JP2023140111A - 固体酸化物触媒、その製造方法及びビスフェノール化合物の製造方法 - Google Patents

固体酸化物触媒、その製造方法及びビスフェノール化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビスフェノール化合物を高選択率で高収率に製造できる固体酸化物触媒の提供。【解決手段】WO3、ZrO2及びXOyを含む固体酸化物触媒であって、平均細孔直径が5.50nm以上11.50nm以下であり、細孔容積が0.16cm3/g以上0.24cm3/g以下であり、前記固体酸化物触媒の酸強度を前記固体酸化物触媒のBET比表面積で除した単位面積あたりの酸量が0.97μmol/m2以上である、固体酸化物触媒。但し、XOyにおけるXは、周期表の第3族、第5族、第7族~第13族及び第15族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、yは、Xの原子価を満足するのに必要な酸素の原子比であって0.5~4の数を示す。【選択図】なし

Description

本発明は、固体酸化物触媒、その製造方法及びビスフェノール化合物の製造方法に関する。
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールC」という。)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(以下、「ビスフェノールF」という。)等のビスフェノールは、ポリカーボネート、ポリエステル、エポキシ樹脂等の原料;樹脂添加剤;接着剤;感熱紙用顕色剤;抗酸化剤;重合禁止剤等の幅広い分野で用いられている。
ビスフェノール化合物は、一般的に、酸性の触媒の存在下でのケトン又はアルデヒドとフェノール類との反応(縮合反応)により製造される。ビスフェノール化合物の製造方法としては、具体的には、触媒としてスルホン酸等の酸性基を有する陽イオン交換樹脂を用いる方法が知られている(特許文献1)。
しかし、特許文献1に開示されている技術では、使用後のイオン交換樹脂が大量の酸性廃棄物となり、廃棄処理のための多大なコストが必要になるという課題があった。
そこで、前記縮合反応に用いられる、イオン交換樹脂に代わる触媒として、タングステン-ジルコニウム固体酸化物触媒に特定の金属酸化物を導入した固体酸化物触媒が提案されている(特許文献2)。
国際公開第2010/084929号 特開2020-83803号公報
しかしながら、特許文献2に開示された固体酸化物触媒は、反応活性、特に反応開始後の初期の段階での反応活性が充分ではないことがある。反応活性が低いと、ビスフェノール化合物の製造において、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率が低くなるという課題があった。
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、ビスフェノール化合物を高収率に製造できる固体酸化物触媒及びビスフェノール化合物の製造方法、並びにビスフェノール化合物を高収率に製造できる固体酸化物触媒が得られる製造方法を提供することを課題とする。
なお、本明細書中には、本発明の各実施形態により解決され得る課題が明示的に又は黙示的に開示されている場合がある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、特定の固体酸化物触媒を用いることで、ビスフェノール化合物を高収率に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1の要旨は、WO、ZrO及びXOを含む固体酸化物触媒であって、平均細孔直径が5.50nm以上11.50nm以下であり、細孔容積が0.16cm/g以上0.24cm/g以下であり、前記固体酸化物触媒の酸強度を前記固体酸化物触媒のBET比表面積で除した単位面積あたりの酸量が0.97μmol/m以上である、固体酸化物触媒にある。
但し、XOにおけるXは、周期表の第3族、第5族、第7族~第13族及び第15族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、yは、Xの原子価を満足するのに必要な酸素の原子比であって0.5~4の数を示す。
本発明の第2の要旨は、前記固体酸化物触媒の製造方法であって、W供給源、Zr供給源、及びX供給源から、ケイ素-炭素結合を有する有機ケイ素化合物、及び有機構造規定剤の存在下で、ゾルゲル法により、前記固体酸化物触媒の前駆体を得ること、及び、前記前駆体を加熱して前記固体酸化物触媒を得ることを含む、固体酸化物触媒の製造方法にある。
本発明の第3の要旨は、前記固体酸化物触媒の存在下で、カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させることを含む、ビスフェノール化合物の製造方法にある。
本発明によれば、ビスフェノール化合物を高収率に製造できる固体酸化物触媒及びビスフェノール化合物の製造方法、並びにビスフェノール化合物を高収率に製造できる固体酸化物触媒の製造方法を提供できる。
実施例1~4及び比較例1、2で得た固体酸化物触媒について、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて測定した蛍光X線スペクトルである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
なお、特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
〔固体酸化物触媒〕
本発明の一実施形態に係る固体酸化物触媒(以下、「触媒A」ともいう。)は、WOとZrOとXOとを含む。触媒Aは、換言すれば、XOを含むタングステン-ジルコニウム複合固体酸化物触媒である。
XOにおけるXは、周期表の第3族、第5族、第7族~第13族及び第15族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Xは、典型的には、金属元素である。
なお、W、Zr、Oはそれぞれ元素記号である。すなわち、W、Zr、Oはそれぞれタングステン、ジルコニウム、酸素を示す。
触媒Aは、WOとZrOとを含むので、固体酸触媒として機能し得る。また、XOを含むので、XOを含まない場合に比べて、ビスフェノール化合物を高転化率で高収率に製造できる。
Xとしては、カルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応に好適な活性点の形成しやすさの点から、第3族及び第13族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、第13族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
Xとしては、カルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応に好適な活性点の形成しやすさの点から、Inが特に好ましい。
XOにおけるyは、Xの原子価を満足するのに必要な酸素の原子比であって0.5~4の数を示す。yが0.5以上であれば、触媒上の酸強度が高くなり、触媒活性が優れる。yが4以下であれば、触媒の熱安定性が優れる。yは、2~3の数が好ましい。
XOの酸化状態は、特に制限されないが、常温、常圧下で安定である構造が好ましい。酸化状態は、X線光電子分光法により測定される。
触媒Aは、第4の金属の酸化物をさらに含んでいてもよい。第4の金属は、タングステン、ジルコニウム及びX以外の金属である。
第4の金属としては、特に制限は無いが、周期表の第4族の金属(Zrを除く)、周期表の第6族の金属(Wを除く)が好ましい。中でも、触媒の結晶構造の安定性の点で、Tiが好ましい。すなわち、触媒Aは、TiOを含むことが好ましい。
触媒Aは、ケイ素原子(Si)をさらに含んでいてもよい。触媒Aがケイ素原子を含む場合、触媒A中のケイ素原子は、典型的には、酸化物(SiO)の形態である。
触媒Aにおいて、WOの含有割合の下限は、触媒Aの総質量に対して、10.0質量%以上が好ましく、12.5質量%以上がより好ましく、15.0質量%以上がさらに好ましい。WOの含有割合が前記下限値以上であれば、カルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応に好適な活性点が形成されやすい。
一方、WOの含有割合の上限は、触媒Aの総質量に対して、23.0質量%以下が好ましく、21.5質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましい。WOの含有割合が前記上限値以下であれば、触媒Aの表面にカルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応に好適な活性点が充分に生じ、ビスフェノール化合物の生産性が優れる。
