JP2023146355A - マイクロカプセル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラベンダー精油を芯物質とし、複合コアセルベーション法で製造可能な新規のマイクロカプセルであって、マイクロカプセルの粒子径が小さく、マイクロカプセルを乾燥させた状態でも、その芯物質の内包保持性能が高いマイクロカプセルの提供。【解決手段】マイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、を含んで構成され、前記マイクロカプセルは、ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を内包し、前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である、マイクロカプセル。【選択図】なし

Description

本発明は、マイクロカプセル及びその製造方法に関する。
マイクロカプセルは、壁材が、目的とする成分を芯物質として内包することにより構成されている。そして、マイクロカプセルは、経時と共に、内包された油性成分を徐々に外部に放出する徐放性を有するものとすることが可能である。
マイクロカプセルの製造方法には、コアセルベーション法を適用したものがある。さらに、コアセルベーション法には、1種のみの高分子で壁材を構成する単純コアセルベーション法と、2種以上の高分子で壁材を構成する複合コアセルベーション法がある。複合コアセルベーション法では、アニオン性高分子とカチオン性高分子で壁材を構成する。複合コアセルベーション法は、壁材が強固なマイクロカプセルを製造するのに適している。
複合コアセルベーション法を適用してマイクロカプセルを製造する場合には、通常、初期段階で、カチオン性高分子と芯物質を混合して乳化液を作製し、この乳化液とアニオン性高分子を混合して、マイクロカプセルを作製する。カチオン性高分子としては、ゼラチンが汎用される。
このように、ゼラチンを用いて乳化液を作製してから製造されるマイクロカプセルとしては、ラベンダー精油を芯物質とし、この芯物質の徐放性が調節されたマイクロカプセル(特許文献1参照)と、ハッカ精油を芯物質とする、徐放性を有するマイクロカプセル(特許文献2参照)が開示されている。
特開2000-159661号公報 特開平11-12105号公報
しかし、ゼラチンを用いた場合には、乳化液の安定性が低くなることがあり、このような状態でマイクロカプセルを作製すると、マイクロカプセルが芯物質を安定して内包する性質(内包保持性能)が不十分になることがある。例えば、マイクロカプセルを乾燥させたときに、内包されていた芯物質がマイクロカプセルから漏出してしまったり、マイクロカプセルの内部に芯物質が残存していない(マイクロカプセルが芯物質を内包していない)状態となることがある。このように、マイクロカプセルの芯物質の内包保持性能が低下してしまうと、マイクロカプセルの特徴の一つである徐放性が失われてしまう。
ゼラチンを用いた場合の乳化液の安定性の有無は、マイクロカプセルの粒子径や、芯物質の種類の影響を受けることが判ってきた。例えば、粒子径が大きいマイクロカプセルでは、芯物質の内包が容易であるため、乳化液の安定性が高くなる傾向にある。一方で、ラベンダー精油は、多くの微量成分を含有する天然精油であり、このようなラベンダー精油を芯物質とした場合には、乳化液の安定性が低くなる傾向にある。すなわち、ゼラチンとラベンダー精油を用いて安定性が高い乳化液を作製し、このような乳化液から、粒子径が小さく、ラベンダー精油を芯物質とし、乾燥させた状態でも芯物質の内包保持性能が高いマイクロカプセルを製造することは困難であるという問題点があった。
これに対して、特許文献1で開示されているマイクロカプセルは、ラベンダー精油を芯物質とするが、マイクロカプセルの粒子径が大きい。特許文献2で開示されているマイクロカプセルは、その粒子径が小さいが、ラベンダー精油を芯物質としていない。
本発明は、ラベンダー精油を芯物質とし、複合コアセルベーション法で製造可能な新規のマイクロカプセルであって、マイクロカプセルの粒子径が小さく、マイクロカプセルを乾燥させた状態でも、その芯物質の内包保持性能が高いマイクロカプセルを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1].マイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、を含んで構成され、前記マイクロカプセルは、ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を内包し、前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である、マイクロカプセル。
[2].前記架橋剤が、トランスグルタミナーゼと、ポリフェノール類と、グルタルアルデヒドと、からなる群より選択される1種又は2種以上である、[1]に記載のマイクロカプセル。
[3].ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を混合することにより、混合液(z)を作製する工程と、水の存在下で、ゼラチンと、前記混合液(z)と、を混合することにより、乳化液を作製する工程と、水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を混合することにより、混合液(a)を作製する工程と、前記混合液(a)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b)を作製する工程と、前記混合液(b)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程と、冷却後の前記混合液(b)と、架橋剤と、を混合することにより、混合液(c)を作製する工程と、前記混合液(c)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節されたマイクロカプセルの水分散体を作製する工程と、を有する、マイクロカプセルの製造方法。
[4].前記架橋剤が、トランスグルタミナーゼと、ポリフェノール類と、グルタルアルデヒドと、からなる群より選択される1種又は2種以上である、[3]に記載のマイクロカプセルの製造方法。
本発明によれば、ラベンダー精油を芯物質とし、複合コアセルベーション法で製造可能な新規のマイクロカプセルであって、マイクロカプセルの粒子径が小さく、マイクロカプセルを乾燥させた状態でも、その芯物質の内包保持性能が高いマイクロカプセルが提供される。
<<マイクロカプセル>>
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、を含んで構成され、前記マイクロカプセルは、ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を内包し、前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である。
本実施形態のマイクロカプセルは、ラベンダー精油とともに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を、芯物質として内包している。これにより、本実施形態のマイクロカプセルは、乾燥させた状態でも、その芯物質の内包保持性能が高く、芯物質を内包した状態(換言すると、マイクロカプセルの正常な状態)を維持する能力が高い。
本実施形態のマイクロカプセルは、後述する複合コアセルベーション法によって製造されるため、その粒子径が小さい。
複合コアセルベーション法の中でも、後述する製造方法での製造時において、ゼラチンとラベンダー精油に加え、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上(本明細書においては、これらを包括して「添加剤」と称することがある)を用いて、安定性が高い乳化液を作製し、このような乳化液からマイクロカプセルを作製することで、本実施形態のマイクロカプセルは、上記のような優れた特性を有する。
本実施形態のマイクロカプセルは、壁材によって芯物質が内包されて構成されている。
前記マイクロカプセルは、後述するように、複合コアセルベーション法を適用することで、製造できる。
前記ゼラチン、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、前記マイクロカプセルの壁材の構成成分(本明細書においては、「壁材成分」と略記することがある)であり、複合コアセルベーション法によって、壁材を構成する。
◎壁材、壁材成分
前記壁材は、上記のとおり、前記ゼラチン、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子によって、構成されており、前記架橋剤は、壁材の強固な構造の維持に寄与している。
<ゼラチン>
前記ゼラチンは、前記第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子とともに、マイクロカプセルの壁材成分となっている。
壁材を構成しているゼラチンは、その分子中にカチオン部を有するカチオン性高分子である。
ゼラチンとしては、通常のもの、例えば、動物の骨、皮膚等に由来するものを使用できる。
ゼラチンの分子量は、例えば、20000~9000000であってもよい。
ゼラチンは、カチオン性及びアニオン性のいずれにもなり得る両性の高分子であるため、後述するように、酸の作用によってカチオン化させて用いる。
前記マイクロカプセルを構成するゼラチンの由来は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
<第1アニオン性高分子>
前記第1アニオン性高分子は、その分子中にアニオン部を有する高分子であり、ゼラチンとともに、マイクロカプセルの壁材成分となっている。
第1アニオン性高分子は、アニオン性基を有する高分子であれば、特に限定されない。
第1アニオン性高分子としては、例えば、酸基が解離(アニオン化)した基を有する高分子が挙げられる。
第1アニオン性高分子として、より具体的には、例えば、カルボキシ基(-C(=O)-OH)が解離(アニオン化)した基、すなわちカルボキシラートアニオン(-C(=O)-O)を有する高分子;スルホ基(-SOH)が解離(アニオン化)した基(-SO )を有する高分子等が挙げられる。
1分子の第1アニオン性高分子においては、一部又は全てのアニオン性基が、カチオンとともに塩を形成していてもよい。
第1アニオン性高分子において、アニオン性基(アニオン化した基)と塩を形成しているカチオンは、金属イオンであることが好ましく、前記金属イオンは、1価金属イオンと、価数が2以上の金属イオン(多価金属イオン)と、のいずれであってもよいが、1価金属イオンであることが好ましい。
前記1価金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、リチウムイオン(Li)等のアルカリ金属イオン等が挙げられる。
前記多価金属イオンとしては、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
第1アニオン性高分子としては、例えば、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン(例えば、ιカラギーナン(イオタカラギーナン)、κカラギーナン(カッパカラギーナン)、λカラギーナン(ラムダカラギーナン))、エチレン-無水マレイン酸共重合体の開環物、キサンタンガム、ペクチン等が挙げられる。
前記エチレン-無水マレイン酸共重合体の開環物とは、エチレン-無水マレイン酸共重合体中の、無水マレイン酸から誘導された構成単位において、酸無水物部位が加水分解により開環したとみなせるものを意味する。
第1アニオン性高分子の分子量は、特に限定されず、例えば、20000~50000000であってもよい。
第1アニオン性高分子の分子量は、第1アニオン性高分子の種類によって異なっていてもよい。
例えば、アラビアガムの分子量は200000~2000000であってもよく、アルギン酸ナトリウムの分子量は40000~4000000であってもよく、カルボキシメチルセルロースナトリウムの分子量は20000~400000であってもよく、キサンタンガムの分子量は2000000~50000000であってもよく、ペクチンの分子量は50000~360000であってもよい。
前記マイクロカプセルにおいて、ゼラチンの含有量100質量部に対する、第1アニオン性高分子の含有量は、10~210質量部であることが好ましく、例えば、10~190質量部、10~170質量部、10~150質量部、及び10~130質量部のいずれかであってもよいし、60~210質量部、110~210質量部、及び160~210質量部のいずれかであってもよいし、60~190質量部、及び110~170質量部のいずれかであってもよい。第1アニオン性高分子の前記含有量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第1アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
<第2アニオン性高分子>
前記第2アニオン性高分子も、第1アニオン性高分子と同様に、その分子中にアニオン部を有する高分子であり、ゼラチンとともに、マイクロカプセルの壁材成分となっている。
第2アニオン性高分子は、アニオン性基を有する高分子であり、かつ、第1アニオン性高分子とは異なる種類であれば、特に限定されない。
本実施形態において、第1アニオン性高分子と第2アニオン性高分子の種類が互いに異なるということは、第1アニオン性高分子のアニオン部を有する高分子部位と、第2アニオン性高分子のアニオン部を有する高分子部位と、が組成の点で互いに相違することを意味し、これら高分子部位の一方が、他方が有していない構成単位を有していることが好ましい。
第2アニオン性高分子としては、先に説明した第1アニオン性高分子と同様のものが挙げられる。
第2アニオン性高分子の分子量は、先に説明した第2アニオン性高分子の分子量と同様であってよい。
前記マイクロカプセルにおいて、ゼラチンの含有量100質量部に対する、第2アニオン性高分子の含有量は、2~80質量部であることが好ましく、例えば、2~60質量部、2~40質量部、2~20質量部、及び2~10質量部のいずれかであってもよいし、10~80質量部、30~80質量部、及び50~80質量部のいずれかであってもよいし、10~60質量部、及び30~40質量部のいずれかであってもよい。第2アニオン性高分子の前記含有量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第2アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
前記マイクロカプセルが含む(換言すると、壁材成分を構成する)第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、合計で2種のみであってもよいし、3種以上であってもよく、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子の組み合わせ、並びに比率は、目的に応じて任意に選択できる。
本実施形態においては、例えば、前記マイクロカプセルが、アニオン性高分子を合計で2種のみ含む場合には、マイクロカプセルにおける含有量(質量部)が多い方のアニオン性高分子を、第1アニオン性高分子とし、含有量(質量部)が少ない方のアニオン性高分子を、第2アニオン性高分子とする。
一方、前記マイクロカプセルが、アニオン性高分子を合計で3種以上含む場合には、マイクロカプセルにおける含有量(質量部)が最も多いアニオン性高分子Xについて、アニオン性高分子の総含有量(質量部)に対する、前記アニオン性高分子Xの含有量(質量部)の割合([アニオン性高分子Xの含有量(質量部)]/[アニオン性高分子の総含有量(質量部)]×100)を算出したとき、その算出値が50質量%以上であるか、又は50質量%未満であるかによって、アニオン性高分子の分類が異なる。ここで、「アニオン性高分子の総含有量(質量部)」とは、マイクロカプセルが含むすべてのアニオン性高分子の含有量であり、個々のアニオン性高分子の含有量の合計値である。
前記算出値が50質量%以上である場合には、アニオン性高分子Xを第1アニオン性高分子とし、それ以外のアニオン性高分子を、第2アニオン性高分子とする。
