PS4の後に行ってもよいし、破砕工程PS2と後述する篩工程PS4のそれぞれの後に行ってもよい。
また、後工程で湿式工程を行う場合には、鉄を除去することにより、処理費用を抑制することができる。
(篩工程PS4)
磁選工程PS3で処理された非磁着物は、次工程の篩工程PS4に供される。
篩工程PS4は、破砕工程PS2で得られた破砕物のうち非磁着物を篩別して篩上物と篩下物に分ける工程である。
磁選工程PS3で用いられる篩機は、とくに限定されない。例えば、公知の振動篩機を用いることができる。
篩工程PS4で用いられる篩の目開きは、原料となるLIBスクラップの種類や形状に合わせて適宜調整することができる。目開きが大きすぎると、篩下に有価金属とともに非有価金属が多く回収されてしまうため好ましくない。一方、目開きが小さすぎると、篩上に多く有価金属が含まれてしまい好ましくない。
したがって、篩の目開きは、0.5mm以上5mm以下が好ましい。かかる範囲の目開きとすることで、有価金属を効率的に回収することができる。
なお、ニッケルやコバルト等の有価金属は、LIBスクラップ中の主に粉末の形態をした正極活物質に含まれるため、粉末状で回収され篩下物に含まれる。
つまり、篩工程PS4における篩下物は、第一焙焼工程PS1でLIBスクラップを無害化処理し、破砕工程P2でバラバラの状態にし、磁選工程PS3で缶体等を構成する鉄などを除去し、さらに篩工程PS4でアルミフィルム等を除去した後の、粉状のものと小さな破砕物が混ざったものとなる。
(第二焙焼工程PS5)
篩工程PS4で得られた篩下物は、次工程の第二焙焼工程PS5に供される。
第二焙焼工程PS5は、篩下物を焙焼して、酸化焙焼物である処理物を得る工程である。
篩工程PS4で得られた篩下物を酸化焙焼することにより、後工程の還元処理工程PS3において、LIBスクラップ中の還元剤になり得る成分の大部分を酸化することができる。この処理を行うことにより、処理物の品質を均一化できる。また、酸化焙焼によって、残留還元剤の量を安定して低く制御することができるので、後工程の還元処理工程PS3における還元度を制御し易くなる。
焙焼条件は、残留還元剤の一部を残し得るような条件であれば、とくに限定されない。
例えば、酸素含有雰囲気下、焙焼温度が500℃~800℃となるように調整することができ、より好ましくは、500℃~700℃となるように調整することができる。
また、焙焼時間は、焙焼対象のLIBスクラップの量に応じ適宜調整すればよい。例えば、焙焼時間は、1時間以上が好ましく、より好ましくは2時間以上である。
焙焼温度が800℃を超える温度や、3時間を超える焙焼時間では、炭素成分がほぼ完全に除去されてしまう。この場合、還元処理工程S3において改めて炭素質還元剤の添加が必要となり、コストと手間が増加する。一方500℃未満の温度では、炭素成分の除去が不十分であり、かつ無害化も不十分となる傾向にある。
また、焙焼時間は、焙焼炉の構造や処理量による差はあるものの、1時間未満では充分な処理が行えない、また3時間を超えて焙焼しても、炭素の除去化が過剰に進むので好ましくなく、LIBスクラップに残留する炭素量を把握しながら焙焼時間を1~3時間の範囲で調整するのが好ましい。
したがって、第二焙焼工程PS5において、焙焼条件(焙焼温度、焙焼時間)を上記範囲内となるように調整することにより、処理物中の炭素含有量を上述した所定の範囲内(例えば、酸化焙焼物である処理物中の炭素含有量が混合物中の炭素の合計量(全炭素量)を100質量%としたときに0.5質量%以上)となるように調整することができる。
なお、第二焙焼工程PS5の後に、さらに篩工程PS4と同様の篩工程を設けてもよい。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
<処理物調製工程>
原料を以下の処理物調製工程に供することにより処理物を調製した。
処理物の原料として、廃棄リチウム電池(以下、廃LIBという)を使用した。この廃LIBには、自動車車載用の一般に角形電池と称せられるものの使用済み品を用いた。
なお、廃LIBは、実施形態における「LIBスクラップ」に相当し、特許請求の範囲における「廃棄リチウム電池」に相当する。
(第一焙焼工程)
原料の廃LIBを900℃の温度で5時間、大気中で焙焼して焙焼物を得た。得られた焙焼物を次工程の破砕工程に供して粉砕処理した。
(破砕工程)
破砕工程では、供給された焙焼物をチェーンミルを用いて12kg/バッチずつ35秒間の破砕処理を行った。破砕処理で得た破砕物を回収し、次工程の磁選工程に供して磁選を行った。
(磁選工程)
磁選工程では、市販の吊下げ磁選機を用いた。4.5kg/分の供給速度で供給した破砕物を3000Gで磁力選別を行い鉄などの磁着物と、ニッケルなどの有価成分を含む非磁着物と、に選別した。
(篩工程)
磁選工程で選別した非磁着物を連続式の振動篩に供給して篩別した。
篩の目開きは1.0mmとし、供給速度は2.5kg/分とした。