上記のWOの含有割合の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、WOの含有割合は、触媒Aの総質量に対して、10.0質量%以上23.0質量%以下が好ましく、12.5質量%以上21.5質量%以下がより好ましく、15質量%以上20.0質量%以下がさらに好ましい。
触媒Aにおいて、ZrOの含有割合の下限は、75.0質量%以上が好ましく、76.0質量%以上がより好ましく、77.0質量%以上がさらに好ましい。ZrOの含有割合が前記下限値以上であれば、触媒の表面にカルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応に好適な活性点が充分に生じるため、ビスフェノール化合物の生産性を良好に維持できる。
一方、ZrOの含有割合の上限は、触媒Aの総質量に対して、90.0質量%以下が好ましく、87.0質量%以下がより好ましく、84.0質量%以下がさらに好ましい。ZrOの含有割合が前記上限値以下であれば、触媒の表面にカルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応に好適な活性点が充分に生じ、ビスフェノール化合物の生産性がより優れる。
上記のZrOの含有割合の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、ZrOの含有割合は、触媒Aの総質量に対して、75.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、76.0質量%以上87.0質量%以下がより好ましく、77.0質量%以上84.0質量%以下がさらに好ましい。
触媒Aにおいて、XOの含有割合の下限は、触媒Aの総質量に対して、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。XOの含有割合が前記下限値以上であれば、触媒Aの表面にカルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応に好適な活性点が充分に生じ、ビスフェノール化合物の生産性が優れる。
一方、XOの含有割合の上限は、触媒Aの総質量に対して、10.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、6.0質量%以下がさらに好ましい。XOの含有割合が前記上限値以下であれば、タングステン-ジルコニウム複合固体酸化物の結晶構造が過剰に変化せず、カルボニル化合物とフェノール化合物の縮合反応に好適な活性点が充分に生じ、ビスフェノール化合物の生産性が優れる。
上記のXOの含有割合の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、XOの含有割合は、触媒Aの総質量に対して、1.0質量%以上10.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上8.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以上6.0質量%以下がさらに好ましい。
触媒AがTiO等の第4の金属の酸化物を含む場合、第4の金属の酸化物の含有割合の下限は、触媒Aの総質量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。第4の金属の酸化物の含有割合が前記下限値以上であれば、ビスフェノール化合物を製造する際の転化率がより優れる。
一方、第4の金属の酸化物の含有割合の上限は、触媒Aの総質量に対して、10.0質量%以下が好ましく、7.0質量%以下がより好ましく、4.0質量%以下がさらに好ましい。第4の金属の酸化物の含有割合が前記上限値以下であれば、触媒を長期間使用した際の触媒の結晶構造安定性がより優れる。
上記の第4の金属の酸化物の含有割合の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
触媒Aの総質量に対するケイ素原子の含有割合の上限は、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましい。或いは又、触媒Aはケイ素原子を含まなくてもよい。ケイ素原子の含有割合が前記上限値以下であれば、アセトン転化率およびビスフェノール化合物の収率がより優れる。
一方、触媒Aの総質量に対するケイ素原子の含有割合の下限に特に限定はなく、0質量ppmであってもよい。
触媒Aにおけるケイ素原子とは、実質的に、上述したケイ素-炭素結合を有する有機ケイ素化合物に由来する。
触媒A中のケイ素原子の有無は、後述する実施例で行ったように、ペレット状に成型した触媒を、波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)(装置名:S8 TIGER Series2、Bruker社製)と蛍光分光学ソフトウェア(製品名:SpectraPlus、BRUKER AXS製)を用いて、2θ=108~110°の範囲で分析することにより確認することができる。
即ち、タングステン-ジルコニウム複合固体酸化物触媒は、ケイ素-炭素結合を有する有機ケイ素化合物に由来するケイ素原子を含む場合、該触媒中のケイ素原子は、典型的には、酸化物(SiO)の形態を有しており、波長分散型蛍光X線分析装置を用いた蛍光X線分析粉末X線回折測定において、通常、2θが108~110°に蛍光X線の回折線ピークが確認される。即ち、触媒Aがケイ素原子を含有しない場合、2θが108~110°に蛍光X線のピーク回折線が確認されない。(後述する実施例1~4の蛍光X線スペクトル粉末X線回折図である図1を参照。)。
触媒Aの平均細孔直径の下限は、5.50nm以上であり、7.00nm以上が好ましく、9.50nm以上がより好ましく、10.20nm以上が特に好ましい。平均細孔直径が前記下限値以上であれば、反応活性、特に反応開始後の初期の段階での反応活性に優れ、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率が高くなる。
一方、触媒Aの平均細孔直径の上限は、11.50nm以下であり、10.80nm以下が好ましく、10.50nm以下がより好ましい。平均細孔直径が前記上限値以下であれば、反応活性、特に反応開始後の初期の段階での反応活性に優れ、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率が高くなる。
上記の平均細孔直径の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
触媒Aの細孔容積の下限は、0.16cm/g以上であり、0.17cm/g以上が好ましく、0.20cm/g以上がより好ましい。細孔容積が前記下限値以上であれば、反応活性、特に反応開始後の初期の段階での反応活性に優れ、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率が高くなる。
一方、触媒Aの細孔容積の上限は、0.24cm/g以下であり、0.23cm/g以下が好ましく、0.22cm/g以下がより好ましい。細孔容積が前記上限値以下であれば、反応活性、特に反応開始後の初期の段階での反応活性に優れ、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率が高くなる。
上記の細孔容積の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
触媒Aの酸強度(μmol/g)を触媒AのBET比表面積(m/g)で除した単位面積あたりの酸量の下限は、0.97μmol/m以上であり、1.00μmol/m以上が好ましく、1.15μmol/m以上がより好ましい。単位面積あたりの酸量が前記下限値以上であれば、反応活性、特に反応開始後の初期の段階での反応活性に優れ、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率が高くなる。
一方、単位面積あたりの酸量の上限は、1.40μmol/m以下が好ましく、1.35μmol/m以下がより好ましい。単位面積あたりの酸量が前記上限値以下であれば、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率を良好に維持できる。
上記の単位面積あたりの酸量の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
触媒Aの酸強度の下限は、84.5μmol/g以上が好ましく、87.0μmol/g以上がより好ましく、90.0μmol/g以上がさらに好ましく、95.0μmol/g以上が特に好ましい。酸強度が前記下限値以上であれば、反応が起こり易い傾向がある。