これに対して、前記算出値が50質量%未満である場合には、アニオン性高分子の種類ごとに、アニオン性高分子の含有量(質量部)を、その値が大きい方から順に合算することにより合計値(質量部)を求め、アニオン性高分子の総含有量(質量部)に対する、前記合計値の割合([アニオン性高分子の含有量を、その値が大きい方から順に合算して求められた合計値(質量部)]/[アニオン性高分子の総含有量(質量部)]×100)が50質量%以上となる最小の種類のアニオン性高分子を、第1アニオン性高分子とする。そして、それ以外のアニオン性高分子を、第2アニオン性高分子とする。ただし、マイクロカプセルにおける含有量(質量部)が互いに同じである複数種のアニオン性高分子は、同格に扱う。
例えば、アニオン性高分子Xを40質量部含み、アニオン性高分子Xを30質量部含み、アニオン性高分子Xを20質量部含み、アニオン性高分子Xを10質量部含む場合には、アニオン性高分子X及びXを第1アニオン性高分子とし、アニオン性高分子X及びXを第2アニオン性高分子とする。また、例えば、アニオン性高分子Xを35質量部含み、アニオン性高分子Xを25質量部含み、アニオン性高分子Xを25質量部含み、アニオン性高分子Xを15質量部含む場合には、アニオン性高分子X、X及びXを第1アニオン性高分子とし、アニオン性高分子Xを第2アニオン性高分子とする。この場合、アニオン性高分子X及びXを同格に扱い、これらの一方を第1アニオン性高分子とし、他方を第2アニオン性高分子とすることはしない。
前記マイクロカプセルは、例えば、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子を、ともに1種のみ含んでいてもよいし、第1アニオン性高分子を1種のみ含み、第2アニオン性高分子を2種以上含んでいてもよいし、第1アニオン性高分子を2種以上含み、第2アニオン性高分子を1種のみ含んでいてもよいし、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子を、ともに2種以上含んでいてもよい。
後述するマイクロカプセルの製造方法において、第1アニオン性高分子と第2アニオン性高分子の使用のタイミングは重要である。この点も含めて、マイクロカプセルの製造方法については、後ほど詳しく説明する。
前記マイクロカプセルにおいて、第2アニオン性高分子の含有量100質量部に対する、第1アニオン性高分子の含有量は、100~6000質量部であることが好ましく、例えば、1000~6000質量部、2000~6000質量部、及び3000~6000質量部のいずれかであってもよいし、100~4000質量部、100~2000質量部、及び100~1000質量部のいずれかであってもよいし、1000~4000質量部であってもよい。前記含有量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの内包保持性能がより高くなる。
前記マイクロカプセルにおいて、ゼラチンの含有量100質量部に対する、第1アニオン性高分子と第2アニオン性高分子の合計含有量は、13~290質量部であることが好ましく、例えば、13~260質量部、13~230質量部、13~210質量部、及び13~190質量部のいずれかであってもよいし、70~290質量部、140~290質量部、及び210~290質量部のいずれかであってもよいし、70~260質量部、及び140~230質量部のいずれかであってもよい。前記合計含有量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記合計含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの内包保持性能がより高くなる。
前記マイクロカプセルは、その壁材成分として、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子という、少なくとも2種のアニオン性高分子を含んでいることにより、その平均粒子径が小さくなる。例えば、マイクロカプセルが、壁材成分として、アニオン性高分子を1種のみ含んでいる場合には、マイクロカプセル自体の凝集又は合一が生じたり、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一が生じたりすることがある。このような場合、マイクロカプセルがきれいに形成されないか、又は形成されたとしても、粒子径が顕著に大きくなってしまう。
<架橋剤>
前記架橋剤は、前記マイクロカプセルの壁材を強固にする。
マイクロカプセル中の架橋剤は、壁材成分同士を結び付けることに寄与していると推測される。例えば、架橋剤は、1分子の壁材成分中の異なる部位同士の間に介在して、これら部位同士を水素結合、共有結合又は電気的引力により連結させているか、又は、2分子の壁材成分同士の間に介在して、これら2分子同士を水素結合、共有結合又は電気的引力により連結させていると推測される。
架橋剤は、公知のものであってよく、特に限定されない。
好ましい架橋剤としては、例えば、トランスグルタミナーゼ、ポリフェノール類、グルタルアルデヒド等が挙げられる。
前記ポリフェノール類は、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有する、換言すると、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格等の芳香族環を有し、かつ、前記芳香族環の環骨格を構成している炭素原子に直接結合している、2個以上の水酸基(-OH)を有するもの、であれば、特に限定されない。
ポリフェノール類は、例えば、ゼラチン中のアミノ基(-NH)又はその水素イオンの付加物(-NH )との間で、水素結合を形成していると推測される。
前記ポリフェノール類としては、例えば、タンニン酸、カテキン、クロロゲン酸、没食子酸、キナ酸、カフェ酸等が挙げられる。
前記マイクロカプセルを構成する架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記マイクロカプセルにおいて、架橋剤の含有量は、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計含有量100質量部に対して、1~60質量部であることが好ましく、例えば、15~50質量部、及び20~40質量部のいずれかであってもよい。架橋剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、前記マイクロカプセルの壁材が、より強固になる。架橋剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤の過剰使用が抑制される。
公知の架橋剤としては、多価金属塩も挙げられる。前記多価金属塩は、価数が2以上の金属イオン(多価金属イオン)を構成成分とするものであれば、特に限定されない。
例えば、多価金属塩は、多価金属無機塩及び多価金属有機塩のいずれであってもよい。
多価金属塩は水和物及び非水和物のいずれであってもよい。
ただし、多価金属塩を含んで構成された前記マイクロカプセルには、それ自体の凝集又は合一を生じたりするものがあり、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一が生じたりすることもある。このような場合、マイクロカプセルの粒子径が大きくなってしまう。したがって、多価金属塩の使用量は少ないほど好ましく、例えば、前記マイクロカプセルにおいて、多価金属塩の含有量は、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計含有量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることが特に好ましく、0質量部であること(すなわち、マイクロカプセルが多価金属塩を含まないこと)が特に好ましい。
架橋剤は、前記マイクロカプセルの壁材がより強固になる点では、トランスグルタミナーゼと、ポリフェノール類と、グルタルアルデヒドと、からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
<ゼラチン以外のカチオン性高分子>
前記マイクロカプセル中の壁材は、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチン以外のカチオン性高分子(本明細書においては、「他のカチオン性高分子」と称することがある)を含んで構成されていてもよい。
前記他のカチオン性高分子は、特に限定されない。
前記他のカチオン性高分子としては、例えば、キトサン、カゼイン、ポリエチレンイミン、カチオン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
前記マイクロカプセルを構成する、前記他のカチオン性高分子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記マイクロカプセルにおいて、前記他のカチオン性高分子の含有量は、ゼラチンの含有量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部であること(すなわち、マイクロカプセルが前記他のカチオン性高分子を含まないこと)が特に好ましい。他のカチオン性高分子の前記含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの平均粒子径がより小さくなり、マイクロカプセルの芯物質の内包保持性能がより高くなり、マイクロカプセルの安定性がより向上する。また、前記壁材がより良好に形成される。
◎ラベンダー精油
前記ラベンダー精油は、油性成分の1種であり、本実施形態のマイクロカプセルにおける芯物質である。
ラベンダー精油は、常温でオイル状である。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
ラベンダー精油としては、例えば、酢酸リナリル、リナロール、オシメン、テルピネン、酢酸ラバンジル(酢酸ラバンジュリル)等を主成分とする真正ラベンダー精油;酢酸リナリル、リナロール、カンファー、1,8-シネオール等を主成分とするラバンジン精油;リナロール、1,8-シネオール、カンファー、ピネン、リモネン等を主成分とするスパイクラベンダー精油等が挙げられる。
ラベンダー精油は、上記の主成分以外に、例えば、テルピネン-4-オール、3-オクタノン、3-酢酸オクタニル等の微量成分を含んでいてもよい。
前記マイクロカプセルを構成する(換言すると、前記壁材に内包されている)前記ラベンダー精油は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記マイクロカプセルにおいて、前記ラベンダー精油の含有量は、ゼラチンの含有量100質量部に対して、200~1200質量部であることが好ましく、例えば、300~1000質量部、及び400~800質量部のいずれかであってもよい。芯物質の前記含有量がこのような範囲であるマイクロカプセルは、品質がより良好で、より容易に製造できる。
マイクロカプセルの芯物質の内包保持性能が低い場合には、乾燥した状態のマイクロカプセルでは、ラベンダー精油が壁材を透過して、徐々にマイクロカプセルの外部に漏出し易い。また、マイクロカプセルを乾燥させたときに、ラベンダー精油が壁材を透過して、気化することによって、マイクロカプセルがラベンダー精油を内包していない状態となり易い。
これに対して、前記マイクロカプセルは、芯物質の内包保持性能が高いため、上記のような不具合が抑制される。
◎添加剤
前記マイクロカプセルは、ラベンダー精油とともに添加剤を内包しており、このようなマイクロカプセルは、マイクロカプセルを乾燥させた状態でも、これら芯物質(ラベンダー精油、添加剤)の内包保持性能が高い。これは、後述する製造方法において、ゼラチンと、水と、ラベンダー精油と、前記添加剤と、を含有する乳化液の安定性(乳化液の乳化状態が維持される特性)が高いことによる。
前記添加剤は、界面活性剤に分類できる。
本明細書において、「添加剤」とは、特に断りのない限り、「HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル」と、「HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステル」と、のいずれか一方又は両方を意味する。
前記添加剤は、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上である。すなわち、前記マイクロカプセルは、前記添加剤として、1種又は2種以上の前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを内包し、かつ、前記ソルビタン脂肪酸エステルを内包していなくてもよいし、1種又は2種以上の前記ソルビタン脂肪酸エステルを内包し、かつ、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを内包していなくてもよいし、1種又は2種以上の前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを内包し、かつ、1種又は2種以上の前記ソルビタン脂肪酸エステルを内包していてもよい。
マイクロカプセルが、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、前記ソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される2種以上を内包する場合、これら2種以上の組み合わせ(より具体的には、2種以上の前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのすべての組み合わせ、2種以上の前記ソルビタン脂肪酸エステルのすべての組み合わせ、又は、1種若しくは2種以上の前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、1種若しくは2種以上の前記ソルビタン脂肪酸エステルと、のすべての組み合わせ)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
本明細書において、「HLB値」とは、特に断りのない限り、グリフィン(Griffin)法で算出された値である。
<ポリオキシアルキレンアルキルエーテル>
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、例えば、ポリアルキレングリコールの両末端の水酸基の一方のみがエーテルを形成した構造を有していてもよい(すなわち、ポリアルキレングリコールモノエーテルであってもよい)し、ポリアルキレングリコールの両末端の水酸基がともにエーテルを形成した構造を有していてもよい(すなわち、ポリアルキレングリコールジエーテルであってもよい)。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル中のエーテル構造を形成している末端側の1価の炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。
前記炭化水素基の炭素数は、特に限定されず、例えば、8~20、12~20、及び16~20のいずれかであってもよい。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値は、例えば、9.5以下、8.0以下、6.5以下、及び5.0以下のいずれかであってもよい。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値の下限値は、特に限定されない。例えば、HLB値が2.5以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、より容易に入手できる。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(別名:ポリオキシアルキレンドデシルエーテル);ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル等のポリオキシアルキレンオレイルセチルエーテル;ポリオキシアルキレントリデシルエーテル等が挙げられる。
<ソルビタン脂肪酸エステル>
