JP2023140099A - コンクリートスラッジ処理物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有効利用が可能な新たなコンクリートスラッジ処理物を製造する方法を提供する。【解決手段】本発明は、コンクリートスラッジに、二価鉄化合物とリン酸化合物とを添加し、混合することでアルカリ性の混合物を得る工程、及び得られた混合物を少なくとも1時間保持する工程を含むコンクリートスラッジ処理物の製造方法;コンクリートスラッジ処理物の製造のためのキット;コンクリートスラッジ処理物を用いた硫化水素放出抑制方法;並びに覆土材を提供する。本発明によれば、有害物質吸着能を有し、クロムの溶出が抑制されたコンクリートスラッジ処理物を安価に製造することができる。このコンクリートスラッジ処理物は、酸化ストレス下でも長期間クロムの溶出が抑制されることから、環境に対して安全な埋め戻し材又は覆土材として利用することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリートスラッジ処理物の製造方法及び製造のためのキット、並びにセメント水和物とハイドロキシアパタイトとを含有する覆土材に関する。
コンクリートスラッジ(生コンスラッジともいう)は、生コンクリート工場のミキサー、アジテータ、現場で使用されなかった残コンクリート(残コン)や荷卸し検査に不合格となったコンクリート(戻りコン)の洗浄により発生する排水から、骨材を除去した残渣である。
コンクリートスラッジは、廃棄物処理法上、産業廃棄物の汚泥に分類され、原則として管理型処分場にて埋立処分されている。しかしながら、コンクリート製造会社にとって多量に発生するコンクリートスラッジの処分費用の負担は大きく、また近年は管理型処分場の残余容量が減少しており、コンクリートスラッジの有効利用が望まれている。
コンクリートスラッジの有効利用にあたっては、有害な六価クロムを含有するという、コンクリートスラッジの性質が課題となっている。例えば、コンクリートスラッジを埋め戻し材として利用する場合には、六価クロムの溶出量を環境基準値以下とするための前処理が必要となり、有効利用の障害となっている。
特許文献1は、生コンスラッジに、硫酸第一鉄と高分子凝集剤と無機粉末とを添加して混合する混合工程と、この混合工程により得られた混合物を養生する養生工程とを備えたことを特徴とする生コンスラッジの中性化処理方法を開示している。また、特許文献2は、特許文献1の中性化処理方法によって得られる中性化処理土を含むことを特徴とする、硫化水素ガス吸着材を開示している。この中性化処理方法によれば、コンクリートスラッジ中の六価クロムを還元することができるが、多量の硫酸第一鉄を要するという課題がある。
特開2014-087723号公報 特開2017-064613号公報
本発明は、有効利用が可能な新たなコンクリートスラッジ処理物を製造する方法を提供する。
本発明者らは、コンクリートスラッジに二価鉄化合物及びリン酸化合物を加えることで、クロムの溶出が抑制されたコンクリートスラッジ処理物を製造することができることを見出した。
本発明は、以下の発明を提供する。
項1. コンクリートスラッジに、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.15質量%以上の量となる鉄を含む二価鉄化合物と、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.60質量%以上の量となるリン酸を含むリン酸化合物とを添加し、混合することでアルカリ性の混合物を得る工程、及び得られた混合物を少なくとも1時間保持する工程を含む、コンクリートスラッジ処理物の製造方法。
項2. 二価鉄化合物が、硫酸鉄(II)又は塩化鉄(II)である、項1に記載の製造方法。
項3. リン酸化合物が、オルトリン酸又はその塩である、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 二価鉄化合物及びリン酸化合物が、液体に溶解した形態でコンクリートスラッジに添加される、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5. 前記液体の添加量が、コンクリートスラッジ100 gに対して少なくとも1 mLである、項4に記載の製造方法。
項6. 前記液体の添加量が、コンクリートスラッジ100 gに対して1~10 mLである、項4又は5に記載の製造方法。
項7. 混合物が少なくとも24時間保持される、項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
項8. コンクリートスラッジ処理物が、乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能を有し、かつコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
項9. 濃度3 mg/Lのオゾンガスで10時間曝気した後のコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
項10. 項1~9のいずれか一項に記載の方法により製造されたコンクリートスラッジ処理物で埋立廃棄物を被覆する工程を含む、埋立廃棄物からの硫化水素の放出を抑制するための方法。
項11. 二価鉄化合物及びリン酸化合物を含む、コンクリートスラッジ処理物を製造するためのキットであって、コンクリートスラッジ処理物が、乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能を有し、かつコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、前記キット。