一方、触媒Aの酸強度の上限は、100.0μmol/g以下が好ましく、99.0μmol/g以下がより好ましく、98.0μmol/g以下がさらに好ましい。酸強度が前記上限値以下であれば、生成した目的物質の分解や副生物の生成が起こり難い傾向がある。
上記の酸強度の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
触媒AのBET比表面積の下限は、73.5m/g以上が好ましく、74.0m/g以上がより好ましく、75.0m/g以上がさらに好ましい。BET比表面積が前記下限値以上であれば、反応の活性点が多くなりやすい傾向がある。
一方、触媒AのBET比表面積の上限は、83.6m/g以下が好ましく、83.4m/g以下がより好ましく、83.2m/g以下がさらに好ましい。BET比表面積が前記上限値以下であれば、生成した目的物質の分解や副生物の生成が起こり難い傾向がある。
上記のBET比表面積の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
従来、タングステン-ジルコニウム複合酸化物としては、非晶質の固体酸化物や結晶質の固体酸化物が知られている。結晶質の固体酸化物としては、2次元層状構造を有するものや3次元網目状構造を有するものが知られている。
触媒Aは、非晶質であっても結晶質であってもよいが、結晶質であることが好ましい。中でも、テトラゴナル型のZrOの結晶構造を有することが好ましい。
触媒Aは、ビスフェノール化合物製造用触媒として好適である。
ビスフェノール化合物製造用触媒は、典型的には、カルボニル化合物とフェノール化合物との反応の触媒である。カルボニル化合物とフェノール化合物との反応によりビスフェノール化合物が生成する。
ビスフェノール化合物製造用触媒として触媒Aを用いることで、カルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率が向上する。具体的には、カルボニル化合物の転化率については、例えば90%以上、さらには95%以上を達成できる。また、ビスフェノール化合物の収率については、例えば85%以上、さらには90%以上を達成できる。また、ビスフェノール化合物の選択率も良好である。例えば、ビスフェノールAを製造する場合に、触媒Aを用いることで、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンやDianin化合物(2,2,4-トリメチル-3,4-ジヒドロ-4-(4-ヒドロキシフェニル)-2H-1-ベンゾピラン)等の副生を抑制できる。また、ビスフェノールCを製造する場合に、触媒Aを用いることで、2-(3-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の副生を抑制できる。
但し、触媒Aを適用する反応は、カルボニル化合物とフェノール化合物との反応に限定されるものではなく、他の反応にも好適に用いることができる。
なお、本発明において、上述したカルボニル化合物の転化率、ビスフェノール化合物の収率及び選択率は、それぞれ、ガスクロマトグラフィー(GC)による測定値から、以下の式により算出される。
なお、ガスクロマトグラフィーの具体的な測定条件については、後述するアセトン転化率、4,4’-BPA収率(%)、4,4’-BPA選択率の測定方法に記載したGC測定条件と、同じ条件を用いることができる。
(算出式)
カルボニル化合物の転化率(%)=[(仕込んだカルボニル化合物のモル数-未反応のカルボニル化合物のモル数)/(仕込んだカルボニル化合物のモル数)]×100
ビスフェノール化合物の収率(%)=[(生成したビスフェノール化合物のモル数/仕込んだカルボニル化合物のモル数)]×100
ビスフェノール化合物の選択率(%)=[ビスフェノール化合物の収率(%)/カルボニル化合物の転化率(%)]×100
〔固体酸化物触媒の製造方法〕
触媒Aの製造方法としては、例えば、W供給源、Zr供給源、及びX供給源から、ケイ素-炭素結合を有する有機ケイ素化合物、及び有機構造規定剤の存在下で、ゾルゲル法により、触媒Aの前駆体を得ること(前駆体調製工程)、及び、得られた前駆体を加熱して触媒Aを得ること(加熱工程)、を含む方法が挙げられる。
前駆体調製工程においては、W供給源、Zr供給源、及びX供給源とともに、第4の金属の供給源を用いてもよい。
<前駆体調製工程>
前駆体は、例えば、水を含む液状媒体にW供給源、Zr供給源、X供給源、有機ケイ素化合物及び有機構造規定剤、必要に応じて第4の金属の供給源を加えて反応を行い、乾燥する方法により得られる。
具体的には、水を含む液状媒体に、W供給源、Zr供給源、X供給源、必要に応じて第4の金属の供給源を加え、それらをアンモニウム水と反応(加水分解反応、縮合反応等)させることにより、前駆体が形成される。
このとき、ケイ素-炭素結合を有する有機ケイ素化合物及び有機構造規定剤を存在させることで、得られる触媒Aは、単位面積あたりの酸量が大きくなり、且つ、該有機構造規定剤に応じて特定の平均細孔直径と細孔容積を有することができる。
この理由は定かではないが、有機ケイ素化合物を用いた場合、前駆体調整工程において触媒A中に生成するM-O-Si-O-M構造(但し、M、Mは金属)中のSi原子が焼成中に脱離して、酸性点が生成し、その結果、触媒Aの単位面積あたりの酸量が大きくなると推察される。また、該M-O-Si-O-M構造中のSi原子が焼成中に脱離した後に、細孔が形成され、その結果、触媒Aの平均細孔直径が小さく、且つ、触媒Aの細孔容積が大きくなると推察される。
また、有機構造規定剤を用いた場合、前駆体調整工程において触媒Aから有機構造規定剤を除去すると、触媒A内に特定の平均細孔直径及び特定の細孔容積を有するメソポーラス構造が生成する。このとき、該メソポーラス構造の細孔のサイズが、有機ケイ素化合物のSi原子が脱離後に形成される細孔のサイズより大きいため、後述する実施例と比較例に示される、平均細孔直径及び細孔容となると推察される。
W供給源としては、Wを含み、ゾルゲル法に適用可能なものであればよく、得られる触媒の活性や生産性が好適になるように、公知のW供給源から適宜選択することができる。W供給源として、具体的には、タングステン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、フッ化タングステン、ヘキサメチルタングステン、ヒ化タングステン、が挙げられる。これらの化合物は、含水化合物であってもよい。
W供給源としては、これらの中でも、取扱性及びコスト等の観点から、タングステン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムが好ましく、メタタングステン酸アンモニウムがより好ましい。
これらのW供給源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
Zr供給源としては、Zrを含み、ゾルゲル法に適用可能なものであればよく、得られる触媒の活性や生産性が好適になるように、公知のZr供給源から適宜選択することができる。Zr供給源として、具体的には、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートが挙げられる。これらの化合物は、含水化合物であってもよい。
Zr供給源としては、これらの中でも、反応性及びコスト等の観点から、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウムが好ましく、オキシ塩化ジルコニウムがより好ましい。
これらのZr供給源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
X供給源としては、Xを含み、ゾルゲル法に適用可能なものであればよく、得られる触媒の活性や生産性が好適になるように、X供給源として用いられる公知の化合物から適宜選択することができ、例えば、Xの塩化物、硝酸塩、水酸化物、硫酸塩が挙げられる。具体的には、硝酸インジウム、硫酸インジウムが挙げられる。これらの化合物は、含水化合物であってもよい。これらの中でも、取扱性及びコスト等の観点から硝酸塩がより好ましい。
これらのX供給源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
第4の金属の供給源としては、第4の金属を含み、ゾルゲル法に適用可能なものであればよく、得られる触媒の活性や生産性が好適になるように、第4の金属の供給源として用いられる公知の化合物から適宜選択することができ、例えば、第4の金属の塩化物、酸化物、硝酸塩、水酸化物、硫酸塩が挙げられる。具体的には、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクタト)チタン、四硝酸チタン、硫酸チタンが挙げられる。これらの化合物は、含水化合物であってもよい。