前記ソルビタン脂肪酸エステルは、例えば、1,4-ソルビタン中の4個の水酸基のうちの、いずれか(1~3個)の水酸基が脂肪酸エステルを形成した構造を有していてもよい(ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル及びソルビタントリ脂肪酸エステルのいずれであってもよい)し、すべて(4個)の水酸基が脂肪酸エステルを形成した構造を有していてもよい(ソルビタンテトラ脂肪酸エステルであってもよい)。
前記ソルビタン脂肪酸エステルは、1,4-ソルビタン中の1~3個の水酸基が脂肪酸エステルを形成した構造を有するものが好ましい。
1,4-ソルビタンには、水酸基が結合している炭素原子として、その別の炭素原子の結合数が2であるもの(第二級炭素原子)が3個存在し、その別の炭素原子の結合数が1であるもの(第一級炭素原子)が1個存在する。前記ソルビタン脂肪酸エステルは、少なくとも、別の炭素原子の結合数が1である炭素原子(第一級炭素原子)に結合している水酸基が脂肪酸エステルを形成した構造を有していることが好ましい。
前記ソルビタン脂肪酸エステル中の脂肪酸残基(アシル基)は、飽和脂肪酸残基及び不飽和脂肪酸残基のいずれであってもよい。
前記脂肪酸残基の炭素数は、特に限定されず、例えば、8~20、12~20、及び16~20のいずれかであってもよい。
前記ソルビタン脂肪酸エステルのHLB値は、例えば、9.0以下、7.0以下、5.0以下、及び3.0以下のいずれかであってもよい。
前記ソルビタン脂肪酸エステルのHLB値の下限値は、特に限定されない。例えば、HLB値が1.0以上のソルビタン脂肪酸エステルは、より容易に入手できる。
好ましいソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンオレエートが挙げられる。
前記マイクロカプセルにおいて、前記添加剤の含有量(前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量と、前記ソルビタン脂肪酸エステルの含有量と、の合計量)は、ラベンダー精油の含有量に対して、0.7質量%以上であることが好ましく、例えば、1.4質量%以上、2.1質量%以上、及び2.8質量%以上のいずれかであってもよい。添加剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの内包保持性能がより高くなる。
前記マイクロカプセルにおいて、前記添加剤の含有量は、ラベンダー精油の含有量に対して、10質量%以下であることが好ましい。添加剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルでの芯物質の内包量の低下がより抑制され、芯物質の内包によって得られる効果の低減がより抑制される。
添加剤の前記含有量は、例えば、0.7~10質量%、1.4~10質量%、2.1~10質量%、及び2.8~10質量%のいずれかであってもよい。
◎他の成分
前記マイクロカプセルは、本発明の効果を損なわない範囲で、ラベンダー精油と、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、のいずれにも該当しない、他の成分を内包していてもよい。
前記他の成分(他の内包成分)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記マイクロカプセルが内包する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記他の成分としては、例えば、水以外の溶媒;ラベンダー精油以外の油性成分;水と、前記溶媒と、ラベンダー精油と、前記油性成分と、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(添加剤)と、前記ソルビタン脂肪酸エステル(添加剤)と、のいずれにも該当しない他の添加剤が挙げられる。
<水以外の溶媒>
水以外の溶媒として、例えば、前記マイクロカプセルの製造に用いる原料に含まれている溶媒が挙げられる。
本明細書においては、特に断りのない限り、溶液中で溶質を溶解させることが可能な成分だけなく、分散液中で分散媒となる成分も、「溶媒」と称する。
水以外の溶媒は、有機溶媒であることが好ましい。
<ラベンダー精油以外の油性成分>
ラベンダー精油以外の油性成分(本明細書においては、「他の油性成分」と称することがある)は、ラベンダー精油に該当しない油性成分であれば、特に限定されない。
本明細書において、「油性成分」とは、「SP値(溶解パラメータ)が7.0~11.0(cal/cm1/2である成分」を意味する。そして、「SP値」とは、Fedorsの計算法による計算値である。
前記他の油性成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
油性成分は、常温でオイル状であるものが好ましい。
前記他の油性成分としては、例えば、動物性油、植物性油、鉱物性油等が挙げられる。
前記植物性油としては、例えば、パーム油、パーム核油、大豆油、菜種油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、コーン油、ごま油、ひまし油、アマニ油、ピーナッツオイル、オリーブオイル等が挙げられる。
前記他の油性成分としては、その機能の観点からは、例えば、香料、防虫剤、殺虫剤、昆虫忌避剤、化粧材、消臭剤、医薬、殺菌剤、その他の化学反応剤等が挙げられる。前記化学反応剤とは、特定の化学物質と反応することにより、この化学物質の作用を阻害し、かつ、香料、防虫剤、殺虫剤、昆虫忌避剤、化粧材、消臭剤、医薬及び殺菌剤、のいずれにも該当しない成分である。
<他の添加剤>
前記他の添加剤は、これまでに説明したマイクロカプセルの構成成分、すなわち、水と、前記溶媒と、ラベンダー精油と、前記油性成分と、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(添加剤)と、前記ソルビタン脂肪酸エステル(添加剤)と、のいずれにも該当しない成分であれば、特に限定されない。
他の添加剤としては、例えば、HLB値が10.0超のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;HLB値が10.0超のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、ソルビタン脂肪酸エステルと、のいずれにも該当しない他の界面活性剤等が挙げられる。
前記他の成分が、水以外の溶媒に該当しない成分である場合、前記マイクロカプセルが内包しているラベンダー精油と、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、の合計量に対する、前記マイクロカプセルが内包している前記他の成分の合計量の割合([マイクロカプセルが内包している他の成分の合計量(質量部)]/([マイクロカプセルが内包しているラベンダー精油の量(質量部)]+[マイクロカプセルが内包している、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの量(質量部)]+[マイクロカプセルが内包している、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルの量(質量部)]×100)は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であること、すなわち前記他の成分を内包していないこと、が特に好ましい。
前記他の成分が、水以外の溶媒である場合、前記マイクロカプセルが内包している前記溶媒の量は、前記溶媒の種類に応じて、適宜調節できる。
◎マイクロカプセルの平均粒子径
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、30μm以下であり、マイクロカプセルの粒子径は小さい。
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、例えば、28μm以下、26μm以下、24μm以下、及び22μm以下のいずれかであってもよい。例えば、平均粒子径が小さいマイクロカプセルは、目視での視認が困難であるため、用途が限定されてしまうことがない。
前記マイクロカプセルの平均粒子径の下限値は、特に限定されない。例えば、前記マイクロカプセルの製造がより容易である点では、前記マイクロカプセルの平均粒子径は、8μm以上、13μm以上、及び18μm以上のいずれかであってもよい。
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、上述のいずれかの上限値と、いずれかの下限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記マイクロカプセルの平均粒子径は、8~30μm、8~28μm、8~26μm、8~24μm、及び8~22μm以下のいずれかであってもよいし、13~30μm、13~28μm、13~26μm、13~24μm、及び13~22μm以下のいずれかであってもよいし、18~30μm、18~28μm、18~26μm、18~24μm、及び18~22μm以下のいずれかであってもよい。
本明細書において、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、粒子について、粒度分布計を用いて測定された、体積粒度分布の中位径を意味する。
前記マイクロカプセルにおいては、壁材の製造原料として、生体に対する毒性が強いものを用いておらず、マイクロカプセルの生体に対する安全性が高い。
また、前記マイクロカプセルは、壁材の製造原料と、芯物質として、適切なものを選択することで、容易に生分解性とすることが可能である。
前記マイクロカプセルは、経時と共に、内包された芯物質(特にラベンダー精油)を徐々に外部に放出する徐放性を有するものとすることが可能である。このようなマイクロカプセルは、芯物質の作用を、長期に渡って持続させることができる。
例えば、ゼラチン、第1アニオン性高分子、第2アニオン性高分子、架橋剤、ラベンダー精油、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びHLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルとして、先に挙げたものを適宜組み合わせて構成された前記マイクロカプセルは、徐放性がより高いものとして好適である。
前記マイクロカプセルは、以下で説明するように、複合コアセルベーション法を適用することで、製造できる。このように製造した本実施形態のマイクロカプセルは、単純コアセルベーション法を適用することで製造したマイクロカプセルよりも、壁材が強固である。
<<マイクロカプセルの製造方法>>
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法は、ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を混合することにより、混合液(z)を作製する工程(本明細書においては、「第1混合工程」と称することがある)と、
水の存在下で、ゼラチンと、前記混合液(z)と、を混合することにより、乳化液を作製する工程(本明細書においては、「乳化工程」と称することがある)と、
水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を混合することにより、混合液(a)を作製する工程(本明細書においては、「乳化液混合工程」と称することがある)と、
前記混合液(a)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b)を作製する工程(本明細書においては、「酸性化工程」と称することがある)と、
前記混合液(b)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程(本明細書においては、「冷却工程」と称することがある)と、
冷却後の前記混合液(b)と、架橋剤と、を混合することにより、混合液(c)を作製する工程(本明細書においては、「架橋剤混合工程」と称することがある)と、
前記混合液(c)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節されたマイクロカプセルの水分散体を作製する工程(本明細書においては、「塩基混合工程」と称することがある)と、を有する。
前記製造方法は、複合コアセルベーション法を適用したマイクロカプセルの製造方法であり、この方法により、上述の本発明のマイクロカプセルを良好に製造できる。
<第1混合工程>
前記第1混合工程においては、ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上(すなわち前記添加剤)を混合することにより、混合液(z)を作製する。
混合液(z)は、ラベンダー精油を含有し、さらに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、のいずれか一方又は両方(添加剤)を含有する。
第1混合工程で用いるラベンダー精油及び前記添加剤(前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、前記ソルビタン脂肪酸エステル)は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
第1混合工程で用いるラベンダー精油及び前記添加剤は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第1混合工程において、前記添加剤の使用量(前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、前記ソルビタン脂肪酸エステルと、の合計使用量)は、ラベンダー精油の使用量に対して、0.7質量%以上であることが好ましく、例えば、1.4質量%以上、2.1質量%以上、及び2.8質量%以上のいずれかであってもよい。添加剤の前記使用量が前記下限値以上であることで、後述する乳化工程で、乳化液の安定性がより高くなる。
前記マイクロカプセルにおいて、前記添加剤の使用量は、ラベンダー精油の使用量に対して、10質量%以下であることが好ましい。添加剤の前記使用量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルでの芯物質の内包量の低下がより抑制され、芯物質の内包によって得られる効果の低減がより抑制される。
添加剤の前記使用量は、例えば、0.7~10質量%、1.4~10質量%、2.1~10質量%、及び2.8~10質量%のいずれかであってもよい。
第1混合工程においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ラベンダー精油と、前記添加剤と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(01)」と称することがある)を混合してもよい。
前記他の成分(01)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
他の成分(01)としては、例えば、先に説明した他の成分のうち、ラベンダー精油以外の油性成分、前記他の添加剤等が挙げられる。
第1混合工程で用いる他の成分(01)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第1混合工程において、前記他の成分(01)の使用量は、特に限定されず、他の成分(01)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、第1混合工程において、ラベンダー精油と、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、の合計使用量に対する、他の成分(01)の使用量の割合([他の成分(01)の使用量]/([ラベンダー精油の使用量]+[HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの使用量]+[HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルの使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、内包保持性能がより高いマイクロカプセルが得られる。
第1混合工程においては、ラベンダー精油と、前記添加剤と、必要に応じて他の成分(01)と、の混合は、常温下で行うことが好ましく、18~30℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