項12. 鉄に換算した濃度が1.5質量%以上である二価鉄化合物とリン酸に換算した濃度が6.0質量%以上であるリン酸化合物とを、液体に溶解した形態で含む、項11に記載のキット。
項13. 硫酸鉄(II)又は塩化鉄(II)とオルトリン酸とを溶解した液体を含む、項11又は12に記載のキット。
項14. 濃度3 mg/Lのオゾンガスで10時間曝気した後のコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、項11~13のいずれか一項に記載のキット。
項15. セメント水和物と、クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトとを含有する、覆土材。
項16. 乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能を有し、かつ覆土材 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム溶出量が0.05 ppm以下である、項15に記載の覆土材。
項17. 濃度3 mg/Lのオゾンガスで10時間曝気した後の覆土材 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、項16に記載の覆土材。
本発明によれば、有害物質吸着能を有し、クロムの溶出が抑制されたコンクリートスラッジ処理物を安価に製造することができる。このコンクリートスラッジ処理物は、酸化ストレス下でも長期間クロムの溶出が抑制されることから、環境に対して安全な埋め戻し材又は覆土材として利用することができる。
調製から3週間後の硫酸鉄(II)水溶液(左)、調製直後の硫酸鉄(II)水溶液(中央)、及び調製から1ヶ月後の硫酸鉄(II)+リン酸水溶液(右)の外観を示す写真である。 1.00質量%の硫酸鉄(II)及び4.12質量%のリン酸を含む水溶液(一液型処理剤)を、4ppmの六価クロムを含むコンクリートスラッジに対して0.5~4.5質量%添加して製造したコンクリートスラッジ処理物からの溶出六価クロム濃度を示すグラフである。 一液型処理剤を、0.2ppm~10.0ppmの六価クロムを含むコンクリートスラッジに対して1質量%、2質量%又は4質量%添加して製造したコンクリートスラッジ処理物からの溶出六価クロム濃度を示すグラフである。 オゾン曝気試験装置の概略図である。 4ppmの六価クロムを含むコンクリートスラッジに対して、硫酸鉄(II)水溶液のみ添加した試料1、一液型処理剤を添加した後24時間の保持を行わない試料2、一液型処理剤を添加した後24時間保持した試料3を1~12時間オゾンガスに曝気させたときの溶出六価クロム濃度を示すグラフである。 1質量%相当量の硫酸鉄(II)+リン酸水溶液を添加したコンクリートスラッジの外観を示す写真である。 硫化水素ガス吸着試験装置の概略図である。
以下に示す説明は、代表的な実施形態又は具体例に基づくことがあるが、本発明はそのような実施形態又は具体例に限定されるものではない。また、本明細書において示される各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。また、本明細書において「~」又は「-」を用いて表される数値範囲は、特に断りがない場合、その両端の数値を上限値及び下限値として含む範囲を意味する。
本発明は、コンクリートスラッジに、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.15質量%以上の量となる鉄を含む二価鉄化合物と、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.6質量%以上の量となるリン酸を含むリン酸化合物とを添加し、混合することでアルカリ性の混合物を得る工程、及び得られた混合物を少なくとも1時間保持する工程を含む、コンクリートスラッジ処理物の製造方法を提供する。
本発明のコンクリートスラッジ処理物の製造方法は、コンクリートスラッジに、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.15質量%以上の量となる鉄を含む二価鉄化合物と、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.6質量%以上の量となるリン酸を含むリン酸化合物とを添加し、混合することでアルカリ性の混合物を得る工程(以下、混合工程という)を含む。
生コン工場では、運搬車、プラントのミキサー、ホッパなどに付着したフレッシュモルタル及び残留したフレッシュコンクリート、並びに戻りコンクリートのそれぞれの洗浄によってコンクリート成分を含む排水(コンクリート洗浄排水)が発生する。このコンクリート洗浄排水から粗骨材及び細骨材を取り除いて回収した懸濁水はスラッジ水と呼ばれ、またスラッジ水が濃縮されて流動性を失った状態のものはスラッジ、スラッジを105~110 ℃で乾燥して得られたものはスラッジ固形分と呼ばれる。
本発明の製造方法において処理されるコンクリートスラッジは、上記のスラッジ、スラッジ固形分のいずれであってもよい。例えば、コンクリートスラッジは、沈殿濃縮装置(シックナー)等を用いてスラッジ水を濃縮して得られるスラッジ、これらを乾燥させたスラッジ固形分又はスラッジやスラッジ水から脱水させて圧縮成形されるスラッジケーキ(固形物)を包含する。なお、本発明の製造方法で処理されるコンクリートスラッジは、粗骨材及び細骨材骨材が完全に除去されたものに限定されることはなく、後に説明する混合に対して、又はコンクリートスラッジ処理物の利用に対して支障とならない程度の量の骨材を含むものであってもよい。