これらの第4の金属の供給源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
有機ケイ素化合物としては、ケイ素-炭素結合を有する化合物であればよく、得られる触媒の活性や生産性が好適になるように、公知の有機ケイ素化合物から適宜選択することができる。W供給源として、具体的には、ヘキサメチルジシラン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサフェニルジシラン、1,2-ジメチル-1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、1,2-ジ-tert-ブトキシ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、これらの中でも、アセトン転化率とビスフェノール化合物の収率の観点から、ヘキサメチルジシラン及びポリジメチルシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
有機構造規定剤は、メソポーラス構造を有する金属酸化物、ゼオライト等を製造する際に、そのメソポーラス構造を決定するためのテンプレート(鋳型)として用いられる。
有機構造規定剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、界面活性剤、長鎖アルキルアミンが挙げられる。界面活性剤としては、具体的には、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム及び塩化テトラメチルアンモニウム等の陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロック両性界面活性剤共重合体等の非イオン界面活性剤の等が挙げられる。前記長鎖アルキルアミンは、炭素数6~30のアルキル基を有するアミンであり、具体的には、ヘキサデシルアミン、ペンタデシルアミン、テトラデシルアミンが挙げられる。
また、有機構造規定剤の市販品としては、Sigma-Aldrich社製のプルロニック(登録商標)Fシリーズ、Pシリーズ及びLシリーズや、Brij56、Brij58などの、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロック-ポリプロピレンオキシド(PPO)ブロック-ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックを含むトリブロック共重合体を用いることができる。
液状媒体としては、水、水と有機溶剤との混合媒体が挙げられる。液状媒体に対する原料の溶解性に優れる観点から、水と有機溶剤との混合媒体が好ましい。
有機溶剤としては、水と混和可能であればよく、例えばイソプロピルアルコール、エタノールが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
前駆体調製工程において、W供給源、Zr供給源、X供給源、第4の金属の供給源の使用量は、製造する触媒Aに応じて設定される。
有機ケイ素化合物の使用量は、Zr供給源100質量部に対し、2.0~10.0質量部が好ましく、3.5~9.0質量部がより好ましい。有機ケイ素化合物の使用量が前記下限値以上であれば、アセトン転化率とビスフェノール化合物の収率が良好であり、前記上限値以下であれば、アセトン転化率とビスフェノール化合物の収率を良好に維持できる。
有機構造規定剤の使用量は、Zr供給源100質量部に対し、20~50質量部が好ましく、30~40質量部がより好ましい。有機構造規定剤の使用量が前記下限値以上であれば、アセトン転化率とビスフェノール化合物の収率が良好であり、前記上限値以下であれば、アセトン転化率とビスフェノール化合物の収率を良好に維持できる。
水の使用量は、Zr供給源100質量部に対し、90~130質量部が好ましく、105~115質量部がより好ましい。水の量が前記下限値以上であれば、有機構造規定剤や第4の金属の供給源の溶解性が良好であり、前記上限値以下であれば、水分留去時の作業性が良好である。
有機溶剤の使用量は、Zr供給源100質量部に対し、1.0~5.0質量部が好ましく、2.0~3.0質量部がより好ましい。有機溶剤の量が前記下限値以上であれば、第4の金属の供給源の溶解性が良好であり、前記上限値以下であれば、溶媒留去時および触媒乾燥時の作業性が良好である。
W供給源、Zr供給源、X供給源等を反応させる際のpHは、9.0~10.0が好ましく、9.0~9.5がより好ましい。
pHは、得られる触媒の活性が好適になるように、周知技術に従って適宜設定すればよい。具体的には、前記pHは、アンモニウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のpH調整剤を用いて調整してもよく、Zr供給源、W供給源、X供給源等の種類と量により調整してもよい。
W供給源、Zr供給源、X供給源等を反応させる際の反応温度は、例えば35~65℃である。反応時間は、反応温度によっても異なるが、例えば40~90分間である。
W供給源、Zr供給源、X供給源等は、反応を均一に進める観点から、撹拌下で反応させることが好ましい。
乾燥は、液状媒体を除去できればよい。常温乾燥でも加熱乾燥もよい。また、減圧乾燥でも常圧乾燥でもよい。乾燥温度は、例えば40~80℃である。
乾燥後、必要に応じて、得られた前駆体の粉砕又は解砕を行って、その粒径を調整することができる。粉砕又は解砕は、例えば、乾式ジェットミル、湿式ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、ロータリーミル、バンパリーミキサー等の公知の粉砕装置又は混練装置等を用いて行うことができる。
<加熱工程>
前駆体を加熱することで、前駆体中の金属及び酸素以外の成分が除去され、触媒Aが得られる。
加熱温度の下限は、特に限定されないが、上述した有機ケイ素化合物に由来するケイ素成分を除去する観点から、550℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、700℃以上がさらに好ましく、750℃以上が特に好ましい。また、一方で、加熱温度の上限は、特に限定されないが、900℃以下が好ましく、850℃以下がより好ましく、820℃以下がさらに好ましい。
上記の加熱温度の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
加熱時間は、特に限定されないが、製造される触媒Aの均一性の観点からは長いことが好ましい。また、一方で、作業効率の観点からは、加熱時間は短いことが好ましい。そこで、加熱時間は、0.2時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。また、一方で、加熱時間は、24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。
上記の加熱時間の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
加熱時の雰囲気は、大気下、酸化性ガス雰囲気下、窒素或いはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下のいずれでもよく、大気下が好ましい。
得られる触媒A中のWO、ZrO、XO、第4の金属の酸化物の含有割合は、任意の方法で制御することができる。例えば、各供給源の添加量を制御する方法、各供給源を接触させる際の温度、酸性度制御によって各酸化物の担持や析出を制御する方法、触媒中の金属酸化物を溶出させる方法等がある。
触媒A中のケイ素原子の含有割合は、加熱条件、上述したケイ素-炭素結合を有する有機ケイ素化合物の種類や添加量によって調整することができる。例えば、加熱温度を800℃以上にすることで、ケイ素原子の含有割合を低減できる。
触媒Aの酸強度は、触媒Aを製造するときのW供給源、Zr供給源、X供給源それぞれの量、各供給源を接触させるときのpH、各供給源を接触させて得た前駆体の加熱温度等によって調整することができる。これらのうち、前駆体の加熱温度により酸強度を調整することが好ましい。具体的には、前駆体の加熱温度が高いと結晶化が進行し、酸強度が低くなりやすいため、適切な酸強度となるよう前駆体の加熱温度を調整すればよい。
〔ビスフェノール化合物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るビスフェノール化合物の製造方法は、触媒Aの存在下で、カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させること(接触工程)を含む。