ラベンダー精油と、前記添加剤と、必要に応じて他の成分(01)と、を混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌子又は撹拌翼等の撹拌手段を回転させることで、これら成分を混合する方法が挙げられる。
第1混合工程においては、ラベンダー精油と、前記添加剤と、必要に応じて他の成分(01)と、のいずれかの成分に対して、残りの成分を添加するときに、添加対象であるいずれかの成分を撹拌しながら、残りの成分を添加してもよいし、添加対象であるいずれかの成分を撹拌せずに、残りの成分を添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
第1混合工程においては、すべての成分(ラベンダー精油と、前記添加剤と、必要に応じて他の成分(01))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
第1混合工程においては、ラベンダー精油に前記添加剤を添加することにより、混合液(z)を作製することが好ましい。
<乳化工程>
前記乳化工程においては、水の存在下で、ゼラチンと、前記混合液(z)と、を混合することにより、乳化液を作製する。
前記乳化液は、ゼラチンと、水と、ラベンダー精油と、を含有し、さらに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、のいずれか一方又は両方(添加剤)を含有する。
前記添加剤を用いていることで、乳化工程で得られる乳化液は、その安定性(乳化液の乳化状態が維持される特性)が高い。
乳化工程で用いる前記ゼラチンは、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
乳化工程で用いるゼラチンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
乳化工程においては、例えば、ゼラチンと、水と、混合液(z)と、を配合してもよいし、ゼラチン水溶液と、混合液(z)と、を配合してもよい。ゼラチン水溶液を配合する場合には、ゼラチン水溶液中の水以外に、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
乳化工程においては、ゼラチンと、水と、混合液(z)と、を配合する順序は、特に限定されず、ゼラチン水溶液と、混合液(z)と、別途必要に応じて水と、を配合する順序も、特に限定されない。
乳化工程においては、ゼラチン水溶液と、混合液(z)と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い前記乳化液を作製できる。
乳化工程で用いる前記ゼラチン水溶液のゼラチンの濃度は、2~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、「ゼラチン水溶液のゼラチンの濃度」とは、「ゼラチン水溶液における、ゼラチン水溶液の総質量(質量部)に対する、ゼラチンの含有量(質量部)の割合」を意味する。ここでは、ゼラチンを例に挙げて説明したが、他の成分の水溶液の濃度も、同様である。
乳化工程で用いる水と、前記ゼラチン水溶液は、いずれも加熱してもよい。水又はゼラチン水溶液を加熱することで、均一性がより高い前記乳化液を作製できる。
水とゼラチン水溶液の加熱温度は、40~75℃であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましい。前記加熱温度が前記下限値以上であることで、加熱の効果がより顕著に得られる。前記加熱温度が前記上限値以下であることで、ゼラチン又は前記添加剤の変質など、加熱による弊害を抑制する効果がより高くなる。
前記ゼラチン水溶液と混合液(z)を配合する場合には、ゼラチン水溶液に混合液(z)を添加してもよいし、混合液(z)にゼラチン水溶液を添加してもよい。ゼラチン水溶液に混合液(z)を添加する場合には、混合液(z)をゼラチン水溶液に一括添加してもよいし、分割添加又は滴下してもよい。混合液(z)にゼラチン水溶液を添加する場合には、ゼラチン水溶液を混合液(z)に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
乳化工程において、水の使用量は、ゼラチンの使用量に対して10~30質量倍であることが好ましく、15~25質量倍であることがより好ましい。水の前記使用量が前記下限値以上であることで、均一性がより高い前記乳化液を作製できるなど、水を使用したことによる効果が、より高くなる。水の前記使用量が前記上限値以下であることで、水の過剰使用が抑制される。
ここで、水の使用量とは、ゼラチンと、水と、混合液(z)と、を配合する場合には、この水の量であり、ゼラチン水溶液と、混合液(z)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、ゼラチン水溶液中の水の量であり、ゼラチン水溶液と、混合液(z)と、別途水と、を配合する場合には、ゼラチン水溶液中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
乳化工程において、混合液(z)の使用量は、ゼラチンの使用量に対して2~10質量倍であることが好ましく、4~8質量倍であることがより好ましい。混合液(z)の前記使用量がこのような範囲であることで、品質がより良好なマイクロカプセルをより容易に製造できる。
乳化工程においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、水と、ラベンダー精油と、前記添加剤と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(02)」と称することがある)を混合してもよい。
前記他の成分(02)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
乳化工程で用いる他の成分(02)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
乳化工程において、前記他の成分(02)の使用量は、特に限定されず、他の成分(02)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、乳化工程において、ゼラチンと、水と、混合液(z)と、の合計使用量に対する、他の成分(02)の使用量の割合([他の成分(02)の使用量]/([ゼラチンの使用量]+[水の使用量]+[混合液(z)の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、内包保持性能がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、水の使用量とは、先に説明したとおりである。
乳化工程においては、水の存在下での、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、の混合は、15~75℃の温度条件下で行うことが好ましく、18~60℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
水の存在下で、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、を混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌子又は撹拌翼等の撹拌手段を回転させることで、これら成分を混合する方法が挙げられる。
撹拌手段の回転数は、例えば、1500~4500rpm、及び2500~3500rpmのいずれかであってもよいが、これに限定されない。例えば、ゼラチンの使用量が、5~15gである場合、このような回転数は、特に好適である。ただし、ゼラチンの使用量は、これに限定されない。また、このような回転数は、本工程のうち、少なくとも、水の存在下で、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、をすべて配合後に、適用することが好ましい。
乳化工程においては、ゼラチン又はゼラチン水溶液と、混合液(z)と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(02)と、のいずれかの成分に対して、残りの成分を添加するときに、添加対象であるいずれかの成分を撹拌しながら、残りの成分を添加してもよいし、添加対象であるいずれかの成分を撹拌せずに、残りの成分を添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
乳化工程においては、すべての成分(ゼラチン又はゼラチン水溶液と、混合液(z)と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(02))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
乳化工程においては、例えば、加熱したゼラチン水溶液に、混合液(z)を単独で添加することにより、乳化液を作製することが好ましく、加熱したゼラチン水溶液に、常温下(室温下)の混合液(z)を単独で添加することにより、乳化液を作製してもよい。
<乳化液混合工程>
前記乳化液混合工程においては、水の存在下で、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を混合することにより、混合液(a)を作製する。
前記混合液(a)は、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、ゼラチンと、水と、ラベンダー精油と、を含有し、さらに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、のいずれか一方又は両方(添加剤)を含有する。
乳化液混合工程において、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子を併用することにより、以降の工程で、マイクロカプセル自体の凝集又は合一と、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一と、が抑制される。
乳化液混合工程で用いる第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
乳化液混合工程で用いる第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子の分類方法は、先に説明したとおりである。
乳化液混合工程においては、例えば、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、前記乳化液と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液と、前記乳化液と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、前記乳化液と、を配合してもよい。第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中又は第2アニオン性高分子水溶液中の水以外に、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
乳化液混合工程においては、第1アニオン性高分子又はその水溶液と、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、前記乳化液と、必要に応じて水と、を配合する順序は、特に限定されない。
乳化液混合工程においては、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、前記乳化液と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い混合液(a)を作製できる。
乳化液混合工程で用いる第1アニオン性高分子水溶液の第1アニオン性高分子の濃度は、3~20質量%であることが好ましく、5~12質量%であることがより好ましい。
乳化液混合工程で用いる第2アニオン性高分子水溶液の第2アニオン性高分子の濃度は、3~20質量%であることが好ましく、5~12質量%であることがより好ましい。
乳化液混合工程で用いる水と、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液は、いずれも加熱してもよい。水、第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液を加熱することで、均一性がより高い混合液(a)を作製できることがある。
水と、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、の加熱温度は、40~75℃であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましい。前記加熱温度が前記下限値以上であることで、加熱の効果がより顕著に得られる。前記加熱温度が前記上限値以下であることで、第1アニオン性高分子、第2アニオン性高分子、ゼラチン、ラベンダー精油又は前記添加剤の変質など、加熱による弊害を抑制する効果がより高くなる。
混合液(a)の作製時には、水と、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、のうちのいずれかは、加熱せずに、その温度を常温としてもよい。
第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液に配合対象物を添加してもよいし、配合対象物に第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液を添加してもよい。第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液に配合対象物を添加する場合には、配合対象物を第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液に一括添加してもよいし、分割添加若しくは滴下してもよい。配合対象物に第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液を添加する場合には、第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液を配合対象物に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
乳化液混合工程において、水の使用量は、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子の合計使用量に対して、4~16質量倍であることが好ましく、7~13質量倍であることがより好ましい。水の前記使用量が前記下限値以上であることで、均一性がより高い混合液(a)を作製できるなど、水を使用したことによる効果が、より高くなる。水の前記使用量が前記上限値以下であることで、水の過剰使用が抑制される。
ここで、水の使用量とは、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、前記乳化液と、を配合する場合には、この水の量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水の量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、別途水と、を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液と、前記乳化液と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第2アニオン性高分子水溶液中の水の量である。
また、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液と、前記乳化液と、別途水と、を配合する場合には、第2アニオン性高分子水溶液中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、前記乳化液と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水と、第2アニオン性高分子水溶液中の水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、前記乳化液と、別途水と、を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水と、第2アニオン性高分子水溶液中の水と、これらとは別途配合する水と、の合計量である。