篩工程において、目開き1.0mmの篩を通過したもの(篩下物)を次工程の第二焙焼工程に供した。
(第二焙焼工程)
第二焙焼工程では、炉内直径20cmで炉の有効長さ100cmのキルンを用いた。試料の供給速度は2.0kg/分とし、炉内温度を600℃~700℃(600℃以上700℃以下)に維持しながら、1~3時間大気を流しながら焙焼して、廃LIBに含まれた炭素の一部が残留するように酸化焙焼物を得た。
そして、得られた酸化焙焼物を目開き1.0mmの篩で処理して、篩を通過した粒径が約0.8mm以下の処理物を調製した。
処理物中の炭素含有量(炭素含有率)は、全有機炭素計(TOC計)(島津製作所製)を用いて測定した。処理物中の炭素含有量は、一例として概ね20質量%程度であった。
また、調整した処理物は、ニッケル品位が5±1質量%、コバルト品位が5±1質量%であった。各成分の分析はハンドヘルド蛍光X線分析計(オリンパス製)を用いて行った。
なお、原料とした廃LIB中の炭素含有量(炭素含有率)及びも後述する混合物中の炭素含有量(炭素含有率)も同様のTOC計を用いて測定した。
<混合物調製工程>
調製した処理物を混合物調製工程に供した。
混合物調製工程は、処理物とニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を調製する工程である。
混合物調製工程では、原料鉱石としてニッケル酸化鉱石と、LIBスクラップ処理物と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石と、バインダー(ベントナイト)と、炭素質還元剤と、を適量の水を添加しながら混合機を用いて混合し混合物を調製した。
ニッケル酸化鉱石には、平均粒径が0.085mm、ニッケル品位が1±0.1質量%のものを使用した。
なお、ニッケル酸化鉱石の平均粒径の測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた。
鉄鉱石は、平均粒径が0.75mmのものを使用した。
なお、鉄鉱石の平均粒径の測定には、ニッケル酸化鉱石と同様の装置を用いた。
炭素質還元剤には、平均粒径が約141μmの石炭粉(炭素含有量:52重量%)を用いた。
なお、炭素質還元剤の平均粒径の測定方法には、ニッケル酸化鉱石と同様の装置を用いた。
(処理物の混合割合)
処理物は、処理物とニッケル酸化鉱石との合計を100質量%としたときに以下の値となるように混合した(試料No.1~5)。
試料No.1:1.0質量%
試料No.2:2.9質量%
試料No.3:6.3質量%
試料No.4:9.7質量%
試料No.5:12.0質量%
(炭素質還元剤の混合割合)
炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石と処理物に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe)とを過不足なく還元するのに必要な量を100%としたときに、28%の割合となるように混合した。
また、調製した混合物中の全炭素量を100%としたとき、処理物中の廃LIB由来の炭素割合(%)は、以下の通りであった。
試料No.1:5.1%
試料No.2:12%
試料No.3:23%
試料No.4:32%
試料No.5:41%
<混合物成形工程>
調製した混合物を混合物成形工程に供して、円柱形状のペレットを成形した。
成形には、ペレタイザーを用いた。得られたペレットは篩別処理に供して直径が15±2mmのペレットを調製した。
調製したペレットは、固形分が70質量%程度、水分が25質量%程度となるように、150℃~200℃の窒素の熱風を吹き付けて乾燥処理した。
乾燥処理後のペレットの固形分組成(炭素を除く)の代表例を下記表2に示す。
固形分組成の測定には、ICP発光分光分析装置(SHIMAZU S-8100型)を用いた。
Figure 2023147088000004
比較例は、LIBスクラップ処理物を混合しない以外は実施例と同様にペレットを調製した。
<還元処理工程>
調製したペレットを還元処理工程に供した。
乾燥処理後のペレットを、窒素雰囲気にした還元炉に装入した。なお、還元炉内の装入時の温度は500±20℃とした。
次に、炉床にアルミナ粒を敷き詰め、その上にペレットを載置した。アルミナ粒を敷き詰めることによりペレットと炉床の反応を抑制することができる。
ペレットの還元処理は、下記表4に示す温度(表4では還元温度)及び時間(表4では還元時間)で、ペレットに対して還元加熱処理を施した。還元処理後は、窒素雰囲気中で速やかに室温まで冷却して、炉から取り出した。
炉から取り出した還元処理物のニッケルメタル化率、有価メタル中のニッケル・コバルトの合計含有率を測定した。
測定には、ICP発光分光分析装置(SHIMAZU S-8100型)を用いた。
測定値に基づいて下記式より、ニッケルメタル化率、メタル中のニッケル・コバルトの合計含有率を算出した。
(ニッケルメタル化率)