触媒Aの存在下でカルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させると、カルボニル化合物とフェノール化合物との反応により、ビスフェノール化合物が生成する。
カルボニル化合物とフェノール化合物の反応は、通常、縮合反応である。
<カルボニル化合物>
カルボニル化合物は、カルボニル基を有する化合物である。
カルボニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、ケトン化合物及びアルデヒド化合物が挙げられる。
ケトン化合物としては、アルキル基を有する飽和脂肪族ケトン、不飽和脂肪族ケトン、芳香族ケトン、脂環式ケトン及びハロゲン置換ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
飽和脂肪族ケトンは、アルキル基を有する。アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基の炭素数は1~20が好ましい。飽和脂肪族ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン及びメチルイソブチルケトンが挙げられる。
不飽和脂肪族ケトンとしては、例えば、メシチルオキシドが挙げられる。
芳香族ケトンとしては、例えば、フェニルメチルケトン及びベンゾフェノンが挙げられる。
脂環式ケトンとしては、例えば、シクロヘキサノン、シクロドデカノン、及び炭素数1~6のアルキル基を置換基として有するシクロヘキサノン(例えば、4-n-プロピルシクロヘキサノン)が挙げられる。
ハロゲン置換ケトンとしては、例えば、ヘキサフルオロアセトン、ヘキサクロロアセトン、ヘキサブロモアセトン及びメチルペンタフルオロフェニルケトンが挙げられる。
ケトン化合物の炭素数は、3以上であることが好ましい。また、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
ケトン化合物としては、アセトンが最も好ましい。
アルデヒド化合物としては、例えば、炭素数1~20程度のアルデヒド化合物が挙げられる。具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、カプリルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、トリデシルアルデヒド及びシクロヘキシルアルデヒドが挙げられる。
これらのカルボニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
上記のうち、カルボニル化合物としては、ホルムアルデヒド及びアセトンからなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましく、アセトンが最も好ましい。
カルボニル化合物は、市販のものを使用できる。必要に応じて、蒸留等の精製処理を行ったものを用いてもよい。
カルボニル化合物としてアセトンを用いる場合、通常入手できる市販の工業用アセトンを使用することができる。一般的には純度99.0質量%以上のものが入手可能である。また、蒸留精製したアセトン、キュメン法フェノールプロセスにおける蒸留塔底液から得られる粗アセトン等も使用可能である。
<フェノール化合物>
フェノール化合物としては、特に限定されないが、例えば、無置換のフェノール及び置換基を有するフェノールが挙げられる。
前記置換基としては、例えば、炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン、アリール基等が挙げられる。置換基を有するフェノールにおける置換基の数は1つでもよく2つ以上でもよい。2つ以上の置換基を有する場合、2つ以上の置換基は互いに同一でもよく異なってもよい。
フェノール化合物として、具体的には、無置換のフェノール;o-クレゾール、m-クレゾール、キシレノール(2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、2,3,6-トリメチルフェノール及び2,6-ジ-tert-ブチルフェノール等の炭素数1~4のアルキル基で置換されたフェノール;イソプロペニルフェノール;o-クロロフェノール、m-クロロフェノール、2,3-ジクロロフェノール、2,5-ジクロロフェノール及び2,6-ジクロロフェノール等のハロゲンで置換されたフェノール;2-フェニルフェノール等のアリール基で置換されたフェノール等が挙げられる。
上記のうち、フェノール化合物としては、フェノール、イソプロペニルフェノール及びо-クレゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、フェノール及びо-クレゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フェノールが特に好ましい。
これらのフェノール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
フェノール化合物は、市販のものを使用できる。必要に応じて、蒸留等の精製処理を行ったものを用いてもよい。
フェノール化合物としてフェノールを用いる場合、通常入手できる市販の工業用フェノールを使用することができる。一般的に、純度98質量%以上のものが入手可能である。また、クメン法により得られるフェノール、トルエン酸化法等により得られるフェノール等も使用可能である。
フェノール化合物としてクレゾールを用いる場合についても、通常入手できる市販の工業用クレゾールを使用することができる。
<接触工程>
接触工程では、触媒Aの存在下で、カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させる。
接触工程は、バッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。工業的には、連続式で行うことが好ましい。連続式で接触工程を行う場合、例えば、触媒Aを充填した反応器に、カルボニル化合物とフェノール化合物とを連続的に供給する。
カルボニル化合物とフェノール化合物とのモル比は、特に限定されない。副生物の生成が起こり難く、選択率が高くなりやすい観点からは、フェノール化合物が多い方が好ましい。また、一方で、未反応フェノールを低減できる観点から、フェノール化合物が少ない方が好ましい。
カルボニル化合物とフェノール化合物とのモル比として、具体的には、カルボニル化合物1モルに対して、フェノール化合物が2モル以上であることが好ましく、4モル以上であることがより好ましい。また、カルボニル化合物1モルに対して、フェノール化合物が20モル以下であることが好ましく、15モル以下であることがより好ましい。
カルボニル化合物とフェノール化合物との組み合わせは、製造するビスフェノール化合物に応じて適宜選定できる。
ビスフェノール化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリカーボネート樹脂等の原料として有用なことから、ビスフェノールAが挙げられる。或いは又、難燃性に優れ、表面硬度が高いポリカーボネート樹脂等の原料として有用なことから、ビスフェノールCが挙げられる。
ビスフェノールAを製造する場合、フェノール化合物としてフェノールを使用し、カルボニル化合物としてアセトンを使用することが好ましい。また、フェノール化合物として、カルボニル化合物とフェノール化合物との縮合反応で副生するイソプロペニルフェノールを使用し、カルボニル化合物としてアセトンを使用することも同様に好ましい。
ビスフェノールCを製造する場合、フェノール化合物としてо-クレゾールを使用し、カルボニル化合物としてアセトンを使用することが好ましい。
接触工程で用いる触媒Aの量は、有効触媒量であれば特に限定されない。
本明細書において、有効触媒量とは、カルボニル化合物とフェノール化合物から所望するビスフェノール化合物を製造することができる量を意味する。
有効触媒量は、使用する原料や反応条件等に応じて適宜設定すればよい。
例えば、アセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する場合、又はアセトンとо-クレゾールからビスフェノールCを製造する場合、有効触媒量の下限は、アセトン1gに対して、0.1g以上が好ましく、0.5g以上がより好ましく、1.0g以上が特に好ましい。また、一方で、有効触媒量の上限は、アセトン1gに対して、10g以下が好ましく、5g以下がより好ましく、2.5g以下が特に好ましい。
カルボニル化合物とフェノール化合物とは、触媒A及びチオール化合物の存在下で接触させ、反応させることが好ましい。チオール化合物は助触媒として機能する。触媒Aとともにチオール化合物を存在させることにより、触媒活性を向上させることができる。