乳化液混合工程において、第1アニオン性高分子の使用量は、前記乳化液中のゼラチンの量に対して、0.1~2.1質量倍であることが好ましく、例えば、0.1~1.9質量倍、0.1~1.7質量倍、0.1~1.5質量倍、及び0.1~1.3質量倍のいずれかであってもよいし、0.6~2.1質量倍、1.1~2.1質量倍、及び1.6~2.1質量倍のいずれかであってもよいし、0.6~1.9質量倍、及び1.1~1.7質量倍のいずれかであってもよい。第1アニオン性高分子の使用量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第1アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
乳化液混合工程において、第2アニオン性高分子の使用量は、前記乳化液中のゼラチンの量に対して、0.02~0.8質量倍であることが好ましく、例えば、0.02~0.6質量倍、0.02~0.4質量倍、0.02~0.2質量倍、及び0.02~0.1質量倍のいずれかであってもよいし、0.1~0.8質量倍、0.3~0.8質量倍、及び0.5~0.8質量倍のいずれかであってもよいし、0.1~0.6質量倍、及び0.3~0.4質量倍のいずれかであってもよい。第2アニオン性高分子の使用量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第2アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
乳化液混合工程において、第1アニオン性高分子の使用量は、第2アニオン性高分子の使用量に対して、1~60質量倍であることが好ましく、例えば、10~60質量倍、20~60質量倍、及び30~60質量倍のいずれかであってもよいし、1~40質量倍、1~20質量倍、及び1~10質量倍のいずれかであってもよいし、10~40質量倍であってもよい。第1アニオン性高分子の使用量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。第1アニオン性高分子の使用量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの内包保持性能がより高くなる。
乳化液混合工程において、第1アニオン性高分子と第2アニオン性高分子の合計使用量は、前記乳化液中のゼラチンの量に対して、0.13~2.9質量倍であることが好ましく、例えば、0.13~2.6質量倍、0.13~2.3質量倍、0.13~2.1質量倍、及び0.13~1.9質量倍のいずれかであってもよいし、0.7~2.9質量倍、1.4~2.9質量倍、及び2.1~2.9質量倍のいずれかであってもよいし、0.7~2.6質量倍、及び1.4~2.3質量倍のいずれかであってもよい。前記合計使用量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記合計使用量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの内包保持性能がより高くなる。
乳化液混合工程においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、ラベンダー精油と、前記添加剤と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(03)」と称することがある)を混合してもよい。
前記他の成分(03)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
乳化液混合工程で用いる他の成分(03)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
乳化液混合工程において、前記他の成分(03)の使用量は、特に限定されず、他の成分(03)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、乳化液混合工程において、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、前記乳化液と、の合計使用量に対する、他の成分(03)の使用量の割合([他の成分(03)の使用量]/([第1アニオン性高分子の使用量]+[第2アニオン性高分子の使用量]+[水の使用量]+[前記乳化液の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、内包保持性能がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、水の使用量とは、先に説明したとおりである。
乳化液混合工程においては、水の存在下での、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、必要に応じて他の成分(03)と、の混合は、30~75℃の温度条件下で行うことが好ましく、40~60℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
水の存在下で、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、必要に応じて他の成分(03)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程において、水の存在下で、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
乳化液混合工程においては、第1アニオン性高分子又はその水溶液と、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、前記乳化液と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(03)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
乳化液混合工程においては、すべての成分(第1アニオン性高分子又はその水溶液と、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、前記乳化液と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(03))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
乳化液混合工程においては、例えば、加熱した第1アニオン性高分子水溶液に、前記乳化液を単独で添加し、次いで、得られたものに、加熱した第2アニオン性高分子水溶液を添加することにより、混合液(a)を作製することが好ましい。そして、加熱した第1アニオン性高分子水溶液に、25℃以上の前記乳化液を単独で添加し、次いで、得られたものに、加熱した第2アニオン性高分子水溶液を添加することにより、混合液(a)を作製してもよい。
<酸性化工程>
前記酸性化工程においては、前記混合液(a)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b)を作製する。
混合液(a)中のゼラチンは、カチオン性基を有していないために、カチオン性高分子とは見做せない状態にあるか、又は、カチオン性基を有していても、その数が少なく、カチオン性高分子としての性質を十分に有していない状態にある。
これに対して、混合液(b)中のゼラチンは、酸の作用によって、カチオン性基の数が十分に多く、カチオン性高分子としての性質を十分に有している状態であり、明らかにカチオン性高分子である。
すなわち、混合液(b)は、ゼラチン(カチオン性高分子)と、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、ラベンダー精油と、を含有し、さらに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、のいずれか一方又は両方(添加剤)を含有する。
酸性化工程で用いる前記酸は、特に限定されず、例えば、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。
前記無機酸としては、例えば、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、リン酸(HPO)等が挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、クエン酸(HOOCCHC(COOH)(OH)CHCOOH)、酢酸(CHCOOH)等が挙げられる。
酸性化工程で用いる酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
酸性化工程においては、酸を単独で添加してもよいし、酸を水溶液として添加してもよい。酸水溶液を用いることで、pHが調節された混合液(b)の作製が、より容易となる。
酸性化工程で用いる前記酸水溶液の酸の濃度は、酸の種類に応じて適宜調節できるが、10~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
前記酸水溶液と混合液(a)を配合する場合には、混合液(a)に酸水溶液を添加することが好ましく、酸水溶液を混合液(a)に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
酸を水溶液として添加しない場合には、混合液(a)に酸を添加することが好ましく、酸を混合液(a)に一括添加してもよいし、滴下又は分割添加してもよい。
酸性化工程においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、ラベンダー精油と、前記添加剤と、酸と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(04)」と称することがある)を混合してもよい。
前記他の成分(04)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、水であってもよい。すなわち、酸性化工程においては、酸を単独で添加する場合と、酸を水溶液として添加する場合と、のいずれであるかによらず、他の成分(04)として別途水を添加してもよい。本明細書においては、他の成分(04)としての水を「水(04)」と称することがある。
水(04)を用いる場合には、例えば、混合液(a)と、酸又は酸水溶液と、を混合することにより、酸性の混合液(b)を作製し、次いで、酸性の混合液(b)と水(04)を混合することにより、酸性の混合液(b)を作製できる。
また、水(04)を用いる場合には、例えば、混合液(a)と水(04)を混合することにより、混合液(a)を希釈し、次いで、この希釈した混合液(a)と、酸又は酸水溶液と、を混合することにより、酸性の混合液(b)を作製できる。
酸性化工程で用いる他の成分(04)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
酸性化工程において、前記他の成分(04)の使用量は、特に限定されず、他の成分(04)の種類に応じて適宜調節できる。
例えば、他の成分(04)が水以外の成分である場合、酸性化工程において、混合液(a)と、酸と、の合計使用量に対する、他の成分(04)の使用量の割合([他の成分(04)の使用量]/([混合液(a)の使用量]+[酸の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、平均粒子径がより小さく、内包保持性能がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、酸の使用量とは、酸を水溶液として添加しない場合には、この酸の量であり、酸を水溶液として添加する場合には、酸水溶液中の酸の量である。
一方、他の成分(04)が水である場合、酸性化工程において、混合液(a)と、酸又は酸水溶液と、の合計使用量に対する、水(04)の使用量の割合([水(04)の使用量]/([混合液(a)の使用量]+[酸又は酸水溶液の使用量])×100)は、10~100質量%であることが好ましく、例えば、20~90質量%、30~80質量%、及び40~70質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、水を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、水の過剰使用が抑制される。
ここで、酸の使用量とは、上記と同じである。
酸性化工程においては、混合液(a)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(04)と、を混合する場合、これらの混合は、30~75℃の温度条件下で行うことが好ましく、40~60℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
例えば、水(04)を用いる場合には、このような温度に調節(加熱)した水(04)を混合することが好ましい。
混合液(a)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(04)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程において、水の存在下で、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
酸性化工程においては、混合液(a)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(04)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
酸性化工程においては、すべての成分(混合液(a)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(04))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、例えば、1~10分であってもよい。
酸性化工程においては、例えば、酸水溶液を混合液(a)に添加又は滴下することにより、酸性の混合液(b)を作製することが好ましく、酸水溶液を混合液(a)に滴下することにより、酸性の混合液(b)を作製することがより好ましい。
水(04)を用いる場合には、水(04)を対象物に添加又は滴下することにより、酸性の混合液(b)を作製することが好ましい。
酸性化工程の開始時から終了時までに、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、を含有する液体が示すpHの最小値は、2~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。前記pHの最小値が前記上限値以下であることで、ゼラチンが第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子とともにより安定して壁材を構成する。前記pHの最小値が前記下限値以上であることで、前記液体の過度なpH低下が避けられる。
前記液体は、例えば、混合液(b)であってもよいし、混合液(b)を得る前の途中の段階の混合液であってもよい。
<冷却工程>
前記冷却工程においては、前記混合液(b)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する。
混合液(b)を冷却することにより、混合液(b)中において、ラベンダー精油と前記添加剤を内包した壁材の析出が促進される。
冷却時の混合液(b)の温度は、0~10℃であることが好ましく、2~9℃であることがより好ましい。前記温度が前記上限値以下であることで、混合液(b)の冷却効果がより顕著に得られる。前記温度が前記下限値以上であることで、混合液(b)の過剰な冷却が抑制される。
混合液(b)の冷却速度は、特に限定されないが、0.2~2.0℃/minであることが好ましく、0.3~1.0℃/minであることがより好ましい。前記冷却速度がこのような範囲であることで、混合液(b)の冷却効果がより顕著に得られる。
<架橋剤混合工程>
前記架橋剤混合工程においては、冷却後の前記混合液(b)と、架橋剤と、を混合することにより、混合液(c)を作製する。