ニッケルメタル化率(%)=(混合物中の有価メタルのNi量/混合物中の全てのNi量)×100
(有価メタル中のニッケル・コバルトの合計含有率)

有価メタル中のニッケル・コバルトの合計含有率(%)=(混合物中の有価メタルのNi、Coの合計量/混合物中の有価メタルの合計量)×100
(有価メタルの回収工程)
還元処理物には、有価メタルとスラグが含まれている。このため、還元処理物から有価メタルを分離選別し回収するため、還元処理物を有価メタルの回収工程に供した。
この回収工程では、還元処理物を粉砕処理工程に供した後、得られた粉砕物を上述した磁選工程と同様の装置を用いた工程に供して、鉄などを含むスラグを磁着物として、ニッケルなどの有価成分を含む有価メタルを非磁着物として、選別し回収した。
還元炉に装入したペレット積層体における原料の含有量と、原料におけるNi、Coの含有率と、回収された有価メタル量から有価メタル回収率を算出した。なお、メタル回収率は、以下の式により算出した。

有価メタル回収率(%)={ 回収された有価メタル量/(装入した原料の量×酸化鉱石中のNi、Coの合計含有率) }×100(%)
(有価メタルの平均粒径)
回収した有価メタルの平均粒径は、X線CT(株式会社リガク製)を用いて測定した。
(実験結果)
実験結果を下記の表4に示す。
Figure 2023147088000005
表4に示すように、実施例である試料No.1~No.5では、混合物に還元剤として炭素を含んだ処理物を含有させることにより、生成した有価メタルの平均粒径が比較例と比べて大きくなることが確認できた。また、Niメタル化率、有価メタル中のニッケル・コバルトの合計含有率及び有価メタルの回収率も向上することが確認できた。しかも、廃LIBを処理する際に残した炭素を還元処理工程において、有効に還元剤として使用することができることが確認できた。
これに対して、処理物を混合しなかった比較例では、全ての項目においても実施例に比べて低い値であり有価メタルの平均粒径も小さかった。
本発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石から有価メタルを製造する方法として適している。
S1 混合物調製工程
S2 混合物成形工程
S3 還元処理工程
S4 回収工程

Claims (4)

  1. ニッケル酸化鉱石と、廃棄リチウム電池を処理して得た炭素を含む処理物と、炭素質還元剤と、を含有する混合物を調製する混合物調製工程と、
    該混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、
    該混合物成形工程で得られたペレットを加熱還元してニッケルを含有する有価メタルとスラグとを得る還元処理工程と、
    該還元処理工程で得られる有価メタルとスラグとを分離し有価メタルを回収する回収工程と、を含む
    ことを特徴とするニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  2. 前記処理物は、
    全有機炭素計を用いて測定した前記混合物中の全炭素量を100質量%としたとき、該処理物中に含まれる炭素含有量が0.5質量%以上である
    ことを特徴とする請求項1記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  3. 前記処理物を調製するLIBスクラップ処理物調製工程を含み、
    該LIBスクラップ処理物調製工程は、
    廃棄リチウム電池を焙焼する第一焙焼工程と、該第一焙焼工程後の焙焼物を粉砕する破砕工程と、該破砕工程後の粉砕物を磁着物と非磁着物に分別する磁選工程と、該磁選工程後の非磁着物を篩分けする篩工程と、該篩工程後の篩下物を焙焼する第二焙焼工程と、を含み、
    前記第二焙焼工程において、酸素含有雰囲気下、焙焼温度が600℃以上700℃以下で酸化焙焼する
    ことを特徴とする請求項1または2記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  4. 前記混合物調製工程において、
    前記処理物と前記ニッケル酸化鉱石の合計を100質量%としたとき、前記処理物を0.01質量%以上10質量%以下となるように混合する
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
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