チオール化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、メルカプト基(SH基)を1個以上有する有機化合物を用いることができる。このようなチオール化合物として、具体的には、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、ブタンジチオール、tert-ノニルメルカプタン及びシクロヘキシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン化合物;メルカプトプロピオン酸及びメルカプト酢酸等のメルカプトカルボン酸化合物;メルカプトエタノール及びメルカプトブタノール等のメルカプトアルコール化合物;メルカプトピリジン、メルカプトニコチン酸、メルカプトピリジノオキサイド及びメルカプトピリジノール等のメルカプトピリジン化合物;チオフェノール及びチオクレゾール等のチオフェノール化合物;システアミン等が挙げられる。
これらの中でも、アルキルメルカプタン化合物が好ましい。アルキルメルカプタン化合物の炭素数は、1以上が好ましく、3以上が更に好ましい。また、アルキルメルカプタン化合物の炭素数は、6以下が好ましく、5以下が更に好ましい。
これらのチオール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
接触工程でチオール化合物を用いる場合、その使用量は、特に限定されるものではなく、原料やチオール化合物の種類や反応条件等に応じて適宜設定すればよい。
チオール化合物の使用量の下限は、ビスフェノール化合物の収率の観点から、カルボニル化合物の1モルに対して、0.1モル以上が好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.2モル以上がさらに好ましい。また、一方で、チオール化合物の使用量の上限は、ビスフェノール化合物とチオール化合物の分離コストの観点から、カルボニル化合物の1モルに対して、10モル以下が好ましく、5モル以下がより好ましい。
触媒A及びチオール化合物の存在下でカルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させ、反応させる方法としては、例えば、(1)触媒Aを収容した反応器に、カルボニル化合物、フェノール化合物及びチオール化合物を供給する方法、(2)触媒Aをチオール化合物で変性させ、変性させた触媒Aを収容した容器に、カルボニル化合物及びフェノール化合物を供給する方法が挙げられる。これらの中では、(1)の方法が好ましい。
カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させるときの条件、つまりカルボニル化合物とフェノール化合物との反応条件は、特に限定されるものではなく、カルボニル化合物、フェノール化合物及び触媒Aの種類や添加量、チオール化合物の有無等に応じて適宜設定すればよい。
カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させ、反応させるときの反応温度の下限は、特に限定されないが、反応速度、反応選択率及び生産性等の観点から、30℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。また、一方で、前記反応温度の上限は、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
なお、本実施形態のビスフェノール化合物の製造方法は、上記の触媒Aを用いることにより、イオン交換樹脂触媒を用いる場合に比べ、100℃以上という高温反応により反応速度を上げることが可能である。
カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させ、反応させるときの反応時間は、触媒量や反応温度等によっても変動するが、通常は1~12時間である。
さらに、フェノール化合物としてフェノールを、カルボニル化合物としてアセトンを用いて反応させるときの反応時間は、通常は1~12時間である反応時間は、通常は1~5時間である。
カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させ、反応させるときの反応圧力については、減圧、加圧及び常圧のいずれの条件下でも実施することが可能である。
接触工程により、目的のビスフェノール化合物を含む反応液が得られる。
反応液中には、目的のビスフェノール化合物の他に、未反応原料、反応時に副生する水及び不純物等が含まれる。そこで、反応液を精製することにより、ビスフェノール化合物を取り出すことができる。すなわち、本実施形態のビスフェノール化合物の製造方法は、接触工程で得られた反応液から目的のビスフェノール化合物を分離精製する工程をさらに含むことができる。
反応液からビスフェノール化合物を分離精製する方法には特に制限はなく、公知の方法に準じて行えばよい。
以下、カルボニル化合物がアセトンであり、ビスフェノール化合物がビスフェノールAである場合を例に挙げて、分離精製方法の例を説明する。
まず、反応液を、ビスフェノールAとフェノールとを含む成分と、反応で副生する水及び未反応アセトン等を含む低沸点成分とに分離する。分離方法としては、例えば、反応液を減圧下で蒸留して低沸点成分を蒸発させる方法が挙げられる。
なお、この低沸点成分には、フェノール等が含まれていてもよい。また、低沸点成分を蒸発させた後のビスフェノールAとフェノールとを含む成分の組成は、さらに蒸留等によってフェノールを除去する、又はフェノールを追加するなどによって、所望の組成に調整することができる。なお、分離された低沸点成分に含まれる未反応アセトンは、分離回収して、反応に再利用することができる。
続いて、ビスフェノールAとフェノールとを含む成分を晶析することにより、ビスフェノールAとフェノールとの付加物の結晶(以下、単に「付加物の結晶」または「付加物」と言う場合がある。)を含有するスラリーを得る。
晶析は、例えば、冷却、貧溶媒の添加、水等の添加及びその後の蒸発(蒸発熱で冷却)、フェノール除去による濃縮、及びこれらの方法の組み合わせ等により付加物の析出を行えばよい。晶析は、1回のみ行ってもよく、所望の純度の付加物を得るために、任意の方法の組み合わせで複数回行ってもよい。
続いて、晶析により得られるスラリーを、減圧濾過、加圧濾過又は遠心濾過等により、付加物の結晶と母液とに固液分離する。このようにしてビスフェノールAとフェノールとの付加物の結晶が回収される。なお、晶析するときに、ビスフェノールAの結晶を直接得ることもできる。
続いて、固液分離により得た付加物の結晶を溶融した後、その溶融液からフラッシュ蒸留、薄膜蒸留又はスチームストリッピング等の手段によって、フェノールを除去する。これにより、溶融ビスフェノールAを得ることができる。除去されたフェノールは、精製し、反応や固液分離で得られた付加物の結晶の洗浄等に供することができる。
このようにして得られた溶融ビスフェノールAを固化することにより、造粒することができる。すなわち、本実施形態のビスフェノール化合物の製造方法は、溶融ビスフェノール化合物を造粒する工程を含むことができる。
造粒方法としては、例えば、ノズルから溶融ビスフェノールAを噴射させ、冷却ガスと接触させることにより、小球状のビスフェノールAプリルを得る方法等が簡便で好ましい。なお、固液分離で得られた付加物の結晶から、フェノールを除去せずに、再度、晶析を行うことによってもビスフェノールAを得ることができる。
固液分離で分離された母液については、これに含まれる未反応原料や副生物を再利用することができる。
例えば、母液の少なくとも一部を反応器に戻し、母液に含まれる成分を原料の少なくとも一部として、ビスフェノールAを製造することができる。
また、母液の少なくとも一部について、アルカリ又は酸の存在下で加熱後に蒸留することにより、不純物となる重質分を除くと共に軽質分を取得し、この軽質分を、酸触媒等を用いて再結合反応させることによりビスフェノールAを得ることもできる。
この他、母液の少なくとも一部について、酸触媒等を用いて異性化反応させることによりビスフェノールAを得ることもできる。
なお、再結合反応や異性化反応に用いる酸触媒として、接触工程で用いる固体酸化物触媒を好適に用いることができる。
また、上記の触媒Aは、使用後に回収し、再生することができる。また、再生した触媒Aを再利用できる。例えば再生した触媒Aを用いてビスフェノール化合物の製造を行うことができる。
〔固体酸化物触媒の回収〕
反応に用いた触媒Aの回収方法としては、例えば、触媒Aを網目スクリーンやイナートボール等で保持した反応器からマンホール等を開放して回収する方法、反応器に接続した焼結フィルター等のろ過機で反応液や洗浄液と触媒Aを分離した後に反応器を開放して回収する方法等が挙げられる。
回収した触媒Aを再生する前に、触媒Aを水や有機溶媒で洗浄することが好ましい。