本工程を行うことにより、目的とする、平均粒子径が小さく、乾燥させた状態でも芯物質の内包保持性能が高いマイクロカプセルが、水分散体として得られる。
混合液(c)中においては、架橋剤の作用により、壁材成分同士が結び付けられ、壁材が強固なマイクロカプセルが形成される。このときの架橋剤の作用は、先に説明したとおりである。
すなわち、混合液(c)は、目的とするマイクロカプセルを含有する。
架橋剤混合工程で用いる架橋剤は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
架橋剤混合工程で用いる架橋剤は、トランスグルタミナーゼと、ポリフェノール類と、グルタルアルデヒドと、からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
架橋剤混合工程で用いる架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
架橋剤混合工程においては、架橋剤の種類にもよるが、架橋剤を単独で配合してもよいし、水溶液として配合してもよい。架橋剤水溶液を用いることで、構造がより安定したマイクロカプセルが得られることがある。
架橋剤水溶液と混合液(b)を配合する場合には、混合液(b)に架橋剤水溶液を添加することが好ましく、架橋剤水溶液を混合液(b)に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
架橋剤を水溶液として添加しない場合には、混合液(b)に架橋剤を添加することが好ましく、架橋剤を混合液(b)に一括添加してもよいし、分割添加してもよい。
架橋剤混合工程において、架橋剤の使用量は、混合液(b)中のゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計量に対して、0.01~0.6質量倍であることが好ましく、例えば、0.15~0.5質量倍、及び0.2~0.4質量倍のいずれであってもよい。架橋剤の使用量が前記下限値以上であることで、前記マイクロカプセルの壁材が、より強固になる。架橋剤の使用量が前記上限値以下であることで、架橋剤の過剰使用が抑制される。
架橋剤混合工程においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、ラベンダー精油と、前記添加剤と、酸と、架橋剤と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(05)」と称することがある)を混合してもよい。
前記他の成分(05)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
架橋剤混合工程で用いる他の成分(05)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記他の成分(05)としては、例えば、水が挙げられる。
架橋剤混合工程において、前記他の成分(05)の使用量は、特に限定されず、他の成分(05)の種類に応じて適宜調節できる。
前記他の成分(05)が水以外の成分である場合、通常は、架橋剤混合工程において、前記混合液(b)と、架橋剤と、の合計使用量に対する、他の成分(05)の使用量の割合([他の成分(05)の使用量]/([混合液(b)の使用量]+[架橋剤の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、内包保持性能がより高いマイクロカプセルが得られる。
架橋剤混合工程においては、混合液(b)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(05)と、を混合する場合、これらの混合は、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。このような温度で混合することにより、構造がより安定したマイクロカプセルが得られる。
架橋剤混合工程での、この混合時の温度範囲は、例えば、前記冷却工程での混合液(b)の温度範囲と一致してもよいし、一致しなくてもよい。
混合液(b)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(05)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程において、水の存在下で、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
架橋剤混合工程においては、混合液(b)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(05)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
架橋剤混合工程においては、すべての成分(混合液(b)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(05))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
架橋剤混合工程においては、すべての成分(混合液(b)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(05))を配合後に、得られた配合物を撹拌するときの配合物の温度は、0~10℃であることが好ましく、2~9℃であることがより好ましい。
<塩基混合工程>
前記塩基混合工程においては、前記混合液(c)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節されたマイクロカプセルの水分散体を作製する。
塩基混合工程で得られたマイクロカプセルは、水分散体中において、その構造がより安定する。
塩基混合工程で得られる、マイクロカプセルの水分散体のpHは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、4~9.2であってもよく、4~6.8であることが好ましく、例えば、5~6.5であってもよい。
塩基混合工程で用いる前記塩基は、特に限定されず、例えば、無機塩基及び有機塩基のいずれであってもよい。
前記無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸リチウム(LiCO)等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)等のアルカリ金属の炭酸水素塩等が挙げられる。
前記有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン((CHCHN)等のアルキルアミン等が挙げられる。
塩基混合工程で用いる塩基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
塩基混合工程においては、塩基を単独で配合してもよいし、塩基を水溶液として配合してもよい。塩基水溶液を用いることで、pHが調節された混合液(c)を、より容易に作製できる。
塩基混合工程で用いる前記塩基水溶液の塩基の濃度は、塩基の種類に応じて適宜調節できるが、10~30質量%であることが好ましく、15~25質量%であることがより好ましい。
前記塩基水溶液と混合液(c)を配合する場合には、混合液(c)に塩基水溶液を添加することが好ましく、塩基水溶液を混合液(c)に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
塩基を水溶液として添加しない場合には、混合液(c)に塩基を添加することが好ましく、塩基を混合液(c)に一括添加してもよいし、滴下又は分割添加してもよい。
塩基混合工程において、混合液(c)と、塩基又は塩基水溶液と、の混合は、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
混合液(c)と、塩基又は塩基水溶液と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程において、水の存在下で、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
塩基混合工程においては、混合液(c)と、塩基又は塩基水溶液と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
塩基混合工程においては、例えば、塩基水溶液を混合液(c)に添加又は滴下することにより、マイクロカプセルの水分散体を作製することが好ましく、塩基水溶液を混合液(c)に滴下することにより、マイクロカプセルの水分散体を作製することがより好ましい。
架橋剤がトランスグルタミナーゼ等の酵素である場合、特にトランスグルタミナーゼである場合には、塩基混合工程においては、すべての成分(混合液(b)と、塩基又は塩基水溶液)を配合後に、得られた水分散体を昇温し、15~35℃で撹拌することが好ましい。そして、このような温度で前記水分散体を撹拌する時間は、2~6時間であることが好ましい。このような条件で水分散体を撹拌することで、酵素(架橋)反応を十分に進行させることができる。このような条件で撹拌した後は、さらに、水分散体を昇温し、70~75℃で撹拌することが好ましい。そして、このような温度で前記水分散体を撹拌する時間は、15~20分であることが好ましい。このような温度条件でさらに水分散体を撹拌することで、余剰の酵素を十分に失活させることができる。
<他の工程>
前記製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の第1混合工程と、乳化工程と、乳化液混合工程と、酸性化工程と、冷却工程と、架橋剤混合工程と、塩基混合工程と、のいずれにも該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類と、前記他の工程の数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
[追加混合工程]
前記他の工程としては、例えば、冷却工程と、架橋剤混合工程と、の間で、冷却後の前記混合液(b)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d)を作製する工程(本明細書においては、「追加混合工程」と称することがある)が挙げられる。このように、前記製造方法においては、冷却後の混合液(b)に、第2アニオン性高分子を追加混合してもよい。
すなわち、前記製造方法は、冷却工程と、
冷却後の前記混合液(b)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d)を作製する追加混合工程と、
前記混合液(d)と、架橋剤と、を混合することにより、混合液(c)を作製する架橋剤混合工程と、
前記混合液(c)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節されたマイクロカプセルの水分散体を作製する塩基混合工程と、を有していてもよい。
追加混合工程を行うことにより、以降の工程において、マイクロカプセル自体の凝集又は合一と、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一と、がともに高度に抑制され、平均粒子径がより小さいマイクロカプセルが得られることがある。
追加混合工程は、例えば、ポリフェノール類、グルタルアルデヒド等の、トランスグルタミナーゼ(酵素)以外の架橋剤を用いる場合に、行うことが好ましい。
混合液(d)は、ゼラチン(カチオン性高分子)と、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、ラベンダー精油と、を含有し、さらに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、のいずれか一方又は両方(添加剤)を含有する。
追加混合工程で用いる第2アニオン性高分子は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
追加混合工程で用いる第2アニオン性高分子は、乳化液混合工程で用いる第2アニオン性高分子と、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
追加混合工程で用いる第2アニオン性高分子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
[乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の使用量(質量部)]:[追加混合工程における第2アニオン性高分子の使用量(質量部)]の質量比は、5:95~95:5であることが好ましく、例えば、75:25~25:75、68:32~32:68、61:39~39:61、及び55:45~45:55のいずれかであってもよいし、5:95~55:45、5:95~25:75、及び5:95~15:85のいずれかであってもよい。前記質量比がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さいマイクロカプセルが得られる。
追加混合工程と乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の合計使用量(追加混合工程における第2アニオン性高分子の使用量と、乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の使用量と、の合計量)は、混合液(b)中のゼラチンの量に対して、0.03~0.85質量倍であることが好ましい。前記合計使用量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第2アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減でき、かつ、平均粒子径がより小さいマイクロカプセルが得られる。
乳化液混合工程における第1アニオン性高分子の使用量は、追加混合工程と乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の合計使用量(追加混合工程における第2アニオン性高分子の使用量と、乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の使用量と、の合計量)に対して、0.5~55質量倍であることが好ましく、例えば、5~55質量倍、15~55質量倍、及び25~55質量倍のいずれかであってもよいし、0.5~35質量倍、0.5~20質量倍、及び0.5~10質量倍のいずれかであってもよいし、5~35質量倍であってもよい。前記使用量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記使用量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの内包保持性能がより高くなる。
乳化液混合工程における第1アニオン性高分子の使用量と、追加混合工程と乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の合計使用量と、の合計量(乳化液混合工程における第1アニオン性高分子の使用量と、追加混合工程における第2アニオン性高分子の使用量と、乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の使用量と、の合計量)は、混合液(b)中のゼラチンの量に対して、0.2~3.4質量倍であることが好ましい。前記合計量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記合計量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの内包保持性能がより高くなる。
追加混合工程においては、例えば、第2アニオン性高分子と、冷却後の混合液(b)と、を配合してもよいし、第2アニオン性高分子水溶液と、冷却後の混合液(b)と、を配合してもよい。そして、第2アニオン性高分子を単独で配合する場合と、第2アニオン性高分子を水溶液として配合する場合と、のいずれであるかによらず、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
追加混合工程においては、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b)と、必要に応じて水と、を配合する順序は、特に限定されない。