コンクリートスラッジは、通常、数ppm~10ppm程度の六価クロムを含む。六価クロムは、スラッジ水の一部を循環スラッジ水としてミキサーやアジテータの洗浄用に再利用することで、その後のコンクリートスラッジにおいて数十ppm程度にまで濃縮されることがある。本発明の製造方法は、通常のコンクリートスラッジに加えて、六価クロムが濃縮されたコンクリートスラッジも利用可能である。コンクリートスラッジの六価クロム含有量は、排水検査等の業務用として市販されている水質検査キット(例えばパックテスト(登録商標))、環境庁告示第46号 土壌環境基準に記載された日本産業規格K0102の65.2に定める方法(ジフェニルカルバジド吸光光度法、フレーム原子吸光法、ICP発光分析法等)によって測定することができる。
本発明において、コンクリートスラッジは、生コン工場で発生したスラッジ又はスラッジ固形分そのものであってもよく、スラッジ又はスラッジ固形分に水や回収水等を加えたものであってもよい。本発明において用いられるコンクリートスラッジの含水率は、0~90%程度であればよく、例えば0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、又は20%以上であり得て、また90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、又は50%以下であり得る。
コンクリートスラッジは、セメントが水と混和されることで形成されるセメント水和物を含む。セメント水和物の例は、珪酸カルシウム水和物(トベルモライト3CaO・2SiO2・3H2O、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アルミン酸カルシウム水和物、アルミン酸三硫酸カルシウム水和物(エトリンガイト、3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)などを挙げることができる。
二価鉄化合物(第一鉄)は、二価鉄(Fe2+イオン)を供給することができる化合物であればよく、無機鉄塩である硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、特に硫酸鉄(II)又は塩化鉄(II)が好ましい。無機鉄塩の二価鉄化合物は、無水物であっても、また水和物であってもよい。本混合工程では、二価鉄化合物は好ましくは液体の形態で、例えば水溶液の形態で、コンクリートスラッジに添加される。
リン酸化合物は、リン酸イオン(PO4 3-イオン)を供給することができる化合物であればよい。リン酸化合物の例は、オルトリン酸(H3PO4)又はその塩、例えばリン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム等を挙げることができる。本混合工程では、リン酸化合物は好ましくは液体の形態で、例えば水溶液の形態で添加される。
コンクリートスラッジには、コンクリートスラッジの固形分に対して0.15質量%以上の量となる鉄を含む二価鉄化合物、及びコンクリートスラッジの固形分に対して0.60質量%以上の量となるリン酸を含むリン酸化合物が添加される。本発明において、コンクリートスラッジの固形分に対する量とは、コンクリートスラッジが乾燥スラッジであるときはその質量に対する量、コンクリートスラッジがスラッジ水又はスラリー等の水を含有する形態にあるときは、これを乾燥して得られるスラッジ固形分の質量に対する量、を意味する。
コンクリートスラッジへの二価鉄化合物の添加量は、コンクリートスラッジの固形分に対して0.15質量%以上、例えば、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、又は1.4質量%以上であり得る。
コンクリートスラッジへのリン酸化合物の添加量は、コンクリートスラッジの固形分に対して0.6質量%以上、例えば、0.9質量%以上、1.2質量%以上、1.5量%以上、1.8質量%以上、2.1質量%以上、2.4質量%以上、2.7質量%以上、3.0質量%以上、3.5質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上、5.0質量%以上、又は5.5質量%以上であり得る。
コンクリートスラッジへの二価鉄化合物及びリン酸化合物の添加量は、得られる混合物がアルカリ性である範囲で、例えばpH11~14となる範囲で、好ましくはpH12~13となる範囲で、適宜決定することができる。
例えば、コンクリートスラッジへの二価鉄化合物の添加量は、コンクリートスラッジの固形分に対して5.0質量%以下、4.5質量%以下、4.0質量%以下、3.5質量%以下、3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.0質量%以下、又は1.5質量%以下であり得て、リン酸化合物の添加量は、コンクリートスラッジの固形分に対して20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であり得る。
コンクリートスラッジに対して、二価鉄化合物及びリン酸化合物は、同時に又は逐次的に添加され、混合される。二価鉄化合物及びリン酸化合物の混合順序には特に制限はなく、コンクリートスラッジに二価鉄化合物を添加した後にリン酸化合物を添加してもよく、コンクリートスラッジにリン酸化合物を添加した後に二価鉄化合物を加えてもよく、又はコンクリートスラッジに二価鉄化合物及びリン酸化合物を同時に添加してもよい。