〔固体酸化物触媒の再生〕
触媒Aの再生方法としては、触媒Aを加熱する方法が挙げられる。触媒Aを長時間反応に用いると、触媒質量あたりの酸強度が低下したり、BET比表面積が小さくなったりすることがある。このような場合、反応に用いた触媒Aを加熱することにより、触媒Aの酸強度を高めたり、触媒のBET比表面積を大きくしたりすることができる。
加熱温度の下限は、550℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、700℃以上がさらに好ましい。中でも、触媒の酸強度増加やBET比表面積増加の観点から、750℃以上が特に好ましい。また、一方で、加熱温度の上限は、900℃以下が好ましく、850℃以下がより好ましく、820℃以下がさらに好ましい。
上記の加熱温度の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
加熱時間は、特に限定されないが、触媒Aに付着した不純物除去の観点からは長いことが好ましい。また、一方で、作業効率の観点からは、加熱時間は短いことが好ましい。そこで、具体的には、加熱時間は、0.2時間以上が好ましく、0.5時間以上が更に好ましい。また、一方で、加熱時間は、24時間以下が好ましく、12時間以下が更に好ましい。
上記の加熱時間の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
加熱時の雰囲気は、大気下、酸化性ガス雰囲気下、窒素或いはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下のいずれでもよく、大気下が好ましい。
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、ビスフェノールAのことを「4,4’-BPA」という。
<WO、ZrO、XO、第4の金属の酸化物、ケイ素原子等の含有割合>
触媒の、WO、ZrO、XO、第4の金属の酸化物、及びケイ素原子等の含有割合を、以下の手順で測定した。
ペレット状に成型した触媒を、波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)(装置名:S8 TIGER Series2、Bruker社製)と蛍光分光学ソフトウェア(製品名:SpectraPlus、BRUKER AXS製)を用いて、2θ=99~111°の範囲で分析した。
<BET比表面積>
触媒のBET比表面積は、BET(Brunauer-Emmet-Teller)法を用いて、以下の手順で測定した。BET法では、ガス吸着法による比表面積測定器(MICROMERITICS社製「ASAP2420」)を用い、吸着ガスとして窒素を用い、触媒のガス吸着量を測定し、BET比表面積を算出する。
具体的には、触媒を試料管に充填し、350℃で減圧乾燥後の質量を測定し、次に、試料管を-196℃に冷却し、試料管に窒素を導入し触媒に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量の関係(吸着等温線)を測定した。ここで、窒素の相対圧をp、窒素の吸着量をv(cm/g STP)とし、BETプロットを行った。そして、縦軸にp/[v(1-p)]、横軸にpを取り、pが0.05~0.20の範囲でプロットしたときの傾きb(g/cm)と切片c(g/cm)から、下式に基づいてBET比表面積S(m/g)を求めた。
Figure 2023140111000001
ここで、MAは窒素分子の断面積(0.162nm)である。
<平均細孔直径>
触媒の平均細孔直径は、以下の手順で測定した。
自動比表面積/細孔分布測定装置を用いて、窒素ガス吸着法により、触媒の窒素吸脱着の等温線データを測定した。
次いで、得られた窒素吸脱着等温線データの脱着側の等温線を用いて、ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),73,373-380(1951)に記載されたBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により解析することで、触媒の平均細孔直径を算出した。
<細孔容積>
触媒の細孔容積は、窒素ガス吸着法により測定した。
触媒について、窒素ガス吸着法により測定された、吸着側及び脱離側の窒素吸脱着等温線データにおいて、相対圧力が0.99となったときの窒素吸着量を、上述したBJH法を用いて解析することで、触媒の細孔容積を算出した。
<酸強度>
触媒の酸強度は、アンモニア昇温脱離法(NH-TPD法)に基づいてアンモニア昇温脱離スペクトル(TPDスペクトル)の測定を行い、得られたTPDスペクトルの積分値に基づいて算出した。
TPDスペクトルの測定は、Thermo Scientific社製「TPDRO110 Series Catalyst」を用いて行った。具体的には、触媒を試料管に充填し、500℃で1時間脱気、冷却後、NHガスを導入し100℃で1時間静置した。次に、100℃で1時間脱気し、触媒に吸着していないNHガスを除去した。その後、試料管をThermo Scientific社製「TPDRO110 Series Catalyst」に取り付け、Heを50ccmで流通しながら150℃~800℃まで10℃/分で昇温し、触媒から脱離したNHの質量を測定した。なお、「ccm」は「Cubic Centimetre per Minute」を略したものであり、気体や液体、流体の流れる量を示す単位である。「CC」が体積を表しているので、本実施例においては、時間あたりに流体、即ちNHガスが流れる体積、つまり体積流量を表す。
<単位面積あたりの酸量>
触媒の単位面積あたりの酸量は、前記酸強度を前記BET比表面積で除して算出した。
<アセトン転化率、4,4’-BPA収率(%)、4,4’-BPA選択率>
アセトン転化率(%)、4,4’-BPA収率(%)、4,4’-BPA選択率(%)はそれぞれ、以下の測定条件のガスクロマトグラフィー(GC)による測定値から、以下の式により算出した。
(GC測定条件)
装置:GC-2010(型番、島津製作所株式会社製)
カラム:Rtx-5(商品名、Restack社製、カラム仕様:Crossbond 5% diphenyl-95% dimethyl polysiloxane、カラムサイズ:30m×0.32mm×0.5μm)
検出器:FID
キャリアーガス:He
(算出式)
アセトン転化率(%)=[(仕込みアセトンのモル数-未反応アセトンのモル数)/(仕込みアセトンのモル数)]×100
4,4’-BPA収率(%)=[(生成した4,4’-BPAのモル数/仕込みアセトンのモル数)]×100
4,4’-BPA選択率(%)=[4,4’-BPA収率(%)/アセトン転化率(%)]×100
<実施例1>
(触媒前駆体の調整)
オキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(Chemieliva Pharmaceutical社製)4.85g、メタタングステン酸アンモニウム(Sigma-Aldrich社製)0.50g、硝酸インジウム(III)(Sigma-Aldrich社製)0.23g、及び脱イオン水150mlを三角フラスコに入れて、80℃で4時間攪拌した。室温まで冷却した後、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクタト)チタン(50%イソプロピルアルコール水溶液)0.54gを添加した。
次いで、ポリジメチルシロキサン(Sigma-Aldrich社製)0.58g、2.5mLのHCl水溶液(濃度1M)、2.5mLのエタノールからなる溶液、及び25質量%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(Sigma-Aldrich社製)10mLを添加した。
次いで、撹拌しながらアンモニア水(28%)を添加して、反応液のpHを9に調整したところ、白色の沈殿物が析出した。なお、反応液のpHはpHメーター(メトラー・トレド社製)を用いて測定した。白色の沈殿物を含む混合物をオートクレーブ容器に移し、140℃で24時間水熱処理を行った。
その後、得られた白色の沈殿物を真空濾過した後、脱イオン水で洗浄し、オーブン内にて120℃で一晩乾燥し、触媒前駆体を得た。
(固体酸化物触媒の製造)
得られた触媒前駆体を、マッフル炉(Carbolite Gero社製)を使用して、大気下で、室温から800℃まで昇温速度1.5℃/minで加熱し、さらに800℃で1時間焼成することにより、タングステン、ジルコニウム、インジウム、及びチタンからなる固体酸化物触媒を得た。
得られた固体酸化物触媒の蛍光X線分析による組成、酸強度、BET比表面積、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径及び細孔容積を表1に示す。