追加混合工程においては、第2アニオン性高分子水溶液と、冷却後の混合液(b)と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い混合液(d)を作製できる。
追加混合工程で用いる第2アニオン性高分子水溶液の第2アニオン性高分子の濃度は、3~20質量%であることが好ましく、5~12質量%であることがより好ましい。
第2アニオン性高分子水溶液を配合する場合には、第2アニオン性高分子水溶液に配合対象物を添加してもよいし、配合対象物に第2アニオン性高分子水溶液を添加してもよい。第2アニオン性高分子水溶液に配合対象物を添加する場合には、配合対象物を第2アニオン性高分子水溶液に一括添加してもよいし、分割添加若しくは滴下してもよい。配合対象物に第2アニオン性高分子水溶液を添加する場合には、第2アニオン性高分子水溶液を配合対象物に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
追加混合工程においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、ラベンダー精油と、前記添加剤と、酸と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(06)」と称することがある)を混合してもよい。
前記他の成分(06)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
追加混合工程で用いる他の成分(06)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
追加混合工程において、前記他の成分(06)の使用量は、特に限定されず、他の成分(06)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、追加混合工程において、第2アニオン性高分子と、水と、冷却後の混合液(b)と、の合計使用量に対する、他の成分(06)の使用量の割合([他の成分(06)の使用量]/([第2アニオン性高分子の使用量]+[水の使用量]+[冷却後の混合液(b)の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、内包保持性能がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、水の使用量とは、第2アニオン性高分子と、冷却後の混合液(b)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、ゼロである。
また、第2アニオン性高分子と、冷却後の混合液(b)と、別途水と、を配合する場合には、この水の量である。
また、第2アニオン性高分子水溶液と、冷却後の混合液(b)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第2アニオン性高分子水溶液中の水の量である。
また、第2アニオン性高分子水溶液と、冷却後の混合液(b)と、別途水と、を配合する場合には、第2アニオン性高分子水溶液中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
追加混合工程は、冷却工程に次いで、直ちに連続して行ってもよい。その場合には、追加混合工程開始時の混合液(b)の温度は、冷却工程終了時の混合液(b)の温度と同じである。
追加混合工程においては、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b)と、必要に応じて他の成分(06)と、の混合は、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。追加混合工程での、この混合時の温度範囲は、冷却工程での混合液(b)の温度範囲と一致してもよいし、一致しなくてもよい。
第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b)と、必要に応じて他の成分(06)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程において、水の存在下で、ゼラチンと、混合液(z)と、必要に応じて他の成分(02)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
追加混合工程においては、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b)と、必要に応じて他の成分(06)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
追加混合工程においては、すべての成分(第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b)と、必要に応じて他の成分(06))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
追加混合工程においては、例えば、冷却後の混合液(b)に、第2アニオン性高分子水溶液を添加又は滴下することにより、混合液(d)を作製することが好ましい。
前記製造方法においては、追加混合工程を行う場合、架橋剤混合工程は、冷却後の混合液(b)に代えて、混合液(d)を用いる点以外は、先に説明した架橋剤混合工程と同じであってよい。
前記製造方法によって得られたマイクロカプセルは、そのまま水分散体として用いてもよいし、公知の後処理、精製等を行って得られた水分散体を、そのまま用いてもよいし、必要に応じて公知の後処理、精製等を行った後、分散媒を除去することにより、マイクロカプセルの単体(乾燥物)として用いてもよい。
前記マイクロカプセルは、いずれの状態であっても(特に、分散媒を除去した後の単体(乾燥物)であっても)、芯物質であるラベンダー精油の内包保持性能が高い。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
下記実施例及び比較例において用いたラベンダー精油を、表1に示す。
Figure 2023146355000001
下記実施例において用いた添加剤を、表2に示す。
Figure 2023146355000002
下記比較例において用いた他の添加剤を、表3に示す。
Figure 2023146355000003
下記実施例及び比較例において用いた高分子の一部を、表4に示す。
Figure 2023146355000004
下記実施例及び比較例において用いた架橋剤を、表5に示す。
Figure 2023146355000005
[実施例1]
<<マイクロカプセルの製造>>
室温下(23℃の条件下)で、ラベンダー精油(i)-1(真正ラベンダー精油、芯物質に相当)(40g)に対して、添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)を添加し、得られたものが均一になるまで撹拌することにより、混合液(z)を得た(第1混合工程)。
濃度が5質量%であるゼラチン(新田ゼラチン社製「Type A」)の水溶液(130g)を50℃に加熱し、この水溶液に、上記で得られた室温下の混合液(z)の全量を添加し、乳化機(プライミクス社製)を用いて、回転数3000rpmで、室温下で3分撹拌することにより、乳化液を作製した(乳化工程)。
濃度が9質量%である高分子(iii)-1(アラビアガム、第1アニオン性高分子に相当)の水溶液(130g)を50℃に加熱し、この水溶液に、上記で得られた乳化液の全量を添加して撹拌した。
次いで、常温の、濃度が10質量%である高分子(iii)-2(カルボキシメチルセルロースナトリウム、第2アニオン性高分子に相当)の水溶液(2g)の全量を、上記で得られたものに添加し、2分撹拌することにより、混合液(a)を作製した(乳化液混合工程)。
次いで、50℃の条件下で、混合液(a)を撹拌しながら、ここへ、室温下の、濃度が50質量%であるクエン酸(富士フィルム和光純薬社製)の水溶液を滴下し、2分撹拌して、混合液(a)のpHを3.8に調節することにより、酸性の混合液(b)を作製した(酸性化工程)。
次いで、冷却速度0.5℃/minで、得られた混合液(b)を撹拌しながら、その温度が5℃となるまで冷却した(冷却工程)。
次いで、この5℃の温度で撹拌している混合液(b)に、架橋剤(iv)-1(トランスグルタミナーゼ)(5g)を添加し、5℃の温度条件下のままで2分撹拌することにより、混合液(c)を作製した(架橋剤混合工程)。
次いで、5℃の条件下で、混合液(c)を撹拌しながら、ここへ、濃度が20質量%である水酸化ナトリウム(関東化学社製)の水溶液を滴下して、2分撹拌することにより、混合液(c)のpHを6.0に調節した。次いで、このpH調節後の混合液(c)を昇温し、20℃で4時間撹拌することにより、架橋剤(iv)-1の酵素反応を進行させ、さらに、72℃で17分撹拌することにより、余剰の架橋剤(iv)-1を失活させて、マイクロカプセルの水分散体を作製した(塩基混合工程)。
以上により、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ソルビタントリオレエート(添加剤(ii)-1)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。
本実施例で用いた原料を表6に示す。
表6中、「添加剤(添加量(質量%))」の欄中の「添加量(質量%)」は、「ラベンダー精油の使用量(質量部)に対する、添加剤の使用量(質量部)の割合」を意味する。同様に、「他の添加剤(添加量(質量%))」の欄中の「添加量(質量%)」は、「ラベンダー精油の使用量(質量部)に対する、他の添加剤の使用量(質量部)の割合」を意味する。
表6中、「-」との記載は、その欄の原料が不使用であることを意味する。
<<マイクロカプセルの評価>>
<マイクロカプセルの内包保持性能(1)の評価(マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出の抑制効果の評価)>
ワイヤーバー(No.30)を用いて、上記で得られたマイクロカプセルの水分散体を上質紙上に塗工し、オーブンを用いて、105℃で10分乾燥させた。
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製「JSM-6700F」)を用いて、得られた乾燥物を観察し、マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出の程度を、下記基準に従って評価した。マイクロカプセルから漏出したラベンダー精油が存在する場合には、SEMの観察像においては、マイクロカプセル間に溜まっているラベンダー精油が黒い像となって観察されるため、このような黒い像の有無を、ラベンダー精油の漏出の有無を判断する指標とした。結果を表7に示す。
[評価基準]
A:ラベンダー精油が全く漏出していないか、又はラベンダー精油の漏出量が微量であり、マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出の抑制効果が高かった。
B:ラベンダー精油の漏出量が多く、マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出の抑制効果が低いか又は認められなかった。
<マイクロカプセルの内包保持性能(2)の評価(マイクロカプセルのラベンダー精油の内包の程度の確認)>
上述の「マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出の抑制効果」を評価した前記乾燥物の上に、円柱状の錘(4kg)を載せた。このとき、錘の側面を前記乾燥物に接触させた。そして、錘を乾燥物上で5往復転がすことにより、乾燥物を加圧した。
次いで、加圧後の前記乾燥物からラベンダー精油の香りがするか否か、を確認することにより、マイクロカプセルのラベンダー精油の内包の程度を、下記基準に従って評価した。結果を表7に示す。
[評価基準]
A:前記乾燥物からラベンダー精油の香りが明りょうに感じられ、マイクロカプセルが十分な量のラベンダー精油を内包していた。
B:前記乾燥物からラベンダー精油の香りが全く感じられないか、又は僅かに感じられるに過ぎず、マイクロカプセルがラベンダー精油を全く内包していないか、又はラベンダー精油の内包量が少なかった。
<マイクロカプセルの平均粒子径の測定>
粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「MT3000II」)と、上記で得られた水分散体を用い、マイクロカプセルの平均粒子径を測定した。結果を表7に示す。
<マイクロカプセルの安全性の分類>
得られたマイクロカプセルの生体に対する安全性を、壁材の製造原料に基づいて、下記基準に従って分類した。結果を表7に示す。
[分類基準]
A:壁材の製造原料として、生体に対する毒性が強いものを用いておらず、マイクロカプセルの生体に対する安全性が高い。
B:壁材の製造原料として、生体に対する毒性が強いものを用いており、マイクロカプセルの生体に対する安全性が低い。
<<マイクロカプセルの製造及び評価>>
[実施例2]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、添加剤(ii)-2(ポリオキシアルキレンラウリルエーテル)(0.4g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(添加剤(ii)-2)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例3]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、添加剤(ii)-3(ソルビタンモノオレエート)(0.4g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ソルビタンモノオレエート(添加剤(ii)-3)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例4]
添加剤(ii)-3(ソルビタンモノオレエート)の使用量を、0.4gに代えて1.2gとした点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例5]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、添加剤(ii)-4(ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル)(1.2g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル(添加剤(ii)-4)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例6]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、添加剤(ii)-5(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)(1.2g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(添加剤(ii)-5)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例7]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、添加剤(ii)-6(ポリオキシアルキレントリデシルエーテル)(1.2g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル(添加剤(ii)-6)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例8]
高分子(iii)-2(カルボキシメチルセルロースナトリウム)に代えて、同量(質量部)の高分子(iii)-3(アルギン酸ナトリウム、第2アニオン性高分子に相当)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、アルギン酸ナトリウム(高分子(iii)-3)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(添加剤(ii)-2)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例9]