二価鉄化合物及びリン酸化合物は、均一な混合を容易にするため、好ましくは液体に溶解した形態で、例えば水溶液の形態で、コンクリートスラッジに添加、混合される。本発明においては、液体に溶解した形態の二価鉄化合物及びリン酸化合物を液剤とも呼ぶ。液剤は、二価鉄化合物及びリン酸化合物を別々に溶解したものであっても、二価鉄化合物及びリン酸化合物の両方を溶解したものであってもよい。
液剤中の二価鉄化合物及びリン酸化合物の濃度、及びコンクリートスラッジへの液剤の添加量は、スラッジ固形分に対して0.15質量%以上の量となる鉄を含む二価鉄化合物と、スラッジ固形分に対して0.60質量%以上の量となるリン酸を含むリン酸化合物とがコンクリートスラッジに添加されるかぎり、制限はない。液剤は、コンクリートスラッジに対する添加量が非常に少量であっても、例えばコンクリートスラッジ100 gに対して少なくとも1 mL、例えば1~10 mL程度であっても、コンクリートスラッジに均一に混合される。理論に拘束されるものではないが、液剤の添加量が少なくても、液剤に含まれるリン酸とコンクリートスラッジに含まれるエトリンガイト等のセメント水和物との反応によって遊離水が生じ、結果としてコンクリートスラッジの含水率が向上して均一な混合が達成されるものと考えられる。
本発明の製造方法は、混合物を少なくとも1時間保持する工程(以下、保持工程という)を含む。保持時間は、1時間以上であればその長さに制限はなく、例えば1時間以上、3時間以上、6時間以上、12時間以上、又は24時間以上であり得て、また14日間以下、10日間以下、7日間以下、5日間以下、3日間以下、又は2日間以下であり得る。保持は、典型的には、大気圧下、周囲環境温度で行われる。また、保持工程中、混合物は静置してもよく、連続して又は間欠的に撹拌してもよい。撹拌手段に特に制限はなく、混合物の容量に応じて、手動で、撹拌装置で、又はバックホー等の機械的手段で行えばよい。
本発明の製造方法によって製造されるコンクリートスラッジ処理物は、乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能を有し、また、コンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下という、高いクロム保持能を有する。本発明の製造法で製造されるコンクリートスラッジ処理物は、オゾンガス曝気による強度の酸化条件下に置いてもクロムを安定的に保持することができる。本発明の製造法で製造されるコンクリートスラッジ処理物は、クロムのみならず鉄も安定的に保持することができるため、鉄の酸化による変色も殆ど観察されない。
理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法における反応は以下のように推察される。コンクリートスラッジに含まれる有害物質である六価クロムは、二価鉄によって三価クロムに還元される。また、リン酸とコンクリートスラッジ中のカルシウムとが反応して、ハイドロキシアパタイトが形成される。これらの反応は、主に混合工程において進行する。また、ハイドロキシアパタイト中のリン酸イオン及びカルシウムイオンの一部は、イオン交換によって三価クロム及び鉄(二価鉄及び三価鉄)に置換され、クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトが形成される。この置換は、主に保持工程において進行する。クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトは、クロムが結合したハイドロキシアパタイト、鉄が結合したハイドロキシアパタイト、並びにクロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトを含み得る。
本発明の製造方法における二価鉄化合物の添加量に関する「以上」とは、コンクリートスラッジ中に含まれる六価クロムを三価クロムに還元するために、六価クロムの量に応じて適宜増量することができることを意味する。また、リン酸化合物の添加量に関する「以上」とは、クロムが結合することになるハイドロキシアパタイトを形成させるために、六価クロムの量に応じて適宜増量することができることを意味する。したがって、二価鉄化合物の添加量は、コンクリートスラッジ中の六価クロムを三価クロムに還元することができる量であればよく、またリン酸化合物の添加量は、還元により生じた三価クロムを結合により保持するために十分な量のハイドロキシアパタイトを形成させることができる量であればよく、それぞれ必要最低限の量を用いても過剰量を用いてもよい。
本発明の製造方法は、保持後の混合物を脱水処理又は乾燥処理して固形物とする工程を含んでいてもよい。脱水処理又は乾燥処理は、例えばスラッジ水に対して使用される沈殿濃縮装置(シックナー)やスラッジ濃縮水に対して使用される脱水機、またはスラッジ固形物を乾燥させる乾燥機等を用いて行うことができる。
本発明の製造方法によって製造されるコンクリートスラッジ処理物は、前述のように硫化水素ガス吸着能を有することから、コンクリートスラッジ処理物で産業廃棄物を被覆することによって、産業廃棄物から発生し得る硫化水素ガス、例えば石膏ボード等の硫酸化合物から硫酸還元性微生物の作用によって発生する硫化水素ガスを吸着することができる。本発明は、本発明の製造方法によって製造されるコンクリートスラッジ処理物で埋立廃棄物を被覆する工程を含む、埋立廃棄物からの硫化水素の放出を抑制するための方法に関する発明を提供する。