(ビスフェノールAの製造)
還流冷却器及び攪拌器を備えた50cm三つ口フラスコに、得られた固体酸化物触媒1.1gを仕込み、125℃で一晩減圧乾燥した。乾燥後、室温に冷やした後、フェノール8.2g、アセトン0.6g及びブチルメルカプタン0.3gを加え、110℃で撹拌しながら縮合反応を行った。
1時間及び2時間反応後のアセトン転化率、1時間及び2時間反応後の4,4’-BPAの選択率、1時間及び2時間反応後の4,4’-BPAの収率を測定した。評価結果を表1に示す。
<実施例2>
(固体酸化物触媒の製造)
実施例1において、ポリジメチルシロキサン0.58gの代わりにポリジメチルシロキサン0.29gを添加した以外は、実施例1と同様の条件で固体酸化物触媒を製造した。得られた固体酸化物触媒の蛍光X線分析による組成、酸強度、BET比表面積、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径及び細孔容積を表1に示す。
(ビスフェノールAの製造)
上記の方法で得られた固体酸化物触媒を用いた以外は、実施例1と同様の条件でビスフェノールAを製造した。評価結果を表1に示す。
<実施例3>
(固体酸化物触媒の製造)
実施例1において、25質量%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液10mLを供給しないこと以外は、実施例1と同様の条件で固体酸化物触媒を製造した。得られた固体酸化物触媒の蛍光X線分析による組成、酸強度、BET比表面積、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径及び細孔容積を表1に示す。
(ビスフェノールAの製造)
上記の方法で得られた固体酸化物触媒を用いた以外は、実施例1と同様の条件でビスフェノールAを製造した。評価結果を表1に示す。
<実施例4>
(固体酸化物触媒の製造)
実施例1において、ポリジメチルシロキサン0.58gの代わりにヘキサメチルジシラン0.27gを添加した以外は、実施例1と同様の条件で固体酸化物触媒を製造した。得られた固体酸化物触媒の蛍光X線分析による組成、酸強度、BET比表面積、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径及び細孔容積を表1に示す。
(ビスフェノールAの製造)
上記の方法で得られた固体酸化物触媒を用いた以外は、実施例1と同様の条件でビスフェノールAを製造した。評価結果を表1に示す。
<比較例1>
(固体酸化物触媒の製造)
実施例1において、ポリジメチルシロキサン0.58gを添加しなかった以外は、実施例1と同様の条件で固体酸化物触媒を製造した。得られた固体酸化物触媒の蛍光X線分析による組成、酸強度、BET比表面積、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径及び細孔容積を表1に示す。
(ビスフェノールAの製造)
上記の方法で得られた固体酸化物触媒を用いた以外は、実施例1と同様の条件でビスフェノールAを製造した。評価結果を表1に示す。
<比較例2>
(固体酸化物触媒の製造)
特開2020―83803号公報の実施例2を参考に、固体酸化物触媒を製造した。
酸化塩化ジルコニウム4.9gとジヒドロキシビス(アンモニウムラクタト)チタン(50%イソプロピルアルコール,水溶液)0.5gを三角フラスコに入れて、1時間攪拌した。そこへ、メタタングステン酸アンモニウム4.9gと硝酸インジウム0.2gを添加し、1時間、50℃で撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、60℃で水分を留去した。得られた固形物を60℃で一晩乾燥した。そして、得られた固形物を大気下、800℃で1時間焼成することにより、タングステン、ジルコニウム、インジウム、及びチタンからなる固体酸化物触媒を得た。
得られた固体酸化物触媒の蛍光X線分析による組成、酸強度、BET比表面積、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径及び細孔容積を表1に示す。
(ビスフェノールAの製造)
上記の方法で得られた固体酸化物触媒を用いた以外は、実施例1と同様の条件でビスフェノールAを製造した。評価結果を表1に示す。
Figure 2023140111000002
実施例1~4で得た固体酸化物触媒を用いることにより、ビスフェノールA(4,4’-BPA)を高選択率及び高収率で製造できた。
比較例1で得た固体酸化物触媒は、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径、及び細孔容積が、請求項1の要件を満たさない為、反応開始1時間後のアセトン転化率及びビスフェノールAの収率が低位であった。
比較例2で得た固体酸化物触媒は、単位面積あたりの酸量、平均細孔直径、及び細孔容積が、請求項1の要件を満たさない為、反応開始1時間後及び2時間後のアセトン転化率及びビスフェノールAの収率が低位であった。
実施例1~4及び比較例1及び2で得た固体酸化物触媒について、蛍光X線分析を行った。測定された蛍光X線スぺクトルを図1に示す。
蛍光X線分析において、2θが108~110°の領域に蛍光X線のピークが確認されないことから、触媒Aはケイ素原子を含有しないことが確認された。

Claims (14)

  1. WO、ZrO及びXOを含む固体酸化物触媒であって、
    平均細孔直径が5.50nm以上11.50nm以下であり、
    細孔容積が0.16cm/g以上0.24cm/g以下であり、
    前記固体酸化物触媒の酸強度を前記固体酸化物触媒のBET比表面積で除した単位面積あたりの酸量が0.97μmol/m以上である、固体酸化物触媒。
    但し、XOにおけるXは、周期表の第3族、第5族、第7族~第13族及び第15族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、yは、Xの原子価を満足するのに必要な酸素の原子比であって0.5~4の数を示す。
  2. XOにおけるXが、周期表の第3族及び第13族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の固体酸化物触媒。
  3. XOにおけるXがInである、請求項1又は2に記載の固体酸化物触媒。
  4. TiOをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒。
  5. 酸強度が84.5μmol/g以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒。
  6. 前記固体酸化物触媒の総質量に対するWOの含有割合が、10.0質量%以上23.0質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒。
  7. 前記固体酸化物触媒の総質量に対するZrOの含有割合が、75.0質量%以上90.0質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒。
  8. 前記固体酸化物触媒の総質量に対するXOの含有割合が、1.0質量%以上10.0質量%以下である、請求項7に記載の固体酸化物触媒。
  9. 前記固体酸化物触媒の総質量に対するケイ素原子の含有割合が50質量ppm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒。
  10. ビスフェノール化合物製造用触媒である、請求項1~9のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒の製造方法であって、
    W供給源、Zr供給源、及びX供給源から、ケイ素-炭素結合を有する有機ケイ素化合物、及び有機構造規定剤の存在下で、ゾルゲル法により、前記固体酸化物触媒の前駆体を得ること、及び、前記前駆体を加熱して前記固体酸化物触媒を得ることを含む、固体酸化物触媒の製造方法。
  12. 前記有機ケイ素化合物が、ヘキサメチルジシラン及びポリジメチルシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載の固体酸化物触媒の製造方法。
  13. 請求項1~10のいずれか一項に記載の固体酸化物触媒の存在下で、カルボニル化合物とフェノール化合物とを接触させることを含む、ビスフェノール化合物の製造方法。
  14. 前記カルボニル化合物がアセトンであり、前記ビスフェノール化合物がビスフェノールAである、請求項13に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
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