高分子(iii)-1(アラビアガム)に代えて、同量(質量部)の高分子(iii)-3(アルギン酸ナトリウム、第2アニオン性高分子に相当)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、アルギン酸ナトリウム(高分子(iii)-3)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(添加剤(ii)-2)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例10]
実施例2の場合と同じ方法で、混合液(b)の冷却までを行った(第1混合工程~冷却工程)。
次いで、5℃の温度で撹拌している混合液(b)に、濃度が10質量%である高分子(iii)-2(カルボキシメチルセルロースナトリウム、第2アニオン性高分子に相当)の水溶液(20g)を添加し、温度を5℃に維持したままで2分撹拌することにより、混合液(d)を作製した(追加混合工程)。
次いで、この5℃の温度で撹拌している混合液(d)に、架橋剤(iv)-2(タンニン酸)(5g)を添加し、5℃の温度条件下のままで2分撹拌することにより、混合液(c)を作製した(架橋剤混合工程)。
次いで、5℃の条件下で、混合液(c)を撹拌しながら、ここへ、濃度が20質量%である水酸化ナトリウム(関東化学社製)の水溶液を滴下して、2分撹拌することにより、混合液(c)のpHを6.0に調節した。次いで、このpH調節後の混合液(c)を昇温し、20℃で4時間撹拌することにより、マイクロカプセルの水分散体を作製した(塩基混合工程)。
以上により、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにタンニン酸(架橋剤(iv)-2)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(添加剤(ii)-2)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。
得られたマイクロカプセルについて、実施例2の場合と同じ方法で評価した。結果を表7に示す。
[実施例11]
架橋剤(iv)-2(タンニン酸)(5g)に代えて、架橋剤(iv)-3(グルタルアルデヒド)(5g)を用いた点と、塩基混合工程において、混合液(c)のpHを6.0ではなく9.0に調節した点、以外は、実施例10の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにグルタルアルデヒド(架橋剤(iv)-3)を含み、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)と、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(添加剤(ii)-2)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例12]
ラベンダー精油(i)-1(真正ラベンダー精油)(40g)に代えて、ラベンダー精油(i)-2(ラバンジン精油、芯物質に相当)(40g)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質としてラバンジン精油(ラベンダー精油(i)-2)と、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(添加剤(ii)-2)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[実施例13]
ラベンダー精油(i)-1(真正ラベンダー精油)(40g)に代えて、ラベンダー精油(i)-3(スパイクラベンダー精油、芯物質に相当)(40g)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。本実施例では、ゼラチンと、アラビアガム(高分子(iii)-1)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(高分子(iii)-2)と、を含んで壁材成分が構成され、さらにトランスグルタミナーゼ(架橋剤(iv)-1)を含み、芯物質としてスパイクラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-3)と、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(添加剤(ii)-2)と、を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。結果を表7に示す。
[比較例1]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)を用いなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。すなわち、本比較例では、第1混合工程を行わず、混合液(z)に代えて、ラベンダー精油(i)-1(真正ラベンダー精油)(40g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、乳化工程を行い、以降、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの水分散体を得た。結果を表7に示す。
[比較例2]
ラベンダー精油(i)-1(真正ラベンダー精油)(40g)に代えて、ラベンダー精油(i)-2(ラバンジン精油)(40g)を用いた点以外は、比較例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例3]
ラベンダー精油(i)-1(真正ラベンダー精油)(40g)に代えて、ラベンダー精油(i)-3(スパイクラベンダー精油)(40g)を用いた点以外は、比較例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例4]
高分子(iii)-2(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を用いなかった点以外は、比較例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例5]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、他の添加剤(x)-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)(0.4g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例6]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、他の添加剤(x)-2(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)(0.4g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例7]
添加剤(ii)-1(ソルビタントリオレエート)(0.4g)に代えて、他の添加剤(x)-3(ポリオキシエチレンオレイン酸エステル)(1.2g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例8]
<<マイクロカプセルの製造>>
室温下で、ラベンダー精油(i)-1(真正ラベンダー精油)(40g)に対して、濃度が75質量%であるトリレン-2,4-ジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(以下、「TDI-TMP付加体」と称する)の酢酸エチル溶液(三井化学社製「タケネートD-103H」、26.7g、TDI-TMP付加体として20g)を添加し、得られたものが均一になるまで撹拌することにより、混合液(y1)を作製した。
蒸留水(142.5g)にポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「JP-24」、ケン化度:87~89)(7.5g)を添加し、90℃で1時間撹拌して溶液とし、これを25℃まで冷却することにより、濃度が5質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。
室温下で、前記ポリビニルアルコール水溶液の全量に、上記で得られた混合液(y1)の全量を添加し、乳化機(プライミクス社製)を用いて、回転数3000rpmで3分撹拌することにより、乳化液を作製した。
室温下で、得られた乳化液の全量に、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製)(4g)を添加し、撹拌した後、さらに、80℃で反応液を2時間撹拌することにより、界面重縮合を行った。
以上により、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンと、TDI-TMP付加体と、の重縮合物であるポリウレアを壁材成分とし、芯物質として真正ラベンダー精油(ラベンダー精油(i)-1)を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。
<<マイクロカプセルの評価>>
上記で得られたマイクロカプセルについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表7に示す。
Figure 2023146355000006
Figure 2023146355000007
上記結果から明らかなように、実施例1~13においては、マイクロカプセルの平均粒子径が29μm以下(21~29μm)であり、マイクロカプセルの粒子径が小さかった。
実施例1~13においては、マイクロカプセルが、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、架橋剤と、を含んで構成されていた。
実施例1~13においては、マイクロカプセルを乾燥させた状態でも、マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出が抑制されており、さらに、マイクロカプセルが十分な量のラベンダー精油を内包しており、マイクロカプセルの内包保持性能が高かった。
実施例1~13においては、乳化工程での乳化液の安定性が高かった。
実施例1~13のマイクロカプセルは、ラベンダー精油と、HLB値が9.0以下(3.0~9.0)のポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はHLB値が4.3以下(1.8~4.3)のソルビタン脂肪酸エステルと、を内包していた。
実施例1~13のマイクロカプセルは、壁材の製造原料として、生体に対する毒性が強いものを用いておらず、生体に対する安全性が高かった。
実施例1~13のマイクロカプセルは、生分解性を有していた。
これに対して、比較例1~3においては、マイクロカプセルを乾燥させた状態で、マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出が抑制されておらず、マイクロカプセルの内包保持性能が低かった。
比較例1~3においては、乳化工程での乳化液の安定性が低かった。
比較例1~3のマイクロカプセルは、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びHLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステル(添加剤(ii))を、いずれも内包していなかった。
比較例4においては、マイクロカプセルの平均粒子径が75μmであり、マイクロカプセルの粒子径が大きかった。
比較例4においては、マイクロカプセルが、アニオン性高分子を1種しか含んでいなかった。
比較例5においては、マイクロカプセルを乾燥させた状態で、マイクロカプセルがラベンダー精油を内包しておらず、マイクロカプセルの内包保持性能が低かった。
比較例5においては、乳化工程での乳化液の安定性が低かった。
比較例5のマイクロカプセルは、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びHLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステル(添加剤(ii))を、いずれも内包しておらず、その代わりに、HLB値が12.1のポリオキシエチレンラウリルエーテル(他の添加剤(x))を内包していた。
比較例6~7においては、マイクロカプセルを乾燥させた状態で、マイクロカプセルからのラベンダー精油の漏出が抑制されておらず、マイクロカプセルの内包保持性能が低かった。
比較例6~7においては、乳化工程での乳化液の安定性が低かった。
比較例6~7のマイクロカプセルは、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びHLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステル(添加剤(ii))を、いずれも内包しておらず、その代わりに、比較例6のマイクロカプセルは、HLB値が3.2のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(他の添加剤(x))を内包しており、比較例7のマイクロカプセルは、HLB値が7.7のポリオキシエチレンオレイン酸エステル(他の添加剤(x))を内包していた。
比較例8のマイクロカプセルは、複合コアセルベーション法ではなく、界面重縮合法によって製造されており、壁材成分であるポリウレアの原料として、生体に対する毒性が強いTDI-TMP付加体を用いており、マイクロカプセルは、生体に対する安全性が低かった。
本発明は、ラベンダー精油を芯物質とするマイクロカプセルとして利用可能である。

Claims (4)

  1. マイクロカプセルであって、
    前記マイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、を含んで構成され、
    前記マイクロカプセルは、ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を内包し、
    前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である、マイクロカプセル。
  2. 前記架橋剤が、トランスグルタミナーゼと、ポリフェノール類と、グルタルアルデヒドと、からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
  3. ラベンダー精油、並びに、HLB値が10.0以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、HLB値が10.0以下のソルビタン脂肪酸エステルと、からなる群より選択される1種又は2種以上を混合することにより、混合液(z)を作製する工程と、
    水の存在下で、ゼラチンと、前記混合液(z)と、を混合することにより、乳化液を作製する工程と、
    水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を混合することにより、混合液(a)を作製する工程と、
    前記混合液(a)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b)を作製する工程と、
    前記混合液(b)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程と、
    冷却後の前記混合液(b)と、架橋剤と、を混合することにより、混合液(c)を作製する工程と、
    前記混合液(c)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節されたマイクロカプセルの水分散体を作製する工程と、を有する、マイクロカプセルの製造方法。
  4. 前記架橋剤が、トランスグルタミナーゼと、ポリフェノール類と、グルタルアルデヒドと、からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項3に記載のマイクロカプセルの製造方法。
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