また本発明は、二価鉄化合物及びリン酸化合物を含む、本発明により提供される前記製造方法によってコンクリートスラッジ処理物を製造するためのキットを提供する。本発明のキットは、好ましくは、二価鉄化合物及びリン酸化合物を液体に溶解した形態で、すなわち液剤として含む。液剤は、二価鉄化合物を溶解した液体と、リン酸化合物を溶解した複数の液体の組み合わせであってもよく、二価鉄化合物及びリン酸化合物の両方を溶解した一の液体であってもよい。好ましい実施形態において、液剤中の二価鉄化合物は鉄に換算した濃度が1.5質量%以上であり、液剤中のリン酸化合物はリン酸に換算した濃度が6.0質量%以上である。好ましい実施形態において、液剤である本発明のキットは、コンクリートスラッジ100 gに対して少なくとも1 mL、例えば1~10 mLの添加量で用いられる。
本発明の製造方法によって製造されるコンクリートスラッジ処理物は、コンクリートスラッジから持ち込まれるセメント水和物と、クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトとを含むハイドロキシアパタイト含有組成物である。したがって、本発明は、セメント水和物とクロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトとを含むハイドロキシアパタイト含有組成物を提供する。
本発明のハイドロキシアパタイト含有組成物に含まれるセメント水和物の例としては、珪酸カルシウム水和物(トベルモライト3CaO・2SiO2・3H2O、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アルミン酸カルシウム水和物、アルミン酸三硫酸カルシウム水和物(エトリンガイト、3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)などを挙げることができる。
クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトは、ハイドロキシアパタイト中のリン酸イオン及びカルシウムイオンの一部が三価クロム及び鉄によって置換されたハイドロキシアパタイトである。クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトは、クロムが結合したハイドロキシアパタイト、鉄が結合したハイドロキシアパタイト、並びにクロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトを含み得る。
本発明のハイドロキシアパタイト含有組成物は、セメント水和物、クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトの他に、例えばコンクリートスラッジに含まれるセメント水和物以外の成分、その他の物質を含んでいてもよい。また、本発明のハイドロキシアパタイト含有組成物は、懸濁液、スラリー又は固形物の形態であり得る。
本発明の製造方法により製造されるコンクリートスラッジ処理物及びハイドロキシアパタイト含有組成物は、コンクリートスラッジの代用物として、コンクリートスラッジの再利用法として一般に期待されている埋め戻し材、再生路盤材、酸性土壌の中和剤、ゴミ焼却時に発生する酸性物質の中和剤、覆土材などに利用することができる。特に、本発明の製造方法により製造されるコンクリートスラッジ処理物及びハイドロキシアパタイト含有組成物は、産業廃棄物から発生し得る有害物質、例えば石膏ボード等の硫酸化合物から硫酸還元性微生物の作用によって発生する硫化水素ガスを吸着することができ、産業廃棄物を被覆するための覆土材としての利用に適している。本発明の製造方法により製造されるコンクリートスラッジ処理物又はハイドロキシアパタイト含有組成物を含む覆土材も、さらなる発明として開示される。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 コンクリートスラッジ処理物からの六価クロム溶出の評価
(1)コンクリートスラッジ処理剤の調製
硫酸鉄(II)7水和物10 gを水で溶解して100 mLとした硫酸鉄(II)水溶液、85%リン酸水溶液(H3PO4、和光純薬)10 gに水を加えて100 mLとしたリン酸水溶液、及び硫酸鉄(II)水溶液とリン酸水溶液を等量混合した硫酸鉄(II)+リン酸水溶液をそれぞれ調製した。硫酸鉄(II)水溶液は2.00質量%の鉄を含有し、リン酸水溶液は8.24質量%のリン酸を含有し、硫酸鉄(II)+リン酸水溶液は、1.00質量%の鉄及び4.12質量%のリン酸を含有する。
硫酸鉄(II)水溶液は、調製直後は淡黄色の透明な液体であった(図1中央)。二価鉄自体は無色であることから、硫酸鉄(II)水溶液の調製直後の呈色は、水に含まれる少量の酸素により二価鉄が酸化されて赤褐色の三価鉄が生じたものと推測された。調製後の硫酸鉄(II)水溶液をポリプロピレン製遠心チューブに密封して室温保存したところ、徐々に褐変が進行し、3週間後には濁った赤褐色の液体となった(図1左)。
リン酸水溶液は無色透明の液体であり、ポリプロピレン製遠心チューブに密封して室温で1ヶ月間保存しても色の変化は認められなかった。
硫酸鉄(II)+リン酸水溶液は、調製直後から無色透明な液体であり、ポリプロピレン製遠心チューブに密封して室温で1ヶ月間保存しても色の変化は認められなかった(図1右)。リン酸(H3PO4、和光純薬)10 gに水を加えて200 mLとしたリン酸水溶液に硫酸鉄(II)10 gを溶解して調製した硫酸鉄(II)+リン酸水溶液も、同様に無色透明な液体のままであった。
(2)コンクリートスラッジ処理物の調製
上記(1)で調製した硫酸鉄(II)水溶液及びリン酸水溶液を二液型の処理剤として、二液剤を構成するそれぞれの水溶液を等量混合した硫酸鉄(II)+リン酸水溶液を一液型の処理剤として用いて、以下のようにコンクリートスラッジ処理物を調製した。
コンクリートスラッジ(含水率48%)に酸化クロム(VI)(富士フィルム和光純薬)を添加して、コンクリートスラッジ中の六価クロム濃度を4 ppmに調整した。このクロム添加コンクリートスラッジ200 gに対して、スラッジ質量の1質量%相当量の硫酸鉄(II)水溶液及び1質量%相当量のリン酸水溶液、又は2質量%相当量の硫酸鉄(II)+リン酸水溶液を添加し、混合して、室温で24時間静置することでコンクリートスラッジ処理物を得た。このときのスラッジ固形分あたりの鉄の添加量は0.386質量%、リン酸の添加量は1.584質量%であった。
(3)溶出六価クロムの測定
上記(2)で得られた処理物に等量の水を添加、混合した。静置後、上澄みを採取し、ADVANTEC社製ろ紙5種A(保留粒子径7μm)でろ過した。ろ液を、ADVANTEC社製DISMICシリンジフィルター(孔径0.8μm,セルロースアセテート)を用いて加圧ろ過し、得られたろ液を分析試料として、パックテスト(登録商標)Cr6+(共立化学研究所)により六価クロム濃度を測定し、コンクリートスラッジ処理物からの六価クロムの溶出を評価した。
処理剤無添加のコンクリートスラッジでは溶出六価クロム濃度が2 ppmであったのに対し、二液型又は一液型の処理剤を用いて製造したコンクリートスラッジ処理物のいずれも溶出六価クロム濃度は0.05 ppm以下であり、いずれの処理剤も同等の六価クロム溶出抑制効果を有することが示された。
実施例2 コンクリートスラッジ処理物からの六価クロム溶出の評価
(1)コンクリートスラッジ処理物の製造
リン酸(H3PO4、和光純薬)10 gに水を加えて200 mLとしたリン酸水溶液に硫酸鉄(II)10 gを溶解して得た硫酸鉄(II)+リン酸水溶液を、一液型の処理剤として用いた。実施例1で調製したクロム添加コンクリートスラッジ200 gに対して、スラッジ質量の0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4、又は4.5質量%相当量の処理剤を添加し、混合して、室温で24時間静置することでコンクリートスラッジ処理物を調製した。スラッジ固形分の質量に対する、添加された処理剤中の鉄及びリン酸の量の割合を表1に示す。
(2)溶出六価クロムの測定
実施例1の(3)と同様にして、上記(2)で得られた処理物から分析試料を調製した。分析試料50 mLを比色管に採取し、硫酸を加えてpHを9以下にした後、ジフェニルカルバジド溶液(10 g/L)を1 mL添加して静置した。5分後、分光光度計(OPTIMA製SP-300)を用いて波長540 nmでの吸光度を測定し、コンクリートスラッジ処理物から溶出した六価クロムの濃度(ppm)を算出した。結果を表1及び図2に示す。
「土壌の汚染に係る環境基準」に定められる溶出六価クロム濃度0.05 ppm以下は、検体1質量部と水10質量部との混合液上清を用いて測定される(環境庁告示第46号、土壌環境基準 付表)。本実施例では検体を2倍希釈して測定しているため、上記の環境基準における0.05 ppm以下は、本実施例では0.25 ppm以下に相当すると考えられる。本実施例においては、4 ppmの六価クロムを含有するコンクリートスラッジに対して1.5質量%以上の処理剤を使用することで0.25 ppmを下回る溶出六価クロム濃度が達成され、したがってこの量の処理剤の使用により上記環境基準に適合するコンクリートスラッジ処理物を製造できることが確認された。
(3)pH分析
上記(2)の分析試料のpHを測定した。最も多い4.5質量%量の処理剤を添加した処理物であっても、pHは12-13と強アルカリ性を示した。
なお、上記(1)において室温での静置時間を1時間として製造したコンクリートスラッジ処理物について、同様にして溶出六価クロム濃度とpHを測定したところ、いずれも静置時間24時間のコンクリートスラッジ処理物と同等であることが確認された。
実施例3 コンクリートスラッジ処理物からの六価クロム溶出の評価
リン酸(H3PO4、和光純薬)10 gに水を加えて200 mLとしたリン酸水溶液に硫酸鉄(II)10 gを溶解して得た硫酸鉄(II)+リン酸水溶液を、一液型の処理剤として用いた。コンクリートスラッジに酸化クロム(VI)(富士フィルム和光純薬)を添加して、コンクリートスラッジ中の六価クロム濃度を0.2 ppm~10 ppmに調整した。さらに、この10ppmクロム添加コンクリートスラッジにクロム低含有のコンクリートスラッジを添加混合し、六価クロム濃度0.2 ppm~8 ppmのコンクリートスラッジを調製した。これらのクロム添加コンクリートスラッジ(含水率43%)200 gに対して、スラッジ質量の1、2、又は4質量%相当量の処理剤を添加し、混合して、室温で24時間静置することでコンクリートスラッジ処理物を調製した。得られたコンクリートスラッジ処理物について、実施例2(2)と同様にして、コンクリートスラッジ処理物から溶出した六価クロムの濃度(ppm)を算出した。結果を表2及び図3に示す。
4 ppm以下の六価クロムを含有するコンクリートスラッジの場合には、スラッジに対して1質量%以上の処理剤を使用することで、6~8 ppmの六価クロムを含有するコンクリートスラッジの場合には、スラッジに対して2質量%以上の処理剤を使用することで、また10 ppmの六価クロムを含有するコンクリートスラッジの場合には4質量%以上の処理剤を使用することで、それぞれ0.25 ppmを下回る溶出六価クロム濃度が達成された。このように、コンクリートスラッジ中のクロム含有量に応じて処理剤の添加量を調節することで、環境基準に適合するコンクリートスラッジ処理物を製造できることが確認された。
なお、室温での静置時間を1時間として製造したコンクリートスラッジ処理物について、同様にして溶出六価クロム濃度を測定したところ、静置時間24時間のコンクリートスラッジ処理物と同等であることが確認された。
実施例4 オゾン曝気下でのコンクリートスラッジ処理物からの六価クロム溶出の評価
実施例1で調製した、硫酸鉄(II)水溶液とリン酸水溶液を等量混合した硫酸鉄(II)+リン酸水溶液を、一液型の処理剤として用いた。コンクリートスラッジ(含水率43%)1000 gに3000 mLの水を加え、酸化クロム(VI)(富士フィルム和光純薬)を添加して六価クロム濃度が4 ppmとなるように調整した後、大きな沈殿物を入れずに上部2500 mLを採取し、スラリー状のクロム添加コンクリートスラッジ(含水率85.7%)とした。
クロム添加コンクリートスラッジ2500 mLは、5000 mL容の容器に入れ密閉した。この試料を3つ用意し、試料1には実施例1の硫酸鉄(II)水溶液をコンクリートスラッジ質量の1質量%相当量添加して混合し、試料2と試料3には処理剤をコンクリートスラッジ質量の2質量%相当量添加して混合した。なお、このときの試料1~3におけるスラッジ固形分あたりの鉄の添加量は1.405質量%、試料2及び3におけるリン酸の添加量は5.761質量%であった。
試料2は処理剤を添加混合した後ただちに、試料1及び試料3は混合後24時間の静置を経てからオゾン曝気を行った。オゾン曝気は、図4に示す装置を用い、オゾン発生チューブ(smatyop社、250×60×50 mm、オゾン発生量10 g/h)をエアーポンプに連結し、エアーポンプから0.025 Mpa、55 L/minのエアーを通気させてオゾンを発生させ、試料をスターラーで撹拌しながら試料中にオゾンを噴出させることにより行った。オゾン発生チューブから送気されるオゾン濃度は3 mg/Lである。
オゾンガス曝気開始から1時間毎にスラリーの一部を回収し、等量の水を添加、混合した後に静置して上澄みを採取した。上澄みをADVANTEC社製ろ紙5種A(保留粒子径7μm)でろ過し、そのろ液をさらにADVANTEC社製DISMICシリンジフィルター(孔径0.8μm,セルロースアセテート)を用いて加圧ろ過し、得られたろ液を分析試料として、実施例2(2)と同様にして、コンクリートスラッジ処理物から溶出した六価クロムの濃度(ppm)を算出した。結果を表3及び図5に示す。
試料1(硫酸鉄(II)水溶液添加)では、オゾン曝気によりスラリーは赤茶色に変色し、また溶出六価クロム濃度は曝気開始後1時間未満で0.25 ppmを超えた。試料2(処理剤添加、静置無し)では、オゾン曝気によってスラリーは赤褐色に変色し、また六価クロム濃度は曝気開始後4時間で0.25 ppmを超えた。一方、試料3(処理剤添加、24時間静置)では、曝気開始後12時間でも変色は観察されず、溶出六価クロムもわずかにしか検出されなかった。このことから、処理剤添加後24時間保持したコンクリートスラッジ処理物においては、スラッジ中のカルシウムとリン酸が反応して生じたハイドロキシアパタイトが、そのカルシウムイオンサイトでのイオン交換によってイオン化したクロム及び鉄を強固に吸着しているため、12時間のオゾン曝気でもクロム及び鉄はほとんど放出されなかったものと考えられた。
また、試料3について、処理剤混合後1週間の静置を経た後に、同様にオゾン曝気を行ったところ、オゾン曝露下での六価クロムの溶出は24時間の静置と同様であり、曝気開始後10時間でも溶出六価クロムの濃度は0.05 ppm未満であった。このことから、処理剤添加後に保持時間を設けることによって、オゾン曝気のような強い酸化条件下でも六価クロムの溶出が抑制されたコンクリートスラッジ処理物を製造可能であることが確認された。
実施例5 処理剤添加によるコンクリートスラッジの形状変化
リン酸(H3PO4、和光純薬)10 gに水を加えて200 mLとしたリン酸水溶液に硫酸鉄(II)10 gを溶解して得た硫酸鉄(II)+リン酸水溶液を、一液型の処理剤として用いた。コンクリートスラッジ(含水率43%)200 gに対して、スラッジ質量の1質量%相当量の処理剤を添加し、混合して、室温で7日間静置することでコンクリートスラッジ処理物を調製した。処理剤添加後のコンクリートの外観を図6に示す。処理剤添加前のスラッジは粘土状であったが(図6左上)、処理剤を添加混合するとただちにスラリー状になった(図6中央上)。処理剤添加の1日後、スラッジの形状は粘土状に戻り(図6右上)、その後は徐々に水分が減って、処理剤添加の4日後には砕くと粉状になるまで水分が減少した(図6右下)。このことから、含水率が低いコンクリートスラッジであっても、1質量%相当量の処理剤を添加することで、スラッジ中の水和物から水が溶出することでスラリー状の形状となり、処理剤を容易に混合することができることが示された。
実施例6 コンクリートスラッジ処理物の硫化水素吸着能の評価
(1)コンクリートスラッジ処理物の調製
塩化鉄(II)四水和物(和光純薬)10 gを水で溶解して100 mLとした塩化鉄(II)水溶液と実施例1で調製したリン酸水溶液を、二液型の処理剤として用いた。塩化鉄(II)水溶液は2.81質量%の鉄を含有する。
コンクリートスラッジ(含水率43%)500 gに対して、スラッジ質量の1質量%相当量のリン酸水溶液を添加し、混合した。次いで、スラッジ質量の1質量%相当量の塩化鉄(II)水溶液を添加し、混合して、室温で24時間静置することでコンクリートスラッジ処理物を得た。このときのスラッジ固形分あたりの鉄の添加量は0.493質量%、リン酸の添加量は1.445質量%であった。コンクリートスラッジ処理物は、80℃で8時間乾燥した後、粉砕して硫化水素吸着試験に用いた。
(2)硫化水素ガス吸着試験
試験に用いた装置の構成を、図7を参照しながら説明する。1質量%の硫化ナトリウム九水和物(和光純薬)の水溶液200 mLをムエンケ式洗浄瓶11に入れ、チューブを介してマイクロピペット12及びカラム13に接続した。カラム13は、直径65 mm、上部直径100 mm、長さ165 mmの円筒形カラムであり、その下部に綿15を詰め、その上部に穴を設けてガス検知器14(キューレイ2・吸引式/PGM-2400P)を接続した。マイクロピペット12から塩酸を滴下すると、洗浄瓶11内に硫化水素ガスが発生し、カラム13を通してガス検知器14に吸引される。
35%塩酸5 mLを硫化ナトリウム水溶液に滴下したところ、ガス検知器14により測定された硫化水素ガス濃度は5秒後に100 ppmを超えた。この時点の硫化水素ガス濃度を北川式ガス検知管で吸引測定したところ、200 ppmの硫化水素ガスが発生していることが確認された。
カラム13と洗浄瓶11を接続するチューブを止めた後、カラム13下部の綿15の上に粉砕物3 gを充填した。カラム13と洗浄瓶11を接続するチューブを開放し、硫化水素ガスを粉砕物に通気させて吸着試験を行った。ガス検知器14により測定された硫化水素ガス濃度は、粉砕物への硫化水素ガス通気開始5秒後、10秒後、30秒後、30分後のいずれも0 ppmであった。この結果から、コンクリートスラッジ処理物は、乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能(吸着材3 g、硫化水素ガス容量9 L、硫化水素ガス初期濃度200 ppm、室温下で試験したときに、硫化水素ガスとの接触開始から30分後までに吸着材1 gが吸着した硫化水素ガスの体積)を有することが確認された。
1 ビーカー
2 オゾン発生チューブ
3 エアーポンプ
4 スターラー
5 試料
6 エアーストーン
11 ムエンケ式洗浄瓶
12 マイクロピペット
13 ガラス製カラム
14 ガス検知器
15 綿栓
16 試験物
17 ゴム栓

Claims (17)

  1. コンクリートスラッジに、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.15質量%以上の量となる鉄を含む二価鉄化合物と、当該コンクリートスラッジの固形分に対して0.60質量%以上の量となるリン酸を含むリン酸化合物とを添加し、混合することでアルカリ性の混合物を得る工程、及び得られた混合物を少なくとも1時間保持する工程を含む、コンクリートスラッジ処理物の製造方法。
  2. 二価鉄化合物が、硫酸鉄(II)又は塩化鉄(II)である、請求項1に記載の製造方法。
  3. リン酸化合物が、オルトリン酸又はその塩である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 二価鉄化合物及びリン酸化合物が、液体に溶解した形態でコンクリートスラッジに添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記液体の添加量が、コンクリートスラッジ100 gに対して少なくとも1 mLである、請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記液体の添加量が、コンクリートスラッジ100 gに対して1~10 mLである、請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 混合物が少なくとも24時間保持される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. コンクリートスラッジ処理物が、乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能を有し、かつコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 濃度3 mg/Lのオゾンガスで10時間曝気した後のコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により製造されたコンクリートスラッジ処理物で埋立廃棄物を被覆する工程を含む、埋立廃棄物からの硫化水素の放出を抑制するための方法。
  11. 二価鉄化合物及びリン酸化合物を含む、コンクリートスラッジ処理物を製造するためのキットであって、コンクリートスラッジ処理物が、乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能を有し、かつコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、前記キット。
  12. 鉄に換算した濃度が1.5質量%以上である二価鉄化合物とリン酸に換算した濃度が6.0質量%以上であるリン酸化合物とを、液体に溶解した形態で含む、請求項11に記載のキット。
  13. 硫酸鉄(II)又は塩化鉄(II)とオルトリン酸とを溶解した液体を含む、請求項11又は12に記載のキット。
  14. 濃度3 mg/Lのオゾンガスで10時間曝気した後のコンクリートスラッジ処理物 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、請求項11~13のいずれか一項に記載のキット。
  15. セメント水和物と、クロム及び鉄が結合したハイドロキシアパタイトとを含有する、覆土材。
  16. 乾燥質量1 g当たり少なくとも3 Lの硫化水素ガス吸着能を有し、かつ覆土材 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム溶出量が0.05 ppm以下である、請求項15に記載の覆土材。
  17. 濃度3 mg/Lのオゾンガスで10時間曝気した後の覆土材 1質量部を水 10質量部と混合して得た液体の上清中の六価クロム含有量が0.05 mg/L以下である、請求項16に記載の覆土材。

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